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7227593伸縮性弾性体シート及びそれを有する伸縮導電配線モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】伸縮性弾性体シート及びそれを有する伸縮導電配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230215BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20230215BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20230215BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20230215BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230215BHJP
   A41D 13/00 20060101ALN20230215BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H01B7/04
H01B7/08
H01B17/56 A
H05K1/03 610H
H05K1/03 670
H05K1/02 J
A41D13/00 102
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018204265
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020072155
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】595015890
【氏名又は名称】株式会社朝日FR研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武岡 真司
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 俊宣
(72)【発明者】
【氏名】中西 孟徳
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘志
(72)【発明者】
【氏名】我妻 優
(72)【発明者】
【氏名】三原 将
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179716(WO,A1)
【文献】特開2015-198103(JP,A)
【文献】特開平06-140727(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168145(WO,A1)
【文献】特開2016-199819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H01B 7/04
H01B 7/08
H01B 17/56
H05K 1/03
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のゴム弾性シート片の長手方向と交差しつつ直列及び/又は並列に並ぶ複数の貫通スリット及び/又は複数の貫通穴と、
前記貫通スリット及び/又は前記貫通穴と前記ゴム弾性シート片の長辺との間で繋がった周縁連結部の複数からなる周縁連結部列と、
前記複数の貫通スリット及び/又は前記複数の貫通穴と交互に設けられ、前記ゴム弾性シート片の両方の前記長辺から互いに内向きに向き合いつつ切れ込んだ複数の切込スリット及び/又は複数の切込穴と、
夫々互いに向き合う前記切込スリット及び/又は前記切込穴の間で繋がった切込間連結部の複数からなる切込間連結部列とを、
有している伸縮性弾性体シートであって、
前記長手方向である縦方向に直交する横方向において、前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、これら列中程の少なくとも一つの前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、それぞれ列端の前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅よりも短くなっていることを特徴とする伸縮性弾性体シート。
【請求項2】
前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、これら列中程ほど前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、順に短くなっていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項3】
前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、夫々最短の前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、前記ゴム弾性シート片の横幅の1/50~1/2であることを特徴とする請求項1~2の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項4】
前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、夫々最短の前記周縁連結部の横幅及び/又は前記切込間連結部の横幅が、少なくとも0.1mmであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項5】
前記貫通スリット又は前記切込スリットが、夫々の端部で貫通孔を有し、及び/又は
前記貫通穴又は前記切込穴が、夫々の角で丸められていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項6】
前記ゴム弾性シート片が、シリコーンゴム製、シリコーン樹脂製、ポリウレタン製、塑性エラストマー製、エチレンプロピレンゴム製、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム製、フッ素ゴム製、及び/又は天然ゴム製であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項7】
導電層を有する可撓性の導電基材が、前記導電層の通電方向に沿って直列及び/又は並列に並ぶ抜きスリット及び/又は抜き穴で貫通した複数の抜き周縁部位を通電可能に夫々架橋ネックで繋ぎつつ有し、前記ゴム弾性シート片で前記導電基材の少なくとも一部を露出せずに封止されて被覆されており、
前記架橋ネックの複数からなる架橋ネック列の内、列中程の少なくとも一つの前記架橋ネックの横幅が、列端の前記架橋ネックの横幅よりも短くなっており、
絶縁性の前記ゴム弾性シート片が、前記抜き周縁部位に合わせて、前記抜き穴及び前記抜きスリットより小さな前記貫通スリット及び/又は前記貫通穴で貫通しており、
前記導電基材が、前記複数の抜き周縁部位同士の間に夫々、抜き間隙を有し、前記ゴム弾性シート片が、前記抜き間隙に合わせて、その抜き間隙より小さな前記切込スリット及び/又は前記切込穴で貫通していることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項8】
前記架橋ネック列の内、列中程ほど前記架橋ネックの横幅が、順に短くなっていることを特徴とする請求項7に記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項9】
少なくとも前記抜き周縁部位を覆いつつ前記導電基材の両面が前記ゴム弾性シート片により封止されて被覆されていることを特徴とする請求項7~8の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項10】
前記導電基材が、前記長手方向に沿って、単数又は複数、設けられていることを特徴とする請求項7~9の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項11】
前記抜き周縁部位が、前記長辺側で、それより内部側よりも太くなっていることを特徴とする請求項7~10の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項12】
前記導電基材が、可撓性支持体上に前記導電層を有するものであることを特徴とする請求項7~11の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項13】
前記導電層が、金属膜層、有機導電膜層、及び/又は導電性無機物含有導電膜層であることを特徴とする請求項7~12の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項14】
前記抜きスリットが、夫々の端部で貫通孔を有し、及び/又は
前記抜き穴と、前記抜き間隙と、前記抜き周と、前記架橋ネックとの少なくとも何れかが、夫々の角で丸められていることを特徴とする請求項7~13の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項15】
前記導電基材が、前記導電層の端部に、電気接続コネクタを有していることを特徴とする請求項7~14の何れかに記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項16】
前記ゴム弾性シート片が、導電性ゴム製であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項17】
前記ゴム弾性シート片が、その端部に電気接続コネクタを有していることを特徴とする請求項16に記載の伸縮性弾性体シート。
【請求項18】
請求項7~17の何れかに記載の伸縮性弾性体シートを単数又は複数有していることを特徴とする伸縮導電配線モジュール。
【請求項19】
前記伸縮性弾性体シートが、複数重なり合って一体化していることを特徴とする請求項18に記載の伸縮導電配線モジュール。
【請求項20】
複数の前記導電基材が夫々、別々に、端末で端子となっており、前記端末が外部端子に接続していることを特徴とする請求項18~19の何れかに記載の伸縮導電配線モジュール。
【請求項21】
複数の前記導電基材が、一対又は複数対の電極となっていることを特徴とする請求項18~20の何れかに記載の伸縮導電配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮方向への引張応力印加・解放によって3次元変形を伴う特異な伸縮特性を発現して伸長・復元でき破断し難い弾性体シート、及びそれを用いることによりウェアラブルデバイスやフレキシブル基板等の可撓性デバイスの配線部品となる伸縮導電配線モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、かつて硬質なシリコン基板やガラス基板等上に配線を付しICチップ等の電子部品を実装しているものであった。最近は、生体の動きに追従できるフレキシブル配線材料や配線基板等を有する可撓性電子部品として、ウェアラブルデバイスや医療デバイスや身体能力計測デバイスや産業ロボットの可動デバイスのような電子デバイスが、用いられるようになってきた。
【0003】
そのため電子デバイスには、軽量化・薄型化・小型化が求められると共に、十分な可撓性や伸縮性のようなフレキシブル性及び復元性と、伸長時に破断せず反復伸縮後に弾性低下しない堅牢性とが求められるようになっている。
【0004】
このようなエレクトロニクス分野における電子デバイスのフレキシブル化は、ウェアラブルデバイス等の台頭の影響で高い注目を集めており、各種メーカーが導電繊維を用いた伸縮配線を開発している。例えば、特許文献1に、糸表面が非導電性を示す非導電糸と前記非導電糸の糸表面に成膜された導電性被膜とを有する素材繊維により繊維構造を有するシート形体に形成されている異方性導電生地が開示されている。
【0005】
また、カールコードのような嵩張る配線器具よりも遥かに軽量で薄く小型であるシート状のフレキシブル基板が開発されている。例えば、特許文献2に、絶縁性基材と該絶縁性基材上に設けられた配線とを備えた伸縮性フレキシブル基板であって、絶縁性基材は面接合した複数の接合部を有して成り、接合部間に開口部が形成されており、ハニカム構造で図示されている伸縮性フレキシブル基板が、開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3に、切り紙構造の伸縮性に着目したもので、互い違いに形成された切り紙構造の切り込みを有するシートと、測定対象を保持する保持手段とを有するフォースセンサが、開示されている。
【0007】
また、非特許文献1にもゴムの横並びのスリット群を縦方向にずらしながら並べるように設けるスリット加工により十分な伸縮性を有するシートが、開示されている。
【0008】
従来知られている異方性導電生地やハニカム構造の伸縮性フレキシブル基板よりも簡素な構成で高伸展率と低応力とを発現でき、充分なフレキシブル性及び優れた復元性と堅牢性とを有する弾性体シートが望まれていた。また、単に同じ切り紙構造ユニットが繰り返されている切り紙構造切込みシートでは、切込み部が脆弱なため伸張の際に切込み尖端が起点となって無作為に破断し易いため、伸張の際にも破断し難く破断を制御できる弾性体シートが望まれていた。さらにこの弾性体シートを導電性にすることにより可撓性デバイスの配線部品となる高導電性と外部への高絶縁性を示しかつ高伸展率と低応力と十分なフレキシブル性と優れた復元性と堅牢性とを示す伸縮導電配線モジュールが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-128827号公報
【文献】特開2015-198101号公報
【文献】国際公開第2017/179716号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ruike Zhao et al., Kirigami enhances film adhesion, Soft Matter (2018). DOI: 10.1039/C7SM02338C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、充分な可撓性や伸縮性のようなフレキシブル性があって軽量化・薄型化・小型化が可能で、高伸展率と低応力を発現でき、優れた復元性と反復伸縮に耐え伸縮性低下を惹き起こさない堅牢性とを有し、伸長時に破断し難くて耐久性に優れた伸縮性弾性体シートを提供することを目的とする。さらに、その伸縮性弾性体シートを用い、内部での高い導電性と外部への高い絶縁性とを有し、高伸展率と低応力と十分なフレキシブル性と優れた復元性と堅牢性とを示す伸縮導電配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた伸縮性弾性体シートは、矩形のゴム弾性シート片の長手方向と交差しつつ直列及び/又は並列に並ぶ複数の貫通スリット及び/又は複数の貫通穴と、前記貫通スリット及び/又は前記貫通穴と前記ゴム弾性シート片の長辺との間で繋がった周縁連結部の複数からなる周縁連結部列と、前記複数の貫通スリット及び/又は前記複数の貫通穴と交互に設けられ、前記ゴム弾性シート片の両方の前記長辺から互いに内向きに向き合いつつ切れ込んだ複数の切込スリット及び/又は複数の切込穴と、夫々互いに向き合う前記切込スリット及び/又は前記切込穴の間で繋がった切込間連結部の複数からなる切込間連結部列とを、有している伸縮性弾性体シートであって、長手方向である縦方向に直交する横方向において、前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、これら列中程の少なくとも一つの前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、それぞれ列端の前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅よりも短くなっていることを特徴とする。
【0013】
この伸縮性弾性体シートは、例えば、前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、これら列中程ほど前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、順に短くなっているというものである。
【0014】
この伸縮性弾性体シートは、前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、夫々最短の前記周縁連結部及び/又は前記切込間連結部の横幅が、前記ゴム弾性シート片の横幅の1/50~1/2であることが好ましい。
【0015】
この伸縮性弾性体シートは、前記周縁連結部列と前記切込間連結部列との内、夫々最短の前記周縁連結部の横幅及び/又は前記切込間連結部の横幅が、少なくとも0.1mmであるというものであってもよい。
【0016】
この伸縮性弾性体シートは、前記貫通スリット又は前記切込スリットが、夫々の端部で貫通孔を有し、及び/又は前記貫通穴又は前記切込穴が、夫々の角で丸められているというものであってもよい。
【0017】
この伸縮性弾性体シートは、前記ゴム弾性シート片が、シリコーンゴム製、シリコーン樹脂製、ポリウレタン製、塑性エラストマー製、エチレンプロピレンゴム製、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム製、フッ素ゴム製、及び/又は天然ゴム製である物が挙げられる。
【0018】
この伸縮性弾性体シートは、導電層を有する可撓性の導電基材が、前記導電層の通電方向に沿って直列及び/又は並列に並ぶ抜きスリット及び/又は抜き穴で貫通した複数の抜き周縁部位を通電可能に夫々架橋ネックで繋ぎつつ有し、前記ゴム弾性シート片で前記導電基材の少なくとも一部を露出せずに封止されて被覆されており、前記架橋ネックの複数からなる架橋ネック列の内、列中程の少なくとも一つの前記架橋ネックの横幅が、列端の前記架橋ネックの横幅よりも短くなっており、絶縁性の前記ゴム弾性シート片が、前記抜き周縁部位に合わせて、前記抜き穴及び前記抜きスリットより小さな前記貫通スリット及び/又は前記貫通穴で貫通しており、前記導電基材が、前記複数の抜き周縁部位同士の間に夫々、抜き間隙を有し、前記ゴム弾性シート片が、前記抜き間隙に合わせて、その抜き間隙より小さな前記切込スリット及び/又は前記切込穴で貫通しているというものであってもよい。
【0019】
この伸縮性弾性体シートは、前記架橋ネック列の内、列中程ほど前記架橋ネックの横幅が、順に短くなっていることが好ましい。
【0020】
この伸縮性弾性体シートは、例えば少なくとも前記抜き周縁部位を覆いつつ前記導電基材の両面が前記ゴム弾性シート片により封止されて被覆されているというものである。
【0021】
この伸縮性弾性体シートは、前記導電基材が、前記長手方向に沿って、単数又は複数、設けられているものであってもよい。
【0022】
この伸縮性弾性体シートは、前記抜き周縁部位が、前記長辺側で、それより内部側よりも太くなっているものであってもよい。
【0023】
この伸縮性弾性体シートは、前記導電基材が、可撓性支持体上に前記導電層を有するものであってもよい。
【0024】
この伸縮性弾性体シートは、例えば前記導電層が、金属膜層、有機導電膜層、及び/又は導電性無機物含有導電膜層であるというものである。
【0025】
この伸縮性弾性体シートは、前記抜きスリットが、夫々の端部で貫通孔を有し、及び/又は前記抜き穴と、前記抜き間隙と、前記抜き周と、前記架橋ネックとの少なくとも何れかが、夫々の角で丸められているというものであってもよい。
【0026】
この伸縮性弾性体シートは、前記導電基材が、前記導電層の端部に、電気接続コネクタを有しているというものであってもよい。
【0027】
伸縮性弾性体シートは、前記ゴム弾性シート片が、導電性ゴム製であることを特徴とするものであってもよい。
【0028】
この伸縮性弾性体シートは、前記ゴム弾性シート片が、その端部に電気接続コネクタを有しているというものであってもよい。
【0029】
前記の目的を達成するためになされた伸縮導電配線モジュールは、伸縮性弾性体シートを単数又は複数有していることを特徴とするものである。
【0030】
この伸縮導電配線モジュールは、例えば前記伸縮性弾性体シートが、複数重なり合って一体化しているというものである。
【0031】
この伸縮導電配線モジュールは、複数の前記導電基材が夫々、別々に、端末で端子となっており、前記端末が外部端子に接続しているものであることが好ましい。
【0032】
この伸縮導電配線モジュールは、例えば複数の前記導電基材が、一対又は複数対の電極となっているというものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の伸縮性弾性体シートは、貫通スリットや貫通穴と切込スリットや切込穴とを有することにより、伸縮方向への引張応力印加に応じそれらが開いて三次元変形を伴う伸長と引張応力解放によってそれらが閉じる収縮との特異な伸縮特性を発現する。この伸縮性弾性体シートは、伸縮を繰り返しても、引張応力解放後に伸長前の元の形状へ速やかに回復する優れた復元性と堅牢性とを有している。従ってこの伸縮性弾性体シートは、ゴム弾性シート片の弾性特性と形状特性により、伸縮による形状の永久変形を抑制し、高い耐久性を有する。この伸縮性弾性体シートは、伸縮運動の際、とりわけ低伸長領域においてかかる引張応力が極めて小さく、特異な力学特性を持っており、実用領域で使い易い。
【0034】
しかも、単調な切り紙構造を繰り返して有する所謂切り紙シートは、伸長時に周縁連結部や切込間連結部に引張応力が集中し易いので列端や列中程の最も脆弱な箇所で不意に破断し易い。それに対し、この伸縮性弾性体シートは、周縁連結部や切込間連結部の横幅が列端よりも列中程で短くなっており、とりわけ列中程ほど短くなっていることにより、伸長時に最も断線が起きやすい配線端部の伸縮を抑制して、破断し難くなっている。
【0035】
この伸縮性弾性体シートは、抜き穴や抜きスリットを持ちつつ導電層を有する可撓性の導電基材を、貫通スリットや貫通穴を持ったゴム弾性シート片で封止して被覆することにより、導電基材ごと伸縮可能となっている。このような伸縮性弾性体シートは、導電基材が複数の抜き穴や抜きスリットを有していることによって、引張に応じた伸長とその後の解放に応じた復元とで変形しても導電層が追従でき、導電配線として耐久性に優れている。しかもこの伸縮性弾性体シートは、伸長によって導電基材中での導電層のパス長が変化せず、伸縮によっても抵抗値が殆んど変化しない。そのため、配線材料として、極めて優れている。
【0036】
また、この伸縮性弾性体シートは、伸縮性や絶縁性を維持するためにシリコーンゴム、シリコーン樹脂、ポリウレタン、塑性エラストマー、エチレンプロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム、フッ素ゴム、又は天然ゴムのような絶縁性弾性体で導電基材が封止されていると、反復伸縮後でも伸縮性と絶縁性とを当初のまま維持できる。この伸縮性弾性体シートは、導電基材の端末で外部機器や測定対象物に接続する場合に端末を除き露出させずに封止して被覆していることにより、そこで溶液中での検出や生体信号の検出でのノイズの受信を防ぐ伸縮導電配線材料として、有用である。
【0037】
この伸縮性弾性体シートは、可撓性の導電基材が可撓性支持体上に導電層を有しつつゴム弾性シート片で封止されていると、薄い導電層のみよりも一層優れた復元性を示し、伸張後の引張応力解放時に、伸長前の元の形状へ速やかに回復できる。材料の伸び縮みによって伸縮性を発現する従来の導電材料に対して、この伸縮性弾性体シートは、材料物性由来の伸縮性とは異なり、貫通スリット・貫通穴や切込スリット・切込穴のみならず抜きスリット・抜き穴による三次元的な構造変化により、導電性や可撓性を阻害しない形状のゴム弾性シート片で封止を行うことができる。それによって、変形時の力学特性がゴム弾性シート片のみではなく変形前後の立体的構造の三次元化変化に由来する特性も加わり、低抵抗値と低応力による高伸展率とを実現することができる。
【0038】
この伸縮性弾性体シートは、導電基材を有する代わりに、ゴム弾性シート片自体が導電性ゴムであって導電性を有することにより、簡易で伸縮性に優れた配線材料にすることも可能である。
【0039】
この伸縮性弾性体シートを用いると、可撓性であって伸縮性に優れたフレキシブル性を備え、軽量化・薄型化・小型化が可能で、内部での高導電性と外部への高絶縁性とを発現し、十分な伸縮性を有しつつ反復伸縮で伸縮性の低下を引き起こさず、耐久性に優れた、伸縮性導電配線モジュールにすることができる。
【0040】
これら伸縮性弾性体シートやそれを用いた伸縮性導電配線モジュールは、ゴム弾性シート片の貫通スリットや貫通穴と切込スリットや複数の切込穴とが交互に並んで設けられ、またそれに対応して導電基材の抜きスリットや抜き穴と抜き間隙とが交互に並んで設けられつつ、列中程で短くなっている切込間連結部や周縁連結部と架橋ネックとにより、伸長時に最も断線が起きやすい配線端部の伸縮を抑制し、破断し難くなっている。このような構造を有することにより、切れ目のない単なるゴム製弾性シートや弾性繊維では持ち得ない反復伸縮後での優れた復元性を有しつつ、極めて小さな変形応力で十分に変形させつつ、表面又は内部の導電基材を備えることで優れた耐久性と堅牢性と低抵抗値及び高伸縮性とを有する伸縮性配線として応用することができる。
【0041】
この伸縮性弾性体シートを伸縮導電配線材料として用いたこの伸縮性導電配線モジュールは、極めて小さな引張応力によって特に低伸長領域で構造の三次元化による特異的な変形が発生するので、ウェアラブルデバイスやフレキシブル基板等の可撓性デバイスのために実装可能である。
【0042】
この伸縮性導電配線モジュールは、超薄膜スキンコンタクト電極やフレキシブル基板、
ロボット用配線部材等に好適な伸縮性配線部材として有用である。
【0043】
伸縮性導電配線モジュールは、低伸長領域で引張応力が極めて小さくても十分に伸長するから、ウェアラブルデバイスとして使用するときに装着者に不快な装着感を感じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明を適用する伸縮性弾性体シートの使用状態を示す平面図である。
図2】本発明を適用する別な伸縮性弾性体シートの使用状態を示す平面図である。
図3】本発明を適用する別な伸縮性弾性体シートの分解状態を示す模式斜視図である。
図4】本発明を適用する別な態様の伸縮性弾性体シート中の導電基材とゴム弾性シート片とを、夫々示す平面図である。
図5】本発明を適用する別な伸縮性弾性体シートの使用状態を示す平面図である。
図6】本発明を適用する伸縮性弾性体シートと本発明を適用外のシートとの伸展率と引張応力との相関関係を示す図である。
図7】本発明を適用する伸縮性弾性体シートと本発明を適用外のシートとを引裂かれるまで引っ張ったときの破断場所の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0046】
本発明の伸縮性弾性体シート1の好ましい第一の形態は、図1を参照しながら説明すると、長尺で矩形のゴム弾性シート片10からなっているというものである。
【0047】
ゴム弾性シート片10は、長手方向Aに沿う長辺10aとそれに垂直な短辺10bとを有している。ゴム弾性シート片10は、縦方向となる長手方向Aと直交しつつ複数が長手方向Aに沿って直列に並ぶ貫通スリット13a・・・13eと、前記長手方向にて隣り合う貫通スリット13a・・・13e間及び両端の貫通スリット13a・13eよりも短辺10b側に交互に設けられつつ両方の長辺10aから互いに内向きに向き合いつつ切れ込んだ複数の切込スリット12a・・・12fとを、有している。切込スリット12a・・・12fは、中央寄りで少なくとも一つ、好ましくは中央の切込スリット12c・12d寄りに近づくほど、長く切れ込んでいる。貫通スリット13a・・・13eは、中央寄りで少なくとも一つ、好ましくは中央の貫通スリット13c寄りに近づくほど、長く切れ込んでいる。
【0048】
貫通スリット13a・・・13eと、切込スリット12a・・・12fとは、等間隔で並んでいる。貫通スリット13a・・・13eと、ゴム弾性シート片10の長辺10aとの間で繋がった周縁連結部15a・・・15eは、周縁連結部列15lineをなしている。夫々互いに向き合う切込スリット12a・・・12f同士の間で繋がった切込間連結部14a・・・14fは、切込間連結部列14lineをなしている。
【0049】
それによって、切込間連結部列14lineと周縁連結部列15lineとの内、これら列中程の少なくとも一つの切込間連結部14b・・・14e及び/又は周縁連結部15b・・・15dの横方向に向く横幅が、それぞれ列端の切込間連結部14a・14fや周縁連結部15a・15eの横幅よりも短くなっている。好ましくは、これら列中程ほど、即ち中央の切込間連結部14c・14dや中央の周縁連結部15cに近づくほど、それらの横幅が、順に短くなっている。なお、図1中、切込間連結部列14lineの列中程ほど横幅が、順に短くなっている例を幾分誇張して図示している。
【0050】
例えば、切込間連結部列14lineと周縁連結部列15lineとの内、これら列中程の切込間連結部14b・・・14eや周縁連結部15b・・・15dの横幅は、それぞれ列端の切込間連結部14a・14fや周縁連結部15a・15eの横幅よりも順次、0.1mm~3mmずつ、又は1%~30%ずつ短くなっている。
【0051】
最短の周縁連結部15cや切込間連結部14dの横幅は、好ましくはゴム弾性シート片10の横幅即ち短辺10bの長さの1/50~1/2である。この範囲を下回ると脆弱過ぎて伸長時に破断してしまい、一方この範囲を上回ると伸展率が低くなって十分な伸縮性が得られない。一層好ましくは1/10~1/3である。この最短の周縁連結部15cの横幅及び/又は最短の切込間連結部14dの横幅は、好ましくは0.1mm以上である。この範囲を下回ると脆弱過ぎて伸長時に容易く破断してしまう。一層好ましくは0.3mm以上である。
【0052】
この伸縮性弾性体シート1は、シリコーンゴム製、シリコーン樹脂製、フッ素ゴム製、エチレン-プロピレン-ジエン-メチレンゴム製、及び/又は天然ゴム製であって絶縁性であり、可撓性の導電基材を有しておらず、医療用サポーター、フレキシブルデバイスの補強材・保護部材に使用される。
【0053】
この伸縮性弾性体シート1は、導電性ゴム製、例えば導電性材料例えばカーボンペーストのような導電性粒子を含有する弾性ゴム製、導電性ゴム硬化成分で硬化させた弾性ゴム製であってもよい。表面が保護シートで被覆されていてもよい。
【0054】
この伸縮性弾性体シート1は、以下のようにして動作する。
【0055】
伸縮性弾性体シート1は、当初、ほぼ平坦である。伸縮性弾性体シート1を長手方向Aに沿って、端部11aと端部11bとが引き離されるように、比較的弱い引張応力で引っ張ると、切込スリット12a・・・12fと貫通スリット13a・・・13eとが多少捩じれて傾きながら開き、図1に示す(a)から(b)へと、形状変化する。切込間連結部列14lineは夫々の切込間連結部14a・・・14fの横幅が中程ほど順次短くなっている。切込間連結部14a・・・14fは、横幅が短くなっている切込間連結部列14lineの中央ほど開き易く、一方、列端ほど開き難くなっている。そのため、切込スリット12a・・・12fと貫通スリット13a・・・13eとが、中央寄り程多く捩じれて傾きつつ大きく伸び、一方、端寄り程少なく捩じれて傾きつつ小さく伸びる。このようにして、低い引張応力でも伸縮性弾性体シート1が十分に伸長する。
【0056】
切込スリット12a・・・12fと貫通スリット13a・・・13eとが開くことにより、不均等に捩じれつつ略菱形形状乃至略多角形へと変形することによって、伸長に寄与する。一方、切込間連結部14b・・・14eは、中程ほど横幅が短いから、実使用上、最も断線が起きやすい配線端部の伸縮を抑制する結果、断線が起きやすい特定箇所で集中的に破断してしまうのを防止している。
【0057】
その結果、伸縮性弾性体シート1は、切込間連結部14b・・・14eを引裂くほど強く引っ張らない限り、僅かな引張応力で、自在に伸長する。
【0058】
その後、伸縮性弾性体シート1は、引っ張られるのを止めその引張応力を解放すると、図1(a)に示すように、ゴム弾性シート片の弾性力に応じて、元の形状に戻るように、切込スリット12a・・・12fと貫通スリット13a・・・13eとが、捩じれを解消しながら傾きを減少しつつ、閉じる。このようにして、伸縮性弾性体シート1は、伸長する前の形状に復元する。
【0059】
この伸縮性弾性体シート1は、伸縮の際に、切込スリット12a・・・12fと貫通スリット13a・・・13eの形状を、変形させるだけであり、伸縮運動にかかる反発力が極めて小さい。とりわけ、低伸長領域で、応力変化が殆んど発生しない。しかも、伸縮性弾性体シート1は、伸縮を繰り返しても、永久変形や破損を引き起こさず堅牢性・耐久特性に優れている。
【0060】
本発明の伸縮性弾性体シート1の好ましい第二の形態は、図2及び図3を参照しながら説明すると、可撓性導電層20A及び可撓性支持体20Bを有する可撓性で平坦な導電基材20と、それを挟んでいる平坦な矩形で絶縁性のゴム弾性シート片10・30とを、有している。ゴム弾性シート片10・30は、図1で伸縮性弾性体シート1として示した通りである。
【0061】
導電基材20中、絶縁性樹脂で形成された可撓性支持体20Bと、その上に付された金属層である導電層20Aとは、同形状である。この導電基材20は、導電層20Aの通電方向(即ち長手方向A)に長尺のシート片状である。
【0062】
導電基材20は、複数で矩形の抜き穴27a・・・27eが貫通して、長手方向Aに沿って等間隔で直列に並んでいる。この抜き穴27a・・・27eは、当初、長手方向Aに伸長しておらず、長方形形状の短辺が長手方向Aに沿い長辺が長手方向Aと垂直となるように、貫通している。抜き穴27a・・・27eの外縁の夫々は、導電層20Aと可撓性支持体20Bとの一部を成す複数の抜き周縁部位28a・・・28eとなっている。導電基材20は、複数の抜き周縁部位28a・・・28e同士の隣り合う夫々の間とその両端よりも短辺10b側とに、抜き間隙26a・・・26fを有している。
【0063】
隣り合う抜き周縁部位28a・・・28e同士は夫々その横幅方向での真ん中寄りで、導電基材20の長手方向Aに沿って架橋ネック25a・・・25fで繋がっている。架橋ネック25a・・・25fは、抜き周縁部位28a・・・28eと同様に、導電層20Aと可撓性支持体20Bとの一部を成していることによって、導電層20Aで通電可能としている。架橋ネック25a・・・25fは、架橋ネック列25lineをなしている。
【0064】
架橋ネック列25lineの内、これら列中程の少なくとも一つの架橋ネック25b・・・25eの横幅が、それぞれ列端の架橋ネック25a・25fの横幅よりも短くなっている。好ましくは、これら列中程ほど、即ち中央の架橋ネック25cに近づくほど、それらの横幅が、0.1mm~3mmずつ、又は1%~30%ずつ順に短くなっている。
【0065】
最短の架橋ネック25cの横幅は、ゴム弾性シート片10・30で完全に被覆できる範囲であり、切込連結部位14dで示した前記範囲よりも、のりしろ分だけ、僅かに短い。最短の架橋ネック25cの横幅は、好ましくはゴム弾性シート片10の横幅即ち短辺10bの長さに対して1/120~1/3の比、又は0.1mm~4mmの横幅長である。この範囲を下回ると抵抗値が大きくなり過ぎる。一方、この範囲を上回ると十分な伸張性が得られない。一層好ましくは1/60~1/5の比、又は0.2mm~2mmの横幅長である。
【0066】
ゴム弾性シート片10・30は、長手方向Aで導電基材20と同長となっており、また長手方向Aに対する垂直方向で導電基材20よりも長くなって導電基材20を包み込むようにのりしろを有するようになっている。抜き周縁部位28a・・・28eは、架橋ネック25a・・・25fごと外界に露出しないように、ゴム弾性シート片10・30で、封止されて被覆されている。
【0067】
ゴム弾性シート片10・30は何れも、抜き周縁部位28a・・・28e内の抜き穴27a・・・27eの位置に合わせて、抜き穴27a・・・27eよりも小さな貫通スリット13a・・・13e及び33a・・・33eが夫々貫通している。ゴム弾性シート片10・30は、貫通スリット13a・・・13e及び33a・・・33eが抜き穴27a・・・27eよりも小さいことから、貫通スリット13a・・・13e及び33a・・・33eの周縁が互いに接合したそれののりしろで抜き周縁部位28a・・・28eを包み込むように封止し接着して被覆していることによって、抜き周縁部位28a・・・28eが外界に露出しないようになっている。
【0068】
また、ゴム弾性シート片10・30は何れも、抜き周縁部位28a・・・28e間の抜き間隙26a・・・26fの位置に合わせて、抜き間隙26a・・・26fよりも小さな切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fが夫々貫通している。切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fは、ゴム弾性シート片10・30の長手方向Aと直交するように両側の長辺10aから内向きに向きつつ、架橋ネック25a・・・25fにまで至らないように、切り込まれている。ゴム弾性シート片10・30は、切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fが抜き間隙26a・・・26fよりも小さいことから、切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fの周縁が互いに接合したそれののりしろで抜き周縁部位28a・・・28eを包み込むように封止し接着して被覆していることによって、抜き周縁部位28a・・・28e及び架橋ネック25b・・・25eが外界に露出しないようにしている。
【0069】
この伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10の切込スリット12a・・・12f及び貫通スリット13a・・・13eと、ゴム弾性シート片30の切込スリット32a・・・32f及び貫通スリット33a・・・33eとが、導電基材20の抜き周縁部位28a・・・28e間の抜き間隙26a・・・26fと抜き周縁部位28a・・・28e内の抜き穴27a・・・27eを通じて、重なり合って、そこでののりしろ同士で接着している。その結果、抜き周縁部位28a・・・28eが長方形形状から菱形形状への開閉可能となっており、また抜き間隙26a・・・26fが離反可能となっていることにより、この伸縮性弾性体シート1は、伸縮可能となっている。
【0070】
この伸縮性弾性体シート1は、おもて面側、裏面側にて絶縁性のゴム弾性シート片10・30で被覆されていることにより、短辺10b側での縁まで完全に封止され露出しないように被覆されていてもよいが、長手方向Aでの両端の端部21a・21bの縁が露出して、必要に応じ外部機器に接続可能となっていてもよい。
【0071】
この伸縮性弾性体シート1は、以下のようにして動作する。
【0072】
伸縮性弾性体シート1は、当初、平坦な導電基材20と平坦なゴム弾性シート片10・30とに応じて、ほぼ平坦である。伸縮性弾性体シート1を長手方向Aに沿って、端部11a・21a・31aと端部11b・21b・31bとが引き離されるように、比較的弱い引張応力で引っ張ると、図2に示す(a)から(b)へと、形状変化する。切込間連結部列14lineと架橋ネック列25lineとは、夫々の切込間連結部14a・・・14fと架橋ネック25a・・・25fとの横幅が中程ほど順次短くなっている。切込間連結部14a・・・14fと架橋ネック25a・・・25fとは、横幅が短くなっている切込間連結部列14lineと架橋ネック列25lineとの中央ほど開き易く、一方、列端ほど開き難くなっている。そのため、切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fと貫通スリット13a・・・13e及び33a・・・33eとが、抜き周縁部位28a・・・28eごと、中央寄り程多く捩じれて傾きつつ大きく伸び、一方、端寄り程少なく捩じれて傾きつつ小さく伸びる。このようにして、低い引張応力でも伸縮性弾性体シート1が十分に伸長する。
【0073】
このように不均等に伸びる際、夫々、抜き周縁部位28a・・・28eの短辺(長手方向Aに平行)は、引張応力に対抗して然程伸びず多少捩じれるだけだが、それに比べて、抜き周縁部位28a・・・28eの長辺(長手方向Aに垂直)は引張応力に対抗し切れず湾曲乃至屈曲し大きく捩じれる。また、切込隙スリット12a・・・12f及び32a・・・32fがそれに併せて、開く。そのとき、間隙スリット12a・・・12f及び32a・・・32fが両側から切れ込まれているが架橋ネック25a・・・25fにまで至っていないので架橋ネック25a・・・25f近傍は然程捩じれないで傾きながら開く。それに応じ、導電基材20とそれに接着しているゴム弾性シート片10・30とが同様に捩じれながら伸びる結果、伸縮性弾性体シート1が伸長する。このとき、抜き周縁部位28a・・・28e内部が長手方向に開いて抜き穴27a・・・27eの長方形形状から、架橋ネック25a・・・25fと抜き周縁部位28a・・・28e内部の短辺とを角とする捩じれた略菱形形状乃至略多角形へと変形することによって、伸長に寄与する。それに対して、架橋ネック25a・・・25fは延び得ず捩じれないから伸長に寄与せずむしろ抜き周縁部位28a・・・28eの変形過剰又は変形不足となるのを防いでいる。しかし、切込間連結部14b・・・14e及び34b・・・34fと架橋ネック25b・・・25eとは、中程ほど横幅が短いから、不均等に捩じれて傾きつつ伸びることと相俟って、実使用上、最も断線が起きやすい配線端部の伸縮を抑制し、破断してしまうのを防止している。
【0074】
その結果、伸縮性弾性体シート1は、導電基材20が引張応力でも比較的破断され難いことと相俟って、余程強く引っ張らない限り、自在に伸長する。
【0075】
その後、伸縮性弾性体シート1は、引っ張られるのを止めその引張応力を解放すると、図2(a)に示すように、ゴム弾性シート片10・30の弾性力に応じて、元の形状に戻るように、抜き周縁部位28a・・・28eと、切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fとが、捩じれを解消しながら傾きを減少しつつ、閉じる。そのとき、抜き周縁部位28a・・・28eの短辺部位は、伸びも縮みもしないが捩じれが解消され、抜き周縁部位28a・・・28eの長辺部位は引張応力が解放され、併せて切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32fは引張応力が解消され、それに伴い、それらの湾曲乃至屈曲が元に戻るように再変形する。それに応じ導電基材20とゴム弾性シート片10・30との捩じれと傾きとを解消しながら、伸縮性弾性体シート1が元の形状にまで縮む。このとき、抜き周縁部位28a・・・28e内部と間隙スリット12a・・・12f及び32a・・・32fとが長手方向Aに沿って閉じて縮むのに寄与する。それに対して、架橋ネック25a・・・25fは縮まないから伸縮に寄与せずむしろ抜き周縁部位28a・・・28eの元の形状に戻るのを助けている。このようにして、伸縮性弾性体シート1は、伸長する前の形状に復元する。
【0076】
この伸縮性弾性体シート1は、伸縮の際に、ゴム弾性シート片10・30の切込スリット12a・・・12f及び32a・・・32f並びに貫通スリット13a・・・13e及び33a・・・33eと、導電基材20の抜き穴27a・・・27eとによって変形させるだけであり、導電基材20をゴム弾性シート片10・30で封止していることで、伸縮運動にかかる引張応力が極めて小さくて済む。とりわけ、低伸長領域で、応力変化がほとんど発生しない。しかも、伸縮性弾性体シート1は、伸縮を繰り返しても、ゴム弾性シート片10・30及び導電基材20の形状の変化によって永久変形や破損を引き起こさず堅牢性・耐久特性に優れているばかりか、導電基材20の抵抗値変化が殆んど無く導電特性に優れている。
【0077】
この伸縮性弾性体シート1は、導電基材20での端子となり得る端部の縁を除き、ゴム弾性シート片10・30で確りと封止されているため、不意の漏電や放電を引き起こさず、電気特性に優れている。
【0078】
この伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・30の貫通スリット13・貫通穴や切込スリット12・切込穴と、必要に応じて架橋ネック25や抜き間隙26や抜きスリット・抜き穴27や抜き周縁部位28を有することにより、50%伸長変形時の引張応力が1MPa以下、好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下にすることができる。
【0079】
この伸縮性弾性体シート1は、50%伸長変形を100万回繰り返した際に形状変化が10%以下を示し、復元性・堅牢性に優れている。
【0080】
なお、この伸縮性弾性体シート1は、図1図3に示す形状で説明したが、各構造の形状は任意の形状を取り得る。
【0081】
なお、この伸縮性弾性体シート1は、初期状態が平面でなくてもよく、湾曲、屈曲、螺旋となっていてもよい。
【0082】
伸縮性弾性体シート1は、図4(a)に示すように、導電基材20の抜き穴27、抜き周縁部位28、架橋ネック25が夫々の内周の角で丸められていてもよく、抜き周縁部位28と架橋ネック25との接続角で丸められていてもよい。また、ゴム弾性シート片10・30の貫通穴、切込穴(不図示)が、角で丸められていてもよい。
【0083】
伸縮性弾性体シート1は、図4(b)に示すように、導電基材20の抜きスリット27(図3参照)、ゴム弾性シート片10・30の貫通スリット13・33や切込スリット12・32(図3参照)が端部で貫通孔29を有していてもよい。
【0084】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20の抜き周縁部位28の形状を、長方形形状に代えて、正方形形状や隅立て平角形形状や菱形形状や六角形形状や等脚台形形状のような多角形形状、楕円形状、反り菱形状、角丸長方形形状にしてもよく、又はそれらの組合せにしたものであってもよい。架橋ネック25と共に、蛇腹形状、ジグザク形状にしてもよい。
【0085】
例えば、図5に示すように、導電基材20の抜き周縁部位28の形状を蛇腹形状にする場合では、導電基材20は、端部21aと端部21bとの間に、抜き穴27で打ち抜かれてその周囲に形成された抜き周縁部位28と、その周縁部位28を繋ぎゴム弾性シート片10の長辺10a側である外側に形成された湾曲した架橋ネック25とが、繰り返して形成されており、隣り合う抜き周縁部位28・架橋ネック25の間に抜き間隙26が形成されている。図1~3と同様に、絶縁性のゴム弾性シート片10・30で封止されて被覆されている。湾曲した架橋ネック25の外周に合わせて丸められているゴム弾性シート片10・30が、抜き周縁部位28に合わせて、抜き穴27より小さな貫通スリット13で貫通している。ゴム弾性シート片10・30が、抜き間隙26に合わせて、その抜き間隙26より小さな切込スリット12で貫通しているというものである。架橋ネック25の列の内、列中程ほど架橋ネック25の横幅が、順に短くなっている。それに伴い、ゴム弾性シート片10・30の貫通スリット13とゴム弾性シート片10・30の長辺10aとの間で繋がった周縁連結部15の複数からなる周縁連結部列の内、列中程ほど周縁連結部15の横幅が、短くなっている。導電基材20は左右対称に1対となっている。
【0086】
さらに別な態様の伸縮性弾性体シート1は、導電基材20の抜き穴27を太めで長めの穴とし、ゴム弾性シート片10・30の貫通スリット13・33を細めで短めの穴としてもよく細めで短めのスリットにしてもよい。導電基材20の抜き穴27を太めで長めのスリットとし、ゴム弾性シート片10・30の貫通スリット13・33を細めで短めのスリットにしてもよい。
【0087】
さらに別な態様の伸縮性弾性体シート1は、導電基材20が、絶縁性樹脂で形成された可撓性支持体20Bの上の一部に付された金属層である導電層20Aを有するものであってもよい。
【0088】
さらに別な態様の伸縮性弾性体シート1は、対称であってもよいが、非対称であってもよい。
【0089】
伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・30を被覆していないときの抵抗値が最大で1kΩ、好ましくは最大で0.2kΩ、さらに好ましくは0.1kΩとなるように、導電層20Aを適宜選択したり、導電層20Aの太さを調整したりすることが好ましい。このような抵抗値を持つ伸縮性弾性体シート1は、均質でクラックの殆んど無い導電層20Aによって、調整することが可能である。
【0090】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20中、導電層20Aが導電性材料でできた可撓性のものであれば銅・銀・金のような金属や合金でできた金属膜層、カーボンペースト含有導電層膜のような導電性無機物含有導電膜層、有機導電体や有機導電性インクでできた有機導電膜層など任意に選択できる。中でも導電層20Aは、低抵抗かつ高伸展である銅・銀・金であることが好ましい。導電層20Aは、1nm~1mmの厚さに任意に設定できる。この範囲を下回ると導電層20Aを均質な層状に形成し難くなって導電性が悪くなる。一方この範囲を超えると厚過ぎて可撓性を維持し難くなる。その下限は、10nmであると一層好ましく、100nmであるとなお一層好ましい。その上限は、0.5mmであると一層好ましく、0.1mmであるとなお一層好ましい。
【0091】
導電基材20中、導電層20Aが可撓性支持体20Bに、印刷、エッチング、スパッタリング、貼付等で付されている。
【0092】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20中、可撓性支持体20Bが絶縁性材料でできた可撓性で弾性のものであればポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートで例示される汎用プラスチック製、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミドで例示されるエンジニアプラスチック製、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドで例示されるスーパーエンジニアプラスチック製など任意に選択できるが、中でもポリイミド製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリカーボネート製、ポリフェニレンサルファイド製などであると好ましい。可撓性支持体20Bは、1μm~1mmの厚さに任意に設定できる。この範囲を下回ると絶縁性や支持性を維持し難くなる。この範囲を超えると可撓性を維持し難くなる。その下限は、10μmであることが一層好ましく、50μmであるとなお一層好ましい。その上限は、0.5mmであることが一層好ましく、0.2mmであるとなお一層好ましい。
【0093】
伸縮性弾性体シート1は、可撓性支持体20Bが無いと、ゴム弾性シート片10・30だけでは復元力が不足し十分に伸縮し難い。
【0094】
伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・30が絶縁性材料でできた可撓性で被覆可能なものであれば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルポリシロキサン、ポリフルオロシロキサンのようなシリコーン樹脂製やシリコーンゴム製、軟質ポリウレタン、硬質ポリウレタンのようなポリウレタン製、ポリスチレンのような塑性エラストマー製、エチレンプロピレンジエンゴムのようなエチレンプロピレンゴム製、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-プロピレン、テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテルのようなフッ素ゴム製、天然ゴム製などを任意に選択できるが、中でも絶縁性・加工性に優れたシリコーンゴムやリコーン樹脂であると一層好ましい。ゴム弾性シート片10・30は、10μm~10mmの厚さに任意に設定できる。この範囲を下回ると耐久性や絶縁性を維持し難くなる。その範囲を超えると可撓性を維持し難かったり、無理に引っ張らないと伸長し難くなって伸縮性に劣るようになってしまう。その下限は、10μmであることが好ましく、20μmであると一層好ましい。その上限は、5mmであることが好ましく、1mmであると一層好ましく、200μmであるとなお一層好ましい。
【0095】
伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・30の硬度をショアA硬度で10~90の範囲にて任意に選択できる。中でも強度、伸長性の良いショアA硬度で10~50であると一層好ましい。
【0096】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20中、抜き穴27や抜きスリットで貫通した抜き周縁部位28同士が抜き間隙26を空けつつ架橋ネック25で繋がって長手方向に直列方向に一列に並びつつ、それの複数列が並列して並んでおり、抜き穴27や抜きスリットと抜き間隙26との位置に合わせて、ゴム弾性シート片10・30に抜き穴27や抜きスリットよりも小さな貫通スリット13・33と抜き間隙26よりも小さな間隙スリット12・32が夫々貫通していてもよい。
【0097】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20とゴム弾性シート片10・30とが、接着剤で接着されていてもよく、熱溶着されていてもよく、化学結合で接合されていてもよく、一体成形されていてもよい。
【0098】
伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・30の端部11a・11bで封止された導電層20Aの端部21に、電気接続コネクタ、例えば外部機器との接続用のリングスナップ端子、ケーブルクランプ端子を有していてもよい。
【0099】
伸縮性弾性体シート1は、導電層20Aの他端部21bがゴム弾性シート片10・30の少なくとも何れかの端部11b・31bから露出していることにより、端子となっていてもよい。その他、端部21bは、二股に分かれていてもよい。
【0100】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20とそれを挟んで、導電基材20の抜き周縁部位28及び架橋ネック25とを露出せずにゴム弾性シート片10・30で封止して被覆していることにより、3層の最小単位となっている。その最小単位を複数重ねた多層構造にしてもよい。
【0101】
伸縮性弾性体シート1は、ゴム弾性シート片10・導電基材20を交互に重ねさらに30で封止して被覆した多層構造にしてもよい。
【0102】
伸縮性弾性体シート1は、生体信号を検知する電極の対の一方として使用できる。
【0103】
伸縮性弾性体シート1は、導電基材20が、長手方向の一端側の端部21a・21b全体が、ゴム弾性シート片10・30の長手方向の一端側の端部11a・21b及び21a・11bで完全に封止され露出しないように被覆されていてもよい。その導電層20Aは、端部21a又は21bで外部機器に接続するための電気接続コネクタに繋がっている。
【0104】
伸縮性弾性体シート1が複数重なり合って一体化して、伸縮導電配線モジュールとすることができる。伸縮性弾性体シート1が複数重なる場合、上側の伸縮性弾性体シートの下層のゴム弾性シート片30と、下側の伸縮性弾性体シートの上層のゴム弾性シート片10とを、兼用してもよい。そのようにすることにより、伸縮性弾性体シート1を、ゴム弾性シート片・導電基材・ゴム弾性シート片・導電基材・ゴム弾性シート片の5層構造にして二つの導電基材により対の電極としてもよく、ゴム弾性シート片・導電基材・・・の順で重ねた9層構造にして四つの導電基材により2対の電極としてもよい。伸縮性弾性体シートが、複数重なり合って一体化していてもよい。
【0105】
伸縮導電配線モジュールは、複数の前記伸縮性弾性体シートが夫々、別々に、端末で端子となっており、前記端末が外部端子に接続していてもよい。
【0106】
このような伸縮性弾性体シート1、及びそれを用いた伸縮導電配線モジュールは、封止部分を電解質溶液に浸漬しても、電解液が導電基材20にまで滲出せず侵出しない。
【0107】
このような伸縮性弾性体シート1、及び伸縮導電配線モジュールは、1Hz~100kHzまでの信号を検知することができる。通常生体信号は、数Hz~数kHz、とりわけ筋電信号であれば100Hz前後であるから、この伸縮性弾性体シート1、及び伸縮導電配線モジュールで、十分に検出され得る。
【0108】
伸縮性弾性体シート1、及び伸縮導電配線モジュールは、例えば、以下のようにして製造される。
【0109】
先ず、導電基材20を作製する。導電基材20は、ポリイミドフィルムに、銅膜をスパッタリングで付したCuスパッタポリイミドを調製し、次いで図2及び図3のように打ち抜いて、長尺の導電基材20の中程に、抜き穴27、その間の抜き間隙26、それらによって必然的に形成される抜き周縁部位28、及び抜き穴27を繋ぐ架橋ネック25を形成し、導電基材20を得る。
【0110】
次に、ゴム弾性シート片10・30を作製する。シリコーンゴムシートを、導電基材20の外形よりものりしろの分だけ大き目に裁断しつつ、抜き周縁部位28内の抜き穴27の位置に合わせて抜き穴27よりも小さな貫通スリット13・33と、抜き周縁部位28間の抜き間隙26の位置に合わせて、抜き間隙26よりも小さな間隙スリット12・32とを、切れ込ませて、ゴム弾性シート片10・30を得る。
【0111】
最後に、抜き穴27と貫通スリット13・33とを位置合わせし、抜き間隙26と間隙スリット12・32とを位置合わせしつつ、のりしろで抜き周縁部位28を包み込むように封止し接着して被覆するように、導電基材20とゴム弾性シート片10・30とを重ね合せて接着剤で接合して、伸縮性弾性体シート1を得る。
【0112】
なお、導電基材20として、Cuスパッタポリイミドを用いる代わりに、銅膜を付した可撓性支持体をエッチングして形成してもよい。抜き間隙26、抜き穴27、及び架橋ネック25を形成した可撓性支持体に、カーボンペースト含有導電インキを付して導電インキ層膜のような導電性無機物含有導電膜層を形成したり、有機導電性インクを付して有機導電膜層を形成したりしてもよい。
【0113】
別の製法として、抜き穴27、抜き間隙26、及び架橋ネック25を形成した導電基材20に、のりしろの分だけ大き目のシリコーンゴムシート小片のゴム弾性シート片10・30を張り合わせてから、抜き周縁部位28内の抜き穴27の位置に合わせて抜き穴27よりも小さな貫通スリット13・33と、抜き周縁部位28間の抜き間隙26の位置に合わせて、抜き間隙26よりも小さな間隙スリット12・32とを、切れ込ませて、伸縮性弾性体シート1を得てもよい。
【0114】
さらに別な製法として、抜き穴27、抜き間隙26、及び架橋ネック25を形成した導電基材20の片面の何れかに、ゴム弾性シート片10又は30となるシリコーンゴムシート小片を接着剤で張り合わせてから、導電基材20の他方の面に、シリコーンゴムの硬化樹脂成分組成物を塗布、噴霧、浸漬して、他方のゴム弾性シート片30又は10を形成した後、前記同様に、抜き周縁部位28内の抜き穴27の位置に合わせて貫通スリット13・33と、抜き間隙26の位置に合わせて間隙スリット12・32とを、切れ込ませて、伸縮性弾性体シート1を得てもよい。
【0115】
さらに別な製法として、抜き穴27、抜き間隙26、及び架橋ネック25を形成した導電基材20の両面に、シリコーンゴムの硬化樹脂成分組成物を塗布、噴霧、浸漬して、ゴム弾性シート片10及び30を一挙に形成した後、前記同様に、抜き周縁部位28内の抜き穴27の位置に合わせて貫通スリット13・33と、抜き間隙26の位置に合わせて間隙スリット12・32とを、切れ込ませて、伸縮性弾性体シート1を得てもよい。
【0116】
必要に応じて、伸縮性弾性体シート1の積層構造の形成を繰り返して、伸縮導電配線モジュールを形成する。伸縮導電配線モジュールは、必要に応じ、導電層20Aの端部21aに、電気接続コネクタを取り付ける。電気接続コネクタは、半田付けで取り付けてもよく、リングスナップ端子を捻じ込んでかしめて取り付けてもよい。
【0117】
伸縮導電配線モジュールは、伸縮性弾性体シート1を多重に重ね、及び/又は、直列及び/又は並列に配し、着脱可能なディスポーザブルで清潔なウェアラブルデバイスとして、利用が可能である。この伸縮導電配線モジュールは、小さな筋肉、例えば顔面筋肉や掌の筋肉、大きな脚の筋肉の筋電位測定に使用するなど、幅広く利用できる。伸縮導電配線モジュールは、一対一組の両電極として、1~4組の2~8電極にして、生体筋肉の様々な部位での筋電位測定や三次元的な筋電位測定に、利用できる。
【0118】
伸縮導電配線モジュールは、リハビリテーションにおける筋電位を測定して回復状態を検査したり、ミオパチーと呼ばれる筋疾患の進行程度を検査したり、アスリートの運動能力を検査したりするのに用いられる。また職人の動きを筋電位の変化として記録して匠の技を後世に技術データとして残すなど、筋肉の動きに追従して、正確に筋電位を測定するのに用いることができる。
【0119】
この伸縮導電配線モジュールは、露出した端子を必要な個所にのみ配置しそれ以外を封止して絶縁性を保ちつつ、不要なノイズを検知せず、所望の電位を選択的に検知できるばかりか、繰り返し伸縮しても電動特性を維持できる。
【実施例
【0120】
以下に、本発明を適用する伸縮性弾性体シートと、本発明を適用外の伸縮性弾性体シートとを作製し、その性能を比較した例を示す。
【0121】
先ず、本発明を適用するもので図1に示すゴム弾性シート片10のみからなる伸縮性弾性体シート1を作製した実施例1と、本発明を適用外のシートを作製した比較例1及び2とについて、その性能を比較した。
【0122】
(実施例1)
シリコーンゴム原材料組成物としてモメンティブ社製LSR2660を、カレンダーロールを用いてシーティング後、熱硬化により成形した60μm厚にシリコーンゴムシートを、長辺10aが41mmで短辺10bが12mmにカットすることで伸縮性弾性体シート原材を作製した。図1で本数及び幅を模式的に示すように、6対の切込スリット12a・・・12f及びその各対で挟まれた6本の切込間連結部14a・・・14fからなる切込間連結部列14lineと、5本の貫通スリット13a・・・13e及びその一端から長辺10aまでの周縁連結部15a・・・15eからなる周縁連結部列15lineとを、有しており、長手方向Aとその垂直方向とで、対照となっている。最も両短辺10b寄りの切込スリット12a・12fの各対の一方のスリット同士は3mmずつ切れ込まれており、内側にずれる毎に中程の切込スリット12cに至るまで各対の一方のスリット同士は、1mmずつ順に長く切れ込まれ、4mm間隔となっている。その結果、切込間連結部列14lineの列端の切込間連結部14a・14fの横幅は6mmとなっており、列中央の切込間連結部14c、14dの横幅は2mmになっている。切込間連結部列14lineの切込間連結部14a・・・14fの間隔の真ん中に等間隔で貫通スリット13aが3mm、13bが4mm、13cが5mm、13dが4mm、13eが3mmの横幅で切り込まれて貫通している。各貫通スリット13a・・・13eのスリット端と両長辺10aとで夫々形成される周縁連結部15a・・・15eの横幅は15aが4.5mm、15bが4mm、15cが2.5mm、15dが4mm、15eが4.5mmとなっている。これを実施例1のグラデーション-切り紙構造のサンプルとして用いた。
【0123】
(比較例1)
実施例1と同様にして形成した厚さが60μm、長辺10aが41mm、短辺10bが12mmである伸縮性弾性体シート原材を、そのまま比較例1の非切り紙構造のサンプルとして用いた。
【0124】
(比較例2)
実施例1のように真中の貫通スリット13及び切込間連結部14の横幅にグラデーションを掛ける代わりに、真中の貫通スリット13及び切込間連結部14の横幅を4mmに一定としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の非グラデーション-切り紙構造のサンプルとして用いた。
【0125】
(引張試験1)
実施例1及び比較例1の各サンプルを、引張試験機にて10mm/分で引張り、サンプルが引裂かれるまでの応力-歪曲線を作成した。その結果を図6及び表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
図6及び表1から明らかな通り、グラデーション-切り紙構造である実施例1のサンプルは、非切り紙構造である比較例1、非グラデーション-切り紙構造である比較例2のサンプルに比べ、伸展率が大きく向上し、また変形に必要な応力は低下していることが見受けられた。
【0128】
次に、本発明を適用する図2及び図3に示すものでポリイミドフィルムに銅スパッタした導電材を複数の開口構造を持つ形状に加工し、スリット加工したシリコーンゴムで接着して絶縁封止を行うことによって、ゴム弾性シート片10・30と導電基材20とからなる伸縮性弾性体シート1を作製した実施例2と、本発明を適用外のシートを作製した比較例3及び4とについて、その性能を比較した。
【0129】
(実施例2)
本数及び幅を模式的に示すように図2図3に示す形状に、30μmの厚さで長手方向でシリコーンゴム製の伸縮性弾性体シート10・30の長辺が42mmで短辺が12mmである。伸縮性弾性体シート10・30は、実施例1で作製したものと同じように、切込スリット12a・・・12f・32a・・・32fと、貫通スリット13a・・・13e・33a・・・33eと、切込間連結部14a・・・14f・34a・・・34fとを有している形状にした。
導電基材20は、北川工業製REMI-FSを使用した。
その導電基材20は、抜き周縁部位28での最小配線幅を0.75mmとし、抜き穴27の横幅を8mm、抜き周縁部位28同士間の抜き間隙26a・・・26fは、長手方向Aでの間隙長さを3mmとしつつ長手方向Aと垂直方向に列の中程ほど中央向きに深く抉られていることによって架橋ネック列25lineの列端の架橋ネック25a・25fの横幅は、1.8mmであり、中程の架橋ネック25cに至るまで0.4mmずつ順に短くなっている。
得られた導電基材20及び伸縮性弾性体シート10・30をそれぞれ加工し、その後、導電基材20にシリコーン系接着剤(商品名スーパーXゴールド;セメダイン株式会社製)を薄く塗布し、伸縮性弾性体シート10・30にて挟み込んで接着した。伸縮性弾性体シート10・30には、1mmずつののりしろを備えた、グラデーション-切り紙構造で導電性を有する伸縮性弾性体シート1のサンプルを得た。
【0130】
(比較例3)
実施例2のように厚さが30μm、長辺10aが42mm、短辺10bが12mmである伸縮性弾性体シート10・30を用い、実施例2における導電基材20に代えて架橋ネック25a・・・25fと抜き間隙26a・・・26fと抜き周28a・・・28eとを、架橋ネック25c、抜き間隙26d、抜き周28cと同様にしてグラデーションを無くしたこと以外は、実施例2と同様にして、非グラデーション-切り紙構造で導電性を有するシートのサンプルを得た。
【0131】
(引張試験1及び引張試験2)
前記の引張試験1と同様にして、伸展率、最大引張強度、伸展率50%に伸長させる引張応力について、引張試験を行った。また、図7に示すように、実施例2(同図(a))と比較例3(同図(b))について破断箇所の場所とその箇所での破断サンプル数とを計測する引張試験2を行った。その結果をまとめて表2に示す。
【0132】
(抵抗値測定試験)
抵抗値を測定した結果をまとめて表2に示す。
【表2】
【0133】
表2から明らかな通り、グラデーション-切り紙構造である実施例2のサンプルは、非切り紙構造である比較例3のサンプルに比べ、最大引張強度と伸展率50%に伸長させる引張応力を維持しつつ伸展率が向上した。また抵抗値においても導電フィルム20の面積が大きいため向上した。また破断箇所は、本発明を適用する実施例2では最も短い架橋ネック部で専ら引裂かれているのに対し本発明を適用外の比較例3では破断位置に選択性・特異性がないことが分かった。
【0134】
このように本発明を適用する伸縮性弾性体シート及び伸縮導電配線モジュールは、低い応力で伸縮変形させることができ、高い形状回復性を発現することが確認でき、さらに導電性に優れていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
この伸縮性弾性体シートは、可撓性であって十分な伸縮性を有しつつ反復伸縮で伸縮性の低下を引き起こさず、優れた耐久性を有するので、伸縮が必要な、医療用サポーターなどの伸縮基材として、有用である。
【0136】
また、この伸縮性弾性体シートは、導電基材を有していたり、導電性ゴムで形成されていたりすると、伸縮性を有しつつ優れた導電性を示すので、伸縮性導電配線モジュールの配線材料として有用である。
【0137】
この伸縮性導電配線モジュールは、伸縮性配線を必要とするウェアラブルデバイスやフレキシブル基板等の可撓性デバイス、ロボット等に用いられる。
【符号の説明】
【0138】
1は伸縮性弾性体シート、10はゴム弾性シート片、10aは長辺、10bは短辺、11a・11bは端部、12・12a・・・12fは切込スリット、13・13a・・・13eは貫通スリット、14・14a・・・14fは切込間連結部、14lineは切込間連結部列、15・15a・・・15eは周縁連結部、15lineは周縁連結部列、20は導電基材、20Aは可撓性導電層、20Bは可撓性支持体、21a・21bは端部、25・25a・・・25fは架橋ネック、25lineは架橋ネック列、26・26a・・・26fは抜き間隙、27・27a・・・27eは抜き穴、28・28a・・・28eは抜き周、29は貫通孔、30はゴム弾性シート片、31a・31bは端部、32・32a・・・32fは切込スリット、33・33a・・・33eは貫通スリット、34・34a・・・34fは切込間連結部、34lineは切込間連結部列、Aは長手方向である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7