(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ガラス回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20230215BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20230215BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20230215BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230215BHJP
H05K 3/42 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01L21/88 J
H01L23/12 Z
H05K3/42 630A
(21)【出願番号】P 2019045471
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬介
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160607(JP,A)
【文献】特開2003-060350(JP,A)
【文献】特開2005-064451(JP,A)
【文献】特開2012-060100(JP,A)
【文献】特開2006-049804(JP,A)
【文献】特開2006-339350(JP,A)
【文献】特開2016-096262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/60-21/607
H01L 21/768
H01L 23/12-23/15
H01L 23/48-23/50
H01L 23/52-23/538
H05K 3/18
H05K 3/40-3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板のガラス表面にパターン配線を形成してなるガラス回路基板の製造方法であって、
ガラス基板にスルーホールを形成し、
ガラス基板の表面に絶縁材料でトレンチ配線部を形成するためのトレンチ配線パターンを形成し、
スルーホールおよびトレンチ配線パターンを形成したガラス基板にシードめっきを施し、
シードめっき上にスルーホールめっきを施し、
スルーホールめっきを施したスルーホールに樹脂を埋めて穴埋めを実施し、
穴埋め樹脂を部分除去し、
穴埋め樹脂を部分除去したガラス基板の表面に蓋めっきを施し、
蓋めっきおよびスルーホールめっきの部分と絶縁材料からなるトレンチ配線パターンの一部を機械加工で研磨し、スルーホールめっき部およびトレンチ配線部からなるパターン配線を形成する。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス回路基板の製造方法であって、
前記機械加工が、グラインダまたは切削バイトによる機械加工である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板のガラス表面にパターン配線を形成してなるガラス回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板のガラス表面、例えば表裏の両面にパターン配線を形成してなるガラス回路基板が知られている。このようなガラス回路基板を製造する場合、表裏両面のパターン配線の導通をとるために貫通スルーホールをガラス基板に設け、貫通スルーホールを銅などの金属でめっきする必要がある。この場合、その後にSAP等で配線形成の場合、ガラス表面に残っためっき金属を除去することが必要となる。また、パターン配線の上の保護膜を除去することが必要になる。ガラス基板に対する上記のような処理は、下地のガラス基板にダメージを与えないように、CMP(化学機械研磨)により行うことが通常である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CMPを実施する設備は高価であり、また、CMPで用いる研磨剤等は高コストであった。そのため、CMPを実施するガラス回路基板の製造方法では、設備の投資やランニングコストが高くなる問題があった。また、CMPによる研磨を行っているため、ガラス回路基板の製造にかかる時間が長くなる問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るガラス回路基板の製造方法は、ガラス基板のガラス表面にパターン配線を形成してなるガラス回路基板の製造方法であって、ガラス基板にスルーホールを形成し、ガラス基板の表面に絶縁材料でトレンチ配線部を形成するためのトレンチ配線パターンを形成し、スルーホールおよびトレンチ配線パターンを形成したガラス基板にシードめっきを施し、シードめっき上にスルーホールめっきを施し、スルーホールめっきを施したスルーホールに樹脂を埋めて穴埋めを実施し、穴埋め樹脂を部分除去し、穴埋め樹脂を部分除去したガラス基板の表面に蓋めっきを施し、蓋めっきおよびスルーホールめっきの部分と絶縁材料からなるトレンチ配線パターンの一部を機械加工で研磨し、スルーホールめっき部およびトレンチ配線部からなるパターン配線を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、スルーホールと配線が同時に形成されるため、研磨対象が蓋めっき部分およびスルーホール部分と絶縁材料(樹脂)からなるトレンチ配線部分であり、ガラス基板のもろいガラス表面に研磨を加える必要がなく、CMPを用いる必要がない、グラインダやバイトなどによる機械加工で研磨を実施できる。そのため、研磨設備の投資やランニングコストが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るガラス配線基板の製造方法に従って製造したガラス配線基板の一例を示す断面図である。
【
図2A】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図2B】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法の他の工程を示す断面図である。
【
図2C】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2D】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2E】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2F】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2G】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2H】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図2I】本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3A】本発明に係るガラス回路基板の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図3B】本発明に係るガラス回路基板の製造方法の他の工程を示す断面図である。
【
図3C】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3D】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3E】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3F】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3G】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3H】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【
図3I】本発明に係るガラス回路基板の製造方法のさらに他の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明が対象とするガラス回路基板>
図1は、本発明に係るガラス配線基板の製造方法に従って製造したガラス配線基板の一例を示す断面図である。
図1において、ガラス配線基板1は、ガラス基板2に2つのスルーホール3を形成し、ガラス基板2の表裏両面に、スルーホールめっき部4とトレンチ配線部5とを設けている。なお、6はスルーホールめっき部4の内部に設けた穴埋め樹脂部である。
【0009】
<本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法>
以下、
図2A~
図2Iを参照して、本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法について説明する。なお、
図2A~
図2Iに示す例において、スルーホールの数や各層の厚みなどの寸法は一例を模式的に示したものであり、実際の数や寸法に合わせたものではない。また、符号は1つのスルーホールについて記載しているが、その他のスルーホールの部分でも符号を付していないが同じ構成である。
【0010】
まず、ガラス基板から所望の大きさのガラス基板を板取りして、
図2Aに示すようなガラス基板10を準備する。次に、
図2Bに示すように、ガラス基板10にスルーホール11を形成する。次に、
図2Cに示すように、スルーホール11を形成したガラス基板10の表面全体に薄いめっきを施し、シードめっき層12を形成する。次に、
図2Dに示すように、シードめっき層12上に銅メッキを施し、スルーホールめっき層13を形成する。次に、
図2Eに示すように、スルーホール11のスルーホールめっき層13の空間部に樹脂を充填し、穴埋め樹脂層14を形成する。次に、
図2Fに示すように、穴埋め樹脂層14の一部を除去して、スルーホールめっき層13の表面より低いものとする。次に、
図2Gに示すように、穴埋め樹脂層14の一部を除去したガラス基板10の全体に銅めっきを施し、蓋めっき層15を形成する。
【0011】
その後、蓋めっき層15を形成したガラス基板10の表裏の両表面を、化学機械研磨(GMP)により研磨し、ガラス基板10の両表面を研磨する。このCMPによる研磨により、ガラス基板10の表面の蓋めっき層15、スルーホールめっき層13およびシードめっき層12を除去するとともに、ガラス基板10の表面を露出させる。そして、セミアディティブ法(SAP)に従って、スルーホールめっき層13の上にスルーホールめっき部4を形成するとともに、露出したガラス基板10の表面上にトレンチ配線部5を形成する。
【0012】
図2A~
図2Iに従った、本発明が対象とするガラス回路基板の通常の製造方法によれば、
図1に示す構成のガラス回路基板を製造することができる。しかしながら、ガラス基板10を研磨する必要があるため高価なCMPを用いる必要がある。そのため、研磨設備の投資やランニングコストが高くなる。
【0013】
<本発明に係るガラス回路基板の製造方法>
以下、
図3A~
図3Iを参照して、本発明に係るガラス回路基板の製造方法について説明する。なお、
図3A~
図3Iに示す例において、スルーホールの数や各層の厚みなどの寸法は一例を模式的に示したものであり、実際の数や寸法に合わせたものではない。また、符号は1つのスルーホールについて記載しているが、その他のスルーホールの部分でも符号を付していないが同じ構成である。
【0014】
まず、ガラス基板から所望の大きさのガラス基板を板取りして、
図3Aに示すようなガラス基板10を準備する。ガラス基板10の材料としては、通常用いられているいずれのガラス基板の材料をも使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノシリカートガラス、合成石英ガラスにより、ガラス基板10を構成することができる。
【0015】
次に、
図3Bに示すように、ガラス基板10にスルーホール11を形成する。ガラス基板10にスルーホール11を形成する方法は、ドリル加工やレーザー加工などの従来から知られている方法を用いることができる。スルーホール11の内壁には、必要に応じて、従来から知られているように、デスミア処理を施す。
【0016】
次に、
図3Cに示すように、スルーホール11を形成したガラス基板10の表面に、絶縁材料でトレンチ配線部5を形成するためのトレンチ配線パターン21を形成する。トレンチ配線パターン21は、従来から知られているように、ガラス基板10の表面に絶縁材料からなる絶縁層を形成し、絶縁層に対しマスクを用いたエッチング処理を行うことで、形成することができる。
【0017】
次に、
図3Dに示すように、スルーホール11およびトレンチ配線パターン21を形成したガラス基板10の表面全体に薄いめっきを施し、シードめっき層12を形成する。シードめっき層12は、従来から知られているように、その上に銅めっき層を形成するために設けられものであり、スパッタリングや無電解めっきによりニッケルやクロムなどの金属の層を形成すること得ることができる。
【0018】
次に、
図3Eに示すように、シードめっき層12上に銅めっきを施し、スルーホールめっき層13を形成する。スルーホールめっき層13は、従来から知られているように、シードめっき層12を陰極として用いて銅などを電気めっきすることで形成することができる。このとき、シードめっき層12は、ガラス基板10とスルーホールめっき層13との密着強度を安定化する機能を有している。
【0019】
次に、
図3Fに示すように、スルーホール11のスルーホールめっき層13の空間部に樹脂を充填し、穴埋め樹脂層14を形成する。穴埋め樹脂層14は、従来から知られているように、スルーホール11に樹脂ペーストをスクリーン印刷することで形成することができる。もしくは、ABFのラミネートによって形成する事もできる。このとき、穴埋め樹脂層14は、部品の搭載スペースを確保するために用いられる。
【0020】
次に、
図3Gに示すように、穴埋め樹脂層14の一部を除去して、スルーホールめっき層13の表面より低いものとする。穴埋め樹脂層14の一部の除去は、従来から知られているように、レーザー加工またはブラスト加工で行うことができる。
【0021】
次に、
図3Hに示すように、穴埋め樹脂層14の一部を除去したガラス基板10の全体に銅めっきを施し、蓋めっき層15を形成する。蓋めっき層15は、従来から知られているように、銅などの電解めっきにより形成することができる。
【0022】
その後、
図3Iに示すように、蓋めっき層15およびスルーホールめっき層13の部分と絶縁材料からなるトレンチ配線パターン21の一部を機械加工で研磨し、スルーホールめっき部4およびトレンチ配線部5からなるパターン配線を形成する。ここで、機械加工は、グラインダまたは切削バイトによる機械加工とすることができる。
【0023】
切削バイトを用いた機械加工のためには、例えば、(株)ディスコ製DAS8930のサーフェースプラナーを用いて平坦化加工を行うことができる。この際の切削条件の一例は、回転数:100~5000rpm、ステージの送り速度:0.5~5mm/secが好ましい。
【0024】
図3A~
図3Iに示す本発明の実施形態によれば、研磨対象が、蓋めっき部分およびスルーホール部分と絶縁材料(樹脂)からなるトレンチ配線部分であり、ガラス基板の部分を研磨する必要がない。そのため、CMPを用いる必要がなく、ダマシンプロセス同様にグラインダやバイトなどによる機械加工で研磨を実施でき、研磨設備の投資やランニングコストが低減できる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラス配線基板
2、10 ガラス基板
3、11 スルーホール
4 スルーホールめっき部
5 トレンチ配線部
6 穴埋め樹脂部
12 シードめっき層
13 スルーホールめっき層
14 穴埋め樹脂層
15 蓋めっき層
21 トレンチ配線パターン