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特許7227565親水化コーティング剤組成物、および親水化物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】親水化コーティング剤組成物、および親水化物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20230215BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230215BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230215BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D7/20
C09D5/00 Z
C08F220/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019099941
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193280
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 直
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-27134(JP,A)
【文献】特開2017-105936(JP,A)
【文献】特開平6-212146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C08F 220/00-220/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体(A)および溶剤(B)を含有する親水化コーティング剤組成物であって、
前記アクリル共重合体(A)は、式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(a1)と、式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、Xは酸素原子または-NH-、Mは水素イオンを除く一価のカチオンである。)で表される単量体(a2)と、式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(a3)と、式(4):
【化4】
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rは炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)で表される単量体(a4)を含有する単量体混合物から形成される共重合体であり、
前記単量体混合物中の、前記単量体(a1)の割合が0.5~7質量%であり、前記単量体(a2)の割合が5~35質量%であり、前記単量体(a3)の割合が10~50質量%であり、前記単量体(a4)の割合が25~75質量%であり、
前記単量体(a3)に対する前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計の質量比[{(a2)+(a4)}/(a3)]が、0.5以上10以下であることを特徴とする親水化コーティング剤組成物。
【請求項2】
前記単量体混合物が、さらに、二官能性(メタ)アクリレート系単量体(a5)を含有し、前記単量体混合物中の、前記単量体(a5)が0.01~1質量%であることを特徴とする、請求項1記載の親水化コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記溶剤(B)が水を含有し、前記溶剤(B)中、前記水の割合が50質量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の親水化コーティング剤組成物。
【請求項4】
基材上に、請求項1~3のいずれかに記載の親水化コーティング剤組成物から形成される親水化膜を有することを特徴とする親水化物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化コーティング剤組成物、および親水化物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プールや海水浴などに使用される水中用ゴーグルは、使用中に曇りが生じ視認性が低下する場合がある。曇りが生じた場合、ゴーグルの中に水を入れて一時的に曇りを取る事ができるが、その際にゴーグル面に水滴が付着することで視認性が低下し、ユーザに対して正常な視野が提供されなくなる。したがって、このような物品は、ゴーグル面の水滴を除去する機能を有することが好ましい。
【0003】
例えば、透明な基材の表面に導電性コーティングを施し、該コーティングに通電して付着水滴を乾燥する方法が知られている。しかしながら、透明な基材の表面に導電性コーティングを施し、該コーティングに通電して付着水滴を乾燥する方法は短絡などの事故が生じやすく危険である。また、このような物品では、駆動のために電力が必要であったり、構成が複雑であったりするため、ランニングコストがかかる。そのため、安全かつ簡便な方法が求められている。
【0004】
特許文献1~には、物品の表面に設けられた親水化膜(親水性の塗膜)が開示されている。親水化膜で物品の表面を覆うことにより、物品の表面におけるに付着した水滴を速やかに水膜へ変化させることで、視認性の低下を簡単かつ効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-57690号公報
【文献】特開2016-27134号公報
【文献】特開2018-150470号公報
【文献】特開2017-165878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のある、親水性基および加水分解性アルコキシシリル基を有するアクリル樹脂からなる親水化膜では、中間層を必要とするために、塗装時の作業性が煩雑になる懸念があった。また、特許文献2~4で具体的に開示された、特定のアクリル共重合体と界面活性剤からなる親水化膜では、中間層を必要としない一方で、繰り返して水洗した際、アクリル共重合体の親水性が低いため、界面活性剤の流出によって、膜表面の親水性が低下することにより、水滴が発生し、視認性が低下する懸念があった。
【0007】
また、通常、上記のような親水化膜には、上記の特許文献3および4で開示されているように、基材に対する密着性も要求される。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、基材への良好な密着性を有し、かつ水洗浄後においても親水性を持続できる親水化膜が形成できる親水化コーティング剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、アクリル共重合体(A)および溶剤(B)を含有する親水化コーティング剤組成物であって、
前記アクリル共重合体(A)は、式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(a1)と、式(2):
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、Xは酸素原子または-NH-、Mは水素イオンを除く一価のカチオンである。)で表される単量体(a2)と、式(3):
【化3】
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(a3)と、式(4):
【化4】
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rは炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)で表される単量体(a4)を含有する単量体混合物から形成される共重合体であり、
前記単量体混合物中の、前記単量体(a1)の割合が0.5~7質量%であり、前記単量体(a2)の割合が5~35質量%であり、前記単量体(a3)の割合が10~50質量%であり、前記単量体(a4)の割合が25~75質量%であり、
前記単量体(a3)に対する前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計の質量比[{(a2)+(a4)}/(a3)]が、0.5以上10以下である親水化コーティング剤組成物、に関する。
【0010】
また、本発明は、基材上に、前記親水化コーティング剤組成物から形成される親水化膜を有する親水化物品、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の親水化コーティング剤組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0012】
本発明の親水化コーティング剤組成物は、アクリル共重合体(A)および溶剤(B)を含有し、前記アクリル共重合体(A)は、特定量の、前記式(1)で表される単量体(a1)と、前記式(2)で表される単量体(a2)と、前記式(3)で表される単量体(a3)と、前記式(4)で表される単量体(a4)含有する。とくに、本発明の親水化コーティング剤組成物は、特定量の前記単量体(a1)~(a4)を含有することに加え、疎水性成分である前記単量体(a3)に対する、親水性成分である前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計の質量比[{(a2)+(a4)}/(a3)]が特定比であることにより、アクリル共重合体(A)の親水性と疎水性のバランスが適正化できることが推定されるため、本発明の親水化コーティング剤組成物から形成される親水化膜は、基材への良好な密着性を有し、かつ親水性を持続できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の親水化コーティング剤組成物は、アクリル共重合体(A)および溶剤(B)を含有する。
【0014】
<アクリル共重合体(A)>
本発明のアクリル共重合体(A)は、式(1)で表される単量体(a1)と、式(2)で表される単量体(a2)と、式(3)で表される単量体(a3)と、式(4)で表される単量体(a4)を含有する単量体混合物から形成される共重合体である。
【0015】
<単量体(a1)>
本発明の単量体(a1)は、下記式(1)で表されるN-メチロール基またはN-メチロールエーテル基を有する単量体であり、脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応により共重合体に架橋構造を形成し、親水化膜塗膜強度を高める機能を有する。単量体(a1)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化5】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)
【0016】
前記式(1)中、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。前記式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、n-ブチル基が好ましい。
【0017】
前記単量体(a1)において、前記式(1)で表される化合物としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応の反応性の観点から、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0018】
<単量体(a2)>
本発明の単量体(a2)は、下記式(2)で表されるスルホン酸基を有する単量体の塩であり、親水化膜の親水性を高める機能を有する。単量体(a2)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化6】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2以上6以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、Xは酸素原子または-NH-、Mは水素イオンを除く一価のカチオンである。)
【0019】
前記式(2)中、炭素数2以上6以下の直鎖または分岐のアルキレン基としては、例えば、直鎖エチレン基、分岐エチレン基、直鎖プロピレン基、分岐プロピレン基、直鎖ブチレン基、分岐ブチレン基、直鎖ペンチレン基、分岐ペンチレン基、直鎖へキシレン基、分岐へキシレン基などが挙げられる。また、前記式(2)中、水素イオンを除く一価のカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジメチルオキシエチルアンモニウムイオン、ジエチルオキシエチルアンモニウムイオン、アニリニウムイオン、α-ナフチルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、2,6-ルチジニウムイオン、イミダゾリウムイオンなどが挙げられる。親水化膜の親水性を高めるという観点から、Rは、炭素数2以上4以下の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、直鎖エチレン基、直鎖プロピレン基、分岐ブチレン基であることがより好ましく、また、Mは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであることが好ましい。
【0020】
前記単量体(a2)において、前記式(2)で表される化合物としては、例えば、2-(メタアクリロイルオキシ)エタンスルホン酸(R=メチル基、R=直鎖エチレン基、X=酸素原子)、3-(メタアクリロイルオキシ)-1-プロパンスルホン酸(R=メチル基、R=直鎖プロピレン基、X=酸素原子)、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸(R=水素原子、R=分岐プロピレン基、X=NH)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(R=水素原子、R=分岐ブチレン基、X=NH)、3-アクリルアミド-2,3-ジメチルブタン-2-スルホン酸(R=水素原子、R=分岐へキシレン基、X=NH)などスルホン酸基をもつビニル化合物と、前記一価のカチオンとの塩が挙げられる。これらの中でも、2-(メタアクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム、3-(メタアクリロイルオキシ)-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸カリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
<単量体(a3)>
本発明の単量体(a3)は下記式(3)で表される(メタ)アクリレート系単量体であり、親水化膜の基材への密着性を高める機能を有する。単量体(a3)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化7】
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)
【0022】
前記式(3)中、炭素数1~4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0023】
前記単量体(a3)において、前記式(3)で表される化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、親水化膜の親水性を高めるという観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
<単量体(a4)>
本発明の単量体(a4)は下記式(4)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体であり、親水化膜の親水性および塗膜強度を高める機能を有する。単量体(a4)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化8】
(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rは炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)
【0025】
前記式(4)中、Rにおいて、炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。前記式(4)中、Rにおいて、炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0026】
前記単量体(a4)において、前記式(4)で表される化合物としては、例えば、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、親水化膜の親水性および塗膜強度を高めるという観点から、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0027】
<単量体(a5)>
前記単量体混合物には、アクリル共重合体(A)を高分子量化させて、親水化膜の塗膜強度を高める観点から、2官能性(メタ)アクリレート系単量体(a5)を含んでいてもよい。2官能性(メタ)アクリレート系単量体(a5)は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記単量体(a5)としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセリンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂変性ジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、前記単量体(a1)~(a4)との相溶性に優れるという観点から、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
前記単量体(a1)の割合は、前記単量体混合物中、0.5~7質量%である。前記単量体(a1)の割合は、塗膜強度を高める観点から、前記単量体混合物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、そして、基材への密着性の低下を抑制する観点から、前記単量体混合物中、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
前記単量体(a2)の割合は、前記単量体混合物中、5~35質量%である。前記単量体(a2)の割合は、親水性を高める観点から、前記単量体混合物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜強度の低下を抑制する観点から、前記単量体混合物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
前記単量体(a3)の割合は、前記単量体混合物中、10~50質量%である。前記単量体(a3)の割合は、基材への密着性を高める観点から、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、そして、親水性の低下を抑制する観点から、前記単量体混合物中、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
前記単量体(a4)の割合は、前記単量体混合物中、25~75質量%である。前記単量体(a4)の割合は、親水化膜の親水性および塗膜強度を高める観点から、前記単量体混合物中、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、そして、親水持続性の低下を抑制する観点から、前記単量体混合物中、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
前記2官能性(メタ)アクリレート系単量体(a5)を使用する場合、前記単量体(a5)の割合は、前記単量体混合物中、0.01~1質量%であることが好ましい。前記単量体(a5)の割合は、塗膜強度を高める観点から、前記単量体混合物中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、塗装性の低下を抑制する観点から、前記単量体混合物中、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
前記単量体(a1)~(a4)の合計の割合、あるいは前記単量体(a1)~(a5)の合計の割合は、前記単量体混合物中、基材への良好な密着性を有し、かつ親水性を持続できる親水化膜を得る観点から、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0035】
前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計に対する前記単量体(a1)の質量比[(a1)/{(a2)+(a4)}]が、0.3以下であることが好ましい。前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計に対する前記単量体(a1)の質量比[(a1)/{(a2)+(a4)}]は、良好な塗膜強度を高める観点から、0.01以上であることが好ましく、そして、親水性を高める観点から、0.2以下であることが好ましく、0.15以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。
【0036】
前記単量体(a3)に対する前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計の質量比[{(a2)+(a4)}/(a3)]が、0.5以上10以下である。前記単量体(a3)に対する前記単量体(a2)と前記単量体(a4)の合計の質量比[{(a2)+(a4)}/(a3)]は、基材への良好な密着性を有し、かつ親水性を持続できる親水化膜を得る観点から、0.8以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、そして、8以下であることが好ましい。
【0037】
<その他の単量体>
前記単量体混合物には、その他の単量体を含むことができる。前記その他の単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(エトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(エトキシ)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート系単量体;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物などのヒドロキシル基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸半エステルなどのカルボキシル基含有単量体およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジンなどの窒素原子含有ビニル系単量体などが挙げられる。前記その他の単量体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<アクリル共重合体(A)の製造方法>
アクリル共重合体(A)は、前記単量体混合物を共重合することにより得られる。共重合体の構造としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれの構造であってもよいが、親水性をはじめとする親水性コーティング剤組成物の効果を向上させることができると共に、親水化コーティング剤組成物を容易に調製することができるという観点からランダム共重合体が好ましい。共重合体を得るための重合方法としては、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法などの公知の各種重合方法が採用されるが、特に工業的な生産性の容易さ、多義にわたる性能面より、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、通常の塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などが採用されるが、重合後にそのまま親水性コーティング剤組成物として使用することができる点で溶液重合法が好ましい。
【0039】
前記溶液重合法に用いる重合溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのアルコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、水、などが使用される。前記重合溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記重合溶剤は、後述する溶剤(B)として用いることができる。
【0040】
前記溶液重合法において、単量体混合物と重合反応に使用する重合溶剤の合計100質量部中、重合発熱を抑制して工業的生産を行い易くする観点から、単量体混合物は60質量部以下に調製することが好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
【0041】
前記ラジカル重合法における開始剤としては、一般的に使用される有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエートレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカネートなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリルなどが挙げられる。前記開始剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、反応容器中に滴下しながら重合を行うことが重合発熱を制御しやすくなる点で好ましい。重合反応を行う温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で好ましくは30~150℃、より好ましくは40~100℃である。
【0042】
<溶剤(B)>
本発明の親水化コーティング剤組成物には、粘度や塗装性、親水化膜の平滑性の改良のため、溶剤(B)を含有する。前記溶剤(B)は、アクリル共重合体(A)などの成分を、溶解または分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶剤であれば、特に制限されるものではない。前記溶剤(B)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
前記溶剤(B)としては、例えば、水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルーテル、ジエチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどが挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。前記アミド系溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。前記エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらの中でも、前記溶剤(B)に水を含んでいることが好ましい。
【0044】
前記溶剤(B)として水を使用する場合、溶剤(B)中、水の割合は、塗工液の安全性を高める観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明の親水化コーティング剤組成物には、前記式(1)で表される単量体の脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応を促進させる観点から、硬化触媒を使用してもよい。前記硬化触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸などの有機スルホン酸やリン酸モノアルキルエステル及びリン酸ジアルキルエステルなどの酸性リン酸エステルなどが挙げられる。前記硬化触媒の使用量は、前記アクリル共重合体(A)100質量部に対して、0.1~10質量部程度である。
【0046】
<その他の成分>
本発明の親水化コーティング剤組成物には、その他の成分として、必要に応じ、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤などの界面活性剤;シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アセチレン系レベリング剤などのレベリング剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの慣用の各種添加剤を配合することができる。前記その他の成分の添加量は、それぞれの添加剤につき慣用的な添加量で配合することができるが、通常、前記アクリル共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下程度である。
【0047】
<親水化コーティング剤組成物の製造>
親水化コーティング剤組成物は、例えば、アクリル共重合体(A)を塗装に適した固形分および粘度に調整することを目的として、前記溶剤(B)を加えて溶解、分散または希釈をすることによって製造することができる。塗装方法により、塗装に適した固形分および粘度は異なるが、ディップコート法の場合、前記アクリル共重合体(A)は、親水化コーティング剤組成物中、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
<親水化物品>
本発明の親水化物品は、前記親水化コーティング剤組成物を、通常の塗料において行われる塗装方法により基材に塗装し、加熱硬化することによって、基材表面に親水化膜が形成されたものである。なお、塗装直後の前記親水化コーティング剤組成物中に含まれる溶剤を揮発乾燥させることを目的として、加熱硬化の工程の前に乾燥工程を設けることができる。
【0049】
前記基材としては、その種類は問わず、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチックなどのフィルムやシート、および立体形状の成形品などが挙げられ、基材の形状が制限されることは無い。前記プラスチックとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0050】
前記基材への塗装の際には、基材に対する親水化コーティング剤組成物の濡れ性を高め、はじきを防止する目的で、塗装前における基材表面の付着異物除去を行うことが好ましい。当該方法としては、高圧エア、イオン化エアによる除塵;洗剤水溶液、アルコール溶剤による超音波洗浄;アルコール溶剤などを使用したワイピング;紫外線、オゾンによる洗浄などが挙げられる。また、塗装方法としては、例えば、グラビア法、ロールコート法、ディップコート法、ハケ塗り法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、スピンコート法などが挙げられる。
【0051】
前記加熱硬化の温度は、通常、60~150℃の温度で5~60分間、望ましくは70~130℃の温度で10~40分間である。また、前記乾燥は、通常、20~50℃の温度で0.5~5分間の条件下で行われる。但し、基材がプラスチックである場合には、硬化温度をプラスチックの熱変形温度以下に設定することが好ましい。
【0052】
前記親水化膜の膜厚は、良好な親水性と塗膜外観を得るために0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。膜厚が0.5μmより薄い場合には塗膜の親水性が低下する傾向にあり、20μmを超える場合には塗膜外観が悪くなる傾向にある。
【0053】
前記親水化物品は、ゴーグル、窓、鏡などに用いることが好ましい。具体的なゴーグルとしては、例えば、スイミングゴーグル、ダイビングゴーグルなどが挙げられる。
【実施例
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
<アクリル共重合体(A)の合成>
攪拌装置、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に、溶剤(B)としてプロピレングリコールモノメチルエーテル260質量部と、単量体(a1)としてN-ブトキシメチルアクリルアミド2質量部、単量体(a2)として2-(メタアクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム30質量部、単量体(a3)としてメチルアクリレート27.9質量部、単量体(a4)としてN,N-ジメチルアクリルアミド40質量部、および単量体(a5)としてポリエチレングリコール-ジメタクリレート(商品名:ブレンマー PDE-200、日油(株)社製)0.1質量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら55℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてt-ヘキシルペルオキシネオデカネートの炭化水素希釈品(商品名:パーヘキシルND、日油(株)社製)0.5質量部を、溶剤(B)としてプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部に溶解させたものを3時間かけて滴下した。さらに5時間重合を行った後、70℃に昇温し、その温度で1時間重合を行って、共重合体の濃度が25質量%の実施例1のアクリル共重合体(A)の溶液を得た。
【0056】
<親水化コーティング剤組成物の調製>
上記で得られた実施例1のアクリル共重合体(A)の溶液に、溶剤(B)としてプロピレングリコールモノメチルエーテル650質量部、および水950質量部を加え、硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸1質量部と、レベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:KF-351A、信越化学工業(株)社製)1質量部とを混合し、親水化コーティング剤組成物を得た。
【0057】
<親水化物品の作製>
上記で得られた親水化コーティング剤組成物を、ポリカーボネート基材(5cm×5cm×1mm、商品名:ユーピロンシートNF-2000、MGCフィルシート(株)社製)にバーコーターを用いて塗布した。そして、ポリカーボネート基材を、120℃で30分間の条件下で加熱硬化することにより、ポリカーボネート基材上に、厚さが約3μmの親水化膜を有する親水化物品(試験片)を作製した。
【0058】
上記で得られた試験片を用い、下記の(1)~(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
<(1)密着性の評価>
上記で得られた試験片の親水化膜に1mm幅間隔で縦横の切り込みを入れて碁盤目100個マスを作り、セロハンテープを完全に密着させた。セロハンテープを瞬間的に引き離し、目視により碁盤目の状態を確認し、次の3段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:剥離がまったく見られない。
○:剥離が僅かに見られる。
×:剥離が明らかに見られる。
【0060】
<(2)親水性の評価>
上記で得られた試験片を30℃の塩素濃度が1ppmになる様に調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に1時間浸漬後、1分間試験片を縦置きした後、水に濡れている面積を目視にて評価した。判定基準は以下のとおりである。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:水に濡れている部分の面積が80%以上である。
○:水に濡れている部分の面積が60%以上80%未満である。
×:水に濡れている部分の面積が60%未満であり、水のはじきが見られる。または、塗膜が溶解している。
【0061】
<(3)親水持続性の評価>
上記で得られた試験片を30℃の塩素濃度が1ppmになる様に調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に1時間浸漬後、試験片を乾燥させた。この操作を9回実施した。その後、30℃の1ppm塩素水に1時間浸漬後、1分間試験片を縦置きした後、水に濡れている面積を目視にて評価した。判定基準は以下のとおりである。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:水に濡れている部分の面積が80%以上である。
○:水に濡れている部分の面積が60%以上80%未満である。
×:水に濡れている部分の面積が60%未満であり、水のはじきが見られる。または、塗膜が溶解している。
【0062】
<(4)塗膜強度の評価>
上記で得られた試験片を流水で濡らしながら表面を指の腹で10秒間こすり洗いした後、塗膜外観を目視にて評価した。判定基準は以下のとおりである。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:表面に傷が見られない。
○:表面に傷が僅かに見られる。
×:表面に傷が明らかに見られる。
【0063】
<実施例2~15、および比較例1~9>
<アクリル共重合体(A)の合成、親水化コーティング剤組成物の調製、および親水化物品の作製>
各実施例および比較例において、各原料の種類とその配合量を表1~2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、アクリル共重合体(A)を合成した後、親水化コーティング剤組成物を調製し、さらにポリカーボネート基材上に親水化膜を有する親水化物品(試験片)を作製した。
【0064】
上記で得られた試験片を用い、上記の評価方法により、密着性、親水性、親水持続性、および塗膜強度を評価した。結果を表1~2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1~2中、ブレンマー PDE-200は、ポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:ブレンマー PDE-200、日油(株)製);KF-351Aは、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:KF-351A、信越化学工業(株)社製);を示す。
【0068】
実施例1~15の親水化剤組成物から形成された親水化膜は、親水性および親水持続性を発現しつつ、かつ密着性および塗膜強度も発現することが確認された。特に、実施例2~4、7~9、12~14では、親水性、親水持続性、密着性、および塗膜強度において優れた結果が得られている。
【0069】
一方、比較例1では、アクリル共重合体(A)中の単量体(a1)を用いていないために、密着性、親水持続性、および塗膜強度の低下が見られた。また、比較例2では、単量体(a1)の割合が多いため、密着性、親水性、および親水持続性の低下が見られた。
【0070】
比較例3では、アクリル共重合体(A)中の単量体(a2)を用いていないために、親水性、および親水持続性の低下が見られた。また、比較例4では、単量体(a2)の割合が多いため、親水持続性の低下が見られた。
【0071】
比較例5では、アクリル共重合体(A)中の単量体(a3)を用いていないために、密着性の低下が見られた。また、比較例6では、単量体(a3)の割合が多いため、親水性、および親水持続性の低下が見られた。
【0072】
比較例7では、アクリル共重合体(A)中の単量体(a4)を用いていないために、親水性、および親水持続性の低下が見られた。また、比較例8では、単量体(a4)の割合が多いため、密着性、親水性、および親水持続性の低下が見られた。
【0073】
比較例9では、特許文献4の実施例で開示されたアクリル共重合体であり、単量体(a1)および単量体(a3)が多く、また単量体(a4)が少ない組成であるため、親水性、および親水持続性の低下が見られた。