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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20230215BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20230215BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28F9/22
F28F9/02 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018234389
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094774
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁和
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221473(JP,A)
【文献】特開2013-200053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00-9/04
F28F 9/00-9/26
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブ(1)が配置された熱交換器コア(3)と、熱交換器コア(3)の外周を被嵌するケーシング本体(4a)と、その上端を被蔽する上蓋(4b)とからなるケーシング(4)を有し、ケーシング(4)と熱交換器コア(3)との間に第1流体(5)として気体が導かれ、熱交換器コア(3)のチューブ(1)内に第2流体(6)が導かれ、両流体(5)(6)間に熱交換が行われる熱交換器において、
ケーシング(4)の上蓋(4b)には、それぞれ前記熱交換器コア(3)に対向する一対の入口ダクト部(7)および出口ダクト部(8)を具備し、
入口ダクト部(7)と出口ダクト部(8)との間には、蓋側仕切(11b)及び本体側仕切板(11a)を有し、
それぞれ実質的に断面円形の入口ダクト部(7)に、その直径より小なる直径の入口ポート部(9)が連通し、
入口ポート部(9)、入口ダクト部(7)を介して熱交換器コア(3)に流通し、ケーシング本体(4a)の内部をUターンして、蓋側仕切(11b)及び本体側仕切板(11a)によって仕切られた出口ダクト部(8)から出口ポート部(10)に導かれる第1流体(5)は、入口ダクト部(7)において、熱交換器コア(3)内の第2流体(6)の流通する方向と交差する方向に偏向され、
入口ポート部の直径(Pi),入口ダクト部の直径(Di)としたとき、Pi/Diの比が0.65<Pi/Di<0.85であると共に、入口ポート部(9)の中心軸(9a)と入口ダクト部(7)の中心軸(7a)とが直交し且つ、
入口ポート部(9)の中心軸(9a)が入口ダクト部(7)の中心軸(7a)に対して偏心され、その偏心量(Osi)が、
0.15Pi<Osi<0.4Pi
であることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として水冷チャージエアクーラに関し、より詳しくは整流板等を設けることなく圧力損失を低減するものに関する。
【背景技術】
【0002】
一例としてチャージエアクーラは、フィンとチューブとからなるコアの外周にケーシングが被嵌され、ケーシングの一端に設けられた入口ポートから角錐状の入口ダクトを介して、チャージエアがコアに導かれる。そのチャージエアはケーシングを流通するとき、流路が変更され、その際に比較的大きな圧力損失を生じる。
このような入口ポートから入口ダクトに導かれる連結部における圧力損失を低減させるものとして、下記特許文献1に記載の熱交換器が提案されている。
これは、小径の供給管から大径の小径部内に供給される排気ガスを、小径部で旋回させることにより、圧力損失を低減させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-200053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、供給管の軸心を小径部に対して偏心させることによって排気ガスを旋回させて流入させることについて記載されているが、偏心量が過小の場合、偏心による旋回流が十分に生じず、また、偏心量が過大の場合、流れが小径部の外周側に極端に偏り、かえって圧力損失が増加してしまうという問題があった。
そこで、本発明は上述の問題を解決し、圧力損失の少ない熱交換器を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、複数のチューブ1が配置された熱交換器コア3と、熱交換器コア3の外周を被嵌するケーシング本体4aと、その上端を被蔽する上蓋4bとからなるケーシング4を有し、ケーシング4と熱交換器コア3との間に第1流体5として気体が導かれ、熱交換器コア3のチューブ1内に第2流体6が導かれ、両流体5,6間に熱交換が行われる熱交換器において、
ケーシング4の上蓋4bには、それぞれ前記熱交換器コア3に対向する一対の入口ダクト部7および出口ダクト部8を具備し、
入口ダクト部7と出口ダクト部8との間には、蓋側仕切11b及び本体側仕切板11aを有し、
それぞれ実質的に断面円形の入口ダクト部7に、その直径より小なる直径の入口ポート部9が連通し、
入口ポート部9、入口ダクト部7を介して熱交換器コア3に流通し、ケーシング本体4aの内部をUターンして、蓋側仕切11b及び本体側仕切板11aによって仕切られた出口ダクト部8から出口ポート部10に導かれる第1流体5は、入口ダクト部7において、熱交換器コア3内の第2流体6の流通する方向と交差する方向に偏向され、
入口ポート部の直径Pi,入口ダクト部の直径Diとしたとき、Pi/Diの比が0.65<Pi/Di<0.85であると共に、入口ポート部9の中心軸9aと入口ダクト部7の中心軸7aとが直交し且つ、
入口ポート部9の中心軸9aが入口ダクト部7の中心軸7aに対して偏心され、その偏心量Osiが、
0.15Pi<Osi<0.4Pi
であることを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1流体5が、入口ポート部9、入口ダクト部7を介して熱交換器コア3に流通し、ケーシング本体4aの内部をUターンして、蓋側仕切11b及び本体側仕切板11aによって仕切られた出口ダクト部8から出口ポート部10に導かれる熱交換器において、小径(直径Pi)の入口ポート部9から第1流体5が大径(直径Di)の入口ダクト部7に導かれ、両者の直径の比Pi/Diが、
0.65<Pi/Di<0.85であると共に、入口ポート部9の中心軸9aと入口ダクト部7の中心軸7aとが直交し且つ、
両者の中心軸9a、7a間の偏心量Osiが、
0.15Pi<Osi<0.4Piに形成されたものである。
それにより、偏心量Osiが適切となり、入口ダクト部7に必要且つ十分な旋回流が生じるので、第1流体が当該部を流通する際の圧力損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の熱交換器のケーシング4を構成する上蓋4bの平面図(A)、同底面図(B)、熱交換器の縦断面図(C)。
図2】同熱交換器の分解斜視図。
図3】同熱交換器に用いられる上蓋4b及び側体16その他の分解斜視図(A)、同組立て状態を示す斜視図(B)。
図4図1(C)のIV-IV矢視図(A)、図4(A)のB-B矢視図(B)。)。
図5】本発明の実施例の熱交換器の性能試験を示すものであって、横軸にオフセット量、縦軸に圧力損失比をとったもの。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1図5は本発明の熱交換器の実施例を示し、図1(A)は上蓋4bの平面図、図1(B)は底面図、図1(C)は同熱交換器の縦断面図、図2は同熱交換器の分解斜視図、図3(A)は同熱交換器に用いられる上蓋4b及び、側体16その他の分解斜視図、図3(B)は同組立て状態を示す斜視図、図4(A)は図1(C)のIV-IV矢視横断面図、図4(B)は図4(A)のB-B矢視断面図である。
【0009】
この熱交換器は、一例としてチャージエアクーラに最適なものであって、図2に示す如く、熱交換器コア3とケーシング4とを有する。
熱交換器コア3は、図1(C)及び図4(A)に示す如く、上下2列に並列した多数のチューブ1と各チューブ1との間に配置されたフィン2とで熱交換器コア3を構成する。そして、各チューブ1の両端が図1(C)に示す如く、ヘッダプレート15に貫通する。そして各チューブ1の開口は一対の水タンク17に連通する。そして、水タンク17に設けた水パイプ14から第2流体6の冷却水が、各チューブ1を介して他方の水タンク17に流通する。
【0010】
また、第1流体5として、チャージエアが、上蓋4bの入口ポート部9及びそれに接続された入口ダクト部7を介して熱交換器コア3の外面側に供給される。
この実施例において、入口ポート部9及び入口ダクト部7は断面が円形のパイプ状に形成され、入口ポート部9と入口ダクト部7とは直交する。それと共に、入口ポート部9の中心軸9aと入口ダクト部7の中心軸7aとは、図1(A)に示す如く、入口ダクト部7の中心軸7aに対する入口ポート部9の中心軸9aの偏心量Osiだけ位置ずれする。
【0011】
なお、ケーシング4は、熱交換器コア3を内装するケーシング本体4aと、その上端を被蔽する上蓋4bとからなる。
上蓋4bは、図1(C)において、左側に入口ポート部9と入口ダクト部7を有し、右側に出口ダクト部8と出口ポート部10とを有する。出口ダクト部8は、この例では、図2の如く略角錐状に形成され、その端部が出口ポート部10に一体に連通する。
出口ダクト部8と入口ダクト部7との間には、蓋側仕切11b及び本体側仕切板11aを有すると共に、それらの両端に図2に示す如く、側体16が設けられている。本体側仕切板11aは図4(A)に示す如く熱交換器コア3の上縁に当接し、側体16が熱交換器コア3の両側に当接する。
【0012】
この例では、図2に示す如く、ケーシング4の下部を形成するケーシング本体4aの両端部に水タンク17が配置され、ケーシング本体4aと水タンク17とがボルトで結合されている。また、ケーシング本体4aと上蓋4bもフランジを介してボルト結合される。
なお、本体側仕切板11a及び蓋側仕切11bは熱交換器コア3の長手方向の中央部に配置される。
【0013】
(作用)
このようにしてなる熱交換器は、一例としてチャージエアクーラとして利用される。
チャージエアとしての第1流体5は、熱交換器コア3の入口ポート部9,入口ダクト部7を介して熱交換器コア3の左半分を流通し、ケーシング本体4aの内部をUターンして出口ダクト部8から出口ポート部10に導かれる。
また、一方の水タンク17の水パイプ14から流入した冷却水は、熱交換器コア3の各チューブ1に供給され、他方の水タンク17から流出する。そして、第1流体5と第2流体6との間に熱交換される。
この第1流体5は、入口ポート部9から入口ダクト部7に導かれるとき、入口ポート部9の中心軸9aと入口ダクト部7の中心軸7aとが偏心量Osiだけ偏心しているので、図1(B)の如く、第1流体5が入口ダクト部7内で旋回しつつ、ケーシング4のケーシング本体4aに供給される。その旋回流の発生により、入口ポート部9及び入口ダクト部7を通るときの空気抵抗が減少する。
なお、図4(B)は熱交換器コア3の各フィン2を流通する第2流体6の流れを示す。
【0014】
図5は、本発明の熱交換器の流体解析結果の一例を示すものであって、横軸にオフセット量(前述の偏心量Osiを意味する。)、縦軸に圧力損失比を示す。縦軸上において、100の位置は偏心が存在しないときの圧力損失であり、これを基準とする。
この例では、入口ポート部の直径Piの直径を53.5mmとし、偏心量Osiを0~35mmまで変化させたときのオフセット量(偏心量Osi)に対する圧力損失比を曲線で表したものである。
この曲線からオフセット量(偏心量Osi)が8mm<Osi<21.7mmの範囲で圧力損失が低下することが明らかとなった。
なお、偏心量Osiの下限値より小さくなると、偏心による旋回流が十分生じない。また、偏心量Osiの上限値より大きくなると、偏心が過剰となり、空気流が内壁に偏り、かえって圧力損失が増大する。
【0015】
これらの解析および検討により、入口ポート部9の直径Piと入口ダクト部7の直径Diとの比が、0.65<Pi/Di<0.85である入口ポート部9及び入口ダクト部7において、入口ポート部9の中心軸9aと入口ダクト部7の中心軸7aとの偏心量Osiを、0.15Pi<Osi<0.4Piとすることにより、偏心量が適切となり、必要かつ十分な旋回流が生じ、圧力損失が低減されることが見出された。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の熱交換器は、チャージエアクーラとして利用でき、特に、水上バイク用として最適である。なお、自動車用エンジンに供給するチャージエアのクーラとしても利用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 チューブ
2 フィン
3 熱交換器コア
4 ケーシング
4a ケーシング本体
4b 上蓋
5 第1流体
6 第2流体
7 入口ダクト部
7a 中心軸
8 出口ダクト部
9 入口ポート部
9a 中心軸
【0018】
10 出口ポート部
11a 本体側仕切板
11b 蓋側仕切
13 溝部
14 水パイプ
15 ヘッダプレート
16 側体
17 水タンク
Pi 入口ポート部の直径
Di 入口ダクト部の直径
Osi 入口ダクト部の中心軸に対する入口ポート部の中心軸の偏心量
図1
図2
図3
図4
図5