(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ランスホルダ及び逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
B23K 7/10 20060101AFI20230215BHJP
B23K 7/00 20060101ALI20230215BHJP
F16K 15/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B23K7/10 Z
B23K7/00 W
F16K15/02
(21)【出願番号】P 2021113055
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2022-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180254
【氏名又は名称】酸素アーク工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 明彦
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-174000(JP,U)
【文献】特開2005-16593(JP,A)
【文献】特開2001-227661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00- 7/10
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に、酸素溶断用ランスパイプの基端部を保持するためのヘッドを有し、基端に、酸素ガス用の開閉弁を有する筒形のホルダ本体と、
前記ホルダ本体内に挿入される逆流防止弁とを備えるランスホルダであって、
前記逆流防止弁は、弁本体と、この弁本体を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納すると共に、基端に酸素ガス流入孔を有し、先端に酸素ガス流出孔を有する弁収納室とを備え、
前記弁収納室は、前記酸素ガス流出孔の孔縁部分から前記酸素ガス流入孔側に向けて伸びる筒状部を含み、
前記筒状部の内周面には、当該内周面から前記酸素ガス流出孔側に向けて伸びる受板が複数設けられ、前記複数の受板は、前記逆流防止弁を前記酸素ガス流出孔が上になる鉛直状態として前記酸素ガス流出孔の上方から前記筒状部を鉛直下向きに見たときに前記筒状部の内部に隙間は見られないが、酸素ガスの流路は確保されるように配置され、
前記筒状部の外周面と前記弁収納室の内周面との間の隙間部分にはバネ部材が装着され、
前記弁本体は、前記バネ部材により前記酸素ガス流入孔側に向けて付勢され、前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入しないときは当該酸素ガス流入孔を閉止し、
前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入すると、前記弁本体は酸素ガスの圧力によって前進して前記筒状部の基端部に突き当たり、酸素ガスは前記弁本体に設けられた酸素ガス流通部及び前記筒状部の内部を通過して前記酸素ガス流出孔から流出する、ランスホルダ。
【請求項2】
先端に、酸素溶断用ランスパイプの基端部を保持するためのヘッドを有し、基端に、酸素ガス用の開閉弁を有する筒形のホルダ本体を備えるランスホルダの前記ホルダ本体に挿入される逆流防止弁であって、
弁本体と、この弁本体を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納すると共に、基端に酸素ガス流入孔を有し、先端に酸素ガス流出孔を有する弁収納室とを備え、
前記弁収納室は、前記酸素ガス流出孔の孔縁部分から前記酸素ガス流入孔側に向けて伸びる筒状部を含み、
前記筒状部の内周面には、当該内周面から前記酸素ガス流出孔側に向けて伸びる受板が複数設けられ、前記複数の受板は、前記逆流防止弁を前記酸素ガス流出孔が上になる鉛直状態として前記酸素ガス流出孔の上方から前記筒状部を鉛直下向きに見たときに前記筒状部の内部に隙間は見られないが、酸素ガスの流路は確保されるように配置され、
前記筒状部の外周面と前記弁収納室の内周面との間の隙間部分にはバネ部材が装着され、
前記弁本体は、前記バネ部材により前記酸素ガス流入孔側に向けて付勢され、前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入しないときは当該酸素ガス流入孔を閉止し、
前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入すると、前記弁本体は酸素ガスの圧力によって前進して前記筒状部の基端部に突き当たり、酸素ガスは前記弁本体に設けられた酸素ガス流通部及び前記筒状部の内部を通過して前記酸素ガス流出孔から流出する、逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化反応熱を利用して対象材を切断あるいは穿孔する際に用いられる酸素溶断用ランスパイプを保持するためのランスホルダ、及びこのランスホルダに使用される逆流防止弁に関する。なお、以下本明細書では、「酸素溶断用ランスパイプ」を単に「ランスパイプ」という。
【背景技術】
【0002】
従前より、ガス切断や機械的切断では困難を伴う対象材(板厚の厚い鋼材など)を切断あるいは穿孔する際には、酸素溶断装置を用いた溶断を行っている。
【0003】
酸素溶断装置は、内孔に酸素が送り込まれた金属製のランスパイプに対して、外部より一定以上の熱源を先端部に与えて、ランスパイプを溶融させ、内孔に送り込まれている酸素とランスパイプとで、連続的に酸化反応を起こさせて自己燃焼させ、その先端部の酸化反応熱によって対象材(被溶断物)を切断あるいは穿孔する溶断装置であり、対象材を溶断するランスパイプと、ランスパイプの基端部を保持するランスホルダと、酸素供給源である酸素ボンベと、ランスパイプが保持されたランスホルダと酸素ボンベとを連結し、ランスパイプに酸素を案内する酸素ホースとを備えている。
【0004】
このように酸素溶断装置においては、ランスパイプの先端から酸素ガスを流出させながら対象材(被溶断物)を切断あるいは穿孔するが、その切断あるいは穿孔する部分の圧力がランスパイプの先端からの酸素ガス流出圧力より高くなると、溶融した被溶断物がランスパイプ内及びランスホルダ内を逆流し、その逆流溶融物が酸素ホースにまで至ると爆発を生じるおそれがある。そこで従前より、逆流防止弁を備えるランスホルダが知られている(例えば特許文献1)。
【0005】
図7に、特許文献1に開示されている逆流防止弁を模式的に示している。なお、
図7(a)には酸素ガスがランスパイプの先端から流出する正常流時の状態を示し、
図7(b)は逆流溶融物が逆流する逆流時の状態を示している。
【0006】
図7に示す逆流防止弁100は、平板状の弁本体110と、この弁本体110を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納する弁収納室120とを備える。弁本体110は、
図8に示すようにその周縁部111の四隅に切欠き111aを有する。一方、弁収納室120は、基端に酸素ガス流入孔121を有し、先端に酸素ガス流出孔122を有する。また弁収納室120は、
図7(a)に示す正常流時において弁本体110の周縁部111と当接する突起部123を有する。すなわち、
図7(a)に示す正常流時においては、酸素ガス流入孔121から流入する酸素ガスは、弁本体110の周縁部111の切欠き111aを通過し、酸素ガス流出孔122から流出し、ランスパイプ60へ供給される。他方、
図7(b)に示す逆流時においては、弁本体110は逆流溶融物の流れによって後方に移動し、この弁本体110の中央部112が酸素ガス流入孔121を閉止する。これにより、逆流溶融物が酸素ガス流入孔121を通過して更に逆流することを阻止できる。
【0007】
このように逆流防止弁100は、正常流時には酸素ガスを流通させ、逆流時には逆流溶融物の更なる逆流を阻止できる。しかし、ランスパイプは通常下向きの状態(ランスパイプ先端がランスホルダより下方に位置する状態)で使用されるところ、この下向きの状態で酸素ガスの供給を止めた場合において、溶融物側(ランスパイプ先端側)からわずかな風圧程度の圧力が発生した場合、その圧力は弁本体110を移動(上昇)させるに足りる圧力とならず、火粉等の軽量の溶融物が風圧(溶融物側からの上昇気流)に乗って逆流を起こし、弁本体110の隙間(切欠き111a)を通過してランスホルダ側に進入するおそれがある。酸素ガスの供給を止めていてもランスホルダ内には酸素ガスが残留しているから、そこに火粉等が進入すると爆発を生じるおそれがある。
【0008】
一方、ランスパイプは上向きの状態で使用される場合もあるが、この場合、酸素ガスを供給していても、所定以上の重量を有する溶融物(クリンカ等)がランスパイプ先端から落下(逆流)してきて、弁本体110の隙間(切欠き111a)を通過してランスホルダ側に進入するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ランスパイプの使用状態にかかわらず逆流防止効果を確実に発揮できる逆流防止弁、及びその逆流防止弁を備えるランスホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、次のランスホルダが提供される。
先端に、酸素溶断用ランスパイプの基端部を保持するためのヘッドを有し、基端に、酸素ガス用の開閉弁を有する筒形のホルダ本体と、
前記ホルダ本体内に挿入される逆流防止弁とを備えるランスホルダであって、
前記逆流防止弁は、弁本体と、この弁本体を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納すると共に、基端に酸素ガス流入孔を有し、先端に酸素ガス流出孔を有する弁収納室とを備え、
前記弁収納室は、前記酸素ガス流出孔の孔縁部分から前記酸素ガス流入孔側に向けて伸びる筒状部を含み、
前記筒状部の内周面には、当該内周面から前記酸素ガス流出孔側に向けて伸びる受板が複数設けられ、前記複数の受板は、前記逆流防止弁を前記酸素ガス流出孔が上になる鉛直状態として前記酸素ガス流出孔の上方から前記筒状部を鉛直下向きに見たときに前記筒状部の内部に隙間は見られないが、酸素ガスの流路は確保されるように配置され、
前記筒状部の外周面と前記弁収納室の内周面との間の隙間部分にはバネ部材が装着され、
前記弁本体は、前記バネ部材により前記酸素ガス流入孔側に向けて付勢され、前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入しないときは当該酸素ガス流入孔を閉止し、
前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入すると、前記弁本体は酸素ガスの圧力によって前進して前記筒状部の基端部に突き当たり、酸素ガスは前記弁本体に設けられた酸素ガス流通部及び前記筒状部の内部を通過して前記酸素ガス流出孔から流出する、ランスホルダ。
【0012】
本発明の一観点によれば、次の逆流防止弁が提供される。
先端に、酸素溶断用ランスパイプの基端部を保持するためのヘッドを有し、基端に、酸素ガス用の開閉弁を有する筒形のホルダ本体を備えるランスホルダの前記ホルダ本体に挿入される逆流防止弁であって、
弁本体と、この弁本体を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納すると共に、基端に酸素ガス流入孔を有し、先端に酸素ガス流出孔を有する弁収納室とを備え、
前記弁収納室は、前記酸素ガス流出孔の孔縁部分から前記酸素ガス流入孔側に向けて伸びる筒状部を含み、
前記筒状部の内周面には、当該内周面から前記酸素ガス流出孔側に向けて伸びる受板が複数設けられ、前記複数の受板は、前記逆流防止弁を前記酸素ガス流出孔が上になる鉛直状態として前記酸素ガス流出孔の上方から前記筒状部を鉛直下向きに見たときに前記筒状部の内部に隙間は見られないが、酸素ガスの流路は確保されるように配置され、
前記筒状部の外周面と前記弁収納室の内周面との間の隙間部分にはバネ部材が装着され、
前記弁本体は、前記バネ部材により前記酸素ガス流入孔側に向けて付勢され、前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入しないときは当該酸素ガス流入孔を閉止し、
前記酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入すると、前記弁本体は酸素ガスの圧力によって前進して前記筒状部の基端部に突き当たり、酸素ガスは前記弁本体に設けられた酸素ガス流通部及び前記筒状部の内部を通過して前記酸素ガス流出孔から流出する、逆流防止弁。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ランスパイプの使用状態にかかわらず逆流防止効果を確実に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態であるランスホルダを示す図で、(a)は組立図、(b)分解図。
【
図2】本発明の一実施形態である逆流防止弁を模式的に示す図で、(a)は酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入している状態の断面図、(b)は酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入していない状態の断面図。
【
図3】
図2に示す逆流防止弁を酸素ガス流出孔が上になる鉛直状態として、酸素ガス流出孔の上方から筒状部を鉛直下向きに見た模式図。
【
図4】
図2の逆流防止弁に使用されている弁本体の平面図。
【
図5】受板の配置形態の他の形態を示す断面図(酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入している状態)。
【
図6】受板の配置形態の更に他の形態を示す断面図(酸素ガス流入孔から酸素ガスが流入している状態)。
【
図7】特許文献1に開示されている逆流防止弁を模式的に示す図で、(a)は正常流時の断面図、(b)は逆流時の断面図。
【
図8】
図7の逆流防止弁に使用されている弁本体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態であるランスホルダを示している。
このランスホルダは筒形のホルダ本体10を備え、このホルダ本体10は、その先端に図示しないランスパイプの基端部を保持するためのヘッド11を有し、その基端に酸素ガス用の開閉弁12を有する。また、ホルダ本体10内には、先端側から順に、円筒状の金属カラー20、円筒状のゴムパッキン30、及び逆流防止弁40が挿入されている。
このランスホルダでは、ヘッド11をホルダ本体10の先端にねじ込むことにより、金属カラー20を介してゴムパッキン30を圧縮して、このゴムパッキン30に挿入されているランスパイプを保持し、かつ酸素ガスの漏れを防止する。なお、このときランスパイプは、その基端が逆流防止弁40の先端側端面に突き当たる状態で保持される(
図2参照)。また、酸素ガスは、酸素ホース50より開閉弁12及び逆流防止弁40を介してランスパイプに供給される。
【0016】
図2に、本発明の一実施形態である逆流防止弁40を模式的に示している。
この逆流防止弁40は、弁本体41と、弁本体41を酸素ガスの流れ方向に沿って前後に移動可能に収納する弁収納室42とを備える。また、弁収納室42は、基端に酸素ガス流入孔42aを有し、先端に酸素ガス流出孔42bを有する。更に、弁収納室42は、酸素ガス流出孔42bの孔縁部分から酸素ガス流入孔側に向けて伸びる筒状部42cを含む。そして筒状部42cの内周面には、当該内周面から酸素ガス流出孔42b側に向けて伸びる受板43が複数(本実施形態では2枚)設けられている。2枚の受板43は、
図3に模式的に示すように、逆流防止弁40を酸素ガス流出孔42bが上になる鉛直状態として酸素ガス流出孔42bの上方から筒状部42cを鉛直下向きに見たとき(以下「鉛直視」という。)には筒状部42cの内部に隙間は見られないが、
図2に示すように酸素ガスの流路は確保されるように配置されている。
【0017】
筒状部42cの外周面と弁収納室42の内周面との間の隙間部分Sにはバネ部材としてコイルバネ44が装着されている。そして弁本体41は、コイルバネ44により酸素ガス流入孔42a側に向けて付勢されている。本実施形態において弁本体41は、
図4に示すように十字形の平板からなり、その十字形の4つの周縁部41aの間が酸素ガス流通部41bとなっている。そして、コイルバネ44が弁本体41の4つの周縁部41aに突き当たることで、弁本体41は酸素ガス流入孔44a側に向けて付勢されている。なお、弁本体41とコイルバネ44とは連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。
【0018】
このように弁本体41は、コイルバネ44により酸素ガス流入孔42a側に向けて付勢されていることから、開閉弁12(
図1参照)が閉じられて酸素ガス流入孔42aから酸素ガスが流入しないときは、
図2(b)に示すように弁本体41は酸素ガス流入孔42aを閉止する。具体的には、弁本体41の中央部41c(
図4参照)が酸素ガス流入孔42aを閉止する。一方、開閉弁12(
図1参照)が開けられて酸素ガス流入孔42aから酸素ガスが流入すると、
図2(a)に示すように弁本体41は酸素ガスの圧力によって前進して筒状部42cの基端部に突き当たり停止する。この状態において酸素ガスは、弁本体41の酸素ガス流通部41b(
図4参照)及び筒状部42cの内部を通過して、酸素ガス流出孔42bから流出する。なお、
図2では酸素ガスが流通する酸素ガス流通部41bに相当する部分を模式的に破線で囲んでいる。後述する
図5及び
図6においても同様である。因みに、弁本体41の前進は筒状部42cの基端部に突き当たることで規制されるから、弁本体41が過度に前進してコイルバネ44が過度に縮むことを防止でき、これによりコイルバネ44の耐久性を向上させることができる。
【0019】
ここで、上述の通りランスパイプは通常下向きの状態で使用されるところ、この下向きの状態で酸素ガスの供給を止めたとしても、弁本体41はコイルバネ44により酸素ガス流入孔42a側に向けて付勢されているから、弁本体41は酸素ガス流入孔42aを閉止したままとなる。したがって、この下向きの状態で酸素ガスの供給を止めた場合において、溶融物側(ランスパイプ先端側)からわずかな風圧程度の圧力が発生したとしても、酸素ガス流入孔42aが弁本体41によって閉止されているから、火粉等の軽量の溶融物が風圧(溶融物側からの上昇気流)に乗って逆流防止弁40内へ逆流することを抑制できる。また、火粉等の軽量の溶融物が逆流防止弁40内へ逆流してきたとしても、酸素ガス流入孔42aが弁本体41によって閉止されているから、それ以上の逆流を阻止することができる。
【0020】
また、上述の通りランスパイプは上向きの状態で使用される場合もあり、この場合、酸素ガスを供給していても所定以上の重量を有する溶融物(クリンカ等)がランスパイプ先端から落下(逆流)して来ることがあるが、本実施形態では、筒状部42cの内周面から酸素ガス流出孔42b側に向けて伸びる受板43が2枚設けられているから、各受板43と筒状部42cの内周面との間に形成されているポケット部42dにより溶融物(クリンカ等)を捕集することができる。更に2枚の受板43は鉛直視において筒状部42cの内部に隙間が見られないように配置されているから、溶融物(クリンカ等)が筒状部42cを通過して逆流することを抑制できる。
【0021】
なお、
図2(a)に示す使用状態(酸素ガス供給状態)において、
図7(b)に示したような通常の逆流が生じた場合、その逆流溶融物の流れによる圧力が酸素ガスの流れによる圧力を上回り、しかも弁本体41にはコイルバネ44による付勢力も作用しているから、弁本体41は直ちに後方に移動して酸素ガス流入孔42aを閉止する。このように逆流防止弁40は、通常の逆流に対しても逆流防止効果を確実に発揮できる。
【0022】
以上の通り、逆流防止弁40はランスパイプの使用状態にかかわらず逆流防止効果を確実に発揮できる。
【0023】
図5及び
図6に、受板43の配置形態の他の形態を示している。
図2に示した受板43の配置形態と共に説明すると、
図2の形態では2枚の受板43をそれぞれ傾斜角度θ≒40°で互い違いに配置している。受板43が酸素ガスの流れを阻害しないようにするためには傾斜角度θは45°以下であることが好ましい。
図5の形態では酸素ガスの流れをよりよくするために、一方の受板43の傾斜角度θをより鋭角(30°以下)にしている。また、他方の受板43の傾斜角度θも鉛直視において筒状部42cの内部に隙間ができない範囲でできるだけ鋭角にしている。
図6の形態では3枚の受板43を配置しており、そのうち2枚は筒状部42cの先端部分において対称に配置している。これにより酸素ガスの流れが中心に集まり、安定かつ集中した酸素ガスの流れを作ることができる
なお、受板43の配置形態は、
図2、
図5及び
図6の形態には限定されない。要するに、複数の受板43を、筒状部42cの内周面から酸素ガス流出孔42b側に向けて伸び、かつ鉛直視において筒状部42cの内部に隙間が見られないように配置すればよい。
【符号の説明】
【0024】
10 ホルダ本体
11 ヘッド
12 開閉弁
20 金属カラー
30 ゴムパッキン
40 逆流防止弁
41 弁本体
41a 周縁部
41b 酸素ガス流通部
41c 中央部
42 弁収納室
42a 酸素ガス流入孔
42b 酸素ガス流出孔
42c 筒状部
42d ポケット部
43 受板
44 コイルバネ(バネ部材)
50 酸素ホース
60 ランスパイプ
S 隙間部分