(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】一体化コイル血管装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20230215BHJP
A61M 25/098 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/098
(21)【出願番号】P 2019514229
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 US2017050802
(87)【国際公開番号】W WO2018052815
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-17
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515246317
【氏名又は名称】サイエンティア・バスキュラー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,エドワード・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ターンランド,トッド
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,クラーク・シー
(72)【発明者】
【氏名】リッパート,ジョン・エイ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-503225(JP,A)
【文献】米国特許第05069217(US,A)
【文献】特表2005-533594(JP,A)
【文献】特開平08-243168(JP,A)
【文献】米国特許第05174302(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065623(US,A1)
【文献】米国特許第06022343(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
A61M 25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材
(102)と、
近位区域
(106)および遠位区域
(108)を有する管構造
(104)であっ
て、前記近位区域
(106)は前記芯材
(102)に結合され、前記芯材
(102)の少なくとも一部分が前記管構造
(104)の中へと入り、前記管構造
(104)の前記遠位区域
(108)に向かって延びる、管構造
(104)と
、を備え、
前記近位区域
(106)は、軸方向に延びる複数の梁部
(110)と周方向に延びる複数の環部
(112)とを画定する複数の開窓部を備え、前記近位区域
(106)は、前記遠位区域
(108)より大きいトルク伝達性を有し、且つ前記遠位区域
(108)より小さい柔軟性を有し、
前記近位区域
(106)は、
(i)前記管構造
(104)の長手方向軸に沿った両側に
位置する互いに対向する切断部の対
として配置された2梁部切断部パターン
であって、前記互いに対向する切断部の対が周方向に延びる環部(112)の間に2つの軸方向に延びる梁部(110)を形成する、2梁部切断部パターンと、
(ii)各切断部が周方向に延びる環部(116)の間に単一の軸方向に延びる梁部(114)を残す迂回切断パターンと、
を含み、
前記遠位区域
(108)は、一体コイルを形成する渦巻き状切断パターンを備
え、前記遠位区域
(108)に、前記近位区域
(106)より大きい柔軟性を提供
し、
前記迂回切断パターンは、前記遠位区域(108)の前記一体コイルのすぐ近位に形成されて、前記近位区域(106)から前記より柔軟で且つ形成可能な遠位区域(108)への移行として提供される、ガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項2】
前記一体コイルは、前記管構造
(104)の長さに沿って前記装置の遠位端に向けて漸進的に広がっていくかまたは漸進的に狭まっていく幅を有する巻回部を備える、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項3】
前記一体コイルは、前記管構造
(104)の長さに沿って前記装置の遠位端に向けて漸進的に広がっていくかまたは漸進的に狭まっていく幅を有する、巻回部同士の間の隙間を備える、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項4】
前記遠位区域
(108)は、前記一体コイルのピッチと整合するピッチを有する別個のコイルをさらに備え、前記別個のコイルが前記一体コイルと撚り合わせられる、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項5】
前記別個のコイルは少なくとも部分的に、放射線不透過物質から形成される、請求項4に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項6】
前記一体コイル内で前記一体コイルと前記芯材
(102)との間に配置される別個の内側コイルをさらに備える、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項7】
前記別個の内側コイルは少なくとも部分的に、放射線不透過物質から形成される、請求項6に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項8】
前記一体コイルの少なくとも一部分を封入するポリマ層をさらに備える、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項9】
前記ポリマ材料は放射線不透過ドーピング物質を含む、請求項8に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項10】
前記近位区域
(106)は、更に、1梁部切断パターン、3梁部切断パターン、4つ以上の梁部を有する切断パターン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される切断パターンを形成するように配置される、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項11】
前記近位区域
(106)は、深さのずれた2梁部切断部および/または対称的な2梁部切断部の配置を含む、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項12】
前記近位
区域(106)は、非螺旋状の分散された梁部の配置を
含む、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項13】
前記近位区域
(106)の前記2梁部切断部の区域は
対称的な2梁部切断部の区域から深さのずれた2梁部切断部の区域へと
、近位から遠位に向かう方向に沿って、移行する
ように構成されている、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項14】
無外傷性の先端を形成するために前記ガイドワイヤ装置の少なくとも遠位先端に接合されるポリマ材料をさらに含む、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項15】
前記一体コイルの長さの少なくとも一部分が複数の橋梁部を含み、前記複数の橋梁部の各々が前記一体コイルの隣接する巻回部の対を連結する、請求項1に記載のガイドワイヤ装置
(100)。
【請求項16】
遠位端に向けて柔軟性が全体的に増加していく柔軟性勾配プロファイルを有するマイクロカテーテル装置
(100)であって、
遠位区域
(108)と、近位区域
(106)と、内部ルーメンを画定する壁とを有する管構造
(104)と、
前記管構造
(104)の遠位区域に配置される一体コイルであっ
て、前記遠位区域
(108)の長さに沿う渦巻き状切断パターンの結果として前記管構造
(104)の一部分として一体的に形成さ
れ、前記遠位区域
(108)に、前記近位区域
(106)より大きい柔軟性を提供する一体コイルと、
前記近位区域(106)に形成された複数の開窓部であって、前記壁を貫いて延びると共に前記ルーメンを露出させ、軸方向に延びる複数の梁部と周方向に延びる複数の環部とを画定する、複数の開窓部と、
を備え、
前記複数の開窓部
は、
(i)前記管構造の長手方向軸に沿った両側に
位置する互いに対向する切断部の対を有する2梁部切断部パターン
と、
(ii)各切断部が周方向に延びる環部(116)の間に単一の軸方向に延びる梁部(114)を残す迂回切断パターンと、
を含
み、
前記迂回切断パターンは、前記遠位区域(108)の前記一体コイルのすぐ近位に形成されて、前記近位区域(106)から前記より柔軟で且つ形成可能な遠位区域(108)へ移行する、マイクロカテーテル装置
(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001]本出願は、2017年9月7日に出願された「INTEGRATED COIL VASCULAR DEVICES」という名称の米国特許出願第15/698,553号、2016年9月14日に出願された「INTEGRATED COIL GUIDEWIRE DEVICES」という名称の米国仮特許出願第62/394,633号、および2017年5月26日に出願された「MICRO-FABRICATED MEDICAL DEVICE HAVING A DISTRIBUTED CUT ARRANGEMENT」という名称の米国仮特許出願第62/511,605号の優先権および便益を主張する。上記の出願のすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
[0002]本開示は、効果的なトルク伝達性および柔軟性の特徴を有するガイドワイヤ装置およびマイクロカテーテル装置などの血管装置に関する。
[0003]ガイドワイヤ装置は、カテーテルまたは他の介入装置を、患者の体内の目標の解剖学的部位まで誘導または案内するためにしばしば使用される。典型的には、ガイドワイヤは、例えば患者の心臓または神経血管組織かまたはその近くにあり得る目標部位に到達するために、患者の血管構造の中へと通される。ガイドワイヤを目標部位まで通り抜けさせるのを助けるために、放射線撮像がしばしば利用される。多くの例において、ガイドワイヤは介入処置の間に体内の所定位置に残され、介入処置では、ガイドワイヤは複数のカテーテルまたは他の介入装置を目標の解剖学的部位まで案内するために使用され得る。
【0003】
[0004]一部のガイドワイヤ装置は、操作者に患者の血管構造をより良好に通り抜けさせることができるように、湾曲または屈曲した先端を伴う構成とされている。このようなガイドワイヤであれば、操作者は、先端を所望の方向に向ける、または指向させるために、トルクをガイドワイヤの近位端または取り付けられた近位ハンドルに加えることができる。そのため、操作者は、ガイドワイヤをさらに患者の血管構造内において所望の方向に向けることができる。
【0004】
[0005]マイクロカテーテルは、人の体内の深くにおいて繊細な処置を実施するために、医療分野において頻繁に利用されている。典型的には、マイクロカテーテルは、患者の大腿動脈の中へと挿入され、患者の血管構造を通じて、心臓、脳、または必要とされる他の目標の解剖学的構造まで通り抜けさせられる。しばしば、ガイドワイヤは、最初に目標の解剖学的構造まで送られ、続いて1つまたは複数のマイクロカテーテルがガイドワイヤ上を通され、目標の解剖学的構造まで送られる。所定位置になると、マイクロカテーテルは、薬物、ステント、塞栓装置、放射線不透過性色素、または、患者を所望の手法で治療するための他の装置もしくは物質を送るために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0006]特には装置の遠位区域であるこのような血管装置の柔軟性を調整することは、考慮事項の1つである。多くの状況において、血管構造の通路の曲がりくねった屈曲および湾曲を通じて装置を曲げて目標の領域に到着させることができるだけの十分な装置の屈曲性を提供するために、比較的高い度合いの柔軟性が望ましい。例えば、このような装置を神経血管構造の一部分へと方向付けることは、頸動脈サイフォンおよび他の蛇行経路などの湾曲した通路を通じたガイドワイヤの通過を必要とする。
【0006】
[0007]ガイドワイヤ装置およびマイクロカテーテル装置に関する別の考慮事項は、トルクを近位端から遠位端まで伝達するための所与の装置の能力である(つまり、装置の「トルク伝達性」)。装置のより多くの部分が血管構造の通路の中へと通されるとき、装置と血管構造との間の摩擦の表面接触の量が増加し、血管構造の通過を通じた装置の容易な移動を阻害する。良好なトルク伝達性を伴う装置は、装置が回転して摩擦力に打ち勝つように、近位端において加えられるトルクを、ガイドワイヤを通じて遠位端まで効率的に伝達する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、トルク伝達性、柔軟性、および、遠位先端を形成および維持するための能力を最適化するための一体化コイル区域を有するガイドワイヤおよびマイクロカテーテルなどの血管装置に関する。ガイドワイヤ装置は、芯材と、芯材の少なくとも一部分が管構造の中へと入るように芯材に結合された管構造とを備える。管構造の遠位区域は、管構造の一部分として一体的に組み込まれた一体コイルとして遠位区域を構成する渦巻き状の切断部の構成を備える。一体コイルの構成は、ガイドワイヤ装置の形成された遠位先端を破壊しようとする管構造からの弾性力の傾向を低減するために、管構造の柔軟性を増加させる。
【0008】
[0008]本発明の上記および他の利点および特徴が得られる手法を記載するために、先に手短に記載した本発明のより具体的な記載が、添付の図面に示される本発明の特定の実施形態によって提供されている。これらの図面が、本発明の典型的な実施形態だけを描写しており、そのため、本発明の範囲の限定と見なされることがないことを理解して、本発明は、添付の図面の使用を通じて、追加的な特異性および詳細を伴って記載および説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】[0009]
図1Aは一体コイルを伴う管区域を有するガイドワイヤ装置を示す図である。
【
図1B】
図1Bは一体コイルを伴う管区域を有するガイドワイヤ装置を示す図である。
【
図2】[0010]管の近位区域において利用され得る例示の2つの梁部の切断パターンを示す図である。
【
図3】[0011]一体コイルの近位または遠位の管の区域において利用され得る例示の迂回(1つの梁部)の切断パターンを示す図である。
【
図4】[0012]コイルの近位の管の区域において利用され得る例示のずれた2つの梁部の切断パターンを示す図である。
【
図5】[0013]残っている梁部を管の単一の側において位置決めする例示の迂回(1梁部)切断パターンを示す図である。
【
図6A】[0014]非螺旋状および非直線状の切断パターン(分散された切断パターン)を形成するための例示のセグメント位置決めを示すグラフである。
【
図6B】[0014]非螺旋状および非直線状の切断パターン(分散された切断パターン)を形成するための例示のセグメント位置決めを示すグラフである。
【
図6C】[0015]異なる回転方向のずれの隔たりの大きさから生じる間隔の人為的結果の差を示す、回転方向のずれの差を示す図である。
【
図6D】[0015]異なる回転方向のずれの隔たりの大きさから生じる間隔の人為的結果の差を示す、回転方向のずれの差を示す図である。
【
図7】[0016]コイルの異なる区域の対向的な寸法の構成を示す、一体コイルとして形成された管の遠位区域の断面図である。
【
図8】[0017]別体コイルと相互に噛み合わされた管の遠位コイル区域を示し、芯材ワイヤを示す、ガイドワイヤ装置の遠位区域の断面図である。
【
図9】[0018]管の遠位コイル区域と、管のコイル区域内に配置された別体コイルと、芯材ワイヤとを示す、ガイドワイヤ装置の遠位区域の断面図である。
【
図10】[0019]第1の別体コイルと相互に噛み合わされた管の遠位コイル区域と、管のコイル区域内に配置された第2の別体コイルと、芯材ワイヤとを示す、ガイドワイヤ装置の遠位区域の断面図である。
【
図11】[0020]関連するポリマ層を伴う管の遠位コイル区域を示す、ガイドワイヤ装置の遠位区域の断面図である。
【
図12】[0021]マイクロカテーテルの開窓部を封入するエラストマ・ポリマ・マトリックスを有する例示のマイクロカテーテルの区域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前書
[0022]本明細書に記載した実施形態のうちの1つまたは複数は、向上した解剖学的な通り抜けの能力を提供するガイドワイヤおよびカテーテルなどの血管装置を対象にしている。本明細書に記載した特定の例の多くがガイドワイヤ装置を対象としているが、同じ構成要素および特徴がカテーテル装置で利用されてもよいことは理解されよう。例えば、ガイドワイヤ装置の実施形態に関連して本明細書で記載している切断パターン、切断パターン移行、および/または柔軟性勾配は、カテーテル装置を形成するための適切な原材料に適用されてもよい。このような原材料は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、他のポリマ、ニチノール、ステンレス鋼、放射線不透過物質、およびそれらの組み合わせなど、技術的に知られている適切な医療等級のカテーテル材料を含み得る。したがって、本明細書に記載したガイドワイヤ装置の実施形態の各々について、対応するカテーテル実施形態も明示的に開示されていることは認識されよう。しかしながら、各々のカテーテルの実施形態は、実質的に中空の内部のルーメンを提供するために、芯材を省略してもよい。
【0011】
[0023]本明細書に記載した血管装置の実施形態は、目標の解剖学的領域に到達するために患者の解剖学的構造を通り抜けるのに必要な任意の長さであり得る。典型的には、長さは約90cmから約175cmまでの範囲であり得るが、本明細書に記載している原理は、より短い長さまたはより長い長さを有するマイクロカテーテル装置にも容易に適用できる。
【0012】
[0024]マイクロカテーテルの実施形態では、管構造(つまり、細長い中空の部材)は、好ましくは、約3000MPaから約4500MPaまで、または、約3500MPaから約4000MPaまでの弾性係数を有する材料から形成される。ある例示の実施形態では、細長い中空の部材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される、または、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。同様のモジュラス特性を有する他のポリマが利用されてもよい。一部の実施形態では、細長い中空の部材は、体温において超弾性を有するニッケル-チタン合金を含む、または、そのようなニッケル-チタン合金から形成される。一部の実施形態では、細長い中空の部材の近位部分は、ステンレス鋼、または、同様の応力ひずみ特性および弾性係数特性を伴う他の材料から形成される。好ましくは、細長い中空の部材が2つ以上の異なる材料から形成される場合、より大きいモジュラスの材料がより近位の区域で使用され、より小さいモジュラスの材料がより遠位の区域で使用される。
【0013】
[0025]血管装置を目標の解剖学的部位へと操縦および方向付けるための能力は、トルク伝達性と、柔軟性と、装置の遠位先端を形成(shape)する(および、遠位先端の形を維持する)能力との間の兼ね合いを釣り合わせて最適化することに依存する。例えば、血管装置は、形成されるときに操作者が遠位先端を回転させることで血管構造内において所望の方向に先端を指向させることができるように、形成可能な先端を備え得る。しかしながらこのような装置のトルク伝達性が不十分である場合、操作者は、形成された遠位先端の向きを制御するためにトルクを形成された遠位先端まで伝達させることができなくなる。この制限は、装置が血管構造の中へさらに進められ、摩擦抵抗の増加を被るときに益々問題となり得る。
【0014】
[0026]対照的に、トルク伝達性を最大化するように設計された血管装置は、遠位先端のより効果的な回転制御を提供できる。しかしながら、このような装置が、形成された先端を真っ直ぐにしようとする過剰な遠位の剛性を有する場合、形成されていない(直線状/真っ直ぐの)先端の結果生じる回転は、先端の向きに制限された変化をもたらし、通り抜けについての能力が制限される。
【0015】
[0027]本明細書に記載した実施形態の少なくとも一部は、トルク伝達性と、柔軟な遠位先端を維持する能力との間の関係を釣り合わせる、および/または、最適化する1つまたは複数の特徴を提供する。一部の実施形態は、形成された遠位先端を形成および維持するための能力を阻害することなく効果的なトルク伝達性を提供するように、追加または代替で構成される。このような実施形態は、装置使用の間の操作者の操作に応答するように、形成された遠位先端に伝達された捩じり力を受け入れさせることができることで、効果的な通り抜け能力を有利に提供する。
【0016】
[0028]本明細書に記載した実施形態の少なくとも一部は、形成可能な先端を有し、形成可能な先端を維持する一方でトルクを効果的に伝達するための能力を有する血管装置を対象としている。本明細書に記載した1つまたは複数の実施形態は、形においてカスタマイズ可能である先端を備える。本明細書に記載した1つまたは複数の実施形態は、患者の身体の管腔(例えば、患者の血管構造)内での装置の配置の直前の手作業の形成など、手作業の形成を可能にするように構成された先端を備える。本明細書に記載した少なくとも一部の実施形態は、処置を通じて屈曲または湾曲した形を維持させることができ、さらには、別の意図的な再形成の処置を受けるまで無期限に維持させることができる先端を備える。
【0017】
[0029]本明細書に記載した実施形態の1つまたは複数は、血管装置の近位端またはその近くから装置の遠位端(つまり、先端)に向けてのトルクの効率的な伝達を提供するために、1つまたは複数の構成要素および/または特徴に加えて、形成可能な先端を備える。このような実施形態の少なくとも一部は、形成可能な先端の機能性を阻害することなく、効果的なトルク伝達性を有益に提供する。
【0018】
[0030]本明細書に記載した実施形態の1つまたは複数は、遠位端を手作業で形成する能力を使用者に提供する。例えば、操作者は、介入処置のための血管装置の使用の直前に、所望の曲率を提供するために、遠位端を手作業で形成することができる。したがって、操作者は、装置が必要とされる用途に特有の優先および/または条件に従って、遠位先端の形成をカスタマイズすることが可能とされる。
一体コイル実施形態
[0031]
図1Aは、芯材102と、連結点において芯材102に結合され、芯材102から遠位へと延びる管104とを有する例示のガイドワイヤ装置100を示している。芯材ワイヤ102の遠位区域は、管104の中へと延び、管104内に配置されている。図示した実施形態では、芯材102は、芯材102のより近位の区域よりも小さいプロファイルを有する遠位端を芯材102に提供する先細り区域を備える。この例では、芯材102および管104は、互いと結合される(例えば、接着剤、半田付けなどを介して結合される)区域において、実質的に同様の外径を有する。
【0019】
[0032]図示した実施形態では、管104は、トルクを芯材102から管104へと伝達させ、それによってさらに管104によって遠位へと伝達させる手法で、芯材102に結合される。図示した管104は近位区域106と遠位区域108とを備える。後でより詳細に説明しているように、近位区域106は、近位区域106のトルク伝達性と柔軟性との間に所望の釣り合いを提供するために、様々な異なる切断パターン(この図では示されていない)を備え得る。図示しているように、遠位区域108は、近位区域106に一体的に結合されたコイルとして形成されている。遠位区域108の一体コイル形成は、例えば、遠位区域108に加えられる渦巻き状切断パターンの結果として形成され得る。
【0020】
[0033]遠位区域108、具体的には、遠位区域108の芯材102は、ガイドワイヤ装置100の先端を所望の形へと手作業で屈曲、捩じり、または操作することができるように、形成可能(shapeable)となるように構成されている。一部の実施形態では、芯材102の少なくとも遠位部分は、ステンレス鋼、白金、および/または他の形成可能な材料から少なくとも部分的に形成される。好ましい実施形態では、芯材102の少なくとも遠位部分は、ガイドワイヤ先端が、形成されたとき(つまり、塑性変形されたとき)、形成された区域において形成される前よりも大きい弾性係数を提供するように、加工硬化性を呈する材料から形成された1つまたは複数の構成要素を備える。
【0021】
[0034]遠位区域108の一体コイル構成は、ガイドワイヤ装置の遠位先端において有益な柔軟性を提供する一方で、遠位先端の高い度合いの形成可能性(shapeability)も許容するように構成され得る。例えば、典型的なガイドワイヤ装置は、制限された形成可能性を有する。管構造は、典型的には、遠位端の柔軟性を提供するために、典型的にはニチノールまたは他の超弾性材料から形成される。柔軟性のためには有益であるが、このような管は、屈曲または形成されると、それらの元の(例えば、真っ直ぐの)位置に向けて付勢され、そのため、回復力を任意の形成可能な内部構成要素(ステンレス鋼芯材など)に付与し、先端のカスタマイズされた形の変形および喪失をもたらす。しばしば、例えば、ガイドワイヤは、展開の前に形成された先端を有するが、超弾性の外側管が、芯材および/または他の先端の構成要素によって保持されている所望の先端の形に反して、その元の形に向けて曲がるため、形成された先端はガイドワイヤの使用の間に喪失または劣化する。
【0022】
[0035]対照的に、図示した実施形態は(本明細書に記載した他の実施形態も)、一体コイルによって付与される変形回復力に過度にさらされることなく芯材102の内在する区域を形成させることができる、非常に柔軟な一体コイルとして形成された遠位区域108を備える。本明細書に記載した例示の実施形態が、一体コイルと関連する芯材区域の形成可能性を維持することに関連して記載されているが、管104の他の区域が、内在する芯材102の形成可能性を可能にするように構成されてもよいことは、理解されよう。例えば、近位区域106の一部の部分は、芯材102の内在する形成区域に過度に相互作用する回復力を発生させることなく柔軟性とトルク伝達性とを釣り合わせる切断パターン(例えば、後で説明しているように、迂回の切断部)を備え得る。
【0023】
[0036]一部の実施形態では、遠位区域108の一体コイルは、長さが約0.5cmから約5cmまでである、または、長さが約1cmから3cmまでである。一部の実施形態では、管104は、約0.356mm(約0.014インチ)の直径(つまり、外径)を有するか、約0.203mm(約0.008インチ)から約0.965mm(約0.038インチ)までの範囲内にあるか、または、約0.102mm(約0.004インチ)から約3.05mm(約0.120インチ)までの範囲内にある。一部の実施形態では、管104は、約3cmから約35cmまでの範囲内の長さを有するが、装置に必要とされる性能に依存して、より長くてもより短くてもよい。例えば、一部の実施形態は、実質的に装置の全体距離で延びる管を備えてもよい。ガイドワイヤ装置100の残りの近位部分は、目標の解剖学的領域への送達のために、十分なガイドワイヤ長さを提供する必要がある任意の長さであり得る。ガイドワイヤ装置100は、典型的には、約15cmから約350cmまでの範囲である長さを有する。
【0024】
[0037]一部の実施形態では、芯材102の遠位区域は、約0.051mm(約0.002インチ)の直径まで先細りとなる、または、約0.025mm(約0.001インチ)から約0.254mm(約0.010インチ)までの範囲内である。一部の実施形態では、芯材102は、丸い断面を有する遠位区域へと先細りし得る。他の実施形態では、芯材102の遠位区域108は、平坦または長方形の断面を有する。遠位区域108は、別の五角形、卵形、不規則な形、または、その長さに沿っての異なる領域における異なる断面形状の組み合わせなど、別の断面形状を有してもよい。
【0025】
[0038]
図1Bは、本明細書に記載したガイドワイヤ装置のいずれかで利用され得る一体コイル108の別の構成を示している。図示しているように、コイル108は、一体コイル108の隣接する個々の巻回部111同士の間に位置し、巻回部111同士を連結する複数の橋梁部109を備える。このような橋梁部109は、このような橋梁部を有していない同様のコイルに対して、一体コイル108の柔軟性をいくらか制限するように機能できる。例えば、
図1Aに示した一体コイル構成は、コイル構造の隣接する個々の巻回部の間の橋梁部を省略しており、そのため、
図1Bに示した区域より比較的より大きい柔軟性を有する(材料、ピッチ、直径、壁厚、および他の関連する設計パラメータがその他の点では実質的に等しいと仮定する)。一部の実施形態では、一体コイル108は、
図1Bに示したものなどの橋梁部109を有する区域と、橋梁部を省略する区域とを備える。典型的には、このような実施形態では、橋梁部を有する区域は、装置の遠位端に向けて柔軟性を増加させる柔軟性勾配を提供するために、橋梁部のない区域の近位に配置される。
【0026】
[0039]橋梁部109を有する実施形態では、橋梁部109同士は、中空の部材の渦巻きの形の周りに、約45度ごと、約60度ごと、約75度ごと、約90度ごと、約105度ごと、約120度ごと、約135度ごと、約150度ごと、約165度ごと、または約180度ごとに離間され得る。より大きな間隔が、連続する橋梁部同士の間に設けられてもよい。例えば、さらに大きい間隔の配置を提供するために、360度の倍数が前述の角度間隔の値のいずれかに加えられてもよい。より小さい間隔は、概して柔軟性をより大きい度合いまで制限するが、より大きい間隔は、概してより大きい相対的な柔軟性を提供する。一部の実施形態では、橋梁部109同士の間隔は、一体コイルの長さにわたって変化し得る。例えば、橋梁部109同士の間隔は、遠位の柔軟性を漸進的に増加させるために、および/または、所望の柔軟性勾配を管構造に提供するために、コイルの遠位端に向けて、または、橋梁部を省略したより遠位の区域に向けて、漸進的により大きくなり得る。
追加の切断パターン
[0040]
図2から
図5は、管構造において利用され得る微細加工切断パターンの様々な例示の実施形態を示している。例えば、近位区域106は、所望の柔軟性勾配、および/または、一体コイルへの移行区域を提供するために配置されたこのような切断パターンのうちの1つまたは複数を備え得る。以下に記載した切断パターンの実施形態は、軸方向に延びる複数の梁部と周方向に延びる複数の環部とを定める。本明細書で使用される場合、切断パターンは、各対の環部の間に配置される梁部の数に従って呼称される。例えば、
図2は2つの梁部を有する切断パターンを示しており、
図3は1つの梁部を有する切断パターンを示している。追加または代替で、後に記載している例示の切断パターンの実施形態は、3つの梁部を有する切断パターンおよび/または4つ以上の梁部を有する切断パターンを有する1つまたは複数の区域を備え得る。
【0027】
[0041]
図2は、近位区域106に含まれ得る切断パターンの実施形態を示している。この実施形態では、切断部は、管の長手方向軸の両側に位置付けられた対向する切断部の対として配置されている。この種類の切断部の配置は、本明細書において「2梁部切断」パターンまたは「対向切断」パターンと呼ばれる。このような切断部の各々の対は、環部112(横方向および周方向に延びる)同士の間に、2つの梁部110(軸方向に延びる)を形成している。近位区域106は、変化する幅、深さ、間隔、配置などの切断部(図示した2梁部切断部、および/または、本明細書に記載した他の切断部)を含み得る。一部の実施形態では、切断部は、装置の遠位端に近づくにつれて、漸進的に広くかまたは狭くなるように配置される。追加または代替で、切断部は、装置の遠位端により近くなるにつれて、漸進的により浅くかまたはより深くなるように配置されてもよい。
【0028】
[0042]本明細書で使用される場合、漸進的により広くなる、より狭くなる、より浅くなる、より深くなる、より柔軟性のある、または、より柔軟性のないなどと構成される構成要素または特徴への言及は、平均において、記載した手法において漸進する構成要素または特徴を開示するように意図されている。したがって、全体での平均による漸進から離れた1つまたは複数の領域を備える実施形態は、なおも本記載の範囲内にある。例えば、装置の一端により近くなるにつれて、一部の手法において漸進的に変化する構成要素または特徴への言及は、その変化が装置の少なくとも約0.5cm、約1cm、約3cm、または約5cmの軸方向長さにわたって、または、前述の値のうちの任意の2つによって定められる範囲内の軸方向長さにわたって明らかである場合、平均において、漸進的に変化すると見なすことができる。
【0029】
[0043]図示した実施形態は、管の軸に沿ってある対から隣の対まで90度ずつ角度がずらされた対向する切断部の分散(換言すれば、分配)を示している。代替の実施形態では、角度のずれは、90度より大きいかまたは90度より小さくてもよい。例えば、角度のずれは、約5度、約15度、約30度、約45度、約60度、約75度、約80度、または約85度(いずれかの方向における)であり得るか、または、複数の異なるずれの値を含み得る。一部の実施形態では、角度のずれは、対向する切断部の対ごとの後で、隣の対向する切断部の対へと移動するときに適用される。他の実施形態では、対向する切断部の複数の隣接する組が、角度のずれが適用される前に、角度のずれなく互いの隣りに形成され得る(例えば、角度のずれが、対向する切断部の3つの対ごと、4つの対ごとなどで適用される)。
【0030】
[0044]
図3は、
図2に示した2梁部パターンの代替としてか、または、
図2の2梁部パターンへの追加のいずれかで近位区域106に含まれ得る切断パターンの別の実施形態を示している。
図3に示した切断パターンは、本明細書において「迂回切断」パターンまたは「1梁部」パターンと呼ばれる。このような切断部は、管の長手方向軸に対してちょうど反対側にある対向する切断部を有しておらず、そのため、各々の環部116の間に単一の梁部114だけを残している。典型的には、迂回(1つの梁部)の切断部を有する区域を利用する実施形態では、切断部は、遠位区域108の一体コイルのすぐ近位の管の区域に形成される。これが行われるのは、このような1梁部の区域が、典型的には、対応する2梁部の区域に対してより小さいトルク伝達性とより大きい柔軟性とを有するためである。このようにして、1梁部の区域は、トルク伝達性の考慮事項が重要である装置のより近位の区域においてはより有益とはならないが、柔軟性の考慮事項がより重要となる装置のより遠位の区域においてはより有益となる。
【0031】
[0045]図示した実施形態では、切断部は、管の長さに沿って、ある切断部から隣の切断部まで、または、切断部のある組から隣の組まで、約180度の角度のずれを伴って配置されている。2梁部切断部または本明細書に記載した他の種類の切断部と同様に、迂回切断部は、各々の切断部の後に適用される角度のずれ、または、2つごとの切断部、3つごとの切断部、4つごとの切断部などの後に適用される角度のずれに従って、交互の角度位置で配置され得る。迂回切断部は、また、管軸に沿った幅、深さ、および/または、間隔に従って変化し得る。
【0032】
[0046]一部の実施形態では、連続する迂回切断部または迂回切断部の組の深さは、遠位端に向かう各連続する切断部または切断部の組について、漸進的に増加させられる。そのため、切断部の深さプロファイルは、所望の柔軟性およびトルク伝達性、ならびに/または、所与の用途についての勾配を伴うこのような切断部を有する管の一部分を構成するために利用され得る。例えば、ある管構成は、迂回切断部が管に沿って遠位区域108に向けて漸進的により深くなるとき、比較的より大きい柔軟性と比較的より小さいトルク伝達性とに漸進する、より近位の区域における比較的より小さい柔軟性と比較的より大きいトルク伝達性とを有し得る。一部の実施形態では、比較的より深い切断部を有する区域は、近位区域106の最も遠位の部分のみにおいて形成される(例えば、柔軟性が典型的にはさらにより大きい一体コイルの遠位区域108への移行として機能するために)。
【0033】
[0047]図示しているような1つまたは複数の区域の迂回切断部を使用して形成された近位区域106は、特にガイドワイヤ装置100の形成可能な先端を向上させることに関して、多くの便益を提供できる。例えば、迂回切断部を有する管の柔軟性は、2梁部切断部を有する管の柔軟性に対して比較的より大きい(例えば、梁部の幅、環部の大きさ、切断部の間隔、および他の設計パラメータがその他の点では維持されていると仮定する)。有益なことに、迂回切断部の構成によって提供される増加した柔軟性は、このような切断部の提供された管が、それが取り付けられるガイドワイヤの内部構造の形を変形させるのを最小化または防止する。
【0034】
[0048]例えば、管内に配置された芯材102の区域は、ガイドワイヤの先端に所望の形を提供するように、屈曲または湾曲され得る(つまり、塑性変形され得る)。先に説明したように、多くの例において、管の弾性的な回復と関連付けられる力は、形成された芯材に抗して付与されることになり、形成された芯材を真っ直ぐにしようとする。そのため、管の柔軟性を増加させることで、形成された芯材に対して付与される回復力を低下させ、形成された芯材にその形をより良好に維持させることができる。一部の好ましい実施形態では、迂回切断部の区域は、さらにより柔軟で形成可能な遠位区域108への移行として、近位区域106に設けられる。
【0035】
[0049]
図4は、
図2に示した2梁部パターンの代替としてか、
図3に示した迂回切断パターンの代替としてか、または、
図2の2梁部切断パターンおよび/もしくは
図3の迂回切断パターンへの追加のいずれかで近位区域106に含まれ得る切断パターンの別の実施形態を示している。
図4に示した切断パターンは、本明細書では「深さのずれた2梁部切断」パターンまたは「深さのずれた対向切断」パターンと呼ばれる。図示した実施形態では、対向切断部の対は、一方の側が対応する対向する側より大きい深さを有する状態で配置されている。結果生じる構成は、各々の環部120の間における2つの梁部118の組であり、2つの梁部は周方向において対称的ではない。そのため、各環部120は、その近位で隣接する環部に連結する2つの梁部の組と、その遠位で隣接する環部に連結する2つの梁部の組とを有する。
【0036】
[0050]このような深さのずれた2梁部の形成は、遠位区域108の一体コイルに比較的近い管の区域に典型的には形成される。例えば、深さのずれた2梁部の形成を有する管の区域は、対応する対称的な2梁部の区域に対してより小さいトルク伝達性とより大きい柔軟性とを典型的には有するが、対応する1梁部の区域に対してより大きいトルク伝達性とより小さい柔軟性とを典型的には有する。このようにして、1つまたは複数の深さのずれた2梁部の区域は、管に沿って所望のトルク伝達性/柔軟性のプロファイルを提供するために、管の様々な領域において位置決めされ得る。
【0037】
[0051]図示しているように、深さのずれた2梁部切断部は、各々の対向切断部の対に対して、切断部のうちの一方が対向する切断部より大きい深さを有するようにずらされる。このような深さのずれた2梁部切断部は、比較的より柔軟でない2梁部切断部(
図2に示したものなど)の長さから、比較的より柔軟である迂回切断部(
図3に示したものなど)長さまで移行するために有利に使用され得る。例えば、ずれていない2梁部切断部を有する管の区域は、トルクを伝達する比較的より大きい能力と、比較的より小さい柔軟性とを典型的には有し、一方、迂回切断部を有する管の区域は、トルクを伝達する比較的より小さい能力と、比較的より大きい柔軟性とを典型的には有する。深さのずれた2梁部切断部の構成を有する管の区域は、ずれていない対向切断部の区域と迂回切断部の区域との間で、トルク伝達能力と柔軟性とを典型的には有する。
【0038】
[0052]対向切断部の深さの間の差がより大きくなると、結果生じる梁部は周方向でより一体に近づくことになり、そのため、深さのずれた2梁部切断部は迂回切断部とより同じようになる。同様に、対向切断部の深さがより同様になると、深さのずれた2梁部切断部は対称的な2梁部切断部とより同様になる。したがって、深さのずれた2梁部切断部を有する管の区域は、それ自体で、比較的小さい深さのずれを有する1つまたは複数の区域から比較的大きい深さのずれを有する1つまたは複数の区域までの間で移行し得る。
【0039】
[0053]ずれた2梁部の区域を備える管の実施形態は、より近位の対称的な2梁部の区域と、より遠位の迂回切断部の区域との間に所望の移行特性を提供するように位置決めおよび構成され得る移行ゾーンを有利に提供する。例えば、移行ゾーンは、移行ゾーンの長さに依存して、および/または、連続する切断部におけるずれへの変化の急激さに依存して、比較的徐々にかまたは突然であり得る。そのため、管104の近位区域106は、比較的より大きいトルク伝達性でより小さい柔軟性の部分から、比較的より大きい柔軟性の領域まで移行するように構成され得る。そのため、近位区域106は、遠位区域108のコイルのより柔軟な特性への適切な移行を伴う効果的なトルク伝達性の便益を調整/最適化するために、前述の切断部構成の任意の組み合わせを使用できる。
【0040】
[0054]
図5は、
図2に示した2梁部パターンの代替としてか、
図3に示した迂回切断パターンの代替としてか、
図4に示した深さのずれた2梁部パターンの代替としてか、または、
図2の2梁部切断パターン、
図3の迂回切断パターン、および/もしくは、
図4の深さのずれた2梁部パターンへの追加のいずれかで近位区域106に含まれ得る迂回切断パターンの別の実施形態を示している。図示しているように、この実施形態の迂回切断部は、梁部122が、角度のずれを有するのではなく、管の一方の側に沿って並べられるように配置されている。このような実施形態は、管の軸に向かって戻る関連する回復力がさらに最小化されるように、一方向における(例えば、並べられた梁部122に向けた)優先的な屈曲を有益に提供できる。
【0041】
[0055]一部の実施形態では、切断パターンは、変化する幅、深さ、間隔、配置などの切断部を備える。例えば、隣接する切断部同士の間の間隔(spacing)は、装置の遠位端に向けて漸進的に広くかまたは狭くなるように配置され得る。追加または代替で、切断部は、装置の遠位端により近くなるにつれて、漸進的により浅くかまたはより深くなるように配置されてもよい。
【0042】
[0056]現在好ましいとされている実施形態では、特定の切断パターンを有する管の所与の区域が、その区域を、区域の近位端に対して区域の遠位端に向けて、漸進的により柔軟にするように配置された切断部を備える。例えば、区域が、漸進的に小さくなる間隔を有する切断部、および/または、区域の長さに沿って区域の遠位端に向けて漸進的により深くなる切断部を備え得る。このような構成は、区域の特定の切断パターン(例えば、3梁部、2梁部、または、本明細書に記載した他の切断パターンの実施形態のいずれか)が区域の長さを通じて同じままである場合であっても、区域自体内に滑らかな柔軟性勾配を有益に提供する。
【0043】
[0057]したがって、実施形態は、中空の部材の長さにわたって異なるそれぞれの柔軟性の特徴と所望の柔軟性勾配とを提供するために、異なる切断パターンを各々有する複数の区域を備え得る。同時に、特定の切断パターンを有する特定の区域が、特定の区域自体の中に柔軟性勾配を提供するために配置された切断部を備え得る。この手法では、マイクロカテーテルが、区域間の柔軟性勾配と区域内の柔軟性勾配との両方を含むことで、装置の長さにわたる効果的な柔軟性プロファイルを提供できる。
【0044】
[0058]以下の切断パターンの実施形態は、対称的に周方向に離間された梁部の組を形成しているとして示されているが、代替の実施形態は、梁部の組を非対称に離間してもよい。例えば、3梁部切断パターンでは、隣接する環部の各対の間の梁部の各三つ組が、約120度対称に離間されてもよく、または、100度、130度、および130度や、110度、120度、および130度や、100度、100度、および160度などで非対称に離間されてもよい。同様に、2梁部切断パターンでは、隣接する環部の各対の間に配置された梁部の各対は、周方向において約180度対称に離間されてもよく、または、175度、170度、160度、150度、135度、120度、90度などで非対称に離間されてもよい。このような非対称の梁部の構成は、好ましい屈曲方向および/または屈曲方向のうちの好ましい優先を、非対称の構成を有する特定のセグメントに提供するために利用され得る。
梁部の回転方向のずれ
[0059]
図2~
図5で示した切断パターンの実施形態のいずれかを含む一部の実施形態では、切断部または切断部の組は、管の長さに沿う梁部の回転または渦巻きの構成を形成するように回転方向でずれてもよい。例えば、各々の連続の切断部または切断部の組は、約0度から約180度まで(例えば、約5度から約175度まで)で隣接する切断部または切断部の組から回転方向にずらされ得る。好ましい実施形態では、所与の区域の長さに沿った各々の連続した切断部または切断部の組(例えば、2つの切断部ごと、3つの切断部ごと、4つの切断部ごとなど)は、約1度、約2度、約3度、約5度、または約10度回転方向にずらされる。一部の実施形態では、各々の連続する切断部または切断部の組は、3梁部の構成において60度から約1度、約2度、約3度、約5度、もしくは約10度ずらされるか、2梁部の構成において90度から約1度、約2度、約3度、約5度、もしくは約10度ずらされるか、または、1梁部の構成において180度から約1度、約2度、約3度、約5度、もしくは約10度ずらされるこれらの回転方向のずれの値は、曲がる付勢を最小限にする優れた能力を有益に示している。
【0045】
[0060]一部の実施形態では、梁部は、屈曲する軸を分配して管構造の好ましい屈曲方向を有益に最小化または排除するように、非螺旋状および非直線状のパターンである分散(換言すれば、分配)されたパターンを形成するために、管構造の長さに沿って配置される。分散した切断パターンでは、切断部は、各々のセグメントの回転方向の間隔を効率的に分散するために、有益に配置される。この手法では、非螺旋状および非直線状の切断パターンは、管構造の長さに沿う好ましい屈曲する軸を効率的に排除または最小化する。
【0046】
[0061]このような分散された切断パターンは、螺旋状の切断パターンと対照的に、結果生じる梁部が管の軸の周りに螺旋状のパターンで配置されないため、「非螺旋状」である。分散された切断パターンは、管の連続したセグメントにおいて適用された回転方向のずれがあるため、および、管を作り上げるセグメントに適用された回転方向のずれが1つのセグメントから隣のセグメントへと必ずしも等しくないため、「非直線状」でもある。
【0047】
[0062]螺旋は、一般的には、表面が平面へと展開された場合に真っ直ぐとなる円錐状または円筒状の表面上の曲線をたどるものとして定義されている。例として、「螺旋状」のずれのパターンを伴う管の長さに沿う梁部の構成を辿る任意の湾曲した線は、管が切り開かれて平面へと「展開される」場合、直線を形成することになる。対照的に、分散された構成では、管の長さに沿う梁部の構成を辿る任意の線は、直線を形成しない。
【0048】
[0063]
図6Aは、分散された構成を直線状の構成および螺旋状の構成とグラフで比較している。図示しているように、螺旋状の切断パターンは、細長い部材の長さに沿って、セグメントからセグメントへと一定の回転方向のずれを適用している。分散された切断パターンは、螺旋状のパターンに依存することなく、屈曲する軸を効果的に分散する回転方向のずれを適用している。
【0049】
[0064]本明細書で使用される場合、「セグメント」とは、細長い部材(つまり、管構造)の繰り返し構造単位である。例えば、典型的な2梁部の実施形態では、単一のセグメントは、対向する梁部の対、および、対向する梁部が結合される環部として定義することができる。代替で、セグメントは、2つの隣接する環部(1つの近位の環部と1つの遠位の環部)の間に配置される対向する梁部の第1の対、および、遠位の環部から延び、対向する梁部の第1の対からいくらかの大きさ(例えば、約90度)で回転方向にずれた対向する梁部の第2の対として定義され得る。
【0050】
[0065]0度の位置に任意に割り当てられた開始セグメントを考えると、連続するセグメントは、できるだけ急速に目標位置に到達するように回転方向でずらされる。典型的な2梁の実施形態では、最小の大きさの柔軟性が45度の位置に存在することになる。そのため、後続のセグメントは、45度の位置にできるだけ急速に到達するように回転方向でずらされる。しかしながら、図示した実施形態では、回転方向のずれの制限が、剛性の間隔の人為的結果(rigid spacing artifacts)の形成を防止するためにも適用されている。
【0051】
[0066]回転方向のずれは、あるセグメントから隣のセグメントまでの許容可能な回転方向の「急な移動(jump)」に制限を定める。約20度から約30度まで(例えば、約25度)の回転方向のずれの制限は、過度に剛性の間隔の人為的結果を引き起こすことなく、屈曲する軸の効果的な分配を提供するために示されている。他の実施形態は、具体的な製品および/または用途の要求に依存して、他の回転方向のずれの制限を利用し得るか、または、回転方向のずれの制限を省略し得る。例えば、回転方向のずれの制限は、結果生じる間隔の人為的結果が具体的な用途にとって許容可能である場合、30度より大きい値まで上げられ得る。一部の実施形態では、最初の急な移動は、0度の位置から45度の位置までである。
【0052】
[0067]
図6Aに示されている例示の非螺旋状および非直線状の切断パターンは、25度の回転方向のずれの制限を利用している。図示しているように、回転方向のずれは、回転方向のずれの制限内でできるだけ急速に45度の位置まで到達するように、セグメントからセグメントへと適用される。この実施形態では、45度の位置は第3のセグメントにおいて到達される。そのため、後続のセグメントは、残っている屈曲する軸の間隔(gap)を埋めるように位置決めされている。図示しているように、第4のセグメントは、45度の位置と25度の位置との間におおよそ位置決めされ得る。そのため、第5のセグメントは、25度の位置と0度の位置との間におおよそ位置決めされ得る。
【0053】
[0068]位置の間隔は、パターンが続いていくにつれて引き続き満たすことができる。図示しているように、第6のセグメントは35度の位置と45度の位置との間に位置決めでき、次に、第7のセグメントは25度の位置と35度の位置との間に位置決めでき、次に、第8のセグメントは15度の位置と25度の位置との間に位置決めでき、次に、第9のセグメントは、0度の位置において再び開始する前に、10度の位置と0度の位置との間に位置決めできる。そのため、図示したパターンは、繰り返す前におおよそ5度ごとで位置決めされたセグメントを備えている。このような構成は、本明細書では、5度の「位置の細かさ(positional granularity)」を有すると呼ばれる。
【0054】
[0069]各々のセグメント内の梁部の間隔のため、40度のずれは50度のずれ(90度から40度外れている)と機能的に同様となり、30度のずれは60度のずれ(90度から30度外れている)と機能的に同様となるなどとなっていく。そのため、最大の回転方向の位置は、ここでは45度として示されている。しかしながら、代替の実施形態は、90度など、異なる最大の回転方向の位置を使用できる。
【0055】
[0070]図示した正確な位置決めは調節されてもよく、
図6Aに示したパターンが単に例示であることは理解されよう。例えば、残っている間隔は、回転方向の急な移動が所定の回転方向のずれの制限内にある限り、異なる配列を使用して満たされ得る。好ましくは、回転方向の位置同士の間の間隔を満たすとき、セグメントは、間隔のおおよそ中心において位置決めされる。例えば、間隔が0度の位置と25度の位置との間に存在する場合、セグメントは10~15度の位置に位置決めされ得る。
【0056】
[0071]さらに、代替の実施形態は、5度より大きいかまたは小さい位置において満たす位置の細かさを利用してもよい。より少ないセグメントがパターンを再設定する前に使用される場合、各々の適切な位置の大きさの範囲はより大きくなり、より多くのセグメントがパターンを再設定する前に使用される場合、大きさの範囲はより小さくなる。概して、実施形態は、パターンが再設定される前、約3~15個のセグメントを備える(つまり、約3度から約15度までの位置の細かさ)。
【0057】
[0072]前述の原理は、1梁部の配置を有する実施形態、3梁部の配置を有する実施形態、または、4つ以上の梁部の配置を有する実施形態に適用されてもよいことは理解されよう。先に記載した同じ原理は、満たすための角度位置の範囲が図示した2梁部の実施形態における45ではなく少なくとも90度まで(任意選択で180度まで)延びることを除いて、1梁部の実施形態に適用されてもよい。したがって、1梁部の実施形態では、できるだけ急速に90度の位置まで到達することと、残っている位置の間隔を連続するセグメントで満たすこととが、概して好ましい。同様に、同じ原理は、満たすための角度位置の範囲が30度まで(任意選択で60度まで)延びることを除いて、3梁部の実施形態に概して適用でき、できるだけ急速に30度の位置まで到達することが好ましい。
【0058】
[0073]
図6Bは、先に記載した同じ原理に従って、別の分散された切断パターンをグラフで示している。図示しているように、正確な分散は
図6Aに示したものと同じではないが、20度から25度までの回転方向のずれの制限と、45度の最初の目標位置とを含む同じパラメータが利用されている。したがって、分散された切断パターンが「繰り返し」として記載されているが、装置の従前の長さの正確な位置決めを必ずしも繰り返さない。
【0059】
[0074]
図6Cは、回転方向のずれの制限が適用されていない場合に結果生じ得る、望ましくない間隔の人為的結果の例を示している。
図6Cは、第1のセグメント750aと第2のセグメント750bとを有する細長い部材700の区域を示している。第1のセグメント750aは、梁部730a(そのうちの1つだけがこの図で視認可能である)の第1の対と、第1の対から90度ずらされている梁部730bおよび730cの第2の対とを備える。第2のセグメント750bは、梁部730および730eの第1の対と、第1の対から90度ずらされている梁部730fおよび730gの第2の対とを備える。対のうちの各梁は、その対応する梁部から周方向に180度離間されている。第2のセグメント750bは第1のセグメント750aから45度ずらされており、これによって、梁部730dおよび730eを、梁部730aの第1の対から45度離して位置決めし、梁部730fおよび730gの第2の対を、梁部730bおよび730cの第2の対から45度離して位置決めしている。
【0060】
[0075]第1のセグメント750aから第2のセグメント750bまでのこのような45度のずれを適用することは、第2のセグメント750bの屈曲する軸を、第1のセグメント750aの屈曲する軸同士の間に配置するため、望ましい。しかしながら、45度の急な移動は、セグメント同士の間に梁部の間隔ももたらし、これは、細長い部材700の一部分に過度に剛性の人為的結果を残す可能性がある。図示した部材700では、梁部730dは梁部730bから45度離間されているだけであり、一方、梁部730eは梁部730bから135度離間されている。同様に、部材730eは梁部730cから45度離間されており、一方、梁部730dは梁部730cから135度離間されている。この不釣り合いな間隔は、より小さい間隔を有する細長い部材700の領域が過度に剛性となり得るため、および/または、より大きい間隔を有する領域が過度に柔軟になり得るため、望ましくない可能性がある。
【0061】
[0076]対照的に、あるセグメントから隣のセグメントまで適用された回転方向のずれにおけるより制限された急な移動は、セグメント同士の間の梁部間隔における不一致を最小限にする。例えば、
図6Dは、約20度のより制限された回転方向のずれが第1のセグメント850aと第2のセグメント850bとの間に適用されている細長い部材800の区域を示している。
図6Cの細長い部材700におけるように、第1のセグメント850aは梁部830aの第1の対と、梁部830bおよび830cの第2の対とを備えており、第2のセグメント850bは、梁部830dおよび830eの第1の対と、梁部830fおよび830gの第2の対とを備える。しかしながら、第2のセグメント850bが第1のセグメント850aからより制限された20度だけずらされるため、梁部830b、830c、830d、および830eの間の間隔の不一致はより目立たなくなる。梁部830dは梁部830bから70度離間されており、梁部830eは梁部830bから110度離間されている。同様に、梁部830eは梁部830cから70度離間されており、梁部830dは梁部830cから110度離間されている。したがって、間隔の不一致は、セグメント同士の間になおも存在するが、適切な回転方向のずれの制限を提供することによって、適切な度合いに制御され得る。
【0062】
[0077]先に記載した近位区域の実施形態の別々の構成要素および特徴が、異なる管の構成を形成するために組み合わされてもよい。例えば、近位区域106は、2梁部切断部の区域、深さのずれた2梁部切断部の区域、迂回切断部の区域、管が遠位区域108へとより近くに延びるにつれて深さのずれた2梁部切断部の区域へと移行する2梁部区域、管が遠位区域108へとより近くに延びるにつれて、深さのずれた2梁部切断部へと移行してから迂回切断部の区域へと移行する区域、管が遠位区域108へとより近くに延びるにつれて迂回切断部の区域へと移行する深さのずれた2梁部切断部の区域、または、管が遠位区域108へとより近くに延びるにつれて迂回切断部の区域へと移行する2梁部切断部の区域を備えるように構成されてもよい。図示した実施形態は最も遠位の区域において渦巻き状切断パターンを各々備えるが、代替の実施形態は、非渦巻き状切断パターンを有する1つまたは複数のさらなる遠位区域を備えてもよい。例えば、一部の実施形態は、一体コイル区域の遠位に位置付けられる1梁部切断パターンを有する区域を備え得る。
【0063】
[0078]本明細書に記載した実施形態は、より近位の領域の剛性を捩じりにおいてより高めることができる一方で、管のより遠位の区域により大きい屈曲の柔軟性および/または先端の形成可能性を提供させる柔軟性移行部を有益に提供できる。本明細書に記載した他の実施形態と同様に、ガイドワイヤの特徴は、トルク伝達性と、柔軟性と、先端形成可能性と、先端の形を維持するための能力との間の操作可能な関係を最適化するために、具体的な要求または用途に調整され得る。
追加のコイル構成
[0079]
図7は、本明細書に記載した他のガイドワイヤ装置の実施形態のいずれかまたはその構成要素を伴う遠位区域として利用され得るコイル形とされた遠位区域208の一実施形態の断面図を示している。この実施形態では、渦巻き状の切断部同士の間の間隔が、切断部が管の遠位端の近くになるにつれて漸進的により狭くなるように作られている。図示しているように、より遠位に配置されたコイル230のうちの2つの間の寸法224は、より近位に位置付けられたコイル230の間の寸法226より小さい。図示した実施形態では、寸法228によって示された切断部の幅は、実質的に一定である。代替の実施形態では、切断部の幅228は、寸法224および226によって示されたコイルの大きさにおける漸進的な変化の代替または追加として、調節されてもよい。他の実施形態は、遠位区域208における漸進的に変化する特徴を省略してもよい、または、漸進的に変化する特徴を含む1つもしくは複数の区域と、実質的に一定のコイル次元を伴う1つもしくは複数の他の区域とを備えてもよい。
【0064】
[0080]
図8は、本明細書に記載した他のガイドワイヤ装置の構成要素のいずれかを伴う遠位区域として利用され得る遠位区域308の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、一体コイル330は別体(換言すれば、別個の)コイル332と関連付けられている。図示しているように、別体コイル330の個々の巻回部を、一体コイル330によって定められた空間内に巻き付けるかまたは位置決めすることで、別体コイル332は一体コイル330と相互に噛み合わされ得る。例えば、別体コイル332のピッチと一体コイル330のピッチとを十分に合わせることで、別体コイル332を図示した手法で一体コイル330と撚り合わせることができる。一部の実施形態では、別体コイル332は、さらに別体コイル332に取り付けるために、一体コイル330および/または芯材302に半田付け、接着、または留め付けられ得る。
【0065】
[0081]芯材302は、一体コイル330と、撚り合わせられた別体コイル332との両方を通じて延びるように示されている。芯材302は、本明細書で記載した他の実施形態の他の芯材と同様に、丸められ得る、平坦であり得る(例えば、長方形の断面形状を有する)、また任意の他の適切な断面形状を有し得る。一部の用途では、平坦な芯材(典型的な丸められた芯材と対照的に)は、大きな柔軟性を犠牲にすることなく、より少ない材料で形成可能性を維持する能力を有益に提供する。
【0066】
[0082]一部の実施形態では、別体コイル332は、白金、金、パラジウム、ジスプロシウム、ガドリニウムなどの1つまたは複数の放射線不透過物質から少なくとも部分的に形成される。
【0067】
[0083]遠位区域308は、撚り合わせられたコイル332の追加または代替のいずれかで、一体コイル330内に配置される別体コイルを備えてもよい。しかしながら、少なくとも一部の用途では、
図8に示した実施形態は、芯材302によって満たされるより大きい内部空間を提供するため、好ましい。一体コイル330の所与の外径について、内側に配置されたコイルではなく、撚り合わせられたコイル332を使用することは、一体コイル330によって定められた内部空間をまったく使用することなく別体コイル(例えば、放射線不透過性)の便益を提供する。これは、内部空間のより多くを芯材302によって使用させることができる。より広い芯材302は、所望の形を形成および維持すること、ならびに/または、トルク伝達を支援することのためにより多くの材料を提供することが有益に可能である。
【0068】
[0084]
図9は、一体コイル430と、一体コイル430内に配置された別体の内側コイル434とを有する遠位区域408の実施形態の断面図を示している。内側コイル434は、白金、金、パラジウム、イリジウム、タングステン、タンタル、ジスプロシウム、ガドリニウムなどの放射線不透過物質から少なくとも部分的に好ましくは形成される。
図7の実施形態と比較して、芯材402は、内側コイル434のための余地を作るように、一体コイル430の内部空間の少ない割合を占める。一部の用途では、このような内側に配置されたコイル434が望ましく、芯材402は、なおも十分な形成可能性を装置に提供することができる。
【0069】
[0085]
図10は、一体コイル530と、一体コイル530と撚り合わせられた外側コイル532と、一体コイル530内に配置された、芯材502に隣接する内側コイル534とを有する遠位区域508の別の実施形態の断面図を示している。外側コイル532および内側コイル534は、同じ連続するワイヤから形成されてもよい、または、別々の連結されていないコイルとして形成されてもよい。
【0070】
[0086]
図11は、一体コイル630と、一体コイル630を通じて延びる芯材602とを有する遠位区域608の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、遠位区域608は、一体コイル630および芯材602を被覆/封入するポリマ640を備える。一部の実施形態では、ポリマ640は、バリウム、ビスマス、タンタル、タングステンなどの放射線不透過物質でドープされている。一部の実施形態では、ポリマ640は、芯材602と一体コイル630との間の空間を埋めることを支援する。代替の実施形態では、ポリマ640は芯材602と接触しない。例えば、ポリマ640は一体コイルを封入し得るが、芯材602と接触していなくてもよい。一部の実施形態では、ポリマ640は、一体コイル630の隣接するコイル同士の間を橋渡しして延びる。代替の実施形態では、ポリマはコイルを封入または被覆するが、コイル同士の間の間隔を橋渡しまたは覆うように延びていない。
【0071】
[0087]一部の実施形態では、これらの別体コイルが、例えば外径、コイルワイヤの大きさ、コイル間隔、および/または長さに関して、省略または調節され得るように、ポリマ640は、別体コイル(例えば、別体コイル332、434、532、534)によって提供される機能の一部または全部についての代用として利用されてもよい。一部の実施形態では、ポリマ640は、遠位区域において配置され、一体コイル630と関連付けられる。追加または代替で、ポリマは、管のより近位の区域および/または芯材のさらにより近位の区域など、ガイドワイヤ装置の他のより近位の区域に配置されてもよい。
【0072】
[0088]一部の実施形態では、金属メッキが含まれる。金属メッキは、放射線不透過物質であり得る、および/または、放射線不透過特性を含み得る。金属メッキは、一体コイル、芯材、および/またはガイドワイヤ装置の他の構成要素に隣接して位置決めされ得る。金属メッキは、ガイドワイヤ装置の長さに沿って連続的または非連続的であり得る。
ポリママトリックスを伴うマイクロカテーテル
[0089]
図12は、マイクロカテーテルの実施形態の一部として含まれ得る、断面図で示された管構造900の区域の実施形態を示している。図示した区域900は、環部材904同士の間に開窓部(換言すれば、開口部)を示している。図示しているように、開窓部は、ポリマ材料のマトリックス906で満たされている。図示した実施形態では、マトリックス906は、管構造900の外部分の周りに形を成し、開窓部を満たし、ルーメン自体を満たすことなくルーメンを少なくとも部分的に定めるために中空の部材の内面を被覆する。
【0073】
[0090]ポリママトリックス906は、好ましくは、約10MPaから約500MPaの弾性係数を有するエラストマポリマから好ましくは形成される。適切な例には、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、DELRINとして市販されている)、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)ポリ塩化ビニル(PVC)ポリエーテル-エステル(ARNITELとして市販されている)、エーテル系またはエステル系の共重合体、ポリアミド(DURETHANまたはCRISTAMIDとして市販されている)、エチレンビニルアセテート共重合体、シリコーン、ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド(PPO)ポリスチレン、エポキシ、ポリカーボネート、イオノマ、他の同様の化合物、およびそれらの適切な組み合わせがある。
【0074】
[0091]ポリママトリックス906は、マイクロカテーテルの管構造900に流体完全性を提供するために利用され得る。追加または代替で、ポリママトリックス906は、隣接する環部904を保護して全体の移動を所望の範囲内に制限するのを助けるために、ある環部から隣の環部へと加えられる力を伝達することで力を平衡させるために、環部904同士を互いに整列した状態に維持するのを支援するために、および/または、マイクロカテーテルの曲がる間に起こる屈曲位置から環部904が曲げ戻るのを助けるために、利用できる。
【0075】
[0092]
図12に示したポリママトリックス906は、3梁部、2梁部、ずれた2梁部、1梁部、橋渡しされた渦巻き状の梁部、および渦巻き状の梁部の区域の1つまたは複数を含む、本明細書で記載した他の区域のうちのいずれかに適用されてもよい。渦巻き状の切断部の区域では、他の区域の種類と同様の手法で、ポリママトリックス906は、先に記載した有益な機能のうちの1つまたは複数を提供するために、コイル部材同士の間の空間を満たすように機能する。一部の実施形態では、ポリママトリックス906は、管構造の最も遠位の区域に含まれてもよく、やわらかい先端を形成するために中空の部材の遠位端を越えてある距離だけ延びてもよい。
【0076】
[0093]
図12に示した実施形態はライナ908も備える。ライナ908は任意選択で備えられ得る。ライナ908は、例えば、ルーメンの壁を滑らかにするために、摩擦を低減するために、潤滑性を加えるために、ポリマ材料がルーメンに入るのを防止するために、および/または、ルーメンの破裂圧力復元性を増加させるために利用され得る。ライナは、ポリママトリックス906に関連して先に列記したものの1つまたは複数を含む、PTFE、任意の他の適切なポリマ材料、または組み合わせの材料から形成され得る。
【0077】
[0094]本明細書で使用されている「おおよそ」、「約」、および「実質的」の用語は、所望の機能をなおも実施するかまたは所望の結果をなおも達成する述べられた量または条件に近い量または条件を表している。例えば、「おおよそ」、「約」、および「実質的」という用語は、述べられた量または条件から、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満で逸脱する量または条件に言及できる。
【0078】
[0095]ここで描写および/または記載した任意の実施形態に関して記載した要素は、ここで描写および/または記載した任意の他の実施形態に関して記載した要素と組み合わせ可能であり得る。例えば、
図2~
図6Bに示したような、ガイドワイヤ装置の近位の管区域に関して記載した任意の要素は、
図7~
図11に示したような、ガイドワイヤ装置の遠位の管区域に関して記載した任意の要素と組み合わせ可能であり得る。
【0079】
[0096]本明細書に記載した様々な実施形態の構成要素および特徴は、所与の用途または用途の組のための所望の特性をガイドワイヤ装置に提供するために、組み合わせられ得る、および/または、構成され得る。例えば、本明細書に記載した様々な切断パターンは、所望のトルク伝達性および柔軟性のプロファイルおよび/または所望の先端形成可能性の特性を有するガイドワイヤ装置を形成するように、組み合わせられ、配置され得る。
〔態様1〕
芯材と、
近位区域および遠位区域を有する管構造であって、前記管構造の前記近位区域は前記芯材に結合され、前記芯材の少なくとも一部分が前記管構造の中へと入り、前記管構造の前記遠位区域に向かって延びる、管構造と
を備え、
前記管構造の前記遠位区域は、前記管構造の前記遠位区域において一体コイルを形成する渦巻き状切断パターンを備え、前記一体コイルは、前記管構造の前記遠位区域に、前記管構造の前記近位区域より大きい柔軟性を提供する、ガイドワイヤ装置。
〔態様2〕
前記一体コイルは、前記管構造の長さに沿って前記装置の遠位端に向けて漸進的に広がっていくかまたは漸進的に狭まっていく幅を有する巻回部を備える、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様3〕
前記一体コイルは、前記管構造の長さに沿って前記装置の遠位端に向けて漸進的に広がっていくかまたは漸進的に狭まっていく幅を有する、巻回部同士の間の隙間を備える、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様4〕
前記遠位区域は、前記一体コイルのピッチと整合するピッチを有する別個のコイルをさらに備え、前記別個のコイルが前記一体コイルと撚り合わせられる、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様5〕
前記別個のコイルは少なくとも部分的に、放射線不透過物質から形成される、態様4に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様6〕
前記一体コイル内で前記一体コイルと前記芯材との間に配置される別個の内側コイルをさらに備える、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様7〕
前記別個の内側コイルは少なくとも部分的に、放射線不透過物質から形成される、態様6に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様8〕
前記一体コイルの少なくとも一部分を封入するポリマ層をさらに備える、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様9〕
前記ポリマ材料は放射線不透過ドーピング物質を含む、態様8に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様10〕
前記管構造の前記近位区域は、軸方向に延びる複数の梁部と周方向に延びる複数の環部とを画定する複数の開窓部を備え、前記近位区域は、前記遠位区域より大きいトルク伝達性を有し、前記遠位区域より小さい柔軟性を有する、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様11〕
前記近位区域の開窓部は、1梁部切断パターン、2梁部切断パターン、3梁部切断パターン、4つ以上の梁部を有する切断パターン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される切断パターンを形成するように配置される、態様10に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様12〕
前記近位区域は、深さのずれた2梁部切断部および/または対称的な2梁部切断部の配置を含む、態様10に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様13〕
前記近位切断パターンは、非螺旋状の分散された梁部の配置を有する、態様10に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様14〕
前記近位区域は、近位から遠位に向かう方向に沿って、迂回切断部の区域へと移行する深さのずれた2梁部切断部の区域へと移行する、対称的な2梁部切断部の区域を備える、態様10に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様15〕
前記近位区域は、近位から遠位に向かう方向に沿って、迂回切断部の区域へと移行する2梁部切断部の区域を備える、態様10に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様16〕
無外傷性の先端を形成するために前記ガイドワイヤ装置の少なくとも遠位先端に接合されるポリマ材料をさらに含む、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様17〕
前記一体コイルの長さの少なくとも一部分が複数の橋梁部を含み、前記複数の橋梁部の各々が前記一体コイルの隣接する巻回部の対を連結する、態様1に記載のガイドワイヤ装置。
〔態様18〕
遠位端に向けて柔軟性が全体的に増加していく柔軟性勾配プロファイルを有するガイドワイヤ装置であって、
芯材と、
近位区域および遠位区域を有する管構造であって、前記管構造の前記近位区域は前記芯材に結合され、前記芯材の少なくとも一部分が前記管構造の中へと入り、前記管構造の前記遠位区域に向かって延びる、管構造と
を備え、
前記管構造の前記遠位区域は、前記管構造の前記遠位区域において一体コイルを形成する渦巻き状切断パターンを備え、前記一体コイルは、前記管構造の前記遠位区域に、前記管構造の前記近位区域より大きい柔軟性を提供し、
前記一体コイルの長さの少なくとも一部分が複数の橋梁部を含み、前記複数の橋梁部の各々が前記一体コイルの隣接する巻回部の対を連結し、
前記近位区域は、軸方向に延びる複数の梁部と周方向に延びる複数の環部とを画定する複数の開窓部を備え、前記複数の開窓部は、1梁部切断パターン、2梁部切断パターン、3梁部切断パターン、4つ以上の梁部を有する切断パターン、分散された梁部の配置、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される切断パターンを形成するように配置される、ガイドワイヤ装置。
〔態様19〕
遠位端に向けて柔軟性が全体的に増加していく柔軟性勾配プロファイルを有するマイクロカテーテル装置であって、
遠位区域と、近位区域と、内部ルーメンを画定する壁とを有する管構造と、
前記管構造の遠位区域に配置される一体コイルであって、前記管構造の前記遠位区域の長さに沿う渦巻き状切断パターンの結果として前記管構造の一部分として一体的に形成され、前記管構造の前記遠位区域に、前記管構造の前記近位区域より大きい柔軟性を提供する一体コイルと、
前記一体コイルに隣接して前記近位区域の少なくとも一部分に沿って配置され、前記壁を貫いて延びると共に前記ルーメンを露出させる複数の開窓部を備える移行部分であって、前記複数の開窓部は、軸方向に延びる複数の梁部と周方向に延びる複数の環部とを画定する、移行部分と
を備えるマイクロカテーテル装置。
〔態様20〕
前記複数の開窓部は、1梁部切断パターン、2梁部切断パターン、3梁部切断パターン、4つ以上の梁部を有する切断パターン、分散された梁部の配置、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される切断パターンを形成する、態様19に記載のマイクロカテーテル装置。