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  • 特許-紫外線防御被膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】紫外線防御被膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20230215BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20230215BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/81
A61K8/87
A61K8/898
A61K8/85
A61K8/64
A61Q17/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018079735
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2018177795
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017082079
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智成
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526224(JP,A)
【文献】特表2016-503037(JP,A)
【文献】荒隠しにエアータッチファンデーションSK2☆,2007年11月16日,https://plaza.rakuten.co.jp/lazylazymom/diary/200711160001/?scid=wi_blg_amp_diary_next,検索日:2018年6月5日
【文献】MINTEL GNPD ID No. 600036 SK-II Air Touch Foundation,2006年10月,http://www.gnpd.com/global-new-products-database,検索日:2018年6月4日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線防御剤含有組成物を皮膚に塗布する工程と、
成分(a)及び成分(b)を含有する噴霧用組成物を直接皮膚に静電スプレーして皮膚上に繊維の堆積物からなる被膜を形成する工程とを、この順で又は逆の順で有することを特徴とする皮膚上への紫外線防御被膜の製造方法。
(a)一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール及び一価の芳香族アルコールから選ばれ、20℃における蒸気圧が0.13kPa以上66.66kPa以下である1種又は2種以上の揮発性物質 30質量%以上98質量%以下
(b)ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートから選ばれる1種又は2種以上の被膜形成能を有するポリマー 2質量%以上50質量%以下
【請求項2】
静電スプレーにより形成される被膜が、繊維の堆積物からなる多孔性被膜である請求項1記載の紫外線防御被膜の製造方法。
【請求項3】
前記紫外線防御剤が、紫外線吸収剤である請求項1又は2記載の被膜の製造方法。
【請求項4】
前記静電スプレーが、噴霧用組成物を収容する容器と、噴霧用組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている噴霧用組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する静電スプレー装置を用いて行なわれる請求項1~3のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項5】
成分(a)が、エタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる1種以上である請求項1~4のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項6】
成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質である請求項1~5のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項7】
成分(a)が、少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、揮発性物質中のエタノールの含有量が50質量%以上100質量%以下である請求項1~6のいずれか1項記載
の被膜の製造方法。
【請求項8】
成分(a)の含有量が噴霧用組成物中に50質量%以上98質量%以下である請求項1~7のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項9】
成分(b)の含有量が、噴霧用組成物中に4質量%以上45質量%以下である請求項1~8のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項10】
成分(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))が、0.5以上40以下である請求項1~9のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【請求項11】
エタノール(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))が0.5以上40以下である請求項6~9のいずれか1項記載の被膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上に紫外線防御被膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日焼け止め化粧料には、皮膚への紫外線照射を遮断して高いSPF(Sun protection Factor)値を得るために、紫外線防御剤が配合されている。
【0003】
しかしながら、これらの紫外線防御剤を含有する化粧料は、耐水性、耐汗性が低く、汗などにより皮膚から消失するという欠点がある。また、皮膚上には、多くの凹凸があるため塗膜に均一にならず、塗膜が薄い箇所ではSPF値が低くなる。さらに、塗膜が、衣服や指などの皮膚との接触により消失するという問題もある。このような問題点に対し、化粧料中に有機シリコーン重合体、特定の処理をした水膨潤性粘土鉱物、PVP/アルキル共重合体等を配合する技術が知られている(特許文献1~3)。
【0004】
一方、静電スプレーによって被膜を形成する方法が種々知られている。例えば特許文献4には、皮膚に組成物を静電スプレーすることを含む皮膚を処理する方法が記載されている。この方法で用いられる組成物は、液体絶縁性物質と、導電性物質と、粒子状粉末物質と、増粘剤とを含んでいる。この組成物としては、典型的には顔料を含む化粧品やスキンケア組成物が用いられている。具体的には、組成物として化粧用ファンデーションが用いられている。すなわち、特許文献4に記載の発明は、美容の目的で化粧用ファンデーションを静電スプレーして、皮膚を化粧することを主として想定している。
【0005】
特許文献5には、化粧品の静電スプレー装置に使用するための使い捨てカートリッジが記載されている。この静電スプレー装置は、手持ち式の自蔵型のものである。この静電スプレー装置は、前記の特許文献4と同様に化粧用ファンデーションを噴霧するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-262634号公報
【文献】特開平7-258055号公報
【文献】特開平8-259430号公報
【文献】特開2006-104211号公報
【文献】特表2003-507165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1~3の技術によっても、皮膚上には多数の凹凸があることから均一な塗膜は形成されず、また塗膜中の紫外線防御剤の分布が均一でないため、皮膚上のSPF値が均一にならなかった。十分なSPF値を得ようとすると、塗膜を厚くする必要があるが、そうすると透明感が損なわれるという問題があった。
また、特許文献4及び5に記載の静電スプレーによって形成された被膜は、皮膚との密着性が十分でなく、衣類や皮膚との接触によるファンデーションの色移りが起こるものであった。
従って、本発明の課題は、UV防御能に優れるだけでなく、厚い塗膜を形成せずとも、均一で耐久性にも優れた紫外線防御被膜を形成する新たな手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、優れた紫外線防御能を有する被膜を皮膚上に形成すべく種々検討したところ、紫外線防御剤含有組成物を皮膚に塗布する工程と、(a)揮発性物質及び(b)被膜形成能を有するポリマーを含有する組成物を直接皮膚に静電スプレー工程とを併用することにより、皮膚上に形成された被膜が衣類や皮膚、水等との接触で容易に損失せず、感触、外観も良好で、かつ紫外線防御効果が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、紫外線防御剤含有組成物を皮膚に塗布する工程と、成分(a)及び成分(b)を含有する組成物を直接皮膚に静電スプレーして皮膚上に被膜を形成する工程を、この順で又は逆の順で有することを特徴とする皮膚上への紫外線防御被膜の製造方法を提供するものである。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単独で紫外線防御剤を皮膚に塗布した場合に比べて飛躍的にSPF値が向上し、紫外線防御効果に優れた被膜が皮膚上に形成される。また、形成された被膜は、耐水性、耐汗性に優れるとともに、皮膚や衣類との接触では容易に損失しないという優れた耐久性を有し、感触及び外観も良好である。また、単独で紫外線防御剤を皮膚に塗布した場合には、皮膚の凹凸により塗布が均一にならず、紫外線防御効果が皮膚で均一に得られないが、本発明によれば、皮膚上に均一な被膜が形成されるので、均一な紫外線防御効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を示す概略図である。
図2】静電スプレー装置を用いて静電スプレー法を行う様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、紫外線防御剤含有組成物(以下、UV組成物ということがある)を皮膚に塗布する工程と、成分(a)及び成分(b)を含有する組成物を直接皮膚に静電スプレーして皮膚上に被膜を形成する工程とを有する。まず、UV組成物を塗布する工程について説明する。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー。
【0013】
UV組成物に用いられる紫外線防御剤としては、紫外線吸収剤、特に有機紫外線吸収剤が好ましい。有機紫外線吸収剤としては、油溶性のものが好ましく、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0014】
安息香酸系紫外線吸収剤として、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、グリセリルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、N-エトキシレートPABAエチルエステル、N-ジメチルPABAエチルエステル、N-ジメチルPABAブチルエステル、N-ジメチルPABAアミルエステル、オクチルジメチルPABA、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等が挙げられる。紫外線吸収効果を高めつつ、べたつきを抑制する観点から、パラアミノ安息香酸、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシルが好ましく、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸へキシルがより好ましい。
アントラニル酸系紫外線吸収剤として、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等が挙げられる。
サリチル酸系紫外線吸収剤として、アミルサリチレート、メンチルサリチレート、ホモメンチルサリチレート、オクチルサリチレート、フェニルサリチレート、ベンジルサリチレート、p-イソプロパノールフェニルサリチレート等が挙げられる。
桂皮酸系紫外線吸収剤として、エチル-4-イソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイルジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。これらの中で、紫外線吸収効果を高める観点から、2-エチルへキシル-p-メトキシシンナメートから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2-エチルへキシル-p-メトキシシンナメートがより好ましい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニルベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、紫外線吸収効果を高める観点から、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-[{4-(2-エチルへキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
その他のものとして、3-(4'-メチルベンジリデン)-dl-カンファー、3-ベンジリデン-dl-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボニリデン)-3-ペンタン-2-オン、特開平2-212579号公報記載のベンゼン・ビス-1,3-ジケトン誘導体、特開平3-220153号公報記載のベンゾイルピナコロン誘導体等が挙げられる。
【0015】
紫外線防御剤としては、紫外線防御効果を高める観点から、紫外線吸収剤を含むことが好ましく、中でも、安息香酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、安息香酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有していることがさらに好ましく、安息香酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも2種を含有していることがより好ましい。
【0016】
紫外線防御剤は、1種又は2種以上を組合わせて使用することができ、その組合わせおよび含有量は、紫外線防御効果に応じて決定される。紫外線防御効果をより発現させる観点から、紫外線防御剤の含有量は、UV組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上とする。また、べたつきの抑制およびさらさら感を付与する観点から、紫外線防御剤の含有量は、UV組成物中、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは18質量%以下である。
【0017】
UV組成物には、紫外線防御剤を溶解させる目的で、また形成された被膜の皮膚への密着性及び耐久性を向上させる目的で、紫外線防御剤以外の20℃で液体の油を含有させることができる。
【0018】
20℃において液体の油としては、例えば流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、炭化水素油、エステル油、トリグリセライド等を含有する植物油、シリコーン油等の極性油が好ましく、炭化水素油、エステル油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。また、これらから選ばれる液体油を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられ、使用感の観点から流動パラフィン、スクワランが好ましい。また、静電噴霧された被膜を皮膚に密着させる観点から、炭化水素油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。かかる観点から、30℃において粘度が10mPa・s未満である、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテンのUV組成物中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、含有しなくてもよい。
同様に、形成された被膜を皮膚に密着させる観点から、エステル油及びシリコーン油の30℃における粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは30mPa・s以上である。
ここでの粘度は、30℃においてBM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、1分間)により測定される。
なお、同様の観点から、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル等のエーテル油のUV組成物中の合計の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
【0020】
前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0021】
これらの中では、形成された被膜を皮膚に密着させる観点及び皮膚に塗布した際の感覚に優れる点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0022】
トリグリセライドとしては、脂肪酸トリグリセライドが好ましく、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などに含まれる。
【0023】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
25℃におけるシリコーン油の動粘度は、形成された被膜を皮膚に密着させる観点から、3mm2/sが好ましく、4mm2/sがより好ましく、5mm2/s以上が更に好ましく、30mm2/s以下が好ましく、20mm2/s以下がより好ましく、10mm2/s以下が更に好ましい。
これらの中でもでは、形成された被膜を皮膚に密着させる観点から、メチルポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0024】
UV組成物中の前記液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。また、好ましくは90質量%以下である。UV組成物中における液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上70質量%以下である。更に好ましくは50質量%以下である。
【0025】
また、UV組成物には、さらに水、ポリオールが含まれていてもよい。水やポリオールを含む場合のUV組成物の形態は、乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)などが含まれる。
【0026】
ポリオールを含む場合、該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、滑らかさなどの使用感の点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、更にプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオールから選ばれる1種又は2種が一層好ましい。
【0027】
UV組成物は、紫外線防御剤及び前記の成分を含有し、油状組成物、油中水型乳化組成物、水中油型乳化組成物等の形態とすることができる。その形状としては、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、多層状などとすることができる。UV組成物中に配合できる紫外線防御剤以外の成分としては、前記液状油の他、固体油、乳化剤、水、ポリオール、着色顔料、体質顔料、染料、香料、酸化防止剤、防腐剤、各種ビタミン類が挙げられる。
【0028】
本発明において、直接皮膚に静電スプレーされる組成物(以下、噴霧用組成物ということもある)は、次の成分(a)及び成分(b)を含有する組成物である。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー。
【0029】
成分(a)の揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。噴霧用組成物において成分(a)は、電界内に置かれた該噴霧用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から皮膚に向かって吐出され、成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって更に微細化しながら成分(a)が更に蒸発していき、最終的に乾いた被膜を形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい。
【0030】
成分(a)の揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1-C6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC4-C6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n-プロパノール、n-ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
成分(a)の揮発性物質のうち、ケトンとしてはジC1-C4アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
成分(a)の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール及び水から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくはエタノールを含む揮発性物質である。
【0033】
噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましい。また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい。この量で噴霧用組成物中に成分(a)を含有させることで、静電スプレー法を行うときに噴霧用組成物を十分に揮発させることができる。
又、エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また100質量%以下であることが好ましい。エタノールは成分(a)の揮発性物質の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、65質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが一層好ましい。
【0034】
成分(b)である被膜形成能を有するポリマーは、一般に、成分(a)の揮発性物質に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。
【0035】
被膜形成能を有するポリマーとしては、成分(a)の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、被膜形成能を有するポリマーは水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとに大別される。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1g秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が溶解しない性質を有するものをいう。
【0036】
水溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性ポリマーのうち、被膜の製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキサイドを用いる場合、その数平均分子量は、5万以上300万以下であることが好ましく、10万以上250万以下であることが一層好ましい。
【0037】
一方、水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、水溶性ポリエステル、ツエイン等を用いることが好ましく、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂を1種又は2種以上用いることがより好ましい。
【0038】
噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが一層好ましい。また50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが一層好ましい。噴霧用組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上40質量%以下であることが一層好ましい。この量で噴霧用組成物中に成分(b)を含有することで、目的とする被膜を効率的に形成することができる。
【0039】
噴霧用組成物中の成分(a)と成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下がさらに好ましい。
また、噴霧用組成物中のエタノールと成分(b)の含有量の比率((a)/(b))は、静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができる観点から、0.5以上40以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、2以上25以下がさらに好ましい。
【0040】
更に、噴霧用組成物中にグリコールを含有することができる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。静電スプレー法を行うときに成分(a)を十分に揮発させることができる観点から、噴霧用組成物中に10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が好ましく、実質含まないことが好ましい。
【0041】
噴霧用組成物中には、上述した成分(a)及び成分(b)のみが含まれていてもよく、あるいは成分(a)及び成分(b)に加えて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば成分(b)の被膜形成能を有するポリマーの可塑剤、着色顔料、体質顔料、染料、界面活性剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。噴霧用組成物中に他の成分が含まれる場合、当該他の成分の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0042】
本発明においては、前記噴霧用組成物を、直接皮膚に静電スプレーして皮膚上に被膜を形成する工程を、前記UV組成物塗布工程の前又は後に行うことを特徴とする。
【0043】
静電スプレー法を行う場合、噴霧用組成物として、その粘度が、25℃において、好ましくは1mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上、一層好ましくは50mPa・s以上であるものを用いる。また粘度が、25℃において、好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下、一層好ましくは1500mPa・s以下であるものを用いる。噴霧用組成物の粘度は、25℃において、好ましくは1mPa・s以上5000mPa・s以下であり、更に好ましくは10mPa・s以上2000mPa・s以下であり、一層好ましくは50mPa・s以上1500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有する噴霧用組成物を用いることで、静電スプレー法によって多孔性被膜、特に繊維の堆積物からなる多孔性被膜を首尾よく形成することができる。多孔性被膜の形成は、紫外線防御効果の増強効果、被膜の密着性、被膜の耐久性、感触、外観、皮膚の蒸れ防止等の観点から有利なものである。噴霧用組成物の粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定される。E型粘度計としては例えば東京計器社製のE型粘度計を用いることができる。その場合のローターとしては、ローターNo.43を用いることができる。
【0044】
噴霧用組成物は静電スプレー法によって、ヒトの皮膚における紫外線防御をしようとする部位に直接噴霧される。静電スプレー法は、静電スプレー装置を用い、皮膚に噴霧用組成物を静電スプレーする工程を含む。静電スプレー装置は、基本的に、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する。
【0045】
図1には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、低電圧電源11を備えている。低電圧電源11は、数Vから十数Vの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置10の可搬性を高める目的で、低電圧電源11は1個又は2個以上の電池からなることが好ましい。また、低電圧電源11として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ACアダプタ等を低電圧電源11として用いることもできる。
【0046】
静電スプレー装置10は、高電圧電源12も備えている。高電圧電源12は、低電圧電源11と接続されており、低電圧電源11で発生した電圧を高電圧に昇圧する電気回路(図示せず)を備えている。昇圧電気回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。
【0047】
静電スプレー装置10は、補助的電気回路13を更に備えている。補助的電気回路13は、上述した低電圧電源11と高電圧電源12との間に介在し、低電圧電源11の電圧を調整して高電圧電源12を安定的に動作させる機能を有する。更に補助的電気回路13は、後述するマイクロギヤポンプ14に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、後述する噴霧用組成物の容器15からマイクロギヤポンプ14への噴霧用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路13と低電圧電源11との間にはスイッチSWが取り付けられており、スイッチSWの入り切りによって、静電スプレー装置10を運転/停止できるようになっている。
【0048】
静電スプレー装置10は、ノズル16を更に備えている。ノズル16は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から噴霧用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル16内には噴霧用組成物が流通する微小空間が、該ノズル16の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して100μm以上1000μm以下であることが好ましい。ノズル16は、管路17を介してマイクロギヤポンプ14と連通している。管路17は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル16は、高電圧電源12と電気的に接続されている。これによって、ノズル16に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル16に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル16と高電圧電源12とは、電流制限抵抗19を介して電気的に接続されている。
【0049】
管路17を介してノズル16と連通しているマイクロギヤポンプ14は、容器15中に収容されている噴霧用組成物をノズル16に供給する供給装置として機能する。マイクロギヤポンプ14は、低電圧電源11から電源の供給を受けて動作する。また、マイクロギヤポンプ14は、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の噴霧用組成物をノズル16に供給するように構成されている。
【0050】
マイクロギヤポンプ14には、フレキシブル管路18を介して容器15が接続されている。容器15中には噴霧用組成物が収容されている。容器15は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。
【0051】
以上の構成を有する静電スプレー装置10は、例えば図2に示すように使用することができる。図2には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置10が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、図1に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体20内に収容されている。筐体20の長手方向の一端10aには、ノズル(図示せず)が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体20の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体20に配置されている。ノズル先端が筐体20の縦方向においてに肌に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に噴霧用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。
【0052】
静電スプレー装置10を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって皮膚上の紫外線防御をしようとする部位上に被膜を形成する者が該装置10を手で把持し、ノズル(図示せず)が配置されている該装置10の一端10aを、静電スプレーを行う適用部位に向ける。図2では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置10の一端10aを向けている状態が示されている。この状態下に、装置10のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置10に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。図2に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の噴霧用組成物は、静電誘導によって分極して先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した噴霧用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した噴霧用組成物から溶媒である成分(a)が蒸発していくと、噴霧用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、皮膚に到達する。この場合、噴霧用組成物の粘度を適切に調整することで、噴霧された該組成物を液滴の状態で適用部位に到達させることができる。あるいは、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を適用部位に堆積させることもできる。例えば、噴霧用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で適用部位に堆積させやすい。これによって、繊維の堆積物からなる多孔性被膜が適用部位の表面に形成される。紫外線防御剤を含む繊維の堆積物からなる多孔性被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。
【0053】
静電スプレー法を行っている間は、ノズルと皮膚との間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者は確認している。
【0054】
静電スプレー法によって繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることが更に好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることが更に好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
【0055】
前記の繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、集合体として1枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特性をもっており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、皮膚から生じた汗の放散性に優れるという利点もある。更に、被膜の剥離が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続被膜は剥離が容易でなく、また汗の放散性が非常に低いので、皮膚に蒸れが生じやすい。
【0056】
繊維状となった噴霧用組成物は、帯電した状態で適用部位に到達する。先に述べたとおり皮膚も帯電しているので、繊維は静電力によって適用部位に密着する。皮膚の表面には肌理等の微細な凹凸が形成されているので、その凹凸によるアンカー効果と相まって繊維は適用部位の表面に一層密着する。このようにして静電スプレーが完了したら、静電スプレー装置10の電源を切る。これによってノズルと皮膚との間の電界が消失し、皮膚の表面は電荷が固定化される。その結果、被膜の密着性が一層発現する。
【0057】
以上の説明は、被膜として繊維の堆積物からなる多孔性被膜についてのものであったが、被膜の形態はこれに限られず、細孔を有さない連続被膜を形成してもよく、繊維の堆積物以外の形態を有する多孔性被膜、例えば連続被膜に不規則に又は規則的に複数の貫通孔が形成されてなる多孔性被膜、すなわち不連続被膜を形成してもよい。上述のとおり、噴霧用組成物の粘度、ノズルと皮膚との間の距離、及びノズルに印加する電圧などを制御することで任意の形状の被膜を形成することができる。
【0058】
ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、50mm以上、150mm以下であることが、被膜を首尾よく形成する観点から好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。
【0059】
静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、紫外線防御効果の観点、耐久性の観点から0.1g/m2以上であることが好ましく、1g/m2以上がより好ましく、3g/m2以上であることが更に好ましい。また、被膜感、外観の観点から25g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以下であることがより好ましく、10g/m2以下であることが更に好ましい。例えば被膜の坪量は、0.1g/m2以上25g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上15g/m2以下であることがより好ましく、3g/m2以上10g/m2以下が更に好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、被膜が過度に厚くなることに起因する該被膜の剥離を防止しつつ、適用部位の紫外線防御剤の消失を効果的に防止することができる。
【0060】
なお、皮膚に組成物を直接に静電スプレーして被膜を形成する静電スプレー工程とは、皮膚に静電スプレーして、皮膜を形成する工程を意味する。組成物を皮膚以外の場所に静電スプレーして繊維からなるシートを作製し、そのシートを皮膚に塗布する工程は、前記静電スプレー工程とは異なる。
【0061】
本発明においては、静電スプレー以外の手段によるUV組成物塗布工程と静電スプレー工程とを、この順又は逆の順で行う。このような順序で行うことにより、静電スプレー工程で形成される被膜が、適用部位になじみやすくなり、該被膜が皮膚に高密着化することが可能となり、透明化することもできる。例えば、被膜の端部と皮膚との間に段差が生じにくくなり、それによって被膜と皮膚との密着性が向上する。その結果、被膜の剥離や破れ等が生じにくくなる。より好ましい態様である、被膜が繊維の堆積物からなる多孔性被膜である場合、高い空隙率であるにもかかわらず皮膚との密着性が高く、また大きな毛管力が発生しやすく、UV組成物中の紫外線防御剤が毛管現象により皮膚表面に均一に存在する状態となり、紫外線防御効果が増強される。更に、繊維が微細である場合には多孔性被膜を高比表面積化することが容易となり、UV組成物を多量に繊維の堆積物中に存在させることが可能となる。
【0062】
特に、静電スプレー工程において繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成した後に、静電スプレー以外の方法によるUV組成物塗布工程を行うことにより、該多孔性被膜を形成する繊維間、及び/又は繊維表面にUV組成物が存在する紫外線防御剤担持被膜が形成されるとともに、UV組成物も繊維間及び/又は繊維表面に均一に浸透することにより、紫外線防御効果が飛躍的に向上する。これによって、被膜の密着性が向上し、目視における被膜の透明性が維持又は向上する。特に被膜が無色透明あるいは有色透明である場合には、より被膜を視認しにくくなることによって、自然な皮膚のように見せることができる。また、被膜が有色透明である場合には、被膜に透明感が出るため、皮膚の一部のように見せることができる。
【0063】
特に、UV組成物が極性油を含有する場合、該組成物は、水と極性油を含有することが、被膜の皮膚への密着性を高める観点から好ましく、水と極性油を合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また安定性の観点から、UV組成物は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものであってもよく、皮膚への密着性、被膜への保湿性能を向上する観点から、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものであってもよい。
同様に、UV組成物がポリオールを含有する場合、該組成物は、水とポリオールを含有することが、被膜の皮膚への密着性を高める観点から好ましく、水とポリオールを合計で40質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。また安定性の観点から、UV組成物は、界面活性剤、ポリマー、増粘剤を含有するものであってもよく、皮膚への密着性、被膜への保湿性能を向上する観点から、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等の30℃で固体の油剤を含有するものであってもよい。
【0064】
UV組成物は、25℃において100000mPa・s程度以下、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s程度以下の粘性を有することが、静電スプレー法によって形成された被膜と適用部位との密着性の向上の点から好ましい。UV組成物の粘度は、B型粘度計(東機産業社製、TVB-10型、測定条件:ローターNo.1、60rpm、1分間)により測定される。
【0065】
UV組成物を皮膚に塗布するには、静電スプレー以外の種々の通常の化粧料の皮膚への適用方法を用いることができる。例えば、滴下や振りかけ等の方法によって組成物を皮膚に塗布し、該組成物を塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、該組成物の薄層を形成することができる。UV組成物を塗り広げる工程は、例えば使用者本人の指や、アプリケータ等の道具を用いた擦過などの方法を採用することができる。UV組成物を単に滴下したり振りかけたりしただけでもよいが、塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることが可能となり、被膜の密着性を十分に向上させることができる。別法として、UV組成物を皮膚に通常の手段で噴霧して該組成物の薄層を形成することもできる。この場合には、別途の塗り広げは格別必要ないが、噴霧後に塗り広げの操作を行うことは妨げられない。なお、被膜の形成後にUV組成物を施す場合には、十分なUV組成物を皮膚に適用し、余分の組成物はシート材を組成物の施した範囲に接触させる工程により、余剰の組成物を除去することができる。
【0066】
UV組成物を皮膚に塗布する量は、紫外線防御効果、及び皮膚と被膜との密着性が向上するのに必要十分な量とすればよい。紫外線防御効果、及び耐久性を向上させる観点から、UV組成物を皮膚に施す量は、塗布終了後の組成物の坪量が好ましくは1g/m2以上、より好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは5g/m2以上、さらにより好ましくは10g/m2以上となるような量とし、被膜感の観点から好ましくは85g/m2以下であり、より好ましくは60g/m2以下であり、さらに好ましくは40g/m2以下であり、さらにより好ましくは35g/m2以下となるような量とする。例えば、UV組成物を皮膚に施す量は、塗布終了後の組成物の坪量が好ましくは5g/m2以上40g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上35g/m2以下となるような量とする。
また、UV組成物を皮膚に、又は被膜に施す組成物の量は、十分な紫外線防御効果を得る点、皮膚と被膜の密着性を向上させる観点、外観を向上させる観点から、好ましくは5g/m2以上であり、より好ましくは10g/m2以上であり、更に好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは50g/m2以下であり、より好ましくは45g/m2以下である。
また、噴霧用組成物の使用量は、紫外線防御効果、耐久性を向上させる観点から、好ましくは1g/m-2以上、より好ましくは3g/m-2以上、さらに好ましくは5g/m-2以上、被膜感、外観の観点から、好ましくは25g/m-2以下、より好ましくは15g/m-2以下、さらにより好ましくは10g/m-2以下となるような量とする。
【0067】
以上のとおりの本発明の紫外線防御被膜製造方法は、人体の手術、治療又は診断方法を目的としない紫外線防御目的の美容方法として有用なものである。
【0068】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持し、該装置10の導電性ノズルとその者の皮膚との間に電界を生じさせたが、両者間に電界が生じる限り、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置10を把持する必要はない。
【0069】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の被膜の製造方法を開示する。
<1>紫外線防御剤含有組成物を皮膚に塗布する工程と、
成分(a)及び成分(b)を含有する組成物を直接皮膚に静電スプレーして皮膚上に被膜を形成する工程とを、この順で又は逆の順で有することを特徴とする皮膚上への紫外線防御被膜の製造方法。
(a)水、アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質、
(b)被膜形成能を有するポリマー。
【0070】
<2>前記紫外線防御剤含有組成物を、静電スプレー以外の手段により皮膚に塗布する工程を有する<1>記載の被膜の製造方法。
<3>前記紫外線防御剤が、紫外線吸収剤、好ましくは有機紫外線吸収剤である<1>又は<2>記載の被膜の製造方法。
<4>前記静電スプレーが、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する静電スプレー装置を用いて行なわれる<1>~<3>記載の被膜の製造方法。
<5>紫外線防御剤含有組成物が、さらに20℃で液体の油を含有する<1>~<4>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<6>成分(a)の揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることが更に好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがより一層好ましい前記<1>~<5>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<7>成分(a)の揮発性物質がアルコールであり、該アルコールとして一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、及び一価の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、該アルコールとして、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、及びペンタノールから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、前記<1>~<6>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<8>成分(a)の揮発性物質が、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、及び水から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール、及びブチルアルコールから選ばれる1種又は2種であり、更に好ましくはエタノールを含有する揮発性物質であり、より更に好ましくは揮発性物質中のエタノール含有量が50質量%以上100質量%以下の揮発性物質である前記<1>~<7>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<9>成分(b)の被膜形成能を有するポリマーは、成分(a)の揮発性物質に溶解することが可能な物質であり、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとを含み、ここで、溶解するとは20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態である前記<1>~<8>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
【0071】
<10>水溶性である被膜形成能を有するポリマーが、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性の高分子であり、より好ましくはプルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上の水溶性の高分子である前記<9>記載の被膜の製造方法。
<11>水不溶性である被膜形成能を有するポリマーが、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーであり、より好ましくは、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエインから選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーであり、さらに好ましくはポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である前記<9>記載の被膜の製造方法。
<12>前記組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、また98質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることが更に好ましく、94質量%以下であることが一層好ましく、前記組成物における成分(a)の含有量は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、55質量%以上96質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以上94質量%以下であることが一層好ましい前記<1>~<11>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<13>前記組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、6質量%以上であることが一層好ましく、また50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが一層好ましく、前記組成物における成分(b)の含有量は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、4質量%以上45質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上40質量%以下であることが一層好ましい前記<1>~<12>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<14>紫外線防御剤が、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる1種又は2種以上である<1>~<13>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<15>紫外線防御剤の安息香酸系紫外線吸収剤が、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、グリセリルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、N-エトキシレートPABAエチルエステル、N-ジメチルPABAエチルエステル、N-ジメチルPABAブチルエステル、N-ジメチルPABAアミルエステル、オクチルジメチルPABA、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルから選ばれる化合物であり;アントラニル酸系紫外線吸収剤が、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレートであり;サリチル酸系紫外線吸収剤が、アミルサリチレート、メンチルサリチレート、ホモメンチルサリチレート、オクチルサリチレート、フェニルサリチレート、ベンジルサリチレート、及びp-イソプロパノールフェニルサリチレートから選ばれる化合物であり;桂皮酸系紫外線吸収剤が、エチル-4-イソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、及びグリセリルモノ-2-エチルヘキサノイルジパラメトキシシンナメートから選ばれる化合物であり;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニルベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノンから選ばれる化合物であり;トリアジン系紫外線吸収剤が、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス-[{4-(2-エチルへキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンから選ばれる化合物であり;さらに、3-(4'-メチルベンジリデン)-dl-カンファー、3-ベンジリデン-dl-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ベンゼン・ビス-1,3-ジケトン誘導体、ベンゾイルピナコロン誘導体から選ばれる1種又は2種以上である<14>記載の被膜の製造方法。
<16>前記紫外線防御剤含有組成物中における紫外線防御剤の含有量が、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がさらに好ましい<1>~<15>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<17>前記紫外線防御剤含有組成物は、その粘度が、25℃において、100000mPa・s程度以下、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s程度以下である前記<1>ないし<16>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<18>前記紫外線防御剤含有組成物に含まれる20℃において液体の油が、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油等の植物油、液状ラノリン等の動物油、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油から選ばれるものであり、これらのうち、好ましくは炭化水素油と、エステル油、トリグリセライド等を含有する植物油、シリコーン油等の極性油、より好ましくは炭化水素油、エステル油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上である前記<4>~<17>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<19>前記炭化水素油が、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは流動パラフィン、スクワランから選ばれる1種又は2種以上である前記<18>記載の被膜の製造方法。
<20>エステル油が、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられ、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上である<18>記載の被膜の製造方法。
【0072】
<21>トリグリセライドが、脂肪酸トリグリセライドが好ましく、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油から選ばれる1種又は2種以上である前記<18>記載の被膜の製造方法。
<22>シリコーン油が、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上である前記<18>記載の被膜の製造方法。
<23>前記紫外線防御剤含有組成物中の液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。また、好ましくは90質量%以下であり、液体油の含有量は、好ましくは0.1質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以下である。前記<4>~<22>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
【0073】
<24>前記紫外線防御剤含有組成物を静電スプレー以外の方法で皮膚に塗布する量は、塗布終了後の該組成物の坪量が好ましくは1g/m2以上であり、より好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは5g/m2以上、さらに好ましくは10g/m2以上となるような量であり、好ましくは85g/m2以下であり、より好ましくは60g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは35g/m2以下となるような量であり、また、好ましくは1g/m2以上85g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上60g/m2以下、さらに好ましくは5g/m2以上40g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以上35g/m2以下となるような量であり、
また、前記組成物を皮膚に、又は被膜に塗布する組成物の量は、好ましくは5g/m2であり、より好ましくは10g/m2以上であり、更に好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは50g/m2以下であり、より好ましくは45g/m2以下である前記<3>~<23>のいずれか1に記載の被膜の製造方法。
<25>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズルを備えており、
前記ノズルは、金属を初めとする各種の導電体、又はプラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から前記組成物の吐出が可能な形状をしている前記<1>ないし<24>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<26>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズル及び筐体を備えており、
前記筐体の長手方向の一端に、前記ノズルが配置されており、
前記ノズルは、前記組成物の吹き出し方向を、前記筐体の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体に配置されている前記<1>~<25>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<27>噴霧された該組成物を、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成する前記<1>~<25>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
【0074】
<28>静電スプレー法を静電スプレー装置を用いて行い、
前記静電スプレー装置はノズルを備えており、
前記ノズルと皮膚との間の距離を、50mm以上、150mm以下にする前記<1>ないし<27>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<29>静電スプレー法によって形成された被膜の坪量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、1g/m2以上がより好ましく、3g/m2以上であることが更に好ましく、25g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以下であることがより好ましく、10g/m2以下であることが更に好ましく、被膜の坪量は、0.1g/m2以上25g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上15g/m2以下であることがより好ましく、3g/m2以上10g/m2以下であることが更に好ましく、また、噴霧用組成物の使用量は、好ましくは1g/m-2以上、より好ましくは3g/m-2以上、さらに好ましくは5g/m-2以上であり、また好ましくは25g/m-2以下、より好ましくは15g/m-2以下、さらにより好ましくは10g/m-2以下となるような量とする、前記<1>~<28>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<30>成分(a)が少なくともエタノールを含む揮発性物質であり、成分(b)がポリビニルブチラール樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上である<1>~<29>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<31>前記紫外線防御剤含有組成物における前記成分(a)の含有量は、30質量%以上、好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また98質量%以下、好ましくは96質量%以下、更に好ましくは94質量%以下であり、30質量%以上98質量%以下、好ましくは55質量%以上96質量%以下、更に好ましくは60質量%以上94質量%以下である、<1>~<30>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
<32>前記紫外線防御剤含有組成物における前記成分(b)の含有量は、2質量%以上、好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、また30質量%以下、好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下であり、2質量%以上50質量%以下、好ましくは4質量%以上45質量%以下、更に好ましくは6質量%以上40質量%以下である、前記<1>~<31>のいずれかに記載の被膜の製造方法。
【実施例
【0075】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0076】
[試験例1]
〔実施例1〕
(1)噴霧用組成物Aの調製
噴霧用組成物の成分(a)として99.5%エタノール(和光純薬工業社製)を用いた。成分(b)としてポリビニルブチラール(積水化学工業社製:商品名エスレックB)を用いた。
1Lのガラス製ビーカーに、成分(a)、成分(b)および添加剤(味の素ヘルシーサプライ社製エルデュウPS-203)を測りとり、プロペラミキサーを用いて常温にて12時間程度撹拌し、均一透明な溶液を得た。これを噴霧用組成物Aとした。
成分(a)、成分(b)および添加剤は、それぞれ80質量部、14質量部及び6.0重量部とした。
【0077】
(2)UV組成物の塗布
UV組成物として、以下の表1に示す化粧料Aを用いた。このUV組成物を、ヒトの手の甲に塗布した。塗布する化粧料の坪量は11.5g/m-2とした。
【0078】


【表1】
【0079】
(3)静電スプレー工程
図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、化粧料適用部位に向けて静電スプレーを30秒間行った。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。
・印加電圧:10kV
・導電性ノズルと皮膚との距離:100mm
・噴霧用組成物の吐出量:5mL/h
・環境:25℃、40%RH
この静電スプレーによって、化粧料適用部位の全域に繊維の堆積物からなる多孔性被膜が形成された。被膜は直径約4cmの円であり、質量は約7mgであった。坪量はおよそ6g・m-2であった。
【0080】
〔実施例2~9、比較例1~4〕
表2に示す坪量に変更した以外は実施例1と同様に被膜を形成した。
【0081】
【表2】
【0082】
〔比較例5〕
実施例1と同様の組成物を静電スプレーせずに直接塗布すること以外は実施例1と同様の方法で被膜を形成した。
(4)評価
〔SPF〕
得られた被膜の紫外線防御性能の比較のため、SPF試験をおこなった。基板(Labsphere社製HD-6)上に噴霧した被膜を5か所測定し、平均値をSPFとした。測定はSPFアナライザー(Labsphere社製UV-2000S)を用いた。表示されたSPFが50以上のものをa、20以上50未満のものをb、20未満のものをcとした。
〔耐久性〕
被膜を指で10回擦った前後のSPFを測定し、膜の耐久性の指標とした。最初のSPFに比べて10回摩った後のSPFが80%以上維持されていたものをa、60%以上80%未満維持されていたものをb、60%未満しか維持されていなかったものをcとした。
〔被膜感〕
被膜を手の甲に製膜した際の違和感を官能評価によって求めた。違和感を感じなかったものをa、やや気になるものをb、非常に気になるものをcとした。
〔外観〕
被膜を手の甲に製膜した際の外観を官能評価によって求めた。手の甲との一体感を感じたものをa、やや一体感があるものb、わずかに一体感があるものをcとした。
【0083】
結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
〔実施例10~13〕
噴霧用組成物として表4~表6の組成物A、組成物B又は組成物Cを用い、UV組成物として前記化粧料A、表7~表8の化粧料B又は化粧料Cを用いて、実施例2と同様にしてUV化粧料の塗布と静電スプレーを行い、実施例2と同様にして評価した。その結果を表9及び表10に示す。
〔実施例14〕
表4の噴霧用組成物Aを事前に別の基板に静電スプレーして作成した被膜を、前記化粧料Aを塗布し基板の上から貼付し、できた被膜を実施例2と同様にして評価した。その結果を表9及び表10に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
表3、表9及び表10から、本発明方法によれば、SPFが飛躍的に向上し、また当該SPF値の耐久性も良好であった。さらに、被膜感に違和感がなく、外観も良好であった。本発明方法のSPF値の向上効果は、単に紫外線吸収剤が皮膚上に存在することだけではなく、被膜上で均一に分布し、かつ皮膚上に均一に存在していることに基づくものと考えられる。
【符号の説明】
【0094】
10 静電スプレー装置
11 低電圧電源
12 高電圧電源
13 補助的電気回路
14 マイクロギヤポンプ
15 容器
16 ノズル
17 管路
18 フレキシブル管路
19 電流制限抵抗
20 筐体
図1
図2