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特許7227901ボツリヌス神経毒素の活性を測定するためのインビトロアッセイ法及び細胞ベースのアッセイ法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ボツリヌス神経毒素の活性を測定するためのインビトロアッセイ法及び細胞ベースのアッセイ法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230215BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230215BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20230215BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12N9/02
C12Q1/66
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2019521130
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 US2017057411
(87)【国際公開番号】W WO2018075783
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】62/410,558
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ドン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユ フェイファン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508014(JP,A)
【文献】特表2016-519065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.レポータータンパク質のN末端断片と、
b.(i)神経毒素切断部位および(ii) C.ボツリヌム(C.botulinum)神経毒素(BoNT)に対する受容体またはその結合断片を含むリンカーと、
c.前記レポータータンパク質のC末端断片と
をN末端からC末端の順序で含む単鎖ポリペプチドであって、
前記N末端断片及び前記C末端断片が、機能性レポータータンパク質配列をまとめて含み、
前記リンカーによって前記N末端断片と前記C末端断片とが機能的に連結されることで機能性レポーター融合タンパク質が生成する
前記単鎖ポリペプチド。
【請求項2】
前記レポータータンパク質が、ルシフェラーゼタンパク質である、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項3】
前記N末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159の配列(N-nano1~159)を有し、前記C末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170の配列(C-nano160~170)を有する、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項4】
前記N末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列(N-nano1~159)を含み、前記C末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列(C-nano160~170)を含む、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項5】
前記N末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対する置換、欠失、または付加が10アミノ酸残基未満である配列(N-nano1~159)を含み、前記C末端断片が、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対する置換、欠失、または付加が3アミノ酸残基未満である配列(C-nano160~170)を含む、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項6】
前記神経毒素切断部位が、C.ボツリヌム(C.botulinum)神経毒素(BoNT)切断部位ある、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項7】
前記BoNT切断部位が、セロタイプA、E、C、B、D、F、またはGのBoNTによって認識される、請求項6に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項8】
前記BoNT切断部位が、SNAREタンパク質に由来する、請求項6に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項9】
前記SNAREタンパク質が、SNAP-25、シナプトブレビン(VAMP)、またはシンタキシンである、請求項8に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項10】
前記SNAREタンパク質が、ヒトSNAP-25bのアミノ酸141~206である、請求項8に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項11】
前記SNAREタンパク質が、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96である、請求項8に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項12】
前記SNAREタンパク質が、ヒトSNAP25bのアミノ酸1~206である、請求項8に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項13】
前記BoNTに対する受容体またはその結合断片が、前記N末端断片と前記神経毒素切断部位との間に位置する、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項14】
前記BoNTに対する受容体またはその結合断片が、ヒト、マウス、ラット、または霊長類のBoNTに対する受容体である、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項15】
前記BoNTに対する受容体が、SV2Cである、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項16】
前記BoNTに対する受容体の結合断片が、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566に対応する配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項17】
前記BoNTに対する受容体が、SYTIである、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項18】
前記BoNTに対する受容体の結合断片が、SYTIのアミノ酸32~52に対応する配列番号17に示されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項19】
前記BoNTに対する受容体が、SYT2である、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項20】
前記BoNTに対する受容体の結合断片が、SYT2のアミノ酸40~60に対応する配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項21】
前記リンカーが、前記N末端断片と前記神経毒素切断部位との間に位置するインタクトな第2のレポーターポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項22】
前記第2のレポーターポリペプチドが、ホタルルシフェラーゼ(例えば、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis))、細菌ルシフェラーゼ(例えば、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi))、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ(Renilla reniformis))、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、またはカイアシルシフェラーゼである、請求項21に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項23】
ポリヒスチジン親和性タグをさらに含む、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項24】
前記リンカーが、前記神経毒素切断部位と前記N末端断片との間に位置する1つまたは複数のスペーサー、前記神経毒素切断部位と前記C末端断片との間に位置する1つまたは複数のスペーサー、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項25】
前記リンカーが、前記BoNTに対する受容体またはその結合断片と前記N末端断片との間に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む、請求項13に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項26】
前記リンカーが、前記BoNTに対する受容体またはその結合断片と前記神経毒素切断部位との間に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む、請求項13に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項27】
前記リンカーが、前記第2のレポーターポリペプチドと前記N末端断片との間に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む、請求項21に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項28】
前記リンカーが、前記第2のレポーターポリペプチドと前記神経毒素切断部位との間に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む、請求項21に記載の単鎖ポリペプチド。
【請求項29】
請求項1に記載の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
【請求項31】
請求項29に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項32】
C.ボツリヌム神経毒素(BoNT)の効力を決定するための方法であって、以下の段階を含む、方法:
(a)BoNT活性に適した条件下で単鎖ポリペプチドに前記BoNTを接触させる段階であって、前記単鎖ポリペプチドが、
(i)レポータータンパク質のN末端断片と、
(ii)(i)BoNT切断部位および(ii) 前記BoNTに対する受容体またはその結合断片を含むリンカーと、
(iii)前記レポータータンパク質のC末端断片と
を含む、段階;および
(b)参照基準のレポーター活性と比較して前記ポリペプチドのレポーター活性を決定し、それによって効力を決定する段階、
ここで
前記参照基準はBoNTを含まない。
【請求項33】
試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性を検出するための方法であって、以下:
(a)BoNT活性に適した条件下で単鎖ポリペプチドに前記試料を接触させる段階であって、前記単鎖ポリペプチドが、
(i)レポータータンパク質のN末端断片と、
(ii)(i)BoNT切断部位および(ii) 前記BoNTに対する受容体またはその結合断片を含むリンカーと、
(iii)前記レポータータンパク質のC末端断片と
を含む、段階;および
(b)前記試料の非存在下での前記ポリペプチドのレポーター活性と比較して前記ポリペプチドのレポーター活性を決定する段階
を含み、レポーター活性の減少が、前記試料における神経毒素の活性を示
方法。
【請求項34】
前記接触させる段階が、前記単鎖ポリペプチドを発現する神経細胞に前記試料を接触させることを含み、前記方法が、前記接触段階の間に、
前記神経細胞を約12時間~約60時間の期間インキュベートする段階;及び
前記神経細胞から溶解液を回収する段階
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
以下を含む、キット:
(a)1つもしくは複数の、請求項1に記載の単鎖ポリペプチドであって、
前記単鎖ポリペプチドのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記単鎖ポリペプチド;
(b)前記1つもしくは複数の(a)の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、1つもしくは複数の、核酸もしくは核酸ベクターであって、
前記核酸もしくは核酸ベクターのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記核酸もしくは核酸ベクター;及び/または
(c)前記1つもしくは複数の(a)の単鎖ポリペプチドを発現する1つもしくは複数の細胞であって、
前記細胞のそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月20日出願の米国仮出願第62/410558号の利益を主張し、当該文献の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(「0342941_0630_SL.TXT」という名称の.txtファイルとして電子的に提出される)を参照するものである。この.txtファイルは、2017年10月13に作成されたものであり、そのサイズは、34,305バイトである。配列表の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書に記載の技術は、神経毒素(例えば、ボツリヌス毒素)の活性を決定するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ボツリヌス神経毒素(BoNT)は、バイオテロの懸念でも治療への応用でも関心を集める物質である。伝統的に、BoNTの検出及び特徴付けは、試料をマウスに投与し、かなりの用量でマウスを死に至らしめることによって実施されている。細胞またはインビトロで実施することができるアッセイが探求されているものの、こうしたアッセイは、感度または特異性が伴わないという問題を抱えており、臨床試料に共通する成分との反応が生じる結果として陽性シグナルを生じさせてしまうことが多い。
【発明の概要】
【0005】
概要
インビトロとインビボとの両方においてBoNTの活性を検出及び測定するために開発された新たなアッセイが本明細書に記載される。このアッセイでは、例えばBoNT活性のセンサーとして働くように操作されたBoNT基質を介して分断型ルシフェラーゼが連結されることによって特徴付けられる特有の単鎖ポリペプチドが使用される。BoNTが存在すると、当該毒素によってリンカー領域が切断される結果、ルシフェラーゼ活性が減少し、この活性減少は、容易に検出される。
【0006】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)レポータータンパク質のN末端断片と、b)神経毒素切断部位を含むリンカーと、c)レポータータンパク質のC末端断片と、をN末端からC末端の順序で含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、N末端断片及びC末端断片は、機能性レポータータンパク質配列をまとめて含み、リンカーによってN末端断片とC末端断片とが機能的に連結されることで機能性レポーター融合タンパク質が生成する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、レポータータンパク質は、ルシフェラーゼタンパク質である。
【0007】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むN末端ドメイン(N-nano1~159)と、b)N-nano1~159のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、c)リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するC末端ドメイン(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0008】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対する置換、欠失、または付加が10アミノ酸残基未満である配列を含むN末端ドメイン(N-nano1~159)と、b)N-nano1~159のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、c)リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対する置換、欠失、または付加が3アミノ酸残基未満である配列を有するC末端ドメイン(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0009】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、N末端ドメインは、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159の配列(N-nano1~159)を有し、C末端ドメインは、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170の配列(C-nano160~170)を有する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素切断部位は、C.ボツリヌム(C.botulinum)神経毒素(BoNT)切断部位及び/または破傷風神経毒素切断部位である。
【0010】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位とN末端断片もしくはN末端ドメインとの間、神経毒素切断部位とC末端断片もしくはC末端ドメインとの間、またはそれらの両方に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT及び/または破傷風神経毒素に対する受容体の結合断片をさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、結合断片は、N末端断片またはN末端ドメインとBoNT切断部位との間に位置する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、結合断片とBoNT切断部位との間に位置するスペーサーをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペーサーは、グリシン及びセリンから構成される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペーサーは、5~15アミノ酸である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペーサーは、配列番号4~9から選択される。
【0011】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNTは、A、E、C、B、D、F、またはGである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、SNAREタンパク質に由来するものである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、SNAREタンパク質は、SNAP-25、シナプトブレビン(VAMP)、またはシンタキシンである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、ヒトSNAP-25bのアミノ酸141~206である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、受容体は、ヒトSV2Cである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、結合断片は、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566であるか、またはヒトSV2Cのアミノ酸529~566との同一性が少なくとも90%である配列であるか、またはヒトSV2Cのアミノ酸529~566に対する置換、欠失、もしくは付加が10アミノ酸残基以下である配列である。
【0012】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリヒスチジン親和性タグをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリヒスチジン親和性タグは、ポリペプチドのC末端に位置する。
【0013】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、N末端断片またはN末端ドメインとBoNT切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼポリペプチドは、ホタルルシフェラーゼ(例えば、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis))、細菌ルシフェラーゼ(例えば、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi))、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ(Renilla reniformis))、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、またはカイアシ(copepod)ルシフェラーゼである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、第2のルシフェラーゼポリペプチドとBoNT切断部位との間に位置するスペーサーをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、5~15アミノ酸である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、
である。
【0014】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、SV2Cのアミノ酸529~566から構成される結合断片、iii)結合断片のC末端に位置する第2のスペーサー、iv)第2のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、v)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第3のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0015】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、iii)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0016】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含むBoNT切断部位、iii)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0017】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)第2の機能性ルシフェラーゼポリペプチド、ii)第2のルシフェラーゼポリペプチドのC末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサー、iii)第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸1~206を含むBoNT切断部位、iv)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0018】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、1つまたは複数のスペーサーは、
である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、C末端に位置するHis6配列(配列番号12)をさらに含む。
【0019】
実施形態のいずれかの1つの態様では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書に記載される。実施形態のいずれかの1つの態様では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む核酸ベクターが本明細書に記載される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターであり、発現可能な形態の核酸配列を含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス発現ベクター、原核生物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または哺乳類発現ベクターからなる群から選択される。
【0020】
実施形態のいずれかの1つの態様では、上述のパラグラフの核酸またはベクターを含む細胞が本明細書に記載される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドを発現する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または動物細胞である。
【0021】
実施形態のいずれかの1つの態様では、ボツリヌス神経毒素の効力の決定方法が本明細書に記載され、この方法は、BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドに神経毒素を接触させること、及び参照基準と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定し、それによって効力を決定すること、を含む。
【0022】
実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドに試料を接触させること、及び試料の非存在下でのポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。
【0023】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、インビトロで実施される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、接触は、50mMのHEPES、20μMのZnCl、2mMのDTT、1mg/mlのBSAを含む緩衝液(pH7.1)において実施される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試料と接触する単鎖ポリペプチドの濃度は、約30nM~300nMである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試料と接触する単鎖ポリペプチドの濃度は、約30nMである。
【0024】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼ基質を単鎖ポリペプチドに添加し、生成する発光シグナルを定量的に測定することによって決定される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約1時間~約36時間インキュベートすることを含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約1時間~約24時間インキュベートすることを含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約4時間~約24時間インキュベートすることを含む。
【0025】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、第1のスペーサーのC末端かつBoNT切断部位のN末端に位置する、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566の結合断片と、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含む。
【0026】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドは、神経細胞によって発現するものであり、方法は、接触段階の後に、神経細胞を約12時間~約60時間インキュベートすること、及び神経細胞から溶解液を回収すること、をさらに含む。
【0027】
実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)とが、N-nano1~159のC末端かつC-nano160~170のN末端に位置する、BoNT切断部位を含むリンカーによって分断かつ機能的に連結されたものを含む単鎖ポリペプチドを発現する神経細胞に試料を接触させること、b)神経細胞を約12時間~約60時間インキュベートすること、c)神経細胞から溶解液を回収すること、ならびにd)試料の非存在下で同一の処理を実施した神経細胞におけるルシフェラーゼ活性と比較して溶解液におけるルシフェラーゼ活性を測定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。
【0028】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、N-nano1~159と切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドをさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼポリペプチドは、ホタルルシフェラーゼ(フォティヌス・ピラリス)、細菌ルシフェラーゼ(ビブリオ・フィシェリ、ビブリオ・ハーベイ)、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ)、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、またはカイアシルシフェラーゼである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試料における第2のルシフェラーゼポリペプチドのルシフェラーゼ活性が決定され、回収された溶解液に存在する総単鎖ポリペプチドの指標として使用される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドは、段階a)の前の6日間発現する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ウイルス発現系は、レンチウイルス発現系である。
【0029】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、インキュベート段階は、約48時間実施される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、回収段階は、溶解緩衝液を添加することによって実施される。
【0030】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、SNAP-25、シナプトブレビン(VAMP)、またはシンタキシンに由来するものである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、BoNT A、BoNT E、及びBoNT Cによって特異的に認識されるか、またはBoNT B、BoNT D、BoNT F、及びBoNT Gによって特異的に認識される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、異なるBoNT切断部位を有する単鎖ポリペプチドの組み合わせが使用される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、ヒトSNAP-25のアミノ酸141~206、またはヒトVAMP1のアミノ酸35~96、ヒトSNAP35のアミノ酸1~206、またはVAMP1のアミノ酸1~96である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT受容体の結合断片をさらに含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、受容体は、SV2Cである。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、結合断片は、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566を含む。
【0031】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、第2のルシフェラーゼポリペプチドと、第2のルシフェラーゼポリペプチドのC末端かつBoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトSNAP25のアミノ酸1~206を含み、第1のスペーサーのC末端に位置する。
【0032】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ルシフェラーゼ活性の測定は、ルシフェラーゼに特異的な基質を添加し、得られる発光シグナルを定量的に検出することによって達成される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1のルシフェラーゼの基質は、フリマジン(2-フラニルメチル-デオキシ-セレンテラジン)である。
【0033】
1つの態様では、a)1つもしくは複数の本明細書に記載の単鎖ポリペプチドであって、単鎖ポリペプチドのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される単鎖ポリペプチド、b)1つもしくは複数の本明細書に記載の核酸もしくは核酸ベクターであって、核酸もしくは核酸ベクターのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される核酸もしくは核酸ベクター、及び/またはc)1つもしくは複数の本明細書に記載細胞であって、細胞のそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される細胞、を含むキットが本明細書に記載される。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、キットは、独立した容器に収容されたルシフェラーゼ基質をさらに含む。
[本発明1001]
a.レポータータンパク質のN末端断片と、
b.神経毒素切断部位を含むリンカーと、
c.前記レポータータンパク質のC末端断片と、
をN末端からC末端の順序で含む単鎖ポリペプチドであって、
前記N末端断片及び前記C末端断片が、機能性レポータータンパク質配列をまとめて含み、前記リンカーによって前記N末端断片と前記C末端断片とが機能的に連結されることで機能性レポーター融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1002]
前記レポータータンパク質が、ルシフェラーゼタンパク質である、本発明1001の単鎖ポリペプチド。
[本発明1003]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むN末端ドメイン(N-nano 1~159 )と、
b.前記N-nano 1~159 のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するC末端ドメイン(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1004]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対する置換、欠失、または付加が10アミノ酸残基未満である配列を含むN末端ドメイン(N-nano 1~159 )と、
b.前記N-nano 1~159 のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対する置換、欠失、または付加が3アミノ酸残基未満である配列を有するC末端ドメイン(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1005]
前記N末端ドメインが、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159の配列(N-nano 1~159 )を有し、前記C末端ドメインが、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170の配列(C-nano 160~170 )を有する、本発明1003~1004のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1006]
前記神経毒素切断部位が、C.ボツリヌム(C.botulinum)神経毒素(BoNT)切断部位及び/または破傷風神経毒素切断部位である、本発明1001~1005のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1007]
前記リンカーが、前記BoNT切断部位と前記N末端断片もしくはN末端ドメインとの間、前記神経毒素切断部位と前記C末端断片もしくはC末端ドメインとの間、またはそれらの両方に位置する1つまたは複数のスペーサーをさらに含む、本発明1001~1006のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1008]
前記リンカーが、前記BoNT及び/または破傷風神経毒素に対する受容体の結合断片をさらに含む、本発明1001~1007のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1009]
前記結合断片が、前記N末端断片またはN末端ドメインと前記BoNT切断部位との間に位置する、本発明1008の単鎖ポリペプチド。
[本発明1010]
前記リンカーが、前記結合断片と前記BoNT切断部位との間に位置するスペーサーをさらに含む、本発明1008~1009のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1011]
少なくとも1つのスペーサーが、グリシン及びセリンから構成される、本発明1001~1010のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1012]
少なくとも1つのスペーサーが、5~15アミノ酸である、本発明1001~1011のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1013]
少なくとも1つのスペーサーが、配列番号4~9から選択される、本発明1001~1012のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1014]
前記BoNTが、A、E、C、B、D、F、またはGである、本発明1006~1013のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1015]
前記BoNT切断部位が、SNAREタンパク質に由来する、本発明1006~1014のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1016]
前記SNAREタンパク質が、SNAP-25、シナプトブレビン(VAMP)、またはシンタキシンである、本発明1015の単鎖ポリペプチド。
[本発明1017]
前記BoNT切断部位が、ヒトSNAP-25bのアミノ酸141~206である、本発明1006~1016のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1018]
前記BoNT切断部位が、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96である、本発明1006~1016のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1019]
前記受容体が、ヒトSV2Cである、本発明1008~1017のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1020]
前記結合断片が、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566であるか、またはヒトSV2Cのアミノ酸529~566との同一性が少なくとも90%である配列であるか、またはヒトSV2Cのアミノ酸529~566に対する置換、欠失、もしくは付加が10アミノ酸残基以下である配列である、本発明1019の単鎖ポリペプチド。
[本発明1021]
ポリヒスチジン親和性タグをさらに含む、本発明1001~1020のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1022]
前記ポリヒスチジン親和性タグが、前記ポリペプチドのC末端に位置する、本発明1021の単鎖ポリペプチド。
[本発明1023]
前記リンカーが、前記N末端断片またはN末端ドメインと前記BoNT切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドをさらに含む、本発明1001~1022のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1024]
前記第2のルシフェラーゼポリペプチドが、ホタルルシフェラーゼ(例えば、フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis))、細菌ルシフェラーゼ(例えば、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)、ビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi))、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ(Renilla reniformis))、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、またはカイアシルシフェラーゼである、本発明1023の単鎖ポリペプチド。
[本発明1025]
前記リンカーが、前記第2のルシフェラーゼポリペプチドと前記BoNT切断部位との間に位置するスペーサーをさらに含む、本発明1023または本発明1024の単鎖ポリペプチド。
[本発明1026]
前記スペーサーが、5~15アミノ酸である、本発明1025の単鎖ポリペプチド。
[本発明1027]
前記スペーサーが、
である、本発明1025または本発明1026の単鎖ポリペプチド。
[本発明1028]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano 1~159 )と、
b.i.5~15アミノ酸の第1のスペーサー、
ii.前記第1のスペーサーのC末端に位置し、SV2Cのアミノ酸529~566から構成される結合断片、
iii.前記結合断片のC末端に位置する第2のスペーサー、
iv.前記第2のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、
v.前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第3のスペーサー
を含む、前記N-nano 1~159 のC末端に位置するリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1029]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano 1~159 )と、
b.i.5~15アミノ酸の第1のスペーサー、
ii.前記第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、
iii.前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、
を含む、前記N-nano 1~159 のC末端に位置するリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1030]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano 1~159 )と、
b.i.5~15アミノ酸の第1のスペーサー、
ii.前記第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含むBoNT切断部位、
iii.前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、
を含む、前記N-nano 1~159 のC末端に位置するリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1031]
a.配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano 1~159 )と、
b.i.第2の機能性ルシフェラーゼポリペプチド、
ii.前記第2のルシフェラーゼポリペプチドのC末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサー、
iii.前記第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸1~206を含むBoNT切断部位、
iv.前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、
を含む、前記N-nano 1~159 のC末端に位置するリンカーと、
c.前記リンカーのC末端に位置する、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano 160~170 )と、
を含む単鎖ポリペプチドであって、
前記リンカーによって前記N-nano 1~159 と前記C-nano 160~170 とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する、前記単鎖ポリペプチド。
[本発明1032]
1つまたは複数のスペーサーが、
である、本発明1028~1031のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1033]
前記C末端に位置するHis6配列(配列番号12)をさらに含む、本発明1028~1032のいずれかの単鎖ポリペプチド。
[本発明1034]
本発明1001~1033のいずれかの単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
[本発明1035]
本発明1034の核酸を含む、核酸ベクター。
[本発明1036]
発現ベクターであり、発現可能な形態の前記核酸配列を含む、本発明1035の核酸ベクター。
[本発明1037]
ウイルス発現ベクター、原核生物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または哺乳類発現ベクターからなる群から選択される、本発明1036の核酸ベクター。
[本発明1038]
本発明1034の核酸または本発明1035~1037のいずれかの核酸ベクターを含む、細胞。
[本発明1039]
本発明1001~1033のいずれかの単鎖ポリペプチドを発現する、本発明1038の細胞。
[本発明1040]
原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または動物細胞である、本発明1039の細胞。
[本発明1041]
ボツリヌス神経毒素の効力を決定するための方法であって、
(a)BoNT活性に適した条件下で本発明1001~1033のいずれかの単鎖ポリペプチドに前記神経毒素を接触させること、及び
(b)参照基準と比較して前記ポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定し、それによって前記効力を決定すること、
を含む、前記方法。
[本発明1042]
試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性を検出するための方法であって、
(a)BoNT活性に適した条件下で本発明1001~1033のいずれかの単鎖ポリペプチドに前記試料を接触させること、及び
(b)前記試料の非存在下での前記ポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較して前記ポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、
を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって前記試料におけるBoNT活性が示される、前記方法。
[本発明1043]
インビトロで実施される、本発明1041~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記接触が、50mMのHEPES、20μMのZnCl 2 、2mMのDTT、1mg/mlのBSAを含む緩衝液(pH7.1)において実施される、本発明1041~1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記試料と接触する前記単鎖ポリペプチドの濃度が、約30nM~300nMである、本発明1041~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記試料と接触する単鎖ポリペプチドの濃度が、約30nMである、本発明1045の方法。
[本発明1047]
前記ルシフェラーゼ活性が、ルシフェラーゼ基質を前記単鎖ポリペプチドに添加し、生成する発光シグナルを定量的に測定することによって決定される、本発明1041~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
前記条件が、約37℃で約1時間~約36時間の期間インキュベートすることを含む、本発明1041~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記条件が、約37℃で約1時間~約24時間の期間インキュベートすることを含む、本発明1041~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記条件が、約37℃で約4時間~約24時間の期間インキュベートすることを含む、本発明1041~1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記リンカーが、
5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、
前記第1のスペーサーのC末端かつ前記BoNT切断部位のN末端に位置する、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566の結合断片と、
前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、
を含み、
前記BoNT切断部位が、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む、本発明1041~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記リンカーが、
前記BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、
前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、
を含み、
前記BoNT切断部位が、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む、本発明1041~1050のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記リンカーが、
前記BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、
前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、
を含み、
前記BoNT切断部位が、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含む、本発明1041~1050のいずれかの方法。
[本発明1054]
前記単鎖ポリペプチドが、神経細胞によって発現され、前記方法が、前記接触段階の後に、
前記神経細胞を約12時間~約60時間の期間インキュベートすること、及び
前記神経細胞から溶解液を回収すること、
をさらに含む、本発明1041~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性を検出するための方法であって、
(a)配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano 1~159 )と、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano 160~170 )とが、前記N-nano 1~159 のC末端かつ前記C-nano 160~170 のN末端に位置する、BoNT切断部位を含むリンカーによって分断かつ機能的に連結されたものを含む単鎖ポリペプチドを発現する神経細胞に前記試料を接触させること、
(b)前記神経細胞を約12時間~約60時間の期間インキュベートすること、
(c)前記神経細胞から溶解液を回収すること、
(d)前記試料の非存在下で同一の処理を実施した神経細胞におけるルシフェラーゼ活性と比較して前記溶解液におけるルシフェラーゼ活性を測定すること、
を含み、
前記ルシフェラーゼ活性の減少によって前記試料におけるBoNT活性が示される、前記方法。
[本発明1056]
前記リンカーが、前記N-nano 1~159 と前記切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドをさらに含む、本発明1041~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
第2のルシフェラーゼポリペプチドが、ホタルルシフェラーゼ(フォティヌス・ピラリス)、細菌ルシフェラーゼ(ビブリオ・フィシェリ、ビブリオ・ハーベイ)、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ)、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、またはカイアシルシフェラーゼである、本発明1056の方法。
[本発明1058]
前記試料における前記第2のルシフェラーゼポリペプチドの前記ルシフェラーゼ活性が決定され、前記回収された溶解液に存在する総単鎖ポリペプチドの指標として使用される、本発明1056~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記神経細胞が、ウイルス発現ベクターから前記単鎖ポリペプチドを発現する、本発明1054~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記単鎖ポリペプチドが、段階(a)の前の6日間発現する、本発明1059の方法。
[本発明1061]
前記ウイルス発現系が、レンチウイルス発現系である、本発明1059の方法。
[本発明1062]
前記インキュベート段階が、約48時間実施される、本発明1054~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記回収段階が、溶解緩衝液を添加することによって実施される、本発明1054~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記BoNT切断部位が、SNAP-25、シナプトブレビン(VAMP)、またはシンタキシンに由来するものである、本発明1041~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記BoNT切断部位が、BoNT A、BoNT E、及びBoNT Cによって特異的に認識されるか、またはBoNT B、BoNT D、BoNT F、及びBoNT Gによって特異的に認識される、本発明1041~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
異なるBoNT切断部位を有する単鎖ポリペプチドの組み合わせが使用される、本発明1041~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
前記BoNT切断部位が、ヒトSNAP-25のアミノ酸141~206、またはヒトVAMP1のアミノ酸35~96、ヒトSNAP35のアミノ酸1~206、またはVAMP1のアミノ酸1~96である、本発明1041~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
前記リンカーが、BoNT受容体の結合断片をさらに含む、本発明1041~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
前記受容体が、SV2Cである、本発明1068の方法。
[本発明1070]
前記結合断片が、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566を含む、本発明1068~1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
前記リンカーが、
第2のルシフェラーゼポリペプチドと、
前記第2のルシフェラーゼポリペプチドのC末端かつ前記BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、
前記BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、
を含み、
前記BoNT切断部位が、ヒトSNAP25のアミノ酸1~206を含み、前記第1のスペーサーのC末端に位置する、本発明1041~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
ルシフェラーゼ活性の測定が、前記ルシフェラーゼに特異的な基質を添加し、得られる発光シグナルを定量的に検出することによって実施される、本発明1041~1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
配列番号1のルシフェラーゼの前記基質が、フリマジン(2-フラニルメチル-デオキシ-セレンテラジン)である、本発明1072の方法。
[本発明1074]
以下を含む、キット:
(a)1つもしくは複数の、本発明1001~1033のいずれかの単鎖ポリペプチドであって、前記単鎖ポリペプチドのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記単鎖ポリペプチド、
(b)1つもしくは複数の、本発明1034~1037のいずれかの核酸もしくは核酸ベクターであって、前記核酸もしくは核酸ベクターのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記核酸もしくは核酸ベクター、及び/または
(c)1つもしくは複数の、本発明1038~1040のいずれかの細胞であって、前記細胞のそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容されている、前記細胞。
[本発明1075]
独立した容器に収容されたルシフェラーゼ基質をさらに含む、本発明1074のキット。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】毒素センサーに基づく分断型ルシフェラーゼの模式図を示す。左パネル:NANOLUC(商標)ルシフェラーゼは、2つの相補断片であるN-nanoとC-nanoとに分離されている。これらの2つの断片は、毒素基質(SNAP-25(p25としても知られる)またはVAMP1/2/3(例えば、シナプトブレビン))に基づくリンカーで共に連結されている。右パネル:BoNTによってリンカー領域が切断されることで、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの2つの部分が分離され、発光シグナルが消失する。
図2図2A図2Bは、BoNT/Aのインビトロ検出アッセイを示す。BoNT/A毒素を検出するために2つのセンサータンパク質を設計し、検討した。1つは、NNano-SV2C-L4-p25-CNanoであり、もう1つは、NNano-p25-CNanoである。これらのセンサータンパク質は、体積を30ulとして30nMで調製し、BoNT/Aは、1nM~1fMとなるように10倍希釈系列を調製した。センサータンパク質溶液にBoNT/Bを添加したものを負の対照とした。NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの発光率に基づいて曲線(図2A)をプロットした。BoNT/Aについては、NNano-SV2C-p25-CNanoを使用すると、4時間後のEC50は9.73pMであり、24時間後のEC50は7.86pMであり、一方、NNano-p25-CNanoを使用すると、4時間後のEC50は48.26pMであり、24時間後のEC50は35.87pMである(37℃で実施)。BoNT/A結合ドメインであるSV2C-L4を含むセンサータンパク質では、EC50が約5倍向上した(図2B)。
図3図3A図3Bは、4時間後及び24時間後のBoNT/Bのインビトロ検出アッセイを示す。センサータンパク質であるNNano-VAMP1-CNanoは、体積を30ulとして30nMで調製し、BoNT/Bは、10nM~1fMとなるように10倍希釈系列を調製した。センサータンパク質溶液にBoNT/Aを添加したものを負の対照とした。NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの発光率に基づいて曲線(図3A)をプロットした。BoNT/Bについては、4時間後のEC50は75.7pMであり、24時間後のEC50は3.9pMである(37℃で実施)(図3B)。
図4】ウイルス感染させた神経細胞を使用するBoNT/Aのインビボ検出アッセイを示す。それぞれの神経細胞溶解液試料について、ホタルルシフェラーゼのシグナルとNANOLUC(商標)ルシフェラーゼのシグナルとの両方を測定し、比(NANOLUC(商標)/ホタル)を計算した。その後、毒素への曝露がないものを参照対照として使用してそれぞれの試料の比の割合を得た。毒素タンパク質を48時間負荷した後のEC50は2.9pMであり、この値は、LD50の30倍に等しい。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
酵素活性の測定及び/または検出に関する組成物及び方法が本明細書に記載される。具体的には、組成物及び方法は、神経毒素の検出及び/または測定に関し、こうした神経毒素は、例えば、C.ボツリヌム神経毒素(BoNT)である。
【0036】
本明細書で使用される「C.ボツリヌム神経毒素」または「BoNT」は、C.ボツリヌム毒素が神経細胞に侵入し、神経伝達物質の放出を阻害し、低親和性または高親和性の受容体複合体へのC.ボツリヌム毒素の結合、毒素の内部移行、細胞質への毒素軽鎖の転位、及びC.ボツリヌム毒素基質の酵素的な改変を含む細胞機構全体を実行することができる任意のポリペプチドを指す。
【0037】
クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)の株からは、7つの抗原的に異なる型のボツリヌス毒素(BoNT)が産生し、これらのBoNTは、ヒト(BoNT/A、BoNT/B、BoNT/E、及びBoNT/F)、動物(BoNT/C1及びBoNT/D)におけるボツリヌス中毒の大流行の調査、または土壌(BoNT/G)からの単離によって同定されている。BoNTセロタイプは、7つすべてが同様の構造及び薬理学的特性を有する一方で、それぞれが示す細菌学的特性は不均一でもある。C.ボツリヌム株の遺伝的多様性については、Hill et al.(Journal of Bacteriology,Vol.189,No.3,p.818-832(2007))に詳細に記載されており、当該文献の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNTは、A株、E株、C株、B株、D株、F株、またはG株のものである。非天然起源のC.ボツリヌム神経毒素についても、さまざまなものが当該技術分野において知られており、例えば、国際特許公開WO95/32738、WO96/33273、WO98/07864、及びWO99/17806に記載されており、当該文献はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0038】
同一の機能性ドメイン機構及び全構造様式が、さまざまなC.ボツリヌム株に由来する毒素によって共有されている。C.ボツリヌム毒素は、それぞれが約150kDaの単鎖ポリペプチドとして翻訳され、この単鎖ポリペプチドは、次に、天然起源のプロテアーゼ(例えば、内在性のC.ボツリヌム毒素プロテアーゼなど)、または環境中で産生する天然起源のプロテアーゼによって、ジスルフィドループ内がタンパク質分解性の切断によって切断される。この翻訳後プロセシングによって、約50kDaの軽鎖(LC)と約100kDaの重鎖(HC)とが単一のジスルフィド結合及び非共有結合性相互作用によって共に保持されたものを含む二鎖分子が生成する。成熟二鎖分子はそれぞれ、1)神経伝達物質放出装置のコア構成要素を特異的に標的とする亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性を含むメタロプロテアーゼ領域を含む、LCに位置するタンパク質分解ドメイン、2)細胞内小胞から標的細胞の細胞質にLCを放出することを促進する、HCのアミノ末端側半分(H)に含まれる転位ドメイン、ならびに3)標的細胞の表面に位置する受容体複合体への毒素の結合活性及び結合特異性を決定する、HCのカルボキシル末端側半分に見られる結合ドメイン、という機能的に異なる3つのドメインを含む。
【0039】
これら3つの機能性ドメインの結合活性、転位活性、及びプロテアーゼ活性はすべて、毒性に必要なものである。C.ボツリヌム毒素が神経細胞に侵入し、神経伝達物質の放出を阻害する細胞中毒機構全体は、セロタイプまたはサブタイプを問わず、類似している。理論によって拘束されることを望むものではないが、中毒機構は、1)受容体への結合、2)複合体の内部移行、3)軽鎖の転位、及び4)プロテアーゼによる標的の改変、という少なくとも4つの段階を必要とするものである。このプロセスは、標的細胞の細胞膜表面に位置する毒素特異的受容体にC.ボツリヌム毒素のHドメインが結合すると開始される。受容体複合体の結合特異性は、部分的には、ガングリオシドとタンパク質受容体との特定の組み合わせによって達成されると考えられる。結合が生じると、毒素/受容体複合体は、エンドサイトーシスによって内部移行し、内部移行した小胞は、特定の細胞内経路へと振り分けられる。転位段階は、小胞コンパートメントの酸性化によって引き起こされる。転位が生じると、毒素の軽鎖エンドペプチダーゼが細胞内小胞からサイトゾルに放出され、サイトゾルでは、神経伝達物質放出装置のコア構成要素として知られる3つのタンパク質(小胞結合膜タンパク質(VAMP)/シナプトブレビン、25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)、及びシンタキシン)のうちの1つが軽鎖エンドペプチダーゼによって特異的に標的とされる。
【0040】
これらのコア構成要素は、神経終末におけるシナプス小胞のドッキング及び融合に必要なものであり、可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNARE)ファミリーのメンバーを構成している。BoNT/A及びBoNT/Eは、カルボキシル末端領域でSNAP-25を切断することで、それぞれ9つのアミノ酸のセグメントまたは26のアミノ酸のセグメントを放出し、BoNT/C1もまた、カルボキシル末端付近でSNAP-25を切断する。ボツリヌスセロタイプであるBoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、及びBoNT/G、ならびに破傷風毒素は、VAMPの保存された中心部分に作用し、VAMPのアミノ末端部分をサイトゾルに放出する。BoNT/C1は、サイトゾル側の細胞膜表面付近の単一部位でシンタキシンを切断する。シナプスSNAREが選択的にタンパク質分解を受けることが、インビボでC.ボツリヌム毒素によって神経伝達物質の放出が遮断されることの原因である。C.ボツリヌム毒素のSNAREタンパク質標的は、さまざまな非神経細胞型におけるエキソサイトーシスに共通して見られるものであり、こうした細胞では、神経細胞において見られるように、軽鎖ペプチダーゼ活性によってエキソサイトーシスが阻害される。例えば、Yann Humeau et al.,How Botulinum and Tetanus Neurotoxins Block Neurotransmitter Release,82(5)Biochimie.427-446(2000)、Kathryn Turton et al.,Botulinum and Tetanus Neurotoxins:Structure,Function and Therapeutic Utility,27(11)Trends Biochem.Sci.552-558.(2002)、Giovanna Lalli et al.,The Journey of Tetanus and Botulinum Neurotoxins in Neurons,11(9)Trends Microbiol.431-437,(2003)を参照のこと。
【0041】
レポータータンパク質の配列がリンカーセグメントによって分断または分割された単鎖ポリペプチドが本明細書に記載される。この分断型レポータータンパク質は、機能性である。
【0042】
本明細書で使用される「単鎖」という用語は、ポリペプチドに関するとき、隣接残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸残基を有する単一のポリペプチド分子を指す。すなわち、単鎖ポリペプチドの記載要素はそれぞれ、ペプチド結合によってその他の要素(複数可)に連結される。このことは、例えば水素結合またはジスルフィド結合を介して互いに結合することでポリペプチド複合体を形成することができる複数の単鎖ポリペプチドを含む多鎖ポリペプチドとは対照的である。
【0043】
本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、ルシフェラーゼ及び/またはその部分を含み得、例えば、レポータータンパク質は、ルシフェラーゼであり得る。本明細書で使用される「ルシフェラーゼ」は、例えばルシフェリンの酸化、発光、オキシルシフェリンの放出を触媒することによって生物発光反応を触媒する酵素を指す。ルシフェラーゼは、天然起源のものであるか、または操作されたものであり得る。本明細書で使用される「機能性」ルシフェラーゼは、適切な基質の存在下で反応を触媒する能力を有するルシフェラーゼである。ルシフェラーゼの変形形態及び実施形態は多くのものが利用可能であり、こうしたものには、例えば、ホタルルシフェラーゼ(フォティヌス・ピラリス)(例えば、配列番号13を参照のこと)、細菌ルシフェラーゼ(ビブリオ・フィシェリ、ビブリオ・ハーベイ)、ウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケ)、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、甲虫目ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ(例えば、Heise,K.,et al,“Dual luciferase assay for secreted luciferase based on Gaussia and NANOLUC”Assay Drug Dev.Technol.(2013)を参照のこと。当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)、カイアシルシフェラーゼ(例えば、Takenaka,Y.,et al,“Computational analysis and functional expression of ancestral copepod luciferase”Gene(2013)を参照のこと。当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)、及びNANOLUC(商標)ルシフェラーゼが含まれる。
【0044】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼであり得る。本明細書で使用される「NANOLUCルシフェラーゼ」は、Oplophorus gracilirostrisルシフェラーゼに由来し、フリマジンまたはセレンテラジンを基質として利用することができ、配列番号1の配列を有する19.1kDaのルシフェラーゼを指す。NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの変異体もまた、本明細書の方法及び組成物の態様及び実施形態のいずれにおいても使用することができ、こうした変異体は、例えば、米国特許第8,557,970号に記載されており、当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
実施形態のいずれかの1つの態様では、レポータータンパク質のN末端断片と、神経毒素切断部位を含むリンカーと、レポータータンパク質のC末端断片とを、N末端からC末端の順序で含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載される。本明細書で使用される「断片」は、分子の一部または一部分(例えば、ポリペプチドの一部または一部分)を指す。本明細書に記載の単鎖ポリペプチドでは、レポータータンパク質のN末端断片及びC末端断片は、機能性レポータータンパク質配列をまとめて含むが、機能性レポータータンパク質配列を個別には含まない。レポータータンパク質のN末端断片及びC末端断片が、例えばリンカー配列によって機能的に連結されて同一の単鎖ポリペプチドに存在するとき、当該N末端断片及びC末端断片によって、機能性レポーター融合タンパク質が生成する。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、レポータータンパク質は、ルシフェラーゼタンパク質である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、断片は、天然起源の配列、本明細書に記載のレポータータンパク質配列、及び/または当該技術分野において知られるレポータータンパク質配列の変異体または誘導体であり得、例えば、こうした断片は、レポータータンパク質配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、またはレポータータンパク質配列に対する置換、欠失、もしくは付加が10アミノ酸残基以下であり得る。
【0046】
実施形態のいずれかの1つの態様では、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むN末端ドメイン(N-nano1~159)と、N-nano1~159のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するC末端ドメイン(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0047】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、レポータータンパク質のドメインまたは断片は、レポータータンパク質配列(例えば、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)または配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)との配列同一性が少なくとも少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、変異アミノ酸は、保存的置換バリエーションであり得る。
【0048】
実施形態のいずれかの1つの態様では、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159に対する置換、欠失、または付加が10アミノ酸残基未満である配列を含むN末端ドメイン(N-nano1~159)と、N-nano1~159のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、リンカーのC末端に位置し、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170に対する置換、欠失、または付加が3アミノ酸残基未満である配列を有するC末端ドメイン(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0049】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、レポータータンパク質のドメインまたは断片は、レポータータンパク質配列(例えば、配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)または配列番号1のルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170))に対する欠失、挿入、または置換の数が10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、保存的置換バリエーションであり得る。実施形態のいずれかの1つの態様では、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)N-nano1~159のC末端に位置し、神経毒素切断部位を含むリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0050】
本明細書に示されるように、ルシフェラーゼタンパク質は、リンカー配列によって分割され得るが、依然として機能性ルシフェラーゼを与えるものである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の残基159及び残基160に対応する残基の間にリンカーが提供される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号1の残基159と残基160との間にリンカーが提供される。
【0051】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、配列番号1の残基1~159に対応する配列を含むN末端ドメインと、配列番号1の残基160~170に対応する配列を含むC末端ドメインと、を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、配列番号1の残基1~159に対応する配列から本質的になるN末端ドメインと、配列番号1の残基160~170に対応する配列から本質的になるC末端ドメインと、を含み得る。
【0052】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、配列番号1の残基1~159を含むN末端ドメインと、配列番号1の残基160~170を含むC末端ドメインと、を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、配列番号1の残基1~159から本質的になるN末端ドメインと、配列番号1の残基160~170から本質的になるC末端ドメインと、を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドは、配列番号1の残基1~159からなるN末端ドメインと、配列番号1の残基160~170からなるC末端ドメインと、を含み得る。
【0053】
本明細書に記載の単鎖ポリペプチドでは、N末端ドメインとC末端ドメインとの間にリンカードメインが見られる。本明細書で使用される「リンカー」は、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ酵素)に対して外来性であり、レポータータンパク質のN末端ドメインとC末端ドメインとを機能的に連結するように操作された配列を指す。リンカーは、例えば、1つまたは複数の切断部位、1つまたは複数のスペーサー、1つまたは複数の結合断片、及び1つまたは複数の追加のルシフェラーゼ酵素を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される「機能的に連結する」は、2つの断片が活性かつ機能性の三次構造を形成することを介在配列が妨げないような様式でレポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)の2つの断片を連結することを指す。機能的に連結された2つの断片は、リンカー配列が存在しないタンパク質を特徴付ける活性を示すことになる。
【0055】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数の切断部位を含み得、こうした切断部位は、例えば、1つまたは複数の酵素の作用によって特異的に切断されるアミノ酸配列である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、切断部位は、神経毒素切断部位であり得る。したがって、神経毒素切断部位は、少なくとも1つの神経毒素によって特異的に切断される配列を含む。神経毒素は、神経組織の機能を阻害し、及び/または神経組織を死滅させる化合物である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素は、シナプス小胞放出の阻害剤であり得る。神経毒素切断部位の例には、限定はされないが、C.ボツリヌム神経毒素(BoNT)切断部位及び/または破傷風神経毒素切断部位が含まれ得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、複数の神経毒素切断部位を含み得、例えば、リンカーは、複数の神経毒素によって切断され、それによって複数の神経毒素の検出及び/または測定が可能となり得る。
【0056】
BoNTは、SNAREタンパク質を切断することによって作用する。したがって、BoNT切断部位は、SNAREタンパク質に由来するものであり得る。本明細書で使用される「SNAREタンパク質」は、神経細胞におけるシナプス前膜のシナプス小胞融合を含めて、小胞融合を媒介するタンパク質のスーパーファミリーを指す。SNAREタンパク質には、非限定的な例として、SNAP-25(例えば、NCBI遺伝子識別:6616であり、ヒトSNAP25bについてはNCBI参照配列NP_570824.1、及びラットSNAP25bについてはNCBI参照配列NP_112253.1も併せて参照のこと)、シナプトブレビン(VAMP)(例えば、NCBI遺伝子識別番号:6843、6844、6845、8673、8674、9341、9554、10652、10791、及び26984)、ならびにシンタキシン(例えば、NCBI遺伝子識別番号:2054、6804、6809、6810、6811、8417、8675、8676、8677、9482、10228、23673、53407、55014、112755、及び415177)が含まれる。クロストリジウム神経毒素によって切断されるSNAREの切断可能な結合は、例えば、Binz,Th.et al.“Clostridial neurotoxins:mechanism of SNARE cleavage and outlook on potential substrate specificity reengineering.”Toxins 2.4(2010):665-682に記載されている。好ましくは、BoNT切断部位は、ヒトSNAREタンパク質に由来するものである。ヒトSNAREの切断可能な結合の例は、表1に示される。
【0057】
(表1)クロストリジウム神経毒素によって切断されるヒトSNAREの切断可能な結合
【0058】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのクロストリジウム神経毒素切断部位(好ましくは、ヒト神経毒素切断部位)を含む。クロストリジウム神経毒素切断部位は、SNARE(好ましくは、ヒトSNARE)のアミノ酸残基P3P2P1P1’P2’P3’を少なくとも含む配列として定義され得るものであり、P1及びP1’は、クロストリジウム神経毒素によって切断される切断可能なペプチド結合の両側に位置する残基であり、例えば、BoNT/Aについては、ヒトSNAP25のGln197及びArg198である。
【0059】
好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素切断部位は、SNAREのアミノ酸残基P4P3P2P1P1’P2’P3’P4’を少なくとも含む。より好ましい実施形態では、クロストリジウム神経毒素切断部位は、SNAREのアミノ酸残基P5P4P3P2P1P1’P2’P3’P4’P5’を少なくとも含み、より好ましくは、アミノ酸残基P6P5P4P3P2P1P1’P2’P3’P4’P5’P6’を少なくとも含む。
【0060】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/A切断部位を含み、当該BoNT/A切断部位は、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基195~200を含み、好ましくは、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基194~201、残基193~202、または残基192~203を含む。
【0061】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/B切断部位を含み、当該BoNT/B切断部位は、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基76~81を含み、好ましくは、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基75~82、残基74~83、または残基73~84を含む。
【0062】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/B切断部位を含み、当該BoNT/B切断部位は、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基74~79を含み、好ましくは、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基73~80、残基72~81、または残基71~82を含む。
【0063】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/B切断部位を含み、当該BoNT/B切断部位は、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基57~62を含み、好ましくは、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基56~63、残基55~64、または残基54~65を含む。
【0064】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/C1切断部位を含み、当該BoNT/C1切断部位は、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基196~201を含み、好ましくは、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基195~202、残基194~203、または残基193~204を含む。
【0065】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/C1切断部位を含み、当該BoNT/C1切断部位は、ヒトシンタキシン1A(配列番号27)の残基251~256を含み、好ましくは、ヒトシンタキシン1A(配列番号27)の残基250~257、残基249~258、または残基148~259を含む。
【0066】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/C1切断部位を含み、当該BoNT/C1切断部位は、ヒトシンタキシン1B(配列番号28)の残基252~257を含み、好ましくは、ヒトシンタキシン1B(配列番号28)の残基251~258、残基249~259、または残基149~260を含む。
【0067】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/D切断部位を含み、当該BoNT/D切断部位は、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基59~64を含み、好ましくは、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基58~65、残基57~66、または残基56~67を含む。
【0068】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/D切断部位を含み、当該BoNT/D切断部位は、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基57~62を含み、好ましくは、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基56~63、残基55~64、または残基54~65を含む。
【0069】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/D切断部位を含み、当該BoNT/D切断部位は、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基40~45を含み、好ましくは、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基39~46、残基38~47、または残基37~48を含む。
【0070】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/E切断部位を含み、当該BoNT/E切断部位は、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基178~183を含み、好ましくは、ヒトSNAP25(配列番号23)の残基177~184、残基176~185、または残基175~186を含む。
【0071】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/F切断部位を含み、当該BoNT/F切断部位は、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基58~63を含み、好ましくは、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基57~64、残基56~65、または残基55~66を含む。
【0072】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/F切断部位を含み、当該BoNT/F切断部位は、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基56~61を含み、好ましくは、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基55~62、残基54~63、または残基53~64を含む。
【0073】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/F切断部位を含み、当該BoNT/F切断部位は、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基39~44を含み、好ましくは、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基38~45、残基37~46、または残基36~47を含む。
【0074】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/G切断部位を含み、当該BoNT/G切断部位は、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基81~86を含み、好ましくは、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基80~87、残基79~88、または残基78~89を含む。
【0075】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/G切断部位を含み、当該BoNT/G切断部位は、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基79~84を含み、好ましくは、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基78~85、残基77~86、または残基76~87を含む。
【0076】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/G切断部位を含み、当該BoNT/G切断部位は、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基62~67を含み、好ましくは、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基61~68、残基60~69、または残基59~70を含む。
【0077】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのBoNT/B切断部位を含み、当該TeNT切断部位は、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基76~81を含み、好ましくは、ヒトVAMP-1(配列番号24)の残基75~82、残基74~83、または残基73~84を含む。
【0078】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのTeNT切断部位を含み、当該TeNT切断部位は、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基74~79を含み、好ましくは、ヒトVAMP-2(配列番号25)の残基73~80、残基72~81、または残基71~82を含む。
【0079】
1つの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つのTeNT切断部位を含み、当該BoNT/B切断部位は、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基57~62を含み、好ましくは、ヒトVAMP-3(配列番号26)の残基56~63、残基55~64、または残基54~65を含む。
【0080】
SNAREタンパク質における適切なBoNT切断部位の例には、非限定的な例として、ヒトSNAP-25bのアミノ酸141~206(例えば、配列番号10)、及びヒトVAMP1(例えば、NCBI遺伝子識別:6843)のアミノ酸35~96が含まれる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96は、配列番号16のアミノ酸35~96であり得る。SNAREタンパク質におけるBoNT切断部位の別の例には、限定はされないが、ヒトVAMP2のアミノ酸60~87、ヒトVAMP3のアミノ酸43~70、及びヒトVAMP1のアミノ酸62~89が含まれる。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ヒトVAMP2のアミノ酸60~87は、配列番号19の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ヒトVAMP3のアミノ酸43~70は、配列番号20の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ヒトVAMP1のアミノ酸62~89は、配列番号21の配列であり得る。
【0081】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、本明細書に記載の特定の配列のいずれかの変異体であり得、例えば、SNAREタンパク質に見られる天然のBoNT切断部位の変異体である。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、配列番号10のアミノ酸141~206の変異体であるか、または配列番号16のアミノ酸35~96の変異体であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、SNAREタンパク質に見られる天然のBoNT切断部位との配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、配列番号10のアミノ酸141~206または配列番号16のアミノ酸35~96との配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、変異体は、保存的置換変異体であり得る。
【0082】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、SNAREタンパク質に見られる天然のBoNT切断部位に対する欠失、挿入、または置換の数が10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、SNAREタンパク質に見られる天然のBoNT切断部位と異なる残基の数が10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、配列番号10のアミノ酸141~206または配列番号16のアミノ酸35~96に対する欠失、挿入、または置換の数が10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1の配列であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、配列番号10のアミノ酸141~206または配列番号16のアミノ酸35~96と異なる残基の数が10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、または1の配列であり得る。
【0083】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、ヒトSNAP-25bのアミノ酸141~206(例えば、配列番号10)、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96、VAMP1のアミノ酸1~96、ヒトSNAP25、及び/またはヒトSNAP25b(配列番号14)のアミノ酸1~206を含み得る。
【0084】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、BoNT A、BoNT B、BoNT C、BoNT D、BoNT E、BoNT F、及び/またはBoNT Gによって特異的に認識(例えば、切断)され得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、BoNT A、BoNT E、及びBoNT Cによって特異的に認識(例えば、切断)され得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT切断部位は、BoNT B、BoNT D、BoNT F、及びBoNT Gによって特異的に認識(例えば、切断)され得る。
【0085】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のスペーサーを含み得る。本明細書で使用される「スペーサー」は、同一のペプチド鎖における2つの他の配列を分離するという構造的な目的を果たすアミノ酸配列を指す。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサー配列は、可動性ペプチド配列であり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、グリシン残基及びセリン残基を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、グリシン残基及びセリン残基から本質的になり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、グリシン残基及びセリン残基からなり得る。
【0086】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、約2~約30のアミノ酸の長さを有し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、2~30のアミノ酸の長さを有し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、約3~約20のアミノ酸の長さを有し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、3~20のアミノ酸の長さを有し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、約5~約15のアミノ酸の長さを有し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、スペーサーは、5~15アミノ酸の長さを有し得る。
【0087】
スペーサーの例には、限定はされないが、
が含まれ得る。リンカーの設計、選択、及び別のリンカーの例は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Chen,X.,et al,“Fusion protein linkers:proterty,design and functionality”Adv.Drug Deliv.Rev.(2013)に記載されており、当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0088】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、神経毒素結合断片を含み得、例えば、神経毒素が結合する配列及び/または神経毒素に結合する配列であって、神経毒素によって切断されない配列を含む。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素結合断片は、神経毒素受容体(例えば、BoNT及び/または破傷風神経毒素の受容体)の断片であり得る。
【0089】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素受容体は、ヒト、マウス、ラット、または霊長類の神経毒素受容体であり得る。好ましい実施形態では、神経毒素受容体は、ヒトの神経毒素受容体である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素受容体は、SV2Cであり得、例えば、ヒトSV2C(NCBI遺伝子識別:22987、GenBank:AAI00828.1)である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、受容体の神経毒素結合断片は、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566(SV2C-L4、例えば、配列番号11)に対応する配列を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素結合断片は、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566(SV2C-L4、例えば、配列番号11)を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経毒素受容体は、SYTI(NCBI遺伝子識別:6857)またはSYT2(NCBI遺伝子識別:127833)であり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、受容体の神経毒素結合断片は、SYTIのアミノ酸32~52(例えば、配列番号17)またはSYT2のアミノ酸40~60(配列番号18)に対応する配列を含み得る。
【0090】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、インタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼは、単鎖ポリペプチドの切断(例えば、神経毒素によるもの)の前及び/または後に活性である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼは、第1のルシフェラーゼと区別可能であり、例えば、第2のルシフェラーゼは、異なる基質に作用し、及び/または異なる光波長を生成する。例えば、第1のルシフェラーゼがNANOLUCであるならば、第2のルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ(例えば、フォティヌス・ピラリス)、細菌ルシフェラーゼ(例えば、ビブリオ・フィシェリ、ビブリオ・ハーベイ)、ウミシイタケルシフェラーゼ(例えば、ウミシイタケ)、渦鞭毛藻ルシフェラーゼ、またはガウシアルシフェラーゼであり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼは、配列番号13に対応する配列を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼは、配列番号13を含み得る。
【0091】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、N末端レポータータンパク質ドメインと、少なくとも1つの切断部位と、の間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、N-nano1~159とBoNT切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドを含み得る。
【0092】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、結合断片は、少なくとも1つの切断部位のN末端に位置し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、結合断片は、N-nano1~159とBoNT切断部位との間に位置し得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの結合断片と、少なくとも1つのスペーサーと、少なくとも1つの切断部位と、をN末端からC末端の順序で含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの結合断片と、少なくとも1つのスペーサーと、少なくとも1つのBoNT切断部位と、をN末端からC末端の順序で含み得る。
【0093】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のスペーサーと、少なくとも1つの切断部位と、をN末端からC末端の順序で含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のスペーサーと、少なくとも1つの切断部位と、1つまたは複数のスペーサーと、をN末端からC末端の順序で含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの切断部位と、1つまたは複数のスペーサーと、をN末端からC末端の順序で含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位とN-nano1~159との間、神経毒素切断部位とC-nano160~170との間、またはそれらの両方に位置する1つまたは複数のスペーサーを含み得る。
【0094】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、第2のルシフェラーゼポリペプチドと切断部位との間に位置するスペーサーを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、第2のルシフェラーゼポリペプチドと、少なくとも1つのスペーサーと、少なくとも1つの切断部位と、をN末端からC末端の順序で含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、第2のルシフェラーゼポリペプチドとBoNT切断部位との間に位置するスペーサーを含み得る。
【0095】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドは、ポリヒスチジン親和性タグ(例えば、His6(配列番号12))をさらに含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリヒスチジン親和性タグは、ポリペプチドのC末端に位置し、例えば、レポータータンパク質C末端ドメインのC末端に位置する。
【0096】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、SV2Cのアミノ酸529~566から構成される結合断片、iii)結合断片のC末端に位置する第2のスペーサー、iv)第2のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、iv)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第3のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)のC末端にポリヒスチジン親和性タグをさらに含む。
【0097】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトSNAP25bのアミノ酸141~206を含むBoNT切断部位、iii)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)のC末端にポリヒスチジン親和性タグをさらに含む。
【0098】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)5~15アミノ酸の第1のスペーサー、ii)第1のスペーサーのC末端に位置し、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含むBoNT切断部位、iii)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)のC末端にポリヒスチジン親和性タグをさらに含む。
【0099】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、b)i)第2の機能性ルシフェラーゼポリペプチド、ii)第2のルシフェラーゼポリペプチドのC末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサー、iii)第1のスペーサーのC末端に位置する、ヒトSNAP25b(例えば、配列番号14)のアミノ酸1~206を含むBoNT切断部位、iv)BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサー、を含む、N-nano1~159のC末端に位置するリンカーと、c)リンカーのC末端に位置する、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)と、を含む単鎖ポリペプチドが本明細書に記載され、リンカーによってN-nano1~159とC-nano160~170とが機能的に連結されることで機能性ルシフェラーゼ融合タンパク質が生成する。
【0100】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)のC末端にポリヒスチジン親和性タグをさらに含む。
【0101】
(表2)
【0102】
実施形態のいずれかの1つの態様では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書に記載される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸は、配列番号15、配列番号29、配列番号30、または配列番号31を含み得る。
【0103】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の核酸分子を含む核酸ベクターに関する。1つの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。そのような発現ベクターは、本明細書では発現コンストラクトと称され、当該発現ベクターに機能可能なように連結された本明細書に開示の核酸分子を含み、当該発現ベクターは、細胞または無細胞抽出物における当該核酸分子の発現に有用なものである。本発明の単鎖ポリペプチドをコードする核酸分子の発現には多種多様な発現ベクターを利用することができ、こうした発現ベクターには、限定はされないが、ウイルス発現ベクター、原核生物発現ベクター、真核生物発現ベクター(例えば、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、及び哺乳類発現ベクターなど)、ならびに無細胞抽出物発現ベクターが含まれる。こうした方法の態様の実施に有用な発現ベクターには、構成的、組織特異的、細胞特異的、または誘導性のプロモーター要素、エンハンサー要素、または両方の制御下で単鎖ポリペプチドを発現するものが含まれ得るとさらに理解される。発現ベクターの比限定的な例、ならびにそのような発現ベクターから発現コンストラクトを調製及び使用するための、よく確立された試薬及び条件は、商業的な供給業者から容易に入手可能なものであり、こうした供給業者には、限定はされないが、BD Biosciences-Clontech,Palo Alto,Calif.、BD Biosciences Pharmingen,San Diego,Calif.、Invitrogen,Inc,Carlsbad,Calif.、EMD Biosciences-Novagen,Madison,Wis.、QIAGEN,Inc.,Valencia,Calif.、及びStratagene,La Jolla,Califが含まれる。適切な発現ベクターの選択、調製、及び使用は、当業者の技能範囲に十分含まれる日常的な手順であると共に、本明細書の教示内容に示される。
【0104】
実施形態のいずれかの1つの態様では、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む核酸ベクターが本明細書に記載される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸は、配列番号15を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターあり、発現可能な形態の核酸配列を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルス発現ベクター、原核生物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、または哺乳類発現ベクターであり得る。
【0105】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、細胞への送達または異なる細胞間の移行のために設計される核酸コンストラクトを指す。標的細胞への外来遺伝子の移入に有用なベクターは、多くのものが利用可能であり、例えば、ベクターは、エピソーム(例えば、プラスミド、ウイルス由来のベクター)であり得るか、または相同組換えもしくは無作為組み込みを介して標的細胞ゲノムに組み込まれ得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターであり得る。本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、異種核酸断片を細胞に取り込ませ、その細胞においてその異種核酸断片を発現する能力を有するベクターを指す。発現ベクターは、追加の要素を含み得る。ベクターに組み込まれる核酸は、そのポリヌクレオチド配列の転写及び翻訳を発現制御配列が制御及び調節するとき、その発現制御配列に機能可能なように連結することができる。
【0106】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の核酸分子または発現コンストラクトを含む細胞に関する。細胞は、核酸増幅、核酸発現、または両方のためのものであり得る。実施形態のいずれかの1つの態様では、本明細書に記載の核酸及び/またはベクターを含む細胞が本明細書に記載される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、原核細胞、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、マウス細胞、霊長類細胞、及び/または神経細胞であり得る。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、神経細胞であり、具体的には、BoNTに対して高い感受性を有する細胞である。
【0107】
BoNTに対して高い感受性を有する細胞は、BoNT中毒が生じやすい細胞である。いくつかの実施形態では、BoNTに対して高い感受性を有する細胞は、例えば、約500pM以下、約400pM以下、約300pM以下、約200pM以下、約100pM以下、約90pM以下、約80pM以下、約70pM以下、約60pM以下、約50pM以下、約40pM以下、約30pM以下、約20pM以下、約10pM以下、約9pM以下、約8pM以下、約7pM以下、約6pM以下、約5pM以下、約4pM以下、約3pM以下、約2pM以下、約1pM以下、約0.9pM以下、約0.8pM以下、約0.7pM以下、約0.6pM以下、約0.5pM以下、約0.4pM以下、約0.3pM以下、約0.2pM、約0.1pM以下のBoNT、約90fM以下のBoNT、約80fM以下のBoNT、約70fM以下のBoNT、約60fM以下のBoNT、約50fM以下のBoNT、約40fM以下のBoNT、約30fM以下のBoNT、約20fM以下のBoNT、または約10fM以下のBoNTによってBoNT中毒が生じやすい細胞である。
【0108】
いくつかの実施形態では、細胞は、BoNTに対して高い感受性を有する初代神経細胞であり、例えば、皮質神経細胞、海馬神経細胞、及び/または脊髄神経細胞である。
【0109】
いくつかの実施形態では、細胞は、BoNTに対して高い感受性を有する神経細胞株に由来するものであり、例えば、BE(2)-M17、Kelly、LA1-55n、N1E-115、N4TG3、N18、Neuro-2a、NG108-15、PC12、SH-SY5Y、SiMa、及び/またはSK-N-BE(2)-Cである。
【0110】
いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞由来の神経細胞(具体的には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)に由来する神経細胞(例えば、i-Cell(登録商標)神経細胞、i-Cell(登録商標)ドーパ神経細胞、iCellグルタミン酸作動性神経細胞、iCell運動神経細胞(Cellular dynamics Inc)))、大脳皮質神経細胞、神経幹細胞(Axol Biosciences)、Peri.4U神経細胞、CNS.4U神経細胞、Dopa.4U神経細胞(Axiogenesis)、MNP細胞(Lonza)、皮質神経細胞、運動神経細胞(iStem)、及び/またはiPSC由来の神経系細胞(MTI-GlobalStem)である。
【0111】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞は、原核細胞(限定はされないが、好気性、微好気性、炭酸ガス嗜好性(capnophilic)、通性、嫌気性、グラム陰性、及びグラム陽性の細菌細胞の株(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、ナイセリア・メニンジルス(Neisseria meningirulls)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、及びサルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)に由来するものなど)が含まれる)、ならびに真核細胞(限定はされないが、酵母株(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に由来するものなど)、昆虫細胞もしくは昆虫に由来する細胞株(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及びタバコスズメガ(Manduca sexta)に由来するものなど)、または哺乳類細胞もしくは哺乳類細胞に由来する細胞株(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、霊長類、及びヒトに由来するものなど)が含まれる)であり得る。細胞株は、American Type Culture Collection、European Collection of Cell Cultures、及びGerman Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手され得る。適切な細胞株を選択、調製、及び使用するための特定のプロトコールの例は、限定はされないが、例えば、INSECT CELL CULTURE ENGINEERING(Mattheus F.A.Goosen et al.eds.,Marcel Dekker,1993)、INSECT CELL CULTURES:FUNDAMENTAL AND APPLIED ASPECTS(J.M.Vlak et al.eds.,Kluwer Academic Publishers,1996)、Maureen A.Harrison & Ian F.Rae,GENERAL TECHNIQUES OF CELL CULTURE(Cambridge University Press,1997)、CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES(Alan Doyle et al eds.,John Wiley and Sons,1998)、R.Ian Freshney,CULTURE OF ANIMAL CELLS:A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE(Wiley-Liss,4.sup.th ed.2000)、ANIMAL CELL CULTURE:A PRACTICAL APPROACH(John R.W.Masters ed.,Oxford University Press,3.sup.rd ed.2000)、MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL,前出,(2001)、BASIC CELL CULTURE:A PRACTICAL APPROACH(John M.Davis,Oxford Press,2.sup.nd ed.2002)、及びCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,前出,(2004)に記載されている。こうしたプロトコールは、当業者の技能範囲に含まれる日常的な手順であると共に、本明細書の教示内容に示される。
【0112】
本明細書に記載の組成物は、例えば神経毒素(例えば、BoNT)の存在、効力、及び/または活性の検出方法及び/または測定方法において使用することができる。BoNTが存在すると、BoNT切断部位を有する単鎖ポリペプチドは、リンカー配列が切断され、分断型レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)の活性が破壊されることになる。したがって、レポータータンパク質の活性の減少によってBoNTの存在が示される。実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドに試料を接触させること、及び試料の非存在下でのポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。実施形態のいずれかの1つの態様では、ボツリヌス神経毒素の効力の決定方法が本明細書に記載され、この方法は、a)BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドに神経毒素を接触させること、及びb)参照基準と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定し、それによって効力を決定すること、を含む。態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、バッチ出荷に適しており、例えば、バッチ出荷試験及び/またはロット出荷試験に適している。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、インビトロで実施することができる。
【0113】
実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドに試料を接触させること、及びb)試料の非存在下でのポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)とが、N-nano1~159のC末端かつC-nano160~170のN末端に位置する、BoNT切断部位を含むリンカーによって分断かつ機能的に連結されたものを含む単鎖ポリペプチドに対してBoNT活性に適した条件下で試料を接触させること、ならびにb)試料の非存在下でのポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。
【0114】
実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)とが、N-nano1~159のC末端かつC-nano160~170のN末端に位置する、BoNT切断部位を含むリンカーによって分断かつ機能的に連結されたものを含む単鎖ポリペプチドに対してBoNT活性に適した条件下で試料を接触させること、ならびにb)試料の非存在下でのポリペプチドの活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、を含み、ルシフェラーゼ活性が減少することが試料におけるBoNT活性の指標である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、第1のスペーサーのC末端かつBoNT切断部位のN末端に位置する、ヒトSV2Cのアミノ酸529~566の結合断片と、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトSNAP25のアミノ酸141~206を含む。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、BoNT切断部位のN末端に位置する5~15アミノ酸の第1のスペーサーと、BoNT切断部位のC末端に位置する5~15アミノ酸の第2のスペーサーと、を含み、BoNT切断部位は、ヒトVAMP1のアミノ酸35~96を含む。
【0115】
実施形態のいずれかの1つの態様では、BoNTのEC50の決定方法が本明細書に記載され、この方法は、a)BoNT活性に適した条件下で本明細書に記載の単鎖ポリペプチドを第1の濃度のBoNTと接触させ、試料の非存在下でのポリペプチドのルシフェラーゼ活性と比較してポリペプチドのルシフェラーゼ活性を決定すること、b)異なる濃度のBoNTで段階a)を、EC50を決定できるまで反復実施すること、を含む。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、異なる濃度のBoNTは、少なくとも1桁の差異を含む。
【0116】
当該技術分野では知られていることであるが、「半数効果濃度(EC50)」は、何らかの特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する薬物濃度、抗体濃度、または毒物濃度を指す。EC50は、一般に、薬物の効力の尺度として使用される。したがって、連続的用量反応曲線のEC50は、その最大作用の50%が観測される化合物濃度に相当する。量子的用量反応曲線のEC50は、特定の曝露期間後に集団の50%が応答を示す化合物濃度に相当する。
【0117】
本明細書で使用される「BoNT活性に適した条件」は、BoNTがBoNT切断部位を特異的に切断することができる条件(例えば、温度、pH、補因子など)を指す。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT活性に適した条件は、20μMのZnCl、2mMのDTT、1mg/mlのBSAを含むHEPES緩衝液(pH7.1)を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT活性に適した条件は、10~30μMのZnCl、1~3mMのDTT、0.5~2mg/mlのBSAを含むHEPES緩衝液(pH6.5~7.5)を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、BoNT活性に適した条件は、5~50μMのZnCl、0.1~10mMのDTT、0.1~10mg/mlのBSAを含むHEPES緩衝液(pH6.5~7.5)を含み得る。
【0118】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約1時間~約36時間インキュベートすることを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で1時間~36時間インキュベートすることを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約1時間~約24時間インキュベートすることを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で1時間~24時間インキュベートすることを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で約4時間~約24時間インキュベートすることを含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、条件は、約37℃で4時間~24時間インキュベートすることを含み得る。
【0119】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、約3nM~約300nMである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、3nM~300nMである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、約30nM~約300nMである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、30nM~300nMである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、約30nMである。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドの存在濃度は、30nMである。
【0120】
BoNT活性は、細胞(例えば、神経細胞)においても検出することができる。実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)本明細書に記載の単鎖ポリペプチドを発現する神経細胞に試料を接触させること、b)神経細胞を約12時間~約60時間インキュベートすること、c)神経細胞から溶解液を回収すること、及びd)試料の非存在下で同一の処理を実施した神経細胞におけるNANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性と比較して溶解液におけるNANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性を測定すること、を含み、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。実施形態のいずれかの1つの態様では、試料におけるC.ボツリヌム神経毒素(BoNT)活性の検出方法が本明細書に記載され、この方法は、a)NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸1~159(N-nano1~159)と、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのアミノ酸160~170(C-nano160~170)とが、N-nano1~159のC末端かつC-nano160~170のN末端に位置する、BoNT切断部位を含むリンカーによって分断かつ機能的に連結されたものを含む単鎖ポリペプチドを発現する神経細胞に試料を接触させること、b)神経細胞を約12時間~約60時間インキュベートすること、c)神経細胞から溶解液を回収すること、ならびにd)試料の非存在下で同一の処理を実施した神経細胞におけるNANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性と比較して溶解液におけるNANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性を測定すること、を含み、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼ活性の減少によって試料におけるBoNT活性が示される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、リンカーは、N-nano1~159と切断部位との間に位置するインタクトな第2のルシフェラーゼポリペプチドをさらに含む。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、接触段階の前の少なくとも3日間、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、接触段階の前の少なくとも4日間、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、接触段階の前の少なくとも6日間、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、神経細胞は、接触段階の前の6日間、ウイルス発現ベクターから単鎖ポリペプチドを発現する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ウイルス発現系は、レンチウイルス発現系である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、インキュベート段階b)は、約12時間~約72時間実施される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、インキュベート段階b)は、約48時間実施される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、インキュベート段階b)は、48時間実施される。
【0121】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、溶解液の回収段階は、溶解緩衝液の添加を含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、溶解液の回収段階は、遠心分離及び/または沈降を含み得る。
【0122】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、単鎖ポリペプチドの組み合わせの使用を含み得、それぞれのポリペプチドは、異なるBoNT切断部位及び/またはBoNT切断部位の組み合わせを有する。
【0123】
本明細書で使用される「ルシフェラーゼ活性の決定」は、ルシフェラーゼ基質の存在下でルシフェラーゼ(または機能性ルシフェラーゼを含み得る試料)によって生成する光のレベルを定量的または定性的に検出することを指す。発光は、当該技術分野において知られる任意の手段によって検出することができ、例えば、発光顕微鏡、光度計、発光プレートリーダー、光電子増倍管検出器、及び同様のものによって検出することができる。
【0124】
ルシフェラーゼ基質には、天然起源のルシフェリンならびに操作された基質が含まれ得る。ルシフェリンには、例えば、ホタルルシフェリン、ウミホタル(Cypridina)[ウミホタル(Vargula)としても知られる]ルシフェリン[セレンテラジン]、細菌ルシフェリン、ならびにこうした基質の合成アナログが含まれる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ルシフェリンは、セレンテラジン及びそのアナログであり、こうしたものには、米国特許第6,436,682号に記載の分子が含まれ、当該文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、Zhao et al,(2004),Mol Imaging,3;43-54を参照のこと。追加の基質は、例えば、米国特許第5,374,534号、第5,098,828号、第6,436,682号、第5,004,565号、第5,455,357号、及び第4,950,588号に記載されており、これらの文献はそれぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0125】
態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ルシフェラーゼ活性は、単鎖ポリペプチドにルシフェラーゼ基質を添加し、生成する発光シグナルを定量的に測定することによって決定できる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの基質は、フリマジン(2-フラニルメチル-デオキシ-セレンテラジン)であり得る。
【0126】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法は、単鎖ポリペプチドを構成する第2のルシフェラーゼの活性を測定することをさらに含み得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼの活性は、細胞溶解液において測定することができる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2のルシフェラーゼの活性によって、試料、細胞、細胞集団、及び/またはウェルにまたがって単鎖ポリペプチドの発現を正規化することが可能になり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試料における第2のルシフェラーゼポリペプチドのルシフェラーゼ活性が決定され、回収された溶解液に存在する総単鎖ポリペプチドの指標として使用される。
【0127】
実施形態のいずれかの1つの態様では、a)1つもしくは複数の本明細書に記載の単鎖ポリペプチドであって、単鎖ポリペプチドのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される単鎖ポリペプチド、1つもしくは複数の本明細書に記載の核酸もしくは核酸ベクターであって、核酸もしくは核酸ベクターのそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される核酸もしくは核酸ベクター、及び/または1つもしくは複数の本明細書に記載細胞であって、細胞のそれぞれもしくは組み合わせが、独立した容器に収容される細胞、を含むキットが本明細書に記載される。
【0128】
キットは、少なくとも1つの試薬を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)であり、こうした試薬は、例えば、単鎖ポリペプチド、単鎖ポリペプチドをコードする核酸、または本明細書に記載の単鎖ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞であり、製造物は、本明細書に記載の方法またはアッセイを実施するための単位として、宣伝、配布、または販売される。
【0129】
本明細書に記載のキットは、レポーター(例えば、1つまたは複数の型のルシフェラーゼ)の活性レベルのアッセイを可能にする試薬及び/または要素を含む。そのような試薬は、単鎖ポリペプチドに加えて、例えば、緩衝液、基質、または洗浄液などを含む。さらに、キットは、キットの較正に使用するか、または内部標準として使用することができる量の神経毒素(例えば、BoNT)またはルシフェラーゼを含み得る。さらに、キットは、使用説明書を含み得、及び/または得られる結果と関連する情報を提供し得る。
【0130】
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語及び語句の意味が以下に提供される。別段の記載がない限り、または文脈上暗黙的に示されない限り、下記の用語及び語句は、以下に提供される意味を含む。定義は、特定の実施形態の説明に役立つように提供されるものであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるため、請求発明の限定は意図されない。別段の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。当該技術分野における用語の用法と本明細書で提供されるその定義との間に明らかな相違が存在するのであれば、本明細書中で提供される定義が優先されるものとする。
【0131】
便宜上、この説明部、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で用いられるある特定の用語がここにまとめられている。
【0132】
「減少する(decrease)」、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」、または「阻害する(inhibit)」という用語はすべて、統計学的に有意な量の減少を意味するために本明細書で使用される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、「減少する(reduce)」、「減少(reduction)」、もしくは「減少する(decrease)」、または「阻害する(inhibit)」は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処理または物質が存在しない場合のもの)と比較したときの、少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれを超える割合の減少を含み得る。
【0133】
「増加した」、「増加する」、「増進する」、または「活性化する」という用語はすべて、統計学的に有意な量の増加を意味するために本明細書で使用される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、「増加した」、「増加する」、「増進する」、または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較したときの、少なくとも10%の増加を意味し得、例えば、参照レベルと比較したときの、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは100%までの増加(100%を含む)、もしくは10~100%の任意の増加を意味するか、または参照レベルと比較したときの、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは2倍~10倍以上の任意の増加を意味する。マーカーの文脈では、「増加する」は、そのようなマーカーのレベルが統計学的に有意に増加することである。
【0134】
本明細書で使用される「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、飼育動物、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク(例えば、アカゲザル)が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、マーモット、フェレット、ウサギ、及びハムスターが含まれる。飼育動物または狩猟動物には、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種(例えば、イエネコ)、イヌ種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、トリ種(例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ)、及びサカナ(例えば、マス、ナマズ、及びサケ)が含まれる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、哺乳類(例えば、霊長類(例えば、ヒト))である。「個体」、「患者」、及び「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0135】
好ましくは、対象は、哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、または雌ウシであり得るが、これらの例に限定はされない。ボツリヌス活性の動物モデルとなる対象としてヒト以外の哺乳類を有利に使用することができる。対象は、雄性または雌性であり得る。
【0136】
本明細書で使用される「結合活性」という用語は、少なくとも1つの分子間力または分子内力を介して1つの分子が別の分子と接触することを意味し、こうした分子間力または分子内力には、限定はされないが、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、及び同様のもの、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。「結合した」または「結合する」は、結合が考慮された用語である。
【0137】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、単鎖ポリペプチドを単離または精製することができる。「単離された」は、その天然の状態で見られると通常はそれに伴う成分が程度の差はあれ除去された材料を意味する。「単離する」は、元の供給源または環境(例えば、細胞または細胞溶解液)からある一定程度分離されていることを示す。
【0138】
「精製された」という用語は、調製物の他の成分(例えば、他のポリペプチド)に対して「実質的に純粋」な物質(ポリペプチドなど)を指すために使用される。この用語は、他の成分に対して、少なくとも約50%、約60%、約70%、または約75%、好ましくは、少なくとも約85%、より好ましくは、少なくとも約90%、最も好ましくは、少なくとも約95%の純度を有するポリペプチドを指し得る。換言すれば、ポリペプチドに対する「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、1つまたは複数の他の成分(例えば、他のポリペプチドまたは細胞成分)の含有率が約20%未満、より好ましくは、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約7%未満、最も好ましくは、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または1%未満である調製物を指す。
【0139】
本明細書で使用される「接触」は、本明細書に記載の単鎖ポリペプチド(または当該ポリペプチドを含む細胞)に対して試料または物質を送達または曝露するための任意の適切な手段を指す。送達方法の例には、限定はされないが、試料または細胞培地への直接的な送達、灌流、注射、または当業者によく知られる他の送達方法が含まれる。
【0140】
本明細書で使用される「試料」または「試験試料」という用語は、任意の供給源から取得または単離された試料を示し、こうした供給源は、例えば、生物学的なもの、環境的なもの、産業的なもの、またはその他の形態のものである。この用語は、上述の試料の混合物も含む。「試験試料」という用語は、未処理の試料または前処理(もしくは予備処理)を行った試料も含む。試験試料は、供給源から試料を取り出すことによって得ることができるだけなく、以前に単離された試料(例えば、事前に単離されたもの及び同一の者または別の者によって単離されたもの)を使用することによっても得ることができる。
【0141】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試験試料は、未処理の試験試料であり得る。本明細書で使用される「未処理の試験試料」という語句は、溶液における希釈及び/または懸濁を除き、任意の試料前処理に事前に供されていない試験試料を指す。試験試料の処理方法の例には、限定はされないが、遠心分離、濾過、超音波処理、均質化、加熱、凍結、及び解凍、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試験試料は、凍結試験試料であり得、例えば、凍結環境試料、凍結産業試料、または凍結組織である。凍結試料は、本明細書に記載の方法、アッセイ、及び系を利用する前に解凍することができる。解凍後、凍結試料は、本明細書に記載の方法、アッセイ、及び系に供す前に遠心分離することができる。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試験試料は、調製された清澄化試験試料であり、こうした清澄化試験試料は、例えば、遠心分離を実施し、上清を回収することによって調製される。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試験試料は、予備処理された試験試料であり得、例えば、遠心分離、濾過、解凍、精製、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される処理から得られる上清または濾液である。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、試験試料は、化学的及び/または生物学的な試薬で処理することができる。化学的及び/または生物学的な試薬は、処理の間に試料(そこに存在する生体分子(例えば、タンパク質)を含む)の安定性を保護及び/または維持するために利用することができる。本明細書に記載の発現産物のレベルを決定するために必要な生物学的試料の予備処理に適した方法及び処理は、当業者なら十分に認識している。
【0142】
本明細書で使用される「神経細胞(neuronal cell)」または「神経細胞(neuron)」という用語は、神経シグナルとしての情報を受容、処理、及び伝達することに特化した、神経系に見られる細胞を指す。神経細胞は、中心の細胞体または神経細胞体を含むと共に、一般に、神経シグナルの大部分を細胞体に伝達する樹状突起、及び一般に、神経シグナルの大部分を細胞体からエフェクター細胞(標的神経細胞または筋肉など)に伝達する軸索、という2つ型の突起を含み得る。神経細胞は、組織及び臓器からの情報を中枢神経系(求心性神経または感覚神経)に送達すると共に、中枢神経系からエフェクター細胞(遠心性神経または運動神経)にシグナルを伝達することができる。他の神経細胞は、介在神経細胞と呼ばれており、神経系内の神経細胞を結び付けるものである。
【0143】
本明細書で使用される「特異的」という用語は、2つの分子の間の特定の相互作用(例えば、結合及び/または切断)を指し、こうした相互作用では、第1の実体が非標的である第3の実体と相互作用する場合と比較して高い特異性及び親和性を伴って第1の実体が第2の標的実体と相互作用する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、特異的は、第1の実体と第3の非標的実体との相互作用と比較して第1の実体と第2の標的実体との相互作用が少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、またはそれを超える倍数であることを指し得る。所与の標的に特異的な試薬は、例えば、利用されるアッセイの条件下でその標的に対して特異的に結合するものであるか、または利用されるアッセイの条件下で標的配列を特異的に切断するものである。
【0144】
本明細書で使用される「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、隣接残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸残基を指すために本明細書で互換的に使用される。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能を問わず、修飾されたアミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化されたものなど)及びアミノ酸アナログを含めて、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多い一方で、「ペプチド」という用語は、小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当該技術分野におけるこれらの用語の用法には重複が存在する。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物及びその断片を指すとき、本明細書で互換的に使用される。したがって、ポリペプチドまたはタンパク質の例には、遺伝子産物、天然起源のタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片及び他の同等形態、変異体、断片、ならびにこうしたもののアナログが含まれる。
【0145】
本明細書に記載のさまざまな実施形態では、記載の特定のポリペプチドのいずれかの変異体(天然起源のものもしくはその他の起源のもの)、対立遺伝子、ホモログ、保存的に改変された変異体、及び/または保存的置換変異体を包含することがさらに企図される。アミノ酸配列に関しては、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加によって、コード配列中の単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸が変更されたものが「保存的に改変された変異体」であり、当該変異体では、こうした変更によって、化学的に類似したアミノ酸でアミノ酸が置換され、ポリペプチドの所望の活性が保持されることを当業者なら認識するであろう。そのような保存的に改変された変異体は、本開示と整合する多型変異体、種間ホモログ、及び対立遺伝子に加わるものであり、これらを除外するものではない。
【0146】
同様の生理化学的特性を有する残基によって所与のアミノ酸を交換することができ、例えば、ある脂肪族残基で別の脂肪族残基が置換されるか(Ile、Val、Leu、もしくはAlaが互いに置換されるなど)、またはある極性残基が別の極性残基で置換される(LysとArgとの置換、GluとAspとの置換、もしくはGlnとAsnとの置換など)。そのような保存的置換は他にもよく知られており、例えば、同様の疎水特性を有する領域全体が置換される。天然のポリペプチドまたは参照ポリペプチドの所望の活性(例えば、ポリペプチド結合活性)及び特異性が保持されるかを確認するために、本明細書に記載のアッセイのいずれか1つにおいて、保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドを試験することができる。
【0147】
アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に応じて群分けすることができる(A.L.Lehninger,in Biochemistry,second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)、(2)無電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)、(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)、(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然起源の残基は、共通の側鎖特性に基づく群に分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性:Asp、Glu、(4)塩基性:His、Lys、Arg、(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro、(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換では、これらのクラスのうちの1つのメンバーが別のクラスのものと交換されることになる。特定の保存的置換には、例えば、AlaからGlyもしくはSerへのもの、ArgからLysへのもの、AsnからGlnもしくはHisへのもの、AspからGluへのもの、CysからSerへのもの、GlnからAsnへのもの、GluからAspへのもの、GlyからAlaもしくはProへのもの、HisからAsnもしくはGlnへのもの、IleからLeuもしくはValへのもの、LeuからIleもしくはValへのもの、LysからArg、Gln、もしくはGluへのもの、MetからLeu、Tyr、もしくはIleへのもの、PheからMet、Leu、もしくはTyrへのもの、SerからThrへのもの、ThrからSerへのもの、TrpからTyrへのもの、TyrからTrpへのもの、及び/またはPheからVal、Ile、もしくはLeuへのものが含まれる。
【0148】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載のアミノ酸配列のうちの1つの機能性断片であり得る。本明細書で使用される「機能性断片」は、本明細書で後述されるアッセイによる野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持する、ペプチドの断片またはセグメントである。機能性断片は、本明細書に開示の配列の保存的置換を含み得る。
【0149】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、本明細書に記載の配列の変異体であり得る。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、変異体は、保存的に改変された変異体である。保存的置換変異体は、例えば天然のヌクレオチド配列に変異を導入することによって得ることができる。本明細書で称される「変異体」は、天然のポリペプチドまたは参照ポリペプチドと実質的に相同的であるが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換を有することに起因して天然のポリペプチドまたは参照ポリペプチドのものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変異ポリペプチドをコードするDNA配列は、天然のDNA配列または参照DNA配列と比較するとヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、活性を保持する変異タンパク質またはその断片をコードする配列を含む。PCRに基づく部位特異的変異導入手法は、多種多様なものが当該技術分野において知られており、当業者は、こうした手法を適用することができる。
【0150】
変異アミノ酸配列または変異DNA配列は、天然の配列または参照配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれを超える割合の同一性を有し得る。天然の配列と変異配列との相同性の度合(同一性パーセント)は、例えば、ワールドワイドウェブでこの目的に一般に用いられる自由に利用可能なコンピュータープログラムを使用(例えば、BLASTpまたはBLASTnをデフォルト設定で使用)して2つの配列を比較することによって決定できる。
【0151】
天然のアミノ酸配列の改変は、当業者に知られる多くの手法のいずれによっても達成することができる。例えば、天然の配列の断片へのライゲーションを可能にする制限酵素認識部位が隣接する変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって特定の遺伝子座に変異を導入することができる。ライゲーションの後、得られる再構築配列は、所望のアミノ酸挿入、アミノ酸置換、またはアミノ酸欠失を有するアナログをコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド介在性部位特異的変異導入手順を利用することで、必要な置換、欠失、または挿入に沿って改変された特定のコドンを有する改変ヌクレオチド配列を得ることができる。そのような改変を施すための手法は非常によく確立されており、こうした手法には、例えば、Walder et al.(Gene 42:133,1986)、Bauer et al.(Gene 37:73,1985)、Craik(BioTechniques,January 1985,12-19)、Smith et al.(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981)、ならびに米国特許第4,518,584号及び第4,737,462号によって開示されるものが含まれ、これらの文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ポリペプチドの適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基もまた、一般にはセリンで置換することで、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を阻止することができる。逆に、システイン結合(複数可)をポリペプチドに付加することで、その安定性の改善またはオリゴマー化の促進を行うことができる。
【0152】
本明細書で使用される「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそのアナログの単位が組み込まれた任意の分子、好ましくは、ポリマー分子を指す。核酸は、1本鎖または2本鎖のいずれかであり得る。1本鎖核酸は、変性した2本鎖DNAの核酸鎖の1つであり得る。あるいは、1本鎖核酸は、いずれの2本鎖DNAにも由来しない1本鎖核酸であり得る。1つの態様では、核酸は、DNAであり得る。別の態様では、核酸は、RNAであり得る。適切なDNAには、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAが含まれ得る。適切なRNAには、例えば、mRNAが含まれ得る。
【0153】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド、核酸、または細胞を操作することができる。本明細書で使用される「操作された」は、人為的に操作されているという性状を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの少なくとも1つの性状(例えば、その配列)が人為的に操作されていることで、それが天然に存在するときの性状と異なるとき、「操作された」と考えられる。一般的なことであり、当業者なら理解していることであるが、操作された細胞の子孫は、実際の操作は前の実体に対して実施されたものであるものの、典型的には、依然として「操作された」と称される。
【0154】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞への送達または異なる宿主細胞間の移行のために設計される核酸コンストラクトを指す。本明細書で使用されるベクターは、ウイルス性または非ウイルス性のものであり得る。「ベクター」という用語は、適切な制御要素と関連付けられると複製能力を有し、遺伝子配列を細胞に導入することができる任意の遺伝要素を包含する。ベクターには、限定はされないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどが含まれ得る。
【0155】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、ベクターに存在する転写制御配列に連結された配列からのRNAまたはポリペプチドの発現を誘導するベクターを指す。発現する配列は、必ずしもそうなるわけではないが、細胞に対して異種のものとなることが多い。発現ベクターは、追加の要素を含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し、それによって2つの生物において維持されることが可能であり得、例えば、発現についてはヒト細胞で維持され、クローニング及び増幅については原核生物宿主において維持される。「発現」という用語は、RNA及びタンパク質の生成、ならびに必要に応じてタンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、こうした細胞プロセスには、限定はされないが、例えば、転写、転写物のプロセシング、翻訳、ならびにタンパク質のフォールディング、修飾、及びプロセシングが必要に応じて含まれる。「発現産物」は、遺伝子から転写されるRNAと、遺伝子から転写されるmRNAが翻訳されることによって得られるポリペプチドと、を含む。「遺伝子」という用語は、適切な制御配列に機能可能なように連結されると、インビトロまたはインビボでRNAへと転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域の上流に位置する領域及び下流に位置する領域を含む場合も含まない場合もあり得、こうした領域は、例えば、5’非翻訳領域(5’UTR)または「リーダー」配列、及び3’UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)である。
【0156】
本明細書で使用される「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の要素を少なくとも1つ含み、ウイルスベクター粒子へとパッケージングされる能力を有する核酸ベクターコンストラクトを指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸を含み得る。ベクター及び/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで任意の核酸を細胞に導入する目的で利用され得る。当該技術分野では多くの形態のウイルスベクターが知られている。
【0157】
「組換えベクター」は、インビボで発現する能力を有する異種核酸配列または「導入遺伝子」を含むベクターを意味する。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載のベクターは、他の適切な組成物及び治療と併用できることを理解されたい。本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ベクターは、エピソームである。適切なエピソームベクターを使用することによって、対象または細胞において目的ヌクレオチドを染色体DNA外に高コピー数で維持する手段が得られ、それによって、染色体への組み込み作用が生じる可能性が除去される。
【0158】
「統計学的に有意な」または「有意に」という用語は、統計学的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)以上の差異を意味する。
【0159】
操作実施例または別段の記載がある場合を除き、本明細書で使用される成分の量または反応条件を示す数はすべて、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されると理解されたい。「約」という用語は、割合との関連で使用されるとき、±1%を意味し得る。
【0160】
本明細書で使用される「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物、方法、及び方法または組成物に必要不可欠なそのそれぞれの構成要素(複数可)に関して使用され、必要不可欠であるか否かを問わず、不特定の要素を含むことを依然として許容する。
【0161】
「からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素を指し、実施形態のその説明に記載されない要素はいずれも、こうしたものには含まれない。
【0162】
本明細書で使用される「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規または機能的な特性(複数可)に実質的に影響を与えない要素の存在を許容する。
【0163】
本明細書で使用される「に対応する」という用語は、第1のポリペプチドもしくは核酸において列挙される位置に存在するアミノ酸もしくはヌクレオチドを指すか、または第2のポリペプチドもしくは核酸において列挙されるアミノ酸もしくはヌクレオチドに相当するアミノ酸もしくはヌクレオチドを指す。列挙されるアミノ酸またはヌクレオチドに相当するものは、当該技術分野において知られる相同性度プログラム(例えば、BLAST)を使用して候補配列のアライメントをとることによって決定できる。
【0164】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形の用語は、文脈上明確に別に示されない限り、複数の参照対象を含む。同様に、「または」という言葉は、文脈上明確に別に示されない限り、「及び」を含むことが意図される。本開示の実施または試験においては、本明細書に記載のものと同様または同等の方法及び材料を使用することができるが、以下には適切な方法及び材料が記載される。「例えば(e.g.)」という略語は、例えば(exempli gratia)というラテン語に由来しており、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
【0165】
本明細書に別段の定義がない限り、本出願と関連して使用される科学用語及び専門用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、及び試薬などに限定されず、したがって、こうしたものは異なり得ると理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみの説明を目的とし、本発明の範囲の限定は意図されておらず、本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。免疫学及び分子生物学の一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp & Dohme Corp.により刊行,2011(ISBN978-0-911910-19-3)、Robert S.Porter et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,Blackwell Science Ltd.により刊行,1999-2012(ISBN9783527600908)、及びRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により刊行,1995(ISBN1-56081-569-8)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより刊行,2006、Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(eds.),Taylor & Francis Limited,2014(ISBN0815345305、9780815345305)、Lewin’s Genes XI,Jones & Bartlett Publishersにより刊行,2014(ISBN-1449659055)、Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN1936113414)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN044460149X)、Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(ed.)Elsevier,2013(ISBN0124199542)、Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(ed.),John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X、9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(ed.),John Wiley and Sons,Inc.,2005、ならびにCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(eds.)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN0471142735、9780471142737)において見つけることができ、これらの文献の内容はすべて、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0166】
他の用語は、本発明のさまざまな態様の説明に含めて本明細書に定義される。
【0167】
参考文献、交付済特許、刊行済特許出願、及び同時係属中の特許出願を含めて、本出願を通じて引用される特許及び他の刊行物はすべて、例えば本明細書に記載の技術と関連して使用され得るそのような刊行物に記載の方法論を説明及び開示することを目的として、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。こうした刊行物は、単に、本出願の出願日より前のその開示内容が提供されているにすぎない。この点に関して、先行発明であるという理由または任意の他の理由によってそのような開示に先行する権利が本発明者らに付与されないことを承認するものとして決して解釈されるべきではない。日付に関する記載またはこうした文書の内容に関する表現はすべて、本出願人らが利用可能な情報に基づいており、こうした文書の日付または内容の正確性に関するいかなる承認にもならない。
【0168】
本開示の実施形態の説明は、完全に網羅されたものであることも、開示される正確な形態に本開示を限定することも意図されない。本開示の特定の実施形態及び本開示の実施例は、例示を目的として本明細書に記載されており、当業者なら認識するであろうが、本開示の範囲内でさまざまな同等の改変形態が可能である。例えば、方法段階または機能は、所与の順序で示されるが、代替の実施形態では、異なる順序で機能が発揮され得るか、または機能は、実質的に同時に発揮され得る。本明細書で提供される本開示の教示内容は、必要に応じて他の手順または方法に適用することができる。本明細書に記載のさまざまな実施形態を組み合わせることで別の実施形態を得ることができる。本開示の態様は、必要であれば改変して上記の参考文献及び出願の組成物、機能、及び概念を利用することで、本開示の別の実施形態をさらに得ることができる。さらに、生物学的機能的同等性を考慮すると、生物学的または化学的な作用に本質的または全体的に影響を与えることなく、タンパク質構造に何らかの変更を施すことができる。説明が詳細であることを踏まえると、本開示に対してこうした変更及び他の変更を施すことができる。そのような改変はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0169】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態の要素と組み合わせるか、または他の実施形態の要素の代わりに使用することができる。さらに、本開示のある特定の実施形態と関連する利点は、こうした実施形態と関連して説明されている一方で、他の実施形態もまた、そのような利点を示し得るが、本開示の範囲に含まれるために必ずしもすべての実施形態がそのような利点を示す必要があるわけではない。
【0170】
本明細書に記載の技術は、下記の実施例によってさらに例示されるが、こうした実施例は、いかなる様式においても限定の追加であると解釈されるべきではない。
【実施例
【0171】
実施例1:ボツリヌス神経毒素の活性を測定するための、新規のインビトロアッセイ及び細胞ベースのアッセイ
【0172】
ボツリヌス神経毒素は、7つの細菌毒素(BoNT/A~G)のファミリーである。ボツリヌス神経毒素は、カテゴリーAの6つある潜在的バイオテロ物質のうちの1つである。こうした毒素は、医学的状態の治療にも広く使用されていると共に、こうした毒素で治療される医学的状態は増加中であり、その市場規模は、20億ドルを超えている。BoNTの検出及び特徴付けは、古典的なマウス致死量(LD50)アッセイに依存している。バイオテロ防御の目的からも、医薬品を開発するためにも、より簡便、高感度、かつ正確なインビトロアッセイ及び細胞ベースのアッセイで動物アッセイを置き換える必要性が高まっている。
【0173】
毒素活性を検出及び特徴付けるためのインビトロアッセイが開発されているが、現在利用可能なものの感度はさまざまである。商業化された主なアッセイは2つ存在しており、それらは両方共、毒素の酵素ドメインによって基質が切断されたことを蛍光で検出することに基づくものである。これらのアッセイの1つ目は、SNAPtide(商標)(List Biologics)であり、このアッセイでは、BoNTの天然の切断部位を含み、2つの蛍光色素で標識された合成ペプチドが使用される。蛍光シグナルは2つの色素間で通常は消光しており、BoNTによってペプチドが切断されるとシグナルが上昇する。2つ目のアッセイは、BoTest(商標)(BioSentinel LLC)である。ペプチド配列を介してシアン蛍光タンパク質(CFP)が黄色蛍光タンパク質(YFP)に連結されたものである。CFPとYFPとの間で生じる検出可能な蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が、BoNTによってリンカーが切断されると消失する。
【0174】
毒素を検出し、毒素活性を特徴付けるための高感度かつ簡便な方法を両方のアッセイが提供しており、これらのアッセイは、現在、研究室において広く使用されている。これらアッセイの重大な欠点は、毒素の医薬品及び臨床試料に高レベルで存在する血清アルブミンタンパク質による干渉をこれら蛍光アッセイが受けやすいことである。これらの蛍光アッセイを行う前に特異的な毒素抗体でこうした試料から毒素を除去して精製することが現在の解決策であるが、この解決策では、アッセイコストが著しくかさみ、入手困難な特殊な物質(毒素抗体)が必要となる。
【0175】
現在のところ、毒素活性を定量化するために毎年多くのマウスが製薬会社によって利用されている。BoNTの生産における動物の使用を低減するために、細胞ベースのアッセイを開発してマウスバイオアッセイを置き換える必要性が高まっている。細胞ベースのアッセイによって、受容体への結合、膜転位、及び酵素活性を含めて、毒素活性のすべての性状を調べる能力が得られる。こうした性状は、いずれのインビトロアッセイによってもとらえられないものである。現在のところ、細胞ベースのアッセイは、主要な製薬会社(Allergan)によってよく確立されたものが1つ存在するのみである。このアッセイは、BoNT/Aによって切断されたSNAP-25タンパク質を認識するモノクローナル抗体を使用することに基づくELISA型のアッセイである。簡潔に記載すると、BoNT/Aに細胞が曝露された後、切断SNAP-25のみを認識するが、全長タンパク質は認識しない特殊な抗体によって切断SNAP-25がプルダウンされ、固定化される。その後、第2のSNAP-25抗体によって固定化SNAP-25が検出される。このアッセイからは、良好な感度が得られており、このアッセイは、マウスアッセイを置き換え得る可能性を有している。このアッセイは、毒素製品の定量化を目的としてFDAによって認可されている。Allerganによって生成される特殊な抗体に依存することがこのアッセイの主な欠点である。
【0176】
開発中の代替アッセイには、細胞においてCFP-SNAP-25-YFPを基質として使用するもの(BioSentinel LLC)が含まれる。細胞においてこの融合タンパク質が切断されると、CFPとYFPとの間で生じるFRETシグナルが消失する。このアッセイにおいても、蛍光顕微鏡などの複雑な機器が必要になることが主な欠点である。
【0177】
インビトロ及びインビボでBoNTの活性を検出及び測定するために開発された新たなアッセイについて本明細書に記載される。このアッセイは、分断形態のルシフェラーゼの開発に基づいている。NANOLUC(商標)ルシフェラーゼは、優れたタンパク質安定性を有し、発光シグナルが大幅に増加(古典的なホタルルシフェラーゼと比較して>100倍の上昇)した新世代のルシフェラーゼである。このルシフェラーゼは、2つの断片に分断することができる。これら2つの断片は、互いに接近すると、発光シグナルを生成する完全な活性形態へと戻ることができる。これら2つの断片が互いに分離されると発光シグナルが消失する。図1に示される例示の実施形態では、毒素基質(BoNT/A、BoNT/E、及びBoNT/CについてはSNAP-25、BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、BoNT/Gについてはシナプトブレビン)に由来するリンカー領域がNANOLUC(商標)ルシフェラーゼの2つの断片の間に挿入されている。BoNTによってこのリンカー領域が切断されると、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼの2つの断片が分離され、その活性が消失する結果、発光シグナルが減少する。この手法の実現可能性を示すために、下記の毒素センサーを設計し、試験した。
【0178】
インビトロ毒素センサー:
異なるインビトロプロトタイプ毒素センサーを3つ創出し、試験した(図2A図2B図3A図3B)。第1のセンサーは、BoNT/A、BoNT/E、及びBoNT/Cが切断できるSNAP-25断片を2つの分断型NANOLUC(商標)断片(それぞれN-nano及びC-nano、図2A図2B)の間に含む。第2のセンサーは、毒素受容体として働くSV2Cの断片を追加で含んでおり、この断片を含むことで、毒素とセンサーとの間の相互作用が増進することによって切断効率が高まり得る。第3のバージョンは、BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、及びBoNT/Gが切断できるシナプトブレビン断片を含む(図3A図3B)。
【0179】
これらのセンサータンパク質は、組換えタンパク質として精製した。BoNT/Aの濃度勾配系列と共に2つのバージョンのSNAP-25含有センサーを4時間または24時間インキュベートした。残存ルシフェラーゼ活性を測定し、図2Aに示されるようにプロットした。対照として、BoNT/Bがこれら2つのセンサーのルシフェラーゼ活性に影響を与えなかったことが明らかとなり、このことは、これら2つのセンサーがBoNT/Aに特異性を有することを示している。図2Bに示されるように、SV2C断片を含むセンサーは、4時間のインキュベートの後に9.7pMのEC50を有している。このセンサーは、SV2Cを含まないセンサーと比較して約5倍高感度であり、このことは、毒素受容体の断片を含めることで毒素センサーの感度が向上し得ることを示している。
【0180】
BoNT/Bの濃度勾配系列と共に第3のセンサータンパク質をインキュベートした。残存ルシフェラーゼ活性を測定し、図3Aに示されるようにプロットした。EC50は、図3Bに示されており、4時間のインキュベート後では約75.7pMである。センサーと共に毒素を24時間インキュベートすると、EC50は3.9pMへと顕著に改善した。
【0181】
利用可能なインビトロセンサーと比較したときの利点:
ルシフェラーゼに基づくこうした毒素センサーからは、蛍光に基づくセンサーと同様の感度が得られる。分断型ルシフェラーゼに基づくこうしたセンサーの主な利点は、血清アルブミンタンパク質の存在によってこうしたセンサーが影響を受けないことである。
【0182】
細胞ベースのアッセイ:
細胞ベースのアッセイのためのセンサーの例示の実施形態は、図4に示される。この実施形態は、分断型NANOLUC(商標)ルシフェラーゼ断片の間に全長SNAP-25を含む。さらに、この実施形態は、N-nanoとSNAP-25との間にホタルルシフェラーゼも含んでおり、このホタルルシフェラーゼは、細胞におけるセンサータンパク質の発現レベルに対する内部標準となる。このセンサータンパク質は、レンチウイルス介在性の感染を介して神経細胞において発現する。その後、さまざまな濃度のBoNT/Aに神経細胞を曝露した。48時間後に細胞溶解液を収集し、ホタルルシフェラーゼとNANOLUC(商標)ルシフェラーゼとの両方のルシフェラーゼ活性を測定した。NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのレベルは、ホタルルシフェラーゼシグナルを使用して正規化され、次に、いずれの毒素にも曝露されなかった対照神経細胞に正規化される(図4)。毒素と共に神経細胞をインキュベートすると、NANOLUC(商標)ルシフェラーゼのシグナルは減少し(図4)、EC50は、2.9pMであった。
【0183】
利用可能な細胞ベースのアッセイと比較したときの利点:
本明細書に記載のアッセイからは、Allerganによって確立されたELISAベースのアッセイと同様の感度が得られる。本アッセイの主な利点は、本アッセイではいずれの特殊な抗体も必要ないことである。本アッセイは、ELISAアッセイと比較して、より簡単、安価、かつ迅速でもある。
【0184】
本明細書に記載の毒素センサー及び細胞ベースのアッセイは、製薬会社がBoNT/A及びBoNT/Bの活性を測定及び定量化する、より迅速、安価、かつ簡便な方法を提供することで、マウスバイオアッセイを置き換える可能性があることが本明細書で特に企図される。
【0185】
BoNTを検出するためのインビトロコンストラクト及びインビボコンストラクト:
BoNT/Aの検出については、NocI/NotIを有するpET28aベクターにコンストラクトをクローニングし、Nnano-SV2C(529-566)-G4S-SNAP25(141-206)-Cnano及びNnano-SNAP25(141-206)-Cnano(「G4S」は、配列番号6として開示のものである)を挿入断片とした。分断型NANOLUC(商標)ルシフェラーゼ配列は、Promegaから利用可能である。全挿入断片を得るためにオーバーラップPCRを使用した後、挿入断片を切断ベクターにライゲーションした。BoNT/Bの検出については、Nnano-VAMP(35-96)-Cnanoをコンストラクトとした。
【0186】
BoNT/Aのインビボでの検出については、分断型ホタルまたは分断型NANOLUCのいずれかを使用してコンストラクトを設計した後、内部標準としてウミシイタケ及びホタルを別に適用した。内部標準は、SNAP25(全長)のすぐ上流に位置する。ベクターは、pcDNA3.1及びsyn-loxレンチウイルスベクターに基づくものを使用した。
【0187】
インビトロアッセイコンストラクトのクローニング
センサー1:NNano-SV2C-p25-CNano
は、配列番号4として開示のものであり、
“GGGGS”は、配列番号6として開示のものであり、
は、配列番号5として開示のものであり、
“His6”は、配列番号12として開示のものである。)
【0188】
センサー2:NNano-p25-CNano
は、配列番号4として開示のものであり、
は、配列番号5として開示のものであり、
“His6”は、配列番号12として開示のものである。)
【0189】
センサー3:NNano-hVAMP1-CNano
は、配列番号4として開示のものであり、
は、配列番号5として開示のものであり、
“His6”は、配列番号12として開示のものである。)
【0190】
インビボアッセイコンストラクトのクローニング
(“GGGGS”は、配列番号6として開示のものであり、
は、配列番号5として開示のものである。)
【0191】
インビトロアッセイのためのセンサータンパク質のIMAC精製
固定化金属親和性カラム(Immobilized Metal Affinity Column)(IMAC)を使用してセンサータンパク質の異なるコンストラクトを精製した。C末端に配置されるようにHis6タグ(配列番号12)をpET28aベクターにクローニングした。インビトロコンストラクトの正しいプラスミドを含むBL21を植菌して一晩保持し、光学濃度(O.D.)がおよそ0.6~0.8となるまで37℃で培養した後、20℃で一晩、0.25mM(最終濃度)のIPTGで誘導をかけた。4500gで10分間遠心分離することによって細胞を収集した。その後、50mMのHEPES及び150mMのNaClを含む緩衝液(pH7.4)に細胞のペレットを溶解した後、超音波で3分間処理した。細胞溶解液の上清を回収し、4℃で回転させながらNi2+ビーズと共に1時間混合した。その後、混合物をカラムに負荷し、50mMのHEPES及び150mMのNaClを含む緩衝液(pH7.4)に含めた20mMのイミジゾール(Imidizole)を使用し、カラム総容量の10倍量で樹脂を洗浄した。最終的に、50mMのHEPES及び150mMのNaClを含む緩衝液(pH7.4)に含めた500mMのイミジゾール(Imidizole)を使用し、カラム総容量の4倍量でタンパク質を溶出した。アッセイの即時実施のために、精製センサータンパク質を透析して50mMのHEPESを含む緩衝液(pH7.1)に含めた。
【0192】
毒素を検出するインビトロアッセイ
標準BSAを参照として使用し、SDS-PAGEによってセンサータンパク質の濃度を推定した。50mMのHEPES、20μMのZnCl2、2mMのDTT、1mg/mlのBSAを含む緩衝液(pH7.1)において30nMのセンサータンパク質を調製した。ボツリヌス毒素Aを希釈し、1nM~1fMの10倍希釈濃度系列としてセンサータンパク質溶液に添加した。37℃で4時間及び24時間インキュベートした後、それぞれの試料に対して等量のNano-Glo(商標)基質(Promega)を添加した。発光シグナルは、プレートリーダーで測定した。アッセイは、2連で実施した。負の対照も設計して実施した。BoNT/Aは、Nnano-VAMP-Cnanoセンサータンパク質と混合し、BoNT/Bは、Nnano-SV2C-p25-Cnanoセンサータンパク質と混合した。
【0193】
毒素を検出するインビボアッセイ(細胞ベースのアッセイ)
二重ルシフェラーゼコンストラクト(内部標準としてのホタル及び切断を検出するための分断型NANOLUC(商標))のウイルスを7日目の神経細胞に添加した後、300pM~1pMの濃度系列のボツリヌス毒素Aを13日目の神経細胞に3連で添加した。毒素を48時間負荷した後、200μlの受動溶解緩衝液(passive lysis buffer)(Promega)を添加することによって神経細胞を溶解し、室温で20分間インキュベートした。50μlのホタルルシフェラーゼ基質(ONE-Glo(商標)EX試薬)と50μlの細胞溶解液を混合し、光の放出を測定した。その後、50μlのNANOLUC(商標)ルシフェラーゼ基質(NanoDLR(商標)Stop&Glo(登録商標)試薬)を添加し、光の放出を測定した。
【0194】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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