(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20230215BHJP
F23R 3/36 20060101ALI20230215BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20230215BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20230215BHJP
F02C 3/24 20060101ALI20230215BHJP
F23D 11/00 20060101ALI20230215BHJP
F23K 5/10 20060101ALI20230215BHJP
F23K 5/22 20060101ALI20230215BHJP
F23D 11/44 20060101ALI20230215BHJP
F23J 7/00 20060101ALI20230215BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F23R3/28 Z
F23R3/36
F02C7/22 A
F23R3/28 F
F02C3/30 Z
F02C3/24 Z
F23D11/00 D
F23K5/10
F23K5/22
F23D11/44 A
F23C99/00 317
F23C99/00 333
(21)【出願番号】P 2019067409
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)事業「アンモニア直接燃焼」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 格
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-255420(JP,A)
【文献】特開昭52-025482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/28
F23R 3/36
F02C 7/22
F02C 3/30
F02C 3/24
F23D 11/00
F23K 5/10
F23K 5/22
F23D 11/44
F23J 7/00
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体アンモニアを水蒸気に予混合してアンモニア蒸気を生成する予混合器と、
前記アンモニア蒸気と前記水蒸気とを取り込んで燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生する燃焼ガスを用いて動力を発生させる動力発生装置と、
を備え
、
前記予混合器は、前記水蒸気の流通流路の側方から前記液体アンモニアを噴霧する噴霧ノズルを備える
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
液体アンモニアを水蒸気に予混合してアンモニア蒸気を生成する予混合器と、
前記アンモニア蒸気と前記水蒸気とを取り込んで燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生する燃焼ガスを用いて動力を発生させる動力発生装置と、
を備え
、
前記動力発生装置は、タービンであり、前記タービンの排ガスを用いて前記水蒸気を生成する排熱回収ボイラをさらに備える
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
液体アンモニアを水蒸気に予混合してアンモニア蒸気を生成する予混合器と、
前記アンモニア蒸気と前記水蒸気とを取り込んで燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生する燃焼ガスを用いて動力を発生させる動力発生装置と、
前記燃焼器に主燃料を供給する主燃料供給装置と、
を備え
、
前記予混合器は、前記アンモニア蒸気を副燃料として前記動力発生装置に供給する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
液体アンモニアを水蒸気に予混合してアンモニア蒸気を生成する予混合器と、
前記アンモニア蒸気と前記水蒸気とを取り込んで燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器で発生する燃焼ガスを用いて動力を発生させる動力発生装置と、
前記液体アンモニアを前記予混合器内に噴霧する液体アンモニアポンプと、
を備えることを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アンモニア供給部から出力される液体の燃料用アンモニアを気化器で気化させて燃焼器に供給する燃焼装置及びガスタービンエンジンシステムが開示されている。このようなガスタービンエンジンシステムによれば、燃焼用空気の冷却に用いる水の量を削減しかつ燃料用アンモニアを気化させるために使用するエネルギ量を削減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には熱源が明示されていないが、従来のガスタービンエンジンシステムでは、外部の個別の熱源を必要とするシステム内で発生させた熱を用いて液体アンモニアを気化させることがあり、システム全体として見た場合のエネルギ効率が低下する。このようなシステム全体としてのエネルギ効率の低下は改善すべき課題である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、システム全体としてのエネルギ効率を従来よりも向上させることが可能な燃焼装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、燃焼装置に係る第1の解決手段として、液体アンモニアを水蒸気に予混合してアンモニア蒸気を生成する予混合器と、前記アンモニア蒸気と前記水蒸気とを取り込んで燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で発生する燃焼ガスを用いて動力を発生させる動力発生装置とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、燃焼装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記予混合器は、前記水蒸気の流通流路の側方から前記液体アンモニアを噴霧する噴霧ノズルを備える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、燃焼装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記動力発生装置はタービンであり、前記タービンの排ガスを用いて前記水蒸気を生成する排熱回収ボイラをさらに備えるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、燃焼装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記動力発生装置に主燃料を供給する主燃料供給装置をさらに備え、前記予混合器は、前記アンモニア蒸気を副燃料として前記動力発生装置に供給する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、燃焼装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記液体アンモニアを前記予混合器内に噴霧するための液体アンモニアポンプを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンモニアを燃料(の一部)として使用するガスタービンシステム全体としてのエネルギ効率を従来よりも向上させることが可能な燃焼装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発電システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における予混合器の構成を示す第1の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態における予混合器の構成を示す第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る燃焼装置は、
図1に示すようにガスタービン1、被駆動体2、排熱回収ボイラ3、主燃料供給装置4、主燃料調節弁5、タンク6、アンモニアポンプ7、アンモニア調節弁9、蒸気調節弁10、予混合器11、給水ポンプ12及び還元剤調節弁13を備えている。本実施形態では、ガスタービンによる駆動力を、被駆動体(発電機)に供給することで構築する発電システムを例として説明する。
【0014】
ガスタービン1は、主燃料X1を圧縮空気及び混合気X2を用いて燃焼ガスを生成し、当該燃焼ガスを用いて回転動力を発生させる原動機である。このガスタービン1は、動力回収後の燃焼ガスを排ガスX3として排熱回収ボイラ3に供給する。このようなガスタービン1は、図示するように圧縮機1a、燃焼器1b及びタービン1cを備えている。
【0015】
圧縮機1aは、空気(外気)を取り込んで所定の圧縮比で圧縮することにより圧縮空気を生成し、当該圧縮空気を燃焼器1bに供給する。燃焼器1bは、圧縮空気に加えて主燃料X1及び混合気X2を取り込むように構成されており、圧縮空気存在下で主燃料X1と混合気X2を燃焼させることにより燃焼ガスを生成させる。
【0016】
タービン1cは、燃焼器1bで生成された燃焼ガスを駆動流体として取り込むことにより回転動力を発生させ、また動力回収後の燃焼ガスを排ガスX3として排熱回収ボイラ3に供給する。このようなガスタービン1において、燃焼器1bは本発明の燃焼器に相当し、タービン1cは、本発明の動力発生装置に相当する。
【0017】
被駆動体2は、図示するように自らの回転軸がガスタービン1の出力軸に軸結合しており、ガスタービン1によって回転駆動されることによって、例えば、電力(交流電力)を発生させる。すなわち、被駆動体2については、ガスタービン1の出力軸に軸結合して回転駆動させることで作動する機器であればよい。被駆動体2については、ポンプ、ファン、発電機などがあげられる。これらの機器を取付ける際、軸に直結させるだけでなく、減速機等の調速機を介していてもよい。
【0018】
排熱回収ボイラ3は、上記排ガスX3を用いて水蒸気X4を発生させる蒸気発生器である。すなわち、この排熱回収ボイラ3は、給水ポンプ12から供給された水を排ガスX3で加熱することにより水蒸気X4を発生させる。このような排熱回収ボイラ3は、水蒸気X4を蒸気調節弁10を介して予混合器11に供給すると共に、排ガスX3が排熱回収によって低温化された低温排ガスを外部に排気する。
【0019】
主燃料供給装置4は、主燃料X1を主燃料調節弁5を介してガスタービン1に供給する燃料供給装置である。この主燃料供給装置4は、主燃料調節弁5の開口度に応じた主燃料X1をガスタービン1の燃焼器1bに備えられたバーナに供給する。なお、上記主燃料X1は、例えば都市ガス(天然ガス)である。
【0020】
主燃料調節弁5は、主燃料供給装置4とガスタービン1とを接続する配管に設けられた流量調節弁である。この主燃料調節弁5は、ガスタービン1の燃焼器1bへの主燃料X1の供給量を最終的に設定する。すなわち、この主燃料調節弁5は、弁体の開度を調節することにより主燃料供給装置4から燃焼器1bに流通する主燃料X1の通過流量を所定値に調節する。
【0021】
タンク6は、一定量の液体アンモニアX5を貯留する大型容器である。このタンク6は、アンモニアポンプ7の回転数に応じた流量の液体アンモニアX5をアンモニアポンプ7に供給する。アンモニアポンプ7は、タンク6から液体アンモニアX5を汲み出し、当該液体アンモニアX5を昇圧してアンモニア調節弁9と還元剤調節弁13に供給する。
【0022】
アンモニア調節弁9は、アンモニアポンプ7(液体アンモニアポンプ)と予混合器11とを接続する配管に設けられた流量調節弁である。このアンモニア調節弁9は、液体アンモニアX5の予混合器11への供給量を最終的に設定する。すなわち、アンモニア調節弁9は、弁体の開度を調節することによりアンモニアポンプ7から予混合器11に流通する液体アンモニアX5の通過流量を所定値に調節する。
【0023】
蒸気調節弁10は、排熱回収ボイラ3と予混合器11とを接続する配管に設けられた流量調節弁である。この蒸気調節弁10は、水蒸気X4の予混合器11への供給量を最終的に設定する。すなわち、蒸気調節弁10は、弁体の開度を調節することにより排熱回収ボイラ3から予混合器11に流通する水蒸気X4の通過流量を所定値に調節する。
【0024】
予混合器11は、液体である液体アンモニアX5と気体である水蒸気X4とを予混合する気液混合装置である。この予混合器11は、ミスト状つまり微小粒子状かつ水蒸気X4よりも低温の液体アンモニアX5と水蒸気X4とを熱交換させることにより、液体アンモニアX5を気化させてアンモニア蒸気とする。
【0025】
すなわち、この予混合器11は、液体アンモニアX5と水蒸気X4とを混合することにより、何れも気体であるアンモニア蒸気と水蒸気X4が混合した混合気X2を生成してガスタービン1の燃焼器1bに供給する。このような予混合器11は、例えば
図2(a)に示すように、本体部11a、入力ポート11b、出力ポート11c及び複数の噴霧ノズル11dを備える。
【0026】
本体部11aは、中空状の長尺容器であり、対向する一対の端壁部と当該一対の端壁部を接続する側壁部とを有する。入力ポート11bは、水蒸気X4が流入する開口であり、上記一対の端壁部の一方に設けられている。出力ポート11cは、混合気X2を排出する開口であり、上記一対の端壁部の他方に設けられている。複数の噴霧ノズル11dは、液体アンモニアX5を霧状に噴射するノズルであり、側壁部に離散的に設けられている。
【0027】
ここで、上記混合気X2におけるアンモニア蒸気は、主燃料X1を補助(主燃料X1の一部を混合気X2に代替すること)する副燃料としてガスタービン1の燃焼器1bに供給される。すなわち、炭素(C)を成分として含まないアンモニア蒸気を主燃料X1の代替燃料として燃焼器1bで燃焼させることにより、ガスタービン1における炭素酸化物の発生量を削減することができる。
【0028】
上記混合気X2における水蒸気X4は、ガスタービン1の燃焼器1bにアンモニア蒸気と共に混合気X2として供給されることで、燃料(アンモニア蒸気)起因のヒューエルNOx(窒素酸化物)の発生を抑制する効果を有する。このとき、水蒸気X4と液体アンモニアX5を予混合して混合気X2として燃焼雰囲気場に投入することで、副燃料の周囲の燃焼雰囲気場における酸素濃度を低下させることができ、副燃料に起因するヒューエルNOxの発生抑制効果が生じる。
【0029】
給水ポンプ12は、外部から給水された水を排熱回収ボイラ3に供給するポンプである。すなわち、この給水ポンプ12は、水の排熱回収ボイラ3への供給量を調節するポンプである。
【0030】
また、還元剤調節弁13は、アンモニアポンプ7と排熱回収ボイラ3とを接続する配管に設けられた流量調節弁である。この還元剤調節弁13は、液体アンモニアX5の排熱回収ボイラ3への供給量を最終的に設定する。すなわち、還元剤調節弁13は、弁体の開度を調節することによりアンモニアポンプ7から排熱回収ボイラ3に流通する液体アンモニアX5の通過流量を所定値に調節する。
【0031】
なお、図示していないが、本燃焼装置を発電システムへ適用した本実施形態には、各部の圧力や温度を検出する複数のセンサが備えられている。また、この発電システムは、上述した主燃料調節弁5、アンモニアポンプ7、アンモニア調節弁9、蒸気調節弁10、給水ポンプ12及び還元剤調節弁13等を上記各センサの検出値に基づいて統括的に制御する制御装置を備えている。更に、本実施形態に係る発電システムは、制御装置が各センサの検出値に基づいて各弁の開口度及び各ポンプの回転数を制御することによって、需要者が要求する電力を発生させる。なお、被駆動体がポンプ等であっても、本実施形態と同様、需要者の要求に見合う運転となるよう制御装置が主燃料弁などの調整を行う。
【0032】
次に、本燃焼装置を発電システムへ適用した実施形態における、本実施形態に係る発電システムの動作について詳しく説明する。
この発電システムでは、ガスタービン1の燃焼器1bにおいて、主燃料X1と混合気X2に含まれるアンモニア蒸気(副燃料)とが圧縮空気の存在下で燃焼することにより燃焼ガスを発生させる。
【0033】
そして、この燃焼ガスが燃焼器1bからタービン1cに供給されることによって回転動力が発生し、この回転動力によってタービン1cと軸結合した被駆動体2が回転駆動される。そして、この結果として例えば被駆動体2(発電機)が電力(交流電力)を発生させ、当該電力(交流電力)が発電システムの出力として外部の需要設備に供給される。また、ガスタービン1では、タービン1cと軸結合した圧縮機1aによって継続的に圧縮空気が生成されて燃焼器1bに供給される。
【0034】
このようなガスタービン1の動きに対して、主燃料X1は、主燃料調節弁5によって流量が調節された状態で主燃料供給装置4から燃焼器1bに順次供給される。また、混合気X2は、予混合器11において液体アンモニアX5と水蒸気X4とが予混合されることによって生成され、燃焼器1bに順次供給される。
【0035】
すなわち、上述した制御装置は、各センサから検出値として入力される液体アンモニアX5の圧力(アンモニア圧)、水蒸気X4の圧力(水蒸気圧)及び燃焼器1bの内圧(燃焼圧)を常時監視することにより、アンモニア圧>水蒸気圧>燃焼圧の条件(運転条件)が満たされるように、アンモニアポンプ7、アンモニア調節弁9及び蒸気調節弁10を制御する。
【0036】
ここで、上記アンモニア圧を高めるためにエネルギーが必要となるが、効率を考えるとこのようなエネルギーは最小化したい。このような事情から、上記アンモニア圧は、水蒸気への吹き込みに必要な圧力に、配管及び供給ノズルの圧力損失を考慮した必要最低限の圧力を総じて設定されている。
【0037】
すなわち、この発電システムでは、水蒸気の温度圧力については燃焼器への吹込みに必要な圧力と、液体アンモニアX5を気化させたうえで一定の温度を維持できるように考慮して設定される。また、水蒸気流量については、投入する液体アンモニアX5の気化に必要な量と排ガス中のNOx量に応じて調整される。
【0038】
また、アンモニアは液相で昇圧した方が気相で昇圧させる場合よりも小エネルギで済む。このような事情から、本実施形態に係る発電システムでは、予混合器11の前段に設けたアンモニアポンプ7で液体アンモニアX5を昇圧している。
【0039】
また、ガスタービン1の燃焼器1bでは、主燃料X1とアンモニア蒸気(副燃料)とを燃料とする燃焼反応が順次進行するが、この燃焼反応には混合気X2に含まれる水蒸気X4が介在するので、当該水蒸気X4の投入蒸気分だけ酸素濃度が低下し、以ってヒューエルNOxの発生が抑制される。
【0040】
さらに、このような燃焼器1bに供給されるアンモニア蒸気(副燃料)は、予混合器11において液体アンモニアX5が水蒸気X4と混合されて生成されたものである。すなわち、アンモニア蒸気(副燃料)は、水蒸気X4が保有している熱エネルギ(熱源)を流用して液体アンモニアX5を気化させたものであり、当該気化用に個別の熱源を必要とすることなく生成されたものである。
【0041】
したがって、本実施形態に係る発電システムによれば、液体アンモニアを気化させるために個別の熱源を必要とする従来技術よりも、システム全体としてのエネルギ効率を向上させることが可能である。なお、被駆動体がポンプ等であっても、本実施形態と同様、システム全体としてのエネルギ効率を向上させることが可能である。
【0042】
ここで、予混合器11、一方の端壁部の入力ポート11bから流入した水蒸気X4が他方の端壁部の出力ポート11cまで流通する間に液体アンモニアX5が噴霧される。すなわち、予混合器11噴霧ノズル11dは、水蒸気X4の流通流路に対して、側方の複数個所から液体アンモニアX5を噴霧する。このような予混合器11によれば、水蒸気X4と液体アンモニアX5とを均一に混合することが可能であり、また液体アンモニアX5をより確実に気化させることができる。
【0043】
また、この発電システムでは、タービン1cで動力回収された排ガスX3が排熱回収ボイラ3に供給される。そして、この排ガスX3が保有する排熱を用いて水蒸気X4が生成される。すなわち、この発電システムにおいて、水蒸気X4の生成に要する熱エネルギ(熱源)はガスタービン1の排熱である。
【0044】
そして、予混合器11では、このような排熱を用いて生成された水蒸気X4を用いることにより液体アンモニアX5が気化され、アンモニア蒸気(副燃料)が生成される。すなわち、この発電システムでは、ガスタービン1の排熱を用いることによりアンモニア蒸気(副燃料)が生成される。したがって、本実施形態に係る発電システムは、この点においても従来技術よりもシステム全体としてのエネルギ効率が良い。
【0045】
さらに、この発電システムでは、アンモニアポンプ7から吐出される液体アンモニアX5の一部が還元剤として排熱回収ボイラ3に供給される。すなわち、液体アンモニアX5は、還元剤調節弁13によって流量が適切に設定されて排熱回収ボイラ3の脱硝装置に供給される。そして、この液体アンモニアX5は、脱硝装置に供給されて排ガスX3と混合されることによって、排ガスX3中に含まれるNOxが還元処理(分解処理)される。このような本実施形態に係る発電システムによれば、排ガスに含まれるNOxを効果的に低減することが可能である。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、排熱回収ボイラ3を用いて水蒸気X4を生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、発電システムの外部から水蒸気(外部水蒸気)を取り込み、当該外部水蒸気の熱エネルギを用いてアンモニア蒸気(副燃料)を生成してもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、動力発生機としてタービン1c(ガスタービン1c)を採用したが、本発明はこれに限定されない。動力発生機については、例えばボイラと蒸気タービンとを採用してもよい。すなわち、この場合における本発明の燃焼器は、ボイラの燃焼室であり、燃焼室で主燃料X1とアンモニア蒸気(副燃料)とを燃焼させて生成した水蒸気を蒸気タービンに供給することにより回転動力を発生させる。
【0048】
また、この場合には、ボイラで発生させた水蒸気の一部を予混合器11に供給することにより、排熱回収ボイラ3を削除してもよい。
【0049】
また、液体アンモニアX5に脱水処理を施す装置として脱水器を設けてもよい。この脱水器は、内部に水分吸着性を有する所定の吸着剤、例えば粒状の活性炭が収容されており、液体アンモニアX5を通過させることにより水分を吸着する。このような脱水器は、例えば、アンモニアポンプ7とアンモニア調節弁9との間に設けられ、水分を除去あるいは低減させた脱水アンモニアをアンモニア調節弁9に供給する。
【0050】
(3)上記実施形態では、本体部11aの側壁部に複数の噴霧ノズル11dが設けられた予混合器11を採用したが、本発明はこれに限定されない。噴霧ノズル11dの個数は、必要に応じて単数でも良い。また、複数の噴霧ノズル11dの一部に選択的に液体アンモニアX5を供給してもよい。
【0051】
さらに、本発明の予混合器については上記実施形態の予混合器11に限定されず、
図2(b)、(c)及び
図3(a)、(b)に示す変形例が考えられる。なお、これら
図2(b)、(c)及び
図3(a)、(b)では、
図2(a)の予混合器11と同一な構成要素については同一符号を付している。
【0052】
図2(b)に示す予混合器11Aは、本体部11aに対して鋭角に角度設定された単一の噴霧ノズル11dを備える。この予混合器11Aは、本体部11a内における水蒸気X4の流れ方向に対して鋭角な方向から液体アンモニアX5を噴霧するので、水蒸気X4と液体アンモニアX5との混合性が良い。
【0053】
なお、この予混合器11Aにおける噴霧ノズル11dの個数については、単数に限定されず、複数であってもよい。また、複数の噴霧ノズル11dの配置については、水蒸気X4の流れ方向に沿って離散的に配置することが考えられる。
【0054】
図2(c)に示す予混合器11Bは、上記予混合器11Aにスワーラ11eを付加したものである。この予混合器11Bでは、水蒸気X4が旋回流として本体部11a内を流通するので、水蒸気X4と液体アンモニアX5との混合性を向上させることができる。
【0055】
なお、この予混合器11Bについては、必要に応じて液体アンモニアX5も旋回流としてもよい。すなわち、噴霧ノズル11d内に液体アンモニアX5を旋回流とする構造、例えば螺旋溝を設けることにより、液体アンモニアX5を霧状態かつ旋回状態で噴霧させる。また、水蒸気X4と液体アンモニアX5とを何れも旋回流としてもよい。
【0056】
図3(a)に示す予混合器11Cは、上記予混合器11Aに第1予熱器11f及び第2予熱器11gを付加したものである。第1予熱器11fは、入力ポート11bに設けられ、水蒸気X4を予熱するものである。一方、第2予熱器11gは、噴霧ノズル11dに設けられ、液体アンモニアX5を予熱するものである。
【0057】
この予混合器11Cでは、水蒸気X4は、本体部11aに流入する前に第1予熱器11fによって予熱される。また、液体アンモニアX5は、水蒸気X4に噴霧される前に第2予熱器11gによって予熱される。したがって、この予混合器11Cによれば、水蒸気X4と液体アンモニアX5との混合性を向上させることが可能であり、また液体アンモニアX5をより確実に気化させることが可能である。
【0058】
図3(b)に示す予混合器11Dは、上記予混合器11Cに蒸気付加部11hを付加したものである。この蒸気付加部11hは、出力ポート11cに付加的に設けられるものであり、本体部11a内で生成された水蒸気X4と液体アンモニアX5との混合気に水蒸気X4を追加混合させるものである。
【0059】
このような予混合器11Dでは、出力ポート11cから排出する水蒸気X4と液体アンモニアX5との混合気に水蒸気X4を追加混合させるので、本体部11a内で十分に気化しなかった液体アンモニアX5を追加混合する水蒸気X4によって確実に気化させることができる。
【0060】
なお、このように予混合器11Dについては、入力ポート11b、出力ポート11c及び噴霧ノズル11d等に水蒸気X4及び液体アンモニアX5の状態を検出するセンサ(例えば温度センサあるいは/及び圧力センサ)を設け、当該センサの検出結果に応じて蒸気付加部11hからの水蒸気X4の追加/非追加を制御してもよい。すなわち、水蒸気X4及び液体アンモニアX5の温度や圧力に応じて、出力ポート11cから排出される混合気に対する水蒸気X4の追加混合を決定してもよい。
【0061】
このような予混合器11Dによれば、例えば混合気に気化していない液体アンモニアX5が含まれる場合にのみ蒸気付加部11hから混合気に水蒸気X4が追加混合されるので、水蒸気X4の使用量を必要最小限に抑えることが可能である
【0062】
(4)上記実施形態では、還元剤としてアンモニアを用いたが、本発明はこれに限定されない。他の物質をNOx低減用の還元剤として採用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 ガスタービン
1a 圧縮機
1b 燃焼器
1c タービン
2 被駆動体(発電機)
3 排熱回収ボイラ
4 主燃料供給装置
5 主燃料調節弁
6 タンク
7 アンモニアポンプ(液体アンモニアポンプ)
9 アンモニア調節弁
10 蒸気調節弁
11,11A,11B,11C,11D 予混合器
11a 本体部
11b 入力ポート
11c 出力ポート
11d 噴霧ノズル
11e スワーラ
11f 第1予熱器
11g 第2予熱器
11h 蒸気付加部
12 給水ポンプ
13 還元剤調節弁