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特許7227603スポット溶接システム及びスポット溶接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】スポット溶接システム及びスポット溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
B23K11/11 593
B23K11/11 593A
B23K11/11 570
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019042362
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020142290
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(72)【発明者】
【氏名】中田 慧一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-114479(JP,A)
【文献】特開2004-337942(JP,A)
【文献】特開平05-329659(JP,A)
【文献】特開平07-314154(JP,A)
【文献】米国特許第06089440(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状の第1ワークに、該第1ワークよりも小さく形成された複数の小物ワークを該第1ワークに位置決めしてスポット溶接するスポット溶接システムであって、
前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられ、前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持・搬送する第1搬送ロボットと、
前記第1搬送ロボットと対向する位置に配置され、前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられ、前記第1搬送ロボットに把持された前記第1ワーク及び前記小物ワークを受け渡され・把持できる第2搬送ロボットと、
さらに前記第1搬送ロボットと前記第2搬送ロボットとを結ぶラインの両側に、それぞれ2以上配置されたスポット溶接ロボットとを有し、
前記第1搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記ラインと直交するような姿勢で前記ライン上に保持した状態で、前記複数のスポット溶接ロボットが前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行うよう構成され、
前記第1搬送ロボットから前記第2搬送ロボットへ前記第1ワーク及び前記小物ワークを受け渡し、当該第2搬送ロボットが前記第1ワークのパネル面が前記ラインと直交するような姿勢で前記ライン上に保持した状態で、前記複数のスポット溶接ロボットが前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を更に行うよう構成されていること、
を特徴とするスポット溶接システム。
【請求項2】
パネル状の第1ワークに、該第1ワークよりも小さく形成された複数の小物ワークを該第1ワークに位置決めしてスポット溶接するスポット溶接方法であって、
前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられた第1搬送ロボットを用いて前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持・搬送する搬送工程と、
前記第1搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記第1搬送ロボットと前記第1搬送ロボットと対向する位置に配置された第2搬送ロボットとを結ぶラインと直交するような姿勢で前記ライン上に保持して、前記ラインの両側にそれぞれ2以上配置されたスポット溶接ロボットで前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行う溶接工程1と、
前記第1搬送ロボットから前記第2搬送ロボットへと前記第1ワーク及び小物ワークを受け渡す、受け渡し工程と、
前記第2搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記ラインと直交するような姿勢で前記ライン上に保持して、前記複数のスポット溶接ロボットで前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行う溶接工程2と、
を有することを特徴とするスポット溶接方法。
【請求項3】
前記第1搬送ロボット及び前記第2搬送ロボットが保持する前記第1ワークの面に対し互いに逆方向からスポット溶接装置がアプローチするよう、前記複数のスポット溶接ロボットが配置されていることを特徴とする、
請求項1に記載のスポット溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用ドア等の蓋物を生産する現場において、ドアパネルと各種補強部材等の複数の小物ワークを接合する場合に使用されるスポット溶接システム及びスポット溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアの生産現場では、ドアを構成するスチール製のパネルや各種補強部材等の小物ワークをスポット溶接装置でスポット溶接することが広く行われている。例えばドアのインナーパネルと各種レインフォースメント、ヒンジなど小物ワークの接合は通常スポット溶接でおこなわれる。以前からこのドアパネルのスポット溶接工程には、様々な工夫を織り込んだ自動化システムが提案されており、特に近年はスポット溶接ロボットを用いた自動化システムが数多く提案されている。
【0003】
特許文献1には、スポット溶接を行う生産設備において製品の種類毎に必要になる専用の設備を出来る限り排除して、汎用の設備で生産できるようにする発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明では、複数のスポット溶接ロボットを用い一部のロボットをワークの把持に用い、他のロボットでスポット溶接を行わせる。さらにドアパネルと小物ワークの双方に位置決め用の凸部を設け、部品同士で位置決めすることで、専用冶具を排除した汎用性の高いワークのスポット溶接作業を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/174080公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこのシステムでは基本的にワークを水平に近い状態で把持して、複数のロボットのスポット溶接ガンがほぼ同じ姿勢でワークにアプローチするため、スポット溶接ガン同士の干渉が避けられない。従って近接した部位を複数のロボットで同時にスポット溶接することが出来ず、同時にスポット溶接できる部位に制約があるため作業時間の短縮に限界がある。すなわちこのシステムは専用のジグを廃止して汎用のロボットのみで作業を行うことにより汎用性・共通性を追及したシステムであり、作業時間の短縮には限界があるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決することを目的になされたものであり、汎用ロボットで構成した、パネル状部ワークと小物ワークのスポット溶接システムにおいて、作業時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、スチール、アルミなどを材料とするパネル状ワークと複数の小物ワークを搬送ロボットで把持しながら、スポット溶接ロボットを用いて通電・加圧しながら接合するスポット溶接システム全般に適用できる発明である。本発明においてスポット溶接とは、スチール、アルミ材料に適用する抵抗スポット溶接を表す。
【0008】
請求項1の発明は、パネル状の第1ワークに、該第1ワークよりも小さく形成された複数の小物ワークを該第1ワークに位置決めしてスポット溶接するスポット溶接システムであって、前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられ、前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持・搬送する第1搬送ロボットと、前記第1搬送ロボットと対向する位置に配置され、前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられ、前記第1搬送ロボットに把持された前記第1ワーク及び前記小物ワークを受け渡され・把持できる第2搬送ロボットと、さらに前記第1搬送ロボットと前記第2搬送ロボットとを結ぶラインの両側に、それぞれ2以上配置されたスポット溶接ロボットとを有し、前記第1搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記ラインと略直交するような姿勢で前記ライン上に保持した状態で、前記複数のスポット溶接ロボットが前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行うよう構成され、前記第1搬送ロボットから前記第2搬送ロボットへ前記第1ワーク及び前記小物ワークを受け渡し、当該第2搬送ロボットが前記第1ワークのパネル面が前記ラインと略直交するような姿勢で前記ライン上に保持した状態で、前記複数のスポット溶接ロボットが前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を更に行うよう構成されていること、を特徴とする。
【0009】
この発明によれば、対向して第1搬送ロボットと第2搬送ロボットを配置し、互いに第1ワーク及び小物ワークを受け渡し可能に構成し、前記ワークを両ロボットを結ぶライン上に、ワークの面が前記ラインと直交するように保持して、前記ラインの両側にそれぞれ複数配置した溶接ロボットにより溶接を行なわせる。この構成により、溶接ロボットの適正な配置が行なわれ、装置スペースを縮小できるとともに、多数の溶接ロボットで同時に作業できるので溶接時間の短縮を図ることが出来る。また第1搬送ロボットから第2搬送ロボットにワークを受け渡して更に溶接を行なうことで第1搬送ロボットが次のサイクルの準備作業を行うことができるので、システム全体としての作業負荷が平準化でき作業時間が短縮できる。
【0010】
請求項2の発明は、パネル状の第1ワークに、該第1ワークよりも小さく形成された複数の小物ワークを該第1ワークに位置決めしてスポット溶接するスポット溶接方法であって、前記第1ワーク及び前記小物ワークを位置決めして把持する冶具が取り付けられた第1搬送ロボットを用いて前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持・搬送する搬送工程と、前記第1搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記第1搬送ロボットと前記第1搬送ロボットと対向する位置に配置された第2搬送ロボットとを結ぶラインと略直交するような姿勢で前記ライン上に保持して、前記ラインの両側にそれぞれ2以上配置されたスポット溶接ロボットで前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行う溶接工程1と、前記第1搬送ロボットから前記第2搬送ロボットへと前記第1ワーク及び小物ワークを受け渡す、受け渡し工程と、前記第2搬送ロボットが前記第1ワーク及び前記小物ワークを把持して、前記第1ワークのパネル面が前記ラインと略直交するような姿勢で前記ライン上に保持して、前記複数のスポット溶接ロボットで前記第1ワークと前記小物ワーク間のスポット溶接を行う溶接工程2と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2は請求項1を方法の発明として規定したものであるが、請求項1と同様に装置スペースを縮小できるとともに作業時間の短縮を図ることができる。またシステム全体としての作業負荷が平準化でき作業時間が短縮できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載のスポット溶接システムの構成に加えて、前記第1搬送ロボット及び前記第2搬送ロボットが保持する前記第1ワークの面に対し互いに逆方向からスポット溶接装置がアプローチするよう、前記複数のスポット溶接ロボットが配置されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、第1ワークの面に対し互いに逆方向からスポット溶接装置がアプローチするので、スポット溶接ロボットは互いに動作範囲が重複することなく効率的にワークの表裏両側からアプローチでき、作業効率をさらに上げ作業時間の短縮を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、スポット溶接ロボットが互いの干渉を最小限にするようパネル状のワークにアプローチを行うので、同時に複数部位をスポット溶接出来、作業時間の短縮を実現することが出来、タクトが短縮できる。また効率的なスポット溶接ロボットの配置ができるので装置スペースが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】前工程からインナーパネルを第3搬送ロボットが受けとる一方、第1搬送ロボットの第1搬送冶具に小物部品をセットした状態のスポット溶接システム平面図である。
図2】第3搬送ロボットから第1搬送ロボットにインナーパネルを受け渡す動作を行なった状態のスポット溶接システム平面図である。
図3】第1搬送ロボットでワークを所定の部位へ搬送し、所定の姿勢で保持した状態のスポット溶接システム平面図である。
図4】第1搬送ロボットでワークを所定の位置に保持しながら、4台のスポット溶接ロボットでスポット溶接を行なっている状態のスポット溶接システム平面図である。
図5】第1搬送ロボットからワークを第2搬送ロボットへ受け渡している状態のスポット溶接システム平面図である。
図6】第2搬送ロボットへワークが受け渡され、第1搬送ロボットが次のサイクルの準備作業のため、小物ワークのセット位置に戻った状態のスポット溶接システム平面図である。
図7】第2搬送ロボットでワークを所定の位置に保持しながら、4台のスポット溶接ロボットでスポット溶接を行なっている状態のスポット溶接システム平面図である。
図8】第1搬送冶具の平面図(a)、正面図(b)である。
図9】第1搬送冶具の斜視図である。
図10】第2搬送冶具の平面図(a)、正面図(b)である。
図11】第2搬送冶具の斜視図である。
図12】本スポット溶接システムの制御ブロック図である。
図13】WO2015/174080に係る加圧接合装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1図7は工程内の各ステップ毎のスポット溶接システムの状態を平面図として表したものである。このスポット溶接システムは搬送ロボット3台、スポット溶接ロボット4台で構成されている。またこのスポット溶接システムはドア組み立てラインの一部を構成しており、本システムでは前工程からインナーパネルを受け取り、当該パネルに各種レインフォースメント等の小物ワークをスポット溶接で組み付けて、インナーパネルアッシーとして小物ワークが組み付いた状態にして後工程に受け渡す。
【0018】
まず図1に示すように第3搬送ロボット30が前工程からインナーパネル1を受け取ってくる。前工程の搬送ロボットあるいは前工程に備えられた冶具等から、インナーパネルを第3搬送ロボット30に備えられた第2搬送冶具21で把持した状態で受け取ってくる。第2搬送冶具21には図11に示すようにピンクランプ23が3箇所設けられており、これらのピンクランプがインナーパネル1に設けられた3つの孔に挿通し、ピンクランプに設けられた爪(図示せず)が作動することによりインナーパネル1は位置決め把持される。
【0019】
同時に第1搬送ロボット10は小物ワークのセット位置にあって各種レインフォースメント等の小物部品が、第1搬送ロボット10に備えられた第1搬送冶具11にセットされる。現状このセット作業は作業者により行なわれているが、ロボットによりこのセット作業を行なわせることも可能である。
【0020】
図8図9に第1搬送冶具を図示する。平面図8(a)に示すように、第1搬送冶具11は第1搬送ロボット10のエンドイフェクタとして装着されている。第1搬送冶具11には装着する小物ワーク毎に2つの位置決めピン13が備えられ、さらに小物ワークを確実に固定するために必要な数のクランプ装置14が備えられる。小物ワークの大きさに応じ1または2以上のクランプ装置14が備えられる。2つの位置決めピンが各小物ワークの2つの位置決め孔に挿通することで、第1搬送冶具11と小物ワークの相互の位置決めおよび姿勢の固定が確実に行なわれる。また各小物ワーク毎に1または複数設けられたクランプ装置14により小物ワークは第1搬送冶具11に押し付けられ、これにより位置決めされた状態が保持される。
【0021】
第3搬送ロボット30が前工程からインナーパネル1を受け取り、第1搬送ロボット10への各小物ワークのセットが完了すると、図2に示すように第3搬送ロボット30が把持しているインナーパネル1を、小物ワークをセットした第1搬送ロボット10へと受け渡すような動作を行なう。第1搬送冶具11が第3搬送ロボット30が把持するインナーパネル1に当接し、第1搬送冶具11が位置決めピンとクランプ装置で位置決め把持した状態にした後に、第3搬送ロボット30の第2搬送冶具21のピンクランプの爪によるインナーパネル1に対する拘束を解除する。この動作によって第1搬送冶具11がインナーパネル1と各小物ワークとの双方を複数の位置決めピン13と複数のクランプ装置14とで位置決め把持した状態になる。
【0022】
次に図3図4に示すように第1搬送ロボット10で把持したワーク(インナーパネル1と小物部品)をスポット溶接ロボットが溶接可能な場所へ搬送し保持する。第1搬送ロボット10は第2搬送ロボット20と対向して配置され、2つの搬送ロボットの間に4台のスポット溶接ロボットが配置されている。第1搬送ロボット10が把持したワークは、第1搬送ロボット10と第2搬送ロボット20とを結ぶライン上の中間辺りに搬送され、前記ラインと略垂直に保持される。4台のスポット溶接ロボット40~70は保持されたワークを囲むように前記ラインの両側に2台づつ配置されている。
【0023】
ワークはインナーパネル1が前記ラインと略垂直となるように、床面に対し略鉛直となるような姿勢で保持される。この状態で図4に示すように各スポット第1から第4の溶接ロボット40~70が溶接作業を開始する。インナーパネル1が床面に対し略鉛直となるような姿勢で保持されているので、第1スポット溶接ロボット40と第2スポット溶接ロボット60、並びに第3スポット溶接ロボット50と第4スポット溶接ロボット70とがワークの両面からお互い、互い違いにスポット溶接のスポット溶接ガンをアプローチさせることが出来、スポット溶接ガン同士の干渉を避けながらスムーズな溶接作業を実現できる。インナーパネル1を床面に対し略水平に保持した場合に比べ、スポット溶接ガンの干渉を避けながらスムーズな溶接作業を実現できると共にスポット溶接ロボットの設置スペースの節減も図ることが出来る。
【0024】
次に図5に示すように溶接作業を一旦中断して、第1搬送ロボット10が保持するワークに第2搬送ロボット20が反対側からアプローチし、第2搬送冶具21に受け渡す動作を行なう。図11に示すように第2搬送冶具21には3つのピンクランプ23が設けられており、各ピンクランプ23がワーク(インナーパネル1)に設けられた孔に挿通し、ピンクランプに設けられた爪が作動することによりワークをクランプする。
【0025】
この第2搬送冶具21は図10、11に示すように3つの第1から第3ピンクランプ23~25を備えている。フレーム22長手方向をX方向として、第1ピンクランプ23はX方向に、第2ピンクランプ24、第3ピンクランプ25はY方向とZ方向にサーボモーターまたはエアーシリンダーで自動的に位置が調整できるよう構成されている。これにより3つのピンクランプ23~25はワークの種類に応じて図12に示すように制御装置5の指令に応じて自由に位置を調整でき、多様な機種のワークに対応できる、汎用の冶具を構成している。
【0026】
第2搬送冶具21がワークをクランプすると第1搬送冶具11のクランプ装置14が小物ワークおよびインナーパネル1をクランプしているクランプ装置14を制御装置5の指令により開放し、これによりワークが第1搬送ロボット10から第2搬送ロボット20に受け渡された状態になる。これにより小物ワークのクランプ装置14による拘束がなくなるが、既に施工されているスポット溶接により小物ワークはインナーパネル1に固定された状態になっているため問題ない。
【0027】
次いで図6に示すようにワークを第2搬送ロボット20に受け渡した第1搬送ロボット10は、小物ワークのセット位置に戻って次工程の小物ワークのセット作業が開始される。一方第2搬送ロボット20は、図7に示すように第1搬送ロボット10で保持して行なわれたスポット溶接の場合と同様に、第1搬送ロボット10と第2搬送ロボット20とを結ぶライン上の中間辺りにワークを搬送し、ラインに略垂直に保持する。その状態で中断していた溶接作業を再開する。第1搬送ロボット10の場合と同様インナーパネル1が床面に対し略鉛直となるような姿勢で保持されているので、第1スポット溶接ロボット40と第2スポット溶接ロボット60、並びに第3スポット溶接ロボット50と第4スポット溶接ロボット70とがワークの両面からお互い、互い違いにスポット溶接のスポット溶接ガンをアプローチさせることが出来、スポット溶接ガン同士の干渉を避けながらスムーズな溶接作業を実現できる。インナーパネル1を床面に対し略水平に保持した場合に比べ、スポット溶接ガンの干渉を避けながらスムーズな溶接作業を実現できると共にスポット溶接ロボットの設置スペースの節減も図ることが出来る。
【0028】
また第2搬送ロボット20で保持した状態での溶接作業を行なっている間も、図7に示すように第1搬送ロボット10は小物ワークのセット位置にあって、次のサイクルの小物ワークのセットを行うことができる。すなわち第1搬送ロボット10で保持した状態での溶接作業と第2搬送ロボット20で保持した状態での溶接作業を適切に分担させることで、第1搬送ロボット10と第2搬送ロボット20の負荷を平準化しトータルの作業時間の短縮を図ることが出来る。
【0029】
第2搬送ロボット20で保持した状態での溶接作業が完了すると、この工程での溶接作業は完了し、ワークは第2搬送ロボット20の動作により次の工程の搬送ロボットに受け渡される。以上で1サイクルの工程を完了し次のワークを対象とした工程が開始される。
【0030】
また図12に示す本スポット溶接システムの制御装置5について説明する。制御装置5は図12に示すように第1~第3搬送ロボット及び第1~第4スポット溶接ロボットを制御するロボット制御と、第1~第4スポット溶接ロボットのスポット溶接装置を制御する溶接制御と、第1~第2搬送冶具のクランプ装置等を制御する搬送冶具制御とを行なうことが出来るように構成されている。なおロボット制御、溶接制御及び搬送冶具制御を実行する制御装置は各々分離した構造でもよいが、この実施形態では概念的に1つにまとめて図示している。
【0031】
制御装置5は予めセットした制御プログラムに従って第1~第3搬送ロボット、第1~第4スポット溶接ロボット、第1~第4スポット溶接ロボットのスポット溶接装置および第1~第2搬送冶具のクランプ装置等を制御している。
【0032】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明に係るスポット溶接システム及びスポット溶接方法は、例えば、自動車用ドアの生産現場で使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 インナーパネル
5 制御装置
10、20、30 第1~第3搬送ロボット
40,50,60,70 第1~第4スポット溶接ロボット
11、21 第1~第2搬送冶具
12、22 フレーム
13 位置決めピン
14 クランプ装置
23,24,25 第1~第3ピンクランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13