(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】保湿性に優れた木材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/52 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
B27K3/52 Z
B27K3/52 D
(21)【出願番号】P 2017043837
(22)【出願日】2017-03-08
【審査請求日】2020-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】辻本 吉寛
(72)【発明者】
【氏名】川田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 久寛
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】居島 一仁
【審判官】桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-234103(JP,A)
【文献】特開2002-234004(JP,A)
【文献】特開平4-307204(JP,A)
【文献】木材の平衡含水率(E、M、C),技術情報,長野県林業総合センター,1983年,No.48,p.6-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤として尿素及び1,3-ブタンジオールを尿素濃度が5質量%以上、1,3-ブタンジオール濃度が2質量%以上で含む注入液を、木材の表層部と表層部以外の部分とに、減圧方式で注入した後、天然乾燥し、天然乾燥木材の平衡含水率が20%以上(相対湿度74%のときの値として)であることを特徴とする保湿性に優れた木材の製造方法。
【請求項2】
保湿剤として尿素及び1,3-ブタンジオールを尿素濃度が5質量%以上、1,3-ブタンジオール濃度が2質量%以上で含む注入液を、前記注入液と樹脂成分とを混合することなく、木材の表層部と表層部以外の部分とに、減圧方式で注入した後、天然乾燥し、天然乾燥木材の平衡含水率が20%以上(相対湿度74%のときの値として)であることを特徴とする保湿性に優れた木材の製造方法。
【請求項3】
生材又は未乾燥状態の原木から所定形状に加工し、加工木材(磨き丸太を除く)を人工加熱乾燥することなく、前記加工から2ヶ月以内に、
前記注入液を注入する請求項1又は2に記載の木材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の保湿性の向上技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は、軽くて強く加工し易い、断熱性や防音性に優れている、結露しにくい、調湿作用があるなどの多くの利点を有しており、建材や家具などの様々な用途に使用されている。しかし、木材の調湿作用の程度(保湿性)は木材の平衡含水率によって定まり、平衡含水率は木材の種類を問わず約15%程度である。従って、木材の種類を選ぶことだけで保湿性をコントロールすることはできない。
【0003】
特許文献1には、N-メチロール系樹脂液を木材に含浸させ、木材(セルロース)と加熱反応させることが開示されており、前記N-メチロール系樹脂液には、必要に応じてポリエチレングリコール、グリセリンを保湿剤・材強度劣化防止剤として配合してよい旨が記載されている。しかし、これらポリエチレングリコールやグリセリンは、N-メチロール系樹脂液の添加剤として使用されており、木材自体の保湿性向上への寄与は少ない。また、N-メチロール系樹脂液を用いているため、木材の風合いを損ねる。
【0004】
ところで特許文献2には、アルキレングリコール類などが寸法安定化剤として使用でき、60%以下の含水率まで予備乾燥した木材の表層部に前記寸法安定化剤を注入し、加熱乾燥すると、表層部の収縮を防止できることが記載されている。しかし、アルキレングリコール類などが木材の保湿性を高めることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-154808号公報
【文献】特開2002-234004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、木材の保湿性を向上できる技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、木材に所定の薬剤を注入した後、加熱することなく木材を乾燥させると、前記薬剤が保湿剤として有効に機能し、木材の保湿性を著しく向上できる事を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る木材の製造方法は、ポリオール類、ポリオールエーテル類、極性基を側鎖に有する樹脂、糖又は糖誘導体、尿素化合物、及び無機塩から選ばれる少なくとも1種から構成される薬剤を木材の少なくとも表層部に注入した後、天然乾燥することを特徴とする。本発明では、生材又は未乾燥状態の原木から所定形状に加工し、人工加熱乾燥をすることなく、前記加工から2ヶ月以内に、前記薬剤を木材の少なくとも表層部に注入する事が好ましい。また、ポリオール類、ポリオールエーテル類、糖又は糖誘導体、尿素化合物、及び無機塩から選ばれる少なくとも1種から構成される薬剤を、樹脂成分と混合することなく木材の少なくとも表層部に注入することも好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木材に所定の薬剤(保湿剤)を注入した後、加熱することなく木材を乾燥させている為、木材の保湿性を著しく向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)木材
本発明で使用される木材の種類には特に制限がなく、ヒノキ、ベイヒノキ、ヒバ、ベイヒバ、スギ、ベイマツ、ベイツガ、アカマツ、クロマツ、カラマツ、ベイモミ、スプルース、トドマツ、エゾマツなどの針葉樹、クリ、ケヤキ、ブナ、カエデ、クヌギなどの広葉樹などの全てが使用できるが、本発明の特徴が格別有効に発揮されるのはベイツガ、ヒノキ、スギ、ベイヒバ、ヒバなどである。
前記木材は、所定の薬剤(保湿剤)の注入に先立って、生材又は未乾燥状態の原木から所定形状に加工されていることが好ましい。またこの加工後は、人工加熱乾燥を行ってもよいが、所定量の薬剤を注入可能である限り、人工加熱乾燥をすることなく薬剤を注入するのが好ましい。人工乾燥を行わない場合、非加湿条件下で長期間放置すること、すなわち天然乾燥(又は自然乾燥)することも可能であるが、長期間放置しない事が好ましい。人工乾燥を行わない場合、加工から薬剤注入までの期間は、例えば、2ヶ月以内、好ましくは1ヶ月以内、より好ましくは2週間以内、さらに好ましくは1週間以内にすることが可能である。
【0010】
薬剤注入時の木材の含水率は、例えば、25質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。また該含水率は、例えば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。
【0011】
尚、含水率は、下記式(1)によって定義される値である。含水率の測定には、抵抗式木材水分計、高周波式木材水分計などを用いてもよいが、測定方法によって含水率が変化する場合には、JIS Z 2101:2009の「4 含水率の測定」に従って決定する。
含水率(%)=(乾燥前重量(W1)-全乾重量(W0))/全乾重量(W0)×100…(1)
【0012】
尚、薬剤注入時に、木材の厚み方向全体の含水率が上記範囲になっていてもよい。ただし、太径材の場合で表面から少なくとも8mm以上、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、薄板材の場合では全板厚の好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上が、前記含水率範囲になっていてもよい。
【0013】
上記加工木材では、必要に応じて、薬剤注入に先立って、表層部にインサイジング処理を施してもよいし、施さなくてもよい。インサイジング処理を施せば、保湿剤の浸潤を短時間で効率よく実施できる。尚、インサイジングのピッチは特に制限されず、樹種によって異なる木材の密度、或いは被処理木材の表面が芯材部であるか辺材部であるか等、木材の乾燥および浸潤の難しさや目標乾燥時間などを考慮してその都度適宜に決めればよい。
【0014】
インサイジングの深さも特に制限されないが、本発明では前述の如く表層8mm以上の乾燥が好ましいため、インサイジングの深さもそれに応じて8mm程度以上とすることが望ましい。しかしインサイジング深さを5~7mm程度に止めても、インサイジングを施さない場合に比べると乾燥および浸潤を大幅に促進することが可能となる。
【0015】
被処理木材が比較的薄肉の板材である場合、或いは辺材のみからなる場合では、インサイジング処理をしなくとも乾燥や寸法安定剤の浸潤を効率よく行うことができるが、特に芯材部が露出した部分では乾燥や浸潤促進のためインサイジング処理を施すことが望ましい。
【0016】
木材加工の種類には、寸法・形状を整えるための切削加工、或いは更に、ノミやプレカット機械等を用いたアリやカマ等の継手加工や仕口加工、溝・加飾彫刻、ダボ加工、金具の下穴加工等を行う処理が含まれる。尚、薬剤注入前に最終形状まで加工してもよく、薬剤注入前は粗加工にとどめておき、薬剤注入後に最終形状に加工してもよい。
【0017】
(2)薬剤(保湿剤)注入
以上の様にして調製された木材に対して、本発明では、所定の薬剤を注入(浸潤)する。所定の薬剤は、単独で木材に対する保湿剤として機能し、木材の風合いを損ねる恐れがない。すなわち、以上の様にして調製された木材に保湿剤を注入すると、木材の空隙部に保湿剤が速やかに浸潤され、また保湿剤の保持率を高めることが可能となる。
【0018】
木材内部への薬剤注入の具体的条件は特に制限されず、防腐剤などを注入する際に採用される通常の条件を適用すればよく、例えば、薬剤を適当な希釈剤(水など)で希釈した注入液を調製し、この注入液を利用した浸漬処理、温冷浴処理、減圧注入処理、加圧式注入処理等を採用すればよく、また実験室で効率よく注入するには減圧注入処理してもよい。しかし、薬剤の注入を短時間で効率よく行うには、加圧注入処理を採用することが望ましい。加圧注入処理では、圧力条件も特に制限されないが、少なくとも表層から深さ8mm程度、もしくは全板厚の10%程度までの浸潤を短時間で完了させるには、圧力を好ましくは0.39MPa以上(4kgf/cm2以上)、より好ましくは1.47MPa以上(15kgf/cm2以上)に高めることが望ましい。またこの圧力は、例えば、2MPa以下であってもよい。
【0019】
注入する保湿剤の量(注入液としての量)は、最終製品として保湿効果を確実に高めるため、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは100kg/m3程度以上とすることが望ましい。尚、保湿剤の量(注入液としての量)は、例えば、800kg/m3以下であってもよい。
尚、注入量は、溶剤(例えば、水)などの希釈成分を含む全体としての量であり、後述する防腐剤・防蟻剤を含む場合は、それらをも含む薬液全体としての量であり、下記式(2)によって定義される値である。
注入量=(注入後木材重量-注入前木材重量)/木材体積…(2)
【0020】
そして本発明では、以下の薬剤が、直接木材に注入して天然乾燥することで木材の保湿性を高めるのに有効であることを確認した。すなわち本発明で保湿剤として使用可能な薬剤は、グリセリン、1,3-ブタンジオール、アルキレングリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなど)などのポリオール類;ポリアルキレングリコール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレントリデシルエーテルなど)、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど)などのポリオールエーテル類;水酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基などの極性基を側鎖に有する樹脂(例えば、フェノール樹脂などの硬化性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルなどのビニル系樹脂);ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、D-グルコース等の糖又は糖誘導体;尿素、メチロール尿素などの尿素化合物;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどのアルカリ土類金属ハライドなどの無機塩などであり、これらは単独で、もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用できる。特に好ましい保湿剤は、木材から自然の風合いが失われやすくなるのを防ぐ趣旨で、樹脂成分以外の保湿剤、すなわちポリオール類、ポリオールエーテル類、糖又は糖誘導体、尿素化合物、無機塩などであり、最も好ましくはポリオール類、尿素化合物などである。これら樹脂成分以外の保湿剤は、樹脂成分と混合することなく木材に注入するのが好ましい。前記樹脂成分以外の保湿剤(特にポリアルキレングリコール類)であっても、木材中の空隙によって十分に保持され、次の乾燥工程を経ても木材から抜け出し難く、木材の保湿性を十分に高めることができる。
【0021】
ポリオール類と尿素化合物とを組み合わせて保湿剤とする場合、有効成分量(質量基準)の比(ポリオール類/尿素化合物)は、例えば、0.1/1以上、好ましくは0.2/1以上、より好ましくは0.3/1以上であり、例えば、10/1以下、好ましくは5/1以下、より好ましくは3/1以下である。
【0022】
注入液中の保湿剤濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0023】
注入後及び後述する天然乾燥後の木材1m3当たりの保湿剤の有効成分量(希釈剤を除いた量。吸収量ともいう。)は、例えば、1kg以上、好ましくは10kg以上であり、例えば、100kg以下である。
【0024】
尚、上記保湿剤を注入する際に、防腐剤や防蟻剤なども注入すれば、保湿性向上と共に防腐処理や防蟻処理などを施すことができるので好ましい。防腐剤や防蟻剤には特に制限がなく、公知の剤を全て使用できるが、代表的な防腐剤としては、高級有機第4級アンモニウム化合物、芳香族ベンゾイミダゾール誘導体である2-(4-チアゾリル)-1H-ベンゾイミダゾール、2-(4-チオシアノメチルチオ)-ベンゾチアゾール、芳香族キノリン誘導体である8-オキシキノリン銅、芳香族トリアゾール誘導体である1-[2-(2’,4’-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル-メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール、1-[2-(2’,4’-ジクロロフェニル1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール、α-(2,4-クロロフェニルエチル)-α-(1,1-ジメチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール、α-(4-クロロフェニル)-d-(1-シクロプロピルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール、酸化第二銅などの銅化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また代表的な防蟻剤としては、カーバメイト系化合物としてフェノブカルブ、カルバリル等、ピレスロイド化合物としてトラロメスリン、ペルメトリン、ビフェントリン等、その他、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、イミダクロプリド、アセタミプリド、ほう酸、高級第4級アンモニウム塩などが例示されるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
防腐剤、防蟻剤などは、上記保湿剤と共に希釈剤(水など)で希釈して注入液とし、この注入液を木材に注入するのが好ましい。注入液中の防腐剤、防蟻剤の濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
注入後及び後述する天然乾燥後の木材1m3当たりの防腐剤、防蟻剤の有効成分量(希釈剤を除いた量。吸収量ともいう。)は、例えば、1kg以上、好ましくは10kg以上であり、例えば、100kg以下である。
【0028】
また本発明においては、上記防腐剤や防蟻剤の他、例えば防火・防燃剤などを必要に応じて注入することも可能である。
【0029】
(3)乾燥
薬剤の注入を終えた木材は、次いで乾燥される。この乾燥では、人工加熱乾燥を行わず、天然乾燥(自然乾燥ともいう)することが重要である。注入木材を加熱すると、保湿剤による保湿効果が失われてしまうのに対して、天然乾燥することで保湿効果を失うことなく、木材製品を得ることができる。尚、天然乾燥は、人工加熱を伴わない全ての乾燥を含むものとし、屋外乾燥に限られず、室内乾燥であってもよい。また屋外乾燥の場合、雨よけの下での乾燥、日陰での乾燥などの他、天日乾燥を含んでもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0031】
実施例1
製材後、温度約20℃、相対湿度約40%の実験室に数日置いたスギ材から20mm角×長さ20mmの試験片を切り出した。この試験片に、防腐・防蟻剤としての「マイトレック(登録商標)ACQ」(コシイプレザービング社製の銅・アルキルアンモニウム化合物系木材防腐剤)及び保湿剤としての尿素並びに1,3-ブタンジオールを含む注入液(銅・アルキルアンモニウム化合物濃度4質量%、尿素濃度5質量%、1,3-ブタンジオール濃度2質量%;希釈剤は水)を減圧方式で注入した。本実施例・比較例欄では、前記防腐・防蟻剤及び保湿剤を総称して薬剤という。薬剤を注入した試験片を天然乾燥させ、処理木材を作製した。尚、防腐・防蟻剤及び保湿剤の作業液(水希釈液)としてのトータル注入量は、木材全体に対して700kg/m3であった。
【0032】
実施例2
防腐・防蟻剤を注入しない以外は、実施例1と同様にした。
【0033】
比較例1
防腐・防蟻剤及び保湿剤を注入した試験片を、温度105℃で72時間、人工加熱乾燥する以外は、実施例1と同様にした。
【0034】
比較例2
保湿剤を注入した試験片を、温度105℃で72時間、人工加熱乾燥する以外は、実施例2と同様にした。
【0035】
比較例3
防腐・防蟻剤及び保湿剤を注入しない以外は、実施例1と同様にした。
【0036】
比較例4
防腐・防蟻剤及び保湿剤を注入しない以外は、比較例1と同様にした。
【0037】
試験例
実施例1~2及び比較例1~4で得られた処理木材を、水(相対湿度100%)、飽和二クロム酸カリウム水溶液(相対湿度93%)、飽和塩化カリウム水溶液(相対湿度84%)、飽和硝酸ナトリウム水溶液(相対湿度74%)、飽和硝酸マグネシウム水溶液(相対湿度53%)、又は飽和塩化マグネシウム水溶液(相対湿度34%)と共に密閉容器に入れ、処理木材表面の含水率の変化を調べた。処理木材の含水率は、約30日以内に、相対湿度に応じて異なる一定の範囲に収束した。収束後の含水率の値を表1に示す。
【0038】
【0039】
表1に示される様に、特定の保湿剤を注入しない場合、乾燥条件によらず、保湿性は一般木材と同等であった(比較例3、4)。また特定の保湿剤を注入しても、人工加熱乾燥した場合には、保湿性は一般木材と同等であった(比較例1、2)。特定の保湿剤を注入し、天然乾燥することによって初めて高い保湿性を示すことができた(実施例1、2)。