(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】パラシュート装置、無人浮遊機及び飛行システム
(51)【国際特許分類】
B64D 17/72 20060101AFI20230215BHJP
B64D 17/80 20060101ALI20230215BHJP
B64U 70/83 20230101ALI20230215BHJP
B64U 20/30 20230101ALI20230215BHJP
【FI】
B64D17/72
B64D17/80
B64U70/83
B64U20/30
(21)【出願番号】P 2019137764
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸吾
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193055(JP,A)
【文献】特開2017-44359(JP,A)
【文献】特開2016-44386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/72
B64D 17/80
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁部に錘を複数取り付けた傘体と、
吊索を介して連結された前記傘体が収納される開口を有する本体と、
点火による化学反応により高圧ガスを発生させる非火薬系薬剤を封入したガス発生器と、
前記錘が個別に収納される複数の錘収納部と、
前記ガス発生器から噴出される前記高圧ガスの噴出方向を複数回変化させた後で、前記高圧ガスを複数の前記錘収納部の各々に送り出す通路と、
前記通路の一部領域に設けられ、前記ガス発生器の点火時に前記高圧ガスとともに発生する火花を消炎する火花抑制剤と、
を有することを特徴とするパラシュート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラシュート装置において、
前記ガス発生器を収納するとともに、前記高圧ガスが噴出する噴出口を有する容器と、
延出方向における一端に前記錘収納部を有する筒部材と、
前記容器の一部が挿入されるとともに、外周面に固着された複数の前記筒部材の内部空間と連通される第1の空間を有する保持部材と、
前記容器の外方に位置して、前記噴出口から噴出される前記高圧ガスを受容する第2の空間と、前記第2の空間で受容した前記高圧ガスを前記第1の空間に送り出す第3の空間とを、前記容器との間で形成するとともに、前記噴出口に対峙する底面を有する蓋部材と、を有し、
前記通路は、前記第1の空間、前記第2の空間及び前記第3の空間を含むことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパラシュート装置において、
前記火花抑制剤は、少なくとも前記噴出口に対峙する前記蓋部材の前記底面に塗布されることを特徴とするパラシュート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパラシュート装置において、
前記複数の構成部材を組み合わせた状態で前記本体の前記開口を被覆するとともに、複数の前記錘の各々に前記複数の構成部材の各々が固着されるカバーを、有することを特徴とするパラシュート装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパラシュート装置において、
前記ガス発生器は、前記ガス発生器の点火を行う制御装置と接続されることを特徴とするパラシュート装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパラシュート装置において、
前記制御装置は、
前記ガス発生器の点火を行う点火手段と、
前記本体に働く角速度を検出する角速度検出手段と、
前記角速度検出手段により検出される前記角速度から前記本体の状態を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づき、前記点火手段に点火指令を出力する制御手段と、
を有することを特徴とするパラシュート装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のパラシュート装置において、
前記制御装置は、遠隔操作又は自動制御で飛行する無人浮遊機の内部に設けられることを特徴とするパラシュート装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のパラシュート装置を備えたことを特徴とする無人浮遊機。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパラシュート装置と、
前記パラシュート装置が固定され、遠隔操作又は自動制御で飛行する無人浮遊機と、
前記パラシュート装置に設けた前記ガス発生器の点火を行う制御装置と、
を有することを特徴とする飛行システム。
【請求項10】
請求項9に記載の飛行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記ガス発生器の点火を行う点火手段と、
前記本体に働く角速度を検出する角速度検出手段と、
前記角速度検出手段により検出される前記角速度から前記本体の状態を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づき、前記点火手段に点火指令を出力する制御手段と、
を有することを特徴とする飛行システム。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の飛行システムにおいて、
前記制御装置は、前記無人浮遊機の内部に設けられることを特徴とする飛行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコプターなどの無人浮遊機に用いられるパラシュート装置、無人浮遊機及び飛行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人が搭乗せず、無線通信を用いた遠隔操作や自動制御で飛行するマルチコプター等の無人浮遊機や無人飛行機が一般に提供されている。例えば無人浮遊機は、搭載されたデジタルカメラ(デジタルビデオカメラを含む)による空撮を行う目的や遊び目的のために使用される。また、この他に、無人浮遊機は、例えば人間が立ち入ることが困難となる場所の検査や、状況把握を行う目的で使用されている。
【0003】
このような無人浮遊機や無人飛行機は、飛行中の破損や異常に伴った墜落事故を防止する防止装置を備えたものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されるマルチコプターでは、マルチコプターの上部にパラシュートを、その下部にエアバッグを配置し、飛行時の異常検知時に、飛行するマルチコプターの高度が高度設定値以下の場合にはエアバッグのみを作動させ、高度設定値を超過したときにエアバッグだけでなく、パラシュートも作動させて緊急着陸を行うことを開示している。
【0004】
また、この他に、パラシュート又はパラグライダーを収納する収納容器と、各々が異なる方向に向くように収納容器の内柱に連結された3つの管部と、管部内に設けたアクチュエータとを有し、例えば飛行体の落下時にアクチュエータを駆動して、収納容器に収納されたパラシュート又はパラグライダーを展開させる展開装置についても提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に開示される展開装置は、パラシュート又はパラグライダーを展開させるアクチュエータとして、点火薬と点火薬を収納するケースを有する点火器と、一軸方向に延びるピストンと、ピストンの推進方向を規制する筒状のハウジングと、を有し、点火薬の燃焼により作動用ガスを発生させピストンを推進させることで、パラシュート又はパラグライダーをケース外部に放出して展開させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-088111号公報
【文献】特開2018-193055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1の場合、落下時の風圧を受けることで展開されるため、パラシュートを展開するのには時間が掛かるという欠点がある。したがって、パラシュートの展開面積が大きくなればなるほど、パラシュートを展開させるのに時間が掛かる上、パラシュートを展開するために必要となる高度が高くなる。言い換えれば、低空飛行時の場合には、パラシュートを展開しきれずに地上面に到達してしまうため、パラシュートの効果を得ることができない。その結果、マルチコプターの破損だけでなく、人や地上建築物などに激突する事故が起こり得る。
【0007】
また、特許文献2の場合、パラシュートを瞬時に展開するために、点火薬として、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネートなどの火薬を用いている。しかしながら、無人浮遊機や無人飛行機に対して火薬類を搭載することは、航空法(航空法132条の2第5号)により禁止されている。したがって、火薬類を搭載しなくとも、瞬時にパラシュート等を展開することができる技術が求められる。
【0008】
本発明は斯かる課題に応えるために為されたもので、飛行する無人浮遊機の墜落時に、無人浮遊機の飛行高度に関係なく無人浮遊機を軟着陸させることができるようにした技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパラシュート装置は、外周縁部に錘を複数取り付けた傘体と、吊索を介して連結された前記傘体が収納される開口を有する本体と、点火による化学反応により高圧ガスを発生させる非火薬系薬剤を封入したガス発生器と、前記錘が個別に収納される複数の錘収納部と、前記ガス発生器から噴出される前記高圧ガスの噴出方向を複数回変化させた後で、前記高圧ガスを複数の前記錘収納部の各々に送り出す通路と、前記通路の一部領域に設けられ、前記ガス発生器の点火時に前記高圧ガスとともに発生する火花を消炎する火花抑制剤と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記ガス発生器を収納するとともに、前記高圧ガスが噴出する噴出口を有する容器と、延出方向における一端に前記錘収納部を有する筒部材と、前記容器の一部が挿入されるとともに、外周面に固着された複数の前記筒部材の内部空間と連通される第1の空間を有する保持部材と、前記容器の外方に位置して、前記噴出口から噴出される前記高圧ガスを受容する第2の空間と、前記第2の空間で受容した前記高圧ガスを前記第1の空間に送り出す第3の空間とを、前記容器との間で形成するとともに、前記噴出口に対峙する底面を有する蓋部材と、を有し、前記通路は、前記第1の空間、前記第2の空間及び前記第3の空間を含むことを特徴とする。
【0011】
また、前記火花抑制剤は、少なくとも前記噴出口に対峙する前記蓋部材の前記底面に塗布されることが好ましい。
【0012】
また、前記複数の構成部材を組み合わせた状態で前記本体の前記開口を被覆するとともに、複数の前記錘の各々に前記複数の構成部材の各々が固着されるカバーを、有することを特徴とする。
【0013】
また、前記ガス発生器は、前記ガス発生器の点火を行う制御装置と接続されることを特徴とする。
【0014】
この場合、前記制御装置は、前記ガス発生器の点火を行う点火手段と、前記本体に働く角速度を検出する角速度検出手段と、前記角速度検出手段により検出される前記角速度から前記本体の状態を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づき、前記点火手段に点火指令を出力する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
なお、前記制御装置は、遠隔操作又は自動制御で飛行する無人浮遊機の内部に設けられることが好ましい。
【0016】
また、本発明の無人浮遊機は、上記に記載のパラシュート装置を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の飛行システムは、前記パラシュート装置が固定され、遠隔操作又は自動制御で飛行する無人浮遊機と、前記パラシュート装置に設けた前記ガス発生器の点火を行う制御装置と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、前記ガス発生器の点火を行う点火手段と、前記本体に働く角速度を検出する角速度検出手段と、前記角速度検出手段により検出される前記角速度から前記本体の状態を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づき、前記点火手段に点火指令を出力する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、前記制御装置は、前記無人浮遊機の内部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、飛行する無人浮遊機の墜落時に、無人浮遊機の飛行高度に関係なく無人浮遊機を軟着陸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のパラシュート装置を備えた無人浮遊機の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】パラシュート装置の構成を分解して示す斜視図である。
【
図3】パイプホルダ近傍の構成を分解して示す一部断面図である。
【
図5】(a)パラシュート装置の上面図、(b)分離したカバー構成部材を組み合わせる場合の斜視図である。
【
図6】パラシュート装置のパイプホルダ近傍の構成を示す断面図である。
【
図7】ガスジェネレータの点火によりカバー構成部材が射出される状態を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態の飛行システムの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図8に示す飛行システムの電気的構成の変形例を示す機能ブロック図である。
【
図10】送出通路を有していないパラシュート装置のパイプホルダ近傍の構成を示す断面図である。
【
図11】火花抑制剤の効果の検証時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明のパラシュート装置が取り付けられる無人浮遊機の一実施形態を示す。無人浮遊機10は、オペレータによるコントローラ(図示省略)の操作に基づいた無線通信により飛行するマルチコプター等の飛行体である。なお、オペレータによるコントローラの操作に基づいた無線通信により飛行する無人浮遊機を一例として取り上げるが、内蔵された自動飛行プログラムによって自動的に飛行する無人浮遊機であってもよい。
【0023】
無人浮遊機10は、機体11と、機体11を中心として放射状に延出される複数のアーム12と、複数のアーム12の先端部に各々設けた複数のロータユニット13と、機体11の下部に設けられたスキッド(固定式降着装置)14、14’とを有する。
【0024】
機体11は、詳細は後述するが、コントローラとの間で無線通信を行う無線モジュール87、無線モジュール87により受信された操作信号を受けてロータユニット13の駆動制御を行う制御回路89や、無人浮遊機10の主電源であるバッテリ88などを収納する(
図8参照)。なお、無人浮遊機10にカメラが搭載されている場合、機体11は、カメラによる撮像制御を行う撮像制御装置をさらに備える。
【0025】
アーム12は、例えば合成樹脂や金属材料を用いた筒状の部材である。上述したように、アーム12は機体11から放射状に延出される。
図1においては、アーム12は、隣り合うアーム12との角度が例えば60°間隔で配置される。なお、
図1においては、6本のアームを有する無人浮遊機について開示しているが、アームの本数は、6本に限定する必要はなく、飛行性能や、無人浮遊機の上面視における無人浮遊機の最大面積に応じて、例えば2~5本のいずれか、又は6本以上としてもよい。
【0026】
ロータユニット13は、ロータ15、駆動モータ16及びブラケット17から構成される。ロータユニット13は、駆動モータ16の駆動軸に固着されるロータ15が上方に位置するように、アーム12の先端にブラケット17を介して固定される。なお、駆動モータ16に接続されるケーブル(図示省略)は、例えばアーム12の内部に挿通された後、機体11に収納された制御回路89に接続される。
【0027】
詳細は図示を省略するが、ロータ15は、駆動モータ16の駆動軸に固定される回転軸と、回転軸を中心として180°間隔を空けて配置された2枚のロータブレードとを有する。なお、ロータ15に設けられるロータブレードの数は2枚に限定される必要はなく、3枚以上のロータブレードを有してもよい。なお、ロータブレードの長さは、例えば、隣り合うロータユニットのロータブレードの回転軌跡が互いに重畳されない長さに設定される。
【0028】
上述した無人浮遊機10の機体11の上面には、パラシュート装置20が固定される。
図2から
図4に示すように、パラシュート装置20は、無人浮遊機10の飛行が困難となる場合に、後述するガスジェネレータ32の点火により発生する高圧ガスにより複数の錘34を噴出させて、収納されたパラシュート布33を展開させ、無人浮遊機10を破損することなく不時着させる装置である。
【0029】
パラシュート装置20は、ケース(請求項に記載の本体に相当)25、ベースプレート26、パイプホルダ(請求項に記載の保持部材に相当)27、パイプ(請求項に記載の筒部材に相当)28、ホルダキャップ(請求項に記載の蓋部材に相当)29、ジェネレータホルダ30、ホルダキャップ31、ガスジェネレータ32、パラシュート布(傘体)33、錘34、固定紐35,36、カバー構成部材37a,37b,37c,37dを含む。なお、カバー構成部材37a,37b,37c,37dは組み付けられてカバー37となる(
図5参照)。
【0030】
ケース25は、上面が開口された箱形状の部材である。ケース25の形状は、上面視において、略正方形である。なお、ケース25の上面視における形状は、正方形に限定されるものではなく、円形や、正五角形、正六角形などの正多角形であってもよい。
【0031】
ケース25の材質は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチック、又はアルミニウム合金などの金属である。
【0032】
ケース25は、底面に挿通孔25aを有する。挿通孔25aは、ガスジェネレータ32から延出されるケーブル32aを挿通する。また、ケース25は、挿通孔25aの外方で、且つ挿通孔25aを中心として90°間隔で、挿通孔25bを4箇所に有する。挿通孔25bは、ベースプレート26とパイプホルダ27とをケース25に固定する際に、ボルト56を挿通する。
【0033】
また、ケース25は、挿通孔25bの外方で、且つ挿通孔25aを中心として90°間隔で、挿通孔25f,25g,25h,25iを4箇所に有する。挿通孔25f,25iは固定紐35を、挿通孔25g,25hは固定紐36を挿通する。また、図示は省略するが、ケース25の上端部には、ウレタンなどのクッション材が貼付され、ケース25に装着されるカバー37に圧接される。
【0034】
ベースプレート26は、ケース25を無人浮遊機10の機体11の上面に固定する際に用いる部材である。ベースプレート26は、例えば、中心から放線方向に延出された固定脚部26a,26b,26c,26dが90°間隔で設けられた、いわゆる十字形状の板部材である。なお、固定脚部は90°間隔で設けられているが、60°間隔、72°間隔、120°間隔など、一定角度間隔で設けられていればよい。また、ベースプレート26の形状は、十字形状に限定されるものではなく、ケース25の上面の形状に合わせた適宜の形状とすることが可能である。
【0035】
ここで、ベースプレート26の材質は、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチック、又はアルミニウム合金などの金属である。
【0036】
また、ベースプレート26は、挿通孔40を有する。挿通孔40は、ガスジェネレータ32から延出されるケーブル32aを挿通する。また、ベースプレート26は、挿通孔41を有する。挿通孔41は、ベースプレート26とパイプホルダ27とをケース25に固定する際に、ボルト56を挿通する。ベースプレート26は、固定紐35を挿通する挿通孔45a,45dと、固定紐36を挿通する挿通孔45b,45cとを有する。
【0037】
また、ベースプレート26の固定脚部26a,26b,26c,26dは、先端(自由端)側に、パラシュート装置20を無人浮遊機10の機体11に取り付ける際に、ボルト(図示省略)を挿通する挿通孔49を各々有する。
【0038】
パイプホルダ27は、ケース25の底面に固定される部材である。パイプホルダ27の材質は、例えばアルミニウム合金などの金属である。パイプホルダ27は、上下方向における下端側に、固定片51を90°間隔を空けて4箇所に有する。なお、固定片51は、挿通孔51aを有する。挿通孔51aは、ベースプレート26とパイプホルダ27とをケース25に固定する際に、ケース25の挿通孔25b及びベースプレート26の挿通孔41と同軸となるように配置される。
【0039】
パイプホルダ27は、上下方向に直交する断面が円形となるように、上面がくりぬかれた空間27aを有する。なお、空間27aの上下方向に直交する断面形状は、例えば円形状である。
【0040】
パイプホルダ27は、下面から空間27aに連通するねじ孔52を有する。ねじ孔52は、パイプホルダ27の上面から空間27aに挿入されるジェネレータホルダ30の雄ねじ部30aを螺合する。また、パイプホルダ27は、外周面から空間27aに連通するねじ孔53を有する。ねじ孔53は、パイプホルダ27の軸方向を中心にして、90°間隔で4箇所に設けられる。ねじ孔53は、パイプ28の一端に設けた雄ねじ部28aに螺合する。なお、空間27aに連通するねじ孔53の数は4に限定する必要はなく、パイプホルダ27に固定するパイプの数に合わせて設けられる。上述したパイプホルダ27は、上端側の外周面に雄ねじ部54を有する。雄ねじ部54は、ホルダキャップ29の雌ねじ部29aに螺合する。
【0041】
上述したパイプホルダ27において、空間27aの内径φ1は、ジェネレータホルダ30の最大となる外径(雄ねじ部30aの直径)φ2よりも大きい。したがって、パイプホルダ27にジェネレータホルダ30を螺着させたときには、パイプホルダ27の空間27aに対峙する内周面と、ジェネレータホルダ30の外周面との間には、空間A1(
図6参照)が形成される。なお、ジェネレータホルダ30の雄ねじ部30a以外の箇所の外径φ3は、一例として、φ3=10mmである。
【0042】
なお、
図2中符号56は、ベースプレート26及びパイプホルダ27をケース25に固定する際に用いるボルト、符号57は、ボルト56に螺合するナットである。
【0043】
パイプ28は、軸方向の中心に対して、軸方向の一端側で屈曲した筒状の部材である。パイプ28の材質は、アルミニウム合金などの金属や、内鈍などの合成樹脂である。パイプ28は、一端の外周面に雄ねじ部28aを有する。雄ねじ部28aは、パイプホルダ27のねじ孔53に螺合する。図示は省略するが、パイプ28は、パイプホルダ27に螺着した状態では、パイプ28の一端側の軸方向と、湾曲した他端側の軸方向とが一致するように保持される。この状態では、パイプ28は、自由端となる他端が斜め上方に上り傾斜している。ここで、パイプ28の内径φ4は、一例として、φ4=7mmであり、また、パイプホルダ27に螺着される一端から湾曲する位置までの距離L1は、一例として、L1=16.3mmである。
【0044】
ホルダキャップ29は、一端が閉口された円筒状の部材である。ホルダキャップ29の材質は、例えばアルミニウム合金などの金属である。ホルダキャップ29は、開口される一端部の内周面に雌ねじ部29aを有する。ホルダキャップ29は、雌ねじ部29aをパイプホルダ27の雄ねじ部54に螺合させることで、パイプホルダ27に固着される。
【0045】
ここで、ホルダキャップ29の内径φ5は、ホルダキャップ31の外径φ6よりも大きい。また、ホルダキャップ29の内径φ5は、ジェネレータホルダ30の最大径φ2よりも大きい。したがって、ジェネレータホルダ30とホルダキャップ31とによりガスジェネレータ32を収納した状態で、ホルダキャップ29をパイプホルダ27に螺着した状態では、ホルダキャップ29とホルダキャップ31との間、及び、ホルダキャップ29とジェネレータホルダ30との間に空間A2(
図6参照)が形成される。ここで、ホルダキャップ29の内径φ5は、一例として、φ5=14.8mmである。また、ホルダキャップ29がパイプホルダ27に螺着した状態では、ホルダキャップ29の底面29bと、ホルダキャップ31の上面31bとの間に空間A3(
図6参照)が形成される。なお、ホルダキャップ29の底面29bと、ホルダキャップ31の上面31bとの間隔L2は、一例として、L2=12mmである(
図6参照)。さらに、ホルダキャップ29の底面29bから、パイプ28の内径の最下点までの間隔L3は、一例として、L3=56.5mmである。
【0046】
ホルダキャップ29の底面29bには、火花抑制剤60が塗布される。火花抑制剤60は、ガスジェネレータ32の点火時に発生する高圧ガスとともに放出される火花を受け止め、パイプ28から外部へ火花が放出することを防止するものである。なお、火花抑制剤としては、例えばパラフィンなどの固形油脂類、流動性油脂類、難燃性繊維や金属メッシュなどが挙げられる。
【0047】
ここで、火花抑制剤60をホルダキャップ29の底面29bに塗布する場合を説明しているが、火花抑制剤60は、ホルダキャップ29の底面29bではなく、ホルダキャップ29の内周面29cに塗布してもよい。また、火花抑制剤60は、ホルダキャップ29の底面29b及びホルダキャップ29の内周面29cの両方でもよい。さらに、火花抑制剤60は、ホルダキャップ29の底面29bではなく、パイプホルダ27の空間27aに面する内周面、或いは、パイプ28の内周面のうち、パイプホルダ27に螺着される一端側であってもよい。
【0048】
ジェネレータホルダ30は、一端が閉口された円筒状の部材である。ジェネレータホルダ30は、内部にガスジェネレータ32を収納した状態で、パイプホルダ27に固着される。ジェネレータホルダ30の軸方向における両端部には、雄ねじ部30a,30bが設けられる。雄ねじ部30aは、パイプホルダ27のねじ孔52に螺合する。雄ねじ部30bはホルダキャップ31の雌ねじ部31aを螺合する。ジェネレータホルダ30の一端側の底面には、ガスジェネレータ32のケーブル32aを挿通する挿通孔30cが設けられる。ジェネレータホルダ30の材質は、アルミニウム合金などの金属である。
【0049】
ホルダキャップ31は、ジェネレータホルダ30の開口される端部に螺着される。ホルダキャップ31は、内周面に雌ねじ部31aを有する。雌ねじ部31aは、ジェネレータホルダ30の雄ねじ部30bに螺合する。ホルダキャップ31の上面31bには、ガスジェネレータ32が点火したときに発生する高圧ガス及び火花をホルダキャップ29の底面29bに向けて噴出させる噴出口31cを有する。ホルダキャップ31の材質は、アルミニウム合金などの金属である。なお、ホルダキャップ31の外径φ6は、φ6=12.5mmである。上述したジェネレータホルダ30及びホルダキャップ31とが請求項に記載の容器に相当する。
【0050】
ガスジェネレータ32は、装填されたガス発生剤を燃焼させることで、高圧ガスを発生させる。ガスジェネレータ32に装填されるガス発生剤は、例えば低振動・低騒音破砕薬剤ガンサイザー(登録商標:日本工機株式会社製商品名)を用いている。ガス発生剤は、火薬類を用いた破砕方法と同じ手順で消費許可を必要とせずに岩盤などを破砕する非火薬破砕組成物である。ガスジェネレータ32は、以下に示す構成のガス発生剤が一例として0.8g充填される。ガス発生剤の組成及び配合率は、例えばカリウム明礬又はアンモニウム明礬44~55%、酸化第二銅33~44%、アルミニウム9~17%、ステアリン酸カルシウム2.4~2.6%、塩化ビニル1.2~1.8%である。なお、ガス発生剤の粒度は、24タイラーメッシュ通過42タイラーメッシュ止まりの篩分け品、すなわち、粒径が0.35mm~0.71mmの範囲である。上述したガス発生剤は、10cc圧力タンク内で燃焼したときの最大圧力が25MPa程度の薬剤が用いられる。なお、ガスジェネレータ32のケーブル32aは、後述する制御装置80に接続される。
【0051】
パラシュート布(傘体)33は、例えばナイロン製で、十字形状、又は半球状の部材である。なお、パラシュート布(傘体)33の材質としては、例えばナイロン以外の化学繊維や、植物繊維及び動物繊維が用いることができる。また、傘体の形状は、十字形状、半球状の他に、四角形状、十字形状、八角形状或いはドーナツ形状などを用いることができる。
【0052】
パラシュート布(傘体)33の周縁部には、紐部材65を介して4個の錘34が取り付けられる。錘34の材質は、例えばアルミニウム合金の金属、又はナイロンなどの合成樹脂である。錘34は、紐部材65が取り付けられる一端側の外径がパイプの内径よりも大きく、他端側の外径がパイプの内径よりも小さく形成される。つまり、錘34は、紐部材65が形成される一端とは反対側となる他端をパイプ28の先端内部に収納した状態で保持することが可能となる。ここで、符号75は、Oリングなどのシール材であり、錘34をパイプ28に収納したときに、シール材75がパイプ28の内周面に圧接された状態となり、パイプ28の内部の空気がパイプ28と錘34との間に生じる隙間から漏れることを防止する(
図4参照)。
【0053】
固定紐35,36は、パラシュート布(傘体)33に設けた吊索(サスペンションライン)67と連結される部材である。固定紐35は、ケース25の挿通孔25f、ベースプレート26の挿通孔45a、ベースプレート26の挿通孔45d及びケース25の挿通孔25iの順(又はその逆)で挿通された状態で、固定紐35が環状となるように両端が結ばれる。同様にして、固定紐36は、ケース25の挿通孔25g、ベースプレート26の挿通孔45b、ベースプレート26の挿通孔45c及びケース25の挿通孔25hの順(又はその逆)で挿通された状態で、固定紐36が環状となるように両端が結ばれる。
【0054】
カバー37は、ケース25の上部に係止保持される。カバー37は、4つのカバー構成部材37a,37b,37c,37dから構成される。4つのカバー構成部材37a,37b,37c,37dは、各々、錘34の一端に内六角ねじ70などにより固着される。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、4つのカバー構成部材37a,37b,37c,37dは、略矩形状の部材で、隣り合うカバー構成部材と組み合わせたときに、隣り合うカバー構成部材の下方に入り込む係止片71及び係止片72を有する。
【0055】
例えば、カバー構成部材37aの係止片71は、カバー構成部材37bの下方に入り込み、カバー構成部材37aの係止片72は、カバー構成部材37dの下方に入り込む。また、カバー構成部材37bの係止片71は、カバー構成部材37cの下方に入り込み、カバー構成部材37bの係止片72は、カバー構成部材37aの下方に入り込む。また、カバー構成部材37cの係止片71は、カバー構成部材37dの下方に入り込み、カバー構成部材37cの係止片72は、カバー構成部材37bの下方に入り込む。また、カバー構成部材37dの係止片71は、カバー構成部材37aの下方に入り込み、カバー構成部材37dの係止片72は、カバー構成部材37cの下方に入り込む。つまり、隣り合うカバー構成部材の係止片71,72が互いに隣り合うカバー構成部材の下方に入り込むことで、カバー37をケース25の上部に取り付けたときにカバー構成部材がケース25から逸脱することを防止する。
【0056】
なお、4つのカバー構成部材37a,37b,37c,37dの各々に、係止片71,72を設け、カバー構成部材37a,37b,37c,37dを組み合わせたときに、隣り合う2つのカバー構成部材のうち、カバー構成部材の係止片を、隣り合うカバー構成部材の下方に相互に入り込ませることで、隣り合うカバー構成部材を係止し、カバー構成部材の脱落を防止する構成としているが、カバー構成部材の脱落を防止する構成は、上記に限定する必要はなく、適宜の構成を用いることが可能である。
【0057】
本実施形態のパラシュート装置20は、以下の手順で製造される。まず、4本のパイプ28がパイプホルダ27に螺着される。パイプ28がパイプホルダ27に螺着されるとき、パイプホルダ27の上面視において、パイプ28は、一端側の軸方向と、湾曲した他端側の軸方向とを一致させた状態で保持される。
【0058】
パイプホルダ27をケース25の内部に載置し、パイプホルダ27の固定片51の挿通孔51aにボルト56が各々挿通される。パイプホルダ27の固定片51の挿通孔51aにボルト56が各々挿通する過程で、ボルト56がケース25の挿通孔25b、ベースプレート26の挿通孔41の順で挿通される。その後、ボルト56の先端にナット57が螺合される。そして、ナット57を締め付けることで、ケース25にベースプレート26と、パイプホルダ27とが固定される。
【0059】
この状態で、固定紐35が、ケース25の挿通孔25f、ベースプレート26の挿通孔45a、ベースプレート26の挿通孔45d及びケース25の挿通孔25iの順(又はその逆)で挿通された後、固定紐35が環状となるように両端が結ばれる。同様にして、固定紐36が、ケース25の挿通孔25g、ベースプレート26の挿通孔45b、ベースプレート26の挿通孔45c及びケース25の挿通孔25hの順(又はその逆)で挿通された後、固定紐36が環状となるように両端が結ばれる。
【0060】
次に、ジェネレータホルダ30がパイプホルダ27の空間27aに挿入された後、ジェネレータホルダ30の雄ねじ部30aがパイプホルダ27のねじ孔52に螺合される。ジェネレータホルダ30の雄ねじ部30aがパイプホルダ27のねじ孔52に締め付けられることで、ジェネレータホルダ30がパイプホルダ27に固着される。その後、ガスジェネレータ32のケーブル32aがジェネレータホルダ30の内部に挿入され、ジェネレータホルダ30の挿通孔30cを介して外部に引き出される。この状態で、ホルダキャップ31の雌ねじ部31aがジェネレータホルダ30の雄ねじ部30bに螺合される。ホルダキャップ31がジェネレータホルダ30に締め付けられると、ホルダキャップ31がジェネレータホルダ30に固着される。
【0061】
なお、ジェネレータホルダ30をパイプホルダ27に固着させた後、ガスジェネレータ32をジェネレータホルダ30に収納し、ホルダキャップ31をジェネレータホルダ30に固着しているが、ガスジェネレータ32をジェネレータホルダ30に収納した後で、ジェネレータホルダ30をパイプホルダ27に固着することも可能である。
【0062】
パラシュート布33の外周縁部の頂点に結束された紐部材65を錘34に取り付ける。パラシュート布33の外周縁部の頂点、及び中点に締結した呂索66の他端側を締結した呂索67を環状の固定紐35,36に通し結束する。
【0063】
この状態で、錘34をまとめてパラシュート布33を吊り下げ、吊り下げたパラシュート布33を8の字に巻きながら、ケース25に収納する。そして、錘34をパイプ28の先端に挿入する。このとき、錘34に設けられたシール材75がパイプ28の内壁面に圧接される。
【0064】
カバー構成部材37a,37b,37c,37dを、係止片71,72が隣り合うカバー構成部材の下方に位置するように組み合わせて、カバー37としてケース25の上面に被覆する。最後に、各カバー構成部材37a,37b,37c,37dとパイプ28に挿入された錘34とを内六角ねじ70を用いて螺着する。
【0065】
図6に示すように、パラシュート装置20において、パイプホルダ27の空間27aに対峙する内周面と、ジェネレータホルダ30の外周面との間には、空間A1が形成される。また、ホルダキャップ29とホルダキャップ31との間、及び、ホルダキャップ29とジェネレータホルダ30との間に空間A2が形成される。さらに、ホルダキャップ29の底面29bと、ホルダキャップ31の上面31bとの間に空間A3が形成される。したがって、ガスジェネレータ32の点火により発生する高圧ガスは、ホルダキャップ31の噴出口31cを介して、ホルダキャップ29の底面29bに向けて(
図6中D1方向に)噴出される。ホルダキャップ29の底面29bに向けて噴出された高圧ガスは、空間A3に貯留される。空間A3に貯留される高圧ガスの一部は、
図6中D2方向に流動して、空間A2に流れ込む。
【0066】
なお、ホルダキャップ31の噴出口31cから噴出される高圧ガスの噴出方向と、空間A2への高圧ガスの流動方向とは逆方向である。つまり、ホルダキャップ29の底面29bに向けて噴出された高圧ガスは、空間A3において、流動方向が変化される。
【0067】
空間A2に流れ込んだ高圧ガスは、空間A2から空間A1に流れ込む。ここで、パイプホルダ27において、空間27aとねじ孔53とは連通している。したがって、空間A1に流れ込んだ高圧ガスは、空間27aにおいて流動方向が変化して、4本のパイプ28の各々の内部に流れ込む。つまり、空間A1、空間A2及び空間A3がパイプ28に送り込まれる高圧ガスの送出通路76となる。
【0068】
なお、送出通路76の形状は、本実施形態の形状に限定される必要はなく、ガスジェネレータ32の点火時に発生する火花がパイプ先端まで到達する際に、火花が有するエネルギーを消失できれば、適宜の形状の通路としてもよい。
【0069】
上述したように、パイプ28の先端に挿入される錘34は、錘34に設けたシール材75がパイプ28の内周面に圧接され、外部との気密に保持されている。したがって、パイプ28の内部に高圧ガスが流れ込み始めると、パイプ28の内部の圧力が上昇する。パイプ28の内部の圧力が上昇することに伴って、パイプ28の先端に挿入された錘34が射出される。なお、4本のパイプ28は、各々、錘34が挿入される他端が斜め上方に上り傾斜している。したがって、
図7に示すように、4本のパイプ28の各々に挿入された錘34は、斜め上方に、且つパラシュート装置20の中心から離れる方向に射出される。カバー構成部材37a,37b,37c,37dは、個別に錘34に固着している。したがって、錘34が射出されると、カバー構成部材37a,37b,37c,37dがケース25から外れて、射出される錘34とともに移動し、また、ケース25の内部に収納されたパラシュート布33が上方に射出され展開される。
【0070】
次に、本実施形態における無人浮遊機10及びパラシュート装置20を駆動する際に必要となるシステム(以下、飛行システム)に必要となる電気的構成について説明する。
【0071】
図8に示すように、飛行システム120は、上述した無人浮遊機10、パラシュート装置20の他に、制御装置80を有する。
【0072】
無人浮遊機10は、上述したロータユニット13の他に、ジャイロセンサ85、加速度センサ86、無線モジュール87、バッテリ88、制御回路(IC)89、通信回路90等を有する。
【0073】
ジャイロセンサ85は、無人浮遊機10に働く角速度を検出するセンサである。加速度センサ86は、無人浮遊機10に働く加速度を検出するセンサである。ジャイロセンサ85及び加速度センサ86からの出力信号は制御回路89に入力される。本実施形態では、ジャイロセンサ85及び加速度センサ86の2つのセンサを設けた場合について説明しているが、角速度及び加速度の双方を検出するセンサを用いることも可能である。
【0074】
無線モジュール87は、オペレータにより操作されるコントローラからの無線信号を受信する。バッテリ88は、制御回路89に給電を行う装置である。なお、バッテリ88から制御回路89に供給される電力は、ジャイロセンサ85、加速度センサ86、無線モジュール87、ロータユニット13の各部に供給される他、制御装置80にも供給される。
【0075】
制御回路89は、無線モジュール87によって受信した無線信号を受けて、ロータユニット13の各々を駆動制御する。制御回路89は、CPU92及び記憶媒体93を有する。CPU92は、記憶媒体93に記憶された制御プログラム94を実行することで、無人浮遊機10の各部の制御を実行する。CPU92は、記憶媒体93に記憶された制御プログラム94を実行することで、姿勢検出部95、加速度算出部96、電源状態検出部97及び状態判定部98として機能する。
【0076】
姿勢検出部95は、ジャイロセンサ85からの出力を受けて、水平面に対する無人浮遊機10の姿勢(傾き角)を算出する。
【0077】
加速度算出部96は、加速度センサ86からの出力を受けて、無人浮遊機10に働く加速度のうち、下方向の加速度を算出する。
【0078】
電源状態検出部97は、バッテリ88との間で通信を行い、バッテリ88の異常の有無を検出する。なお、バッテリ88の異常の有無の検出は、バッテリ88から出力される電流値等を検出することで、バッテリ88の残量が少ないか否かの判定や、バッテリ88から供給される電流が過電流であるか否かの判定などを行うことで実施される。
【0079】
状態判定部98は、飛行時における無人浮遊機10の状態判定を行う。詳細には、状態判定部98は、姿勢検出部95により算出された無人浮遊機10の傾き角θが基準角度αを超過しているか否かを判定する。無人浮遊機10の傾き角θが基準角度αを超過している場合には、状態判定部98は、さらに加速度算出部96により算出された下方向の加速度βが基準加速度β0を超過しているか否かを判定する。そして、下方向の加速度βが基準加速度β0を超過している場合には、状態判定部98は、無人浮遊機10に異常が発生したと判定する。なお、基準角度αや基準加速度β0は、実際に無人浮遊機10が墜落したときの値であり、これら値は、実験、シミュレーションなどにより得ることができる。また、この他に、状態判定部98は、バッテリ88が正常であるか否かの判定や、ロータユニット13が正常に駆動しているか否かの判定を行う。
【0080】
なお、状態判定部98において、無人浮遊機10の傾き角θ及び無人浮遊機10に働く下方向の加速度βを用いて、無人浮遊機10の異常の有無を判定しているが、無人浮遊機10を昇降させる場合も下方向の加速度が働くことを考慮すると、無人浮遊機10の傾き角θのみを考慮して、無人浮遊機10に異常が発生したか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
通信回路90は、制御装置89との間で信号の送受信を行う。
【0082】
制御装置80は、ジャイロセンサ101、気圧センサ102、地磁気センサ103、点火回路104、電源回路105、通信回路106及び制御回路107を有する。
【0083】
ジャイロセンサ101は、パラシュート装置20に働く角速度を検出するセンサである。気圧センサ102は、パラシュート装置20が存在する地点における気圧高度を検出するセンサである。地磁気センサ103は、方位センサとして機能する。なお、地磁気センサ103としては、例えば2軸又は3軸のセンサが用いられる。
【0084】
点火回路104は、供給される電力を蓄電するコンデンサを有し、コンデンサによる放電によって、ガスジェネレータ32を点火する回路である。電源回路105は、無人浮遊機10が有するバッテリ88から供給される電源電圧を降圧し、制御回路107の他、ジャイロセンサ101、気圧センサ102、地磁気センサ103、点火回路104、通信回路106の各部に電力を供給する。また、電源回路105は、バッテリ88から供給される電源電圧を監視して、バッテリ88からの電力供給に対して異常があるか否かを検出する。なお、検出結果は、制御回路107に出力される。
【0085】
通信回路106は、無人浮遊機10との間で信号の送受信を行う。
【0086】
制御回路107は、CPU110及び記憶媒体111を有する。CPU110は、記憶媒体111に記憶された制御プログラム112を実行することで、姿勢検出部113、高度算出部114、方位算出部115及び状態判定部116として機能する。
【0087】
姿勢検出部113は、ジャイロセンサ101からの出力を受けて、パラシュート装置20に働く角速度から、水平面に対するパラシュート装置20の姿勢を示す傾き角θ1を算出する。高度算出部114は、気圧センサ102からの出力を受けて、パラシュート装置20の海抜高度を算出する。方位算出部115は、地磁気センサ103からの出力を受けて、方位を算出する。
【0088】
状態判定部116は、姿勢検出部113における検出結果、高度算出部114及び方位算出部115における算出結果に基づいて、パラシュート装置20を作動させるか否かを判定する。例えば姿勢検出部113により、パラシュート装置20の姿勢を示す傾き各θ1が基準角度α以下であれば、パラシュート装置20の状態が良好であると判断する。一方、パラシュート装置20の姿勢を示す傾き角θ1が基準角度αを超過している場合には、パラシュート装置20の状態が異常であると判断する。
【0089】
また、状態判定部116は、高度算出部114における算出結果から、パラシュート装置20の高度が所定の高度であるか否かを判定する。例えばパラシュート装置の高度が基準範囲に収まっている場合には、パラシュート装置20の状態が良好であると判断する。また、パラシュート装置20の高度が基準範囲から外れる場合には、パラシュート装置20の状態が異常であると判断する。
【0090】
同様にして、状態判定部116は、方位算出部115における算出結果から、パラシュート装置20が移動する方位が正しい方位であるか否かを判定する。例えば、パラシュート装置20が移動する方位が目的点に対する方位に対して所定の範囲内である場合には、状態判定部116は、パラシュート装置20の状態が良好であると判断する。また、パラシュート装置20が移動する方位が目的点に対する方位に対して所定の範囲から外れている場合には、状態判定部116は、パラシュート装置20の状態が異常であると判断する。
【0091】
さらに、状態判定部116は、電源回路105からの監視信号に基づいて、パラシュート装置20に関して異常が発生しているか否かを判定する。
【0092】
状態判定部116は、上述した判定で異常が発生していると判定したとき、また、無人浮遊機10からエラー信号が出力された場合に、状態判定部116は、点火回路104に点火開始を示す信号を出力する。
【0093】
このような飛行システム120においては、パラシュート装置20、制御装置80野何れかが故障した場合には、故障した装置のみを交換するだけで済むので、システム全体を交換する必要がなく、便利である。
【0094】
なお、
図8では、無人浮遊機10と、パラシュート装置20との間に、ガスジェネレータ32を点火制御する制御装置80を設けた飛行システム120を示している。ここで、制御装置80は、パラシュート装置20の内部に設けてもよいし、パラシュート装置20とは別体としてもよい。さらに、制御装置80は、無人浮遊機10の内部に組み込むことも可能である。この場合、
図9に示すように、無人浮遊機の制御回路に、制御装置80の機能を兼用させた飛行システムであってもよい。例えば、飛行システム120’において、無人浮遊機10’は、ロータユニット13の他に、ジャイロセンサ85、加速度センサ86、無線モジュール87、バッテリ88、制御回路(IC)89等の他に、点火回路104’を有する。なお、
図9において、
図8に示す構成と同一の機能については、同一の符号を付している。無人浮遊機10’の制御回路89に、制御装置80の機能を兼用させる場合、無人浮遊機10’の飛行時の異常に基づいて、無人浮遊機10’の点火回路104’が、パラシュート装置20のガスジェネレータ32を点火させる。この場合も、本実施形態のパラシュート装置と同様の効果を有することが可能となる。
【0095】
次に、パラシュート布33の展開に係る検証、火花抑制効果に係る検証を行った。
【0096】
<パラシュート布の展開に係る検証>
まず、パラシュート布33の展開に係る検証を行った。パラシュート布33の展開に係る検証は、ガスジェネレータ32の点火からパラシュート布33がケース25から放出されるまでの時間(以下、放出時間)と、ガスジェネレータ32の点火から、パラシュート布33が完全に展開されるまでの時間(以下、展開時間)とを計測した。
【0097】
また、パラシュート布33としては、厚手の布地を用いた2.1mの大きさの十字傘、薄手の布地を用いた2.1mの大きさの十字傘、1.5mの大きさの半球傘、及び2.0mの半球傘の4種類のパラシュート布を用いた。また、ガスジェネレータ32に収納されるガス発生剤の重量は、いずれの場合も0.8gとした。以下、パラシュート布33の展開に係る検証の結果を表1に示す。
【0098】
【0099】
表1に示すように、厚手の布地を用いた2.1mの大きさの十字傘の場合、放出時間は0.17秒、展開時間は0.90秒であった。また、薄手の布地を用いた2.1mの大きさの十字傘の場合、放出時間は0.13秒、展開時間は0.74秒であった。また、1.5mの大きさの半球傘の場合、放出時間は0.16秒、展開時間は0.60秒であった。さらに、2.0mの大きさの半球傘の場合、放出時間は0.23秒、展開時間は0.83秒であった。
【0100】
これら検証により、本発明のパラシュート装置20は、パラシュート布33の形状を問わず、パラシュート布33が完全に展開するまでの時間が1秒以内であるという格別の結果を得ることができた。
【0101】
<火花抑制効果に係る検証>
次に、火花抑制の有無についての検証を行った。火花抑制効果に係る検証は、まず、本発明に係る送出通路76の効果の検証と火花抑制剤の効果の検証とが挙げられる。
本発明に係る送出通路76の効果の検証としては、本実施形態のパラシュート装置の他、送出通路76が設けられていないパラシュート装置を用いて行った。
【0102】
図10は、送出通路76が設けられていないパラシュート装置のパイプホルダ近傍の断面である。以下では、本実施形態と同一の構成については、本実施形態と同一の符号を付している。この場合、パラシュート装置150が有するパイプホルダ151は、4本のパイプ28が放射状に螺着され、また、下面からガスジェネレータ32を収納したジェネレータホルダ152を螺着する構造である。この構造では、パイプホルダ151は、ケース153の底面に螺着される。パラシュート装置150においては、本実施形態に示す送出通路76はなく、パイプホルダ151の内部に、ガスジェネレータ32により発生する高圧ガスが滞留する空間151aが設けられる。
【0103】
以下、本発明に係る送出通路76及び火花抑制剤の効果の検証を行った結果を表2に示す。
【0104】
【0105】
表2において、例1は、上述したパラシュート装置150を用いた場合、つまり、送出通路76がない場合を示す。例1では、パイプホルダ151の空間151aに対峙する面に火花抑制剤60を塗布していない。例2は、本実施形態のパラシュート装置20を用いた場合、つまり送出通路がある場合を示す。例2では、ホルダキャップ29の底面29bに火花抑制剤60を塗布していない。例3から例6は、本実施形態のパラシュート装置20を用いた場合、つまり送出通路76がある場合を示す。例3から例6では、ホルダキャップ29の底面29bに塗布する火花抑制剤60として、異なる火花抑制剤を用いている。例3は、火花抑制剤60として、シリコングリースを用いた場合、例4は、火花抑制剤60として、リチウムグリースを用いた場合を示す。また、例5は、火花抑制剤60として、パラフィンを用いた場合、例6は、火花抑制剤60として、流動パラフィン(ワセリン)を用いた場合を示す。
【0106】
図11(a)に示すように、例1の場合、ガスジェネレータ32の点火に伴い、パイプ28から火花が放出される。
図10に示すように、パラシュート装置150の場合、ガスジェネレータ32により噴出する高圧ガスは、パイプホルダ151の空間151aに噴出した後、空間151aから4本のパイプ28の内部へと流動する。上述したように、ガスジェネレータ32の点火時には高圧ガスの他に火花が発生する。発生した火花は、高圧ガスと共に、空間151aから4本のパイプ28の内部に噴出し、パイプ28の先端から外部に放出される。この場合、発生する高圧ガスによるエロージョン(機械的な摩耗作用)により、パイプホルダ151やパイプ28が削り取られ、削り取られたカスが火花となりパイプ28から放出される場合もある。パイプ28から火花が放出されると、火花がケース153の内部に収納されるパラシュート布を焼損する場合がある。このような場合、パラシュート布の焼損により、パラシュート布に穴が開く恐れがある。パラシュート布の焼損によりパラシュート布に穴が開くことは、展開したパラシュート布に負荷が掛かったときに破れてパラシュート装置が機能しなくなる。また、この他に、無人浮遊機が森林に落下する、又は石油プラント等の可燃性蒸気の充満した場所に落下したときには、火災や爆発の危険がある。したがって、例1のパラシュート装置は、採用することはできない。
【0107】
例2の場合、
図11(b)に示すように、送出通路76を有することで、高圧ガスとともに発生する火花は、送出通路76を流動して、パイプ28の先端から放出される。なお、送出通路76を設けることで、ガスジェネレータ32からパイプ28の先端までの距離を稼ぐことができる。ガスジェネレータ32からパイプ28の先端までの距離を稼ぐことで、火花が有するエネルギーを減衰させることはできる。しかしながら、例2の場合も、火花の量は送出通路76がないパラシュート装置の場合に比べて少ないが、パイプ28の先端から火花が放出されるという結果となる。したがって、例2は、例1と同様の理由により、採用することができない。
【0108】
例3の場合、送出通路76を有し、また、ホルダキャップ29の底面29bにシリコングリースを塗布している。
図11(c)に示すように、パイプ28の先端からは火花は放出されず、高圧ガスとともに、多量の煙が放出される。つまり、例3の場合、火花抑制剤60であるシリコングリースが火花を消炎し、消炎に伴う発煙の量が多いという結果が得られた。
【0109】
例4の場合、送出通路76を有し、また、ホルダキャップ29の底面29bにリチウムグリースを塗布している。
図11(d)に示すように、例3と同様に、パイプ28の先端からは火花は放出されず、高圧ガスとともに、多量の煙が放出される。つまり、例4の場合、例3と同様に、火花抑制剤60であるリチウムグリースが火花を消炎し、消炎に伴う発煙の量が多いという結果が得られた。
【0110】
例5の場合、送出通路76を有し、また、ホルダキャップ29の底面29bにパラフィンを塗布している。
図11(e)に示すように、パイプ28の先端からは火花は放出されず、また、高圧ガスとともに放出される煙の量も少ない。つまり、例5の場合、火花抑制剤60であるパラフィンが火花を消炎し、消炎に伴う発煙の量が少ないという結果が得られた。
【0111】
例6の場合、送出通路76を有し、また、ホルダキャップ29の底面29bに流動パラフィン(ワセリン)を塗布している。
図11(f)に示すように、パイプ28の先端からは火花が僅かに放出され、高圧ガスとともに、大量の煙が放出される。つまり、例6の場合、火花抑制剤60である流動パラフィン(ワセリン)が火花を消炎するが、完全に火花を消炎することはできず、また、消炎に伴う発煙の量が多いという結果が得られた。
【0112】
つまり、送出通路76を設けた場合には、距離を稼ぐことで火花を減衰させることはできるが、送出通路76を設けただけでは、火花の放出を抑制することはできない。また、送出通路76を設け、さらに、ホルダキャップ29の底面29bに火花抑制剤60を塗布することで、発生する火花を消炎する、或いは火花を抑制することができるという結果が得られた。なかでも、火花抑制剤60としてパラフィンの場合には、火花を消炎して、高圧ガスと少量の煙をパイプから放出できるので、火花抑制剤60としてはパラフィンが最適であるという結果が得られた。
【0113】
次に、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2と、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面との間隔L4(
図6参照)の検証を行った。ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2の検証結果を表3に示す。
【0114】
【0115】
表3に示すように、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2の検証は、間隔L2をL2=5mm,10mm,15mm,20mmとして検証を行った。ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2の検証は、ホルダキャップ29の底面29bに火花抑制剤を塗布せずに行った。
【0116】
表3に示すように、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2をL2=5mmとした場合、ガスジェネレータ32を点火すると、発生する高圧ガスにより、ホルダキャップ31の上面31bからホルダキャップ29の底面29bまでの空間A3の圧力が過度に上昇し、ジェネレータホルダ30、ホルダキャップ29,31が破壊されることがわかった。一方、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2がL2=10mm,15mmm、20mmの場合には、上述した部品は破壊されることはなく、正常に作動することがわかった。
【0117】
次に、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面の間隔L4(
図6参照)の検証結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
表4に示すように、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面との間隔L4の検証は、間隔L4をL4=0mm,0.5mm,1.0mm,2.0mmとして検証を行った。ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面との間隔L4の検証は、ホルダキャップ29の底面29bに火花抑制剤を塗布せずに行った。
【0120】
表4に示すように、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面との間隔L4を、L4=0mmとした場合、ガスジェネレータ32を点火すると、発生する高圧ガスにより、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの空間の圧力が上昇する。このとき、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面の間隔L4はL4=0である。したがって、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの空間A3の内部圧力が過度に上昇し、ジェネレータホルダ30、ホルダキャップ29,31が破壊されることがわかった。
【0121】
一方、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面との間隔L4を、L4=0.5mm、1.0mm,2.0mmとした場合には、上述した部品は破壊されることはなく、正常に作動することがわかった。
【0122】
つまり、ホルダキャップ31の上面31bとホルダキャップ29の底面29bとの間隔L2は10mm以上で、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面の間隔L4は0.5mm以上であることが好ましいことがわかった。
【0123】
最後に、ホルダキャップ29の底面29bに塗布される火花抑制剤の塗布量についての検証を行った。このとき、ホルダキャップ31の上面31bからホルダキャップ29の底面29bまでの間隔L2をL2=12mmとし、ホルダキャップ31の外周面とホルダキャップ29の内周面の間隔L4をL4=1.2mmとした。また、ガスジェネレータ32に使用されるガス発生剤の量を0.8gとした。また、火花抑制剤60としてパラフィンを使用した。この検証では、パラフィンの塗布量を、0.1g,0.2g,0.3g,0.5g,1.0gとした。火花抑制剤の塗布量についての検証結果を表5に示す。
【0124】
【0125】
表5に示すように、例えばパラフィンの塗布量を0.1gとしたとき、ガスジェネレータ32の点火時にパイプから火花が噴出することがわかった。一方、パラフィンの塗布量を0.2g,0.3g,0.5g,1.0gとした場合には、ガスジェネレータ32の点火時にパイプ28から火花が噴出しないことがわかった。つまり、パラフィンの塗布量は、0.2g以上が好ましいことがわかった。なお、ホルダキャップ29の底面29bに塗布される火花抑制剤60の塗布量が多いと、ホルダキャップ31の上面31bから塗布された火花抑制剤60の表面までの距離が短くなる。その結果、空間A3における圧力が過度に上昇し、装置が破壊することが懸念される。したがって、火花抑制剤60の塗布量は、0.2~1.0gであることが好ましい。
【符号の説明】
【0126】
10…無人浮遊機、20…パラシュート装置、25…ケース、27…パイプホルダ、28…パイプ、29…ホルダキャップ、30…ジェネレータホルダ、31…ホルダキャップ、31c…噴出口、32…ガスジェネレータ、33…パラシュート布、37…カバー、37a,37b,37c,37d…カバー構成部材、60…火花抑制剤、76…送出通路、80…制御装置、85…ジャイロセンサ、104…点火回路