(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】送信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20230215BHJP
H04B 1/74 20060101ALI20230215BHJP
H04B 3/46 20150101ALI20230215BHJP
B61L 1/18 20060101ALI20230215BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H04B1/74
H04B3/46
B61L1/18 H
H04L27/00 A
(21)【出願番号】P 2019001440
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】香川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-162468(JP,A)
【文献】特開2010-195209(JP,A)
【文献】特開2002-160632(JP,A)
【文献】特開2010-274832(JP,A)
【文献】特開2014-159185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H04B 1/74
H04B 3/46
H04B 17/10
B61L 1/18
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン信号を周期的に出力すると共に二つの前記メイン信号の間に
前記メイン信号と同じ周波数であり且つ前記メイン信号よりも信号レベルが小さいサブ信号を出力する送信部と、
前記メイン信号及び前記サブ信号の信号レベルに基づいて前記送信部の故障の有無を判定する故障判定部と、
を含む、送信装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記メイン信号を周期的に発生すると共に二つの前記メイン信号の間に前記サブ信号を発生する信号発生部を有し、前記信号発生部が発生した前記メイン信号及び前記サブ信号を出力するように構成されている、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記メイン信号の長さと前記サブ信号の長さとは等しい、請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
それぞれが互いに異なる周波数の信号を発生する複数の信号発生部を有し、前記複数の信号発生部が発生した信号を合成して出力する送信部と、
前記複数の信号発生部が発生する信号に基づいて前記送信部の故障の有無を判定する故障判定部と、
を含み、
前記複数の信号発生部のそれぞれは、メイン信号を周期的に発生すると共に二つの前記メイン信号の間に前記メイン信号よりも信号レベルの小さいサブ信号を発生し、
前記故障判定部は、前記複数の信号発生部のそれぞれが発生する前記メイン信号及び前記サブ信号の信号レベルに基づいて前記送信部の故障の有無を判定する、
送信装置。
【請求項5】
前記故障判定部は、前記複数の信号発生部のいずれかが発生する信号の信号レベルが複数回連続して規定レベル未満となった場合に前記送信部が故障していると判定する、請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記複数の信号発生部が発生する信号は、線路に設けられた軌道回路に印加されて前記軌道回路における列車の在線を検知するための列車検知信号を構成する、請求項4又は5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記送信部の出力信号において、前記複数の信号発生部のそれぞれが発生したメイン信号には他の信号発生部が発生したサブ信号が重畳されている、請求項4~6のいずれか一つに記載の送信装置。
【請求項8】
前記送信部が故障した場合に、前記送信部に代替して使用される待機系送信部をさらに含む、請求項1~7のいずれか一つに記載の送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を周期的に出力する構成の送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送信装置の一例として、特許文献1に記載の列車位置検知装置の送信器が知られている。この送信器は互いに周波数の異なる複数の信号を周期的な時系列に出力するように構成されており、前記送信器の出力信号が前記複数の軌道回路のそれぞれに割り当てられたフィルタを介して前記複数の軌道回路のそれぞれに印加されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送信器の出力信号の信号レベルを監視し、出力信号の信号レベルが複数回連続して規定レベル未満になったときに送信器の故障を検出する手法が知られている。この手法は、送信器の故障(特にその出力信号が途絶えたこと)を容易に且つ速やかに検出することができるという利点を有している。
【0005】
しかし、前記手法を前記列車位置検知装置の送信器に適用する場合には、次のような課題がある。例えば前記列車位置検知装置が5個の軌道回路を対象とする場合、前記列車位置検知装置の送信器は互いに周波数の異なる五つの信号f1~f5(信号長さ:t(ms))を周期的な時系列に出力する。この場合、前記列車位置検知装置の送信器の出力信号は、
図9(A)に示されるような形態を有しているが、各信号f1~f5に着目すると、
図9(B)に示されるように、各信号f1~f5が出力されない無信号期間T0(=4×t(ms))が存在する。前記手法を用いて前記列車位置検知装置の送信器の故障の有無を判定するには各信号f1~f5が出力されているか否かを判定する必要があるところ、無信号期間T0においてはそもそも各信号f1~f5が出力されないため、故障の有無の判定を保留せざるを得ない。このため、前記手法を前記列車位置検知装置の送信器に適用すると、前記送信器の故障の検出に時間を要してしまう。
【0006】
なお、このような課題は、上述の列車位置検知装置の送信器に限られるものではなく、信号を周期的に出力する構成の送信装置、換言すれば、信号が出力されない無信号期間が生じ得る送信装置に共通するものである。
【0007】
そこで、本発明は、信号を周期的に出力する構成の送信装置において、故障の検出を容易且つ速やかに行うことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、送信装置は、メイン信号を周期的に出力すると共に二つ前記メイン信号の間に前記メイン信号と同じ周波数であり且つ前記メイン信号よりもレベルが小さいサブ信号を出力する送信部と、前記メイン信号及び前記サブ信号の信号レベルに基づいて前記送信部の故障の有無を判定する故障判定部と、を含む。
【0009】
また、本発明の他の側面によると、送信装置は、それぞれが互いに異なる周波数の信号を生成する複数の信号発生部を有し、前記複数の信号発生部が生成した信号を合成して出力する送信部と、前記複数の信号発生部が発生する信号の信号レベルに基づいて前記送信部の故障の有無を判定する故障判定部と、を含む。前記複数の信号発生部のそれぞれは、メイン信号を周期的に発生すると共に二つの前記メイン信号の間に前記メイン信号よりも信号レベルが小さいサブ信号を発生し、前記故障判定部は、前記複数の信号発生部のそれぞれが発生する前記メイン信号及び前記サブ信号の信号レベルに基づいて前記送信部の故障の有無を判定する。
【発明の効果】
【0010】
前記送信装置においては、周期的に出力され又は発生する前記メイン信号の信号レベルと二つ前記メイン信号の間に出力され又は発生するする前記サブ信号の信号レベルとに基づいて前記送信部の故障の有無が判定される。このため、信号を周期的に出力する構成の送信装置において、故障の検出を容易且つ速やかに行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】前記送信装置の送信部の出力信号の一例を示す図である。
【
図3】前記送信装置の効果を説明するための図であり、(A)は従来の送信装置の送信部の出力信号の一例を示す図であり、(B)は前記送信装置の送信部の出力信号の一例を示す図である。
【
図4】本発明が適用された列車位置検知装置の概略構成を示す図である。
【
図5】前記列車位置検知装置の送信装置の概略構成を示すブロック図である
【
図6】前記列車位置検知装置の送信装置の送信部を構成する第n(n=1~5)信号発生部の出力(発生)信号(第n列車検知信号TDn)の一例を示す図である。
【
図7】前記列車位置検知装置の送信装置の送信部の出力信号(合成信号TS)のイメージを示す図である。
【
図8】前記列車位置検知装置の制御装置が実行する列車の在線状況検知処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】(A)は従来の列車位置検知装置の送信器の出力信号を示す図であり、(B)は前記送信器の出力信号を構成する各周波数の信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、実施形態に係る送信装置1は、稼働系の第1送信部2と、待機系の第2送信部3と、故障判定部4と、切替部5と、切替制御部6と、を含む。
【0014】
第1、第2送信部2、3は、同一の構成を有しており、信号発生部7と、レベル検出部8と、を含む。なお、以下では第1送信部2について説明するが、第2送信部3についても同様である。
【0015】
信号発生部7は、所定周波数fのメイン信号Mf(長さ:t(ms))を所定間隔T(>t)で周期的に発生すると共に、メイン信号Mfと同じ周波数であり且つメイン信号Mfよりも信号レベル(振幅)が小さいサブ信号Sfを二つのメイン信号Mfの間に発生するように構成されている。信号発生部7は図示省略の増幅部を含む構成とされ得る。特に制限されないが、例えば、所定周波数fの搬送波をデジタル信号で変調して得られる変調信号(電文)がメイン信号Mfとされ、メイン信号Mfの振幅を1/nとした波形がサブ信号Sfとされる。この場合、メイン信号Mfの長さとサブ信号Sfの長さは等しく、サブ信号Sfはメイン信号Mfと同内容の電文を構成する。
【0016】
本実施形態において、メイン信号Mfの信号レベル(振幅)はV(v)であり、サブ信号Sfはメイン信号Mfの振幅Vを「1/3」とした波形である。また、所定間隔Tはメイン信号Mf(及びサブ信号Sf)の長さt(ms)の5倍に設定されており(T=5×t)、信号発生部7は、メイン信号Mfを所定間隔Tで周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mfの間に四つのサブ信号Sfを発生するように構成されている。そして、本実施形態においては、信号発生部7が発生する信号(メイン信号Mf及びサブ信号Sf)が第1送信部2の出力信号となる。
【0017】
図2は、信号発生部7が発生する信号(メイン信号Mf及びサブ信号Sf)、つまり、第1送信部2の出力信号の一例を示している。
図2に示されるように、第1送信部2の出力信号は、二つのメイン信号Mf(振幅:V、長さ:t)の間に四つのサブ信号Sf(振幅:V/3、長さ:t)が配置された形態を有している。
【0018】
図1に戻り、レベル検出部8は、信号発生部7が発生する信号(メイン信号Mf及びサブ信号Sf)の信号レベルを検出し、検出した信号レベルVrを故障判定部4に出力するように構成されている。レベル検出部8は、信号発生部7が発生する各メイン信号Mf及び各サブ信号Sfの信号レベルを検出できるように、その検出タイミングが設定される。例えば、レベル検出部8は、信号発生部7によるメイン信号Mfの発生の開始から「t/2(ms)」経過後に信号レベルの検出を開始すると共に、「t(ms)毎」に信号の信号レベルを検出し、検出した信号レベルVrを故障判定部4に出力するように構成され得る。
【0019】
故障判定部4は、第1、第2送信部2、3のレベル検出部8によって検出された信号レベル(メイン信号Mfの信号レベル及びサブ信号Sfの信号レベル)Vrに基づいて第1、第2送信部2、3の故障の有無を判定する。
【0020】
本実施形態において、故障判定部4は、第1送信部2のレベル検出部8によって検出された信号レベルVrが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第1送信部2が故障していると判定し、それ以外の場合は第1送信部2が故障していない(正常である)と判定する。そして、故障判定部4は、第1送信部2が故障していると判定した場合、第1送信部2についての故障発生信号(以下「第1故障発生信号」という)を切替制御部6に出力すると共に、前記第1故障発生信号を図示省略の外部装置等に出力して管理者等に第1送信部2の修理や交換を促す。
【0021】
また、故障判定部4は、第2送信部3のレベル検出部8によって検出された信号レベルVrが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第2送信部3が故障していると判定し、それ以外の場合は第2送信部3が故障していない(正常である)と判定する。そして、故障判定部4は、第2送信部3が故障していると判定した場合、第2送信部3についての故障発生信号(以下「第2故障発生信号」という)を前記外部装置等に出力して管理者等に第2送信部3の修理や交換を促す。
【0022】
切替部5は、切替制御部6によって制御され、第1送信部2及び第2送信部3のいずれか一方を信号伝送路9に接続させるように構成されている。第1送信部2が信号伝送路9に接続されると、第1送信部2の出力信号が信号伝送路9を介して図示省略の受信装置等に供給され、第2送信部3が信号伝送路9に接続されると、第2送信部3の出力信号が信号伝送路9を介して図示省略の受信装置等に供給される。また、切替部5は、第1送信部2を信号伝送路9に接続させるように初期設定される。したがって、送信装置1は、通常、第1送信部2の出力信号を、信号伝送路9を介して図示省略の受信装置等に供給する。
【0023】
切替制御部6は、前記第1故障発生信号が入力されると、すなわち、第1送信部2が故障すると、切替部5を制御して、第1送信部2に代えて第2送信部3を信号伝送路9に接続させる。これにより、送信装置1は、第2送信部3の出力信号を、信号伝送路9を介して前記受信装置等に供給することになる。すなわち、稼働系の第1送信部2が故障した場合には、待機系の第2送信部3が稼働系の第1送信部2に代替して使用される。
【0024】
なお、
図1において、切替部5は、切替スイッチとして構成され、主に故障判定部4からの第1故障発生信号に基づいて切替制御部6によって制御されるようになっている。しかし、これに限られるものではない。送信装置1において、例えば、故障判定部4、切替部5及び切替制御部6に代えて、第1送信部2及び第2送信部3のそれぞれにリレー及びリレー制御部が設けられてもよい。この場合、第1送信部2のリレー制御部は、第1送信部2のレベル検出部8によって検出された信号レベルVrが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第1送信部2が故障していると判定し、それ以外の場合は第1送信部2が故障していない(正常である)と判定する。そして、第1送信部2のリレー制御部は、第1送信部2が正常であれば第1送信部2のリレーをONとして第1送信部2と信号伝送路9とを接続し、第1送信部2が故障していれば第1送信部2のリレーをOFFとして第1送信部2と信号伝送路9とを切り離す。また、第2送信部3のリレー制御部は、第2送信部3のレベル検出部8によって検出された信号レベルVrが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第2送信部3が故障していると判定し、それ以外の場合は第2送信部3が故障していない(正常である)と判定する。そして、第2送信部3のリレー制御部は、第1送信部2が故障しており且つ第2送信部3が正常であれば第2送信部3のリレーをONとして第2送信部3と信号伝送路9とを接続し、それ以外の場合は第2送信部3のリレーをOFFとして第2送信部3と信号伝送路9とを切り離す。
【0025】
図3は、本実施形態に係る送信装置1の効果を説明するための図である。
図3(A)は、メイン信号Mfと同様の信号f(長さ:t(ms))を所定間隔T(=5×t)で周期的に出力する構成の従来の送信装置の送信部の出力信号の一例を示し、
図3(B)は、送信装置1の第1、第2送信部2、3の出力信号(メイン信号Mf、サブ信号Sf)の一例を示している。
【0026】
図3(A)に示されるように、従来の送信装置においては、前記送信部から信号fが出力されない無信号期間T0(=4×t(ms))が存在する。このため、例えば前記送信部の出力信号の信号レベルが2回連続して規定レベル未満となったときに前記送信部が故障していると判定する場合、その判定(換言すれば、故障の検出)に要する時間Txとして少なくも「10×t(ms)」が必要になる。これに対し、実施形態に係る送信装置1において、第1、第2送信部2、3の出力信号は、
図3(B)に示されるように、メイン信号Mfとメイン信号Mfとの間に四つのサブ信号Sfが配置された形態を有しており、無信号期間が存在しない。このため、第1、第2送信部2、3の出力信号の信号レベルが2回連続して規定レベル未満となったときに第1、第2送信部2、3が故障していると判定する場合、その判定(故障の検出)に要する時間Txは「2×t(ms)」で済む。
【0027】
したがって、実施形態に係る送信装置1によれば、従来の送信装置に比べて、送信部(第1、第2送信部2、3)の故障の検出に要する時間Txを短縮することができる。この結果、特に稼働系の第1送信部2が故障した場合にこれを速やかに検出して待機系の第2送信部3に切り替えることができるので、送信装置1からの出力信号が途絶えてしまう時間を大幅に短縮することができる。
【0028】
なお、上述の実施形態において、信号発生部7は、メイン信号Mfを所定間隔Tで周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mfの間に四つのサブ信号Sfを発生するように構成されている。換言すれば、第1、第2送信部2、3は、メイン信号Mfを所定間隔Tで周期的に出力すると共に二つのメイン信号Mfの間に四つのサブ信号Sfを出力するように構成されている。しかし、これに限られるものではない。信号発生部7(第1、第2送信部2、3)は、二つのメイン信号Mfの間に少なくとも一つのサブ信号Sfを発生(出力)するように構成されればよい。この場合においても、レベル検出部8は、各メイン信号Mf及び各サブ信号Sfの信号レベルを検出できるように、その検出タイミングが設定される。このようにしても、従来の送信装置に比べて、送信部(第1、第2送信部2、3)の故障の検出に要する時間Txを短縮することができる。
【0029】
[第2実施形態]
図4は、本発明が適用された列車位置検知装置の概略構成を示す図である。
図4に示された列車位置検知装置10は、線路Rに設けられた複数の軌道回路(ここでは10個の軌道回路TC1~TC10)を対象として列車Tの在線状況を検知するように構成されている。また、
図4において、列車Tは線路R上を軌道回路TC1、TC2、・・・TC10の順に走行する。列車位置検知装置10は、送信装置11と、フィルタF1~F5と、第1受信装置70Aと、第2受信装置70Bと、制御装置90と、を含む。
【0030】
図5は、送信装置11の概略構成を示すブロック図である。送信装置11は、稼働系の第1送信部12と、待機系の第2送信部13と、故障判定部14と、切替部15と、切替制御部16と、を含む。
【0031】
第1、第2送信部12、13は、同一の構成を有している。第1、第2送信部12、13は、第1~第5信号発生部21~25と、レベル検出部30と、第1~第4遅延部41~44と、合成部50と、を含む。なお、以下では主に第1送信部12について説明するが、第2送信部13についても同様である。
【0032】
第1信号発生部21は、例えば以下の手順に従って軌道回路TC1及びTC2用の第1周波数f1の第1列車検知信号TD1を生成して出力し、これによって、第1周波数f1のメイン信号Mf1を周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf1の間のメイン信号Mf1よりも信号レベルの小さい第1周波数f1のサブ信号Sf1を発生する。
【0033】
(1)まず、第1信号発生部21は、第1周波数f1の搬送波を軌道回路TC1のID情報を示すデジタル信号で変調してメイン信号Mf1を生成する。生成されたメイン信号Mf1は第1信号発生部21のID情報を示す電文である。また、メイン信号Mf1の振幅はV(v)であり、メイン信号Mf1の長さはt(ms)である。
【0034】
(2)次に、第1信号発生部21は、メイン信号Mf1の振幅Vを1/3とした波形を4(=対象とする軌道回路TCの数-1)個生成してこれらをサブ信号Sf1とする。すなわち、第1信号発生部21は、振幅がV/3(v)であり、長さがt(ms)である四つのサブ信号Sf1を生成する。ここで、サブ信号Sf1は、メイン信号Mf1の振幅のみを小さくした信号であり、メイン信号Mf1と同内容の電文(すなわち、第1信号発生部21のID情報を示す電文)を構成する。
【0035】
(3)そして、第1信号発生部21は、生成されたメイン信号Mf1と四つサブ信号Sf1とを繋ぎ合わせて1周期分の信号とし、この1周期分の信号を繰り返し出力する。
【0036】
この結果、第1信号発生部21は、メイン信号Mf1を所定間隔T(=5×t(ms))で周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf1の間に四つのサブ信号Sf1を発生することになる。
【0037】
第2信号発生部22は、(1)~(3)と同様の手順に従って軌道回路TC3及びTC4用の第2周波数f2の第2列車検知信号TD2を生成して出力することにより、第2周波数f2のメイン信号Mf2を周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf2の間にメイン信号Mf2よりも信号レベルの小さい四つのサブ信号Sf2を発生する。同様に、第3信号発生部23は、軌道回路TC5及びTC6用の第3周波数f3の第3列車検知信号TD3を生成して出力することにより、第3周波数f3のメイン信号Mf3を周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf3の間にメイン信号Mf3よりも信号レベルの小さい四つのサブ信号Sf3を発生する。第4信号発生部24は、軌道回路TC7及びTC8用の第4周波数f4の第4列車検知信号TD4を生成して出力することにより、第4周波数f4のメイン信号Mf4を周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf4の間にメイン信号Mf4よりも信号レベルの小さい四つのサブ信号Sf4を発生する。第5信号発生部25は、軌道回路TC9及びTC10用の第5周波数f5の第5列車検知信号TD5を生成して出力することにより、第5周波数f5のメイン信号Mf5を周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf5の間にメイン信号Mf5よりも信号レベルの小さい四つのサブ信号Sf5を発生する。
【0038】
ここで、第2列車検知信号TD2を構成するメイン信号Mf2及びサブ信号Sf2は第2信号発生部22のID情報を示す電文であり、第3列車検知信号TD3を構成するメイン信号Mf3及びサブ信号Sf3は第3信号発生部23のID情報を示す電文であり、第4列車検知信号TD4を構成するメイン信号Mf4及びサブ信号Sf4は第4信号発生部24のID情報を示す電文であり、第5列車検知信号TD5を構成するメイン信号Mf5及びサブ信号Sf5は第5信号発生部25のID情報を示す電文である。
【0039】
図6は、第1~第5信号発生部21~25から出力(発生)される第1~第5列車検知信号TD1~TD5の一例を示している。
図6に示されるように、第n列車検知信号TDn(n=1~5)は、メイン信号Mfn(振幅:V、長さ:t)とメイン信号Mfnとの間に四つのサブ信号Sfn(振幅:V/3、長さ:t)が配置された形態を有している。
【0040】
図5に戻り、レベル検出部30は、第1~第5列車検知信号TD1~TD5を構成するメイン信号Mf1~Mf5及びサブ信号Sf1~Sf5、すなわち、第1~第5信号発生部21~25が発生したメイン信号Mf1~Mf5及びサブ信号Sf1~Sf5の信号レベルVr1~Vr5を検出し、検出した信号レベルVr1~Vr5を故障判定部14に出力するように構成されている。具体的には、レベル検出部30は、第1信号発生部21が発生したメイン信号Mf1及びサブ信号Sf1の信号レベルVr1を検出し、第2信号発生部22が発生したメイン信号Mf2及びサブ信号Sf2の信号レベルVr2を検出し、第3信号発生部23が発生したメイン信号Mf3及びサブ信号Sf3の信号レベルVr3を検出し、第4信号発生部24が発生したメイン信号Mf4及びサブ信号Sf4の信号レベルVr4を検出し、第5信号発生部25が発生したメイン信号Mf5及びサブ信号Sf5の信号レベルVr5を検出する。そして、レベル検出部30は、検出されたVr1~Vr5を故障判定部14に出力する。
【0041】
第1遅延部41は、第2信号発生部22から出力された第2列車検知信号TD2を入力し第1列車検知信号TD1に対してt(ms)遅延させて出力する。第2遅延部42は、第3信号発生部23から出力された第3列車検知信号TD3を入力し第1列車検知信号TD1に対して2×t(ms)遅延させて出力する。第3遅延部43は、第4信号発生部24から出力された第4列車検知信号TD4を入力し第1列車検知信号TD1に対して3×t(ms)遅延させて出力する。第4遅延部44は、第5信号発生部25から出力された第5列車検知信号TD5を入力し第1列車検知信号TD1に対して4×t(ms)遅延させて出力する。
【0042】
合成部50は、第1信号発生部21から出力された第1列車検知信号TD1、第1遅延部41から出力された第2列車検知信号TD2、第2遅延部42から出力された第3列車検知信号TD3、第3遅延部43から出力された第4列車検知信号TD4、及び、第4遅延部44から出力された第5列車検知信号TD5を入力し、これらを合成(波形加算)して出力する。そして、本実施形態においては、合成部50から出力される信号(合成信号)TSが第1送信部12の出力信号となる。
【0043】
図7は、合成部50から出力される合成信号TS、すなわち、第1送信部12の出力信号のイメージ図である。上述のように、第1遅延部41から出力された第2列車検知信号TD2は第1列車検知信号TD1に対してt(ms)だけシフトされ、第2遅延部42から出力された第3列車検知信号TD3は第1列車検知信号TD1に対して2×t(ms)だけシフトされ、第3遅延部43から出力された第4列車検知信号TD4は第1列車検知信号TD1に対して3×t(ms)だけシフトされ、第4遅延部44から出力された第5列車検知信号TD5は第1列車検知信号TD1に対して4×t(ms)だけシフトされている。このため、合成部50から出力される合成信号TS(第1送信部12の出力信号)は、
図7に示されるように、第1~第5列車検知信号TD1~TD5を構成するメイン信号Mf1~Mf5のそれぞれに、他の列車検知信号を構成するサブ信号Sf1~Sf5が重畳された形態を有している。例えば、合成信号TSにおいて、第1列車検知信号TD1を構成するメイン信号Mf1(すなわち、第1信号発生部21が発生したメイン信号)には第2~第5列車検知信号TD2~TD5を構成するサブ信号Sf2~Sf5(すなわち、第1信号発生部21以外の信号発生部が発生したサブ信号Sf2~Sf5)が重畳され、第3列車検知信号TD3を構成するメイン信号Mf3(すなわち、第3信号発生部23が発生したメイン信号)には第1、第2、第4及び第5列車検知信号TD1、TD2、TD4、TD5のサブ信号Sf1、Sf2、Sf4、Sf5(すなわち、第3信号発生部23以外の信号発生部が発生したサブ信号)重畳されている。
【0044】
故障判定部14は、第1、第2送信部12、13のレベル検出部30によって検出された信号レベルVr1~Vr5に基づいて第1、第2送信部12、13の故障の有無を判定する。
【0045】
本実施形態において、故障判定部14は、第1送信部12のレベル検出部30によって検出された信号レベルVr1~Vr5のいずれかが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第1送信部12が故障していると判定し、それ以外の場合は第1送信部12が故障していない(正常である)と判定する。そして、故障判定部14は、第1送信部12が故障していると判定した場合、第1送信部12についての故障発生信号(以下「第1故障発生信号」という)を切替制御部16に出力すると共に、前記第1故障発生信号を図示省略の外部装置等に出力して管理者等に第1送信部12の修理や交換を促す。
【0046】
また、故障判定部14は、第2送信部13のレベル検出部30によって検出された信号レベルVr1~Vr5のいずれかが複数回(ここでは2回)連続して規定レベルVth(<V/3)未満となったときに第2送信部13が故障していると判定し、それ以外の場合は第2送信部13が故障していない(正常である)と判定する。そして、故障判定部14は、第2送信部13が故障していると判定した場合、第2送信部13についての故障発生信号(以下「第2故障発生信号」という)を前記外部装置等に出力して管理者等に第2送信部13の修理や交換を促す。
【0047】
切替部15は、切替制御部16によって制御され、第1送信部12及び第2送信部13のいずれか一方を信号伝送路17に接続させるように構成されている。また、切替部15は、第1送信部12を信号伝送路9に接続させるように初期設定される。したがって、送信装置11は、通常、第1送信部12の出力信号(合成信号TS)を信号伝送路17に出力する。
【0048】
切替制御部16は、前記第1故障発生信号が入力されると、すなわち、第1送信部12が故障すると、切替部15を制御して、第1送信部12に代えて第2送信部13を信号伝送路9に接続させる。これにより、送信装置11は、第2送信部13の出力信号(合成信号TS)を信号伝送路17に出力することになる。すなわち、稼働系の第1送信部12が故障した場合には、待機系の第2送信部13が稼働系の第1送信部12に代替して使用される。
【0049】
なお、
図5において、切替部15は、切替スイッチとして構成され、主に故障判定部14からの第1故障発生信号に基づいて切替制御部16によって制御されるようになっている。しかし、これに限られるものではない。第1実施形態の場合と同様に、送信装置11において、例えば、故障判定部14、切替部15及び切替制御部16に代えて、第1送信部12及び第2送信部13のそれぞれにリレー及びリレー制御部が設けられてもよい。
【0050】
信号伝送路17は、
図4、
図5に示されるように、切替部15から延びると共にその途中で第1~第5分岐伝送路17a~17eに分岐している。そして、第1分岐伝送路17aは図示省略のトランスなどを介して軌道回路TC1と軌道回路TC2との境界に接続され、第2分岐伝送路17bは図示省略のトランスなどを介して軌道回路TC3と軌道回路TC4との境界に接続され、第3分岐伝送路17cは図示省略のトランスなどを介して軌道回路TC5と軌道回路TC6との境界に接続され、第4分岐伝送路17dは図示省略のトランスなどを介して軌道回路TC7と軌道回路TC8との境界に接続され、第5分岐伝送路17eは図示省略のトランスなどを介して軌道回路TC9と軌道回路TC10との境界に接続されている。
【0051】
フィルタF1~F5は、互いに通過させる周波数帯域の異なるバンドバスフィルタである。具体的には、フィルタF1は、第1周波数f1の第1列車検知信号TD1を通過させるように構成されて第1分岐伝送路17aに設けられている。フィルタF2は、第2周波数f2の第2列車検知信号TD2を通過させるように構成されて第2分岐伝送路17bに設けられている。フィルタF3は、第3周波数f3の第3列車検知信号TD3を通過させるように構成されて第3分岐伝送路17cに設けられている。フィルタF4は、第4周波数f4の第4列車検知信号TD4を通過させるように構成されて第4分岐伝送路17dに設けられている。フィルタF5は、第5周波数f5の第5列車検知信号TD5を通過させるように構成されて第5分岐伝送路17eに設けられている。
【0052】
上述のように、切替部15は、第1送信部12を信号伝送路17に接続させるように初期設定されており、基本的には、第1送信部12の出力信号(合成信号TS)がフィルタF1~F5に入力される。そして、フィルタF1の出力(すなわち、第1列車検知信号TD1)が軌道回路TC1と軌道回路TC2との境界に印加され、フィルタF2の出力(すなわち、第2列車検知信号TD2)が軌道回路TC3と軌道回路TC4との境界に印加され、フィルタF3の出力(すなわち、第3列車検知信号TD3)が軌道回路TC5と軌道回路TC6との境界に印加され、フィルタF4の出力(すなわち、第4列車検知信号TD4)が軌道回路TC7と軌道回路TC8との境界に印加され、フィルタF5の出力(すなわち、第5列車検知信号TD5)が軌道回路TC9と軌道回路TC10との境界に印加される。
【0053】
一方、第1送信部12が故障したときには、第1送信部12に代えて第2送信部13が信号伝送路17に接続されるため、第2送信部13の出力信号(合成信号TS)がフィルタF1~F5に入力される。そして、フィルタF1~F5の出力(第1~第5列車検知信号TD1~TD5)は、第1送信部12が信号伝送路17に接続されている場合と同様、軌道回路TC1~TC10における隣り合う軌道回路の境界のうちの対応する境界に印加される。
【0054】
図4において、第1受信装置70Aは、フィルタF11~F15と、復調部71~75と、を有する。フィルタF11~F15は、フィルタF1~F5と同様の特性を有するバンドパスフィルタである。第1受信装置70Aは、軌道回路TC1、TC3、TC5、TC7及びTC9の端部(列車進入側の端部)からの信号を対応するフィルタF11~F15を介して受信し、受信した信号を対応する復調部71~75を介して制御装置90に出力するように構成されている。具体的には、第1受信装置70Aは、軌道回路TC1に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC1と軌道回路TC2との境界に印加された第1列車検知信号TD1に対応する信号を軌道回路TC1の端部から受信し、軌道回路TC3に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC3と軌道回路TC4との境界に印加された第2列車検知信号TD2に対応する信号を軌道回路TC3の端部から受信し、軌道回路TC5に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC5と軌道回路TC6との境界に印加された第3列車検知信号TD3に対応する信号を軌道回路TC5の端部から受信し、軌道回路TC7に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC7と軌道回路TC8との境界に印加された第4列車検知信号TD4に対応する信号を軌道回路TC7の端部から受信し、軌道回路TC9に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC9と軌道回路TC10との境界に印加された第5列車検知信号TD5に対応する信号を軌道回路TC9の端部から受信する。
【0055】
第2受信装置70Bは、第1受信装置70Aと同様、フィルタF11~F15と、復調部71~75と、を有する。第2受信装置70Bは、軌道回路TC2、TC4、TC6、TC8及びTC10の端部(列車進出側の端部)からの信号を対応するフィルタF11~F15を介して受信し、受信した信号を対応する復調部71~75を介して制御装置90に出力するように構成されている。具体的には、第2受信装置70Bは、軌道回路TC2に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC1と軌道回路TC2との境界に印加された第1列車検知信号TD1に対応する信号を軌道回路TC2の端部から受信し、軌道回路TC4に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC3と軌道回路TC4との境界に印加された第2列車検知信号TD2に対応する信号を軌道回路TC4の端部から受信し、軌道回路TC6に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC5と軌道回路TC6との境界に印加された第3列車検知信号TD3に対応する信号を軌道回路TC6の端部から受信し、軌道回路TC8に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC7と軌道回路TC8との境界に印加された第4列車検知信号TD4に対応する信号を軌道回路TC8の端部から受信し、軌道回路TC10に列車Tが在線していないとき、軌道回路TC9と軌道回路TC10との境界に印加された第5列車検知信号TD5に対応する信号を軌道回路TC10の端部から受信する。
【0056】
制御装置90は、信号レベルを検出するレベル検出機能や各種の演算処理機能を有しており、第1受信装置70Aの出力(すなわち、軌道回路TC1、TC3、TC5、TC7及びTC9(の列車進入側)の端部からの信号と、第2受信装置70Bの出力(すなわち、軌道回路TC2、TC4、TC6、TC8及びTC10(の列車進出側)の端部からの信号)と、に基づいて軌道回路TC1~TC10における列車の在線状況を検知する。なお、以下では、軌道回路TC1~TC10からの信号を「軌道回路TC1~TC10からの受信信号」という。
【0057】
図8は、制御装置90が実行する列車Tの在線状況検知処理の一例を示すフローチャートであり、軌道回路TC1からの受信信号に基づく処理を示している。
【0058】
図8において、ステップS1では、軌道回路TC1からの受信信号の信号レベルを検出する。ステップS2では、ステップS1で検出された受信信号の信号レベルが第1所定値以上であるか否かを判定する。検出された受信信号の信号レベルが前記第1所定値以上である場合にはステップS3に進み、検出された受信信号の信号レベルが前記第1所定値未満の場合にはステップS6に進む。ここで、前記第1所定値は、サブ信号Sf1の振幅V/3よりも小さい値に設定される。
【0059】
ステップS3では、軌道回路TC1からの受信信号が第1信号発生部21のID情報と合致しているか否かを判定する。そして、軌道回路TC1からの受信信号が第1信号発生部21のID情報と合致する場合にはステップS4に進み、軌道回路TC1からの受信信号が第1信号発生部21のID情報と合致しない場合(一部が欠落している場合等を含む)にはステップS1に戻る。
【0060】
ステップS4では、第1信号発生部21のID情報と合致する受信信号を所定回数連続して受信したか否かを判定する。第1信号発生部21のID情報と合致する受信信号の受信回数が前記所定回数以上となった場合にはステップS5に進み、軌道回路TC1に列車Tが在線していないこと、すなわち、軌道回路TC1における列車非在線を検知する。一方、第1信号発生部21のID情報と合致する受信信号の受信回数が前記所定回数未満の場合にはステップS1に戻る。なお、前記所定回数は、特に制限されるものではないが、例えば3回に設定され得る。
【0061】
ステップS6では、ステップS1で検出された受信信号の信号レベルが第2所定値未満であるか否かを判定する。検出された受信信号の信号レベルが前記第2所定値未満の場合にはステップS7に進み、検出された受信信号の信号レベルが前記第2所定値以上である場合にはステップS1に戻る。ここで、前記第2所定値は、前記第1所定値よりも小さく且つノイズのレベルよりも大きい値に設定される。
【0062】
ステップS7では、前記検出された受信信号の信号レベルが第2所定値未満の状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。前記検出された受信信号の信号レベルが前記第2所定値未満の状態が前記所定時間以上継続した場合にはステップS8に進み、軌道回路TC1に列車Tが在線していること、すなわち、軌道回路TC1における列車在線を検知する。一方、前記検出された受信信号の信号レベルが前記第2所定値未満の状態が前記所定時間以上継続していない場合にはステップS1に戻る。
【0063】
なお、軌道回路TC2~TC10からの受信信号に基づく処理についての説明は省略するが、これらについても
図8と同様の処理が行われる。
【0064】
以上のようにして、制御装置90は、各軌道回路TC1~TC10の在線状況、さらに言えば、各軌道回路TC1~TC10における在線状況を検知する。そして、制御装置90は、各軌道回路TC1~TC10の在線状況の検知結果を図示省略の列車制御用の上位装置に出力する。
【0065】
上述の列車位置検知装置10によれば、以下のような効果を有する。
従来の列車位置検知装置においては、
図9(B)に示されるように、各信号f1~f5が出力されない無信号期間T0(=4×t(ms))が存在する。このため、信号f1~f5の信号レベルのいずれかが2回連続して規定レベル未満となったときに前記送信器が故障していると判定する場合、その判定(故障の検出)に要する時間Txとして各信号f1~f5について少なくも「10×t(ms)」が必要になる。これに対し、上述の列車位置検知装置10の送信装置11において、第1信号発生部21~第5信号発生部25から出力される第1~第5列車検知信号TD1~TD5は、
図6に示されるように、メイン信号Mf1~Mf5とメイン信号Mf1~Mf5との間に四つのサブ信号Sf1~Sf5が配置された形態を有しており、第1~第5列車検知信号TD1~TD5(を構成するメイン信号Mf1~Mf5又はサブ信号Sf1~Sf5)が出力されない無信号期間が存在しない。このため、第1~第5列車検知信号TD1~TD5の信号レベルVr1~Vr5のいずれかが2回連続して規定レベル未満となったときに第1、第2送信部12、13が故障していると判定する場合、その判定(故障の検出)に要する時間Txは第1~第5列車検知信号TD1~TD5のそれぞれについて「2×t(ms)」で済む。つまり、前記列車位置検知装置によれば、従来の列車位置検知装置に比べて、故障の検出に要する時間Txを短縮することができる。この結果、特に稼働系の第1送信部12が故障した場合にこれを速やか検出して待機系の第2送信部13に切り替えることができるので、送信装置11からの出力信号が途絶えてしまう時間を大幅に短縮することができる。
【0066】
また、従来の列車位置検知装置において、5個の軌道回路を対象とする場合、各軌道回路には対応する信号f1~f5が無信号期間T0(=4×t(ms))をあけて印加される(
図9(B)を参照)。このため、各軌道回路(の列車進入側又は列車進出側)に列車Tが在線していないとき、各軌道回路(の列車進入側又は列車進出側)からは信号f1~f5に対応する信号が無信号期間T0をあけて受信されることになる。したがって、各軌道回路(の列車進入側又は列車進出側)からの信号(受信信号)の受信回数が3回以上となったときに各軌道回路(の列車進入側又は列車進出側)における列車非在線を検知するように構成された場合、各軌道回路(の列車進入側又は列車進出側)における列車非在線を検知するのに要する時間として少なくとも「15×t(ms)」が必要となる。これに対し、上述の列車位置検知装置10において、軌道回路TC1及び軌道回路TC2には第1列車検知信号TD1を構成するメイン信号Mf1又はサブ信号Sf1が常に印加され、軌道回路TC3及び軌道回路TC4には第2列車検知信号TD2を構成するメイン信号Mf2又はサブ信号Sf2が常に印加され、軌道回路TC3及び軌道回路TC4には第3列車検知信号TD3を構成するメイン信号Mf3又はサブ信号Sf3が常に印加され、軌道回路TC5及び軌道回路TC6には第3列車検知信号TD3を構成するメイン信号Mf3又はサブ信号Sf3が常に印加され、軌道回路TC7及び軌道回路TC8には第4列車検知信号TD4を構成するメイン信号Mf4又はサブ信号Sf4が常に印加され、軌道回路TC9及び軌道回路TC10には第5列車検知信号TD5を構成するメイン信号Mf5又はサブ信号Sf5が常に印加される(
図6を参照)。このため、列車Tが在線していない軌道回路TCからはそこに印加されたメイン信号Mfに対応する信号又はサブ信号Sfに対応する信号が連続的に受信されることになる。したがって、上記と同じ条件で列車非在線を検知する場合、すなわち、
図8のステップS4における前記所定回数が3回に設定されている場合、各軌道回路TC1~TC10における列車非在線を検知するのに要する時間は「3×t(ms)」で済む。つまり、上述の列車位置検知装置10によれば、従来の列車位置検知装置と比較して、軌道回路TCの列車非在線を検知するのに要する時間を短縮することができる。この結果、列車Tの運転時隔の短縮化を図ることが可能となる。
【0067】
さらに、従来の列車位置検知装置においては対象となる軌道回路TCの数が増加するほど故障の検出に要する時間Txや各軌道回路TCにおける列車非在線を検知するのに要する時間が長くなるが、本発明による列車位置検知装置においては対象となる軌道回路TCの数が増加しても故障の検出に要する時間Txや各軌道回路TCにおける列車非在線を検知するのに要する時間が変化しないという利点もある。
【0068】
なお、上述の列車位置検知装置において、第1~第5信号発生部21~25は、メイン信号Mf1~Mf5を所定間隔Tで周期的に発生すると共に二つのメイン信号Mf1~Mf5の間に四つのサブ信号Sf1~Sf5を発生するように構成されている。しかし、これに限られるものではない。第1~第5信号発生部21~25は、二つのメイン信号Mf1~Mf5の間に少なくとも一つのサブ信号Sf1~Sf5を発生するように構成されればよい。このようにしても、従来の列車位置検知装置に比べて、故障の検出に要する時間Txや各軌道回路TCにおける列車非在線を検知するのに要する時間を短縮することができる。
【0069】
また、上述の列車位置検知装置10において、列車検知信号TDを構成するメイン信号Mf及びサブ信号Sfは、これを生成(発生)した信号発生部のID情報を示す電文となっている。しかし、これに限られるものではない。例えば、列車検知信号TDを構成するメイン信号Mf及びサブ信号Sfはこれが印加される軌道回路TCの情報を示す電文であってもよい。この場合、第1列車検知信号TD1のメイン信号Mf1及びサブ信号Sf1は軌道回路TC1と軌道回路TC2との共用ID情報を示す電文であり得、第2列車検知信号TD2を構成するメイン信号Mf2及びサブ信号Sf2は軌道回路TC3と軌道回路TC4との共用ID情報を示す電文であり得、第3列車検知信号TD3を構成するメイン信号Mf3及びサブ信号Sf3は軌道回路TC5と軌道回路TC6との共用ID情報を示す電文であり得、第4列車検知信号TD4を構成するメイン信号Mf4及びサブ信号Sf4は軌道回路TC7と軌道回路TC8との共用ID情報を示す電文であり得、第5列車検知信号TD5を構成するメイン信号Mf5及びサブ信号Sf5は軌道回路TC9と軌道回路TC10との共用ID情報を示す電文であり得る。
【0070】
さらに、上述の列車位置検知装置10において、第1、第2送信部12、13は、第1~第4遅延部41~44を有している。しかし、これに限られるものではなく、第2~第5信号発生部22~25が第1~第4遅延部41~44の機能を有してもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…送信装置、2…第1送信部、3…第2送信部、4…故障判定部、5…切替部、6…切替制御部、7…信号発生部、8…レベル検出部、10…列車位置検知装置、11…送信装置、12…第1送信部、13…第2送信部、14…故障判定部、15…切替部、16…切替制御部、21~25…第1~第5信号発生部、30…レベル検出部、41~44…第1~第4遅延部、50…合成部、70A…第1受信装置、70B…第2受信装置、90…制御装置、F1~F5,F11~F15…フィルタ、Mf,Mf1~M3…メイン信号、Sf,Sf1~Sf5…サブ信号、T…列車、TC1~TC5…軌道回路、TD1~TD5…第1~第5列車検知信号、TS…合成信号