(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置のための元素金属および炭素の混合物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20230215BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230215BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20230215BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20230215BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230215BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230215BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230215BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230215BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01M4/133
H01G11/06
H01G11/32
H01G11/50
H01G11/86
H01G13/00 381
H01M4/1393
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2018563378
(86)(22)【出願日】2017-02-16
(86)【国際出願番号】 US2017018080
(87)【国際公開番号】W WO2017146978
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-12
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル ポーター
(72)【発明者】
【氏名】サイディ ムハンマド-ヤジド
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-249407(JP,A)
【文献】特開平11-025975(JP,A)
【文献】国際公開第2015/139660(WO,A1)
【文献】特開2005-166325(JP,A)
【文献】国際公開第2010/008058(WO,A1)
【文献】特開2012-204306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/0587
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子と、元素金属と、フィブリル化
されたバインダと、を備え
るエネルギー貯蔵装置を製造するための電極フィルムであって、
上記炭素粒子は多孔質炭素粒子を含み、各多孔質炭素粒子は複数の細孔を有し、該複数の細孔の少なくともいくつかは、少なくともいくつかの上記元素金属を受け入れ、
上記電極フィルムは自立型であり、溶媒からの残留物
を含まず、
上記フィブリル化されたバインダは支持マトリックスを形成し、
上記元素金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され
、
上記電極フィルムは、上記元素金属の露出部分を覆う固体電解質界面(SEI)層をさらに備えた、
電極フィルム。
【請求項2】
上記多孔質炭素粒子は、活性炭素を含む
請求項
1に記載の電極フィルム。
【請求項3】
上記多孔質炭素粒子は、メソポーラスカーボンを含む
請求項
1に記載の電極フィルム。
【請求項4】
SEI層は、対応する多孔質炭素粒子の細孔内および対応する多孔質炭素粒子の外面下にある元素金属の露出部分を覆う
請求項
1に記載の電極フィルム。
【請求項5】
乾燥電極フィルムである
請求項
1に記載の電極フィルム。
【請求項6】
上記炭素粒子はグラファイト粒子を含む
請求項1に記載の電極フィルム。
【請求項7】
集電体および請求項1に記載の電極フィルムを含む電極。
【請求項8】
アノード電極である
請求項
7に記載の電極。
【請求項9】
上記アノード電極は、リチウムイオンバッテ
リのアノードである
請求項
8に記載の電極。
【請求項10】
上記元素金属は元素リチウム金属粒子を含む
請求項1に記載の電極フィルム。
【請求項11】
上記フィブリル化
されたバインダが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらのコポリマーのうちの少なくとも1つである
請求項1に記載の電極フィルム。
【請求項12】
1重量%~
5重量%の上記元素金属を含む
請求項1に記載の電極フィルム。
【請求項13】
上記多孔質炭素粒子が、
1μmから
20μmの累計粒子径D
50値を有する
請求項
1に記載の電極フィルム。
【請求項14】
上記複数の細孔が、上記多孔質炭素粒子の体積の
10%から
80%を占める
請求項
1に記載の電極フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、エネルギー貯蔵装置の電極用組成物、そのような電極を実装したエネルギー貯蔵装置、および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンおよび/またはアルミニウムイオンをもとにしたエネルギー貯蔵装置は、多様な範囲の電気機器に電力を供給するために使用することができる。これらの材料を使用するバッテリおよび/またはキャパシタは、例えば、風力発電システム、無停電電源システム(UPS)、光起電力発電、および/または産業機器や輸送システムのエネルギー回収システムを含む様々な用途で実装することができる。このようなバッテリおよび/またはキャパシタの電極は、製造中にプレドーピングプロセス(a pre-doping process)を行うことがある。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置は、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間のセパレータを含み、第1電極および第2電極の少なくとも1つは炭素粒子および元素金属(elemental metal)を含むことができる。元素金属は、元素リチウム金属(elemental lithium metal)を含み、本質的に元素リチウム金属からなり、または元素リチウム金属からなることができる。元素金属は、元素ナトリウム金属を含み、本質的に元素ナトリウム金属からなり、または元素ナトリウム金属からなることができる。元素金属は、元素カリウム金属を含み、本質的に元素カリウム金属からなり、または元素カリウム金属からなることができる。元素金属は、元素マグネシウム金属を含み、本質的に元素マグネシウム金属からなり、または元素マグネシウム金属からなることができる。元素金属は、元素アルミニウム金属を含み、本質的に元素アルミニウム金属からなり、または元素アルミニウム金属からなることができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、第1電極および第2電極の少なくとも1つは、元素リチウム金属および炭素粒子を含有する乾燥電極フィルムを含むことができる。第1電極および第2電極の少なくとも一方は、リチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタのアノードのような、アノードを含むことができる。
【0005】
いくつかの実施形態では、炭素粒子は多孔質炭素粒子を含み、各多孔質炭素粒子は複数の細孔を有し、その複数の細孔の少なくともいくつかは、少なくともいくつかの元素リチウム金属を受け入れる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、活性炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は階層的に構造化された炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子はメソポーラスカーボンを含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属の露出部分を覆う固体電解質界面(SEI)層を形成することができる。このSEI層は、対応する多孔質炭素粒子の外面下にある元素リチウム金属の露出部分を覆うことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、炭素粒子はグラファイト粒子を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属は、元素リチウム金属粒子を含むことができる。
【0009】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵装置を製造する方法は、元素リチウム金属と複数の炭素粒子とを混ぜ合わせて第1電極フィルム混合物を形成する工程と、電極フィルム混合物から電極フィルムを形成する工程とを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記方法は、少なくとも一方が電極フィルムを含む第1電極および第2電極を形成する工程と、第1電極と第2電極との間にセパレータを挿入する工程と、をさらに含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子は複数の多孔質炭素粒子を含むことができ、各多孔質炭素粒子は複数の細孔を有する。いくつかの実施形態では、この多孔質炭素粒子は、活性炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は階層的に構造化された炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子はメソポーラスカーボンを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属および複数の炭素粒子を混ぜ合わせる工程は、各多孔質炭素粒子に対応する細孔の少なくともいくつかが、少なくともいくつかの元素リチウム金属を受け入れるように、元素リチウム金属および複数の多孔質炭素粒子を混合する工程を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属の露出部分に固体電解質界面(SEI)層を形成することができる。SEI層を形成する工程は、対応する多孔質炭素粒子の外面下にある元素リチウム金属の露出部分を覆う工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、SEI層を形成する工程は、元素リチウム金属の露出部分を電解質溶媒蒸気に曝露する工程を含む。いくつかの実施形態では、元素リチウムの露出部分を電解質溶媒蒸気に曝露する工程は、元素リチウムの露出部分をカーボネート蒸気に曝露する工程を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子は複数のグラファイト粒子を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、混合物は実質的に均質な混合物である。
【0016】
いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属(bulk elemental lithium metal)を製造するする工程と、そのバルク元素リチウム金属のサイズを小さくして複数の元素リチウム金属粒子を形成する工程とをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属と複数の炭素粒子とを混ぜ合わせる工程は、乾燥元素リチウム金属と複数の乾燥炭素粒子とを混ぜ合わせて乾燥電極フィルム混合物を形成する工程を含む。いくつかの実施形態では、第1電極および第2電極の少なくとも1つは、リチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタのアノードを含む。
【0018】
いくつかの態様では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置を形成するためのバルク材料の混合物は、元素リチウム金属および活性炭素粒子を含有することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属および活性炭素粒子を含むバルク混合物を入れる内部容積を有する混合装置が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、その混合装置は、内部容積内に不活性ガスをさらに含む。いくつかの実施形態では、その混合装置は、チャンバ内に電解質溶媒蒸気をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、活性炭素粒子はグラファイトを含む。いくつかの実施形態では、活性炭素粒子は、細孔に元素リチウム金属が挿入された多孔質炭素粒子を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、プレドープされたエネルギー貯蔵装置の電極(a pre-doped energy storage device electrode)は、リチウムなどの元素金属と活性炭素粒子との混合物を含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置が提供される。ここで、エネルギー貯蔵装置は、元素リチウム金属と複数の炭素粒子とを混ぜ合わせて電極フィルム混合物を形成する工程と、その電極フィルム混合物から第1電極フィルムを形成する工程と、によって製造される。さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、第1電極と第2電極との間にセパレータをさらに挿入し、任意で、第1電極、セパレータおよび第2電極をハウジング内に配置し、任意で、さらに電解質をハウジング内に配置し、第1電極および第2電極をこの電解質に接触させ、任意で、第2電極をプレドープ(pre-doped)する。
【0024】
本発明、および、本発明によって達成する先行技術に対する利点を要約するために、特定の目的および利点がここに記載される。当然のことながら、必ずしもそのような目的または利点の全てが特定の実施形態に従って達成される必要はないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者であれば、1つの利点または1群の利点を達成または最適化できる方法で、その他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本発明を具体化または実施することができることを理解するであろう。
【0025】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示される本発明の範囲に含まれるものとする。これらのおよび他の実施形態は、添付の図面を参照した以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなる。そして、本発明はいずれかの特定の開示された実施形態に限定されない。
【0026】
本明細書のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、特定の実施形態の図面を参照して記載されるが、これは特定の実施形態を例示することを意図したものであり、本発明を限定するものではない。
【0027】
本明細書には、カラーで示される少なくとも1つの図面が含まれる。この本明細書のカラー図面の写しは、請求および必要な手数料の支払いがあった場合に事務局(the Office)が提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の概略断面図である。
【
図2A】一実施形態に係る、細孔内に元素リチウム金属を有するかまたは有さない多孔質炭素粒子の概略図である。
【
図2B】
図2Aよりも拡大倍率の高い多孔質炭素粒子の概略図である。
【
図2C】多孔質炭素粒子内の中空チャネルまたは細孔に相当する開口を示す概略図である。
【
図2D】元素リチウム金属を含む多孔質炭素粒子内の中空チャネルまたは細孔の概略図である。
【
図2E】元素リチウム金属を有する多孔質炭素粒子の外面の開口部を示す概略図である。
【
図2F】
図2Dに示される多孔質炭素粒子の外面の開口部内の露出したリチウム金属上のSEI層を示す概略図である。
【
図3】炭素粒子と元素リチウム金属とを含有する混合物を調製する工程例のフロー図である。
【
図4】複数のリチウム-炭素複合粒子を製造する工程例のフロー図である。
【
図5】グラファイト粒子と元素リチウム金属とを含有する混合物を調製する工程例のフロー図である。
【
図6】本明細書に記載された組成物の1つ以上を使用して電極フィルムを製造する工程例のフロー図である。
【
図7】本明細書に記載された1つ以上の工程に従って、元素リチウム金属と炭素粒子とを混ぜ合わせるように構成された装置の一例の概略図である。
【
図8A】一実施形態に係るバルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とから電極フィルム混合物を形成する工程における一段階を示す写真である。
【
図8B】バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とから電極フィルム混合物を形成する工程における、
図8Aの次の段階を示す写真である。
【
図8C】バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とから電極フィルム混合物を形成する工程における、
図8Bの次の段階を示す写真である。
【
図9A】実施例に従って形成された電極フィルムを含むコイン電池の比容量性能を示す電圧曲線である。
【
図9B】実施例に従って形成された電極フィルムを含むコイン電池の比容量性能を示す電圧曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特定の実施形態および実施例が以下に記載されるが、当業者であれば、本発明が具体的に開示された実施形態および/または使用を超えるものであること、ならびに、改良などについて認識するであろう。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、以下に記載される特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【0030】
以下に開示するのは、材料の混合物、対応する電極、エネルギー貯蔵装置、および関連する方法についての実施形態であり、これらはすべてバルク材料として元素リチウム金属を使用するものである。本明細書において、元素リチウム金属は、酸化状態がゼロのリチウム金属を指す。再充電可能なエネルギー貯蔵の利用など、従来のエネルギー貯蔵装置の利用においては、元素リチウム金属を原料として使用しない。元素リチウム金属が電気化学的に活性な材料の成分中に分散することで、元素リチウム金属が細かく分布した電極を得ることができるが、それは反応性が高く、または製造過程のある条件下では爆発する場合もあるからである。例えば、従来の湿式のエネルギー貯蔵装置の製造では、リチウム元素金属が湿式処理で用いられる水および/またはN-メチルピロリドンのような多量の液体に曝されたときに反応性が高く爆発する場合もあるので、リチウム元素金属を使用しない。代わりに、従来のエネルギー貯蔵装置は、安定性を付与するために表面加工されたコーティング層を有することが知られているリチウム材料を使用する。これらのリチウム材料、例えばリチウムカチオンおよびカーボネートをベースとする組成物を含む材料などは、酸化状態がゼロでない。例えば、従来の方法は、FLC Lithium社のSLMPの商標のStable Lithium Metalized Powderを使用する。これらの従来の材料は、塩によるコーティングを含むものが多く、二次処理工程でリチウムに接触させるために割られるが、それによってこれらの材料から形成される電極のエネルギー密度が低下し、処理工程がより複雑となり、材料コストが増加する。本明細書で使用される材料の処理および構造は、バルク元素リチウム金属の使用を可能にし、それによって、得られるエネルギー貯蔵装置のエネルギー密度が増加し、またある程度、望ましくない反応または爆発の可能性が低減する。
【0031】
元素金属を電極活物質の混合物に含めることによって、プレドープされた電極を製造することができる。このことによって、理論によって発明の範囲を制限する意図はないが、電極フィルムに含まれるリチウム金属が酸化還元反応によって遊離金属イオンを生成するものと考えられる。従って、本明細書に示す元素金属を含む電極は、電解質と接触しているときに電子を放出し、続いてリチウム金属原子ごとに金属カチオンを形成し得る。放出された金属イオンはいずれかの電極に拡散することがある。例えば、エネルギー貯蔵装置の典型的なアノード材料は、一般に、1つ以上のインターカレーション炭素成分を含む。このインターカレーション炭素成分は、リチウムイオンのような特定の金属イオンがインターカレートされるように選択することができる。電極が本明細書で示すような元素金属を含む場合、その金属イオンは、アノードの1つ以上の活性炭素成分中にインターカレートすることができる。これに関連して、例えば、キャパシタのカソード材料は、一般に、リチウムイオンなどの金属イオンを吸着することができる炭素成分を含む。カソードが金属イオンと接触すると、金属イオンがカソードの表面に吸着し得る。
【0032】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で示す材料および方法は、電極のプレドープのための工程数を減らすという利点を有し得る。具体的には、元素金属が電極フィルム混合物に含まれる場合、既存の電極フィルムに対して必要とされる独立したプレドープ工程を行う必要はない。本明細書で示す電極フィルム混合物は、元素金属と複数の炭素粒子との間の密接な接触を可能にすることができる。したがって、プレドーピング材料源(例えば元素金属または金属イオン溶液などの金属イオン源でもよい)と炭素ベースの電極との間の電気的接触を提供する別個の電気素子を必要とするプレドープ工程は必要なくなる。代わりに、本明細書の実施形態は、エネルギー貯蔵装置内の電解質との接触時に金属イオンを放出するような、元素金属粒子を含有する電極フィルムを備えたプレドープ電極を提供することができる。
【0033】
元素金属は、プレドーピング源として適している金属塩よりは、安価であり得る。本明細書に示す材料および方法は、金属塩を使用しないプレドープ電極の製造を可能にする。さらに、本明細書に示す材料および方法は、乾式の電極製造技術と相性がよく、したがって、湿式の電極製造に伴う処理の非効率性を低減できる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される材料および方法は、プレドープ電極の製造のコスト効率を高めることができる。リチウムを有するエネルギー貯蔵装置に関して本明細書で説明される元素金属およびそれに関連する概念は、他のエネルギー貯蔵装置および他の金属で実施され得ることが理解できる。
【0034】
バルク元素リチウム金属は、元素リチウム金属のシート、バー、ロッド、または他の形態で提供することができる。いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属は、それぞれ約1mm3~約1m3を含む約1mm3を超える体積を有する1つ以上の元素リチウム金属片とすることができる。いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属は、約10μm~約80μm、または約50μm~約100μmを含む、約5μm~約100μmの厚さを有する元素リチウム金属シートとすることもできる。バルク元素リチウム金属は、様々な形状のリチウムの塊とすることもできる。バルク元素リチウム金属は、粒子状にさらにサイズを縮小することができ、例えばグラファイト粒子、多孔質炭素粒子および/または活性炭素粒子など、炭素粒子などの炭素と混合することができ、エネルギー貯蔵装置の電極を形成するためのバルク材料粒子混合物をなす。いくつかの実施形態では、元素金属、例えばリチウムは、粉末状の元素金属である。さらなる実施形態では、元素金属、例えばリチウムは、本明細書に示す1つ以上の処理工程、例えば工程300,400,500または600のうちの1つ以上の工程中においてサイズが縮小され、元素金属粉末を形成する。
【0035】
本明細書では、炭素粒子は、多孔質炭素粒子および/または非多孔質炭素粒子を含む、グラファイトなどの様々なサイズの炭素粒子を意味し得る。いくつかの実施形態では、炭素粒子は、約1μm~約20μmの累積粒子径D50を有することができる。いくつかの実施形態では、累積粒子径D50は、約1μm~約15μm、または約2μm~約10μmであり得る。
【0036】
本明細書では、多孔質炭素粒子は、内部に延びる細孔または中空チャネル(中空管)を有する様々な炭素材料を指すことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、ナノ多孔質炭素粒子、ミクロポーラスカーボン粒子、メソポーラスカーボン粒子および/またはマクロポーラス炭素粒子を含むことができる。細孔または中空チャネルは、約1nm~約2μmの直径を有することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、粒子の直径の約2%~約5%または約5%~約10%を含む、粒子の直径の約2%~約10%の直径を有する細孔を有することができる。例えば、多孔質炭素粒子の細孔は、炭素粒子の体積の約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%を含む、炭素粒子の体積の約10%~約80%を占めることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は活性炭素粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、階層的に構造化された炭素粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤおよび/または構造化カーボンナノシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、グラフェンシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、表面処理された炭素粒子であってもよい。例えば、その処理された炭素粒子では、処理された炭素の1つ以上の表面の1つ以上の官能基の数が減少していてもよい。例えば、1つ以上の官能基が、未処理の炭素表面と比べて約10%~約60%減少(約20%~約50%減少を含む)している。処理された炭素は、水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基の数が減少していてもよい。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.5%未満を含む、約1%未満の水素含有官能基を有する。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約0.1%未満を含む約0.5%未満の窒素含有官能基を有する。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、約3%未満を含む約5%未満の酸素含有官能基を有する。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は、未処理の炭素材料に比べて水素含有官能基が約30%未満である。
【0038】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極を製造するための混合物は、複数の炭素粒子と、複数の元素リチウム金属粒子などの元素リチウム金属とを含有する。いくつかの実施形態では、その混合物は乾燥粒子混合物である。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極のための電極フィルムは、複数の炭素粒子と元素リチウム金属とバインダなどの1つ以上の他の電極成分とを含有する乾燥粒子混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子、元素リチウム金属、および1つ以上の電極成分を含有する乾燥粒子混合物から、乾式処理によって電極フィルムを形成することができる。本明細書では、乾式処理または乾燥混合物は、あらゆる液体または溶媒を含まないかまたは実質的に含まない処理および混合物をいう。例えば、乾式処理によって乾燥粒子混合物から形成される電極フィルムは、そのような液体および/または溶媒からの残留物を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、例えばウェットスラリー溶液を形成して、電極フィルムを形成するための湿式処理が用いられる。いくつかの実施形態では、電極は、リチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタのアノードであってもよい。例えば、リチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタは、カソード、アノードおよびカソードとアノードとの間のセパレータを含むことができ、上記アノードは、複数の炭素粒子および元素リチウム金属を含有する電極フィルムを含む。いくつかの実施形態では、元素金属は、電極フィルム混合物の約0.1重量%、約0.3重量%、約0.5重量%、約0.7重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%または約10重量%をなすことができる。特定の実施形態では、元素金属は、電極フィルム混合物の約1重量%~約5重量%をなすことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子および元素リチウム金属は、複数のリチウム-炭素複合粒子を含む。例えば、リチウム-炭素複合粒子は、導電性の多孔質炭素粒子およびその多孔質炭素粒子の細孔または中空チャネル内に元素リチウム金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、細孔内の元素リチウム金属は、元素リチウム金属粒子を含む。いくつかの実施形態では、細孔内の元素リチウム金属は、再凝固された元素リチウム金属を含む。多孔質炭素粒子は、メソポーラスカーボン粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、活性炭素粒子、または階層的に構造化された炭素粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子は、少なくともいくつかの細孔がいくつかの元素リチウム金属を受け入れる複数の多孔質炭素粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子は、元素リチウム金属で充填されまたは実質的に充填された細孔を有する複数の多孔質炭素粒子を含む。本明細書でさらに詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子は、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子を、大気圧よりも低い圧力および室温より高い温度で、混ぜ合わせることによって製造される。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、周囲温度付近の温度下および大気圧付近の気圧下で混ぜ合わせることができる。多孔質炭素粒子および元素リチウム粒子は、アルゴンのような不活性ガスのみに曝露しながら、不活性条件下で、例えば混合容器などの容器内で混合して、複数のリチウム-炭素複合粒子を形成させることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム粒子を混合する工程は、多孔質炭素粒子および元素リチウム粒子をカーボネート蒸気またはカーボネート液体に曝露する工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子は、粒子の外面の開口部内の元素リチウム金属上の固体電解質界面(SEI)層を含む。いくつかの実施形態では、SEI層を形成する工程は、複数のリチウム-炭素複合粒子をカーボネート蒸気に曝露する工程を含む。例えば、粒子の外面の細孔の開口部内の露出した元素リチウム金属は、カーボネート蒸気と反応することができ、それによってその露出した元素リチウム金属上にのみSEI層が形成され、または実質的に露出した元素リチウム金属上にのみ形成される。さらなる実施形態では、SEI層は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニルカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、これらの組み合わせ、および/または同等のものから選択される1つ以上のカーボネートの反応生成物を含むことができる。さらなる実施形態では、SEI層は、本明細書で提供されるような導電性ポリマーを含むことができる。
【0040】
別の実施形態では、複数の炭素粒子および元素リチウム金属は、元素リチウム金属およびグラファイト粒子を含有する混合物を含む。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属は、複数の元素リチウム金属粒子を含む。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属は、グラファイト粒子の少なくともいくつかの1つ以上の表面の元素リチウム金属によるコーティングを含む。例えば、混合物は、グラファイト粒子、および元素リチウム金属粒子および/またはグラファイト粒子の表面の元素リチウム金属によるコーティングを含む均質または実質的に均質な混合物であってもよい。混合物は、バルク元素リチウム金属を用いて形成することができる。例えば、そのバルク元素リチウム金属は、サイズを小さくして、所望のサイズの複数の元素リチウム金属粒子および/またはグラファイト粒子の少なくともいくつかの表面のコーティングにすることができる。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子およびバルク元素リチウム金属をブレンドして、バルク元素リチウム金属のサイズを小さくし、グラファイト粒子および元素リチウム金属を含有する混合物を得る。
【0041】
本明細書では、エネルギー貯蔵装置に使用するためのプレドープされた電極を製造する方法を開示する。いくつかの実施形態では、プレ(予め)リチウム化された電極または本明細書に記載の1つ以上の組成物を含有する望ましい量のリチウム金属でプレドープされた電極は、エネルギー密度の性能が改善されることが実証される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の組成物を含有する電極は、最初の充放電サイクル後にエネルギー貯蔵装置によって示される不可逆容量損失を補償するように構成することができる。例えば、多孔質炭素粒子に添加され、および/またはグラファイト粒子と混ぜ合わされるある量の元素リチウム金属は、所望の程度プレリチウム化またはプレドープして、例えば不可逆容量損失を所望の程度補償することができる。
【0042】
アノードとカソードの両方がプレドープされたエネルギー貯蔵装置も提供される。そのような実施形態では、アノードおよびカソードは、独立したプレドープ工程なしに金属イオンでプレドープされてもよい。例えば、本明細書に示すような元素金属を含有する電極フィルムを含む第1電極と、第2電極とを含むエネルギー貯蔵装置の場合、第2電極は、独立したプレドープ工程なしにプレドープされてもよい。具体的には、電解質と接触すると、第1電極の元素金属は第2電極に拡散し、第2電極のプレドープイオン源となる。いくつかの実施形態では、プレドープされたエネルギー貯蔵装置を製造する方法は、独立したプレドープ工程を含まなくてもよい。
【0043】
本明細書はリチウム金属に関して主に記載されているが、本明細書に記載の装置および/または処理方法は、炭素およびリチウムおよび/または1つ以上の他の金属を含む組成物を得るために適用してもよい。例えば、本明細書に記載の装置および/または処理は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアルミニウムの1つ以上を含む組成物を得るために適用してもよい。実施形態は、本明細書で「元素リチウム金属」として定義されて用いられる「元素」状態にあるこれらの金属の1つ以上を含んだ形態で、実施することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、炭素粒子などの電極活物質、および元素金属を、1つ以上の他の電極フィルム成分と混ぜ合わせて、電極フィルム混合物を提供することができる。1つ以上の他の電極フィルム成分は、バインダおよび/または1つ以上の他の電極活物質の成分(以下、電極活成分という)を含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダは、例えばフィブリル化可能なポリマーなどの、フィブリル化可能なバインダを含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル化可能なフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFE、パーフルオロポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、および/またはそれらのポリマー混合物を含む。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、フィブリル化可能なフルオロポリマーのような単一のバインダ材からなるバインダを含有する。例えば、電極フィルム混合物は、単一のバインダ材のみを含有していてよく、この単一のバインダ材は、例えばPTFEである。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の電極活成分は、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソポーラスカーボン、シリコン、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、アンチモン、チタン酸リチウム、二酸化チタン、混合物、合金、上記材料の複合体、および/または同等のものを含むことができる。特定の実施形態では、電極フィルム混合物は、本質的に、元素金属粒子、炭素粒子、およびフィブリル化可能なバインダ粒子からなる。特定の実施形態では、電極フィルム混合物は、元素金属粒子、炭素粒子、およびフィブリル化可能なバインダ粒子からなる。
【0045】
図1は、エネルギー貯蔵装置100の一例の側面断面の概略図である。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、電気化学装置であってもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはアルミニウムをベースとするエネルギー貯蔵装置とすることができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンバッテリのようなリチウムをベースとするバッテリであってもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタなどのリチウムをベースとするキャパシタであってもよい。当然、他のエネルギー貯蔵装置も本発明の範囲に含まれ、キャパシタ-バッテリハイブリッドおよび/または燃料電池を含むことができる。エネルギー貯蔵装置100は、第1電極102、第2電極104、および第1電極102と第2電極104との間に配置されたセパレータ106を備えていてもよい。例えば、第1電極102および2の電極104は、セパレータ106の対向する面にそれぞれ隣り合わせで設けられていてもよい。
【0046】
第1電極102はカソードを含んでもよく、第2電極104はアノードを含んでもよく、またはこれらは逆であってもよい。いくつかの実施形態では、第1電極102は、リチウムイオンキャパシタのカソードを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1電極102はリチウムイオンキャパシタのカソードを含むことができ、第2電極104はリチウムイオンキャパシタのアノードを含むことができる。さらなる実施形態では、第1電極102は、リチウムイオンバッテリのカソードを含むことができ、第2電極104は、リチウムイオンバッテリのアノードを含むことができる。
【0047】
エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の両電極102,104間のイオンの伝達を容易に可能にする電解質122を含むことができる。例えば、電解質122は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106と接していてもよい。電解質122、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置のハウジング120内に収められていてもよい。例えば、エネルギー貯蔵装置のハウジング120は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106を挿入し、ならびにエネルギー貯蔵装置100に電解質122を充満させた後、密閉してもよく、例えば、第1電極102、第2電極104、セパレータ106、および電解質122が、ハウジング120の外部から物理的に密閉されるようにしてもよい。
【0048】
セパレータ106は、そのセパレータによって分離された2つの電極を電気的に絶縁するように構成することができる。例えば、セパレータ106は、セパレータ106の対向する両側に配置された2つの電極、例えば第1電極102および第2電極104を電気的に絶縁し、その一方で2つの電極間のイオン伝達を可能にするように構成することができる。
【0049】
図1に示すように、第1電極102および第2電極104は、それぞれ第1集電体108および第2集電体110を含む。第1集電体108および第2集電体110は、対応する電極と外部回路(図示せず)との間の電気的結合を容易にすることができる。
【0050】
第1電極102は、第1集電体108の第1の表面(例えば、第1集電体108の上面)上の第1電極フィルム112(例えば、上部電極フィルム)と、第1集電体108の第2の対向する表面(例えば、第1集電体108の下面)上の第2電極フィルム114(例えば、下部電極フィルム)とを備えていてもよい。同様に、第2電極104は、第2集電体110の第1表面(例えば、第2集電体110の上面)上の第1電極フィルム116(例えば、上部電極フィルム)と、第2集電体110の第2の対向する表面(例えば、第2集電体110の下面)上の第2電極フィルム118を備えていてもよい。例えば、セパレータ106が、第1電極102の第2電極フィルム114および第2電極104の第1電極フィルム116に隣り合わせとなるように、第2集電体110の第1の表面は、第1集電体108の第2の表面と向かい合うことができる。電極フィルム112,114,116および/または118は、様々な適切な形状、サイズ、および/または厚さを有することができる。例えば、電極フィルムは、約80μm~約150μmを含む、約60μm~約1,000μmの厚さを有することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、
図1を参照して説明した電極フィルム112,114,116および/または118などの電極フィルムは、複数の炭素粒子および本明細書で示されるような複数の元素リチウム金属粒子などの元素リチウム金属を含有することができ、電極フィルムをリチウムでプレドープするかまたはプレリチオ化することができる。特定の実施形態では、複数の電極フィルム112,114,116および118は、本明細書で示されるような元素金属および炭素混合物を含有し、またはそれらを処理工程で含有させるようにして製造される。
【0052】
いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子および元素リチウム金属を含有する電極フィルムを有し、所望の量のリチウムでプレドープされた電極は、エネルギー性能が改善されたエネルギー貯蔵装置を提供することができる。例えば、電極は、エネルギー貯蔵装置の最初の充電および放電の間に生じる不可逆容量損失を所望の程度補償するように、プレドープされていてもよい。いくつかの実施形態では、電極は、所定量のリチウム-炭素複合粒子またはグラファイト粒子および元素リチウム金属粒子の混合物を含有する1つ以上の電極フィルムを有することができ、これによってエネルギー貯蔵装置は、プレドープされた電極を含まないエネルギー貯蔵装置と比較して、不可逆容量損失が抑えられることが実証される。
【0053】
本明細書で示されるように、いくつかの実施形態では、複数の炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、複数のリチウム-炭素複合粒子を含む。いくつかの実施形態では、リチウム-炭素複合粒子は、細孔内に複数の元素リチウム金属粒子などの元素リチウム金属を有する多孔質炭素粒子を含む。
【0054】
元素リチウム金属の露出部分は、元素リチウム金属の望ましくない化学反応の可能性を低減するために、保護SEI層で覆われてもよい。本明細書に記載される元素リチウム金属の露出部分は、細孔内に露出するが対応する多孔質炭素粒子の外面下にある部分、または露出しているが対応する多孔質炭素粒子の外面とほぼ並んでいる部分、または細孔キャビティおよび各多孔質炭素粒子の外面から突出している部分であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、元素リチウム粒子は、それぞれ2つの部分を含むことができる:一つは、炭素粒子の細孔内で、例えば表面接触によりまたはシーリング(密閉)によって本質的に保護された非露出部分であり、もう一つは、細孔内であってもよいが表面接触はなく、密封されていない部分、すなわち外部の化学反応から保護されていない露出部分である。例えば、SEI層を形成して覆うことによって、元素リチウム金属粒子の露出部分は、望ましくない外部との化学反応の可能性を低減することができる。SEI層は、元素リチウム-炭素粒子混合物または元素リチウム-炭素複合粒子混合物を、本明細書で示されるようにカーボネート蒸気に曝露することによって、生成することができる。
【0055】
図2A~
図2Fは、元素リチウム金属粒子などの元素リチウム金属を多孔質炭素粒子の細孔への導入と、それに続く、該リチウム元素金属粒子の露出部分を覆う固体電解質界面(SEI)層の形成とを示す概略図である。
図2Aは、多孔質炭素粒子200の一例の概略断面図である。
図2Aに示されるように、多孔質炭素粒子は、その中に延びる複数の中空チャネルまたは細孔202を有することができる。
図2Bは、拡大倍率のより高い多孔質炭素粒子200の概略断面図であり、多孔質炭素粒子200内に延びるいくつかの中空チャネルまたは細孔202の断面図を示す。
図2Cは、多孔質炭素粒子200内の中空チャネルまたは細孔202に相当する多孔質炭素粒子200の外面の開口204を示す概略図である。
図2Dは、元素リチウム金属206を含む多孔質炭素粒子200内の中空チャネルまたは細孔202の概略断面図である。例えば、元素リチウム金属206は、元素リチウム金属粒子を含むことができる。例えば、中空チャネルまたは細孔202は、元素リチウム金属206で充填されまたは実質的に充填されていてもよい。
図2Eは、粒子200内に延びて中に元素リチウム金属206を有する中空チャネルまたは細孔202に対応する多孔質炭素粒子200の外面の開口部204を示す。
図2Fは、
図2Dに示される多孔質炭素粒子200の外面の開口部202内の露出したリチウム金属206上のSEI層208を示す概略図である。
【0056】
いくつかの実施形態では、細孔表面と接触している元素リチウムの部分などの、元素リチウム金属のいくつかの部分は、1つ以上の細孔表面の1つ以上の成分によってイオン化されてもよい。例えば、元素リチウムのいくつかの部分は、炭素粒子の細孔表面の1つ以上の成分と反応して酸化され、電子伝達反応に関与し、その一方で、元素リチウム金属の残りの部分はゼロの酸化状態を維持することができる。
【0057】
本明細書で論じるように、
図2を参照して記載したものなどの多孔質炭素粒子は、約1μm~約15μmまたは約1μm~約10μmを含む、約1μm~約20μmの累積粒子径D
50を有することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、約2nm~約2μmの直径の細孔を有することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、粒子の直径の約2%~約10%の直径を有する細孔を有することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子の細孔は、炭素粒子の体積の約10%~約80%を占めることができる。いくつかの実施形態では、元素リチウム粒子のサイズは、所望量の元素リチウム金属を多孔質炭素粒子の細孔に挿入できるように、多孔質炭素粒子の細孔サイズに基づいて選択することができる。
【0058】
本明細書でさらに詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、対応する多孔質炭素粒子の外面の開口部内の元素リチウム金属の露出部分をカーボネート蒸気に曝露することができる。その蒸気は、露出したリチウム金属と反応して、その露出した元素リチウム金属部分を覆う保護SEI層を形成することができる。例えば、SEI層は、多孔質炭素粒子の外面の近くまたは外面にある細孔の開口部に露出している元素リチウム金属部分を覆うことができる。SEI層は、リチウム金属とカーボネート蒸気との反応により形成されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、約50%、約40%または約30%まで、多孔質炭素粒子の外面の一部のみがSEI層によって覆われる。いくつかの実施形態では、SEI層は、露出したリチウム金属の上にのみ形成されまたは実質的に露出したリチウム金属の上にのみ形成され、その一方で、リチウム-炭素複合粒子の外面の炭素部分は、SEI層を含まないかまたは実質的にSEI層を含まない。いくつかの実施形態では、SEI層は、リチウム金属の外部環境とのさらなる反応を低減または防止する一方で、それを通して電子およびイオンの輸送を可能にし、リチウム-炭素粒子が電極の一部として使用される場合にリチウム金属の電気化学エネルギーが利用されることを促進することができる。SEI層は、その後リチウム-炭素複合粒子を取り扱う間においても、もとの状態を維持することができる。このように、リチウム-炭素複合粒子は、元素リチウムの望ましくない反応の可能性を減少させながら、元素リチウム金属を湿式または乾式処理において、原料として使用することを可能にする。
【0059】
別の実施形態では、複数の炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、グラファイト粒子および元素リチウム金属粒子を含有する混合物を含む。本明細書でさらに詳細に説明するように、グラファイト粒子と元素リチウム金属粒子とを含有する混合物は、グラファイト粒子をバルク元素リチウム金属と混ぜ合わせ、バルク元素リチウム金属の粒子サイズを小さくして、グラファイト粒子と所望の大きさの元素リチウム金属粒子とを含有する混合物を得るようにしてもよい。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子およびリチウム金属粒子は、均質または実質的に均質な混合物を形成する。
【0060】
グラファイト粒子およびバルク元素リチウム金属は、リチウム炭素複合粒子に関して記載したのと同等の処理条件下で混ぜ合わせることができる。グラファイト粒子およびバルク元素リチウム金属は、乾式処理でバインダと混合され、溶媒その他液体を使用せずに圧縮されて自立型のフィルムを形成することができる。このような実施形態で、そのような成分を湿式処理でのフィルム形成に使用する場合に特有の反応性または爆発の危険性を回避することができる。
【0061】
本明細書で論じるように、バルク元素リチウム金属は、約1mm3を超える体積を有することができる。バルク元素リチウム金属は、サイズを小さくして元素リチウム金属粒子とすることができる。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子は、約0.5μm~約10μmの累積粒子径D50を有することができる。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子は、約1μm~約10μmまたは約1μm~約5μmの累積粒子径D50を有することができる。例えば、バルク元素リチウム金属の1つ以上の金属片は、本明細書に記載されている1つ以上の処理によって、約1mm3の体積からサイズを小さくさせて、約0.5μm~約10μmの累積粒子径D50を有する複数の元素リチウム粒子とすることができる。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子および元素リチウム金属粒子を含有する混合物は、約1μm~約20μmの累積粒子径D50を有するグラファイト粒子および約0.5μm~約10μmの累積粒子径D50を有する元素リチウム金属粒子を含有する。
【0062】
(方法)
図3は、複数の炭素粒子および元素リチウム金属を含有する混合物を調製するための、例としての処理工程300を示す。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子を形成する処理工程は、処理工程300を含む。いくつかの実施形態では、複数のグラファイト粒子および複数の元素リチウム金属粒子を含有する混合物を形成するための処理工程は、処理工程300を含む。
図3のブロック302に示すように、炭素粒子を与えることができる。例えば、炭素粒子は、リチウム-炭素複合粒子を調製するための多孔質炭素粒子、またはグラファイトとリチウム金属とを含有する混合物を調製するためのグラファイト粒子を含むことができる。
【0063】
ブロック304において、元素リチウム金属を与える。いくつかの実施形態では、リチウム-炭素複合粒子を形成するためにリチウム粒子を与える。いくつかの実施形態では、グラファイトとリチウム金属とを含有する混合物を調製するために、バルク元素リチウム金属を与える。ブロック306において、炭素粒子および元素リチウム金属を混ぜ合わせて、複数の炭素粒子および元素リチウム金属を含有する混合物を与えることができる。その混合物は、乾燥粒子混合物を含むことができる。例えば、元素リチウム金属粒子を多孔質炭素粒子の細孔に挿入してリチウム-炭素複合粒子を形成するように、元素リチウム金属粒子を多孔質炭素粒子と混合することができる。例えば、バルク元素リチウム金属およびグラファイト粒子を混合して、バルク元素リチウム金属のサイズを小さくすることができる。いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属を小さくして、所望のサイズのリチウム金属粒子を与え、リチウム金属粒子およびグラファイト粒子を含有する混合物を与えることができる。いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属の少なくとも一部は、バルク元素リチウム金属のサイズを小さくする間に溶融することができ、その溶融したリチウム金属は、グラファイト粒子のいくつかの少なくとも一部にコーティングを形成することができる。
【0064】
処理工程300は、リチウム-炭素複合粒子を形成する処理工程ならびに/またはリチウム金属およびグラファイト粒子の混合物を形成する処理工程に関して本明細書に記載された、温度、圧力、および/または不活性条件下で行うことができる。いくつかの実施形態では、処理工程300の少なくとも一部は、カーボネート液体または蒸気の使用を含む。いくつかの実施形態では、処理工程300の少なくとも一部は、カーボネート蒸気を含む雰囲気下で、および/または炭素および元素リチウム金属のカーボネート液体への曝露の下で行うことができる。例えば、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属を混ぜ合わせることは、例えば、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属をカーボネート蒸気に曝露することにより、カーボネート蒸気を含む雰囲気下で行うことができる。例えば、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属を混ぜ合わせることは、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属をカーボネート液体に曝露することを含むことができる。いくつかの実施形態では、溶融した元素リチウム金属をカーボネート蒸気および/またはカーボネート液体に曝露することによって、溶融した元素リチウム金属の表面張力の低下を促進し、例えば、それによって、溶融した元素リチウム金属の湿潤性を高め、元素リチウム金属を多孔質炭素粒子の細孔に導く。
【0065】
図4は、複数のリチウム-炭素複合粒子を製造するための処理工程400の一例を示す。ブロック402において、複数の多孔質炭素粒子を与えることができる。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、導電性炭素粒子である。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、1つ以上の活性炭素粒子および/または階層的に構造化された炭素粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤおよび/または構造化カーボンナノシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、グラフェンシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子はメソポーラスである。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、活性炭素粒子からなり、または本質的に活性炭素粒子からなる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、メソポーラス粒子からなり、または本質的にメソポーラス粒子からなる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子は、階層的に構造化された炭素粒子からなり、または本質的に階層的に構造化された炭素粒子からなる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子は、表面処理された炭素粒子、または本明細書に記載されているような他のタイプの炭素粒子であってもよい。
【0066】
ブロック404において、複数の多孔質炭素粒子を複数の元素リチウム金属粒子と混ぜ合わせて、複数のリチウム-炭素複合粒子を得ることができる。ここで、その複数のリチウム-炭素複合粒子の細孔には、元素リチウム金属が存在する。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子内の細孔の少なくともいくつかは、元素リチウム金属を有する。いくつかの実施形態では、細孔の少なくともいくつかは、元素リチウム金属で充填されまたは実質的に元素リチウム金属で充填されている。いくつかの実施形態では、細孔のすべてまたは実質的にすべてが、元素リチウム金属で充填されまたは元素リチウム金属で実質的に充填されている。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子の細孔内の元素リチウム金属は、元素リチウム金属粒子を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子を混合装置の混合チャンバ内で混ぜ合わせて、元素リチウム金属を多孔質炭素粒子の細孔に挿入することができる。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子がその細孔に挿入される。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子は、混合処理中に少なくとも部分的に溶融され、溶融した元素リチウム金属が、例えば、毛管作用により、および/または混合チャンバ内が低圧もしくは真空であることにより、細孔に挿入される。例えば、溶融した元素リチウム金属は、多孔質炭素粒子が冷却された後に細孔内で一度凝固し得る。いくつかの実施形態では、細孔は、元素リチウム金属粒子および/または再凝固された元素リチウム金属を含むことができる。例えば、細孔は、元素リチウム金属粒子および/または再凝固された元素リチウム金属で充填されまたは実質的に充填されていてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子および複数の元素リチウム金属粒子を混ぜ合わせる工程は、カーボネート液体または蒸気の使用を含む。例えば、カーボネート液体またはカーボネート蒸気を混合装置に供給することができる。いくつかの実施形態では、複数の多孔質炭素粒子および複数の元素リチウム金属粒子を混ぜ合わせる工程は、カーボネート蒸気を含む雰囲気下で行うことができ、または炭素および元素リチウム金属をカーボネート液体に曝露することを含む。本明細書に記載されているように、カーボネート蒸気またはカーボネート液体への曝露は、溶融した元素リチウム金属の表面張力の低下を促進し、例えば、それによって溶融した元素リチウム金属の湿潤性を高め、元素リチウム金属を多孔質炭素粒子の細孔へ導く。いくつかの実施形態では、カーボネート蒸気またはカーボネート液体は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニルカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、および/またはこれらと同等のものの少なくとも1つを含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、元素リチウム粒子および多孔質炭素粒子の所望の混合をもたらすように構成された装置は、リボンミキサー、ロータリーミキサー、プラネタリーミキサー、高せん断ブレンダー、ボールミル、ハンマーミル、ジェットミル、共振音響ミキサー、マイクロウェーブミキサー、および/または気流混合機を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子のサイズは、多孔質炭素材料の細孔サイズに基づいて選択することができる。例えば、元素リチウム金属粒子の粒子サイズは、所望量のリチウム金属粒子の多孔質炭素粒子の細孔への挿入を容易にするように選択することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子の細孔をリチウム金属粒子で充填または実質的に充填することができる。多孔質炭素粒子の例としては、細孔の平均直径が平均の炭素粒子直径の約1/50~1/10であり、炭素粒子の体積の約10%~約80%が分枝状の粒子内細孔ネットワークであるものを挙げることができる。対応する元素リチウム金属粒子は、炭素粒子の細孔に入るように最大外径が十分に小さいものを選択することができる。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属粒子は、複数の多孔質炭素粒子の細孔の平均直径未満の平均直径を有するように選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、大気圧より低い圧力下で混ぜ合わせることができる。例えば、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、装置の混合チャンバの内部容積に供給され、約1×10-8Pa~約1×105Paの圧力下で混合することができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子は、室温よりも高い温度、例えば約20℃より高い温度で混合することができる。いくつかの実施形態では、その温度は50℃~180℃を含む20℃~200℃であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素粒子および元素リチウム金属粒子を大気圧より低い圧力下で且つ室温よりも高い温度で混ぜ合わせることで、リチウム金属粒子の多孔質炭素粒子への挿入が容易になる。
【0072】
いくつかの実施形態では、不活性ガスなどのガスを、炭素粒子およびリチウム金属粒子の混合中に混合チャンバに供給することができる。不活性ガスは、アルゴンなどの希ガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、混合チャンバに不活性ガスを流入して、リチウム金属の多孔質炭素粒子の細孔への挿入を容易にする。いくつかの実施形態では、混合工程を実施している少なくとも一部の間に不活性ガスを流すことができる。いくつかの実施形態では、不活性ガスの流すのは、多孔質炭素粒子とリチウム金属粒子との混合が開始した後に開始することができる。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、混合工程の後半の間のみ、例えば混合工程の最後の約40%、約30%、約20%、約10%または約5%の間のみ、反応チャンバに流入する。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、混合工程を実施している全時間、または、実質的に全時間にわたって流すことができる。不活性ガスを流す時間は、リチウム金属粒子の多孔質炭素粒子の細孔への挿入が所望の程度となるように選択することができる。
【0073】
ブロック406において、リチウム-炭素複合粒子におけるリチウム金属の露出部分の上に固体電解質界面(SEI)層を形成することができる。例えば、SEI層は、対応する多孔質炭素粒子の外面下にある元素リチウム金属の露出部分の上に形成することができる。SEI層は、リチウム金属を劣化させる可能性のある、酸素および/または水などの外部環境の成分へのリチウム金属のその部分の曝露の程度を抑えまたは曝露を防止する一方で、それを通してのイオンおよび/または電子の輸送を可能にする。いくつかの実施形態では、SEI層の形成は、リチウム-炭素複合粒子を、エネルギー貯蔵装置の1つ以上の気化した電解質溶媒を含有する蒸気に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、その蒸気はカーボネート蒸気を含む。いくつかの実施形態では、そのカーボネート蒸気は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニルカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、これらの組み合わせ、および/またはそれらと同等のものを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、リチウム金属の露出部分の上に、導電性ポリマーコーティングなどの他の保護コーティングを形成することができる。いくつかの実施形態では、低蒸気圧のモノマーの重合により、リチウム金属の露出部分の上に導電性ポリマーコーティングを形成することができる。例えば、前駆物質のモノマーとしてピロールを用いて、ポリピロールを含むポリマーコーティングを生成することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、もしくはそれらの組み合わせ、および/またはそれらと同等のものを含むことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、所望量のリチウム金属が多孔質炭素粒子に挿入された後に、リチウム-炭素複合粒子をカーボネート蒸気に曝露することができる。いくつかの実施形態では、リチウム-炭素複合粒子は、混合チャンバ内のカーボネート蒸気に、例えば混合チャンバの内部容積に曝露され得る。カーボネート含有溶媒は、その蒸気がリチウム金属の露出部分と反応してSEI層を形成できるように、混合の後に、蒸発させて混合チャンバに供給することができる。いくつかの実施形態では、リチウム-炭素粒子は、異なるチャンバに輸送することができ、そのチャンバで粒子をカーボネート蒸気に曝露させることができる。リチウム-炭素複合粒子のカーボネート蒸気への曝露は、カーボネート蒸気がリチウム金属と反応することができるように、カーボネートが気相にまたは実質的に気相にとどまることができる様々な温度および圧力の条件下で行うことができる。いくつかの実施形態では、その内部容積の圧力は、内部容積の温度において、カーボネートまたはカーボネート混合物の蒸気圧よりも低く維持することができる。
【0076】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、カーボネート蒸気への曝露を、複数の多孔質炭素粒子と元素リチウム金属とを混ぜ合わせる途中に行うことができ、そしてSEI層を形成しながら継続することができる。例えば、カーボネート蒸気への曝露によって、炭素粒子の細孔内へのリチウム金属の挿入とSEI層の形成との両方を促進することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、リチウム-炭素複合材料の外面の炭素部分がSEI層を含まないかまたは実質的に含まず、露出した元素リチウム金属の上にのみ、または実質的に露出した元素リチウム金属の上にのみ、SEI層が形成されるように、カーボネート含有蒸気を元素リチウム金属とのみまたは実質的に元素リチウム金属とのみ反応させることができる。いくつかの実施形態では、SEI層は、露出したリチウム金属を保護することができ、これによってリチウム-炭素複合粒子のその後の処理、ならびに/または、リチウム-炭素複合粒子を含有する電極フィルムおよび/もしくは電極フィルム混合物の製造を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、SEI層は、リチウム金属と外部環境とのさらなる反応を低減または防止する一方、イオン輸送および電子輸送の両方を可能にすることができる。SEI層におけるイオンおよび電子の輸送は、エネルギー貯蔵装置の作動中の多孔質炭素粒子内の導電性リチウム金属へのアクセスを可能にし、多孔質炭素粒子を最初に開裂させたり割ったりすることなくリチウム由来の電気エネルギーへのアクセスを容易にする。いくつかの実施形態では、SEI層は、露出したリチウム金属と液体との反応を抑えまたは防止し、これによってスラリー溶液を含む処理のような湿式のまたは乾式の電極製造工程におけるリチウム-炭素複合粒子の使用を容易にする。
【0078】
図5を参照して、バルク元素リチウム金属およびグラファイトを使用して混合物を調製するための処理工程500について説明する。ブロック502において、バルク元素リチウム金属を与えることができる。本明細書で説明されるように、バルク元素リチウム金属は、元素リチウム金属のシートおよび/もしくは塊、または他の形態のバルク金属を含むことができる。ブロック504において、グラファイト粒子を与えることができる。ブロック506において、バルク元素リチウム金属およびグラファイト粒子を混ぜ合わせて、元素リチウム金属およびグラファイト粒子を含有する混合物を与えることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子を混ぜ合わせる工程は、バルク元素リチウム金属のサイズを小さくすることを含む。いくつかの実施形態では、その混ぜ合わせの工程は、バルク元素リチウム金属が所望のサイズの元素リチウム粒子となるようにそのサイズを小さくし、且つ、元素リチウム金属粒子およびグラファイト粒子を含有する均質または実質的に均質な混合物が得られるようにすることができる。いくつかの実施形態では、リチウム金属の少なくとも一部は、バルク元素リチウム金属のサイズを小さくする間に溶融することができ、その溶融したリチウム金属がグラファイト粒子のいくつかの少なくとも一部にコーティングを形成するようにすることができる。いくつかの実施形態では、グラファイト粒子および元素リチウム金属を含有する混合物は、グラファイト粒子、複数の元素リチウム金属粒子、および/または少なくともいくつかのグラファイト粒子の表面の元素リチウムによるコーティングを含む。例えば、その混合物は、グラファイト粒子、元素リチウム金属粒子および/または少なくともいくつかのグラファイト粒子の1つ以上の表面の元素リチウム金属を含有する均質または実質的に均質な混合物を含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とを混ぜ合わせる工程は、バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とをブレンドすることを含む。いくつかの実施形態では、Waring(登録商標)ブレンダーを使用することができる。いくつかの実施形態では、バルク元素リチウム金属およびグラファイト粒子のブレンドは、リチウム金属粒子サイズおよび均質なまたは実質的に均質な混合物が得られるように、条件を選択することができる。いくつかの実施形態では、混合処理の条件は、混合処理の持続時間、せん断力の大きさ、混合処理の温度、混合ブレードおよび/もしくはパドルの先端の速度、混合機の種類、混合チャンバ内の環境、材料が混合チャンバ内に投入される順序、ならびに/または混合チャンバ内に投入される材料の量によって調整することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、グラファイト以外の材料を、またはグラファイト以外の材料をグラファイトに添加した材料を、バルク元素リチウム金属と混ぜ合わせることができる。例えば、1つ以上の他の電極フィルム材料を、バルク元素リチウム金属と混ぜ合わせて、所望のサイズの元素リチウム金属粒子を含有する均質または実質的に均質な混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、その1つ以上の他の材料は、シリコン、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、炭素とケイ素とスズとを含有する炭素複合体、これらの組み合わせ、および/またはそれらと同等のものを含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、グラファイト粒子およびリチウム金属粒子を含有する混合物は、乾式の製造工程において乾燥粒子電極フィルムを形成するために直接使用することができる。いくつかの実施形態では、その後で、グラファイト粒子と元素リチウム金属とを含有する混合物を、リチウム金属粒子の周りにSEI層を形成するよう処理することができ、それによって、例えばリチウム金属と外部環境とのさらなる反応を低減または防止できる。いくつかの実施形態では、
図4を参照して説明されるSEI層を形成するための1つ以上の処理を適用することができる。例えば、その混合物は、例えばカーボネート蒸気などの、気化した電解質溶媒に曝露されてもよい。いくつかの実施形態では、カーボネート蒸気は、本明細書に記載の1つ以上の組成物を有していてもよい。いくつかの実施形態では、上記の処理によって、電極フィルムを形成するための湿式スラリー処理などの湿式の処理工程におけるリチウム金属の使用を容易にすることができる。
【0083】
図6は、炭素粒子および元素リチウム金属を含むエネルギー貯蔵装置の電極フィルムを製造するための乾式の処理工程600の一例を示す。例えば、電極フィルムは、複数のリチウム-炭素複合粒子またはグラファイト粒子と元素リチウム金属との混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、その電極は、
図1を参照して説明したエネルギー貯蔵装置100の電極であってもよい。いくつかの実施形態では、その電極は、リチウムイオンバッテリのアノードを含む。いくつかの実施形態では、電極はリチウムイオンキャパシタのアノードを含む。
【0084】
ブロック602において、炭素粒子および元素リチウム金属を与えることができる。いくつかの実施形態では、この元素リチウム金属および炭素粒子を与える工程は、複数のリチウム-炭素複合粒子を与えることを含む。いくつかの実施形態では、元素リチウム金属および炭素粒子を与える工程は、元素リチウム金属およびグラファイト粒子を含有する混合物を与えることを含む。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子および/または元素リチウム粒子とグラファイト粒子とを含有する混合物は、本明細書に記載の1つ以上の処理工程に従って製造することができる。いくつかの実施形態では、ブロック602は、ブロック302、ブロック304、ブロック402、および/またはブロック502に記載された工程を含む。
【0085】
ブロック604において、炭素粒子および元素リチウム金属を、1つ以上の他の電極フィルム成分と混ぜ合わせて、電極フィルム混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の電極フィルム成分は、バインダおよび/または1つ以上の他の電極活成分を含む。いくつかの実施形態では、バインダは、例えばフィブリル化可能なポリマーを含むフィブリル化可能なバインダを含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル化可能なフルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFE、パーフルオロポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、および/またはそれらのポリマーのブレンドしたものを含む。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、フィブリル化可能なフルオロポリマーなどの単一のバインダからなるバインダを含有する。例えば、電極フィルム混合物は、単一のバインダのみを含有していてもよく、その単一のバインダはPTFEであってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の電極活成分は、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソポーラスカーボン、シリコン、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、二酸化チタン、これらの材料の混合物もしくは複合物および/またはそれらと同等のものを含む。いくつかの実施形態では、ブロック604は、ブロック306、ブロック404、ブロック406、および/またはブロック506に記載された工程を含む。特定の実施形態では、ブロック604はブロック406の工程を含む。したがって、いくつかの実施形態では、ブロック604は、エネルギー貯蔵装置の1つ以上の気化した電解質溶媒を含む蒸気にリチウム-炭素複合粒子を曝露することを含む、SEI層を形成する工程を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、ブロック604の混ぜ合わせの工程は乾式の処理である。例えば、元素リチウム金属粒子および炭素粒子は、乾式の処理、すなわち溶媒または添加剤を含まないかまたは実質的に含まない処理において、1つ以上の他の電極フィルム成分と混ぜ合わせて、乾燥粒子電極フィルム混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、複数のリチウム-炭素複合粒子または元素リチウム金属粒子およびグラファイト粒子を含有する混合物を、乾式の混合処理工程でエネルギー貯蔵装置の電極の1つ以上の他の成分と混ぜ合わせて、乾燥粒子電極フィルム混合物を得ることができる。したがって、いくつかの実施形態では、ブロック604は、元素リチウム金属粒子および炭素粒子をフィブリル化可能なバインダと混ぜ合わせることを含むことができる。
【0087】
ブロック606において、電極フィルム混合物を含む電極フィルムを得ることができる。例えば、その電極フィルムは、リチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタのアノードに用いるフィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は、フィブリル化可能なバインダを含有し、電極フィルムの形成はフィブリル化処理を含む。そのフィブリル化処理においては、そのフィブリル化可能なバインダから、電極フィルムの他の成分を構造的に支持するフィブリルのマトリックス、格子および/またはウェブを形成することができる。例えば、電極フィルム混合物中のバインダ材をフィブリル化することにより、電極フィルム混合物から、自立型乾燥粒子電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態では、ブレンド処理工程のように、せん断力をバインダ材に作用させて、フィブリルを形成することができる。例えば、ジェットミル処理を含む粉砕処理を行うことができる。
【0088】
特定の実施形態では、自立型電極フィルムは、本質的には、元素金属粒子、炭素粒子、およびフィブリル化したバインダ粒子からなる。特定の実施形態では、自立型電極フィルムは、元素金属粒子、炭素粒子、およびフィブリル化したバインダ粒子からなる。さらなる実施形態では、元素金属粒子および炭素粒子は、本明細書で示される複合粒子である。
【0089】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極を製造するための湿式の処理工程によって、電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極を製造するための湿式の処理工程は、電極活成分を含む1つ以上の電極成分を含有する液体溶液を調製する工程、およびその液体溶液を用いて電極フィルムを形成する工程を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、その液体溶液を使用して電極を形成する工程において、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、メータリングロッドコーティング、カーテンコーティングおよび/またはディップコーティングの1つ以上を用いる。
【0090】
いくつかの実施形態では、電極、例えばリチウムイオンバッテリまたはリチウムイオンキャパシタの電極は、工程300,400,500および/または600の1つ以上の工程で製造された1つ以上の電極フィルムを含む。例えば、電極は、集電体に結合された1つ以上の電極フィルムを含むことができる。例えば、電極は、集電体の対向する表面に結合されたそれぞれの電極フィルムを含むことができる。いくつかの実施形態では、乾燥粒子電極フィルムは、集電体の表面に結合されてもよく、例えば、積層処理などによって、集電体に直接接合される。いくつかの実施形態では、介在する接着剤層によって、電極フィルムの集電体への接合を容易にすることができる。したがって、処理工程300,400,500および/または600のうちの1つ以上を含む、エネルギー貯蔵装置に使用するプレドープ電極を製造する方法が提供される。例えば、エネルギー貯蔵装置は、処理工程300のように、炭素粒子を与える工程と、元素金属を与える工程と、炭素粒子を元素リチウム金属と混ぜ合わせて、炭素粒子および元素リチウム金属を含有する混合物を得る工程と、を含む方法によって、製造することができ、処理工程400のように、複数の多孔質炭素粒子を与える工程と、複数の多孔質炭素粒子を複数の元素リチウム金属粒子と混ぜ合わせて複数のリチウム-炭素複合粒子を得る工程と、そのリチウム-炭素複合粒子のリチウム金属の露出部分の上に固体電解質界面層を形成する工程と、を含む方法によって、製造することができ、処理工程500のように、バルク元素リチウム金属を与える工程と、グラファイト粒子を与える工程と、バルク元素リチウム金属とグラファイト粒子とを混ぜ合わせて元素リチウム金属とグラファイト粒子とを含有する混合物を得る工程と、を含む方法によって、製造することができ、および/または処理工程600のように、炭素粒子と元素リチウム金属とを与える工程と、その炭素粒子と元素リチウム金属とを1つ以上の他の電極フィルム成分と混ぜ合わせて電極フィルム混合物を得る工程と、その電極フィルム混合物を含む電極フィルムを形成する工程と、を含む方法によって、製造することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、本明細書に記載の1つ以上の電極フィルムを使用して製造することができる。例えば、エネルギー貯蔵装置の電極は、本明細書に記載された1つ以上の電極フィルムを含むことができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は外部ハウジングを備えてもよい。上記の1つ以上の電極フィルムを含む電極は、そのハウジングの内部に挿入することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の電極および/または1つ以上のセパレータが内部に挿入されてもよい。 その後、そのハウジングは、所望の量の電解質がエネルギー貯蔵装置のハウジングに導入された後に密閉されてもよい。
【0092】
図7は、本明細書に記載の1つ以上の組成物を調製するように構成された装置700の一例の概略図である。例えば、装置700は、
図1を参照して説明した電極のような、エネルギー貯蔵装置の電極を製造する際に使用するためのバルク材料を製造するように構成された混合装置を備えていてもよい。
図7に示すように、炭素粒子702および元素リチウム金属704は、炭素粒子702および元素リチウム金属704が本明細書に記載の1つ以上の処理工程に従って混ぜ合わせられるように、装置700の混合チャンバ706の内部容積に供給されてもよい。装置700は、本明細書に記載の1つ以上の処理工程に従って、複数のリチウム-炭素複合粒子またはグラファイト粒子および元素リチウム金属を含有する混合物が得られるように構成することができる。例えば、装置700は、
図3~
図6を参照して説明した処理工程に従って炭素粒子702と元素リチウム金属704とを混ぜ合わせて、対応する多孔質炭素粒子の細孔内にリチウム金属を有するリチウム-炭素複合粒子、または、リチウム金属(元素リチウム金属粒子および/もしくはグラファイト粒子の表面の少なくともいくつかにおいて形成される元素リチウム金属コーティングなど)ならびにグラファイト粒子を含有する混合物を提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、装置700は、リボンミキサー、ロータリーミキサー、プラネタリーミキサー、高せん断ブレンダー、ボールミル、ハンマーミル、ジェットミル、共振音響ミキサー、マイクロウェーブミキサー、および/または気流混合機を含むことができる。
【実施例】
【0093】
図8A~
図8Cは、一実施形態に係る、バルク元素リチウム金属から乾燥粒子混合物を調製する処理における様々な工程を示す写真である。
図8Aは、混合装置(例えば、Waring(登録商標)ブレンダー)の混合チャンバ内のグラファイト粒子およびリチウム金属シートを示す。この実施例では、グラファイト粉末約23.3g(グラム)およびバルク元素リチウム金属約0.68gがブレンダー中で混ぜ合わされる。グラファイト粉末とリチウム金属とを約5秒のパルス間隔で約36回ブレンドした。
図8Cにおいて、約1.7gのPTFEを、グラファイト粉末とリチウム金属とを含有するブレンドした混合物に添加した。PTFE、グラファイト粉末およびリチウム金属を約5秒のパルス間隔で約24回ブレンドして、PTFE、グラファイト粉末およびリチウム金属を含有する電極フィルム混合物を得た。
【0094】
図9Aおよび
図9Bは、実施例のPTFE、グラファイト粉末およびリチウム金属を含有する混合物を用いて形成された自立型電極フィルムを含む2つのコイン半電池の電気化学的性能を示すグラフである。この半電池は、リチウム金属の対電極と、ポリオレフィンのセパレータと、カーボネートベースの溶媒中にLiPF
6を含有する電解質と、をさらに含んでいた。
図9Aおよび
図9Bは、事前の定電流リチウム化ステップを含まない最初の脱リチウム化ステップ後のコイン半電池の電圧の変化を示す。
図9Aおよび
図9Bのグラフは、y軸にボルト(V)を単位とする電圧、およびx軸にアンペア時(Ah)を単位とする脱リチウム化容量を示す。これらの電圧曲線によって、装置の電極における(例えば、PTFE、グラファイト粉末およびリチウム金属を含有する混合物を使用して形成された自立型電極フィルムにおける)電気化学的に利用可能なリチウム金属の量を推定することができる。
図9Aに対応するコイン半電池は、1.5Vのカットオフ電圧で約2.5ミリアンペア時の容量を示し、
図9Bに対応するコイン半電池は、同じカットオフ電圧で約3ミリアンペア時の容量を示した。
【0095】
脱リチウム化の性能は、グラファイト複合電極において電気化学的に利用可能なリチウム金属の量に依存し得る。リチウム金属の量は、電気化学的エネルギーの供給におけるいくつかの役割として寄与する。例えば、リチウム金属は、グラファイト表面のSEI形成のための電気化学的エネルギーや、グラファイトおよび遊離リチウム金属のリチウムイオンのインターカレーションのための酸化還元反応に寄与する。例えば、
図9Aから、グラファイト電極フィルム中に遊離リチウム金属が存在すること、および、インターカレートされたリチウムイオンが存在すること、がわかる。
図9Aの0.0ミリアンペア時から約1ミリアンペア時までの、電圧がほぼゼロである脱リチウム化プロセスは、遊離リチウム金属によってもたらされ得る。一方、約1ミリアンペア時から約2.5ミリアンペア時まで電圧の上昇は、グラファイト内のリチウムイオンの脱インターカレーションプロセスに起因し得る。
図9Bは、
図9Aとは対照的に、脱リチウム化プロセスの開始時に電圧が約0.1ボルトであることから、脱リチウム化プロセスでは、グラファイト内でリチウムイオンの脱インターカレーションがほぼ独占的に起こっている可能性を支持する。これらの2つの例は、バルクリチウム金属を適合させる乾式の電極形成処理工程の頑健性(ロバストネス)と、最終電極におけるバルクリチウム金属からの容量を、例えば入力量によって、所望の値に容易に調整できる性能と、を実証する。
【0096】
図7および
図8A~8Cに示される混合装置、または炭素材料をバルク元素リチウム材料と混合するのに適した他の装置を使用して、例えば本明細書に記載の
図3~6を参照して説明した方法とは別の方法を実施し、バルク電極材料、フィルム、および/またはエネルギー貯蔵装置を形成することができることが理解されよう。
【0097】
本明細書で用いられる見出し(表題)は、参照のために、および、様々なセクションを位置づけするために用いられる。これらの見出しは、記載された概念の範囲を限定するものではない。これらの概念は、明細書全体を通して適用可能であり得る。
【0098】
開示された実施形態は、当業者が本発明を実施または使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の考え方または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴に合致する最も広い範囲で認められるべきである。
【0099】
以上の説明において、様々な実施形態に適用される本発明の新規な特徴を指摘したが、当業者は、説明された装置または方法の形態および詳細における様々な省略、置換、および変更が、本発明の範囲から逸脱することなしに可能であることを理解するであろう。