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特許7227738皮膜形成用組成物、該皮膜形成用組成物を塗工してなるガラス基材、及び、該ガラス基材を用いてなるタッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】皮膜形成用組成物、該皮膜形成用組成物を塗工してなるガラス基材、及び、該ガラス基材を用いてなるタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20230215BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230215BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20230215BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230215BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230215BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230215BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C09D183/07
C09D7/63
G03F7/075 511
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G06F3/041 495
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018209668
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020075992
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】池堂 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勝利
(72)【発明者】
【氏名】中野 正
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212114(JP,A)
【文献】特開2015-193820(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150421(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150420(WO,A1)
【文献】特開2018-076443(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185435(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
G03F 7/00
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件1を満足するポリシロキサン化合物、分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含有することを特徴とする皮膜形成用組成物。
条件1
前記ポリシロキサン化合物を構成する材料として、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)とを含む。
【請求項2】
前記シラン系化合物(A)は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であり、前記シラン系化合物(B)は、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランの群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項3】
前記シラン系化合物(A)は、テトラエトキシシランであり、前記シラン系化合物(B)は、メチルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランである請求項2に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項4】
前記分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物は、αもしくはβ-メルカプトカルボン酸とポリオールとをエステル化して得られるポリチオール化合物及びメルカプトアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応して得られるポリチオール化合物の群から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の皮膜形成用組成物。
【請求項5】
前記シラン系化合物(C)は、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン系化合物である請求項1~4のいずれかに記載の皮膜形成用組成物。
【請求項6】
さらに、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体を含有する請求項1~5のいずれかに記載の皮膜形成用組成物。
【請求項7】
前記シラン系化合物(A)と前記シラン系化合物(B)との含有比率が、モル比で1:0.1~1:10である請求項1~6のいずれかに記載の皮膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の皮膜形成用組成物を塗工してなることを特徴とするガラス基材。
【請求項9】
請求項8に記載のガラス基材を用いてなることを特徴とするタッチパネル。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載の皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成用組成物、該皮膜形成用組成物を塗工してなるガラス基材、及び、該ガラス基材を用いてなるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット型PCで利用されるタッチパネルは、パネル表面に触れた指等の位置や動作を検知して、ディスプレイ上の対応する位置に表示されたアイコン等のクリック、画面の拡大や縮小、スクロール等を可能にする装置である。このタッチパネルの指等の位置や動作を検知する手段として、現在のところ、抵抗膜方式と静電容量方式の二つが多用されている。
【0003】
抵抗膜方式では、指の押圧により起こる電極層間の電圧変動を、また、静電容量方式では、指がパネル表面に接近・接触したときに起こる静電容量の変化を、それぞれセンサー部分で電気信号に変換することにより、指の位置や動きの情報を得る仕組みとなっている。そして、センサー部分は、電極層や絶縁層等の組み合わせにより構成されている。
【0004】
この様なタッチパネルは、ディスプレイの上面に設けられるため、使用する部材には、ディスプレイの表示の視認性を妨げることがないよう、高い透明性が要求される。したがって、電極層や絶縁層を形成する材料は、当然、透明性の高い皮膜を形成できるものでなければならない。
【0005】
絶縁層を形成する材料としては、無機系、有機系、さらにはその両方の系からなる各種透明絶縁材料が利用されている。そして、より高い透明性を確保するために、透明性に優れた皮膜形成能力を有する材料が選択されるばかりでなく、絶縁層により覆われる面積についても、必要最小限となるように設けられる。
【0006】
ところで、電極層や絶縁層の形成には、主としてフォトリソグラフィー法が利用される。フォトリソグラフィー法(ネガ型)では、まず基材に、紫外線等の活性エネルギー線に対して硬化性(現像液に対する不溶解性)を有する材料の皮膜を、塗工手段等で形成する。その後、露光工程で活性エネルギー線を、未露光部位を遮蔽するパターンが形成されたフィルム等を通して照射し、硬化皮膜となる露光部位と未硬化のままの未露光部位とを選択的に形成し、次いで、現像工程で未露光部位を現像液で溶解・除去する。
【0007】
このときに、絶縁層の形成不全を原因として、電極層の間で十分な絶縁性が得られなくなると、電気的な短絡が起こり、正常なタッチパネルの機能が失われる可能性がある。したがって、絶縁層を形成する材料には、フォトリソグラフィー法の露光工程で確実に硬化皮膜を形成し、また、現像工程では、硬化皮膜が安定的にパターン通りの形状のままで残るという性能が必要になる。
【0008】
以上を総括すると、絶縁層を形成する材料では、まず、高い透明性と、好ましくは、より透明性を高めるために薄膜化されても絶縁性能を維持できるような高い絶縁性が要求される。また、フォトリソグラフィー法に提供可能とするために、活性エネルギー線による皮膜硬化性、現像液に晒されても皮膜が除去されることがないような硬化皮膜自体の耐腐食性と透光性基板やITO電極層に対する密着性、さらに上面に金属配線層が形成されたときの金属配線層に対する密着性も要求される。
【0009】
これらの要求性能の面から、分子内にシロキサン結合を有する化合物((ポリ)シロキサン化合物)の適性について考察すると、大きな結合エネルギーに起因して化学的な安定性が高いことから、耐熱性や耐腐食性に優れるほか、透明性の高い皮膜を形成する材料が得られやすいという特徴を有する。さらに、分子内に有機官能基等を導入することも容易で、皮膜形成材料としたとき、得られる皮膜の柔軟性、種々の材料表面に対する密着性、溶剤や現像液に対する溶解性のコントロールがし易い。また、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する官能基を導入すると、フォトリソグラフィー法に提供可能となる。
【0010】
以上の様な理由から、ポリシロキサン化合物は、絶縁層形成材料の有力な候補と目され、活用のための技術開発も進んでいる。例えば、特定のシラン又はその縮合体を加水分解縮合させて得られるポリシロキサン、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物、光ラジカル重合開始剤を含有し、耐熱透明性、硬度、耐擦傷性、耐熱クラック性、密着性、感度及び現像性等の諸特性を高水準でバランスよく両立可能な硬化膜の形成に有効な感放射線性組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0011】
また、架橋性官能基を有するシロキサンオリゴマーと、重合開始剤の組み合わせに、さらに密着促進剤を含有させた絶縁材料用組成物も知られている(例えば、特許文献2)。そして、特許文献2では、密着促進剤として、アルミニウム及び/またはジルコニウムの配位化合物、カルボジイミド化合物、メルカプトシラン化合物を利用することにより、ガラス、ITO、及び金属に対する密着性が向上し、電子デバイスから絶縁性皮膜が剥離することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2012-212114号公報
【文献】WO2014/185435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
絶縁層形成材料を用いて、フォトリソグラフィー法により絶縁層を形成しようとすると、まず、露光部の硬化した皮膜と、未露光部の硬化していない皮膜とで、相反する性能が要求される。すなわち、現像液に晒されたときに、硬化した皮膜は溶解せずに残り、一方、硬化していない皮膜は速やかに溶解して除去される、という性能が必要になる。また、硬化した皮膜自体は溶解しなくても、皮膜と透光性基板やITO電極との界面の化学的吸着力(密着性)が弱いと、現像液の浸食により皮膜が容易に剥離するため、界面の密着性も必要になる。もちろん、絶縁層形成材料自体の性能として、保存の間の粘度安定性と硬化反応が進まないような反応抑制効果、フォトリソグラフィー法の活性エネルギー線による鋭敏な皮膜の硬化性も必要である。
【0014】
シラン系化合物を縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物の特性は、元となるシラン系化合物の置換基や分子構造等に依存する。例えば、反応成分として、親水性のアミノ基で置換されたシラン系化合物を含む場合、この成分が多くなるにつれて、得られるシロキサン化合物の親水性も高くなる。したがって、反応成分として用いるシラン系化合物の選択により、目的とする利用分野で要求される性能に合わせたポリシロキサン化合物の分子設計が可能である。
【0015】
しかし、逆に言うと、異なる置換基や分子構造を有する多様なシラン系化合物が存在する中で、上記の数々の要求性能を満足するための最適な組み合わせを見出すことは、多くの労力を要することを意味する。さらにポリシロキサン化合物以外の材料も含んで、それら全部の材料の複合作用により物性が発現する系では、なおさらのことである。
【0016】
このような状況で、本発明が解決しようとする課題は、以下のような優れた特性を有する皮膜形成用組成物を提供することである。その特性とは、まずは基本性能として、ラジカル重合性を持たせてフォトリソグラフィー法に提供可能としながら、保存の間の安定性(粘度安定性、反応抑制効果)に優れる。次いで、フォトリソグラフィー法で利用する際は、簡単な塗工方法で塗工が可能である。また、露光部で形成される硬化皮膜は、現像液に対して溶解や浸食され難く、さらにはタッチパネル等の透光性基板やITO電極、金属電極に対する密着性に優れる。一方、未露光部の硬化していない皮膜は、現像液に容易に溶解して速やかな除去が可能であり、結果として高い現像性を有する。そして、最終的に得られる硬化皮膜は、ポリシロキサン化合物の優れた光学特性と化学的安定性をそのまま生かして、透明で、薄膜でも高い絶縁性を有する、というものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリシロキサン化合物の反応成分として、全ての置換基がアルコキシ基であるシラン系化合物、アルキル基、シクロアルキル基及びフェニル基の群から選択される置換基を少なくとも一つ有するシラン系化合物、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物を含有し、さらに、特定のポリチオール化合物を架橋剤として利用することにより、上記の課題をすべて解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0018】
すなわち、本発明は、下記の条件1を満足するポリシロキサン化合物、分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物、重合開始剤及び有機溶剤を含有することを特徴とする皮膜形成用組成物に関するものである。
条件1
上記ポリシロキサン化合物を構成する材料として、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)とを含む。
また、本発明は、上記シラン系化合物(A)は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であり、上記シラン系化合物(B)は、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランの群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明は、上記シラン系化合物(A)はテトラエトキシシランであり、上記シラン系化合物(B)はメチルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランであることが好ましい。
また、本発明は、上記分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物は、αもしくはβ-メルカプトカルボン酸とポリオールとをエステル化して得られるポリチオール合物及びメルカプトアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応して得られるポリチオール化合物の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明は、上記シラン系化合物(C)は、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン系化合物であることが好ましい。
また、本発明は、さらに、ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体を含有することが好ましい。
また、本発明は、上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(B)との含有比率が、モル比で1:0.1~1:10であることが好ましい。
また、本発明は上記本発明の皮膜形成用組成物を塗工してなることを特徴とするガラス基材に関するものでもある。
また、本発明は上記本発明のガラス基材を用いてなることを特徴とするタッチパネルに関するものでもある。
また、本発明は、上記本発明の皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法でもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の皮膜形成用組成物は、ラジカル重合性を持たせてフォトリソグラフィー法に適用可能としながら、保存の間の安定性(粘度安定性、反応抑制効果)に優れる。また、フォトリソグラフィー法で利用する際は、簡単な塗工方法で塗工が可能で、露光部で形成される硬化皮膜は、現像液に対して溶解や浸食され難く、さらにはタッチパネル等の透光性基板やITO電極、金属電極に対する密着性に優れ、未露光部の硬化していない皮膜は、現像液に容易に溶解して速やかな除去が可能であり、結果として高い現像性を有する。そして、最終的に得られる硬化皮膜は、ポリシロキサン化合物の優れた光学特性と化学的安定性をそのまま生かして、透明で、薄膜でも高い絶縁性を有する。
以下、本発明の皮膜形成用組成物について詳細に説明する。
【0020】
(ポリシロキサン化合物)
本発明の皮膜形成用組成物は、下記の条件1を満足するポリシロキサン化合物を含有する。
条件1
上記ポリシロキサン化合物を構成する材料として、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)とを含む。
【0021】
<シラン系化合物(A)>
上記シラン系化合物(A)は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種である。
上記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン等を挙げることができる。
また、上記ビス(トリアルコキシシリル)アルカンとしては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン等を挙げることができる。
その中でも、汎用性の面から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンが好適であり、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランがより好適である。
【0022】
<シラン系化合物(B)>
上記シラン系化合物(B)は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種である。
上記シラン系化合物(B)は、飽和炭化水素基を有するものとしては、アルキルトリアルコキシシランが好ましく、不飽和炭化水素基を有するものとしては、フェニルトリアルコキシシランが好ましい。
【0023】
上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリイソプロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ-n-ブトキシシラン、イソプロピルトリイソブトキシシラン、イソプロピルトリ-sec-ブトキシシラン、イソプロピルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
上記ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n--n-プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジイソブトキシシラン、ジメチルジ-sec-ブトキシシラン、ジメチルジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジイソブトキシシラン、ジエチルジ-sec-ブトキシシラン、ジエチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジイソプロポキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジイソブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ-n-プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ-n-ブトキシシラン、ジイソプロピルジイソブトキシシラン、ジイソプロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジ-n-プロポキシシラン、ジイソブチルジイソプロポキシシラン、ジイソブチルジ-n-ブトキシシラン、ジイソブチルジイソブトキシシラン、ジイソブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
上記シクロアルキルトリアルコキシシランとしては、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリ-n-プロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリ-n-ブトキシシラン、シクロペンチルトリイソブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-プロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリイソブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
上記ビニルトリアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
上記フェニルトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリソプロポキシシラン、フェニルトリ-n--n-ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
なかでも、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランの群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、メチルトリエトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランがより好適である。
【0024】
<シラン系化合物(C)>
上記シラン系化合物(C)は、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する。
上記シラン系化合物(C)として、好ましくは、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)エチルジエトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン等の(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)シラン化合物、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルシラン化合物を挙げることができる。
【0025】
<任意に含んでも良い他のシラン系化合物(シラン系化合物(D)>
上記ポリシロキサン化合物を構成する縮合前のシラン系化合物としては、必要に応じて、例えば、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物等を加えても良い。
ここで、上記分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物としては、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルジメトキシシラン、(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0026】
<シラン系化合物の含有比率>
上記ポリシロキサン化合物を構成する縮合前のシラン系化合物の中で、上記シラン系化合物(A)は、後記のフォトリソグラフィー法によって本発明の皮膜形成用組成物を塗工して硬化皮膜を形成する際に、現像液に対する未露光部の光硬化していない部位及び露光部の光硬化した部位の溶解性を高くする成分として作用する。また、上記シラン系化合物(B)は、現像液に対する未露光部の光硬化していない部位及び露光部の光硬化した部位の溶解性を低くする成分として作用する。
したがって、現像性と硬化皮膜のパターン形状の維持安定性とのバランスの面から、上記シラン系化合物(A)と上記シラン系化合物(B)との含有比率が、モル比で1:0.1~1:10であることが好ましく、1:0.5~1:5であることがより好ましい。
ここで、上記シラン系化合物(A)の含有比率が上記の範囲より高くなると、フォトリソグラフィー法の現像工程において、露光部の光硬化した皮膜が現像液に溶解しやすくなり、また被着体との密着面が浸食されやすくなるため、安定的にパターン通りの形状を維持できなくなる可能性がある。一方、上記シラン系化合物(A)の含有比率が上記の範囲より低くなると、未露光部の硬化していない皮膜が除去されるまでに長時間を要するため、完全に除去されずに残存する傾向が高くなって、結果的にディスプレイに映る画像の鮮明さや明るさを低下させる原因になる可能性がある。
【0027】
上記シラン系化合物(C)は、フォトリソグラフィー法により硬化皮膜を形成する際に、光硬化反応性を高くする成分として作用する。したがって、上記シラン系化合物(C)の光硬化反応性の面から、上記シラン系化合物(C)と上記その他のシラン系化合物(上記シラン系化合物(A)、(B)及び任意に含んでも良い他のシラン系化合物(D))との含有比率が、モル比で1:0.1~1:10であることが好ましく、1:0.5~1:5であることがより好ましい。
【0028】
<ポリシロキサン化合物の製造方法>
次に、上記ポリシロキサン化合物の製造方法について説明する。
上記ポリシロキサン化合物の製造方法としては、例えば、適切な容器内で上記シラン系化合物(A)~(C)及び任意に含んでも良い他のシラン系化合物(D)を混合した後、水、重合触媒、必要に応じて反応溶媒を添加して加水分解させて縮合させる方法等が利用できる。ここで、上記水の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての加水分解性の置換基の数に対して、水の分子が同じ数になる程度の量が好適である。
そして、本発明で利用される主要なシラン系化合物では、加水分解性の置換基を一分子あたり3または4個有することから、その様なシラン系化合物が多く含まれるときは、簡易的に水の量を、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、水の分子の数が3~4倍(モル比として、シラン系化合物の全量:水=1:3~4)となる程度の量としてもよい。
また、重合触媒としては、例えば、酢酸、塩酸等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基触媒を用いることができる。そして、重合触媒の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、重合触媒の分子の数が0.05~0.2倍(モル比として、シラン系化合物の全量:重合触媒=1:0.05~0.2)になる程度の量が好適である。
また、反応溶媒としてはエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル等のエステル化合物が好適であり、中でも低級アルコールが好ましく、とりわけ、適度な反応温度を維持できて留去しやすいという点からエタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
そして、反応温度は60~80℃が好ましく、反応時間は反応が十分に進行するよう、概ね、2~24時間であることが好ましい。反応後、上記ポリシロキサン化合物以外の不要な副生成物を、抽出、脱水、溶媒除去等の方法で除去し、上記ポリシロキサン化合物を得ることができる。
【0029】
上記の条件1を満足するポリシロキサン化合物おいて、反応成分であるシラン系化合物(A)~(C)の構造単位は以下の様に表すことができる。
【0030】
〔シラン化合物(A)の構造単位〕
テトラアルコキシシランの構造単位は、下記式で表すことができる。
【化1】
ビス(トリアルコキシシリル)アルカンの構造単位は、下記式で表すことができる。
【化2】
(ここで、Rはアルキレン基を表し、例えば、メチレン基又はエチレン基等である。)
【0031】
〔シラン系化合物Bの構造単位〕
アルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン及びフェニルトリアルコキシシランの構造単位は、下記式で表すことができる。
【化3】
(ここで、Rはアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基又はフェニル基を表し、アルキル基の場合は、例えば、炭素数が1~3のアルキル基であり、シクロアルキル基の場合は、例えば、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等である。)
【0032】
ジアルキルジアルコキシシラン化合物の構造単位は、下記式で表すことができる。
【化4】
(ここで、R及びRはアルキル基を表し、それぞれ、例えば、炭素数が1~4のアルキル基等である。)
【0033】
〔シラン系化合物Cの構造単位〕
ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物の構造単位は、下記式で表すことができる。
【化5】
(ここで、R、Rはラジカル重合性不飽和二重結合を有する基を表し、Rは、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基又はアリル基等であり、Rは、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等であり、Rはアルキル基を表し、例えば、メチル基又はエチル基等である)
【0034】
さらに、上記の条件1を満足するポリシロキサン化合物(任意に含んでも良い他のシラン系化合物(シラン系化合物(D))を反応させて得られる)における構造単位は、下記式で表すことができる。なお、各構造単位の順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
【化6】
(ここで、Xは、シラン系化合物(D)の構造単位を表す。l~rは、それぞれの構造単位の個数の比率を表し、(l+m+n+o+p+q+r)=1である。また、好ましくは、(l+m):(n+o)=1:0.1~0.1:10、(l+m+n+o+r):(p+q)= 1:0.1~0.1:10である。)
【0035】
(ポリチオール化合物)
本発明の皮膜形成用組成物は、分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物を含有する。
上記ポリチオール化合物としては、1分子あたり2個以上のチオール基を有し、分子内にケイ素を含まない化合物であり、例えば、αもしくはβ-メルカプトカルボン酸(チオグリコール酸又はβ-メルカプトプロピオン酸等)とポリオールとのエステル化により得られるポリチオール化合物、メルカプトアルコールとポリイソシアネート化合物との反応物等を好適に利用することができる。
この様なポリチオール化合物としては、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,6-ヘキサンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,6-ヘキサンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,6-ヘキサンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、2-[(メルカプトアセチルオキシ)メチル]-2-エチル-1,3-プロパンジオールビス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス-(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
なかでも、架橋密度を高くでき優れた硬化皮膜に硬度を付与する観点から、3官能以上の反応性官能基を有するポリチオール化合物をより好適に利用することができる。
【0036】
(重合開始剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、後記のフォトリソグラフィー法により硬化皮膜を形成する際に、十分な光硬化反応が得られる光重合開始剤を使用することが好ましい。この様な光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-〔4’-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のカルボニル化合物;1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-1,3,5-トリアジン及び2-〔2-(2-フラニル)エチレニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のトリハロメタン類;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル1,2’-ビイミダゾール等のイミダゾール二量体;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、任意の光増感剤と組み合わせることもできる。
【0037】
(有機溶剤)
本発明の皮膜形成用組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては、アルコール類、多価アルコール類とその誘導体、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤等、通常の塗工剤で用いられる有機溶剤が利用できる。
ここで、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール-n-、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の低級アルコールが好適に利用できる。
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等を挙げることができる。
また、多価アルコール誘導体として、まずは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類を挙げることができる。
さらに、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルアシレート類を挙げることができる。
また、ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
また、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸-n-プロピル等を挙げることができる。
この様な有機溶剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。そして、ポリシロキサン化合物の溶解性及び塗工適性の面から、多価アルコール誘導体やエステル系有機溶剤が好ましく、とりわけ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピルが好適である。
【0038】
(その他の材料)
本発明の皮膜形成用組成物は、本発明の効果を低下させない範囲で、必要に応じてラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体を含有させてもよい。なお、上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体は、上記シラン系化合物(C)とは異なる成分である。
上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体としては、二価以上の水酸基含有化合物と(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、トリス(2- ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
なかでも、架橋密度を高くでき優れた硬化皮膜に硬度を付与する観点から、三官能以上の反応性官能基を有する化合物が好ましい。
【0039】
また、本発明の効果を低下させない範囲で、必要に応じて、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム等の金属のキレート化合物、カルボジイミド系、イソシアネート系、エポキシ系等のチオール基以外の架橋性官能基を有する架橋剤、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤、芳香族炭化水素系、アミノ化合物系、ニトロ化合物系、キノン類、キサントン類等の光増感剤、ハイドロキノン、メトキノン、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ジ-t-ブチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合抑制剤、無機金属酸化物、有機微粒子等の充填剤等の添加は任意である。
【0040】
(上記各材料の含有量)
本発明の皮膜形成用組成物を用いて、例えば、フォトリソグラフィー法により硬化皮膜を形成させる際、皮膜形成用組成物を塗工した後、まず、プレベーク工程によりの蒸発成分が除去され、残存している成分によって硬化皮膜が形成される。
したがって、皮膜形成用組成物中に含まれる有機溶剤等の蒸発成分に対して、残存する硬化皮膜形成成分の量が少なくなると、プレベーク工程で蒸発成分を蒸発させるのに多くのエネルギーが必要になり、また、同じ量を塗工しても得られる硬化皮膜の膜厚は薄くなるため、一度の塗工で適切な膜厚の硬化皮膜が得られなくなる可能性がある。
一方、上記硬化皮膜形成成分の量が多くなると、相対的に反応性を有する材料の含有量が増加するため、保存安定性が低下する可能性がある。さらには、一般に有機溶剤中に溶解・分散させる硬化皮膜形成成分の量が異なると、粘度も異なるため、有機溶剤に対する硬化皮膜形成成分の比率が極端に高くあるいは低くなると、スピンコーター等を利用するときの適性粘度から逸脱する可能性がある。
【0041】
この様な観点から、上記硬化皮膜形成成分と有機溶剤等の蒸発成分との比率は、上記の問題が発生しない範囲に調整すればよいが、概ね、硬化皮膜形成成分:蒸発成分=1:0.5~1:20程度が好ましく、1:1~1:10程度がより好ましい。
上記硬化皮膜形成成分には、上記ポリシロキサン化合物、上記ポリチオール化合物、上記重合開始剤及び上記その他の材料の中の非蒸発成分等が該当する。
ここで、上記硬化皮膜形成成分におけるポリシロキサン化合物、重合開始剤及び光重合に直接的に関与するその他の成分の合計の含有量は、上記硬化皮膜形成成分の全質量の70%以上を占める量であることが好ましく、75%以上を占める量であることがより好ましい。
そして、皮膜形成用組成物の保存安定性が良好に維持でき、透明で高い絶縁性を有する硬化皮膜が得られる範囲で、光重合性を向上させるために、その他の光重合に直接的に関与する成分として、上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体を、上記ポリシロキサン化合物100質量部に対して150質量部程度まで含有してもよい。
【0042】
また、上記重合開始剤の含有量は、上記のポリシロキサン化合物と上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体との合計量を100質量部としたとき、0.5~40質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。ここで、上記重合開始剤の含有量が上記の範囲より少なくなると光重合性が低下して、フォトリソグラフィー法の露光部に未反応成分が残存する可能性があり、一方、上記の範囲より多くなると、皮膜形成用組成物の保存安定性が低下する可能性がある。
【0043】
さらに、上記硬化皮膜形成成分における上記ポリチオール化合物の含有量は、硬化皮膜形成成分の全質量の2~30%を占める量であることが好ましく、5~25%を占める量であることがより好ましい。ここで、上記ポリチオール化合物の含有量が上記の範囲より少なくなると、フォトリソグラフィー法の現像工程において、露光部の光硬化した皮膜が現像液に溶解しやすくなり、また被着体との密着面が浸食されやすくなるため、安定的にパターン通りの形状を維持できなくなる可能性がある。
一方、上記の範囲より多くなって、露光部の硬化皮膜が現像液に晒されたときに、目的とする形状を安定的に維持可能とする量を超えた分は不要であり、また、利用するポリシロキサン化合物によっては、未露光部の皮膜の現像液に対する溶解性が低下する可能性がある。
【0044】
(皮膜形成用組成物の製造方法)
本発明の皮膜形成用組成物の製造方法としては、適切な容器内に有機溶剤を仕込み、例えば、高速攪拌機等で撹拌しながら、上記ポリシロキサン化合物、上記ポリチオール化合物、上記重合開始剤及び必要に応じて上記ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体等のその他の材料を仕込んで混合する方法が利用できる。
なお、この方法に限定されるものではなく、各材料の仕込みの順番は任意であってよい。また、固形の状態の材料は、有機溶剤に可溶であれば、仕込みの前に予め溶解させておいてもよく、有機溶剤中に直接または分散剤等を利用して分散可能であれば、仕込みの前に予め分散させておいてもよい。
【0045】
(皮膜形成方法)
以上の材料と製造方法から得られる本発明の皮膜形成用組成物を、例えば、スピンコーター等を用いて、表面に透明電極層を形成したタッチパネル用基板上に塗工し、フォトリソグラフィー法の露光工程では露光部のみに活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成し、現像工程では未露光部の塗液を現像液で溶解除去することにより、所定の部位のみに透明で高い絶縁性を有する硬化皮膜を安定的に形成することができる。
このような、本発明の皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法もまた、本発明の一態様である。
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0047】
まず、本実施例において利用する材料は以下の通りである。
・シラン系化合物(A)に属する材料
テトラエトキシシラン (TEOSと記載)
・シラン系化合物(B)に属する材料
メチルトリエトキシシラン (MeTEOSと記載)
ジメチルジメトキシシラン (DMDMOSと記載)
フェニルトリエトキシシラン (PhTEOSと記載)
・シラン系化合物(C)に属する材料
(3-メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン (MATMOSと記載)
・ポリチオール化合物
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート) (PTMと記載)
・ラジカル重合性不飽和二重結合を二つ以上有する重合性単量体
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレート (THITAと記載)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート (DPHAと記載)
・重合開始剤
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure819 BASF社製)
・重合抑制剤
4-メトキシフェノール (4-MeOPhと記載)
・シリコーン系界面活性剤
BYK-310 (BYK(株)社製)
【0048】
(ポリシロキサン化合物の調製)
撹拌装置、環流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、まず、イソプロピルアルコールを400g仕込み、次いで、表1に記載したシラン系化合物(A)、シラン系化合物(B)及びシラン系化合物(C)を、表1のモル比率で総質量が100gとなるように仕込んだ。
さらに、撹拌しながら、水と硝酸とを、それぞれ、仕込まれたシラン系化合物(A)、シラン系化合物(B)及びシラン系化合物(C)の全分子数に対して、水の分子数が4倍となる量で、また、硝酸の分子数が0.1倍となる量で仕込んで、窒素気流下、60℃で6時間反応させた。
得られた反応物を濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄した後、加熱下、減圧乾燥を行ってポリシロキサン化合物PS-1~PS-14を得た。
なお、表1において、比率(1)はシラン系化合物(A):シラン系化合物(B)であり、比率(2)はシラン系化合物(C):(シラン系化合物(A)+シラン系化合物(B))である。
【0049】
【表1】
【0050】
(ポリシロキサン化合物分散液の調製)
高速撹拌装置を備えた容器内に(分散媒体)70部及び上記の方法で得たポリシロキサン化合物(PS-1~PS-14)30部を仕込み、高速撹拌して固形分30%のポリシロキサン化合物分散液を得た。
【0051】
<実施例1~5、7、10~14、比較例1~3の皮膜形成用組成物の調製>
高速撹拌装置を備えた容器に、PS-1~PS-14をそれぞれ含有するポリシロキサン化合物分散液333.33部、PTM10.00部、THITA15.00部、DPHA5.00部、Irgacure81910.00部、4-MeOPh0.13部及びBYK-310の0.60部を仕込み、高速撹拌して実施例1~5、7、10~14、比較例1~3の皮膜形成用組成物を調製した。
【0052】
<実施例6の皮膜形成用組成物の調製>
高速撹拌装置を備えた容器に、PS-6を含有するポリシロキサン化合物分散液333.33部、PTM5.00部、THITA15.00部、DPHA5.00部、Irgacure81910.00部、4-MeOPh0.13部及びBYK-310の0.60部を仕込み、高速撹拌して実施例6の皮膜形成用組成物を調製した。
【0053】
<実施例8の皮膜形成用組成物の調製>
高速撹拌装置を備えた容器に、PS-6を含有するポリシロキサン化合物分散液333.33部、PTM15.00部、THITA15.00部、DPHA5.00部、Irgacure81910.00部、4-MeOPh0.13部及びBYK-310の0.60部を仕込み、高速撹拌して実施例8の皮膜形成用組成物を調製した。
【0054】
<実施例9の皮膜形成用組成物の調製>
高速撹拌装置を備えた容器に、PS-6を含有するポリシロキサン化合物分散液333.33部、PTM20.00部、THITA15.00部、DPHA5.00部、Irgacure81910.00部、4-MeOPh0.13部及びBYK-310の0.60部を仕込み、高速撹拌して実施例9の皮膜形成用組成物を調製した。
【0055】
<比較例4の皮膜形成用組成物の調製>
高速撹拌装置を備えた容器に、PS-6を含有するポリシロキサン化合物分散液333.33部、THITA15.00部、DPHA5.00部、Irgacure81910.00部、4-MeOPh0.13部及びBYK-310の0.60部を仕込み、高速撹拌して比較例4の皮膜形成用組成物を調製した。
【0056】
(実施例1~14、比較例1~4の皮膜形成用組成物の評価方法及び評価結果)
<保存の間の安定性の評価>
実施例1~14の皮膜形成用組成物について、まず、調製直後、25℃における粘度を測定した。さらに、40℃で20日間保存した後、25℃の粘度を測定し、また、ゲル状の浮遊物の有無を目視により観察して保存の間の安定性を評価した。なお、粘度の測定には東機産業社製の粘度計(RE100L型)を利用した。
その結果として、いずれの皮膜形成用組成物についても、保存後の粘度/保存前の粘度の数値は1.0±0.1cPの範囲に収まり、また、ゲル状の浮遊物は観察されなかったため、保存の間の安定性は良好と判断した。
【0057】
<溶解性、エロージョン及び膜厚比の評価>
実施例1~14、比較例1~4のそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が25%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ製)を用いて、400rpm、60秒間の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に各皮膜形成用組成物を塗工した。次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し、一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、各皮膜形成用組成物の溶解性、エロージョン及び膜厚比の評価用試験ピースを作成した。
【0058】
<溶解性の評価>
試験ピースが現像液に晒されたときの、未露光部分の溶解状態を目視にて観察し、以下を評価基準として実施例1~14、比較例1~4の皮膜形成用組成物の溶解性を評価した。
<評価基準>
〇:完全に溶解
△:ほぼ溶解するが残渣が発生
×:不溶
【0059】
<エロージョンの評価>
試験ピースが現像剤に晒されたときの、露光部分のラインパターン部の細りを溶解速度(nm/s)として測定し、以下を評価基準として実施例1~14、比較例1~4の皮膜形成用組成物のエロージョンを評価した。
<評価基準>
〇:溶解速度が600nm/s未満である
△:溶解速度が600nm/s以上、1200nm/s未満である
×:溶解速度が1200nm/s以上である
【0060】
<膜厚比の評価>
現像液に晒された部分の露光部の膜厚(T1)及び晒されていない部分の露光部の膜厚(T2)を膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いて測定し、以下を評価基準として実施例1~14、比較例1~4の皮膜形成用組成物の膜厚比を評価した。
<評価基準>
〇:T1/T2が0.55以上である
△:T1/T2が0.35以上、0.55未満である
×:T1/T2が0.35未満である
【0061】
実施例1~14、比較例1~4の皮膜形成用組成物の溶解性、エロージョン及び膜厚比の評価結果を表2、3及び4に記載した。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
以上、実施例と比較例の評価試験により説明したとおり、実施例1~14の本発明の皮膜形成用組成物は、反応成分として特定のシラン系化合物であるシラン系化合物(A)、シラン系化合物(B)及びシラン系化合物(C)を利用したポリシロキサン樹脂を含有し、また、分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物を含有することから、ラジカル重合性を持たせてフォトリソグラフィー法に提供可能としながら、保存の間の安定性(粘度安定性、反応抑制効果)に優れる。また、フォトリソグラフィー法で利用する際は、露光部で形成される硬化皮膜は、現像液に対して溶解や浸食され難く、未露光部の硬化していない皮膜は、現像液に容易に溶解して速やかな除去が可能であり、結果として、予想外に高い現像性を有する。
【0066】
これに対し、反応成分としてシラン系化合物(A)を利用しないポリシロキサン樹脂を含有する比較例1では、未露光部の硬化していない皮膜が、現像液に容易に溶解せず、速やかな除去が不可能となった。
また、反応成分としてシラン系化合物(B)を利用しないポリシロキサン樹脂を含有する比較例2、反応成分としてシラン系化合物(C)を利用しないポリシロキサン樹脂を含有する比較例3、分子内にケイ素を含まないポリチオール化合物を含有しない比較例4では、露光部で形成される硬化皮膜は、現像液に対して溶解や浸食されやすくなった。したがって、比較例1~4の皮膜形成用組成物は、高い現像性を有するとは、到底、言えないものである。
【0067】
<硬化皮膜の透明性の評価>
実施例1~14のそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が25%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ製)を用いて、400rpm、60秒間の塗工条件で、ガラス基板に塗工した。次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン製)を用いて、100mJ/cmの照射条件で全面を光硬化させて硬化皮膜を形成し、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、各皮膜形成用組成物の透明性評価用試験ピースを作成した。
紫外可視光分光光度計(UV-2500PC、島津製作所製)を用いて、ガラス基板のみ及び透明性評価用試験ピースの550nmの波長の光の透過率を測定した結果、いずれも透過率は90%以上であった。
以上より、硬化皮膜を形成したことによる透過率の低下はほとんど見られなかったことから、実施例1~14の皮膜形成用組成物を光硬化させて得られる硬化皮膜は高い透明性を有すると判断した。
【0068】
<硬化皮膜の絶縁性(比誘電率)の評価>
実施例1~14のそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が25%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ製)を用いて、400rpm、60秒間の塗工条件で、0.1Ω・cm以下の抵抗率を有する8インチのN型シリコンウエハの基板に塗工した。次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン製)を用いて、100mJ/cmの照射条件で全面を光硬化させて硬化皮膜を形成し、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥した。さらに、硬化皮膜の表面に、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成し、各皮膜形成用組成物の絶縁性(比誘電率)評価用試験ピースを作成した。
さらに、キーサイトテクノロジー社製の電極としてHP16451B、測定装置としてE4990Aインピーダンスアナライザーを用いて、CV法により温度200℃、周波数100kHzのときの各絶縁性評価用試験ピースにおける比誘電率を測定した。
その結果、いずれも比誘電率は3.7以下であったことから、実施例1~14の皮膜形成用組成物を光硬化させて得られる硬化皮膜は高い絶縁性を有すると判断した。
【0069】
<硬化皮膜の透明電極に対する密着性の評価>
実施例1~14のそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発成分の濃度が25%になるように(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ製)を用いて、400rpm、60秒間の塗工条件で、スパッタ法によりITOを表面に薄膜状に積層したガラス基板のITO積層面に塗工した。次いで、80℃で3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し、一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38%水溶液中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、水洗、乾燥して、各皮膜形成用組成物の透明電極に対する密着性評価用試験ピースを作成した。
得られた密着性評価用試験ピースの表面に、セロファンテープ(ニチバン株式会社製、製品名:セロテープ(登録商標))を貼り付け、剥がしたときの硬化皮膜のガラス基板からの剥離の状況を観察した結果、いずれもほとんど剥離が見られなかったことから、実施例1~14の皮膜形成用組成物をフォトリソグラフィー法で焼き付けして得られる硬化皮膜は、現像処理後も透明電極に対して高い密着性を有すると判断した。
【0070】
以上より、実施例1~14の本発明の皮膜形成用組成物を塗工してなる硬化皮膜は、透明性が高く、薄膜でも高い絶縁性を有し、ガラス等の透光性基板等に対して優れた密着性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の皮膜形成用組成物は、保存の間の安定性及び現像性に優れ、塗工して硬化皮膜を形成することにより、透光性基板や電極との密着性及び透明性に優れ、薄膜でも高い絶縁性を有するので、タッチパネル等の透光性基板に塗工する絶縁性皮膜として好適に用いることができる。