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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】リザーバタンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
F01P11/00 C
F01P11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019128711
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021011866
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019124309
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】次井 瑛治
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053830(JP,A)
【文献】特開2015-028336(JP,A)
【文献】特開2007-120361(JP,A)
【文献】特開2008-190443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0190385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、
冷却液を貯留するタンク室と、
タンク室の鉛直方向下側に隣接して設けられた気液分離室と、
タンク室と気液分離室の間を仕切る隔壁と、
リザーバタンクに冷却液を送り込む流入管と、
リザーバタンクから冷却液を排出する排出管を有しており、
前記流入管と前記排出管は気液分離室に接続されており、
前記隔壁には、タンク室と気液分離室を連通する連通穴が設けられ、
かつ、リザーバタンクには、タンク室と排出管を連通する吸出し穴もしくは、タンク室と気液分離室の排出管近傍を連通する吸出し穴が設けられており、
吸出し穴が設けられた位置での排出管内もしくは気液分離室内の冷却液の流速が、連通穴が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速よりも、速くなるようにされており、かつ、気液分離室が円筒状の壁を有し、冷却液を壁に沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡を集めるよう、気液分離室が構成され、
連通穴が円弧の半径方向内側に設けられた
リザーバタンク。
【請求項2】
気液分離室において、冷却水が、前記円筒状の壁に沿って円弧状に湾曲して流れて排出管に導かれる、
請求項1に記載のリザーバタンク。
【請求項3】
冷却液の流れ方向に直交する断面で測って、吸出し穴が設けられた位置での排出管もしくは気液分離室の流路の断面積が、連通穴が設けられた位置での気液分離室の断面積よりも小さい
請求項1または請求項2に記載のリザーバタンク。
【請求項4】
吸出し穴が設けられる位置における排出管もしくは気液分離室の流路の断面積が、吸出し穴の断面積よりも大きい
請求項1または請求項2に記載のリザーバタンク。
【請求項5】
吸出し穴の断面積が、連通穴の断面積よりも小さい
請求項1または請求項2に記載のリザーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバタンクに関する。特に液冷式冷却システムの冷却水経路に設けられるリザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液冷式冷却システムは、内燃機関や電気素子、電子基板等の冷却に活用されている。液冷式の冷却システムでは、冷却液を循環させて、冷却対象部材から熱を集めて、熱放出器から熱を放散して、冷却対象部材を冷却する。液冷式の冷却システムにおいて、冷却液を循環させる冷却液経路中に、冷却液のタンク、すなわちリザーバタンクを設けることがある。リザーバタンクは、冷却液の気化等による減少を補ったり、冷却液の温度変化による体積変化を吸収したりする。また、冷却液中に気泡が生じると、冷却効率が低下することがあるため、リザーブタンクにより冷却液中の気泡を分離する、すなわち気液分離を行うことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、リザーブタンク本体の中に、矩形状のバッフルプレートを、特定の向きの風車状となるように配置する技術が開示されている。当該リザーブタンクによれば、通水抵抗の増加や構造の複雑化を招かずに冷却液から気泡を分離できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-248753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷却システムをより高性能化するために、特許文献1のようなリザーブタンクを通過する冷却液の流量をより増加させたいとの要請が生じてきている。しかしながら、特許文献1のようなリザーブタンクにおいてリザーブタンクを通過する冷却液の流量が増加すると、タンク本体内部に流れ込んだ冷却液が波打つように暴れやすく、タンク内の空気を巻き込んでしまい、期待するレベルの気液分離効果が得られにくいことが判明した。
【0006】
本発明の目的は、タンク本体内部の液面のあばれを抑制しつつ、気液分離処理が行えるリザーブタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、リザーバタンク内で冷却液の主流が流れる気液分離室と、タンク室とを隔壁により上下方向に間仕切りして配置し、気液分離室内で気泡が集まりやすい部分に、上記隔壁を貫通する連通穴を設ける一方で、タンク室と排出口を直接もしくは間接的に吸出し穴で連通させると、上記課題が解決できることを着想し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、冷却液を貯留するタンク室と、タンク室の鉛直方向下側に隣接して設けられた気液分離室と、タンク室と気液分離室の間を仕切る隔壁と、リザーバタンクに冷却液を送り込む流入管と、リザーバタンクから冷却液を排出する排出管を有しており、前記流入管と前記排出管は気液分離室に接続されており、前記隔壁には、タンク室と気液分離室を連通する連通穴が設けられ、かつ、リザーバタンクには、タンク室と排出管を連通する吸出し穴もしくは、タンク室と気液分離室の排出管近傍を連通する吸出し穴が設けられており、吸出し穴が設けられた位置での排出管内もしくは気液分離室内の冷却液の流速が、連通穴が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速よりも、速くなるようにされており、かつ、気液分離室が円筒状の壁を有し、冷却液を壁に沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡を集めるよう、気液分離室が構成され、連通穴が円弧の半径方向内側に設けられたリザーバタンクである(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、気液分離室において、前記円筒状の壁に沿って円弧状に湾曲して流れた冷却水が、排出管に導かれる(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、冷却液の流れ方向に直交する断面で測って、吸出し穴が設けられた位置での排出管もしくは気液分離室の流路の断面積が、連通穴が設けられた位置での気液分離室の断面積よりも小さくされる(第発明)。また、第1発明において、好ましくは、吸出し穴が設けられる位置における排出管もしくは気液分離室の流路の断面積が、吸出し穴の断面積よりも大きくされる(第発明)。また、第1発明において、好ましくは、吸出し穴の断面積が、連通穴の断面積よりも小さくされる(第発明)
【発明の効果】
【0010】
第1発明または第2発明のリザーバタンクによれば、タンク本体内部の液面のあばれを抑制しつつ、気液分離処理が行えるという効果が得られる。これら発明では、気液分離室内での気泡の分離が促進され、気液分離効果がより高められる。また、さらに、第発明や第発明、第発明のリザーバタンクとした場合には、より液面のあばれを抑制しながら、気液分離効果がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示すX-X断面図である。
図3】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示すY-Y断面図である。
図4】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示すY-Y断面図である。
図5】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示すA-A断面図である。
図6】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示すY-Y断面図である。
図7】第2実施形態のリザーバタンクの構造を示す分解斜視図である。
図8】第2実施形態のリザーバタンクの作用を示すY-Y断面図である。
図9】第2実施形態のリザーバタンクの作用を示すX-X断面図である。
図10】第3実施形態のリザーバタンクの構造及び作用を示すX-X断面図である。
図11】第4実施形態のリザーバタンクの構造及び作用を示すX-X断面図である。
図12】第5実施形態のリザーバタンクの構造を示すX-X断面図である。
図13】第6実施形態のリザーバタンクの構造を示すX-X断面図である。
図14】第6実施形態のリザーバタンクの構造と作用を示すA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照しながら、自動車の内燃機関の液冷式冷却システムに設けられるリザーバタンクを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。液冷式冷却システムの用途は、内燃機関に限定されず、パワー素子やインバータなどの電気素子や電子回路基板等の電気部品を冷却する用途であってもよく、他の用途であってもよい。
【0013】
図1図2図3に第1実施形態のリザーバタンク10の構造を示す。図1では、リザーバタンク10の主要部材を分解したように斜視図で示している。リザーバタンク10は、中空のタンクに流入管15と排出管16が接続されて構成されている。液冷式冷却システムの冷却液経路の中で、リザーバタンク10は、流入管15から中空のタンク内に冷却液が流れこみ、中空のタンクから排出管16に冷却液が流れ出ていくように、冷却液経路中に配置・接続されて使用される。
【0014】
図2に、図1のX-X軸を含む鉛直面でリザーバタンク10の断面を取った断面図を示し図2の上側が鉛直方向上側を示している。また、図3に、図2のY-Y軸を含む水平面でリザーバタンク10の断面を取った断面図を示す。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12と隔壁13が一体化されて、リザーバタンク10が構成されている。下側ケース11と上側ケース12とが一体化されることにより、中空のタンクが構成され、かかるタンクが隔壁13により間仕切りされる。本実施形態では、隔壁13は平板状に形成され、ほぼ水平に延在して中空のタンクを間仕切りしている。
【0015】
隔壁13により間仕切りされた中空のタンクの上側の部屋(空間)をタンク室17と呼ぶ。タンク室17には、冷却液が貯留される。タンク室は、上側ケース12と隔壁13により囲われている。また、隔壁13により間仕切りされた中空のタンクの下側の部屋(空間)を気液分離室18と呼ぶ。気液分離室18は、下側ケース11と隔壁13により囲われている。気液分離室18は、タンク室17に隔壁13を介して隣接するよう、タンク室17の鉛直方向下側に設けられている。
【0016】
リザーバタンク10が使用される際には、気液分離室18は冷却液により実質的に満たされる。また、使用時には、タンク室17は、大部分が冷却液に満たされるとともに、タンク室17の上部に空気が貯留される。すなわち、使用時は隔壁13は全体が冷却液中に浸漬されるよう配置される。必須ではないが、隔壁13の外周部分と上側ケース12や下側ケース11との間は、冷却液が行き来しないよう接合されることが好ましい。
【0017】
即ち、液冷式冷却システムの冷却水経路に設けられるリザーバタンク10は、冷却液を貯留するタンク室17と、タンク室17の鉛直方向下側に隣接して設けられた気液分離室18と、タンク室17と気液分離室18の間を仕切る隔壁13と、リザーバタンク10に冷却液を送り込む流入管15と、リザーバタンク10から冷却液を排出する排出管16を有している。このリザーバタンクの構造が実現されるよう、下側ケース11と上側ケース12と隔壁13などが組み立てられる。
【0018】
なお、リザーバタンク10のタンク室17や気液分離室18が構成できる限りにおいて、どのように部材を分割してかかる構造を実現するかは特に限定されない。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12と隔壁13の3つに分割して組み立て、かかる構成を実現したが、別の部材構成によりこうした構造を実現してもよい。たとえば、タンク室と気液分離室の部分が鉛直面で2分割されるようにして構成部材を形成し、それらを組み立ててかかる構成を実現してもよい。
【0019】
流入管15と排出管16は気液分離室18に接続されている。すなわち、リザーバタンク10において、冷却液は、流入管15から気液分離室18内に流れ込み、気液分離室18から排出管16に流れ出すようにされている。好ましくは、本実施形態のように、下側ケース11に流入管15と排出管16が一体成型されている。また、流入管や排出管が気液分離室18から離れた位置に設けられる場合であっても、リザーバタンクの中や外周に管路やガイド板を形成するなどして、流入管と排出管を気液分離室18に接続し、冷却液が、流入管から気液分離室18内に流れ込み、気液分離室18から排出管に流れ出すようにしてもよい。なお、流入管15や排出管16と気液分離室18の接続は、冷却液流れの主流が実質的に流入管から気液分離室を経て排出管に至るように接続されていればよく、冷却液の一部が他の部位に流れるものであってもよい。
【0020】
気液分離室では、重力等の作用によって、冷却液中の気泡が所定の箇所に集められる。気液分離室での気泡の分離は、遠心力など他の原理によるものであってもよい。また、気液分離室での気泡と冷却液の分離は、完全な分離である必要はなく、気液分離室の中に他の部分よりも気泡が多く集まる部位ができる程度の分離であればよい。後述するように、本実施形態では、気液分離室18で重力と遠心力を併用して気泡と冷却液の分離が行われ、気液分離室18の鉛直方向上側や鉛直方向に見た際の中央部に気泡が多く集まる。
【0021】
隔壁13には、タンク室17と気液分離室18を連通する連通穴14が設けられている。すなわち、タンク室17と気液分離室18の間で、連通穴14を通じて冷却液や気泡、空気が上下方向に行き来可能にされている。
【0022】
更に、リザーバタンク10には、気液分離室18の排出管近傍18aとタンク室17とを連通する吸出し穴41が設けられている。本実施形態では、吸出し穴41は隔壁13を貫通する貫通穴として設けられている。吸出し穴の形状は特に限定されず、本実施形態のように円形の吸出し穴であってもよく、後述する他の実施形態における吸出し穴のように矩形状の吸出し穴であってもよい。あるいは、後述する他の実施形態における吸出し穴のように、吸出し穴を管状に設けてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、気液分離室18の排出管近傍18aとタンク室17とを連通するように吸出し穴41が設けられるが、この構成に替えて、後述する他の実施形態のように、タンク室17と排出管16を直接連通する吸出し穴を設けてもよい。
こうした構成であれば、流入管から気液分離室を経て排出管に至る冷却液流れの主流に沿って、吸出し管41は、連通穴14よりも排出管16の近くに、即ち、吸出し管41の方が下流側となるように、配置されることになる。
【0024】
さらに、本実施形態のリザーバタンク10では、吸出し穴41が設けられた位置(18a)での気液分離室18内の冷却液の流速V1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室18内の冷却液の流速V2よりも、速くなるようにされている(図4)。
後述する他の実施形態のように、タンク室17と排出管16を連通する吸出し穴を設ける場合には、排出管16内の冷却液の流速V1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室18内の冷却液の流速V2よりも、速くなるようにされる。
【0025】
吸出し穴41が設けられた位置での冷却液の流速V1が、連通穴14が設けられた位置での冷却液の流速V2よりも大きくなるようにするための、気液分離室18や排出管16の具体的構造は特に限定されない。たとえば、そのような速度差を生じさせるために、気液分離室や排出管の断面積(流れに直交する方向での断面積)を調整し、気液分離室の断面積が排出管の断面積よりも大きくなるようにしてもよい。また、そのような速度差を生じさせるために、排出管16に近接する部分で気液分離室が絞られるように構成してもよい。また、そのような速度差を生じさせるために、気液分離室内部に整流板や邪魔板などを設けて流れの遅い部分を作り、その部分に連通穴を設けるようにしてもよい。また、そのような速度差を生じさせるために、気液分離室内部に渦を生じさせ、渦の中心部の近くに連通穴14を設けるようにしてもよい。本実施形態では、気液分離室18の内部に渦が生じるように、気液分離室18の形状や流入管15、排出管16の配置が決定されている。
【0026】
必須ではないが、第1実施形態のリザーバタンク10のように、気液分離室18が円筒状の壁(11a)を有し、冷却液を壁(11a)に沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡を集めるよう、気液分離室が構成されることが好ましい。すなわち、本実施形態のリザーバタンク10のように、気液分離室18は円筒状の外周壁11aを有していることが好ましい。円筒の中心線が略鉛直方向に延在するように、この円筒状の外周壁11aは形成されている。円筒状の外周壁11aは厳密な意味での円筒である必要はなく、円錐面の一部であったり、トーラス面の一部であったりしてもよく、その周方向での曲率半径が一定であってもよいが、曲率半径が変化していてもよい。
【0027】
この場合、流入管15から気液分離室18に送り込まれた冷却液が、円筒状の外周壁11aに沿って、鉛直軸周りに回転するように、円弧状に湾曲して流れて、排出管16に導かれるように、気液分離室18が構成されることが好ましい。本実施形態では、図2図3に断面が示されるように、気液分離室18は、略水平方向に延在する扁平な室(空間)とされていて、図3のように鉛直方向に沿って見て、略Dの字状の外周壁に囲まれている。必須ではないが、本実施形態では、前記円筒状の外周壁11aは、図3では気液分離室18の右側半分を囲っている。気液分離室18の中で、冷却液は、略水平面に沿うように円弧状に湾曲して流れる。
【0028】
気液分離室18の具体的形状や、流入管15や排出管16の具体的配置は、特に限定されない。たとえば、鉛直方向に見た気液分離室の断面形状は、円形状であってもよい。また、本実施形態では流入管15から流れ込んだ冷却水が約180度向きを変えて排出管16から流れ出る形態を説明したが、気液分離室内での冷却液の流れは特に限定されない。また、実施形態のリザーバタンク10では、気液分離室の外周壁が円弧状に設けられた例を示したが、円弧状の壁は必ずしも外周壁とする必要はなく、気液分離室の内部に円弧状の壁が設けられていてもよい。
【0029】
気液分離室が円筒状の壁を有し、冷却液を壁に沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡を集めるよう構成される場合には、連通穴14は、円弧状の流れの半径方向内側に設けられることが好ましい。すなわち、図3に示すように、鉛直方向に見て、円筒状の外周壁11aよりも、円筒状の外周壁の中心軸mに近い位置に、連通穴14は設けられている。なお、図3では円筒状の外周壁11aの中心軸mを重心マークで示している。鉛直方向に見て、連通穴14の中に、円筒状の外周壁の中心軸mが含まれていることが好ましい。
【0030】
連通穴14が、鉛直方向に見て、円弧状の流れの半径方向内側に設けられることにより、円筒状の外周壁11aに近接する部分では、連通穴14は開口しておらず、隔壁13が気液分離室18とタンク室17の間を間仕切りしているとともに、円筒状の外周壁11aから離れた、円筒状の外周壁11aの中心軸m近傍の部分では、隔壁13に連通穴14が設けられて、気液分離室18とタンク室17の間で冷却液や気泡が行き来できるようにされていることが好ましい。この構成により、気液分離室18内で半径方向内側に集められた気泡をタンク室17内に導きやすくなる。連通穴14は1つの穴であってもいが、連通穴14が複数の穴の集合であってもよい。
【0031】
好ましくは、連通穴14が、気液分離室18において、流れに沿う方向で下流側に偏在するように設けられる。図3に示された気液分離室18では、気液分離室18の左上側に接続された流入管15から冷却液が流れ込むので、この部分が気液分離室18の上流部となる。また、気液分離室18の左下側に接続された排出管16から冷却液が流れ出すので、この部分が気液分離室18の下流部となる。そして、冷却液が円筒状の外周壁11aに沿って流れる部分が、気液分離室18の中流部となる。このように、気液分離室18の内部を上流部、中流部、下流部が連続するものと考えた場合に、連通穴14は、流れに沿う方向で下流側に偏在するように設けられることが好ましい。すなわち、連通管14が、上流側よりも中流側により多く開口し、中流側よりも下流側により多く開口するように、偏在して設けられることが好ましい。必須ではないが、本実施形態では、図3に示されるように、円形の連通穴14の中心Oが、円筒状の外周壁11aの中心軸mよりも下側かつ左側に配置されることで、気液分離室18において、流れに沿う方向で下流側に偏在するように、連通穴14が設けられている。
【0032】
上記実施形態のリザーバタンク10を構成する材料や、リザーバタンク10の製造方法は特に限定されず、公知の材料や公知の製造方法により、リザーバタンク10を製造できる。典型的には、リザーバタンク10は、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂により構成される。使用される冷却液の種類や温度、圧力などに応じて、リザーバタンクの材料や補強構造等が決定される。また、典型的には、リザーバタンク10は、上記下側ケース11、上側ケース12、および隔壁13に相当する部材を、それぞれ射出成型により形成し、これら部材を振動溶着や熱板溶着などにより一体化して製造することができる。
【0033】
上記第1実施形態のリザーバタンク10の作用および効果について説明する。上記第1実施形態のリザーバタンク10によれば、タンク本体内部の液面のあばれを抑制しつつ、効率的に気液分離処理が行える。
【0034】
上記第1実施形態のリザーバタンク10では、図2に示したように、冷却液を貯留するタンク室17と、タンク室の鉛直方向下側に隣接して設けられた気液分離室18が、隔壁13によって仕切られていて、流入管15と排出管16は気液分離室18に接続されている。そのため、流入管15から流れ込む冷却液はもっぱら気液分離室18の内部を流れて排出管16に向かう。従って、リザーバタンク10では流入管15からの強い流れがタンク室17に流れ込みにくく、流入管15から流れ込む冷却液流量が増加しても、冷却液と空気が貯留されるタンク室17内の液面あばれが抑制できる。液面あばれが少なくなれば、タンク室内で気泡を巻き込みにくくなり、気液分離性能も向上する。
【0035】
また、図4に示すように、上記第1実施形態のリザーバタンク10では、隔壁13には、タンク室と気液分離室を連通する連通穴14が設けられ、かつ、リザーバタンク10には、気液分離室18の排出管近傍18aとタンク室17とを連通する吸出し穴41が設けられており、吸出し穴41が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速V1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速V2よりも、速くなるようにされている。
【0036】
特に、本実施形態のリザーバタンク10では、気液分離室18が円筒状の壁11aを有し、冷却液を壁に沿って円弧状に湾曲させて流す構成となっているため、気液分離室の排出口近傍では、冷却液の主流が直接流れ込んで流速V1が大きくなる。一方、連通穴14は気液分離室の円筒状の壁11aの半径方向内側に設けられているため、連通穴が存在する部分では、冷却液の流れが渦状によどんで流れることとなり、流速V2が小さくなる。
【0037】
気液分離室18内部で、連通穴14の部分と吸出し穴41の部分の間にこのような流速差があると、いわゆるベンチュリ効果により、吸出し穴41の部分の圧力が連通穴14の部分よりも低くなる。そして、図5に示すような、連通穴14からタンク室17に向かうとともに、吸出し穴41から排出管16へと吸い出されるような、冷却液の流れが副次的に生じる。この副次的な流れにより、気液分離室18内で連通穴14付近に集められた気泡を多く含む冷却液が、タンク室17に流れ、タンク室17内で重力の作用等によって気泡が分離されて、気泡が少なくなった冷却液が吸出し穴41を通じて排出管16へと排出されることになる。従って、連通穴14と吸出し穴41を冷却液の流速差がある部位に設けることにより、気液分離室内の気泡を多く含む冷却液をタンク室17に流しつつ、気泡が除去された冷却液を吸出し穴41から排出管16へと還流させることができ、効率的に気液分離を行うことができる。
【0038】
リザーバタンク10において、タンク室17の鉛直方向下側に隣接して気液分離室18が設けられ、タンク室17と気液分離室18の間を仕切る隔壁13に連通穴14が設けられていることも、重力を活用して気液分離室18内の気泡を隔壁13や連通穴14の側に集め、タンク室17に移動しやすくしており、効率的な気液分離に貢献する。
【0039】
また、必須ではないが、第1実施形態のリザーバタンク10のように、気液分離室18が円筒状の壁11aを有し、冷却液を壁11aに沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡を集めるよう、気液分離室18が構成され、連通穴14が円弧の半径方向内側に設けられている場合には、遠心力の作用により気液分離室内での気泡の分離が促進され、気液分離効果がより高められる。
【0040】
即ち、気液分離室18内で、冷却液を壁11aに沿って円弧状に湾曲させて流すことにより、冷却液に遠心力が作用する。気泡を含む冷却液に遠心力が作用すると、円筒状の壁11aに対し半径方向内側の部分に気泡B,Bが集まり、半径方向外側の部分に冷却液のみが集まるようになる。すなわち、気液分離室18の中で円筒状の壁11aに沿う流れは、下流側に向かうにしたがって、円筒状の外周壁の中心軸mに近い部分に気泡B,Bが多くなる一方で、円筒状の外周壁11aに隣接する部分では気泡B,Bが少なくなる。その結果、気液分離室18では、円弧の半径方向内側に冷却液中の気泡が集められる。
【0041】
そして、図6に示されるように、隔壁13上の連通穴14は、上記円弧の半径方向内側に設けられているため、遠心力により円弧の半径方向内側に集められた気泡B,Bを含む冷却液は、連通穴14を通じてタンク室17に導かれる。特に、連通穴14が円弧の中心軸m付近に設けられていることが好ましい。
そして、気液分離室18内で、円筒状の壁11aに隣接する部分には気泡B,Bが少なくなった冷却液が流れ、この流れが排出管16から排出されていく。
【0042】
すなわち、上記第1実施形態のリザーバタンク10では、遠心力により気液分離する機能を有する気液分離室によって、冷却液中の気泡B,Bを集め、気泡の多い冷却液が連通穴14からタンク室17に流れてタンク室内で気泡を分離される一方、気泡が少なくなった冷却液が排出管16から外部に排出されるので、リザーバタンクの気液分離効率が特に高められる。
【0043】
必須ではないが、タンク室内部の液面のあばれを抑制しつつ気液分離効果を高めるとの観点からは、本実施形態のリザーバタンク10のように、吸出し穴41が設けられる位置における排出管16や気液分離室18の流路の断面積が、吸出し穴41の断面積よりも大きいことが好ましい。このようにされていると、タンク室17から吸出し穴41を経て気液分離室18や排出管16に向かう冷却液の副流が確実に生じ、リザーバタンクへの流量が変化してもこの流れが逆流したりしにくいからである。また、吸出し穴41の断面積が相対的に小さくされることにより、連通穴14からタンク室17に流れ込んで吸出し穴41から戻っていく冷却液の副流が穏やかなものとなるので、流入管15からリザーバタンクへ流れ込む流量が大きくなっても、タンク室17内部の液面あばれがより抑制される。
【0044】
また、必須ではないが、タンク室内部の液面のあばれを抑制しつつ気液分離効果を高めるとの観点からは、本実施形態のリザーバタンク10のように、吸出し穴41の断面積が、連通穴14の断面積よりも小さいことが好ましい。このようにされていると、連通穴14からタンク室17に流れ込んで吸出し穴41から戻っていく冷却液の副流が、連通穴14からタンク室17に流れ込む際の流速がより低いものにできる。これにより、リザーバタンクに流れ込む流量が大きくなっても、タンク室17内部の液面あばれもより抑制される。また、連通穴14が大きく開口されていると、気液分離室18の上部に集まった気泡Bをタンク室17に導きやすくなり、気液分離性能を高める観点でも効果的である。
【0045】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0046】
図7図8図9には第2実施形態のリザーバタンク30を示す。図7は分解斜視図、図8は鉛直方向に見た気液分離室のY-Y断面図、図9はリザーバタンク30のX-X断面図である。
第2実施形態のリザーバタンク30は、第1実施形態のリザーバタンク10と比べ、気液分離室38の構造や、排出管16の配置、吸出し穴41周辺の構造が異なっているが、他の構成は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様である。
【0047】
図8に示されるように、第2実施形態のリザーバタンク30では、気液分離室38は直方体状である。本実施形態では、気液分離室38は円筒状の壁を有していない。また、本実施形態では、気液分離室38を鉛直方向に見て、対角線となる配置に、流入管15と排出管16が設けられている。
【0048】
また、気液分離室38が排出管16に接続される部分には、仕切り壁19が設けられていて、排出管16が実質的に気液分離室38の内側に延長されたような構造となっている。また、本実施形状における吸出し穴42は、隔壁13のコーナー部を切り欠くような形態に設けられている。本実施形態では、吸出し穴42は、実質的に、タンク室17と排出管16とを連通している。
【0049】
本実施形態のように、吸出し穴42は、タンク室17と排出管16とを連通するものであってもよく、第1実施形態のリザーバタンク10と同様に、タンク室内部の液面のあばれを抑制しつつ気液分離効果を高めることができる。すなわち、図8に示すように、本実施形態においては、流入管15から気液分離室内部に流れ込む冷却液は、気液分離室が直方体状に拡幅、拡径しているため、気液分離室内での流れが拡散して遅くなり、連通穴14付近の流れも流速V2が低くなる。一方、吸出し穴42が設けられた部分では、仕切り壁19によって、実質的に排出管16と同程度まで流路が絞られているため、この部分の流速V1が比較的高くなる。
【0050】
このような連通穴14の部分と吸出し穴42の部分との流速の差により、ベンチュリ効果による圧力差が生じ、図9に示すような、連通穴14からタンク室17を経て吸出し穴42から排出管16に至る冷却液の副流が生じる。気液分離室38の内部では、主に重力の作用によって気泡が気液分離室の上部に集まるが、上記副流によって、連通穴付近の気泡がタンク室17に導かれて、タンク室内で気泡が冷却液と分離される。従って、第2実施形態のリザーバタンク30であっても、タンク室内部の液面のあばれを抑制しつつ気液分離効果を高めることができる。
【0051】
第2実施形態のリザーバタンク30のように、気液分離室38における気泡の分離がもっぱら重力の作用によるものである場合には、隔壁(13)を、隔壁(13)の外周部から連通穴14に向かうにしたがって鉛直方向上側に向かうような円錐面状に設けることが好ましい。このような構成とすれば、気液分離室38内の気泡を効率的に連通穴14の周囲に集めることができ、気液分離効果がより高められる。
【0052】
図10には第3実施形態のリザーバタンク40を示す。図10はリザーバタンク40の縦断面図(X-X断面図)であり、第2実施形態における図9に対応している。
第3実施形態のリザーバタンク40は、第2実施形態のリザーバタンク30と比べ、気液分離室38の構造や、吸出し穴41周辺の構造が異なっているが、他の構成は、第2実施形態のリザーバタンク30と同様である。
【0053】
本実施形態のリザーバタンク40では、吸出し穴43により、タンク室17と排出管16が連通している。このように、吸出し穴43により、タンク室17と排出管16が直に連通していてもよいし、第1実施形態のリザーバタンクのように、吸出し穴41により、タンク室17と気液分離室の排出管近傍が連通していてもよい。本実施形態の構成であっても、吸出し穴が設けられた位置での排出管内もしくは気液分離室内の冷却液の流速(V1)が、連通穴が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速(V2)よりも、速くなるようにされていれば、連通穴14からタンク室17、吸出し穴を経て排出管16に至る冷却液の副流が生じて、効率的な気液分離が行われる。
【0054】
必須ではないが、本実施形態のリザーバタンク40では、吸出し穴43が管状すなわちパイプ状に設けられている。このような管状の吸出し穴であっても、同様に、気液分離効果の向上に貢献する。また、管状、パイプ状の吸出し穴43の具体的構成は特に限定されず、樹脂製や金属製のパイプを用いて管状の吸出し穴43を実現してもよいし、リザーバタンクのタンク壁面と隔壁によって管状の吸出し穴43を実現してもよい。
【0055】
図11には第4実施形態のリザーバタンク50を示す。図11はリザーバタンク50の縦断面図(X-X断面図)であり、第2実施形態における図9に対応している。
第4実施形態のリザーバタンク50は、第2実施形態のリザーバタンク30と比べ、気液分離室とタンク室を隔てる隔壁53の構造や、吸出し穴44周辺の構造が異なっているが、他の構成は、第2実施形態のリザーバタンク30と同様である。
【0056】
必須ではないが、第4実施形態のリザーバタンク50では、気液分離室58の高さが連通穴14付近で高くなり、吸出し穴44付近で低くなるように、隔壁53が凹凸を有する形状に設けられている。凹凸を有する隔壁53は、気液分離室58の高さが排出管16の直前で絞られるように設けられ、気液分離室が絞られた部位に、吸出し穴44が設けられている。これにより、冷却液の流れ方向に直交する断面で測って、吸出し穴44が設けられた位置での排出管16もしくは気液分離室58の流路の断面積FS1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室58の断面積FS2よりも小さくなっている。
【0057】
冷却液の流れ方向に直交する断面で測って、吸出し穴44が設けられた位置での排出管16もしくは気液分離室58の流路の断面積FS1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室58の断面積FS2よりも小さくなっていれば、吸出し穴44が設けられた位置での排出管内もしくは気液分離室内の冷却液の流速V1が、連通穴14が設けられた位置での気液分離室内の冷却液の流速V2よりも、確実に速くなるようにでき、より効果的に気泡が冷却液から分離される。
【0058】
第1実施形態ないし第4実施形態に見られるように、吸出し穴の具体的形態は、隔壁に穴を設けたものであってもよいし、管状のものであってもよく、特に限定されない。また、吸出し穴は、タンク室と排出管16を直接連通させるものであってもよいし、気液分離室の排出管近傍とタンク室とを連通させるものであってもよい。いずれの吸出し穴の形態であっても、タンク本体内部の液面のあばれを抑制しつつ、気液分離処理が行える。
【0059】
気液分離の効率を高める観点からは、いずれの実施形態のリザーバタンクにおいても、隔壁(13)が、隔壁の外周部から連通穴(14)に向かうにしたがって鉛直方向上側に向かうような円錐面状に設けられることが好ましい。かかる構成により、気液分離室(18)内で重力の作用によって鉛直方向上方に向かう気泡が、連通穴(14)やタンク室(17)に導かれ、冷却液から分離されやすくなる。
【0060】
また、上記実施形態の説明では、連通穴14は、板状の隔壁13に設けられた貫通穴状のものを例として説明したが、連通穴の具体的形状は特に限定されない。タンク室と排出管を連通できるものであれば、連通穴14は管路状に形成されたものであってもよい。
【0061】
図12には、第5実施形態のリザーバタンク60を示す。図12には、他の実施形態の図2図9図10図11に対応するX-X断面図によって、リザーバタンク60の断面構造が示されている。第5実施形態のリザーバタンク60は、第1実施形態のリザーバタンク10と比べて、さらに、タンク室17内に制御面65や支持部66を有している。他の点は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様に構成されている。
【0062】
本実施形態のリザーバタンク60では、タンク室17の内部に、連通穴14に所定の間隔を隔てて対向するように、制御面65が設けられている。制御面65は、連通穴14を通じて気液分離室18からタンク室17に流れ込む冷却液の流れを、タンクの上側に向かう流れが横方向に向かう流れとするように設けられている。制御面65を構成する材料は、金属や樹脂のような液体を透過しない材料や板、ブロックであってもよいが、メッシュ状の素材、不織布、発泡体などであってもよい。本実施形態では、熱可塑性樹脂製の板材によって、液体を透過しない制御面65が設けられている。
【0063】
連通穴14からタンク室17に流れ込む流れが横方向に向かうように、好ましくは、制御面65は、連通穴14全体を覆うように、鉛直方向に見て、連通穴14と同程度の大きさに、もしくは連通穴14よりも大きくなるように設けられる。制御面65の形状は特に限定されないが、本実施形態のように略水平方向に延在する平板状の制御面とすることが好ましい。
【0064】
制御面65は、支持部66によって、タンク室17を構成する上側ケース12に対し支持されている。制御面65を的確に支持できる限りにおいて、支持部66の具体的形状は特に限定されない。本実施形態では、円筒状に支持部66が形成され、支持部66により制御面65の外周部が支持されている。このような形態は、上側ケース12を射出成型する際に有利である。支持部66は、制御面65を上側ケース12の上面(天面)に対して支持してもよいし、制御面65を上側ケース12の側面(外周面)に対して支持してもよい。また、制御面65を隔壁13に対して支持するように支持部を設け、隔壁13と制御面65を一体成型してもよい。また、リザーバタンクにキャップや弁体が設けられる場合には、キャップや弁体に制御面65を設けるようにして、支持部66を省略してもよい。
【0065】
本実施形態のリザーバタンク60では、タンク室17の内部に、連通穴14に所定の間隔を隔てて対向するように、制御面65が設けられ、連通穴を通じて気液分離室からタンク室に流れ込む冷却液の流れを、タンクの上側に向かう流れが横方向に向かう流れとなるようにしたことにより、冷却液の流量が多くなって、冷却液が連通穴14からタンク室17に勢いよく流れ込むような場合であっても、タンク室17内部の液面あばれが抑制され、気泡の巻き込みが予防される。すなわち、連通穴14を通じて冷却液がタンク室17に流れ込む冷却液は、タンク室17では直接上方に向かうことなく、一旦、制御面65によって横方向に拡散して流れることになる。そのため、タンク室17内部に流れ込んだ冷却液の流れは、横向きに拡散されて弱められ、タンク室17における液面のあばれを誘発しにくくなる。従って、本実施形態のリザーバタンク60では、タンク室内の冷却液液面あばれの抑制効果が特に高められる。
【0066】
第5実施形態のリザーバタンク60のようにタンク室17の内部に制御面65を設ける場合には、制御面65から横方向に向かう冷却液の流れが、吸出し穴41の方向に向かわないようにすることが好ましい。特に、制御面65から横方向に向かう冷却液の流れが、吸出し穴41とは反対の方向に向かうようにすることが好ましい。これにより、気液分離性能がより向上する。
【0067】
図13図14には、第6実施形態のリザーバタンク70を示す。第6実施形態のリザーバタンク70は、図1ないし図6で説明された第1実施形態のリザーバタンク10と比べて、連通穴74がパイプ77を含むように構成されており、気液分離室18の高さが高く、排出管16が設けられる位置が高くされている。他の点は、第1実施形態のリザーバタンク10と同様に構成されている。図13は、他の実施形態の図2図9図10図11図12に対応するX-X断面図であり、リザーバタンク70の縦断面構造が示されている。また、図14は、第1実施形態の図5に対応するA-A断面図である。
【0068】
本実施形態のリザーバタンク70では、隔壁13に設けられる連通穴74が、パイプ77を含むように設けられている。すなわち、連通穴74は、板状の隔壁に設けられた貫通穴の内側に、中空管状のパイプ77が、略鉛直方向に、気液分離室18の内側に向かって突き出すように設けられた構成となっている。必須ではないが、本実施形態では、パイプ77は、リブ等により、隔壁13に一体化されている。また、本実施形態ではパイプ77が貫通穴の略中央に設けられているが、パイプ77が貫通穴の周縁部に設けられていてもよく、パイプ77と貫通穴が並ぶように連通穴74が設けられていてもよい。
【0069】
この連通穴74の構成により、隔壁13とパイプ77の間の貫通穴の部分が、気液分離室の隔壁付近の部分とタンク室17を連通する一方で、パイプ77の管路は、隔壁13よりも下方に隔たった気液分離室の中央部とタンク室17を連通する。
【0070】
本実施形態のリザーバタンク70に冷却液が流されると、図14に示されるように、連通穴74を通じて気液分離室18からタンク室17に向かうとともに、吸出し穴41を通じてタンク室17から気液分離室18に向かう副流が生ずる。そして、連通穴74における貫通穴の部分からは、気液分離室の上側(隔壁13付近)に集まった気泡を多く含む冷却液をタンク室17に導くことができる一方で、パイプ77により、隔壁13よりも下方に隔たった位置から、冷却液をタンク室17に導くことができる。
【0071】
本実施形態のリザーバタンク70のように、遠心力と重力を併用して気泡の分離を図る気液分離室(18)を備える場合、気泡は、気液分離室18に生ずる円弧状の流れの中心部や渦の中心部に集まり、上方に移動していくが、気泡径が小さい場合には上方に気泡が移動しにくく、気液分離室内の円弧状の流れの中心部や渦の中心部に竜巻状に細かな気泡が残りやすい。パイプ77が設けられていると、隔壁13から離れた位置で、こうした細かい気泡が多く集まった冷却液を効果的にタンク室17に送り込むことができ、タンク室17内で細かい気泡を分離することができる。すなわち、本実施形態のように、隔壁13に設けられる連通穴74が、パイプ77を含むように設けられていると、気液分離室18内で気泡が残りやすい部分から冷却液をタンク室17に導くことができて、リザーバタンクの気液分離性能がより高められる。
【0072】
本発明のリザーバタンクは、更に他の構成を有していてもよい。たとえば、リザーバタンクには、取り外し可能なキャップが設けられていてもよい。このようなキャップを通じてタンクや冷却液経路内部に冷却液を満たすことができる。また、リザーバタンクには、必要に応じ、車体等に取り付けるためのステーやボス部材などが一体化されていてもよい。また、リザーバタンクに要求される耐圧性等に応じて、リザーバタンクには、リブ等の補強構造が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
上記リザーバタンクは冷却システムの冷却液経路中に使用でき、冷却液中の気泡を分離できて産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0074】
10 リザーバタンク
11 下側ケース
12 上側ケース
13 隔壁
14 連通穴
41 吸出し穴
15 流入管
16 排出管
17 タンク室
18 気液分離室
11a 円筒状の壁
m 円筒状の壁の中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14