(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
(21)【出願番号】P 2019101406
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】葛原 豊
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219946(JP,A)
【文献】特開2000-295841(JP,A)
【文献】特開2007-135336(JP,A)
【文献】特開2008-111614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と二次側が非絶縁状態であるトランスを備えた電源回路と、
絶縁が必要な負荷を搭載した絶縁回路を、上記電源回路に電気的に接続するためのアダプタと、が設けられていることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
上記アダプタは、上記絶縁回路を上記電源回路に着脱自在に接続するソケットであることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
上記電源回路に、上記絶縁回路を、上記アダプタを用いて接続したときに、当該絶縁回路を固定する固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
電力供給する電源装置を備えた空気調和機の室内機であって、
上記電源装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の電源装置であることを特徴とする室内機。
【請求項5】
上記電源装置は、絶縁回路を介して、複数の空気調和機を制御するためのホームオートメーションシステムに接続可能であることを特徴とする請求項4に記載の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に空気調和機の室内機に搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2等に開示された空気調和機の室内機に搭載される電源装置は、例えば
図6に示すように、二次側のスイッチング電源のグランドや5V電源、12V電源は、一次側の平滑用コンデンサのグランドや回路と絶縁された絶縁回路である。また、ホームオートメーションシステム(以下、HAシステムと称する)に接続するための通信回路(以下、HA通信回路と称する)は、二次側のスイッチング電源回路のグランドや5V電源と接続させた回路であり、一次側の回路と絶縁した絶縁回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-81723号公報
【文献】特開2008-111614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように、HAシステムに接続させるHA通信回路は絶縁が必要な負荷回路である。元々、HA通信回路自体は部品点数が少ないため、従来のように電源装置が絶縁回路の場合には、そのままHA通信回路を組み込んでも電源装置全体の部品点数の増加は少なかった。
【0005】
しかしながら、電源装置が、一次側と二次側とを非絶縁状態として、一次側から二次側へと電力供給を可能とした非絶縁回路の場合、HA通信回路を絶縁させるためには、フォトカプラや抵抗を実装した回路を別途設ける必要がある。このため、電源装置の部品点数が増加するという問題が生じる。
【0006】
本発明の一態様は、非絶縁回路である電源装置に対して、絶縁が必要な負荷回路を追加する際の部品点数の増加を抑制できる電源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電源装置は、一次側と二次側が非絶縁状態であるトランスを備えた電源回路と、絶縁が必要な負荷を搭載した絶縁回路を、上記電源回路に電気的に接続するためのアダプタと、が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、非絶縁回路である電源装置に対して、絶縁が必要な負荷回路を追加する際の部品点数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電源装置の回路図である。
【
図2】
図1に示す電源装置を備えたエアコンがHAシステムに接続した状態を示す回路図である。
【
図4】
図3に示す電源装置に取付け可能なHA通信回路基板の概略構成図である。
【
図5】
図3に示す回路基板に
図4に示すHA通信回路基板を取付けた例を示し、(a)は平面図、(b)は、(a)のXX線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の電源装置をエアコンの室内機に搭載された例について説明する。
【0011】
(電源装置101)
図1は、本実施形態に係る電源装置101の回路図である。
【0012】
電源装置101は、
図1に示すように、SW(スイッチング)トランスの一次側と二次側とで、接地電位(0V)が共通化されている。換言すれば、電源装置101は、SWトランスの一次側の平滑用コンデンサのGND(0V)と二次側のマイコンのGND(0V)とを電気的に接続して、非絶縁回路としている。
【0013】
電源装置101のSWトンラスの二次側において、PCI(プラズマクラスターイオン)発生回路11は、非絶縁回路と絶縁されている。換言すれば、PCI(プラズマクラスターイオン)発生回路11は、電源12V(A)とは別の絶縁された巻き線によりプラズマクラスター駆動用電源12V(B)を作り、1個のフォトカプラを用いることで、電源12V(A)側の回路と絶縁されている。
【0014】
電源装置101は、一次側の電源と、二次側のマイコンからの信号線に接続された通信端子10を備えている。通信端子10は、ホームオートメンションシステム(以下、HAシステムと称する)に接続するためのHA通信回路102(後述)を接続するための端子である。
【0015】
(システム全体)
図2は、エアコン1がHAシステム2に接続されたシステム構成を示す図である。
【0016】
エアコン1は、電源装置101に接続されたHA通信回路102を介してHAシステム2に接続されている。なお、HAシステム2には、複数のエアコン1が接続されている。
【0017】
HA通信回路102は、電源装置101の通信端子10に接続されると共に、HAシステム2の端子30にも接続されている。具体的には、HA通信回路102の端子20aに、電源装置101の通信端子10が接続され、HA通信回路102の端子20bに、HAシステム2の端子30が接続されている。
【0018】
電源装置101とHA通信回路102との接続線として、非絶縁の5V電源(VCC5)に接続された線、絶縁した5V電源(VCC5)に接続された線、絶縁した回路のGNDに接続された線、HAシステム2への入出力信号を送信するための線(HA_IN、HA_OUT)が必要であり、通信端子10には、これらの線が接続されている。
【0019】
従って、HA通信回路102は、電源装置101の通信端子10からの各種信号を、端子20aを介して受信し、HAシステム2に端子20bから送信する一方、HAシステム2からの信号を端子20bで受信して、端子20aから電源装置101に送信している。
【0020】
(HA通信回路102の設置)
図3は、電源装置101のメイン基板101aの平面図である。
図4は、HA通信回路102の平面図である。
図5は、メイン基板101aにHA通信回路102を搭載した例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のXX線矢視断面図である。
【0021】
メイン基板101aには、HA通信回路102を電気的に接続するためのアダプタとしてのソケット103が形成されている。すなわち、電源装置101は、一次側と二次側が非絶縁状態であるSWトランスを備えたメイン基板(電源回路)101aと、絶縁が必要な負荷を搭載した絶縁回路であるHA通信回路102と、HA通信回路102をメイン基板101aに電気的に接続するためのソケット103とを備えている。
【0022】
ソケット103は、上述した電源装置101の通信端子10に接続されている。
図5の(a)(b)に示すように、HA通信回路102をメイン基板101aに搭載する際に、当該HA通信回路102の裏面102bに形成された端子20a(
図2)のそれぞれの信号線に接続されたピン(図示せず)がソケット103に挿入される。これにより、電源装置101にHA通信回路102が電気的に接続される。
【0023】
HA通信回路102は、
図4に示すように、表面102aが絶縁状態に加工されている。従って、HA通信回路102を電源装置101のソケット103に接続した状態であれば、人が当該HA通信回路102の表面102aに触れても問題無いようになっている。
【0024】
また、メイン基板101aに、HA通信回路102を、ソケット103を用いて接続したときに、当該HA通信回路102を固定する固定部材として棒状の固定用スペーサ104が設けられている。つまり、HA通信回路102は、電源装置101のソケット103に接続した状態で、さらに、電源装置101のメイン基板101a上のソケット103近傍に形成された棒状の固定用スペーサ104によって固定される。具体的には、HA通信回路102がソケット103に接続された状態で、当該HA通信回路102の裏面102bから表面102aに向かって固定用スペーサ104が貫通する位置に孔を形成する。これにより、HA通信回路102をソケット103に接続する際に、当該孔から固定用スペーサ104を貫通させることで、HA通信回路102をメイン基板101aの所定の位置に確実に固定することが可能となる。
【0025】
(効果)
図1に示す電源装置101による効果について、
図6に示す電源装置201を参照しながら以下に説明する。
【0026】
図6に示す電源装置201では、SWトランスの一次側と二次側とで絶縁された絶縁回路を構成しているため、当然、HA通信回路102に接続するための通信端子10も絶縁されている。通信端子10に接続される二次側からの信号線にフォトカプラを設けて、当該通信端子10と二次側とを絶縁状態にしている。
【0027】
一方、
図1に示す電源装置101では、SWトランスの一次側の平滑用コンデンサのGND(0V)と二次側のマイコンのGND(0V)とを電気的に接続して、非絶縁回路を構成しているため、通信端子10には二次側からの信号線が直接接続されている。つまり、通信端子10と二次側とが非絶縁状態であるため、
図6に示すように、通信端子10に接続される二次側からの信号線に絶縁用のフォトカプラを設ける必要はない。
【0028】
従って、
図1に示す非絶縁回路構成の電源装置101は、
図6に示す絶縁回路構成の電源装置201よりも、通信端子10を絶縁するためのフォトカプラ等の部品数分だけ、全体の構成部品の数が少なくて済む。
【0029】
しかも、通信端子10に絶縁回路構成のHA通信回路102を電気的に接続することで、メイン基板である電源装置101は非絶縁回路構成であっても、人が触れそうな部分(通信端子10)を当該HA通信回路102によって絶縁することができる。つまり、メイン基板が非絶縁回路構成であっても、安全対策を容易に行うことができるという効果がある。
【0030】
また、HA通信回路102は、電源装置101に対して必要に応じて接続することができる別基板で構成できるため、HAシステムが必要なユーザのみ、HA通信回路102を電源装置101に接続すればよいことになる。
【0031】
非絶縁回路構成の電源装置において、HAシステムを用いるためのHA通信回路を別基板としない場合には、当該HA通信回路分だけパターン間距離を確保する必要がある。つまり、本来、HAシステムが不要なユーザに対しても、上記パターン間距離を確保する必要がある。
【0032】
しかしながら、HA通信回路102を電源装置101に対して着脱自在な別基板とすることで、メイン基板である電源装置101において、HA通信回路分だけパターン間距離を確保する必要がない。
【0033】
そして、上記構成の電源装置101を備えたエアコンの室内機であれば、HAシステムを用いる場合の室内機の新規設置を容易にできるだけなく、既にHAシステムを使用しているエアコンの室内機に容易に且つ早く取り替えることができる。これは、室内機を取り替えて、電源装置101に別基板であるHA通信回路102を取付けるだけで、HAシステムを直ぐに利用できるためである。
【0034】
なお、本実施形態では、非絶縁回路構成の電源装置101をエアコン1の室内機に搭載し、当該電源装置101に取付ける絶縁回路としてHA通信回路102を用いた例について説明したが、取付ける絶縁回路としては、PCI(プラズマクラスターイオン)発生回路、リモコン受光回路等の他の絶縁が必要な負荷回路であってもよい。
【0035】
また、上記構成の電源装置101では、HA通信回路102等の絶縁が必要な負荷回路を別基板としているため、エアコン1の室内機に搭載することは好適であるが、室外機のようにユーザが直接触れる機会が極めて少ないような機器の電源装置に適用してもよい。
【0036】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電源装置は、一次側と二次側が非絶縁状態であるSWトランスを備えた電源回路(メイン基板101a)と、絶縁が必要な負荷を搭載した絶縁回路(HA通信回路102)と、上記電源回路(メイン基板101a)に電気的に接続するためのアダプタ(ソケット103)と、を備えている。
【0037】
上記の構成によれば、非絶縁回路である電源回路に対して、絶縁回路を必要に応じて取付けることができる。これにより、非絶縁回路構成の電源回路内に、絶縁が必要な負荷回路を設ける場合のように、絶縁のための回路部品(フォトカプラ等)が不要となるため、電源装置全体の部品点数を削減できる。
【0038】
本発明の態様2に係る電源装置は、上記態様1において、アダプタ(ソケット103)は、絶縁回路(HA通信回路102)を電源回路(メイン基板101a)に着脱自在に接続できるように構成されている。上記構成によれば、絶縁回路の電源回路への着脱を容易にできる。
【0039】
本発明の態様3に係る電源装置は、上記態様1または2において、上記電源回路(メイン基板101a)に、上記絶縁回路(HA通信回路102)を、上記アダプタ(ソケット103)を用いて接続したときに、当該絶縁回路(HA通信回路102)を固定する固定部材(固定用スペーサ104)が設けられてもよい。
【0040】
上記構成によれば、絶縁回路を電源回路に対して適切な位置で確実に接続させることができる。
【0041】
本発明の態様4に係る室内機は、電力供給する電源装置(101)を備えた空気調和機の室内機(1)であって、上記電源装置(101)は、上記態様1~3の何れか1態様に記載の電源装置(101)であってもよい。
【0042】
上記構成によれば、室内機の新規設置、取り替え設置を安全、且つ容易に行うことができる。
【0043】
本発明の態様5に係る室内機は、上記態様4において、上記電源装置(101)は、絶縁回路(HA通信回路102)を介して、複数の空気調和機を制御するためのホームオートメーションシステム(HAシステム2)に接続可能であってもよい。
【0044】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 エアコン
2 HAシステム
10 通信端子
11 PCI発生回路
20a 端子
20b 端子
30 端子
101 電源装置
101a メイン基板(電源回路)
102 HA通信回路(絶縁回路)
102a 表面
102b 裏面
103 ソケット(アダプタ)
104 固定用スペーサ(固定部材)
201 電源装置