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  • 特許-生活臭用消臭剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】生活臭用消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20230215BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230215BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230215BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/26 A
B01J20/30
B01J20/28 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021172510
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2017219555の分割
【原出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2022009369
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391034938
【氏名又は名称】大原パラヂウム化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】脇 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上林 ▲祥▼晃
(72)【発明者】
【氏名】高松 幸子
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502041(JP,A)
【文献】特開2012-012696(JP,A)
【文献】特開2001-162172(JP,A)
【文献】特開平11-107162(JP,A)
【文献】特表2014-500143(JP,A)
【文献】特開2008-49686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00-20/34
D04H 1/407
B32B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子であり、その細孔口径が0.6~1.0nmの範囲内にある多孔性配位高分子を含み、かつ生活臭消臭性または抗菌性もしくは抗ウイルス性を有する成形品の製造方法であって、
通気性のある薄膜材料に、溶媒中にバインダー樹脂を含有する処理液(但し、前記多孔性配位高分子を含むものを除く。)を塗布する工程、および
上記処理液が塗布された薄膜材料を乾燥後、前記多孔性配位高分子の当該薄膜材料への付着量を0.05~20g/m の範囲内として、前記多孔性配位高分子または前記多孔性配位高分子を含む組成物(但し、バインダー樹脂を含むものを除く。)を当該薄膜材料上に散布する工程、
を含むことを特徴とする、前記成形品の製造方法。
【請求項2】
金属イオンが、銅イオンである、請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
有機配位子が、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルである、請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
多孔性配位高分子が、ガラス転移点(Tg)が70℃以下のポリマーと共に複合体を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
生活臭が、タバコ臭、動物臭、排泄臭、生ごみ臭、または汗臭である、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
処理液の溶媒が水である、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
薄膜材料が、繊維製品、不織布、フィルター、またはシートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
成形品が、繊維、繊維製品、樹脂成形品、またはフィルターである、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に消臭用組成物の技術分野に属する。本発明は、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)を含有することを特徴とする消臭剤に関するものである。また、多孔性配位高分子(PCP)を含有することを特徴とする抗菌剤ないし抗ウイルス剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔性配位高分子(PCP)は、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)とも言われ、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して人工的に合成された多孔性物質である。金属イオンが有機配位子を架橋することによって、フレームワークが構築され、このフレームワーク内の空隙が分子を取り込む空間として機能する。
【0003】
従来の多孔性物質としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭などの天然の無機的なものを挙げることができる。それぞれ、分離、吸蔵、吸着、排出といった細孔機能を有しているが、微細な細孔の制御が困難であり、何かと制限を受ける。この点、PCPは、分子設計によって様々な多孔性構造のものを合成することができ、非常に複雑な構造のものや、高機能ないし多機能な多孔性物質を構築することができる。そのため、PCPは、ガス(水素、メタン、CO2など)の吸蔵;分子やイオンの選択貯蔵;異性体分離などの分離;酸化反応、付加反応、水素化反応などのための固体触媒;徐放;隔離;輸送;ナノ容器;センサーなど幅広い応用が期待されている。
【0004】
一方、タバコ臭、動物臭、排泄臭などの生活臭は、家庭内や職場内、公共施設といった生活環境に溢れている。臭いによっては社会問題となることもある。高齢化に伴い排泄物の処理が問題となるが、同時に排泄臭の問題も惹起する。タバコ臭や動物臭についても、ヒトによっては耐え難いものがある。その他の生活臭にしても、生活環境において快適に過ごすためには、できれば除去することが望まれる。
これら生活臭を除去する手段の一つとして、従来からゼオライト、シリカゲル、活性炭といった多孔性物質が用いられている。しかし、このような天然の多孔性物質では、十分な消臭効果があるとは必ずしも言い難い。
【0005】
人工の多孔性物質であるPCP(MOF)についても、それを用いて悪臭を閉じ込める方法が特許文献1に開示されている。特許文献1には、悪臭として、糞便集や口臭、タバコの煙などが挙げられ、MOFが家庭用消臭剤として使用しうることが記載されている。なお、当該MOFが抗菌剤ないし抗ウイルス剤として使用しうることは、特許文献1には記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2007/035596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、PCP(MOF)を家庭用消臭剤として用い得ることは記載されている。
本発明は、PCP(MOF)を用いた、生活臭に対してより高い消臭性能を有しうる新規な消臭剤を提供することを主な課題とする。また、かかる消臭剤を含む繊維、フィルターなどの成形品を提供することなども課題とする。
更には、本発明は、PCP(MOF)を用いた新規な抗菌剤または抗ウイルス剤を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、細孔の大きさが一定範囲のPCPを用いることにより、生活臭に対してより高い消臭性能を有しうることを見出し、本発明を完成するに到った。また、PCPが抗菌性等をも有しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明としては、例えば、下記を挙げることができる。
【0010】
[1]金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子であって、その細孔口径が0.6~1.0nmの範囲内にある多孔性配位高分子を含むことを特徴とする、生活臭用消臭剤。
[2]金属イオンが、銅イオンである、上記[1]に記載の生活臭用消臭剤。
[3]有機配位子が、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルである、上記[1]または[2]に記載の生活臭用消臭剤。
[4]多孔性配位高分子が、ガラス転移点(Tg)が70℃以下のポリマーと共に複合体を形成している、上記[1]~[3]いずれか一項に記載の生活臭用消臭剤。
[5]生活臭が、タバコ臭、動物臭、排泄臭、生ごみ臭、または汗臭である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の生活臭用消臭剤。
【0011】
[6]上記[1]~[5]いずれか一項に記載の生活臭用消臭剤を含むことを特徴とする、成形品。
[7]成形品が、繊維、繊維製品、樹脂成形品、またはフィルターである、上記[6]に記載の成形品。
【0012】
[8]金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子を含むことを特徴とする、抗菌剤または抗ウイルス剤。
[9]多孔性配位高分子の細孔口径が、0.6~1.0nmの範囲内にあるものである、上記[8]に記載の抗菌剤または抗ウイルス剤。
[10]金属イオンが、銅イオンである、上記[8]または[9]に記載の抗菌剤または抗ウイルス剤。
[11]有機配位子が、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルである、上記[8]~[10]いずれか一項に記載の抗菌剤または抗ウイルス剤。
[12]多孔性配位高分子が、ガラス転移点(Tg)が70℃以下のポリマーと共に複合体を形成している、上記[8]~[11]いずれか一項に記載の抗菌剤または抗ウイルス剤。
【0013】
[13]上記[8]~[12]いずれか一項に記載の抗菌剤または抗ウイルス剤を含むことを特徴とする、成形品。
[14]成形品が、繊維、繊維製品、樹脂成形品、またはフィルターである、上記[13]に記載の成形品。
【0014】
[15]金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子であ、その細孔口径が0.6~1.0nmの範囲内にある多孔性配位高分子を含み、かつ生活臭消臭性または抗菌性もしくは抗ウイルス性を有する成形品の製造方法であって、
通気性のある薄膜材料に、溶媒中にバインダー樹脂を含有する処理液(但し、前記多孔性配位高分子を含むものを除く。)を塗布する工程、および
上記処理液が塗布された薄膜材料を乾燥後、前記多孔性配位高分子または前記多孔性配位高分子を含む組成物(但し、バインダー樹脂を含むものを除く。)を散布する工程、
を含むことを特徴とする、前記成形品の製造方法。
[16]金属イオンが、銅イオンである、上記[15]に記載の成形品の製造方法。
[17]有機配位子が、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルである、上記[15]または[16]に記載の成形品の製造方法。
[18]多孔性配位高分子が、ガラス転移点(Tg)が70℃以下のポリマーと共に複合体を形成している、上記[15]~[17]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
[19]生活臭が、タバコ臭、動物臭、排泄臭、生ごみ臭、または汗臭である、上記[15]~[18]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
[20]処理液の溶媒が水である、上記[15]~[19]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
[21]薄膜材料が、繊維製品、不織布、フィルター、またはシートである、上記[15]~[20]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
[22]成形品が、繊維、繊維製品、樹脂成形品、またはフィルターである、上記[15]~[21]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の消臭剤ないし成形品は、生活臭を瞬時に消臭するのに優れる。また、本発明によれば、菌ないしウイルスを効果的に抑制することができる。したがって、本発明によれば、生活臭の消臭と抗菌・抗ウイルスとを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験例1等で用いた器具(改造した検知管)の写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1 本発明の生活臭用消臭剤
本発明の生活臭用消臭剤(以下、「本発明消臭剤」という。)は、金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子であって、その細孔口径が0.6~1.0nmの範囲内にある多孔性配位高分子を含むことを特徴とする。
【0018】
1.1 多孔性配位高分子(PCP)について
本発明消臭剤は、細孔口径が0.6~1.0nmの範囲内にある多孔性配位高分子を含む。かかる多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる。
【0019】
多孔性配位高分子の細孔口径は、IUPACの定義によるマイクロポアの領域である0.6~1.0nmの範囲内であるが、0.7~0.9nmの範囲内が好ましく、0.9nmがより好ましい。当該細孔口径(直径)は、ガス/蒸気吸着量測定装置より測定される口径値であって、例えば、マイクロトラック・ベル社のBELSORP-maxにより測定することができる。当該細孔口径が0.6nmより小さくても、1.0nmより大きくても十分な瞬間消臭能は得られ難い。
本発明消臭剤における多孔性配位高分子(金属イオン、有機配位子)は、上記細孔口径を有すれば特に制限されない。
【0020】
1.1.1 金属イオン
多孔性配位高分子を構成しうる金属イオンとしては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh+、Ir2+、Ir+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Ag+、Au+、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As+、Sb5+、Sb3+、Sb+、Bi5+、Bi3+、Bi+が挙げられる。この中、銅イオンが特に好ましい。
【0021】
1.1.2 有機配位子
多孔性配位高分子を構成しうる有機配位子は、金属イオンと配位可能な複数の官能基を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を含み、さらに金属イオンと配位可能な1つの官能基を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を併用してもよい。
【0022】
有機配位子の金属イオンに配位可能な前記官能基は、1つの芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物に対し1~5個、好ましくは2~4個、より好ましくは2~3個含まれる。このような金属イオンに配位可能な官能基としては、グリシジル基、COOH、無水カルボン酸基、CS2H、OH、SH、SO、SO2、SO3H、NO2、-S-、-SS-、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、C(CN)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3、NH2、NHR、NR2、芳香環を構成する窒素原子(式中、RはC1~C5アルキル基またはアリール基を示す)が挙げられる。芳香環を構成する窒素原子とは、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フェナントロリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、プリン、ビピリジン、テルピリジンなどの環内窒素原子を意味する。
【0023】
芳香族化合物は、5または6員の芳香族炭化水素環からなる単環または多環系の化合物を意味し、具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、トリフェニル、アセナフチレン、アセナフテン、テトラヒドロナフタレン、クロマン、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレン、ピレン、インダン、インデンおよびフェナントレンが挙げられる。
【0024】
脂肪族化合物としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の炭素数1~12の脂肪族化合物が挙げられる。
【0025】
脂環式化合物としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが挙げられる。
【0026】
ヘテロ芳香族化合物は、N、OおよびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む、5または6員の芳香環からなる単環または多環系の化合物を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環がヘテロ芳香環であればよい。具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾ[b]チオフェンおよびベンズイミダゾールが挙げられる。
【0027】
ヘテロ環式化合物としては、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、メチルピペラジン、テトラヒドトフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0028】
芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物は、金属イオンと配位可能な官能基の他に1~5個、好ましくは1~3個、特に1~2個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シアノ、ニトロ、メチレンジオキシ、アセチルアミノ、カルバモイル、アセチル、ホルミルが挙げられる。
【0029】
多孔性配位高分子を構成する有機配位子の具体例としては、ピリジン、4,4’-ビピリジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、2-アミノプロパン、トリエタノールアミン、エチルブチルアミン、ピペリジン、シクロヘキシルアミン、2-メチルピリジン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、モルホリン、アニリン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,3,5-トリアジン、イミダゾール、ピラジン、メタノール、ジヒドロキシメタン、トリヒドロキシメタン、テトラヒドロキシメタン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,1,2,2-テトラヒドロキシエタン、1-プロパノール、2-プロパノール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、1,1,3,3-テトラヒドロキシプロパン、アリルアルコール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,1,4,4-テトラヒドロキシブタン、n-ペンタノール、sec-ペンタノール、イソペンタノール、tert-ペンタノール、ネオペンタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,3,6-トリヒドロキシヘキサン、シクロヘキサノール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼン、チオメタン、チオエタン、チオプロパン、チオシクロヘキサン、チオベンゼン、1,3-ジチオプロパン、1,4-ジチオプロパン、1,4-ジチオベンゼン、1,3,5-トリチオベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、1,3,5-トリシアノベンゼン、1,4-ブタンジカルボン酸、酒石酸、グルタル酸、蓚酸、4-オキソピラン-2,6-ジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1、2-ベンゼンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノフェニルメタン-3,3′-ジカルボン酸、キノリン-3,4-ジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-4,4’-ジカルボン酸、ペリーレン-3,9-ジカルボン酸、ペリーレンジカルボン酸、プルリオールE200-ジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ペンタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-1,1’-ジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3’-ジカルボン酸、1,4-ビス-(フェニルアミノ)-ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,1’-ビナフチル-8,8’-ジカルボン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、1-アニリノアントラキノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン-250-ジカルボン酸、1,4-ビス-(カルボキシメチル)-ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)フェニル-3-(4-クロロ)フェニルピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソ-イミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン-1,8-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジカルボン酸、O-ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、プルリオールE300-ジカルボン酸、プルリオールE400-ジカルボン酸、プルリオールE600-ジカルボン酸、ピラゾール-3,4-ジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジンジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルエーテル)ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルスルホン)ジイミドジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-テルフェニル-4,4’’-ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)-4,4’-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、4(1H)-オキソ-チオクロメン-2,8-ジカルボン酸、5-t-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、4,5-イミダゾールジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,4-ジクロロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2-ニトロベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、4,5-ジヒドロ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アウリントリカルボン酸、1,1-ジオキシドペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリーレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ペリーレン-1.12-スルホン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、メソ-1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタジエン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸などが挙げられる。この中、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルが好ましい。
【0030】
本明細書において、多孔性配位高分子としては、金属イオンと有機配位子から構成され、カウンターアニオンを含んでいてもよい。金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、白金、ルテニウム、モリブデン、ジルコニウム、スカンジウムなどのイオンが好ましく、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの金属のイオンがより好ましい。金属イオンは、単一の金属イオンを使用してもよく、2種以上の金属イオンを併用してもよい。
【0031】
多孔性配位高分子を構成しうる好ましい有機配位子としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、ピレン、1,4-ジヒドロナフタレン、テトラリン、ビフェニレン、トリフェニレン、アセナフチレン、アセナフテンなどの芳香環に2個、3個または4個のカルボキシル基が結合した化合物(前記リガンドは、F,Cl、Br,Iなどのハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基、シアノ基、水酸基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、メトキシ、エトキシなどの直鎖または分岐を有する炭素数1~4のアルコキシ基、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、イソブチルなどの直鎖または分岐を有する炭素数1~4のアルキル基、SH、トリフルオロメチル基、スルホン酸基、カルバモイル基、メチルアミノなどのアルキルアミノ基、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基などの置換基で1,2または3置換されていてもよい)、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和2価カルボン酸、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、4,4’-ビピリジル、ジアザピレン、ニコチン酸、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジンなどの1または2以上の環内窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子により配位可能な含窒素芳香族化合物(前記置換基により1、2または3置換されていてもよい。)などが挙げられる。配位子が中性の場合、金属イオンを中和するのに必要なカウンターアニオンを有する。このようなカウンターアニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、過塩素酸イオンなどが挙げられる。
【0032】
本発明に係る多孔性配位高分子は、シート状などの二次元細孔または複数のシートがアキシャル位に配位する二座配位子を構成要素として含む三次元細孔を有する多孔性配位高分子を包含するが、例えば以下の一次元細孔を有する多孔性配位高分子を使用することができる。
【0033】
IRMOF-1, [Zn4O(1,4-BDC)3]n (H2-1,4-BDC= 1,4-benzenedicarboxylic acid)
MOF-69C, [Zn3(OH2)(1,4-BDC)2]n
MOF-74, [M2(DOBDC)]n (H2DOBDC=2,5-dihydroxyterephthalic acid, M=Zn, Co, Ni, Mg)
HKUST-1, [Cu3(1,3,5-BTC)2]n (H3-1,3,5-BTC=1,3,5-benzenetricarboxylic acid)
MOF-508, [Zn(1,4-BDC)(bpy)0.5]n (bpy = 4,4’-bipyridine)
Zn-BDC-DABCO, [Zn2(1,4-BDC)2(DABCO)]n, (DABCO=1,4-diazabicyclo[2.2.2]-octane)
Cr-MIL-101, [Cr3F(H2O)2O(1,4-BDC)3]n
Al-MIL-110, [Al8(OH)12{(OH)3(H2O)3}(1,3-5-BTC)3]n
Al-MIL-53, [Al(OH)(1,4-BDC)]n
ZIF-8, [Zn(MeIM)2]n, (H-MeIM=2-methylimidazole)
MIL-88B, [Cr3OF(1,4-BDC)3]n
MIL-88C, [Fe3OX(O2C-C10H6-CO2)3]n (X = OH, Cl)
MIL-88D, [Cr3OF(O2C-C12H8-CO2)3]n
CID-1 [Zn2(ip)2(bpy)2]n (H2ip=isophthalic acid)
【0034】
また、国際公開第2015/129685号に開示されている[Zn44-O)2(BTMB)2] (BTMB= 1,3,5-tris(3-carboxyphenyl)benzene)などの1,3,5-トリス(3-カルボキシフェニル)ベンゼン系の多孔性配位高分子も使用することができる。
【0035】
本発明で使用しうる多孔性配位高分子は、例えば以下の文献、総説(Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2334-2375.;Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2-14.;Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191-214.;PNAS, 2006, 103, 10186-10191.;Chem.Rev.,2011, 111, 688-764.;Nature, 2003, 423, 705-714.)、特許文献(国際公開第2015/129685号)などに記載されているが、これらに限定されず、公知の多孔性配位高分子あるいは今後製造され得る多孔性配位高分子を広く使用することができる。
【0036】
1.2 多孔性配位高分子とポリマーとの複合体
多孔性配位高分子は、ガラス転移点(Tg)が70℃以下のポリマー(以下、単に「ポリマー」という。)と共に複合体を形成していてもよい。したがって、本発明には、多孔性配位高分子とポリマーとの複合体を含むことを特徴とする生活臭用消臭剤も含まれる。
【0037】
多孔性配位高分子と複合体を形成しうるポリマーとしては、前記金属イオンに配位可能な官能基を有するポリマーであれば特に制限されず、公知のポリマーあるいは公知の製造方法により製造可能なポリマーを挙げることができる。ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、2以上のモノマーを重合した共重合体であってもよい。ポリマーは、単一のポリマーであっても、2種以上のポリマーの併用であってもよい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0038】
ポリマーは、多孔性配位高分子とさらにポリマーが有する官能基と反応しうる有機架橋剤を用いて架橋構造を形成してもよい。たとえば、ポリマーが有する官能基がグリシジル基の場合、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、チオール基等を2つ以上有する有機架橋剤、ポリマーが有する官能基がチオール基の場合、ビニル基、アクリル基などの2重結合を2つ以上有する有機架橋剤、ポリマーが有する官能基が水酸基の場合、イソシアネート基、ホルミル基、無水カルボン酸残基等を2つ以上有する有機架橋剤、ポリマーが有する官能基がアミノ基の場合、イソシアネート基、ホルミル基等を2つ以上有する有機架橋剤、ポリマーが有する官能基がカルボキシル基の場合、イソシアネート基、カルボジイミド残基、オキサゾリン基、エポキシ基等を2つ以上有する有機架橋剤、ポリマーが有する官能基が無水カルボン酸残基の場合、水酸基、アミノ基等を2つ以上有する有機架橋剤などを架橋構造として挙げることができる。有機架橋剤を使用する場合、溶媒は有機架橋剤と反応しないものあるいは有機架橋剤が溶媒よりもポリマーに速く反応するような有機架橋剤と反応しにくいものを用いる。
【0039】
イソシアネート基を2つ以上有する有機架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(または2,6-)ジイソシアネート、1,3-(または1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらのジイソシアネ-トのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネ-ト、4,4’-ジフェニルエーテルイソシアネート、(m-もしくはp-)フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ-ト化合物のビュ-レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物が挙げられる。また、上記のイソシアネート(NCO)をイソチオシアネート(NCS)に代えた化合物が挙げられる。
【0040】
ポリマーを構成しうるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、トリフルオロエチレン、塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン、ブタジエン、イソプレン等のジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ベンジルアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート)、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香環含有ビニル化合物類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、N-グリシジルアクリルアミド、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル化合物類;アミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレート類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、およびこれらとε-カプロラクトンの反応生成物などの水酸基含有ビニル化合物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、水酸基含有化合物と酸無水物の反応生成物などのカルボキシル基含有ビニル化合物類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸などの酸無水物基含有ビニル化合物類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの低分子量グリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコールなどの高分子量グリコール類、グリセリンなどの多価アルコールと(メタ)アクリル酸のモノエステル;マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸およびその酸無水物が挙げられる。
【0041】
ポリマーがポリウレタンの場合には、上記の2以上のイソシアネート基を有するモノマーと2以上の水酸基を有するモノマーを反応させればよく、ポリエステルの場合には、2以上のカルボン酸基を有するモノマーと2以上の水酸基を有するモノマー、あるいはカルボン酸基と水酸基を有するモノマーを重合することで得られる。
【0042】
モノマーが炭素-炭素二重結合を有する場合、重合開始剤の使用あるいは紫外線照射などの常法に従い共重合体を得ることができる。
【0043】
ポリマーのガラス転移点(Tg)は、約70℃以下、好ましくは50℃以下である。
ポリマーのガラス転移点は熱分析による方法あるいはFoxの式から算出される方法で求めることができる。
【0044】
多孔性配位高分子とポリマーの割合(重量比)は、多孔性配位高分子やポリマーの種類等によって異なるが、例えば、多孔性配位高分子70~99重量%:ポリマー30~1重量%、好ましくは多孔性配位高分子80~98重量%:ポリマー20~2重量%、より好ましくは多孔性配位高分子85~97重量%:ポリマー15~3重量%である。
【0045】
当該複合体には、さらに導電剤、滑剤を配合することができる。導電剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、黒鉛粉末、繊維状炭素材料、金属粉末、金属繊維などが挙げられる。
【0046】
滑剤としては、六方晶窒化ホウ素(hBN)、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化セレン、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、雲母、タルク、PTFE、Pb、PbO、ZnS、BaSO4、金属石けん(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩)などの固体の滑剤が、単独または組み合わせて使うことができる。
【0047】
1.3 本発明消臭剤の製造方法
本発明に係る多孔性配位高分子は、それ自身公知の化合物であり、公知の製造方法(前記文献等に記載の製造方法)で得ることができ、また常法により上記細孔口径のものを調製することができる。多孔性配位高分子とポリマーとの複合体は、例えば、国際公開第2015/012373号の記載に準じて製造することができる。
【0048】
本発明消臭剤は、例えば、多孔性配位高分子またはそれとポリマーとの複合体を、単独でまたは適当な担体を用いて常法により粉末化、溶媒中に溶解ないし懸濁、加圧混練ないし加熱混練することにより製造することができる。粉末化のための担体としては、例えば、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカ、シリカ、アルミナを挙げることができる。当該粉末の平均粒子径として、例えば、0.1~5000μmの範囲内を挙げることができ、好ましくは0.5~1000μmの範囲内である。前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、アセトン等を挙げることができる。
【0049】
本発明消臭剤は、スプレー容器ないし噴霧器に充填することもできる。かかるスプレー容器の形状としては、特に制限されないが、例えば、トリガー式スプレーボトル、アトマイザー、霧吹き器、スプレー缶、ポンプを挙げることができる。本発明消臭剤をスプレー容器に充填する方法としては、特に制限がなく、公知の方法を採用することができる。
【0050】
噴射剤と共に本発明消臭剤を充填する場合、かかる噴射剤としては、通常使用されるものであれば特に制限がなく、例えば、液化ガス、圧縮ガスを挙げることができる。具体的には、炭化水素、液化天然ガス(LPG)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、フッ化炭化水素、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素を挙げることができる。
【0051】
本発明消臭剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の消臭剤成分や添加剤を配合することができる。他の消臭剤成分としては、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、シクロデキストリンを挙げることができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、吸水剤、浸透剤、分散剤等を挙げることができる。
【0052】
本発明消臭剤における多孔性配位高分子の含有量は、多孔性配位高分子の種類、他の消臭成分や添加剤の配合ないしその量、本発明消臭剤の形態、生活臭などにより異なるが、例えば、0.1~100重量%の範囲内、好ましくは1~100重量%の範囲内で適宜設定される。0.1重量%より少ないと、十分な消臭性能が得られないおそれがある。
【0053】
1.4 生活臭
本発明消臭剤は、例えば、次のような生活臭を瞬間的に消臭するのに優れる。
(1)介護・看護臭、病院臭:尿臭、排泄臭
(2)一般生活臭-1:生ごみ臭、更衣室臭・ロッカー臭、フィッティングルーム臭、混雑臭(満員電車内臭)、エアコン臭、畳臭、床臭、台所臭、トイレ臭、風呂場臭、下駄箱臭、排水口臭
(3)一般生活臭-2:体臭、汗臭
(4)一般生活臭-3:タバコ臭、焼肉臭
(5)その他の生活臭:堆肥臭、動物臭、ペットの糞尿臭、自動車内部の臭い
【0054】
2 本発明の抗菌剤・抗ウイルス剤
本発明には、金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子を含むことを特徴とする抗菌剤または抗ウイルス剤(以下、「本発明抗菌剤」という。)が含まれる。
【0055】
「金属イオン」、「有機配位子」、「多孔性配位高分子」の各意義は、前記と同義であるが、多孔性配位高分子の細孔口径は、前記口径に拘らず適宜調整される。好ましい多孔性配位高分子の細孔口径は、0.6~1.0nmの範囲内、より好ましくは0.7~0.9nmの範囲内であり、特に0.9nmが好ましい。
本発明抗菌剤は、前記「1.3 本発明消臭剤の製造方法」に記載の製造方法と同様に製造することができる。
【0056】
本発明抗菌剤が対象としうる菌、ウイルスは特に制限されないが、例えば、次のような菌、ウイルスを挙げることができる。なお、菌には、真菌も含まれる。
【0057】
<菌>
(1)グラム陰性通性嫌気性桿菌
大腸菌(Eshericha coli)、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、コレラ菌(V.cholerae)、腸炎ビブリオ(Vparahaemolyticus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)
(2)グラム陰性好気性桿菌
シュードモナス属(Pseudomonas)、レジオネラ属(Legionella)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブルセラ属(Brucella)、野兎病菌(Francisella tularensis)
(3)グラム陰性嫌気性桿菌
バクテロイデス属(Bacteroides)
(4)グラム陰性球菌
ナイセリア属(Neisseria)
(5)グラム陽性球菌
ブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)、腸球菌属(Enterococcus)
(6)グラム陽性有芽胞桿菌
バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)
(7)放線菌と関連微生物群
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)
(8)マイコプラズマ
マイコプラズマ(Mycoplasma)
(9)スピロヘータとらせん菌
回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)、ライム病ボレリア(B.burgdoferi)、 梅毒トレポネーマ(Treponema palidum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)
(10)リケッチア
リケッチア(Rickettsia)
(11)クラミジア
クラミジア(Clamydia)
【0058】
(12)真菌
クリプトコッカス症(Cryptococcosis)、カンジダ症(Candiasis)、アスペルギルス症(Aspergilosis)、ニューモシスチス・カリニ肺炎(Pneumocystis carinii)、白癬菌(Trichophyton)、癜風菌(Tinea versicolor)
【0059】
<ウイルス>
伝染性軟属腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ロタウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、麻疹(はしか)ウイルス、インフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、RSウイルス、肝炎ウイルス、HIV
【0060】
3 本発明の成形品
本発明には、本発明消臭剤または本発明抗菌剤(以下、併せて「本発明製剤」ともいう。)を含むことを特徴とする成形品(以下、「本発明成形品」という。)が含まれる。
【0061】
3.1 本発明成形品
本発明成形品としては、本発明消臭剤を封入加工できるものであれば特に制限されないが、例えば、繊維、繊維製品、樹脂成形品、フィルターを挙げることができる。
【0062】
上記繊維は、合成繊維、再生繊維、および天然繊維のいずれであってもよい。
合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテートを挙げることができる。再生繊維としては、例えば、レーヨンを挙げることができる。天然繊維としては、例えば、木綿、麻、ウール、絹を挙げることができる。木綿には、原綿そのものの他、苛性マーセル化した木綿、液体アンモニアで処理した木綿等も含まれる。また、当該繊維は、各繊維の混紡であってもよく、各繊維の一次加工品、例えば糸、紐、ロープ、織物、編物、不織布、紙等であってもよい。
【0063】
上記繊維製品とは、上記繊維を更に加工したものをいい、特に制限されないが、例えば、外衣、中衣、内衣等の衣料、寝装品、インテリア類、生活雑貨品、車の内装品が挙げられる。具体的には、例えば、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、ナイトウエアー、肌着、セーター、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料;布団地、布団綿、布団カバー、シーツ、枕カバー等の寝装品;シート、マット、カーテン、カーペット等のインテリア類;タオル、ハンカチ、ふきん、鍋つかみ、オムツ、生理用品等の生活雑貨品;シート、シートカバー、ハンドルカバー等の自動車の内装品等の製品を挙げることができる。
また、当該繊維製品には、例えば壁布、天井布、フロア外張り等の産業資材分野で使用される繊維製品の形態のものも含まれる。
【0064】
上記樹脂成形品とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、アミノプラスト樹脂、グリオキザール樹脂、エチレン尿素樹脂およびこれらのブレンド樹脂などからなる、板状物、柱状物、押出成形品などの成形品のことをいう。具体的な樹脂成形品としては、これら樹脂のフィルム、シート、容器を挙げることができる。
フィルム、シート、容器等への成形は、各種のインフレーション装置、プレス、カレンダー、押出成形機、紡糸機、ブロー成形機、射出成形機、真空成形機などにより行うことができる。
【0065】
上記フィルターとしては、例えば、空気清浄機などに用いられる脱臭フィルター、抗菌フィルターを挙げることができる。
【0066】
3.2 本発明成形品の製造方法
本発明成形品は、所望の成形品に応じて、本発明製剤を常法によって含有させることにより製造することができる。
例えば、繊維または繊維製品へ本発明製剤を付着ないし含浸させる場合には、例えば、浸漬法、スプレー法、コーティング法(刷毛、スポンジ等を用いて塗布する方法を含む)を用いることができる。
【0067】
繊維または繊維製品からの本発明製剤の脱落を防止するために、バインダー樹脂を用いて炭酸亜鉛粒子を繊維または繊維製品に固着させるのが好ましい。かかるバインダー樹脂としては、当該技術分野に使用されているものであれば特に制限されないが、例えば、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、尿素ホルマリン系樹脂等の各種の熱硬化性樹脂を挙げることができる。バインダー樹脂の使用量は、本発明製剤を繊維または繊維製品に固着できる程度の量でよい。
【0068】
浸漬法による場合は、本発明製剤および必要に応じバインダー樹脂を含有する処理液中に処理すべき繊維または繊維製品を常法により浸漬することにより製造することができる。処理液中の本発明製剤の濃度は、処理液の絞り率と必要とする担持量より算出した濃度に設定することができる。当該処理液を構成する溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エタノール等のアルコール類などの有機溶媒を挙げることができる。
【0069】
上記処理液の繊維または繊維製品に対する浸透時間は充分に速く、浸漬時間、浴温度に特に制限はない。通常、浸漬時間は0.1秒~300秒の範囲内、浴温は10~40℃の範囲内で行われる。絞りは加工する製品によって異なるが、各々に適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、均一な絞り率になるようマングル等で絞るのがよい。
【0070】
本発明製剤の付着または含浸量は、生地1mに対して、PCPの量として、通常、0.01~50g/mの範囲内、好ましくは0.05~20g/mの範囲内である。
【0071】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行う。工業的には、乾燥温度は40~150℃の範囲内、時間は温度に応じて適宜選定することができる。
【0072】
バインダー樹脂を使用する場合には、バインダー樹脂で固着させるために、乾燥後に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度および時間は、使用されるバインダー樹脂の種類等により異なるが、加熱処理温度は、通常、100~250℃の範囲内、好ましくは120~200℃の範囲内、加熱処理時間は、通常、20秒~1時間の範囲内である。
【0073】
コーティング法による場合は、本発明製剤および必要に応じバインダー樹脂を含有する処理液を繊維または繊維製品に常法によりコーティングすることにより製造することができる。スプレー法による場合は、本発明製剤および必要に応じバインダー樹脂を含有する処理液を繊維または繊維製品に常法によりスプレーすることにより製造することができる。
【0074】
また、繊維または繊維製品などにバインダー樹脂を含有する処理液(本発明製剤は含まない。)をまず塗布し、乾燥後その上に本発明製剤を散布することによっても本発明成形品を製造することができる。バインダー樹脂は常法により溶解ないし分散させることができるが、その場合の処理液の溶媒としては、前記有機溶媒以外に水も挙げることができる。水を用いることにより、安全性や簡便性を図ることができる。
【0075】
繊維および繊維製品以外の樹脂加工品やフィルターなどの本発明成形品についても、基本的には、繊維または繊維製品の上記製法と同様にして製造することができる。
【0076】
特に次の(1)~(3)のそれぞれにおいて、各工程を含むことを特徴とする、本発明成形品の製造方法が好ましい。
(1)金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子とバインダー樹脂との固形分重量比が1:0.01~1:30(多孔性配位高分子:バインダー樹脂)の範囲内にある混合物を有機溶媒中に溶解する工程、有機溶媒中に溶解した当該混合物を通気性のある薄膜材料に塗布する工程、および溶剤等を乾燥する工程。
(2)金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子と溶融されたバインダー樹脂(例、ポリエチレン樹脂)を混合する工程(なお、多孔性配位高分子とバインダー樹脂との固形分重量比が1:0.1~1:20(多孔性配位高分子:バインダー樹脂)の範囲内が好ましい)、当該混合物を通気性のある薄膜材料に塗布する工程、および通気性のある薄膜材料と挟み高温圧着する工程。
【0077】
(3)通気性のある薄膜材料にバインダー樹脂を塗布する工程、および金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合されてなる多孔性配位高分子を当該薄膜材料上に散布する工程。
なお、上記(1)、(2)において、「金属イオン」、「有機配位子」、「多孔性配位高分子」、「バインダー樹脂」、「有機溶媒」などの意義は、前記と同義である。「通気性のある薄膜材料」としては、通気性のある、例えば、繊維製品、不織布、フィルター、シートを挙げることができる。また、本発明成形品の上記製造方法における具体的な製造条件は、当該技術分野における公知技術ないし周知技術に準じて適宜設定することができる。
【実施例
【0078】
以下に実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]Cu-PCP(HKUST-1、細孔口径0.9nm)の調製
硝酸銅(II)三水和物2.11g(3本分)と1,3,5-ベンゼントリ(カルボン酸メチル)1.01g(3本分)に50 vol%エタノール水溶液57.6mL(3本分)を加えて10分間撹拌し、マイクロウェーブを用いて140℃で60分間反応した。吸引ろ過により回収した固体にエタノールを加え超音波で洗浄した。吸引ろ過により回収した固体を真空乾燥し、細孔口径が0.9nmのCu-PCPを1.24g得た。当該細孔口径は、マイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-max12-N-Sにより測定した(以下同じ。)。
【0080】
[参考例1]Cu-PCP(HKUST-1、細孔口径0.5nm)の調製
実施例1と同様にして、細孔口径が0.5nmのCu-PCPを得た。
【0081】
[参考例2]Ni-PCP(Ni-MOF74、細孔口径1.1nm)の調製
硝酸ニッケル(II)六水和物 3.63gと2,5-ジヒドロキシテレフタル酸0.72gにN,N-ジメチルホルムアミド72mLと水3.6mLを加えて超音波で溶解させた。オートクレーブを用いて110℃で21時間30分反応した。吸引ろ過により回収した固体を真空乾燥し2.44gを得た。メタノールで洗浄後、吸引ろ過により回収した固体を真空乾燥し、細孔口径が1.1nmのNi-PCPを1.91g得た。
【0082】
[参考例3]Cr-PCP(MIL-101(Cr))の調製
塩化クロム(III)六水和物2.97gとテレフタル酸1.85gに水50mLを加えて撹拌し、オートクレーブを用いて210℃で6時間反応した。遠心分離後、上澄みを取り、真空乾燥した。N,N-ジメチルホルムアミドを加えて超音波洗浄後、上澄みを取った。エタノールを加えて超音波洗浄後、上澄みを取り真空乾燥し、細孔口径が2.0~2.7nmのCr-PCPを1.59g得た。
【0083】
[試験例1]瞬間消臭性試験(アンモニア臭)
市販の検知管の先端を切断し、中に試料粉末を入れ、試料粉末が出てこないように綿(約0.0045g)を丸めて蓋にした(図1参照)。
500mLの栓付き三角フラスコに、アンモニア臭溶液を入れ密封し、60℃の乾燥室に15分間入れ、気化させた。そして、乾燥室から取り出し、30分間放冷した後、前記検知管をフラスコ内に挿入し検知管内を通過した気体のアンモニア濃度を測定することにより各試料粉末の瞬間消臭性を試験した。その結果を表1(初発アンモニア臭濃度:83ppm)、表2(初発アンモニア臭濃度:195ppm)および表3(初発アンモニア臭濃度:840ppm)に示す。
なお、酸化亜鉛は、4大悪臭(硫化水素、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン)および吉草酸、フェノール、NOxなどの消臭に使用される、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の混合物である市販のKD-211(ラサ工業株式会社製)である。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1~3に記載の通り、細孔口径が0.9nmの本発明消臭剤(実施例1)は、アンモニア濃度を十分に低くすることができ、アンモニア臭に対する瞬間消臭性に優れていることが明らかである。
【0088】
[試験例2]瞬間消臭性試験(酢酸臭)
酢酸臭についても、試験例1と同様に、瞬間消臭性能を試験した。その結果を表4と表5に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
表4および5に記載の通り、細孔口径が0.9nmの本発明消臭剤(実施例1)は、酢酸濃度を十分に低くすることができ、酢酸臭に対する瞬間消臭性に優れていることが明らかである。1
【0092】
[試験例3]瞬間消臭性試験(タバコ臭)
ガラス容器(長さ40cm×幅25cm×高さ27cm=27000cm(27L))中で、タバコ(メビウス(登録商標)スーパーライト(タール6mg、ニコチン0.5mg))を燃焼し、密閉して一日置いたものを臭気物質とした。一方、市販のディスポーザブル注射器の先に、ゴム管を差し込み、そのゴム管に綿を詰め込み、中央に試料粉末(約0.025g)を投入し、綿で蓋をした。
【0093】
1日置いたガラス容器に、注射器に取り付けた、試料粉末を入れたゴム管を差し込み、臭気を10mLまたは30mL採取した。その後、直ちにゴム管を外し、注射器中の臭気を3名で、以下の評価基準に基づき官能評価した。その結果を表6に示す。
【0094】
なお、アセトアルデヒド消臭剤Aは、二酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの混合物である市販のKD-511(ラサ工業株式会社製)、消臭剤Bは、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の混合物である市販のKD-211(ラサ工業株式会社製)である。汗臭、加齢臭(アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール)などの消臭に使用される。ゼオライトは、ABSCENTS-3000(ユニオン昭和株式会社製)である。
【0095】
<官能評価基準>
0:無臭、1:やっと感知できるにおい、2:何のにおいであるかわかるにおい
3:楽に感知できるにおい、4:強いにおい、5:強烈なにおい
【0096】
【表6】
【0097】
表6に記載の通り、細孔口径が0.9nmの本発明消臭剤(実施例1)は、他の消臭剤と比較してタバコ臭に対する瞬間消臭性に優れていることが明らかである。
【0098】
[試験例4]瞬間消臭性試験(排泄臭)
排泄臭についても、試験例1と同様に、瞬間消臭性能を試験した。その結果を表7に示す。なお、排泄臭は、1歳幼児の排便を使用した。
【0099】
【表7】
【0100】
表7に記載の通り、細孔口径が0.9nmの本発明消臭剤(実施例1)は、ゼオライト消臭剤と比較して排泄臭に対する瞬間消臭性に優れていることが明らかである。
【0101】
[実施例4]本発明製剤および本発明成形品の調製
実施例1のCu-PCP0.025重量部、およびアクリル酸エステル系樹脂(MCポリマーRH-BK(固形分40%)、村山化学研究所社製)0.1重量部をトルエン6.1重量部に溶解し、本発明製剤を調製した。この本発明製剤に綿ニットを1分間浸漬し、ボックス乾燥機にて60℃で5分間、続いて160℃で2分間乾燥して、本発明成形品を作製した。
【0102】
[試験例5]抗菌性試験
実施例4の本発明成形品について、繊維評価技術協議会(JIS L1902)に準拠して抗菌性試験を行った。具体的には、下記方法にて行った。
【0103】
(1)試験菌:黄色ブドウ球菌
(2)試験方法:滅菌した試験素材に、界面活性剤(Tween80)を添加した試験菌懸濁液を注入し、密閉容器中にて37℃×18時間培養後の生菌数を測定する。植菌後、無加工布菌数に対する静菌活性値により、抗菌数を評価する。
(3)抗菌活性値:(Mb-Ma)-(Mc-Mo) (抗菌活性値 ≧ 2.2,合格)
Ma:標準布の試験菌液接触直後の生菌数
Mb:標準布の18時間培養後の生菌数
Mo:抗菌防臭加工布(本発明成形品)の試験菌液接種直後の生菌数
Mc:抗菌防臭加工布の18時間培養後の生菌数
(4)試験有効性:Mb-Ma>1.0
【0104】
その結果、次の表8に示す結果が得られ、抗菌防臭加工を施した本発明成形品の抗菌活性値は6.1であり、優に2.2以上であったことから、当該本発明成形品は抗菌性を有していることが明らかである。なお、Mb-Ma=2.0であり、1.0を上回っているから、本試験は有効である。
【0105】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明消臭剤は、日用品に生活臭の消臭性能を付与する上で有用である。本発明抗菌剤は、日用品に抗菌性・抗ウイルス性を付与する上で有用である。また、それらを含む本発明成形品は、生活臭に対する消臭性に優れ、また細菌やウイルスの増殖を抑える効果を有することから日用品として有用である。
図1