(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/00 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A61B3/00
(21)【出願番号】P 2019039999
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176545(JP,A)
【文献】特開2018-042688(JP,A)
【文献】特開2012-170671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して被検者の被検眼像を観察しつつ検査を行う眼科装置本体と、
前記被検眼像を少なくとも提示可能な表示面を有するモニタ部と、
前記眼科装置本体に対して、垂直軸回りに回動自在に設けられ、前記眼科装置本体を操作する操作部と、
前記操作部を垂直軸回りに回転駆動させる駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、
前記モニタ部の姿勢を検出する検出部と、を備え、
前記モニタ部は、前記眼科装置本体に対して姿勢を変更自在に設けられ、
前記操作部は、前記モニタ部の姿勢の変更に応じて、前記表示面が向く方向に移動自在に設けられ
、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記モニタ部の姿勢に対応して、前記駆動機構を制御して前記操作部を垂直軸回りに回動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記モニタ部を垂直軸回り及び水平軸回りの少なくとも一方に回転駆動させる第2の駆動機構と、
前記眼科装置本体を操作する検者を検出する第2の検出部と、を備え、
前記制御部は、前記第2の検出部による検出結果に基づいて、前記第2の駆動機構を駆動して、前記表示面が前記検者に向くように前記モニタ部を駆動し、
前記第2の検出部による検出結果及び前記検出部による検出結果に基づいて、前記駆動機構を駆動して前記操作部を垂直軸回りに回動させることを特徴とする請求項
1に記載の眼科装置。
【請求項3】
光学系を介して被検者の被検眼像を観察しつつ検査を行う眼科装置本体と、
前記被検眼像を少なくとも提示可能な表示面を有するモニタ部と、
前記眼科装置本体を操作する操作部と、
前記操作部からの操作入力に基づいて前記眼科装置本体を制御する制御部
と、を備え、
前記モニタ部は、前記眼科装置本体に対して姿勢を変更自在に設けられ、
前記操作部は、前記モニタ部の姿勢の変更に応じて、前記表示面が向く方向に移動自在に設けられ、
前記制御部は、前記操作部の操作方向に対応して予め決められた処理を、前記眼科装置本体に実行させるとともに、前記操作部と、前記眼科装置本体との位置関係に応じて、前記操作方向と実行する処理との対応付けを変更するように構成されていることを特徴とす
る眼科装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記眼科装置本体に対して、垂直軸回りに回動自在に設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記モニタ部は、前記眼科装置本体に対して、垂直軸回り及び水平軸回りの少なくとも一方に回動自在に設けられていることを特徴とする請求項1
~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の前眼部像を撮像する撮像部を有し、被検眼の検眼を行う眼科装置本体と、眼科装置本体を操作する操作部と、前眼部像が表示されるモニタ部と、該モニタ部の上端に設けられた軸を回転中心とし、眼科装置本体に対して略垂直状態から略水平状態まで傾斜可能にモニタ部を支持する支持部と、を備えた眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参考)。操作部は、モニタ部の周囲に配置されたスイッチ、測定ヘッドを挟んで被検者と反対側に設けられたジョイスティックや回転ノブ等を有している。
【0003】
この特許文献1に開示された技術では、モニタを略水平状態とすることで、例えば眼瞼下垂の被検者の検眼を行う場合であっても、検者が眼科装置の側方に立った状態で、被検者の瞼を上げるなどの介添えを行いつつ、モニタに表示される前眼部像を観察しながら、操作部を操作して検眼を実行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、検者は一方の手で被検者の瞼を挙げつつ、他方の手を被検者とは反対側に伸ばしながら、被検者と反対側に位置する操作部を操作する必要があり、操作が行いにくく、検者にも姿勢の点で負担がかかる問題があった。また、検査中に被検者の頭部が傾いたり動いたりしないように、被検者の背後で頭部を支えつつ検査をする場合もあるが、被検者の背後からはモニタ部の視認や操作部の操作を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、検者の姿勢の自由度が高く、モニタ部の視認性及び操作部の操作性に優れ、簡易な構成の眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の眼科装置は、光学系を介して被検者の被検眼像を観察しつつ検査を行う眼科装置本体と、前記被検眼像を少なくとも提示可能な表示面を有するモニタ部と、前記眼科装置本体を操作する操作部と、を備え、前記モニタ部は、前記眼科装置本体に対して姿勢を変更自在に設けられ、前記操作部は、前記モニタ部の姿勢の変更に応じて、前記表示面が向く方向に移動自在に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の眼科装置では、モニタ部を、検者の位置に応じて所望の姿勢で配置し、このモニタ部の姿勢の変更に応じて、モニタ部の表示面が向く方向に操作部を移動させる。これにより、検者は所望の位置で、モニタ部の表示面を視認しつつ、容易に操作部を操作できる。したがって、検者の姿勢の自由度が高く、モニタ部の視認性及び操作部の操作性に優れ、簡易な構成の眼科装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る眼科装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】検者が被検者と対面して検査を行う場合のモニタ部及び操作部の姿勢を説明するための眼科装置の外観図であり、(a)はモニタ部を背面側に水平な向きで配置し、操作部のジョイスティックを背面側に配置したときの眼科装置の右側面図を示し、(b)はその背面図を示す。
【
図3】検者が被検者側から検査を行う場合のモニタ部及び操作部の姿勢を説明するための眼科装置の外観図であり、(a)はモニタ部を正面側に水平な向きで配置し、操作部を正面側近傍に配置したときの眼科装置の右側面図を示し、(b)はその平面図を示す。
【
図4】検者が眼科装置の右側から検査を行う場合のモニタ部の姿勢を説明するための眼科装置の外観図であり、(a)はモニタ部を右側に垂直な向きで配置し、操作部を右側に配置したときの眼科装置の右側面図を示し、(b)はモニタ部を右側に斜めの向きで配置し、操作部を右側に配置したときの眼科装置の背面図を示す。
【
図5】第2実施形態に係る眼科装置の右側面図であって、モニタ部をスライド機構によって測定ヘッドに対して上下に移動自在としたものである。
【
図6】
図5のモニタ部とスライド機構を示す拡大図である。
【
図7】第3実施形態に係る眼科装置の右側面図であって、被検者とは反対側に配置したモニタ部をスライド機構によって測定ヘッドに対して下方向に移動し、さらに表示面が被検者側を向くように水平軸回りに回動させ、操作部を正面側近傍に配置した状態を示す。
【
図8】表示面に表示される表示情報の表示例を示す図である。
【
図9】表示面に表示される表示情報の他の表示例を示す図である。
【
図10】表示面に表示される表示情報のさらに異なる表示例を示す図である。
【
図11】第4実施形態に係る眼科装置の右側面図であって、モニタ部を垂直軸回りに回転自在、かつスライド機構によって測定ヘッドに対して上下に移動自在とし眼科装置である。
【
図12】第5実施形態に係る眼科装置の外観図であって、モニタユニットを本体部に対して着脱自在とした眼科装置であり、(a)はモニタ部を背面に向けたときの右側面図を示し、(b)はモニタ部を被検者側に向けたときの右側面図を示す。
【
図13】第6実施形態に係る眼科装置の斜視図であって、可撓性を有する材質からなるモニタ部を備えた眼科装置である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、この発明の実施の形態を
図1~
図4に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る眼科装置1の外観を示す斜視図である。
図2~
図4は、眼科装置1に対する検者の位置に対応したモニタ部の姿勢を説明するための図である。なお、本明細書を通じて各図に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、
図1における左右方向(X軸正方向が右方向、負方向が左方向)、前後方向(Z軸正方向が後方向、負方向が前方向)及び上下方向(Y軸正方向が上方向、Y軸負方向が下方向)を基準として明細書中の説明を行う。また、被検者側(Z軸負方向)を眼科装置1の正面、被検者と対峙する側(Z軸正方向)を眼科装置1の背面、被検者の右側(X軸正方向)を眼科装置1の右側、被検者の左側(X軸負方向)を眼科装置1の左側と定義する。
【0011】
本実施形態の眼科装置1は、例えば、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などを実行可能であり、他覚測定として、他覚屈折測定、角膜形状測定などを実行可能な眼科装置(オートレフケラトメータ)とすることができる。なお、眼科装置1がこれに限定されるものではなく、眼底撮影装置や、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)装置、眼軸長測定装置、眼圧計等であってもよい。
【0012】
図1~
図4に示すように、本実施の形態に係る眼科装置1は、ベース部2及び測定ヘッド3を有する眼科装置本体Hと、操作ユニット40とを備えている。ベース部2の前方(正面)には顎受け部4が設けられ、この顎受け部4の上部には、この顎受け部4と一体に形成された額当て5が設けられている。本実施の形態に係る眼科装置1の被検者は、眼科装置1の前方(正面)に設けられた椅子等に座った状態で眼科装置1と対峙し、顎受け部4に顎を置き、額当て5に額を当てた状態で検査を受ける。
【0013】
測定ヘッド3内部には、
図2等に破線で示すように、公知の観察・撮影用の光学系6が設けられている。この光学系6により、被検者の前眼部、被検眼の角膜、眼底等が観察・撮影可能である。また、測定ヘッド3の正面には、前眼部照明用の光源が、例えば輪環状に配置されている。この光源は、角膜形状を測定する測定光源としても用いられる。
【0014】
ベース部2には、
図2等に破線で示すように、測定ヘッド3を駆動する公知の駆動機構・駆動回路8が設けられている。駆動機構・駆動回路8の駆動部には、例えば、ステッピングモータが用いられる。
【0015】
ベース部2は、上面にRを有する略円柱形の台座部2aと、測定ヘッド3が載置される上部から台座部2aに向かって次第に小径となる略円錐台形のくびれ部2bとを有している。なお、台座部2aが略円筒形に限定されるものではなく、半円柱形、楕円柱形であってもよいし、角柱形楕円筒形であってもよい。また、くびれ部2bも、略円錐台形に限定されるものではなく、略角錐台形であってもよいし、くびれ部2bを設けなくてもよい。
【0016】
このような構成のベース部2のくびれ部2bの外周に、操作ユニット40が回動自在に取り付けられている。操作ユニット40は、眼科装置1に対して各種の操作指示を入力するための機器である。操作ユニット40は、くびれ部2bに装着される装着部41と、この装着部41から上面がR形の台座部2aの表面に沿って延在する操作板42とを有している。装着部41には、くびれ部2bを挿通する挿通孔41a(
図3(b)参照)が設けられている。操作板42には、操作部としての操作レバー(ジョイスティック)43が設けられている。この構成により、操作ユニット40は、くびれ部2bの中心軸を回転軸として、垂直軸(Y軸)回りであって時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも、360°の方向に回動自在となっている。
【0017】
操作レバー43は、前後左右方向に傾倒及び回動自在に操作板42に設けられている。この操作レバー43の前後左右方向への傾倒操作が、測定ヘッド3の前後左右方向(Z軸方向、X軸方向)への移動操作となる。また、操作レバー43のY軸回りへの回転操作が、測定ヘッド3の上下方向(Y軸方向)への移動操作となる。よって操作レバー43を傾倒操作及び回転操作することにより、被検者の被検眼に適合する位置へと測定ヘッド3をベース部2に対して三次元方向に移動させることができる。
【0018】
また、操作レバー43には、頂部にボタンスイッチ43aが設けられている。このボタンスイッチ43aを押すことで、測定ヘッド3による検眼を開始する。
【0019】
操作ユニット40は、眼科装置本体Hの内部に挿通されたケーブルで電気的に接続され、眼科装置本体Hから操作ユニット40に電力を供給し、かつ互いに通信可能となっている。これにより、操作レバー43の操作に従って、後述する制御回路ユニット13が光学系6や駆動機構・駆動回路8の駆動制御等、眼科装置1の操作を実行できる。なお、操作ユニット40と眼科装置本体Hとを、Wi-Fi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)などの無線通信によって接続し、互いに通信可能としてもよい。また、操作ユニット40に内蔵したバッテリー等から操作ユニット40に電力を供給してもよい。
【0020】
測定ヘッド3は、操作ユニット40の操作レバー43又は後述するモニタ部10の操作ボタンを操作することにより、駆動機構・駆動回路8によりベース部2に対して水平方向つまり前後左右方向(Z軸方向及びX軸方向)、及びこれに垂直な垂直方向つまり上下方向(Y軸方向)に駆動される。これにより、測定ヘッド3はベース部2に対して水平方向及び垂直方向にそれぞれ可動可能に支持されている。
【0021】
測定ヘッド3は、矩形状の箱形の本体部3aと、本体部3aの上方に設けられた頂部9とを有している。頂部9は、本体部3aと分離しており、本体部3aに対して、頂部9の中心を通り水平方向に垂直な垂直軸(Y軸)回りに回動自在に設けられている。本実施形態では、頂部9は、時計回り及び反時計回りで360°方向に回動自在となっているが、これに限定されるものではなく、垂直軸回りであって所望の方向に所望の角度で回動自在とすることができる。頂部9を垂直軸回りに回動させる回動機構は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。なお、本体部3aが矩形状に限定されることもなく、円柱状、曲線形状など、デザインや機能に応じて適宜の形状とすることができる。
【0022】
このような測定ヘッド3の頂部9の一縁に、モニタ部10を支持する支持部11が固定され、この支持部11に水平軸回り(X軸又はZ軸回り)に回動自在にモニタ部10が取付けられている。本実施形態では支持部11は、モニタ部10の背面の上下左右方向の略中央に取付けられているが、取付位置がこれに限定されるものではない。モニタ部10は、液晶ディスプレイからなり、被検眼像と操作ボタンなどが表示されるタッチパネル式の表示面10aを有している。この表示面10aに表示される操作ボタンも、眼科装置1へ操作指示を入力するための操作部として機能する。
【0023】
モニタ部10は、カバー部材12によって被覆されている。カバー部材12には、眼科装置1の動作を制御する制御回路ユニット13などが内蔵されている。制御回路ユニット13は、表示制御部としても機能し、表示面10aへ被検眼像や操作ボタンなどの画像を編集して、表示面10aに表示する。
【0024】
また、制御回路ユニット13は、検者による操作レバー43の傾倒操作を検出する。そして、傾倒操作による検者の指示に応じて、駆動機構・駆動回路8を制御し、被検眼に対して測定ヘッド3を水平方向及び垂直方向に移動させる。また、ボタンスイッチ43aの押下による検者の指示に応じて、光学系6を制御して、被検眼の観察や撮影を行う。
【0025】
また、制御回路ユニット13は、検者による表示面10aの操作ボタンへのタッチ操作を検出し、このタッチ操作による検者の指示に応じて、測定ヘッド3の移動及び光学系6による被検眼の観察や撮影を実行してもよい。
【0026】
本実施の形態の支持部11は、モニタ部10を支持する機能の他に、モニタ部10を水平軸周りに回動させる水平軸回動機構としての機能も有している。支持部11は、
図2(a)等に示すように、モニタ部10の裏面のカバー部材12に設けられた円筒部(基部)11aと、頂部9の一縁にモニタ部10に向けて斜め方向に突出した一対の支持アーム11bと、この一対の支持アーム11bと円筒部11aとに挿通された水平軸11cとから構成される。この構成により、
図2(a)にA又はB方向の矢印で示すように、モニタ部10が水平軸11cを回転軸として水平軸回りに回動し、モニタ部10(表示面10a)の上下の向きを任意に変更することができる。
【0027】
水平軸回動機構は、モニタ部10を水平軸回りに回動でき、かつ回動力を調節して、所望の回動位置でのモニタ部10の姿勢を維持できる構成であれば、本実施の形態の構成に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。
【0028】
モニタ部10を水平軸回りに回動するときは、例えば、検者がモニタ部10を保持して手動で行うことができる。しかしながら、手動に限定されるものではなく、表示面10aに表示された操作ボタンの操作などに従って、公知の駆動機構により自動で行うようにすることもできる。
【0029】
また、モニタ部10を、頂部9を介して垂直軸回りへ回動させるときも、検者がモニタ部10又は頂部9を保持して手動で行うことができる。また、表示面10aに表示された操作ボタンの操作などに従って、駆動機構・駆動回路8によって自動で行うようにすることもできる。
【0030】
なお、本実施の形態では、
図2(a)に示すように、モニタ部10の向きを、水平状態から垂直状態まで、約90°の範囲で回転させることができる。また、この範囲で回動させても、表示面10aが逆さまになることはなく、特許文献2の従来技術のように、フォトセンサなどでモニタ部10の向きを検出する必要や、表示情報を上下左右反転させて表示する必要がない。そのため、制御回路ユニット13の制御動作や、眼科装置1の構成をより簡易にすることができる。
【0031】
また、モニタ部10と測定ヘッド3とは、測定ヘッド3の内部に挿通されたケーブルで電気的に接続され、互いに通信可能となっている。これにより、モニタ部10での操作ボタン(操作部)のタッチ操作に従って、制御回路ユニット13が光学系6や駆動機構・駆動回路8を駆動制御したり、光学系6からの被検眼像を表示面10aに表示したりすることができる。なお、モニタ部10と測定ヘッド3とを、Wi-Fi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)などの無線通信によって接続し、互いに通信可能としてもよい。
【0032】
次に、上述のような構成の眼科装置1を用いて、被検眼の検査をするときのモニタ部10の姿勢の制御について、
図1~
図4を参照しながら説明する。まず、検者が被検者と対峙する位置、つまり眼科装置1の背面側に位置して検査を行う場合は、頂部9を介してモニタ部10を垂直軸回りに回動し、
図1、
図2に示すように、モニタ部10を眼科装置1の背面側に配置し、表示面10aを背面側に向ける。
【0033】
そして、このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させ、操作レバー43を表示面10aが向く方向と同じ方向(背面側)に配置する。なお、モニタ部10の表示面10aと操作レバー43のような操作部を「同じ方向に配置する」とは、ほぼ同じ方向であればよく厳密に同じ角度で配置する必要はない。操作ユニット40の回動は、例えば手動で行うが、自動で行う構成としてもよい。
【0034】
このようなモニタ部10及び操作レバー43の姿勢によって、検者は被検者と対峙して座った状態で、モニタ部10を視認しながら操作レバー43及びタッチパネルの操作ボタンを操作して、測定ヘッド3の移動や測定作業を行うことができる。さらに、モニタ部10が水平軸回り(
図1、
図2の場合はX軸回り)に回動自在であるため、検者は視認や操作がし易くなるように、モニタ部10及びその表示面10aの向きを任意に変更することができる。
【0035】
例えば、検者が立って測定作業を行う場合や、座高の高い検者の場合は、モニタ部10を水平軸回りで
図2(a)のA方向に回動することで、モニタ部10を水平又はより水平に近い上向きの姿勢で配置することができる。一方、検者が座って測定作業を行う場合や、座高の低い検者の場合は、モニタ部10を水平軸回りで
図2(a)のB方向に回動することで、
図2(a)の仮想線又は
図2(b)に示すように、モニタ部10を垂直又はより垂直に近い横向きの姿勢で配置することができる。いずれの場合でも、検者の目線の高さに合わせてモニタ部10の向きを調整することができ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の姿勢の自由度を高めることができる。その結果、検者の姿勢の自由度や操作ボタン等の操作性も向上し、測定効率を向上させることができる。なお、モニタ部10を水平に配置したときは、モニタ部10の上面に、処方箋等の軽い書類を載せておくような使い方もできる。
【0036】
次に、検者が被検者に寄り添って、眼科装置1の正面側から検査を行う場合は、
図3(a)、
図3(b)に示すように、頂部9を介してモニタ部10を垂直軸回りに回動して、眼科装置1の正面側に配置し、表示面10aが正面側を向くようにする。また、このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させて、操作レバー43を前方(被検者側)に配置する。このとき、操作レバー43を
図2の配置に対して180°反対側ではなく、
図3(b)に示すように180度よりも少ない角度(90°以上180°未満)で時計回りに回動させ、Z軸に対して手前方向に斜めに配置することで、操作レバー43が被検者で隠れることなく、かつ検者の右手に近い位置で操作レバー43を操作できる。なお、検者が左利きの場合等は、操作ユニット40を反時計回りに回動して、検者の左手側に操作レバー43を配置することもできる。
【0037】
以上の操作により、検者は被検者の後ろで、被検者を補助し、かつモニタ部10を視認しながら、操作レバー43やモニタ部10の操作ボタンを操作して測定作業等を行うことができる。また、水平軸回りに回動することで、検者の姿勢や身長などに応じて、視認や操作がし易い向きにモニタ部10を配置することができる。したがって、検者の姿勢の自由度、表示面10aの視認性、操作レバー43や操作ボタンの操作性が向上し、測定効率を向上させることができる。
【0038】
また、検者が眼科装置1の右側又は左側に位置して検査を行う場合について説明する。このような状況としては、例えば、眼科装置1を室内の隅部の壁に沿って設置して、眼科装置1の背面側から被検者と対峙して検査できない場合などが挙げられる。検者が眼科装置1の右側から検査を行う場合は、
図4(a)、
図4(b)に示すように、頂部9を介してモニタ部10を垂直軸回りに回動し、モニタ部10を右側(X軸正方向)に配置する。このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動し、操作レバー43をモニタ部10と同じ位置(右側)に配置する。次に、モニタ部10を水平軸回り(この場合は、Z軸回り)に回動し、
図4(a)、
図4(b)に実線又は仮想線で示すように、検者の姿勢や身長などに応じてモニタ部10の向きを垂直、斜め、水平の所望の向きに配置することができる。
【0039】
一方、検者が被検者の眼科装置1の左側から検査を行う場合は、垂直軸回りであって
図4の場合とは反対方向にモニタ部10を回動し、モニタ部10を左側(X軸負方向)に配置する。又はモニタ部10を
図4の場合と同じ方向に回動させてもよい。このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動し、操作レバー43をモニタ部10と同じ位置(左側)に配置する。本実施形態では、モニタ部10(及び頂部9)並びに操作ユニット40を、時計回り又は反時計回りで360°方向に自在に回動できるので、所望の方向へモニタ部10及び操作ユニット40を回動して、所望の位置であって、表示面10aと操作レバー43とが垂直軸回りのほぼ同じ方向に向くように配置することができる。次いでモニタ部10を水平軸回りに回動して、モニタ部10の向きを所望の角度に調節する。
【0040】
これにより、検者は眼科装置1の右側又は左側で、モニタ部10の視認や操作並びに操作レバー43の操作を容易に行いながら測定作業を行うことができる。この場合、検者の位置が被検者に近くなるため、被検者を補助しながら測定作業を行うこともできる。したがって、検者の姿勢の自由度、表示面10aの視認性、操作レバー43や操作ボタンの操作性が向上し、さらに被検者への補助によって測定エラー等を防止することができ、測定効率や測定精度をより向上させることができる。
【0041】
以上、第1実施形態によれば、測定ヘッド3とモニタ部10との一体化を図った場合でも、モニタ部10の位置変更作業の効率化を図りつつ、眼科装置本体Hに対するモニタ部10の位置、向き等の姿勢の自由度の向上を図ることができる。このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、表示面10aが向く方向であって検者の手元側に、操作部としての操作レバー43を配置できる。このとき、表示面10aに表示される操作ボタンも表示面10aと同一方向に向いている。その結果、検者の姿勢の自由度が高く、モニタ部10の視認性と、操作レバー43や操作ボタン等の操作部の操作性に優れ、しかも簡易な構成の眼科装置1を提供することができる。
【0042】
また、例えば、モニタ部10の端部を支持する構成では、モニタ部10を水平軸回りに回動したときに、支持部11とは反対側のモニタ部10の端部が、モニタ部10の上下の長さ分の半径の円を描いて回動する。これに対して、第1実施形態では、支持部11は、モニタ部10の上下方向の中央近傍を支持する構成である。この構成により、モニタ部10の回動半径がモニタ部10の長さの半分となり、回動軌跡を小さくすることができ、眼科装置1の周囲に広い空間を持たせる必要がなく、設置の自由度等も向上する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る眼科装置1Aについて、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5、
図6に示す第2実施形態の眼科装置1Aは、
図1~
図4に示す第1実施形態の眼科装置1と同様の基本構成を備え、さらに、モニタ部10を上下に移動自在とする上下動機構としてのスライド機構14を備えている。そのため、第1実施形態と同じ構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、詳細な説明は省略し、以下では第1実施形態と異なる構成であるスライド機構14について主に説明する。
【0044】
スライド機構14として、本実施形態では、モニタ部10の裏面に上下方向に延在する凹部14aを設け、この凹部14aの両端に、レール状の一対の凹溝14bを設けている。このような凹部14a内に、スライダ部材15が上下動自在に装着されている。スライダ部材15の両端は、一対の凹溝14b内に係合され、スライダ部材15の上下の移動を可能としつつ、スライダ部材15の凹部14aからの脱落を防止している。
【0045】
スライダ部材15には円筒部11aが固定され、この円筒部11aと頂部9に固定された支持アーム11bに水平軸11cを挿通することで、スライダ部材15を水平軸回りに回動自在に支持アーム11bに取付けている。このような構成の支持部11及びスライド機構14により、モニタ部10が頂部9に対して水平軸回りに回動自在かつ、上下に移動自在となっている。
【0046】
スライダ部材15は、凹部14a内を上下に自在に移動し、かつ所望の移動先で停止した状態を保つことができるように構成されている。例えば、スライダ部材15と凹溝14bとの摩擦力によって停止状態を保つものであってもよいし、凹溝14b内にスライダ部材15を係合する段部などを設けた構成としてもよい。また、他の異なる構成として、カバー部材12の外側にレール部材を突設してもよい。また、上下動機構が本実施の形態のスライド機構14に限定されるものではなく、ピニオンギアとラックレールとで構成してもよいし、ベルトコンベアなどによって構成してもよい。
【0047】
以上のような構成の第2実施形態の眼科装置1Aでも、頂部9を介してモニタ部10を手動又は自動で垂直軸回りに回動することで、検者の位置に応じて、眼科装置1Aの背面側、正面側、右側、左側の所望の位置にモニタ部10を配置することができる。このモニタ部10の垂直軸回りの回動に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動し、表示面10aの向きと同じ方向に向くように操作レバー43を配置できる。また、それぞれの位置で、モニタ部10を手動又は自動で水平軸回りに回動することで、所望の向きにモニタ部10を配置することができる。よって、検者は所望の位置でモニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタンを容易に操作して、測定作業を効率的に行える。
【0048】
さらにこの第2実施形態の眼科装置1Aでは、スライド機構14によってモニタ部10を手動又は自動で上下に自在に移動させて、検者の姿勢や目線の高さに応じて、モニタ部10の高さ調節も自在に行うことができる。したがって、測定ヘッド3とこれを操作するモニタ部10とが一体の場合でも、モニタ部10の姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の位置の自由度の向上を図ることができ、簡易な構成の眼科装置1Aを提供できる。また、モニタ部10の表示面10aが向く方向に操作レバー43を配置できる。そのため、検者の姿勢の自由度、モニタ部10の視認性と、操作レバー43や操作ボタン等の操作部の操作性が向上し、測定効率を向上できる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、第2実施形態に係る眼科装置1Bについて、
図7~
図10を参照しながら説明する。
図7に示す第3実施形態の眼科装置1Bは、制御回路ユニット13の機能が異なること以外は、第2実施形態と同じ基本構成を備えている。そのため、以下では第2実施形態と異なる制御回路ユニット13の機能について説明し、第3実施形態の眼科装置1Bの各構成部材の詳細な説明は省略する。
【0050】
第3実施形態の眼科装置1Bでは、制御回路ユニット13が、第2実施形態等と同様の機能の他に、モニタ部10の水平軸回りの回動状態に応じて、モニタ部10への表示内容を上下方向に反転させて表示する機能を備えている。さらに、制御回路ユニット13は、モニタ部10とモニタ部10の操作ボタンの操作者である検者との距離その他の位置関係に応じて、モニタ部10への表示内容の表示倍率を変更する機能を備えている。
【0051】
以下、制御回路ユニット13によるモニタ部10への表示内容の上下反転制御と、表示倍率の変更制御について、
図7の眼科装置1Bの右側面図及び
図8の表示面10aへの表示情報の表示例を参照しながら、具体的に説明する。
【0052】
制御回路ユニット13は、例えば、
図8の上図に示すように、被検眼像等表示領域20と操作ボタン表示領域21とを有する画面を編集して表示面10aに表示する。被検眼像等表示領域20には、光学系6が備える撮像部で撮影された前眼部、眼底部等の被検眼像が表示される。
【0053】
操作ボタン表示領域21は、操作部としての各種操作ボタンが表示される領域であり、表示面10aに向かって左側に左側表示領域21aを有し、右側に右側表示領域21bを有し、下方に下側表示領域21cを有している。左側表示領域21aには、患者の登録用のキーボードボタンB1、右眼選択用のRボタンB2、顎受け部4の上下動用の顎受け上下動ボタンB3、測定モード切り替え用の測定モードボタンB4が配置されている。右側表示領域21bには、セットアップ画面の表示用のセットアップボタンB5、左眼選択用のLボタンB6、測定ヘッド3を前後動させる測定ヘッド前後ボタン(Z方向ボタン)B7、マニュアルモード時の測定用スタートボタンB8、マニュアル・オート切り替えボタンB9等が配置されている。
【0054】
下側表示領域21cには、白内障等がある場合に用いる白内障ボタンB10、測定ターゲット表示用のターゲット像ボタンB11、角膜直径測定用の角膜直径ボタンB12、測定結果のプリントアウト用のプリントボタンB13、屈折状態示す図形のプリントアウト用のグラフィックプリントボタンB14、観察像の表示用の観察像表示ボタンB15、全測定値のクリア用の全測定値クリアボタンB16、表示画像の上下反転用の上下反転ボタンB17が配置されている。
【0055】
上述のような各種ボタンをタッチパネル上でタッチ操作することで、眼科装置1を動作させることができる。また、モニタ部10を手動又は自動で垂直軸回りに回動させることで、第1、第2実施形態と同様に、所望の位置でのモニタ部10の視認や操作が可能となる。また、このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させることで、表示面10aが向く方向に操作ユニット40を配置できる。
【0056】
検者が被検者の背後から検眼を行う際に、眼科装置1のサイズや眼科装置1に対する被検者の頭部の位置関係等の要因で、
図3(a)に示すように被検者側にモニタ部10を配置することが困難な場合がある。このような場合、
図7に示すように、被検者とは反対側にモニタ部10を配置した状態で、スライド機構14によって測定ヘッドに対してモニタ部10を下方向に移動し、さらに表示面10aが被検者側を向くように水平軸回りに回動させる。次いで、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させ、表示面10aが向く方向に操作ユニット40を配置する。
図7の例では、Z軸に対して手前方向に斜めに配置して、被検者の後方から検者が操作レバー43を操作し易くしている。これにより、モニタ部10及び操作レバー43並びにモニタ部10に表示される表示ボタンが被検者側を向き、検者が被検者の背後からモニタ部10の表示面10aを視認しつつ、操作レバー43や操作ボタンを容易に操作することが可能となる。
【0057】
なお、
図7のモニタ部10の配置状態では、水平軸回りへの回動前に対してモニタ部10が上下逆さまとなり、表示面10aへの表示情報も上下逆さまに表示され、検者が表示情報の視認や操作が行いにくくなる。これを解消するため、第3実施形態では、検者が表示面10aの上下反転ボタンB17をタッチ操作すると、この操作を受け付けた制御回路ユニット13が、表示情報を上下反転させて表示面10aに表示する。その結果、
図7に示すモニタ部10の姿勢のときの表示面10aは、
図8に示す水平軸回りへの回動前の姿勢のときの表示面10aと見た目上、同じとなる。したがって、検者は表示面10aの表示情報を容易に視認したり操作したりすることができる。
【0058】
また、
図7に示す姿勢のモニタ部10を、被検者の背後から検者が視認や操作する場合、モニタ部10と検者との距離によっては、通常の表示倍率では視認や操作がしにくい場合がある。これを解消すべく、第3実施形態では表示面10aへの表示情報の表示倍率を変更することができる。例えば、表示面10aの所定箇所のタッチ操作や領域指定に応じて、所定の画像の拡大表示や縮小表示をする構成することができる。
【0059】
この表示倍率の変更は、被検眼の画像を画像処理によって行ってもよい。また、光学系6の撮像部を制御して、その撮影範囲や撮影倍率を変更し、変更後に取得された撮影画像を表示面10aに表示することで行ってもよい。
【0060】
例えば、検者が被検者の背後から測定する場合、被検者の実際の眼の状態を確認しにくく、被検者が適切な方向を視認しているか等を把握しにくい。この場合、
図8の上図のような前眼部だけの像では、被検眼の状態は把握しにくい。この場合、表示面10aの所定の箇所、例えば、
図8の上図に示すように、被検眼像等表示領域20をタッチ操作する。この操作により、
図8の下図に示すように、前眼部の像の表示倍率が縮小されて、被検眼の周辺を含む像が表示される。この画像を視認することで、検者は被検眼の状態を明確に確認できる。また、前眼部の像を拡大表示することで、検者は被検眼の白内障の状態等を詳細に観察することができる。
【0061】
また、
図9に、患者の登録用のキーボードボタンB1がタッチ操作されたときの表示面10aの表示例を示す。キーボードボタンB1がタッチ操作されると、
図9の上図に示すように被検眼像等表示領域20にキーボードの画像が表示される。モニタ部10と検者との距離が近い場合は、このキーボード画像をタッチ操作することができるが、
図7に示す姿勢のモニタ部10で検者との距離が近い場合は、キーの視認や操作が行いにくい場合がある。この場合、キーボードのキー以外の箇所をタッチ操作することで、
図9の下図のように、被検眼像等表示領域20全体にキーボードの画像が拡大表示され、視認性や操作性が向上する。よって、検者は容易にキーボードを操作することができ、作業性を向上させることができる。
【0062】
また、
図10に、眼科装置1がOCT装置であった場合に表示面10aに表示される画面例を示す。この
図10の中央図に示す画面は、前眼部のステレオ画像30a、瞳孔検知マーク30b、眼底移動ボタン30c、測定ヘッド前後ボタン30d等が表示される前眼部像等表示領域30と、眼底像や前眼部像のライブ映像31a、スキャンパターン31b等が表示される眼底像等表示領域31と、小瞳孔絞りや内部固視標等の変更用の操作ボタン32aが表示される操作ボタン表示領域32と、断層像のライブ映像33a、Zロック位置の変更用のバー33b等が表示される断層像ライブ映像領域33とを有している。
【0063】
この中央の画面において、前眼部像等表示領域30をタッチ操作すると、
図10の上図のように、ステレオ画像30a等が表示面10aに拡大表示される。検者は、拡大表示されたステレオ画像30aや瞳孔検知マーク30bを視認しながら、拡大表示された各種ボタン30c,30dを容易に操作することができる。また、眼底像等表示領域31をタッチ操作すると、
図10の左図のように、眼底像等のライブ映像31aやその上に重畳されたスキャンパターン31b等が表示面10aに拡大表示される。検者は、眼底像等を詳細に観察することができる。また、この画面の下方に、スキャンパターンの例を図示した。
図10の中央の画面では、ライブ映像31aが小さく、その上に重畳されたスキャンパターンを視認等しにくいが、
図10の左図のように拡大表示することで、これらをより明確に確認することができる。
【0064】
また、操作ボタン表示領域32をクリック操作することで、
図10の下図のように、操作ボタンが表示面10aに拡大表示されるため、操作ボタンの視認性や操作性が向上する。また、断層像ライブ映像領域33をクリック操作することで、
図10の右図のように、断層像のライブ映像が表示面10aに拡大表示される。これにより、断層像等をより明確に観察することができるとともに、バー33bの視認性や操作性も向上する。
【0065】
以上説明したように、第3実施形態の眼科装置1Bでも、第1、第2実施形態の眼科装置1,1Aと同様の作用効果を得ることができる。さらに、第3実施形態では、モニタ部10の姿勢に応じて、モニタ部10への表示情報の内容を変更する表示制御部(制御回路ユニット13)を備えている。この構成により、モニタ部10の視認性及び操作性をより向上させることができる。ここで、姿勢とは、例えばモニタ部10の垂直軸回りや水平軸回りの回動状態等である。表示情報の内容の変更とは、アイコンの拡縮表示や使用頻度の低いアイコンの省略、レイアウトの変更、表示情報の上下左右の反転、表示倍率の変更等が挙げられる。
【0066】
第3実施形態では、表示制御部(制御回路ユニット13)が、モニタ部10の水平軸回りの回動状態に応じて、モニタ部10への表示情報を上下方向に反転させて表示している。これにより、モニタ部10が上下逆さになった場合でも、検者に対して上下方向において正しい配置の画像が表示面10aに表示され、視認及び操作性を向上させることができる。また、モニタ部10の水平軸回りの回動状態に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させることで、モニタ部10の表示面10aが向く方向であって、検者の手元側に操作レバー43を配置できる。
【0067】
また、第3実施形態では、表示制御部(制御回路ユニット13)がモニタ部10と操作ボタンの操作者(検者)との位置関係に応じてモニタ部10への表示倍率を変更している。この構成により、前眼部の像や操作ボタン等、所望の画像を拡縮して表示することができ、モニタ部10の表示情報の視認性や操作性をより向上させることができ、測定効率や測定性能をより向上させることができる。なお、上下反転や表示倍率の変更等の表示情報の変更を適用する画面が、
図8~
図10の表示例に限定されるものではなく、被検眼の測定に係る様々な画面に適用することができる。
【0068】
(変形例)
以下、第3実施形態の変形例を説明する。第3実施形態では、タッチパネルのタッチ操作に応じて、モニタ部10への表示情報の上下反転や、表示倍率の変更を行っている。これに対して、変形例では
図7に破線で示すように、モニタ部10の姿勢(ここでは水平軸回りの回動状態)を検出する検出部16をモニタ部10に設けている。この検出部16による検出結果に応じて、制御回路ユニット13の制御により、自動でモニタ部10への表示情報の上下反転や表示倍率の変更を行う構成としている。なお、検出部16が、垂直軸回りの回動状態も検出し、垂直軸回り及び水平軸回りの回動状態の検出結果に基づいて、左右反転、アイコン等の拡縮表示や省略、レイアウト変更等を行うものであってもよい。検出部16は、例えば、ジャイロセンサ等の角速度センサ、加速度センサ等が好適に用いられる。また、フォトセンサ等を用いてもよい。
【0069】
変形例の眼科装置では、制御回路ユニット13は、検出部16で検出したモニタ部10の姿勢に応じて、表示情報の見た目上の位置や方向を調整して、表示面10aに表示する。したがって、検者がタッチパネル操作をしなくても、自動でモニタ部10の姿勢に応じた好適な表示情報の表示が可能となり、より使い勝手のよい眼科装置を提供できる。また、一対の支持アーム11bを適宜長くする等、支持部11の構成を変えることで、モニタ部10の傾斜角度をより拡げることができ、検者が視認し易い角度にモニタ部10の角度を調整することができる。
【0070】
また、第1実施形態、第2実施形態及び後述の実施形態の眼科装置1~1Eでも、機種に応じて
図8~
図10に示すような表示情報を表示面10aに表示してもよい。この場合も、表示面10aのタッチ操作等に従って、所定の表示情報を拡大又は縮小表示する構成とすれば、視認性や操作性をより向上させることができる。第1、第2実施形態では、表示画像の上下反転を行わない仕様としているので、上下反転ボタンB17を設けたり、上下反転の制御を行ったりしなくてもよく、構成がより簡易である。しかしながら、第1実施形態でも上下反転可能な構成とすれば、例えば、
図2(a)のようにモニタ部10を水平にした状態で、検者が被検者の側からモニタ部10を操作するときに、検者が視認や操作が行い易くなる。そして、このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を移動させて、表示面10aが向く方向に操作レバー43を配置することで、検者は所望の位置でモニタ部10の視認しつつ、手元側で操作レバー43を容易に操作できる。
【0071】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る眼科装置1Cについて、
図11を参照しながら説明する。
図11に示す第4実施形態の眼科装置1Cは、眼科装置本体Hへのモニタ部10の取り付け構造が異なること以外は、第1実施形態と同じ基本構成を備えている。
【0072】
上記第1実施形態等では、頂部9自体が垂直軸回りに回動することで支持部11及びモニタ部10が垂直軸回りに回動自在となっている。これに対して、
図11に示す第4実施形態では、頂部9が回動不能に本体部3aに固定され、この頂部9に対して支持部11が適宜の回動手段によって手動又は自動で垂直軸回りに回動自在に構成され、この支持部11の先端にモニタ部10が取付けられている。また、モニタ部10は、例えば、
図5等に示す第2実施形態の眼科装置1Aのスライド機構14のような上下動機構を有し、手動又は自動で支持部11に対して相対的に上下動自在となっている。
【0073】
以上の構成の第4実施形態の眼科装置1Cによれば、モニタ部10を手動又は自動で垂直軸回りに回動させて、所望の方向に向けることができ、さらに上下動機構によって所望の高さにモニタ部10を配置できる。そして、このモニタ部10の姿勢に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させることで、表示面10aが向く方向であって、検者の手元側に操作レバー43を配置することができる。よって、検者は所望の位置でモニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタンを容易に操作して、測定作業を効率的に行える。
【0074】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る眼科装置1Dについて、
図12(a)、
図12(b)を参照しながら説明する。これらの図に示す第5実施形態の眼科装置1Cは、モニタ部10と、このモニタ部10を垂直軸回り及び水平軸回りに回動自在に支持する支持部11とが、本体部に対して着脱自在に構成されている。モニタ部10は、
図12(a)のような背面の位置に配置し、支持部11を介して垂直軸回りに回動させることで、モニタ部10を左右方向から背面側まで所望の位置に配置できる。また、モニタ部10を水平軸回りに回動することで、モニタ部10の上下方向の向きを変更できる。さらに、
図12(b)に示すように、モニタ部10の表示面10aを被検者の方向(つまり被検者の背後に位置する検者の方向)に向けることができる。また、モニタ部10を眼科装置本体Hから取り外して、仮想線で示すように、頂部9の所望の位置に取り付けることで、被検者側に位置する検者により近い位置にモニタ部10を配置でき、視認性を向上させることができる。また、モニタ部10を着脱自在としたことで、モニタ部10をベース部2に取り付けたり、額当て5等に取り付けたりすることも可能である。モニタ部10の姿勢の変更は、自動であってもよいし、手動であってもよい。
【0075】
以上の構成の第5実施形態の眼科装置1Dによれば、着脱自在なモニタ部10とすることで、眼科装置1Dのいずれの場所にもモニタ部10を取り付けられる。さらに、モニタ部10を垂直軸回り及び水平軸回りに回動させることで、モニタ部10の表示面10aを所望の方向に向けることができる。そして、このモニタ部10の姿勢の変更に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させることで、表示面10aが向く方向であって、検者の手元側に操作レバー43を配置できる。よって、検者は所望の位置でモニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタンを容易に操作して、測定作業を効率的に行える。なお、
図12のような基本構成を備え、モニタ部10の姿勢が変更できるが、本体部から着脱できない構成の他の異なる眼科装置であっても、モニタ部10の姿勢の変更に応じて移動可能な操作ユニット40を設けることで、モニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタンを容易に操作して、測定作業を効率的に行える。
【0076】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る眼科装置1Eについて、
図13を参照しながら説明する。
図3に示す第5実施形態の眼科装置1Eは、モニタ部10の支持部11が中空の箱状に形成され、この支持部11の側面に沿って垂直軸回りに回動自在に、モニタ部10が設けられている。このモニタ部10は、いわゆるフレキシブルディスプレイから構成されているが、これに限定されるものではなく可撓性を有するものであればよい。
【0077】
以上の構成の第6実施形態の眼科装置1Eによれば、可撓性を有するモニタ部10を、手動又は自動で垂直軸回りに回動することで、所望の向きにモニタ部10を配置できる。そして、このモニタ部10に応じて、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させることで、表示面10aが向く方向であって、検者の手元側に操作レバー43を配置することができる。よって、検者は所望の位置でモニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタンを容易に操作して、測定作業を効率的に行える。
【0078】
以上、本発明の眼科装置を実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
例えば、上記第3実施形態では、被検眼像や操作ボタンの表示倍率を変更し、表示倍率が変更された被検眼像又は操作ボタンのみを表示面10aに表示しているが、このような表示に限定されるものではない。他の例として、指定された操作ボタンをポップアップ形式で拡大して、被検眼像や操作ボタンの画像に重畳して表示してもよい。
【0080】
また、上記第3実施形態では、モニタ部10の水平軸回りの回動に応じて、モニタ部10への表示情報を上下方向に反転させているが、さらに、モニタ部10の垂直軸回りの回動に応じて、モニタ部10への表示情報を左右方向に反転させて表示してもよい。例えば、モニタ部10を眼科装置1の左側へ配置した場合、
図8に示す顎受け上下動ボタンB3と測定ヘッド前後ボタンB7を左右入れ替えて表示すれば、顎受け部4に近い側に顎受け上下動ボタンB3を配置することができ、左右側にモニタ部10を配置したときの視認性や操作性をより向上させることができる。この場合も、所定の操作ボタンの操作によって、表示情報を左右反転させるものであってもよいし、垂直軸回りへのモニタ部10の回動を検出部で検出して、自動で表示情報を左右反転させてもよい。
【0081】
このとき、操作レバー43の操作方向の前後左右も、操作レバー43と眼科装置本体Hの位置関係に応じて変更するように制御してもよい。すなわち、眼科装置本体Hの背面側に操作レバー43が位置するときと、前方側に操作レバー43が位置するときで、前後方向と左右方向とを入れ替えてもよい。また、表示面10aへの表示情報を上下反転又は左右反転して表示するか否か、表示情報を拡大又は縮小して表示するか否か、操作レバー43の操作方向を入れ替えるか否かは、操作ボタン等によって検者が選択できるようにしてもよいし、眼科装置本体Hに予め設定されたモードに応じて実行してもよい。
【0082】
また、上記第1~第6実施形態では、手動又は表示面10aに表示された操作ボタンの操作によって、モニタ部10を垂直軸回り又は水平軸回りに回動しているが、これに限定されるものではない。例えば、カメラでの撮影画像やセンサで検者の位置を検出して、この検出結果に応じて、駆動機構・駆動回路8によって自動でモニタ部10を垂直軸回りや水平軸回りに回動してもよい。さらには、この回動状態や検者とモニタ部10との位置関係に応じて、モニタ部10への表示情報の上下左右の反転、表示倍率の変更等を行ってもよい。
【0083】
さらに、操作ユニット40を垂直軸回りに回動させる駆動機構を設けてもよい。そして、上記モニタ部10の自動(又は手動でもよい)での姿勢の変更に応じて、駆動機構を駆動して、操作ユニット40を自動で垂直軸回りに回動させ、モニタ部10の向きに応じた位置に配置する構成としてもよい。これにより、眼科装置1~1Eに対する検者の位置に応じて、自動でモニタ部10及び操作ユニット40を検者の方向に向くように移動させることができ、検者の手数を省き、より好適な測定が可能となる。
【0084】
また、上記各実施形態では、モニタ部10を被覆するカバー部材12に、眼科装置1の動作を制御する制御回路ユニット13が内蔵され、この制御回路ユニット13がモニタ部10の表示制御部としても機能しているが、この構成に限定されるものではない。他の異なる実施形態として、例えば、制御回路ユニット13を本体部3aに内蔵し、この制御回路ユニット13と別個に、モニタ部10側(カバー部材12内)に設けてもよい。そして制御回路ユニット13からの表示制御信号に従って、表示制御部が表示面10aへ画像を表示し、表示面10aの操作ボタンへのタッチ操作を検出して制御回路ユニット13にその操作信号を送信する構成としてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、操作ユニット40に操作レバー43を設けているが、この構成に限定されるものではない。例えば、
図14に示す変形例の操作ユニット40Aは、操作板42に、操作レバー43を設け、この操作レバー43の左側に、例えば、顎受け部4を上下動させる顎受移動ボタン、光学系の固視標を操作するための固視標調整ボタン等の操作ボタン44を設け、操作レバー43の右側に、例えば、測定ヘッド3の位置調整を行う回転ノブ45を設けている。このような構成の操作ユニット40Aによっても、モニタ部10の姿勢の変更に応じて、モニタ部10が向く方向に操作ユニット40Aを自動又は手動で移動させることで、検者は所望の位置でモニタ部10を視認しつつ、手元で操作レバー43や操作ボタン44、回転ノブ45等を容易に操作して、測定作業を効率的に行える。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D,1E 眼科装置 2 ベース部 3 測定ヘッド
8 駆動機構・駆動回路 9 頂部 10 モニタ部 10a 表示面
11 支持部 13 制御回路ユニット(制御部) 16 検出部
H 眼科装置本体