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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/00 20190101AFI20230215BHJP
   B60L 53/35 20190101ALI20230215BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230215BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230215BHJP
【FI】
B60L53/00
B60L53/35
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019018862
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020127306
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕太
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀寛
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/114522(WO,A1)
【文献】特開2013-169109(JP,A)
【文献】特開2013-085336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/00
B60L 53/35
H02J 7/00
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
受電コイルを介して非接触に電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記第1リレー及び前記第2リレーの切り替え制御を行う制御部と、
車両の走行の制御を行う車両制御部と、
システム起動時に、前記受電コイルが地上設備の送電コイルから受電可能な位置にあるか否かを判定する第1判定部と
システム起動後に非接触充電が開始される可能性の低下を判定する第2判定部とを備え、
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部の判定結果に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更し、
前記制御部は、前記第2判定部により前記可能性の低下と判定された場合に、前記第2リレーを切断状態に切り替えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記車両制御部は、システム起動時に前記第2リレーが接続状態に切り替えられ、その後、走行モードへの移行指令に基づき前記第2リレーが切断状態に切り替えられる場合に、前記走行モードへの移行を遅延させることを特徴とする請求項記載の車両。
【請求項3】
前記車両制御部は、システム起動時に前記第2リレーが接続状態に切り替えられ、その後、走行モードへの移行指令に基づき前記第2リレーが切断状態に切り替えられる場合に、前記第2リレーの切断状態への切替え後の期間、走行の駆動力を制限することを特徴とする請求項又は請求項に記載の車両。
【請求項4】
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
受電コイルを介して非接触に電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記第1リレー及び前記第2リレーの切り替え制御を行う制御部と、
車両の走行の制御を行う車両制御部と、
システム起動時に、前記受電コイルが地上設備の送電コイルから受電可能な位置にあるか否かを判定する第1判定部とを備え、
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部の判定結果に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更し、
さらに、前記送電コイルから受電可能なように前記受電コイルの位置を合わせる充電移行処理部を備え、
前記制御部は、前記充電移行処理部により前記受電コイルの位置合わせの完了を記憶する位置合わせ完了記憶部を有し、
前記第1判定部は、前記位置合わせ完了記憶部の記憶情報と走行履歴情報とに基づいて、システム起動時に前記受電コイルが受電可能な位置にあるか否かを判定することを特徴とする車両。
【請求項5】
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部により前記受電可能な位置に有ると判定された場合に、前記第2リレーを接続状態にした後に、前記第1リレーを接続状態に切り替え、前記第1判定部により前記受電可能な位置に無いと判定された場合に、前記第2リレーの切断状態を切り替えずに、前記第1リレーを接続状態に切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記制御部は、
非接触充電の開始の際に、前記第2リレーの状態を判別し、前記第2リレーが接続状態である場合に、第2リレーを切り替えずに、非接触充電を開始することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の電力を蓄積するバッテリと、外部からバッテリの充電用の電力を取り込む電力取込部とを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの車両は、走行用の電力を蓄積する大容量の高電圧バッテリを備える。高電圧バッテリは、エアコン又はナビゲーションシステムなどの車載機器の電源として使用されることがある。さらに、近年、車体の内外に設けられたコンセントからAC電源を供給する利便性機能が実用化され、利便性機能の電源としても高電圧バッテリが用いられている。
【0003】
このような車両は、外部電源から電力を取り込んで、高電圧バッテリの充電を行うことができる。充電の形式には、地上設備の送電コイルから非接触で電力を取り込む非接触充電形式と、充電コネクタを介して有線で電力を取り込む有線充電形式とがある。
【0004】
一般に、高電圧バッテリを備える車両では、高電圧バッテリの電圧が無暗にシステムの電源ラインに出力されないよう、システムメインリレーを介して、電源ラインと高電圧バッテリとが切断可能とされる。また、高電圧バッテリを外部電源から充電可能な車両においては、電力取込部に、高電圧バッテリの電圧が必要なく出力されないよう、電圧取込部と電源ラインとが充電用リレーを介して切断可能とされる。特許文献1には、蓄電装置(26)を電源ラインに接続するシステムメインリレー(28)と、非接触充電用の受電コイル(38)を充電器(32)に接続するリレー(RY1)とを有する車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010-131348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高電圧バッテリを有する車両では、突入電流等の過大な電流がリレーに流れないよう、リレーの切替制御が行われる。例えば、充電用リレーを接続状態に切り替えて充電を開始するには、一旦、システムメインリレーを切断状態にして電源ラインから高電圧バッテリを切り離し、その後、充電用リレーを接続状態に切り替える。そして、再びシステムメインリレーを接続状態に切り替える。システムメインリレーには、その両端間の電圧を緩やかに変化させる保護機構が付加されているため、上記の手順により、充電用リレー及びシステムメインリレーの両方に過大な電流を流さずに、高電圧バッテリと電力取込部とを電源ラインを介して接続することができる。
【0007】
しかしながら、車載機器又は利便性機能のコンセントに接続された電気機器が動作しているときに、高電圧バッテリの充電を行う場合、上記のようにリレーの切替制御を行うと、機器の電源が一時的に切れてしまうという課題が生じる。
【0008】
本発明は、システム起動後、走行前に、電気機器の使用とバッテリの非接触充電を行う場合でも、電気機器を使用する上での利便性の低下を抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
受電コイルを介して非接触に電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記第1リレー及び前記第2リレーの切り替え制御を行う制御部と、
車両の走行の制御を行う車両制御部と、
システム起動時に、前記受電コイルが地上設備の送電コイルから受電可能な位置にあるか否かを判定する第1判定部と
システム起動後に非接触充電が開始される可能性の低下を判定する第2判定部とを備え、
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部の判定結果に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更し、
前記制御部は、前記第2判定部により前記可能性の低下と判定された場合に、前記第2リレーを切断状態に切り替えることを特徴とする車両である。
【0010】
なお、本明細書において切替手順の変更とは、切替対象の変更、切替内容の変更、切替順序の変更、及び、これらの変更の組み合わせを含む概念である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両であって、
前記車両制御部は、システム起動時に前記第2リレーが接続状態に切り替えられ、その後、走行モードへの移行指令に基づき前記第2リレーが切断状態に切り替えられる場合に、前記走行モードへの移行を遅延させることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記車両制御部は、システム起動時に前記第2リレーが接続状態に切り替えられ、その後、走行モードへの移行指令に基づき前記第2リレーが切断状態に切り替えられる場合に、前記第2リレーの切断状態への切替え後の期間、走行の駆動力を制限することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
受電コイルを介して非接触に電力を取り込む電力取込部と、
前記バッテリから走行モータ以外の機器に電源を供給可能な電源機能部と、
前記バッテリを電源ラインに接続又は切断する第1リレーと、
前記電力取込部を前記電源ラインに接続又は切断する第2リレーと、
前記第1リレー及び前記第2リレーの切り替え制御を行う制御部と、
車両の走行の制御を行う車両制御部と、
システム起動時に、前記受電コイルが地上設備の送電コイルから受電可能な位置にあるか否かを判定する第1判定部とを備え、
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部の判定結果に基づいて、前記第1リレー及び前記第2リレーの切替手順を変更し、
さらに、前記送電コイルから受電可能なように前記受電コイルの位置を合わせる充電移行処理部を備え、
前記制御部は、前記充電移行処理部により前記受電コイルの位置合わせの完了を記憶する位置合わせ完了記憶部を有し、
前記第1判定部は、前記位置合わせ完了記憶部の記憶情報と走行履歴情報とに基づいて、システム起動時に前記受電コイルが受電可能な位置にあるか否かを判定することを特徴とする車両である。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両であって、
システム起動時、前記制御部は、前記第1判定部により前記受電可能な位置に有ると判定された場合に、前記第2リレーを接続状態にした後に、前記第1リレーを接続状態に切り替え、前記第1判定部により前記受電可能な位置に無いと判定された場合に、前記第2リレーの切断状態を切り替えずに、前記第1リレーを接続状態に切り替えることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御部は、
非接触充電の開始の際に、前記第2リレーの状態を判別し、前記第2リレーが接続状態である場合に、第2リレーを切り替えずに、非接触充電を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
システム起動時、受電コイルが受電可能な位置に有れば、走行前に充電が行われることが想定される。また、充電の開始時には、電源機能部から電気機器に電力供給が行われていることが想定される。一方、受電コイルが受電可能な位置に無ければ、走行前に充電が行われることがない。本発明によれば、システム起動時に受電コイルが地上設備の送電コイルから受電可能な位置に有る場合と、無い場合とで、第1リレーと第2リレーとの切替手順を変更するので、上記の2つの状況の各々に適した第1リレー及び第2リレーの切替えを実現できる。これにより、例えば、システム起動後、走行前に、電源機能部を使用しながらバッテリの充電を開始する場合でも、電源機能部の電力供給が中断されるなどの利便性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車両を示すブロック図である。
図2】充電制御部と車両制御部とが連携して実行するシステム起動処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態の車両を示すブロック図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る車両1は、EV又はHEV(Hybrid Electric Vehicle)などであり、走行用の電力を蓄積するバッテリ11と、駆動輪を駆動する走行モータ13と、バッテリ11と走行モータ13との間で電力を変換するインバータ12と、バッテリ11の状態を管理するBCU(Battery Control Unit)14とを備える。バッテリ11は、走行モータ13を駆動する高電圧を出力し、高電圧バッテリと呼んでもよい。バッテリ11は、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池などの二次電池である。
【0021】
車両1は、さらに、システムメインリレーR1、プリチャージ部PC及び電源ラインLbを備える。バッテリ11は、システムメインリレーR1及びプリチャージ部PCを介して電源ラインLbに接続される。プリチャージ部PCは、システムメインリレーR1が切断状態のときに、システムメインリレーR1の両端間の電圧を緩やかに近づける機能を有する。バッテリ11を電源ラインLbに接続するには、まず、プリチャージ部PCが接続状態に切り替えられ、これによりシステムメインリレーR1の両端間の電位差が小さくされる。その後、システムメインリレーR1が接続状態に、プリチャージ部PCが切断状態に切り替えられ、これにより、システムメインリレーR1に過大な電流を流さずに、システムメインリレーR1を切断状態から接続状態に切り替えることができる。以下、システムメインリレーR1を接続状態に切り替えると説明したときは、プリチャージ部PCの上記の切り替えの動作が含まれるものとする。システムメインリレーR1は、本発明に係る第1リレーの一例に相当する。
【0022】
車両1は、さらに、走行制御と各部の制御を行う車両制御部15を備える。車両制御部15は、1つのECU(Electronic Control Unit)から構成されてもよいし、互いに連携して動作する複数のECUから構成されてもよい。車両制御部15は、例えば、運転操作部(図示略のペダル、シフトレバー41等)の操作に応じて、インバータ12を駆動し、走行モータ13を力行運転又は回生運転させる。これにより、運転操作に応じた車両1の走行が実現される。加えて、車両制御部15は、電源機能部25の始動制御と、システムメインリレーR1及びプリチャージ部PCの切り替え制御とを行う。車両制御部15は、本発明に係る第2判定部の一例に相当する。
【0023】
車両1は、さらに、走行モータ13以外の電気機器にバッテリ11の電力を用いて電源電圧を供給する電源機能部25を備える。電源機能部25は、エアコン用インバータ21、車載インバータ23、並びに、図示略のヒータスイッチなどを含む。エアコン用インバータ21は、バッテリ11の電力を変換してエアコン22(コンプレッサ等)に駆動電流を送る。車載インバータ23は、バッテリ11の電力をAC電源電圧に変換し、車内コンセント24に出力する。車両1の搭乗者は、車載インバータ23を駆動させることで、例えば家庭用の電気器具を車内コンセント24に接続して使用することができる。ヒータスイッチには、負荷として、空調用の冷媒又はバッテリ11を温めるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが接続され、オンされることでPCTヒータに電力を供給する。
【0024】
なお、車内コンセント24の代わりに、あるいは、車内コンセント24に加えて、車載インバータ23には、車両1の近傍(車室外)で電気器具を使用できる車外コンセント又は宅内のコンセントが接続されていてもよい。あるいは、電源機能部25は、車載インバータ23の代わりに、外付け用のインバータを接続可能なコネクタ及びリレーを備えていてもよい。そして、コネクタに外付け用のインバータが接続され、リレーがオンにされることで、車両制御部15の制御により、電源ラインLbからインバータへ電力が供給され、外付け用のインバータから車外コンセントへAC電源電圧が出力されるように構成されてもよい。また、外付け用のインバータから家庭のコンセントへAC電源電圧が出力されるように構成されてもよい。車両1から車外へAC電源電圧を供給する構成はV2L(Vehicle to Load)であり、車両1から宅内へAC電源電圧を供給する構成はV2H(Vehicle to Home)である。このような構成により、車両1のユーザは、車両1の近傍又は家庭で、車両1から供給される電力を用いて電気器具を使用することができる。
【0025】
車両1は、さらに、地上設備100から非接触に電力を取り込む非接触充電機構30を備える。非接触充電機構30は、受電コイル31、整流器32、無線通信を行う通信部33、充電制御部34及び充電用リレーR2を備える。受電コイル31は、地上設備100の送電コイル103と対向した状態で、電磁的な結合又は電磁的な共鳴により送電コイル103から電力を受けることができる。整流器32は、受電コイル31から出力される交流電流を整流し、電源ラインLb側へ送る。充電用リレーR2は、整流器32と電源ラインLbとを接続状態と切断状態とに切り替える。充電用リレーR2は、本発明に係る第2リレーの一例に相当する。受電コイル31及び整流器32は、本発明に係る電力取込部の一例を示す。充電制御部34は、本発明に係る第1判定部及び制御部の一例に相当する。
【0026】
充電制御部34は、通信部33を介して地上設備100と通信を行い、かつ、整流器32から電圧情報を受けて、非接触充電の制御を行う。非接触充電の制御には、充電用リレーR2の切替制御が含まれる。充電制御部34は、通信ラインLcを介した通信を行って、車両制御部15及びBCU14と連携する。すなわち、充電制御部34は、車両制御部15を介してシステムメインリレーR1の切替制御を行うことができ、また、車両制御部15又はBCU14を介して搭乗者による各種運転操作の情報とバッテリ11の状態情報を取り込むことができる。各種運転操作の情報には、シフトレバー41の位置情報(パーキングモード、ドライブモード、リバースモードなど)が含まれる。バッテリ11の状態情報には充電率(SOC:State of Charge)が含まれる。
【0027】
充電制御部34は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行する制御プログラム及び制御データを格納した記憶部、並びに、CPUがデータを展開するRAM(Random Access Memory)を有するECUである。記憶部には、非接触充電移行処理で受電コイル31の位置合わせが完了済みであることを記憶する位置合わせ完了記憶部34aが含まれる。
【0028】
車両1は、さらに、ダッシュボード等に設けられた非接触充電移行スイッチ36を備える。車両1の搭乗者は、非接触充電移行スイッチ36を操作することで、充電制御部34へ非接触充電への移行の指令を送ることができる。
【0029】
なお、車両制御部15と充電制御部34とは通信ラインLcを介した通信により連携するので、図1の例に示される車両制御部15の処理の一部(例えばシステムメインリレーR1の切替制御)は、充電制御部34が行ってもよい。逆に、図1の例に示される充電制御部34の処理の一部(例えば非接触充電移行スイッチ36からの信号入力、充電用リレーR2の切替制御)は、車両制御部15が行ってもよい。また、車両制御部15と充電制御部34とは、別構成とせずに、一組の制御部として統合されてもよい。
【0030】
地上設備100は、非接触に電力を伝送する送電コイル103と、外部電源の電力を変換して送電コイル103へ出力するインバータ102と、車両1の充電制御部34と通信可能な通信部106と、インバータ102を駆動制御する地上設備制御部105とを備える。車両1の充電制御部34は、通信部33、106による無線通信を介して、地上設備制御部105へ、送電コイル103の励磁要求を送ることができる。
【0031】
<非接触充電処理>
次に、非接触充電機構30を用いてバッテリ11を充電する非接触充電処理について説明する。非接触充電処理は、車両1が地上設備100の近傍にあるときに、非接触充電移行スイッチ36が操作されることで開始される。非接触充電処理が開始されると、まず、充電制御部34は、受電コイル31の位置合わせ処理と、充電用リレーR2及びシステムメインリレーR1のリレー切替制御とを含む、非接触充電移行処理を実行する。
【0032】
受電コイル31の位置合わせ処理では、充電制御部34は、地上設備100に位置合わせ用の弱い励磁を要求し、送電コイル103を励磁させる。そして、充電制御部34は、この励磁に基づき受電コイル31に生じる誘導起電力を確認しながら運転者を誘導して車両1を移動させる。このような制御により、受電コイル31が送電コイル103に対向する位置に合わせられ、車両1が停止する。位置合わせ処理中には、システムメインリレーR1が接続状態で、充電用リレーR2が切断状態とされる。
【0033】
続く、リレー切替制御では、充電制御部34は、システムメインリレーR1を、一旦、切断状態へ切り替えた後、充電用リレーR2を接続状態へ切り替え、その後、システムメインリレーR1を再び接続状態に切り替える。このようなリレー切替制御により、充電用リレーR2に突入電流などの過大な電流が流れることが抑制されつつ、整流器32とバッテリ11とが電源ラインLbを介して接続される。
【0034】
非接触充電移行処理(受電コイル31の位置合わせ処理とリレー切替制御)とが完了したら、次に、充電制御部34は、地上設備100に、充電用の電力伝送を要求する。すると、送電コイル103が電力伝送用に励磁され、送電コイル103から受電コイル31に電力が伝送される。受電コイル31で受けた電力は、整流器32で整流され、電源ラインLbを介してバッテリ11へ送られる。電力の伝送中、充電制御部34は、充電時間、バッテリ11の充電率、送電の有無等を監視し、例えば所定の充電時間が経過するか、バッテリ11が満充電となったら、地上設備100に送電コイル103の励磁の停止を要求し、これによりバッテリ100の充電を終了する。充電が終了されたら、充電制御部34は、充電用リレーR2を切断状態に切り替え、これにより車両1が走行可能となる。
【0035】
<システム起動処理>
車両1のシステムが休止状態のときに、車両1の搭乗者等が起動の操作(例えば電源ボタンのオン操作)をすると、車両1のシステムが起動する。システムの休止状態とは、システムメインリレーR1が切断され、かつ、車両制御部15が待機動作している状態を意味する。システムの起動とは、システムメインリレーR1が接続状態に切り替えられ、かつ、車両制御部15が起動することで、車両1が走行可能な状態へ遷移することを意味する。
【0036】
車両1のシステム起動後、運転者は車両1を走行するか、あるいは、走行前にバッテリ11の充電を行う。ただし、走行前にバッテリ11を充電するには、車両1が地上設備100上にあり、受電コイル31が位置合わせ済みである場合に限られる。また、車両1のシステム起動時には、車両1の搭乗者は、電源機能部25を使用して何らかの電気機器を駆動している場合がある。電源機能部25の使用中、仮に、バッテリ11の充電を開始するためにシステムメインリレーR1を、一旦、切断状態に切り替えた場合、電源機能部25からの電力供給が中断され、電源機能部25の利便性を低下させてしまう。
【0037】
図2は、充電制御部と車両制御部とが連携して実行するシステム起動処理を示すフローチャートである。
【0038】
システム起動の操作によりシステム起動処理が開始されると、まず、充電制御部34は、受電コイル31が送電コイル103から電力伝送可能な位置にあるか否かを判定する(ステップS1)。充電制御部34は、例えば、位置合わせ完了記憶部34aに記憶された過去の位置合わせ処理の履歴情報と、車両制御部15に記憶された走行の履歴情報とから、前回の位置合わせ処理の完了から車両1の走行が行われていない場合に、受電コイル31が送電コイル103から電力伝送可能な位置にあると判定する。
【0039】
ステップS1の判定結果がYESの場合、充電制御部34は、車両制御部15を介してシステムメインリレーR1を接続状態に切り替えさせる(ステップS4)。そして、充電制御部34は、処理をステップS5に進める。
【0040】
一方、ステップS1の判定結果がNOの場合、充電制御部34は、まず、充電用リレーR2を接続状態に切り替え(ステップS2)、次に、車両制御部15を介してシステムメインリレーR1を接続状態に切り替える(ステップS3)。ステップS2の充電用リレーR2の切替えタイミングでは、電源ラインLbとバッテリ11とが切り離されているため、充電用リレーR2に突入電流などの過大な電流が流れることはない。そして、充電制御部34は、処理をステップS5に進める。
【0041】
ステップS3又はステップS4で、システムメインリレーR1が接続状態に切り替えられることで、車両1の搭乗者は電源機能部25を始動して電気機器を駆動することが可能となる。
【0042】
処理が進められると、充電制御部34と車両制御部15とは、非接触充電への移行要求の有無の判別(ステップS5)と、サーボONの指令の有無の判別(ステップS6)とを、いずれかの判別がYESとなるまで、繰り返し実行する。そして、このループ処理の間に、非接触充電移行スイッチ36が操作されて非接触充電への移行要求があったら、充電制御部34は、処理をステップS7に進める。また、車両1の搭乗者からサーボONの指令がなされると、車両制御部15は、処理をステップS10に進める。サーボONとは、例えば、シフトレバー41の操作によりシフト位置がドライブモード又はリバースモードに切り替えられ、インバータ12の電源がONになって車両1が走行モードになることを意味する。
【0043】
ステップS5、S6のループ処理中、非接触充電への移行要求がなされたら、充電制御部34は、まず、充電用リレーR2が接続状態であるか否かを判別する(ステップS7)。そして、判別結果がYESであれば、受電コイル31が位置合わせ済みであるので、充電制御部34は、新たに、受電コイル31の位置合わせ処理とリレーの切替制御とを行わずに、地上設備100に充電用の電力伝送の開始を要求する(ステップS9)。一方、ステップS7の判別結果がNOであれば、受電コイル31が位置合わせされていないので、通常の非接触充電移行処理(ステップS8)を実行する。ステップS8の処理は、前述した、受電コイル31の位置合わせ処理及びリレー切替制御を含んだ非接触充電移行処理である。そして、非接触充電移行処理が完了したら、充電制御部34は、地上設備100に充電用の電力伝送の開始を要求する(ステップS9)。ステップS9の要求により、送電コイル103から電力伝送が開始されると、充電制御部34は、処理を充電処理へ移行する。
【0044】
ここで、運転者が受電コイル31の位置合わせを完了させて車両1を駐車し、その後、車両1を起動して電源機能部25を使用し、バッテリ11の充電率が幾分低下したところで、非接触充電を行ってバッテリ11の充電率を回復させる状況について検討する。非接触充電の要求があったとき、仮に、充電用リレーR2が切断されていると、充電用リレーR2を接続状態に切り替えるために、一旦、システムメインリレーR1を切断する必要が生じる。この場合、電源機能部25からの電力供給が中断されるので、電力供給の中断が支障となる電気機器を使用している場合に、電源機能部25の利便性が低下する。一方、本実施形態では、上記の状況の際には、充電用リレーR2が接続状態に維持されており、システムメインリレーR1が一旦切断されることなく、非接触充電が開始される。したがって、電源機能部25からの電力供給が中断されることがなく、電源機能部25の利便性の低下を抑制できる。
【0045】
ステップS5、S6のループ処理中、サーボONの指令がなされたら、車両制御部15は、充電制御部34に問い合わせを行って充電用リレーR2が接続状態であるか判別し(ステップS10)、YESであれば、充電制御部34を介して充電用リレーR2を切断状態に切り替える(ステップS11)。さらに、車両制御部15は、受電コイル31及び整流器32の放電が進む時間(例えば5秒)だけ遅延処理(ステップS12)を行い、その後に、インバータ12を起動させる(ステップS13)。これにより、車両1が走行可能となる。
【0046】
さらに、車両制御部15は、受電コイル31及び整流器32の放電が完全に完了する所定期間が経過するまで、車両1の駆動力を制限する処理(ステップS14~S16)を行う。駆動力の制限は、上限の駆動力が設定され、運転操作に関わらずに、車両制御部15が、上限の駆動力以上のトルク指令をインバータ12に出力しないことで実現される。そして、所定期間経過後に駆動力制限が解除(ステップS16)されたら、システム起動処理が終了する。
【0047】
一方、ステップS10の判別処理の結果がNOであれば、車両制御部15は、インバータ12を起動させ(ステップS17)、システム起動処理を終了する。
【0048】
このようなシステム起動処理により、システム起動時の状況に合わせたリレーの切替制御が行われ、その後、運転者又は搭乗者の要求に基づいて、車両1を走行する処理、又は、バッテリ11の充電処理を行うことができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の車両1によれば、システム起動時に、受電コイル31が地上設備100から受電可能な位置にあるか否かを、充電制御部34が判定する(図2のステップS1)。さらに、この判定結果に基づいて、充電制御部34が、システムメインリレーR1と充電用リレーR2との切替手順を変更する(ステップS2、S3又はステップS4)。システム起動時において受電コイル31が位置合わせ済みか否かにより、その後に想定される電源機能部25と非接触充電機構30の利用状況が異なる。このため、上記の判定結果に基づき、リレーの切替手順を変更することで、異なる利用状況の各々に適したシステムメインリレーR1及び充電用リレーR2の切替を実現できる。そして、このような切替により、システム起動後、走行前に電源機能部25が使用され、その使用中に非接触充電が開始されたとしても、電源機能部25に対する電力供給が中断されるといった利便性が低下する状況を低減できる。
【0050】
具体的には、充電制御部34は、システム起動時に受電コイル31の位置合わせ完了済みと判定したら、充電用リレーR2を接続状態に切り替えた後、システムメインリレーR1を接続状態に切り替える。一方、受電コイル31が位置合わせ完了済みでないと判定したら、充電制御部34は、充電用リレーR2の切断状態を維持しつつ、システムメインリレーR1を接続状態に切り替える。このような切替により、システム起動後、走行前に、電源機能部25を使用し、かつ、非接触充電によりバッテリの充電率を回復するような場合に、電源機能部25の電力供給の中断を回避することができる。
【0051】
また、充電制御部34は、非接触充電移行スイッチ36が操作されて非接触充電処理を開始する際、充電用リレーR2の状態を判別し、接続状態であれば、そのまま非接触充電を開始する。このような制御により、システム起動時に充電用リレーR2が接続状態に切り替えられた場合に、この切替を有効に活用して、電源機能部25の一時停止を避けつつ、非接触充電を開始することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の車両1によれば、システム起動処理で充電用リレーR2を接続状態に切り替えた場合に、車両制御部15は、非接触充電が開始される可能性が低下するサーボONの指令を判別する(ステップS6)。そして、この指令があった場合に、車両制御部15は、充電制御部34を介して充電用リレーR2を切断状態に切り替える(ステップS11)。このような制御により、非接触充電が行われずに車両1が走行されるような場合に、走行中、バッテリ11の高電圧が整流器32及び受電コイル31に出力されてしまうことを回避できる。
【0053】
さらに、本実施形態の車両1によれば、システム起動時に充電用リレーR2が接続状態に切り替えられ(ステップS2)、その後、切断状態に切り替えられる(ステップS11)場合、車両制御部15は、遅延処理を行ってから(ステップS12)、インバータ12を起動する(ステップS13)。これにより、バッテリ11の高電圧が整流器32及び受電コイル31に残った状態で、車両1が走行可能となることを回避できる。
【0054】
さらに、本実施形態の車両1によれば、システム起動時に充電用リレーR2が接続状態に切り替えられ(ステップS2)、その後、切断状態に切り替えられる(ステップS11)場合、車両制御部15は、所定期間、車両1の駆動力を制限する(ステップS14~S16)。これにより、整流器32及び受電コイル31が十分に放電されるまで、車両1の駆動輪に大きなトルクが出力されることを回避できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限らない。例えば、上記実施形態では、充電制御部34と車両制御部15とが連携してシステム起動処理を実行すると説明したが、システム起動処理は、車両制御部15、充電制御部34、又はその他の制御部が実行してもよい。すなわち、上記実施形態では、本発明に係る制御部として充電制御部を示し、本発明に係る車両制御部として図1の車両制御部15を示したが、本発明の制御部及び車両制御部としては、他の複数の制御部がそれぞれ適用されてもよいし、1つの統合された制御部が適用されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
11 バッテリ
12 インバータ
13 走行モータ
15 車両制御部(第2判定部)
21 エアコン用インバータ
23 車載インバータ
24 車内コンセント
25 電源機能部
31 受電コイル(電力取込部)
32 整流器(電力取込部)
34 充電制御部(制御部、第1判定部)
34a 位置合わせ完了記憶部
36 非接触充電移行スイッチ
Lb 電源ライン
Lc 通信ライン
R1 システムメインリレー(第1リレー)
R2 充電用リレー(第2リレー)
PC プリチャージ部
100 地上設備
103 送電コイル
図1
図2