(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチドトランスフェクションのための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20230215BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230215BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230215BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230215BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230215BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230215BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230215BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230215BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20230215BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20230215BHJP
C07K 14/00 20060101ALN20230215BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230215BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K47/64 ZNA
A61K47/42
A61K9/16
A61K9/51
A61K31/713
A61K48/00
A61P35/00
A61P19/02
A61P43/00 105
C12N15/87 Z
C07K7/08
C07K14/00
C12N15/113 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021028926
(22)【出願日】2021-02-25
(62)【分割の表示】P 2019039619の分割
【原出願日】2014-01-03
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2013-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・エイ・ウィックリン
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ホウ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】The FASEB Journal, 2012.04, Vol. 26, No. 1 Supplement 1037.4
【文献】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 2005.04, Vol. 59, No. 3, p. 419-429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物であって、前記ペプチド-ポリヌクレオチド複合体が、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドのモル比率を有し、前記ペプチドが(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
であり、前記配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列が、2個以上の近接した塩基性アミノ酸(カチオン性領域)を有し、前記カチオン性領域に隣接して位置する1つ以上のヒスチジン残基を含む、前記薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチド:ポリヌクレオチドのモル比率が、約50:1~約100:1である、請求項1に記載の前記組成物。
【請求項3】
前記複合体が、約50nm~約200nmの直径を有するナノ粒子である、請求項1または2に記載の前記組成物。
【請求項4】
前記ペプチドが、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列
である、請求項1~3のいずれかに記載の前記組成物。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAである、請求項1~4のいずれかに記載の前記組成物。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、低分子干渉RNA(siRNA)またはマイクロRNA(miRNA)である、請求項1~5のいずれかに記載の前記組成物。
【請求項7】
前記複合体が、アルブミンで被覆されている、請求項1~6のいずれかに記載の前記組成物。
【請求項8】
前記複合体の前記ポリヌクレオチドが、STAT3、JNK2、p65、及びp100/52からなる群から選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列を妨害する、請求項1~7のいずれかに記載の前記組成物。
【請求項9】
ポリヌクレオチドを細胞の細胞質に送達するインビトロ方法であって、細胞をペプチド-ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含み、前記ペプチド-ポリヌクレオチド複合体が、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドのモル比率を有し、前記ペプチドが、(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
であり、前記配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列が、2個以上の近接した塩基性アミノ酸(カチオン性領域)を有し、前記カチオン性領域に隣接して位置する1つ以上のヒスチジン残基を含む、前記方法。
【請求項10】
ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む組成物であって、前記ペプチド-ポリヌクレオチド複合体が、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドのモル比率を有し、前記ペプチドが(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
であり、前記配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列が、2個以上の近接した塩基性アミノ酸(カチオン性領域)を有し、前記カチオン性領域に隣接して位置する1つ以上のヒスチジン残基を含み、前記組成物が:
(i)NFκBシグナル伝達経路と正常に会合したヌクレオチドを妨害し、それにより腫瘍の治療的処置に用いられる;
(ii)NFκBシグナル伝達経路と正常に会合したヌクレオチドを妨害し、それにより関節炎の治療的処置に用いられる;
(iii)細胞におけるSTAT3の発現を妨害し、それにより血管新生を阻害するため用いられる;
(iv)細胞におけるJNK2の発現を妨害し、それにより泡沫細胞形成を阻害するために用いられる;または
(v)細胞におけるp65の発現を妨害し、それにより関節炎の治療的処置に用いられる、ここで、前記ポリヌクレオチドは、それを必要とされる対象における細胞の細胞質に送達される、ものである、
前記組成物。
【請求項11】
(a)前記ポリヌクレオチドが、NFκBシグナル伝達経路と正常に会合したヌクレオチドを妨害する、
(b)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるSTAT3の発現を妨害する、
(c)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるJNK2の発現を妨害する、または
(e)前記ポリヌクレオチドが、細胞におけるp65の発現を妨害する、
請求項9に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所(NIH)により認可された補助金番号U01 CA141541及びR01 HL073646-08による政府の支援の下行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2013年9月3日に出願された米国仮出願第61/873,187号、2013年8月23日に出願された米国仮出願第61/869,634号、及び2013年1月1日に出願された米国仮出願第61/748,615号の優先権を主張し、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、薬学的組成物として製剤することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体、及びその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
低分子干渉RNA(siRNA)の使用を伴うRNA干渉(RNAi)は、癌及び炎症疾患を含む数多くの疾患の高度に有効な療法として提案されてきた。しかしながら、20年近くにわたる集中的な研究にもかかわらず、siRNA治療薬は、細胞取り込みの不良及び血清中の遊離siRNAの不安定性により、臨床用途への移行において限定的な成功を示してきた。カチオン性脂質及びポリマーは、siRNAトランスフェクションに関しては首尾よく採用されてきたが、許容できない細胞毒性を呈し、反応性酸素種(ROS)及びCa+2漏出を発生させる可能性がある。加えて、細胞透過性ペプチド(CPP)に基づくsiRNAトランスフェクション剤は、細胞毒性の減少に関して期待されるが、リソソーム捕捉により、従来の脂質トランスフェクション剤の高効率を達成していない。
【0005】
したがって、疾患を治療するために効率的な細胞取り込み及び細胞質内への送達を可能にする新しいクラスの治療的siRNA組成物及びsiRNAトランスフェクション剤の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物を包含する。ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドの比率を有する。このペプチドは、(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ポリヌクレオチドは、RNA配列またはDNA配列である。ある態様では、ペプチドは、少なくとも1つのカチオン性領域、及びペプチドの少なくとも1つのカチオン性領域に隣接して位置する少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。別の態様では、ポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAである。
【0007】
本発明は、細胞の細胞質にポリヌクレオチドを送達する方法も包含する。本方法は、細胞をペプチド-ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含み、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドの比率を有し、ペプチドは、(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある態様では、このペプチドは、少なくとも1つのカチオン性領域、及びペプチドの少なくとも1つのカチオン性領域に隣接して位置するか、またはその領域内に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。別の態様では、ポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAである。
【0008】
本発明は、細胞の細胞質にポリヌクレオチドを送達することを必要とする対象にそれを行う方法も包含する。本方法は、治療有効量のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含み、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、約50:1を超え、約200:1未満のペプチド:ポリヌクレオチドの比率を有し、ペプチドは、(a)非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができ、かつ(b)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある態様では、このペプチドは、少なくとも1つのカチオン性領域、及びペプチドの少なくとも1つのカチオン性領域に隣接して位置するか、またはその領域内に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。別の態様では、このポリヌクレオチドは、核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAである。
【0009】
本発明は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有し、かつ非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができるペプチドをコードするアミノ酸配列も包含する。
【0010】
本発明は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドも包含し、ペプチドは、非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができる。
【0011】
本発明の他の態様及び反復は、以下により詳細に説明される。
【0012】
カラー図面の参照
本出願書類は、少なくとも1つのカラー写真を含む。カラー写真を含む本特許出願公開の複写は、要請かつ必要な料金の支払により特許庁より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)p5RHH/siRNA比の最適化は、最大150:1のp5RHH:siRNAまで、p5RHH量の増加と共にトランスフェクションの効率の増加を明らかにする、及び(B)アラマーブルーアッセイは、50nMのsiRNAをトランスフェクトした場合、最大200:1のp5RHH:siRNA比で細胞毒性がないことを示すことを示す、2つのプロットを示す。
【0014】
【
図2】(A)50:1のp5RHH:siRNA比が完全にsiRNAを複合するのに必要とされることを示すゲル遅延度アッセイ、及び(B)粒径のSEM分析は、直径が100nm~200nmの小さい複合体を明らかにする動的光散乱データを確認することを示す、電気泳動ゲル及びSEM顕微鏡写真を示す。(スケールバー100nm)
【0015】
【
図3-1】(A)フローサイトメトリーによる用量応答は、p5RHH媒介トランスフェクションがリポフェクタミン2000より効率的ではないことを示すが、5nMの低濃度で目に見えるノックダウンを伴う高いsiRNAトランスフェクション効率も示す、ウエスタンブロットのプロット及び画像を示す。(B)アラマーブルーアッセイは、p5RHHが最大200nMのsiRNA濃度で最小毒性を呈することを示す。GFP mRNAのウエスタンブロット(C)及びRT-PCR(D)分析は、配列特異的様式及び約50nMのIC50でp5RHHがmRNAレベルを減少させる能力を確認する。ウエスタンブロット(E)及びRT-PCR(F)により決定されるように、リポフェクタミン2000は、10~25nMのIC50で高いトランスフェクション効率を有する。
【0016】
【
図4-1】(A)フローサイトメトリーを介してB16GFP細胞のGFPのノックダウンに関してスクリーニングした際、非機能性メリチン誘導体であるp5RWRがsiRNAトランスフェクション能力を呈さないことを示す。siRNAは送達されたが、50μMのクロロキンと共にインキュベートされるまで細胞質に達しない。(B、C)共焦点顕微鏡は、p5RWRが50μMのクロロキンと共にインキュベートされなければ細胞質内への顕著なオリゴヌクレオチド放出を顕在化しないことを示すフローサイトメトリーデータを確認する。(D、E)比較すると、p5RHHは、リポフェクタミン2000を介して、オリゴヌクレオチド送達と類似する細胞質内への十分なオリゴ放出を示す。
【0017】
【
図5-1】p5RHH(A)がB16細胞におけるSTAT3タンパク質レベルの減少の開始時にリポフェクタミン2000(B)より約5倍効率が良くないことを示すウエスタンブロットデータを示す。RT-PCRデータは、p5RHH(C)が50nMを下回る濃度で活性を失う一方で、リポフェクタミン2000(D)が10nMの低用量で活性を呈することを示す。アラマーブルーによるB16生存率分析は、p5RHH(E)トランスフェクションが配列特異的様式で癌遺伝子発現を発現停止させることによりB16の生存率の減少をもたらす一方で、リポフェクタミン2000(F)が非特異的用量依存細胞毒性をもたらすことを示す。
【0018】
【
図6】p5RHH(A)またはリポフェクタミン2000(B)によりスクランブルされたまたはSTAT3特異的siRNAを送達する場合の、B16細胞におけるSTAT3タンパク質レベルの定量化を示す。データは、3つの独立した実験の平均として提示される。
【0019】
【
図7-1】(A)ウエスタンブロットは、STAT3特異的siRNAで処理されたHUVECにおけるSTAT3タンパク質レベルの用量依存減少を示す。(B)RT-PCRデータは、200nMの高濃度でのSTAT3 mRNAにおけるp5RHH依存60%ノックダウンを図示する。(C)p5RHHは、siRNAをトランスフェクトした場合、HUVEC細胞に対して細胞毒性を有さない。(D)STAT3 siRNAで処理されたHUVECは、(G)において定量化されるように、対照(E、F)と比較した場合、マトリゲル上で60%の管形成を減少させたことを示す。管形成の減少は、顕微鏡(H)及びアラマーブルーアッセイ(I)により決定されるトランスウェル遊走アッセイにおいて、bFGFに応答してHUVEC遊走の40%減少が伴う。
【0020】
【
図8】p5RHHをトランスフェクトされたHUVECからのSTAT3タンパク質レベルの定量化が約50nMのIC50を示すことを示す。3つの独立した実験の平均。
【0021】
【
図9-1】(A)リポフェクタミン2000を使用するSTAT3のノックダウンが10nM未満のIC50を示し、(B)定量化を示す、代表的なウエスタンブロットを示す。RT-PCRは、10nMでの強力なノックダウンを確認する(C)。高いsiRNA送達効率にも関わらず、リポフェクタミン2000は、大規模な細胞毒性をもたらし、わずか50nMのsiRNAで、細胞生存率において>50%の減少を伴う。
【0022】
【
図10】スクランブルされたsiRNAで処理された試料と比較して、STAT3 siRNAがHUVECの移動を>50%減少させたことを示す、蛍光顕微鏡によるbFGF勾配に応答するHUVEC移動の定量化を示す。
【0023】
【
図11-1】(A)ウエスタンブロット分析が、IC50<25nMのp5RHHによる、RAW264.7細胞におけるJNK2のノックダウンを示すことを示す。(B)重要なことに、p5RHHは、100nMのスクランブルされたsiRNAをトランスフェクトした際、細胞生存率において約5%の減少しかもたらさない。(C~E)50nMのsiRNAのJNK2のノックダウンは、スクランブルされたsiRNAで処理された細胞及び未処理の対照と比較した場合、50μg/mLのAc-LDLで一晩インキュベートしたときに、RAW264.7細胞における脂肪滴蓄積の強力な減少を示す。
【0024】
【
図12】リポフェクタミン2000がIC50<25nMによりRAW264.7細胞のJNK2をノックダウンすることを示すが(A)、10nMの低濃度で大規模な細胞毒性を誘発する(B)ことを示す。
【0025】
【
図13】(A)50μg/mLのHSAによるp5RHH:siRNAナノ粒子の30分または一晩のインキュベーションは、新しく調製されたp5RHH:siRNAナノ粒子と比較した場合、GFPノックダウンの改善を特徴とすることを示す。(B)10%のFBSで補足された正常な細胞培養培地にトランスフェクトされたB16細胞の共焦点顕微鏡は、細胞質内への十分なオリゴヌクレオチド放出を示す。
【0026】
【
図14】p5RHH/siRNAナノ粒子のアセンブリを示す模式的及び原子間力顕微鏡画像を示す。(A)アルブミン安定化p5RHH/siRNAナノ粒子形成のスキーム。(B)p5RHH/siRNAナノ粒子の湿式AFM撮像は、約55nM±18の平均粒径を明らかにする。
【0027】
【
図15】siRNA粒子及び粒子のトランスフェクション効率を示すグラフ及び電子顕微鏡図を示す。(A)p5RHHとパッケージングされた場合、50nMの最終GFP siRNA濃度でGFPノックダウンを呈する細胞のパーセンテージにより測定される、示される期間インキュベートされた複合体のトランスフェクション効率。このデータは、40分のp5RHH/siRNAインキュベーションが最大のトランスフェクションに最適なインキュベーション期間を提供することを示す。(B)示された期間インキュベートされた粒子は、p5RHH/siRNA粒子が<100nmの大きさを有することを示す。
【0028】
【
図16】4℃でのp5RHH/Alexa488-siRNAナノ粒子の取り込み(C)が37℃での取り込み(B)と比較して劇的に減少することを示すグラフを示す。未処理の細胞は、比較のために示される(A)。
【0029】
【
図17-1】p5RHH/siRNAナノ粒子の取り込み及び共局在を示すグラフ及び顕微鏡画像を示す。(A~D)40分のp5RHH/Alexa488-siRNAナノ粒子の取り込みは、処理された細胞の60%が(A)p5RHH/siRNAナノ粒子を取り込むことを示す。飲食作用阻害剤の存在は、(B)100μg/mLのフィリピン(小窩阻害剤)及び(C)10μMのPAO(クラスリン媒介飲食作用阻害剤)がp5RHH/siRNAナノ粒子の取り込みを阻害しないことを示す。あるいは、(D)マクロ飲作用阻害剤(EIPA、80μM)による処理がナノ粒子の取り込みをほぼ消失させる。(E~J)共焦点顕微鏡により決定される共局在は、p5RHH/Cy-3 siRNAナノ粒子がFITC-70kDaデキストラン(J)と共に取り込まれたが、FITC-トランスフェリン(I)と共には取り込まれないことを示す。スケールバー10μm。
【0030】
【
図18】飲食作用阻害剤が示される経路に特異的なマーカーの取り込みのみを阻害することを示すグラフを示す。
【0031】
【
図19】1時間以内にCy-3-siRNAの細胞質放出を示す顕微鏡画像を示す。
【0032】
【
図20】(A~C)バフィロマイシンA1の不在下のトランスフェクションと比較して(B)、バフィロマイシンA1がp5RHH/Alexa488-siRNAナノ粒子の取り込みを阻害しない(C)ことを示すグラフを示す。(D~F)一方、バフィロマイシンA1の不在下のトランスフェクションと比較して(E)、バフィロマイシンA1は、GFP(F)のノックダウンを遮断し、エンドソームの酸性化がp5RHH媒介siRNAのトランスフェクションに重要であることを示す。
【0033】
【
図21-1】(A)siRNAに結合するTOPRO3からの蛍光がp5RHH(■)を介してパッケージングされる場合、pH≦5.5で劇的に増加するが、非機能性ペプチドp5RWR(◆)では増加しないことを示すグラフ及び顕微鏡画像を示す。(B)ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、p5RHHはpH4.5でsiRNAを放出するが、p5RWRはpH依存放出を示さないことを確認する。(C)p5RHHは低pHでも放出され、pH≦5.5でp5RHH放出が増加する。(D)遊離p5RHHは、溶血を可能にし、pH≦5.5でヘモグロビン放出の増加をもたらす。(E~H)アクリジンオレンジ放出アッセイは、100μMクロロキンと類似する色素放出(F)によって示されるように、組織培養で試験された場合、p5RHH/siRNAナノ粒子はエンドソームを妨害することができる(H)一方、p5RWRは妨害できない(G)ことを示す。(I~K)様々なpH値でのペプチド-ポリヌクレオチド複合体の解体を示す模式図である。スケールバー50μm。
【0034】
【
図22】(A)正規化された溶血が、遊離p5RHHがRBCを妨害する能力において、pHに依存した減少を示すことを示す2つのグラフを示す。対照的に、p5RHH/siRNAナノ粒子は、pHの減少に伴いRBCの破壊において増加を示し、pH5.5で遊離p5RHHの同じ溶解能を回復する。結果は、別の実験で記録されたpH7.5の100μMのp5RHHにより最大溶解に正規化された分画溶血として報告される。(B)0.1%のTriton-Xにより最大溶血に正規化されたRBC溶血は、p5RHHが200~400μMのIC
50のRBCを溶解することを示す。
【0035】
【
図23-1】(A)B16 GFP細胞におけるGFPのノックダウンは、p5RHHのみがGFP siRNAを細胞質に首尾よく送達できることを明らかにする一方、p5RWRはクロロキンにより誘発されたエンドソーム流出を伴っても送達できないことを示すグラフ及び顕微鏡画像を示す。(B)FACSは、p5RWR及びp5RHHの両方が類似する量のalexa488標識されたsiRNAを送達することを明らかにする。未処理対照(赤色の四角);50nMのa488 siRNA/p5RWR(ベージュ色の四角);50nMのa88 siRNA/p5RWR+クロロキン(青色の四角);50nMのa488 siRNA/p5RHH(緑色の四角);50nMのa88 siRNA/p5RHH+クロロキン(青緑色の四角)。共焦点顕微鏡(スケールバー10μm)は、p5RWR(C)が点状小胞に留まることによりsiRNAを送達する一方、p5RHHは細胞質分布(D)を達成することを明らかにする。クロロキンとの同時インキュベーションは、p5RWRによりトランスフェクトされる場合、細胞質にsiRNAを放出すること必要とするが(E)、p5RHH媒介トランスフェクション(F)に対する作用はない。
【0036】
【
図24-1】(A、B)ウエスタンブロットが、スクランブルされたsiRNAでF8細胞を処理した場合に見られないp100/p52またはp65発現において用量依存減少を示すことを示す、ウエスタンブロット、グラフ、及び顕微鏡画像を示す。(C)トランスフェクション48時間後のアラマーブルーアッセイは、スクランブルされたsiRNA(■)がF8細胞生存率に影響を及ぼさないことを明らかにする。p65 siRNA(▲)による標準NFκB経路のノックダウンは、ほぼ200nMのIC
50を有する。p100/p52 siRNA(●)による非標準NFκB経路の標的指向は、100nMのIC
50をもたらす。しかしながら、標準及び非標準両方のNFκB経路の同時遮断(◆)は、IC
50を50nMに向上する。IVIS撮像(スケールバー5mm)は、Cy5.5標識されたsiRNAの、処置されたマウスの腫瘍への腫瘍局在を明らかにし(E)、共焦点顕微鏡(G)により確認される(スケールバー50μm)。未処理対照は比較のために示される(D、F)。
【0037】
【
図25】p5RHH/Cy5.5 siRNAナノ粒子を注射されたマウスからの腫瘍が周辺にCy5.5 siRNA蓄積を呈する 一方、限られたCy5.5 siRNAが腫瘍の中心で見られることを示す共焦点顕微鏡画像を示す。(スケールバー50μm)
【0038】
【
図26】p5RHH/siRNA粒子を使用する細胞質内へのsiRNA送達の模式図を示し、細胞内への侵入、ならびにエンドソーム及びペプチド/siRNA粒子から細胞質内へのsiRNAの放出を示す。
【0039】
【
図27】生理食塩水対照を投与された動物(A)、及びCy5.5標識NFκB siRNAを有するp5RHH/siRNAを投与された動物(B)からの臓器及び腫瘍のIVIS画像を示す。
【0040】
【
図28-1】リポフェクタミン2000(B、D)と比較した、p5RHH/siRNA(A、C)の細胞毒性を示すノーザンブロット及びグラフを示す。
【0041】
【
図29】コラーゲン抗体誘発マウスモデル及びsiRNAの投与の模式図を示す。
【0042】
【
図30】(A)足首の厚さ、及び(B)生理食塩水を投与された動物の関節炎スコア、ならびにスクランブルされたsiRNAまたは標準経路のp65サブ単位を標的とするsiRNAを有するp5RHH/siRNAでトランスフェクトされた動物を示すグラフ及びIVIS画像を示す。(C)生理食塩水、または標準経路のp65サブ単位を標的とするsiRNAを有するp5RHH/siRNAを投与された動物のIVIS画像。
【0043】
【
図31】超音波エントロピー撮像を使用した、標準経路のp65サブ単位を標的とするp5RHH/siRNAを使用した関節炎療法の有効性を示す画像を示す。
【0044】
【
図32-1】コラーゲン抗体誘発関節炎(CAIA)におけるp65-siRNAナノ療法(nanotherapy)が有効であることを示す画像及びグラフを示す。関節炎は、0日目に1.5mgの5-クローン抗体カクテルのi.p.注射、続いて、3日目に50ugのLPSの注射により誘発された。初期関節炎が確立された4日目に、静脈投与される生理食塩水、スクランブルされたナノ粒子、及びp65-siRNAナノ粒子の3つの処置群(Tx)にマウスを無作為に分けた。 4、5、及び6日目。脚は10日目に撮影した(A~C)。足首の厚さ(D)、関節炎スコア(E)、及び体重損失%(F)の変化は、毎日記録された。値は平均±SEMとして提示され、処置群当りn=6~8匹のマウス。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0045】
【
図33-1】p65-siRNAナノ療法がCAIAにおいてp65発現及び炎症を抑制することを示す免疫ブロット及びグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、脚を採取し、均質化し、取り除いた溶解物をp65発現に関してブロットした(A)。溶解物は、サイトメトリービーズアレイ及びELISAにより炎症サイトカイン[TNFα(B)、IL-1β(C)、IL-6(D)、MCP-1(E)]に関してもアッセイされた。**P<0.01、***P<0.001。
【0046】
【
図34-1】ナノ粒子投与後の血液学的パラメータを示すグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、WBC及び分析血液像のために血液を得た。処置群当りn=6~8匹のマウス。(A)ヘモグロビン、(B)HCT、(C)血小板、(D)WBC、及び(E)WBC、分割された好中球、ならびにリンパ球。
【0047】
【
図35-1】ナノ粒子投与後の腎機能を示すグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、電解質及び腎機能分析のために血液を得た。(A)血清ナトリウム、(B)血清塩化物、(C)血清カリウム、(D)BUN、(E)クレアチニン。
【0048】
【
図36】ナノ粒子投与後の肝機能を示すグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、肝機能試験のために血液を得た。(A)AST、(B)ALT、(C)総ビリルビン。
【0049】
【
図37】ナノ粒子投与後の補体活性化を示すグラフを示す。マウスに、示される対照(HBSS)またはナノ粒子を静脈注射し、補体活性化の指標であるC3a発生のために30分で血漿を回収した。インビボにおいて補体を強力に活性化することを示した50mol%のDOTAP PFOBナノ粒子は、正の対照として機能した。HBSSとスランブルされた、またはp65-siRNAナノ粒子群との間に統計的に有意な差はなかった。
【0050】
【
図38】ナノ粒子の非特異的作用を示す。10日目に脾臓を採取し、脾細胞を数え、(A)にグラフ化した。フローサイトメトリーにより脾細胞の亜集団を分析し、(B)にグラフ化した。
【0051】
【
図39-1】ナノ粒子の非特異的作用を示す。CD4+T細胞を脾細胞から正の選択をし、プレート結合抗CD3モノクローナル抗体(5ug/ml)で刺激した。72時間で、サイトメトリービーズアレイにより、サイトカイン分泌に関して培養上清を分析した。(A)TNF-α、(B)IFN-γ、(C)IL-6、(D)IL-10。
【0052】
【
図40】siRNAナノ粒子に対する液性応答を示すグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、血清を回収した。総IgG(A)及びIgM(B)レベルは、サンドイッチELISAにより測定された。
【0053】
【
図41-1】粒子に対する液性応答を示すグラフを示す。10日目に、マウスを屠殺し、血清を回収した。ペプチド-ナノ粒子(p5RHH、A~B)及びsiRNA-ナノ粒子(p5RHH:p65 siRNA、C~D)に特異的に応答するIgM(A、C)及びIgG(B、D)は、修正されたサンドイッチELISAを使用して評価された。
【0054】
【
図42-1】末梢血液細胞における非特異的ナノ粒子取り込みを示す。マウスに、HBSS(B、D)、またはCy3標識されたスクランブルされた配列を含むナノ粒子(A、C)を注射した。30分後、マウスを屠殺し、末梢血液白血球を得、フローサイトメトリーにより、細胞関連ナノ粒子(Cy3+細胞)について分析した。細胞は、Ly6G(好中球、A~B)及びLy6C(単球、C~D)で共染色された。
【0055】
【
図43-1】脾細胞における非特異的ナノ粒子取り込みを示す。マウスに、HBSS(B、D)、またはCy3標識されたスクランブルされた配列を含むナノ粒子(A、C)を注射した。30分後、マウスを屠殺し、脾細胞を得、フローサイトメトリーにより、細胞関連ナノ粒子(Cy3+細胞、y軸)について分析した。細胞は、Ly6G(好中球、A、B)及びLy6C(単球、C、D)で共染色された。
【発明を実施するための形態】
【0056】
発明の詳細な説明
本発明は、当該技術分野に既知の他のポリヌクレオチドトランスフェクションの方法と比較して、減少した細胞毒性で細胞の細胞質内にポリヌクレオチドを効率的にトランスフェクトすることができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を提供する。有利に、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、血清の存在下で安定しており、したがって、インビボで細胞の細胞質内にポリヌクレオチドを効率的に送達することができる。したがって、本発明は、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を調製する方法、細胞の細胞質内にポリヌクレオチドをトランスフェクトするための本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の使用方法、及び本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を調製するためのキットを包含する。
【0057】
I.ペプチド-ポリヌクレオチド複合体
本発明の一態様は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を包含する。本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、細胞の細胞質内にペプチドと会合したポリヌクレオチドを効率的にトランスフェクトすることができる。ペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体、及び細胞は以下に説明される。
【0058】
(a)ペプチド
ある態様では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体はペプチドを含む。一般に、及び実施例に記載されるように、本発明のペプチドはメリチンに由来し、膜二重層と相互作用するためのその傾向を維持しながら、その細胞毒性を減弱するように修飾される。さらに、ペプチドは、細胞に対して実質的に非溶解性かつ非細胞毒性である。好ましくは、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドと実質的に類似する機能を有し、かつ(2)配列番号1のアミノ酸配列に対して類似性または同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0059】
本明細書で使用される、句「配列番号1を含むペプチドと実質的に類似する機能」は、エンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができる、実質的に非溶解性及び/または非細胞毒性ペプチドを指す。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは非溶解性である。用語「非溶解性」は、ペプチドと接触する際、細胞の脂質二重層が典型的には損なわれないことを意味する。脂質二重層の一体性は、細胞もしくは細胞外成分の細胞内への不適切な侵入もしくは離脱により評価され得る。例えば、細胞タンパク質及び/または小器官は、損なわれた脂質二重層を有する細胞から漏出し得る。あるいは、細胞外成分(すなわち、例えばギャップ結合を介して通常侵入しないもの)が損なわれた脂質二重層を有する細胞に侵入し得る。しかしながら、ペプチドは細胞の脂質二重層を貫通し、細胞の内部に侵入し得るが、その際に、脂質二重層の一体性は影響を受けないことに留意するべきである。他の実施形態では、本発明のペプチドは、実質的に非細胞毒性である。用語「非細胞毒性」は、ペプチドと接触する際、細胞が典型的には死滅しないことを意味する。典型的には、本発明のペプチドは、細胞生存率を約10%以下、より好ましくは約7%以下、より好ましくは約5%以下、またはより好ましくは約3%以下まで減少させる。ある特定の実施形態では、本発明のペプチドは、非溶解性かつ非細胞毒性である。
【0060】
以下のセクションI(b)及び(c)に記載される、本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドと会合することができる。よって、一態様では、本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドと相互作用する少なくとも1つのカチオン性領域を含む。典型的には、カチオン性領域は、2個以上の近接した塩基性アミノ酸を有する。重要なことは、本発明のペプチドはエンドソーム溶解能(endosomolytic capacity)も保有し、これは、ペプチドがエンドソームからの、及び細胞の細胞質内へのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことを可能にする。用語「エンドソーム溶解」は、エンドソームの溶解を開始または容易にする物質を説明するために使用され得る。実施例に記載されるように、本発明のペプチドのヒスチジン残基のプロトン化は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体の解体を促進し、これは、ペプチドを放出して、ポリヌクレオチド放出のためにエンドソーム膜を透過処理する。よって、別の態様では、本発明のペプチドは、ペプチドの少なくとも1つのカチオン性領域に隣接して位置するか、またはその領域内に位置する少なくとも1つのヒスチジン残基を含む。非限定的な例として、本発明のペプチドが3つのカチオン性領域を含む場合、ペプチドは、ペプチドの第1のカチオン性領域に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、ペプチドの第2のカチオン性領域に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、ペプチドの第3のカチオン性領域に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、ペプチドの第1及び第2のカチオン性領域の各々に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、ペプチドの第1及び第3のカチオン性領域の各々に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、ペプチドの第2及び第3のカチオン性領域の各々に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジン、またはペプチドの第1、第2、及び第3のカチオン性領域の各々に隣接するか、またはその領域内に少なくとも1つのヒスチジンを有し得る。カチオン性領域に隣接するヒスチジン残基は、カチオン性領域の前または後に位置し得る。いくつかの実施形態では、カチオン性領域に隣接するヒスチジン残基は、その領域にすぐ隣接する。他の実施形態では、カチオン性領域に隣接するヒスチジン残基は、その領域にすぐ隣接しない。例えば、ヒスチジン残基は、カチオン性領域から約2、3、4、または5位置以内にあってよい。他の実施形態では、ヒスチジン残基は、カチオン性領域内にある。本発明のペプチドのエンドソーム溶解能は、送達のためにエンドソームから細胞の細胞質内にトランスフェクトされたポリヌクレオチドを放出するために、クロロキン、膜融合性ペプチド、不活性化アデノウイルス、及びポリエチレンイミンなどの追加のエンドソーム溶解剤の必要性を除去する。そのような既知のエンドソーム溶解剤は細胞に対して負の作用を有し、トランスフェクション中に細胞毒性を増加させる可能性がある。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは配列番号1を含む。他の実施形態では、本発明のペプチドは配列番号1からなる。ある特定の実施形態では、本発明のペプチドは配列番号1の変異体であり、変異体は、配列番号1の少なくとも10個の近接するアミノ酸を含み、配列番号1を含むペプチドと実質的に類似して機能する。例えば、本発明のペプチドは、配列番号1の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の近接するアミノ酸を包含し得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、表Aから選択され得る。
【表1】
【0062】
好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ペプチドは、非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができる。配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して約80%、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%の同一性を有し得る。配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む本発明のペプチドは、保存置換された1個以上のアミノ酸を含み得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個以上のアミノ酸は、得られるペプチドが配列番号1を含むペプチドと実質的に類似して機能する限り、保存置換され得る。
【0063】
別の態様では、本発明は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有し、非溶解性であり、細胞のエンドソームからのポリヌクレオチドの放出に影響を及ぼすことができるペプチドをコードするアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。他の実施形態では、アミノ酸配列は配列番号1である。
【0064】
本発明のペプチドは、当該技術分野において既知の様々な技法を使用して生成することができる。ペプチドは、標準的な技法を使用して単離され得る、標準的な技法を使用して合成され得る、または保管所から購入もしくは得ることができる。
【0065】
本発明のペプチドは標識され得る。好適な標識の非限定的な例としては、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、比色標識、及び共鳴標識が挙げられる。ペプチドを標識する方法は、当該技術分野において周知である。
【0066】
ペプチドは、カーゴ(cargo)複合体に結合され得る。本明細書で使用される、用語「カーゴ複合体」は、本発明のポリヌクレオチド以外のペプチドによって保有されるか、またはそれに結合され得る任意の分子または薬剤を指し得る。換言すると、本発明のペプチドは、本発明のポリヌクレオチドに加えて、カーゴ複合体に結合され得る。例えば、カーゴ複合体は、撮像カーゴ、治療薬カーゴ、細胞毒性カーゴ、または標的カーゴであってよい。
【0067】
撮像カーゴ分子及び薬剤の非限定的な例としては、検出可能な物理的もしくは化学的性質を有する任意の分子、薬剤、または材料を挙げることができる。そのような撮像カーゴは、蛍光撮像、磁気共鳴撮像、ポジトロン放出断層撮影、ラマン撮像、光干渉断層撮影、光音響撮像、フーリエ変換赤外撮像、または免疫アッセイの分野において十分に開発されており、一般に、そのような方法に有用な大半の任意の標識は、本発明に適用することができる。使用することができる様々な標識またはシグナル生成系の概要に関しては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,391,904号を参照。
【0068】
治療薬カーゴの非限定的な例としては、薬理学的薬剤などの生理学的活性を有する任意の物質を含み得る。そのような治療薬カーゴは、鎮痛剤、解熱剤、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗真菌剤、降圧薬、抗炎症剤(非ステロイド及びステロイドを含む)、抗悪性腫瘍薬、抗不安薬、免疫抑制剤、抗片頭痛薬、鎮静剤、睡眠薬、抗狭心症薬、統合失調症治療薬、抗躁薬、抗不整脈薬、抗関節炎薬、抗痛風薬、抗凝固薬、血小板溶解薬、抗線溶薬、血行動態学的薬剤(hemorheologic agents)、抗血小板薬、抗けいれん薬、抗パーキンソン病薬、 抗ヒスタミン薬、抗再狭窄剤、鎮痒薬、カルシウム調節に有用な薬剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗微生物剤、抗感染症剤、気管支拡張薬、ステロイド系化合物及びホルモン、ならびにこれらの組み合わせを含む。あるいは、カーゴ複合体は、分子複合体の成分または薬理学的に許容可能な塩の形態であってよい。
【0069】
細胞毒性カーゴは、細胞に有害な(例えば、死滅もしくは損傷)分子または薬剤を指す。例としては、タキソール(パクリタキセル、ドセタキセル)などの抗微小管薬物、及びビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン)が挙げられる。例えば、例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭素エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピュロマイシン、及びこれらの類似体または相同体を挙げることができる。
【0070】
標的カーゴは、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を細胞に指向する任意の分子または薬剤であってよい。標的カーゴは、真核生物標的細胞または原核生物標的細胞に指向され得る。標的薬剤の非限定的な例としては、抗体もしくは抗体断片、受容体リガンド、小分子、ペプチド、ポリペプチド、脂質、炭水化物、核酸、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、デンドリマー、微小気泡、またはアプタマーが挙げられる。
【0071】
カーゴ複合体が本発明のペプチドに結合される手段は、実施形態により変動することができ、また変動する。カーゴ複合体は、共有結合または非共有結合を含む、当該技術分野において既知の任意の手段により本発明のペプチドに結合され得る。
【0072】
(b)ポリヌクレオチド
別の態様では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体はポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、1本鎖、2本鎖、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは2本鎖である。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは1本鎖である。さらに他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1本鎖及び2本鎖の組み合わせである。
【0073】
本発明のポリヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、またはRNA及びDNAの組み合わせを含み得る。加えて、ポリヌクレオチドは、修飾DNA塩基または修飾RNA塩基などの修飾核酸塩基を含み得る。修飾は、糖2’位、ピリミジンのC-5位、及びプリンの8位で生じ得るが、これらに限定されない。好適な修飾DNAまたはRNA塩基の例としては、2’-フルオロヌクレオチド、2’-アミノヌクレオチド、5’-アミノアリル-2’-フルオロヌクレオチド、及びホスホロチオエートヌクレオチド(モノチオホスフェート及びジチオホスフェート)が挙げられる。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド摸倣物であってよい。ヌクレオチド摸倣物の例としては、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、及びホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)が挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、RNA及びDNAの組み合わせである。他の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAを含む。ポリヌクレオチドがDNAである場合、ポリヌクレオチドは発現カセットを含み得る。本明細書で使用される、「発現カセット」は、プロモーターに動作可能に連結されたタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列を含む核酸構築物である。ある特定の実施形態では、核酸構築物は、追加の調節配列をさらに含む。追加の調節配列の非限定的な例としては、転写終結配列を含む。他の追加の調節配列は当該技術分野において既知である。本明細書で使用される、用語プロモーターは、細胞における標的核酸配列の発現を付与もしくは活性化することができる合成または天然由来の分子を意味する場合がある。プロモーターは、本発明のDNAポリヌクレオチドと正常に会合することができるか、または異種プロモーターであり得る。異種プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物などの供給源に由来し得る。プロモーターは、発現が生じる細胞、組織、または臓器に対して、構成的または差次的にDNA配列の発現を調節することができる。または、プロモーターは、発生段階に対して、または生理的ストレス、病原体、金属イオン、または誘発剤もしくは活性化剤(すなわち、誘導性プロモーター)などの外部刺激に応答して発現を調節することができる。プロモーターの非限定的な代表的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、HSP70基本プロモーター、lacオペレーター-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40早期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、テトラサイクリン応答要素(TRE)核酸配列を含むプロモーター、及びCMV IEプロモーターが挙げられる。これらの実施形態のいくつかの代替えでは、本発明のDNAポリヌクレオチドは、ベクター内に組み込まれる。当業者は、標準的な組換え技法によりベクターを構築することができるだろう(例えば、Sambrookら、2001及びAusubelら、1996を参照、その両方は参照により本明細書に組み込まれる)。ベクターは、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、転位要素、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、ならびにレトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNV等に由来)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIV等に由来)、アデノウイルス(Ad)ベクター(複製能力、複製欠失、及びそのガットレス形態)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルスベクター、ワクチンウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、及びラウス肉腫ウイルスベクターなどの人工染色体(例えば、YAC)を含む。
【0075】
さらに他の実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAを含む。RNA配列の非限定的な例としては、タンパク質、ならびにtRNA、rRNA、snoRNA、マイクロRNA、siRNA、piRNA、及び長鎖非コードRNA(lncRNA)などの非コードRNAをコードすることができるmRNAを含み得る。例えば、核酸はmRNAを含み得る。好ましい実施形態では、核酸がmRNAを含む場合、mRNA分子は、5’キャッピングされる、ポリアデニル化される、またはキャッピング及びポリアデニル化され得る。あるいは、mRNA分子は、mRNAの内部オープンリーディングフレームの翻訳のために内部リボソーム侵入部位(IRES)を含み得る。
【0076】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞において発現される核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAを含む。細胞において発現される核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAの非限定的な例としては、マイクロRNA(miRNAとしても知られる)、siRNA、piRNA、及びlncRNAが挙げられる。一般に、核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAを有する細胞のトランスフェクションは、核酸配列の切断をもたらすことができる、核酸配列のタンパク質への翻訳を強化、防止、もしくは妨害することができる、または核酸配列の転写を調節することができる。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、細胞において発現される核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。本明細書で使用される、「核酸配列の発現を妨害する」は、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体で処理されなかった細胞における核酸配列の発現レベルと比較した場合、核酸配列または核酸配列から翻訳されたタンパク質の発現レベルにおける任意の減少を説明するために使用され得る。実施形態のいくつかの代替えでは、ポリヌクレオチドは、短鎖干渉RNA(siRNA)を含む。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、JNK2をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。ある特定の好ましい実施形態では、非コードRNAは、siRNAである。他の好ましい実施形態では、非コードRNAは、miRNAである。また他の好ましい実施形態では、非コードRNAは、shRNAである。
【0079】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。NFκB経路の非限定的な例としては、標準NFκB経路及び非標準NFκB経路を挙げることができる。ある特定の好ましい実施形態では、非コードRNAは、siRNAである。他の好ましい実施形態では、非コードRNAは、miRNAである。また他の好ましい実施形態では、非コードRNAは、shRNAである。
【0080】
NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の非限定的な例としては、標準NFκBシグナル伝達経路の転写因子p65サブ単位をコードする核酸、及び標準NFκBシグナル伝達経路の転写因子p105/p50サブ単位をコードする核酸を挙げることができる。本実施形態の代替えの1つでは、本発明のポリヌクレオチドは、標準NFκBシグナル伝達経路のp105/p50サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。本実施形態の別の代替えでは、本発明のポリヌクレオチドは、標準NFκBシグナル伝達経路のp65サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。例示的な実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号51(GGAGUACCCUGAAGCUAUA)の核酸配列を有するsiRNAを含む。
【0081】
標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の非限定的な例としては、非標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸、及び非標準NFκBシグナル伝達経路のRelBサブ単位をコードする核酸を挙げることができる。本実施形態の代替えの1つでは、本発明のポリヌクレオチドは、非標準NFκBシグナル伝達経路のRelBサブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。本実施形態の別の代替えでは、本発明のポリヌクレオチドは、非標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。例示的な実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号52(GAAAGAAGACAGAGCCUAU)の核酸配列を有するsiRNAを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することができる2つ以上の非コードRNAを含む。好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNA、及び非標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。例示的な実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、標準NFκBシグナル伝達経路のp65サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNA、及び標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することができる非コードRNAを含む。
【0083】
一般に、siRNAは、長さが約15~約29ヌクレオチドの範囲の2本鎖RNA分子を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、長さが16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29ヌクレオチドであってよい。他の実施形態では、siRNAは、長さが約16~約18、約17~約19、約21~約23、約24~約27、または約27~約29ヌクレオチドであってよい。好ましい実施形態では、siRNAは、長さが約21ヌクレオチドであってよい。siRNAは、任意に、1つまたは2つの1本鎖オーバーハング、例えば、一端または両端に5’オーバーハング、一端または両端に3’オーバーハング、またはこれらの組み合わせをさらに含み得る。siRNAは、一緒にハイブリダイズする2つのRNA分子から形成されるか、あるいは低分子ヘアピンRNA(shRNA)から生成され得る(以下を参照)。いくつかの実施形態では、siRNAの2本の鎖は、2つの配列間に形成された2本鎖において不一致または膨隆が存在しないように、完全に相補的であってよい。他の実施形態では、siRNAの2本の鎖は、2つの配列間に形成された2本鎖において1つ以上の不一致及び/または膨隆が存在してもよいように、実質的に相補的であってよい。ある特定の実施形態では、siRNAの5’端の一端または両端はホスフェート基を有し得るが、他の実施形態では、5’端の一端または両端はホスフェート基を欠損する。他の実施形態では、siRNAの3’端の一端または両端はヒドロキシル基を有し得るが、他の実施形態では、5’端の一端または両端はヒドロキシル基を欠損する。
【0084】
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」と称されるsiRNAの1本の鎖は、標的転写物とハイブリダイズするタンパク質を含む。標的転写物は、所望の発現が妨害される細胞によって発現される核酸配列を指す。本発明の治療組成物の文脈において、標的転写物の発現の妨害は、有益な作用をもたらすことができる。好ましい実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、標的転写物の領域と完全に相補的であってよい、すなわち、長さが約15~約29ヌクレオチド、好ましくは長さが少なくとも16ヌクレオチド、より好ましくは長さが約18~20ヌクレオチドの標的領域にわたって1つの不一致または膨隆もない標的転写物にハイブリダイズする。他の実施形態では、アンチセンス鎖は、標的領域に対して実質的に相補的であってよい、すなわち、アンチセンス鎖及び標的転写物によって形成された2本鎖において1つ以上の不一致及び/または膨隆が存在してもよい。典型的には、siRNAは、標的転写物のエクソン配列を標的とする。当業者は、標的転写物用のsiRNAを設計するプログラム、アルゴリズム、及び/または商業サービスに精通している。例示的な例は、ロゼッタsiRNA設計アルゴリズム(Rosetta Inpharmatics,North Seattle,WA)、MISSION(登録商標)siRNA(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)、及びsiGENOME siRNA(Thermo Scientific)である。siRNAは、当業者に周知の方法を使用して、インビトロで酵素的に合成することができる。あるいは、siRNAは、当該技術分野において周知のオリゴヌクレオチド合成技法を使用して、化学的に合成することができる。
【0085】
他の実施形態では、非コードRNAは、低分子ヘアピンRNA(shRNA)であってよい。一般に、shRNAは、RNA干渉(上述される)を媒介するのに十分に長い2本鎖構造を形成するためにハイブリダイズする、またはハイブリダイズすることができる少なくとも2つの相補的部分、及び2本鎖を形成するshRNAの領域を接続するループを形成する少なくとも1本鎖部分を含むRNA分子である。この構造は、ステム-ループ構造とも呼ぶことができ、ステムは2本鎖部分である。いくつかの実施形態では、構造の2本鎖部分は、shRNAの2本鎖領域に不一致または膨隆が存在しないように、完全に相補的であってよい。他の実施形態では、構造の2本鎖部分は、shRNAの2本鎖領域に1つ以上の不一致及び/または膨隆が存在してもよいように、実質的に相補的であってよい。構造のループは、長さが約1~約20ヌクレオチド、好ましくは長さが約4~約10約ヌクレオチド(about nucleotides)、より好ましくは長さが約6~約9ヌクレオチドであってよい。ループは、標的転写物に相補的である領域の5’または3’端のいずれかに位置し得る(即ち、shRNAのアンチセンス部分)。
【0086】
shRNAは、5’または3’端にオーバーハングをさらに含み得る。任意のオーバーハングは、長さが約1~約20ヌクレオチド、より好ましくは長さが約2~約15ヌクレオチドであってよい。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、1つ以上のU残基、例えば、約1~約5のU残基を含み得る。いくつかの実施形態では、shRNAの5’端はホスフェート基を有し得るが、他の実施形態では、有さなくてよい。他の実施形態では、shRNAの3’端はヒドロキシル基を有し得るが、他の実施形態では、有さなくてよい。一般に、shRNAは、保存細胞RNAi機構によってsiRNAへと処理される。よって、shRNAは、siRNAの前駆体であり、同様に、shRNAの部分(すなわち、shRNAのアンチセンス部分)に相補的である標的転写物の発現を妨害することができる。当業者は、shRNAの設計及び合成用の利用可能な手段(上述される)に精通している。例示的な例としては、MISSION(登録商標)shRNA(Sigma-Aldrich)である。
【0087】
また他の実施形態では、非コードRNAは、RNA干渉(RNAi)RNAi発現ベクターであってよい。典型的には、RNAi発現ベクターは、miRNA、siRNA、またはshRNAなどのRNAi剤の細胞内(インビボ)合成に使用され得る。一実施形態では、2本の別個の相補的siRNA鎖は、2つのプロモーターを含む単一ベクターを使用して転写されてよく、その各々は、単一siRNA鎖の転写を指向する(すなわち、各プロモーターは、siRNAのテンプレートに動作可能に連結されるため、転写が生じ得る)。2つのプロモーターは、同じ配向にあってよく、この場合、各々は、相補的siRNA鎖の1つのテンプレートに動作可能に連結される。あるいは、2つのプロモーターは、単一テンプレートに隣接する対向する配向にあってよいため、プロモーターの転写は、2つの相補的siRNA鎖の合成をもたらす。別の実施形態では、RNAi発現ベクターは、転写がshRNAを形成するように、2つの相補的領域を含む単一RNA分子の転写を駆動するプロモーターを含み得る。
【0088】
一般的に言って、1つ以上のsiRNAまたはshRNA転写単位のインビボ発現を指向するために利用されるプロモーターは、RNAポリメラーゼIII(Pol III)のプロモーターであってよい。U6またはH1プロモーターなどのある特定のPol IIIプロモーターは、転写領域内にシス作用調節要素を必要とせず、よって、ある特定の実施形態において好ましい。他の実施形態では、Pol IIのプロモーターは、1つ以上のsiRNAまたはshRNA転写単位の発現を駆動するために使用され得る。いくつかの実施形態では、組織特異的、細胞特異的、または誘導性Pol IIプロモーターが使用され得る。
【0089】
siRNAまたはshRNAの合成テンプレートを提供する構築物は、標準的な組換えDNA方法を使用して生成され、真核生物細胞における発現に好適な多種多様の異なるベクターのいずれかの中に挿入され得る。ガイダンスは、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,John Wiley&Sons,New York,2003)またはMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook&Russell,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,3rd edition,2001)に見出すことができる。当業者は、ベクターが追加の調節配列(例えば、終結配列、翻訳制御配列等)ならびに選択可能なマーカー配列を含み得ることも理解する。DNAプラスミドは、当該技術分野において既知であり、pBR322、PUCなどに基づくものを含む。多くの発現ベクターは好適なプロモーターまたは複数のプロモーターを既に含むため、プロモーター(複数可)に対して適切な位置に対象のRNAi剤をコードする核酸配列を挿入するためにのみ必要であり得る。ウイルスベクターは、RNAi剤の細胞内発現を提供するようにも使用され得る。好適なウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、 アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどを含む。好ましい実施形態では、RNAi発現ベクターは、MISSION(登録商標)TRC shRNA製品(Sigma-Aldrich)において提供されるものなど、shRNAレンチウイルスに基づくベクターまたはレンチウイルス粒子である。
【0090】
本発明の核酸配列は、当該技術分野において既知の様々な異なる技法を使用して得ることができる。ヌクレオチド配列ならびに相同配列は、標準的な技法を使用して単離される、保管所から購入もしくは得ることができる。ヌクレオチド配列が得られたら、当該技術分野において既知の方法を使用して、様々な用途において使用するために増幅され得る。
【0091】
(c)ポリペプチド-ポリヌクレオチド複合体
本発明の別の態様では、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、会合して複合体を形成する。本明細書で使用される、用語「会合」は、非共有結合を通したペプチドとポリヌクレオチドとの相互作用、またはペプチドとポリヌクレオチドとの共有結合を指し得る。好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、水素結合、イオン結合、ファンデルワールスに基づく結合、疎水結合、または静電気相互作用などの非共有結合を通して会合する。例えば、本発明のペプチドは、全体的に正味正電荷を有し得、これは、本発明の複合体を形成するために、ペプチドに、静電気相互作用を通した本発明のポリヌクレオチドとの会合を可能にし得る。本発明のポリペプチド-ポリヌクレオチド複合体を形成するための方法は、当該技術分野において既知であり、セクションV及び実施例においてさらに説明される。
【0092】
本発明のペプチドが本発明のポリヌクレオチドと会合するペプチドとポリヌクレオチドとのモル比は、ペプチド、ポリヌクレオチドの組成、またはポリヌクレオチドの大きさにより変動することができ、また変動し、実験的に決定することができる。本質的には、本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドとの好適なモル比は、対象のペプチドへの曝露を最小にすると同時に、ペプチドがポリヌクレオチドを完全に複合するモル比であってよい。
【0093】
例えば、本発明のペプチドは、約1:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、110:1、120:1、130:1、140:1、150:1、160:1、170:1、180:1、190:1、200:1、210:1、220:1、230:1、240:1、250:1、260:1、270:1、280:1、290:1、または約300:1以上のペプチドとポリヌクレオチドのモル比でポリヌクレオチドと会合し得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約1:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、または約50:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。他の実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、または約100:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。さらに他の実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約100:1、105:1、110:1、115:1、120:1、125:1、130:1、135:1、140:1、145:1、または約150:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。他の実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約150:1、155:1、160:1、165:1、170:1、175:1、180:1、185:1、190:1、195:1、または約200:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。追加の実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約200:1、205:1、210:1、215:1、220:1、225:1、230:1、235:1、240:1、245:1、または約250:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。また他の実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、約250:1、255:1、260:1、265:1、270:1、275:1、280:1、285:1、290:1、295:1、または約300:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。代替えの実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、少なくとも約25:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。異なる実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、少なくとも約50:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。さらなる実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、少なくとも約75:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。またさらなる実施形態では、本発明のペプチド及びポリヌクレオチドは、少なくとも約100:1のペプチドとポリヌクレオチドのモル比で会合する。
【0094】
本発明のポリヌクレオチドがsiRNAである場合、siRNAポリヌクレオチドを完全に複合することができる本発明のペプチドと本発明のポリヌクレオチドとの好適なモル比は、対象のペプチドへの曝露を最小にするために、約50:1を超えるが、約200:1未満であってよい。換言すると、いくつかの実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約50:1~約200:1であってよい。他の実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約45:1、約46:1、約47:1、約48:1、約49:1、約50:1、約51:1、約52:1、約53:1、約54:1、または約55:1であってよい。他の実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約70:1、約71:1、約72:1、約73:1、約74:1、約75:1、約76:1、約77:1、約78:1、約79:1、または約80:1であってよい。さらに他の実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約95:1、約96:1、約97:1、約98:1、約99:1、約100:1、約101:1、約102:1、約103:1、約104:1、または約105:1であってよい。また他の実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約145:1、約146:1、約147:1、約148:1、約149:1、約150:1、151:1、約152:1、約153:1、約154:1、または約155:1であってよい。他の実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約195:1、約196:1、約197:1、約198:1、約199:1、約200:1、約201:1、約202:1、約203:1、約204:1、または約205:1であってよい。好ましい実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約150:1であってよい。別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約100:1であってよい。別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約50:1の間であってよい。別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約50:1~約100:1であってよい。別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドとsiRNAポリヌクレオチドとのモル比は、約75:1~150:1であってよい。
【0095】
ペプチドがポリヌクレオチドを完全に複合することができるモル比を決定する方法は、当該技術分野において既知であり、実施例に記載されるゲル遅延度アッセイを含み得る。対象のペプチドへの曝露を最小にするモル比を決定する方法は、当該技術分野において既知であり、ポリペプチドの用量増加を使用する細胞毒性測定を含み得る。
【0096】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、直径が約50nm~約999nm、より好ましくは直径が約50nm~約500nm、より好ましくは直径が約50nm~約250nmであってよい。そのため、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、「ナノ粒子」と称することができる。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または約120nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、または220nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約225、230、235、240、245、250、255、260、265、または270nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約280、285、290、295、300、310、315、320、325、330、335、340、または345nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約350、355、360、370、375、380、385、390、395、400、405、410、または415nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500nmである。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、または630nmである。
【0097】
好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約50~約250nmである。例えば、本発明のナノ粒子は、直径が約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約101、約102、約103、約104、約105、約106、約107、約108、約109、約110、約111、約112、約113、約114、約115、約116、約117、約118、約119、約120、約121、約122、約123、約124、約125、約126、約127、約128、約129、約130、約131、約132、約133、約134、約135、約136、約137、約138、約139、約140、約141、約142、約143、約144、約145、約146、約147、約148、約149、約150、約151、約152、約153、約154、約155、約156、約157、約158、約159、約160、約161、約162、約163、約164、約165、約166、約167、約168、約169、約170、約171、約172、約173、約174、約175、約176、約177、約178、約179、約180、約181、約182、約183、約184、約185、約186、約187、約188、約189、約190、約191、約192、約193、約194、約195、約196、約197、約198、約199、約200、約201、約202、約203、約204、約205、約206、約207、約208、約209、約210、約211、約212、約213、約214、約215、約216、約217、約218、約219、約220、約221、約222、約223、約224、約225、約226、約227、約228、約229、約230、約231、約232、約233、約234、約235、約236、約237、約238、約239、約240、約241、約242、約243、約244、約245、約246、約247、約248、約249、または約250nmであってよい。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約50~約200nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約50~約150nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約50~約100nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約75~約125nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約100~約150nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約125~約175nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約150~約200nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約175~約225nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約200~約250nmである。別の好ましい実施形態では、発明のナノ粒子は、直径が約180~約200nmである。
【0098】
ある特定の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約5~約30nmのより小さい粒子の凝集体を含み得る。そのため、本発明のナノ粒子は、直径が約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30nmのより小さい粒子の凝集体を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または約15nmのより小さい粒子の凝集体を含む。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または約20のより小さい粒子の凝集体を含む。さらに他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または約25nmのより小さい粒子の凝集体を含む。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、直径が、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30nmのより小さい粒子の凝集体を含む。
【0099】
本発明のナノ粒子は、ナノ粒子の安定性を強化するためにさらに修飾され得る。例えば、本発明のナノ粒子は、安定性を強化するためにアルブミンで被覆され得る。アルブミンで被覆された本発明のナノ粒子は、直径が約5~約90nm以上であってよい。そのため、本発明のナノ粒子は、直径が約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、または約90nmの粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約5、約10、約15、約20、約25、または約30nmの粒子を含む。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約30、約35、約40、約45、約50、または約55nmの粒子を含む。さらに他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約55、約60、約65、約70、約75、または約80nmの粒子を含む。他の実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約80、約85、または約90nm以上の粒子を含む。好ましい実施形態では、本発明のナノ粒子は、直径が約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、または約75nmの粒子を含む。
【0100】
粒径は、当該技術分野において既知の方法を使用して評価され得る。粒子の大きさを測定する方法の非限定的な例としては、動的光散乱、レーザー回折、エレクトロゾーン(電気感知ゾーン)、光遮断(フォトゾーン及び単一粒子光学感知(SPOS)とも称される)、ふるい分け分析、空気力学測定、空気透過径、沈降、粒子のゼータ電位の測定、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態では、粒径は、動的光散乱によって評価される。別の好ましい実施形態では、粒径は、粒子のゼータ電位を測定することにより評価される。さらに別の好ましい実施形態では、粒径は、動的光散乱または粒子のゼータ電位を測定することにより評価される。
【0101】
本発明のナノ粒子は、約-15~約20mV、好ましくは約0mV以上のゼータ電位を有し得る。例えば、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20mV以上のゼータ電位を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、または約5mVのゼータ電位を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10、約11、約12、約13、または約14mVのゼータ電位を有する。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、約11、約12、約13、約14、または約15mVのゼータ電位を有する。例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約1、約2、約3、約4、または約5mVのゼータ電位を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10、約11、12、約13、または約14mVのゼータ電位を有する。例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約3.72mVのゼータ電位を有する。別の例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約12mVのゼータ電位を有する。さらに別の例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約13.1mVのゼータ電位を有する。
【0102】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約1:1~約30:1、好ましくは約5:1~約25:1の陽:負の電荷比を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、または約8:1の陽:負の電荷比を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、または約14:1の陽:負の電荷比を有する。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、約22:1、約23:1、約24:1、約25:1、または約26:1の陽:負の電荷比を有する。
【0103】
セクションI(a)に記載される、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、細胞の細胞質内にポリヌクレオチドを効率的に放出することができる。ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、対象に投与されるとき、ポリヌクレオチドを分解から保護することもできてよい。そのため、本発明のペプチド-ポリヌクレオチドナノ粒子は、血清の存在下で安定性を維持することができる。ナノ粒子は、約10、20、30、40、50、60分間、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19時間、約1、2、3、4、5、6、7日間以上、血清の存在下で安定性を維持することができる。ナノ粒子は、約50、100、150、200、または約300μg/ml以上のヒト血清アルブミンの存在下で安定性を維持することができる。ナノ粒子の安定性は、ナノ粒子がナノ粒子のペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドの活性を維持する能力を測定することにより、または経時的にナノ粒子の大きさの変化を測定することにより決定され得る。ナノ粒子の大きさを測定する方法は、このセクションに記載される通りである。
【0104】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を調製する方法は、一般的に、本発明のペプチドを本発明のポリヌクレオチドと接触させて、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を形成することを含む。典型的には、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を形成するのに好適な条件下でインキュベートすることにより、ペプチド及びポリヌクレオチドを接触させる。ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を形成するのに好適な条件は、実施例に記載される通りであってよい。典型的には、そのような条件は、約30℃~約40℃の温度、及び約20秒~約60分以上のインキュベーション時間を含み得る。好適な温度は、約30℃を下回る場合がある。例えば、インキュベーションは氷上で生じ得る。当業者は、インキュベーションの期間及び温度が、ペプチド及びポリヌクレオチドにより変動することができ、また変動し、実験的に決定することができることを理解する。
【0105】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、ナノ粒子の安定性を強化するためにさらに修飾され得る。例えば、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、ナノ粒子の安定性を強化するために架橋され得る。当業者は、好適な架橋剤がナノ粒子の組成及び抗体または抗体断片により変動することができ、または変動することを認識するだろう。いくつかの態様では本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、グルタルアルデヒド、ビス-カルボンサンスペーサー、ビス-カルボンサン活性エステルなどの化学架橋剤を使用して、カルボジイミドカップリングプロトコルによるビス-リンカーアミン/酸を使用して、またはクリックケミストリープロトコル、カルボジイミドカップリングケミストリー、アシル化、活性エステルカップリング、もしくはアルキル化を使用して化学的に架橋され得る。
【0106】
あるいは、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、ナノ粒子の安定性を強化することができる化合物で被覆され得る。安定性を強化するためにナノ粒子を修飾する方法は、当該技術分野において既知であり、Nicolas et al.,2013 Acta Biomater.9:4754-4762に記載される通りであってよく、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本明細書で使用される、用語「被覆」は、非共有結合を通したペプチド-ポリヌクレオチド複合体の化合物との相互作用、またはペプチド-ポリヌクレオチド複合体と化合物との共有結合を指し得る。好ましい実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体及び被覆化合物は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールスに基づく結合、疎水結合、または静電気相互作用などの非共有結合を通して会合する。例えば、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、全体的に正味正電荷を有し得、被覆化合物は、本発明の複合体を形成するために、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体及び化合物が静電気相互作用を通して会合することを可能にし得る全体的に負電荷を有し得る。
【0108】
ナノ粒子の安定性を強化するためにナノ粒子を被覆するために使用することができる化合物の非限定的な例としては、アルブミン、オレイン酸などの脂肪酸、ポリエチレングリコール、キトサンなどの多糖、ヘパリン、もしくはへパラン、及び他のグリコサミノグリカン、または当業者に既知の他の公開された被覆材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の安定性は、ナノ粒子を脂肪酸で被覆することにより強化され得る。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の安定性は、ナノ粒子を多糖で被覆することにより強化され得る。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子の安定性は、ナノ粒子をアルブミンで被覆することにより強化され得る。アルブミンは、血清中に通常見られる負に荷電された球状タンパク質である。理論に拘束されないが、本発明のナノ粒子をアルブミンで被覆することは、凝結を防止することにより、ナノ粒子の安定性を強化することができると考えられる。好ましくは、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子を被覆するために使用することができるアルブミンは、血清アルブミンであり、ウシ血清アルブミン及びヒト血清アルブミンを含み得る。例示的な実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子の安定性は、ナノ粒子をヒト血清アルブミンで被覆することにより強化され得る。
【0110】
本質的に、ナノ粒子は、ナノ粒子を、アルブミンを含む溶液とインキュベートすることにより、アルブミンで被覆されている。ナノ粒子は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または約1mg/ml以上のアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.1、0.15、0.2、0.25、または約0.3mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体のナノ粒子は、約0.3、0.35、0.4、0.45、または約0.5mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。さらに他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.5、0.55、0.6、0.65、または約0.7mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.7、0.75、0.8、0.85、または約0.9mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。追加の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.9、0.95、1、または約1.5mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。好ましい実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むナノ粒子は、約0.4、0.45、0.5、0.55、または約0.6mg/mlのアルブミンを含む溶液中でインキュベートされ得る。
【0111】
ペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を被覆するために、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または約60分間以上アルブミンとインキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約5、10、15、または約20分間アルブミンとインキュベートされる。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約20、25、30、または約35分間アルブミンとインキュベートされる。さらに他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約35、40、45、または約50分間アルブミンとインキュベートされる。他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約50、55、または約60分間アルブミンとインキュベートされる。好ましい実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む粒子は、約25、30、または約35分間アルブミンとインキュベートされる。
【0112】
(d)細胞
本発明の別の態様では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、細胞の細胞質内にポリヌクレオチドをトランスフェクトすることができる。いくつかの実施形態では、細胞は原核生物細胞である。好ましい実施形態では、細胞は真核生物細胞である。細胞は、インビトロ、インビボ、原位置、またはエクスビボであってよい。細胞は、単一細胞であるか、または組織もしくは臓器を含んでよい。用語「細胞」は、対象の細胞も指す。
【0113】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドのトランスフェクションに好適な条件下、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の存在下で細胞をインキュベートすることにより、インビトロで細胞に投与され得る。ペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドのトランスフェクションに好適な条件は、実施例に記載される通りであってよい。当業者は、インキュベーションの期間は、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体及び細胞により変動することができ、また変動することを理解する。典型的には、そのような条件は、約10分~24時間のインキュベーション時間を含み得る。より好ましくは、トランスフェクション条件は、約15分~3時間のインキュベーション時間を含み得る。
【0114】
本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む組成物を対象に投与することにより、インビボで(すなわち、対象の)細胞に投与され得る。好適な組成物は、以下のセクションIIでさらに詳細に説明される。
【0115】
II.薬学的組成物
本発明の別の態様では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、投与に好適な薬学的組成物中に組み込むことができる。本発明の薬学的組成物は、細胞において通常発現される1つまたは2つ以上の核酸配列の発現を妨害するために使用され得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、細胞において通常発現される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の核酸配列の発現を妨害するために使用され得る。当業者は、薬学的組成物が、疾患を治療する、疾患を予防する、または良好な健康状態を増進するために投与され得ることを理解する。そのため、本発明の薬学的組成物は、妨害された発現が組成物を投与された対象に測定可能かつ有益な作用(すなわち、有意な効果)をもたらすように、細胞において通常発現される任意の核酸配列の発現を妨害するために使用され得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、細胞において通常発現される1つの核酸配列の発現を妨害するために使用される。好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害するために使用される。別の好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、JNK2をコードする核酸配列の発現を妨害するために使用される。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、標準NFκBシグナル伝達経路のp65サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害するために使用される。別の好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害するために使用される。
【0117】
他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、細胞において通常発現される2つの核酸配列の発現を妨害するために使用される。好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、標準NFκBシグナル伝達経路のp65サブ単位をコードする核酸配列、及び標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害するために使用される。
【0118】
本発明の薬学的組成物が細胞において通常発現される2つ以上の核酸配列の発現を妨害するために使用される場合、薬学的組成物は、2つ以上のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の混合物を使用して製剤化され得、各複合体は、細胞において通常発現される異なる核酸配列の発現を妨害することができるポリヌクレオチドを含む。あるいは、2つ以上のポリヌクレオチドは、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体の混合物を生成するために使用され得、各ポリヌクレオチドは、細胞において通常発現される異なる核酸配列の発現を妨害することができる。
【0119】
本発明の薬学的組成物は、所望により1つ以上の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、及びビヒクルも含み得る。本明細書で使用される、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合性である、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤等を含むことが意図される。薬学的に活性な物質に対するそのような培地及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の培地または薬剤が本発明ナノ粒子と不適合でない限りを除き、組成物におけるその使用は想定される。補足的な活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化され得る。好適な投与経路は、非経口、経口、肺、経皮、経粘膜、及び直腸投与を含む。本明細書で使用される、用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、もしくは胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0121】
非経口、皮内、もしくは皮下用途に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用の水などの減菌希釈剤、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶剤;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸、もしくはリン酸塩などの緩衝液;及び塩化ナトリウムもしくはデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤。pHは、塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多用量バイアルに封入され得る。
【0122】
経口用組成物は、一般的に、不活性希釈剤または食用担体を含み得る。経口用組成物は、ゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療的投与の目的において、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ剤、またはカプセルの形態で使用され得る。経口用組成物は、口腔洗浄剤として使用するための流体担体を使用することによっても調製することができ、流体担体における化合物は、経口的に適用され、すすがれ、吐出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤及び/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチ剤等は、以下の成分または類似する性質の化合物のうちのいずれかを含み得る:微結晶セルロース、トラガントガム、もしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチなど崩壊剤;ステアリン酸塩もしくはステロテスなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑走剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ風味などの風味剤。吸入による投与において、化合物は、好適な推進剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサ、またはネブライザからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0123】
好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、非経口投与と適合性があるように製剤化される。例えば、注射可能な使用に好適な薬学的組成物は、減菌水溶液(水可溶性の場合)または分散剤、及び減菌注射可能溶液または分散剤の即時調製物用の減菌粉末を含み得る。静脈内投与において、好適な担体は、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF;Parsippany,N.J.)、またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)を含む。例示的な実施形態では、本発明の薬学的組成物は、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)と共に製剤化される。
【0124】
全ての場合において、組成物は減菌であってよく、容易な注射器通過性(syringeability)が存在する範囲まで流体であってよい。組成物は、製造及び保管の条件下で安定していてよく、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましくてよい。注射可能組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを、組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0125】
滅菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙される成分のうちの1つまたはその組み合わせを有する適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散剤は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合では、調製の好ましい方法は、活性成分の粉末に加えて、事前に滅菌濾過されたその溶液から任意の追加の所望される成分が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0126】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものであってよい。経粘膜または経皮投与において、透過される膜に適切な透過剤が製剤に使用される。そのような透過剤は、一般的に、当該技術分野において既知であり、例えば、経粘膜投与に関しては、洗剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体を含み得る。経粘膜投与は、鼻用スプレーまたは坐剤の使用を通して達成され得る。経皮投与において、活性化合物は、当該技術分野において一般的に既知である軟膏、油薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。化合物は、直腸送達に関しては、坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどに基づく従来の坐剤)または滞留浣腸の形態にも調製され得る。
【0127】
一実施形態では、活性化合物は、埋込剤及びマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出製剤など、身体からの急速な排出から化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生体分解性生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤を調製するための方法は、当業者には明らかである。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される、当業者に既知の方法により調製することができる。
【0128】
薬学的組成物のさらなる製剤は、例えば、実施者に一般的に知られる製剤技法の概要を提供する、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1975)、及びLiberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.(1980).Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton Pa.,16Ed ISBN:0-912734-04-3,latest editionに記載され得る。
【0129】
当業者は、薬学的組成物中の本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の濃度が、一部、投与経路、対象、及び投与の理由により変動することができ、また変動し、実験的に決定することができることを認識する。薬学的組成物中の本発明のナノ粒子などの活性剤の濃度を実験的に決定する方法は、当該技術分野において既知である。一般に、薬学的組成物は、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体に約0.1nM~約50μMのポリヌクレオチドを含むように製剤化され得る。例えば、薬学的組成物は、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体中に約0.1nm、0.2nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nm、16nm、17nm、18nm、19nm、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nm、30nm、31nm、32nm、33nm、34nm、35nm、36nm、37nm、38nm、39nm、40nm、41nm、42nm、43nm、44nm、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、51nm、52nm、53nm、54nm、55nm、56nm、57nm、58nm、59nm、60nm、61nm、62nm、63nm、64nm、65nm、66nm、67nm、68nm、69nm、70nm、71nm、72nm、73nm、74nm、75nm、76nm、77nm、78nm、79nm、80nm、81nm、82nm、83nm、84nm、85nm、86nm、87nm、88nm、89nm、90nm、91nm、92nm、93nm、94nm、95nm、96nm、97nm、98nm、99nm、100nm、101nm、102nm、103nm、104nm、105nm、106nm、107nm、108nm、109nm、110nm、111nm、112nm、113nm、114nm、115nm、116nm、117nm、118nm、119nm、120nm、121nm、122nm、123nm、124nm、125nm、126nm、127nm、128nm、129nm、130nm、131nm、132nm、133nm、134nm、135nm、136nm、137nm、138nm、139nm、140nm、141nm、142nm、143nm、144nm、145nm、146nm、147nm、148nm、149nm、150nm、151nm、152nm、153nm、154nm、155nm、156nm、157nm、158nm、159nm、160nm、161nm、162nm、163nm、164nm、165nm、166nm、167nm、168nm、169nm、170nm、171nm、172nm、173nm、174nm、175nm、176nm、177nm、178nm、179nm、180nm、181nm、182nm、183nm、184nm、185nm、186nm、187nm、188nm、189nm、190nm、191nm、192nm、193nm、194nm、195nm、196nm、197nm、198nm、199nm、200nm、201nm、202nm、203nm、204nm、205nm、206nm、207nm、208nm、209nm、210nm、211nm、212nm、213nm、214nm、215nm、216nm、217nm、218nm、219nm、220nm、221nm、222nm、223nm、224nm、225nm、226nm、227nm、228nm、229nm、230nm、231nm、232nm、233nm、234nm、235nm、236nm、237nm、238nm、239nm、241nm、242nm、243nm、244nm、245nm、246nm、247nm、248nm、249nm、251nm、252nm、253nm、254nm、255nm、256nm、257nm、258nm、259nm、261nm、262nm、263nm、264nm、265nm、266nm、267nm、268nm、269nm、271nm、272nm、273nm、274nm、275nm、276nm、277nm、278nm、279nm、281nm、282nm、283nm、284nm、285nm、286nm、287nm、288nm、289nm、291nm、292nm、293nm、294nm、295nm、296nm、297nm、298nm、299nm、300nm、301nm、302nm、303nm、304nm、305nm、306nm、307nm、308nm、309nm、310nm、311nm、312nm、313nm、314nm、315nm、316nm、317nm、318nm、319nm、320nm、321nm、322nm、323nm、324nm、325nm、326nm、327nm、328nm、329nm、330nm、331nm、332nm、333nm、334nm、335nm、336nm、337nm、338nm、339nm、340nm、341nm、342nm、343nm、344nm、345nm、346nm、347nm、348nm、349nm、350nm、351nm、352nm、353nm、354nm、355nm、356nm、357nm、358nm、359nm、360nm、361nm、362nm、363nm、364nm、365nm、366nm、367nm、368nm、369nm、370nm、371nm、372nm、373nm、374nm、375nm、376nm、377nm、378nm、379nm、380nm、381nm、382nm、383nm、384nm、385nm、386nm、387nm、388nm、389nm、390nm、391nm、392nm、393nm、394nm、395nm、396nm、397nm、398nm、399nm、400nm、401nm、402nm、403nm、404nm、405nm、406nm、407nm、408nm、409nm、410nm、411nm、412nm、413nm、414nm、415nm、416nm、417nm、418nm、419nm、420nm、421nm、422nm、423nm、424nm、425nm、426nm、427nm、428nm、429nm、430nm、431nm、432nm、433nm、434nm、435nm、436nm、437nm、438nm、439nm、440nm、441nm、442nm、443nm、444nm、445nm、446nm、447nm、448nm、449nm、450nm、451nm、452nm、453nm、454nm、455nm、456nm、457nm、458nm、459nm、460nm、461nm、462nm、463nm、464nm、465nm、466nm、467nm、468nm、469nm、470nm、471nm、472nm、473nm、474nm、475nm、476nm、477nm、478nm、479nm、480nm、481nm、482nm、483nm、484nm、485nm、486nm、487nm、488nm、489nm、490nm、491nm、492nm、493nm、494nm、495nm、496nm、497nm、498nm、499nm、500nm、501nm、502nm、503nm、504nm、505nm、506nm、507nm、508nm、509nm、510nm、511nm、512nm、513nm、514nm、515nm、516nm、517nm、518nm、519nm、520nm、521nm、522nm、523nm、524nm、525nm、526nm、527nm、528nm、529nm、530nm、531nm、532nm、533nm、534nm、535nm、536nm、537nm、538nm、539nm、540nm、541nm、542nm、543nm、544nm、545nm、546nm、547nm、548nm、549nm、550nm、551nm、552nm、553nm、554nm、555nm、556nm、557nm、558nm、559nm、560nm、561nm、562nm、563nm、564nm、565nm、566nm、567nm、568nm、569nm、570nm、571nm、572nm、573nm、574nm、575nm、576nm、577nm、578nm、579nm、580nm、581nm、582nm、583nm、584nm、585nm、586nm、587nm、588nm、589nm、590nm、591nm、592nm、593nm、594nm、595nm、596nm、597nm、598nm、599nm、600nm、601nm、602nm、603nm、604nm、605nm、606nm、607nm、608nm、609nm、610nm、611nm、612nm、613nm、614nm、615nm、616nm、617nm、618nm、619nm、620nm、621nm、622nm、623nm、624nm、625nm、626nm、627nm、628nm、629nm、630nm、631nm、632nm、633nm、634nm、635nm、636nm、637nm、638nm、639nm、640nm、641nm、642nm、643nm、644nm、645nm、646nm、647nm、648nm、649nm、650nm、651nm、652nm、653nm、654nm、655nm、656nm、657nm、658nm、659nm、660nm、661nm、662nm、663nm、664nm、665nm、666nm、667nm、668nm、669nm、670nm、671nm、672nm、673nm、674nm、675nm、676nm、677nm、678nm、679nm、680nm、681nm、682nm、683nm、684nm、685nm、686nm、687nm、688nm、689nm、690nm、691nm、692nm、693nm、694nm、695nm、696nm、697nm、698nm、699nm、700nm、701nm、702nm、703nm、704nm、705nm、706nm、707nm、708nm、709nm、710nm、711nm、712nm、713nm、714nm、715nm、716nm、717nm、718nm、719nm、720nm、721nm、722nm、723nm、724nm、725nm、726nm、727nm、728nm、729nm、730nm、731nm、732nm、733nm、734nm、735nm、736nm、737nm、738nm、739nm、740nm、741nm、742nm、743nm、744nm、745nm、746nm、747nm、748nm、749nm、750nm、751nm、752nm、753nm、754nm、755nm、756nm、757nm、758nm、759nm、760nm、761nm、762nm、763nm、764nm、765nm、766nm、767nm、768nm、769nm、770nm、771nm、772nm、773nm、774nm、775nm、776nm、777nm、778nm、779nm、780nm、781nm、782nm、783nm、784nm、785nm、786nm、787nm、788nm、789nm、790nm、791nm、792nm、793nm、794nm、795nm、796nm、797nm、798nm、799nm、800nm、801nm、802nm、803nm、804nm、805nm、806nm、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【0130】
薬学的組成物はまた、約30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、または約700μg/ml以上の本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むように製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または約100μg/mlの本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むように製剤化される。他の実施形態では、薬学的組成物は、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または約300μg/mlの本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むように製剤化される。さらに他の実施形態では、薬学的組成物は、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または約500μg/mlの本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むように製剤化される。さらに他の実施形態では、薬学的組成物は、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、または約700μg/mlの本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含むように製剤化される。
【0131】
III.使用方法
別の態様では、本発明は、細胞の細胞質内にポリヌクレオチドをトランスフェクトするために、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を使用するための方法を包含する。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロである。他の実施形態では、細胞はインビボである。よって、本発明は、細胞の細胞質内にポリヌクレオチドをトランスフェクトすることを必要とする対象にそれを行うために本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を使用するための方法も包含する。一般的に言って、本発明の方法は、ポリヌクレオチドのトランスフェクションに好適な条件下で、細胞を本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体と接触させることを含む。好適な細胞及び条件は、セクションIに上述される。細胞がインビボである実施形態では、本発明の方法は、典型的には、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。好適な薬学的組成物は、セクションIIに記載される。
【0132】
別の態様では、本発明は、対象の状態を治療するための方法を包含する。本方法は、治療有効量のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、対象の細胞内にペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドを効率的にトランスフェクトまたは送達することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、細胞において発現される核酸配列の発現を調節または阻害することができる非コードRNAを含む。細胞において発現される核酸配列の発現を調節または阻害することができるポリヌクレオチドを効率的にトランスフェクトすることにより、本発明の方法は、細胞において通常発現される核酸配列の発現を調節または阻害することにより治療することができる任意の状態を治療するために使用され得る。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、対象におけるNFκB媒介状態を治療するために本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を対象に投与する方法を包含する。他の好適な実施形態では、本発明は、対象におけるSTAT3調節不全に関連する状態を治療するために、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を対象に投与する方法を包含する。他の好ましい実施形態では、本発明は、対象におけるJNK2調節不全に関連する状態を治療するために、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を対象に投与する方法を包含する。特定の疾患?
【0134】
他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、対象において欠乏する、または不在であるタンパク質をコードするDNAを包含する。対象における欠乏または不在タンパク質を特徴とする疾患の非限定的な例としては、下位運動ニューロン疾患、ポンペ病、リソソーム蓄積症、及び多形神経膠芽腫が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、リソソーム蓄積症の対象において欠乏する、または不在であるタンパク質をコードするDNAを含む。酵素補充療法は、リソソーム蓄積症に特によく適しており、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、発現カセット、またはリソソーム蓄積症の対象において欠乏する、または不在であるタンパク質をコードするベクターを、対象の細胞質内にトランスフェクトするために使用され得る。リソソーム蓄積障害は、活性化因子欠乏症/GM2ガングリオシドーシス、α-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠乏症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス(乳児性、後期乳児性/若年性、成人性/慢性)、I細胞疾患/ムコリピドーシスII、乳児性遊離シアル酸蓄積症/ISSD、若年性ヘキソサミニダーゼA欠乏症、クラッベ病(乳児発症、遅発性)、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症(偽性ハーラーポリジストロフィー/ムコリピドーシスIIIA、MPSIハーラー症候群、MPSIシャイエ症候群、MPS Iハーラー・シャイエ症候群、MPS IIハンター症候群、サンフィリポ症候群A型/MPS III A、サンフィリポ症候群B型/MPS III B、サンフィリポ症候群C型/MPS III C、サンフィリポ症候群D型/MPS III D、モルキオ症候群A型/MPS IVA、モルキオ症候群B型/MPS IVB、MPS IXヒアルロニダーゼ欠乏症、MPS VIマロトー・ラミー症候群、MPS VIIスライ症候群、ムコリピドーシスI/シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型)、多重スルファターゼ欠乏症、ニーマン・ピック病(A型、B型、C型)、神経セロイドリポフスチン症(CLN6疾患(非定型後期乳児性、遅発性バリアント、早期若年性)、バッテン・シュピールマイアー・フォークト/若年性NCL/CLN3疾患、フィンランドバリアント後期乳児性CLN5(Finnish Variant Late Infantile CLN5)、ジャンスキー・ビールショフスキー疾患/後期乳児性CLN2/TPP1疾患、Kufs/成人発症NCL/CLN4疾患、ノーザン癲癇(Northern Epilepsy)/バリアント後期乳児性CLN8、サンタブオリ・ハルチア(Santavuori-Haltia)/乳児性CLN1/PPT疾患、β-マンノシドーシス、ポンペ病/グリコーゲン蓄積症II型、濃化異骨症、サンドホフ病/成人発症/GM2ガングリオシドーシス、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス--乳児性、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス--若年性、シンドラー病、サラ病/シアル酸蓄積症、テイ・サックス/GM2ガングリオシドーシス、ウォルマン病を含むが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、対象は、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、MPS II] MPS VI、及びグリコーゲン蓄積症II型からなる群から選択される疾患の治療を必要とする。
【0135】
ペプチド、ポリヌクレオチド、及びペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、セクションIに記載される通りであってよい。本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物は、セクションIIに記載される通りであってよい。本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を投与する方法、及び状態を治療する方法は、以下に記載される。
【0136】
(a)それを必要とする対象への投与
ある態様では、本発明は、治療有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを包含する。本明細書で使用される、句「それを必要とする対象」は、予防または治療的処置を必要とする対象を指す。対象は、ゲッ齒類、ヒト、家畜動物、ペット動物、または動物園の動物であってよい。一実施形態では、対象は、ゲッ齒類、例えば、マウス、ラット、モルモット等であってよい。別の実施形態では、対象は、家畜動物であってよい。好適な家畜動物の非限定的な例としては、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラマ、及びアルパカを挙げることができる。また別の実施形態では、対象は、ペット動物であってよい。ペット動物の非限定的な例としては、イヌ、ネコ、ウサギ、及びトリなどのペットを挙げることができる。さらに別の実施形態では、対象は、動物園の動物であってよい。本明細書で使用される、「動物園の動物」は、動物園において見ることができる動物を指す。そのような動物は、非ヒト霊長類、大型のネコ、オオカミ、及びクマを含み得る。好ましい実施形態では、対象は、マウスである。別の好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0137】
セクションIIに記載される、本発明の薬学的組成物は、その意図される投与形態と適合性であるように製剤化される。好適な投与経路は、非経口、経口、肺、経皮、経粘膜、及び直腸投与を含む。好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、注射により投与される。
【0138】
当業者は、対象に投与される組成物の量及び濃度が、一部、対象及び投与の理由によることを認識する。最適な量を決定するための方法は、当該技術分野において既知である。一般に、薬学的組成物中の本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体の濃度は、セクションIIに記載される通りであってよい。
【0139】
本発明の組成物は、典型的には、対象に利益を提供するのに十分な量で、それを必要とする対象に投与される。この量は、「治療有効量」と定義される。治療有効量は、特定の組成物の有効性もしくは効力、治療される障害、投与の期間もしくは頻度、投与方法、ならびに対象の特定の治療応答を含む、対象の大きさ及び状態により決定され得る。治療有効量は、当該技術分野に既知の方法を使用して決定され得、実験的に決定され得る、マウスなどの動物モデルにおいて決定された治療有効量から導かれる、またはこれらの組み合わせである。加えて、投与経路は、治療有効量を決定する際に考慮され得る。治療有効量の決定において、当業者は、特定の対象における特定の化合物の投与に付随する任意の有害作用の存在、性質、及び程度も考慮する場合がある。
【0140】
本発明の薬学的組成物が注射によって対象に投与される場合、組成物は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、または約100mg/kg以上の量で、ボーラスで対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または約5mg/kgの量で対象に投与される。他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、約5、5.5、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、または約15mg/kgの量で対象に投与される。さらに他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または約30mg/kgの量で対象に投与される。他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または約45mg/kgの量で対象に投与される。追加の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、約45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、または約100mg/kg以上の量で対象に投与される。好ましい実施形態では、組成物は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、または約1.5mg/kgの量で、ボーラスで対象に投与される。
【0141】
組成物は、ある期間にわたって、2つ以上のボーラスを対象に注射することによっても投与され得る。例えば、組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のボーラスを対象に注射することによって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、1、2、3、4、または5つ以上のボーラスを対象に注射することによって投与される。他の実施形態では、組成物は、5、6、7、8、9、10以上のボーラスを対象に注射することによって投与される。好ましい実施形態では、組成物は、2、3、または4つのボーラスを対象に注射することにより投与される。ボーラスは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11時間毎、もしくは約12時間毎に対象に注射されるか、またはそれらは、約1、2、3、4、5、6日毎、もしくは約7日毎に注射され得る。好ましい実施形態では、ボーラスは、ほぼ毎日注射され得る。
【0142】
(b)NFκB媒介状態の治療
上述のように、本発明の方法は、対象におけるNFκB媒介状態を治療するために使用され得る。本発明の方法は、NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるNFκB媒介状態を治療するように使用され得る。本発明の方法は、標準NFκBシグナル伝達経路、非標準NFκBシグナル伝達経路、または標準及び非標準両方のNFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるNFκB媒介状態を治療するように使用され得る。実施例に記載されるように、出願者は、意外にも、標準NFκBシグナル伝達経路及び非標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することが相乗的であることを発見した。用語「相乗的」は、2つ以上の薬剤が相乗的に作用して、各薬剤の独立した作用の付加以上の作用をもたらす作用を指す。相乗作用測定の1つは、Chou-Talalay併用係数法により示すことができる。Chou-Talalay係数法は、メジアン効果方程式(median-effect equation)に基づき、単一の実体と複数の実体、及び一次動力学と高次動力学を関連付ける質量作用法則の原理から導かれ、ミカエリス-メンテン、ヒル、ヘンダーソン-ハッセルバルヒ、及びスキャッチャードの式を包含する。Chou-Talalay併用係数法は、付加作用がCI=1をもたらし、相乗作用がCI<1をもたらし、拮抗作用がCI>1をもたらす、併用係数(CI)をもたらす。Ting-Chao Chou,2008,Preclinical versus clinical drug combination studies,Leukemia&Lymphoma,49:2059-2080を参照。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、標準NFκB伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるNFκB媒介状態を治療するように使用され得る。実施形態の例示的な代替えでは、対象におけるNFκB媒介状態は、標準NFκBシグナル伝達経路の転写因子p65サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することにより治療される。
【0144】
他の実施形態では、本発明の方法は、非標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるNFκB媒介状態を治療するように使用され得る。実施形態の例示的な代替えでは、対象におけるNFκB媒介状態は、標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することにより治療される。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列、及び非標準NFκBシグナル伝達経路と正常に会合した核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるNFκB媒介状態を治療するように使用され得る。実施形態の例示的な代替えでは、対象におけるNFκB媒介状態は、標準NFκBシグナル伝達経路の転写因子p65サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害し、かつ標準NFκBシグナル伝達経路のp100/p52サブ単位をコードする核酸配列の発現を妨害することにより治療される。
【0146】
用語「NFκB媒介状態」は、NFκBシグナル伝達経路におけるシグナル伝達の調節不全により生じ得る任意の状態を説明するために使用され得る。NFκB媒介状態の非限定的な例としては、炎症障害、自己免疫疾患、移植拒絶、骨粗鬆症、癌、関節炎、アルツハイマー病、関節炎、粥状動脈硬化、ウイルス感染、または毛細血管拡張性運動失調症を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、炎症障害を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、自己免疫疾患を治療するために使用される。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、移植拒絶を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、骨粗鬆症を治療するために使用される。追加の実施形態では、本発明の方法は、アルツハイマー病を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、粥状動脈硬化を治療するために使用される。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、ウイルス感染を治療するために使用される。また他の実施形態では、本発明の方法は、毛細血管拡張性運動失調症を治療するために使用される。
【0147】
i.癌の治療
好ましい実施形態では、本発明の方法は、新生物または癌を治療するために使用される。新生物は、悪性または良性であってよく、癌は、原発性または転移性であってよく、新生物または癌は、初期または後期であってよい。癌または新生物は、対象の癌腫瘍に核酸配列を送達することにより治療され得る。癌または新生物は、癌細胞の成長を遅らせる、または癌細胞を死滅させることにより治療され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、対象の癌細胞にインビボでナノ粒子のポリヌクレオチドを送達することにより癌または新生物を治療することができる。本発明の方法で治療することができる新生物または癌の非限定的な例としては、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫(小児期小脳または大脳)、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹膠腫、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性膠腫、上衣芽細胞腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路、及び視床下部膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児期、胃腸)、未知の原発性癌、中枢神経系リンパ腫(原発性)、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、食道癌、ユーイングファミリーの腫瘍におけるユーイング肉腫、頭蓋外生殖細胞腫瘍(小児期)、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌(眼球内黒色腫、網膜芽腫)、胆嚢癌、胃(胃(stomach))癌、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、生殖細胞腫瘍(小児期頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性栄養膜腫瘍、膠腫(成人、小児期脳幹、小児期大脳星状細胞腫、小児期視覚路、及び視床下部)、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚路膠腫(小児期)、眼球内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、有毛細胞)、唇及び口腔癌、肝癌(原発性)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系)、マクログロブリン血症(Waldenstrom)、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽腫(小児期)、黒色腫、眼球内黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫(成人悪性、小児期)、潜在性原発性を伴う転移性扁平上皮頚癌、口癌、多発性内分泌腫瘍症候群(小児期)、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(慢性)、骨髄性白血病(成人急性、小児期急性)、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害(慢性)、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮性癌(表面上皮性-間質腫瘍)、卵巣生殖細胞腫瘍、低悪性度卵巣腫瘍、膵臓癌、膵臓癌(膵島細胞)、副鼻腔及び鼻腔癌、上皮小体癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児期)、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍形成、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盤及び尿管移行細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫(小児期)、唾液腺癌、肉腫(ユーイングファミリーの腫瘍、カポジ、軟組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫、黒色腫)、皮膚癌(メルケル細胞)、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織癌、扁平上皮細胞癌、潜在性原発性(転移性)を伴う扁平上皮頚癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(小児期)、T細胞リンパ腫(皮膚)、T細胞白血病及びリンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫(小児期)、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、甲状腺癌(小児期)、腎盤及び尿管の移行細胞癌、栄養膜腫瘍(妊娠性)、未知の原発部位(成人、小児期)、尿管及び腎盤移行細胞癌、尿道癌、子宮癌(子宮内膜)、子宮肉腫、腟癌、視覚路及び視床下部の膠腫(小児期)、外陰癌、Waldenstromマクログロブリン血症、ならびにウイルムス腫瘍(小児期)を挙げることができる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、T細胞白血病及びリンパ腫を治療するために使用される。例示的な実施形態では、本発明の方法は、ヒトTリンパ親和性ウイルス-1(HTLV-1)誘発成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)を治療するために使用される。
【0149】
他の実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、インビトロで癌細胞に送達され得る。例えば、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体のポリヌクレオチドは、インビトロで癌細胞系に送達され得る。癌細胞は、インビトロで培養された癌細胞系であってよい。実施形態のいくつかの代替えでは、癌細胞系は、まだ説明されていない原発性細胞系であってよい。原発性癌細胞系を調製する方法は、当業者に既知の標準的な技法を利用する。他の代替えでは、癌細胞系は、確立された癌細胞系であってよい。癌細胞系は、付着性または非付着性であるか、または細胞系は、当業者に既知の標準的な技法を使用して、付着、非付着、または器官成長を促進する条件下で成長させることができる。癌細胞系は、接触阻害されるか、または非接触阻害され得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、癌細胞系は、腫瘍に由来する確立されたヒト細胞系であってよい。腫瘍に由来する癌細胞系の非限定的な例としては、骨肉腫細胞系143B、CAL-72、G-292、HOS、KHOS、MG-63、Saos-2、及びU-2 OS;前立腺癌細胞系DU145、PC3、及びLncap;乳癌細胞系MCF-7、MDA-MB-438、及びT47D;骨髄性白血病細胞THP-1、膠芽腫細胞系U87;神経芽細胞腫細胞系SHSY5Y;骨癌細胞系Saos-2;結腸癌細胞系WiDr、COLO 320DM、HT29、DLD-1、COLO 205、COLO 201、HCT-15、SW620、LoVo、SW403、SW403、SW1116、SW1463、SW837、SW948、SW1417、GPC-16、HCT-8HCT 116、NCI-H716、NCI-H747、NCI-H508、NCI-H498、COLO 320HSR、SNU-C2A、LS 180、LS 174T、MOLT-4、LS513、LS1034、LS411N、Hs 675.T、CO 88BV59-1、Co88BV59H21-2、Co88BV59H21-2V67-66、1116-NS-19-9、TA 99、AS 33、TS 106、Caco-2、HT-29、SK-CO-1、SNU-C2B、及びSW480;B16-F10、RAW264.7、F8細胞系、ならびに膵臓癌Panc1を挙げることができる。例示的な実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、F8細胞系に投与され得る。別の例示的な実施形態では、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体は、B16-F10細胞系に投与され得る。
【0151】
ii.関節炎状態の治療
他の好ましい実施形態では、本発明の方法は、関節炎状態を治療するために使用される。関節炎状態の非限定的な例としては、変形性関節症、関節リウマチ、痛風及び偽痛風、敗血症性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、スチル病、狼瘡、または感染もしくは治療に起因する関節炎が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、変形性関節症を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、関節リウマチを治療するために使用される。さらに他の実施形態では、本発明は、痛風を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、偽痛風を治療するために使用される。追加の実施形態では、本発明の方法は、敗血症性関節炎を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、強直性脊椎炎を治療するために使用される。また他の実施形態では、本発明の方法は、若年性特発性関節炎を治療するために使用される。他の実施形態では、本発明の方法は、スチル病を治療するために使用される。追加の実施形態では、本発明の方法は、狼瘡を治療するために使用される。さらに他の実施形態では、本発明の方法は、感染または治療に起因する関節炎を治療するために使用される。例えば、本発明の方法は、コラーゲン抗体誘発関節炎に起因する関節炎を治療するために使用され得る。
【0152】
本明細書で使用される、用語、「関節炎状態を治療する」は、関節炎の症状の軽減を説明するために使用され得る。関節炎の種類に関わらず、関節炎の症状の非限定的な例としては、様々なレベルのとう痛、腫れ、関節の硬直、手を使用するまたは歩くのが不可能、倦怠感及び疲労感、体重損失、睡眠不足、筋肉の痛み及び筋痛、圧痛、及び関節運動の困難が挙げられる。関節炎の症状を測定する方法は、当該技術分野において周知であり、関節炎スコアを使用する、または画像に基づく測定を使用する、足首などの関節炎関節の厚さの測定を含み得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、関節炎の症状は、足首の厚さににより測定される。そのため、本発明の方法を使用して関節炎の状態を治療することは、薬学的組成物で治療されなかった対象と比較した場合、本発明の薬学的組成物で治療された対象の足首の厚さの増加を防止することができる。
【0154】
他の実施形態では、関節炎の症状は、関節炎スコアを使用して測定される。関節炎スコアを測定する方法は、当該技術分野において既知であり、アメリカリウマチ学会(ACR)スコア、関節リウマチ重篤度スコア(RASS)、またはACR/EULAR関節リウマチ分類基準を含み得る。そのため、本発明の方法を使用して関節炎の状態を治療することは、薬学的組成物で治療されなかった対象と比較した場合、本発明の薬学的組成物で治療された対象の関節炎スコアの増加を防止することができる。例えば、本発明の方法を使用して関節炎の状態を治療することにより、ACR/EULAR関節リウマチ分類基準を使用して、約1、2、3、4、5、6、7、8、または9を上回る関節炎スコアの増加を防止することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法を使用して関節炎の状態を治療することにより、約1、2、または約3を上回る関節炎スコアの増加を防止することができる。
【0155】
さらに他の実施形態では、関節炎の症状は、画像に基づく測定を使用して測定される。画像に基づく測定を使用して関節炎の症状を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、Hughes et al.,2011 J Acoust Soc Am.129:3756、Hughes 2011 IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control.58:2361-2369、Hughes et al.,2007 Ultrasound Med Biol.33:1236-1243、Hughes et al.,2007 Journal of the Acoustical Society of America.121:3542-3557、Hughes et al.,2013 J Acoust Soc Am.133:283-300、Hughes et al.,2009 Journal of the Acoustical Society of America.126:2350-2358に記載される超音波分子撮像を使用するものを含み得、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
(c)STAT3調節不全に関連する状態の治療
いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるSTAT3調節不全に関連する状態を治療するために、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を対象に投与する方法を包含する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、対象においてSTAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるSTAT3調節不全に関連する状態を治療するために使用される。例えば、本発明の方法は、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、癌を治療するように使用され得る。癌または新生物は、セクションIII(c)iに記載される通りであってよい。癌または新生物は、癌細胞の成長を遅らせる、または血管新生を防止することにより治療され得る。いくつかの実施形態では、癌または新生物は、癌細胞の成長を遅らせることにより治療される。他の実施形態では、癌または新生物は、血管新生を防止することにより治療される。用語「血管新生」は、組織における新しい血管の形成、内皮細胞が増殖するための刺激、または増殖する内皮細胞の生存の促進を意味する。好ましい実施形態では、本発明は、対象においてSTAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、対象における癌を治療するように使用される。例示的な実施形態では、本発明は、癌細胞の成長を遅らせることによって対象においてSTAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、対象における癌を治療するように使用される。別の例示的な実施形態では、本発明は、血管新生を防止することによって対象においてSTAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、対象における癌を治療するように使用される。
【0157】
STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、STAT3タンパク質の発現レベルを減少させることができる。STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、STAT3をコードするmRNAのレベルを減少させることもできる。例えば、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または約10倍以上減少させることができる。いくつかの実施形態では、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約1、2、3、4、または約5倍減少させる。他の実施形態では、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、STAT3をコードするmRNAのレベルを、約5、6、7、8、9、または約10倍以上減少させる。
【0158】
一般に、本発明の薬学的組成物が細胞において通常発現される核酸配列の発現を妨害する能力を測定する滴定曲線は、IC50を決定するために実施され得る。例えば、細胞におけるSTAT3の発現を妨害することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物のIC50は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、9、または約100nM以上であってよい。いくつかの実施形態では、細胞におけるSTAT3の発現を妨害することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物のIC50は、約10、15、20、25、または約30nMである。他の実施形態では、細胞におけるSTAT3の発現を妨害することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物のIC50は、約30、35、40、45、50、55、または60nMである。さらに他の実施形態では、細胞におけるSTAT3の発現を妨害することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物のIC50は、約60、65、70、75、80、85、90、9、または約100nM以上である。好ましい実施形態では、細胞におけるSTAT3の発現を妨害することができるペプチド-ポリヌクレオチド複合体を含む薬学的組成物のIC50は、約40、45、50、55、または70nMである。
【0159】
STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、血管新生を防止することができる。血管新生を測定する方法は、当該技術分野において既知であり、実施例に記載される通りであってよく、マトリゲル管形成アッセイ及びトランスウェル細胞遊走アッセイを含み得る。STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、マトリゲル管形成を、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95%以上減少させることができる。いくつかの実施形態では、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、マトリゲル管形成を、約30、35、40、45、または約50%減少させる。他の実施形態では、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、マトリゲル管形成を、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95%以上減少させる。好ましい実施形態では、STAT3をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、マトリゲル管形成を、約50、55、60、65、または約70%減少させる。
【0160】
(d)JNK2調節不全に関連する状態の治療
他の実施形態では、本発明は、対象におけるJNK2調節不全に関連する状態を治療するために、本発明のペプチド-ポリヌクレオチド複合体を対象に投与する方法を包含する。例示的な実施形態では、本発明は、対象においてJNK2をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、対象におけるJNK2調節不全に関連する状態を治療するように使用される。例えば、本発明の方法は、JNK2をコードする核酸配列の発現を妨害することにより、粥状動脈硬化を治療するように使用され得る。いくつかの好ましい実施形態では、粥状動脈硬化は、泡沫細胞形成を阻止することにより治療される。泡沫細胞形成は、粥状動脈硬化巣の特徴であり、特定の病巣に蓄積し、よって、壊死性の粥状動脈硬化の中心が作られるときに問題となり得る。例示的な実施形態では、複合体のポリヌクレオチドが抗JNK2 siRNAであるペプチド-ポリヌクレオチド複合体が、泡沫細胞形成を阻止するために使用される。
【0161】
IVキット
本発明の別の態様は、キットを包含する。本キットは、本発明のペプチドを含む第1の組成物と、任意に、ポリヌクレオチドを含む第2の組成物とを含む。あるいは、対象のポリヌクレオチドは、キットのユーザによって提供され得る。キットに提供される指示に従い、キットのユーザは、本発明のペプチドを含む組成物と、ポリヌクレオチドを含む組成物とを混合して、ペプチド-ポリヌクレオチド複合体を形成することができる。キットの指示には、好適な割合でペプチドとポリヌクレオチドとを混合するための説明書を含み得る。好適な比率は、セクションIに上述される。キットは、好適な緩衝液、水、架橋試薬、またはアルブミンも含み得る。
【0162】
定義
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマーを指すように、同義に使用される。本用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学摸倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用され、これらは、修飾された残基、及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーを含む。
【0163】
2つ以上のペプチドに対する、用語「相同」、「同一」、またはパーセント「同一」は、以下に説明されるデフォルトパラメータを用いたBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動整合及び視覚検査により(例えば、NCBIウェブサイトwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/等を参照)測定される、同一である特定のパーセンテージのアミノ酸残基を有する(すなわち、比較枠または指定された領域にわたる最大一致と比較し、整合される場合、特定の領域にわたって約60%同一、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)2つ以上の配列またはサブ配列を指す。本定義は、欠失及び/または付加を有する配列、ならびに置換を有するもの、ならびに天然に存在する、例えば、多型または対立遺伝子変異体、及び人工変異体も含む。以下に記載される、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等も考慮し得る。
【0164】
用語「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋」は、その本来の状態に見られる、通常それに付随する成分を実質的に、または本質的に含まない材料を指す。純度及び均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高処理液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を使用して決定される。調製物に存在する優勢種であるタンパク質または核酸は、実質的に精製される。いくつかの実施形態では、用語「精製される」は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを意味する。好ましくは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。他の実施形態では、「純粋」または「精製」は、精製される組成物から少なくとも1つの混入物を除去することを意味する。この場合、精製は、精製される化合物が同種、例えば100%純粋であることを必要としない。
【実施例】
【0165】
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本開示の実践において良好に機能するように発明者によって見出された技法を表し、よって、その実践に好ましい様式を構成すると考えられ得ることを、当業者であれば理解するであろう。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、なおも同様または類似の結果を得ることができることを理解するであろう。
【0166】
実施例1~8の導入
低分子干渉RNA(siRNA)の使用を伴うRNA干渉(RNAi)は、癌及び粥状動脈硬化を含む数多くの疾患の高度に有効な療法として提案されてきた。しかしながら、20年近くにわたる集中的な研究にもかかわらず、siRNA治療薬は、臨床用途への移行において限定的な成功を示してきた。siRNAに基づく治療の成功を妨げる主な障害は、細胞取り込みの不良及び血清中の遊離siRNAの不安定性を含む。その大きな分子量(約14kDa)及び高い表面電荷が、siRNAが活性である細胞質コンパートメントに達するためにsiRNAが細胞膜を通過するのを妨げるため、RNAiの良好な誘発を阻止する。これらの特質は、わずか約10分の血清半減期と合わせて、siRNAのトランスフェクション剤へのパッケージングを必要とする。これらの薬剤は、血清エンドヌクレアーゼからsiRNAを保護し、飲食作用を通してsiRNAの取り込みを促進することができる。残念ながら、これらの飲食作用経路は、siRNAが強くなる酸性環境によって分解されるエンドソーム/リソソームコンパートメントに閉じ込められたままであることを回避しなければならないとき、別の障害を提示する。
【0167】
これらの課題にも関わらず、カチオン性脂質及びポリマーは、siRNAトランスフェクションに首尾よく採用されてきた。残念ながら、これらの種類のトランスフェクション剤は、許容できない細胞毒性を呈する可能性がある。細胞内の膜二重層へのカチオン性脂質の組み込みは、細胞質内へのsiRNA放出を促進するが、同時に、高分子量ポリエチレンイミンカチオン性ポリマーによって共有される副作用である反応性酸素種(ROS)及びCa+2漏出を発生させる。細胞毒性を減少させるためのこれらのsiRNA担体の継続的な開発にも関わらず、これらの薬剤は、血清タンパク質との凝集及び補体活性化により、全身的にインビボで投与される場合、困難に直面してきた。全身的なsiRNA送達の問題を解決するには、新しいクラスのsiRNAトランスフェクション剤の開発か必要である。
【0168】
細胞透過性ペプチド(CPP)に基づくsiRNAトランスフェクション剤は、細胞毒性の減少に関して期待されてきた。CPPに基づくsiRNAトランスフェクションは細胞毒性がほぼないように思われるが、ペプチドに基づくトランスフェクション剤は、従来の脂質トランスフェクション剤の高効率を達成していない。ペプチドに基づくトランスフェクションがリソソーム捕捉により制限されることを示唆する見解がVeldhoenら(2006,Nucleic Acids Res.34:6561-73)の研究により提供されている。CPPがエネルギー依存様式でsiRNAの取り込みを媒介することを示唆する初期の研究にも関わらず、CPP及びsiRNAのアセンブリにより生成されたナノ粒子は、形質膜陥入され、細胞基質コンパートメントにアクセスするために、エンドソーム-リソソーム経路を回避しなければならないようである。この障害を考慮して、既存のCPP技術は、CPPの膜活性脂質またはエンドソーム溶解剤への化学的抱合を通して新しいレベルの高度化を達成したが、これらは尚もさらなるペプチド処理及び精製を必要とする。
【0169】
以下に提示される実施例は、ミツバチ毒の細孔形成成分である、細胞溶解性ペプチドであるメリチンの修飾に基づく効率的なペプチド系siRNAトランスフェクションの代替え戦略を提案する。膜二重層における細孔を形成するメリチンの能力は、エンドソーム流出を改善し、それによって、改善されたRNAiの細胞基質コンパートメント内へのより効率的なsiRNA送達のための段階を設定し、従来のCPPに基づく戦略に関連する低効率を克服することができる単純ペプチドの開発の基礎として機能することができることを示唆する。発明者により行われた以前の研究は、メリチンが膜二重層と相互作用するためのその傾向を維持しながら、その細胞毒性を減弱するように修飾され得ることを示した。本実施例に示されるように、ペプチド/siRNA相互作用を強化するための修飾と共にこれらの変更を組み込むことにより、メリチン由来ペプチドは、それらの固有の膜活性性質により、細胞質コンパートメントにsiRNAを安全に送達することができる。
【0170】
実施例1.siRNAノックダウンのスクリーニング
GFP-PESTを安定して発現するB16細胞のノックダウンは、PEST配列がGFP半減期を26から10時間に短縮するため、GFP発現の効率的なsiRNAノックダウンに迅速なスクリーニングを可能にする。次いで、メリチン誘導体は、細胞毒性を減少させ、同時にオリゴヌクレオチドとの相互作用を改善するように設計された修飾に基づき選択された。これらのペプチドは、B16 GFP細胞におけるGFPのノックダウンのためにGFP siRNAを送達するそれらの能力に関してスクリーニングされた(表1、
図1)。p5RHHは、特に効率的なsiRNAトランスフェクションを呈し、製剤のさらなる特徴付け及び最適化のために選択された。
【表2】
【0171】
トランスフェクションに最適なp5RHH:siRNA比を決定するためにフローサイトメトリーが実施され、トランスフェクション効率は、p5RHH:siRNA比が150:1の最大までp5RHH含量の増加と共に改善された(
図1A)。対照的に、スクランブルされたsiRNAは同じ条件下でGFP発現レベルに対して作用はなかった。最大200:1の比率までペプチドに関連する細胞毒性の兆候はなかったが(
図1B)、p5RHHへの曝露を最小にするために、残りの実験に関しては100:1のp5RHH:siRNA比が選択された。
【0172】
実施例2.ナノ粒子形成及び特徴付け
メリチン誘導体p5RHHの全体的な正味正電荷に基づき、負に荷電されたsiRNAと静電気的に相互作用するであろうと予想された。これらの相互作用は、遊離の未結合siRNAのみが電場の存在下でポリアクリルアミドゲルに移動できるゲル遅延度アッセイを使用して、様々なペプチド:siRNA比で監視された。これらのアッセイにおいて、ゲル上に装填する前に、40分間、一定量のsiRNAを、PBS中の増加量のp5RHHと混合した(
図2A)。少なくとも50:1のペプチド:siRNA比がsiRNAを完全に圧縮するために必要であることは明らかであり、これは、50:1を下回るp5RHH:siRNA比のFACSによって指摘された、siRNAトランスフェクションの欠如を確認した(
図1A)。
【0173】
動的光散乱(DLS)及びゼータ電位測定(表2)は、粒径が有効表面電荷に密接に関係があることを明らかにした。0mVに近い表面電荷を保有する粒子は、最も大きい直径を呈する一方、ゼータ電位の規模が大きい粒子は、小さい直径を有する。190nmの最も小さい粒径は、100:1のペプチド:siRNAモル比またはおよそ12:1(+/-)の電荷比で生成されることが分かった。p5RHH:siRNA比を200:1に増加しても(+/-比を24:1に倍増させる)ゼータ電位は増加しないが、粒径の増加は生じることに留意することが重要である。この現象は、他のペプチドトランスフェクション剤で以前に報告されたが、原因はまだ確立されていない。凍結割断SEM(
図2B)は、全体的な直径がほぼ150nmの明確なナノ粒子の存在を示す。興味深いことに、これらの粒子は、合体して安定したより大きな直径の粒子を形成する、より小さな10~20nmの粒子の凝集体からなるように思われる。大きさが原子間力顕微鏡(AFM)によって評価される場合、72時間後の粒径は、<100nm、典型的には、およそ50~100nmである。全体として、粒径がDLSにより評価される場合、粒径は、凝集体が分析結果(answer)に含まれるため、より大きいように思われる場合がある。SEMまたはAFMによってより正確に測定される活性粒子の大きさは、およそ50~100nmである。
【表3】
【0174】
実施例3.LF2000との比較
フローサイトメトリーを使用した用量応答分析は、p5RHHをトランスフェクトされたGFP siRNAによるGFPノックダウンが高度に効率的であり、5nMの低い濃度で、約15%の細胞においてGFP発現を減少させる能力を有することを明らかにした(
図3A)。スクランブルされたsiRNAは、同じ条件下でトランスフェクトされた際、GFPタンパク質に対して作用がなかった(
図3C、D)。しかしながら、リポフェクタミン2000との比較では、p5RHHは、siRNAのトランスフェクトにおいてあまり効率的ではなく、報告された10nMのリポフェクタミン2000のIC
50と比較して、RT-PCRに基づき50nMのIC
50を有する(
図3E、F)。加えて、フローサイトメトリーにより指摘されるように、p5RHHが低濃度でsiRNAをトランスフェクトする能力は、ウエスタンブロットまたはRT-PCRでは明らかではなく、FACSによるノックダウンを示す低パーセンテージ(約15%)の細胞による可能性がある。しかしながら、p5RHHがリポフェクタミン2000に対して細胞毒性プロファイルを劇的に改善することは容易に明らかであり、これは、試験された最高濃度においてさえも、細胞生存率における最小限の減少(約3%)から明らかである(
図3B)。
【0175】
実施例4.細胞質内への効率的なsiRNA放出
共焦点顕微鏡によりsiRNAトランスフェクションに不活性であることが知られているメリチン誘導体(p5RWR:VLTTGLPALISWIKRKRQQRWRRRR(配列番号83)、表1、
図1)の分析は、p5RWRでパッケージングされたオリゴヌクレオチドが、エンドソーム溶解剤として知られる50μMのクロロキンの存在下での共インキュベーションなしでは細胞質に達しないことを明らかにする(
図4B、C)。GFPノックダウンのFACS分析は、p5RWRでトランスフェクトされたsiRNAがクロロキンの補助なしでGFPノックダウンを開始することができないことを確認する(
図4A)。これらのデータは、p5RWR/siRNAナノ粒子がエンドソームコンパートメント内に捕捉されたままであり、RNAiを開始できないことを示唆する。比較すると、トランスフェクション24時間後に分析された際、p5RHHのみが細胞質内にオリゴヌクレオチドを送達することができ(
図4D、E)、p5RHHが固有のエンドソーム溶解能を保有することを示唆する。
【0176】
実施例5.癌成長を遅らせるためのsiRNA送達
シグナル伝達性転写因子3(STAT3)は、多種多様なヒト悪性病変に重要な役割を果たすと考えられる、よく知られた癌遺伝子である。p5RHHが構成的に活性化された癌遺伝子を下方調節する能力を試験するために、STAT3依存として知られるB16-F10細胞におけるSTAT3発現を標的とした。STAT3特異的siRNAの送達は、STAT3 mRNAの分解をもたらし、続いて、STAT3タンパク質発現における減少をもたらした(p5RHH IC
50:約50nM、リポフェクタミン2000 IC
50:約10nM)(
図5A~D、
図6)。p5RHH媒介STAT3 siRNAトランスフェクションは、アラマーブルーアッセイにより決定されるように、トランスフェクション72時間後にB16-F10生存率(200nMで60%)の減少をもたらした(
図5E)。重要なことは、スクランブルされたsiRNAは、B16生存率に対して作用を示さず、STAT3特異的またはスクランブルされたsiRNAのいずれかを送達された際に細胞生存率において同等の減少をもたらした(200nMで最大60%)リポフェクタミン2000と比較して(
図5F)、p5RHHの安全性を示す。
【0177】
実施例6.血管新生を防止するためのsiRNA送達
病理学的血管新生は、癌、粥状動脈硬化、及び炎症を含む多くの疾患状態の特徴である。STAT3は、血管新生中の内皮細胞の遊走及び成熟において主要な媒介物であることが前に示された。したがって、p5RHHが血管新生の遮断のためにSTAT3 siRNAをHUVEC細胞に送達する能力は、マトリゲル管形成アッセイ及びトランスウェル細胞遊走アッセイの使用により説明された。p5RHH/STAT3 siRNAナノ粒子をトランスフェクトされたHUVECは、HUVEC生存率において任意の付随する減少を伴わずに(
図7C)、約50nMのIC50(
図7A、B、
図8)で、STAT3 mRNA及びタンパク質レベルにおいて減少を呈した。B16-F10細胞のトランスフェクションと同様に、リポフェクタミン2000媒介トランスフェクションは、IC
50が約10nMであったが、強い細胞毒性を呈し、25nMの低いsiRNA用量で細胞生存率は40%減少した(
図9)。
【0178】
p5RHH媒介STAT3 siRNAトランスフェクションは細胞生存率に影響を及ぼさなかったが、HUVECを処置するために使用されたp5RHH/STAT3 siRNAナノ粒子は、HUVECの処置のためのスクランブルされたsiRNAと比較して、管形成において約60%の減少を示した(
図7D~F)。加えて、p5RHHでトランスフェクトされたHUVECの遊走は、アラマーブルー(
図7I)及び蛍光顕微鏡(
図7H、
図10)により定量化されるように、50%減少した。これらのデータは、高効率で、p5RHHが病理学的血管新生を防止するために一次ヒト内皮細胞を安全にトランスフェクトすることができることを示す。
【0179】
実施例7.泡沫細胞形成を減少させるためのsiRNA送達
粥状動脈硬化巣を特徴付ける妨害された内皮細胞関門は、粥状動脈硬化を、ナノ粒子に基づく療法の主な標的とする。粥状動脈硬化巣の特徴である泡沫細胞形成をp5RHH/siRNAナノ粒子で阻止することができることを確実にするために、JNK2 siRNAがRAW264.7(マウス単球/マクロファージ細胞系)に送達された。JNK2は、既知の泡沫細胞形成の媒介物であり、スカベンジャー受容体AによるAc-LDLならびにCD36によるoxLDLの両方の取り込みにおいて関係付けられてきた。p5RHHは、細胞毒性なくJNK2 siRNAをRAW264.7細胞に送達することができ(
図11A、B)、25nMの低い濃度でJNK2タンパク質レベルにおける強力な減少をもたらす。比較すると、リポフェクタミン2000は、ウエスタンブロットにより決定されるように、類似するIC
50を有するが、広範囲に及ぶ細胞毒性を呈する(
図12)。減少したJNK2タンパク質レベルは、オイルレッドO染色後、光顕微鏡により決定されるように、50μg/mlのAc-LDLの存在下で12時間インキュベートされたRAW264.7細胞において泡沫細胞形成を抑制した(
図11C~E)。これらの画像は、未処置対照及びスクランブルされたsiRNA処置細胞おいて広範囲に及ぶ脂質滴蓄積を示すが、JNK2特異的siRNAで処置されたRAW264.7細胞において脂質滴蓄積はなかった。
【0180】
実施例8.血清の存在下のp5RHHの性能
実験に使用された粒子が血清の存在下で安定していることを確実にするために、p5RHH/siRNAナノ粒子を、12時間または一晩、150μg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)中でインキュベートした。動的光散乱は、新しく調製した粒子と比較した際、大きさが変化しなかったことを明らかにする(表3)。さらに、HSAと共にインキュベートされたナノ粒子のゼータ電位は、正が低くなり、これは、ナノ粒子を負で荷電されたアルブミンで被覆したことによる可能性がある。これらの粒子の活性が試験された際、GFP発現をノックダウンするそれらの能力は、新しいナノ粒子と比較して、偶然にも強化された(
図13A、B)。これらの実験は、ある特定の条件下で経時的にさらにより強力なトランスフェクション剤へとそれらを成熟させる、p5RHH/siRNAナノ粒子の血清安定性を示し、これは、インビボ環境への適用性の可能性を示唆する。
【表4】
【0181】
実施例1~8の考察
出願者は、新規ペルフルオロカーボンナノエマルジョン製剤におけるカチオン性脂質に基づく高度に効率的なsiRNA送達を前に調査した。高効率のトランスフェクションがインビトロで達成されたにも関わらず、高ナノ粒子濃度でのトランスフェクションの問題は、従来のカチオン性脂質トランスフェクション剤に付随する課題を示した。本発明の実施例では、メリチンの膜挿入及び細孔形成能が以前に報告されたCPPに基づくsiRNAトランスフェクション剤の主な欠点であるエンドソーム流出の新規手段を提供するだろうという仮説に基づき、高効率のsiRNAトランスフェクション剤を実現するために、メリチンペプチドが修飾された。
【0182】
実際、本明細書に提示される実験は、p5RHHがsiRNAの細胞質内への放出を容易にすることができることを示す。不活性メリチン誘導体(p5RWR)の分析は、従来のCPPに基づくsiRNA送達と同様に、p5RWR/siRNA粒子がエンドソーム内に取り込まれ、細胞質にアクセスするためにエンドソーム溶解剤を必要とすることを示唆する。p5RHH/siRNAナノ粒子は、細胞膜と会合するナノ粒子、及び後続の飲食作用に重要な役割を果たすことが示された特徴である、ゼータ電位測定によって決定される正の表面電荷を有する。表面電荷の類似性に基づき、p5RHH/siRNAナノ粒子は、不活性p5RWR/siRNA複合体と同様に、同じ飲食作用機構を介して処理される可能性があり、これは、p5RHHが効率的な様式でエンドソーム/リソソーム経路からのsiRNAの放出を促進する可能性があることを示唆する。p5RHH/siRNAナノ粒子の内部移行に関与する正確な取り込み経路を決定する必要があるが、不活性p5RWR複合体の分析は、細胞によるp5RHH/siRNAナノ粒子処理の潜在的な機構の見解を提供する。
【0183】
効率的なエンドソーム流出に関与する正確な性質はまだ明らかにされていないが、オリゴヌクレオチドトランスフェクションに使用されるヒスチジル化ペプチドに対する研究は、p5RHHの機能に関してある洞察を提供する。ヒスチジル化ペプチド及びポリマーは、本来、リソソーム酸性化(pH約4.5)中のヒスチジンのイミダゾール基(pKa約6.0)のプロトン化に基づくプラスミド放出を補助するために設計された。これらのポリマーは、プロトンスポンジ効果を介してエンドソーム溶解を駆動するために高ヒスチジン含量(80~90%のヒスチジン)を組み込む。p5RHHは、2つのヒスチジン残基のみを保有し、よってエンドソームを溶解するために十分なプロトンを緩衝することができない可能性がある。しかしながら、ヒスチジン残基のプロトン化は、5RHH/siRNAナノ粒子の解体及びp5RHHの放出を促進して、siRNA放出のためにエンドソーム膜を透過処理する可能性がある。低pHでのp5RHH/siRNAの解体及び溶解能の詳細な研究は、現在進行中である。
【0184】
p5RHHがsiRNAを細胞質に送達する能力は、5nMの低い濃度でGFP発現の定量可能な減少をもたらす。しかしながら、p5RHHは、それでもB16-F10細胞またはHUVECにおいてリポフェクタミン2000により提供されるトランスフェクション効率のレベルを達成することができない。p5RHHは、RAW264.7細胞をトランスフェクトされた場合、改善された効率を呈するように思われ、IC50は、リポフェクタミン2000とほぼ等しい。予想通り、異なる細胞型は、異なる飲食作用機構を好み、これは異なる細胞型におけるトランスフェクション効率間の相違を説明し得る。それにも関わらず、p5RHHは、細胞毒性に関して従来のカチオン性脂質に基づくトランスフェクションに対して実質的な改善を呈し、全ての試験された濃度での様々なマウス及びヒト細胞系に対する細胞生存率において最小限の減少を呈する。さらに、p5RHH媒介トランスフェクションの効率は、粒子が血清安定性について試験するために使用される血清アルブミンと共に最初にインキュベートされる場合、増加したトランスフェクション効率が観察されることにより示唆されるように、さらに最適化され得るように思われる。ゼータ電位測定は、アルブミンがp5RHH/siRNAナノ粒子を被覆することを示唆するが、これがどのようトランスフェクションを強化するかは明らかではない。既存の研究は、アルブミンが低pHで脂質二重層の融合を補助することができ、この活性がエンドソーム流出において役割を果たす可能性があることを示してきた。観察されたsiRNAトランスフェクション効率における改善は、p5RHH媒介トランスフェクションの効率を最大にするための改善された製剤方法に関して興味深い手段を確立するはずである。
【0185】
p5RHHがsiRNAを、癌細胞、内皮細胞、及びさらにはマクロファージにトランスフェクトする能力は、トランスフェクション活性の広域スペクトルを指し示し、同時に好ましい細胞毒性特徴を維持する。ナノ粒子(約190nm)の大きさを考慮すると、無償内皮細胞関門を通した血管漏出を必要としない疾患プロセスが標的とされる。癌、血管新生、及び粥状動脈硬化は、ナノ粒子の周囲組織内への強化された漏出を伴う不連続内皮細胞関門を特徴とする。癌において、この作用は、「血管透過性及び滞留亢進製」として広く知られており、類似する作用は重度の粥状動脈硬化の状態に関して前に報告されている。さらに、本実施例におけるナノ粒子の大きさは、腎臓濾過ならびに網内系による取り込みの両方を避けることにより、好ましい薬物動態及び血清半減期をもたらすはずである。p5RHH/siRNAナノ粒子は、トランスフェクション前にヒト血清アルブミンの存在下で24時間インキュベートされる場合、大きさの安定性を呈し、かつsiRNAトランスフェクション能も維持し、この問題は、一部のCPPトランスフェクション剤の活性を減少することが認められている。詳細なsiRNA保護及び長期安定性の分析が行われる必要があるが、これらのデータは、インビボ環境においてトランスフェクションに利用される場合、p5RHH/siRNAナノ粒子が治療的利益を提供する可能性があることを示唆する。
【0186】
そのため、新規メリチン誘導体p5RHHは、静電気的にsiRNAと相互作用し、後のmRNAの配列特異的分解及び様々な細胞型における減少したタンパク質発現を伴う細胞質内への効率的な送達を示す安定したナノ粒子を形成する能力を呈する。我々の研究は、いずれの細胞毒性の兆候を明らかにしなかったが、臨床環境におけるp5RHH/siRNAナノ粒子の利用可能性を示唆する。血清タンパク質の存在下でのこれらの粒子の安定性は、p5RHH/siRNAナノ粒子がインビボでsiRNAを血管内標的または内皮細胞関門不全を特徴とする患部組織に送達するための良好な試験候補であろうことを示唆する。
【0187】
実施例1~4の方法
ペプチド/siRNAナノアセンブリの調製及び分析
メリチン誘導体は、Genscript(Piscataway,NJ)によって製剤化され、使用前にRNAse/DNAse遊離水(Sigma,St.Louis,MO)中10mMに溶解され、-80℃で、4μlのアリコートに保管された。p5RHH/siRNAトランスフェクション複合体を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma)中1:200でp5RHHを希釈し、30秒間ボルテックスにかけ、続いて、適切な量のsiRNA(1×siRNA緩衝液(Thermo)中10μMのストック濃度)を添加し、Eppendorf Thermomixer R中で振盪させながら、37℃で40分間インキュベートすることにより調製した。得られたナノ粒子を、12%のポリアクリルアミドゲル上での分解、続いて、臭素エチジウム染色により、siRNA組み込みについて分析した。動的光散乱(DLS)及びゼータ電位測定は、ゼータ+粒径分析計(Brookhaven Instruments,Newton,MA)で行われた。血清安定性分析は、新しく形成されたペプチド/siRNAナノ粒子を10mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA、Sigma)中で一晩インキュベートすることにより行われ、その後、DLS及びゼータ電位測定が続いた。
【0188】
細胞培養
B16F10及びRAW264.7(ATCC,Manassas,VA)細胞系を、10%のウシ胎仔血清(Gibco)で補足されたDMEM(Gibco,Carlsbad,CA)中、標準的な細胞培養条件下(加湿インキュベータにおいて37℃及び5%のCO2)で維持した。GFPを安定して発現するB16F10細胞は以下のように生成された。B16F10は、EGFP(pEGFP-N1,Clontech)とpEF6V5HisTOPO(Invitrogen)中のマウスオルニチンデカルボキシラーゼ(S421-V461)からのPEST配列との融合物をトランスフェクトされた(リポフェクタミン2000、Invitrogen)。細胞は、抗生物質を選択することなく、フローサイトメトリーによる細胞選別を4回行うために選択された。細胞のアリコートは、EGFP発現レベルが大して変化することなく、1ヶ月間、連続培地で維持された。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、Lifeline Technologies(Frederick,MD)から購入し、製造者の指示に従い、5ng/mLのEGF、5ng/mlのbFGF、15ng/mLのIGF-1、50μg/mLのアスコルビン酸、1μg/mLのヘミコハク酸、0.75U/mLのヘパリン硫酸、10mMのL-グルタミン、2%のウシ胎仔血清で補足されたVascuLife基本培地(Lifeline Technologies)中で培養した。全ての実験において、HUVECは継代3で使用された。
【0189】
siRNAトランスフェクション
トランスフェクション前に、細胞を、6ウェルプレート中で12時間平板培養し、標準的な細胞培養条件下で培養した。p5RHH/siRNAナノ粒子を調製し、1mLのOptimemI(Gibco)の最終容量で、または10%のFBSで補足された適切な培地中で4時間、細胞と共にインキュベートした。トランスフェクションは、細胞培養表面積に基づき、12ウェルプレートに平板培養された細胞について適切に調整された。トランスフェクション後、細胞を、PBSで2回洗浄し、分析する前にさらに24~72時間、標準的な細胞培養培地と共にインキュベートした。リポフェクタミン2000は、製造者のプロトコルに従い使用された。簡潔に、リポフェクタミン2000を、OptimemI中で、8.4μg/mlの最終の濃度に希釈し、室温で15分間インキュベートした。次いで、siRNAを希釈した脂質に添加し、トランスフェクションのために、OptimemIで1mLの総容量に希釈する前に、さらに40分間インキュベートした。eGFP siRNA(センス:5’-GACGUAAACGGCCACAAGUUC-3’;配列番号56)をSigmaから購入した。siGENOMEマウスMAPK9 siRNA1、siGENOMEマウスSTAT3 siRNA2、及びsiGENOMEヒトSTAT3 siRNA2遺伝子特異的siRNAを、Dharmacon(Lafayette,CO)から購入した。スクランブルされたsiRNAを、Qiagen(Valencia,CA)から購入した。
【0190】
ウエスタンブロット
トランスフェクション24または48時間後、1mMのPMSF及びコンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含む100~200μlのRIPA緩衝液(10mMのTris-HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1.0%のIgepalCA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、1mMのEDTA、5%のグリセロール)を、6ウェルプレートの各ウェルに添加し、氷上で1時間インキュベートした。次いで、細胞溶解物を、4℃で5分間遠心分離し、上清を-20℃で保管した。TBS-T中の5%ウシ血清アルブミン(Sigma)で遮断する前に、可能化物を、Nupage Bis-Trisゲル(Life Technologies)上で分解し、0.22μmのニトロセルロースに移した。使用された一次抗体は、ウサギ抗GAPDH(1:1500,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)、マウス抗β-アクチン(1:1000,Sigma)、マウス抗STAT3(1:1000,Cell Signaling,Danvers,MA)、ウサギ抗JNK2(1:1000,Cell Signaling)であった。使用された二次抗体は、抗ウサギHRP(1:5000,Santa Cruz Biotechnology)及び抗マウスHRP(1:5000,Santa Cruz Biotechnology)であった。ブロットは、ECLウエスタンブロット基質(Pierce,Rockford,IL)を使用して開発された。ノックダウンは、ImageJ(NIH,Bethesda,MD)のデンシメトリーを使用して定量化され、未処理対照に正規化された。全てのデータは、3つの独立した実験の平均として提示される。
【0191】
リアルタイムPCR
トランスフェクション24時間後、FastLane Cell cDNAキット(Qiagen)を使用して、cDNAを生成した。使用するまで、cDNAを-20℃で保管した。ROXを備えるiTaq SYBRグリーン(Bio-Rad,Hercules,CA)を使用するApplied Biosystems 7300 System(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)のSYBRグリーン検出を使用して、mRNAレベルを定量化した。Quantitectプライマーアッセイ(Qiagen)は、各遺伝子に遺伝子特異的プライマーを提供した。対照の遺伝子は、種適切Bアクチンに正規化された。結果は、3つの独立した実験の未処理の対照に対する平均「倍率変化」として報告される。
【0192】
共焦点顕微鏡
B16F10細胞は、ガラスカバースリップ上で培養され、標準的なトランスフェクション手順により、Cy5.5標識された抗GFP siRNA(Sigma)をトランスフェクトされた。トランスフェクション12時間後、細胞を、PBS中で3×洗浄し、ガラススライド上に載置する前に4%のPFA(DAPIを含むVectashield封入剤,Vector Labs,Burlingame,CA)に固定した。Zeiss Meta510(Thornwood,NY)の共焦点顕微鏡により、細胞を撮像した。
【0193】
フローサイトメトリー
B16-GFP細胞がGFP特異的またはスクランブルされたsiRNAを含むp5RHH/siRNAナノ粒子をトランスフェクトされた24時間後、GFP蛍光分析のために、細胞を、トリプシン処理し、FACS緩衝液(0.2%のFBS及び0.5mMのEDTA)に再懸濁した。
【0194】
細胞生存率アッセイ
細胞生存率は、アラマーブルー(Life technologies)を使用して、トランスフェクション72時間後に決定された。簡潔に、アラマーブルーを、フェノールレッドを含まない培地中に1:10で希釈し、2~4時間、細胞と共にインキュベートした。570nmでの励起、及び585nmでの発光による蛍光プレート読取装置(Varian Cary Eclipse,Agilent Technologies,Santa Clara,CA)で蛍光を測定した。
【0195】
管形成アッセイ
マトリゲル(BD Biosciences,San Jose,CA)を、氷浴中4℃で一晩解凍し、その後、37℃で1時間、24ウェルプレート中でゲル化させた。STAT3特異的または対照siRNAをトランスフェクションした24時間後、HUVECをトリプシン処理し、30,000細胞/ウェルの細胞密度で、マトリゲルで平板培養した。倒立顕微鏡による視覚化前に24時間、管形成を進行させた。管形成スコアは、ImageJ(NIH)において測定される、未処理対照に正規化された視野当りの管長の合計に基づき決定された。
【0196】
HUVEC遊走アッセイ
1.0μm孔径(Corning,Tewksbury,MA)の12ウェルのトランスウェルインサートの底部を、室温で1時間、0.1%のブタのゼラチン(Sigma)で被覆した。次いで、前もって24時間、STAT3特異的または対照siRNAをトランスフェクトされたHUVECを、トリプシン処理し、成長因子を含まない培地中に再懸濁し、30,000~50,000細胞/ウェルの密度で、先端のトランスウェルチャンバに添加した。底部のチャンバは、成長因子を含まないVascuLife基本培地±5ng/mlのbFGFを含んだ。12時間、ポリマーインサートを通して細胞を遊走させた。遊走しなかった細胞を減菌コットンスワブで先端のチャンバから除去し、アラマーブルーにより遊走した細胞数を決定した。データは、3つの独立した実験の平均正規化遊走として提示される。視覚化において、インサートを切り取り、ガラススライド上に載置した。細胞核を、Olympus BX610(Tokyo,Japan)のDAPI染色で視覚化し、視野当りの平均細胞数として報告した。
【0197】
泡沫細胞形成アッセイ/オイルレッドO染色
JNK2特異的または対照siRNAをトランスフェクションした48時間後、RAW264.7細胞を、さらに24時間、±50ug/mlのAc-LDL(Intracel,Frederick,MD)と共にインキュベートした。次いで、細胞を、オイルレッドOで染色して、泡沫細胞形成を視覚化した。簡潔に、0.22μmフィルタを通して濾過する前に、オイルレッドOを、一晩、純粋なメタノール(0.5g/100mL)中に溶解した。次いで、オイルレッドOストックを、蒸留水中に3:5で希釈し、オイルレッドO希釈標準溶液を作製し、0.22μmフィルタを通して2度目の濾過を行った。細胞を、室温で10分間、4%のPFAに固定し、オイルレッドOストック希釈標準溶液中で15分間染色する前に、60%のメタノールで洗浄した。染色後、ガラススライド上に載置する前に、細胞を60%のメタノールで1回、そして、蒸留水で1回洗浄した。
【0198】
実施例9~14の導入
RNA干渉(RNAi)を介したmRNAの転写後分解は、多くの臨床的に適切な疾患の治療において有益であることを証明し得る遺伝子発現を発現停止するための目標アプローチを提供する。RNAiは、低分子干渉RNA(siRNA)を哺乳類細胞の細胞質内に送達することにより誘発され得、その後、siRNAのRNA誘発発現停止複合体(RISC)への組み込みが相補的mRNAの配列特異的切断をもたらす。細胞質におけるsiRNAの活性を考慮すると、siRNAは、細胞質コンパートメントに達するために、不透過性細胞膜を迂回しなければならない。残念なことに、siRNAの大きい分子量(約21kDa)及び負の電荷により、ネイキッドsiRNAは、細胞膜を通して自由に拡散することができず、細胞取り込み及び後続のエンドソーム流出を補助するための効果的な送達系が必要とされる。
【0199】
一般的なsiRNA送達系は、カチオン性脂質及びポリマーを含み、これらは効率的であるが、毒性の可能性があるため妨げられる。最近の研究は、毒性の副作用がないため、siRNAトランスフェクションのための多塩基ペプチドまたはペプチド形質導入ドメイン(PTD)に重点を置いている。残念なことに、多くの研究は、過剰なエンドソーム封入の結果としてペプチドと複合される場合、高度に効率的なsiRNA送達を達成することに適度な成功しか報告されていない。ペプチドに基づくsiRNAベクターの進行を妨げる主な障害としてエンドソーム封入を認識することによって、ペプチド媒介トランスフェクションを改善するためには、新しい戦略が開発されなければならないことが強調される。したがって、発明者は、正味正電荷を保有する膜妨害ペプチドが、siRNAを複合し、かつエンドソームコンパートメントを妨害する両方を行うそれらの2重機能により、効率的なsiRNAトランスフェクションの未開拓の代替えを提供することを提案する。
【0200】
残念なことに、良好なペプチド媒介トランスフェクションを可能にする機構はまだ完全に明らかにされていないため、siRNAトランスフェクションにおけるメリチン誘導体の利用は、予測が困難である。例えば、van Asbeckら(2013;ACS Nano 7:3797-3807)による最近の研究は、ポリアニオン巨大分子による脱複合体化に対する感受性が、改善されたトランスフェクションの一因となるが、細胞質へのsiRNA送達において脱複合体化が果たす役割は確立されなかったと結論付けている。さらに、インフルエンザウイルスからのpH応答膜融合性ペプチドは、以前に、ペプチド媒介トランスフェクションを増加させるために利用されてきたが、siRNAトランスフェクションを改善するそれらの能力は、増加したsiRNAパッケージングまたは取り込みに寄与し得るが、エンドソーム流出には寄与しない。Cpp/siRNAナノ粒子は、物理化学的観点から十分に特徴付けされてきたが、エンドソーム封入及び後続のRNAiの誘発の良好な迂回に起因するペプチド/siRNAナノ複合体のトランスフェクションに関与する機構はまだ解明されていない。ペプチド/siRNAナノ複合体の細胞内処理及び細胞質へのsiRNA放出の機構に関するさらなる研究は、siRNAトランスフェクションのためのペプチドをさらに開発するために必要である。
【0201】
発明者は、メリチン誘導体であるp5RHHが全ての試験された用量で顕著な細胞毒性なく、25nMの低いIC50でiRNAをトランスフェクトすることができることを前に報告した(Hou et al.,2013;34:3110-3119)。本明細書の実施例では、このペプチドは、ヒトTリンパ親和性ウイルス-1(HTLV-1)誘発成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)のマウスモデルにおいて、標準及び非標準の両方のNFκBシグナル伝達経路の同時ノックダウンのためのp65及びp100/52siRNAの送達に採用される。強化された安定性に関して、アルブミン被覆されたp5RHHの製剤がpH起動ナノ粒子の解体に寄与する顕著なトランスフェクション効率を呈することが本明細書において示される。作用機構に関する詳細な研究は、エンドソームpHへの曝露がナノ粒子の解体及びエンドソーム流出の両方を起動することを明らかにする。さらに、エンドソーム妨害だけでは良好なRNAiの誘発を引き起こさないが、同時にベクターからのsiRNA放出を必要とすることは、非機能メリチン誘導体との比較から明らかである。
【0202】
本明細書に提示される結果は、ペプチドベクターによる細胞質内への異なるsiRNA送達をもたらす一般的なパラメータを提供し、これは、siRNA治療薬の非共有結合ペプチド/siRNAナノ複合体の開発に役立ち得る。
【0203】
実施例9:アルブミン安定化p5RHH/siRNAナノ粒子の製剤化
p5RHH/siRNAナノ粒子を製剤化するために、p5RHH(DI H
2O中10mMのストック)を、1:200でダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、30秒間ボルテックスにかけ、続いて、適切な量のsiRNA(1×siRNA中100μMストック)を添加し、37℃で40分間インキュベートする(
図14A)。ディープエッチ電子顕微鏡により追跡される粒径に基づき、40分のインキュベーションが選択された。電子顕微鏡(
図15A)は、この時間点で形成された粒子がさらなる凝集を呈さず、プラットホームにアルブミン表面被覆を介した動的安定を可能にすることを示す。特に、40分のインキュベーションは、B16-F10黒色腫細胞(ATCC,Manassas,VA)における緑色蛍光タンパク質(GFP)発現のノックダウンに基づく最大トランスフェクション効率も呈する(
図15B)。
【0204】
アルブミンは、凝結を防止するために、ナノ粒子を被覆することにより強化されたナノ粒子の安定性をもたらすことが知られている。アルブミン安定化製剤は、使用前に0.5mg/mlのヒト血清アルブミン(DI H
2O中50mg/mlのストック)の存在下で引き続き30分間インキュベーションすることを含む。製剤化72時間後のアルブミン安定化p5RHH/siRNAナノ粒子の大きさは、湿式原子間力顕微鏡により約55nM±18であると測定され(
図14B)、アルブミンがp5RHH/siRNAナノ粒子の凝結を防止することを示す。
【0205】
実施例10.ペプチド/siRNAナノ粒子の細胞侵入のメカニズム
ペプチド/siRNAナノ粒子の細胞侵入を囲む不確定要素を考慮して、p5RHHがsiRNAの細胞質送達を達成する機構の見解を提供するために、取り込みアッセイが行われた。p5RHHでパッケージングされたAlexa488標識された、スクランブルされたsiRNAの取り込みを示すフローサイトメトリーは、p5RHH/siRNAナノ粒子取り込みにおける選択された飲食作用経路の役割を決定するための簡便な実験ツールを提供する。4℃での細胞のインキュベーションはp5RHH/siRNA取り込みのほぼ完全な阻害をもたらすため、p5RHHがsiRNAの細胞質放出に直接的な膜移行を媒介するという仮説は却下される(
図16)。代わりに、飲食作用阻害剤の存在下におけるp5RHH/siRNA取り込みの研究は、マクロ飲作用がp5RHH/siRNA取り込みに関与する主な経路であることを示す(
図17A~D)。マクロ飲作用阻害剤EIPAは、p5RHH/siRNA取り込みを劇的に減少させる一方、小窩阻害剤、フィリピン、及びクラスリン媒介飲食作用(CME)阻害剤PAOは、p5RHH/siRNA取り込みに対して作用がない。
【0206】
取り込み機構を評価するためのエンドソーム阻害剤の使用は、非特異的であり、細胞型依存でもあることが示された。そのため、取り込み阻害アッセイは、標準的なエンドソームマーカートランスフェリン(CME)及び70kDaデキストランの阻害により示される(マクロ飲作用)、予測される経路に特異的であることが決定された阻害剤濃度で(
図18)、40分間のみ行われた。B16細胞は、カベオリン-1を発現しないことが知られており、予想通り、カベオリンマーカーコレラ毒素Bの取り込みはこの細胞型において測定可能ではなかった(未公開の観察)。
【0207】
共焦点顕微鏡は、p5RHH/Cy3-siRNAのFITC-70kDaデキストランとの強い共局在を示すが(
図17J)、FITCトランスフェリンとは共局在しない(
図17I)ことを示すフローサイトメトリーのデータを確認する。さもなければ分析を交絡させる可能性がある細胞質または核蛍光をもたらす場合があるCy-3標識されたsiRNAの細胞質内への放出を最小限にするために、細胞は取り込みマーカーと共に40分間のみインキュベートされ、よって、細胞質放出を呈する細胞は、これらの問題を避けるために撮像されない。興味深いことに、Cy-3標識されたsiRNAの迅速な(<1時間の取り込み及び放出)は、p5RHH/siRNAなの粒子により誘発された迅速なエンドソーム放出を確認する(
図19)。
【0208】
これらの結果は、塩基残基を含む多くの正に荷電されたペプチドの細胞取り込みを調節する一般的な規則に従う。具体的に、アルギニン残基は、細胞表面プロテオグリカンと2座のイオン相互作用を形成することができ、これは、原形質膜との密接な会合をもたらす。さらに、これらの非特異的結合相互作用は、マクロ飲作用による流体相取り込みに必要とされるアクチン再配列を刺激することができる。正に荷電されたペプチドの強力な取り込みは、原形質膜との静電気会合及び後続の流体相取り込みが実質的なペプチド/siRNA取り込みを達成するのに十分であることを示す。
【0209】
実施例11.飲食作用後のsiRNA輸送
初期の飲食作用事象後の適切なsiRNA輸送も、良好なsiRNAトランスフェクションに極めて重要である。特に、エンドソーム及びリソソームのpHは、膜結合液胞型ATPasesを介した酸性化により厳密に制御され、p5RHH/siRNAナノ粒子から環境感受性siRNAを放出する誘因を提供し得る。これらの液胞型ATPasesによりもたらされる低pHがエンドソームからのsiRNA放出に関与するかを決定するために、細胞を、トランスフェクション中、バフィロマイシンA1の存在下でインキュベートした。バフィロマイシンA1なしでトランスフェクトされた対照細胞と比較して(
図20E)、バフィロマイシンA1処理された細胞(
図20F)、は、フローサイトメトリーにより決定される、GFPノックダウンのほぼ完全な損失をもたらす。バフィロマイシンA1はp5RHH/siRNA取り込みを遅らせることができるため、B16細胞における蛍光標識されたsiRNAの取り込みのフローサイトメトリーの評価は、これらのアッセイにおいて使用されたバフィロマイシンA1の濃度がp5RHH/siRNA取り込みを損なわなかったことを確実にするために利用された(
図20A~C)。これらのデータは、p5RHHを介して細胞に送達される際の、siRNAの細胞質放出におけるエンドソーム酸性化の重要性を確認する。
【0210】
実施例12:酸性pHでのナノ粒子の一体性
エンドソームの酸性化はp5RHHがsiRNAを細胞質に送達する能力に重要であるため、次第に増加する酸性環境がナノ粒子の一体性にどのように影響を及ぼすかを解明するために、p5RHH/siRNAナノ粒子を低pHでインキュベートした。核酸染色TOPRO3を使用する色素結合アッセイは、増加したTOPRO3蛍光強度により表されるように、siRNAがpH≦5.5で次第にアクセス可能になることを明らかにした(
図21A)。増加した色素のアクセス容易性が増加したsiRNA放出と相関したか否かを決定するために、追加の試料を20%ポリアクリルアミドゲル上で泳動させて、遊離siRNAを分解した(
図21B)。これらのデータに基づき、siRNAは、4.5のpHが達成されるまで自由にゲル内に遊走しないようである。まとめると、これらのアッセイは、粒子の解体及びsiRNA放出のpH依存機構を示唆し、粒子の解体を開始するのに必要とされるpH(pH5.5)より低いpH(4.5)が、siRNAが完全に放出されるために必要である。p5RHHとは対照的に、p5RWRは、pH≦5.5でのTOPRO3蛍光の欠如(
図21A)、及びゲル移動により測定されるsiRNA放出の欠如(
図21B)により示されるように、pHに応答することができない。
【0211】
粒子の解体を実証するために、p5RHH/siRNAナノ粒子からのpH依存p5RH放出は、10Kの透析膜を通した透析後に定量化された。これらのアッセイは、粒子アセンブリ後、約40%のp5RHHが遊離のままであり、強いp5RHHの放出がpH≦5.5で生じた(
図21C)ことを明らかにする。このpH依存は、siRNA色素結合に見られたpH依存と一致し、pHが実際にナノ粒子の解体ならびに後続のp5RHH及びsiRNA両方の放出を起動することを確認する。
【0212】
解放されたp5RHHの溶解能は、赤血球(RBC)溶血アッセイによりインビトロで定量化することができる。減少するpHでインキュベートされた場合、p5RHH/siRNAナノ粒子がRBCを溶解する能力は、pH≦5.5での遊離p5RHHの放出により強化される(
図21D)。これらのアッセイは、高温で観察される自己溶血の速度を減少させるために、4℃で行われた。RBC溶血は、遊離p5RHHが膜結合構造を溶解することができ、無償細胞においてエンドソーム膜を潜在的に妨害することができることを示す(
図22)。
【0213】
生存細胞におけるエンドソームの妨害がアクリジンオレンジ染色により観察された。最初に、細胞を、エンドソームにおいて低pHで赤を発光し、細胞質pHで緑を発光するアクリジンオレンジ(10μM、15分)で充填した。エンドソームの妨害は、100μMのクロロキンの存在下で、細胞質の緑色蛍光の増加によって視覚化され得る(
図21F)。同様に、p5RHH/siRNAをトランスフェクトされた細胞も細胞質エンドソーム小胞からアクリジンオレンジを放出し、効率的なエンドソーム妨害を確認し、一方、p5RWR/siRNAナノ粒子をトランスフェクトされた細胞は、エンドソーム妨害を呈さなかった(
図21H、G)。これらの結果は、ナノ粒子の解体、及び細胞状況におけるエンドソーム妨害についてインビトロで測定された膜活性ペプチドの放出の重要性を強調する(
図21I~K)。p5RHH/siRNAナノ粒子は、pH応答性であり、エンドソーム妨害においてp5RHHを放出するが、p5RWR/siRNAナノ粒子は、解体されず、エンドソームの一体性を変更しない。
【0214】
p5RHH/siRNAナノ粒子のpH応答性質の潜在的な機構の1つは、ヒスチジン残基のプロトン化であるように思われる。増加したsiRNA色素結合及びp5RHH放出がヒスチジンのpH<pKaで記録されるため、6のpKaで、ヒスチジンは、粒子の解体に重要な誘因を提供する可能性がある。従来、ヒスチジンのプロトン化は、多くの場合、ヒスチジン含有ポリマーの緩衝能がCl-対イオンの蓄積、及び最終的にエンドソームの浸透圧破裂をもたらすプロトンスポンジ効果の文脈において、siRNA送達の誘因として使用されてきた。浸透圧破裂に関してエンドソーム緩衝に依存する方法と比較して、本発明のペプチドにおける2つのヒスチジンのみの存在は、これらの提案されたメリチンに対する修飾がエンドソーム流出に対するプロトンスポンジ効果を達成するのに適切な緩衝能をもたらさない可能性があることを示唆する。例として、TATは、細胞質内への良好な核酸放出ために少なくとも10のヒスチジン残基により増大されなければならないことが示されてきた。アクリジンオレンジ放出に関して観察されたp5RHHによるエンドソーム溶解に対するプロトンスポンジ効果のいくらかの寄与が存在することは完全に除外できないが、わずか2つのヒスチジン残基の必要性は、pHが粒子の解体及び後続の膜溶解ペプチドの放出を起動する兆候である。浸透圧破裂は、あるとすれば、副次的な役割を果たす可能性がある。
【0215】
実施例13.siRNAナノ粒子によるB16 GFP細胞におけるGFPの良好なノックダウン
p5RHHがGFP siRNAをB16-GFP細胞に送達する能力を検査した際、50nMのsiRNAでのGFP発現における強力な減少が、トランスフェクション24時間後、ウエスタンブロットにより観察された。(
図23A)。さらに、既知のエンドソーム溶解剤である50μMのクロロキンの存在下での細胞のトランスフェクションは、ノックダウンを改善しない。クロロキンによるさらなるノックダウンの欠如は、共焦点顕微鏡により視覚化される研究結果である、p5RHH自体がエンドソームコンパートメントからsiRNAを完全かつ効率的に放出することができることを検証する(
図23D、F)。
【0216】
p5RWR/siRNAナノ粒子のほぼ等しい取り込みにも関わらず(
図23B)、p5RWRは、クロロキンの存在下でもGFPノックダウンを誘発することができない(
図23A)。共焦点顕微鏡は、高程度のエンドソーム封入を明らかにし、クロロキンで処理されなければ(
図23E)、p5RWR/siRNAナノ粒子が細胞質に達しない(
図23C)ことを示唆する。クロロキンによるエンドソーム放出にも関わらず、GFPノックダウンが損なわれたままであるという事実は(
図23A)、RNA誘発発現停止複合体に対するsiRNAアクセス容易性が損なわれることを示し、TOPRO3結合及びインビトロでのゲル移動シフトアッセイにより観察されるp5RWRに基づくナノ粒子からのsiRNA放出が不良であることを示す(
図21A、B)。
【0217】
これらのデータは、p5RHH/siRNAナノ粒子が低pHに応答して解体する能力が細胞質へのsiRNA送達に重要であることを強調する。具体的には、ベクターからのsiRNA放出及びp5RHHによる同時エンドソーム溶解によるナノ粒子の解体は、遊離siRNAの細胞質コンパートメントへのアクセスをもたらす協調された事象である。良好なsiRNAトランスフェクションにおける協調されたsiRNA放出及びエンドソーム流出の本質的な役割は、周知である。例えば、エンドソームにおける未成熟なsiRNA放出は、エンドソームヒドラーゼによるsiRNA分解を可能にする。一方、siRNAに非常に強く結合するペプチドは、良好なRNAiを防止するとも仮定される。したがって、p5RHH/siRNAナノ粒子からのsiRNA放出は、最大mRNA分解のためにエンドソーム流出と同時でなければならない。
【0218】
実施例14.成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)モデルにおけるNFκB経路を標的とするsiRNAの高効率インビボトランスフェクション
アルブミン被覆されたp5RHH/siRNAナノ粒子の治療可能性は、HTLV-1誘発ATLLのマウスモデルである、F8細胞における標準及び非標準両方のNFκBシグナル伝達経路を標的とするsiRNAの高度に効率的なトランスフェクションにより示された。転写因子NFκBは、抗アポトーシスタンパク質の発現を駆動することによって化学療法に対する耐性を促進する、ATLLにおけるその中心的な役割により治療標的として選択された。小分子プロテアソーム阻害剤及びIKK複合体の阻害剤は、いくつかのATLL疾患モデルにおいてNFκBの活性化を減少させることができるが、それらの特異性及びインビボでNFκBを不活性化する能力に関する問題は、より具体的な治療薬の必要性を強調する。siRNAを介した標準及び非標準両方のNFκBシグナル伝達経路の直接阻害により提供される潜在的な相乗効果は、治療の成功に必要とされるNFκBシグナル伝達の良好な遮断のカギであり得る。
【0219】
siRNAは、標準経路のp65サブ単位及び非標準経路のp100/p52サブ単位を標的とするように選択された。トランスフェクション24時間後に行われたウエスタンブロットは、細胞がスクランブルされたsiRNA対照をトランスフェクトされた際には見られなかった両方のタンパク質の発現において、用量依存減少を明らかにした(
図24A、B)。トランスフェクション48時間後のアラマーブルーアッセイ(
図24C)は、細胞生存率における強力な減少がp65及びp100/p52siRNAの両方で記録されたため、インビトロでのこれらの経路のノックダウンが治療的に関連することを示す。さらに、p100/p52siRNAによる非標準NFκB経路の遮断(約100nMのIC
50)が、この細胞系において標準経路(約200nMのIC
50)の遮断よりも優れていることは明らかである。非標準経路は、抗アポトーシスタンパク質発現の促進において、標準経路よりも大きな役割を果たすと仮定され、ATLL細胞の増殖の調節により望ましい標的と考える。p5RHH媒介siRNA送達を利用する、本明細書に提示されるデータは、この仮説を確認するだけでなく、p65及びp100/p52両方のsiRNAを同時にパッケージングする単一のp5RHH/siRNA製剤により標準及び非標準両方のNFκB経路を標的とする場合の相乗応答も明らかにする。この2重標的p5RHH/siRNA製剤の使用は、NFκB遮断媒介細胞死を改善し、IC
50は約50nMである。インビトロでのRBC及びインビボでのエンドソーム膜を溶解する能力にも関わらず、スクランブルされたsiRNAによるトランスフェクションは、F8細胞のいずれの毒性ももたらさないことに留意することが重要である。発明者による研究は、メリチンのN末端切り詰めがその溶解能を2倍の規模で減少させることを示し(未公開の観察)、p5RHHが高濃度でエンドソームを溶解することができるように思われるが、p5RHHは、エンドドーム放出及び細胞質における希釈後は、安全である。組織培養におけるp5RHHの安全性を考えて、パイロット実験は、インビボ送達される場合のp5RHH/siRNAナノ粒子の腫瘍局在化を検査するために行われた。IVIS撮像及び共焦点顕微鏡は、1mg/kgの用量で自然発生ATLL腫瘍を保有するマウスに尾静脈注射により導入された場合の、Cy5.5標識された、スクランブルされたsiRNAの腫瘍送達を明らかにする(
図24D~G及び
図27)。p5RHH/Cy5.5 siRNAナノ粒子を注射されたマウスからの腫瘍は、周辺にCy5.5 siRNA蓄積を呈する一方、限られたCy5.5 siRNAは、腫瘍の中心で見られる(
図25)。
【0220】
NFκB発現自体を標的とするための以前の試みは、治療可能性が限られる、ネイキッドアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドまたはレンチウイルスshRNA発現の使用に重点を置いている。アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、非効率的であり、本明細書に提示されるsiRNA製剤よりも1桁大きいインビトロでのオリゴヌクレオチドを必要とする。一方、shRNA発現のウイルスベクターは、癌の誘発から飽和作用に関連する毒性の範囲に及ぶ、ヒトにおける試験に多くの課題を提示する。両方のNFκB経路を同時に標的にする能力により、現在のsiRNAアプローチは、NFκB標的siRNAの高度に効率的で低毒性のトランスフェクションにp5RHHを使用することにより、NFκB誘発により駆動されるATLLまたは他の疾患プロセスの治療のための相乗的戦略を示すと考えられる。
【0221】
実施例1~14の結論
要約すると、膜溶解ペプチドは、代替えのPTD媒介トランスフェクションに関連するsiRNA封入を防止することによってsiRNAの細胞質送達を促進するためのエンドソーム流出剤として採用することができる。最終的な大きさが約55nmのアルブミン安定化p5RHH/siRNA製剤が報告される。これらのナノ粒子は、マクロ飲作用を介して流体相取り込みにより形質膜陥入される。後続のエンドソーム酸性化は、遊離p5RHHの放出により引き起こされるsiRNA放出及びエンドソーム流出の同時発生を伴うpH媒介粒子解体の誘因を提供する(
図26)。ATLLのモデルにおいてp65及びp100/p52siRNAの同時トランスフェクションに利用される場合、p5RHHは、細胞生存率において相乗的減少を媒介し、さらなるインビボ試験の可能性を示唆する。p5RHH/siRNAナノ粒子がペプチド及びsiRNA放出をエンドソームと効率的に協調させる固有の能力は、様々な疾患基質におけるp5RHH媒介トランスフェクションの使用の可能性を予示する。さらに、p5RHHの作用機構の分析は、siRNAトランスフェクションのための今後のペプチドベクターのさらなる開発を導く可能性がある見解を提供する。
【0222】
実施例9~14の材料及び方法
ペプチド/siRNAナノ粒子の調製及び分析
メリチン誘導体p5RHH(VLTTGLPALISWIRRRHRRHC;配列番号1)及びp5RWR(VLTTGLPALISWIKRKRQQRWRRRR;配列番号55)は、Genscript(Piscataway,NJ)によって合成され、使用前にRNAse/DNAse遊離水(Sigma,St.Louis,MO)中10mMで溶解され、-80℃で、4μlのアリコートに保管された。p5RHH/siRNAトランスフェクション複合体を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)中1:200でp5RHHを希釈し、30秒間ボルテックスにかけ、続いて、siRNA(1×siRNA緩衝液(Thermo Scientific,Waltham,MA)中10μMのストック濃度)を添加して、100:1のペプチドとsiRNAとの比率を得、Eppendorf Thermomixer R中で振盪させながら、37℃で40分間インキュベートすることにより調製した。動物実験に関して、ペプチド及びsiRNAは、氷上で10分間、10倍高い濃度でインキュベートされた。湿式原子間力顕微鏡は、ARC Technologies(White Bear Lake,MN)により行われた。
【0223】
細胞培養
B16-F10(ATCC,Manassas,VA)細胞系を、10%のウシ胎仔血清(Gibco)で補足されたDMEM(Gibco,Carlsbad,CA)中、標準的な細胞培養条件下(加湿インキュベータにおいて37℃及び5%のCO2)で維持した。F8細胞を、前の刊行物に従い、10%のウシ胎仔血清で補足されたRPMI(Gibco)中で培養した。
【0224】
フローサイトメトリーによる取り込み阻害
飲食作用阻害剤の存在下、または不在下で、B16-F10細胞を、p5RHH(25nM)、FITC-トランスフェリン(5μg/ml,Life Technologies)または70kDa FITC-デキストラン(100μg/ml,Sigma)でパッケージングされたalexa488標識されたsiRNAと共に40分間インキュベートした。インキュベーション後、フローサイトメトリー分析のために、細胞をPBS中で3×洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(0.2%のFBS及び0.5mMのEDTAを含むHBSS)に再懸濁した。阻害剤は以下の通り使用された:EIPA(80μM,Sigma)、フィリピン(100μg/ml,Sigma)、及びPAO(10μM Sigma)。
【0225】
共焦点顕微鏡
p5RHHナノ粒子及び適切な取り込みマーカーと共に40分間または24時間インキュベートする前に、B16-F10細胞を、ガラススリップ上で一晩培養した。70kDa FITC-デキストラン(10mg/ml)またはFITC-トランスフェリン(25μg/ml)のいずれかの存在下で、p5RHH/Cy-3 siRNAナノ粒子を、200nMの最終siRNA濃度で添加した。インキュベーション後、細胞を、10分間、PBS中で3×、氷上で洗浄し、ガラススライド上に載置する前に4%のパラホルムアルデヒド(DAPIを含むVectashield封入剤,Vector Labs,Burlingame,CA)に固定した。Zeiss Meta510(Thornwood,NY)により、細胞を撮像した。
【0226】
GFPノックダウンの分析
B16 GFP細胞は、6ウェルプレート中、150,000細胞/ウェルで平板培養され、後に、1μMバフィロマイシンA1(DMSO中1mMストック、Sigma)の存在下、または不在下で、1mLの10%DMEM中50nMのsiRNAの最終濃度で12時間トランスフェクトされた。B16-GFP細胞がGFP特異的またはスクランブルされたsiRNAを含むp5RHH/siRNAナノ粒子をトランスフェクトされた24時間後、GFP蛍光分析のために、細胞を、トリプシン処理し、FACS緩衝液(0.2%のFBS及び0.5mMのEDTA)に再懸濁した。eGFP siRNA(センス:5’-GACGUAAACGGCCACAAGUUC-3;配列番号84’)をSigmaから購入した。スクランブルされたsiRNAを、Qiagen(Valencia,CA)から購入した。
【0227】
低pHでのsiRNA色素アクセス容易性
予め形成されたp5RHH/siRNAナノ粒子を、1:1000で希釈されたTOPRO3(Life Technologies)の存在下、示されるpHで30分間、ハンクスの平衡塩類溶液(HBSS,Gibco)中でインキュベートした。TOPRO3蛍光は、642nmでの励起及び661nmでの発光で、96ウェルプレート中で測定された。次いで、蛍光値はsiRNAのみの対照に正規化され、3つの独立した実験の平均として提示される。
【0228】
pH依存ゲル移動アッセイ
p5RHH/siRNAナノ粒子を、20%のTBE-PAGEゲル上で分解する前に、示されるpHで30分間、HBSS中でインキュベートした。siRNAは、1:10000に希釈された1×TBE(IBIScientific)中のSYBR GOLDで15分間染色することにより視覚化される。
【0229】
リソソーム妨害に関するアクリジンオレンジ染色
カバースリップ上で平板培養されたB16F10細胞を、15分間、10μMのアクリジンオレンジで充填し、100nMの最終siRNA濃度の10%のEMEM中のp5RHH/siRNAナノ粒子の存在下で12時間インキュベーションする前に、PBS中で3×洗浄した。あるいは、撮像前に15分間、細胞を100μMのクロロキン(Sigma)に曝露した。生存細胞を、Olympus BX610(Tokyo,Japan)の蛍光顕微鏡で視覚化した。
【0230】
RBC溶血
4℃で保管する前に、ウサギの赤血球(RBC)を、遠心分離及びPBS中で3×洗浄することにより、全血から単離した。溶血試験の前に、RBCを、pH適切HBSS中で3×洗浄し、1:5000で希釈した。次いで、pH特異的緩衝液中のRBCを、p5RHH/siRNAナノ粒子と共に12時間インキュベートした。RBC残余物を、遠心分離によりペレット化し、550nmのUV吸光度により上清のヘモグロビン含量を測定した。次いで、吸光度値は、p5RHHのみの対照による最大溶解に対して正規化され、3つの独立した実験の平均として提示される。
【0231】
F8細胞におけるNFκBノックダウンの分析
F8細胞は、200,000細胞/ウェルで、6ウェルプレート中で平板培養され、1mLの最終容量の様々なsiRNA濃度で、指定されるsiRNAをトランスフェクトされた。siGENOMEマウスNFκB(p65)siRNA5及びsiGENOMEマウスNFκB2(p100/p50)を、Dharmacon(Lafayette,CO)から購入した。スクランブルされたsiRNAを、Qiagen(Valencia,CA)から購入した。トランスフェクション24時間後、F8細胞を、Precision AKR-1000において、1000rpmでペレット化した。次いで、細胞ペレットを、1mMのPMSF及びコンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含む100μlのRIPA緩衝液(10mMのTris-HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1.0%のIgepalCA-630、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、1mMのEDTA、5%のグリセロール)に再懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。次いで、細胞溶解物を、4℃で5分間遠心分離し、上清を-20℃で保管した。TBS-T中の5%ウシ血清アルブミン(Sigma)で遮断する前に、溶解物をNupage Bis-Trisゲル(Life Technologies)上で分解し、0.22μmのニトロセルロースに移した。使用された一次抗体は、ウサギ抗p65(1:1000、Cell Signaling,Danvers,MA)、ウサギ抗p100/p50(1:1000、Cell Signaling)であった。二次抗体:抗ウサギHRP(1:5000,Santa Cruz Biotechnology)。ブロットは、ECLウエスタンブロット基質(Pierce,Rockford,IL)を使用して開発された。
【0232】
F8細胞生存率測定
トランスフェクション前に、F8細胞を、400μl中20,000細胞/ウェルで、24ウェルプレート中で12時間平板培養し、標準的な細胞培養条件下で培養した。p5RHH/siRNAナノ粒子を調製し、アラマーブルー(Life Technologies)を使用して生存率を測定する前に、600μlの最終容量で、48時間、細胞と共にインキュベートした。簡潔に、アラマーブルーを、細胞培養培地中に1:10で希釈し、2~4時間、細胞と共にインキュベートした。570nmでの励起、及び585nmでの発光による蛍光プレート読取装置(Varian Cary Eclipse,Agilent Technologies,Santa Clara,CA)で蛍光を測定した。
【0233】
動物実験
実験動物プロトコルは、ワシントン大学医学部の動物実験委員会(Animal Care Committee of the Washington University School of Medicine)によって承認された。自然発生腫瘍を有するトランスジェニックマウスは、Ratner labからの寄贈であった。パイロット実験のために進行性腫瘍を有するマウスを選び、屠殺24時間前に1mg/kgの単一用量を注射した。動物を生理食塩水で灌流し、IVIS撮像及び凍結切片のために腫瘍を切除した。
【0234】
実施例15.p5RHH細胞毒性.
B16 GFP細胞は、GFP特異的またはスクランブルされたsiRNAを含む増加濃度のp5RHH/siRNAナノ粒子をトランスフェクトされた。比較のため、B16 GFP細胞は、リポフェクタミン2000を使用して、増加濃度のGFP特異的またはスクランブルされたsiRNAもトランスフェクトされた。トランスフェクトされた細胞から抽出したRNAを、ノーザンブロット分析を使用して分析し、トランスフェクトされたB16細胞の正規化された生存率を決定した(
図28)。リポフェクタミン2000を使用したトランスフェクションとは対照的に(
図28B、D)、p5RHH/siRNAは、全ての試験した用量で安全であると決定された(
図28A、C)。
【0235】
実施例16.NFκB遮断はコラーゲン抗体誘発関節炎において関節炎の症状を緩和する。
アルブミン被覆されたp5RHH/siRNAナノ粒子の治療可能性は、コラーゲン抗体誘発マウスの関節炎モデルにおいて示された。簡潔に、本モデルは、モノクローナル抗体をコラーゲンIIに注射し、続いて、数日後、関節炎の症状を増強するために、リポ多糖を注射することを含む。コラーゲン抗体誘発マウスモデル及びsiRNAの投与は、
図29に記載される通りである。
【0236】
標準経路のp65サブ単位を標的とするsiRNAが使用された。スクランブルされたsiRNAは、対照として使用された。siRNAは、Cy5.5で標識された。各投与のsiRNAの濃度は、1mg/kgのsiRNAであった。3匹のマウスに生理食塩水を投与し、3匹のマウスにスクランブルされたsiRNAを投与し、4匹のマウスにp65siRNAを投与した。関節炎の重篤度は、足首の厚さのランク付け、関節炎スコア、ならびに0、3、4、6、8、及び10日目の体重によって決定された。
【0237】
図30に示される、標準経路のp65サブ単位を標的とするsiRNAを有するp5RHH/siRNA粒子を使用するNFκB遮断は、足首の厚さ(
図30A))及び関節炎スコア(
図30B)により測定されるように、コラーゲン抗体誘発関節炎を減少させる。IVIS撮像は、siRNAが動物の関節炎の脚に蓄積したことを示す(
図30C)。
【0238】
加えて、p65サブ単位を標的とするsiRNAを有するp5RHH/siRNAを使用して関節炎を治療する有効性を視覚化するために、超音波分子撮像が使用された。超音波撮像は、治療中の類似する組織についてサブボクセル解像度で、物理的組成(線維症、浮腫、炎症細胞等)及び組織の構成における変化を測定する(Hughes et al.,2011 J Acoust Soc Am.129:3756、Hughes 2011 IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control.58:2361-2369、Hughes et al.,2007 Ultrasound Med Biol.33:1236-1243、Hughes et al.,2007 Journal of the Acoustical Society of America.121:3542-3557、Hughes et al.,2013 J Acoust Soc Am.133:283-300、Hughes et al.,2009 Journal of the Acoustical Society of America.126:2350-2358)。
【0239】
エントロピー撮像は、脚の3つの骨が、生理食塩水(プラセボ)で処置した4日後、視認可能である(青または赤)ことを示す。脚の骨の3つはp65サブ単位を標的とするsiRNAを有するp5RHH/siRNAで処置された4日後、動物において視認可能であるが、それらのピクセル値は正常な背景に非常に近い(
図31)。
【0240】
実施例17.コラーゲン抗体誘発関節炎における炎症応答を抑制するためのsiRNAナノ粒子
この試験の目的は、siRNAナノ粒子がマウスにおけるコラーゲン抗体誘発関節炎における炎症応答を抑制する能力を示すためである。NFkB経路は、標準NFkB経路の主な転写調節因子であるp65サブ単位に対してsiRNAを組み込むことにより、炎症における中央チェックポイントとして標的にされる。ナノ粒子は通常の方法で調製され、関節腫脹が確立された後、3連続日用量で静脈内注射された。関節応答は経時的に測定され、材料の安全性を定義するために、いくつかの他の試験が行われた。
【0241】
関節炎の誘発及び治療:Arthrogen-CIAアテローム性モノクローナル抗体5-クローンカクテル(Chondrex,Inc.)で、コラーゲン抗体誘発関節炎モデル(CAIA)を使用して、関節炎を誘発した。6~8週齢の雄DBA/1Jマウス(Taconic)に、0日目に1.5mgの5-クローン抗体カクテル、そして3日目に50ugのLPSをi.p.注射した。初期関節炎が全てのマウスにおいて確立された4日目に始まって、動物は、毎日、生理食塩水、スクランブルされたRNA配列を有するナノ粒子、またはp-65siRNA(1mg/kg、尾静脈による静脈)の連続静脈注射を受けた。関節炎の臨床症状は、0~3のスケールで毎日評価された(0=腫脹または紅斑なし、1=わずかな腫脹または紅斑、2=適度な紅斑及び複数の指もしくは脚全体の腫脹、3=明白な紅斑及び脚全体の腫脹、3×4の最大スコア=1匹のマウス当り12)。ダイヤルカリパスにより、脚の厚さにおけるベースラインからの変化を毎日決定し、後脚2本の測定から、各マウスに関して、足首の厚さの平均変化を決定した。2日に1回、マウスを量り、ベースラインからの体重損失のパーセンテージを計算した。9日目に、マウスを屠殺し、分析のためにそれらの血液、脚、及び臓器を採取した。
【0242】
サイトカイン分析:1mlのPBS中で脚を均質化し、溶解物を遠心分離により取り除いた。製造者の推奨に従い、マウス炎症キット(BD Bioscience)を使用して、サイトメトリービーズアレイにより、脚の溶解物におけるTNF-α、IL-6及びMCP-1の濃度を測定した。製造者の推奨に従い、ELISA(R&D Systems)により、IL-1βを測定した。
【0243】
血液学パラメータ及び血清化学検査:10日目の血液は、下大静脈から採取され、WBC/分析血液像及び血清化学検査(肝臓及び腎臓機能)のために送られた。分析は、ワシントン大学比較医学部(Washington University Department of Comparative Medicine)によって行われた。
【0244】
ナノ粒子に対する免疫応答:標準的なELISAアッセイを使用して、総IgG及びIgMを測定した。簡潔に、96ウェルプレートを、ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology Associates,Inc.)またはヤギ抗マウスIgM(Southern Biotechnology Associates,Inc.)捕捉抗体(PBS中1ug/ml)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄し、PBS中1%のBSAで遮断した後、希釈したマウス血清(1:40,00~1:400,00希釈)をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、100ulのHRP抱合ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology Associates,Inc.)またはヤギ抗マウスIgM(Southern Biotechnology Associates,Inc.)抗体(PBS中1%のBSAにおいて1:3,000希釈)をプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、100μLの過酸化色素原溶液(R&D Systems)を各ウェルに添加し、SpectraMax Plus読取装置(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)で、発色現像を450nmで読み取った。精製されたマウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories)及びIgM(Rockland Immunochemicals)は、標準曲線を確立するために使用された。
【0245】
p5RHHペプチドまたはペプチド:siRNAナノ粒子に対するIgMまたはIgG特異的応答を測定するために、Immunlon 4 HBXプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,MA)を、2μMのp5RHHペプチド濃度の100μl/ウェルのp5RHHペプチドまたはsiRNA-p5RHHナノ粒子のいずれかと共に、4℃で一晩インキュベートした。プレートのウェルの表面に被覆された材料の量を決定するために、p5RHHは1つのトリプトファン残基を有するため、蛍光分光光度計(Varian Inc,Palo Alto,CA)を使用して、未結合のp5RHHペプチドまたはsiRNA-p5RHHナノ粒子が測定された。トリプトファン蛍光発光スペクトル(300nm~500nm)は、280nmでの励起後に測定された。標準曲線が生成され、未結合材料の量が標準曲線に対して計算された。ペプチド被覆されたプレートに関して、被覆されたペプチドは、2.21μg/mlの濃度を有し、siRNA-p5RHHナノ粒子(NP)被覆されたプレートに関して、ペプチドの濃度は3.58μg/mlであった。洗浄し、PBS中1%のBSAで遮断した後、希釈したマウス血清(1:10~1:100希釈)をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、続いて、上記のHRP抱合ヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology Associates,Inc.)またはヤギ抗マウスIgM(Southern Biotechnology Associates,Inc.)抗体を添加した。上記のように、過酸化色素原溶液(R&D Systems)を使用して、発色現像を行った。データは、直接吸光度(450nmのOD)として提示される。
【0246】
非特異的ナノ粒子取り込み:マウスに、200ulのHBSSまたはCy3標識されたペプチド:スクランブルされたRNA配列ナノ粒子を静脈注射した。30後、マウスを屠殺し、フローサイトメトリーにより細胞関連Cy3標識された粒子を分析するために、末梢血液白血球及び脾細胞を得た。特異的な共局在を探すために、Ly6G(好中球)及びLy6C(単球)でも、細胞を染色した。
【0247】
補体活性化:マウスに、200ulのペプチド:siRNAナノ粒子を静脈注射した。NP注射30分後、血液を下大静脈から10mM EDTA管に直接回収し、さらなるエクスビボ補体活性化を防止した。C3a ELISA用に回収された血液から新しい血漿を準備した。簡潔に、ラット抗マウスC3a(4μg/mL)モノクローナル抗体(BD Pharmingen)でプレートを一晩被覆した。試薬希釈液(PB中1%のBSA)で、室温で1時間遮断した後、プレートをELIS洗浄用緩衝液(PBS中0.05%(v/v)Tween 20)で3×洗浄し、試料(試薬希釈剤において1:100で希釈された100μLの同日の新しく得た血漿)と共に室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し(3×)、ビオチン化抗マウスC3a(250ng/mL)と共に室温で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをストレプトアビシン-ペルオキシダーゼ(400ng/mL;Sigma)と共に30分間インキュベートし、洗浄し、100μLの過酸化色素原溶液(R&D Systems)を各ウェルに添加し、SpectraMax Plus読取装置(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)で、発色現像を450nmで読み取った。標準曲線を確立するために、マウス組換えC3a(BD Pharmingen)を使用した。
【0248】
結果:足首の厚さ及び関節炎スコアの両方が、活性siRNAにより疾患プロセスの初期に減少するが、スクランブルsiRNAでは減少しない(
図32)。体重は群内で相違はなかった。脚の溶解物から得られた分子標的であるp65は、活性siRNAにより減少した(
図33)。広範なサイトカイン抑制が脚で観察され、上流NFkBチェックポイントの阻害と一致する。
【0249】
実験の最終日に行われた血液試験は、RBC、WBC(分析血液像を含む)、または血小板における変化を明らかにしなかった(
図34)。腎臓機能試験は、適切な血清化学検査または腎臓機能(
図35)における変化を明らかにせず、肝臓機能試験も変化がなかった(
図36)。補体活性化試験は、ナノ粒子療法に関連した大幅な減少を明らかにせず、先天性免疫活性化を避けることを示す(
図37)。脾細胞計数におけるわずかな上昇が観察され、存在した細胞の型において変化はなく、ナノ粒子に対する免疫応答性に対する最小限の作用を示す(
図38)。
【0250】
脾臓からのCD4+T細胞におけるCD3抗体を用いた抗原投与に対する未変性免疫応答性は、重要な免疫エフェクターに関して十分に保存され、患部関節における炎症の広範な局所阻害にも関わらず、全身性免疫応答性が維持されるだろうことを示す(
図39)。siRNAナノ粒子に対する抗体の短期誘発は観察されず、適応免疫刺激の欠如、及び連続注射後の薬剤に対する耐性を避ける可能性を示す(
図40)。ネイキッドsiRNAまたは完全に形成されたsiRNA粒子のいずれかに関して、免疫応答は観察されず、適応免疫刺激の欠如を確認した(
図41)。
【0251】
白血球によるナノ粒子複合体の関節への送達を除外するために、さもなければ、炎症プロセスの顕著な成分である、末梢循環における好中球及び単球による粒子の取り込みの欠如が、これらの細胞型と会合するナノ粒子からの最小限のシグナルのみを示すフローサイトメトリーにより確認された。これは、有力な標的細胞型が既に関節自体に内在し、関節に到達する前に末梢循環において阻害されないことを示唆する(
図42)。脾臓において、好中球及び単球が任意の顕著な程度まで粒子を取り込まないことも明らかであり、ナノ粒子が脾臓を避け、免疫応答を刺激せず、また活性脾細胞により炎症組織にも輸送されないことを確認する(
図43)。
【配列表】