(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】餃子の羽根形成用組成物及び羽根付き餃子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20230215BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230215BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20230215BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20230215BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L35/00
A23L5/10 E
A23L29/10
(21)【出願番号】P 2018208074
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】714004734
【氏名又は名称】テーブルマーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 ナミ
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直子
(72)【発明者】
【氏名】向井 大輔
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-296428(JP,A)
【文献】特開2013-226129(JP,A)
【文献】特開2007-319160(JP,A)
【文献】国際公開第2004/004493(WO,A1)
【文献】特開2019-041633(JP,A)
【文献】特開2007-267687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液、及び(C)
注入用の水から成る、3液型の餃子の羽根形成用組成物
であって、(A)、(B)、及び(C)をそれぞれ別々に含有する、上記餃子の羽根形成用組成物。
【請求項2】
前記(A)又は(B)のいずれかに乳化剤を含む、請求項1に記載の餃子の羽根形成用組成物。
【請求項3】
前記油脂が分散性を付与した油脂組成物である、請求項1に記載の餃子の羽根形成用組成物。
【請求項4】
前記澱粉が加工澱粉である、請求項1~3のいずれか1項に記載の餃子の羽根形成用組成物。
【請求項5】
(A')
常温で液状の油脂と、モノエステル体の含有量が50質量%以上であるジグリセリン不飽和脂肪酸エステルとモノエステル体の含有量が50質量%以上であるプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルの混合物である界面活性剤とを含む油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C')
注入用の水から成る2液型の餃子の羽根形成用組成物
であって、(A')及び(C)をそれぞれ別々に含有する、上記餃子の羽根形成用組成物。
【請求項6】
前記澱粉が加工澱粉である、請求項5に記載の餃子の羽根形成用組成物。
【請求項7】
焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液、及び(C)水をこの順で付着させる工程;及び
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
【請求項8】
焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液をこの順で付着させる工程;
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び
凍結後の餃子に(C)水をさらに付着させた後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
【請求項9】
前記(A)又は(B)のいずれかに乳化剤を含む、請求項7又は8に記載の羽根付き餃子の製造方法。
【請求項10】
前記油脂が分散性を付与した油脂組成物である、請求項7又は8に記載の羽根付き餃子の製造方法。
【請求項11】
前記澱粉が加工澱粉である、請求項7~10のいずれか1項に記載の羽根付き餃子の製造方法。
【請求項12】
焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C')水をこの順で付着させる工程;及び
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
【請求項13】
焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液を付着させる工程;
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び
凍結後の餃子に(C')水をさらに付着させた後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
【請求項14】
前記澱粉が加工澱粉である、請求項12又は13に記載の羽根付き餃子の製造方法。
【請求項15】
前記焼成前の成形した餃子が、トレーに載せられている、請求項7~14のいずれか1項に記載の羽根付き餃子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な厚さと広がりがあって、サクサクとした軽い食感の羽根を形成することができる餃子の羽根形成用組成物、及び羽根付き餃子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
餃子には、フライパンに油を引いて火にかけ、餃子の下側が焼けたら水を少々入れて蒸気加熱して仕上げる焼き餃子、熱湯の中で茹でる水餃子、焼かずに蒸気加熱のみ行う蒸し餃子などの種類がある。なかでも、日本では、焼き餃子が主流であり、外食用や店舗販売用のほか、家庭での調理や業務用惣菜として利用することを前提とした冷凍食品やチルド食品など、様々な形態で提供されている。例えば、餃子の冷凍食品は、一般に、刻んだ野菜や挽肉等を混ぜた具材を、餃子用の皮に包み、蒸す等の加熱処理をした後、凍結処理することにより製造され、家庭等では、この冷凍餃子を、油を引いたフライパン等に並べ、水を加えて蒸し焼きすることにより、焼き餃子を調理することできる。この焼き餃子の中に、「羽根付き餃子」と称する焼き餃子があり、羽根部分の形成のために、蒸し焼きする際に小麦粉を溶いた液を鍋全体に回しかけ、火加減を調節しながら焼いていくという調理方法が知られている。この羽根部分は「バリ」とも呼ばれ、こんがりと均一な焼き色がつき、サクサクとした軽く香ばしい食感が好まれている。この羽根を上手に作るためには、火加減や、小麦粉液の配合などにかなりの熟練を要するので、専門店で職人により作られるような羽根付き餃子を再現することは困難である。
【0003】
これまで家庭等でも羽根付き餃子をうまく調理するために、種々の製造方法が提案されている。例えば、水、油脂、穀物粉を主成分とする水溶き液を蒸気加熱後の餃子の羽根部に注加することを特徴とする羽根付き餃子の製造方法(特許文献1)、特定の粘度を有する酸化デンプン及び/又は酸処理デンプンのコーティング材を、餃子皮外部又は焼き面周辺部に塗布し、焼成することを特徴とする、羽根付き焼き餃子の製造方法(特許文献2)、餃子の焼き面が底面になるように配置したトレーに穀物粉を含有しないバッターを充填し、蒸し加熱することによってバッターよりなる第一層を形成した後、該トレーに水又は調味液を注ぎ込み、冷凍することにより水又は調味液よりなる第二層を形成することを特徴とする冷凍餃子の製造方法(特許文献3)、トレイに充填した餃子をトレイごと蒸した後、水、穀物粉、油、乳化剤を含む未加熱の餃子羽根形成剤をトレイに充填し、トレイごと凍結することを特徴とする、未加熱の餃子羽根形成剤と加熱済餃子とがあわさって凍結された冷凍餃子の製造方法(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5005559号
【文献】特許第4861889号
【文献】特許第4670718号
【文献】特許第6283455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の方法では、冷凍餃子の加熱調理の際に、フライパンに油を引いたり、水を添加する手間が省かれ、調理しやすさの点においては改良されたが、形成される羽根の厚さや広がり、食感については満足できるものではなかった。また、穀物粉に水のほか、油脂も加えたバッター液を用いる場合、調製したバッター液を静置しておくと水と油が分離してしまい、塗布する際にバッター液の組成にばらつきが生じてしまうため、大量生産用には不向きであった。さらに、羽根形成剤を未加熱の状態で添加する方法では、羽根を形成することは可能であるが、羽根形成剤が加熱処理されていないため、高度な衛生管理を要した。
【0006】
よって、本発明は、適度な厚さと広がりがあって、サクサクとした軽い食感の羽根部分を形成させることができ、かつ加工液の分離や衛生上の問題がない餃子の羽根形成剤、及び、餃子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、未焼成の冷凍餃子を製造する際に、餃子の焼き面となる面に、油脂、原料粉溶液(バッター液)、及び水の3層を付着させるか、分散性を付与した油脂組成物と原料粉溶液を混合した乳化バッター液、及び水の2層を付着させた後、凍結することによって製造した冷凍餃子は、焼成すると、適度な厚さと広がりがあるしっかりとした羽根が形成できること、形成された羽根はサクサクとした軽い食感であること、また、焼き色が均一で焼成時に鍋への付着がないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液、及び(C)水から成る、3液型の餃子の羽根形成用組成物。
(2)前記(A)又は(B)のいずれかに乳化剤を含む、(1)に記載の餃子の羽根形成用組成物。
(3)前記油脂が分散性を付与した油脂組成物である、(1)に記載の餃子の羽根形成用組成物。
(4)前記澱粉が加工澱粉である、(1)~(3)のいずれかに記載の餃子の羽根形成用組成物。
(5)(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C')水から成る、2液型の餃子の羽根形成用組成物。
(6)前記澱粉が加工澱粉である、(5)に記載の餃子の羽根形成用組成物。
(7)焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液、及び(C)水をこの順で付着させる工程;及び
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
(8)焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液をこの順で付着させる工程;
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び
凍結後の餃子に(C)水をさらに付着させた後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
(9)前記(A)又は(B)のいずれかに乳化剤を含む、(7)又は(8)に記載の羽根付き餃子の製造方法。
(10)前記油脂が分散性を付与した油脂組成物である、(7)又は(8)に記載の羽根付き餃子の製造方法。
(11)前記澱粉が加工澱粉である、(7)~(10)のいずれかに記載の羽根付き餃子の製造方法。
(12)焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C')水をこの順で付着させる工程;及び
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
(13)焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液を付着させる工程;
付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び
凍結後の餃子に(C')水をさらに付着させた後、凍結する工程を含む、羽根付き餃子の製造方法。
(14)前記澱粉が加工澱粉である、(12)又は(13)に記載の羽根付き餃子の製造方法。
(15)前記焼成前の成形した餃子が、トレーに載せられている、(7)~(14)のいずれかに記載の羽根付き餃子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の餃子の羽根形成用組成物及び羽根付き餃子の製造方法によれば、焼成すると餃子の周りに適度な厚さと広がりがあって、サクサクとした軽い食感の羽根部分が形成された羽根付き餃子が得られる。本発明で得られた羽根付き餃子は、羽根形成剤を含めて加熱済みの冷凍餃子であるため衛生上の問題がない。また、油や水を加えることなくフライパンなどで焼成するだけで熟練者でなくとも簡単に調理でき、しかも、焼き面にムラがなく、焼成時に鍋への張り付きがないため、皮の破れがなく、外観も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.餃子の羽根形成用組成物
本発明の第1の態様の餃子の羽根形成用組成物は、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液(バッター液)、及び(C)水から成る、3液型の餃子の羽根形成用組成物である。当該第1の態様の組成物の(A)、(B)、(C)を、焼成前の餃子の焼き面となる面に所定の手順で付着させて凍結させることより、油脂の層、原料粉溶液(バッター液)の層、水の層の3つの層からなる支持体が餃子の焼き面となる面に凍結状態で付着して餃子本体と一体化し、かつ、複数個の餃子が連結した形態の羽根付き餃子を製造することができる。
【0011】
本発明の第2の態様の餃子の羽根形成用組成物は、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C')水から成る、2液型の餃子の羽根形成用組成物である。当該第2の態様の組成物の(A')及び(C')を、焼成前の餃子の焼き面となる面に所定の手順で付着させて凍結することより、乳化バッター液の層、水の層の2つの層からなる支持体が餃子の焼き面となる面に凍結状態で付着して餃子本体と一体化し、かつ、複数個の餃子が連結した形態の羽根付き餃子を製造することができる。
【0012】
本発明において、羽根付き餃子は、焼成前の冷凍された餃子を指し、通常は、トレー入りの家庭での焼成加熱調理を前提とした冷凍食品の形態で提供される。
【0013】
餃子の羽根とは、餃子の周りから出ているいわゆる「バリ」の部分をいい、羽根付き餃子とは、この羽根部(バリ)を有する焼き餃子で、羽根部のサクサクとした軽い食感と香ばしい風味を特徴とするものである。また、羽根部以外の餃子自体は、種々の具材を餃子用の皮で包んだものを焼成した通常の焼き餃子と同じであり、具材や餃子の皮については、特に限定されるものではない。
【0014】
(油脂)
本発明の餃子の羽根形成用組成物(以下、本明細書において単に「羽根形成用組成物」、「組成物」と記載する場合がある)において使用する油脂の種類としては、一般的に食用に供される油脂であれば特に限定されるものではなく、動物油であってもよく、植物油であってもよい。該油脂として、例えば、大豆油、なたね油、コーン油、米油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、ラード、ヘッド等が挙げられる。これらの油脂のなかでも、大豆油、なたね油が好ましい。これらの油脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(分散性を付与した油脂組成物)
本発明の羽根形成用組成物において使用する「分散性を付与した油脂組成物」とは、油脂でありながら水に馴染み易い性質(水慣れ性)と、簡単な攪拌で水に均一に分散する性質(分散性)を併せもつ油脂組成物をいい、常温で液状の油脂と、界面活性剤とを含む。このような油脂組成物を用いることにより、バッター(粉の溶解液)内に油脂成分を均一に分散させることができる。
【0016】
上記の「常温で液状の油脂」は、食用に適するよう処理されたものであって常温(約15~25℃)で液状であるという要件を満たすものであれば特に限定はされないが、例えば、オリーブ油、キャノーラ油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、大豆油、コーン油、パームオレイン、なたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、綿実油などが挙げられる。これらの油脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記の「界面活性剤」は、「常温で液状の油脂」成分を水中に均一に分散させることができ、当該油脂組成物に水慣れ性又は分散性を付与できるものであれば特に限定はされないが、例えば、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0018】
上記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの原料として用いられるポリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物が挙げられる。また、ポリグリセリンは、グリシドール又はエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであってもよい。反応終了後、必要であれば中和、脱塩又は脱色などの処理を行ってもよい。該ポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が通常約2~20、好ましくは約2~10のポリグリセリンが挙げられる。具体的には、例えばジグリセリン(平均重合度:約2.0)、トリグリセリン(平均重合度:約3.0)、テトラグリセリン(平均重合度:約4.0)、ヘキサグリセリン(平均重合度:約6.0)、オクタグリセリン(平均重合度:約8.0)及びデカグリセリン(平均重合度:約10.0)などが挙げられ、特にジグリセリン又はトリグリセリンが好ましい。
【0019】
また、上記ポリグリセリンは、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、単一成分の含量を高濃度化した高純度ポリグリセリンが好ましい。具体的には、例えばグリセリン2分子からなるジグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上である高純度ジグリセリン、及びグリセリン3分子からなるトリグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上である高純度トリグリセリンなどが挙げられる。
【0020】
上記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とし、炭素原子間の結合に二重結合を含む脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸などが挙げられる。これら不飽和脂肪酸は一種類を用いてもよいし、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。また、上記原料として用いられる脂肪酸は不飽和脂肪酸を主体とし飽和脂肪酸を含む混合脂肪酸であってよく、その場合、不飽和脂肪酸の含有量は通常約50%以上、好ましくは約80%以上である。
【0021】
上記ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノエステル体の含有量が約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上であるジグリセリン不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。このような組成のジグリセリン不飽和脂肪酸エステルの好ましい製法の概略は以下の通りである。即ち、高純度ジグリセリンと不飽和脂肪酸を原料として常法によりエステル化反応を行い、反応終了後、反応混合物中に残存する触媒を中和する。中和後、反応混合物を、所望により冷却して、約100℃~180℃、好ましくは約130℃~150℃に保ち、約0.5時間以上、より好ましくは約1~10時間放置する。未反応のポリオールが下層に分離した場合はそれを除去する。上記処理後、得られたジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを、好ましくは、更に減圧下で蒸留して残存する未反応のポリオールを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上含むジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを得る。
【0022】
本発明で用いられるプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと不飽和脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、エステル化反応など自体公知の方法で製造される。該プロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とし、炭素原子間の結合に二重結合を含む脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸などが挙げられる。これら不飽和脂肪酸は一種類を用いてもよいし、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。また、上記原料として用いられる脂肪酸は不飽和脂肪酸を主体とし飽和脂肪酸を含む混合脂肪酸であってよく、その場合、不飽和脂肪酸の含有量は通常約50%以上、好ましくは約80%以上である。
【0023】
上記プロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノエステル体の含有量が約50質量%以上、好ましくは約90質量%以上であるプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。このような組成のプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルの製法の概略は以下の通りである。即ち、プロピレングリコールと不飽和脂肪酸を原料として常法によりエステル化反応を行い、反応終了後、反応混合物中に残存する触媒を中和する。中和後、反応混合物を、減圧下で蒸留して未反応のプロピレングリコールを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を約50質量%以上、好ましくは約90質量%以上含むプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルを得る。
【0024】
本発明において、「分散性を付与した油脂組成物」としては、常温で液状の油脂としてなたね油を含み、界面活性剤としてモノエステル体の含有量が約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上であるジグリセリン不飽和脂肪酸エステルと、モノエステル体の含有量が約50質量%以上、好ましくは約90質量%以上であるプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルとを含む油脂組成物が好ましい。
【0025】
また、「分散性を付与した油脂組成物」には、前記の常温で液状の油脂と、界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、「上昇融点が50~90℃の油脂」が好ましい。
【0026】
上記「上昇融点が約50~90℃の油脂」(以下「高融点油脂」という)としては、食用に適するよう処理されたものであって該要件を満たすものであれば特に制限はなく、例えばオリーブ油、キャノーラ油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、コーン油、パーム油、パーム核油、なたね油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油、牛脂、豚脂、魚油及び乳脂などの動植物油脂を分別処理したもの、水素添加処理したもの(例えば、大豆極度硬化油、なたね極度硬化油等)、さらにこれらの動植物油脂単独又は二種類以上を任意に組み合わせてエステル交換処理したものなどが挙げられる。これらの油脂は、一種類を用いてもよいし、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。上記の上昇融点は、「基準油脂分析試験法 2003年版」(社団法人 日本油化学会編)の[2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)]に準じて測定される。上昇融点が50~90℃の油脂としては、水素添加処理等により、より融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させた極度硬化油が配合されたものであることが好ましい。
【0027】
分散性を付与した油脂組成物100質量%中における各成分の含有量は、常温で液状の植物油脂が通常約70~97質量%、好ましくは約75~95質量%、高融点油脂が通常約1~20質量%、好ましくは約3~15質量%、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はプロピレングリコール不飽和脂肪酸エステルが通常約0.5~15質量%、好ましくは約1~10質量%である。油脂組成物には、更に、高融点油脂の結晶調整剤として、グリセリン脂肪酸エステル又はソルビタン脂肪酸エステルを油脂組成物100質量部に対して約0.05~3質量部程度添加してもよい。
【0028】
上記分散性を付与した油脂組成物としては、例えば、エマテックLS(理研ビタミン株式会社製)、エマテックN-100V(理研ビタミン株式会社製)、エマテックS-550(理研ビタミン株式会社製)等が好適に使用できる。なかでも、エマテックLS(理研ビタミン株式会社製)が好ましい。
【0029】
上記の油脂又は分散性を付与した油脂組成物は、焼成後の羽根部及び餃子の焼き面の食感、またフライパンなどの調理器具からの取り出しやすさの観点から、羽根形成用組成物全量に対し、例えば5~50質量%、好ましくは10~30質量%を使用する。
【0030】
(澱粉、穀物粉)
本発明の羽根形成用組成物において使用する澱粉としては、一般的に食用に供される澱粉であれば特に限定されるものではなく、例えば、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、又はこれらの加工澱粉が挙げられる。これらの澱粉は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記加工澱粉としては、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アルファ化澱粉、酸処理澱粉、架橋澱粉、油脂加工澱粉などが挙げられるが、酸化澱粉が好ましい。酸化澱粉とは、酸化剤で処理した澱粉であり、例えば、酢酸澱粉、アセチル化酢酸澱粉等が挙げられる。酸化澱粉の原料となる澱粉としては、その種類に制限はなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉などが挙げられる。酸化澱粉は、上記原料澱粉を、常法に従って次亜塩素酸ナトリウム、無水酢酸、過酸化水素、硝酸などの酸化剤で処理することにより製造することができ、例えば、スタビローズY(松谷化学(株)社製)、スタビローズK(松谷化学(株)社製)、スタビローズBM(松谷化学(株)社製)、スタビローズT-10(松谷化学(株)社製)、フローマックス8(イングレディオン・ジャパン(株)社製)等の市販品を利用してもよい。また、上記の加工澱粉は、同種又は異種の処理を2種以上組み合わせて行ったものであってもよい。また、化学的処理に加えて、湿熱処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理等の物理的処理を行ったものでもよい。
【0032】
本発明の羽根形成用組成物において使用する穀物粉としては、一般的に食用に供される穀物粉であれば特に限定されるものではなく、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉)、大麦粉、とうもろこし粉、米粉、そば粉、馬鈴薯粉、えん麦粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、粟粉、きび粉等が挙げられる。これらの穀物粉は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明において、上記の原料粉(澱粉及び/又は穀物粉)の水への溶解液若しくは混合液を「バッター」又は「バッター液」という。
【0034】
上記の原料粉(澱粉及び/又は穀物粉)は、焼成時の羽根部の広がりや大きさ、焼成後の羽根部の食感の観点から、組成物全量に対し、例えば5~80質量%、好ましくは10~70質量%を使用する。
【0035】
(水)
本発明の羽根形成用組成物において使用する水は、水道水、精製水など、食品製造に通常使用することができる水であれば、特に限定されない。水の温度は、原料粉の溶解用、注入用のいずれの場合も、特に限定されず、室温程度であればよい。
【0036】
上記の水は、焼成時の羽根部の広がりや大きさ、餃子の皮の食感、餃子の昇温の観点から、組成物全量に対し、例えば10~90質量%、好ましくは30~80質量%を使用する。
【0037】
(乳化剤)
第1の態様の羽根形成用組成物に乳化剤を使用する場合は、(A)油脂又は(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液(バッター液)のいずれかに配合すればよく、油脂として(A)’分散性を付与した油脂組成物を使用する場合は配合しなくてもよい。本発明において使用する乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン系乳化剤;モノグリセライド、ジグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル系乳化剤;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル系乳化剤;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールオレエート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル系乳化剤;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル系乳化剤等が挙げられる。上記の乳化剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、乳化の補助や生地の結着性向上のために、タンパク質を用いることできる。タンパク質としては、例えば、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳、分離大豆タンパク等が挙げられる。
【0038】
上記の乳化剤は、焼成時の羽根部の広がりや大きさ、焼成後の羽根部の食感の観点から、組成物全量に対し、例えば0.1~10質量%、好ましくは1~5質量%を使用する。
【0039】
(他の原料)
羽根形成用組成物には、上記の主原料のほか、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、呈味の調整、食感・焼き色の改善、原料粉の水への溶解・分散性の向上などを目的として他の原料を使用してもよい。その他の原料としては、例えば、増粘多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン等)、調味料(食塩、糖類、醤油、みりん、アミノ酸又はその塩、酵母エキス等のエキス類)、膨張剤(ベーキングパウダー、重炭酸ソーダ等)、香辛料などが挙げられる。これらの原料は、使用目的により、いずれの層に使用するかを決定すればよい。
【0040】
2.羽根付き餃子の製造方法
本発明の羽根付き餃子は、上記の餃子の羽根形成用組成物を用いて以下のいずれかの方法に製造できる。
【0041】
本発明の第1の態様の羽根形成用組成物を用いる場合は、焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液、及び(C)水をこの順で付着させる工程;及び付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を実施する。あるいは、焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A)油脂、(B)澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液をこの順で付着させる工程;付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び凍結後の餃子に(C)水をさらに付着させた後、凍結する工程を実施してもよい。
【0042】
本発明の第2の態様の羽根形成用組成物を用いる場合は、焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液、及び(C’)水をこの順で付着させる工程;及び付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程を実施する。あるいは、焼成前の成形した餃子の皮の焼き面となる面に、(A')分散性を付与した油脂組成物と、澱粉及び穀物粉から選ばれる少なくとも1種の原料粉の溶液を混合した乳化バッター液を付着させる工程;付着後の餃子を蒸気加熱した後、凍結する工程;及び凍結後の餃子に(C')水をさらに付着させた後、凍結する工程を実施してもよい。
【0043】
本発明において、焼き面となる面(本明細書において単に「焼き面」と記載する場合がある)とは、餃子の表面のうち、加熱された鍋(フライパン等)と接する面をいう。
【0044】
まず、羽根形成用組成物で加工する前の餃子は通常の餃子の製造方法に従って調製すればよい。本発明において用いられる餃子用皮は、餃子を製造する際に具材を包むシートであって、一般的に餃子の製造に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。一般的には、小麦粉を主成分とする原料に、水や塩を添加して混捏し、得られた生地に対して圧延と熟成を繰り返して薄いシート状にした後、所定の形状に打ち抜くことにより製造される。本発明においては、具材を包むシート状のものであれば、小麦粉以外の穀物粉、例えば米粉、そば粉等を原料として含有するシートであってもよく、副原料としてデンプン類や品質改良剤等を含有するシートであってもよい。また、餃子用皮の厚さは特に限定されるものではないが、0.2~2mm程度であることが好ましい。
【0045】
餃子に用いられる具材もまた、特に限定されるものではなく、一般的に餃子の具材として用いられる食材を適宜用いることができる。例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉等の肉類、ニラ、タマネギ、キャベツ、ショウガ、ニンニク等の野菜類、塩、胡椒、砂糖、酒等の調味料、ラード、大豆油、菜種油、胡麻油等の油脂類等が挙げられる。具材は、混捏して混捏物とした後に餃子用皮に包むため、肉類は挽肉や細切れ肉であることが好ましく、野菜類はみじん切り等により細断したものであることが好ましい。
【0046】
適当な量の具材を餃子用皮に包んで成形した生餃子の形状は、少なくとも一つの焼き面を有するものであればいかなる形状の餃子であってもよい。例えば、具材を包んだ餃子用皮の縁をひだ状に成形したものであってもよく、略球形で、底面が平坦、すなわち底面が焼き面で上端がひねられているいわゆるチョボ型のものであってもよい。
【0047】
調製した餃子は、トレーに並べた後、上記のような工程で羽根形成用組成物を用いて加工する。餃子は、焼き面となる面がトレーの底面側となるようにトレーに詰める。トレーは、一般に冷凍食品に用いられるトレーであれば特に限定されるものではなく、ポリプロピレン等の合成樹脂やパルプ繊維等を所定形状に成型したものが用いられる。トレーの形状としては、個々の餃子が収容される位置に凹部が形成されたものであってもよいが、本発明においては底面が平坦なトレーを用いることが好ましい。
【0048】
餃子の皮の焼き面となる面への組成物の各成分の付着方法は、トレーに並べられた餃子の上方より注入する方法により行う。注入した液はトレー底面に溜まるためである。
【0049】
焼き面となる面に付着させる羽根形成用組成物の量は、適度な厚さと広がりのある羽根を形成でき、サクサクとした軽い食感を与えるともに、油を塗布されていないフライパン等の鍋で加熱した場合に、均一な焼き色を付けられ、鍋への張り付きを抑制できる量であれば、特に限定されるものではなく、その組成や、餃子の形状や大きさ、焼き面の面積等を考慮して適宜決定することができるが、例えば、餃子1個(約20g)あたり、油脂と原料粉の合計量(注入用の水を除く)が、0.5~5gが好ましく、1~3gがより好ましい。
【0050】
上記工程中、蒸気加熱は、常法により行うことができる。蒸し時間や温度は、餃子の大きさ、羽根付き組成物の付着量等により適宜決定することができる。例えば、5~15分間、75~98℃が例示できる。
【0051】
上記工程中、凍結もまた、常法により行うことができる。例えば、エアーブラスト式凍結法、セミエアーブラスト式凍結法、コンタクト式凍結法等の凍結法に基づくフリーザーに設置して凍結してもよく、液化窒素や液化炭酸を噴霧して凍結させてもよい。
【0052】
このようにして製造された羽根付き餃子は、油を引かず、水を添加しないこと以外は、従来の調理法により調理することができる。例えば、油を引いていない加熱したフライパン等の鍋上に、トレーから取り出した冷凍餃子を、焼き面が鍋に接するように載置し、蒸し焼きにすることにより、均一に良好な焼き色のついた羽根付き焼き餃子を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
実施例で用いた原料の入手先を以下に記載する。
<油脂>
大豆油:昭和産業(株)社製
<分散性の付与された油脂組成物>
エマテックLS:理研ビタミン(株)社製
<酸化澱粉>
スタビローズY:松谷化学(株)社製
<乳化剤>
大豆レシチン:辻製油(株)社製
サンレシチン:太陽化学(株)社製
【0054】
(参考例)餃子の製造
各実施例で用いた餃子は以下のとおり製造した。餃子は、畜肉(豚肉、鶏肉)2.1g、野菜類(キャベツ、タマネギ、ニラ)8.5g、香辛料及び調味料3.1gを混合した中具13.7gを餃子用皮で包み、1個当たりの総重量が約21gの生餃子を作成し、蒸し加熱を行ってから急速凍結し、加熱済み冷凍餃子とした。
【0055】
(実施例1)羽根形成用組成物の基本処方とその添加方法の検討
1.試験品の調製
(試験区1-1、1-2)
表1に示す配合量に従い、粉溶解用の水に小麦澱粉と卵白粉を混合し、続いて、乳化剤(大豆レシチン)を融解したなたね油を徐々に添加しながらバーミックスで5分間攪拌することにより調製した乳化バッター液(1)、及び注入用の水(2)から成る2液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0056】
(試験区1-3、1-4)
表1に示す配合量に従い、なたね油(1)、粉溶解用の水に小麦澱粉と卵白粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0057】
(試験区1-5、1-6)
表1に示す配合量に従い、乳化剤(大豆レシチン)を添加したなたね油(1)、粉溶解用の水に小麦澱粉と卵白粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0058】
(試験区1-7、1-8)
表1に示す配合量に従い、なたね油(1)、粉溶解用の水に小麦澱粉と卵白粉と乳化剤(大豆レシチン)を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0059】
2.羽根付き餃子の製造
1.の各試験品を用い、試験区1-1については下記条件X-1、試験区1-2については下記条件X-2によって、試験区1-3~1-8については、下記条件Y-1又は条件Y-2によって羽根付き餃子を製造した。なお、各試験品の餃子1個あたりの塗布量は13.5g(油脂と粉溶解液:1g、水:12.5g)とした。
【0060】
条件X-1:トレーに乳化バッター液(1)を注入し、その上に餃子を並べる。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)し、注入用の水(2)を注入してさらに凍結(-25℃)する。
条件X-2:トレーに餃子を並べ、その上から乳化バッター液(1)を注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)し、注入用の水(2)を注入してさらに凍結する。
条件Y-1:トレーに餃子を並べ、その上から油脂又は乳化剤添加油脂(1)、バッター液又は乳化剤添加バッター液(2)の順で注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)し、注入用の水(3)を注入してさらに凍結する。
条件Y-2:トレーに餃子を並べ、その上から油脂又は乳化剤添加油脂(1)、バッター液又は乳化剤添加バッター液(2)、注入用の水(3)の順で注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)する。
【0061】
3.焼成及び品質評価試験
製造した各試験区の羽根付き餃子をトレーから取り出し、家庭用フライパン(直径26cm)に油を引かずに12個並べて蓋をして中火で約5分間焼成加熱した後、蓋をとって残った水気を蒸発させて、調理を終了した。
【0062】
品質評価は、「羽根の形成」、「焼き色の均一性」、「張り付き(焼成時のフライパンへの張り付き)の発生」について、下記の基準によって行った。
(羽根の形成)
○:適度な厚みと広がりのあるしっかりとした羽根が形成される。
△:羽根は形成されるが、厚みと広がりが十分でない。
×:羽根が形成されないか、形成されても薄くて脆い。
【0063】
(焼き色の均一性)
○:焼き色が均一である。
△:一部に不均一な焼き色が見られる。
×:焼き色が全体的にまだらで、ムラがある。
【0064】
(張り付きの発生)
○:フライパンへの張り付きが見られず、きれいに剥がれる。
△:剥がれにくく、一部付着が見られる。
×:フライパンに付着し、剥がれにくい。
【0065】
(食感)
○:サクサクとして軽い食感であった。
△:少し重い食感であった。
×:重い食感であり、歯に付着する感じがあった。
【0066】
(総合評価)
◎:特に良好であった。
○:良好であった。
△:標準的であった。
×:不良であった。
【0067】
評価結果を表1に合わせて示す。
【0068】
【0069】
表1に示すように、油脂又は乳化剤添加油脂、バッター液又は乳化剤添加バッター液、及び水から成る3液型の餃子の羽根形成用組成物を用い、トレー内の餃子の上から順次添加する方法で製造した羽根付き餃子は、適度な厚さと広がりがあるしっかりとした羽根が形成され、均一な焼き色となり、フライパンへの張り付きも発生せず、食感も良好であった(試験区1-3~1-8)。特に試験区1-6では羽根が良好に形成され、総合評価が高かった。これに対し、乳化バッター液と水から成る2液型の餃子の羽根形成用組成物を用いると、羽が形成されないか脆く、焼き色もまだらで、フライパンへの張り付きが発生した(試験区1-1、1-2)。
【0070】
(実施例2)羽根形成用組成物の油脂の種類、原料粉の種類、乳化剤の種類の検討
1.試験品の調製
(試験区2-1、2-2、2-3)
表2に示す配合量に従い、粉溶解用の水に、酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合し、続いて、分散性の付与された油脂組成物(以下、「油脂組成物」という。エマテックLS)又は乳化剤(大豆レシチン又はサンレシチン)を融解した大豆油を徐々に添加しながらバーミックスで5分間攪拌することにより調製した乳化バッター液(1)、及び注入用の水(2)から成る2液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0071】
(試験区2-4)
表2に示す配合量に従い、大豆油(1)、粉溶解用の水に酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0072】
(試験区2-5、2-6)
表2に示す配合量に従い、乳化剤(大豆レシチン又はサンレシチン)を添加した大豆油(1)、粉溶解用の水に酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0073】
(試験区2-7)
表2に示す配合量に従い、油脂組成物(エマテックLS)(1)、粉溶解用の水に酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0074】
(試験区2-8、2-9)
表2に示す配合量に従い、大豆油(1)、粉溶解用の水に乳化剤(大豆レシチン又はサンレシチン)と酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0075】
2.羽根付き餃子の製造
1.の各試験品を用い、試験区2-1~2-3については下記条件X-2、試験区2-4~2-9については下記条件Y-2にて羽根付き餃子を製造した。なお、各試験品の餃子1個あたりの塗布量は13.5g(油脂と粉溶解液:1g、水:12.5g)又は6.4g(油脂と粉溶解液:0.5g、水:5.9g)とした。
【0076】
条件X-2:トレーに餃子を並べ、その上から乳化バッター液(1)を注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)し、注入用の水(2)を注入してさらに凍結する。
条件Y-2:トレーに餃子を並べ、その上から乳化剤添加油脂又は油脂組成物(1)、バッター液又は乳化剤添加バッター液(2)、注入用の水(3)の順で注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)する。
【0077】
3.焼成及び品質評価試験
実施例1と同様にして、製造した各試験区の羽根付き餃子を調理し、品質評価を行った。結果を表2に合わせて示す。
【0078】
【0079】
表2に示すように、油脂又は乳化剤添加油脂、バッター液又は乳化剤添加バッター液、及び水から成る3液型の餃子の羽根形成用組成物を用いてトレー内の餃子の上から順次添加する方法で製造した羽根付き餃子は、適度な厚さと広がりがあるしっかりとした羽根が形成され、均一な焼き色となり、フライパンへの張り付きもも発生せず、食感も良好であった(試験区2-4、2-5、2-6、2-8、2-9)。特に、油脂組成物、バッター液、及び水から成る3液型の餃子の羽根形成用組成物を用いてトレー内の餃子の上から順次添加する方法で製造した羽根付き餃子は、羽根の形成、焼き色の均一性、フライパンへの張り付き、食感のいずれの評価も高く(試験区2-7)、また、油脂組成物は、粉と混合して乳化バッター液とした場合も、同様に良好な結果が得られることが示された(試験区2-3)。これに対し、通常の油脂(大豆油)と粉を混合した乳化バッター液と水から成る2液型の餃子の羽根形成用組成物を用いると、羽が形成されないか脆く、焼き色もまだらで、フライパンへの張り付きが発生した(試験区2-1、2-2)。
【0080】
(実施例3)羽根形成用組成物の油脂の種類、原料粉の種類、添加方法の検討
1.試験品の調製
(試験区3-1~3-4)
表3に示す配合量に従い、粉溶解用の水に、原料粉(酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉、又は、小麦澱粉と卵白粉)を混合し、続いて、油脂組成物(エマテックLS)又は乳化剤(大豆レシチン)を融解した大豆油を徐々に添加しながらバーミックスで5分間攪拌することにより調製した乳化バッター液(1)、及び注入用の水(2)から成る2液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0081】
(試験区3-5)
表3に示す配合量に従い、大豆油(1)、粉溶解用の水に酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0082】
(試験区3-6)
表3に示す配合量に従い、油脂組成物(1)、粉溶解用の水に酸化澱粉(スタビローズY)と小麦粉を混合したバッター液(2)、及び注入用の水(3)から成る3液型の羽根形成用組成物を調製した。
【0083】
2.羽根付き餃子の製造
1.の各試験品を用い、試験区3-1~3-4については下記条件X-1又はX-3、試験区3-5及び3-6については下記条件Y-2にて羽根付き餃子を製造した。なお、各試験品の餃子1個あたりの塗布量は又は6.1g(油脂と粉溶解液:0.45g、水:5.65g)とした。
【0084】
条件X-1:トレーに乳化バッター液(1)を注入し、その上に餃子を並べる。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)し、注入用の水(2)を注入してさらに凍結(-25℃)する。
条件X-3:トレーに餃子を並べ、その上から乳化バッター液(1)、注入用の水(2)の順で注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)する。
条件Y-2:トレーに餃子を並べ、その上から油脂又は油脂組成物(1)、バッター液(2)、注入用の水(3)の順で注入する。蒸気加熱(98℃、9分)した後、凍結(-25℃)する。
【0085】
3.焼成及び品質評価試験
実施例1と同様にして、製造した各試験区の羽根付き餃子を調理し、品質評価を行った。結果を表3に合わせて示す。
【0086】
【0087】
表3に示すように、油脂又は油脂組成物、バッター液、及び水から成る3液型の餃子の羽根形成用組成物を用いてトレー内の餃子の上から順次添加する方法で製造した羽根付き餃子は、適度な厚さと広がりがあるしっかりとした羽根が形成され、均一な焼き色となり、フライパンへの張り付きも発生せず、食感も良好であった(試験区3-5、3-6)。また、油脂組成物と粉を混合した乳化バッター液、水から成る2液型の餃子の羽根形成用組成物を用いて製造した羽根付き餃子もまた同様に優れた評価が得られた(試験区3-2、3-4)。これに対し、通常の油脂(大豆油)と粉を混合した乳化バッター液を用いると、羽が形成されないか脆く、焼き色もまだらで、フライパンへの張り付きが発生した
(試験区3-1、3-3)。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、適度な厚さと広がりがあって、食感の優れた羽根部分を有する羽付き餃子を製造することができる。よって、本発明は、冷凍餃子の製造分野において利用できる。