(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】パレタイズ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20230215BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2018215963
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-09-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】秦野 耕一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 泰伸
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/060989(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112483(US,A1)
【文献】特開2000-006083(JP,A)
【文献】特開2017-013209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送部から受け入れる、または搬送部に送出する入出位置と、前記物品が積み上げられる、または積み下ろされるパレットが設置されるパレット位置と、の間で、前記物品を前記パレット上に積み上げるパレタイズ動作または前記物品を前記パレットより積み下ろすデパレタイズ動作を行うパレタイズ装置であって、
ロボットと、
前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、
前記ロボット制御部に接続された境界検出部と、を備え、
前記境界検出部は、前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作中に前記ロボットが通過し得る通過空間の外部に定められ該通過空間の外周囲に位置する進入禁止空間と、該進入禁止空間の外部に定められる外部空間との境界の少なくとも一部を検出区域とし、該検出区域を通過する物体を検出し、
前記ロボット制御部は、前記境界検出部が前記検出区域を通過する物体を検出すると、前記ロボットを停止させ、または前記ロボットの移動速度を減少させ
、
前記パレット位置が複数設定されると共に、複数の前記パレット位置の各々に応じて前記通過空間、前記進入禁止空間及び前記外部空間が設定されて、
前記ロボットは、前記複数の前記パレット位置のうちのいずれか一つである第一パレット位置におけるパレタイズ動作またはデパレタイズ動作と、他の一つである第二パレット位置におけるパレタイズ動作またはデパレタイズ動作とを交互に行い、
前記境界検出部による前記検出区域を、前記第一パレット位置に応じた前記検出区域である第一検出区域と前記第二パレット位置に応じた前記検出区域である第二検出区域とに交互に切替る切替部をさらに備え、
前記境界検出部は、前記第一検出区域と前記第二検出区域とのうち、前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作が行われている側の前記パレット位置に応じた検出区域を検出し、
前記第一パレット位置に対応する前記通過空間及び前記第二パレット位置に対応する前記通過空間のそれぞれにおいて物体を検出する処理を行う空間検出部をさらに備え、
前記切替部は、前記空間検出部の前記処理により前記物体が検出されていないことを条件に、前記第一検出区域と前記第二検出区域とを切替る切替動作を行い、
前記ロボット制御部は、前記空間検出部が前記処理により前記物体を検出した場合には、前記切替動作を中止するパレタイズ装置。
【請求項2】
前記ロボット制御部は、
前記ロボットの少なくとも一部及び前記ロボットに把持されている前記物品が前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作中に前記通過空間外へ出ることがないように監視する監視制御手段を備える、請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項3】
前記ロボット制御部は、
前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作を制御するパレタイズ制御手段を備え、前記パレタイズ制御手段と前記監視制御手段は、各々が独立したプログラムである、請求項2に記載のパレタイズ装置。
【請求項4】
前記境界検出部は、前記進入禁止空間と前記外部空間との間に規定され、かつ鉛直方向に向かって延びる平面を検出区域とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項5】
前記切替部は、手動操作可能な切替スイッチを備え、該切替スイッチにより前記第一検出区域と前記第二検出区域とに切替える、請求項
1から4のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項6】
前記空間検出部は、前記パレットの前記物品が積み上げられる積み上げ板面よりも上方にあって、かつ鉛直方向と交差する平面を検出区域とする、請求項
1から5のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項7】
前記通過空間内であって、かつ前記入出位置の近傍を含む範囲を検出区域とする、搬送周り検出部をさらに備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項8】
前記パレットが外部から前記パレット位置に搬入される、または前記パレット位置から外部に搬出される際に通過する区域を検出区域とする、出入口検出部をさらに備える、請求項1から
7のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【請求項9】
前記ロボットと、前記ロボットの通過空間及び前記進入禁止空間を囲むように設けられる柵をさらに備える、請求項1から
8のいずれか一項に記載のパレタイズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレタイズ装置及びパレタイズ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによるパレタイズやデパレタイズが、広く産業界で行われている。ロボットを使ってパレタイズ等を行う技術は、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1に記載のピッキングシステムは、ロボットが単品パレット上の物品を出荷パレット上にパレタイズする、あるいはコンベア上に置くように構成されている。このとき、ロボットのハンドの把持装置に把持された物品は、ラベル貼り付け部に側面を向けて通過し、荷札を貼り付けられる。また、特許文献2に記載のパレタイズ装置のコーチング方法は、コンピュータ画面からパラメータを設定し、ロボットに対してパレタイズパターンの設定や修正、パレタイズ順序の設定、パレタイズの位置設定を指示するものである。
【0003】
ところで、ロボットを使用する以上、パレタイズ動作行う施設では高い安全性を有する設備が必要である。上記の特許文献1、特許文献2には安全を担保する構成についての記載はされていないが、ロボットの周囲には充分な空間的余裕をもった柵を設置することが記載されている。また、作業者の安全のため、ロボットがパレタイズ作業を行う場所へパレットを供給する、あるいはパレタイズ作業が終了したパレットをロボットの動作範囲から払い出すためにパレットの自動出し入れ装置を用いることも行われている。自動搬送部は、高価な上に機構や制御が複雑であり、また、充分な移動範囲を必要とする。
以上のことから、公知の安全対策をとってパレタイズ動作を行う施設には、ロボットが作業を行う範囲を内包する、比較的広いエリアが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-024428号公報
【文献】特開平8-267382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パレタイズが行われる施設では、パレタイズ用のロボットを設置することに充分な範囲を確保できない場合も多く、労働力不足を補うためにパレタイズ動作を自動化しようとしても、設備導入ができないという不具合が生じている。さらに、パレタイズ作業時に異常が生じる等してパレタイズされた物品の人手作業による位置修正、追加、取り出しが必要となった際は、自動搬送部でパレットを安全な場所に移動して作業を行わなければならなかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、予め限定されているロボットの通過空間内への進入物を検出し、作業者がロボットの通過空間に近づいてもその安全性を担保することができると共に、進入が制限される範囲が比較的小さくてコンパクト化できるパレタイズ装置及びパレタイズ方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパレタイズ装置は、物品を搬送部から受け入れる、または搬送部に送出する入出位置と、前記物品が積み上げられる、または積み下ろされるパレットが設置されるパレット位置と、の間で、前記物品を前記パレット上に積み上げるパレタイズ動作または前記物品を前記パレットより積み下ろすデパレタイズ動作を行うパレタイズ装置であって、
ロボットと、前記ロボットの動作を制御するロボット制御部と、前記ロボット制御部に接続された境界検出部と、を備え、前記境界検出部は、前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作中に前記ロボットが通過し得る通過空間を内包する進入禁止空間と、該進入禁止空間の外部に定められる外部空間との境界の少なくとも一部を検出区域とし、該検出区域を通過する物体を検出し、前記ロボット制御部は、前記境界検出部が前記検出区域を通過する物体を検出すると、前記ロボットを停止させ、または前記ロボットの移動速度を減少させる。
【0007】
本発明のパレタイズ方法は、物品を搬送部から受け入れる、または搬送部に送出する入出位置と、前記物品が積み上げられる、または積み下ろされるパレットが設置されるパレット位置との間で、前記物品を前記パレット上に積み上げるパレタイズ動作または前記物品を前記パレットより積み下ろすデパレタイズ動作を行うパレタイズ方法であって、前記パレタイズ動作または前記デパレタイズ動作中にロボットが通過し得る通過空間を内包する進入禁止空間と、該進入禁止空間の外部に定められる外部空間との境界の少なくとも一部を検出区域とし、該検出区域を通過する物体を検出する境界検出工程と、前記境界検出工程によって前記検出区域を通過する物体が検出されると、前記ロボットを停止させ、または前記ロボットの移動速度を減少させるロボット制御工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、予め限定されているロボットの通過範囲内への進入物を検出し、作業者がロボットの通過範囲に近づいてもその安全性を担保することができると共に、進入が制限される範囲が比較的小さくてコンパクト化できるパレタイズ装置及びパレタイズ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のパレタイズ装置の概略を説明するための斜視図である。
【
図2】
図1に示したパレットP1に対応する検出区域を説明するための図である。
【
図3】
図1に示したパレットP2に対応する検出区域を説明するための図である。
【
図4】
図1に示したパレタイズ装置の各センサが進入物を検出する検出区域を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態のパレタイズ装置のロボット制御部を説明するための図である。
【
図6】
図1に示したパレタイズ装置の動作を説明するための図である。
【
図7】
図1等に示したパレタイズ装置の変形例を説明するための図である。
【
図8】
図1等に示したパレタイズ装置の他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本実施形態の図面は、本発明の構成や機能及び効果を説明するための図であって、その長さや高さ、縦横比等を必ずしも正確に表すものではない。さらに、本実施形態は、その具体的な形状を図面に示した形状に限定されるものではない。
【0011】
[概略]
先ず、本発明の実施形態の説明に先立って、本発明のパレタイズ装置及びパレタイズ方法の概略を説明する。
図1は、パレタイズ装置1の概略を説明するための斜視図である。
図1に示したパレタイズ装置1は、所定の空間Aにおいて作業するロボット2を用いている。空間A内には複数(2つ)のパレットP1、P2が設置されていて、パレットP1、P2は、予め設定されているパレット位置pp1、pp2に設置される。また、空間Aには搬送部Cにより物品(ワーク)Wが搬入または搬出される。ワークWは、ロボット2のパレタイズ、またはデパレタイズの対象となる物品である。パレット位置pp1、pp2は、パレットP1、P2の上面視における形状と略一致する形状を有する図示しない床面上の範囲である。
【0012】
パレタイズとは、搬送部Cにより搬送されてきたワークWをロボット2がパレットP1またはパレットP2の板面(以下、「積上げ板面」と記す)S上に積み上げる動作をいい、デパレタイズとは、反対にパレットP1、P2に積み上げられているワークWを積上げ板面Sから積み下ろして搬送部Cに移動させる作業をいう。
図1に示す空間Aは、ロボット2が二つのパレットP1、P2に対してパレタイズ動作またはデパレタイズ動作をする作業領域であって、作業中に作業者等の人やパレット等の物の進入が禁止される空間と進入が許容される空間とを含んでいる。
【0013】
ロボット2は、制約を受けた可動範囲において動作する。本実施形態でいう「制約を受けた可動範囲」は、ロボット2のアーム25に取付けられたエンドエフェクタ251によって把持されたワークWが動き得る範囲であって、制御装置のプログラムにより、または機械的に制約された範囲をいう。制約を受けた可動範囲は、制約を受けたロボット2のアーム25に取付けられたエンドエフェクタ251が動き得る範囲を含んでいて、エンドエフェクタ251が動き得る範囲とエンドエフェクタ251に把持された状態のワークWが動きえる範囲との間を「可動範囲」と見なして、安全対策が実施される。
【0014】
本実施形態は、安全対策として、ロボット2が、ロボット2の可動範囲、または可動範囲の周囲に進入する進入物を検出するセンサ(境界センサ11、12等)を備えている。ここでいう「進入物」は、自主的に、または他者の制御や操作により移動する物であればよく、生物、無生物を問わない。生物の進入物としては、例えば作業者等の人が考えられる。また、無生物の進入物としては、例えば、パレットP1、P2及びパレットP1、P2をパレット位置pp1、pp2に搬入、搬出する自動搬送ロボット等が考えられる。
境界センサ11、12によれば、ロボット2に進入物が接触し、接触によってロボットが停止して作業の効率が低下することを防ぐことができる。また、他の安全対策としては、例えば、アーム25を柔軟な材料で覆うことや、ロボット2の可動範囲を内包する範囲を囲う柵を設けることが考えられる。
【0015】
稼動範囲の制約には、ロボット2の制御装置のプログラムによる制約と、機械的な制約とがある。制御装置のプログラムによる制約は、作業の開始に先立ってロボット2の形状や大きさ、ワークWのサイズ、パレタイズやデパレタイズの動作及び作業環境を考慮してロボット2が他者(人及び物を含む)と接触しないよう制約された可動範囲を作成する。
本発明ではこの制約された可動範囲をロボット2の通過空間と称す。ここで、ロボット2がその通過空間を超えることがないように、監視が行われる。速度、位置、停止状態等をリアルタイムで監視し、通過空間を超えそうな際は強制的に停止となる。また、反対に、可動範囲の外を監視範囲に設定し、この監視範囲にロボットが入ることを監視してもよい。ロボット2がその通過空間を超えることがないように監視する制御装置のプログラムは、ロボット2のパレタイズやデパレタイズを行うプログラムとは独立して作成すると、パレタイズやデパレタイズを行うプログラムの影響を受けることがないので信頼性が高まって好ましい。監視する制御装置のプログラムは特に限定されない。市販品の一例として、ロボットコントローラに追加するものとしては、ファナック株式会社製のデュアル・チェック・セイフティ(DCS)、安川電機製の機能安全基板DX200、三菱電機製の安全拡張ユニット等が挙げられる。また予めロボットコントローラに内蔵されているものとしては、株式会社デンソーウェーブ製のRC8Aコントローラ、ファナック株式会社製のロボットCR-7iA、CR-4iA、CR-15iA、CR-7iA、CR-35iA等が挙げられる。この中でも特にISO10218-1(JIS B 8433-1)に適合する協働ロボットであるファナック株式会社製のロボットCR-7iA、CR-4iA、CR-15iA、CR-7iA、CR-35iAが特に使用に適している。
本実施形態は、パレタイズ動作やデパレタイズ動作を行うメインプログラムと独立した信頼性の高い監視プログラムであるソフトウェア、さらに追加して、二重化した回路、2重化した回路の相互監視等、特別なハードウェアとソフトウェアの組み合わせによってロボット2がその通過範囲を超えることがないように監視することがより好ましい。このようにすれば、ロボット2の動作プログラムに誤りがあって予想外の動きをしても、ロボット2のいずれかの部位、またワークWが指定されている可動範囲の外部に出ることがない。
【0016】
上記構成を実現するためには、SIL2またはSIL3(IEC 62061、IEC 61508)、またはPLdまたはPle(ISO 13849-1)を満たす制御システムによりロボット2の速度や停止の監視を行うことが好ましい。
また、機械的な制約は、ロボット2のアーム25の基部に最も近い回転軸に、回転を抑制するストッパを設置することによって実現することができる。機械的な制約は、プログラムやロボット2の制御とは別に、確実にロボットの可動範囲を制限することができる。さらに、このような機械的な制約は、ロボット2の可動範囲を最小限にすることが可能であるので、ロボット2の周辺に人が近づける安全な範囲を広くする、あるいはシステム全体を小さくすることが可能である。
【0017】
本実施形態で使用されるロボットは、所謂「協働ロボット」と呼ばれるものが好ましい。協働ロボットとは、協働作業に適用されるロボットであり、協働作業時の運転には、安全防護空間内において自律した自動運転、共有(協働)作業空間内の自律した自動運転、用途特有の作業空間内における移動等がある。
また、協働ロボットは、三つの種類に大別されている。第1は、ロボットの駆動源の最大出力が80W以下のものである。80W以下のロボットは、労働安全衛生則にて産業用ロボットには含まれないとされているので、産業用ロボットに関する各種法令や規定の適用外となり、ユーザーやシステムインテグレータによるリスクアセスメントに基づく安全対策の実施で運用が可能となる。第2は、SIL2またはSIL3(IEC 62061、IEC 61508)、PLdまたはPle(ISO 13849-1にて)を満たす、高信頼度の制御装置を有し、ロボットの速度や停止状態を監視し、さらにロボットメーカー独自の追加安全装置を有すものでもある。また、ロボットを含むシステムを第三者認証機関が認証したロボットでもある。第3は、ISO10218-1(JIS B 8433-1)に適合する協働運転のために特別に設計された特性をもつロボットをいう。
【0018】
上記協働ロボットのうち、本実施形態で使用されるロボットとして、第1のものは、使用時におけるロボット周辺装置の安全対策が容易である点で好ましい。また、第2のものは、ロボットの安全性が高く、選択できるロボットの種類が多い点で好ましい。第3のものは、一般的には第2の要件も含み(ただし、「ロボットを含むシステムを第三者認証機関が認証したロボットであること」は除く)、さらに高信頼度の安全対策が行われているので、ロボットの安全性が極めて高い点で最も好ましい。
【0019】
また、本実施形態のロボットは、パレタイズ動作をすることから、ピックアンドプレイスと呼ばれる、物品を持ち上げる、あるいは載置する機能を有することが必須となる。ロボットの種類は特に限定されず、パラレルリンクロボットであっても、シリアルリンクロボットであってもよいが、本実施形態では、作業の範囲が比較的広いため、可動範囲の広いシリアルリンクロボットが好ましい。
シリアルリンクロボットには、垂直多関節型ロボット及びスカラ型ロボットがある。このうち、垂直多関節ロボットは、その自由度が4軸から7軸のものが公知であり、作業範囲が比較的広い本実施形態には最も好適である。また、スカラ型ロボットは、水平方向の高速動作が可能であり、4軸のものが公知である。動作範囲についても比較的広く、本実施形態に好適である。
【0020】
[パレタイズ装置]
以下、本実施形態のパレタイズ装置1を説明する。
図2、
図3は、
図1に示したパレタイズ装置を上面から下方に見た図である。なお、ここで「上方」及び「下方」は、重力方向にしたがって決定される関係であって、パレットが設置される床面が最下面となる。
図2は、パレットP1に対応する検出区域を説明するための図であり、
図3は、パレットP2に対応する検出区域を説明するための図である。
図4は、本実施形態のパレタイズ装置1の各センサが進入物を検出する検出区域を説明するための図である。
【0021】
図1から
図3に示すパレタイズ装置1は、搬送部Cに送出する入出位置Cpからワークを受け入れ、搬送部の端部CeからワークWを取り出してパレットに積み上げられる、またはワークWをパレットから搬送部Cの端部Ceに積み下ろし、入出位置Cpからワークが払い出される搬送部Cと、ワークWを搬送部Cから受け入れる、または搬送部Cに送出する入出位置Cpと、ワークWが積み上げられる、または積み下ろされるパレットP1、P2が設置されるパレット位置pp1、pp2と、の間で物品WをパレットP1、P2上に積み上げるパレタイズ動作または物品WをパレットP1、P2上から積み下ろすデパレタイズ動作(以下、「パレタイズ動作等」と記す)を行う装置である。このようなパレタイズ装置1は、ロボット2と、ロボット2の動作を制御するロボット制御部5と、ロボット制御部5に接続された境界検出部である境界センサ11と、を備えている。境界センサ11(12)は、パレタイズ動作等中にロボット2が通過し得る通過空間At1、At2をそれぞれ内包する進入禁止空間Ab1、Ab2と、この進入禁止空間Ab1、Ab2の外部にそれぞれ定められる外部空間Ao1、Ao2との境界の少なくとも一部を第一検出区域As11、第二検出区域As12とし、この第一検出区域As11、第二検出区域As12を通過する物体(以下、「進入物」と記す)を検出する。ロボット制御部5は、境界センサ11(12)によって進入物が検出された場合、ロボット2を停止させ、またはロボット2の移動速度を減少させる。
なお、本実施形態は、ロボット2がパレタイズ動作を行う場合について説明するものとするが、デパレタイズ動作についても同様に進入物を検出することができる。
【0022】
図2、
図3に破線で示す円形の範囲Sr1は、ロボット2のアーム25が機械的に届く範囲を指している。また、範囲Sr2は、エンドエフェクタ251に把持されている状態のワークWが届く範囲を指している。範囲Sr1、Sr2は、制御装置のプログラム、または機械的な制約を受けていない場合にエンドエフェクタ251またはワークWが届く範囲であって、「制約を受けていない範囲」ということができる。これに対し、通過空間At1、At2は、制約を受けたロボット2のアーム25及びアーム25に把持されたワークWの可動範囲である。この通過空間At1、At2が安全でない空間といえる。
図2、
図3では、通過空間At1、At2に斜線を付して示し、進入禁止空間Ab1、Ab2には通過空間At1、At2よりも粗い斜線を付して示すものとする。
図2、
図3に示す例では、ロボット2の基部27(
図1)周りには、アーム25に取付けられたエンドエフェクタ251やワークWは達することができないので、ロボット2の基部27(
図1)周りを、通過空間At1、At2に含めていない。
【0023】
本実施形態は、ロボット2が、パレット位置pp1にあるパレットP1に対してパレタイズ動作を行い、パレットP1に予め定められている数のワークWが積載された(パレタイズが完了した)後、パレット位置pp2にあるパレットP2に対してパレタイズ動作を行う。そして、ロボット2は、パレットP1、P2に交互にパレタイズ動作を繰り返している。
図2は、ロボット2がパレットP1にパレタイズ動作する場合の通過空間At1、進入禁止空間Ab1及び外部空間Ao1を示し、
図3は、ロボット2がパレットP2にパレタイズ動作する場合の通過空間At2、進入禁止空間Ab2及び外部空間Ao2を示している。
図2、
図3に示すように、ロボット2がパレタイズ動作をする領域の周囲には三方に柵Fが形成されていて、パレットP1、パレットP2は、柵Fが形成されていないパレット供給口g1、g2からそれぞれ搬入、搬出される。
ロボット2がパレットP1にパレタイズする場合、
図2中に示す斜線の範囲内が通過空間At1になる。また、通過空間At1を内包する粗い斜線が付された範囲が進入禁止空間Ab1になり、進入禁止空間Ab1よりもさらに外側の範囲が外部空間Ao1になる。
【0024】
[ワーク]
上記構成のうち、ワークWは、例えば、製品が収容されている箱体であってもよいし、内容物がない箱体であってもよい。積み上げ、または積み下ろされるワークWは、全て同様の形状及び大きさを有するものであってもよいし、異なる形状のものであってもよい。ワークWの積み上げ方法としては、ブロック積み、交互積み、ピンホール積み及びそれらを応用または組み合わせたものであってもよい。パレタイズ装置1に適用されるワークWとしては、特に限定されないが、段ボール箱である場合が多い。段ボール箱の形状には、A式、ラップラウンド型等がある。段ボールの材質は限定されず、紙製、プラスチック製等のものであってもよい。なお、段ボール箱は、パッキングケースやPCケースと呼ばれる場合もあるが、本実施形態は、このようなケース体をいずれもパレタイズすることができる。さらに、本実施形態のワークWは、段ボールではない紙材や樹脂板により形成された箱体、樹脂成形された箱体、折り畳み式の樹脂箱、直方体の形状を有する部材であってもよく、これら直方体の物に限らずに規則的に積み上げることが可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0025】
[パレット]
パレットP1、P2は、ワークWが積載可能な板部分を有するものであればよく、その種別が限定されるものではない。このため、パレットP1、P2は、平パレット、ボックス型のカゴ車、シート材等であってもよいし、積載可能な板部分を牽引可能な車輪付の台などであってもよい。パレットP1、P2の材質は特に限定されず、例えば、木製、樹脂製、紙製のものが使用される。パレットP1、P2のサイズは、それぞれパレット位置pp1、pp2に設置可能なサイズであればよく、例えば、T11型のパレットは、縦×横×高さ(厚み)が1100×1100×144mmの板部分を有している。
【0026】
パレット位置pp1、pp2に対し、パレットP1、P2は、パレット供給口g1、g2からそれぞれ搬出、搬入される。パレットP1、P2の出し入れ方法は特に限定されないが、フォークリフトや、人手によるハンドフォーク、また自動搬送ロボット等を用いることが考えられる。
パレット位置pp1、pp2の位置決めは、例えば、機械的なストッパによって行われる。具体的には、例えば、位置決めは、「コ」の字状や「L」字状の部材をストッパとしてパレット位置pp1、pp2の角に設置することによって実現できる。パレットP1、P2に対するパレタイズの制御は、パレット位置pp1、pp2を基準にして行われる。また、本実施形態は、パレットP1、P2を位置決めせずに設置し、パレットP1、P2をセンサで検出するものであってもよい。パレットP1、P2をセンサで検出する場合、ロボット2の制御は、検出されたパレットP1、P2の位置に基づいて行われる。このような場合、パレット位置pp1、pp2にパレットを搬出、搬入する際の作業が容易になる。
【0027】
なお、本実施形態のパレットP1、P2の出し入れは、自動出し入れ装置によって行う必要はなく、人手によって行うことができる。この点は、本実施形態のパレタイズ装置1を低コストかつコンパクト化することに有利である。
また、本実施形態においてパレットの自動出し入れ装置を用いてもよく、自動出し入れ装置を用いた場合には、ロボット2の状況を考慮する必要が低下するので、パレットP1、P2を扱う作業に係る作業タイミングの制約が小さくなる。
パレットP1、P2の搬出、搬入方向は特に限定されないが、搬出、搬入の方向を定めることによって低コストのストッパにより確実に位置決めすることができる。また、パレットP1、P2の向きと位置が定まっているために、ロボット2の制御が容易になって、設備導入時のロボットプログラミングが容易になる。
【0028】
[ロボット]
図1に示すように、ロボット2は、土台26上に設置された基部27、基部27上にあって鉛直方向の回転軸を中心に回転する回転部28、回転部28に軸止されて水平方向の軸周りに回転するアーム24、25を備えている。このような構成により、ロボット2は、ロボット2を中心にして両端に配置されるパレットP1、P2のいずれに対しても搬送部Cからエンドエフェクタ251が取り上げたワークWを積み上げることができる。
ここで、エンドエフェクタ251について説明する。本実施形態のエンドエフェクタ251は、アーム25の先端に取り付けられた、ワークWを把持するハンドとして機能する部材である。
【0029】
パレタイズ用ロボットのエンドエフェクタ251には、多くの場合、吸着式のものが使用される。吸着式のエンドエフェクタ251としては、真空吸着式のものが公知であり、真空吸着式のエンドエフェクタ251には、複数のバキュームパッドを備えたものと、スポンジ等の弾性体を用いたものがある。複数のバキュームパッドを備えたエンドエフェクタ251は、バキュームパッドのそれぞれに真空用逆止弁(真空チェックバルブ)を設けることにより、複数のバキュームパッドのいずれかで真空もれが発生しても、他のバキュームパッドが影響を受けることがない。このようなエンドエフェクタ251は、安価で耐久性に優れた点で好ましい。バキュームパッドの材質は特に限定されないが、ポリウレタン等の耐久性の高いものを使用すると、交替期間を長くすることができる。バキュームパットの形式は特に限定されないが、ジャバラ式(ベローズ式)のものを使用すると、ワークWの表面の傾きに対する追従性を高めることができる。また、高さ方向に復元性を有するスプリングプランジャ(バッファ)を設けると、ワークWの表面の高さの変化に対応することが可能である。
【0030】
さらに、エンドエフェクタ251にワークWの振れ防止機構を設けておくと、アーム25がワークWを把持して水平方向に移動する際にワークWの振れを抑制し、ワークWの落下を防止することができる。ワーク振れ防止機構としては、エンドエフェクタ251とバキュームパッドとの間に高さ方向に変形可能な弾性材料を取り付ける、あるいはワークWの吸着時、振れ防止部材がエアシリンダーによってワークWに軽く押し付けられるようにすることによって実現できる。
【0031】
弾性体を用いるエンドエフェクタ251は、例えば、エアが通過しないスポンジ等の弾性体に複数の穴を設け、各穴に真空吸引部と、真空用逆止弁(真空チェックバルブ)を設けるものである。弾性体はバキュームパッドであり、ワーク振れ防止の機能をも有している。弾性体を用いるエンドエフェクタ251は、特にエンドエフェクタ251の高さ方向の大きさを小さくすることに好適である。また、弾性体を用いるエンドエフェクタ251は、弾性体そのものがワーク振れ防止機構として作用することからも好適である。
さらに、本実施形態は、エンドエフェクタ251にワークWとの距離測定センサを設け、ワークWの積み上げ高さの変化に応じてアーム24、25の動きを制御するようにしてもよい。
【0032】
エンドエフェクタ251は、ワークWを吸着する構成に限定されるものでなく、開閉機構でワークWを掴む、あるいはフック状の治具でワークWを吊り下げる等のものであってもよいし、吸着する構成、開閉機構による掴み、治具による吊り下げ等を任意に組み合わせたものであってもよい。また、ワークWが金属の場合、エンドエフェクタ251には電磁石等の磁力を使用するものを用いることができる。さらに、エンドエフェクタ251は、一つで複数のワークを把持するものであってもよい。本実施形態は、構成の異なるエンドエフェクタ251を複数用意しておき、ワークWに合わせて交換するものであってもよい。交換は、手作業、自動交替装置(ツールチェンジャー)のいずれで行ってもよい。
【0033】
[通過空間、進入禁止空間、外部空間]
図2に示すように、ロボット2がパレットP1にパレタイズする場合、パレット位置pp1に応じて通過空間At1、進入禁止空間Ab1、外部空間Ao1が設定される。通過空間At1は、ロボット2の制約を受けた可動範囲であり、パレタイズ中のロボット2やワークWが通過し得る空間である。進入禁止空間Ab1は、通過空間At1よりも外部であって、仮にここに人が居た場合には、手を伸ばすなどの動作で安全でない通過空間At1に進入する可能性が高い空間である。外部空間Ao1は、進入禁止空間Ab1よりもさらに外側の空間である。したがって、進入禁止空間Ab1及び通過空間At1は、ロボット2の稼動中に人が進入することが禁止される空間であって、外部空間Ao1は、ロボット2の稼動、停止に関わらず人が立ち入ることが許容される空間である。
【0034】
また、
図3に示すように、ロボット2がパレットP2にパレタイズする場合、パレット位置pp2に応じて通過空間At2、進入禁止空間Ab2、外部空間Ao2が設定される。通過空間At2は、ロボット2の制約を受けた可動範囲であり、パレタイズ中のロボット2が通過し得る空間である。進入禁止空間Ab2は、通過空間At2よりも外部にあるものの、通過空間At2に進入する可能性が高い空間である。外部空間Ao2は、進入禁止空間Ab2よりもさらに外側の空間である。進入禁止空間Ab2及び通過空間At2は、ロボット2の稼動中に人が進入することが禁止される空間であって、外部空間Ao2は、ロボット2の稼動、停止に関わらず人が立ち入ることが許容される空間である。
【0035】
[境界センサ]
図2に示すように、境界センサ11は、進入禁止空間Ab1と外部空間Ao1との間に規定され、かつ鉛直方向に向かって延びる平面を第一検出区域As11とする。また、
図3に示すように、境界センサ12は、進入禁止空間Ab2と外部空間Ao2との間に規定され、かつ鉛直方向に向かって延びる平面を第二検出区域As12とする。
ここで、鉛直方向は、図示しない床面に垂直な方向であって、面である以上、鉛直方向と共に鉛直方向と直交する方向にも広がりを持っている。また、第一検出区域As11及び第二検出区域As12は、境界センサ11、12が検出する範囲を指し、ここでいう「平面」は、検出区域を規定するための仮想的な面である。平面は、
図2、
図3のようにパレットP1、P2の辺と平行な面に限定されるものでなく、その延長線がパレットP1、P2の辺と角度を持って交わるものであってもよい。
【0036】
本実施形態は、
図1から
図3に示すように、複数のパレット位置pp1、pp2が設定されると共に、パレット位置pp1、pp2の各々に応じて通過空間At1、At2、進入禁止空間Ab1、Ab2及び外部空間Ao1、Ao2がそれぞれ設定されている。そして、ロボット2は、パレット位置pp1、pp2のうちのいずれか一つである第一パレット位置(パレット位置pp1)におけるパレタイズ動作と、他の一つである第二パレット位置(パレット位置pp2)におけるパレタイズ動作とを交互に行っており、パレタイズ動作を行っていない側のパレットを出し入れしている。このとき、本実施形態は、境界センサ11、12による検出区域を、パレット位置pp1に応じた第一検出区域As11とパレット位置pp2に応じた第二検出区域As12とに交互に切替えている。本実施形態は、第一検出区域As11と第二検出区域As12とを切り替えるための切替部である切替スイッチ50を備えている(
図5)。
【0037】
切替スイッチ50は、手動操作可能なスイッチであり、切替スイッチ50を例えばパレットP1を運ぶオペレータが操作して第一検出区域As11と第二検出区域As12とを相互に切替えるように構成することもできる。このとき、例えば切替スイッチ50をトグルスイッチとして、ノブの方向で第一検出区域As11、第二検出区域As12のいずれを有効とするかを決めてもよいし、プッシュスイッチとして、一回押す毎に有効な検出区域を第一検出区域As11または第二検出区域As12に切替える構成としてもよい。
また、トグルスイッチの中立やプッシュスイッチの長押しで第一検出区域As11、第二検出区域As12のいずれもが無効になるように構成することもできる。第一検出区域As11、第二検出区域As12をいずれも無効にするときは、ロボット2の動作が完全停止するように構成するのが好ましい。
【0038】
また、本実施形態は、境界センサ11、12が、第一検出区域As11と第二検出区域As12とのうちの、パレタイズ動作またはデパレタイズ動作が行われている側を検出する。つまり、本実施形態は、
図2に示したパレット位置pp1に対応する外部空間Ao1から進入禁止空間Ab1への進入を境界センサ11が検出し、この間は
図3に示したパレット位置pp2に対応する外部空間Ao2から進入禁止空間Ab2への進入の検出を行わない。また、反対に、本実施形態は、
図3に示したパレット位置pp2に対応する外部空間Ao2から進入禁止空間Ab2への進入を境界センサ12が検出し、この間は
図2に示したパレット位置pp1に対応する外部空間Ao1から進入禁止空間Ab1への進入の検出を行わない。このようにすることにより、本実施形態は、パレタイズ動作中のロボット2に近づく進入者を検出してロボット2を停止または減速し、進入物とロボット2との接触を防ぐ、あるいは接触による衝撃を軽減することができる。また、ロボット2と接触し得ない空間においては進入物の進入を検出し、作業者が作業を行うことができるようにしている。
【0039】
このような構成により、本実施形態のパレタイズ装置1は、進入物がロボット2と接触し得る空間ではロボット2への接近を禁止しているから、ロボット2の周囲で作業する作業者の安全を担保することができる。また、本実施形態のパレタイズ装置1は、進入が禁止される範囲が比較的小さくて済み、広い作業領域を確保することができる。
【0040】
境界センサ11、12の具体的な構成に特に制約はないが、信頼性の高い機器あるいは検出の方式を使用することが好ましい。このような観点から、境界センサ11、12には、例えば、セーフティライトカーテンや、セーフティレーザスキャナが使用される。セーフティライトカーテンは、投光側ユニットと受光側ユニットとを組み合わせ、投光側ユニットから放出される複数の平行光線を受光側ユニットで受光する。投光側ユニット及び受光側ユニットは、平行光線が正確に受光されるように配置されている。投光側ユニットと受光側ユニットとの間を遮る物体(進入物)がないことは、全ての平行光線が受光側ユニットに届くことによって検出される。一方、光線の一部または全てが遮られた場合には、投光側ユニットと受光側ユニットとの間を遮る物体(進入物)がある可能性がある。
セーフティライトカーテンでは、例えば受光側ユニットが信号を出力する機構を備え、信号のオン、オフによって進入物の検出、非検出を外部に通知するようにしてもよい。ロボット2は、進入物が検出された場合に停止、または減速するように制御される。このようなセーフティライトカーテンは、比較的狭い検出区域において設置に係るコストが低いために好ましい。
【0041】
セーフティレーザスキャナは、エネルギレベルが低レベル(クラス1)の赤外線レーザを、一定の角度ずつ放射方向を変更しながら照射する。このようにすることで、赤外線レーザ光は、扇状の広がりを持った範囲に照射されるようになる。セーフティレーザスキャナは、レーザ光の光源と受光機とを備え、光源から照射されたレーザ光の反射光が受光機に受光されるか否か、あるいは受光されるまでの時間によって進入物を検出する。このようなセーフティレーザスキャナは、検出区域を任意に設定することが可能である。つまり、セーフティレーザスキャナによれば、照射範囲を規定せずにレーザを照射し、検出区域内で反射されたレーザ光を受光した場合にだけ進入物を検出するようにすることができる。
【0042】
また、セーフティレーザスキャナでは、一つの機器に複数の検出区域を設定することも可能である。このような構成では、例えば、危険源となるロボットの距離と所定の距離を隔てた一定の範囲を警告領域とし、警告領域で進入物が検出された場合は警告信号を出力し、ロボットを減速させる。また、警告領域よりもロボットに近い範囲を防護領域とし、防護領域で進入物が検出された場合には防護信号を出力し、ロボットを停止させるようにしてもよい。このようなシステムでは、警告信号と防護信号とを、それぞれ独立した専用端子から出力することができるようになっているため、高い信頼性を得ることができる。また、セーフティレーザスキャナは、複数の検出区域を設定することに限定されず、複数のセーフティレーザスキャナの各々がロボットを停止または減速するための専用の信号を出力するようにしてもよい。
【0043】
一つのセーフティレーザスキャナに複数の検出区域を設定すれば、セーフティレーザスキャナの設置台数を少なくすることができるので、システムに係るコストを低減することができる。また、複数の検出区域の各々に対応してセーフティレーザスキャナを設ければ、進入物検出の制御が簡易化するので、システムの信頼性を高めることができる。セーフティレーザスキャナや画像情報などで空間認識を行う分野では、現在、二次元的に進入物を検出するものが一般的であるが、将来的には安価に三次元的に進入物を検出することも可能になると予想される。
なお、複数の光線を平行して照射する構成や、単一の光線をスキャンする構成では、人の掌や腕が光線と光線との間隔に入って検出できないことを防ぐため、光線の軸の間隔を40mm以内にすることが好ましい。
【0044】
また、上記の出入口センサ31、32や空間センサ21、22は、いずれも互いに向かい合うように組み合わせて配置されている。このとき、本実施形態では、出入口センサ31、32や空間センサ21、22の設置の高さや設置の横方向の位置、あるいは角度を調整することによって一方が向かい合う他方の光学的信号を受光することを防ぎ、誤検知を防止することができる。なお、例えば270°といった広い検出範囲を有するセーフティレーザスキャナでは、一対の組み合わせが一見向かい合っていなくても他方の光学的信号を受光する位置関係になっていることがある。
【0045】
また、本実施形態の境界センサ11、12は、上記のように、鉛直方向に延びる平面を検出することに限定されるものではなく、例えば、外部空間Ao1と進入禁止空間Ab1との境界を含む面への進入物を検出するものであってもよい。このような境界センサとしては、例えば、セーフティマットがある。セーフティマットは、例えば、導電性の板材で非導電性の圧縮可能な隔離材を挟んだマットと、コントローラとにより構成される。板材は、金属板、導電性ゴム、電極板等から選定され、圧力が印加されたことによって導通状態となる。セーフティマットを用いる装置では、外部空間Ao1と進入禁止空間Ab1との境界にセーフティマットを設置し、通過空間At1においてロボット2が作業している間にセーフティマットに電気伝導が生じることによって外部空間Ao1から進入禁止空間Ab1への進入物を検出するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、外部空間Ao1と進入禁止空間Ab1との境界を撮影して二次元または三次元の映像を作成し、この映像により進入物を検出してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、ライトカーテンやセーフティレーザスキャナ等の境界センサ11、12と通過空間At1、At2との距離d1、d2、d3、d4をJIS B 9715で定められた基準に基づいて定めている。ここで、距離d1から距離d4の値を具体的に考える。
境界センサ11、12のように、第一検出区域As11,第二検出区域As12を鉛直方向に延びる平面とすると、検出能力が40mm以下の能動的光電保護装置では、検出からロボットの停止までの時間、すなわち応答時間と停止時間の合計がT(秒)のとき、検出区域から危険区域までの最小距離S(mm)が式(1)を使用して計算した値未満であってはならない。つまり最小距離S(mm)とは、動いている危険源に人が接近する際に、危険源と人が接触する前に危険源が停止できる最小距離である。
S=(K×T)+C ・・・(1)
なお、式(1)において、K=2000mm/sec、C=8(d-14)、ただし、dが14mm未満であっても0mm未満としてはならないという規定がある。dは保護装置の検出能力(mm)である。
【0047】
以上のことから、以下の式(2)が成立する。
S=2000T+8(d-14) ・・・(2)
上記の式(2)は、500mm以下の全ての最小距離Sに適用される。Sの最小値は、100mmでなければならない。また、式(2)により計算したSが500mmを超える場合、式(3)が適用される。この場合、Sの最小値は500mmでなければならない。
S=(K×T)+C ・・・ (3)
ここで、K=1600mm/s、C=8(d-14)とする。ただし、d(保護装置の検出能力(mm))が14mm未満であっても、Cは0mm未満としてはならない。
以上のことから、以下の式(4)が成立する。
S=1600T+8(d-14) ・・・(4)
【0048】
ここで、ロボットの停止時間が0.1sec、最小検出能力が40mmの光学的センサ等の安全装置の応答時間を0.06secとすると、最小距離Sは、以下のように算出される。
S=2000×(0.1+0.06)+8(40-14)=528mm
Sが500mmを超えているので、式(3)を適用すると、
S=1600×(0.1+0.06)+8(40-14)=464mm
Sの最小値は500mmでなければならないので、最小距離Sは500mmとなる。
なお、境界センサ11の第一検出区域As11、境界センサ12の第二検出区域As12の向きは、床面に対して90°の鉛直方向が基本であるが、周囲の状況によってはやや傾いていてもよい。
【0049】
[空間センサ]
また、本実施形態のパレタイズ装置1は、
図1から
図3に示すように、パレット位置pp1に対応する通過空間At1及びパレット位置pp2に対応する通過空間At2のそれぞれにおいて物体を検出する処理(検出処理)を行う空間検出部である空間センサ21、22をさらに備えている。そして、切替スイッチ50は、空間センサ21、22の検出処理により物体が検出されていないことを条件に、第一検出区域As11と第二検出区域As12とを切り替える。
上記制御は、第一検出区域As11と第二検出区域As12とを切り替えるに先立って、パレット位置pp1、パレット位置pp2に人がいるか否かを検出するために行われる。このように構成することにより、本実施形態は、空間センサ21、22が動作開始前に既にパレット位置pp1、pp2にいる(残留している)物を検出する処理を実行し、この処理でパレット位置pp1、pp2に何もないことを確認した上でロボット2の動作を開始することができる。
【0050】
さらに、本実施形態は、空間Aにおいて第一検出区域As11、第二検出区域As12の他に他の検出区域を設けている。
図4は、以上説明した境界センサ11、12の空間センサ21、22の他、三検出区域As21、第四検出区域As22、出入口センサ31、32の第六検出区域As31、第七検出区域As32及び搬送周りセンサ4の第五検出区域As4を示している。
本実施形態では、空間センサ21、22のそれぞれが、パレットの物品が積み上げられる積上げ板面Sよりも上方にあって、かつ鉛直方向と交差する平面を第三検出区域As21、第四検出区域As22とする。
第三検出区域As21、第四検出区域As22を積上げ板面Sよりも高い位置に設定することにより、本実施形態は、パレット位置pp1、pp2に置かれたパレットP1、P2を進入物として検出することがなく、また、積上げ板面Sよりも高さが高い場所に存在していると考えられる人等の残留物を確実に検出することができる。また、第三検出区域As21、第四検出区域As22を鉛直方向と交差する平面とすることにより、本実施形態では、パレット位置pp1、pp2の全範囲を検出しやすくなる。
【0051】
さらに、本実施形態は、
図4に示すように検出区域を設定することに限定されるものではない。例えば、本実施形態は、第三検出区域As21、第四検出区域As22に加えて第三検出区域As21、第四検出区域As22の一部に、または一部と追加域を含む第三検出区域(L)As21L(図示せず)、第四検出区域(L)As22L(図示せず)を追加設定してもよい。このように構成する場合、本実施形態では、第三検出区域As21と第三検出区域(L)As21Lを空間センサ21で区別し、第四検出区域As22と第四検出区域(L)As22Lを空間センサ22で区別して検出する。このような構成によれば、空間センサの数を最小限にすることができる。また、このようなセンサを全て独立した空間センサとすれば、安全面でより信頼度を高めることができる。第三検出区域(L)As21L、第四検出区域(L)As22Lは、例えば、パレットP1、P2の上方であって、かつ、検知範囲からパレットP1、P2の積上げ板面Sと重なる範囲を除く範囲、あるいは重なる範囲よりも広い範囲を除く範囲とする。このような第三検出区域(L)As21L、第四検出区域(L)As22Lは、四角形状である積上げ板面Sと重なる範囲を基準にして非検知の範囲を定めるため、上面視において「L」字形状、「コ」字形状、または「ロ」字形状になる。
上記のように構成することにより、本実施形態は、パレットP1、P2にワークWが積載されていても、パレットP1、P2の周囲にいる作業者を積載されたワークWと区別して検知することが可能である。なおこの場合、空間センサ21、22の設置位置は、パレット供給口g1、g2の付近で、ロボット2からできるだけ離れた位置が好ましい。
【0052】
[搬送周りセンサ]
また、本実施形態のパレタイズ装置1は、
図3、
図4に示すように、通過空間At2内であって、かつ入出位置Cpの近傍を含む範囲を第五検出区域As4とする、搬送周り検出部である搬送周りセンサ4をさらに備えている。本実施形態でいう入出位置Cpは、搬送部Cよる搬送中にロボット2のアーム25が届く範囲内の位置であってもよい。搬送周りセンサ4によれば、搬送部Cの周りで作業をする作業者が通過空間At1内に立ち入ることを検出することができる。さらに、パレットP1、P2のパレット供給口g1、g2周辺に空間センサ21、22を設置した場合には、パレットに積上げたワークWによって搬送部Cの周りが死角になることがあるが、搬送周りセンサ4によってその死角への進入物を検出することも行える。さらに搬送周りセンサ4は、搬送部Cによる境界センサ11、12の死角への進入物を検出することも行える。第五検出区域As4は、床面に対して水平な平面として規定されている。
また、搬送周りセンサ4によって進入物が検知された場合、例えば第五検出区域As4に作業者がいた場合には、ロボットがワークWを取り出す際にエンドエフェクタ251とワークWとの間で作業者が伸ばした手が挟まれることが想定されるので、本実施形態では、境界センサ11、12によって進入物が検知された場合と同様に、ロボット2を停止、または減速するようにする。
【0053】
[出入口検出センサ]
さらに、本実施形態のパレタイズ装置1は、
図2、
図3に示すように、パレットP1が外部からパレット位置pp1に搬入される、またはパレット位置pp1から外部に搬出される際に通過する領域を第六検出区域As31とする出入口検出部である出入口センサ31をさらに備えている。また、パレタイズ装置1は、
図2、
図3に示すように、パレットP2が外部からパレット位置pp2に搬入される、またはパレット位置pp2から外部に搬出される際に通過する領域を第七検出区域As32とする出入口検出部である出入口センサ32をさらに備えている。出入口センサ31、32は、パレットP1、P2のパレット供給口g1、g2から進入物がロボット2に近づくことを検出する。本実施形態は、進入禁止空間Ab1、進入禁止空間Ab2のうち、ロボット2がパレタイズ動作を行っている側において出入口センサ31または出入口センサ32が進入物を検出した場合、ロボット2を停止または減速させるようにしている。このことにより、本実施形態は、パレタイズが行われていない側の進入禁止空間Ab1または進入禁止空間Ab2で作業者がパレットP1、P2の出し入れやワークWの手直し等の作業を安全に行うことができる。
【0054】
[柵]
図2、
図3に示すように、パレタイズ装置1は、進入禁止空間の外側に設けられる柵Fをさらに備えている。本実施形態では、柵Fを第六検出区域As31、第七検出区域As32と重なる位置に形成せず、パレット供給口g1、g2からの進入物を出入口センサ31、32により監視するものとした。しかし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、第六検出区域As31,第七検出区域As32と隣接してあるいはその縁に重なるようにこれらの内部または外側に柵Fを形成してもよい。このようにすれば、ロボット2の動作中に柵Fが開いた場合、出入口センサ31、32によりパレット供給口g1、g2への進入物を監視することができる。
【0055】
本実施形態は、柵Fについて特に限定するものではない。柵Fは、例えば、金属製の檻状のもの、金属網を使用したもの、アルミプレートや透明樹脂をアルミフレームの枠で支持しているもの等であってもよい。柵Fは、通過空間At1、At2と充分安全な距離を隔てて設けられ、人の手が外部から通過空間At1、At2に達しない充分な高さを有している。また、柵Fを檻状または金網状にした場合、その間隙には人の手が通過できない程度のサイズであることが要求される。このような柵Fについての基準は、JIS B 9716の規定により定められることが好ましい。
【0056】
[ロボット制御部]
図5は、本実施形態のパレタイズ装置1のロボット制御部5を説明するための図である。パレタイズ装置1のロボット制御部5は、操作盤51、PLC(Programmable Logic Controller)52、ロボットコントローラ55、セーフティコントローラ56及びこれらのハードウェア上で実行されてロボット2を停止または減速させるように制御するプログラムを含んでいる。
操作盤51は、作業者がパレタイズ装置1を含むシステム全体に指示を送るためのスイッチやタッチパネル、さらにはシステムに与える電流や電圧の大きさをモニタするためのメータ等を有している。操作盤51からは運転開始、運転停止、動作条件変更等の指示を表す信号i1がPLC52へ送出され、さらにPLC52からロボットコントローラへ運転開始、運転停止、動作条件変更等の指示を表す信号i3が送出される。また、PLC52は、操作盤51から送られた信号i1によりリレー回路53を介して搬送部Cに信号i10を送出する。信号i10により、搬送部Cは、ワークWの停止、移動及びワークWの貯留等を繰り返す。このようなPLC52は、小型のコンピュータにより実現することができる。
【0057】
ロボットコントローラ55は、セーフティコントローラ56によって制御的に規定された通過空間At1、At2及び進入禁止空間Ab1、Ab2にしたがってロボット2を動作させる。本実施形態では、ロボット2の停止や回転部28の回転速度及びアーム25が通過空間At1、At2を移動する速度の減速もロボットコントローラ55によって行っている。セーフティコントローラ56は、セーフティPLCとも呼ばれるプログラミング可能なものと、セーフティリレーユニットとも呼ばれるプログラミングできないものとがある。本実施形態のセーフティコントローラ56としてはどちらも適用可能であるが、セーフティリレーユニットを用いた方が高い信頼性を得ることができるので好ましい。本実施形態で示す、パレット位置pp1、pp2との間でロボット2がパレタイズ動作またはデパレタイズ動作を行うパレタイズ方法の場合は、2か所の動作の切り替えに対しての対応が容易なので、セーフティPLCを使用するほうが好ましい。
【0058】
セーフティコントローラ56には、境界センサ11、12、空間センサ21、22、出入口センサ31、32及び搬送周りセンサ4が出力する信号i8が入力する。そして、セーフティコントローラ56は、入力された信号i8に基づく信号i5を生成し、ロボットコントローラ55に対して送出してロボット2の停止や減速を指示している。なお、本実施形態では、ロボット2がパレタイズ動作等を行っている側の進入禁止空間への立ち入りを検出しているが、境界センサ11、12、空間センサ21、22、出入口センサ31、32は、パレタイズ動作が行われているか否かに関わらず常に各々の検出区域を検出している。ただし、セーフティコントローラ56は、パレタイズ動作が行われていない側で検出された信号i8を不要な信号であるとしてロボット2の制御に使用することがない。以下、このような制御を「信号を使用しない」とも記し、信号i8を制御に使用することを「信号を使用する」とも記す。
【0059】
本実施形態の切替スイッチ50は、パレタイズ動作が行われる通過空間At1、At2を作業者が手動で切り替えるためのスイッチである。切替スイッチ50は、安全な場所であって、かつパレットP1、P2が見える位置に設けられる。切替スイッチ50の形式は特に限定されず、機械的に行うものでも、画面操作にて行うものであってもよい。作業者は、切替スイッチ50を使ってロボット2がパレタイズ動作を行う側の通過空間At1または通過空間At2を指定する。このような構成は、作業者が切替スイッチ50を操作する必要があるものの、制御がシンプルであって、かつ安全性が高いという利点がある。なお、このような構成では、選択中の通過空間At1または通過空間At2を表示灯や液晶等の画面にて視覚的に示すようにすることにより、作業者等がロボット2に不用心に近づいてロボット2を停止または減速させる頻度が極少にできるので好ましい。
【0060】
切替スイッチ50からは、パレタイズ動作が行われる通過空間を示す信号i9がセーフティコントローラ56に出力される。セーフティコントローラ56は、i9によってパレタイズ動作等が行われている側の境界センサ11、12、空間センサ21、22、出入口センサ31、32及び搬送周りセンサ4のいずれかから信号i8が入力された場合、ロボットコントローラ55に信号i5を出力する。ロボットコントローラ55は、信号i5にしたがってロボット2を停止、または減速させるための信号i6を出力する。さらに、万が一の対策として、ロボット2に図示しない衝突検知用の加減速度センサ等を設けておけば、この加減速度センサからロボット2にかかった加速度や減速度を示す信号i7をロボットコントローラ55に出力し、予想される値と差があった際には人や物と衝突したと見なして、ロボット2の減速または停止を実行して安全にロボットを動作させることができる。また、ロボット2のサーボモータの瞬時トルク、実行トルク、電流値等の変動を感知するシステムをロボットコントローラ55に設けておき、予想される値と差があった際には人や物と衝突したと見なして、ロボット2の減速または停止を実行して安全にロボットを動作させることもできる。
【0061】
さらに、ロボットコントローラ55は、信号i4を出力してPLC52にロボット2が停止または減速したことを通知する。PLC52は、リレー回路53を介して信号i10を搬送部Cに送信し、ロボット2が停止または減速したことによってワークWの供給を停止または供給速度を低下させる。また、PLC52は、併せて操作盤51に信号i2を送信し、操作盤51にロボット2が停止したことを作業者に通知する。作業者への通知は、ブザー、ランプの点灯及びタッチパネル等へのテキストの表示によって行うことができる。
【0062】
ただし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、例えばロボットコントローラ55がパレタイズ動作の開始や完了を検知し、パレタイズ動作が行われる通過空間At1、At2を自動的に交互に切り替えるようにしてもよい。自動的な切り替えは、通過空間At1または通過空間At2でのパレタイズ動作完了後、通過空間At1、At2の共通の空間にアーム25があるタイミングで行われる。共通の空間としては、例えば、入出位置Cpにおいてアーム25がワークWを取り上げる(ピックする)位置がある。このとき、セーフティコントローラ56は、空間センサ21、または空間センサ22から入力された信号i8のうち、次にパレタイズ動作が行われる側を検出区域とするものを使用してパレット位置pp1、pp2内の残留物の有無を判定する。残留物があると判定した場合にはパレット位置に人がいる可能性があるため、セーフティコントローラ56は第三検出区域As21と第四検出区域As22との切り替えを中止すると共に、PLC52を介して操作盤51に切り替えを中止したことを通知する。
【0063】
本実施形態は、以降に行われる制御を特に限定するものではなく、例えば、これからパレタイズ動作が行われる側の第三検出区域As21または第四検出区域As22において残留物が検出されない状態になった後にパレタイズ動作が行われる通過空間を自動的に切り替えるようにしてもよい。さらに切り替えの安全性を高めるためには、切替え中止後にロボット2を通常停止または非常停止とし、操作盤51を使って通常停止の場合は運転開始ボタンを押し、非常停止の場合はリセットボタンを押した後に運転開始ボタンを押す。このような操作により、本実施形態は、特別なスイッチ操作を行うことをせず、ロボットの作業状況を見るだけでパレット作業が可能なタイミングを理解することができる。
【0064】
さらに、本実施形態は、ロボット制御部5が上記のハードウェアの少なくとも一部を使って上記の動作(ロボットを停止または前記ロボットの移動速度を減少させる)と異なる制御を行う独立した他のプログラムを動作させるものであってもよい。他のプログラムとしては、例えば、ロボット2の少なくとも一部及びロボット2のエンドエフェクタ251に把持されているワークWがパレタイズ動作またはデパレタイズ動作中に通過空間At1、At2の外へ出ることがないように監視する監視プログラムであってもよい。この場合、監視プログラムは、上記のセーフティPLC、ロボットコントローラ55、セーフティコントローラ56の少なくとも一部と共に監視制御手段を構成する。
また、他のプログラムとしては、例えば、ロボットのパレタイズ動作またはデパレタイズ動作を制御するパレタイズプログラムであってもよい。パレタイズプログラムは、上記ハードウェアの少なくとも一部と共にパレタイズ制御手段を構成する。パレタイズ制御手段と監視制御手段は、各々独立したプログラムにより実現され、ロボット2を制御している。
ここで、「各々独立したプログラム」とは、二つのプログラムの一方の処理が他方の処理の少なくとも一部を含まないことをいい、一方のプログラムにより得られた結果を他方のプログラムが使用するものであってもよい。
このようにすることにより、本実施形態は、ロボット2が通過空間At1、At2の外部に出ないように監視する処理とパレタイズ動作とが互いに影響されることがなく、パレタイズ動作を適正に行いながらロボット2の可動範囲を監視することができる。
【0065】
[搬送部]
本実施形態は、搬送部Cについて特に限定するものではない。搬送部Cであるコンベヤの場合、コンベヤ上でワークWの底が傷つくことを最小にするため、このコンベヤにはスリップ機能のあるローラコンベヤを使用することが好ましい。ローラコンベヤによれば、先行するワークWが停止してもローラ自身がその軸に対してスリップすることで回転が停止して、ワークWの底の傷みを防止することができる。ローラコンベヤは、一つの駆動装置からベルトで駆動力を伝達して複数のローラを回転させる、あるいは自身が自転するモーターローラを使用するものであってもよい。また、コンベヤは、ベルトコンベヤであってもよい。ベルトコンベヤの場合、各所にワークWを検出するセンサを設置してベルトコンベヤを制御することで、ワークWがベルト面で滑ってワークWの底が傷むことを防止できる。
【0066】
ワークWは、一個ずつアーム25のエンドエフェクタ251によって取り出される位置である搬送部の端部Ceに移送されることが好ましい。このようにすれば、ワークWをロボット2が取り出す際に、取り出されるワークWに続く後続のワークWを傷つける、あるいは後続のワークWにより当該取り出しの対象となるワークWに力が加わって取り出しに失敗することを防止できる。ワークWを一つずつ取り出す方法は特に限定されないが、例えば、ストッパを使って複数のワークWを止めておき、取り出されるワークWの直後のワークを別のストッパによって停止させる。そして、取り出しの対象となっているワークWを一個だけ取り出すことが考えられる。また、ストッパを使って複数のワークWを止めておき、止められたワークWのうちの先頭の一個だけを搬送部Cより速い速度で取り出すことが考えられる。さらに、上記したように、複数のベルトコンベヤを用い、ワークWの取り出し位置に該当するコンベヤをやや高速で動作させることも考えられる。
また、搬送部CへのワークWの供給は、ワークWを搬送用パレット等に複数個並べて行ってもよい。
【0067】
搬送部Cにおけるワーク取り出し位置においては、ワークWの前後左右の位置を予め設定されている位置に正確に位置決めして停止させることによりロボットが正確にワークを取り出すことができる。具体的な方法は特に限定されないが、前後位置に関しては、ワークWの先頭をストッパで停止すればよい。左右位置は左右に設けたガイドで搬送中に規制する、あるいは取り出し位置で片側にガイドを設け、その逆側からワークWを押して位置を定めてもよい。また、位置が不正確であっても、光学式センサや画像処理装置で撮像した情報からロボット2の取り出し位置を補正してもよい。
また、各種ワークWの扱いを可能とするため、前述したワーク位置決め機構を容易に調整できるものにしておくことが好ましく、このためにはハンドルとポジショナーを組み合わせて再現性のある型替え装置を使用することが好ましい。画像処理装置を使用すると、各種ワークを画像の登録、変更が可能になり、形状の異なる複数種類のワークWへの対応が簡易に行えるようになる。
【0068】
[パレタイズ方法]
次に、以上説明した構成のパレタイズ装置1を使ったパレタイズ方法について説明する。本実施形態のパレタイズ方法は、ワークWを搬送部Cから受け入れる、または搬送部Cに送出する入出位置Cpと、ワークWを積み上げる、または積み下ろされるパレットP1、P2が設置されるパレット位置pp1、pp2との間であって、かつ制約を受けた可動範囲内においてロボット2がパレタイズ動作またはデパレタイズ動作を行うパレタイズ方法である。このパレタイズ方法は、パレタイズ動作またはデパレタイズ動作中にロボット2が通過し得る通過空間At1、At2を内包する進入禁止空間Ab1、Ab2と、この進入禁止空間Ab1、Ab2の外部に定められる外部空間Ao1、Ao2との境界の少なくとも一部を第一検出区域As11及び第二検出区域As12とし、この第一検出区域As11及び第二検出区域As12を通過して外部空間Ao1、Ao2から進入禁止空間Ab1、Ab2へ進入する進入物を検出する境界検出工程と、境界検出工程によって進入物が検出された場合、ロボット2を停止またはロボット2の移動速度を減少させるロボット制御工程と、を含んでいる。
【0069】
また、本実施形態のパレタイズ方法では、パレット位置pp1、pp2が複数(二つ)あって、ロボット2は、複数のパレット位置のうちの少なくとも二つで交互にパレタイズ動作またはデパレタイズ動作を行っている。境界検出工程は、パレタイズ動作またはデパレタイズ動作が行われているパレットに応じて設定された検出区域で行われる。
【0070】
以下、
図6を用いて上記のパレタイズ動作を詳細に説明する。
図6は、切替スイッチ50の状態と、ロボット2の動作と、境界センサ11、12及び出入口センサ31、32の使用、不使用及び作業者の動作を対応付けて示す図である。ここで説明するパレタイズ動作は、パターン(a)からパターン(d)の4つのパターンを含んでいる。また、
図6中では、
図2、
図3中の右側に示したパレット位置pp1を含む進入禁止空間Ab1を「エリア1」、左側に示したパレット位置pp2を含む進入禁止空間Ab2を「エリア2」とする。また、「境界」は境界センサ、「出入口」は出入口センサ、「空間」は空間センサをそれぞれ示す。境界、出入口、空間の文字に続いて記されている括弧内の数字1、数字2は、それぞれエリア1、エリア2を示している。境界(1)はエリア1の境界センサ11を示し、境界(2)はエリア2の境界センサ12を示す。また、空間(1)はエリア1の空間センサ21を示し、空間(2)はエリア2の空間センサ22を示し、出入口(1)はエリア1の出入口センサ31を示し、出入口(2)はエリア2の出入口センサ32を示す。
【0071】
パターン(a)では、先ず、切替スイッチ50がエリア2で交換、エリア1で積上げになっている。このような場合、本実施形態のパレタイズ方法では、パレタイズ動作またはデパレタイズ動作が行われていないパレット位置であるパレット位置pp2に、ワークWの積上げが完了したパレットP2を抜き出して、ワークWが乗せられていないパレットP2を搬入する工程をさらに含んでいる。パレットP2を搬入する工程は、作業者によって行われるものであってもよいし、パレットの自動出し入れ装置によって自動的に行うものであってもよい。
【0072】
エリア2においてはパレットP2の交換が行われている間、エリア1ではパレットP1にワークWがロボット2によって積上げられている。ロボット2は、エリア1において積上げが完了すると自動的に通常停止する。このとき、セーフティコントローラ56は、出入口センサ31、32のうち、エリア1への立ち入りを検出する出入口(1)、つまり出入口センサ31の信号を使用し、エリア2への立ち入りを検出する出入口(2)、つまり出入口センサ32の信号を使用しない。出入口センサ32の信号は、パレット供給口g2を通ってパレットP2を交換する作業のために間欠的に進入物を検出している。パレット供給口g2に作業者がいる場合であっても、この位置はロボット2との接触を回避することができる程度に離れている。このことから、本実施形態は、ロボット2を減速することなく動作させ、作業効率を維持することができる。
また、セーフティコントローラ56は、エリア1への立ち入りを検出する境界(1)、つまり境界センサ11の信号を使用し、エリア2への立ち入りを検出する境界(2)、つまり境界センサ12の信号を使用しない。境界センサ12の信号は、エリア2における作業者の動作により間欠的に進入物を検出している状態になっている。
【0073】
境界センサ11が進入物を検出した場合、人が動作中のロボット2に近づいた可能性がある。このため、セーフティコントローラ56は、信号i5をロボットコントローラ55に出力してロボット2の停止または減速を指示する。このとき、人がロボット2に接触することを確実に防ぐには、ロボット2を停止させることが好ましい。また、エリア1におけるパレタイズ動作中、出入口センサ31が進入物を検出すると、パレット供給口g1から人がエリア2に近づいた可能性がある。このため、セーフティコントローラ56は、ロボットコントローラ55にi5を出力してエリア2の停止または減速を指示する。
【0074】
作業者がエリア2においてパレットP2の交換作業等を終了すると、パレタイズ動作は
図6中のパターンパターン(a)からパターン(b)に移行する。パターン(b)では、作業者は、切替スイッチ50をエリア2、エリア1共に積上げに切り替える。切り替えた際にエリア1でワークの積み上げが完了していた場合、また切り替えた後にエリア1でワークの積み上げが完了した場合、セーフティコントローラ56は、エリア2の空間センサ22が残留物を検出したか否かを判定し、検出された場合にはエリア2の監視からエリア1の監視へ制御を切り替えず、例えば操作盤51の側に通知する。これは、エリア2に作業者がいる可能性を示しており、エリア1でワークの積み上げが完了したロボット2は停止となる。
残留物が検知されなかった場合、ロボット2はエリア2における積上げを開始する。セーフティコントローラ56は、出入口センサ31、32の信号を使用し、境界センサ11、12の信号を使用しない。つまり、切替スイッチ50をエリア2、エリア1共に積上げの際は、進入禁止空間Ab1、Ab2共に進入物が進入してくることを検出すると共に、積上げを行っているロボット2自身を検出して、ロボット2を停止または減速させないためである。
【0075】
次に、パターン(c)では、エリア1におけるパレットP1を行うため、作業者は、エリア1の側の切替スイッチ50を交換に切り替える。ロボット2は、エリア2における積上げが終了すると通常停止する。エリア2における積上げが行われている間、セーフティコントローラ56は、出入口センサ32の信号を使用し、出入口センサ31の信号を使用しない。また、境界センサ11の信号を使用せず、境界センサ12の信号を使用する。
【0076】
次に、パターン(d)では、作業者が、エリア1におけるパレットP1の交換作業等が終了すると、切替スイッチ50をエリア2、エリア1共に積上げに切り替える。切り替えた際にエリア2でワークの積み上げが完了していた場合、また切り替えた後にエリア2でワークの積み上げが完了した場合、セーフティコントローラ56は、エリア1の空間センサ21が残留物を検出したか否かを判定する。判定の結果、残留物が検出された場合にはエリア1の監視からエリア2の監視へ制御を切り替えず、例えば操作盤51の側に通知する。これは、エリア1に作業者がいる可能性を示しており、エリア2でワークの積み上げが完了したロボット2は停止する。残留物が検知されなかった場合、ロボット2はエリア1における積上げを開始する。セーフティコントローラ56は、出入口センサ31、32の信号を使用し、境界センサ11、12の信号を使用しない。つまり、切替スイッチ50がエリア2、エリア1共に積上げの場合は、進入禁止空間Ab1、Ab2共に進入物が進入してくることを検出すると共に、積上げを行っているロボット2自身を検出して、停止または減速させないためである。
【0077】
以上処理の後、パレタイズ動作はパターン(a)に戻り、作業者は、エリア2におけるパレットP2の交換を行うためにエリア2の側の切替スイッチ50を交換に切り替える。
積上げの完了後、作業者は、切替スイッチ50をエリア2、エリア1で共に積上げに切り替える。セーフティコントローラ56は、空間センサ21の信号からエリア1に残留物があるか否かを判定し、残留物が検出されない場合にはエリア2の監視からエリア1の監視へと制御を切り替える。以下、同様に、エリア1とエリア2で積上げ、交換の動作が繰り返される。
【0078】
また、エリア1の側の切替スイッチ50を交換、エリア2の側の切替スイッチ50を交換という両方共に交換のパターン(不図示)では、ロボット2がエリア1、エリア2のいずれかにあると、境界(2)(第二検出区域As12)、または境界(1)(第一検出区域As11)でロボットが検出されて、ロボット2が停止または減速してしまう。停止の場合はロボット2がある側の切替スイッチ50を積上にしないと再起動できないことがある。この際は、ロボット2がある側の切替スイッチ50を積上へ切替えるよう、操作盤51にて指示を行うなどの措置を行うとよい。また、停止や減速となると生産性が低下するので、運転中は、両方共に交換のパターンとしないような指示をしてもよい。
【0079】
さらに安全性を高めるため、切替スイッチ50を交換から積上げに変更する際、積上げに変更した後に、リセットなどの確認ボタンが押されるまで積上げが開始しないように制御すれば、安全確認が確実に行われる。
【0080】
また、本実施形態は、上記の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態は、パレタイズ動作が行われていない進入禁止空間において進入物が検出された場合、この検出を無視するものに限定されるものではない。例えば、本実施形態は、パレタイズ動作が行われていない進入禁止空間において進入物が検出された場合、ロボットを安全な速度で減速運転するようにしてもよい。ここで、安全な速度とは、ISO10218-1(JIS B 8433-1)に規定されている安全適合低減速度である250mm/sec(ロボットアーム先端速度)以下にすることが好ましい。
【0081】
以上説明したように、本実施形態は、ロボット2が通過し得る最小の範囲に応じた進入禁止領域への立ち入りを禁止しているので、予め限定されているロボットの通過空間内への進入物を検出し、作業者がロボットの通過空間に近づいてもその安全性を担保することができると共に、パレタイズ装置において進入が制限される範囲が比較的小さくてコンパクトになる。また、本実施形態は、制約された可動範囲である進入禁止空間の切り替えを可能とすることによって外部空間における作業に支障をきたすことがなく、かつ進入禁止空間においてはロボットに接近するものを検出して作業の安全性を保つことができる。なお、外部空間における主な作業としては、パレット作業が挙げられる。パレット作業とは、ハンドファークやフォークリフトによる空パレットの供給、ワーク積が完了したバレットの搬出、人手によるパレット上のワークの位置修正、不足ワークの追加、余剰ワークの撤去等をいう。
【0082】
[変形例]
図7、
図8は、先に説明した実施形態のパレタイズ装置1の変形例を説明するための図であって、柵Fを用いない構成例を示している。
図7、
図8に示す構成は、パレタイズ装置1と、パレタイズ装置が備えるロボット2の通過空間At1の外縁と予め設定されている一定の距離Xを隔てた領域を少なくとも含む検出範囲Ap1(
図8では範囲Ap2)への進入物を検出する検出装置と、により構成されている。
図7は、パレット位置pp1、パレット位置pp2の二箇所でパレタイズを行う構成例を示し、
図8は、パレット位置pp1、パレット位置pp2、パレット位置pp3の三箇所でパレタイズを行う構成例を示している。
図7、
図8に示した構成例では、図示しないレーザスキャナ等のセンサによって検出範囲Ap1(
図8では範囲Ap2)への進入物が検出されている。そして、検出範囲Ap1において進入物が検出された場合、セーフティコントローラ56は、ロボット2を停止させるようにロボットコントローラ55に指示を出す。なお、先の実施形態のように、ロボット2が協働ロボットである場合、他の条件の下にロボット2を減速させながら稼動させるようにしてもよい。また、このようなパレタイズ装置1を含むシステムでは、進入物が検出範囲Ap1、Ap2において検出されなくなることによりロボット2を自動的に再稼動させるようにしてもよい。検出範囲Ap1、Ap2は、床面より上方にあって床面と略平行な平面形状を有している。なお、当然のことながら、検出範囲Ap1、Ap2は、距離Xを隔てた領域を少なくとも含む範囲であるから、ロボット2の通過空間At1から距離X以上離れた範囲であってもよい。
【0083】
ここで、距離Xについて説明する。距離Xは、レーザスキャナやライトカーテン等が発するビームのスキャン方向(上下方向)が進入物の高さ方向に沿う場合、進入物が通過空間At1に対して接近を許容される最小の距離である。距離Xは、先に説明した式(1)によって算出される。また、式(1)中のK=1600mm/s、C=1200-0.4Hである。ただし、Cは850mm以上でなければならず、Hは、基準となる面(例えば床面)から検出範囲Ap1、Ap2までの距離(mm)である。したがって、以下の式(5)が成立する。
X=1600×T+(1200-0.4H)・・式(5)
また、接近方向を含む面と平行な面上で光をスキャンする検出装置では、Hの高さが1000mmを超えてはならない。また、本変形例にあっても、ロボットの停止時間が0.1sec、最小検出能力が40mmの光学的センサ等の安全装置の応答時間を0.06secとする。
【0084】
また、H=875mmの場合、
C=1200-0.4×875=850mmとなる。
H=900の場合、
C=1200-0.4×900=820となるが、規定により本変形例ではC=850mmとする。
したがって、本変形例のXは、以下のように求められる。
X=1600×(0.1+0.06)+850=1106mm
また、水平方向の検出高さを、前述のように1000mm以下、875mm以上とすることでCの値は最小の850mmとなって、Xを小さくできる。さらに、水平方向の検出高さを300mm以下とすれば、リスクアセスメントやそれに基づく保護方策を簡易にできる。検出範囲Ap1、Ap2の設置方向は水平が基本であるが、周囲の状況によってはやや傾けてもよい。
鉛直方向に光をスキャンする検出装置は、水平方向にスキャンするよりも最小距離Xが短くなるので好ましい。ただし、水平方向スキャンは鉛直方向スキャンよりも広範囲の検知が可能なので、検出装置の個数を少なくでき、コスト面や、制御を単純にできるので好ましい。さらに複数の検出の機構を組み合わせることによって、パレットの自動搬送部を不要とし、コンパクト、シンプル、安価なロボット式パレタイズ装置を提供することができる。また、パレタイズ作業完了や作業途中のパレットに人が近づいて、積み状態を修正する等の手作業も容易に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・パレタイズ装置
2・・・ロボット
4・・・搬送周りセンサ
5・・・ロボット制御部
11、12・・・境界センサ
21、22・・・空間センサ
24、25・・・アーム
26・・・土台
27・・・基部
28・・・回転部
31、32・・・出入口センサ
50・・・切替スイッチ
51・・・操作盤
52・・・PLC
53・・・リレー回路
55・・・ロボットコントローラ
56・・・セーフティコントローラ
251・・・エンドエフェクタ
Ab1、Ab2・・・進入禁止空間
Ao1、Ao2・・・外部空間
As11・・・第一検出区域
As12・・・第二検出区域
As21・・・第三検出区域
As22・・・第四検出区域
As4・・・第五検出区域
As31・・・第六検出区域
As32・・・第七検出区域
At1、At2・・・通過空間
A・・・空間
C・・・搬送部
Cp・・・入出位置
F・・・柵
P1、P2・・・パレット
Sr1、Sr2・・・範囲
S・・・積上げ板面
W・・・ワーク
pp1、pp2、pp3・・・パレット位置