IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェネクスト株式会社の特許一覧

特許7227577交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム
<>
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図1
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図2
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図3
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図4
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図5
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図6
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図7
  • 特許-交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20230215BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G08G1/01 D
G01C21/34
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019031110
(22)【出願日】2019-02-24
(65)【公開番号】P2020135674
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520124084
【氏名又は名称】ジェネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】笠原 一
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-287083(JP,A)
【文献】特開2014-016883(JP,A)
【文献】特開2008-059171(JP,A)
【文献】特開2018-124900(JP,A)
【文献】特開2018-127153(JP,A)
【文献】特開2013-101013(JP,A)
【文献】特開2012-233792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C21/00-21/36、23/00-25/00
G09B23/00-29/14
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般車両の位置情報を含む走行情報を取得する取得部と、
住所又は緯度・経度に基づいて管理される交通ルールの中から前記位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し、前記抽出された交通ルール及び前記走行情報に基づき前記一般車両の違反の有無を判定し、複数の一般車両から得られた前記違反の有無を各位置情報と関連付けた統計情報を作成して蓄積する蓄積部と、
所定の地点に関連する交通リスク情報のリクエストを受信する第1の受信部と、
前記統計情報の中から前記所定の地点に関連する情報を抽出する第1の制御部と、
前記抽出された情報を前記交通リスク情報として出力する第1の出力部と、
を備え、
前記交通リスク情報は、前記所定の地点を含む所定範囲内で起こった違反の頻度を前記違反の種別ごとに示したものであり、
前記第1の制御部は、前記所定範囲内における前記違反の頻度が所定の閾値を超えていた場合に前記所定範囲内を違反多発地帯と判定し、
前記第1の受信部は、対象車両及び前記対象車両の周辺の他車両からドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能であり、
前記蓄積部には、前記ドライバー識別子に対応したドライバー情報が記憶されており、
前記第1の制御部が、前記対象車両が前記違反多発地帯に近づいており、かつ、前記対象車両から所定範囲内に前記他車両が存在すると判断した場合、前記他車両のドライバー識別子に対応するドライバー情報に基づいてトラブルリスクを判定し、
前記トラブルリスクが所定以上の場合に、前記第1の出力部は、第2のアラート情報を前記交通リスク情報の一部として出力することを特徴とする交通リスク情報出力システム。
【請求項2】
前記第1の出力部は、前記違反多発地帯に対応する交通リスク情報は、他の交通リスク情報とは区別して出力することを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項3】
前記蓄積部には、実際に交通事故が多発した事故多発地帯の緯度・経度情報が記憶されており、
前記第1の制御部は、前記違反多発地帯の緯度・経度情報から前記事故多発地帯の緯度・経度情報までの距離が所定値以下である場合に、その違反多発地帯又はその違反多発地帯から前記事故多発地帯までの地帯を要注意地帯と判定し、
前記第1の出力部は、前記要注意地帯に対応する交通リスク情報は、他の交通リスク情報とは区別して出力することを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項4】
前記蓄積部には、前記対象車両のドライバーの前記違反多発地帯における違反履歴が記憶されており、
前記第1の制御部が、前記対象車両が前記違反多発地帯に近づいており、かつ、前記違反履歴が所定の条件を満たすと判断した場合、前記第1の出力部は、第1のアラート情報を前記交通リスク情報の一部として出力することを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項5】
目的地が入力される入力部と、
前記違反多発地帯を回避して前記目的地まで向かうためのリスク回避ルートを決定する第2の制御部と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項6】
前記第1の受信部は、前記対象車両からドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能であり、
前記蓄積部には、前記ドライバー識別子に対応したドライバー情報が記憶されており、
前記第1の制御部は、前記ドライバーの所定期間に亘る違反に関する違反情報を抽出し、
前記第1の出力部は、前記抽出された違反情報を前記交通リスク情報として出力することを備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項7】
前記対象車両には、撮影された画像に基づく自動運転を行うための撮影部と、前記交通リスク情報に基づき、前記画像の解析時の着目点を制御する自動運転制御部と、が搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項8】
前記蓄積部は、誤差が1.5m以内の位置情報測位システムにより計測された位置情報に基づいて前記統計情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項9】
前記蓄積部は、サブメータ級の位置情報に基づいて前記統計情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項10】
GPS装置を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通リスク情報出力システム。
【請求項11】
コンピュータにインストールされるプログラムであって、
一般車両の位置情報を含む走行情報を取得するステップと、
住所又は緯度・経度に基づいて管理される交通ルールの中から前記位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し、前記抽出された交通ルール及び前記走行情報に基づき前記一般車両の違反の有無を判定し、複数の一般車両から得られた前記違反の有無を各位置情報と関連付けた統計情報を作成して蓄積するステップと、
所定の地点に関連する交通リスク情報のリクエストを受信するステップと、
前記統計情報の中から前記所定の地点に関連する情報を抽出するステップと、
前記抽出された情報を前記交通リスク情報として出力するステップと、
を備え、
前記交通リスク情報は、前記所定の地点を含む所定範囲内で起こった違反の頻度を前記違反の種別ごとに示したものであり、
前記所定範囲内における前記違反の頻度が所定の閾値を超えていた場合に前記所定範囲内を違反多発地帯と判定するステップを更に備え、
前記受信するステップでは、対象車両及び前記対象車両の周辺の他車両からドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能であり、
前記蓄積するステップでは、前記ドライバー識別子に対応したドライバー情報が記憶されており、
前記判定するステップでは、前記対象車両が前記違反多発地帯に近づいており、かつ、前記対象車両から所定範囲内に前記他車両が存在すると判断した場合、前記他車両のドライバー識別子に対応するドライバー情報に基づいてトラブルリスクを判定し、
前記出力するステップでは、前記トラブルリスクが所定以上の場合に、第2のアラート情報を前記交通リスク情報の一部として出力することを特徴とする交通リスク情報出力プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故を削減するための交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加速度センサを用いて急加速や急ハンドルを判定する交通安全の管理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-22022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今、高齢者の逆走や、あおり運転等が社会問題となっており、道路交通法の順守や危険運転の防止が急務となっている。
【0005】
しかしながら、上記加速度センサを用いたシステムは、運転の状態は判定できるものの、重大事故につながる道路交通法の遵守を判定するものではない。重大事故は、自分自身が道路交通法違反をすることに加え相手側の道路交通法違反も重なり発生することが多い。これまでの事故を解析した経験から、「相手方は違反をしないであろう」という過信が重大事故を引き起こすことがわかっている。このため、事故を抑制するためには、自分の道路交通法順守の意識のみならず、他人の道路交通法違反の状態を知ることが重要である。
【0006】
そこで、本発明は、道路交通法違反が起こりやすい地点等を高精度に検出することで交通事故削減へ寄与することが可能な交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般車両の位置情報を含む走行情報を取得する取得部と、住所又は緯度・経度に基づいて管理される交通ルールの中から前記位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し、前記抽出された交通ルール及び前記走行情報に基づき前記一般車両の違反の有無を判定し、複数の一般車両から得られた前記違反の有無を各位置情報と関連付けた統計情報を作成して蓄積する蓄積部と、所定の地点に関連する交通リスク情報のリクエストを受信する第1の受信部と、前記統計情報の中から前記所定の地点に関連する情報を抽出する第1の制御部と、前記抽出された情報を前記交通リスク情報として出力する出力部と、を備えたことを特徴とする交通リスク情報出力システムを提供している。
【0008】
このような構成によれば、対象車両のドライバーが、近辺の交通事故リスクを把握することが可能となる。
【0009】
また、前記交通リスク情報は、前記所定の地点を含む所定範囲内で起こった違反の頻度を前記違反の種別ごとに示したものであることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、対象車両のドライバーは、どの付近でどの種別の交通違反・交通事故が起こりやすいかを容易に把握することが可能となる。
【0011】
また、前記第1の制御部は、前記所定範囲内における前記違反の頻度が所定の閾値を超えていた場合に前記所定範囲内を違反多発地帯と判定し、前記出力部は、前記違反多発地帯に対応する交通リスク情報は、他の交通リスク情報とは区別して出力することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、交通違反・交通事故が特に起こりやすい地帯を容易に把握することが可能となる。
【0013】
また、前記蓄積部には、実際に交通事故が多発した事故多発地帯の緯度・経度情報が記憶されており、前記第1の制御部は、前記違反多発地帯の緯度・経度情報から前記事故多発地帯の緯度・経度情報までの距離が所定値以下である場合に、その違反多発地帯又はその違反多発地帯から前記事故多発地帯までの地帯を要注意地帯と判定し、前記出力部は、前記要注意地帯に対応する交通リスク情報は、他の交通リスク情報とは区別して出力することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、交通事故に繋がりやすい要注意地帯における交通ルールの遵守をドライバーに対して促すことが可能となる。
【0015】
また、前記蓄積部には、前記対象車両のドライバーの前記違反多発地帯における違反履歴が記憶されており、前記第1の制御部が、前記対象車両が前記違反多発地帯に近づいており、かつ、前記違反履歴が所定の条件を満たすと判断した場合、前記第1の出力部は、第1のアラート情報を前記交通リスク情報の一部として出力することが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、対象車両のドライバーが交通違反を起こしやすい地帯において、ドライバーに注意を喚起することが可能となる。
【0017】
また、前記第1の受信部は、前記対象車両及び前記対象車両の周辺の他車両からドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能であり、前記蓄積部には、前記ドライバー識別子に対応したドライバー情報が記憶されており、前記第1の制御部が、前記対象車両が前記違反多発地帯に近づいており、かつ、前記対象車両から所定範囲内に前記他車両が存在すると判断した場合、前記他車両のドライバー識別子に対応するドライバー情報に基づいてトラブルリスクを判定し、前記トラブルリスクが所定以上の場合に、前記第1の出力部は、第2のアラート情報を前記交通リスク情報の一部として出力することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、交通違反・交通事故が起こりやすい地帯において、他のドライバーの状況まで考慮して注意を喚起することが可能となる。
【0019】
また、目的地が入力される入力部と、前記違反多発地帯を回避して前記目的地まで向かうためのリスク回避ルートを決定する第2の制御部と、を更に備えたことが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、リスクの高い違反多発地帯が回避されたルートがナビされるので、交通事故の発生を抑制することが可能となる。
【0021】
また、前記第1の受信部は、前記対象車両からドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能であり、前記蓄積部には、前記ドライバー識別子に対応したドライバー情報が記憶されており、前記第1の制御部は、前記ドライバーの所定期間に亘る違反に関する違反情報を抽出し、前記出力部は、前記抽出された違反情報を前記交通リスク情報として出力することが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、管理者側等で従業員の運転状況を把握することができるので、例えば、疲労蓄積していそうな従業員の業務量(長距離運転や労働時間)を管理者が軽くなるように調整することができる。
【0023】
また、前記対象車両には、撮影された画像に基づく自動運転を行うための撮影部と、前記交通リスク情報に基づき、前記画像の解析時の着目点を制御する自動運転制御部と、が搭載されていることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、例えば、“交通リスク情報”により、十字路で右折による事故が多い地点では前方カメラの映像に対し右側や直進してくる対向車線に注意すべきことが分かるので、ここに重みづけを置いた制御を行うことができ、画像処理の負荷を低減させたり、処理速度を向上させたりすることが可能となる。
【0025】
また、前記蓄積部は、誤差が1.5m以内の位置情報測位システムにより計測された位置情報に基づいて前記統計情報を作成することが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、平均的な車線幅が3m程度であることを考慮すると、車両の中心から対向車線との境までの距離は約1.5mとなるので、位置情報に1.5m程度の誤差があったとしても、車両は、ほとんどのケースで実際に走行した車線内に収まり、「隣の車線や側道を走行していた」と誤って判定された”統計情報”が作成されることが抑制される。
【0027】
また、前記蓄積部は、サブメータ級の位置情報に基づいて前記統計情報を作成することが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、誤って判定された”統計情報”が作成されることがより抑制される。
【0029】
また、本発明は、GPS装置を更に備えたことが好ましい。
【0030】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータにインストールされるプログラムであって、一般車両の位置情報を含む走行情報を取得するステップと、住所又は緯度・経度に基づいて管理される交通ルールの中から前記位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し、前記抽出された交通ルール及び前記走行情報に基づき前記一般車両の違反の有無を判定し、複数の一般車両から得られた前記違反の有無を各位置情報と関連付けた統計情報を作成して蓄積するステップと、所定の地点に関連する交通リスク情報のリクエストを受信するステップと、前記統計情報の中から前記所定の地点に関連する情報を抽出するステップと、前記抽出された情報を前記交通リスク情報として出力するステップと、を備えたことを特徴とする交通リスク情報出力プログラムを提供している。
【発明の効果】
【0031】
本発明の交通リスク情報出力システム、及び、交通リスク情報出力プログラムによれば、道路交通法違反が起こりやすい地点等を高精度に検出することで交通事故削減へ寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施の形態による交通リスク情報出力システムの全体図
図2】本発明の第1の実施の形態による交通ルール適用位置の緯度・経度の説明図
図3】本発明の第1の実施の形態による違反多発地帯又は要注意地帯の表示の説明図
図4】本発明の第1の実施の形態による“統計情報作成段階”及び“交通リスク情報作成段階”のフローチャート
図5】本発明の第1の実施の形態による位置情報の誤差についての説明図
図6】本発明の第2の実施の形態による“交通リスク情報作成段階”のフローチャート
図7】本発明の第3の実施の形態による“交通リスク情報作成段階”のフローチャート
図8】本発明の第4の実施の形態によるナビゲーション装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の第1の実施の形態による交通リスク情報出力システム1について、図1図5を参照して説明する。
【0034】
交通リスク情報出力システム1は、車両2と、交通リスク情報出力装置3と、の間で行われるものであり、交通リスク情報出力装置3は、“統計情報作成段階”と、“交通リスク情報作成段階”と、の2段階の処理を行う。
【0035】
図1に示すように、交通リスク情報出力装置3は、“統計情報作成段階”では、多数の一般車両2aから取得した位置情報に基づいて“交通違反発生地帯”に関する“統計情報”を作成し、“交通リスク情報作成段階”では、“統計情報”に基づいて対象車両2bの交通事故を予防するための“交通リスク情報”を作成する。一般車両2aは、実際に道路を走行している車両であっても良いし、統計情報を収集させるために走行させるテスト車両であっても良い。ここで、一般車両とは車の種類を示すものではなく、不特定多数の道路を走行している車両全般を意味する。
【0036】
本実施の形態では、交通リスク情報出力装置3は通信センター等に設置されており、車両2との間の通信は無線で行うものとする。
【0037】
図1に示すように、車両2(一般車両2a及び対象車両2b)には、自らの位置を検出可能なGPS装置21が搭載されており、自らの位置に関する位置情報を、検出時刻である時刻情報に関連付けて交通リスク情報出力装置3に送信可能な構成となっている。位置情報としては、車両2のリアルタイムの緯度・経度から構成される点情報や、複数の緯度・経度からなる走行ルートを示す線情報等が考えられる。
【0038】
位置情報は、誤差1m以下であることが好ましい。このような精度を実現するものとして、みちびき(準天頂衛星システム)からのサブメータ級の衛星信号を用いることが考えられる。なお、片側一車線の場合で、片側車線の道路幅が3mのケースを考えると、車の中心から対向車線との境までの距離は約1.5mとなる。仮に車両の中心にGPS装置が搭載された場合、最低でも誤差が1.5m以下のGPS装置を用いれば、どちらの車線を走行しているのかが明確となる。つまり昨今問題となっている逆走を判定できるようになる。これを実現するものであればみちびきに限らずいかなる位置情報測位システムを用いても良い。なお、この精度はマルチパス等の問題により実際のカタログスペックほどの数値が出ないことがある。しかしながら時間軸を考えた場合、例えば3分間走行しその間、10秒おきにサンプリングすれば18点の位置情報を得ることができる。そうして取得した位置情報をプロットして近似曲線を描き、近似曲線とプロットとの標準偏差が1.5m以内に収まっていれば、どちらの車線を走行しているかがほぼ正しく判定することができる。したがって、カタログスペック上で1.5m以内の精度のものであれば本システムへ適用が可能である。
【0039】
また、車両2のうち、少なくとも対象車両2bは、車両側送信部22と、車両側受信部23と、表示部24と、アラート部25と、を更に備えている。
【0040】
車両側送信部22は、所定の地点に関する“交通リスク情報”のリクエストを交通リスク情報出力装置3に送信可能である。なお、“交通リスク情報”のリクエストは、上記位置情報と略同時に送信することが好ましく、また、連続的又は断続的に送信し続けることが好ましい。なお、位置情報が送信されたときに交通リスク情報出力装置3が該位置情報の周辺を含め、所定の範囲の“交通リスク情報”を車両に送信する場合は、車両側送信部22からのリクエストは間欠的であっても良い。この場合は車両側にメモリを設け表面上は連続的に“交通リスク情報”を受信しているように表示することができる。
【0041】
また、車両側送信部22は、GPS装置21以外で検出された走行情報も交通リスク情報出力装置3に送信可能である。走行情報としては、移動車両に搭載された運転状況を判定可能な各種センサからの情報等(例えば、加速度センサからの情報、ウィンカーの右左折情報、画像やレーダーにより検出された車間距離・標識までの距離等)が考えられる。
【0042】
車両側受信部23は、交通リスク情報出力装置3から送信された情報を受信可能である。表示部24は、車両側受信部23により受信された情報を表示可能である。アラート部25は、ドライバーに対してアラートを行うことが可能である。
【0043】
図1に示すように、交通リスク情報出力装置3は、取得部31と、蓄積部32と、第1の受信部33と、第1の制御部34と、出力部35と、を備えている。
【0044】
“統計情報作成段階”では、主に、取得部31及び蓄積部32が用いられ、“交通リスク情報作成段階”では、主に、蓄積部32、第1の受信部33、第1の制御部34、及び、出力部35が用いられる。なお、便宜的に取得部31や第1の受信部33を別の構成物として記載したが、ハードウェアの構成としては当然同じ物で実現されていても良い。所謂一般的な通信基盤である。その他の構成物に関してもハードウェア構成は任意の構成をとり得る。
【0045】
取得部31は、GPS装置21から送信された車両2の位置情報、及び、車両側送信部22から送信された走行情報を取得可能である。
【0046】
蓄積部32は、住所又は緯度・経度に基づいて管理される交通ルールを予め記憶しており、当該交通ルールの中から、取得された位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し、抽出された交通ルール及び走行情報に基づき一般車両2aの違反の有無を判定する。そして、多数の一般車両2aから得られた違反の有無を各位置情報と関連付けた“統計情報”を作成して蓄積する。なお違反に限らず、違反の一歩手前のヒヤリハット情報を各位置情報と関連付け“統計情報”として蓄積しても良い。つまり交通リスクを判定するための情報であれば如何なるものであっても良い。
【0047】
蓄積部32に予め記憶される交通ルールとしては、道路標識(規制標識、指示標識、補助標識)、道路標示(規制表示、指示表示)等で示されるルールが考えられ、これらのルールが適用されるルール適用位置の緯度・経度は、公安委員会、警察署等が発行する意思決定のデータに記載されたものを用いることができる。公安委員会、警察署等に基づくデータが住所の場合、該住所を緯度・軽度に変換した情報を蓄積部32に蓄積する。公安委員会、警察署等に基づくデータは住所で記載されていることも多く、この住所だけでは車両の位置に対して適用される交通ルールの判定処理が煩雑となる。このため、予め住所を緯度・軽度に変換して蓄積部32に登録しておくことが好ましく、これによってシステムの計算速度を早くすることができる。例えば、現在の車両の走行位置の情報を受け取り、ほぼリアルタイムに適用する交通ルールを判定する使い方の場合、そのリアルタイム性が重要となってくることから、緯度・軽度として情報を保持していくことが重要である。
【0048】
これらのルール適用位置は、データ上で取り扱えば済むので地図のように表示する必要はないが、理解容易のために、これらのルール適用位置の緯度・経度を表示した場合、図2に示すようなものとなる。図2では、所定の速度制限が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Aを形成し、一時停止が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Bを形成し、駐車禁止が適用される複数のルール適用位置の緯度・経度が点集合範囲Cを形成していることを示している。
【0049】
本実施の形態では、所定の交通ルールが適用されるルール適用位置の緯度・経度と正確に一致する緯度・経度だけでなく、各点集合範囲に含まれる緯度・経度は全て、所定の交通ルールが適用されるルール適用位置とみなす。
【0050】
違反の有無を判定する方法として、例えば、速度違反であれば、制限速度区間(図2の場合、点集合A)において所定以上速度超過していた場合に違反として判定し、一時停止違反であれば、一時停止位置(図2の場合、点集合B)の前後数メートルで所定の時間停止していない場合に違反として判定する等が考えられる。
【0051】
また、蓄積部32には、一般車両2aの各地点での違反履歴も記憶される。更に、蓄積部32には、実際に交通事故が多発した事故多発地帯の緯度・経度情報が別途記憶されている。
【0052】
第1の受信部33は、車両側送信部22から送信された所定の地点に関する“交通リスク情報”のリクエストを受信可能である。
【0053】
第1の制御部34は、蓄積部32に蓄積された“統計情報”の中から所定の地点に関連する情報を抽出する。
【0054】
出力部35は、制御部34により抽出された情報を“交通リスク情報”として出力する。出力された“交通リスク情報”は、車両側受信部23によって受信され、表示部24に表示される。
【0055】
“交通リスク情報”は、リクエストされた地点を含む所定範囲内で起こった違反の頻度を違反の種別ごとに示したものである。本実施の形態では、“交通リスク情報”は、リクエストされた地点を中心とした所定の半径内で起こった違反の頻度を違反の種別ごとに示したものであり、図3に示すように、所定の半径を有する円状、又は、所定の半径内に含まれる点集合として表示部24に表示される。図3では明示されていないが、種別に関しては、例えば、色によって区別する等が考えられる。
【0056】
これにより、対象車両2bのドライバーは、どの付近でどの種別の交通違反・交通事故が起こりやすいかを容易に把握することが可能となる。
【0057】
更に、第1の制御部34は、上記所定範囲内における違反の頻度が所定の閾値を超えていた場合、当該所定範囲内を違反多発地帯Xと判定する。違反多発地帯Xに対応する“交通リスク情報”は、他の“交通リスク情報”とは区別して出力することが好ましい。このように、違反多発地帯Xに対応する“交通リスク情報”を、他の“交通リスク情報”と区別することで、交通違反・交通事故が特に起こりやすい地帯を容易に把握することが可能となる。区別の方法としては、図3における円や点集合の色を異ならせる等が考えられる。
【0058】
また、前述したように、蓄積部32には、“交通リスク情報作成段階”よりも前の段階で(“統計情報作成段階”とは限らない)、実際に交通事故が多発した事故多発地帯Yの緯度・経度情報も記憶されている。
【0059】
第1の制御部34は、違反多発地帯Xの緯度・経度情報から事故多発地帯Yの緯度・経度情報までの距離が所定値以下である場合、その違反多発地帯X又はその違反多発地帯Xから事故多発地帯Yまでの地帯を要注意地帯Zと判定する。要注意地帯Zに対応する“交通リスク情報”は、他の“交通リスク情報”とは区別して出力することが好ましい。このように、要注意地帯Zに対応する“交通リスク情報”を、他の“交通リスク情報”と区別することで、交通事故に繋がりやすい要注意地帯Zにおける交通ルールの遵守をドライバーに対して促すことが可能となる。
【0060】
例えば、一般的な急カーブの道路において、そこが事故多発地帯Yの場合、当然スピード違反が多発している地域であることが想像される。スピード違反が起きやすい地帯であること及びそこが事故多発地帯Yであることをドライバーに啓蒙できれば、その他の直線道路でのスピード違反等と比較し、実感としてスピード違反のリスクの高さをドライバーが認識することとなる。これによって事故が削減されるものである。区別の方法としては、図3における円や点集合の色を他の“交通リスク情報”と区別する等が考えられる。図3では、違反多発地帯Xが要注意地帯Zの場合を示している。
【0061】
続いて、図4のフローチャートを用いて、本実施の形態による“統計情報作成段階”及び“交通リスク情報作成段階”の流れについて説明する。
【0062】
まず、“統計情報作成段階”において、一般車両2aから位置情報(走行情報)を取得する(S1)。
【0063】
続いて、位置情報に適用される少なくとも1以上の交通ルールを抽出し(S2)、抽出された交通ルール及び位置情報(走行情報)に基づき一般車両2aの違反の有無を判定し(S3)、違反の有無を位置情報と関連付ける(S4)。
【0064】
このS1-S4の処理を多数の一般車両2aについて対して行うことで、“統計情報”が作成されることとなる。なお、違反多発地帯X及び要注意地帯Zの判定は、S4の後に定期的に行われることとなる。
【0065】
続いて、第1の受信部33が、所定の地点に関する“交通リスク情報”のリクエストを受信した際に、“交通リスク情報作成段階”が開始する。なお、“交通リスク情報”の作成はこれに限らず、バッチ処理で、例えば、各エリア毎等で一日に一回予め作成されるものであってもよい。この場合はリクエストを受信した際に即座に“交通リスク情報”を返信できる。
【0066】
リクエストを受信すると(S5:YES)、第1の制御部34は、“統計情報”の中から所定の地点に関連する情報を抽出し(S6)、抽出された情報を“交通リスク情報”として出力して(S7)、処理を終了する。
【0067】
出力された“交通リスク情報”は、車両側受信部23によって受信され、表示部24に表示される。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、多数の一般車両2aの違反の有無を各位置情報と関連付けた“統計情報”を作成し、対象車両2bからのリクエストに応じて、“統計情報”のうち所定の地点(対象車両2bによりリクエストされた地点)に関連する“交通リスク情報”を出力する。
【0069】
このような構成によれば、対象車両2bのドライバーが、近辺の交通事故リスクを把握することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、“交通リスク情報”は、リクエストされた地点を含む所定範囲内で起こった違反の頻度を違反の種別ごとに示したものである。
【0071】
このような構成によれば、対象車両2bのドライバーは、どの付近でどの種別の交通違反・交通事故が起こりやすいかを容易に把握することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、所定範囲内において違反の頻度が所定の閾値を超えていた場合、当該所定範囲内を違反多発地帯Xと判定し、違反多発地帯Xに対応する“交通リスク情報”は、他の“交通リスク情報”とは区別して出力する。
【0073】
このような構成によれば、交通違反・交通事故が特に起こりやすい地帯を容易に把握することが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、違反多発地帯Xの緯度・経度情報から事故多発地帯Yの緯度・経度情報までの距離が所定値以下である場合に、その違反多発地帯X又はその違反多発地帯Xから事故多発地帯Yまでの地帯を要注意地帯Zと判定し、要注意地帯Zに対応する“交通リスク情報”は、他の“交通リスク情報”とは区別して出力する。
【0075】
このような構成によれば、交通事故に繋がりやすい要注意地帯Zにおける交通ルールの遵守をドライバーに対して促すことが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、サブメータ級の位置情報に基づいて”統計情報”を作成する。
【0077】
このような構成によれば、平均的な車線幅が3m程度であることを考慮すると、1m程度の誤差があったとしても、図5に示すように、車両2は、ほとんどのケースで実際に走行した車線内に収まり、「隣の車線や側道を走行していた」と誤って判定された”統計情報”が作成されることが防止される。なお、少なくとも誤差は1.5m以内であることが好ましい。
【0078】
このように、従来のGPS情報を使用する場合、その誤差は10m単位であるため、例えば、一時不停止、踏み切り不停止のような交通ルールでは、10mの誤差が生じると判定することができない場合が生じるが、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、みちびき(準天頂衛星システム)を用いて道路交法違反を高精度に検出するので、正確に道路交通法違反を検出することが可能となる。1m程度の誤差範囲であれば、少なくとも一時停止線に対し、その前後数メートルで一時停止したか否かが判定できる。
【0079】
続いて、本発明の第2の実施の形態による交通リスク情報出力システム1について、図6を参照して説明する。
【0080】
本実施の形態では、“交通リスク情報作成段階”において、対象車両2bの違反履歴までも考慮した”交通リスク情報”を作成する。
【0081】
詳細には、前述したように、蓄積部32には、“統計情報作成段階”において、対象車両2b(その時点では一般車両2a)の各地点での違反履歴も記憶されている。
【0082】
第1の制御部34は、第1の受信部33により受信された対象車両2bの位置情報又は走行情報に基づき、対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいているか否かを判断し、近づいていると判断した場合、当該違反多発地帯Xにおける対象車両2bの違反履歴を抽出する。そして、違反履歴が所定の条件を満たす場合、“第1のアラート情報”を“交通リスク情報”の一部として出力部35から出力させる。例えば、その違反多発地帯Xにおいて所定月内に所定回数以上違反を起こしていた場合に、“第1のアラート情報”を出力させることが考えられる。
【0083】
車両側受信部23により“第1のアラート情報”が受信されると、アラート部25は、ドライバーに対して安全運転を促すための第1のアラートを行う。第1のアラートの種類としては、音声や表示部24上の表示の変化等が考えられる。第1のアラートは、違反多発地帯Xを通過する前に行うことが好ましい。
【0084】
これにより、対象車両2bのドライバーが交通違反を起こしやすい地帯において、ドライバーに注意を喚起することが可能となる。
【0085】
続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施の形態による“交通リスク情報作成段階”の流れについて説明する。図6のフローチャートは、図4のS5-S7において行われる処理である。
【0086】
まず、リクエストを受信すると(S11:YES)、対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいているか否かを判断する(S12)。
【0087】
近づいていると判断した場合(S12:YES)、当該違反多発地帯Xにおける対象車両2bの違反履歴を抽出し(S13)、違反履歴が所定の条件を満たすか否かを判断する(S14)。なお、S12とS14の判断は順序が逆になってもよい。
【0088】
所定の条件を満たす場合(S14:YES)、“第1のアラート情報”を“交通リスク情報”の一部として出力して(S15)、処理を終了する。
【0089】
出力された“第1のアラート情報”は、車両側受信部23により受信され、アラート部25によって第1のアラートが行われる。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいており、当該違反多発地帯Xにおける違反履歴が所定条件を満たす場合、“第1のアラート情報”を“交通リスク情報”の一部として出力する。
【0091】
このような構成によれば、対象車両2bのドライバーが交通違反を起こしやすい地帯において、ドライバーに注意を喚起することが可能となる。
【0092】
続いて、本発明の第3の実施の形態による交通リスク情報出力システム1について、図7を参照して説明する。
【0093】
本実施の形態では、“交通リスク情報作成段階”において、対象車両2bの周辺の他車両2cとの関係までも考慮した”交通リスク情報”を作成する。
【0094】
詳細には、本実施の形態では、蓄積部32には、“交通リスク情報作成段階”よりも前の段階で、各車両2のドライバー識別子と、ドライバー識別子に対応するドライバー情報と、が記憶される。
【0095】
ドライバー情報としては、年齢、性別、違反履歴、運転の癖、現在の眠気等が考えられる。年齢、性別等に関しては、予め登録しておき、違反履歴、運転の癖に関しては、“統計情報作成段階”で記憶することが可能であり、また、現在の眠気等に関しては、“交通リスク情報作成段階”と並行して記憶することが考えられる。例えば、現在の眠気の場合、他車両2のドライバー等に設置される市販の眠気センサから取得した値が考えられるが、その他にもドライバーの状態をセンシングするいかなるセンサであっても良い。
【0096】
そして、本実施の形態では、第1の受信部33は、対象車両2b及び他車両2cからドライバー識別子及び位置情報をそれぞれリアルタイムに受信可能である。
【0097】
第1の制御部34は、第1の受信部33により受信された位置情報に基づき、対象車両2bが”違反多発地帯”に近づいており、かつ、対象車両2bから所定範囲内に他車両2cが存在すると判断した場合、他車両2cのドライバー識別子に対応するドライバー情報に基づいてトラブルリスクを判定する。判定の基準としては、年齢、性別、運転の癖、現在の眠気が所定の条件を満たしている場合に“トラブルリスクが高い”と判定することが考えられる。そして、トラブルリスクが所定以上の場合に、”第2のアラート情報”を”交通リスク情報”の一部として出力部35から出力させる。
【0098】
車両側受信部23により”第2のアラート情報”が受信されると、アラート部25は、ドライバーに対して注意を促すための第2のアラートを行う。第2のアラートの種類としては、音声や表示部24上の表示の変化等が考えられる。例えば、右折をする際に右折先の道路から眠気の高いドライバーが来そうなときに注意表示をする等が考えられる。また、所定範囲内の他車両2cのドライバーが高齢で一時停止をきちんとしない傾向がある場合、一時停止をせずに衝突する可能性を通知することで自分自身が減速する或いは一時停止をすることで事前に回避することが可能となる。
【0099】
これにより、交通違反・交通事故が起こりやすい地帯において、他のドライバーの状況まで考慮して注意を喚起することが可能となる。
【0100】
続いて、図7のフローチャートを用いて、本実施の形態による“交通リスク情報作成段階”の流れについて説明する。図7のフローチャートは、図4のS5-S7において行われる処理である。
【0101】
まず、リクエストを受信すると(S21:YES)、対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいているか否かを判断すると共に(S22)、対象車両2bから所定範囲内に他車両2cが存在するか否か(対象車両2bから所定範囲内に他車両2cの位置情報を受信しているか否か)を判断する(S23)。なお、S22とS23の判断は順序が逆になってもよい。
【0102】
対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいており、かつ、対象車両2bから所定範囲内に他車両2cが存在すると判断した場合(S22及びS23:YES)、他車両2cのドライバー情報に基づいてトラブルリスクを判定する(S24)。
【0103】
トラブルリスクが所定以上と判定した場合(S24:YES)、”第2のアラート情報”を”交通リスク情報”の一部として出力して(S25)、処理を終了する。
【0104】
出力された”第2のアラート情報”は、車両側受信部23によって受信され、アラート部25による第2のアラートが行われる。
【0105】
以上説明したように、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、対象車両2bが違反多発地帯Xに近づいており、かつ、対象車両2bから所定範囲内に所定以上のトラブルリスクを有する他車両2cが存在すると判断した場合、”第2のアラート情報”を”交通リスク情報”の一部として出力する。
【0106】
このような構成によれば、交通違反・交通事故が起こりやすい地帯において、他のドライバーの状況まで考慮して注意を喚起することが可能となる。
【0107】
続いて、本発明の第4の実施の形態による交通リスク情報出力システム1について、図8を参照して説明する。
【0108】
本実施の形態では、“交通リスク情報作成段階”において、”交通リスク情報”を考慮したナビゲーションを対象車両2bに対して行う。
【0109】
図8に示すように、本実施の形態による対象車両2bには、第1の実施の形態において対象車両2bに搭載されていたGPS装置21、車両側送信部22、車両側受信部23、表示部24、及び、アラート部25に加えて、入力部26及び第2の制御部27を備えたナビゲーション装置4が搭載されている。
【0110】
入力部26には、目的地が入力され、第2の制御部27は、違反多発地帯X(要注意地帯Zを含む)を回避して目的地まで向かうためのリスク回避ルートを決定する。
【0111】
これにより、リスクの高い違反多発地帯Xが回避されたルートがナビされるので、交通事故の発生を抑制することが可能となる。
【0112】
なお、リスク回避ルートの決定方法としては、違反多発地帯Xを回避した上で通常のカーナビと同様の方法で最短距離に決定することが好ましい。この際、事故が発生しにくいルートとして、生活道路ではなく幹線道路を優先的に設定することで、更にリスクを回避することが可能となる。また、目的地までの最短ルートと、リスク回避ルートと、を選択可能に表示してもよい。通常のカーナビと比較し多少の時間はかかるものの事故リスクを軽減したルートを選択でき、特に目的地へ到着すべき時間まで余裕がある場合に効果が大きい。例えば業務用の配送車であって決められた時間ちょうどに配送することが求められる場合、早く到着しても待ち時間が発生するため、これに対しリスクを低減できることは企業経営上の意義も大きいし、事故撲滅に寄与するものである。
【0113】
以上説明したように、本実施の形態による交通リスク情報出力システム1では、違反多発地帯Xを回避して目的地まで向かうためのリスク回避ルートを決定する。
【0114】
このような構成によれば、リスクの高い違反多発地帯Xが回避されたルートがナビされるので、交通事故の発生を抑制することが可能となる。
【0115】
尚、本発明の交通リスク情報出力システムは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0116】
例えば、上記実施の形態では、交通リスク情報出力装置3は車両2とは別の場所に設置されていたが、交通リスク情報出力装置3が各車両2内に搭載されていてもよい。その場合、GPS装置21やドライバーのスマートフォン等の携帯情報端末内に組み込まれることもできる。
【0117】
また、上記実施の形態では、出力した”交通リスク情報”を車両2側で扱ったが、本発明の交通リスク情報出力システムは、”交通リスク情報”を出力するまででもよく、出力された”交通リスク情報”は、車両2や管理者等で目的に応じた使用をすればよい。その場合、交通リスク情報出力装置3が本発明の交通リスク情報出力システムに相当することとなる。
【0118】
例えば、タクシー会社等の車両2の管理者に対して出力する場合には、第3の実施の形態と同様に、蓄積部32に、対象とする車両2のドライバー識別子と、ドライバー識別子に対応するドライバー情報と、を予め記憶しておき、当該車両2のドライバーの所定期間に亘る“違反情報”を“交通リスク情報”として、管理者に対して出力することが考えられる。
【0119】
この場合、全ての違反を出力しなくても、例えば、「(直近の所定期間の違反件数÷所定期間の全走行距離)÷(全期間の違反件数÷全期間の全走行距離)」等の計算により得られた違反件数の増加率が所定の閾値を超えた場合に“違反情報”を出力する等が考えられる。
【0120】
このような構成によれば、管理者側等で従業員の運転状況を把握することができるので、例えば、疲労蓄積していそうな従業員の業務量(長距離運転や労働時間)を管理者が軽くなるように調整することができる。
【0121】
また、上記実施の形態では、第2及び第3の実施の形態でのみ“アラート情報”を出力したが、他の実施の形態においても“アラート情報”を出力してもよい(例えば、第1の実施の形態で、違反多発地帯X又は要注意地帯Zで“アラート情報”を出力等)。但し、あまり多くのアラートを行うと、アラートに慣れてしまうため、危険度が高い場合にのみアラートを行うことの方が好ましい。例えば、第1の実施の形態に関して言えば要注意地帯Zだけでアラートを行うことが好ましい。
【0122】
また、本発明の交通リスク情報出力システムは、自動運転に採用することもできる。この場合、車両2には、撮影された画像に基づく自動運転を行うための撮影部と、“交通リスク情報”に基づき、撮影された画像の解析時の着目点を制御する自動運転制御部と、が搭載された構成が考えられる。
【0123】
このような構成によれば、例えば、 “交通リスク情報”により、十字路で右折による事故が多い地点では前方カメラの映像に対し右側や直進してくる対向車線に注意すべきことが分かるので、ここに重みづけを置いた制御を行うことができ、画像処理の負荷を低減させたり、処理速度を向上させたりすることが可能となる。
【0124】
また、上記実施の形態では、一般車両2aと対象車両2bに分けて説明を行ったが、両者が逆転することもあれば、両者を兼ねることも当然あり得る。
【0125】
また、上記複数の実施の形態は互いに組み合わせることも当然可能である。例えば、第2及び第3の実施の形態における“アラート情報”も考慮して、第4の実施の形態におけるリスク回避リスク回避ルートを決定する等が考えられる。
【0126】
また、上記実施の形態では、本発明の“所定の交通ルールが適用されるルール適用位置の緯度・経度”として、公安委員会、警察署等が発行する意思決定のデータを用いたが、その他から取得したデータを用いてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では、“交通リスク情報”は違反の頻度を違反の種別ごとに示したものとしたが、これに限らず、例えば違反情報やドライバーの運転の粗さを示す加速度センサ情報に基づいて算出される車両そのものの劣化度合いを示す情報であってもよい。加速度センサによって所定値以上の加速度が加えられた回数をカウントし、それを劣化度合いとする等である。
【0128】
例えば、近年増加している自動車のシェアリングサービスなどでは、不特定多数のドライバーが同一車両を運転するため、交通リスクに繋がる車両故障を厳密に管理し必要に応じてメンテナンスすることが重要となる。車両故障はそれまでの運転のされかたにも影響されるため、“交通リスク情報”として車両そのものの劣化を表す情報を提示し、シェアリングカーのサービスを行っている事業者が適宜メンテナンスできるようにすると利便性が高い。
【0129】
また、本発明は、交通リスク情報出力システム、車両2、又は、交通リスク情報出力装置3が行う処理に相当するプログラムや、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【0130】
コンピュータはCPU、メモリ、ハードディスクからなり、当該プログラムは、ハードディスク上に記録され、実行時にメモリへ展開されCPU上で演算処理を行うことで処理を行うものである。なお、コンピュータのCPUは並列処理できるものであってもよいし、コンピュータ自体が分散処理できる形態であっても良い。処理の結果はネットワークを介して任意のディスプレイで表示することができる。
【符号の説明】
【0131】
1 交通リスク情報出力システム
2 車両
2a 一般車両
2b 対象車両
2c 他車両
3 交通リスク情報出力装置
4 ナビゲーション装置
21 GPS装置
22 車両側送信部
23 車両側受信部
24 表示部
25 アラート部
26 入力部
27 第2の制御部
31 取得部
32 蓄積部
33 第1の受信部
34 第1の制御部
35 出力部
X 違反多発地帯
Y 事故多発地帯
Z 要注意地帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8