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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20230215BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20230215BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20230215BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/62 004
C08G18/40 063
C08L75/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022550014
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015669
【審査請求日】2022-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】農宗 辰己
(72)【発明者】
【氏名】葉狩 奈津美
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特許第6905135(JP,B1)
【文献】特開2016-098328(JP,A)
【文献】特開2016-204577(JP,A)
【文献】特開2017-137480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 75/00-75/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、可塑剤を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.75以上であり、
前記可塑剤のSP値は、8.76以上であり、
前記可塑剤は、SP値が8.75以上の可塑剤aと、SP値が8.75未満の可塑剤bとを含有する、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.77以上9.20以下であり、且つ、120℃の弾性率と、-30℃の弾性率との差が25MPa以下である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記可塑剤は、脆化温度が-30℃未満の可塑剤Aと、脆化温度が-30℃以上-20℃以下の可塑剤Bとを含有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
更に、無機充填剤を含有し、前記無機充填剤の含有量が、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、50~80質量%である、請求項1~3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記水酸基含有化合物は、ポリオレフィンポリオールを含有する、請求項1~4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記水酸基含有化合物は、平均水酸基価が80mgKOH/g以上である、請求項1~5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記水酸基含有化合物は、ポリブタジエンポリオール及びポリエステルポリオールを含有する、請求項1~6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
【請求項9】
請求項8に記載の封止材を有する電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板や電子部品等の部材の高密度化及び高集積化が進み、各部品に対して、信頼性の向上が要求されている。このため、上述の電気部品等は、部品等を保護するためにポリウレタン樹脂により封止されている。
【0003】
近年、電子回路基板や電子部品の進歩により、ヒートサイクルによる部材へのストレスが大きくなっており、長時間の加熱によっても硬度が変化しにくい、高い耐熱性が求められている。
【0004】
また、部材の封止に用いられるウレタン樹脂は、長期的なヒートサイクルにより柔軟性が低下してクラックが発生するという問題があり、弾性率の温度依存性の低減が求められている。
【0005】
上述の耐熱性及びヒートサイクル性を示すポリウレタン樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。当該ポリウレタン樹脂組成物も優れたポリウレタン樹脂組成物であるが、更に改善の余地がある。特許文献1では、ポリウレタン樹脂組成物に用いられる可塑剤として、DUP(フタル酸ジウンデシル)、又は、DIDA(アジピン酸ジイソデシル)を用いることが開示されている。
【0006】
上述のDIDAは耐熱性に検討の余地がある。また、DUPは、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール等の特定の水酸基含有化合物との相溶性が十分でない場合があるため-20℃~-30℃での弾性率の低下に検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-183125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れたポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。
1.イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、可塑剤を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.75以上である、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
2.前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.75以上9.20以下であり、且つ、120℃の弾性率と、-30℃の弾性率との差が25MPa以下である、項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
3.前記可塑剤は、脆化温度が-30℃未満の可塑剤Aと、脆化温度が-30℃以上-20℃以下の可塑剤Bとを含有する、項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
4.更に、無機充填剤を含有し、前記無機充填剤の含有量が、前記ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、50~80質量%である、項1~3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
5.前記水酸基含有化合物は、ポリオレフィンポリオールを含有する、項1~4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
6.前記水酸基含有化合物は、平均水酸基価が80mgKOH/g以上である、項1~5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
7.前記水酸基含有化合物がポリオレフィンポリオールを含有し、前記可塑剤は、SP値が8.75以上の可塑剤aと、SP値が8.75未満の可塑剤bとを含有する、項1~6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
8.前記水酸基含有化合物は、ポリブタジエンポリオール及びポリエステルポリオールを含有する、項1~7のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
9.項1~8のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。
10.項9に記載の封止材を有する電気電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れている。また、本発明の封止材も、上記ポリウレタン樹脂組成物からなるので、耐熱性及びヒートサイクル性に優れている。更に、本発明の電気電子部品は、上記封止材を有するので、十分に樹脂封止がされ、高い信頼性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ポリウレタン樹脂組成物
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、可塑剤を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.75以上であることを特徴とする。
【0012】
一般に、ポリエステルポリオールは、-20℃~-30℃の低温領域で弾性率が上昇しやすくヒートサイクル性が低下する傾向にある。ヒートサイクル特性を向上させるためにポリブタジエンポリオール等のポリオレフィンポリオールが併用されるが、当該ポリブタジエンポリオールはポリエステルポリオールとの相溶性が悪いため、ポリブタジエンポリオール単独で用いるよりも-20℃~-30℃の低温領域で弾性率が上昇するという問題がある。
【0013】
ポリブタジエンポリオールとポリエステルポリオールとを配合したポリウレタン樹脂は、-20℃~-30℃の領域で弾性率が上昇するため、-20℃~-30℃の温度領域で温度変化による弾性率の測定結果において、コブの様に弾性率の高い領域が現れる。通常、水酸基含有化合物としてポリブタジエンポリオールを単独で用いた場合、温度変化による弾性率の測定結果において、上記弾性率の高い領域は現れず、なめらかな曲線となる。
【0014】
また、水酸基含有化合物としてポリエステルポリオールを単独で用いた場合、ガラス転移温度が十分に低くないため、-20℃~-30℃の温度領域から弾性率が上昇する。
【0015】
本発明者等は、ポリウレタン樹脂組成物において、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値を特定の範囲とすることで、これらの相溶性に優れ、-20℃~-30℃の温度領域でもポリウレタン樹脂の弾性率の上昇を抑制できることを見出した。通常、ポリウレタン樹脂の低温での弾性率とガラス転移温度を低下させる場合は、DUP、DIDAのように脆化温度が-30℃以下の可塑剤が用いられる。しかし、DIDAは耐熱性が十分でなく、また、DUPと、ポリブタジエンポリオール、及び、ポリエステルポリオールとを配合したポリウレタン樹脂組成物では、ポリウレタン樹脂とした際にこれらの相溶性が十分でなく、-40℃以下の弾性率は低下するが、-20℃~-30℃の弾性率は低下しない。
【0016】
これに対し、本発明では、ポリウレタン樹脂組成物において、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値を8.75以上に調整することにより、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れたポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【0017】
以下、本発明のポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明する。
【0018】
(イソシアネート基含有化合物)
イソシアネート基含有化合物としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂に用いられる公知のイソシアネート基含有化合物を用いることができる。このようなイソシアネート基含有化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性をより向上させるために、上記イソシアネート基含有化合物のイソシアヌレート変性体を用いてもよい。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0021】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
上記イソシアネート基含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられるイソシアネート基含有化合物の量は特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、1~10質量%更に好ましい。イソシアネート基含有化合物の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良がより抑制される。イソシアネート基含有化合物の含有量の下限が上記範囲であることにより、硬化したポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより一層向上する。
【0025】
イソシアネート基含有化合物のSP値は、8.70以上が好ましく、9.00以上がより好ましく、9.50以上が更に好ましく、10.00以上が特に好ましく、10.50以上が最も好ましい。また、イソシアネート基含有化合物のSP値は、14.00以下が好ましく、13.50以下がより好ましく、13.00以下が更に好ましく、12.00以下が特に好ましい。
【0026】
(水酸基含有化合物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において用いられる水酸基含有化合物としては、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値を8.75以上に調整できれば特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来ポリオール成分として用いられているものを各種使用することが可能である。上記ポリオール成分としては、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、ポリエステルポリオール、又はこれらの水素化物等が挙げられる。具体的には、ポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、2-メチルプロパン-1、2,3-トリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリット、ポリラクトンジオール、ポリラクトントリオール、エステルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ひまし油、水素化ひまし油、水酸基含有液状ポリイソプレンの水素化物、水酸基含有液状ポリブタジエンの水素化物等が挙げられる。
【0027】
上記ポリオール成分の中でも、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール及びそれらの水素化物が好ましい。また、ポリブタジエンポリオール、及び、ポリエステルポリオールを含有することがより好ましく、ポリブタジエンポリオール、並びに、ひまし油及びその水素化物を用いることが更に好ましい。
【0028】
上記ひまし油及びその水素化物としては、ひまし油、又はひまし油誘導体等が挙げられる。上記ひまし油誘導体としては、ひまし油脂肪酸;ひまし油又はひまし油脂肪酸に水素付加した水素化ひまし油;ひまし油とその他の油脂のエステル交換物;ひまし油と多価アルコールの反応物;ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物;これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。
【0029】
上記水酸基含有化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
上記水酸基含有化合物の重量平均分子量Mwは、500~5000が好ましく、800~4800がより好ましく、900~4000が更に好ましく、1000~3000が特に好ましい。
【0031】
上記水酸基含有化合物の数重量平均分子量Mnは、600~6000が好ましく、900~5000がより好ましく、1000~4000が更に好ましく、1200~3500が特に好ましい。
【0032】
上記水酸基含有化合物の平均水酸基価は、40mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。また、平均水酸基価は、170mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0033】
本明細書において、上記水酸基含有化合物の平均水酸基価は、下記測定方法により測定される値である。
【0034】
(平均水酸基化の測定方法)
平均水酸基価は、水酸基含有化合物が単独である場合は、単独の水酸基含有化合物の水酸基価の値であり、2種以上を併用する場合は、それら複数の水酸基含有化合物の水酸基価をその配合比率を乗じて足し合わせて算出される水酸基価の平均値である。なお、本明細書において、上記水酸基価はJIS K1557-1:2007のA法に準拠した測定方法により測定される値である。
【0035】
上記水酸基含有化合物のガラス転移温度は、-40℃以下が好ましく、-50℃以下がより好ましい。また、上記ガラス転移温度は、-90℃以上が好ましく、-85℃以上がより好ましい。
【0036】
本明細書において、上記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定される値である。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、水酸基含有化合物の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、3~40質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、7~30質量%が更に好ましく、7~20質量%が特に好ましい。水酸基含有化合物の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良がより一層抑制される。水酸基含有化合物の含有量の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の弾性率がより低減され、また、ガラス転移温度の上昇をより抑制することができる。
【0038】
水酸基含有化合物のSP値は、8.70以上が好ましく、8.75以上がより好ましく、8.80以上が更に好ましく、8.85以上が特に好ましい。また、水酸基含有化合物のSP値は、14.00以下が好ましく、13.00以下がより好ましく、12.00以下が更に好ましく、11.30以下が特に好ましい。
【0039】
水酸基含有化合物のSP値は、後述の実施例に記載のFedors法により測定する。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、上記イソシアネート基含有化合物と、上記水酸基含有化合物とのNCO/OH比が0.6~2.0であることが好ましく、0.7~1.5であることがより好ましい。NCO/OH比の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより一層向上する。NCO/OH比の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良がより一層抑制される。
【0041】
(可塑剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物において用いられる可塑剤としては、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値を8.75以上に調整できれば特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物において従来可塑剤として用いられているものを各種使用することが可能である。上記可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート等のアジピン酸エステル;メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリド等のひまし油系エステル;トリクレジルフォスフェート;トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテート等のピロメリット酸エステル等が挙げられる。沸点が250℃以上であり、凝固点が-20℃以下で、常温で500mPa・s以下の粘度であり、様々なSP値の水酸基含有化合物との相容性に優れる点で、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、トリクレジルフォスフェートが好ましい。
【0042】
本発明のポリウレタン樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として5~40質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましく、15~30質量%が更に好ましく、20~25質量%が特に好ましい。可塑剤の含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化不良がより抑制される。可塑剤の含有量の下限が上記範囲であることにより、硬化したポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより一層向上する。
【0043】
可塑剤のSP値は、8.70以上が好ましく、8.75以上がより好ましく、8.80以上が更に好ましく、8.90以上が特に好ましい。また、可塑剤のSP値は、12.00以下が好ましく、11.00以下がより好ましく、10.00以下が更に好ましく、9.70以下が特に好ましい。
【0044】
可塑剤のSP値は、後述の実施例に記載のSmall法により測定する。
【0045】
本発明のポリウレタン樹脂組成物中の、SP値が8.70以上である可塑剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に5.3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。また、上記含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。上記構成であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐熱性及びヒートサイクル性がより一層向上する。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂組成物中の、SP値が8.75以上である可塑剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に5.3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。また、上記含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が特に好ましい。上記構成であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐熱性及びヒートサイクル性がより一層向上する。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂組成物中の、SP値が8.80以上である可塑剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、上記含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中に25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。上記構成であることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物の耐熱性及びヒートサイクル性がより一層向上する。
【0048】
上記可塑剤は、JIS K7216に準拠して測定した脆化温度が、-30℃未満の可塑剤Aと、-30℃~0℃の可塑剤Bとを含有することが好ましい。上記構成とすることにより、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が低下し、耐寒性がより一層向上する。なお、上記脆化温度は、具体的には、後述の実施例に記載の測定方法により測定する。
【0049】
(無機充填剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、無機充填剤を含んでいてもよい。上記無機充填剤としては特に限定されず、従来公知の無機充填剤を用いることができる。このような無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、溶融シリカ、非晶質シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムである。これらのうち、難燃性、熱伝導性に優れる点で、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和化合物が好ましい。熱伝導性に優れる無機充填剤としては、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂組成物の弾性率の上昇を抑制するためにはモース硬度が低い無機充填剤が好ましい。このような無機充填剤のモース硬度は、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。このような無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム(モース硬度3)、水酸化マグネシウム(モース硬度2.5)、タルク(モース硬度1)等が挙げられる。
【0051】
上記無機充填剤のモース硬度は、標準鉱物を用いたモース硬度試験の測定方法により測定される値である。具体的には、上記無機充填剤のモース硬度は、標準鉱物と試料物質を擦り合わせて傷が入った時の標準鉱物のモース硬度から相対比較で決定される値である。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、無機充填剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して20~80質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。無機充填剤の含有量の下限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の難燃性がより一層向上する。無機充填剤含有量の上限が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度が抑制され、作業性がより一層向上し、また、混合後の流動性、柔軟性を損なわずに耐熱性、耐湿性、強度、及び難燃性がより向上し、更に、線膨張係数が低くなるためヒートサイクル性がより向上する。
【0053】
(添加剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、酸化防止剤、重合触媒、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤等、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。
【0054】
酸化防止剤としては特に限定されないが、ウレタン樹脂組成物に用いられる従来公知の酸化防止剤を用いることができる。このような酸化防止剤としては、ペンタエリトリトール化合物等を好適に用いることができ、より具体的には、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0055】
重合触媒としては特に限定されないが、ウレタン樹脂組成物に用いられる従来公知の重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート等の錫触媒;オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛触媒;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス触媒、ジエチレントリアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。また、上記触媒としては、有機金属化合物、金属錯体化合物等を用いてもよい。
【0056】
これらの添加剤の使用量は、その使用目的に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないように、通常の添加量と同定の範囲から適宜決定すればよい。
【0057】
(ポリウレタン樹脂組成物)
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値が8.75以上である。上記混合物のSP値が8.75未満であると、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性及びヒートサイクル性が低下する。上記混合物のSP値は、8.80以上が好ましく、8.85以上がより好ましい。また、上記混合物のSP値は、10.80以下が好ましく、10.70以下がより好ましく、9.20以下が更に好ましい。
【0058】
上記混合物のSP値は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
【0059】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、可塑剤との混合物のSP値は特に限定されず、8.76以上が好ましく、8.80以上がより好ましく、8.85以上が更に好ましい。また、上記混合物のSP値は、11.00以下が好ましく、10.80以下がより好ましく、10.50以下が更に好ましい。上記混合物のSP値が上記範囲であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性及びヒートサイクル性がより一層向上し、且つ、電気電子部品を構成する部材との接着性がより向上する。
【0060】
上記混合物のSP値は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
【0061】
本発明のポリウレタン樹脂組成物が硬化前の液状である場合、その粘度は500~100000mPa・sが好ましく、1000~10000mPa・sがより好ましく、1500~5000mPa・sが更に好ましい。粘度を上記範囲とすることにより、本発明のポリウレタン樹脂組成物が、より高い作業性を示すことができ、また、部品への流れ込みが向上するため電気電子部品との密着性が向上し、ボイドが発生し難くなり、樹脂強度、熱伝導性、防水性がより向上する。更に、粘度の上限が上記範囲であることにより、無機充填剤を多く配合できるため、難燃性がより向上し、線膨張係数が下がり、且つ、ヒートサイクル性がより向上する。
【0062】
本明細書において、硬化前のポリウレタン樹脂組成物の粘度は、後述の実施例に記載のブルックフィールドBH型粘度計により測定される値である。
【0063】
本発明のポリウレタン樹脂組成物の、DMA(動的粘弾性測定)により測定される損失弾性率(E’’:10Hz)の最大ピーク点から算出されるガラス転移温度は、-40℃以下が好ましく、-60℃以下がより好ましい。また、上記ガラス転移温度は、低い程好ましく、例えば、-80℃程度であってもよい。
【0064】
本明細書において、DMA(動的粘弾性測定)により測定される損失弾性率(E’’:10Hz)の最大ピーク点から算出されるガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法により測定する。なお、DMAでのTgの決定には通常tanδが用いられる。しかしながら、tanδはピークポイントがブロードし易く、測定誤差が大きい傾向があるため、損失弾性率(E’’)で決定する方が正確である。このため、本明細書では損失弾性率(E’’:10Hz)の最大ピーク点からガラス転移温度(Tg)を算出する。
【0065】
本発明のポリウレタン樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法として用いられる従来公知の方法により製造することができる。
【0066】
このような製造方法としては、例えば、イソシアネート基含有化合物を含む成分を調製してA成分(ポリイソシアネート成分)、水酸基含有化合物を含む成分を調製してB成分(ポリオール成分)とし、A成分とB成分とを混合することにより反応させてポリウレタン樹脂として、当該ポリウレタン樹脂を含有するポリウレタン樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
【0067】
上記A成分がイソシアネート基含有化合物を含有し、上記B成分が水酸基含有化合物を含有していれば、他の成分は、A成分又はB成分のどちらに含有されていてもよい。中でも、B成分に無機充填剤が含まれている構成が好ましい。このような構成とすることにより、無機充填剤に含まれる水分とポリイソシアネート基含有化合物が反応することによるポリウレタン樹脂の硬化不良を抑制することができる。
【0068】
イソシアネート基含有化合物の一部をB成分に添加するか、又は、水酸基含有化合物の一部をA成分に添加することにより、一部を予め反応させてイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(水酸基末端ウレタンプレポリマー)としてもよい。上記構成とすることにより、A成分とB成分との配合比が1:1に近づき、A成分とB成分とをより混合し易くなり、また、一部をウレタン化することで、A成分のSP値とB成分のSP値との差が小さくなり、相容性がより向上し、反応がより速くなる。
【0069】
上記A成分及びB成分の構成の組み合わせとしては、具体的には、A成分がイソシアネート基含有化合物のみを含有し、B成分が水酸基含有化合物、可塑剤、並びに、必要に応じて無機充填剤、酸化防止剤、重合触媒を含有する構成が好ましい。このような構成とすることにより、A成分及びB成分が液安定性に優れる。
【0070】
ポリウレタン樹脂組成物は、硬化前の液状であってもよいし、硬化物であってもよく、硬化物は、ポリウレタン樹脂とも称する。ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記A成分及びB成分を混合することにより、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とを反応させてポリウレタン樹脂とすることによりポリウレタン樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は40℃~120℃程度が好ましく、加熱時間は、0.1時間~24時間程度が好ましい。
【0071】
ポリウレタン樹脂組成物(の硬化物)の-30℃での弾性率(E’:10Hz)は、40MPa以下が好ましく、25MPa以下がより好ましい。また、上記弾性率は、5MPa以上が好ましい。
【0072】
ポリウレタン樹脂組成物(の硬化物)の120℃の弾性率と、-30℃の弾性率との差は25MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましい。ヒートサイクル性は、線膨張係数が一定である場合、高温時での弾性率と低温時の弾性率との差から発生する応力が影響する。このため、高温の弾性率と低温時の弾性率との差が小さいことが好ましい。
【0073】
上記ポリウレタン樹脂組成物(の硬化物)の弾性率は、後述の実施例に記載の動的粘弾性測定機を用いる測定方法により測定する。
【0074】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物と、可塑剤との混合物のSP値が8.75以上9.20以下であり、且つ、120℃の弾性率と、-30℃の弾性率との差が25MPa以下であることが好ましい。上記構成とすることで、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性がより向上し、温度変化による弾性率の変化が小さいことでポリウレタン樹脂組成物に発生する内部応力が小さくなるため、ヒートサイクル性がより向上する。
【0075】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物がポリオレフィンポリオールを含有し、可塑剤は、SP値が8.75以上の可塑剤aと、SP値が8.75未満の可塑剤bとを含有することが好ましい。上記構成とすることで、ポリウレタン樹脂組成物のガラス転移温度が下がりヒートサイクル性がより向上する。
【0076】
2.封止材、電気電子部品
本発明は、また、上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材でもある。上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材は、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れているので、高温環境下で使用される電気電子部品や、発熱を伴う電気電子部品等に好適に使用することができる。また、上記ポリウレタン樹脂組成物からなる封止材は、低温領域での柔軟性にも優れているので、低温環境下で使用される電気電子部品等にも好適に使用することができる。このような電気電子部品としては、トランスコイル、チョークコイル及びリアクトルコイル等の変圧器や機器制御基盤、各種センサー等が挙げられる。このような電気電子部品も、本発明の一つである。本発明の電気電子部品は、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、電動工具、自動車、バイク等に用いることができる。
【0077】
更に、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、接着剤としても有用に用いることができる。接着剤は部材のSP値との差が小さい方が、接着性が高くなる。電気電子部品の部材等に用いられるプラスチックの多くはSP値が9以上であるため、本件特許発明目のポリウレタン樹脂組成物のSP値が8.75以上であることにより、高い接着性を示すことができる。また、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、電気電子部品の放熱目的で使用されるギャップフィラーとしても有用に用いることができる。
【実施例
【0078】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0079】
実施例、及び比較例に使用する原料を下記に示す。
【0080】
(A)イソシアネート基含有化合物
・TPA-100:HDIイソシアヌレート変性体、商品名;デュラネートTPA-100、旭化成ケミカルズ社製、分子量546、比重1.16、SP値11.74(Fedors法による計算値)
・A201H:HDIアロファネート変性体、商品名;デュラネートA201H、旭化成ケミカルズ社製、分子量466、比重1.05、SP値12.29(Fedors法による計算値)
・HMDI:水添MDI、商品名;WANNATE HMDI、万華化学ジャパン株式会社製、分子量262、比重1.08、SP値10.74(Fedors法による計算値)
・MTL:カルボジイミド変性MDI、商品名;ミリオネートMTL、東ソー社製、分子量250、比重1.22、SP値12.66(Fedors法による計算値)
【0081】
(B)水酸基含有化合物
・R-45HT:ポリブタジエンポリオール、商品名;Poly bd R-45 HT、出光石油化学社製、数平均分子量 2800、SP値8.86(Fedors法による計算値)
・R-15HT:ポリブタジエンポリオール、商品名:Poly bd R-15 HT 、出光石油化学社製、数平均分子量1200、SP値9.16(Fedors法による計算値)
・H-30:ポリエステルポリオール(ひまし油ポリオール)、商品名;URIC H-30、藤製油株式会社製、数平均分子量933、SP値10.86(Fedors法による計算値)
・P-2050:ポリエステルポリオール、商品名;クラレポリオールP-2050、株式会社クラレ製、数平均分子量2000、SP値11.29(Fedors法による計算値)
・ポリエステルポリオール(X)、分子量1300、SP値10.35(Fedors法による計算値)
【0082】
なお、上記ポリエステルポリオール(X)は以下の方法により製造した。すなわち、撹拌機、温度計、窒素導入管、検水管付き還流コンデンサを備えた反応器に、酸価178の水添ひまし油脂肪酸1220g(4モル)と還流補助のためのキシレン60mLとを仕込み、窒素気流下180℃~220℃で6時間反応させた。この間、縮合反応により生成する水は共沸により系外に留去させた。これにより、酸価46のオキシカルボン酸オリゴマーが得られた。
【0083】
次いで、反応器に、多価アルコールの一例としてヒンダードアルコールであるトリメチロールプロパン134g(1モル)及び触媒としてのパラトルエンスルホン酸 1.0gを加えて180℃~220℃で7時間反応させた。この間、縮合反応により生成する水は共沸により系外に留去させた。反応終了後、触媒及びキシレンを除去した。これにより、常温で液状で、酸価3.3、OH価105、ヨウ素価 3.2、粘度2.1Pa・s/23℃の液状のポリエステルポリオール(X) を調製した。
(C)無機充填剤
・H-32:水酸化アルミニウム、商品名;ハイジライト H-32、昭和電工株式会社製
(D)可塑剤
・DUP:フタル酸ジウンデシル、商品名;DUP、株式会社ジェイプラス製、SP値8.73(Small法による計算値)、脆化温度-32℃、凝固点-45℃、分子量475、比重0.95
・DIDA:アジピン酸ジイソデシル、商品名;DIDA、株式会社ジェイプラス製、SP値8.56(Small法による計算値)、脆化温度-46℃、凝固点-70℃、分子量427、比重0.92
・DINP:フタル酸ジイソノニル、商品名;DINP、株式会社ジェイプラス製、SP値8.93(Small法による計算値)、脆化温度-24℃、凝固点-45℃、分子量419、比重0.97
・TOTM:トリメリット酸エステル、商品名;TOTM、株式会社ジェイプラス製、SP値8.96(Small法による計算値)、脆化温度-17℃、凝固点-30℃、分子量547、比重0.98
・TCP:トリクレジルフォスフェート、商品名;TCP、大八化学工業製、SP値9.70(Small法による計算値)、凝固点-35℃、分子量368、比重1.17
(E)酸化防止剤
・イルガノックス1010:ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、商品名;IrganoX1010、BASF社製
(F)重合触媒
・U-810:ジオクチル錫ジラウレート、商品名;ネオスタンU-810、日東化成社製
【0084】
なお、上記(A)イソシアネート基含有化合物、(B)水酸基含有化合物、(D)可塑剤の特性を表1~表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表3において、脆化温度は、JIS K7216に準拠した測定方法により測定した値である。具体的には、下記条件により、ある温度点で試験片の50%が2個又はそれ以上に破壊したときの温度を測定する。
試験片:サイズ 38.0±2.0×6.0±0.4×2.0±0.2 (mm)
試験片を23℃±2、相対湿度50±5%の室温で40時間以上置いて使用する。1試料につき温度を変えて5水準試験する。各水準での試験回数は10回である。
伝熱溶媒:エタノール
試験方法:試験雰囲気温度に試験片を3分間置いた後に打撃ハンマーにて5mmの移動距離から2±0.2m/sの速度で1回衝撃を与え、破壊の有無を確認し評価する。
測定機器:脆化温度試験機 FS((株)東洋精機製作所製)
【0089】
表1~表3において、SP値は、(A)イソシアネート基含有化合物、及び、(B)水酸基含有化合物はFedors法で、(D)可塑剤はSmall法で測定した値である。
【0090】
(A)イソシアネート基含有化合物、及び、(B)水酸基含有化合物のSP値をFedors法により測定する測定方法を以下に示す。これらのSP値は、下記式により算出した。
(SP値)=[ΣΔei/ΣΔvi]1/2
Δei:原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:原子又は原子団のモル体積
【0091】
なお、上記Δei及びΔviは、文献値(R.F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14,(2), 147(1974).を引用した。これらの数値を下記表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
上記Fedors法により下記化学式により示されるMDIイソシアネートのSP値を算出する方法を一例として示す。
【0094】
【化1】
【0095】
上記化学式から、各官能基等の種類と数は以下の通りである。
(NCO)×2+(CH)×1+(-CH=)×8+(=C<)×4
上記を考慮して、ΣΔei及びΣΔeiは、以下のように算出される。
ΣΔei=(6800)×2+(1180)×1+(1030)×8+(1030)×4
ΣΔvi=(35)×2+(16.1)×1+(13.5)×8+(-5.5)×4
以上より、SP値は以下のように算出される。
(SP値)=[ΣΔei/ΣΔvi]1/2=12.55
【0096】
(D)可塑剤のSP値をSmall法により測定する測定方法を以下に示す。(D)可塑剤のSP値は、下記式により算出した。
(SP値)=dΣG/M
d:比重
G:分子引力恒数
M:分子量
【0097】
なお、上記Gは、文献値(P.A.Small:J.Appl.chem.,3,71(1953).)を引用した。これらの数値を下記表5に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
上記Small法により下記化学式により示されるDUPのSP値を算出する方法を一例として示す。
【0100】
【化2】
【0101】
上記化学式から、各官能基等の種類と数は以下の通りである。
(CH)×2+(CH)×20+(COO)×2+(フェニレン)×1
上記を考慮して、ΣG、d及びMは、以下のようになる。
ΣG=(214)×2+(133)×20+(310)×2+(658)×1
d=0.95、M=475
以上より、SP値は以下のように算出される。
(SP値)=dΣG/M=8.73
【0102】
上記のようにして得られた各成分のSP値を基に、混合物のSP値((1)(A)イソシアネート基含有化合物+(B)水酸基含有化合物+(D)可塑剤のSP値;(2)(B)水酸基含有化合物+(D)可塑剤のSP値;(3)複数の(D)可塑剤の混合物のSP値)を算出した。算出方法は、特開2011-194508号広報の0020段落に記載の式(3)の算出方法を参照し、下記式により混合物のSP値を算出した。
(混合物のSP値)=[ΣXn(モル分率)×Vn(モル容積)×σn(各材料のSP値)]/[ΣXn(モル分率)×Vn(モル容積)]
なお、上記式において、各成分のモル分率、モル容積は、(A)イソシアネート基含有化合物、(B)水酸基含有化合物、(D)可塑剤、各組成の配合部数、分子量、比重から算出した。
【0103】
(ポリウレタン樹脂組成物の製造)
表1に示す(B)~(F)の配合の原料を、加熱、冷却、減圧装置を備えた反応釜に投入し、100℃、10mmHg以下の圧力下で2時間かけて脱水し、ポリオール成分を調製した。
【0104】
ポリイソシアネート成分として、(A)のイソシアネート基含有化合物を用意した。
【0105】
表1に示す配合量となるように、上記ポリオール成分にポリイソシアネート成分を加えて撹拌し、脱泡して混合することによりポリウレタン樹脂組成物を得た。ポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合は、ポリオール成分を23℃に調整し、続いて23℃に調整したポリイソシアネート成分を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、回転数2000rpmで1分間撹拌することにより行った。
【0106】
以上のように調製した実施例及び比較例のポリウレタン樹脂組成物を用いて、下記の試験を行った。
【0107】
(試験片の作成)
100mm×100mm×3mmの成形用型A、内径30mm、高さ10mmの成形用型B、10mm×80mm×3mmの成形用型Cに、調製したポリウレタン樹脂組成物を注入した。次いで、型内のポリウレタン樹脂組成物を80℃で16時間加熱した後、室温で1日放置して硬化させた。これにより、試験片A(100mm×100mm×3mm)、試験片B(内径30mm、高さ10mm)、及び、試験片C(10mm×80mm×3mm)を調製した。また、試験片Aを3号ダンベル試験片状にカットし、試験片A-1を調製した。
【0108】
以上のように調製した実施例及び比較例のポリウレタン樹脂組成物、及び、試験片を用いて、下記の測定及び試験を行った。
【0109】
粘度
ポリウレタン樹脂組成物を23℃に調整し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分、無機充填剤、可塑剤とを混合してから3分後の粘度をブルックフィールドBH型粘度計にて測定した。
【0110】
初期硬度
試験片Bの温度を23℃に調整し、JIS K 6253に準拠した測定方法により、硬度計(高分子計器社製、アスカーゴム硬度計A型)を用いて硬度(タイプA)を測定した。
【0111】
体積抵抗値
試験片Aの体積抵抗率を、抵抗測定器(HIOKI社製、DSM-8104)を用いて測定した。体積抵抗率の測定値を体積抵抗値とした。
【0112】
伸び率(柔軟性)
試験片A-1の伸び率(柔軟性)をJIS K 6301に準拠した測定方法により、下記式に基づいて算出した。
伸び率(%)={[(破断時の標線間距離)(標線間距離)]÷(標線間距離)}×100
【0113】
弾性率(E’10Hz)、ガラス転移温度(E’’)
-40℃、-30℃、-20℃、23℃、120℃の各温度における試験片Cの弾性率E’(10Hz)を、動的粘弾性測定機:DMA(SII Nano Technology社製:DMS6100)を用いて測定した。また、「損失弾性率E’’(10Hz)」のピーク点からガラス転移温度(℃)を算出した。
【0114】
弾性率の上昇率
下記式に従って、弾性率の上昇率を算出した。
(弾性率の上昇率(1))=(-30℃の弾性率(MPa))/(-20℃の弾性率(MPa))
(弾性率の上昇率(2))=(-40℃の弾性率(MPa))/(-20℃の弾性率(MPa))
下記評価基準に従って評価した。
A:弾性率の上昇率(1)が2未満である
B:AにもCにも該当しない
C:-40℃の弾性率が60MPa以上であるか、下記弾性率の上昇率(2)が5以上である。
【0115】
弾性率変化量
下記式に従って、硬度変化量を算出した。
(硬度変化量)=[-30℃の弾性率(MPa)]-[120℃の弾性率(MPa)]
下記評価基準に従って評価した。
A:変化量25MPa未満
B:変化量25MPa以上40MPa未満
C:変化量40MPa以上
【0116】
耐熱性(硬度変化率)
試験片Bを用いて上述の初期硬度を測定後、当該試験片Bを100℃の乾燥機で500時間加熱し、室温(23℃)まで冷却してから試験片Bの硬度(最終硬度)を初期硬度と同様にして測定した。初期硬度と最終硬度から、下記式に基づいて硬度変化率を算出した。
(硬度変化率(%))=[(最終硬度-初期硬度)/初期硬度]×100
下記評価基準に従って評価した。
A:硬度変化率20%未満
C:硬度変化率20%以上
【0117】
ヒートサイクル性
弾性率の上昇率、弾性率変化量、硬度変化率の評価結果から、下記評価基準に従って評価した。
A:すべてA
B:すべてB以上で且つ、Aが2つ以下
C:Cがある
【0118】
結果を表6に示す。
【0119】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れている。このため、電気製品等の分野で利用が可能である。また、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、接着剤、電気電子部品の放熱目的で使用されるギャップフィラーの分野で利用が可能である。
【要約】
本発明は、相溶性に優れ、耐熱性及びヒートサイクル性に優れたポリウレタン樹脂組成物を提供する。
本発明は、イソシアネート基含有化合物、水酸基含有化合物、及び、可塑剤を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物と、前記可塑剤との混合物のSP値が8.75以上である、
ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。