(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ケトン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/66 20060101AFI20230215BHJP
C07C 49/782 20060101ALI20230215BHJP
B01J 31/26 20060101ALI20230215BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230215BHJP
【FI】
C07C45/66
C07C49/782
B01J31/26 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2017161095
(22)【出願日】2017-08-24
【審査請求日】2020-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】堀 容嗣
(72)【発明者】
【氏名】戸枝 一喜
(72)【発明者】
【氏名】妙田 貴生
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-262786(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103613487(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103539651(CN,A)
【文献】特開2011-098280(JP,A)
【文献】特開昭61-278354(JP,A)
【文献】KWON, M. S. et al.,Angewandte Chemie International Edition,2005年,Vol. 44,pp. 6913-6915
【文献】JAMWAL, N. et al.,International Journal of Biological Macromolecules,2011年,Vol. 49,pp. 930-935
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キチンを担体とし、パラジウムを坦持してなる固体触媒と、リン酸三カリウムとの存在下、
ベンジルアルコール類(化合物1)とケトン類(化合物2)とを反応させることを特徴とする、
1-フェニル-3-ケトン
類(化合物3)の製造方法。
【化1】
【請求項2】
前記担体が、農水産廃棄物から抽出されたものである、請求項1に記載の1-フェニル-3-ケトン
類の製造方法。
【請求項3】
前記1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体が
、1-(4-ベンジロキシ-4-メトキシフェニル)デカン-3-オン、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)デカン-2-オンからなる群から選択された少なくとも1種のパラドール類;1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘキサン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘキサン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘプタン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘプタン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)オクタン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)オクタン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)ノナン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)ノナン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)デカン-3-オン、1-(3,4-ジメトキシフェニル)デカン-3-オンからなる群から選択された少なくとも1種のメチルパラドール類;4-(4-ベンジロキシフェニル)ブタン-2-オン又は4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(ラズベリーケトン)であるラズベリーケトン類;1,3-ジフェニルプロパン-1-オン;からなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項1又は2に記載の1-フェニル-3-ケトン
類の製造方法。
【請求項4】
前記固体触媒の添加量が、0.01~1000重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の1-フェニル-3-ケトン
類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンジルアルコール類とケトン類とを反応させて1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体を製造する方法に関する。また、その反応において、不均一系有機合成反応用触媒(固体触媒)、中でも固体触媒が、農水産物より廃棄されるセルロース、キチン又はキトサン担体に主に遷移金属を担持した触媒を用いて1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体は、各種の農薬、医薬、香料の中間原料として、あるいは香料として有用な化合物である。例えばラズベリーケトン(化合物4)、ジンゲロン(化合物5)、6-パラドール(化合物6)、ヤクチノンA(化合物7)が知られている。
【0003】
【0004】
【0005】
【0006】
【0007】
従来、1-(4-ヒドロキシフェニル)-3-ケトン(以下、「ラズベリーケトン」と略す)の製造方法として、例えばフェノールと4-ヒドロキシ-2-ブタノンとからの製造方法(式2)(非特許文献1、特許文献1及び2)、またはフェノールとメチルビニルケトンとからの製造方法(式3)(特許文献2及び3)が報告されている。
【0008】
【0009】
【0010】
これら従来法は、いずれも触媒として可溶性の強酸類を使用するために、反応器の材質として耐蝕性の高い特殊なものを使用しなければならず、さらには反応混合物から用いた触媒を除去するために、大規模な精製工場が必要となるため経済的ではなかった。これらの欠点を克服するため、例えば特許文献1にはラズベリーケトンを製造する際にその触媒として、また特許文献2にはフェノールとメチルビニルケトンとからラズベリーケトンを製造する際にその触媒としてH型陽イオン交換樹脂を使用する方法が提案されているが、原料の4-ヒドロキシ-2-ブタノンやメチルビニルケトンが反応中に重合するという欠点があり収率も低かった。さらにその改良法も報告されているが、収率は高いとは言えない(特許文献3)。
【0011】
また、報告属ホウ素化合物とアリルアルコールとでラズベリーケトン類似化合物が合成されている(式4)が、触媒量が多く、酸素雰囲気下で反応を行わなければ高い選択性、収率で目的化合物が得られず、また廃液として毒性のあるホウ酸が反応基質に対して当モル量生成する(非特許文献2)。
【0012】
【0013】
さらに最近、脱二酸化炭素を利用したベンジル化反応が報告されている(式5、非特許文献3)が、反応原料のβ-ケトエステルを合成するのが難しい。
【0014】
【0015】
一般的には、例えば、6-パラドールを合成する場合にはアルデヒドとケトンのアルドール縮合反応を用いる(式6、特許文献4)(式7、非特許文献4)。しかしながら、式5の方法では、収率は低く、高収率で6-パラドールを確実に得るためには式6のごとく工程数が長くなってしまう。さらに、アルドール反応を用いる場合、ケトンの相手がアルコールよりも高価で空気に不安定なアルデヒドを使用する必要があるため扱いにくい。
【0016】
【0017】
【0018】
一方、最近、ケトンなどの求核試薬とアルコールを用いたケトンのα-アルキル化反応(式8)が多数報告されつつある(非特許文献5)。この反応は通常アルキル化剤として使用されるアルデヒドと比べて安定で比較的安価に手に入るアルコールを使用している点で非常に優れた反応である。しかしながら、ほとんどの反応がRu,Ir等の均一系錯体触媒を用いておりその活性もそれほど高くなく反応後に高価な触媒と生成物が分離できず触媒の再利用が困難であることが問題であった。
【0019】
【0020】
さらに、Pd/Al2O(OH)のような固体触媒がケトンのアルコールによるケトンのα-アルキル化反応に有効であることが報告されているが(非特許文献6)、この反応に必要なK3PO4等のアルカリ塩が、基質の3モル倍量と非常に多く使用されており、反応後に廃棄されるアルカリ塩が大量となり環境に対する負荷が高いことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特公昭57-27096号公報
【文献】特開昭64-34941号公報
【文献】特開平7-41452号公報
【文献】特開2009-196980号公報
【非特許文献】
【0022】
【文献】牧良三ら, 工業化学雑誌,社団法人日本化学会, 57巻, 第1号 (1954), pp.42~44
【文献】Mao Chen et al., Adv. Synth. Catal., 2012, vol. 354, pp.341~346
【文献】Sasa Wang et al., Chem. Commun, 2016, vol. 52, pp.9454~9457
【文献】Bhakta Prasad Gaire et al., PLOS ONE, DOI: 10. 1371/journal. pone. 0120203 P1~17, March 19 (2015)
【文献】Obora, ACS Catal., 2014, vol. 4, No. 11, pp. 3972-3981
【文献】Min Serk Kwon, et al., Angewante, Chem, Int. Ed., 2015, vol. 44, 6913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来、遷移金属を用いた均一系触媒は、非常に多くの反応を生み出しているが、高価な貴金属錯体触媒の回収再利用は困難である。一方、同様の反応が固体触媒によってなされるならば、反応生成物と触媒の分離は濾過などの方法によって容易になされ、濾過分離した固体触媒は再利用が容易にできる。さらに、例えば北海道ではカニの甲羅等、甲殻類の殻が年間数万トン廃棄されており、その甲羅から抽出できる数千トンのキチン若しくはキトサンや、ビートからショ糖を抽出した後のセルロースも年間数万トン排出され、一部は家畜の飼料になるが多くは廃棄されている。そのため、これらの廃棄物を有効利用するための技術開発が望まれていた。
【0024】
従って本発明の目的は、甲殻類又はビートなどの廃棄物を有効利用するべく、甲殻類から抽出されるキチン、キトサン、またはビートからショ糖を抽出した後のセルロースを利用して固体触媒を調製し、これを用いてケトン類の生産を効率よく行うための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、Pd/C等の一般的な触媒のほかに、種々の遷移金属を簡単な方法で、セルロースキチン乃至キトサンに担持した触媒がケトンのアルコールによるケトンのα-アルキル化反応に有効であることを見出した。特に、各種の農薬、医薬、香料の中間原料としてあるいは香料として有用な化合物である1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体、例えばラズベリーケトン、ジンゲロン、6-パラドール、ヤクチノンA等が容易に製造できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち本発明は、セルロース、キチン、キトサンからなる群から選択された少なくとも1種を担体とし、8~10族の遷移金属を坦持してなる固体触媒と、塩基との存在下、ベンジルアルコール類(化合物1)とケトン類(化合物2)とを反応させることを特徴とする、1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体(化合物3)の製造方法(式1)を提供するものである。
【0027】
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通常の遷移金属担持固体触媒の他に、セルロース、キチン若しくはキトサン担体に遷移金属を担持させた触媒により、ケトン類とアルコール類とから1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体、特に、パラドール類、ヤクチノン類、ラズベリーケトン類を容易に製造することができる。また、製造工程が少ないことによる経費の削減ができること、さらには製造装置の数が少なくなることによる設備投資額が削減されることにより、低コストで生産することが可能になる。
【0029】
本発明に使用される触媒は、種々の金属塩又は金属錯体を、溶媒中でセルロール、キチン若しくはキトサンと接触させるだけで容易に調製できる。このようにして得られたものを触媒として用いて、ケトンのアルコールによるケトンのα-アルキル化反応等を行うことができる。また、反応後の触媒は回収して再利用でき、工業的にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体(化合物3)の製造方法は、セルロース、キチン、キトサンからなる群から選択された少なくとも1種を担体とし、8~10族の遷移金属を坦持してなる固体触媒と、塩基との存在下、ベンジルアルコール類(化合物1)とケトン類(化合物2)とを反応させることを特徴とする。
【0031】
【0032】
本実施形態に使用する触媒は、周期表における第8~11族金属より選択される少なくとも1種の金属がセルロース、キチン又はキトサンに担持された金属担持物であり、炭素-炭素結合生成反応用触媒である。
【0033】
周期表における第8~11族の金属(遷移金属)としては、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Cu(銅)、Ag(銀)、またはAu(金)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、Ni、Ru、Pd、Ir、Pt又はCu等のメタノール等の有機溶媒に溶けやすい金属塩、金属錯体であることがより好ましい。
【0034】
前記金属塩としては、例えば、FeCl2、FeCl3、CoCl2、NiCl2、RuCl3、RhCl3、Pd(CH3COO)2、PdCl2、OsCl3、Ir(CH3COO)n、IrCl3、PtCl2、等を挙げることができる。
【0035】
前記金属錯体としては、例えば、NiCl2(PPh3)2、[Ru(p-cymene)Cl2]2、Rh(cod)Cl、Pd(CH3CO2)2、Pd(π-allyl)Cl2、Pd2(dba)3等を挙げることができる。
【0036】
担持させる金属としては粉末状でも溶液でもよく、さらに他の均一系金属触媒反応に用いた反応溶液もしくは金属含有廃棄物を用いてもよい。
【0037】
担体としては、農水産廃棄物に含まれるセルロース、キチン若しくはキトサンが挙げられる。ここで、「農水産廃棄物」とは、農産廃棄物及び水産廃棄物の総称をいう。セルロースは主として農産廃棄物から抽出されたものであり、キチン又はキトサンは主として水産廃棄物から抽出されたものである。
【0038】
担体には単一の金属を担持してもよいし、二種以上の金属を担持させてもよい。担持操作時に系内に窒素化合物やリン化合物などの金属配位化合物や、アルカリ塩や金属還元剤などの添加物を添加してもよい。担持させる方法としては、金属を溶解させた溶液中にセルロース、キチン若しくはキトサンを添加し吸着させて得る方法が好ましい。
【0039】
触媒として用いたセルロース、キチン若しくはキトサン担持触媒は、繰り返し使用が可能である。使用後は焼却し金属粉末或いは金属塩を得ることができ、新たなセルロース、キチン若しくはキトサン担体に担持させてもよく、精製後に触媒としてその他の反応に用いてもよい。また、触媒は反応系中に直接添加して反応させてもよく(バッチ反応)、ループリアクター等の通液反応における固体触媒として用いてもよい。
【0040】
前記触媒は、基質を溶解させた溶液に添加して反応させる方法(撹拌反応)、円筒等の管に充填し、管内に基質を溶解させた溶液を注入して反応を行う方法(通液反応)のいずれの方法も採用することができる。
【0041】
前記触媒の使用量は、0.01~1000重量%の範囲で種々の反応条件により適宜決定することができる。撹拌反応の場合、反応基質の重量に対して、例えば0.01~100重量%であることが好ましく、0.1~20重量%であることがより好ましい。通液反応の場合、反応基質の重量に対して、例えば0.01~1000重量%であることが好ましく、0.1~100重量%であることがより好ましい。
【0042】
前記触媒は、金属とセルロース、キチン若しくはキトサンより簡単に調整することができ、カップリング反応や水素化反応などの様々な反応に触媒として利用出来る。大気中においても安定のため取り扱いが簡便である。また前記触媒は反応溶液に可溶ではないため、反応系内から容易に回収して再利用でき、工業的にも有利である。
【0043】
本実施形態において、ベンジルアルコール類(1)は、例えば、ベンジルアルコール、(4-ヒドロキシフェニル)メタノール、(4-メチルフェニル)メタノール、(3-メトキシフェニル)メタノール、(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)メタノール、(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メタノール、(3,4-ジメトキシフェニル)メタノール等の置換フェニルメタノール類が挙げられる。
【0044】
本実施形態において、ケトン類(2)は、例えば、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-デカノン、2-ウンデカノン、2-ドデカノン、6-フェニル-2-ヘキサノン等の置換基が付いていても良い2-ケトン類が挙げられる。
【0045】
本実施形態において、カップリング反応化合物を製造する際には、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができるが、溶解しにくい固体基質を溶かす、または固体触媒を使用するために反応溶液の撹拌を容易にするという観点からは、溶媒の存在下で実施することが好ましい。
【0046】
前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系有機溶媒;水:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノール等のアルコール系有機溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0047】
前記溶媒の使用量は、反応条件等により適宜決定され得るが、撹拌反応の場合、基質化合物の重量(g)に対して、例えば0~30倍容量(ml)〔(ml/g)〕であることが好ましく、0~10倍容量(ml)〔(ml/g)〕であることがより好ましい。通液反応の場合、基質化合物の重量(g)に対して、例えば0~100倍容量(ml)〔(ml/g)〕であることが好ましい。
【0048】
本実施形態において、反応温度は0~180℃で行うことが好ましく、20~140℃で行うことがより好ましい。反応時間は、反応条件により異なるが、通常1~60時間である。
【0049】
前記触媒は、通常は窒素やリン配位子を必要としないが、反応速度を上げる、触媒活性の低下を抑えるなど、場合によってはリン配位子が存在してもよい。本実施形態において使用可能なリン配位子としては、例えば、トリフェニルホルフィン、トリブチルホスフィン、トリターシャリーブチルホスフィン等のアルキル、アリールホスフィン、BINAP、CHIRAPHOS、DIOP等の光学活性ホスフィンを挙げることができる。これらの配位子は、1種又は2種以上で使用することができる。
【0050】
本実施形態において、前記塩基は、無機塩基類又は有機塩基類を使用することができる。
【0051】
前記無機塩基類としては、例えば、LiOH、NaOH、KOH、LiHCO3、NaHO3、KHO3、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Li3PO4、Na3PO4、K3PO4、t-BuONa、t-BuOK、NaHからなる群から選択された少なくとも1種を挙げることができる。
【0052】
使用される塩基量は、使用される基質の0.01~3モル倍量であることが好ましい。塩基は基質の3モル倍量を超えて使用することもできるが、実際には廃棄物としての塩基量が多くなるため好ましくない。
【0053】
本実施形態により得られた1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体は、例えば、抽出、再結晶、各種クロマトグラフィーなど、通常用いられる操作により、単離精製を行うことができる。
【0054】
本実施形態により得られた1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体は、ヤクチノン類縁体、パラドール類縁体のようにメラニン生成抑制効果を持つものが多く発表されておる。また、ラズベリー様香気を有するラズベリーケトン類はフレーバー香料としても使用されている。
【実施例】
【0055】
1.触媒の調製
(1)3.5%Pd/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム36.9mg(0.16mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール20ml、粉末状chitin(北海道曹達(株)製)0.5gを順次加え、室温にて3日静置または撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させ黒色粉末を定量的に得た。
【0056】
(2)5%Pd/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム63.5mg(0.28mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール25ml、粉末状chitin(北海道曹達(株)製)0.52gを順次加え、室温にて3日静置または撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させ黒色粉末を定量的に得た。
【0057】
(3)5.5%Pd/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム63.5mg(0.28mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール25ml、粉末状chitin(北海道曹達(株)製)0.52gを順次加え、室温にて3日静置または撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させ黒色粉末を定量的に得た。
【0058】
(4)5%Pd/chitosanの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム63.5mg(0.28mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール25ml、粉末状chitosan(北海道曹達(株)製)0.52gを順次加え、室温にて3日静置または撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させ黒色粉末を定量的に得た。
【0059】
(5)3.5%Pd/chitosan(粒状)の調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム36.9mg(0.16mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール20ml、粒状chitosan(北海道曹達(株)製)0.5gを順次加え、室温にて3日静置または撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させて黒色粒状物を定量的に得た。
【0060】
(6)5%Pd/celluloseの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸パラジウム63.5mg(0.28mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール25ml、cellulose(ホクレン製)0.52gを順次加え、室温にて3日撹拌した。得られた混合物の溶媒を留去し、メタノールにて洗浄し、乾燥させ黒色粉末を定量的に得た。
【0061】
(7)3.5%Ir/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸イリジウム33.6mg(0.09mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール20ml、粉末状chitin(北海道曹達株式会社製)0.5gを順次加え、室温にて撹拌させた(
図1)。得られた混合物の溶媒を留去して大過剰のメタノールにて洗浄し、淡青色粉末を定量的に得た。
【0062】
(8)5%Ir/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に酢酸イリジウム52.8mg(0.14mmol)を入れ、窒素置換した後、メタノール20ml、粉末状chitin(北海道曹達株式会社製)0.45gを順次加え、室温にて撹拌させた(
図1)。得られた混合物の溶媒を留去して大過剰のメタノールにて洗浄し、淡青色粉末を定量的に得た。
【0063】
(9)3.5%Ru/chitinの調製
窒素雰囲気下、50mlガラス反応管に三塩化ルテニウム水和物35.0mgを入れ、窒素置換した後、メタノール20ml、chitin(北海道曹達株式会社製)0.5gを順次加え、室温にて3日静置または攪拌させた。得られた混合物の溶媒を留去して大過剰のメタノールにて洗浄し、褐色粉末を定量的に得た。
【0064】
2.1-フェニル-3-ケトン類及びその類縁体の製造
2-1.1,3-ジフェニルプロパン-1-オンの合成
(1)1,3-diphenylpropan-1-oneの合成
窒素雰囲気下、50ml反応管にアセトフェノン0.62ml(5mmol)、ベンジルアルコール0.67ml(6mmol)、リン酸三カリウム318mg(1.5mmol)、市販(NEケムキャット製)5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてトルエンを10ml添加し、110℃にて9時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率92.0%で1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(化合物8)が生成した。
【0065】
【0066】
(2)1,3-diphenylpropan-1-oneの合成
5%Pd/Cの代わりに上記1(3)で得られた5.5%Pd/chitinを106mg(0.05mmol/Pd)を使用した以外は前記2(1)と同様の反応を行い、収率98.0%で1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(化合物9)が生成した。
【0067】
(3)1,3-diphenylpropan-1-oneの合成
上記1(3)で得られた5.5%Pd/chitinを10.6mg(0.005mmol/Pd)、110℃にて24時間攪拌した以外は前記2(1)と同様の反応を行い、収率82.0%で1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(化合物10)が生成した。
【0068】
(4)1,3-diphenylpropan-1-oneの合成
5%Pd/Cの代わりに上記1(8)で得られた5%Ir/chitinを192mg(0.05mmol/Ir)、溶媒としてトルエンを10ml添加し、110℃にて9時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率85.4%で1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(化合物11)が生成した。
【0069】
(5)1,3-diphenylpropan-1-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管にアセトフェノン0.62ml(5mmol)、ベンジルアルコール0.67ml(6mmol)、リン酸三カリウム318mg(1.5mmol)、上記1(8)で得られた5%Ir/chitinを192mg(0.05mmol/Ir)、溶媒としてトルエンを10ml添加し、80℃にて15時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率70.2%で1,3-ジフェニルプロパン-1-オン(化合物12)が生成した。
【0070】
2-2.パラドール類の合成
パラドール類は、式9に示したように、バニリルアルコールのフェノール部分をベンジル保護した後カップリング反応を行い、脱ベンジルを行うことで合成できる。
【0071】
【0072】
(1)(4-(benzyloxy)-3-methoxyphenyl)methanolの合成
窒素雰囲気下にて500mlフラスコにバニリルアルコール19.5g(126.4mmol)、炭酸カリウム41.5g(300mmol)、メタノール200mlを溶媒として、撹拌しながらベンジルブロミド44.5g(260mmol)を還流温度にてゆっくり滴下した。得られた溶液を濃縮し酢酸エチル、水で分液し、有機層を濃縮し、再結晶で単離したところ、収率70.3%で(4-(benzyloxy)-3-methoxyphenyl)methanol(化合物13)を得た。
【0073】
【0074】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ3.90(s,3H),4.60(d,J=5.9Hz,2H),5.15(s,2H),6.79-6.86(m,2H),6.94(d,J=1.8Hz,1H),7.35(t,J=7.4Hz,2H),7.42(d,J=7.4Hz,2H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ56.0,65.3,71.1,111.0,114.0,119.3,127.2,127.8,128.5,134.1,137.1,147.7,149.8;cas33693-48-0
【0075】
(2)1-(4-benzyloxy-3-methoxyphenyl)decan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ノナノン2.60ml(15mmol)、前記2-2(1)で得たアルコール(5)1.22g(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを10ml添加し、110℃にて48時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率>99%で1-(4-ベンジロキシ-4-メトキシフェニル)デカン-3-オン(化合物14)が生成した。
【0076】
【0077】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.86(t,J=6.9Hz,3H),1.20-1.30(m,8H),1.50-1.60(m,2H),2.36(t,J=7.4Hz,2H),2.68(t,J=7.6Hz,2H),2.82(t,J=7.6Hz,2H),3.86(s,3H),6.63(dd,J=8.2,1.2Hz,1H),6.72(d,J=1.2Hz,1H),6.78(d,J=8.2Hz,1H),7.28(t,J=7.2Hz,1H),7.32-7.37(m,2H),7.41-7.44(m,2H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ14.0,22.6,23.8,29.0,29.2,29.4,31.6,43.1,44.4,56.0,71.2,112.3,114.3,120.1,127.2,127.7,128.5,134.5,137.3,146.5,149.6,210.6;casなし
【0078】
(3)1-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)decan-3-one(6-paradol)の合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に上記2-2(2)で得たケトン(化合物10)を1.84g(5mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてメタノールを10ml添加し、反応管内を水素置換した後、水素雰囲気下室温にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率99%で1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)デカン-2-オン(化合物6)が生成した。
【0079】
【0080】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.86(t,J=7.1Hz,3H),1.20-1.30(m,8H),1.54(sext,J=6.6 Hz,2H),2.36(t,J=7.4Hz,2H),2.68(t,J=7.6Hz,2H),2.81(t,J=7.6Hz,2H),3.86(s,3H),6.65(dd,J=8.0,1.7 Hz,1H),6.68(d,J=1.7 Hz,1H),6.81(d,J=8,6 Hz,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ14.0,22.6,23.8,29.0,29.2,29.5,31.6,43.1,44.6,55.9,111.0,114.3,120.7,133.1,143.8,146.3,210.6;cas 27113-22-0
【0081】
2-3.メチルパラドール類の合成
(1)1-(3,4-dimethoxyphenyl)hexan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ペンタノン2.2ml(20mmol)、ベラトリルアルコール0.85ml(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてトルエンを15ml添加し、100℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘキサン-3-オン(化合物15)が生成した。
【0082】
【0083】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.89(t,J=7.6Hz,3H),1.59(tq, J=7.2, 7.6Hz, 2H),2.36(t,J=7.2Hz,2H),2.70(t,J=7.6Hz,2H),2.84(t,J=7.6Hz,2H),3.85(s,3H),3.86(s,3H),6.69-6.73(m,2H),6.75-6.79(m,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ13.7,17.29.4,44.5,45.0,55.8,55.9,111.3,111.7,120.1,133.8,147.3,148.9,210.3;cas 39728-57-9
【0084】
(2)1-(3,4-dimethoxyphenyl)hexan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ペンタノン0.7ml(6.6mmol)、ベラトリルアルコール0.42ml(2.5mmol)、リン酸三カリウム1.59g(7.5mmol)、5%Pd/chitinを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてトルエンを10ml添加し、80℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘキサン-3-オン(化合物16)が生成した。
【0085】
(3)1-(3,4-dimethoxyphenyl)heptan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ヘキサノン2.0ml(16.5mmol)、ベラトリルアルコール0.85ml(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを15ml添加し、110℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘプタン-3-オン(化合物17)が生成した。
【0086】
【0087】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.88(t,J=7.4Hz,3H),1.27(tq,J=7.5,7.4Hz,2H),1.53(tt,J=7.4,7.5Hz,2H),2.37(t,J=7.4Hz,2H),2.69(t,J=7.5Hz,2H),2.83(t,J=7.5Hz,2H),3.84(s,3H),3.85(s,3H),6.69-6.73(m,2H),6.77-6.79(m,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ13.8,22.3,25.9,29.4,42.8,44.5,55.8,55.9,111.3,111.7,120.1,133.8,147.3,148.9,210.4;cas 39728-58-0
【0088】
(4)1-(3,4-dimethoxyphenyl)heptan-3-oneの合成
2-ヘキサノン0.81ml(6.6mmol)を用い、トルエンの代わりにキシレン10ml、反応温度を110℃にした以外は前記2-3(3)と同様に反応を行なったところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ヘプタン-3-オン(化合物18)が生成した。
【0089】
(5)1-(3,4-dimethoxyphenyl)octan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ヘプタノン2.3ml(17mmol)、ベラトリルアルコール0.85ml(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを15ml添加し、130℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)オクタン-3-オン(化合物19)が生成した。
【0090】
【0091】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.83(t,J=6.9Hz,3H),1.13-1.30(m,4H),1.51(tt,J=7.4,7.4Hz,2H),2.32(t,J=7.4Hz,2H),2.66(t,J=7.5Hz,2H),2.80(t,J=7.5Hz,2H),3.79(d,J=0.9Hz,3H),3.81(d,J=0.8Hz,3H),6.64-6.69(m,2H),6.73(d,J=8.8Hz,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ13.9,22.4,23.4,29.4,31.3,43.0,44.4,55.7,55.8,111.2,111.7,120.1,133.8,147.3,148.8,210.4;cas 39728-59-1
【0092】
(6)1-(3,4-dimethoxyphenyl)octan-3-oneの合成
2-ヘプタノン0.93ml(6.7mmol)を用いた以外は前記2-3(3)と同様に反応を行なったところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)オクタン-3-オン(化合物20)が生成した。
【0093】
(7)1-(3,4-dimethoxyphenyl)nonan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-オクタノン3.2ml(20mmol)、ベラトリルアルコール0.85ml(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを15ml添加し、130℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率100.0%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ノナン-3-オン(化合物21)が生成した。
【0094】
【0095】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.74(t,J=6.9Hz,3H),1.06-1.20(m,6H),1.41(m,2H),2.23(t,J=7.5Hz,2H),2.56(t,J=7.5Hz,2H),2.70(t,J=7.5Hz,2H),3.68(s,3H),3.70(s,3H),6.57(dd,J=8.0,1.5Hz,1H),6.58(d,J=1.5,1H),6.63(d,J=8.0Hz,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ14.0,22.6,23.8,29.0,29.2,29.4,31.6,43.1,44.5,55.8,55.9,111.3,111.7,120.1,133.8,147.3,148.8,210.5;cas 39728-60-4
【0096】
(8)1-(3,4-dimethoxyphenyl)nonan-3-oneの合成
2-オクタノン1.05ml(6.7mmol)を用いた以外は前記2-3(3)と同様に反応を行なったところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)ノナン-3-オン(化合物22)が生成した。
【0097】
(9)1-(3,4-dimethoxyphenyl)decan-3-oneの合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に2-ノナノン2.9ml(17mmol)、ベラトリルアルコール0.85ml(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを15ml添加し、130℃にて24時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率100.0%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)デカン-3-オン(化合物23)が生成した。
【0098】
【0099】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ0.87(t,J=7.0Hz,3H),1.22-1.28(m,8H),1.50-1.56(m,2H),2.37(t,J=7.4Hz,2H),2.70(t,J=7.4Hz,2H),2.83(t,J=7.5Hz,2H),3.84(s,3H),3.86(s,3H),6.69-6.73(m,2H),6.78(d,J=8.6Hz,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ13.9,22.4,23.4,29.4,31.3,43.0,44.4,55.7,55.8,111.2,111.7,120.0,133.8,147.3,148.8,210.4;cas39728-61-5
【0100】
(10)1-(3,4-dimethoxyphenyl)decan-3-one(15)の合成
2-ノナノン0.78ml(6.7mmol)を用いた以外は前記2-3(3)と同様に反応を行なったところ、収率>99%で1-(3,4-ジメトキシフェニル)デカン-3-オン(化合物24)が生成した。
【0101】
2-4.ラズベリーケトン類の合成
(1)4-(4-benzyloxyphenyl)butan-2-oneの合成
窒素雰囲気下にてグラスライナー入り100mlステンレス製耐圧管にアセトン1.83ml(25mmol)、(4-ベンジロキシフェニル)メタノール1.07g(5mmol)、リン酸三カリウム3.18g(15mmol)、5%Pd/Cを106.4mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてキシレンを15ml添加し、130℃にて120時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率92%で4-(4-ベンジロキシフェニル)ブタン-2-オン(化合物25)が生成した。
【0102】
【0103】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ2.13(s,3H),2.72(t,J=7.4Hz,2H),2.84(t,J=7.4Hz,2H),5.03(s,2H),6.89(d,J=8.6Hz,2H),7.09(d,J=8.6 Hz,2H),7.31-7.44(m,5H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ28.9,30.1,45.4,70.0,114.9,127.4,127.9,128.5,129.2,133.3,137.1,157.2,208.1;cas74432-58-9
【0104】
(2)4-(4-hydroxyphenyl)butan-3-one(raspberry ketone)の合成
窒素雰囲気下にて50ml反応管に前記2-4(1)で得たケトン(16)を95.3mg(0.4mmol)、5%Pd/Cを10mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてメタノールを10ml添加し、反応管内を水素置換した後、水素雰囲気下室温にて120時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率93%で4-(4-ロキシフェニル)ブタン-2-オン(ラズベリーケトン)(化合物4)が生成した。
【0105】
【0106】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ2.13(s,3H),2.72(t,J=7.2Hz,2H),2.82(t,J=7.2Hz,2H),6.74(d,J=8.4Hz,2H),7.03(d,J=8.4Hz,1H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ28.9,30.1,45.5,115.3,129.4,132.8,154.1,208.7;cas5471-51-2
【0107】
(2)4-(4-methoxyphenyl)butan-2-oneの合成
窒素雰囲気下にてグラスライナー入り100mlステンレス製耐圧管にアセトン0。92ml(12.5mmol)、(4-ベンジロキシフェニル)メタノール0.31ml(2.5mmol)、リン酸三カリウム1.59g(7.5mmol)、5%Pd/Cを106.4mg(0.05mmol/Pd)、溶媒としてトルエンを12.5ml添加し、80℃にて44時間攪拌した。得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、収率91.4%で4-(4-メトキシフェニル)ブタン-2-オン(化合物26)が生成した。
【0108】
【0109】
1HNMR(400Mz,CDCl3):δ2.13(s,3H),2.72(t,J=7.6Hz,3H),2.84(t,J=7.6Hz,3H),3.78(s,3H),6.82(d,J=8.6 Hz,2H),7.09(d,J=8.6Hz,2H);13CNMR(100MHz,CDCl3):δ28.9,45.4,55.2,112.7,129.2,157.9,208.1;cas104-20-1