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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/139 20060101AFI20230215BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F16F15/139 C
F16F15/134 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019049047
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020148334
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】岡町 悠介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125579(JP,A)
【文献】特開2016-217521(JP,A)
【文献】特開2018-096534(JP,A)
【文献】特開2016-098954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/139
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの動力を出力側部材に伝達するためのダンパ装置であって、
回転可能に配置され、動力源からの動力が入力される入力側回転体と、
前記入力側回転体と相対回転可能な出力側回転体と、
前記入力側回転体と前記出力側回転体とを円周方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記入力側回転体及び前記出力側回転体と相対回転可能であり、複数の前記弾性部材の少なくとも2つを直列的に作動させるための中間回転体と、
前記弾性部材の弾性変形時に前記中間回転体にヒステリシストルクを付与する第1ヒス発生機構と、
を備え
前記第1ヒス発生機構は、前記出力側回転体と前記中間回転体との間でヒステリシストルクを発生する、
ダンパ装置。
【請求項2】
動力源からの動力を出力側部材に伝達するためのダンパ装置であって、
回転可能に配置され、動力源からの動力が入力される入力側回転体と、
前記入力側回転体と相対回転可能な出力側回転体と、
前記入力側回転体と前記出力側回転体とを円周方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
前記入力側回転体及び前記出力側回転体と相対回転可能であり、複数の前記弾性部材の少なくとも2つを直列的に作動させるための中間回転体と、
前記弾性部材の弾性変形時に前記中間回転体にヒステリシストルクを付与する第1ヒス発生機構と、
を備え、
前記第1ヒス発生機構は、
前記出力側回転体に固定され、前記中間回転体の側面に摺接する円環プレートと、
前記円環プレートを前記中間回転体の側面に押圧する付勢部材と、
を有する
ンパ装置。
【請求項3】
前記入力側回転体と前記出力側回転体との間でヒステリシストルクを発生する第2ヒス発生機構をさらに備えた請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第2ヒス発生機構は、前記入力側回転体に固定され、前記円環プレートに摺接する摩擦プレートを有し、
前記摩擦プレートは、前記付勢部材によって前記円環プレートに押圧されている、
請求項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記出力側回転体は、
前記出力側部材に連結されるハブと、
前記ハブから径方向外方に延びるように設けられ円周方向に所定の間隔で配置された複数のフランジと、
を有し、
前記中間回転体は、
環状部と、
前記環状部から径方向外方に延びるように設けられ、前記出力側回転体の複数のフランジの円周方向間の少なくとも1ヶ所に配置されて複数の前記弾性部材のうちの少なくとも2つを直列的に作動させるための中間フランジと、
を有し、
前記円環プレートは、複数の前記フランジに固定され、前記中間フランジと摺接する、
請求項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1ヒス発生機構は、前記出力側回転体のハブと前記弾性部材との径方向間に配置されている、請求項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置、特に、動力源からの動力を出力側部材に伝達するためのダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで発生した動力をトランスミッションに伝達するために、車両の駆動系には様々な装置が搭載されている。この種の装置としては、例えばダンパ装置やフライホイール組立体が考えられる。これらの装置には、回転振動の減衰を目的として、特許文献1に示されるようなダンパ機構が用いられている。
【0003】
特許文献1のダンパ装置は、入力プレートと、出力プレートと、複数のスプリングと、中間プレートと、を有している。出力プレートは、入力プレートに対して回転可能に配置されている。また、中間プレートは、低剛性スプリングと高剛性スプリングとに係合し、低剛性スプリングと高剛性スプリングとを直列に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-161371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の中間プレートは、2つのスプリングを直列に連結することによって、入力プレートと出力プレートとの捩れ角度を広角度化することができる。このため、振動減衰性能を向上させることができる。
【0006】
しかし、特許文献1のような中間プレートが設けられている装置では、エンジンの回転数によっては、中間プレートが共振し、中間プレートが大きく振動する場合がある。
【0007】
本発明の目的は、2つの弾性体を直列に作動させるための中間回転体を備えたダンパ装置において、中間回転体が共振により大きく振動するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るダンパ装置は、動力源からの動力を出力側部材に伝達する装置である。このダンパ装置は、入力側回転体と、出力側回転体と、複数の弾性部材と、中間回転体と、第1ヒス発生機構と、を備えている。入力側回転体は、回転可能に配置され、動力源からの動力が入力される。出力側回転体は入力側回転体と相対回転可能である。複数の弾性部材は、入力側回転体と出力側回転体とを円周方向に弾性的に連結する。中間回転体は、入力側回転体及び出力側回転体と相対回転可能であり、複数の弾性部材の少なくとも2つを直列的に作動させる。第1ヒス発生機構は、弾性部材の弾性変形時に中間回転体にヒステリシストルクを付与する。
【0009】
この装置では、動力が入力側回転体に入力されると、この動力は、入力側回転体から弾性部材を介して出力側回転体に伝達される。この作動時において、弾性部材の伸縮によって、入力側回転体、出力側回転体、及び中間回転体の間に相対回転が発生する。このとき、第1ヒス発生機構によって、中間回転体にヒステリシストルクが付与される。
【0010】
ここでは、第1ヒス発生機構によって中間回転体にヒステリシストルクが付与されるので、中間回転体が共振するのを抑えることができる。
【0011】
(2)好ましくは、第1ヒス発生機構は、出力側回転体と中間回転体との間でヒステリシストルクを発生する。
【0012】
(3)好ましくは、第1ヒス発生機構は、円環プレートと、付勢部材と、を有している。円環プレートは、出力側回転体に固定され、中間回転体の側面に摺接する。付勢部材は、円環プレートを中間回転体の側面に押圧する。
【0013】
ここでは、出力側回転体に固定された円環プレートと中間回転体との間でヒステリシストルクが発生する。したがって、例えば、出力側回転体が環状の摩擦面を有していない場合でも、円環プレートによって連続した摩擦面を構成でき、摩擦面の面圧を低減でき、また摩擦部分の異常摩耗を抑えることができる。
【0014】
(4)好ましくは、入力側回転体と出力側回転体との間でヒステリシストルクを発生する第2ヒス発生機構をさらに備えている。
【0015】
(5)好ましくは、第2ヒス発生機構は、入力側回転体に固定され、円環プレートに摺接する摩擦プレートを有している。そして、摩擦プレートは、付勢部材によって円環プレートに押圧されている。
【0016】
ここでは、入力側回転体に固定された摩擦プレートが出力側回転体に固定された円環プレートに押圧され、これらの間でヒステリシストルクが発生する。
【0017】
(6)好ましくは、出力側回転体は、出力側部材に連結されるハブと、複数のフランジと、を有している。フランジは、ハブから径方向外方に延びるように設けられ円周方向に所定の間隔で配置されている。また、好ましくは、中間回転体は、環状部と、中間フランジと、を有している。中間フランジは環状部から径方向外方に延びるように設けられている。また、中間フランジは、出力側回転体の複数のフランジの円周方向間の少なくとも1ヶ所に配置されて複数の弾性部材のうちの少なくとも2つを直列的に作動させる。そして、円環プレートは、複数のフランジに固定され、中間フランジと摺接する。
【0018】
(7)好ましくは、第1ヒス発生機構は、出力側回転体のハブと弾性部材との径方向間に配置されている。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、2つの弾性体を直列に作動させるための中間回転体を備えたダンパ装置において、中間回転体が共振により大きく振動するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるダンパ装置を備えた動力伝達装置の断面図。
図2図1のトルクリミッタ装置を抽出して示す図。
図3図1のダンパ装置を抽出して示す図。
図4図1のヒス発生機構を示す図。
図5図1のダンパ装置の一部を取り外して示す正面図。
図6】ヒス発生機構の外観図。
図7】中間回転体の共振による振動の大きさ及び本実施形態の振動の大きさを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の一実施形態によるダンパ装置を有する動力伝達装置1の断面図、図2はその一部の部材を取り除いて示す正面図である。この動力伝達装置1は、例えば、ハイブリッド車両に搭載される。動力伝達装置1は、トルクリミッタ装置2と、このトルクリミッタ装置2を介してエンジンからの動力が入力されるダンパ装置3と、を有している。図1の右側にはエンジンが配置され、左側には電動機や変速機等が配置される。図1のO-O線が回転軸である。
【0022】
[トルクリミッタ装置2]
トルクリミッタ装置2は、エンジンから動力が入力されるフライホイール4に連結される。そして、例えば、出力側から過大なトルクが入力された際に、過大なトルクがエンジン側に伝達されないように、伝達されるトルクを所定値以下に規制する。このトルクリミッタ装置2は、カバー10と、ダンパプレート11と、摩擦ディスク12と、プレッシャプレート13と、コーンスプリング14と、を有している。摩擦ディスク12、プレッシャプレート13、及びコーンスプリング14は、カバー10の内部に収容されている。
【0023】
図2にトルクリミッタ装置2を拡大して示している。カバー10は、連結部10aと、筒状部10bと、支持部10cと、を有している。連結部10a、筒状部10b、及び支持部10cは、プレス成形によって一体加工されている。したがって、筒状部10bは、絞り加工による勾配を有しており、フライホイール4から離れるにしたがって内周側に傾いている。また、筒状部10bと支持部10cとの間には曲面部10dが形成されている。
【0024】
連結部10aは、環状に形成され、ダンパプレート11を挟んで、フライホイール4にボルト15によって連結される。筒状部10bは、連結部10aの内周端から出力側(フライホイール4から離れる側)に延びている。支持部10cは、環状であり、筒状部10bの先端から内周側に所定の幅で延びている。支持部10cの径方向中間部には、フライホイール4側に突出する環状の支持用突起10eが形成されている。
【0025】
ダンパプレート11は、環状に形成され、外周部に複数の孔11aを有している。この孔11aを貫通するボルト15によって、ダンパプレート11は、カバー10とともにフライホイール4の側面に固定される。外径はフライホイール4の外径と同じであり、内径は摩擦ディスク12の摩擦材(後述する)の内径よりも小さい。
【0026】
摩擦ディスク12は、コアプレート17と、1対の摩擦材18と、を有している。コアプレート17は、環状に形成されるとともに、内周端からさらに径方向内方に延びる複数の固定部17aを有している。コアプレート17は、この固定部17aを介してダンパ装置3に連結されている。1対の摩擦材18は、環状に形成され、コアプレート17の両側面に固定されている。
【0027】
プレッシャプレート13は、環状に形成され、摩擦ディスク12を挟んでダンパプレート11と対向するように配置されている。すなわち、ダンパプレート11とプレッシャプレート13とによって、摩擦ディスク12を挟み込んでいる。プレッシャプレート13の内径は、摩擦ディスク12の摩擦材18の内径よりも小さい。
【0028】
コーンスプリング14は、プレッシャプレート13とカバー10の支持部10cとの間に、圧縮された状態で配置されている。コーンスプリング14の外周部は、支持部10cの支持用突起10eに支持され、内周端はプレッシャプレート13に当接し、プレッシャプレート13をフライホイール4側に押圧している。
【0029】
このようなトルクリミッタ装置2によって、エンジン側とダンパ装置3との間で伝達されるトルクが、トルクリミッタ装置2によって設定されたトルク伝達容量を超えると、摩擦ディスク12の部分で滑りが生じ、伝達されるトルクが制限される。
【0030】
このトルクリミッタ装置2では、カバー10の筒状部10bがフライホイール4から離れるにしたがって内周側に勾配を有している。したがって、筒状部10bの出力側の端部は、フライホイール4側の端部に比較して内周面の径が小さい。また、筒状部10bの端部には、曲面部10dが形成されている。このため、仮に摩擦ディスク12を支持部10c側に配置すると、摩擦ディスク12の径を大きく確保することができない。
【0031】
しかし、本実施形態では、摩擦ディスク12をカバー10の内部においてフライホイール4側に配置しているので、筒状部10bの勾配に影響されず、摩擦ディスク12の径をより大きい径にすることができる。逆に言えば、同じトルク伝達容量を有するトルクリミッタ装置2の径を小型化することができる。
【0032】
また、本実施形態では、摩擦ディスク12を、ダンパプレート11を介してフライホイール4に押圧するように配置している。本実施形態とは逆に、仮に摩擦ディスク12をカバー10の支持部10c側に配置し、コーンスプリング14をフライホイール4側に配置すると、カバー10の支持部10cの内周側が外側に開くように弾性変形する。すると、摩擦ディスク12の摩擦材18が、支持部10cに対して均一に当接しなくなり、所望のトルク容量が得られない、あるいは摩擦材18が異常摩耗する場合がある。そして、このような不具合を避けるためには、カバー10を構成するプレート部材の厚みを厚くする必要がある。
【0033】
しかし、この実施形態では、摩擦ディスク12をフライホイール4側に配置し、コーンスプリング14をカバー10の支持部10c側に配置しているので、摩擦ディスク12と当接する面(ダンパプレート11の側面)は変形しにくい。したがって、摩擦ディスク12の摩擦材18の全体がダンパプレート11に均一に接触することになり、安定したトルク容量を得ることができる。また、摩擦ディスク12の摩擦材18の異常摩耗を抑えることができる。
【0034】
ここで、本実施形態においても、カバー10の支持部10cは弾性変形するが、この弾性変形はコーンスプリング14の付勢力とともに、摩擦ディスク12を押圧する力として作用する。このため、カバー10を構成するプレート部材の肉厚を薄くすることができる。したがって、トルクリミッタ装置2の軸方向の小型化を実現できる。
【0035】
また、以上のような構成を有するトルクリミッタ装置2では、汎用のフライホイール、すなわち、トルクリミッタを装着するための特別な形状を有していないフライホイールに対しても、このトルクリミッタ装置2を容易に装着することができる。
【0036】
[ダンパ装置3]
ダンパ装置3は、トルクリミッタ装置2からの動力を出力側に伝達し、また動力伝達時の振動を減衰する。図3に、ダンパ装置3を抽出して示している。ダンパ装置3は、入力側回転体20と、出力側回転体21と、複数のトーションスプリング22と、中間回転体23と、ヒス発生機構24と、を有している。
【0037】
<入力側回転体20>
入力側回転体20は、回転軸を中心に回転可能であり、第1プレート31及び第2プレート32を有している。
【0038】
第1プレート31は、円板部31aと、トーションスプリング22を保持するための複数の第1窓部31bと、複数の折り曲げ部31cと、複数の固定部31d(図4参照)と、を有している。なお、図4は、ダンパ装置3の図1とは異なる円周方向位置での断面を示している。なお、第1プレート31は、円板部31aの内周面と、出力側回転体21の筒状のハブ(後述する)の外周面と、によって径方向に位置決めされている。
【0039】
第1窓部31bは、円板部31aの外周部に形成されている。第1窓部31bは、軸方向に貫通する円周方向に長い孔と、孔の内周縁及び外周縁に形成され、トーションスプリング22を保持する保持部と、を有している。孔の円周方向の端面は、トーションスプリング22の端面に当接可能である。
【0040】
折り曲げ部31cは、断面L字状であり、円板部31aの外周端部をフライホイール4側に折り曲げて形成されている。円板部31aの外周端部を断面L字状に折り曲げることによって、第1プレート31の回転強度の向上が実現されている。
【0041】
図4及び図5に示すように、固定部31dは、折り曲げ部31cの円周方向の中央部において、折り曲げ部31cの先端をさらに径方向内方に折り曲げて形成されている。なお、図5は、装置の一部の部材を取り外して示す正面図である。そして、固定部31dには、リベット固定用の孔31eが形成されている。なお、円板部31aのリベット固定用の孔31eと同じ位置には、リベットかしめ用の孔31fが形成されている。
【0042】
第2プレート32は、第1プレート31のフライホイール4側において、第1プレート31と軸方向に対向して配置されている。第2プレート32は、円板状に形成され、複数の第2窓部32bを有している。なお、第2プレート32は、その内周面と、出力側回転体21の筒状のハブ(後述する)の外周面と、によって径方向に位置決めされている。
【0043】
第2窓部32bは、第1プレート31の第1窓部31bと対応する位置に形成されている。第2窓部32bは、軸方向に貫通する円周方向に長い孔と、孔の内周縁及び外周縁に形成され、トーションスプリング22を保持する保持部と、を有している。孔の円周方向の端面は、トーションスプリングの端面に当接可能である。この第2窓部32bと、第1プレート31の第1窓部31bと、によってトーションスプリング22が保持されている。
【0044】
また、第2プレート32には、第1プレート31のリベット固定用の孔31eと同じ位置に、リベット固定用の孔32eを有している。これらの両プレート31,32のリベット固定用の孔31e,32eを貫通するリベット33によって、第1プレート31と第2プレート32とは、軸方向及び円周方向に移動不能に固定されている。なお、第1プレート31の固定部31dと第2プレート32との間には、摩擦ディスク12のコアプレート17の固定部17aが差し込まれ、第1プレート31及び第2プレート32と摩擦ディスク12とが固定されている。
【0045】
<出力側回転体21>
出力側回転体21は、第1プレート31と第2プレート32との軸方向間に配置されている。出力側回転体21は、回転軸を中心に回転可能であり、第1プレート31及び第2プレート32と相対回転可能である。出力側回転体21は、ハブ35と、3つのフランジ36と、を有している。
【0046】
ハブ35は、出力側回転体21の中心部に配置され、筒状である。内周部には、スプライン孔35aが形成されており、このスプライン孔35aが出力側の軸(図示せず)に形成されたスプラインと連結される。前述のように、このハブ35の外周面と、第1及び第2プレート31,32の内周面と、によって、第1及び第2プレート31,32はハブ35に対して径方向に位置決めされている。
【0047】
3つのフランジ36は、ハブ35の外周面から径方向に放射状に延びて形成されている。3つのフランジ36は、円周方向に等角度間隔で配置されている。フランジ36は、ヒス機構装着部36aと、第1支持部36bと、第2支持部36cと、を有している。ヒス機構装着部36aは、平坦面であり、ハブ35の外周側に形成されている。第1支持部36bは、ヒス機構装着部36aから径方向外方に延びており、ヒス機構装着部36aよりも円周方向の幅が小さい。第1支持部36bの円周方向の両端面にスプリングシート38が当接している。第2支持部36cは、第1支持部36bの外周端の両端部を、円周方向に延長して形成されている。この第2支持部36cの内周面に、スプリングシート38が当接している。
【0048】
なお、第2支持部36cは、第1プレート31の固定部31dと径方向において同じ位置に配置されている。第2支持部36cには軸方向に貫通する孔36dが形成されている。この孔36d及び第1プレート31のリベットかしめ用の孔31fを通して、第1プレート31と第2プレート32がリベットかしめされている。
【0049】
<トーションスプリング22>
トーションスプリング22は、出力側回転体21の複数のフランジ36の円周方向間に収容され、第1プレート31及び第2プレート32の第1窓部31b及び第2窓部32bによって保持されている。なお、隣接するフランジ36間には、2つのトーションスプリング22が配置されており、各トーションスプリング22の両端面には、スプリングシート38が配置されている。
【0050】
<中間回転体23>
中間回転体23は、回転軸を中心に回転可能であり、第1プレート31、第2プレート32、及び出力側回転体21と相対回転可能である。中間回転体23は、隣接するフランジ36間に配置されている2つのトーションスプリング22を直列に作動させるため部材である。中間回転体23は、環状部40と、3つの中間フランジ41と、を有している。
【0051】
環状部40は、内周部が出力側回転体21のハブ35の外周に挿入されている。すなわち、環状部40の内周面と、ハブ35の外周面と、が接触し、これにより中間回転体23は出力側回転体21に対して径方向に位置決めされている。環状部40は、出力側回転体21のフランジ36のフライホイール4側に、フランジ36と軸方向に並べて配置されている。
【0052】
3つの中間フランジ41は、オフセット部41aと、摩擦部41bと、第1支持部41cと、第2支持部41dと、ストッパ部41eと、を有している。
【0053】
オフセット部41aは、図3及び図5に示すように、環状部40と摩擦部41bとを連結する部分である。ここで、摩擦部41bは、両側面が出力側回転体21のフランジ36の両側面と同じ軸方向位置である。すなわち、摩擦部41b及び出力側回転体21のフランジ36のフライホイール4側の側面は、1つの平面上に位置している。また、摩擦部41b及び出力側回転体21のフランジ36の出力側の側面は、1つの平面上に位置している。オフセット41a部は、軸方向の位置が異なる環状部40と摩擦部41bとを連結している。
【0054】
第1支持部41cは、摩擦部41bから径方向外方に延びており、摩擦部41bよりも円周方向の幅が小さい。第1支持部41cの円周方向の両端面にスプリングシート38が当接している。第2支持部41dは、第1支持部41cの外周端の両端部を、円周方向に延長して形成されている。この第2支持部41dの内周面に、スプリングシート38が当接している。
【0055】
ストッパ部41eは、第1支持部41cの外周面の円周方向中央部に形成されており、径方向外方に突出している。ストッパ部41eは、第1プレート31の隣接する折り曲げ部31cの円周方向の中央部に配置されている。そして、ストッパ部41eの円周方向の端面と、折り曲げ部31cの円周方向端面と、は当接可能である。
【0056】
すなわち、第1プレート31の折り曲げ部31cと、中間回転体23のストッパ部41eと、によって、入力側回転体20と、中間回転体23(ひいては出力側回転体21)と、の相対回転角度が、所定の角度範囲内になるように規制されている。
【0057】
[ヒス発生機構24]
ヒス発生機構24は、径方向においては、出力側回転体21のハブ35と、トーションスプリング22と、の間に配置されている。また、軸方向においては、出力側回転体21のフランジ36(具体的にはヒス機構装着部36a)及び中間回転体23の中間フランジ41(具体的には摩擦部41b)と、第1プレート31と、の間に配置されるとともに、出力側回転体21のフランジ36及び中間回転体23の中間フランジ41と、第2プレート32と、の間に配置されている。
【0058】
ヒス発生機構24は、図4及び図6に示すように、2枚の円環プレート45と、2枚の摩擦プレート46と、1つのコーンスプリング47と、を有している。2枚の円環プレート45及び2枚の摩擦プレート46は、寸法が異なるのみであるので、ここでは、第1プレート31側の各プレート45,46について説明する。なお、図6は、出力側回転体21、中間回転体23、及びヒス発生機構24の一部を取り出して示している。
【0059】
円環プレート45は、環状に形成され、出力側回転体21及び中間回転体23の側面に当接している。また、円環プレート45は、出力側回転体21のヒス機構装着部36aに固定されている。したがって、円環プレート45は、出力側回転体21に対して相対回転不能であり、中間回転体23とは相対回転可能である。なお、ここでは詳細に記載していないが、円環プレート45は、例えば、内周側に突出するように設けられた複数の固定部が、リベット等によって出力側回転体21に固定されている。
【0060】
摩擦プレート46は、環状に形成され、フライホイール側の側面は円環プレート45に当接し、他方の面は第1プレート31に当接している。また摩擦プレート46の第1プレート31側の面には、軸方向に突出する複数の係合突起46aが形成されている。そして、この係合突起46aが第1プレート31に形成された孔31gに係合している。これにより、摩擦プレート46は第1プレート31と相対回転不能であり、円環プレート45と相対回転可能である。
【0061】
前述のように、第2プレート32側の円環プレート45及び摩擦プレート46も同様の構成である。そして、第2プレート32側の摩擦プレート46と第2プレート32との間には、コーンスプリング47が圧縮された状態で装着されている。
【0062】
以上の構成により、入力側回転体20と出力側回転体21とが相対回転してトーションスプリング22が伸縮すると、摩擦プレート46と円環プレート45との間で摩擦抵抗(ヒステリシストルク)が発生する。また、トーションスプリング22が伸縮し、出力側回転体21と中間回転体23とが相対回転すると、同様にヒステリシストルクが発生する。すなわち、ヒス発生機構24は、入力側回転体20と出力側回転体21との間でヒステリシストルクを発生するヒス発生部24a(図4参照)と、中間回転体23にヒステリシストルクを付与するヒス発生部24b(図3参照)と、を有している。
【0063】
[動作]
エンジンからフライホイール4に伝達された動力は、トルクリミッタ装置2を介してダンパ装置3に入力される。ダンパ装置3では、トルクリミッタ装置2の摩擦ディスク12が固定されている第1及び第2プレート31,32に動力が入力され、この動力は、トーションスプリング22を介して出力側回転体21に伝達される。そして、出力側回転体21から、さらに出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0064】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタ装置2によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に規制される。
【0065】
ダンパ装置3においては、第1及び第2プレート31,32からトーションスプリング22に動力が伝達されると、トーションスプリング22が圧縮される。また、トルク変動によって、トーションスプリング22は伸縮を繰り返す。トーションスプリング22が伸縮すると、第1及び第2プレート31,32と出力側回転体21との間でねじれが生じる。
【0066】
第1及び第2プレート31,32と出力側回転体21との間のねじれによって、ヒス発生機構24が作動し、ヒステリシストルクが発生する。具体的には、第1及び第2プレート31,32に固定された摩擦プレート46と、出力側回転体21に固定された円環プレート45と、の間で相対回転が生じるので、これらの間で摩擦抵抗が生じる。これによって、第1及び第2プレート31,32と出力側回転体21との間でヒステリシストルクが発生する。
【0067】
また、トーションスプリング22の伸縮によって、出力側回転体21と中間回転体23との間においてもねじれが生じる。このねじれによって、出力側回転体21に固定された円環プレート45と、中間回転体23の摩擦部41bとの間で相対回転が生じるので、これらの間で摩擦抵抗が生じる。これによって、出力側回転体21と中間回転体23との間でヒステリシストルクが発生する。
【0068】
エンジンの回転数によっては、中間回転体23が共振によって大きく振動することがある。しかし、この実施形態では、出力側回転体21と中間回転体23との間のヒステリシストルクによって、中間回転体23の共振による振幅の大きな振動を抑えることができる。
【0069】
図7は、中間回転体23の振動の大きさを示したものである。図7の破線mは中間回転体23にヒステリシストルクが付与されていない場合を示し、同図の実線Mは中間回転体の23にヒステリシストルクを付与された場合を示している。この図から明らかなように、中間回転体23にヒステリシストルクを付与することによって、共振による振動の大きさを抑えることができる。
【0070】
なお、第1及び第2プレート31,32と、出力側回転体21及び中間回転体23と、のねじれ角度が大きくなると、第1プレート31の折り曲げ部31cの端面と、中間回転体23のストッパ部41eの端面と、が接触する。このため、第1及び第2プレート31,32と、出力側回転体21及び中間回転体23と、のねじれ角度が所定の角度以上になるのを抑えることができる。したがって、トーションスプリング22に過度の応力が作用するのを避けることができる。
【0071】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0072】
(a)前記実施形態では、ヒス発生機構24に円環プレート45及び摩擦プレート46を設けたが、摩擦プレートを直接出力側回転体21及び中間回転体23に接触させるようにしてもよい。
【0073】
(b)前記実施形態では、入力側回転体20と出力側回転体21との間でヒステリシストルクを発生させるようにしたが、車両の仕様によっては、入力側回転体20と出力側回転体21との間のヒス発生部24aを省略することができる。
【符号の説明】
【0074】
3 ダンパ装置
20 入力側回転体
21 出力側回転体
22 トーションスプリング
23 中間回転体
24 ヒス発生機構
35 ハブ
36 フランジ
40 環状部
41 中間フランジ
45 円環プレート
46 摩擦プレート
47 コーンスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7