(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20230215BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230215BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20230215BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G06F3/12 356
B41J29/38 202
H04N1/00 002A
G06F3/12 308
G06F3/12 344
G06F3/12 332
B41J2/21
(21)【出願番号】P 2019053115
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】萬田 悦子
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126993(JP,A)
【文献】特開2016-221880(JP,A)
【文献】特開2015-116714(JP,A)
【文献】特開平06-219041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 29/38
H04N 1/00
B41J 2/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成を実行させるための画像形成装置を制御する画像形成制御装置であって、
前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、
前記画像形成制御装置は、
前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析部と、
前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援部と、
前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御部と、
を備える画像形成制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成制御装置であって、
前記画像解析部は、黒のベタの線画像と黄を使用する背景画像とが相互に境界を形成するときには、黄の階調値が所定の閾値以上であるときに、Lab色空間の明度Lの値を使用し、前記背景画像の明度Lが所定の閾値よりも高いときに前記滲みが発生すると判定する画像形成制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成制御装置であって、
前記画像解析部は、前記複数の画像形成媒体を使用して滲み検出チャートを出力し、前記滲み検出チャート内の前記境界における彩度変化の低下に基づいて前記滲みが発生し難いか否かを判断し、前記彩度変化の低下が小さいほど前記滲みが発生し難いと判断する画像形成制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成制御装置であって、
前記画像解析部は、前記変更された画像形成媒体の使用を想定して前記判定を行い、
前記画像形成制御部は、前記判定に基づいて黄のインクの階調値を調整して前記画像形成ジョブを生成する画像形成制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成制御装置であって、
前記画像形成制御部は、前記線画像に近づくほど前記調整の程度を大きくする画像形成制御装置。
【請求項6】
黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、
前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部と、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成制御装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成を実行させるための画像形成装置を制御する画像形成制御方法であって、
前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、
前記画像形成制御方法は、
前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析工程と、
前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援工程と、
前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御工程と、
を備える画像形成制御方法。
【請求項8】
複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成装置に画像形成を実行させるための画像形成制御装置を制御する画像形成制御プログラムであって、
前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、
前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析部、
前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援部、及び
前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御部として前記画像形成装置を機能させる画像形成制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラムに関し、特に、画像の滲みを抑制する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、減法混色のCMY色空間(又はCMYK色空間)のインクで画像を再現するものがある。このような画像形成装置では、Yのインクの吐出後にMやCのインクが重ねて吐出された場合には、未定着のYのインクとMやCのインクが混じり合って滲みが生じるという問題があった(特許文献1)。このような問題に対して、特許文献1は、色境界に沿った所定の領域がインクの撃ち込まれない、いわゆる白抜きとして滲みを抑制する技術を提案している。一方、速乾性のインクを使用すると高画質のカラー画像を実現する一方、モノクロ印字の画像が紙の繊維に沿って滲み、紙の繊維に沿ったモノクロ印字の滲みを抑制するインクを使用するとカラー画像において滲みが発生するというトレードオフの問題があった(特許文献2)。このような問題に対して、特許文献2は、カラー印字用の複数色分のヘッドと、文字印字用のヘッドとを印刷データに応じて切り替えて使用する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-146355号公報
【文献】特開平4-158049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、滲みが少ない印刷用紙では過度な白抜きとなって画質の劣化の要因となる可能性があるという問題があった。一方、特許文献2は、ヘッドを複数備える必要があるので、ハードウェアの変更に伴う実装コストの問題があった。このような問題に対して、本願発明者は、新たな着眼点で問題点の解決を試みた。すなわち、物理現象としての滲みを抑制するための技術が従来から提案されているが、ユーザー視点に立って滲みの発生に対処する方法を新たに創作した。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザー視点に立って滲みの発生に対処する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成を実行させるための画像形成装置を制御する画像形成制御装置を提供する。前記画像形成制御装置は、前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、前記画像形成制御装置は、前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析部と、前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援部と、前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御部とを備える。
【0007】
本発明の画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部と、前記画像形成制御装置とを備える。
【0008】
本発明は、複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成を実行させるための画像形成装置を制御する画像形成制御方法を提供する。前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、前記画像形成制御方法は、前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析工程と、前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援工程と、前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御工程とを備える。
【0009】
本発明は、複数の画像形成媒体から特定の画像形成媒体を選定し、前記特定の画像形成媒体上に入力画像データに基づいて画像形成装置に画像形成を実行させるための画像形成制御装置を制御する画像形成制御プログラムを提供する。前記画像形成装置は、黒(K)と黄(Y)とを含む複数の色材を使用し、前記複数の色材の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データに基づいて画像形成媒体上に画像を形成する画像形成部と、前記複数の画像形成媒体のうちの少なくとも1つを格納する給紙部とを有し、前記画像形成制御プログラムは、前記入力画像データを解析し、前記入力画像データが相互に境界を形成する黒のインクを使用する線画像と黄のインクを使用する背景画像とを含み、前記線画像の黒の階調値と前記背景画像の黄の階調値の和が所定の閾値以上である場合に、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無をLab色空間において判定する画像解析部、前記滲みが発生すると判定された場合に、予め選択されている画像形成媒体よりも滲みが発生し難いと判断されている画像形成媒体の候補である候補媒体を提示し、前記候補媒体への変更を受け付ける用紙選定支援部、及び前記変更が受け付けられた場合には、前記変更された画像形成媒体を格納する画像形成装置に前記入力画像データから生成された画像形成ジョブを送信する画像形成制御部として前記画像形成装置を機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザー視点に立って滲みの発生に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成システム10の全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るテーブル準備処理の内容を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係るテーブル準備処理の内容を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る媒体管理テーブル及びカラーテーブルを示す説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る印刷処理手順の内容を示すフローチャートである。
【
図6】背景及び文字のLabシミュレーション値の一例を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る滲み低減処理の内容を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態に係る階調値調整方法の内容を示す説明図である。
【
図9】第2実施形態に係る滲み低減処理の内容を示す説明図である。
【
図10】第2実施形態に係る階調値調整方法の内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
B.第2実施形態:
C.変形例:
【0013】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成システム10の全体構成を示す概略構成図である。画像形成システム10は、3台の画像形成装置100(100a~100c)と、パーソナルコンピュータ200と、これらを接続するローカルエリアネットワーク(単にLANとも呼ばれる。)500とを備えている。3台の画像形成装置100a~100cは、機種が相違し、相互に相違する色域及び色再現特性を有している。
【0014】
画像形成装置100は、制御部110と、画像形成部120と、画像読取部130と、記憶部140と、通信インターフェース部150(通信I/Fとも呼ばれる。)と、給紙部170とを備えている。給紙部170は、第1給紙カセット171と、第2給紙カセット172とを備えている。画像読取部130は、原稿から画像を読み取ってRGB画像データである画像データIDを生成し、画像形成部120に送信する。RGB画像データは、デバイス依存(画像読取部130に依存)の画像データである。
【0015】
画像読取部130は、入力プロファイルで定義された特性を有している。入力プロファイルを使用すれば、デバイス依存のRGB画像データである画像データIDをLab色空間の画像データであるLab画像データに変換することができる。これにより、画像形成装置100は、Lab色空間を経由して、たとえばsRGB画像データ等に変換してスキャンデータとして出力することができる。
【0016】
画像形成部120は、出力プロファイルで定義された特性を有している。出力プロファイルを使用すれば、Lab画像データをCMYK色空間の画像データであるCMYK画像データに変換することができる。画像形成部120の特性は、シミュレーションプロファイルでシミュレートすることができる。シミュレーションプロファイルを使用すれば、CMYK画像データをLab画像データに変換することができる。出力プロファイル及びシミュレーションプロファイルは、ルックアップテーブル(LUT)121として構成されている。CMYK画像データは、複数の色材(たとえばCMYK)の各濃度を表す色材階調値を有する色材階調データである。
【0017】
画像形成装置100は、入力プロファイルと出力プロファイルとを組み合わせたデバイスリンクプロファイルを有している。デバイスリンクプロファイルは、複写処理において、色変換処理の負担を軽減させて印刷速度を向上させることができる。なお、出力プロファイルとシミュレーションプロファイルは、不可逆の関係にある。すなわち、出力プロファイルを使用してLab画像データをCMYK画像データに変換し、シミュレーションプロファイルを使用してそのCMYK画像データをLab画像データに変換すると、画像形成部120の特性に起因して変換前後のLab画像データ間において色差ΔEが発生する。
【0018】
画像形成部120は、複写時にはデバイスリンクプロファイルを使用してRGB画像データを変換してCMYK画像データを生成する。CMYK画像データは、画像形成部120で利用可能なCMYKの色材で画像を再現するためのデバイス依存(画像形成部120に依存)の画像データである。画像形成部120は、CMYK画像データに対してRIP処理を実行してビットマップデータであるドットデータを生成する。ドットデータは、CMYKのインクで形成されるドットの形成状態を表すデータである。なお、色材は、CMYKに限定されず、他の複数の色材(たとえばCMYKlclmやCMYK+Orange+Green等)でもよい。
【0019】
画像形成部120は、ドットデータに基づいて印刷媒体(図示せず)に画像を形成して排出する。この例では、パーソナルコンピュータ200から受信した印刷ジョブに基づいて印刷媒体(図示せず)に画像を形成して排出するものとする。ドットデータは、印刷媒体上のドットの形成状態を表すビットマップデータである。印刷媒体は、画像形成媒体とも呼ばれる。
【0020】
パーソナルコンピュータ200は、制御部210と、操作表示部230と、記憶部240とを備えている。制御部210は、画像解析部211と、媒体選定部212とを有している。操作表示部230は、モニタープロファイルで定義される特性を有し、タッチパネルとして機能するディスプレイ(図示せず)や各種ボタンやスイッチ(図示せず)からユーザーの操作入力(単にユーザー入力とも呼ばれる。)を受け付ける。
【0021】
制御部110及び210は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部110及び210は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェースに関連するコントローラ機能を備え、画像形成装置100及びパーソナルコンピュータ200の全体を制御する。
【0022】
記憶部140,240、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部110等が実行する画像形成制御プログラムやデータを記憶する。記憶部240は、操作表示部230のディスプレイ用のICCプロファイル(モニタープロファイル)を格納している。印刷媒体データベース241には、印刷用紙A、印刷用紙B及び印刷用紙Cの滲みレベルテーブルTBの内容と、媒体管理テーブルTMの内容と、プリンタA,B及びCのICCプロファイルが登録されている。
【0023】
図2は、第1実施形態に係るテーブル準備処理(ステップS100)の内容を示すフローチャートである。
図3は、第1実施形態に係るテーブル準備処理の内容を示す説明図である。
図3(a)は、本発明での抑制の対象となる滲みの様子の一例を示している。この例では、イエロー(Y)の背景画像BG1の中に黒(K)の英文字AのテキストT1の線画像が形成されている。この画像の滲みは、テキストT1の線画像を形成するためのKのインクと、背景画像BGを形成するためのYのインクとが混じり合うことによってテキストT1の輪郭のボケとして顕在化している。線画像とは、文字や罫線といった線画として再現される画像とベタ画像とを含んでいる。
【0024】
ステップS110では、画像解析部211は、滲み検出チャート出力処理を実行する。滲み検出チャート出力処理では、画像解析部211は、画像形成装置100の画像形成部120を使用し、記憶部240から読み出された滲み検出用画像データに基づいて滲み検出チャートCH(
図3(b)参照)をプリンタA、B及びCにおいて印刷用紙A、B及びCのそれぞれで形成する。プリンタA、B及びCは、それぞれの既知の計算式を使用してsRGB画像データをLab画像データに変換し、さらに出力プロファイルを使用してLab画像データをCMYK画像データに変換して画像を形成する。
【0025】
滲み検出チャートCHは、有彩色のインク(たとえばYのインク)とKのインクの境界を有するように構成されている。滲み検出チャートCHでは、有彩色のインクの階調値が段階的に相違する一方、Kのインクの階調値が略最高階調値に固定されているパッチを含むものとする。滲み検出チャートCHは、さらに、カラーテーブルCTを生成するための複数のパッチを含んでいる。
【0026】
ステップS120では、滲みレベルテーブル格納処理を実行する。滲みレベルテーブル格納処理では、ユーザーは、画像読取部130に滲み検出チャートCHをセットして滲み検出チャートCHの画像を読み取る。
【0027】
画像解析部211は、画像データIDに基づいてテキストT1の輪郭の近傍の彩度を算出し、輪郭における彩度変化が緩やかに(小さく)なっているときに、滲みの発生を検出することができる。滲みは、彩度ゼロのKのインクと高彩度で高明度Lのインク(たとえばYのインク)とが混じり合うことによって顕著に発生するからである。ただし、滲みは、ユーザーの目視を使用して評価しても良いし、画像解析部211の解析結果とユーザーの目視とに基づいて決定しても良い。
【0028】
滲みの評価は、プリンタA、B及びCのそれぞれで印刷用紙A、B及びCを使用して印刷出力することによって実行される。ただし、印刷用紙A、B及びCの相違に起因する変化と比較して、プリンタA、B及びCの相違に起因する変化が十分に小さい場合には、プリンタA、B及びCの相違を無視しても良い。
【0029】
この例では、印刷用紙A、印刷用紙B及び印刷用紙Cは、プリンタA、B及びCに拘わらず、滲みの発生が少ない順に滲みレベル1と滲みレベル2とに分類されたものとする。具体的には、印刷用紙A及び印刷用紙Bは、滲みレベル1に分類され、印刷用紙Cは、滲みレベル2に分類されたものとする(
図3(b)参照)。滲みレベル1は、滲みレベル2と比較して滲みが発生しにくいレベルである。
【0030】
ユーザーは、画像解析部211による解析結果を使用し、所定の滲みの発生している有彩色のインクの階調値に基づいて閾値を設定する。画像解析部211は、画像形成装置100毎にYのインクの階調値として閾値を設定する。具体的には、ユーザーは、画像形成装置100aにおいて、たとえば印刷用紙Aに対して240の閾値を設定し、印刷用紙Bに対して230の閾値を設定し、印刷用紙Cに対して200の閾値を設定したものとする(
図3(b)参照)。ただし、プリンタA、B及びCの相違に起因する階調値の変化が十分に小さい場合には、プリンタA、B及びCの相違を無視しても良い。この例では、画像解析部211は、プリンタA、B及びCの相違を無視して閾値を設定したものとする。
【0031】
ステップS130では、媒体選定部212は、媒体データベース格納処理を実行する。媒体データベース格納処理では、媒体選定部212は、3台の画像形成装置100a,100b及び100cに対して、格納している印刷用紙の種類を問い合わせる。媒体選定部212は、3台の画像形成装置100a,100b及び100cのそれぞれに格納されている印刷用紙の種類をパーソナルコンピュータ200に送信する。パーソナルコンピュータ200は、各画像形成装置100に格納されている印刷用紙を媒体管理テーブルTMに登録する。3台の画像形成装置100a,100b及び100cは、それぞれプリンタA,プリンタB及びプリンタCとも呼ばれる。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る媒体管理テーブルTM及びカラーテーブルCTを示す説明図である。
図4(a)は、媒体管理テーブルTMを示している。
図4(b)は、カラーテーブルCTを示している。媒体管理テーブルTMは、プリンタA,プリンタB及びプリンタCのそれぞれに格納されている印刷用紙の種類を格納しているテーブルである。
【0033】
媒体管理テーブルTMによれば、プリンタAは、第1給紙カセット171及び第2給紙カセット172に印刷用紙Cを格納している。さらに、プリンタBは、第1給紙カセット乃至第4給紙カセットにそれぞれ印刷用紙C、印刷用紙C、印刷用紙B及び印刷用紙Aを格納している。プリンタCは、第1給紙カセット乃至第3給紙カセットにそれぞれ印刷用紙C、印刷用紙C及び印刷用紙Bを格納している。
【0034】
ステップS140では、画像解析部211は、カラーテーブル格納処理を実行する。カラーテーブル格納処理では、プリンタA、B及びCは、画像読取部130で滲み検出チャートCHを読み取って生成された画像データIDを生成する。各画像読取部130は、入力プロファイルを使用し、デバイス依存のRGB画像データである画像データIDを各Lab画像データに変換する。
【0035】
これにより、画像解析部211は、各画像形成装置100でのCMYK画像データの色の再現状態をLab色空間でシミュレートするためのシミュレーションプロファイルをカラーテーブルCTとして取得することができる。各画像形成装置100は、カラーテーブルCTをパーソナルコンピュータ200に送信する。
【0036】
画像解析部211は、各画像形成装置100と印刷用紙と紐付けてカラーテーブルCTを記憶部240の印刷媒体データベース241に登録し、各画像形成装置100に送信する。各画像形成装置100は、記憶部140の印刷媒体データベース(図示略)に印刷用紙と紐付けてカラーテーブルCTを格納する。これにより、パーソナルコンピュータ200及び3台の画像形成装置100は、各画像形成装置100のカラーテーブルCTをそれぞれ共有することができる。
【0037】
ユーザーは、パーソナルコンピュータ200において、グラフィックソフトを使用して予め作業用の色空間として、たとえばsRGB、AdobeRGB及びCMYK(Japan Color 2001 Coated等)のいずれかを選定して印刷対象となる所望の印刷対象画像を生成する。この例では、ユーザーは、sRGB色空間を選択して作業を実行するものとする。この場合、パーソナルコンピュータ200は、操作表示部230のディスプレイ用のモニタープロファイルを使用し、所望の印刷対象画像を表す入力画像データとしてのsRGB画像データを変換してディスプレイ(図示略)に表示する。
【0038】
図5は、第1実施形態に係る印刷処理手順(ステップS200)の内容を示すフローチャートである。
図6は、背景及び文字のLabシミュレーション値の一例を示す説明図である。本印刷処理手順は、印刷対象画像を表す画像データに基づいて滲みの発生を予測し、その滲みの発生に対する対応策をユーザーに提供することができる。本ルーチンは、操作表示部230に印刷設定画面を表示させることによって起動される。
【0039】
ステップS210では、パーソナルコンピュータ200の制御部210は、画像データ取得処理を実行する。画像データ取得処理では、制御部210は、操作表示部230への印刷設定画面の表示に応じてグラフィックソフトからsRGB画像データを取得する。この例では、グラフィックソフトは、画像形成装置100a(プリンタA)の第1給紙カセット171の印刷用紙Cを初期設定として選択しているものとする。
【0040】
ステップS220では、画像解析部211は、背景画像のLabシミュレーション値を取得する。画像解析部211は、たとえばKのインクで形成される文字その他の線画像に隣接する画像領域である背景画像を原画像から抽出する。画像解析部211は、プリンタAのシミュレーションプロファイルとして機能するカラーテーブルCTを使用し、sRGB画像データである背景画像をLab画像データに変換する(
図6(a)のテーブルGV参照)。
【0041】
この例では、背景画像は、sRGB画像データにおいてR階調値及びG階調値がいずれも255であり、CMYK色空間においてY階調値のみが255のイエローのベタ画像である。イエローのベタ画像は、Kのインクと滲みを生じやすい典型的なインクである。背景画像は、Lab色空間において、Labシミュレーション値の明度Lが95、a値がゼロ、そしてb値が93である(
図6(a)参照)。
【0042】
ステップS230では、画像解析部211は、文字画像のLabシミュレーション値を取得する。画像解析部211は、たとえばKのインクで形成される文字その他の線画像領域である文字画像を原画像から抽出する。画像解析部211は、プリンタAのシミュレーションプロファイルとして機能するカラーテーブルCTを使用し、RGB画像データである文字画像をLab画像データに変換する(
図6(b)のテーブルTV参照)。
【0043】
この例では、文字画像は、RGB色空間においてRGB階調値がいずれもゼロであり、CMYK色空間においてK階調値のみが255の黒のベタ画像である。黒のベタ画像は、イエローのインクと滲みを生じやすい典型的なインクである。文字画像は、Lab色空間において、Labシミュレーション値の明度Lが18であり、他の値がゼロである(
図6(b)参照)。
【0044】
ステップS240では、画像解析部211は、CMYK値の差分を取得する。CMYK値の差分は、背景画像のY階調値と文字画像のK階調値の差である。ステップS250では、画像解析部211は、文字画像が黒のベタであるとともに、CMYK値の差分が予め設定されている閾値Th1未満であるか否かを判断する。
【0045】
画像解析部211は、文字画像が黒のベタであるとともに、階調値差が閾値Th1未満である場合には、処理をステップS260に進め、他の場合には、処理をステップS280に進める。この例では、文字画像の階調値は255なので黒のベタであると判断され、階調値差(0=255-255)が閾値Th1(この例では、たとえば10)未満なので、画像解析部211は、処理をステップS260に進める。
【0046】
ステップS260では、画像解析部211は、背景画像の明度Lが閾値Th2以上であるか否かを判断する。閾値Th2は、視覚的に望ましくないとして予め設定されている滲みの発生の有無を判断するための閾値である。背景画像の明度Lが高いと、黒のインクの滲みが目立ちやすいからである。閾値Th2は、初期設定として選択されている画像形成装置100a(プリンタA)の印刷用紙Cを想定して決定されている。
【0047】
ただし、閾値Th2は、プリンタA、B及びCの相違に起因する変化が十分に小さい場合には、印刷用紙Cのみを想定して決定することもできる。この例では、プリンタA、B及びCの相違に起因する変化が十分に小さいものとする。
【0048】
画像解析部211は、背景画像の明度Lが閾値Th2以上である場合には、処理をステップS270に進め、背景画像の明度Lが閾値Th2未満である場合には、処理をステップS280に進める。Lab色空間において視覚的に望ましくないか否かを決定するのは、Lab色空間が、デバイス非依存の色空間(CIE L*a*b*色空間)であり、知覚的均等性を重視して人間の視覚を近似するように設計されているからである。
【0049】
図7は、第1実施形態に係る滲み低減処理(ステップS270)の内容を示すフローチャートである。ステップS271では、画像解析部211は、印刷用紙情報取得処理を実行する。印刷用紙情報取得処理では、画像解析部211は、現時点で選択されている印刷用紙の情報を取得する。この例では、前述のようにプリンタAの第1給紙カセット171が初期設定として選択されているものとする。第1給紙カセット171は、印刷用紙Cを格納している。
【0050】
ステップS272では、画像解析部211は、滲み判定処理を実行する。滲み判定処理では、画像解析部211は、印刷用紙Cへの画像形成を想定して滲みの発生の可能性を予測する。予測方法は、閾値Th2が印刷用紙CのY閾値に設定されている点を除いて、ステップS240の判定方法と同一である。画像解析部211は、滲みが発生すると判定した場合には、処理をステップS274に進め、滲みが発生しないと判定した場合には、処理をステップS280(
図5参照)に進める(ステップS273)。
【0051】
ステップS274では、用紙選定支援部212は、印刷用紙検索処理を実行する。印刷用紙検索処理では、用紙選定支援部212は、印刷媒体データベース241から印刷用紙Cよりも滲みレベルが上位の印刷用紙、すなわち予め選択されている印刷用紙よりも滲みが発生し難いと判断されている印刷用紙を検索する。この例では、印刷用紙Cの滲みレベルは、2なので滲みレベルが1の印刷用紙が検索される。この例では、用紙選定支援部212は、プリンタBの印刷用紙B(第3給紙カセット)と、プリンタBの印刷用紙A(第4給紙カセット)と、プリンタCの印刷用紙B(第3給紙カセット)とを検索したものとする。
【0052】
ステップS275では、用紙選定支援部212は、対応方法表示処理を実行する。対応方法表示処理では、用紙選定支援部212は、滲みに関する処理の選択肢を操作表示部230に表示する。滲みに関する処理の選択肢には、印刷用紙の変更と黄(Y)の階調値の調整とがある。
【0053】
ステップS276では、ユーザーは、オーバーライド、すなわち滲み低減処理をスキップするか否かを判断する。ユーザーが求める印刷品質を考慮し、必ずしも滲み低減処理が要請されるとは限られないからである。オーバーライドが選択された場合には、処理がステップS280(
図5参照)に進められ、オーバーライドが選択されなかった場合には、処理がステップS277に進められる。
【0054】
ステップS277では、用紙選定支援部212は、印刷用紙選択処理を実行する。印刷用紙選択処理では、用紙選定支援部212は、代替印刷用紙の候補である候補媒体として、ステップS274で検索された印刷用紙(プリンタBの印刷用紙A及び印刷用紙B並びにプリンタCの印刷用紙B)と、印刷用の変更に伴うコストを操作表示部230に表示する。この例では、ユーザーは、プリンタBの第4給紙カセットに格納されている印刷用紙Aを選択したものとする。この例では、プリンタBの印刷用紙Aは、特定の画像形成媒体とも呼ばれる。
【0055】
ステップS278では、画像解析部211は、プリンタBの出力プロファイルを使用し、閾値Th2を印刷用紙AのY閾値に設定し、改めて滲み判定処理を実行する。画像解析部211は、黄(Y)の階調値を調整すると滲みを抑制できる一方、背景画像の色が薄くなる点を操作表示部230に表示し、黄(Y)の階調値の調整を実行するか否かをユーザーに問い合わせる。この例では、ユーザーは、黄(Y)の階調値の調整を選択したものとする。一方、操作表示部230は、印刷用紙Aへの変更で、背景画像の色が薄くなる程度が緩和されたことを表示することもできる。
【0056】
図8は、第1実施形態に係る階調値調整方法の内容を示す説明図である。滲み低減処理では、制御部210は、画像形成制御部として機能し、背景画像のイエローのインクをY閾値に相当する制限値(240)を超えないようにCMYK画像データを調整する。インク吐出量の制限は、様々な方法で実現することができる。
【0057】
具体的には、制御部210は、たとえば
図8(a)乃至
図8(c)に示される第1乃至第3の調整方法で調整することができる。第1の調整方法は、調整前階調値が240を超えるときに一律に階調値を240とする方法である。第2の調整方法は、調整前階調値に所定の係数を乗じて調整前階調値が255となるときに調整後階調値が240となるように線形に調整する方法である。第3の調整方法は、スプライン曲線等を使用して非線形に調整前階調値の最大値と調整後階調値の最大値240が一致するように調整する方法である。
【0058】
ステップS280では、制御部210は、プリンタBの出力プロファイルを使用してYの階調値が調整されたCMYK画像データを含む印刷ジョブ(画像形成ジョブとも呼ばれる。)をプリンタBに送信する。プリンタBは、CMYK画像データを含む印刷ジョブに基づいて印刷用紙A上に吐出して画像を形成して印刷出力を実行する。なお、制御部210は、Yの階調値が調整されたCMYK画像データの代わりに、sRGB画像データとYの階調値をプリンタBで調整するための制御データを印刷ジョブに含めることもできる。
【0059】
このように、第1実施形態に係る画像形成装置100は、Kのベタのテキストを再現するインクと背景画像を再現するイエローのインクとの間の滲みの発生の可能性をYの階調値に基づいて予測し、滲みを抑制する対応策をユーザーに提示することができる。これにより、本画像形成装置100は、滲みが発生した画像をユーザーの意図に反して出力することを抑制することができる。
【0060】
さらに、本画像形成装置100は、滲みの抑制のための印刷用紙の存在を知らせ、印刷用紙の変更に伴うコストの増減を知らせることもできる。さらに、本画像形成装置100は、背景画像の画像濃度を薄くすることによって、滲みを抑制するという選択肢をユーザーに提示することもできる。このように、画像形成システム10は、ユーザー視点に立って滲みの発生に対処することを可能としている。
【0061】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態に係る滲み低減処理の内容を示す説明図である。
図10は、第2実施形態に係る階調値調整方法の内容を示す説明図である。第2実施形態に係る滲み低減処理は、インク吐出量の制限方法が第1実施形態に係る滲み低減処理と相違し、他の構成において共通している。
【0062】
第2実施形態に係る滲み低減処理は、Kのインクで再現される線画像との距離に応じてYのインク吐出量の調整量を変化させている点で第1実施形態に係る滲み低減処理と相違する。
【0063】
具体的には、画像形成部120は、Kのベタの線画像であるAの文字に最も近い領域R1においては、
図10(a)に示される調整方法でYのインク吐出量を最大階調値240となるように調整し、Aの文字に2番目に近い領域R2においては、
図10(b)に示される調整方法でYのインク吐出量を最大階調値245となるように調整し、Aの文字に3番目に近い領域R3においては、
図10(c)に示される調整方法でYのインク吐出量を最大階調値250となるように調整し、領域R3の外側である領域R4ではインク量を調整していない(
図10(d)参照)。
【0064】
このように、第2実施形態に係る画像形成装置100は、Kのインクで再現される線画像との距離に応じてYのインク吐出量の調整量を変化、すなわち線画像に近づくほど調整の程度を大きくさせることができる。これにより、本画像形成装置100は、滲みを抑制することができる一方、背景画像の濃度低下を部分的に制限して背景画像の濃度低下を抑制することができる。
【0065】
C.変形例:
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0066】
変形例1:上記実施形態では、文字画像が黒のベタであるとともに、背景画像のY階調値と文字画像のK階調値の差である階調値差が予め設定されている閾値未満である場合に滲み発生の可能性があると判断している。しかしながら、滲み発生の可能性がある場合は、文字画像が黒のベタであるに限定されない。具体的には、画像解析部は、K階調値とY階調値の和が所定の閾値以上の場合に滲み発生の可能性があると判断するように構成されていてもよい。
【0067】
変形例2:上記実施形態では、Kのインクで再現される線画像とYのインクを使用して再現される背景画像の輪郭領域において発生する滲みを対象として、明度LとYのインクの階調値とを使用して視覚的に目立つ滲みの発生を予測している。しかしながら、滲みは、KのインクとYのインクの間の滲みに限定されない。滲みは、色差の大きな画像間で目立つことを考慮し、たとえば評価関数J(
図9(d)参照)とYのインクの階調値とを使用して色差に基づいて目立つ滲みが発生すると予測することができる。
【0068】
評価関数Jは、Lab色空間のLの階調差δLの2乗に係数αを乗じた第1項と、Lab色空間のaの階調差δaの2乗に係数βを乗じた第2項と、Lab色空間のbの階調差δbの2乗に係数γを乗じた第3項とを有している。Lの階調差δL、aの階調差δa及びbの階調差δbは、線画像と背景画像の色差ΔE(偏差)である。このように、本発明は、視覚的に望ましくない滲みの発生の有無をLab色空間において予め設定されている点でもユーザー視点に立って滲みの発生に対処することに寄与している。
【0069】
変形例3:上記実施形態では、パーソナルコンピュータから印刷ジョブを受信して印刷する構成が例示されているが、本発明は、複写処理にも適用可能である。複写処理では、一の画像形成装置は、印刷対象のカラー画像である原画像が表されている原稿を読み取って画像データIDを生成し、他の画像形成装置のカラーテーブルCTや滲みレベルテーブルTBを使用して他の画像形成装置の印刷用紙の代替使用を提案することもできる。なお、文字画像が黒のベタであるか否かは、たとえばスキャン画像では、略最高階調値、すなわちK階調値が250以上であるか否かで判断されるものとする。
【0070】
変形例4:上記実施形態では、パーソナルコンピュータが画像形成制御装置として構成され、画像形成装置で入力画像データに基づいて画像形成制御方法を実行させているが、所定の画像形成制御プログラムをインストールして画像形成装置が画像形成制御装置として機能するように構成してもよい。
【0071】
変形例5:上記実施形態では、CMYKのインクが使用されているが、CMYKに限定されず、特色(スポットカラーや特練色)を含んでいてもよい。さらに、本発明は、KとYを含む2色印刷にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 画像形成システム
100 画像形成装置
110,210 制御部
120 画像形成部
130 画像読取部
140,240 記憶部
150 通信インターフェース部
170 給紙部
171 第1給紙カセット
172 第2給紙カセット
200 パーソナルコンピュータ
210 制御部
230 操作表示部
241 印刷媒体データベース