(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】液化ガス貯留タンク、及び船舶
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20230215BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F17C13/00 302E
B63B25/16 Z
(21)【出願番号】P 2019081680
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241054(JP,A)
【文献】特開2012-233534(JP,A)
【文献】実開昭60-026400(JP,U)
【文献】国際公開第2014/203530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液化ガスを貯留し、設置された位置での大気圧よりも大きな圧力まで対応可能な設計圧力を有する容器本体と、
前記容器本体の下部に貯留された液化ガスの液相中に設けられたポンプと、
前記容器本体の内外にわたって設けられ、一端が前記
ポンプの吐出口に接続され、他端が前記容器本体の外部に配置され、内部に前記液化ガスの導出流路を形成する導出配管と、
前記容器本体の外部で、前記容器本体における前記液化ガスの気相が存在する位置と、前記導出配管とを接続し、内部に接続流路を形成する接続管であり、前記接続管に設けられて前記接続流路を開閉可能な開閉弁を備え、前記容器本体の内部における前記液化ガスの
前記気相が存在する位置と、前記導出流路とを連通可能な連通部と、
前記開閉弁によって前記接続流路を開閉させる制御部と、
前記容器本体に設けられて前記液化ガスの前記気相が存在する位置と前記容器本体の外部とを連通可能な大気開放用配管と、
前記大気開放用配管の内部の流路を開閉可能とされ、前記容器本体の内部圧力が前記容器本体の設計圧力を超える前に前記容器本体の内部の前記気相を大気開放する安全弁と、
を備え
、
前記制御部は、
前記液化ガスを前記導出流路を通じて前記容器本体から導出させていないときに、前記開閉弁によって前記接続流路を開放させ、
前記液化ガスを前記導出流路を通じて前記容器本体から導出させる際に、前記開閉弁によって前記接続流路を閉塞させる
液化ガス貯留タンク。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記導出配管における前記一端と前記他端との間で前記導出流路を連通するとともに前記接続流路を閉塞する第一状態と、前記導出配管における前記一端と前記接続流路とを前記導出流路を介して連通することで前記接続流路を開放する第二状態とを切換え可能に設けられた三方弁である請求項
1に記載の液化ガス貯留タンク。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の液化ガス貯留タンクを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス貯留タンク、及び液化ガス貯留タンクを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGやLPG等の液化ガスを貯留するタンクが一般に知られている。タンクに貯留された液化ガスは、火力発電所で燃料として使用されたり都市ガスの原料として使われたりする。
また、このようなタンクを搭載した船舶も知られている(例えば特許文献1)。この種のタンクの内部にはポンプが設けられ、タンク内の液化ガスが配管を通じて主機へ送られ、船舶の燃料として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで例えば外気によってタンクが加熱されること等により、タンク内部で液化ガスが蒸発してタンク内部が大気圧よりも高圧となっている場合がある。このような場合に、例えばタンクの内部の液化ガスをタンク外部に取り出すための配管に設けられた弁のガスケットの不良や、配管の溶接不良等で配管に不具合が生じ、配管がその途中で大気中に開口してしまうと、タンク内の圧力と大気圧との圧力差によって液化ガスが押し出され、液化ガスの漏洩が止まらなくなり、大量の液化ガスが漏洩してしまう可能性がある。特に設計圧力(耐圧)が大きな中小型のタンクではタンク内の圧力と大気圧との差圧が大きくなり液化ガスの漏洩量が多くなってしまう。
また液化ガスの漏洩量が多くなる場合、漏れた液化ガスを受けるためのドリップトレイを大型化する必要があり、コスト増大につながる。
【0005】
そこで本発明では、簡易な構成で液化ガスの漏洩を抑制することが可能な液化ガス貯留タンク、及び船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様の液化ガス貯留タンクは、内部に液化ガスを貯留し、設置された位置での大気圧よりも大きな圧力まで対応可能な設計圧力を有する容器本体と、前記容器本体の下部に貯留された液化ガスの液相中に設けられたポンプと、前記容器本体の内外にわたって設けられ、一端が前記ポンプの吐出口に接続され、他端が前記容器本体の外部に配置され、内部に前記液化ガスの導出流路を形成する導出配管と、前記容器本体の外部で、前記容器本体における前記液化ガスの気相が存在する位置と、前記導出配管とを接続し、内部に接続流路を形成する接続管であり、前記接続管に設けられて前記接続流路を開閉可能な開閉弁を備え、前記容器本体の内部における前記液化ガスの前記気相が存在する位置と、前記導出流路とを連通可能な連通部と、前記開閉弁によって前記接続流路を開閉させる制御部と、前記容器本体に設けられて前記液化ガスの前記気相が存在する位置と前記容器本体の外部とを連通可能な大気開放用配管と、前記大気開放用配管の内部の流路を開閉可能とされ、前記容器本体の内部圧力が前記容器本体の設計圧力を超える前に前記容器本体の内部の前記気相を大気開放する安全弁と、を備え、前記制御部は、前記液化ガスを前記導出流路を通じて前記容器本体から導出させていないときに、前記開閉弁によって前記接続流路を開放させ、前記液化ガスを前記導出流路を通じて前記容器本体から導出させる際に、前記開閉弁によって前記接続流路を閉塞させる。
【0007】
このような貯留タンクでは、仮に容器本体の外部で導出配管に不具合が発生し、導出流路がその途中で大気へ開放されてしまうと、液化ガスの蒸発によって大気圧よりも容器本体の中が高圧となっている場合、液化ガスの液相が大気圧と容器本体の内部の圧力との圧力差により容器本体の外部に押し出されて漏洩してしまう。本態様ではこのような場合であっても、連通部によって液化ガスの気相と導出流路とを連通することによって導出流路の圧力を液化ガスの気相の圧力と同等にすることができる。この結果、容器本体の内部の圧力と導出流路の圧力を同等にすることができ、液化ガスの液相が容器本体の外部に押し出されて液化ガスの漏洩が止まらなくなることを回避できる。
【0009】
さらに、このように連通部として接続管を設け、接続管の接続流路を開閉弁によって開放することで、仮に容器本体の外部で導出配管に不具合が発生して導出流路がその途中で大気へ開放されてしまったとしても、接続管の接続流路によって液化ガスの気相を導出流路へ流入させることによって導出流路の圧力を液化ガスの気相の圧力と同等にすることができる。この結果、大気圧と容器本体の内部の圧力との圧力差によって液化ガスの液相が容器本体の外部に押し出されて液化ガスの漏洩が止まらなくなることを回避できる。また、開閉弁によって接続流路を閉塞することで導出配管に不具合が発生していない通常運転時には、液化ガスの液相が接続流路に流入してしまうことを回避でき、液化ガスの液相を導出配管を通じて容器本体の外部に導出する場合の流動損失を低減することができる。
さらに、このような弁を設けることで、容器本体の内部の圧力が設計圧力を超える前に容器内部の圧力を下げることができる。
【0010】
また、上記液化ガス貯留タンクでは、前記開閉弁は、前記導出配管における前記一端と前記他端との間で前記導出流路を連通するとともに前記接続流路を閉塞する第一状態と、前記導出配管における前記一端と前記接続流路とを前記導出流路を介して連通することで前記接続流路を開放する第二状態とを切換え可能に設けられた三方弁であってもよい。
【0011】
この場合、接続流路を開閉する機能と、導出流路を開閉する機能とを一つの三方弁で兼ねることができ、わざわざ接続流路を開閉する弁と、導出流路を開閉する弁とを別々に設ける必要がなくなり、コストダウンや省スペース化につながる。
【0013】
また、仮に容器本体の外部で導出配管に不具合が発生して液化ガスが導出流路の途中から漏洩した場合であっても、通常時は開閉弁によって接続流路を開放しておけば、液化ガスの液相が容器本体の外部に押し出されて液化ガスの漏洩が止まらなくなることを回避できる。一方で、液化ガスの液相を導出流路を通じて容器本体から導出させる必要が生じた際には、制御装置が開閉弁によって接続流路を閉塞させることで、液化ガスの液相を導出配管を通じて容器本体の外部に導出する場合の流動損失を低減することができる。
【0018】
本発明の第一の態様の船舶は、上記の液化ガス貯留タンクを備えている。
【0019】
このような船舶によれば、上記の液化ガス貯留タンクを備えることで、連通部によって液化ガスの気相を導出流路へ流入させることができ、導出流路の圧力を液化ガスの気相の圧力と同等にすることができる。この結果、仮に容器本体の外部で導出配管に不具合が発生して導出流路が大気に開放されてしまっても、液化ガスの液相が容器本体の外部に押し出されて液化ガスの漏洩が止まらなくなることを回避できる。
【発明の効果】
【0020】
上記の液化ガス貯留タンク、及び船舶によれば、簡易な構成で液化ガスの漏洩を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る船舶の側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る船舶における燃料タンクの縦断面図であって
図1のX-X断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る船舶における燃料タンクの縦断面図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係る船舶における燃料タンクの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係る船舶100について説明する。
図1に示すように、本実施形態の船舶100は、液化ガスとして液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)、又は、液化石油ガス(LPG;Liquefied Petroleum Gas)を輸送する液化ガス運搬船である。
図1に示すように、船舶100は、船体10、ブリッジ20、カーゴタンク30、主機40、及び燃料タンク(液化ガス貯留タンク)50を備えている。
【0023】
船体10は、舷側11、船底12及び上甲板13を有している。舷側11は、左右一対の舷側外板11aを有している。船底12は、これら左右の舷側外板11a同士を下部で接続する船底外板12aを有している。
【0024】
上甲板13は、船底12よりも上方で左右一対の舷側外板11aを接続している。上甲板13は、船首10aから船尾10bにわたって延びる暴露甲板である。上甲板13は、水平方向に延びている。船舶100の航行状態によっては船舶100の船尾10b側が下がることにより、上甲板13自体も船尾10b側が下方に傾斜する場合がある。
【0025】
船体10は、これら舷側11、船底12及び上甲板13によって、船首尾方向に直交する断面形状が略箱状となって、内部に空間が形成されている。船体10内における船尾10b側の部分は、機関室14とされている。船体10内における機関室14よりも船首10a側の部分は、機関室14と隔壁15aによって区画されたカーゴホールド15とされている。
【0026】
ブリッジ20は、船体10の上部から上方に向かって延びるように設けられている。ブリッジ20は、船体10の上部における船尾10b側に設けられており、かつ、機関室14の上方に設けられている。ブリッジ20は複数階層をなしている。ブリッジ20の上層には、船舶100を操縦するための操縦室21が設けられている。操縦室21は、船舶100の前方を高所から見渡せるようになっている。
【0027】
カーゴタンク30は、船体10のカーゴホールド15内に船首尾方向に複数(本実施形態では3つ)が配列されるように設けられている。隣り合うカーゴタンク30同士の間には、各カーゴタンク30が収容される区画を隔てる隔壁15bが設けられている。
【0028】
本実施形態のカーゴタンク30は、平板状のタンク壁部を互いに接合することによって構成された方形タンクである。カーゴタンク30内には、貨物としての液化ガス(LNGやLPG)が常圧低温状態で貯蔵される。なお、「常圧低温状態」とは、液化ガスを加圧することなく低温とすることのみで液化ガスの液化状態が維持されている状態を意味する。船舶100には、LPGを低温の液化状態に維持するための図示しない蒸発ガス処理装置が設けられている。蒸発ガス処理装置としては再液化装置が採用されている。再液化装置は、カーゴタンク30で液化ガスが外部の熱により蒸発することで排出された蒸発ガスを、カーゴタンク30の外部で冷却して再度液化させる。このように液化されたガスは、液化ガスとしてカーゴタンク30内に戻される。
【0029】
主機40は、船体10内の機関室14に配置されている。本実施形態の主機40はLNGやLPG等の液化ガスLGを燃料として駆動される。ここで、主機40の燃料となる液化ガスLGは、LNGやLPGに限られず、その他の液化ガス燃料等であってもよい。主機40の駆動によって、船体10の船尾10bの下方に設けられたスクリュー41が回転する。
【0030】
次に燃料タンク50について
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態では、燃料タンク50はタンク支持部51を介して上甲板13上に設けられている。燃料タンク50は、例えば船首尾方向に3つが配列されたカーゴタンク30のうちの中央のカーゴタンク30の上方の上甲板13上に設けられている。
【0031】
図2に示すように、燃料タンク50は、液化ガスLGを高圧状態で貯留可能な容器本体60と、容器本体60内の液化ガスLGを容器本体60の外部へ導出するポンプ62及び導出配管63と、容器本体60の外部で容器本体60の内部と導出配管63の内部とを連通する連通部65とを備えている。
【0032】
容器本体60は、耐圧容器によって形成されている。さらに容器本体60の設計圧力(耐圧)は、容器本体60の液面高さ位置hでの液化ガスLGの液頭圧よりも大きな圧力となっている。ここで液面高さ位置hとは、容器本体60の内面の上端から液化ガスLGの液面までの鉛直方向の距離を示す。1mあたりのLNGの液頭圧は約50〔kPa〕であるため、液化ガスLGがLNGであって容器本体60の液面高さ位置hが2〔m〕である場合、容器本体60の設計圧力は約100kPaよりも大きくなっている。即ち容器本体60内の圧力は容器本体60内の液化ガスLGの液相Lを容器本体60の上部まで押し上げるに足る圧力であり、その結果、容器本体60内の圧力が大気圧よりも大きく、かつ、液化ガスLGの液相Lを押し出すことがあり得る。
【0033】
容器本体60の上部には、液化ガスLGの気相Gが存在する位置と容器本体60の外部とを連通可能な大気開放用配管72と、大気開放用配管72の内部の流路を開閉可能な安全弁71とが設けられている。安全弁71は容器本体60の内部の圧力が設計圧力を超える前に容器の内部の気相を大気へ開放可能となるように設けられている。
【0034】
ポンプ62は、容器本体60の内部に設けられて、容器本体60の内部の液化ガスLGを主機40に圧送する。ポンプ62を駆動させるための電動機等の駆動部は、容器本体60の内部に設けられていてもよいし、容器本体60の外部に設けられていてもよい。特に容器本体60に貯留された液化ガスLGは絶縁性を有するため、容器本体60内に駆動部を設けても問題はない。ポンプ62は容器本体60の内部で容器本体60の下部に貯留された液化ガスLGの液相L中に配置されるように、容器本体60の底部60a、若しくは底部60aに近接して設けられている。
【0035】
導出配管63は、容器本体60の内外にわたって鉛直方向に延びて設けられている。よって導出配管63は容器本体60の上部から上方に延びている。導出配管63の一端は容器本体60の内部でポンプ62の吐出口(不図示)に接続されている。即ち、導出配管63の一端は液化ガスLGの液相Lの中に開口している。導出配管63の他端は 主機40に接続されている。即ち、導出配管63の他端は容器本体60の外部に配置されている。導出配管63の内部には、容器本体60内の液化ガスLGの液相Lを流通させて主機40に導く導出流路64が形成されている。容器本体60内では、液化ガスLGの液相Lの液面上に、液化ガスLGが蒸発して生成された気相Gが存在している。
【0036】
連通部65は本実施形態では、容器本体60の内部における液化ガスLGの気相Gが存在する位置と、導出流路64とを連通可能な接続流路66を内部に有する接続管である。接続管は、容器本体60の外部に設けられ、容器本体60と主機40との間で導出配管63から分岐して気相Gが存在する容器本体60における上部に接続されている。
【0037】
接続管には、接続流路66を開閉可能な開閉弁67が設けられている。開閉弁67は例えば遠隔操作弁であって、接続管が導出配管63から分岐する位置に設けられた三方弁である。三方弁は導出配管63の一端と他端との間で導出流路64を連通するとともに接続流路66を閉塞する第一状態S1と、導出配管63における一端と接続流路66とを導出流路64を介して連通することで接続流路66を開放する第二状態S2とを切換え可能に設けられている。例えば三方弁は手動弁であってもよい。
【0038】
ここで燃料タンク50は、開閉弁67を動作させる制御装置75をさらに備えている。制御装置75はプロセッサ等を有し、動作指令に基づき開閉弁67の第一状態S1と第二状態S2とを切り換える。本実施形態では、通常では開閉弁67は接続流路66を開放する第二状態S2とされており、液化ガスLGを導出流路64を通じて容器本体60から導出させる際に、制御装置75が開閉弁67を第一状態S1として、開閉弁67によって接続流路66を閉塞するようになっている。
【0039】
以上説明した本実施形態の船舶100では、燃料タンク50の容器本体60の外部で導出配管63に不具合が発生し、導出流路64がその途中で大気へ開放されてしまう場合が想定される。「不具合」とは、例えば
図2のA部に示すように開閉弁67のガスケット(不図示)の不良で、容器本体60の外部で、導出配管63の途中で導出流路64が大気に開口してしまうような状態を示す。
【0040】
このような不具合が生じている場合に、液化ガスLGの蒸発によって大気圧よりも容器本体60の中が高圧となっていると、容器本体60内の液化ガスLGの液相Lが、大気圧と容器本体60の内部の圧力との圧力差により容器本体60の外部に押し出されて漏洩してしまう。本実施形態ではこのような場合であっても連通部65である接続管によって液化ガスLGの気相Gを導出流路64へ流入させることができるため、導出流路64内の圧力を液化ガスLGの気相Gの圧力と同等にすることができる。
【0041】
この結果、大気圧と容器本体60の内部の圧力との圧力差によって液化ガスLGの液相Lが容器本体60の外部に勝手に押し出されてしまい、液化ガスLGの漏洩が止まらなくなることを回避できる。従って液相Lが漏洩し続け、容器本体60内の液化ガスLGの多くか、または、ほとんど全てが容器本体60の外に排出されてしまうことを回避できる。このように、接続管を容器本体60に設けるといった簡易な構成で、液化ガスLGのタンクからの漏洩を抑制することができる。そして、漏洩した大量の液化ガスLGを受けるための大型のドリップトレイを設ける必要もなくなる。
【0042】
さらに、船舶100の航行中に容器本体60の外部で導出配管63に上記のような不具合が発生して液化ガスLGが導出流路64から漏洩した場合であっても、常時、開閉弁67を第二状態S2として接続流路66を開放しておけば、接続流路66と導出流路64とを連通して導出流路64の圧力を液化ガスLGの気相Gの圧力と同等にしておくことができる。この結果、液化ガスLGの漏洩を抑制できる。また、液化ガスLGを、導出流路64を通じて容器本体60から導出させる必要が生じた際、即ち主機40へ液化ガスLGを供給する際には、制御装置75が開閉弁67を第一状態S1として接続流路66を閉塞することができるので、液化ガスLGを、導出配管63を通じて主機40へ向けて導出する場合の流動損失を低減することができる。
【0043】
また安全弁71を設けることで、容器本体60の内部の圧力が設計圧力を超える前に容器本体60内部の圧力を下げることができる。
【0044】
〔第二実施形態〕
次に
図3を参照して本発明の第二実施形態に係る船舶100について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。本実施形態の船舶100では、燃料タンク80が第一実施形態とは異なる。
【0045】
燃料タンク80における開閉弁87は連通部85としての接続管に設けられた遠隔操作弁である。導出配管63には開閉弁67とは別に導出弁88が設けられている。導出弁88は液化ガスLGを主機40に供給する必要が生じた際に導出流路64を開放してもよいし、常に導出流路64を開放していてもよい。導出弁88は導出配管63から接続管が分岐する位置よりも主機40側に設けられている。なお、開閉弁87は手動弁であってもよい。
【0046】
開閉弁87は制御装置75によって動作させられる。本実施形態では、通常は開閉弁87は接続管の接続流路86を開放しており、液化ガスLGを導出流路64を通じて容器本体60から導出させて主機40に供給する際に、制御装置75が開閉弁87を動作させて開閉弁87によって接続流路86を閉塞するようになっている。
【0047】
以上説明した本実施形態の船舶100では、導出配管63に不具合が生じて導出流路64が大気へ開放されてしまった場合、接続管によって液化ガスLGの気相Gを導出流路64へ流入させることができる。このため導出流路64内の圧力を液化ガスLGの気相Gの圧力と同等にすることができる。この結果、液相Lが容器本体60から漏洩し続け、容器本体60内の液化ガスLGの全てが容器本体60の外に排出されてしまうことを抑制できる。よって接続管を容器本体60に設けるといった簡易な構成で、液化ガスLGの漏洩を抑制することができる。
【0048】
さらに、船舶100の航行中に容器本体60の外部で導出配管63に不具合が発生して液化ガスLGが導出流路64から漏洩した場合であっても、常時開閉弁87によって接続流路86を開放しておけば液化ガスLGの漏洩を抑制できる。また、液化ガスLGを、導出流路64を通じて容器本体60から導出させ、主機40に供給する必要が生じた際には、制御装置75が開閉弁87を動作させて接続流路86を閉塞することができる。よって、液化ガスLGを、導出配管63を通じて容器本体60の外部に導出する場合の流動損失を低減することができる。
【0049】
また、連通部85としての接続管、及び開閉弁87を備えない燃料タンクにも、これら接続管及び開閉弁87を追設するのみで、容易に液化ガスLGの漏洩抑制が可能となる。
【0050】
〔第三実施形態〕
次に
図4を参照して本発明の第三実施形態に係る船舶100について説明する。以下に説明する第三実施形態においては、第一実施形態及び第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。本実施形態の船舶100では、燃料タンク90が第一実施形態及び第二実施形態とは異なる。
【0051】
燃料タンク90は、上記の接続管及び開閉弁67、87を備えていない。即ち、本実施形態では連通部95は、容器本体60の内部における液化ガスLGの気相Gが存在する位置と、導出流路64とを連通するように、容器本体60の内部で導出配管63に設けられた連通孔である。
【0052】
例えば導出配管63の内径が40〔mm〕である場合、連通孔の直径は10〔mm〕以上20〔mm〕以下であるとよい。
【0053】
以上説明した本実施形態の船舶100では、連通部95として連通孔を設けることで、非常に簡易な構成で、液化ガスLGの気相Gを、導出流路64とへ流入させることができ、導出流路64内の圧力を液化ガスLGの気相Gの圧力と同等にすることができる。この結果、仮に容器本体60の外部で導出配管63に不具合が発生して導出流路64が大気へ開放されてしまっても、大気圧と容器本体60の内部の圧力との圧力差によって液化ガスLGの液相Lが容器本体60の外部に押し出されてしまうことを抑制できる。よって非常に簡易な構成で容器本体60からの液化ガスLGの漏洩が止まらなくなることを回避できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0055】
例えば、導出配管63に不具合が生じた際にセンサで漏洩を検知し、センサの検知結果に基づいて制御装置75が開閉弁67、87を動作させ、接続流路66、86を開放してもよい。また制御装置75は安全弁71を制御してもよい。
【0056】
導出配管63は、主機40へ液化ガスLGを供給するための配管である場合に限られない。例えば主機40へ液化ガスLGを供給するための配管とは別に設けられたサンプリング管であってもよい。サンプリング管とは、容器本体60内の液化ガスLGをサンプリング用に取り出すための配管である。
【0057】
また、安全弁71は容器本体60の中の気相Gの部分に接続された配管に設けられた開閉弁でもよい。
【0058】
また液化ガス貯留タンクは船舶100に搭載された燃料タンク50である場合に限られず、例えば地上に設けられた液化ガス貯留タンクであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…船体
10a…船首
10b…船尾
11…舷側
11a…舷側外板
12…船底
12a…船底外板
13…上甲板
14…機関室
15…カーゴホールド
15a…隔壁
15b…隔壁
20…ブリッジ
21…操縦室
30…カーゴタンク
40…主機
41…スクリュー
50、80、90…燃料タンク(液化ガス貯留タンク)
51…タンク支持部
60…容器本体
60a…底部
62…ポンプ
63…導出配管
64…導出流路
65、85、95…連通部
66、86…接続流路
67、87…開閉弁
75…制御装置
71…安全弁
72…大気開放用配管
88…導出弁
100…船舶
LG…液化ガス
L…液相
G…気相
S1…第一状態
S2…第二状態