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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/00 20060101AFI20230215BHJP
   A01K 89/017 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A01K89/00 B
A01K89/017
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019154157
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021029183
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 以下のウェブサイトにて公開・http://fishing.shimano.co.jp/info(令和1年8月1日)・http://fishing.shimano.co.jp/product/reel/5767(令和1年8月1日)・https://www.youtube.com/watch?v=2kYXo9bSsFE(令和1年8月1日)・https://www.facebook.com/pg/fishing.shimano/posts/?ref=page_internal(令和1年8月3日、8月15日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 和人
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024465(JP,A)
【文献】特開2013-013334(JP,A)
【文献】特開平09-107854(JP,A)
【文献】特開平11-046647(JP,A)
【文献】特開2008-148609(JP,A)
【文献】特開2002-238418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸が巻き付けられるスプールを駆動するモータを制御するワカサギ釣り用電動リールのモータ制御装置であって、
前記モータの出力を複数の出力段階に制御する出力制御手段と、
前記スプールから繰り出される前記釣り糸の糸長を計測する糸長計測手段と、
前記モータの出力を停止させる停止糸長を設定する停止糸長設定手段と、
前記糸長計測手段が計測した糸長が前記停止糸長に到達したときに前記モータの出力を停止させる出力停止手段と、
前記出力制御手段によって制御される前記モータの出力を前記停止糸長に到達する手前から減少させる複数の制御モードを含み、複数の前記制御モードのいずれかの制御モードで前記モータの出力を減少させる出力減少手段と、
前記出力減少手段の前記制御モードを切り替えるモード切替手段と、
を備え、
複数の前記制御モードは、前記停止糸長に到達する手前の第1糸長に到達したときにおいて複数の前記出力段階のうち最も小さい出力段階に対応する出力よりも小さい第1出力で前記モータの出力を制御する第1制御モードと、前記停止糸長に到達する手前の第2糸長に到達したときにおいて前記第1出力よりも小さい第2出力で前記モータの出力を制御する第2制御モードと、を含む、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記第2糸長を所定範囲内の任意の値に設定する減速糸長設定手段をさらに備える、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記所定範囲は、前記停止糸長から0.5~2メートルの範囲内である、
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第1糸長は、前記停止糸長から約1メートル離れた位置に設定されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、特にワカサギ釣り用電動リールのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワカサギなどの小魚を釣る時に使用される小型の電動リールが知られている(特許文献1参照)。この種の電動リールは、氷結した湖上での穴釣り、或いはボートやドーム船でワカサギなどの小魚を釣るときに主に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-240273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワカサギ釣り用電動リールを氷結した湖上での穴釣りに使用する場合は、糸巻き上げ時に針が氷に引っ掛かることがあり、その度に引っ掛かりを外さなければならず、非常に煩わしい。
【0005】
本発明の課題は、糸巻き上げ時に針が氷に引っ掛かることを抑制できるワカサギ釣り用電動リールのモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るモータ制御装置は、ワカサギ釣り用電動リールのモータ制御装置であって、釣り糸が巻き付けられるスプールを駆動するモータを制御する。モータ制御装置は、出力制御手段と、糸長計測手段と、停止糸長設定手段と、出力停止手段と、出力減少手段と、モード切替手段と、を備える。出力制御手段は、モータの出力を複数の出力段階に制御する。糸長計測手段は、スプールから繰り出される釣り糸の糸長を計測する。停止糸長設定手段は、モータの出力を停止させる停止糸長を設定する。出力停止手段は、糸長計測手段が計測した糸長が停止糸長に到達したときにモータの出力を停止させる。出力減少手段は、出力制御手段によって制御されるモータの出力を停止糸長に到達する手前から減少させる複数の制御モードを含む。出力減少手段は、複数の制御モードのいずれかの制御モードでモータの出力を減少させる。モード切替手段は、出力減少手段の制御モードを切り替える。複数の制御モードは、停止糸長に到達する手前の第1糸長に到達したときにおいて複数の出力段階のうち最も小さい出力段階に対応する出力よりも小さい第1出力でモータの出力を制御する第1制御モードと、停止糸長に到達する手前の第2糸長に到達したときにおいて第1出力よりも小さい第2出力でモータの出力を制御する第2制御モードと、を含む、
【0007】
このモータ制御装置では、出力減少手段の制御モードが第2制御モードのときに、停止糸長に到達する手前から第1制御モード時の第1出力よりもさらに小さい第2出力でモータの出力が制御される。すなわち、第2制御モードでは、停止糸長に到達する手前から第1制御モードの時よりも遅い速度で釣り糸が巻き上げられる。これにより、氷上で穴釣りをするときにおいて、糸巻上げ時に針が氷に引っ掛かることを抑制できる。また、仮に針が氷に引っ掛かった場合でも、針が氷に深く引っ掛かることを抑制できるので、釣り糸を繰り出すことで容易に針の引っ掛かりを外すことができる。さらに、モード切替手段によって、ボート釣りのときは第1制御モード、氷上で穴釣りのときは第2制御モードといった具合に、出力減少手段の制御モードを釣り場やユーザの使用状況に適した制御モードに切り替えて使用することができるので、電動リールの操作性が向上する。
【0008】
モータ制御装置は、第2糸長を所定範囲内の任意の値に設定する減速糸長設定手段をさらに備えてもよい。この場合は、氷の厚さや氷の表面からどの高さでリールを操作するか等の操作状況に応じてユーザが第2糸長の値を設定することができるので、電動リールの操作性が向上する。
【0009】
所定範囲は、停止糸長から0.5~2メートルの範囲内であってもよい。この場合は、針が氷に引っ掛かることを効果的に抑制しつつ、獲物が針から外れてしまうことを抑制することができる。
【0010】
第1糸長は、停止糸長から約1メートル離れた位置に設定されてもよい。この場合は、例えば、ボートやドーム船でワカサギなどの小魚を釣るときにおいて、釣り糸の巻き取りに時間がかかりすぎることを抑制しつつ、獲物が針から外れてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、糸巻き上げ時に針が氷に引っ掛かることを抑制できるワカサギ釣り用電動リールのモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態が採用された電動リールの平面図。
図2】電動リールの制御系の構成を示すブロック図。
図3】モータ制御部の機能構成を示すブロック図。
図4】モータ制御部のモータ制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
図5】モータ制御部のモータ制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】モータ制御部のモータ制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態が採用された電動リール100は、ワカサギ釣り用電動リールである。より詳細には、電動リール100は、例えば、氷結した湖上での穴釣り、或いはボートやドーム船でワカサギなどの小魚を釣るときに使用される小型の電動リールである。
【0014】
図1及び図2に示すように、電動リール100は、リール本体2と、スプール3と、モータ4と、表示部5と、複数のスイッチ操作部6と、クラッチ操作部7と、制御部8と、を主に備えている。
【0015】
リール本体2は、釣り竿Rが装着される装着部2aを前部に有している。スプール3は、リール本体2に回転可能に支持されている。スプール3の外周には、釣り糸が巻き付けられる。スプール3は、モータ4の駆動に応じて回転駆動する。モータ4は、リール本体2の内部に配置されている。モータ4は、図示しない電源部から供給される電力により駆動する。表示部5は、リール本体2の上面に配置されている。表示部5には、仕掛けの水深などの各種の情報がデジタル表示される。
【0016】
複数のスイッチ操作部6は、第1~第4スイッチ11~14を有している。第1スイッチ11及び第2スイッチ12は、モータ4の駆動をオン、オフするスイッチである。第1スイッチ11と第2スイッチ12とは、互いに対向する位置でリール本体2の側部に配置されている。第3スイッチ13及び第4スイッチ14は、巻き上げ速度の設定や、後述する制御モードの切り替え等の電動リール100の各種設定を行うためのスイッチである。第3スイッチ13及び第4スイッチ14は、リール本体2の上面において、表示部5の後部に並んで配置されている。
【0017】
クラッチ操作部7は、リール本体2の上面において、表示部5の前部に配置されている。クラッチ操作部7は、図示しないクラッチ機構をオン状態とオフ状態とに切り替える。クラッチ機構がオン状態のときは、モータ4の回転がスプール3に伝達される。クラッチ機構がオフ状態のときは、モータ4の回転がスプール3に伝達されない。
【0018】
図2は、電動リール100の制御系の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御部8は、スイッチ操作部6と、スプールセンサ16と、スプールカウンタ17と、モータ駆動回路18と、記憶部19と、表示部5と、に接続されている。
【0019】
スプールセンサ16は、前後に並べて配置された2つのリードスイッチから構成されている。リードスイッチは、スプール3に装着された2個のマグネットを検出する。また、いずれのリードスイッチが先に検出パルスを発したかによりスプール3の回転方向を検出できる。
【0020】
スプールカウンタ17は、スプールセンサ16のオンオフ回数を計数するカウンタであり、この計数値によりスプール3の回転数に関する回転位置データが得られる。
【0021】
モータ駆動回路18は、モータ4をPWM駆動する。記憶部19は、例えばEEPROM等の不揮発メモリからなり、糸巻き学習結果のデータや糸長算出時に使用する各種のデータ等が記憶されている。
【0022】
制御部8は、機能構成としてモータ4を制御するモータ制御部21(モータ制御装置の一例)と、表示部5を制御する表示制御部22と、を有している。
【0023】
モータ制御部21は、第1スイッチ11又は第2スイッチ12の操作に応じて、モータ4を駆動する。ここでは、モータ4を駆動させるスイッチモードとして、第1スイッチ11に寸動モードが、第2スイッチ12に連続モードが割り当てられている。具体的には、モータ制御部21は、第1スイッチ11がオン操作されている間、又は第2スイッチ12がオン操作されると連続してモータ4を駆動する。モータ制御部21は、第2スイッチ12がオン操作されて連続モードでモータ4が駆動しているときに、第2スイッチ12がオン操作されると、モータ4の駆動を停止する。
【0024】
モータ制御部21は、連続モードよりも寸動モードが優先して実行されるように構成されている。すなわち、連続モードでモータ4が駆動しているときに第1スイッチ11がオン操作されると、モータ制御部21は、スイッチモードを連続モードから寸動モードに切り替える。なお、モータ制御部21は、第3スイッチ13と第4スイッチ14とが同時にオン操作されたときに、第1スイッチ11と第2スイッチ12に割り当てられたお互いのスイッチモードを入れ替えるように構成されていてもよい。
【0025】
図3は、モータ制御部21の機能構成を示すブロック図ある。モータ制御部21は、出力制御部31と、糸長計測部32と、停止糸長設定部33と、出力停止部34と、出力減少部35と、モード切替部36と、を有している。
【0026】
出力制御部31は、モータ4の出力を複数の出力段階に制御する。複数の出力段階は、例えば、複数の出力段階のうち最も出力が小さい第1出力段階から最も出力が大きい第6出力段階までの6つの出力段階で構成されている。出力制御部31は、第1スイッチ11又は第2スイッチ12の操作に応じてモータ4を駆動するときに、複数の出力段階から選択された出力段階にモータ4の出力を制御する。出力段階の切り替えは、例えば、第4スイッチ14の短押しによって実行される。本実施形態において、モータ4の出力は、モータ4の回転速度であり、第1出力段階に対応するモータ4の回転速度は、0.8m/s、第6出力段階に対応するモータ4の回転速度は2.8m/sに設定されている。
【0027】
糸長計測部32は、従来と同様の方法でスプール3から繰り出される釣り糸の糸長Lを計測する。例えば、糸長計測部32は、スプール3の回転数に関する回転位置データに基づいて糸長Lを計測する。
【0028】
停止糸長設定部33は、モータ4の出力を停止させる停止糸長SLを設定する。停止糸長SLは、釣り糸に取り付けられた仕掛けが掴み易い位置に設定されることが好ましい。停止糸長設定部33は、例えば、第3スイッチ13が長押しされたときの糸長を停止糸長SLとして設定する。
【0029】
出力停止部34は、糸長計測部32が計測した糸長Lが停止糸長SLに到達したときにモータ4の出力を停止させる。
【0030】
出力減少部35は、出力制御部31によって制御されるモータ4の出力を停止糸長SLに到達する手前から減少させる複数の制御モードを含む。出力減少部35は、糸巻き上げ時において停止糸長SLに到達する手前から複数の制御モードのいずれかの制御モードでモータ4の出力を減少させる。出力減少部35は、糸長Lが停止糸長SLに到達する手前から停止糸長SLに到達するまでの間、第1スイッチ11又は第2スイッチ12の操作に応じてモータ4の出力を制御する。なお、出力減少部35は、停止糸長SLが設定されていないときは機能しない。
【0031】
複数の制御モードは、第1制御モード35aと、第2制御モード35bと、を含む。本実施形態では、出力減少部35は、第1制御モード35aと第2制御モード35bのいずれか一方の制御モードで、停止糸長SLに到達する手前から停止糸長SLに到達するまでの間、モータ4の出力を減少させる。
【0032】
第1制御モード35aは、停止糸長SLに到達する手前の第1糸長L1に到達したときにおいて、複数の出力段階のうち最も小さい出力段階に対応する出力よりも小さい第1出力でモータ4の出力を制御する。第1制御モード35aは、出力制御部31によって釣り糸が巻き上げられている時に、糸長Lが第1糸長L1に到達すると、モータ4の出力を第1出力に減少させる。第1制御モード35aは、第1糸長L1から停止糸長SLに到達するまでの間、モータ4の出力を第1出力に制御する。
【0033】
第1出力に対応するモータ4の出力は、第1出力段階に対応するモータ4の出力よりも小さい。したがって、本実施形態では、第1出力に対応するモータ4の回転速度は、0.8m/sよりも遅い。第1出力に対応するモータ4の出力は、記憶部19に予め記憶されている。第1糸長L1は、例えば、停止糸長SLから約1メートル離れた位置に予め設定されている。したがって、第1制御モード35aでは、停止糸長SLに到達する手前約1メートルからモータ4の出力を第1出力に制御する。
【0034】
第2制御モード35bは、停止糸長SLに到達する手前の第2糸長L2に到達したときにおいて、第1出力よりも小さい第2出力でモータ4の出力を制御する。第2制御モード35bは、出力制御部31によって釣り糸が巻き上げられている時に、糸長Lが第2糸長L2に到達すると、モータ4の出力を第2出力に減少させる。第2制御モード35bは、第2糸長L2から停止糸長SLに到達するまでの間、モータ4の出力を第2出力に制御する。第2糸長L2は、初期状態において、例えば、停止糸長SLから約1メートル離れた位置に設定されている。
【0035】
モータ制御部21は、図3に示すように、減速糸長設定部37をさらに備えてもよい。減速糸長設定部37は、第2糸長L2を所定範囲内の任意の値に設定する。所定範囲は、停止糸長SLから0.5~2メートルの範囲であることが好ましい。第2糸長L2の具体的な設定方法は、例えば、第4スイッチ14を長押しすると、減速糸長設定用モードに切り替わり、表示制御部22によって表示部5に減速糸長設定モード用の画面が表示される。そして、第4スイッチ14の短押しによりユーザが所望する糸長を選択した状態で第3スイッチ13がオン操作されたことを検出すると、減速糸長設定部37は、選択された糸長を第2糸長L2として設定する。
【0036】
モード切替部36は、出力減少部35の制御モードを切り替える。本実施形態では、第1制御モード35aが選択されているときに、減速糸長設定部37によって第2糸長L2が設定されると、モード切替部36は、出力減少部35の制御モードを第1制御モード35aから第2制御モード35bに切り替える。また、出力減少部35の制御モードが第2制御モード35bのときに、減速糸長設定用モードにおいて、第2制御モード35bがオフ操作されたときは、モード切替部36は、出力減少部35の制御モードを第2制御モード35bから第1制御モード35aに切り替える。ここでのオフ操作とは、減速糸長設定用モードにおいて、第4スイッチ14の短押しにより第2制御モード35bをオフにする項目が選択された状態で第3スイッチ13がオン操作されたことを意味する。
【0037】
図4は、出力減少部35の制御モードが第2制御モード35bのときにおけるモータ制御部21のモータ制御処理の流れの一例を示している。ここでのモータ4の出力は、モータ4の回転速度であり、モータ4に負荷が作用してスプール3の回転速度が低下した時は、所定の回転速度を保つようにフィードバック制御されている。
【0038】
ステップS1では、糸長Lが第2糸長L2よりも大きいか否かを判定する。すなわち、ステップS1では、糸長Lが第2糸長L2に到達しているか否かを判定する。第2糸長L2に到達していなければ、ステップS2に移行して、第1スイッチ11又は第2スイッチ12の操作に応じて、複数の出力段階から選択された出力段階N0にモータ4の出力を制御する。すなわち、第2糸長L2に到達するまでの間は、出力制御部31によってモータ4の出力が制御され、出力段階N0に対応する回転速度でモータ4が回転する。糸長Lが第2糸長L2に到達していると判定すると、ステップS3に移行する。
【0039】
ステップS3では、糸長Lが停止糸長SLよりも大きい否かを判定する。すなわち、ステップS3では、糸長Lが停止糸長SLに到達しているか否かを判定する。糸長Lが停止糸長SLに到達していなければ、ステップS4に移行して、第1スイッチ11又は第2スイッチ12の操作に応じて、モータ4の出力を第2出力に制御する。したがって、第2糸長L2から停止糸長SLまでの間は、出力減少部35によってモータ4の出力が制御され、第2出力に対応する回転速度でモータ4が回転する。
【0040】
ステップS3で糸長Lが停止糸長SLに到達していると判定すると、ステップS5に移行して、出力停止部34によってモータ4の出力を停止させる。
【0041】
なお、出力停止部34によってモータ4の出力が停止された後で、第1スイッチ11がオン操作されたときは、第1スイッチ11がオン操作されている間だけ複数の出力段階から選択された出力段階N0でモータ4が駆動されるように構成されている。すなわち、糸長Lが停止糸長SLよりも小さいときは、第1スイッチ11がオン操作されたときにのみモータ4が駆動する。
【0042】
図5は、出力減少部35の制御モードが第1制御モード35aのときにおけるモータ制御部21のモータ制御処理の流れの一例を示している。第1制御モード35aにおけるモータ制御処理は、図4におけるステップS1の第2糸長L2が第1糸長L1に置き換わり、図4におけるステップS4の第2出力が第1出力に置き換わることを除いて、第1制御モード35aと同様の制御処理が実行される。このため、第1制御モード35aのモータ制御処理の詳細な説明は省略する。
【0043】
図6は、モード切替部36によるモード切替処理の流れの一例を示している。ステップS11では、モード切替部36は、現在設定されている出力減少部35の制御モードを読み出して、ステップS12に移行する。
【0044】
ステップS12では、ステップS11で読み出した制御モードが第1制御モード35aであるか否かを判定する。第1制御モード35aであると判定すると、ステップS13に移行する。
【0045】
ステップS13では、第2糸長L2が設定されたか否かを判定する。第2糸長L2が設定されたと判定すると、ステップS14に移行して、出力減少部35の制御モードを第1制御モード35aから第2制御モード35bに切り替える。ステップS13で、第2糸長L2が判定されていないと判定した場合は、モード切替処理は実行されない。
【0046】
ステップS12で、ステップS11で読み出した制御モードが第1制御モード35aでないと判定した場合、すなわちここでは制御モードが第2制御モード35bであると判定した場合は、ステップS15に移行する。
【0047】
ステップS15では、第2制御モード35bが前述したようにオフ操作されたか否かを判定する。オフ操作されたと判定した場合は、ステップS16に移行して、出力減少部35の制御モードを第2制御モード35bから第1制御モード35aに切り替える。オフ操作されていないと判定した場合は、モード切替処理は実行されない。
【0048】
上記構成の電動リール100のモータ制御部21では、出力減少部35の制御モードが第2制御モード35bのときに、停止糸長SLに到達する手前から第1出力よりもさらに小さい第2出力でモータ4の出力が制御される。すなわち、第2制御モード35bでは、第1制御モード35aよりもさらに遅い速度で釣り糸が巻き上げられる。これにより、氷上で穴釣りをするときにおいて、糸巻上げ時に針が氷に引っ掛かることを抑制できる。また、仮に針が氷に引っ掛かった場合でも、針が氷に深く引っ掛かることを抑制できるので、釣り糸を繰り出すことで容易に針の引っ掛かりを外すことができる。
【0049】
また、モード切替部36によって、ボート釣りのときは第1制御モード35a、氷上で穴釣りのときは第2制御モード35bといった具合に、出力減少部35の制御モードを釣り場やユーザの使用状況に適した制御モードに切り替えて使用することができるので、電動リール100の操作性が向上する。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0051】
(a)前記実施形態では、出力制御部31は、モータ4の出力を6つの出力段階に制御していたが、出力段階の段階数は前記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
(b)前記実施形態では、モータ4の出力としてスプール3の回転速度を検出してフィードバック制御していたが、モータ4に供給される電流値を制御して巻き上げトルクが所定値となるようにモータ4の出力を制御してもよい。あるいはスプール3の糸巻径を算出して張力が所定値になるように制御してもよい。
【0053】
(c)前記実施形態では、第1制御モード35aが選択されているときに、減速糸長設定部37によって第2糸長L2が設定されると、出力減少部35の制御モードを第1制御モード35aから第2制御モード35bに切り替えていたが、制御モードの切り替えは、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、第2糸長L2の設定に関係なく、第3スイッチ13又は第4スイッチ14が所定の操作されたときに、出力減少部35の制御モードが順番に切り替わるように構成してもよい。或いは、第3スイッチ13又は第4スイッチ14の操作に応じて、ユーザが出力減少部35の制御モードを選択できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
2 リール本体
3 スプール
4 モータ
21 モータ制御部
100 電動リール
図1
図2
図3
図4
図5
図6