(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】マスク検査装置及びフォーカス調整方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20230215BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230215BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20230215BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20230215BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G01N21/88 H
G03F1/84
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2019017619
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】仙洞田 哲也
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106965(JP,A)
【文献】特開2016-024042(JP,A)
【文献】特許第6587264(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01B 11/00-11/30
G02B 7/00-7/40
G02B 21/00-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した第1直線偏光を含む照明光の一部の偏光状態を変化させ、前記第1直線偏光を含む第1ビーム、前記第1直線偏光と偏光方向が異なる第2直線偏光を含む第2ビーム、及び、円偏光を含む第3ビームを有する照明光を出射させるEUVマスク用視野絞りと、
前記第1直線偏光、前記第2直線偏光及び前記円偏光を含む光の一部を反射させるとともに、前記第1直線偏光、前記第2直線偏光及び前記円偏光を含む前記光の一部を透過させる無偏光ビームスプリッタと、
前記無偏光ビームスプリッタで反射した前記照明光を検査対象マスクに集光するとともに、前記第1ビームが前記検査対象マスクで反射した第1光、前記第2ビームが前記検査対象マスクで反射した第2光、及び、前記第3ビームが前記検査対象マスクで反射した第3光を有する反射光を透過させる対物レンズと、
前記対物レンズ及び前記無偏光ビームスプリッタを透過した前記第1光または前記第2光のうちの一方を含む前記反射光を検出する第1検出器及び他方を含む前記反射光を検出する第2検出器と、
前記対物レンズ及び前記無偏光ビームスプリッタを透過した前記第3光を透過及び反射させるハーフミラーと、
前記第3光による像の前ピンとなる位置に配置され、前記ハーフミラーを透過した前記第3光を受光する第1受光部と、
前記第3光による前記像の後ピンとなる位置に配置され、前記ハーフミラーで反射した前記第3光を受光する第2受光部と、
を備えたマスク検査装置。
【請求項2】
前記EUVマスク用視野絞りは、λ/2板及びλ/4板を含み、
前記第2ビームは、前記λ/2板を透過した部分を含み、
前記第3ビームは、前記λ/4板を透過した部分を含む、
請求項1に記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記無偏光ビームスプリッタを透過した前記第3光の偏光状態を変化させる偏光手段をさらに備え、
前記偏光手段を介した前記第3光を、前記ハーフミラーにおいて透過及び反射させる、
請求項1または2に記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記偏光手段は、偏光ビームスプリッタ及びλ/4板のうち、少なくともいずれかを含む、
請求項3に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
入射した第1直線偏光を含む照明光の偏光状態を維持したまま、前記第1直線偏光を含む第4ビーム及び前記第1直線偏光を含む第5ビームを有する前記照明光を出射させる光マスク用視野絞りと、前記EUVマスク用視野絞りと、を切り替え可能な視野絞りユニットと、
前記第1直線偏光を含む光を反射させ、前記第2直線偏光を含む光を透過させる光マスク用PBSと、前記無偏光ビームスプリッタと、を切り替え可能なビームスプリッタユニットと、
前記照明光及び前記反射光の光路に挿入可能なλ/4板と、
を備えた、
請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク検査装置。
【請求項6】
前記視野絞りユニット及び前記ビームスプリッタユニットの切り替え時において、
前記前ピンとなる位置及び前記後ピンとなる位置を補正する補正手段をさらに備えた、
請求項
5に記載のマスク検査装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記第1受光部及び前記第1受光部の受光面上に配置されたスリットを移動させる第1ステージ、並びに、前記第2受光部及び前記第2受光部の受光面上に配置されたスリットを移動させる第2ステージである、
請求項6に記載のマスク検査装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記第3光の光路に配置されたポジショナである、
請求項6に記載のマスク検査装置。
【請求項9】
入射した第1直線偏光を含む照明光の一部の偏光状態を変化させ、前記第1直線偏光を含む第1ビーム、前記第1直線偏光と偏光方向が異なる第2直線偏光を含む第2ビーム、及び、円偏光を含む第3ビームを有する照明光を出射させるステップと、
前記照明光を検査対象マスクに対物レンズで集光するとともに、前記第1ビームが前記検査対象マスクで反射した第1光、前記第2ビームが前記検査対象マスクで反射した第2光、及び、前記第3ビームが前記検査対象マスクで反射した第3光を有する反射光を前記対物レンズに対して透過させるステップと、
前記対物レンズを透過させた前記反射光の前記第3光を、ハーフミラーにおいて透過及び反射させるステップと、
前記第3光による像の前ピンとなる位置に配置された第1受光部により、前記ハーフミラーを透過した前記第3光を受光するステップと、
前記第3光による前記像の後ピンとなる位置に配置された第2受光部により、前記ハーフミラーで反射した前記第3光を受光するステップと、
前記第1受光部により受光された前記第3光の強度、及び、前記第2受光部により受光された前記第3光の強度に基づいて、前記対物レンズまたは前記検査対象マスクの位置を調整するステップと、
を備えたフォーカス調整方法。
【請求項10】
前記ハーフミラーにおいて透過及び反射させるステップにおいて、
前記第3光の偏光状態を変化させる偏光手段を介した前記第3光を、前記ハーフミラーにおいて透過及び反射させる、
請求項9に記載のフォーカス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置及びフォーカス調整方法に関するものであり、例えば、半導体製造工程で利用されるフォトマスクの欠陥を検査するマスク検査装置及びフォーカス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EUV(Extreme Ultraviolet)マスクを検査するマスク検査装置で、EUVマスクを検査する場合には、微小パターンを検出する感度を向上させるために、相互に異なる方向の直線偏光を含む照明光を用いて検査を行う場合がある。
【0003】
特許文献1には、偏光方向がそれぞれ異なる第1直線偏光及び第2直線偏光を含む照明光を、ハーフミラーにより反射させて、検査対象のマスクを照明することが記載されている。
【0004】
一方、光マスクを検査するマスク検査装置では、照明光をハーフミラーで反射させると、光量ロスが生じ、検査に必要な照明光の光量を確保することが困難な場合がある。そこで、反射照明光学系として、ビームスプリッタ及びλ/4板を用いることにより、円偏光を含む照明光で、検査対象のマスクを照明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4701460号明細書
【文献】特開2009-223095号公報
【文献】特開平05-109601号公報
【文献】特開2013-024772号公報
【文献】特開2017-009379号公報
【文献】特開2017-090147号公報
【文献】特開2014-048217号公報
【文献】特開平4-289409号公報
【文献】特開2003-344306号公報
【文献】特開2009-216648号公報
【文献】特開2010-092984号公報
【文献】特開2012-127856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同一のマスク検査装置で、光マスク及びEUVマスクを検査するためには、ビームスプリッタとハーフミラーとの切り替え、及び、λ/4板の挿入及び取り外しが必要となる。しかしながら、このような切り替え等により、オートフォーカスに使用している反射光の偏光も変わってしまい、オートフォーカスの性能の低下等の問題が発生する。また、オートフォーカスに用いる反射光が所定の直線偏光のままだと、前ピン及び後ピンを分けるハーフミラーにおいて、偏光による反射率の依存性が影響し、オートフォーカスの性能が低下する。
【0007】
本発明の目的は、マスクを検査する際のオートフォーカス性能を向上させ、検査精度を向上させることができるマスク検査装置及びフォーカス調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマスク検査装置は、入射した第1直線偏光を含む照明光の一部の偏光状態を変化させ、前記第1直線偏光を含む第1ビーム、前記第1直線偏光と偏光方向が異なる第2直線偏光を含む第2ビーム、及び、円偏光を含む第3ビームを有する照明光を出射させるEUVマスク用視野絞りと、前記第1直線偏光、前記第2直線偏光及び前記円偏光を含む光の一部を反射させるとともに、前記第1直線偏光、前記第2直線偏光及び前記円偏光を含む前記光の一部を透過させる無偏光ビームスプリッタと、前記無偏光ビームスプリッタで反射した前記照明光を検査対象マスクに集光するとともに、前記第1ビームが前記検査対象マスクで反射した第1光、前記第2ビームが前記検査対象マスクで反射した第2光、及び、前記第3ビームが前記検査対象マスクで反射した第3光を有する反射光を透過させる対物レンズと、前記対物レンズ及び前記無偏光ビームスプリッタを透過した前記第1光または前記第2光のうちの一方を含む前記反射光を検出する第1検出器及び他方を含む前記反射光を検出する第2検出器と、前記対物レンズ及び前記無偏光ビームスプリッタを透過した前記第3光を透過及び反射させるハーフミラーと、前記第3光による像の前ピンとなる位置に配置され、前記ハーフミラーを透過した前記第3光を受光する第1受光部と、前記第3光による前記像の後ピンとなる位置に配置され、前記ハーフミラーで反射した前記第3光を受光する第2受光部と、を備える。このような構成によって、オートフォーカス性能を向上させ、検査精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係るフォーカス調整方法は、入射した第1直線偏光を含む照明光の一部の偏光状態を変化させ、前記第1直線偏光を含む第1ビーム、前記第1直線偏光と偏光方向が異なる第2直線偏光を含む第2ビーム、及び、円偏光を含む第3ビームを有する照明光を出射させるステップと、前記照明光を検査対象マスクに対物レンズで集光するとともに、前記第1ビームが前記検査対象マスクで反射した第1光、前記第2ビームが前記検査対象マスクで反射した第2光、及び、前記第3ビームが前記検査対象マスクで反射した第3光を有する反射光を前記対物レンズに対して透過させるステップと、前記対物レンズを透過させた前記反射光の前記第3光を、ハーフミラーにおいて透過及び反射させるステップと、前記第3光による像の前ピンとなる位置に配置された第1受光部により、前記ハーフミラーを透過した前記第3光を受光するステップと、前記第3光による前記像の後ピンとなる位置に配置された第2受光部により、前記ハーフミラーで反射した前記第3光を受光するステップと、前記第1受光部により受光された前記第3光の強度、及び、前記第2受光部により受光された前記第3光の強度に基づいて、前記対物レンズまたは前記検査対象マスクの位置を調整するステップと、を備える。このような構成によって、オートフォーカス性能を向上させ、検査精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マスクを検査する際のオートフォーカス性能を向上させ、検査精度を向上させるマスク検査装置及びフォーカス調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例1に係る光マスクの検査装置の構成を例示した図である。
【
図2】比較例2に係るEUVマスクの検査装置の構成を例示した図である。
【
図3】P偏光及びS偏光の反射率を例示したグラフであり、横軸は、入射角を示し、縦軸は、反射率を示す。
【
図4】実施形態に係るマスク検査装置を例示した構成図である。
【
図5】実施形態に係るマスク検査装置において、視野絞りユニットを例示した平面図である。
【
図6】(a)は、実施形態に係るマスク検査装置において、光マスクのパターン面を照明する照明光を例示した平面図であり、(b)は、実施形態に係るマスク検査装置において、EUVマスクのパターン面を照明する照明光を例示した平面図である。
【
図7】実施形態に係るマスク検査装置のオートフォーカスユニットを例示した構成図であり、光マスクを検査する場合を示す。
【
図8】実施形態に係るマスク検査装置の別のオートフォーカスユニットを例示した構成図である。
【
図9】実施形態に係るマスク検査装置のオートフォーカスユニットを例示した構成図であり、EUVマスクを検査する場合を示す。
【
図10】実施形態に係るマスク検査方法において、光マスクを検査する方法を例示したフローチャート図である。
【
図11】実施形態に係るマスク検査方法において、EUVマスクを検査する方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0013】
まず、比較例1及び比較例2を説明する。これにより、発明者が見出した課題を説明する。その後、課題を解決する実施形態を説明する。
【0014】
(比較例1)
図1は、比較例1に係る光マスクの検査装置の構成を例示した図である。
図1に示すように、光マスクMaの検査装置101aは、視野絞り110a、ビームスプリッタ120a、λ/4板130、対物レンズ140、ミラー151及び152、オートフォーカスユニット190を備えている。オートフォーカスユニット190は、ハーフミラー191、受光部192及び193を有している。
【0015】
光マスクMaの検査装置101aの場合には、例えば、直線偏光のS偏光を含む照明光L101を視野絞り110aに導く。視野絞り110aは、CAFスリット115a及びスリット116aを有している。CAFスリット115aを通った照明光L101aを、ビームB101aと呼ぶ。ビームB101aは、オートフォーカス用の照明光L101aとなる。スリット116aを通った照明光L101aをビームB102aと呼ぶ。ビームB102aは、検査用の照明光L101aとなる。視野絞り110aから出射した照明光L101aは、ビームB101a及びビームB102aを含んでいる。ビームB101a及びビームB102aは、ともに、S偏光を含んでいる。照明光L101aは、ビームスプリッタ120aで反射する。
【0016】
ビームスピリッタ120aは、例えば、S偏光の光を反射させつつ、P偏光の光を透過させるものを用いる。P偏光は、S偏光に直交した直線偏光である。ビームスプリッタ120aで反射した照明光L101aは、λ/4板130を透過する。これにより、S偏光のビームB101a及びビームB102aを有する照明光L101aは、円偏光のビームB101a及びビームB102aを含む照明光L101aに変換される。
【0017】
λ/4板130により円偏光を含むように変換された照明光L101aは、対物レンズ140で集光され、光マスクMaを照明する。照明光L101aが光マスクMaで反射した反射光R101aは、対物レンズ140を透過する。光マスクMaで反射した反射光R101aは、照明光L101aとは逆回転の円偏光を含んでいる。すなわち、反射光R101aに含まれたビームB101a及びB102aは、照明光L101aとは逆回転の円偏光を含んでいる。
【0018】
対物レンズ140を透過した円偏光を含む反射光R101aは、λ/4板130を透過することにより、P偏光を含む反射光R101aに変換される。すなわち、反射光R101aに含まれたビームB101a及びビームB102aは、P偏光を含む。したがって、ビームB101a及びビームB102aを含む反射光R101aは、ビームスプリッタ120aを透過する。
【0019】
ビームスプリッタ120aを透過した反射光R101aは、オートフォーカス用のビームB101a及び検査用のビームB102aを含んでいる。検査用のビームB102aを含む反射光R101aは、所定の光学部材により図示しない検出器に導かれる。検出器は、反射光R101aにおけるビームB102aを検出することにより、光マスクMaを検査する。
【0020】
一方、オートフォーカス用のビームB101aを含む反射光R101aは、ミラー151及び152によって、オートフォーカスユニット190に導かれる。そして、反射光R101aは、ハーフミラー191において透過または反射される。受光部192は、ビームB101aによる像の前ピンとなる位置に配置されている。受光部192は、ハーフミラー191を透過したビームB101aを受光する。受光部193は、ビームB101aによる像の後ピンとなる位置に配置されている。受光部193は、ハーフミラー191で反射したビームB101aを受光する。
【0021】
受光部192及び受光部193で受光したビームB101aの強度が同等になるようにフィードバック制御をかけて、対物レンズ140または光マスクMaを移動させる。これにより、オートフォーカスさせ、フォーカスを調整することができる。
【0022】
(比較例2)
図2は、比較例2に係るEUVマスクの検査装置の構成を例示した図である。
図2に示すように、EUVマスクMbの検査装置101bは、視野絞り110b、無偏光ビームスプリッタ120b、対物レンズ140、ミラー151及び152、オートフォーカスユニット190を備えている。オートフォーカスユニット190は、ハーフミラー191、受光部192及び193を有している。
【0023】
EUVマスクMbの検査装置101bの場合には、例えば、直線偏光のS偏光を含む照明光L101を視野絞り110bに導く。視野絞り110bは、CAFスリット115b、スリット116b及びスリット117bを有している。スリット117bには、λ/2板が取り付けられている。
【0024】
CAFスリット115bを通った照明光L101bを、ビームB101bと呼ぶ。スリット116bを通った照明光L101bをビームB102bと呼ぶ。スリット117bを通った照明光L101bをビームB103bと呼ぶ。ビームB101bは、オートフォーカス用の照明光L101bとなる。ビームB102b及びビームB103bは、検査用の照明光L101bとなる。視野絞り110bから出射した照明光L101bは、ビームB101b、B102b及びビームB103bを含んでいる。ビームB101b及びビームB102bは、ともに、S偏光を含んでいる。一方、ビームB103bは、P偏光を含んでいる。
【0025】
EUVマスクMbを検査する場合には、S偏光及びP偏光を含む照明光L101bを用いる。これにより、EUVマスクMbのパターン面における縦方向及び横方向に沿った微小パターンの検出感度を向上させることができる。S偏光及びP偏光の両方を反射させるため、照明光L101bを無偏光ビームスプリッタ120bで反射させる。
【0026】
無偏光ビームスプリッタ120bは、S偏光の光の一部及びP偏光の光の一部を反射させつつ、S偏光の光の一部及びP偏光の光の一部を透過させる。無偏光ビームスプリッタ120bで反射させた照明光L101bは、対物レンズ140で集光され、EUVマスクMbを照明する。照明光L101bがEUVマスクMbで反射した反射光R101bは、対物レンズ140を透過する。
【0027】
EUVマスクMbで反射した反射光R101bは、S偏光のビームB101b及びビームB102b、並びに、P偏光のビームB103bを含んでいる。対物レンズ140を透過した反射光R101bの一部は、無偏光ビームスプリッタ120bを透過する。無偏光ビームスプリッタ120bを透過した反射光R101bは、オートフォーカス用のビームB101b、並びに、検査用のビームB102b及びビームB103bを含んでいる。検査用のビームB102b及びビームB103bを含む反射光R101bは、所定の光学部材により図示しない検出器に導かれる。検出器は、反射光R101bにおけるビームB102b及びビームB103bを検出することにより、EUVマスクMbを検査する。
【0028】
一方、オートフォーカス用のビームB101bを含む反射光R101bは、ミラー151及び152によって、オートフォーカスユニット190に導かれる。そして、反射光R101bは、光マスクMaの場合と同様に、ハーフミラー191において透過または反射される。受光部192は、ビームB101bによる像の前ピンとなる位置に配置されている。受光部192は、ハーフミラー191を透過したビームB101bを受光する。受光部193は、ビームB101bによる像の後ピンとなる位置に配置されている。受光部193は、ハーフミラー193で反射したビームB101bを受光する。
【0029】
受光部192及び受光部193で受光したビームB101bの強度が同等になるようにフィードバック制御をかけて対物レンズ140またはEUVマスクMbを移動させる。これにより、オートフォーカスさせ、フォーカスを調整することができる。
【0030】
同一の装置で、比較例1の光マスクMaと比較例2のEUVマスクMbとを検査するためには、視野絞り110a及び視野絞り110bとの切り替え、及び、ビームスプリッタ120aと無偏光ビームスプリッタ120bとの切り替えが必要となる。また、λ/4板130の入れ替えが必要になる。しかしながら、切り替えによって、オートフォーカスユニット190で使用する光の偏光も変わることになる。そうすると、オートフォーカス性能が低下する場合がある。
【0031】
具体的には、比較例1の場合には、光マスクMaを照明するオートフォーカス用のビームB101aは、円偏光を含んでいる。一方、比較例2の場合には、EUVマスクMbを照明するオートフォーカス用のビームB101bは、S偏光を含んでいる。よって、オートフォーカス用のビームがラインアンドスペース等のパターンを照明した場合に、パターンに対するビームの角度は、切り替えによって変化する。これにより、切り替えによって、オートフォーカスの安定性が低下する。
【0032】
また、比較例1の場合には、ハーフミラー191に入射するオートフォーカス用のビームB101aは、P偏光を含んでいる。一方、比較例2の場合には、ハーフミラー191に入射するオートフォーカス用のビームB101bは、S偏光を含んでいる。直線偏光の偏光方向によって、ハーフミラー191の反射率に偏光依存性がある。よって、受光部192及び受光部193に受光される光量が変化する。
【0033】
図3は、P偏光及びS偏光の反射率を例示したグラフであり、横軸は、入射角を示し、縦軸は、反射率を示す。
図3に示すように、例えば、ハーフミラー191に45°でビームB101a及びビームB101bを入射させた場合に、反射率は異なる。よって、切り替えによって、受光部192及び受光部193に受光される光量が変化する。したがって、切り替えによって、オートフォーカスの安定性が低下する。
【0034】
(実施形態)
<マスク検査装置の構成>
次に、本実施形態に係るマスク検査装置を説明する。本実施形態のマスク検査装置は、例えば、比較例1及び比較例2の課題を解決する。本実施形態のマスク検査装置は、例えば、半導体製造工程で用いられるフォトマスクにおける欠陥を検出するマスク検査装置である。本実施形態のマスク検査装置は、光マスクMa及びEUVマスクMbを検査対象に含む。例えば、検査対象を光マスクMaからEUVマスクMbに、または、EUVマスクMbから光マスクMaに切り替えることができる。しかしながら、どちらか一方のマスクの検査装置としてもよい。
図4は、実施形態に係るマスク検査装置を例示した構成図である。
【0035】
図4に示すように、マスク検査装置1は、視野絞りユニット10、ビームスプリッタユニット20、λ/4板30、対物レンズ40、ミラー50、偏光分割部60、検出器71及び72を備えている。また、マスク検査装置1は、光源80を含んでもよいし、図示しないレンズ、ミラー等の光学部材を一つまたは複数個備えてもよい。また、マスク検査装置1は、後述する図示しないオートフォーカスユニットを備えている。
【0036】
マスク検査装置1は、例えば、検査対象である光マスクMa及びEUVマスクMbのパターンの欠陥を検査する。EUVマスクMbは、EUV光を露光光として用いるマスクであり、光マスクMaは、EUV光よりも長波長の露光光を用いるマスクである。ここで、マスク検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸を導入する。光マスクMa及びEUVマスクMbのパターン面に平行な面をXY平面とする。パターン面に直交する方向をZ軸方向とする。例えば、上方を+Z軸方向、下方を-Z軸方向とする。なお、XYZ直交座標軸は、マスク検査装置1の説明に用いるものであり、マスク検査装置1が実際に使用される場合の位置を示すものではない。
【0037】
検査対象のマスクを照明する照明光L1は、例えば、レーザ光である。光源80から出射した照明光L1は、レンズ、ミラー等の光学部材を経て、視野絞りユニット10に入射する。視野絞りユニット10に入射する照明光L1は、直線偏光を含んでいる。例えば、P偏光の直線偏光を含んでいる。P偏光を第1直線偏光と呼び、S偏光を第2直線偏光と呼ぶ。視野絞りユニット10は、入射した照明光L1の偏光状態を制御する。視野絞りユニット10は、偏光状態を制御した照明光L1を出射する。
【0038】
図5は、実施形態に係るマスク検査装置1において、視野絞りユニット10を例示した平面図である。
図5に示すように、視野絞りユニット10は、光マスク用視野絞り10aと、EUVマスク用視野絞り10bと、を含んでいる。視野絞りユニット10は、検査対象のマスクに応じて、光マスク用視野絞り10aと、EUVマスク用視野絞り10bと、を切り替え可能である。
【0039】
光マスク用視野絞り10aは、平板状の部材であり、一方の板面11から他方の板面12に貫通するスリット15a及びスリット16aを有している。スリット15a及びスリット16aは、例えば、板面11に直交する方向から見て矩形である。例えば、スリット15aは、スリット16aに比べて小さく、スリット16aに対して傾いている。スリット15aは、オートフォーカス用の照明光L1aを透過させ、スリット16aは、光マスクMaの検査用の照明光L1aを透過させる。
【0040】
スリット15a及びスリット16aは、例えば、空洞である。光マスク用視野絞り10aは、入射した直線偏光を含む照明光L1の偏光状態を維持したまま、照明光L1aを出射させる。具体的には、スリット15a及びスリット16aを通過した照明光L1aは、偏光状態を維持したまま、光マスク用視野絞り10aから出射する。照明光L1aにおけるスリット15aを通過した部分をビームB1aと呼ぶ。照明光L1aにおけるスリット16aを通過した部分をビームB2aと呼ぶ。スリット15aを透過したビームB1a及びスリット16aを透過したビームB2aは、偏光状態が変化していない。よって、光マスク用視野絞り10aは、P偏光を含むビームB1a及びP偏光を含むビームB2aを有する照明光L1aを出射させる。
【0041】
EUVマスク用視野絞り10bは、平板状の部材であり、一方の板面11から他方の板面12に貫通するスリット15b、スリット16b及びスリット17bを有している。スリット15bは、スリット15aと同様の形状である。スリット16b及びスリット17bは、スリット16aと同様の形状である。スリット16b及びスリット17bは、並んで配置されている。スリット15bは、オートフォーカス用の照明光L1bを透過させ、スリット16b及びスリット17bは、EUVマスクMbの検査用の照明光L1bを透過させる。
【0042】
スリット15bには、λ/4板が設けられている。スリット15bを透過した照明光L1bをビームB1bと呼ぶ。スリット15bを透過したビームB1bは、偏光状態が円偏光に変化している。
【0043】
スリット16bは、スリット16aと同様に、入射した照明光L1の偏光状態を変化させず、そのままの偏光状態で照明光L1bを出射させる。スリット16bを透過した照明光L1bをビームB2bと呼ぶ。よって、スリット16bを透過したビームB2bは、例えば、P偏光を含んでいる。
【0044】
スリット17bには、λ/2板が設けられている。スリット17bを透過した照明光L1bをビームB3bと呼ぶ。スリット17bを透過したビームB3bは、偏光方向が変化し、S偏光を含んでいる。
【0045】
このように、EUV用視野絞り10bは、λ/2板及びλ/4板を含んでいる。そして、ビームB1bは、λ/4板を透過した部分を含み、ビームB3bは、λ/2板を透過した部分を含む。よって、EUVマスク用視野絞り10bを透過した照明光L1bは、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含んでいる。このように、EUV用視野絞り10bは、入射したP偏光を含む照明光L1の一部の偏光状態を変化させ、円偏光を含むビームB1b、P偏光を含むビームB2b及びS偏光を含むビームB3bを有する照明光L1bを出射させる。S偏光は、P偏光と偏光方向が異なっている。
【0046】
図4に示すように、視野絞りユニット10を透過した照明光L1は、P偏光のビームB1a及びビームB2aを含む照明光L1a、または、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含む照明光L1bである。照明光L1は、ビームスプリッタユニット20に入射する。ビームスプリッタユニット20は、照明光L1の少なくとも一部を反射させる。ビームスプリッタユニット20は、光マスク用偏光ビームスプリッタ20a(光マスク用PBS20aと呼ぶ。)と、無偏光ビームスプリッタ20b(無偏光BS20bと呼ぶ。)と、を切り替え可能である。
【0047】
光マスク用PBS20aは、例えば、P偏光を反射し、S偏光を透過させる。例えば、光マスク用PBS20aは、光マスク用視野絞り10aを介して入射したP偏光のビームB1a及びP偏光のビームB2aを含む照明光L1aを反射する。光マスク用PBS20aは、照明光L1aを、下方の光マスクMa側に反射する。また、光マスク用PBS20aは、λ/4板30で変換されたS偏光を含む反射光R1aを上方へ透過させる。
【0048】
具体的には、光マスク用PBS20aに入射した照明光L1aは、下方に進み、λ/4板30で円偏光のビームB1a及び円偏光のビームB2aを含む照明光L1aに変換される。そして、円偏光のビームを含む照明光L1aは、対物レンズ40で集光され、光マスクMaを照明する。
【0049】
図6(a)は、実施形態に係るマスク検査装置1において、光マスクMaのパターン面を照明する照明光L1aを例示した平面図である。
図6(a)に示すように、光マスクMaのパターンを照明する照明光L1aは、円偏光のビームB1a及び円偏光のビームB2aを含んでいる。なお、照明光L1の光路上の所定の位置に図示しないレンズを配置して、レンズと対物レンズ40とでリレー光学系を構成してもよい。そして、視野絞りユニット10を、検査対象のマスクと共役な位置に配置させてもよい。こうすることにより、視野絞りユニット10の近傍における中間投影像が、検査対象のマスクにおけるパターン面に投影させることができる。
【0050】
照明光L1aが光マスクMaで反射した反射光R1aは、円偏光のビームB1a及び円偏光のビームB2aを含んでいる。ただし、反射光R1aは、照明光L1aと逆回転の円偏光のビームを含んでいる。反射光R1aは、対物レンズ40を透過し、λ/4板30を透過する。この際、円偏光のビームB1a及びビームB2aを含む反射光R1aは、S偏光のビームB1a及びビームB2aを含む反射光R1aに変換される。S偏光のビームB1a及びビームB2aを含む反射光R1aは、光マスク用PBS20aを透過する。
【0051】
λ/4板30は、P偏光のビームB1a及びビームB2aを含む照明光L1aを透過させる際に、円偏光のビームB1a及びビームB2aを含む照明光L1aに変換する。また、λ/4板30は、円偏光のビームB1a及びビームB2aを含む反射光R1aを透過させる際に、S偏光のビームB1a及びビームB2aを含む反射光R1aに変換する。
【0052】
λ/4板30は、照明光L1a及び反射光R1aの光路に挿入可能である。λ/4板30は、光マスクMaを検査する場合に、照明光L1a及び反射光R1aの光路に挿入される。λ/4板30は、EUVマスクMbを検査する場合に、照明光L1b及び反射光R1bの光路から外される。
【0053】
無偏光BS20bは、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含む照明光L1bの一部を反射するとともに、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含む反射光R1bの一部を透過させる。例えば、無偏光BS20bは、金属膜を含む無偏光BSである。よって、無偏光BS20bは、EUVマスク用視野絞り10bを介して入射した円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含む照明光L1bの一部を反射する。無偏光BS20bは、照明光L1bを、下方のEUVマスクMb側に反射する。対物レンズ40は、無偏光BS20bで反射された照明光L1bを、EUVマスクMbに集光する。対物レンズ40は、集光させた照明光L1bでEUVマスクMbを照明する。
【0054】
図6(b)は、実施形態に係るマスク検査装置1において、EUVマスクMbのパターン面を照明する照明光L1bを例示した平面図である。
図6(b)に示すように、EUVマスクMbのパターンを照明する照明光L1bは、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含んでいる。例えば、パターン面における+Y軸方向側から-Y軸方向側に順に、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bが照明される。
【0055】
EUVマスクMbで反射したR1bは、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含んでいる。対物レンズ40は、照明光L1bがEUVマスクMbで反射した反射光R1bを透過させる。無偏光BS20bは、対物レンズ40を透過した反射光R1bであって、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b及びS偏光のビームB3bを含む反射光R1bの一部を透過させる。
【0056】
対物レンズ40は、ビームスプリッタユニット20で反射した照明光L1a及びL1bを検査対象のマスクに集光する。それとともに、対物レンズ40は、照明光L1a及びL1bが検査対象のマスクで反射した反射光R1a及びR1bを透過させる。
【0057】
反射光R1aは、ビームB1aが光マスクMaで反射したビームB1a、ビームB2aが光マスクMaで反射したビームB2aを有している。また、反射光R1bは、ビームB1bがEUVマスクMbで反射したビームB1b、ビームB2bがEUVマスクMbで反射したビームB2b及びビームB3bがEUVマスクMbで反射したビームB3bを有している。照明光L1aのビームB1aと反射光R1aのビームB1aを区別するために、例えば、反射光R1aのビームB1aを、光B1aと呼んでもよい。他のビームも同様である。
【0058】
ミラー50は、対物レンズ40を透過し、ビームスプリッタユニット20を透過した反射光R1を偏光分割部60に対して反射させる。反射光R1は、光マスクMaで反射した反射光R1aまたはEUVマスクMbで反射した反射光R1bである。
【0059】
偏光分割部60は、対物レンズ40を透過し、ビームスプリッタユニット20を透過した反射光R1を分割する。偏光分割部60は、空間分割ミラー61を含んでいる。EUVマスクMbを検査する場合には、空間分割ミラー61は、反射光R1bの-Z軸側に位置するS偏光のビームB3bを反射するように配置される。
【0060】
反射光R1の+Z軸方向側の部分は、空間分割ミラー61に入射せず、空間分割ミラー61を通り抜ける。例えば、光マスクMaを検査する場合において、反射光R1aの+Z軸方向側に位置するS偏光のビームB2aは、空間分割ミラー61を通り抜ける。また、EUVマスクMbを検査する場合において、反射光R1bの+Z軸方向側に位置するP偏光のビームB2bは、空間分割ミラー61に入射せずに、空間分割ミラー61を通り抜ける。
【0061】
空間分割ミラー61で反射した反射光R1は、検出器71に入射する。空間分割ミラー61で反射せずに、空間分割ミラー61を通り抜けた反射光R1は、検出器72に入射する。このように、偏光分割部60は、対物レンズ40及びビームスプリッタユニット20を透過した反射光R1を、検出器71及び検出器72に導く。
【0062】
光マスクMaの場合には、検出器71または検出器72は、対物レンズ40及び光マスク用PBS20aを透過したビームB2aを含む反射光R1aを検出する。
【0063】
EUVマスクMbの場合には、検出器71は、対物レンズ40及び無偏光BS20bを透過したビームB2bまたはビームB3bのうちの一方を含む反射光R1bを検出する。また、検出器72は、対物レンズ40及び無偏光BS20bを透過したビームB2bまたはビームB3bのうちの他方を含む反射光R1bを検出する。なお、検出器71及び72は、例えば、TDIセンサである。
【0064】
マスク検査装置1は、検出器71及び72により検出された反射光R1に基づいて検査対象マスクを検査する。例えば、マスク検査装置1は、PC(Personal Computer)等の図示しない処理部を備え、各検出器により検出された各反射光を用いて処理した画像から検査対象を検査する。
【0065】
図7は、実施形態に係るマスク検査装置1のオートフォーカスユニット90aを例示した構成図であり、光マスクMaを検査する場合を示す。
図7に示すように、オートフォーカスユニット90aは、ハーフミラー91、受光部92、受光部93を有している。
【0066】
光マスクMaを検査する場合において、ハーフミラー91は、対物レンズ40及び光マスク用PBS20aを透過したオートフォーカス用のビームB1aを、透過または反射させる。対物レンズ40及び光マスク用PBS20aを透過したビームB1aは、S偏光を含んでいる。
【0067】
受光部92は、例えば、ビームB1aによる像の前ピンとなる位置に配置されている。受光部92は、例えば、ハーフミラー91を透過したビームB1aを受光する。受光部93は、例えば、ビームB1aによる像の後ピンとなる位置に配置されている。受光部93は、例えば、ハーフミラー91で反射したビームB1aを受光する。
【0068】
オートフォーカスユニット90aは、受光部92及び受光部93で受光したビームB1aの強度が同等になるようにフィードバック制御をかけて対物レンズ40または検査対象のマスクを移動させる。これにより、オートフォーカスさせることができる。
【0069】
図8は、実施形態に係るマスク検査装置1の別のオートフォーカスユニット90aを例示した構成図である。視野絞りユニット10及びビームスプリッタユニット20等の切り替え時において、オートフォーカス用のビームB1aの光軸における前ピンとなる位置及び後ピンとなる位置にズレが生じる場合がある。そこで、
図8に示すように、マスク検査装置1のオートフォーカスユニット90aは、前ピンとなる位置及び後ピンとなる位置を補正する補正手段を有してもよい。
【0070】
補正手段は、例えば、各受光部及びスリットを移動させる電動ステージ8である。スリットは、各受光部の受光面上に配置されている。電動ステージ8によって、各受光部及びスリットを移動させ、前ピンとなる位置及び後ピンとなる位置を調整することができる。
【0071】
また、補正手段は、オートフォーカス用のビームB1aの光路に配置されたポジショナ9である。ポジショナ9は、ビームB1aを透過する平行平板を含んでいる。ポジショナ9は、例えば、ハーフミラー91の直前に配置されている。例えば、ポジショナ9は、ハーフミラー91と、ハーフミラー91の直前にビームB1aが反射するミラー51との間の光路に配置されている。ポジショナ9の位置及び傾きを調整することにより、光軸ずれを補正することができる。なお、補正手段は、ステージ8及びポジショナ9に限らない。また、補正手段は、以下で説明するEUVマスクMbを検査する場合のオートフォーカスユニット90bに設けられてもよい。
【0072】
図9は、実施形態に係るマスク検査装置1のオートフォーカスユニット90bを例示した構成図であり、EUVマスクMbを検査する場合を示す。
図9に示すように、オートフォーカスユニット90bは、ハーフミラー91、受光部92、受光部93の他に、偏光手段を有している。偏光手段は、無偏光BS20bを透過したビームB1bの偏光状態を変化させる。偏光手段は、例えば、偏光ビームスプリッタ94及びλ/4板95のうち、少なくともいずれかを含んでいる。偏光ビームスプリッタ94は、S偏光を反射し、それ以外を透過させるものである。λ/4板95は、円偏光をS偏光に変換させるものである。
【0073】
EUVマスクMbを検査する場合において、ハーフミラー91は、偏光手段を介したオートフォーカス用のビームB1bを、透過または反射させる。対物レンズ40及び無偏光BS20bを透過した直後のビームB1bは、円偏光を含んでいる。一方、偏光手段を介したビームB1bは、S偏光を含んでいる。
【0074】
受光部92は、例えば、ビームB1bによる像の前ピンとなる位置に配置されている。受光部92は、例えば、ハーフミラー91を透過したビームB1bを受光する。受光部93は、例えば、ビームB1bによる像の後ピンとなる位置に配置されている。受光部93は、例えば、ハーフミラー91で反射したビームB1bを受光する。
【0075】
オートフォーカスユニット90bは、受光部92及び受光部93で受光したビームB1bの強度が同等になるようにフィードバック制御をかけて対物レンズ40または検査対象のマスクを移動させる。これにより、オートフォーカスさせることができる。なお、オートフォーカスユニット90bも、補正手段を有してもよい。補正手段は、例えば、光マスクMaの検査装置におけるオートフォーカスユニット90aの場合と同様に、各受光部及びスリットを移動させる電動ステージ8でもよいし、オートフォーカス用のビームB1bの光路に配置されたポジショナ9であってもよい。
【0076】
<マスク検査方法>
次に、マスク検査装置1を用いて、検査対象マスクを検査するマスク検査方法を説明する。マスク検査方法を、光マスクMaを検査する場合と、EUVマスクMbを検査する場合とに分けて説明する。ます、光マスクMaを検査する方法を説明する。
図10は、実施形態に係るマスク検査方法において、光マスクMaを検査する場合を例示したフローチャート図である。
【0077】
図10のステップS11に示すように、光マスクMaを検査する場合には、視野絞りユニット10を光マスク用視野絞り10aに切り替え、ビームスプリッタユニット20を、光マスク用PBS20aに切り替える。また、λ/4板30を、照明光L1a及び反射光R1aの光路に挿入する。さらに、光マスク用のオートフォーカスユニット90aに切り替える。
【0078】
次に、ステップS12に示すように、光マスク用視野絞り10aを介した照明光L1aを出射させる。具体的には、例えば、入射したP偏光を含む照明光L1の一部の偏光状態を変化させ、P偏光を含むビームB1a及びP偏光を含むビームB2aを有する照明光L1aを出射させる。照明光L1aは、オートフォーカス用のビームB1a及び検査用のビームB2aを含んでいる。
【0079】
次に、ステップS13に示すように、光マスク用視野絞り10aを介して出射させた照明光L1aを光マスク用PBS20aで反射させる。
【0080】
次に、ステップS14に示すように、光マスク用PBS20aで反射させた照明光L1aが円偏光のビームを含むように、照明光L1aの偏光状態を変化させる。具体的には、照明光L1aがλ/4板30を透過するようにして、P偏光の偏光状態から円偏光のビームB1a及びビームB2aを有する照明光L1aに変換させる。
【0081】
次に、ステップS15に示すように、円偏光を含む照明光L1aを対物レンズ40で光マスクMaに集光するとともに、照明光L1aが光マスクMaで反射した反射光R1aを対物レンズ40で集光する。反射光R1aは、光マスクMaで反射したビームB1a及びビームB2aを含んでいる。
【0082】
次に、ステップS16に示すように、反射光R1aがS偏光のビームを含むように偏光状態を変化させる。具体的には、反射光R1aをλ/4板30に対して透過させ、S偏光のビームB1a及びビームB2aを有する反射光R1aに変換させる。
【0083】
次に、ステップS17に示すように、S偏光のビームB1a及びビームB2aを有する反射光R1aを、光マスク用PBS20aに対して透過させる。
【0084】
次に、ステップS18に示すように、フォーカスを調整する。具体的には、対物レンズ40及び光マスク用PBS20aを透過させたビームB1aを、ハーフミラー91において透過及び反射させる。そして、ビームB1aによる像の前ピンとなる位置に配置された受光部92により、ハーフミラー91を透過したビームB1aを受光する。また、ビームB1aによる像の後ピンとなる位置に配置された受光部93により、ハーフミラー91で反射したビームB1aを受光する。受光部92により受光したビームB1aの強度、及び、受光部93により受光したビームB1aの強度に基づいて、対物レンズ40またはマスクMaの位置を調整する。このようにして、反射光R1aのフォーカスを調整する。
【0085】
次に、ステップS19に示すように、反射光R1aを検出する。例えば、検出器72により検出された反射光R1aに基づいて、光マスクMaのパターン面の画像を取得する。このようにして、光マスクMaを検査することができる。
【0086】
次に、マスク検査装置1を用いたEUVマスクMbを検査する方法を説明する。
図11は、実施形態に係るマスク検査方法において、EUVマスクMbを検査する方法を例示したフローチャート図である。
【0087】
図11のステップS21に示すように、EUVマスクMbを検査する場合には、視野絞りユニット10をEUVマスク用視野絞り10bに切り替え、ビームスプリッタユニット20を、無偏光BS20bに切り替える。λ/4板30を照明光L1b及び反射光R1bの光路から外す。さらに、EUVマスク用のオートフォーカスユニット90bに切り替える。
【0088】
次に、ステップS22に示すように、EUVマスク用視野絞り10bを介した照明光L1bを出射させる。具体的には、例えば、入射したP偏光を含む照明光L1の一部の偏光状態を変化させ、円偏光を含むビームB1b、P偏光を含むビームB2b、及び、S偏光を含むビームB3bを有する照明光L1bを出射させる。照明光L1bは、オートフォーカス用のビームB1b、並びに、検査用のビームB2b及びビームB3bを含んでいる。
【0089】
次に、ステップS23に示すように、EUVマスク用視野絞り10bを介して出射させた照明光L1bを無偏光BS20bで反射させる。具体的には、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b、及び、S偏光のビームB3bを有する照明光L1bの一部を無偏光BS20bで反射させる。
【0090】
次に、ステップS24に示すように、無偏光BS20bで反射させた照明光L1bをEUVマスクMbに対物レンズ40で集光するとともに、照明光L1bがEUVマスクMbで反射した反射光R1bを対物レンズ40に対して透過させて集光する。反射光R1bは、EUVマスクMbで反射したビームB1b、ビームB2b及びビームB3bを含んでいる。
【0091】
次に、ステップS25に示すように、円偏光のビームB1b、P偏光のビームB2b、及び、S偏光のビームB3bを有する反射光R1bを、無偏光BS20bに対して透過させる。
【0092】
次に、ステップS26に示すように、フォーカスを調整する。具体的には、対物レンズ40及び無偏光BS20bを透過したビームB1bを、ハーフミラー91において透過及び反射させる。そして、ビームB1bによる像の前ピンとなる位置に配置された受光部92により、ハーフミラー91を透過したビームB1bを受光する。また、ビームB1bによる像の後ピンとなる位置に配置された受光部93により、ハーフミラー91で反射したビームB1bを受光する。受光部92により受光したビームB1bの強度、及び、受光部93により受光したビームB1bの強度に基づいて、対物レンズ40またはEUVマスクMbの位置を調整する。このようにして、反射光R1bのフォーカスを調整する。なお、ハーフミラー91において透過及び反射させる際に、ビームB1bの偏光状態を変化させる偏光手段、例えば、偏光ビームスプリッタ94及びλ/4板95のうち、少なくともいずれかを介したビームB1bを、ハーフミラー91において透過及び反射させてもよい。これにより、ビームB1bをS偏光にすることができるので、ハーフミラー91に対する反射率を向上させることができる。
【0093】
次に、ステップS27に示すように、反射光R1bを検出する。例えば、検出器71により、ビームB2bまたはビームB3bのうちの一方を含む反射光R1bを検出する。また、検出器72により、ビームB2bまたはビームB3bのうちの他方を含む反射光R1bを検出する。これにより、EUVマスクMbのパターン面の画像を取得する。このようにして、EUVマスクMbを検査することができる。
【0094】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のマスク検査装置1において、光マスクMaを照明するオートフォーカス用のビームB1aは円偏光を含む。また、EUVマスクMbを照明するオートフォーカス用のビームB1bも円偏光を含む。したがって、同一のマスク検査装置1で光マスクMaを検査する場合もEUVマスクMbを検査する場合も、円偏光を用いることができる。よって、切り替えによって、オートフォーカスユニット90に使用する光の偏光状態が変化しないので、オートフォーカス性能を向上させることができる。
【0095】
また、オートフォーカス用のビームB1a及びビームB1bが、マスク上のラインアンドスペース等のパターンを照明した場合に、パターンに対するビームの角度は、切り替えによって変化しない。これにより、切り替えによっても、オートフォーカスの安定性の低下を抑制することができる。
【0096】
さらに、ハーフミラー91に入射するビームB1a及びビームB1bとしてS偏光を用いている。S偏光を用いることにより、ハーフミラー191に対する反射率を増大させ、オートフォーカス性能を向上させることができる。よって、マスクの検査の精度を向上させることができる。
【0097】
マスク検査装置1は、視野絞りユニット10及びビームスプリッタユニット20を、検査対象のマスクに応じて切り替え可能である。よって、光マスクMa及びEUVマスクMbを検査することができ、検査精度を向上させることができる。
【0098】
マスク検査装置1を用いたマスク検査方法は、同一の装置で、光マスクMa及びEUVマスクMbの両方を検査することができる。よって、検査コスト及び検査時間を低減することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態における構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 マスク検査装置
8 ステージ
9 ポジショナ
10 視野絞りユニット
11、12 板面
15a、15b、16a、16b、17b スリット
20 ビームスプリッタユニット
20a 光マスク用PBS
20b 無偏光BS
30 λ/4板
40 対物レンズ
50、51 ミラー
60 偏光分割部
71、72 検出器
80 光源
90a、90b オートフォーカスユニット
91 ハーフミラー
92、93 受光部
94 偏光ビームスプリッタ
95 λ/4板
101a、101b 検査装置
110a、110b 視野絞り
115a、115b CAFスリット
116a、116b、117b スリット
120a ビームスプリッタ
120b 無偏光ビームスプリッタ
130 λ/4板
140 対物レンズ
151、152 ミラー
190 オートフォーカスユニット
191 ハーフミラー
192、193 受光部
B1a、B1b、B2a、B2b、B3b ビーム
B101a、B101b、B102a、B102b、B103b ビーム
L1、L101、L101a、L101b 照明光
Ma 光マスク
Mb EUVマスク
R101a、R101b 反射光