(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】Y182T突然変異を有するT細胞-抗原カプラおよびその方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230215BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230215BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230215BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230215BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230215BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230215BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230215BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230215BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/28
C07K16/46
C07K14/725
C07K16/30
A61K35/17
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020519246
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 CA2018051290
(87)【国際公開番号】W WO2019071358
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512112529
【氏名又は名称】マックマスター ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ヘルセン,クリストファー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランソン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ドヴォルキン-ゲヴァ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】デニソヴァ,ガリナ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ベズヴェブナヤ,クセニア
(72)【発明者】
【氏名】ムワワシ,ケネス アンソニー
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞-抗原カプラ(TAC)ポリペプチドであって、前記TACポリペプチドは、
(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドと、
(b)
配列番号28のアミノ酸配列を含むUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)と、
(c)CD4サイトゾルドメインおよびCD4膜貫通ドメインを含むT細胞共受容体ドメインポリペプチドと、を含む、
TACポリペプチド。
【請求項2】
前記(a)、(b)、及び(c)は、お互いに直接融合されるか、または少なくとも1つのリンカーによって結合される、請求項
1に記載のTACポリペプチド。
【請求項3】
前記T細胞共受容体ドメインポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項1
または2に記載のTACポリペプチド。
【請求項4】
前記リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドまたは単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のTACポリペプチド。
【請求項5】
前記標的抗原はヒト上皮成長因子受容体2(HER2)である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のTACポリペプチド。
【請求項6】
前記標的抗原はB細胞成熟抗原(BCMA)である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のTACポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項のTACポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
(a)請求項
7のポリヌクレオチドと、(b)哺乳動物細胞において機能的なプロモーターとを含む、ベクター。
【請求項9】
請求項
8のベクターを含む操作されたT細胞。
【請求項10】
(a)請求項
9の操作されたT細胞と、(b)薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項11】
癌の処置に使用するための、請求項
9の操作されたT細胞を含む医薬組成物であって、ここで、リガンドは癌によって発現される標的抗原に結合し、それにより、癌を処置する、医薬組成物。
【請求項12】
HER2陽性癌の処置に使用するための、請求項
9の操作されたT細胞を含む医薬組成物であって、ここで、リガンドはHER2に結合する、医薬組成物。
【請求項13】
BCMA陽性癌の処置に使用するための、請求項
9の操作されたT細胞を含む医薬組成物であって、ここで、リガンドはBCMAに結合する、医薬組成物。
【請求項14】
治療に使用するための、請求項
9の操作されたT細胞を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2017年10月12日に出願された、米国仮特許出願第62/571,354号の利益を主張し、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2018年10月11日に作成された上記ASCIIのコピーは、0034923-00006_SL.txtという名前であり、40,435バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、特定の標的細胞に対する高い細胞毒性および減少したオフターゲット毒性を有するT細胞を操作することにより、癌を処置する方法に関する。特に、本開示は、天然のT細胞活性化プロセスを引き起こす新規な生物学的因子を発現するようにT細胞を操作することに関する。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Trifunctional T cell-antigen coupler)(Tri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むY182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質は、CD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合するSEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、抗-HER-2の三官能性T細胞抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする、第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、HER-2抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、抗-HER-2の三官能性T細胞抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、HER-2抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、抗-HER-2の三官能性T細胞抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、HER-2抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗-BCMAの三官能性T細胞抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、BCMA抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗-BCMAの三官能性T細胞抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、BCMA抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗-BCMAの三官能性T細胞抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列が本明細書に開示され、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、BCMA抗原は癌細胞上で発現される。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列を含むベクターが本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、ベクターは、プロモーター、好ましくは哺乳動物細胞において機能的なプロモーターをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるベクターでトランスフェクトされたT細胞が本明細書で開示される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列あるいは本明細書に開示されるベクターを含む、操作されたT細胞が本明細書で開示される。
【0016】
本明細書に開示される、いくつかの実施形態では、操作されたT細胞あるいは薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が本明細書で開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)上記標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、結腸癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは黒色腫である。
【0018】
いくつかの実施形態では、必要とする個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)上記標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、結腸癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは黒色腫である。
【0019】
いくつかの実施形態では、必要とする個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)上記標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はHER-2抗原である。いくつかの実施形態において、抗原はBCMA抗原である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、結腸癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは黒色腫である。
【0020】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-HER-2の三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質は、CD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは結腸癌である。
【0021】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-HER-2の三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体は、CD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは結腸癌である。
【0022】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-HER-2の三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドはアンキリンリピート(DARPin)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは結腸癌である。
【0023】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-BCMAの三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:26を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。
【0024】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-BCMAの三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、UCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:29を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。
【0025】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-BCMAの三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するUCHT1のヒト化変異体(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列はSEQ ID NO:28を含む。いくつかの実施形態において、リガンドはBCMA抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは単鎖可変フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3であり、好ましくはCD3εである。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD4である。いくつかの実施形態において、TCR共受容体はCD8であり、好ましくはCD8αである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは、直接融合され、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、リンカーはペプチドリンカーであり、好ましくは5~30のアミノ酸、より好ましくは5のアミノ酸、10のアミノ酸、あるいは15のアミノ酸を含むペプチドリンカーである。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌あるいは液性癌である。いくつかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【0027】
【
図1B】CARベースのT細胞活性化の概略図である。
【
図1C】三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)ベースのT細胞活性化の概略図である。
【
図2A】一般的な抗原結合ドメインを有するTri-TAC分子の概略図である。
【
図2B】抗-HER-2のDARPinの抗原結合ドメインを有するTri-TAC分子の概略図である。
【
図2C】抗-BCMAのscFvの抗原結合ドメインを有するTri-TAC分子の概略図である。
【
図3】DARPinを使用して、HER-2に対して向けられるTri-TACあるいはCD28ベースのCARで操作されたT細胞を例証する。Aは、キメラ受容体を発現しないT細胞と比較した、Tri-TACおよびCARの表面発現を例証する。Bは、3つの細胞集団の成長を例証する。
【
図4】様々な抗-HER-2のDARPin Tri-TAC対照の受容体の表面発現および活性化を例証する。T細胞は、標的化要素(-DARPin)を欠くTri-TAC変異体、あるいはUCHT1または完全長のTri-TACを欠くTri-TAC変異体で操作された。Aは、細胞表面発現(左)、脱顆粒(中)、およびサイトカイン産生(右)を例証し、Bは、完全長の抗-HER-2のDARPin Tri-TACしか細胞毒性応答を誘発することができないことを例証する。
【
図5】抗-HER-2のDARPin Tri-TAC変異体とのLck相互作用を例示する。Aは、完全長のTACおよびサイトゾルの欠失がLckをプルダウンする能力を例証し、Bは、Aのペレット中で検出されたLckのデンシトメトリー分析を例示する。
【
図6】抗-HER-2のDARPin Tri-TACあるいは抗-HER-2のDARPin CD28ベースのCARのいずれかで操作されたT細胞の抗腫瘍活性および毒性を例示する。確立されたOVCAR-3腫瘍を有するマウスは、抗-HER-2のDARPin Tri-TACあるいは抗-HER-2のDARPin CARで操作されたT細胞で処置された。Aは、T細胞注入日(35日目)に対する腫瘍成長の変化を例証し、Bは、同じマウスにおける、毒性の尺度である体重の変化を例証する。
【
図7A】CD3に結合すると予測される部位でUCHT1配列がランダムに変異誘発された、Tri-TAC変異体のライブラリと比較した、野生型抗-HER-2のDARPin Tri-TACを例示する。
図7Aは突然変異体の例示的な略図である。
【
図7B】CD3に結合すると予測される部位でUCHT1配列がランダムに変異誘発された、Tri-TAC変異体のライブラリと比較した、野生型抗-HER-2のDARPin Tri-TACを例示する。
図7Bはライブラリの表面発現を示すヒストグラムを例示す。
【
図7C】CD3に結合すると予測される部位でUCHT1配列がランダムに変異誘発された、Tri-TAC変異体のライブラリと比較した、野生型抗-HER-2のDARPin Tri-TACを例示する。
図7CはT細胞を活性化してサイトカインを産生するライブラリの能力を例示する。
【
図8A】
図7Bに開示される変異誘発ライブラリの選別に従って選択された、野生型UCHT1(UCHT1wt)あるいは突然変異UCHT1(UCHT1A85V/T161P)のいずれかを有する、抗-HER-2のDARPin Tri-TACの比較を例示する。
図8Aは、製造プロセスの終わりのCD8/CD4のT細胞の分布を例示する。
【
図8B】
図7Bに開示される変異誘発ライブラリの選別に従って選択された、野生型UCHT1(UCHT1wt)あるいは突然変異UCHT1(UCHT1A85V/T161P)のいずれかを有する、抗-HER-2のDARPin Tri-TACの比較を例示する。
図8Bは、形質導入のレベルを例示する。
【
図8C】
図7Bに開示される変異誘発ライブラリの選別に従って選択された、野生型UCHT1(UCHT1wt)あるいは突然変異UCHT1(UCHT1A85V/T161P)のいずれかを有する、抗-HER-2のDARPin Tri-TACの比較を例示する。
図8Cは、HER-2を発現する細胞で刺激した後のサイトカイン産生を例証する。
【
図9】
図7Bのスクリーンから単離されたUCHT1点突然変異体を有する様々な抗-HER-2のDARPin Tri-TACの表現型および機能分析を例示する。Aは、CD4およびCD8の細胞の抗-HER-2のDARPin Tri-TAC変異体の表面発現を例証する。Bは、HER-2を発現するSKOV3細胞で刺激された後に、T細胞の機能性のインジケータの発現を誘発する、Tri-TAC変異体の能力を例示する。Cは、SKOV3細胞に対して細胞毒性を発現するTri-TAC変異体の能力を説明する。
【
図10】ランダムに変異誘発されたライブラリの選択後の特定のアミノ酸の濃縮についての分析の結果を例証する。選択後のUCHT1 ライブラリの配列を、(i)
図8A-
図8Cに記載される元のライブラリ、および(ii)レンチウイルスにパッケージングした後の同じライブラリと比較することによって、濃縮が定義される。
【
図11】様々なUCHT1変異体の配列アラインメントを示す。Aは、エンリッチメント解析により同定された、UCHT1 Y182Tとアライメントされた野生型UCHT1である。Bは、ヒト化UCHT1(huUCHT1)とアライメントされた野生型UCHT1である。Cは、huUCHT1 Y177Tと名付けられた、UCHT1 Y182Tからの対応する突然変異を有するhuUCHT1変異体とアライメントされたhuUCHT1である。
【
図12】変異していないUCHT1/huUCHT1と比較した、hY182T/Y177T突然変異体の表面発現を例示する。
【
図13】対照レンチウイルス(NGFR)、あるいは野生型UCHT1、UCHT1(Y182T)、huUCHT1、またはhuUCHT1(Y177T)を有するTri-TACをコードするレンチウイルスのいずれかで操作されたT細胞培養物の成長を例示する。
【
図14】対照レンチウイルス(NGFR)、あるいは野生型UCHT1、UCHT1(Y182T)、huUCHT1、またはhuUCHT1(Y177T)を有するTri-TACをコードするレンチウイルスのいずれかで操作されたT細胞培養物を比較する、細胞毒性アッセイを例示する。Tri-TACはすべてHER-2に特異的であった。SKOVおよびA549はHER-2-陽性標的である。RajiはHER-2-陰性標的である。
【
図15A】野生型UCHT1を有するTri-TACおよびUCHT1(Y182T)を有するTri-TACで操作されたT細胞の機能を例示する。両方のTri-TACは、骨髄腫標的であるBCMAに対してscFvを有する。
図15Aは、Tri-TAC発現の表現型の分析を例証する。
【
図15B】野生型UCHT1を有するTri-TACおよびUCHT1(Y182T)を有するTri-TACで操作されたT細胞の機能を例示する。両方のTri-TACは、骨髄腫標的であるBCMAに対してscFvを有する。
図15Bは、KMS-11骨髄細胞(BCMA陽性)あるいはSKOV-3卵巣癌細胞(BMCA陰性)での共培養後のサイトカイン産生を例示する。
【
図15C】野生型UCHT1を有するTri-TACおよびUCHT1(Y182T)を有するTri-TACで操作されたT細胞の機能を例示する。両方のTri-TACは、骨髄腫標的であるBCMAに対してscFvを有する。
図15Cは、Tri-TACがKMS-11あるいはSKOV-3での共培養後の2つのTri-TACによって引き起こされた細胞毒性を例示する。
【
図16】野生型UCHT1あるいはUCHT1(Y182T)のいずれかを有する、BCMAに特異的なTri-TACで処置されたT細胞の抗骨髄腫活性を例示する。KMS-11骨髄腫を有するマウスは、NGFR、野生型UCHT1を有するTri-TAC、あるいはUCHT1(Y182T)を有するTri-TACを発現するように操作されたT細胞で処置された。腫瘍成長は生物発光によってモニタリングされ、図中で報告される。対照T細胞は、キメラ受容体のないレンチウイルスで操作された。
【
図17】huUCHT1あるいはhuUCHT1(Y177T)を有する抗-HER-2 DARPin Tri-TACのいずれかで操作されたT細胞の抗腫瘍活性を例示する。確立されたOVCAR-3腫瘍を有するマウスは、腫瘍結合ドメインを有しない対照Tri-TAC(パネルAおよびD)、huUCHT1を有する抗-HER-2 DARPin Tri-TAC(パネルBおよびE)、huUCHT1(Y177T)を有する抗-HER-2 DARPin Tri-TAC(パネルCおよびF)で操作されたT細胞を用いて処置された。Y軸は、T細胞注入日に対する腫瘍成長の変化を表す。X軸は、T細胞注入日に対する時間を表す。T細胞産物は2人の異なるドナーから産生された。
【
図18】huUCHTIのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:31)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
癌は、主要な健康上の課題であり、2013年だけで、150,000を超える癌の症例がカナダで診断されると予想される。初期段階の疾患を患う患者は、既存の療法(手術、放射線、化学療法)によって有効に治療することができるが、進行した疾患を患う患者に利用可能な選択肢はほとんどなく、それらの選択肢は典型的に、本質的に一時的なものである。
【0029】
能動免疫療法は、患者の免疫系を使用して腫瘍沈着を取り除くことを目指し、既存の療法に失敗した患者に刺激的な選択肢を提示する。通常、この処置は、多くの腫瘍特異的T細胞を患者に注入することを含む。このアプローチは、黒色腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫および滑膜肉腫を含む、多くの疾患の初期段階の臨床試験で成功することが分かっている。特定の例として、いくつかの臨床研究は、T細胞を用いた免疫療法が、進行した黒色腫を患う患者の治療に有効であり得ることを示しており、このアプローチの有用性が確認されている。さらに、慢性リンパ性白血病(CLL)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)に苦しむ患者も、T細胞免疫療法により有効に処置され、治癒された。
【0030】
養子T細胞療法の臨床応用が直面する重要な課題は、T細胞のソースである。典型的には、癌を有する患者から単離されたT細胞を、エクスビボで多数に成長させ、強い抗腫瘍免疫応答を誘発するために患者に投与し戻す。腫瘍特異性は:(i)自然発生の腫瘍特異的T細胞を患者から単離すること;あるいは(ii)腫瘍特異的受容体を発現するように末梢血のバルクT細胞を操作することのいずれかによって達成することができる。自然発生の腫瘍特異的T細胞はまれであり、治療量のそのような細胞を癌患者から単離することは困難かつ費用のかかる手法である。これに対して、遺伝子操作によって、腫瘍特異的受容体を有する容易に利用可能な末梢T細胞を操作することは、より効率的になってきている。この操作プロセスのための臨床的に実行可能な技術が開発されており、いくつかの臨床試験では、癌の処置のための遺伝子操作されたT細胞の実現可能性および有効性が実証されている。
【0031】
現時点まで、T細胞の遺伝子改変を含むほとんどの操作されたT細胞療法は:(i)T細胞受容体(TCR)の強制発現;あるいは(ii)腫瘍上の抗原標的に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)をもたらす。現在まで、T細胞を操作するのに使用されているキメラ抗原受容体は:(i)標的ドメイン、通常、単鎖可変フラグメント(scFv);(ii)膜貫通ドメイン;および、(iii)T細胞受容体および関連タンパク質のシグナル伝達要素を含む、サイトゾルドメインからなる。そのようなキメラ抗原受容体は「T-body」あるいは「キメラ免疫受容体」(CIR)とも呼ばれているが、現在、ほとんどの研究者は用語「CAR」を使用している。CARアプローチの1つの利点は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に依存しないやり方で、任意の患者の免疫細胞を任意の望ましい標的に対して標的化することを可能にするということである。MHC提示がしばしば腫瘍細胞を欠いているので、これは魅力的である。
【0032】
CARはモジュール式(in modular terms)で考慮され、科学者は、CAR機能に対する様々な細胞質シグナル伝達ドメインの影響を調査するのに相当な時間を費やしている。従来のCARは通常、2つの主要成分を共有する:(i)T細胞活性化に重要な免疫チロシン活性化モチーフを含む、CD3ゼータの細胞質ドメイン;および、(ii)Akt経路などの重要な生存経路をもたらす、共刺激受容体の成分。第一世代CARは、CD3ζまたはFcεRIγの単一のシグナル伝達ドメインを使用した。
【0033】
第2世代CARは、受容体のCD28またはTNFRファミリーいずれかの共刺激受容体の細胞質ドメインと、CD3ζのシグナル伝達ドメインを組み合わせた。病院で現在試験されているほとんどのCARで操作されたT細胞は、CD3ζがCD28またはCD137のいずれかの細胞質ドメインに結合される第2世代CARを使用する。これらの第2世代CARは、CD19陽性腫瘍における抗腫瘍活性を実証した。第3世代のCARは、複数の共刺激ドメインを組み合わせたが、抗原特異性を失う可能性があるという懸念がある。
【0034】
CARで操作されたT細胞は、臨床応用において相当な見込みを示しているが、それらは、T細胞受容体(TCR)によって提供される天然の活性化シグナルを置き換えるための合成方法に依存する。この合成受容体は、TCR(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε上のITAM)に関連するシグナル伝達成分のすべてを送達しないので、T細胞がCARによって最適に活性化されるか否か、あるいはCAR活性化がどのようにT細胞分化(例えば、記憶への進行)に影響するかどうかは不明なままである。さらに、CARシグナル伝達ドメインは、CAR構造のまさにその性質によって天然の調節パートナーから分離されることから、CARが低レベルの構成的活性化をもたらし、結果としてオフターゲット毒性をもたらす可能性があるという、固有のリスクも存在する。したがって、プロトタイプCARの合成性質は、基準メカニズムを妨害して、TCR作用を制限することがあり、治療量の従来のCARのT細胞にしばしば関連する重度の毒性を補強する可能性がある。
【0035】
これらの制限を考慮すると、T細胞に再度、それらの天然のTCRによって腫瘍を攻撃させることが好ましい。そのために、「二重特異性T細胞エンゲージャー」(BiTE)と名付けられた組換えタンパク質のクラスが作られた。これらのタンパク質は、T細胞TCR受容体を標的抗原と架橋するために二重特異性抗体フラグメントを使用する。これは効率的なT細胞活性化につながり、細胞毒性を引き起こす。同様に、この目的を遂行する二重特異性抗体が生成され、一部の科学者は、化学結合を使用して、抗CD3抗体を腫瘍特異的抗体に単に連結した。これらの二重特異性のタンパク質はインビトロでいくつかの活性を示しているが、GMP産生、短い生物学的半減期、およびバイオアベイラビリティは、癌治療でのこれらの分子の有効な使用に対する重要な課題を表している。さらに、これらの分子はTCR共受容体(CD8およびCD4)に関与しないため、天然のTCRシグナル伝達を適切に再現することもできない。
【0036】
最近では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TACあるいはTAC)受容体と名付けられた、代替的なキメラ受容体が開発されており、それは、T細胞に腫瘍を攻撃させるための別個の生物学を使用する。CARは、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達複合体の成分をつなぎ合わせる完全な合成受容体であるが、TAC受容体は、TCRを腫瘍標的へと向け直し、天然のTCRシグナル伝達構造を再現する。
【0037】
上記を考慮すると、従来のCARおよび第一世代のTAC受容体と比較して、活性および安全性が増強されたキメラ受容体の必要性が残っている。
【0038】
特定の用語
用語「細胞」は本明細書で使用される場合、単一の細胞ならびに複数の細胞を含む。
【0039】
用語「T細胞」は、本明細書で使用される場合、細胞性免疫において中心的役割を果たす一種のリンパ球を指す。Tリンパ球とも呼ばれるT細胞は、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球と識別することができる。異なる機能を有するT細胞のいくつかのサブセットがあり、それは、限定されないが、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、制御性T細胞、およびナチュラルキラーT細胞を含む。
【0040】
用語「T細胞抗原カプラ」あるいはTACは、「三官能性T細胞-抗原カプラ」またはTri-TACと交換可能に使用され、および、T細胞上で発現された時に、特定の抗原へのT細胞の標的化を促進するのを助ける、操作された核酸構築物あるいはポリペプチドを指す。
【0041】
用語「ポリヌクレオチド」および/または「核酸配列」および/または「核酸」は、本明細書で使用される場合、塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオシドあるいはヌクレオチド単量体の配列を指す。上記用語は、非自然発生の単量体あるいはその一部を含む修飾あるいは置換された配列をさらに含む。本出願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む自然発生の塩基を含む場合がある。配列はさらに修飾塩基を含んでいてもよい。そのような修飾塩基の例は、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシル;ならびに、キサンチンおよびヒポキサンチンを含む。本開示の核酸は、生物から単離されるか、遺伝的組換えの実験室的方法によって形成されるか、または、核酸を生成するための化学合成あるいは他の既知のプロトコルによって得られ得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」あるいは「単離された核酸配列」は、組換DNA技術よって生産される場合に細胞物質または培地を実質的に含まない核酸、あるいは化学的に合成される場合に化学前駆物質または他の化学製品を実質的に含まない核酸を指す。単離された核酸はさらに、核酸が由来する核酸に自然に隣接する配列(つまり、核酸の5’および3’の末端にある配列)を実質的に含まない。用語「核酸」は、DNAおよびRNAを含むように意図され、二本鎖あるいは単鎖のいずれかであってもよく、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。さらに、用語「核酸」は相補的な核酸配列を含む。
【0043】
用語「組換え核酸」あるいは「操作された核酸」は、本明細書で使用される場合、生物では見つからない核酸またはポリヌクレオチドを指す。例えば、組換え核酸は遺伝的組換え(分子クローニングなど)の実験室的方法によって形成され、他に自然界では見られない配列を作ることができる。組換え核酸はさらに、核酸を生成するための化学合成あるいは他の既知のプロトコルによって作られてもよい。
【0044】
用語「ポリペプチド」あるいは「タンパク質」は、本明細書で使用される場合、核酸によってコードされるアミノ酸に対応するアミノ酸の鎖を表す。この開示のポリペプチドまたはタンパク質はペプチドであってもよく、それは通常、2~約30のアミノ酸のアミノ酸の鎖を表す。本明細書で使用される場合、タンパク質という用語はさらに、30を超えるアミノ酸を有するアミノ酸の鎖を説明し、タンパク質のフラグメントまたはドメインあるいは完全長のタンパク質であり得る。さらに、本明細書で使用される場合、タンパク質という用語は、アミノ酸の直鎖を指すこともあり、あるいは、処理されて、機能タンパク質に折り畳まれたアミノ酸の鎖を指す場合もある。しかし、30が、ペプチドおよびタンパク質の識別に関して任意の数であることが理解され、および、その用語は、アミノ酸の鎖と交換可能に使用することができる。本開示のタンパク質は、酵素学的(例えば、タンパク質分解)切断によって自然に産生されるか、および/または、本開示のタンパク質あるいはフラグメントをコードする核酸の組換え発現によって産生される細胞からのタンパク質の単離および精製によって、得ることができる。本開示のタンパク質および/またはフラグメントは、タンパク質およびフラグメントの産生のための化学合成あるいは他の既知のプロトコルによって得ることもできる。
【0045】
用語「単離されたポリペプチド」は、組換DNA技術によって生成される場合に細胞物質または培地を実質的に含まないポリペプチド、あるいは化学的に合成される場合に化学前駆物質あるいは他の化学製品を実質的に含まないポリペプチドを指す。
【0046】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、および抗体融合を含むように意図される。上記抗体は、組換えソースに由来するか、および/または、遺伝子組換え動物において産生され得る。用語「抗体フラグメント」は、本明細書で使用される場合、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ダイアボディ、およびその多量体、ならびに多特異性抗体フラグメントおよびドメイン抗体を含むように意図される。
【0047】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、細胞の内部に核酸を送達するために使用され得るポリヌクレオチドを指す。一実施形態では、ベクターは、細胞中で発現される核酸に作動可能に連結された発現調節配列(例えば、プロモーター)を含む発現ベクターである。当技術分野で既知のベクターとしては、限定されないが、プラスミド、ファージ、コスミド、およびウィルスが挙げられる。
【0048】
用語「腫瘍抗原」あるいは「腫瘍関連抗原」は、本明細書で使用される場合、宿主(例えば、それはMHC複合体によって表すことができる)の免疫応答を誘発する、腫瘍細胞において産生された抗原物質を指す。
【0049】
用語「T細胞受容体」あるいはTCRは、本明細書で使用される場合、抗原の結合に応答して、T細胞の活性化に関与する内在性膜タンパク質の複合体を指す。TCRは、不変のCD3(分化3のクラスタ)鎖状分子を有する複合体の一部として発現された、非常に可変のアルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖から通常構成されるジスルフィド結合膜固定ヘテロ二量体である。この受容体を発現するT細胞は、α:β(あるいは、αβ)T細胞と呼ばれるが、少数のT細胞は、γδT細胞と呼ばれる、可変のガンマ(γ)鎖およびデルタ(δ)鎖によって形成された代替的受容体を発現する。CD3は4つの異なる鎖からなるタンパク質複合体である。哺乳動物では、複合体は、1つのCD3γ鎖、1つのCD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、および2つのCD3ζ鎖を含有している。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「膜貫通および細胞質ドメイン」は、限定されないが、(a)脂質ラフトと関連する、および/または(b)Lckを結合する、タンパク質ドメインを含み得るポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「タンパク質ドメイン」とは、タンパク質鎖の残りとは独立して機能し、存在する所与のタンパク質配列構造の保存された部分を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「TCR共受容体」とは、抗原提示細胞との連絡においてT細胞受容体(TCR)を助ける分子を指す。TCR共受容体の例としては、限定されないが、CD4、CD8、CD5、CD9、およびCD22が挙げられる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「TCR共刺激物」とは、抗原に対するT細胞の反応を増強する分子を指す。TCR共刺激物の例としては、限定されないが、COS、CD27、CD28、4-1BB(CD 137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、および特異的にCD83に結合するリガンドを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合「TCR共阻害剤」とは、抗原に対するT細胞の応答を阻害する分子を指す(チェックポイント受容体としても知られる)。TCR共刺激物の例としては、限定されないが、PD-1、TIM3、LAG-3、TIGIT、BTLA、CD160、およびCD37が挙げられる。
【0054】
用語「レシピエント」、「個体」、「被験体」、「宿主」、および「患者」は、本明細書では互換的に使用され、ある場合には、診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物被験体、特にヒトを指す。処置目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭動物と家畜、および、研究室、動物園、スポーツ、またはペットの動物として分類される動物を指し、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、カウ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サルなどである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」などは、ある場合には、効果を得る目的のために、薬剤の投与あるいは手順の実行を指す。効果は、疾患またはその症状の完全または部分的な予防に関して予防的な場合もあり、および/または、疾患および/またはその症状の部分的または完全な治癒の達成に関して治療的な場合もある。「処置」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトの疾患あるいは疾病の処置を含むことがあり:(a)(例えば、原発性疾患に関連するか、あるいはそれにより引き起こされ得る疾患を含む)疾患にかかりやすいが、まだ疾患にかかっていると診断されていない被験体に生じる疾患またはその症状を予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、疾患の進行を阻止すること;および(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。処置は、癌の処置または改善あるいは予防おける成功の任意の徴候を指し、以下の任意の客観的あるいは主観的なパラメータ:症状を緩和、寛解、軽減するか、あるいは疾状を患者にとってより許容できるようにすること;変性または減退の速度を遅らせること;あるいは、変性の最終ポイントをそれほど損なわないようにすること、を含む。症状の処置または改善は、医師による検査の結果を含む、1つ以上の客観的または主観的なパラメータに基づく。従って、用語「処置する」は、癌に関連する症状または状態の進行を予防または遅らせるために、緩和するために、或いは阻止または阻害するために、本発明の化合物または薬剤を投与することを含む。用語「治療効果」は、被験体の疾患、疾患の症状、または疾患の副作用の低減、排除、または予防を指す。
【0056】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は複数の抗体を含み、いくつかの実施形態では、「抗体」への言及は多数の抗体などを含む。
【0057】
本明細書で使用されるように、数値あるいは数値の範囲はすべて、文脈が他に明らかに示していない限り、そのような範囲内あるいはそのような範囲を包含する全ての整数と、範囲内およびその範囲を包含する値または整数の分数とを含む。したがって、例えば、90-100%の範囲への言及は、91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%など、ならびに91.1%、91.2%、91.3%、91.4、91.5%など、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%などを含む。別の例では、1-5,000倍の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍など、ならびに、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5倍など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、倍などを含む。
【0058】
「約」の数は、本明細書で使用される場合、その数を含み、その数の10%以下~その数の10%以上に及ぶ範囲を指す。「約」の範囲は、その範囲の下限の10%以下~その範囲の上限の10%以上を指す。
【0059】
「パーセント(%)同一性」とは、2つの配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)がアライメントの同じ位置で同じ残基を有する程度を指す。例えば、「アミノ酸配列はSEQ ID NO:Yに対してX%同一性である」ということは、SEQ ID NO:Yに対するアミノ酸配列の%同一性を指し、および、アミノ酸配列の残基のX%がSEQ ID NO:Yに開示される配列の残基と同一であるとして詳述される。通常、そのような計算のためにコンピュータ・プログラムが使用される。配列の対を比較およびアライメントさせる例示的なプログラムは、ALIGN (Myers and Miller, 1988), FASTA (Pearson and Lipman, 1988; Pearson, 1990)、およびgapped BLAST (Altschul et al., 1997), BLASTP, BLASTN,またはGCG (Devereux et al., 1984)を含む。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「選択的に結合する」とは、タンパク質(例えば、TACの標的結合リガンド)が、他の抗原ではなくその標的抗原(例えば、HER-2あるいはBCMA)に結合する程度を指す。
【0061】
T細胞抗原カプラ(TAC)
いくつかの実施形態では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸が本明細書に開示され、それは、T細胞受容体(TCR)によって天然のシグナル伝達を活性化する一方、MHCの非制限標的化(unrestricted targeting)を保持する。
【0062】
いくつかの実施形態では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TACあるいはTAC)をコードする核酸が本明細書に開示され、上記核酸は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンド(muUCHT1)をコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:26との、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y182T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0063】
いくつかの実施形態では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TACあるいはTAC)をコードする核酸が本明細書に開示され、上記核酸は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒト化UCHT1(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、huUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TACあるいはTAC)をコードする核酸が本明細書に開示され、上記核酸は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質を結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するヒト化UCHT1(huUCHT1)のリガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT11リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:28との、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y177T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0065】
いくつかの実施形態において、標的抗原に選択的に結合するリガンド(あるいは、標的特異的リガンド)は、T細胞抗原カプラ(TAC)を標的細胞に向ける。いくつかの例では、標的特異的リガンドは抗原結合ドメインと呼ばれる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞に直接あるいは間接的に結合する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、標的特異的リガンドは、標的細胞上の抗原(免疫応答を誘発することができる細胞によって産生されたタンパク質)に結合する。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、抗体およびそのフラグメント、例えば、標的細胞および/または抗原に制限する、単鎖抗体(scFvs)、単一ドメイン抗体、ペプチド、ペプチド模倣薬、タンパク質、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンなどの単鎖抗体が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、レクチン、ノッチン、セントリリン(centryrins)、アンチカリン(anticalins)、あるいは腫瘍抗原の自然発生のリガンド、例えば、成長因子、酵素基質、受容体、あるいは結合タンパク質が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞および/または標的抗原に結合する非タンパク質化合物を含み、限定されないが、炭水化物、脂質、核酸、あるいは小分子を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された設計アンキリンリピート(DARPin)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に選択的に結合するDARPinである。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に特異的に結合するDARPinである。いくつかの例では、HER-2(erb-2)に標的化されたDARPinは、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドはBCMAに選択的に結合するscFvである。いくつかの例では、標的特異的リガンドはBCMAに特異的に結合するscFvである。いくつかの例では、BCMAに制限するscFvは、SEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:22を含む。
【0066】
いくつかの例では、標的細胞は、限定されないが癌を含む疾状に関連した細胞である。いくつかの実施形態において、標的細胞は腫瘍細胞である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、腫瘍細胞上の腫瘍抗原または腫瘍関連抗原に結合することができる。いくつかの例において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例では、腫瘍抗原がタンパク質性である場合、8つ以上のアミノ酸~完全なタンパク質の配列である。いくつかの例では、腫瘍抗原は、MHC複合体で表される完全長のタンパク質の少なくとも1つの抗原フラグメントを含む、8~完全長のタンパク質の間の任意の数のアミノ酸である。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、HER-2(erbB-2)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、前立腺特異抗原(PSA)、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ(prostase)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン(prostein)、PSMA、サバイビン およびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ELF2M、好中球エラスターゼ、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソテリンが挙げられる。いくつかの例では、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの例では、HER-2の特定のリガンドは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブ エムタンシン、Gancotamab、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、Timigutuzumab、およびエルツマキソマブから選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。場合によっては、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの例では、BCMA特異的リガンドは、Belantamab mafodotinおよびGSK2857916から選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、TACは、共受容体刺激と組み合わせてT細胞受容体(TCR)を動員する。いくつかの例では、TACは、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドを含む。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRのタンパク質に直接あるいは間接的に結合する物質を含む。TCRに関連するタンパク質としては、限定されないが、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖が挙げられる。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および/またはCD3ε鎖に対する抗体である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3εである。いくつかの実施形態では、リガンドは、CD3に結合する抗体またはそのフラグメントである。CD3抗体の例としては、限定されないが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビジリズマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、CD3に結合する抗体は、単鎖抗体、例えば、単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、CD3に結合するリガンドはUCHT1である。いくつかの例では、UCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、UCHT1リガンドはマウスのリガンドである。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはSEQ ID NO:13および14を含む。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、UCHT1リガンドのヒト化された変異体はCD3εに結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するヒト化されたUCHT1リガンドはCD3εに結合する。
【0068】
いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD4である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:17および18を含むCD4の共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8αである。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD9である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD22である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共刺激物の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共刺激物はICOSである。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD27である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD28である。いくつかの例では、TCR共刺激物は4-1BB(CD137)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はOX40(CD134)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD30である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD40である。いくつかの例では、TCR共刺激物はリンパ球機能関連抗原1(LFA-1)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD2である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD7である。いくつかの例では、TCR共刺激物はLIGHTである。いくつかの例では、TCR共刺激物はNKG2Cである。いくつかの例では、TCR共刺激物はB7-H3である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD83に特異的に結合するリガンドである。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共阻害剤の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共阻害剤はPD-1である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIM3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はLAG-3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIGITである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はBTLAである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD160である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD37である。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体または共刺激物タンパク質の細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方を含む。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、同じ共受容体あるいは共刺激物に由来するか、または異なる共受容体あるいは共刺激物に由来する。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、リンカーによって随意に結合される。いくつかの実施形態において、TACは、直接あるいは間接的に作用してT細胞を標的化または活性化する他のポリペプチドをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーによって結合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~4のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~6のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30~40のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは32~36のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは25のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの例において、TACで使用されるリンカーの他の例は、SEQ ID NO:11、12、15、16、19、および20に対応するペプチド、ならびにそれらの変異体およびフラグメントである。
【0070】
いくつかの実施形態において、CD4共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、CD3に結合する単鎖抗体に融合される。いくつかの例では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を生成するために、設計アンキリンリピート(DARPin)は、CD4-UCHT1キメラに連結される。いくつかの例では、Tri-TACはCD3分子およびTCRを脂質ラフトの領域へと導き、LckをTCRの近接に移動させ、これは、天然のMHC結合に類似する。
【0071】
いくつかの例では、Tri-TACで操作されたT細胞は、インビトロで従来のCARと同等の機能を示す。いくつかの例では、Tri-TACで操作されたT細胞は、インビトロで従来のCARよりも優れている機能を示す。いくつかの例では、Tri-TACは、活性化ドメインがタンパク質の一部でないため、従来のCARと比較して、向上した安全性を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、核酸は、組換え核酸あるいは操作された核酸である。いくつかの実施形態において、第1、第2、および/または第3のポリヌクレオチドは、組換えポリヌクレオチドあるいは操作されたポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたポリヌクレオチドは、コードされたポリペプチドの機能および/またはT細胞抗原カプラの活性および/または発現の機能を最適化するために、改変あるいは変異される場合がある。
【0073】
いくつかの実施形態において、TACの表面発現を増強したUCHT1突然変異体が生成される(
図8A-C、9、10、12)。いくつかの例では、TACは、TCR複合体に結合する修飾あるいは変異されたリガンドを含み、ここで、修飾あるいは変異された抗体を含むTACは、TCR複合体に結合する野生型または修飾あるいは変異されていないリガンドを含むTACと比較して、表面発現および/または活性を増大させた。CD3に結合する突然変異体または修飾抗体の一例は、本明細書に開示されるUCHT1(Y182T)突然変異体である(SEQ ID NO:25および26)。
【0074】
Tri-TACは様々な構成で存在することが企図される。いくつかの実施形態において、標的特異的リガンドおよびT細胞受容体シグナル伝達ドメインポリペプチドは両方とも、TCR複合体に結合するリガンドに融合される。例えば、本明細書に開示される抗-HER-2 DARPin Tri-TAC(構成1とも呼ばれる;SEQ ID NO:1および2)は、以下を順に含む:
i)抗-HER-2 Tri-TACリーダー配列(分泌シグナル)(SEQ ID NO:5および6)
ii)HER-2抗原(SEQ ID NO:7および8)に特異的なDARPin
iii)Mycタグ(SEQ ID NO:9および10)
iv)リンカー1(SEQ ID NO:11および12)
v)UCHT1(SEQ ID NO:13および14)
vi)リンカー2(SEQ ID NO:15および16)
vii)CD4(SEQ ID NO:17および18)。
【0075】
いくつかの実施形態において、DARPinは、BCMA抗原に特異的なscFv(SEQ ID NO:21および22)で置き換えられる。
【0076】
ポリペプチドおよびベクター構築物
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列によってコードされるポリペプチドが本明細書に開示される。本明細書に開示される核酸配列を含むベクターが本明細書にさらに開示される。いくつかの例では、ベクターはプロモーターをさらに含む。いくつかの例では、プロモーターは哺乳動物細胞において機能的である。本明細書に記載される核酸を細胞に導入するために、様々な送達ベクターおよび発現ビヒクルが使用される。
【0077】
プロモーター(特定の核酸配列の転写を開始するDNAの領域)は、当技術分野において公知である。「哺乳動物細胞において機能的なプロモーター」とは、哺乳動物細胞において関連する核酸配列の発現を駆動するプロモーターを指す。核酸配列の発現を駆動するプロモーターは、核酸配列に「動作可能に結合される」と言及される。
【0078】
いくつかの実施形態において、第1のポリヌクレオチドおよび第3のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドに融合されてTri-TAC融合をもたらし、Tri-TAC融合のコード配列はプロモーターに動作可能に結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリヌクレオチドおよび第3のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドに融合されてTri-TAC融合をもたらし、Tri-TAC融合のコード配列はプロモーターに動作可能に結合される。いくつかの実施形態において、ベクターは、T細胞などの哺乳動物細胞における発現のために設計される。いくつかの実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの例では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。
【0079】
有用なベクターは、レンチウイルス、ウス幹細胞ウィルス(MSCV)、ポックスウイルス、オンコレトロウイルス(oncoretroviruses)、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウィルスに由来するベクターを含む。有用な他の送達ベクターは、単純ヘルペスウイルス、トランスポゾン、ワクシニアウイルス、ヒトパピローマウイルス感染症、サル免疫不全ウィルス、HTLV、ヒト泡沫状ウィルス、およびその変異体に由来するベクターを含む。さらに、有用なベクターは、スプーマウイルス、哺乳類B型レトロウイルス、哺乳類C型レトロウイルス、トリC型レトロウイルス、哺乳類D型レトロウイルス、およびHTLV/BLV型レトロウイルスに由来するベクターを含む。開示される組成物および方法に有用なレンチウイルスベクターの1つの例は、pCCLベクターである。
【0080】
多くの修飾が、本明細書に開示されるベクター配列およびポリペプチド配列を含むポリヌクレオチド配列になされてもよい。修飾は、ヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、挿入、あるいは欠失、またはヌクレオチドまたはアミノ酸の相対位置または順序の変更を含む。
【0081】
配列同一性
本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、開示された核酸分子に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%あるいは99.5%の同一性を有する核酸分子(あるいはそのフラグメント)も含む。ポリペプチドは、開示されたポリペプチドに対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%あるいは99.5%の同一性を有するポリペプチド(あるいはそのフラグメント)をさらに含む。
【0082】
配列同一性は、好ましくは、本明細書で提供されるヌクレオチド配列および/またはその相補的配列に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または、最も好ましくは、少なくとも99%あるいは99.5%の同一性に設定される。配列同一性はさらに、好ましくは、本明細書で提供されるポリペプチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、または、最も好ましくは、少なくとも99%あるいは99.5%の同一性に設定される。
【0083】
ハイブリダイゼーション
本明細書に開示されるのは、いくつかの例では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするために、本明細書に記載される核酸分子に対して十分な同一性を有する配列を有するDNAである。本明細書に記載される配列および/またはその相補的配列の1つ以上にハイブリダイズする核酸分子が本明細書にさらに開示される。そのような核酸分子は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするのが好ましい。高ストリンジェンシー洗浄は、好ましくは、低塩(好ましくは、約0.2%のSSC)および約50-65°Cの温度を有し、約15分間随意に実施される。
【0084】
T細胞での発現
三官能性T細胞-抗原カプラは、T細胞における発現のために設計される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列、あるいは本明細書に開示されるベクターを含む、操作されたT細胞が本明細書で開示される。いくつかの例では、T細胞は、本明細書に開示される三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を発現する。さらに、T細胞抗原カプラあるいはTri-TACを含むベクターで形質導入されるか、またはトランスフェクトされたT細胞が本明細書に開示される。いくつかの例では、T細胞は単離されたT細胞である。
【0085】
T細胞は、限定されないが、血液(例えば、末梢血単核細胞)、骨髄、胸腺組織、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、脾臓組織、および腫瘍を含む、多くのソースから得ることができる。いくつかの実施形態において、T細胞は自己T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はT細胞の細胞株から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞はドナー(同種異系T細胞)から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞は、胚または成体幹細胞の分化によって、あるいは人工多能性幹細胞から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞のソースにかかわらず、T細胞は、内因性TCRを欠くように、および/または、MHC/HLA分子(万能ドナーのT細胞)の発現を永久にあるいは一時的に欠くように、改変された。いくつかの実施形態において、T細胞は被験体に対して自己由来であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は、被験体に対して同種異系、同系、あるいは異種である。
【0086】
T細胞は、一旦得られると、インビトロで随意に濃縮される。いくつかの例では、細胞の集団は、正または負の選択によって濃縮される。さらに、T細胞は随意に凝固あるいは凍結保存され、後日解凍される。
【0087】
いくつかの例では、T細胞にTri-TACを導入する前あるいは後に、T細胞は、活性化および/または拡大される。いくつかの例では、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤と、およびT細胞の表面上の共刺激物分子を刺激するリガンドが結合する表面との接触によって拡大される。
【0088】
いくつかの実施形態において、T細胞は、核酸配列で形質導入あるいはトランスフェクトされる。いくつかの例では、形質導入あるいはトランスフェクトされたT細胞が発現される。いくつかの例では、核酸は、物理的、化学的、あるいは生体学的手段によって細胞に導入することができる。物理的手段としては、限定されないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃、リポフェクションおよびリン酸カルシウム沈澱が挙げられる。生体学的手段は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、レトロウイルスベクターを含むウイルスベクターは、T細胞に核酸を導入し、発現するために使用される。ウイルスベクターは、レンチウイルス、マウスの幹細胞ウィルス(MSCV)、ポックスウイルス、単純疱疹ウィルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウィルスに由来するベクターを含む。ベクターは、T細胞において形質導入された核酸分子の発現を駆動するプロモーターを随意に含む。
【0090】
様々なアッセイは、T細胞において形質導入された核酸配列および/または核酸によってコードされたポリペプチドの存在および/または発現を確認するために使用される。アッセイとしては、限定されないが、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR、ELISAおよびウェスタンブロッティングを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、T細胞抗原カプラを発現するT細胞は、T細胞抗原カプラを発現しないT細胞と比較して、および/または、従来のCARを発現するT細胞と比較して、抗原の存在下でT細胞活性化を増大させた。T細胞活性化の増大は、多数の方法によって確認することができ、それは、限定されないが、腫瘍細胞株死滅の増大、サイトカイン産生の増大、細胞溶解の増大、脱顆粒の増大、および/または、CD107α、IFNγ、IL2、またはTNFαなどの活性化マーカーの発現の増大を含む。増大は個々の細胞あるいは細胞の集団において測定され得る。
【0092】
用語「増大」あるいは「増大する」は、本明細書で使用される場合、T細胞抗原カプラを発現しないT細胞あるいはT細胞の集団と比較して、および/または従来のCARを発現するT細胞あるいはT細胞の集団と比較して、T細胞抗原カプラを発現するT細胞またはT細胞の集団が、少なくとも1%、2%、5%、10%、25%、50%、100%あるいは200%増大することを指す。
【0093】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作されたT細胞(T細胞抗原カプラで形質導入されたおよび/またはT細胞抗原カプラを発現する)、ならびに薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が、本明細書で開示される。そのような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドあるいはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAあるいはグルタチオンなどのキレート剤;ポロキサマー(例えばポロキサマー);および防腐剤を含むことができる。いくつかの例では、操作されたT細胞は、静脈内投与のための製剤化される。
【0094】
医薬組成物は、処置される(または予防される)疾患に適切なやり方で投与される。投与の量および頻度は、患者の状態、および患者の疾患のタイプおよび重症度などの要因によって決定されるが、適切な用量は臨床試験によって決定される。「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、あるいは「治療量」が示される場合、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の範囲、および患者(被験体)の状態の個体差を考慮する医師によって、投与される本発明の組成物の正確な量を決定することができる。例えば、本明細書に記載される修飾されたT細胞および/または医薬組成物は、kg体重当たり104~109の細胞、随意に、kg体重当たり105~108の細胞、kg体重当たり106~107の細胞、kg体重当たり105~106の細胞の投与量で投与され、それらの範囲内の整数値をすべて含む。T細胞組成物はまた、これらの投与量で複数回投与されることがある。投与量は、単回または複数回、例えば、毎日、毎週、隔週、あるいは毎月投与することができ、または、処置されている癌の再発(recurrence,relapse)あるいは進行時に投与することができる。細胞は、免疫療法中で一般的に知られている注入技術の使用により投与することができる(参照、例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988))。
【0095】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、エンドトキシン、ミコプラズマ、複製能を有するレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、残存する抗CD3/抗CD28でコートされたビーズ、マウス抗体、プールヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培地成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド成分、細菌および真菌からなる群から選択される、検知できるレベルの汚染物質を実質的に含まない。一実施形態では、細菌は、アルガリゲネス・フェカリス、カンジダ・アルビカンス、大腸菌、ヘモフィルス・インフルエンザエ、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、および化膿連鎖球菌群Aからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0096】
いくつかの実施形態において、操作されたT細胞を被験体に投与し、その後、血液を取り直し(あるいはアフェレーシスを実施し)、そこからT細胞を活性化し、これらの活性化および拡大したT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間毎に複数回行なうことができる。いくつかの態様では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化され得る。ある態様では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、あるいは100ccの採血から活性化される。
【0097】
修飾されたT細胞および/または医薬組成物は、限定されないが、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、注入(implantation)、あるいは移植を含む方法によって投与され得る。修飾されたT細胞および/または医薬組成物は、経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄腔内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内で被験体に投与することができる。一態様では、その修飾されたT細胞および/または医薬組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。いくつかの態様では、修飾されたT細胞および/またはその医薬組成物は、i.v.注射により投与される。その修飾されたT細胞および/または医薬組成物は、腫瘍、リンパ節あるいは感染部位に直接注入され得る。
【0098】
医薬組成物は、有効な量のT細胞が、薬学的に許容可能な担体との混合物に組み合わされるように、被験体に投与することができる薬学的に許容可能な組成物を調製するための既知の方法によって、調整され得る。適切な担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA, 2000)に記載される。これに基づいて、組成物は、排他的ではないが、1つ以上の薬学的に許容可能な担体あるいは希釈剤と関連する物質の溶液を含み、適切なpHおよび等浸透圧性を有する緩衝液中に生理液とともに含有される。
【0099】
適切な薬学的に許容可能な担体は、医薬組成物の生物学的活性の有効性を妨げない、本質的に、化学的に不活性で無毒な組成物を含む。適切な医薬品担体の例としては、限定されないが、水、生理食塩水、グリセリン溶液、(N-(1(2,3-ジオレイルオキシ(dioleyloxy))プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウム)クロリド(DOTMA)、ジオレシルホスファチジル(diolesylphosphotidyl)-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームが挙げられる。そのような組成物は、患者への直接投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と共に、治療上有効な量の化合物を含有しなければならない。
【0100】
医薬組成物はさらに、限定されないが、凍結乾燥された粉体あるいは水性または非水性の無菌注射液あるいは懸濁液を含む場合があり、それは、組成物を対象のレシピエントの組織あるいは血液と実質的に適合させる抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および溶質をさらに含み得る。そのような組成物中に存在し得る他の成分は、例えば、水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、ポリオール、グリセリン、および植物油を含む。即時の注射溶液および懸濁液は、無菌の粉体、顆粒、錠剤、あるいは濃縮された溶液または懸濁液から調製され得る。
【0101】
処置法および使用
いくつかの実施形態では、個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、本明細書に開示される操作されたT細胞を個体に投与する工程を含む。個体の癌を処置するための薬物の調製における本明細書に開示される操作されたT細胞の使用が本明細書にさらに開示される。個体の癌の処置で使用するための、本明細書に開示される操作されたT細胞が本明細書にさらに開示される。改変された細胞と改変されていない細胞を含むT細胞の混合物、あるいは改変されていない細胞の有無に関わらず、改変された細胞の様々な集団を含むT細胞の混合物の使用が、本明細書にさらに開示される。治療量の改変されたT細胞が、本来均質である必要がないということを当業者は理解するだろう。
【0102】
いくつかの実施形態では、必要とする個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンド(muUCHT1)をコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:26との、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y182T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0103】
いくつかの実施形態では、必要とする個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、huUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、必要とする個体において標的抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)標的抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質を結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT11リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:28との、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y177T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0105】
いくつかの実施形態において、標的抗原に選択的に結合するリガンド(あるいは、標的特異的リガンド)は、T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を標的細胞に向ける。いくつかの例では、標的特異的リガンドは抗原結合ドメインと呼ばれる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞に直接あるいは間接的に結合する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、標的特異的リガンドは、標的細胞上の抗原(免疫応答を誘発することができる細胞によって産生されたタンパク質)に結合する。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、抗体およびそのフラグメント、例えば、標的細胞および/または抗原に結合する、単鎖抗体(scFvs)、単一ドメイン抗体、ペプチド、ペプチド模倣薬、タンパク質、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンなどの単鎖抗体が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、レクチン、ノッチン、セントリリン(centryrins)、アンチカリン、あるいは腫瘍抗原の自然発生のリガンド、例えば、成長因子、酵素基質、受容体、あるいは結合タンパク質が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞および/または標的抗原に結合する非タンパク質化合物を含み、限定されないが、炭水化物、脂質、核酸、あるいは小分子を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された設計アンキリンリピート(DARPin)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に選択的に結合するDARPinである。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に特異的に結合するDARPinである。いくつかの例では、HER-2(erb-2)に標的化されたDARPinは、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは選択的にBCMAに結合するscFvである。いくつかの例では、標的特異的リガンドは特異的にBCMAに結合するscFvである。いくつかの例では、BCMAに結合するscFvは、SEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:22を含む。
【0106】
いくつかの例では、標的細胞は、限定されないが癌を含む疾状に関連した細胞である。いくつかの実施形態において、標的細胞は腫瘍細胞である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、腫瘍細胞上の腫瘍抗原または腫瘍関連抗原に結合することができる。いくつかの例において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例では、腫瘍抗原がタンパク質性である場合、8つ以上のアミノ酸~完全なタンパク質の配列である。いくつかの例では、腫瘍抗原は、MHC複合体で表される完全長のタンパク質の少なくとも1つの抗原フラグメントを含む、8~完全長のタンパク質の間の任意の数のアミノ酸である。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、HER-2(erbB-2)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、前立腺特異抗原(PSA)、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、サバイビン およびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ELF2M、好中球エラスターゼ、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソテリンが挙げられる。いくつかの例では、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの例では、HER-2の特定のリガンドは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブ エムタンシン、Gancotamab、マルゲツキシマブ、Timigutuzumab、およびエルツマキソマブから選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。場合によっては、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの例では、BCMA特異的リガンドは、Belantamab mafodotinおよびGSK2857916から選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、Tri-TACは、共受容体刺激と組み合わせてT細胞受容体(TCR)を動員する。いくつかの例では、TACは、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドを含む。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRのタンパク質に直接あるいは間接的に結合する物質を含む。TCRに関連するタンパク質としては、限定されないが、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖が挙げられる。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および/またはCD3ε鎖に対する抗体である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3εである。いくつかの実施形態では、リガンドは、CD3に結合する抗体またはそのフラグメントである。CD3抗体の例としては、限定されないが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビジリズマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、CD3に結合する抗体は、単鎖抗体、例えば、単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、CD3に結合するリガンドはUCHT1である。いくつかの例では、UCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、UCHT1リガンドはマウスのリガンドである。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはSEQ ID NO:13および14を含む。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、ヒトUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するヒト化されたUCHT1リガンドはCD3εに結合する。
【0108】
いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD4である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:17および18を含むCD4の共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8αである。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD9である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD22である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共刺激物の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共刺激物はICOSである。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD27である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD28である。いくつかの例では、TCR共刺激物は4-1BB(CD137)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はOX40(CD134)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD30である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD40である。いくつかの例では、TCR共刺激物はリンパ球機能関連抗原1(LFA-1)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD2である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD7である。いくつかの例では、TCR共刺激物はLIGHTである。いくつかの例では、TCR共刺激物はNKG2Cである。いくつかの例では、TCR共刺激物はB7-H3である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD83に特異的に結合するリガンドである。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共阻害剤の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共阻害剤はPD-1である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIM3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はLAG-3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIGITである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はBTLAである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD160である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD37である。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体または共刺激物タンパク質の細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方を含む。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、同じ共受容体あるいは共刺激物に由来するか、または異なる共受容体あるいは共刺激物に由来する。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、リンカーによって随意に結合される。いくつかの実施形態において、TACは、直接あるいは間接的に作用してT細胞を標的化または活性化する他のポリペプチドをさらに含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーによって結合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~4のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~6のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30~40のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは32~36のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは25のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの例において、Tri-TACで使用されるリンカーの他の例は、SEQ ID NO:11、12、15、16、19、および20に対応するペプチド、ならびにそれらの変異体およびフラグメントである。
【0110】
いくつかの実施形態において、CD4共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、CD3に結合する単鎖抗体に融合される。いくつかの例では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を生成するために、設計アンキリンリピート(DARPin)は、CD4-UCHT1キメラに連結される。いくつかの例では、TACはCD3分子およびTCRを脂質ラフトの領域へと導き、LckをTCRの近接に移動させ、これは、天然のMHC結合に類似する。
【0111】
処置される癌は、腫瘍性疾患のあらゆる形態を含む。処置される癌の例としては、限定されないが、乳癌、肺癌、および白血病、例えば、混合型白血病(MLL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。他の癌は、細胞腫、芽細胞腫、黒色腫、肉腫、血液癌、リンパ性腫瘍、良性腫瘍と悪性腫瘍、悪性病変を含む。癌は非固形腫瘍あるいは固形腫瘍を含み得る。処置される癌は、血管新生化されていないか、あるいは実質的にまだ血管新生化されていない腫瘍、ならびに血管新生腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は固形癌であるか、あるいは固形腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は液性癌であるか、あるいは液性腫瘍を含む。いくつかの例において、癌は、肺癌、乳癌、結腸癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃癌、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、あるいは黒色腫である。いくつかの例において、癌は肺癌である。いくつかの例において、癌は乳癌である。いくつかの例において、癌は結腸癌である。いくつかの例において、癌は多発性骨髄腫である。いくつかの例において、癌は膠芽腫である。いくつかの例において、癌は胃の癌腫である。いくつかの例において、癌は卵巣癌である。いくつかの例において、癌は胃癌である。いくつかの例において、癌は大腸癌である。いくつかの例において、癌は尿路上皮癌である。いくつかの例において、癌は子宮内膜癌である。いくつかの例において、癌は黒色腫である。
【0112】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-HER-2の三官能性T細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む操作されたT細胞を、個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンド(muUCHT1)をコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例では、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:26との、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y182T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0113】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書にさらに開示され、上記方法は、抗-HER-2のT細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例では、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、huUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、個体においてHER-2抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書にさらに開示され、上記方法は、抗-HER-2のT細胞-抗原カプラ(抗-HER-2のTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)HER-2抗原に選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質を結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例では、リガンドはHER-2抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT11リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:28との、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y177T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0115】
いくつかの実施形態において、標的抗原に選択的に結合するリガンド(あるいは、標的特異的リガンド)は、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を標的細胞に向ける。いくつかの例では、標的特異的リガンドは抗原結合ドメインと呼ばれる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞に直接あるいは間接的に結合する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、標的特異的リガンドは、標的細胞上の抗原(免疫応答を誘発することができる細胞によって産生されたタンパク質)に結合する。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、抗体およびそのフラグメント、例えば、標的細胞および/または抗原に結合する、単鎖抗体(scFvs)、単一ドメイン抗体、ペプチド、ペプチド模倣薬、タンパク質、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンなどの単鎖抗体が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、レクチン、ノッチン、セントリリン(centryrins)、アンチカリン、あるいは腫瘍抗原の自然発生のリガンド、例えば、成長因子、酵素基質、受容体、あるいは結合タンパク質が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞および/または標的抗原に結合する非タンパク質化合物を含み、限定されないが、炭水化物、脂質、核酸、あるいは小分子を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された設計アンキリンリピート(DARPin)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に選択的に結合するDARPinである。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、HER-2(erbB-2)抗原に特異的に結合するDARPinである。いくつかの例では、HER-2(erb-2)に標的化されたDARPinは、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8を含む。
【0116】
いくつかの例では、標的細胞は、限定されないが癌を含む疾状に関連した細胞である。いくつかの実施形態において、標的細胞は腫瘍細胞である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、腫瘍細胞上の腫瘍抗原または腫瘍関連抗原に結合することができる。いくつかの例において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例では、腫瘍抗原がタンパク質性である場合、8つ以上のアミノ酸~完全なタンパク質の配列である。いくつかの例では、腫瘍抗原は、MHC複合体で表される完全長のタンパク質の少なくとも1つの抗原フラグメントを含む、8~完全長のタンパク質の間の任意の数のアミノ酸である。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、HER-2(erbB-2)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、前立腺特異抗原(PSA)、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、サバイビン およびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ELF2M、好中球エラスターゼ、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソテリンが挙げられる。いくつかの例では、腫瘍抗原はHER-2抗原である。いくつかの例では、HER-2の特定のリガンドは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブ エムタンシン、Gancotamab、マルゲツキシマブ、Timigutuzumab、およびエルツマキソマブから選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、Tri-TACは、共受容体刺激と組み合わせてT細胞受容体(TCR)を動員する。いくつかの例では、TACは、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドを含む。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRのタンパク質に直接あるいは間接的に結合する物質を含む。TCRに関連するタンパク質としては、限定されないが、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖が挙げられる。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および/またはCD3ε鎖に対する抗体である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3εである。いくつかの実施形態では、リガンドは、CD3に結合する抗体またはそのフラグメントである。CD3抗体の例としては、限定されないが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビジリズマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、CD3に結合する抗体は、単鎖抗体、例えば、単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、CD3に結合するリガンドはUCHT1である。いくつかの例では、UCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、UCHT1リガンドはマウスリガンドである。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはSEQ ID NO:13および14を含む。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、ヒトUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するヒト化されたUCHT1リガンドはCD3εに結合する。
【0118】
いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD4である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:17および18を含むCD4の共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8αである。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD9である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD22である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共刺激物の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共刺激物はICOSである。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD27である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD28である。いくつかの例では、TCR共刺激物は4-1BB(CD137)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はOX40(CD134)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD30である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD40である。いくつかの例では、TCR共刺激物はリンパ球機能関連抗原1(LFA-1)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD2である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD7である。いくつかの例では、TCR共刺激物はLIGHTである。いくつかの例では、TCR共刺激物はNKG2Cである。いくつかの例では、TCR共刺激物はB7-H3である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD83に特異的に結合するリガンドである。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共阻害剤の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共阻害剤はPD-1である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIM3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はLAG-3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIGITである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はBTLAである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD160である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD37である。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体または共刺激物タンパク質の細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方を含む。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、同じ共受容体あるいは共刺激物に由来するか、または異なる共受容体あるいは共刺激物に由来する。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、リンカーによって随意に結合される。いくつかの実施形態において、TACは、直接あるいは間接的に作用してT細胞を標的化または活性化する他のポリペプチドをさらに含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーによって結合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~4のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~6のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30~40のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは32~36のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは25のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの例では、TACにおいて使用されるリンカーの他の例は、SEQ ID NO:11、12、15、16、19、および20に対応するペプチド、ならびにそれらの変異体およびフラグメントである。
【0120】
いくつかの実施形態において、CD4共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、CD3に結合する単鎖抗体に融合される。いくつかの例では、TACはCD3分子およびTCRを脂質ラフトの領域へと導き、LckをTCRの近接に移動させ、これは、天然のMHC結合に類似する。いくつかの例では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を生成するために、設計アンキリンリピート(DARPin)は、CD4-UCHT1キメラに連結される。
【0121】
処置される癌は、腫瘍性疾患のあらゆる形態を含む。処置される癌の例としては、限定されないが、乳癌、肺癌、および白血病、例えば、混合型白血病(MLL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。他の癌は、細胞腫、芽細胞腫、黒色腫、肉腫、血液癌、リンパ性腫瘍、良性腫瘍と悪性腫瘍、悪性病変を含む。癌は、非固形腫瘍あるいは固形腫瘍を含み得る。処置される癌は、血管新生化されていないか、あるいは実質的にまだ血管新生化されていない腫瘍、ならびに血管新生腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は固形癌であるか、あるいは固形腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は液性癌であるか、あるいは液性腫瘍を含む。いくつかの例において、癌は、肺癌、乳癌、結腸癌、多発性骨髄腫、膠芽腫、胃の癌腫、卵巣癌、胃の癌腫、大腸癌、尿路上皮癌、子宮内膜癌、または黒色腫である。いくつかの例において、癌は肺癌である。いくつかの例において、癌は乳癌である。いくつかの例において、癌は結腸癌である。いくつかの例において、癌は多発性骨髄腫である。いくつかの例において、癌は膠芽腫である。いくつかの例において、癌は胃の癌腫である。いくつかの例において、癌は卵巣癌である。いくつかの例において、癌は胃癌である。いくつかの例において、癌は大腸癌である。いくつかの例において、癌は尿路上皮癌である。いくつかの例において、癌は子宮内膜癌である。
【0122】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書に開示され、上記方法は、抗-BCMAのT細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原を選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:26と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y182T突然変異を有するマウスのUCHT1(muUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:26との、Y182T突然変異を有するmuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y182T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0123】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書にさらに開示され、上記方法は、抗-BCMAのT細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原を選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質に結合する、SEQ ID NO:29と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、huUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、個体においてBCMA抗原を発現する癌を処置する方法が本明細書にさらに開示され、上記方法は、抗-BCMAのT細胞-抗原カプラ(抗-BCMAのTri-TAC)をコードする核酸配列を含む、操作されたT細胞を個体に投与する工程を含み、上記核酸配列は:(a)BCMA抗原を選択的に結合するリガンドをコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)T細胞受容体(TCR)複合体に関連するタンパク質を結合する、SEQ ID NO:28と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Y177T突然変異を有するヒト化UCHT1(huUCHT1)リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列と;(c)TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド配列と、を含む。いくつかの例において、リガンドは標的抗原に特異的に結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するhuUCHT11リガンドをコードする第2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、SEQ ID NO:28との、Y177T突然変異を有するhuUCHT1リガンドをコードする第2のポリペプチド配列のパーセント配列同一性は、Y177T突然変異以外のアミノ酸を指す。
【0125】
いくつかの実施形態において、標的抗原に選択的に結合するリガンド(あるいは、標的特異的リガンド)は、T細胞-抗原カプラ(TAC)を標的細胞に向ける。いくつかの例では、標的特異的リガンドは抗原結合ドメインと呼ばれる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞に直接あるいは間接的に結合する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、標的特異的リガンドは、標的細胞上の抗原(免疫応答を誘発することができる細胞によって産生されたタンパク質)に結合する。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、抗体およびそのフラグメント、例えば、標的細胞および/または抗原に結合する、単鎖抗体(scFvs)、単一ドメイン抗体、ペプチド、ペプチド模倣薬、タンパク質、糖タンパク質あるいはプロテオグリカンなどの単鎖抗体が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドとしては、限定されないが、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)、レクチン、ノッチン、セントリリン(centryrins)、アンチカリン、あるいは腫瘍抗原の自然発生のリガンド、例えば、成長因子、酵素基質、受容体、あるいは結合タンパク質が挙げられる。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、標的細胞および/または標的抗原に結合する非タンパク質化合物を含み、限定されないが、炭水化物、脂質、核酸、あるいは小分子を含む。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された設計アンキリンリピート(DARPin)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、特定の細胞および/または抗原に標的化された単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは選択的にBCMAに結合するscFvである。いくつかの例では、標的特異的リガンドは特異的にBCMAに結合するscFvである。いくつかの例では、BCMAに結合するscFvは、SEQ ID NO:21およびSEQ ID NO:22を含む。
【0126】
いくつかの例では、標的細胞は、限定されないが癌を含む疾状に関連した細胞である。いくつかの実施形態において、標的細胞は腫瘍細胞である。いくつかの例では、標的特異的リガンドは、腫瘍細胞上の腫瘍抗原または腫瘍関連抗原に結合することができる。いくつかの例において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例では、腫瘍抗原がタンパク質性である場合、8つ以上のアミノ酸~完全なタンパク質の配列である。いくつかの例では、腫瘍抗原は、MHC複合体で表される完全長のタンパク質の少なくとも1つの抗原フラグメントを含む、8~完全長のタンパク質の間の任意の数のアミノ酸である。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、HER-2(erbB-2)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、前立腺特異抗原(PSA)、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、サバイビン およびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ELF2M、好中球エラスターゼ、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソテリンが挙げられる。場合によっては、腫瘍抗原はBCMA抗原である。いくつかの例では、BCMA特異的リガンドは、Belantamab mafodotinおよびGSK2857916から選択される抗体の抗原結合ドメインを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、TACは、共受容体刺激と組み合わせてT細胞受容体(TCR)を動員する。いくつかの例では、TACは、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドを含む。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRのタンパク質に直接あるいは間接的に結合する物質を含む。TCRに関連するタンパク質としては、限定されないが、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖が挙げられる。いくつかの実施形態において、TCR複合体に関連するタンパク質に結合するリガンドは、TCRアルファ(α)鎖、TCRベータ(β)鎖、TCRガンマ(γ)鎖、TCRデルタ(δ)鎖、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および/またはCD3ε鎖に対する抗体である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3である。いくつかの例では、TCR複合体に関連するタンパク質はCD3εである。いくつかの実施形態では、リガンドは、CD3に結合する抗体またはそのフラグメントである。CD3抗体の例としては、限定されないが、ムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビジリズマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、CD3に結合する抗体は、単鎖抗体、例えば、単鎖抗体(scFv)である。いくつかの例では、CD3に結合するリガンドはUCHT1である。いくつかの例では、UCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、UCHT1リガンドはマウスリガンドである。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはSEQ ID NO:13および14を含む。いくつかの例では、マウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y182T突然変異を有するマウスUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、ヒトUCHT1リガンドはCD3εに結合する。いくつかの例では、Y177T突然変異を有するヒト化されたUCHT1リガンドはCD3εに結合する。
【0128】
いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、膜貫通ドメインおよびサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD4である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:17および18を含むCD4の共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD8αである。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD9である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD5である。いくつかの例では、TCR共受容体はCD22である。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共刺激物の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共刺激物はICOSである。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD27である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD28である。いくつかの例では、TCR共刺激物は4-1BB(CD137)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はOX40(CD134)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD30である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD40である。いくつかの例では、TCR共刺激物はリンパ球機能関連抗原1(LFA-1)である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD2である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD7である。いくつかの例では、TCR共刺激物はLIGHTである。いくつかの例では、TCR共刺激物はNKG2Cである。いくつかの例では、TCR共刺激物はB7-H3である。いくつかの例では、TCR共刺激物はCD83に特異的に結合するリガンドである。いくつかの例では、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共阻害剤の膜貫通ドメインおよび/またはサイトゾルドメインを含む。いくつかの例では、TCR共阻害剤はPD-1である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIM3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はLAG-3である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はTIGITである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はBTLAである。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD160である。いくつかの例では、TCR共阻害剤はCD37である。いくつかの実施形態において、TCRシグナル伝達ドメインポリペプチドは、TCR共受容体または共刺激物タンパク質の細胞質ドメインと膜貫通ドメインの両方を含む。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、同じ共受容体あるいは共刺激物に由来するか、または異なる共受容体あるいは共刺激物に由来する。いくつかの例では、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインは、リンカーによって随意に結合される。いくつかの実施形態において、TACは、直接あるいは間接的に作用してT細胞を標的化または活性化する他のポリペプチドをさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、直接融合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、および第3のポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーによって結合される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第3のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドおよび第3のポリペプチドは直接融合されて、リンカーによって第1のポリペプチドに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~4のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは1~6のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30~40のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは32~36のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5~30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは5のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは10のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは15のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは25のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはG4S3リンカーを含む。いくつかの例では、TACにおいて使用されるリンカーの他の例は、SEQ ID NO:11、12、15、16、19、および20に対応するペプチド、ならびにそれらの変異体およびフラグメントである。
【0130】
いくつかの実施形態において、CD4共受容体の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、CD3に結合する単鎖抗体に融合される。いくつかの例では、三官能性T細胞-抗原カプラ(Tri-TAC)を生成するために、設計アンキリンリピート(DARPin)は、CD4-UCHT1キメラに連結される。いくつかの例では、Tri-TACはCD3分子およびTCRを脂質ラフトの領域へと導き、LckをTCRの近接に移動させ、これは、天然のMHC結合に類似する。
【0131】
処置される癌は、腫瘍性疾患のあらゆる形態を含む。処置される癌の例としては、限定されないが、乳癌、肺癌、および白血病、例えば、混合型白血病(MLL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。他の癌は、細胞腫、芽細胞腫、黒色腫、肉腫、血液癌、リンパ性腫瘍、良性腫瘍と悪性腫瘍、悪性病変を含む。癌は、非固形腫瘍あるいは固形腫瘍を含み得る。処置される癌は、血管新生化されていないか、あるいは実質的にまだ血管新生化されていない腫瘍、ならびに血管新生腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は固形癌であるか、あるいは固形腫瘍を含む。いくつかの例では、癌は液性癌であるか、あるいは液性腫瘍を含む。いくつかの例において、癌は黒色腫である。
【0132】
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示する目的で与えられ、いかなる方法でも本発明を制限するようには意図されていない。本明細書に記載される方法とともに、本実施例は、好ましい実施形態の代表例であり、かつ典型的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして意図されない。請求の範囲によって定義される本発明の趣旨に包含される変化および他の用途が、当業者に想定される。
【0134】
実施例1.Tri-TAC技術の特徴づけ
【0135】
【0136】
図1Aは、様々な受容体とその関連タンパク質パートナーの結合(co-assembly)に基づく、CD8 T細胞活性化の例を示す。最初に、主要組織適合遺伝子複合体Iは抗原(螺旋)を示している。これは、抗原に結合可能なT細胞受容体(TCR)複合体により認識される。TCR複合体には、様々な個別のサブユニットが含まれている。α/βドメインは、MHC-I上で示された抗原と直接相互作用できる。その後、α/βドメインは、様々な他のドメイン(ε、γ、δ、およびζ)と相互に作用し、そのすべてが、様々な細胞内の活性化ドメインを介してT細胞活性化に関与する。TCR複合体は、CD8共受容体と同時にMHC-Iと相互作用する。CD8共受容体は、抗原に依存しない様式でMHC-Iに結合する。CD8は、TCR受容体複合体の活性化に重要なプロテインキナーゼであるLckと直接相互作用する。CD8とLckとの相互作用はまた、脂質ラフト(膜部分)微小ドメインとの会合を確実なものとし、前記微小ドメインは、他の関連シグナル伝達部分(暗い球体)を構造化・封入すると仮定されている。その後、後期段階の活性化によりCD28が動員される。この相互作用カスケードが並行して数回現われる場合、T細胞は活性化され、その細胞毒性が発揮されかねない。
【0137】
図1Bは、キメラ抗原受容体(CAR)の概要を提供する。CARは、合成的に操作された単一分子中の、ζおよびCD28などの様々な主要な活性化ドメインを組み合わせることにより、T細胞活性化の複雑な機構を再生しようする。その後、CARは、特異的結合ドメインを使用して、選択した抗原と直接相互作用する。本明細書ではアンキリンリピートタンパク質(DARPin)を表す。並行して現われるそのような様々な相互作用はT細胞活性化を引き起こすと考えられている。
【0138】
図1Cは、自然な活性化プロセスを模倣するTri-TAC技術の概要である。Tri-TACは、TCRを介して自然なシグナル伝達を上手く反復するよう発達され、一方でMHCの無制限の標的化を保持する。T細胞活性化は、TCRによるMHCのライゲーション後に生じ、T細胞(CD4またはCD8のいずれか)の共受容体は、同時にMHC分子内の保存領域に結合する。共受容体は特異的に、TCRシグナル複合体形成に特に重要な膜微小ドメインである「脂質ラフト」内にある。TCR活性化複合体の正確な微小ドメイン局在化の確保に加えて、これら共受容体はまた、T細胞活性化に重要なプロテインキナーゼであるLckに直接結合する。前述のように、従来のキメラ受容体も二官能性タンパク質も、共受容体分子やLckに結合しない。脂質ラフトに局在化し、かつLckに結合する、CD4共受容体の膜貫通領域と細胞内領域がそれぞれ、CD3(UCHT1;SEQ ID NO:13および14)に結合する単鎖抗体に縮合された場合に、分子が作成された。この構築物は、Tri-TACはCD3分子およびTCRを脂質ラフトの領域へと導き、LckをTCRの近傍に移動させるように設計され、これは、天然のMHC結合に類似する。この受容体を標的とするために、設計アンキリンリピート(DARPin)は、CD4-UCHT1キメラに連結されることで、三官能性T細胞抗原カプラ(Tri-TAC)を生成する。この例において、DARPinはプロトオンコジーン、HER-2(erbB-2)に特異的であった。
【0139】
多数の分類のリガンド結合ドメインを、Tri-TAC分子に組み込むことができる(
図2A)。この実施例は、Tri-TACが、HER-2に特異的なDARPin(
図2B)またはBCMAに特異的なscFv(
図2C)を持つことを例示している。
【0140】
図3は、HER-2に特異的なDARPinを持つTri-TACの機能を例示する。ヒトT細胞を操作して、本明細書に開示されるようなTri-TAC、または同じDARPinを持つ従来のCARのいずれかを発現させた。判定されたところでは、全ての態様において、Tri-TACで操作されたT細胞は、従来のCARと少なくとも同等の機能を実証した。興味深いことに、2つのパラメータ(TNF-α産生とCD107a動員)に関して観察されたところでは、Tri-TACは一部の状況下で従来のCARよりも活性であった。
【0141】
図3のAは、抗HER-2 DARPin CARと比較された抗HER-2 DARPin Tri-TACの表面発現、および対照T細胞を示す。キメラ受容体を、組換えHER-2でのインキュベーションにより検出した。抗HER-2 DARPin Tri-TACを、操作したT細胞表面上で十分に発現させた。しかし、その最大表面発現は、抗HER-2 DARPin CAR構築物に比べて低かった。
図3のBは、操作されたT細胞培養物の成長を示す。T細胞は、抗CD3/抗CD28のダイナビーズにより活性化され、Tri-TACまたはCARをコードする、または受容体をコードしない(対照)レンチウイルスにより操作された。2週間後、CARと対照培養物は同様の数にまで成長したが、Tri-TAC培養物はわずかにゆっくりと成長した。
【0142】
図4は、Tri-TAC機能に対するリガンド結合ドメインとUCHT1 CD3結合ドメインの両方の重要性を確かにする、データを提供する。HER-2 DARPinを有する完全長のTri-TAC(
図4のA、下部の列)、DARPinを欠くTri-TAC変異体(
図4のA、上部の列)、またはUCHT1を欠くTri-TAC変異体(
図4のA、中央の列)により、T細胞を操作した。3つすべての操作されたT細胞集団を、HER-2陽性の腫瘍細胞により刺激した。完全長のTri-TACにより操作されたT細胞は、刺激後にIFN-γ、TNF-α、およびIL-2を産生できた一方、変異体は刺激後にどのサイトカインも産生できなかった。3つのT細胞集団も、4:1のエフェクター:標的において、D2F2/E2細胞(HER-2発現)またはD2F2細胞(HER-2陰性)と共に培養した(
図4のB)。完全長のTri-TACにより操作されたT細胞は、D2F2/E2細胞に対する強固な死滅を実証したが、D2F2細胞を死滅させなかった。DARPinまたはUCHT1を欠く、他のTri-TAC変異体は、死滅を示さなかった。
【0143】
図5は、LckとTri-TACとの相互作用を例示する。
図5のAにおいて、293TM細胞を操作して、Lckと相互作用するサイトゾルドメインを欠いた、完全長のTri-TACまたはTri-TAC変異体のいずれかと組み合わせて、Lckを発現させた。Tri-TAC受容体を、組換えHER-2タンパク質を有するビーズで免疫沈殿させた。沈降したTri-TACを、mycタグに対する抗体を用いたウェスタンブロットにより測定した。共沈降したLckを、Lckに対する抗体を用いたウェスタンブロットにより同定した。β-アクチンはプルダウンされず、上清(S)中で検出されただけであった。完全長のTri-TACと、サイトゾルドメインを欠いたTri-TACとの両方が、効率的にプルダウンされ、結合分画(B)中で検出された。ベクター対照、およびサイトゾルドメインの無いTACは、同レベルのバックグラウンドLckシグナルを示す。大量のLckを、対照に比べて完全長のTri-TACと同時に免疫沈降させた。
図5のBは、結合分画中で検出されたLckのデンシトメトリー解析を示す。シグナルを陰性対照に対して調整した。このデータが裏付けるものは、Lckが完全長のTri-TACと相互作用可能であるということである。
【0144】
図6は、ベクター対照(NGFR)、抗HER-2 DARPin CAR、または抗HER-2 DARPin Tri-TACによりマウスを処置した結果を示す。異種移植片マウスモデルを使用した。OVCAR-3腫瘍細胞をマウスに皮下投与し、腫瘍が100-200mm
3のサイズに達するまで成長させた。その後、操作されたT細胞を静脈内投与した。
図6のAは、処置日における腫瘍サイズまで標準化された相対的な腫瘍進行を示す。抗HER-2 DARPin Tri-TACにより操作されたT細胞は、腫瘍体積の急速な減少を引き起こし、対照には効果がなく、CAR細胞は腫瘍成長を遅くし、腫瘍サイズの減少の遅延を示す。
図6のBは、T細胞注入後の体重の相対的な変化を用いて、動物の相対的な健康がモニタリングされたことを例示する。対照と、抗-HER-2 DARPin Tri-TACで操作された細胞の両方は、処置後のマウスの体重に有意な変化はなかったことを示す。対照的に、抗HER-2 DARPin CARで処置したマウスは、重度の毒性を示す、著しい体重損失を示す。
【0145】
考察
MHCに依存しない様式で特異的な標的へとT細胞を再配向するべくキメラ受容体を使用することは、癌を処置するための新規な方法であり、病原体の抗原が細胞膜に見出される感染症に適用可能であり得る。キメラ受容体は結果として(1)標的細胞に対する特異的な細胞毒性、および(2)最小のオフターゲット毒性をもたらす。従来のCARはこの点に関して限定的なものであり、なぜならば、従来のCARは、適切な調整を受けないことから特異的な活性の細胞調節が減少される不自然な位置にシグナル伝達ドメインが存在する、合成構造に依存するからである。
【0146】
Tri-TACは、シグナル伝達ドメインの異所性の局在化を利用することなく、自然なTCRのシグナル伝達成分を再配向するよう設計された。Tri-TACは、以下の原理を用いて設計された:(1)キメラ受容体は、主要な活性化タンパク質複合体の正しく並べられたアセンブリに相互作用し、かつそれを容易にせねばならない、(2)キメラ受容体は、微小ドメイン環境など、既存の細胞順応を利用せねばならない、および(3)キメラ受容体はあらゆる活性化ドメインを有してはならない。Tri-TACは、これを効率的に達成することができ、データにより実証されるところでは、活性化の速度は、第二世代CARより優れているとは言わないまでも、それに等しい。
【0147】
Tri-TACは、T細胞活性化をさらに細かく調整するべく付加的に設計された共受容体をさらに統合するのに適している。Tri-TACは、既存のCARよりも低い毒性を提示すると考えられる。抗HER-2 DARPin CARは、細胞と標的との大きな比率において軽度のオフターゲット死滅を示し、このことは、治療での使用時に問題となりかねない。しかし、従来のCARと同じ機能である、抗HER-2 DARPin Tri-TACは、オフターゲット効果を表示しなかった。DARPinは高親和性で標的に結合するので、オフターゲット効果は、DARPinを利用する高レベルのキメラ受容体を発現する細胞上ではかなり一般的となり得る。それゆえ、理論により縛られるものではないが、Tri-TACの低表面発現は、そのようなオフターゲット効果の可能性を減らすことから効果的であり得る。
【0148】
Tri-TAC技術のモジュラー性質は、T細胞活性化プロセスの微調整を可能にする。例えば、TCR複合体の動員は、低いCD3親和性によりTri-TAC分子を操作することにより調節される。これは、自然の低TCR親和性を模倣する一方、癌標的を検出するための高親和性標的ドメインを保持する。古典的なCARとは異なり、Tri-TAC技術は、自然の低TCR親和性とよく似せるために操作される。
【0149】
示されたTri-TAC技術は非常に効率的な分子ツールであり、(1T細胞活性化および細胞毒性を効率的に誘発可能であり、(2)自然のT細胞活性化の模倣によりこれを実行可能であり、および(3)それ自体の活性化ドメインを必要としない。
【0150】
実施例2.UCHT1の突然変異はTri-TAC機能に影響を及ぼす
【0151】
図7A~7Cは、CD3に結合すると予測される部位でUCHT1配列がランダムに変異誘発されたTri-TAC変異体のライブラリと比較した、野生型抗HER-2 DARPin Tri-TACを示す。ライブラリを構築するために、UCHT1とCD3イプシロンの結合表面上に見出されるUCHT1内の24のアミノ酸をランダムに変位誘発させ、これにより、理論数として480の固有のクローンをもたらした。
図7Aは、突然変異体ライブラリの概略図を示す。表面発現の解析により、突然変異体Tri-TACが、本来のTri-TACよりも高レベルで発現されたことが明らかとなった(
図7B)。本来のTri-TACまたは突然変異体ライブラリにより操作されたT細胞を、機能について試験した。突然変異体ライブラリにより操作されたT細胞は機能を保持し、Tri-TAC機能を保持するUCHT1突然変異体の存在が示された(
図7C)。
【0152】
図8A~Cは、ライブラリから選択されたUCHT1突然変異体を有するTri-TACの表面発現の増強を示す。Tri-TACライブラリにより操作されたT細胞を、Tri-TACがT細胞を刺激する能力に対して選択されたスクリーンにさらした。選択されたライブラリから配列をランダムに選択することで突然変異体、UCHTをもたらし、そこでは、A85がVと置き換えられ、T161がPと置き換えられる(SEQ ID NO:23および24)。T細胞は、本来の抗HER-2 DARPin Tri-TAC、またはA85VとT161Pの突然変異を伴うUCHT1を有する変異体のいずれかにより操作された。注目されたことは、本来のTri-TACにより操作されたT細胞培養物が、対照T細胞に対してCD8+T細胞の拡大に向けて偏向されたことであった。A85Vにより操作されたT細胞、T161P突然変異体Tri-TACは、CD8+T細胞拡大への偏向を明らかにしなかった(
図8A)。表面発現の比較により、A85Vを有するTri-TAC、T161P突然変異体Tri-TACが、本来のTri-TACに比べて高いレベルのT細胞の表面上で発現されたことが明らかになった(
図8B)。機能に関して、A85Vにより操作されたT細胞、T161P突然変異体Tri-TACは、低レベルのサイトカインを産生し、HER-2での刺激後に脱顆粒が減少した。これらの結果が実証するところによると、UCHT1の突然変異は、Tri-TAC機能の多数の態様に影響を及ぼすことができる。
【0153】
図9において、7つの追加の点突然変異を検査した。突然変異体のうち4つ(T161R、T178R、N180R、およびN180G)は結果として、Tri-TACの表面発現の増強をもたらした(
図9A)。様々な突然変異体を、A549またはSKOV-3細胞のいずれかでの刺激後、機能に関して検査した。T178Pを除くすべての突然変異体は、サイトカイン産生の重度の損失を実証し(
図9B)、どの突然変異体も、HER-2陽性の標的細胞に対する細胞毒性を実証しなかった(
図9C)。これらの結果は、個々の突然変異が完全にTri-TAC機能を抑制可能であることを例証する。
【0154】
図10は、ランダムに変異誘発されたライブラリの選択後の特異的なアミノ酸の富化のための解析の結果を示す。富化は、選択後のUCHT1ライブラリの配列を、(i)
図7A-Cに記載される本来のライブラリ、および(ii)レンチウイルスへのパッケージング後の同じライブラリと比較することにより定められる。選択後に富化された突然変異は、(i)
図8A-Cに記載される本来のライブラリ(黒い線);(ii)レンチウイルスへとパッケージングされたライブラリ(灰色の線);および(iii)選択後ライブラリ(円)における頻度の比較により判定された。完全な円により示されるように、別個の富化を示した突然変異が、候補と考慮される(
図10)。空円は、少数の読み取りを表した。見出される1つの最も明白な突然変異は、位置88-90でのチロシン(Y)のトレオニン(T)への置き換えであった。
【0155】
図11は、UCHT1およびUCHT1の変異体の配列アライメントを示す。UCHT1およびUCHT1(Y182T)の配列(SEQ ID NO:26)は
図11のAに示される。UCHT1およびヒト化UCHT1(huUCHT1)の配列(SEQ ID NO:29)は
図11のBに示される。Y->Tの突然変異は、huUCHT1中の対応部位に挿入され、huUCHT1(Y177T)(
図11のC)(SEQ ID NO:28)を産生した。
【0156】
Y182TおよびY177Tの突然変異体は、それらの表面の発現表現型、および他の機能特性、すなわち細胞増殖や細胞毒性に基づいて、インビトロで分析された。
【0157】
図12は、Y->T突然変異を有するTri-TAC、UCHT1(Y182T)またはhuUCHT1(Y177T)のいずれかが、それぞれUCHT1およびhuUCHT1を有するTri-TACに比べて高レベルの、操作されたT細胞の表面上に発現される。ヒトPBMCは、抗CD3/抗CD28により活性化され、レンチウイルス(MOI=10)により形質導入され、(i)NGFR、(ii)原型Tri-TAC分子、(iii)UCHT1(Y182T)を有するTri-TAC、(iv)huUCHT1を有するTri-TAC、および(v)huUCHT1(Y177T)を有するTri-TACのみを発現する。14日後、細胞を、NGFR(形質導入マーカー)に対する抗体、TAC受容体、およびT細胞マーカーCD8とCD4により染色した。CD8(上部パネル)とCD4(下部パネル)に対して細胞をゲートした(gated)。いずれの場合も、Y182T/Y177T突然変異の存在は、TAC受容体の表面発現を改善した。これは多数のドナーを介して観察され、代表的なプロットが示される。
【0158】
図12はまた、UCHT1を運んだ本来のTri-TACと比較した、huUCHT1を有するTri-TACの表面発現の増強を明らかにし、このことは、ヒト化中にUCHT1に組み込まれた突然変異が、表面発現に影響を及ぼした特質を導入したことを示す。
【0159】
図13において実証されるように、huUCHT1、muUCHT1(Y182T)、またはhuUCHT1(Y177T)を有するTri-TACにより操作されたT細胞は、UCHT1を有する本来のTri-TACにより操作されたT細胞よりも高い範囲にまで拡大した。ヒトPBMCは、抗CD3/抗CD28により活性化され、レンチウイルス(MOI=10)により形質導入され、(i)NGFR、(ii)原型Tri-TAC分子、(iii)UCHT1(Y182T)を有するTri-TAC、(iv)huUCHT1を有するTri-TAC、および(v)huUCHT1(Y177T)を有するTri-TACのみを発現する。成長して14日後、細胞を数え上げ、ベースラインを超える倍率拡大を判定した。倍率拡大は、NGFRレンチウイルス単独により操作された対照細胞の拡大にまで標準化された。2つの異なるドナーの平均を
図13に示す。UCHT1(Y182T)を持つTri-TACにより操作されたT細胞は、UCHT1を有する本来のTri-TACにより操作されたT細胞よりも高い範囲にまで拡大した。huUCHT1およびhuUCHT1(Y177T)を持つTri-TACにより操作されたT細胞は、同じ範囲にまで拡大し、どちらもUCHT1を有する本来のTri-TACよりも高い拡大を表示した。
【0160】
再び、UCHT1を有するTri-TACは、対照T細胞に比べて拡大を損なったことを実証し、huUCHT1を有するTri-TACは、対照に比べて拡大の損失がなかったことを明らかにしたことに、留意されたい。
【0161】
図14は、Tri-TAC変異体の細胞毒性を記載する。T細胞を、本来のTri-TAC、huUCHT1を有するTri-TAC、およびY->T突然変異を持つUCHT1変異体を有するTri-TACにより操作した。すべてのTri-TACを抗-HER-2 DARPinにより標的とした。細胞毒性を、HER-2陽性の標的(SKOV-3およびA549)またはHER-2陰性の標的LOXIMVIを持つ、操作されたT細胞のインキュベーションにより評価した。2つの異なるドナーの平均を示す。すべてのT細胞集団が同等の細胞毒性を明らかにした。
【0162】
図14におけるように、T細胞を、huUCHT1を有するTri-TAC、またはY->T突然変異T突然変異[huUCHT1(Y177T)]を持つhuUCHT1変異体を有するTri-TACにより操作した。両方のTri-TACを、抗HER-2 DARPinにより標的とした。対照T細胞を、腫瘍結合ドメインではなくhuUCHT1(Y177T)を有するTri-TACにより操作した。T細胞を使用して、
図6に記載されるOVCAR-3異種移植片マウスモデルを処置した。操作されたT細胞を静脈内投与し、腫瘍は100-200mm
3のサイズに達した。データは、処置日における腫瘍サイズに標準化された相対的な腫瘍進行を示す。
図17(パネルA-C)は、ドナーAから産生したT細胞に対する結果を例示する。
図17(パネルD-F)は、ドナーBから産生したT細胞に対する結果を示す。
【0163】
図15A~Cは、骨髄腫標的であるBCMAに特異的なscFvを有するTri-TACにより操作されたT細胞の、インビトロの特徴づけを示す。T細胞を、本来のTri-TAC、またはUCHT1(Y182T)を持つTri-TACのいずれかにより操作した。T細胞を、対照レンチウイルス、本来のTri-TACを発現するレンチウイルス、または、5のMOIにてUCHT1(Y182T)を持つTri-TACを発現するレンチウイルスにより操作した。Tri-TACの細胞表面発現を、後にフローサイトメトリーにより測定される組換えBCMA-Fcによる操作された細胞のインキュベーションにより評価した。サイトカイン産生を、BCMA陽性(KMS-11)細胞株またはBCMA陰性(SKOV-3)細胞株と共に操作された細胞または対照細胞を共培養することにより評価した。共培養の4時間後、サイトカインの細胞内染色のために細胞を処理し、サイトカイン産生をフローサイトメトリーによって測定した。BCMA陽性(KMS-11)細胞株またはBCMA陰性(SKOV-3)細胞株と共に操作された細胞または対照細胞を共培養することにより細胞毒性を評価し、共培養の6時間後に生存率を評価した。前述のように、本来のTri-TACに比べて高い分画のT細胞をTri-TAC UCHT1(Y182T)により操作し、Tri-TAC UCHT1(Y182T)も、本来のTri-TACより高いレベルで発現させた(
図15A)。より高い発現レベルにもかかわらず、本来のTri-TACおよびTri-TAC UCHT1(Y182T)により操作されたT細胞は、サイトカイン産生(
図15B)およびBCMAを発現する標的(KMS-11;
図15C)上の細胞毒性に関する同様の機能を実証した。
【0164】
図16は、UCHT1(Y182T)を有するTri-TACにより操作されたT細胞の抗腫瘍効果の増強を例示する。
図15A-Cにおけるように、T細胞を、対照レンチウイルス、本来のTri-TACを発現するレンチウイルス、または、5のMOIにてUCHT1(Y182T)を持つTri-TACを発現するレンチウイルスにより操作した。多発性骨髄腫腫瘍を、KMS-11細胞株の摂取により免疫不全NRGマウスに確立させ、増強したホタルルシフェラーゼ(KMS-11
eff)を用いて操作した。骨髄腫を確立させて7日後、マウスに、分割投与量の操作されたT細胞を48時間間隔で投与して処置した。マウスは、対照T細胞、または2つのBCMAに特異的なTri-TAC(UCHT1を持つ本来のTri-TAC、およびUCHT1(Y182T)を持つ変異体Tri-TAC)により操作されたT細胞の投与を、同じ量で受けた。マウスの腫瘍負荷を、インビボでの生物発光画像化により一定時間ごとにモニタリングした。図中のデータは、生物発光の増加により評価されるような、経時的な腫瘍成長を反映する。腫瘍成長は、処置を受けていないマウスおよび対照T細胞を受けたマウスに匹敵した。腫瘍成長は最初に、本来のTri-TACにより操作されたT細胞で処置したマウスでは遅くされたが、これらのマウスにおける腫瘍制御は、処置後約2週間で消失した。対照的に、UCHT1(Y182T)を有するTri-TACにより操作されたT細胞は、腫瘍退縮および長期の腫瘍制御を提示した。
【0165】
考察
Tri-TACを、様々な成分の改質が受容体機能を修飾できる哲学に基づいて設計した。ここで、UCHT1とCD3との間の接触領域の修飾を、UCHT1中の個々のアミノ酸を変異させることにより調べた。まず、実証されたところによると、UCHT1における点突然変異は、受容体の表面発現に影響を及ぼす。大半の突然変異は表面発現を増大させたが、一部の突然変異は表面発現(例えば、T161W、T178P)を縮小した。次に、UCHT1への突然変異は、製造プロセス中にT細胞の全収率も改善することに留意されたい。最後に、UCHT1への突然変異は、CD8+T細胞の方へと製造産物の歪みを逆転できたことが分かった。この歪みは、本来のTri-TAC受容体の一般的な特徴である。
【0166】
多くの場合、突然変異は、サイトカイン類IFN-γ、TNF-α、およびIL-2の産生だけでなく、細胞毒性の産生をも損ねた。特異的な突然変異(Y182T)が明らかとなり、これにより、受容体の機能を損なうことなく、製造に対し大いに魅力的な特性(T細胞拡大が損なわれない、CD4+T細胞拡大が抑制されない)を持つTri-TACが得られる。さらに、Tri-TAC(UCHT1 Y182T)により操作されたT細胞は、本来のTri-TACにより操作されたT細胞よりも高い抗腫瘍活性を表示した。
【0167】
UCHT1(huUCHT1)のヒト化変異体を有するTri-TACはまた、本来のTri-TACに比べて増強された製造特性を実証した。これら増強された特徴は、ヒト化に関連付けられるhuUCHT1の突然変異によるものである。
【0168】
総じて、これらのデータにより実証されるものによれば、UCHT1のわずかな突然変異によりTri-TACの機能に劇的な影響が及ぼされる。今日までのこれらの試験は、腫瘍学的な用途に焦点を置いているが、この考えは、他の用途(例えば、自己免疫、アレルギー)に対するTri-TAC受容体の使用にも適用される。この場合、本明細書に記載されるものを除く突然変異が、そのような特定用途に相応しい場合がある。
【0169】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され、かつ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、および置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施に利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の方法と構造は、それにより包含されることが、意図されている。
【配列表】