(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20230215BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20230215BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B62D25/16 B
B60Q1/04 A
B60Q1/26 A
(21)【出願番号】P 2018216581
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 春彦
(72)【発明者】
【氏名】山西 宏樹
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043185(JP,A)
【文献】特開2010-241220(JP,A)
【文献】特開2015-009773(JP,A)
【文献】特開2005-161888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00
B60Q 1/00
B60R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のフロントバンパの上方に配置される第1ランプユニットと、
前記第1ランプユニットの下方に並んで配置され、前記フロントバンパに設けられたランプ開口から露出される第2ランプユニットと、
車両前部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントバンパの車幅方向両側部が係合されるフェンダと、
前記車両の骨格部材に設けられ、前記第1ランプユニットが取り付けられる第1被取付部と、前記フェンダの前部が取り付けられる第2被取付部と、前記第2ランプユニットが取り付けられる第3被取付部とを有する支持ブラケットと、を備え
、
前記支持ブラケットは、車両上下方向上方に臨む第1平板部と車両左右方向に臨む第2平板部とを有し、
前記第1被取付部は、前記第1平板部に形成され、
前記第2被取付部及び前記第3被取付部は、前記第2平板部に形成され、
前記第1ランプユニットは、前記第1平板部の上面側に取り付けられ、
前記フェンダの前部は、前記第2平板部の車両左右方向外側の外面側に取り付けられ、
前記第2ランプユニットは、前記第2平板部の車両左右方向内側の内面側に取り付けられる車両前部構造。
【請求項2】
前記支持ブラケットは、前記第1平板部の車両前後方向前側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む第3平板部と、前記第1平板部の車両前後方向後側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む第4平板部とを更に有し、
前記第3平板部及び前記第4平板部は、下部で前記骨格部材に取り付けられ、
前記第2平板部は、前記第3平板部の車両左右方向外側の端部から車両前後方向前側に延びて形成される、
請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記第3平板部及び前記第4平板部の少なくとも一方には、前記第1平板部に対する下方への所定値以上の力を吸収する吸収部が形成される、
請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記第3平板部及び前記第4平板部の少なくとも一方には、開口が設けられており、前記吸収部は、前記開口が設けられることで形成されている、
請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記第2平板部から前記第3平板部にかけて連続して延びるビード部が形成される、
請求項2から4のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両前部構造に係り、特に車体に部品を取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両前側には、フードやフロントバンパの他、ランプユニットやフェンダ等の複数の部品が取り付けられている。
この車両前側の各部品が取り付けられた状態における位置精度が低下すると、車両前側全体の組み付け精度の低下を招く虞があった。
そこで、フロントバンパとフェンダとの接続部分の車両左右方向内側にフェンダフォルダを設けることで、フロントバンパ、フェンダ及びランプユニットの位置精度を向上させる技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前側の意匠性を向上させるために、ランプユニットをヘッドランプユニットやポジションランプユニットなどを別体に分けて設けることが考えられる。
このような場合について、上記特許文献1に開示される技術では、ランプユニットをヘッドランプユニットやポジションランプユニットなど別体に分けて設ける場合まで記載されておらず、各ランプ、フェンダ及びフロントバンパの位置精度を改善させる必要があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ランプユニットがヘッドランプユニットやポジションランプユニットなどを別体で有する場合であっても、各ランプユニット、フェンダ及びフロントバンパの相対的な位置関係のずれが発生することを抑制することができる車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両前部構造は、車両前部のフロントバンパの上方に配置される第1ランプユニットと、前記第1ランプユニットの下方に並んで配置され、前記フロントバンパに設けられたランプ開口から露出される第2ランプユニットと、車両前部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントバンパの車幅方向両側部が係合されるフェンダと、前記車両の骨格部材に設けられ、前記第1ランプユニットが取り付けられる第1被取付部と、前記フェンダの前部が取り付けられる第2被取付部と、前記第2ランプユニットが取り付けられる第3被取付部とを有する支持ブラケットと、を備え、前記支持ブラケットは、車両上下方向上方に臨む第1平板部と車両左右方向に臨む第2平板部とを有し、前記第1被取付部は、前記第1平板部に形成され、前記第2被取付部及び前記第3被取付部は、前記第2平板部に形成され、前記第1ランプユニットは、前記第1平板部の上面側に取り付けられ、前記フェンダの前部は、前記第2平板部の車両左右方向外側の外面側に取り付けられ、前記第2ランプユニットは、前記第2平板部の車両左右方向内側の内面側に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
これにより、支持ブラケットに第1ランプユニット、フェンダ及び第2ランプユニットを取付ける第1被取付部、第2被取付部及び第3被取付部を設けるようにすることで、第1ランプユニット、フェンダ及び第2ランプユニットを支持ブラケットでまとめて車体に固定して、これらの部品の相対的な位置精度を向上させることが可能とされる。
また、第2ランプユニットはフロントバンパの開口に備えられるため、支持ブラケットによって第2ランプユニットとフェンダの位置が決まることで、フロントバンパをフェンダの前部に組み付け、第2ランプユニットとフロントバンパの開口との位置精度を向上させることが可能とされる。
【0009】
また、前記第1被取付部が第1平板部に形成され、第1ランプユニットが第1平板部の上面側に取り付けられることで、第1ランプユニットの取付けを容易にすることが可能とされる。
また、前記第2被取付部及び前記第3被取付部が第2平板部の両面に第2被取付部及び第3被取付部を形成することで、第2平板部を挟むように第2ランプユニット及びフェンダを位置させ、例えば共締めすることで位置精度を向上させることが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記支持ブラケットは、前記第1平板部の車両前後方向前側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む第3平板部と、前記第1平板部の車両前後方向後側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む第4平板部とを更に有し、前記第3平板部及び前記第4平板部は、下部で前記骨格部材に取り付けられ、前記第2平板部は、前記第3平板部の車両左右方向外側の端部から車両前後方向前側に延びて形成されるのが好ましい。
【0011】
これにより、左右方向且つ上下方向に延びる第3平板部の車両左右方向外側の端部から車両前後方向前側に延びる第2平板部が形成されることで、例えばフェンダが車両左右方向内側に向かって押圧されるような場合であっても、第2平板部を第3平板部によって的確に支持してブラケットの変形を抑制することが可能とされる。
また、第1平板部の車両前後方向前側の端部に第3平板部が、第1平板部の車両前後方向後側の端部に第4平板部がそれぞれ形成され、それぞれに開口を形成することで、支持ブラケットが撓むことで第1平板部の位置がずれることを抑制しつつ、ポジションランプが下方に移動することを許容して人に加わる衝撃を緩和させることが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記第3平板部及び前記第4平板部の少なくとも一方には、前記第1平板部に対する下方への所定値以上の力を吸収する吸収部が形成されるのが好ましい。
これにより、第1平板部に対する下方への所定値以上の力を吸収する吸収部が上下方向に延びる第3平板部に形成されることで、例えば車両と人との衝突事故によって第1ランプユニットが下方に押圧されるような場合に、吸収部に所定値以上の力が加わると変形するので、第1ランプユニットが下方に移動することを許容して人に加わる衝撃を吸収することが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記第3平板部及び前記第4平板部の少なくとも一方には、開口が設けられており、前記吸収部は、前記開口が設けられることで形成されているのが好ましい。
これにより、第3平板部に開口を形成することで、簡単な構成にして吸収部を形成することが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記第2平板部から前記第3平板部にかけて連続して延びるビード部が形成されるのが好ましい。
これにより、ビード部が第2平板部から第3平板部にかけて連続して延びて形成されることで、例えばフェンダが車両左右方向内側に向かって押圧されるような場合であっても、ビードが第2平板部を支持してブラケットの変形を抑制することが可能とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両前部構造によれば、支持ブラケットに第1ランプユニット、フェンダ及び第2ランプユニットを取付ける第1被取付部、第2被取付部及び第3被取付部を設けるようにすることで、第1ランプユニット、フェンダ及び第2ランプユニットを支持ブラケットでまとめて車体に固定して、これらの部品の相対的な位置精度を向上させることが可能とされる。また、第2ランプユニットはフロントバンパの開口に備えられるため、支持ブラケットによって第2ランプユニットとフェンダの位置が決まることで、フロントバンパをフェンダの前部に組み付けることで、第2ランプユニットとフロントバンパの開口との位置精度を向上させることが可能とされる。
【0016】
これにより、ランプユニットがヘッドランプユニットやポジションランプユニットなどを別体で有する場合であっても、各ランプユニット、フェンダ及びフロントバンパすべての部品の相対的な位置関係のずれが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】車両前側を車両前後方向左斜め前側から視た斜視図である。
【
図2】車両からランプユニット及びフェンダを取り外した分解図である。
【
図3】車両右斜め後方から視た支持ブラケットの斜視図である。
【
図4】車両右斜め前方から視た支持ブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両1前側を車両前後方向左斜め前側から視た斜視図が示されている。また、
図2を参照すると、車両1からランプユニット9及びフェンダ11を取り外した分解図が示されている。車両1は、前後方向前側にフード3、バンパ(フロントバンパ)5、グリル7及び左右一対のランプユニット9が配設され、車両前側の左右方向側部には左右一対のフェンダ11が配設されている。以下、主に車両左右方向左側の構成について説明するが、ランプユニット9やフェンダ11、後述する支持ブラケット50等のような車両左右方向について左右一対の部品は右側についても同様の構成であり、説明を省略する。
【0019】
車体2は、車両1の骨格を成しており、フロントデッキ21、ピラー23、アッパーバー25及びアッパーバーサイド27が形成及び配設されている。フロントデッキ21は、フロントウインド22の下側に位置し、車両左右方向に延びる骨格部材である。ピラー23は、フロントデッキ21の車両左右方向端部に位置し、上端が車両後方に向かって傾斜するようにしてフロントウインド22の左右端部に沿って延びる骨格部材である。
【0020】
アッパーバー25は、車両前端に位置し、左右方向に延びる骨格部材である。
アッパーバーサイド27は、ピラー23の下側に位置するアッパフレームの端部とアッパーバー25の左右端部とを接続するように配設された骨格部材である。ここで、これら骨格部材は、平板をプレス成型することで形成され、互いに締結されることで固定されている。したがって、フロントデッキ21、ピラー23、アッパーバー25及びアッパーバーサイド27は、エンジンルーム29の車両前後方向及び左右方向の上側に配設され、エンジンルーム29の上側における周囲を覆うことができる。さらに、エンジンルーム29の上側にフード3を配設することで、エンジンルーム29の上側を覆うことができる。
【0021】
バンパ5は、エンジンルーム29の前方に位置する樹脂製の部材であり、左右両端がフェンダ11の前部に取付けられている。このバンパ5は、左右方向中央及び上下方向中央から上側にかけてグリル7が配設されている。
これにより、エンジンルーム29は、バンパ5及びグリル7によって前側が覆われている。このバンパ5の車両左右方向両側に左右一対のランプ開口5aが形成されており、ランプ開口5a及びその上方にランプユニット9が配設されている。
【0022】
ランプユニット9は、ポジションランプユニット(以下、ポジションランプ31という)及びヘッドランプユニット(以下、ヘッドランプ33という)をそれぞれ別体で備えている。ポジションランプ31は、バンパ5のランプ開口5aの上方に位置するランプ装置である。ヘッドランプ33は、フェンダ11の車両前後方向前側に位置するランプ装置であり、バンパ5のランプ開口5aから車両1の前方を照射するように発光することが可能である。
【0023】
フェンダ11は、ピラー23及びエンジンルーム29の車両左右方向左側に位置する樹脂製の部材である。このフェンダ11は、バンパ5の左端部や図示しないドア等と曲面が連続するよう形成されている。また、フェンダ11の前側の端部は、バンパ5の左端部が係合可能に形成されている。
図3を参照すると、車両右斜め後方から視た支持ブラケット50の斜視図が示されている。また、
図4を参照すると、車両右斜め前方から視た支持ブラケット50の斜視図が示されている。
【0024】
ランプユニット9のポジションランプ31には第1取付部41が、フェンダ11には第2取付部42及び第4取付部44が、ヘッドランプ33には第3取付部43がそれぞれ形成されている。また、車体2のアッパーバーサイド27には、支持ブラケット50が溶接されており、第1取付部41、2取付部42及び第3取付部43が支持ブラケット50に取付けられている。
【0025】
第1取付部41は、ポジションランプ31の車両前後方向後側から後方に延び、車両上下方向に臨む平面41aが形成されている。この平面41aには、ボルト41bが貫通可能な丸穴41cが形成されている。
第2取付部42は、フェンダ11の車両上下方向上側且つ前側の端部から前方に延び、車両左右方向に臨む平面42aが形成されている。この平面42aには、ボルト42b及び後述する凸部43cが貫通可能な丸穴42cが2つ形成され、丸穴42cの下方にボルト42dが貫通可能な、車両前後方向に延びる長穴42eが形成されている。
【0026】
第4取付部44は、フェンダ11の車両上下方向上側且つ前側の端部から右方に延び、車両上下方向に臨む平面44aが形成されている。この平面44aには、ボルト44bが貫通可能な長穴44cが形成されている。
第3取付部43は、ヘッドランプ33の上端から車両前後方向後方に向かって延び、車両左右方向左側に臨む平面43aが形成されている。この平面43aには、ボルト42bが螺合可能な雌ねじ43b及び凸部43cが、フェンダ11が車両1に配設されたとき第2取付部42の丸穴42cに対応する位置に形成されている。
【0027】
支持ブラケット50は、第1平板部51、第2平板部52、第3平板部53及び第4平板部54が形成された平板部材である。
第1平板部51は、車両上下方向に臨み、支持ブラケット50の上面51aを成す平板部である(
図3参照)。この第1平板部51には、締結穴51b、51c及び誘導穴51dが設けられている。締結穴51b及び締結穴51cは、第1平板部51に開孔を設け、上面51aとは反対側の面にナットを溶接することで形成されている。
【0028】
ここで、締結穴51bはポジションランプ31が車両1に配設されたとき第1取付部41の丸穴41cに対応する位置に設けられており、締結穴51cはフェンダ11が車両1に配設されたとき第4取付部44の長穴44cに対応する位置に設けられている。誘導穴51dは、アッパーバーサイド27に支持ブラケット50を取付けるときに治具を挿入して適切な位置に誘導する所謂ロケーション穴である。
【0029】
第3平板部53は、第1平板部51の車両前後方向前側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む平板部であり、支持ブラケット50の前側面53aを成している(
図4参照)。この第3平板部53は、アッパーバーサイド27に対応する位置に凹部53bが形成され、周縁には前側リブ61が形成されている。
この前側リブ61は、アッパーバーサイド27の上側の面に対応する位置に車体取付部63及び補強部65を有している。これにより、アッパーバーサイド27に車体取付部63をスポット溶接することで、支持ブラケット50の前側面53aをアッパーバーサイド27に固定することができる。また、前側リブ61や補強部65が形成されることにより第3平板部53の車両左右方向及び車両前後方向の剛性を高めることができる。
【0030】
第2平板部52は、第3平板部53の車両左右方向左側の端部から第3平板部53に対して垂直に(車両前後方向前方に)延び、左方向に臨む左側面52a及び右方向に臨む右側面52bが形成された平板部である(
図4参照)。この第2平板部52には、開孔52cが2つ、フェンダ11及びヘッドランプ33が車両1に配設されたとき第2取付部42の丸穴42c及び第3取付部43の雌ねじ43b及び凸部43cに対応する位置に設けられている。また、第2平板部52の前側の端部には、フェンダ11の第2取付部42に形成された長穴42eに貫通したボルト42dが螺合可能な雌ねじ部52dが設けられている。
【0031】
第4平板部54は、第1平板部51の車両前後方向後側の端部から下方に延び、車両前後方向に臨む平板部であり、支持ブラケット50の後側面54aを成している(
図3参照)。この第4平板部54の下端には、車体取付部67が形成されており、スポット溶接することで、支持ブラケット50の後側面54aをアッパーバーサイド27に固定することができる。
【0032】
さらに支持ブラケット50には、第1ビード71、第2ビード72、前側開口部75、後側開口部77及び面取部79が形成されている。第1ビード71は、第2平板部52から第3平板部53にかけて延び、車両前後方向前側及び左右方向右側に向かって突出するよう形成された凸条である。この第1ビード71は、一端が第2平板部52の車両前後方向で視て開孔52cより後方まで延びて形成され、他端は第3平板部53の右端まで延びて形成されている。
【0033】
第2ビード72は、第2平板部52の開孔52cより下側に車両左右方向右側に向かって突出するよう形成された凸条である。この第2ビード72は、一端が第2平板部52の車両前後方向で視て前側の開孔52cまで延びて形成され、他端は第2平板部52の後端まで延びて形成されている。
前側開口部75は、第3平板部53の第1ビード71より上方に車両左右方向に延びて形成された長穴状の開口である。この前側開口部75が形成されることで、第3平板部53における前側開口部75より左右両側に位置する柱部53cは、同じ幅に形成されている。
【0034】
後側開口部77は、第3平板部53の第1ビード71より上方に車両左右方向に延びて形成された開口である。この後側開口部77が形成されることで、第4平板部54における後側開口部77より左右両側に位置する柱部54bは、同じ幅に形成されている。
面取部79は、第1平板部51と第3平板部53との接続部分である折曲部55の左右端部を折り曲げて面取り形状に形成された角部である。この面取部79が形成されることにより、折曲部55を軸にした第1平板部51と第3平板部53との相対的な移動、換言すると支持ブラケット50の変形を抑制するよう剛性を高めることができる。
【0035】
次に、支持ブラケット50に対するフェンダ11、ポジションランプ31及びヘッドランプ33の取付け方法について説明する。なお、フェンダ11、ポジションランプ31及びヘッドランプ33における、支持ブラケット50以外の部品に対する取付け方法については説明を省略する。
まず、支持ブラケット50の第1平板部51にフェンダ11の第4取付部44を乗せ、長穴44cにボルト44bを貫通させ、ボルト44bが長穴44cに沿うようにフェンダ11を移動できる程度にボルト44bを締結穴51cに締め付ける(
図3参照)。
【0036】
次に、支持ブラケット50の第2平板部52の長穴42eにボルト42dを貫通させ、ボルト42dが長穴42eに沿うようにフェンダ11を移動できる程度にボルト42dを雌ねじ部52dに締め付ける(
図4参照)。
次に、支持ブラケット50の第2平板部52の開孔52cのうち、車両前後方向前側の開孔52cに凸部43cを挿入させ、他方の開孔52cとフェンダ11の第2取付部42の丸穴42cとに第2取付部42からボルト42bを挿入して貫通させ、ヘッドランプ33に形成された第3取付部43の雌ねじ43bに螺合して第2平板部52に第2取付部42及び第3取付部43を固定する(
図4参照)。
【0037】
このとき、ボルト42d、44bが長穴42e、44cに沿うようにフェンダ11を車両前後方向に移動できるため、丸穴42c、開孔52c及び雌ねじ43bの位置を調整して相対的な位置のずれを抑制することができる。そして、第2平板部52にフェンダ11及びヘッドランプ33を固定したあと、再びボルト44bを締結穴51cに締め付けて支持ブラケット50の第1平板部51にフェンダ11の第4取付部44を固定する(
図4参照)。
【0038】
さらに、ポジションランプ31に形成された第1取付部41を第1平板部51に乗せ、丸穴41cにボルト41bを貫通させて第1平板部51の締結穴51bに第1取付部41を螺合して固定する。
このようにして支持ブラケット50にフェンダ11、ポジションランプ31及びヘッドランプ33を取付けることで、各部品の相対的な位置のずれを抑制することができる。したがって、車両1の前側の意匠性を向上させることができる。
【0039】
次に、
図3、4に沿い、車両1に歩行者等の人が衝突するような衝突事故が発生した場合について説明する。
車両1に歩行者等の人が衝突するような衝突事故の場合、例えば人の頭部がポジションランプ31の上側に位置するフード3に衝突する場合が考えられる。
このようにフード3に衝突した人の頭部は、衝突の勢いによってフード3を凹ませながら下方に移動し、ポジションランプ31を下方に押圧する。このとき、支持ブラケット50に前側開口部75及び後側開口部77が形成されているため、第3平板部53及び第4平板部54に形成された柱部53c、54bを車両上下方向下方に潰しながらポジションランプ31を押し下げることができる。したがって、このようにポジションランプ31を押し下げることを可能にすることで、人の頭部に加わる衝撃を緩和させることができる。
【0040】
また、第3平板部53に第1ビード71が車両左右方向に延びて形成されていることにより、第3平板部53を上下方向に撓ませるようにして良好に人の頭部に加わる衝撃を吸収することができる。さらに、第1ビード71は第2平板部52にまで延びているため、第3平板部53が上下方向に撓むことをフェンダ11やヘッドランプ33によって阻害されないようにすることができる。特に、第1ビード71は、他端が第3平板部53の右端まで延びて形成されているため、第1ビード71の他端側(車両左右方向右側)の剛性を軽減させて第3平板部53を上下方向に良好に撓ませることができる。
【0041】
また、前側開口部75及び後側開口部77が第1ビード71より上方に形成されている、換言すると、柱部53c、54bによって人の頭部に加わる衝撃を吸収してから第3平板部53を上下方向に撓ませることで、より良好に人の頭部に加わる衝撃を吸収することができる。そして、第1平板部51と第3平板部53との接続部分である折曲部55の左右両端に面取部79が形成されていることで、折曲部55が意図しない方向に折れ曲がることを抑制し、前側開口部75及び第1ビード71に的確に衝撃を伝達させることができる。
【0042】
ところで、
図1、2によると、フェンダ11は、車両1の前側左側面の意匠を形成する側壁である。したがって、フェンダ11は、車両1の洗車等によって車両右方向に押圧されるような場合がある。このような場合であっても、第2平板部52は第3平板部53に対し垂直に延びているため、第2平板部52を車両左方向について支持してフェンダ11を的確に支持することができる。また、第1ビード71は第2平板部52から第3平板部53にかけて延びて形成され、第2ビード72は他端が第2平板部52の後端まで延びて形成されているので、第2平板部52が車両右方向に折れ曲がることを抑制することで支持ブラケット50が変形することを抑制することができる。
【0043】
さらに、第3平板部53における凹部53bの周縁には、前側リブ61が形成されているので、フェンダ11が車両右方向に押圧されたときに第3平板部53の凹部53b周辺に応力集中が発生することを抑制することができる。
以上説明したように、本発明に係る車両前部構造では、車両1前部のバンパ5の上方に配置されるポジションランプ31と、ポジションランプ31の下方に並んで配置され、フロントバンパ5に設けられたランプ開口5aから露出されるヘッドランプ33と、車両前部の車幅方向外側に設けられ、バンパ5の車幅方向両側部が係合されるフェンダ11と、車両1のアッパーバーサイド27に設けられ、ポジションランプ31の第1取付部41が取り付けられる上面51aと、フェンダ11の前部の第2取付部42が取り付けられる左側面52aと、ヘッドランプ33の第3取付部43が取り付けられる右側面52bとを有する支持ブラケット50と、を備える。
【0044】
従って、支持ブラケット50にポジションランプ31、フェンダ11及びヘッドランプ33を取付ける上面51a、左側面52a及び右側面52bを設けたことで、ポジションランプ31、フェンダ11及びヘッドランプ33を支持ブラケット50でまとめて車体2に固定して、これらの部品の相対的な位置精度を向上させることができる。
また、ヘッドランプ33はフロントバンパ5のランプ開口5aに備えられるため、支持ブラケット50によってヘッドランプ33とフェンダ11の位置が決まることで、フロントバンパ5をフェンダ11の前部に組み付け、ヘッドランプ33とフロントバンパ5の開口との位置精度を向上させることができる。
【0045】
そして、支持ブラケット50は、車両上下方向上方に臨む第1平板部51と車両左右方向に臨む第2平板部52とを有し、上面51aは、第1平板部51に形成され、左側面52a及び右側面52bは、第2平板部52に形成され、ポジションランプ31の第1取付部41は、第1平板部51の上面51aに取り付けられ、フェンダ11の前部に設けられた第2取付部42は、第2平板部52の車両左右方向外側の外面側に取り付けられ、ヘッドランプ33の第3取付部43は、第2平板部52の車両左右方向内側の内面側に取り付けられる。
【0046】
従って、車両1前後方向且つ左右方向に延びる第1平板部51と、前後方向且つ上下方向に延びる第2平板部52とが支持ブラケット50に形成されることで、支持ブラケット50の前後方向についての剛性を高めることができ、ヘッドランプ33の上方に位置するポジションランプ31の第1取付部41が第1平板部51に形成される上面51aに取り付けられることで、ポジションランプ31の取付けを容易にすることができる。
【0047】
また、上下方向に延びる第2平板部52にフェンダ11の第2取付部42が取り付けられることで、フェンダ11の第2取付部42から加わるフェンダ11の荷重等の上下方向の力を第2平板部52によって的確に支持することができる。
またさらに、上下方向に延びる第2平板部52にヘッドランプ33の第3取付部43が取り付けられることで、ヘッドランプ33の第3取付部43から加わるフェンダ11の荷重等の上下方向の力を第2平板部52によって的確に支持することができる。
【0048】
特に、第2平板部52の両面に左側面52a及び右側面52bを形成することで、第2平板部52を挟むように第2取付部42及び第3取付部43を位置させ、例えば共締めすることで位置精度を向上させることができる。
そして、支持ブラケット50は、第1平板部51の車両1前後方向前側の端部から下方に延び、車両1前後方向に臨む第3平板部53と、第1平板部51の車両1前後方向後側の端部から下方に延び、車両1前後方向に臨む第4平板部54とを更に有し、第3平板部53及び第4平板部54は、車体取付部63、67でアッパーバーサイド27に取り付けられ、第2平板部52は、第3平板部53の車両左右方向外側の端部から車両1前後方向前側に延びて形成される。
【0049】
従って、左右方向且つ上下方向に延びる第3平板部53の車両左右方向外側の端部から車両前後方向前側に延びる第2平板部52が形成されたことで、例えばフェンダ11が車両左右方向内側に向かって押圧されるような場合であっても、第2平板部52を第3平板部53によって的確に支持して支持ブラケット50の変形を抑制することができる。
また、第1平板部51の車両前後方向前側の端部に第3平板部53が、第1平板部51の車両前後方向後側の端部に第4平板部54がそれぞれ形成され、それぞれに開口を形成することで、支持ブラケット50が撓むことで第1平板部51の位置がずれることを抑制しつつ、ポジションランプが下方に移動することを許容して人に加わる衝撃を緩和させることができる。
【0050】
そして、第3平板部53及び第4平板部54には、第1平板部51に対する下方への所定値以上の力を吸収する柱部53c、54bが形成される。
従って、第1平板部51に対する下方への所定値以上の力を吸収する柱部53c、54bが上下方向に延びる第3平板部53に形成されることで、例えば車両1と人との衝突事故によってポジションランプ31が下方に押圧されるような場合に、柱部53c、54bに所定値以上の力が加わると該力を吸収して変形するので、ポジションランプ31が下方に移動することを許容して人に加わる衝撃を吸収することができる。
【0051】
そして、第3平板部53及び第4平板部54には、前側開口部75及び後側開口部77が設けられており、柱部53c、54bは、前側開口部75及び後側開口部77が設けられることで形成されているので、簡単な構成にして柱部53c、54bを形成することができる。
そして、第2平板部52から第3平板部53にかけて連続して延びる第1ビード71が形成されることで、例えばフェンダ11が車両左右方向内側に向かって押圧されるような場合であっても、ビードが第2平板部52を支持して支持ブラケット50の変形を抑制することができる。
【0052】
以上で本発明に係る車両前部構造の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、支持ブラケット50は、アッパーバーサイド27に設けられるようにしたが、アッパーバーサイド27に限らず、車体2に設けられていればよい
また、本実施形態では、第3平板部53が第1平板部51の車両前後方向前端から、第4平板部54が後端からそれぞれ下方に延びるように形成したが、第4平板部54が前端から延び、第3平板部53が前端から延びるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、第2平板部52が第3平板部53の左側端部から前方に延びるように形成されているが、第3平板部53の右側端部から前方に延びるようにしてもよく、第1平板部51の左側端部から下方に延びるようにしてもよい。
また、本実施形態では、支持ブラケット50は、アッパーバーサイド27に溶接されて取付けられているが、ボルト締結、かしめ、接着などの方法で取付けるようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、ランプユニット9は、ポジションランプ31及びヘッドランプ33によって構成されているが、それぞれの位置を入れ替えるようにしてもよく、ターンランプやフォグランプに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 車体
5 バンパ(フロントバンパ)
5a ランプ開口
11 フェンダ
27 アッパーバーサイド(骨格部材)
31 ポジションランプ(第1ランプユニット)
33 ヘッドランプ(第2ランプユニット)
43 第3取付部
50 支持ブラケット
51 第1平板部
51a 上面(第1被取付部)
51b 締結穴(第1被取付部)
52 第2平板部
52a 左側面(第2被取付部)
52b 右側面(第3被取付部)
52c 開孔
53 第3平板部
53c 柱部(吸収部)
54 第4平板部
54b 柱部(吸収部)
63 車体取付部
67 車体取付部
71 第1ビード(ビード部)
75 前側開口部(開口)
77 後側開口部(開口)