(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】出血の処置または予防における使用のための血液凝固因子代替製品
(51)【国際特許分類】
A61K 38/36 20060101AFI20230215BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230215BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20230215BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61K38/36
A61P7/04
A61P43/00 121
A61K31/727
A61K38/38
(21)【出願番号】P 2019532137
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2018053240
(87)【国際公開番号】W WO2018146235
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-26
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597070264
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・グロッケ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ・ヘルツォーク
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト・ホッホライトナー
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528850(JP,A)
【文献】米国特許第06346277(US,B1)
【文献】特開昭63-024951(JP,A)
【文献】特表2006-516630(JP,A)
【文献】特表2001-517636(JP,A)
【文献】Blood (2011) vol.118, no.7, p.1943-1951
【文献】Anesthesiology (2015) vol.122, no.4, p.923-931
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の血液凝固因子代替製品であって;
少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、
1:15~1:0.5の範囲であり;
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、前記血液凝固因子代替製品。
【請求項2】
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは、参照処置と比較して低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項3】
第IX因子、第X因子および第VII因子からなる群から選択される単離された凝固因子の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項4】
製品での処置後の患者の失血量は、プラセボ処置後または処置なしの失血量と比較して減少し、失血量は、プラセボ処置後の量もしくは処置なしの量の75%未満、70%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満または35%未満に低減する、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項5】
製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは
60%以下で増大するか、または該製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに減少し、該製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少し、
前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項6】
製品での処置後の患者の失血量が参照処置の失血量と比較したときに中程度にのみ増大する場合において、前記中程度の増大は、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項7】
製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、プラセボ処置後または処置なしの止血までの時間の値と比較して減少し、該製品での処置後の止血までの前記時間の値は、プラセボ処置後の値もしくは処置なしの値と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%または少なくとも60%減少する、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項8】
製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは
80%以下で増大するか、または該製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに減少し、該製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置後の値と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因
子代替製品。
【請求項9】
製品での処置後の患者の止血までの時間の値が参照処置と比較したときに中程度にのみ増大する場合において、値の前記中程度の増大は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下または10%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項10】
製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、参照処置のプロトロンビン時間(PT)の値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも2.0分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3.0分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4.0分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5.0分の1、少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1に減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項11】
製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、プラセボ処置後もしくは処置なしのプロトロンビン時間(PT)のそれぞれの値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)のそれぞれの値と比較したときに本質的に同一であり、および/または前記値の最大偏差を有し、但し、前記最大偏差は、5.0、3.0、2.5、2.0、または1.5倍を超えない、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子
代替製品。
【請求項12】
製品での処置後の患者のトロンビン生成の値は、参照処置のトロンビン生成の値と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項13】
製品での処置後の患者の血液のD-ダイマー濃度(DD)の値は、参照処置と比較して少なくとも2分の1、少なくとも3分の1、少なくとも4分の1、少なくとも5分の1、少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1に低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が
1:15未満であることを除き、前記処置と同一である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項14】
ヘパリンおよび/またはアルブミンをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項15】
第II因子は、製品内で10~80IU/mL、15~60IU/mLの活性レベルで提供される、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項16】
ATIIIと第II因子のモル比は、1:1より高くない、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項17】
前記処置もしくは予防は、プロトロンビン複合体凝固因子の後天性欠乏症またはビタミンKアンタゴニストでの処置により引き起こされる欠乏症における、もしくは欠乏症の迅速な矯正が要求されるときのビタミンKアンタゴニストの過剰投与の場合における出血の処置および周術期予防を含むか;または前記処置もしくは予防は、精製された特定の凝固因子製品が入手できないときのいずれかのビタミンK依存性凝固因子の先天性欠乏症における出血の処置および周術期予防を含む、請求項1~
16のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項18】
前記製品での処置に加えて、患者は、クリオプレシピテートのような代替製品または濃縮フィブリノゲンで予め、同時にまたはその後処置され、代替製品または濃縮フィブリノゲンは、体重1kg当たり5mg~150mg、体重1kg当たり10mg~100mg、体重1kg当たり20mg~80mgの範囲のフィブリノゲン量で投与される、請求項1~
17のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項19】
次の2つのタイプ:
- 第II因子、第IX因子および第X因子を含む3因子複合体;または
- 第VII因子を追加で含む4因子複合体
のいずれか1つの濃縮プロトロンビン複合体(PCC)である、請求項3~
18のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【請求項20】
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため
の、濃縮プロトロンビン複合体(PCC)およびアンチトロンビンIII(ATIII)
を含む組合せ医薬であって、
PCCは、少なくともプロトロンビン(第II因子)、第IX因子、第X因子および場合により第VII因子を含み、但し、投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比は、
1:15~1:0.5の範囲であり;
前記組合せ医薬の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、前記組合せ医薬。
【請求項21】
請求項1~
18のいずれか1項に記載の使用のための医薬血液凝固因子代替キットであって、
(i)少なくともプロトロンビン(第II因子)を含む第1の組成物、および
(ii)アンチトロンビンIII(ATIII)を含む第2の組成物
を含み、前記第1の組成物および前記第2の組成物は、該キット内で、
(a)投与前の、
1:15~1:0.5の範囲にあるATIIIと第II因子のモル比を有する混合物の調製、および/または
(b)前記混合物もしくは組成物の同時投与
のいずれかを可能にするために提供され、但し、投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比は、
1:15~1:0.5の範囲であり、前記組成物の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、前記医薬血液凝固因子代替キット。
【請求項22】
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、プロトロンビン(第II因子)を含む製品との同時投与のためのアンチトロンビンIII(ATIII)を含む医薬製品であって;
1:15~1:0.5の範囲であるATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
前記製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、前記医薬製品。
【請求項23】
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防
の方法で使用するための血液凝固因子代替製品であって;
前記方法は、前記製品を前記患者に投与することを含み、
前記製品は、少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、
1:15~1:0.5の範囲であり、
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、前記製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置または予防における使用のため、または凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置または予防における使用のための血液凝固因子代替製品に関する。
【背景技術】
【0002】
濃縮プロトロンビン複合体(PCC)は、ビタミンKアンタゴニストの緊急時反転のため、治療用血漿のような他の処置に優先して推奨される(非特許文献1)。PCCはまた、欧州において長年使用されており、そこでは、それらのライセンスは、ビタミンKアンタゴニストの反転に限定されず、「プロトロンビン複合体凝固因子の後天性欠乏症における出血の処置および予防」について広く承諾を得ている。PCCは、3つまたは4凝固因子のいずれか(第II因子、第IX因子および第X因子、第VII因子ありもしくはなし)ならびに製剤によっては、低用量のプロテインC、プロテインSおよびヘパリンのような凝固阻害剤を含有する。
【0003】
PCCの作用機序は、それらの治療適用を理解するのに重要である。ワルファリンのようなビタミンKアンタゴニストは、血栓塞栓症を予防する目的と共に、4つの凝固因子:第II因子、第VII因子、第IX因子および第X因子のレベルを低減することにより、機能する。生命を脅かす出血を有する患者のため、これらの凝固因子の迅速な代替製品が要求され、PCCは、要求される凝固因子の濃縮された供給源として働く。3因子ならびに4因子PCCは、ビタミンKアンタゴニスト反転について探られてきた。しかしながら、第VII因子が不存在であることに起因し、3因子PCCは、国際標準化比(INR)>3.7を有する患者にとって、4因子のPCCよりあまり適さないように思われる(非特許文献2)。
【0004】
外傷および周術期の出血において、患者は、様々な凝固障害を示す。PCCは、十分なレベルの鍵となる凝固因子、特に、第II因子(プロトロンビン)を確かにし、そのトロンビンへの変換が、活性化第X因子および活性化第V因子により促進されることにより、トロンビン生成を増大させる。PCCでの処置は、外傷および周術期の出血における止血を促進するのに潜在的に有効であり得る。ヒトにおいて直接FIIaまたはFXa阻害剤(DOAC)の抗凝固効果を反転するためのPCCの使用について、証拠も存在する。
【0005】
DOACにより誘導された抗凝固の処置のため、PCCは、特異的な拮抗薬として作用しない。代わりに、それらは、ビタミンK依存性凝固因子のレベルを上昇させる。
【0006】
血栓塞栓性合併症の潜在的なリスクは、外傷、周術期の出血においてPCCを使用するときの慎重なアプローチを必要とする。ビタミンKアンタゴニストの反転とは異なり、これらの設定において、凝固阻害剤ならびに凝血原のレベルは、しばしば減少する。目標は、トロンビン生成および/またはフィブリン形成を増強して、出血症状の部位での血餅形成を促進するが、循環系を通じて全身性には促進しないことである。製剤によっては、PCCは、低用量の、プロテインC、プロテインSおよびヘパリンのような凝固阻害剤を含有する。しかしながら、これは、血栓塞栓性合併症のリスクを排除しない(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
【0007】
多数の前臨床研究により、外傷により誘導された出血の処置におけるPCCの使用が調べられてきた。全ての研究は、PCCが、止血を取り戻すのに有効であり得ることを示すが、証拠はまた、動物モデルにおいて血栓塞栓性合併症および播種性血管内凝固(DIC)のような凝血原効果を引き起こすことができ、従って、リスク対利益の熟考が、常に検討されるべきであることを示す(非特許文献3)。
【0008】
PCCは、数年前の臨床実施において、および動物研究において、血栓塞栓性合併症の可能性のあるリスクと関連付けられた(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。1990年代後期において、安全性の改善を目的に、活性化因子は、大部分のPCCから取り除かれた。第II因子(プロトロンビン)は、今日のPCCにおける血栓形成性の鍵となる決定因子として同定されており、このことが、それらは、第IX因子の代わりの第II因子の含有量に従い分類されるべきであるとの示唆を導く(非特許文献6)。循環レベルの抗凝固薬は、恐らく血栓塞栓性合併症の患者のリスクにも影響する。PCCは、ときに、バランスがとれていると、文献において記載される(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。これらの製品は、凝固第II因子、第VII因子、第IX因子および第X因子の比に関してバランスがとれているが、それらは、凝血原対阻害剤のレベルに関してバランスがとれていないことを明らかにすることが重要である。PCCは、非常に強力なトロンビン生成薬であり:外傷患者における研究により、それらが、第II因子の60~72時間の半減期と一致する期間である3~4日間、内因性トロンビンの潜在力の有意な増大を誘発することが示された。
【0009】
医薬品安全性監視データは、PCCでの血栓塞栓性合併症のリスクは低いが、これらのデータがもたらされる主な設定が、ビタミンKアンタゴニスト反転であることは、覚えておかなければならない。
【0010】
低用量のみのPCCが投与されるべきであること、および要求に応じて、用量タイトレーションのための治療診断アプローチを使用することが示唆されている(非特許文献16)。加えて、現在、閾値レベルまたは欠乏症を有する患者の管理の仕方に関して最善な実施を支持する証拠は存在しないが、アンチトロンビン(PCCに含有される4つの凝固因子の活性化形態の最も強力な阻害剤)のレベルを測定することができる。最終的に、血栓塞栓性合併症のリスクがあると信じられている患者(例えば、血栓塞栓性現象の既往歴を有する個体)のためには、密接なモニタリングが適切であり得る。上記工程の注意深い検討により、緊急時ビタミンKアンタゴニスト反転の確立された実施と比較して、PCCを使用する特に異なるアプローチがもたらされる。
【0011】
主な出血または緊急手術が要求される場合には、特に、抗凝固療法に対して患者において有効な止血制御および出血予防をもたらす、安全かつ有効な凝血原薬の医薬上のニーズがある。
【0012】
さらに、周術期の出血状況において迅速な止血制御をもたらす安全かつ有効な凝血原薬の医薬上のニーズがある。
【0013】
それぞれの介入は、最大の利益とリスクのバランスを示す、すなわち、最小の可能性のある血栓形成性を誘発しながら、最大の止血促進特性をもたらすべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】Tazarourte Kら、(EPAHK study).Crit Care 2014年;18(2):R81頁
【文献】Dentali Fら、Thromb Haemost 2014年;112:621~23頁
【文献】Grottke Oら、Blood 2011年;118:1943~51頁
【文献】Levy JHら、Anesthesiology 2008年;109:918~26頁
【文献】Mitterlechner Tら、J Thromb Haemost 2011年;9:729~37頁
【文献】Hanker Dusel Cら、Blood Coagul Fibrinolysis 2004年;15:405~11頁
【文献】Rodgers GM. Am J Hematol 2012年;87:898~902頁
【文献】Dickneite Gら、Anesth Analg 2008年;106:1070~7頁
【文献】Dickneite G, Pragst I. Br J Anaesth 2009年;102:345~54頁
【文献】Kaspereit Fら、Br J Anaesth 2010年;105:576~82頁
【文献】Josic Dら、Thromb Res 2000年;100:433~41頁
【文献】Ostermann Hら、Thromb Haemost 2007年;98:790~7頁
【文献】Pabinger Iら、J Thromb Haemost 2008年;6:622~31頁
【文献】Riess HBら、Thromb Res 2007年;121:9~16頁
【文献】Wiedermann CJ, Stockner I. Thromb Res 2008年;122 Suppl 2:S13~8頁
【文献】Honickel Mら、Thromb Haemost 2011年;106:724~33頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第1の目的は、製品の投与後に血栓塞栓性合併症についての低減した患者のリスクと関連する、すなわち、改善された安全性特性を有する、改善された血液凝固因子代替製品を提供することであった。
【0016】
第2の目的によると、前記処置により、患者において有効な止血制御および出血予防を可能にする、すなわち、改善された安全性特性に加えて、十分な有効性または改善された有効性でさえ有するべきである。
【0017】
第3の目的によると、前記安全かつ有効な血液凝固因子代替製品の投与により、主な出血または緊急手術が要求される場合には、特に、抗凝固療法に対して、患者において有効な止血制御および出血予防をもたらすことを可能にするべきである。
【0018】
さらなる目的によると、前記安全かつ有効な血液凝固因子代替製品の投与により、周術期の出血状況において迅速な止血制御をもたらすことを可能にするべきである。
【0019】
さらなる目的によると、前記安全かつ有効な血液凝固因子代替製品の投与により、最大の利益とリスクのバランス、すなわち、最小の可能性のある血栓形成性を誘発しながら、最大の止血促進特性をもたらすべきである。
【0020】
驚くべきことに、本発明者らにより、患者への、少なくともプロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)を含む血液凝固因子代替製品の投与、またはアンチトロンビンIIIとの、少なくともプロトロンビン(第II因子)を含む血液凝固因子代替製品の同時投与のいずれかが、ATIIIと第II因子のモル比が少なくとも1:30である限り、十分な有効性または改善された有効性でさえ維持しながら、血液凝固因子代替製品の血栓形成の潜在力を最小にするか、または阻害しさえすることが見いだされた。これにより、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する。好ましくは、血栓形成促進性作用は予防される。
【0021】
本発明はさらに、さらなる態様によるATIIIと第II因子の間の前記モル比が、正常/生理的レベルより上の過剰なトロンビン生成を予防できることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様において、本発明は、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、血液凝固因子代替製品であって;
前記製品は、少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、血液凝固因子代替製品に関する。
【0023】
第2の態様において、本発明は、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、濃縮プロトロンビン複合体(PCC)とアンチトロンビンIII(ATIII)の組合せであって;
PCCは、少なくともプロトロンビン(第II因子)、第IX因子、第X因子および場合により、第VII因子を含み;
前記組合せの投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、組合せに関する。
【0024】
第3の態様において、本発明は、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため
の、濃縮プロトロンビン複合体(PCC)の投与およびアンチトロンビンIII(ATIII)の同時投与を含む併用療法であって、
PCCは、少なくともプロトロンビン(第II因子)、第IX因子、第X因子および場合により、第VII因子を含み;
前記併用投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、併用療法に関する。
【0025】
第4の態様によると、本発明は、本明細書において開示される通り使用するための医薬血液凝固因子代替キットであって、(i)少なくともプロトロンビン(第II因子)を含む第1の組成物および(ii)アンチトロンビンIII(ATIII)を含む第2の組成物を含み、前記第1の組成物および前記第2の組成物は、キット内で、(a)投与前の、少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する混合物の調製、および/または(b)前記混合物もしくは組成物の同時投与のいずれかを可能にするために提供され、但し、投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり、前記組成物の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、医薬血液凝固因子代替キットに関する。
【0026】
第5の態様において、本発明は、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、プロトロンビン(第II因子)を含む製品との同時投与のためのアンチトロンビンIII(ATIII)を含む医薬製品であって;
少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
前記製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、医薬製品に関する。
【0027】
さらなる態様によると、本発明は、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、アンチトロンビンIII(ATIII)を含む製品との同時投与のためのプロトロンビン(第II因子)を含む医薬製品であって;
少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
前記製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、医薬製品に関する。
【0028】
さらなる態様によると、本発明は、先行する態様のいずれか1項に記載の使用のための血液凝固因子代替製品であって、次の2つのタイプ:
-第II因子、第IX因子および第X因子を含有する3因子複合体、または
-第VII因子を追加で含有する4因子複合体
のいずれか1つの濃縮プロトロンビン複合体(PCC)であり;
1:30未満のATIIIと第II因子のモル比を有するアンチトロンビンIII(ATIII)を含むか、またはATIIIを全く含まず;
PCCは、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、ATIIIを含む製品との同時投与のため提供され;
同時投与したときに少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、第II因子およびATIIIは、同時投与され;
ATIIIと一緒の前記PCC製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、血液凝固因子代替製品に関する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、血液凝固因子代替製品であって、少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30である、血液凝固因子代替製品に関する。前記製品は、好ましくは、本明細書において開示されるいずれか1つもしくはそれ以上の態様または本明細書において開示されるいずれか1つもしくはそれ以上の実施形態に記載の組成物を有する。
【0030】
さらなる態様によると、本発明は、本明細書において開示される処置用医薬の製造のための本明細書において開示される血液凝固因子代替製品の使用に関する。
【0031】
さらなる態様によると、本発明は、血液凝固因子代替製品を前記患者に投与することによる、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防
の方法であって;
前記製品は、少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、方法に関する。
【0032】
従って、本発明は、特に、次の実施形態[1]~[48]またはその組合せにさらに関する:
【0033】
[1]
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、血液凝固因子代替製品であって;
少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、血液凝固因子代替製品。
【0034】
[2]前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは、参照処置と比較して低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、実施形態[1]に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0035】
[3]第IX因子、第X因子および第VII因子からなる群から選択される単離された凝固因子の少なくとも1つをさらに含む、実施形態[1]または実施形態[2]に記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0036】
[4]製品での処置後の患者の失血量は、プラセボ処置後または処置なしの失血量と比較して減少し、失血量は、好ましくは、プラセボ処置後の量もしくは処置なしの量の75%未満、70%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満または35%未満に低減する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0037】
[5]製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは中程度にのみ増大するか、または製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに減少し、好ましくは、製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0038】
[6]製品での処置後の患者の失血量が参照処置の失血量と比較したときに中程度にのみ増大する場合において、前記中程度の増大は、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0039】
[7]製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、プラセボ処置後または処置なしの止血までの時間の値と比較して減少し、製品での処置後の止血までの前記時間の値は、好ましくは、プラセボ処置後の値もしくは処置なしの値と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%または少なくとも60%減少する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0040】
[8]製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは中程度にのみ増大するか、または製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに減少し、好ましくは、製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置後の値と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0041】
[9]製品での処置後の患者の止血までの時間の値が参照処置と比較したときに中度にのみ増大する場合において、値の前記中程度の増大は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下または10%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0042】
[10]製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、参照処置のプロトロンビン時間(PT)の値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも2.0分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3.0分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4.0分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5.0分の1、少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1に(特に、製品の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後および/もしくは約4時間後に)減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0043】
[11]製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、プラセボ処置後もしくは処置なしのプロトロンビン時間(PT)のそれぞれの値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)のそれぞれの値と比較したときに本質的に同一であり、および/または前記値の最大偏差を有し、但し、前記最大偏差は、5.0、4.0、3.0、2.5、2.0、もしくは1.5倍を、特に、製品の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後および/または約4時間後に超えない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0044】
[12]製品での処置後の患者のトロンビン生成、特に、内因性トロンビン産生能(ETP)の値は、参照処置のトロンビン生成、特に、内因性トロンビン産生能(ETP)の値と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%もしくは少なくとも50%、特に、製品の投与の約1時間後、約2時間後、および/または約3時間後に低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0045】
[13]製品での処置後の患者の血液のD-ダイマー濃度(DD)の値は、参照処置のD-ダイマー濃度(DD)の値と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも2分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5分の1、少なくとも5.5分の1、少なくとも6分の1、少なくとも6.5分の1、少なくとも7分の1、少なくとも8分の1、少なくとも9分の1もしくは少なくとも10分の1に、特に、製品の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後、および/または約4時間後に低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0046】
[14]プロテインS、プロテインCおよびプロテインZからなる群から選択される単離された凝固阻害剤の少なくとも1つをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の血液凝固因子代替製品。
【0047】
[15]ヘパリンをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0048】
[16]アルブミンをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0049】
[17]第II因子は不活性型であり、血液凝固因子代替製品に存在するなら、凝固第IX因子、第X因子および第VII因子は、独立して、不活性型または活性型のいずれかであり、好ましくは、前記因子の全ては、不活性型である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0050】
[18]患者に、静脈内、局所的にまたは骨内のいずれかで投与される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。静脈内で提供されるとき、製品は、静脈内注射によりまたは静脈内急速投与量により投与することができる。
【0051】
[19]第II因子は、製品内で10~80IU/mL、15~60IU/mL、好ましくは、20~48IU/mLの活性レベルで提供される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0052】
[20]凝固因子代替製品に存在するなら、凝固第IX因子、第X因子、および第VII因子は、製品内で、独立して、次の活性レベル:
- 第IX因子、10~50IU/mL、15~40IU/mL、好ましくは、20~31IU/mL、
- 第X因子、10~100IU/mL、15~80IU/mL、好ましくは、22~60IU/mL、および
- 第VII因子、5~50IU/mL、5~40IU/mL、好ましくは、10~25IU/mLで提供される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0053】
[21]凝固因子代替製品に存在するなら、阻害剤プロテインS、プロテインCおよびプロテインZは、製品内で、独立して、次の活性レベル:
- プロテインS、5~50IU/mL、10~45IU/mL、好ましくは、12~38IU/mL、
- プロテインC、10~60IU/mL、10~50IU/mL、好ましくは、15~45IU/mL、および
- プロテインZ、5~60IU/mL、5~50IU/mL、好ましくは、10~45IU/mLで提供される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0054】
[22]投与された代替製品の活性投薬量は、約5IU/kg~約100IU/kg、約10IU/kg~約75IU/kg、または約10IU/kg~約50IU/kgの範囲内であり、但し、活性は、第II因子の、存在するなら、第IX因子の活性を参照する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0055】
[23]凝固第II因子および第IX因子の活性レベルは、バランスのとれた比であり、但し、製品内での両因子の一方の活性レベルの他方との差は、3倍、2.5倍、2.0倍、1.5倍、または1.2倍を超えない、実施形態[3]~[22]のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0056】
[24]ATIIIと第II因子のモル比は、1:0.5より高くない、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0057】
[25]ATIIIと第II因子のモル比は、範囲1:30~1:0.5内、好ましくは、範囲1:28~1:0.5、1:25~1:0.5、1:24~1:0.5、1:23~1:0.5、1:22~1:0.5、1:21~1:0.5、1:20~1:0.5、1:18~1:0.5、1:15~1:0.5、1:12~1:0.5、または1:10~1:0.5内である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0058】
[26]ATIIIと第II因子のモル比は、範囲1:30~1:1内、好ましくは、範囲1:28~1:1、1:25~1:1、1:24~1:1、1:23~1:1、1:22~1:1、1:21~1:1、1:20~1:1、1:18~1:1、1:15~1:1、1:12~1:1、または1:10~1:1内である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0059】
[27]ATIIIと第II因子のモル比は、範囲1:30~1:2内、好ましくは、範囲1:28~1:2、1:25~1:2、1:24~1:2、1:23~1:2、1:22~1:2、1:21~1:2、1:20~1:2、1:18~1:2、1:15~1:2、1:12~1:2、または1:10~1:2内である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0060】
[28]ATIIIは、血漿由来タンパク質または組換えタンパク質である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0061】
[29]第II因子ならびに/または、存在するなら、第IX因子、第X因子および第VII因子からなる群から選択されるさらなる凝固因子の少なくとも1つは、組換えタンパク質または血漿由来タンパク質のいずれかである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0062】
[30]トラネキサム酸(TXA)は、好ましくは、体重1kg当たり10~20mgの範囲内の量で同時投与される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0063】
[31]前記処置もしくは予防は、プロトロンビン複合体凝固因子の後天性欠乏症、特に、ビタミンKアンタゴニストでの処置により引き起こされる欠乏症における、もしくは欠乏症の迅速な矯正が要求されるときのビタミンKアンタゴニストの過剰投与の場合における出血の処置および周術期予防を含むか;または前記処置もしくは予防は、特に、精製された特定の凝固因子製品が入手できないときのいずれかのビタミンK依存性凝固因子の先天性欠乏症における出血の処置および周術期予防を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0064】
[32]患者は、周術期出血と関連する凝固障害を含む外傷と関連する凝固障害のいずれかの種類に罹患する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0065】
[33]患者は、重篤な出血に罹患し、ビタミンK依存性凝固因子の欠乏症を有し、特に、後天性凝固因子妨害、例えば、肝疾患などを有するか、または特に、阻害剤と共に、血友病Bを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0066】
[34]患者は、ビタミンKアンタゴニスト、特に、経口ビタミンKアンタゴニストで、または直接作用する経口抗凝固薬(DOAC/NOAC)、好ましくは、直接FIIaもしくはFXa阻害剤で既に処置されており、ビタミンKアンタゴニストの、またはDOAC/NOACの抗凝固薬効果の迅速な反転を必要とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0067】
[35]前記製品での処置前の患者は、健常な対象と比較して凝固障害の次の状態:
- プロトロンビン時間(PT)の1.5倍より長い延長、
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の1.5倍より長い延長、
- 全血凝固時間(WBCT)の1.5倍より長い延長、
- FIBTEM-MCFにおける低減と共に、回転性トロンボエラストグラフィパラメーターEXTEM-CTもしくはEXTEM-CFT、または
- プロトロンビン複合体の凝固因子の喪失もしくは実質的な低減
の少なくとも1つを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0068】
[36]前記製品での処置に加えて、患者は、次のオプション:
- 体積エキスパンダもしくは蘇生液体の投与、特に、リンゲル乳酸塩、生理食塩水および/もしくはヒドロキシエチルデンプン(HES/HAES)の投与、
- 赤血球濃厚液パック(PRBC)の投与、
- 新鮮凍結血漿(FFP)の投与、
- 血小板の投与、もしくは
- 新鮮全血の投与
の少なくとも1つで予め、同時にまたはその後処置される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0069】
[37]前記製品での処置に加えて、患者は、クリオプレシピテートのような代替製品または濃縮フィブリノゲンで予め、同時にまたはその後処置され、好ましくは、代替製品または濃縮フィブリノゲンは、体重1kg当たり5mg~150mg、体重1kg当たり10mg~100mg、体重1kg当たり20mg~80mg、好ましくは、体重1kg当たり25mg~60mgの範囲のフィブリノゲン量で投与される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0070】
[38]好ましくは、有意な出血、特に、好ましくは、ビタミンK依存性凝固因子の欠乏症と関連する、さらに好ましくは、ビタミンK抗凝固のない、周術期または外傷後の処置において、第一選択の単剤処置として使用される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0071】
[39]処置前の患者は、外傷重要度スコア(ISS)>16および/または重篤なショックを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0072】
[40]次の2つのタイプ:
- 第II因子、第IX因子および第X因子を含む3因子複合体;または
- 第VII因子を追加で含む4因子複合体
のいずれか1つの濃縮プロトロンビン複合体(PCC)であり;
アンチトロンビンIII(ATIII)を追加で含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30である、実施形態[3]~[39]のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。一般に、本発明による濃縮プロトロンビン複合体(PCC)はまた、先行技術において公知のPCCと比較して上昇したATIII含有量を強調するために、本明細書において改変されたPCCとしても言及される。
【0073】
[41]血栓塞栓性合併症の低減したリスクは、動脈もしくは静脈血栓症、心筋梗塞、および/または播種性血管内凝固(DIC)の低減により表される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0074】
[42]
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、濃縮プロトロンビン複合体(PCC)とアンチトロンビンIII(ATIII)の組合せであって、
PCCは、少なくともプロトロンビン(第II因子)、第IX因子、第X因子および場合により第VII因子を含み、但し、投与されるATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記併用投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、組合せ。
【0075】
[43]
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防のため
の、濃縮プロトロンビン複合体(PCC)の投与およびアンチトロンビンIII(ATIII)の同時投与を含む併用療法であって、
PCCは、少なくともプロトロンビン(第II因子)、第IX因子、第X因子および場合により第VII因子を含み、但し、投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記併用投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、併用療法。
【0076】
[44](i)少なくともプロトロンビン(第II因子)を含む第1の組成物および(ii)アンチトロンビンIII(ATIII)を含む第2の組成物を含み、前記第1の組成物および前記第2の組成物は、キット内で、(a)投与前の、少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する混合物の調製、および/または(b)前記混合物もしくは組成物の同時投与のいずれかを可能にするために提供され、但し、投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり、前記組成物の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、実施形態[1]~[41]のいずれか1つに記載の使用のための医薬血液凝固因子代替キット。
【0077】
[45]
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、プロトロンビン(第II因子)を含む製品との同時投与のためのアンチトロンビンIII(ATIII)を含む医薬製品であって;
少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
前記製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、医薬製品。
【0078】
[46]
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、アンチトロンビンIII(ATIII)を含む製品との同時投与のためのプロトロンビン(第II因子)を含む医薬製品であって;
少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
前記製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、医薬製品。
【0079】
[47]次の2つのタイプ:
- 第II因子、第IX因子および第X因子を含有する3因子複合体、または
- 第VII因子を追加で含有する4因子複合体
のいずれか1つの濃縮プロトロンビン複合体(PCC)であり;
1:30未満のATIIIと第II因子のモル比を有するアンチトロンビンIII(ATIII)を含むか、またはATIIIを全く含まず;
PCCは、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防における使用のため
の、ATIIIを含む製品との同時投与のため提供され;
同時投与されるとき少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を有する、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、同時投与され;
ATIIIと一緒の前記PCC製品の同時投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、実施形態[1]~[41]のいずれか1つに記載の使用のための血液凝固因子代替製品。
【0080】
[48]血液凝固因子代替製品を前記患者に投与することによる、
(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防、または
(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防
の方法であって;
前記製品は、少なくとも単離されたプロトロンビン(第II因子)および単離されたアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30であり;
前記製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する、方法。
【0081】
実施形態[1]~[48]は、本明細書において開示される他の実施形態もしくは態様の特性のいずれか1つまたはそれ以上と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】血液希釈、処置、実験上の腎外傷および止血効果の評価の研究手法を示す。略語:HES、ヒドロキシエチルデンプン;PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII);
【
図2】生理食塩水(プラセボ)、PCC、ATIIIまたはPCCとATIIIの組合せでの処置後の血液希釈したウサギにおける標準化腎損傷後のトータルの失血を示す。示したデータは、範囲の中央値を表す。略語:PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII);
【
図3】生理食塩水(プラセボ)、PCC、ATIIIまたはPCCとATIIIの組合せでの処置後の血液希釈したウサギにおける標準化腎損傷後の止血までの時間を示す。示したデータは、範囲の中央値を表す。略語:PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII);
【
図4】
図4aは、生理食塩水(プラセボ)、PCCまたはPCCとATIIIの組合せでの処置の存在下でのウサギにおける静脈血栓症後の血栓スコアを示す。示したデータは、範囲の中央値を表す。略語:PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII)。
図4bは、生理食塩水(プラセボ)、PCCまたはPCCとATIIIの組合せでの処置の存在下でのウサギにおける静脈血栓症後の血栓湿重量を示す。示したデータは、範囲の中央値を表す。略語:PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII)。
【
図5】ブタにおける2度目の肝損傷後のトータルの失血を示す。PCCとATIIIの組合せは、対照群および単独治療PCC50処置群と比較して失血を低減した;
【
図6】カプラン・マイヤー曲線として提示されるブタの生存データを示す;
【
図7】ブタの平均肺動脈圧(MPAP、(平均±標準偏差))のデータを示す;
【
図8】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的アンチトロンビン濃度を示す(平均±標準偏差);
【
図9】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的フィブリノゲン濃度を示す(平均±標準偏差);
【
図10】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的D-ダイマーを示す(平均±標準偏差);
【
図11】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的トロンビン生成を示す(平均±標準偏差);
【
図12】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的プロトロンビン時間(PT)を示す(平均±標準偏差);ならびに
【
図13】ブタにおける外傷および出血性ショック後の経時的活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を示す(平均±標準偏差);
【発明を実施するための形態】
【0083】
定義
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様または均等な任意の方法および物質を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および物質が記載される。本発明の目的で、次の用語は、以下の通り定義される。
【0084】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の物の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために、本明細書において使用される。例示の目的で、「構成要素」は、1つの構成要素、または1つより多くの構成要素を意味する。
【0085】
「約」とは、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、大きさ、サイズ、量、重量、長さもしくは本明細書において記載される他の単位に対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1%と同じ程度変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、大きさ、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0086】
本発明による「アンチトロンビンIII(ATIII)」は、機能的血漿プロテアーゼ阻害剤ATIII、特に、単離された、すなわち、精製された、機能的ATIIIである。ATIIIは、好ましくは、ヒトATIIIである。
【0087】
本発明による「凝固因子」は、機能的凝固因子、特に、単離された、すなわち、精製された、機能的凝固因子である。凝固因子は、好ましくは、ヒト凝固因子である。
【0088】
本明細書を通じて、文脈が別段要求しない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと」は、規定された工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を包含するが、任意の他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を排除しないことを意味すると解される。
【0089】
「からなる」とは、語句「からなる」に続くものは何でも含み、かつこれに限定されることを意味する。従って、語句「からなる」は、挙げられた構成要素が、要求されるか、または必須であること、および他の構成要素は存在しないことを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に挙げられた任意の構成要素を含み、挙げられた構成要素についての開示において特定される活性もしくは作用と干渉しないか、または関与しない他の構成要素に限定されることを意味する。従って、語句「本質的にからなる」は、挙げられた構成要素が、要求されるか、または必須であるが、他の構成要素は、任意選択であり、それらが、挙げられた構成要素の活性もしくは作用に物質的に影響するかどうかに依存して、存在するかまたは存在しないことを示す。
【0090】
本発明の意味における「単離された」は、それぞれの凝固因子もしくは凝固因子の混合物またはATIIIは、ヒト血漿(血漿由来)または、組換え産生されるなら、培養培地のいずれかから精製されたことを意味する。本発明の意味において精製されたは、それぞれの凝固因子もしくは凝固因子の混合物もしくはATIIIが元々得られた溶液と比較して、総タンパク質含有量1mg当たりの前記凝固因子もしくは凝固因子の混合物もしくはATIIIのより高い生物学的活性または患者に最終的に投与される液体の1ml当たりの前記凝固因子もしくは凝固因子の混合物もしくはATIIIのより高い生物学的活性を導く任意のタイプの精製を意味する。
【0091】
凝固因子またはATIIIの活性の1国際単位(「IU」)は、正常ヒト血漿1mL中のそれぞれの凝固因子またはATIIIのその数量と同等である。
【0092】
本発明の血液凝固因子代替製品が提供され、改変された濃縮プロトロンビン複合体(PCC)として言及される。本発明の意味における改変された濃縮プロトロンビン複合体(PCC)は、少なくとも単離された凝固因子FII、FIX、FX(本明細書において3因子複合体としても言及される)または単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVII(本明細書において4因子複合体としても言及される)の組合せを含む。先行技術から公知であるPCC、すなわち、従来のPCCと対照的に、本発明による改変されたPCCは、少なくともアンチトロンビンIII(ATIII)を追加で含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30である。改変されたPCCの単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIは、ヒト血液に由来し得るか、またはかかるPCCは、組換え発現された凝固因子から再構成することができ、前記組換え発現された凝固因子FVII、FIX、FXおよびFVIIの抗原と活性の比は、血液に由来するPCCに対応し、但し、改変されたPCCは、少なくともアンチトロンビンIII(ATIII)を追加で含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30である。
【0093】
本発明の血液凝固因子代替製品は、液体にまたは凍結乾燥されて保存されるなら、注射前の再構成後の液体に存在するそれぞれの個々の凝固因子を包含する。別段示されないなら、本発明の製品で提供される凝固因子の濃度、特に、IU/mLは、液体または製品が凍結乾燥されて保存されるなら、注射前の再構成後の液体に存在する凝固因子の濃度を指す。
【0094】
本発明の製品が投与される「患者」または「対象」は、動物またはヒトのいずれかであり、好ましくは、ヒトである。ある特定の態様において、ヒトは、小児科の患者である。他の態様において、ヒトは、成人患者である。
【0095】
「実質的に」または「本質的に」は、ある所定の数量のほぼ全体的にまたは完全に、例えば、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上を意味する。
【0096】
発明の詳細な説明
凝固因子
機能的凝固第II(FII)因子は、プロトロンビンの生物学的活性を示し、トロンビン(FIIa)の不活性型酵素前駆体を表す。凝固カスケードの活性化後、プロトロンビンのトロンビンへの変換が生じ、後の、凝固系における複数の活性化機能は、とりわけ、フィブリノゲンのフィブリンへの変換、凝固因子XIII(FXIII)の活性型凝固因子XIII(XIIIa)への活性化、FVおよびFVIIIのFVaおよびVIIIaへの活性化、トロンビン受容体の部分的タンパク質分解後の血小板活性化を含む。
【0097】
機能的凝固第IX因子(FIX)は、不活性なFIXの生物学的活性を示し、活性なFIXaへの凝固活性化の際に変換される。FIXaは、その補酵素FVIIIaと共に複合体を形成し、テナーゼ複合体を表し、それは、不活性なFXをその活性形態FXaに切断する。
【0098】
機能的凝固因子X(FX)は、凝固活性化後に活性なFXaに変換される不活性なFXの生物学的活性を示す。FXaは、その補酵素FVaと複合体を形成し、それは、不活性なプロトロンビン(FII)を活性なトロンビン(FIIa)に切断するプロトロンビナーゼ複合体を表す。
【0099】
機能的凝固因子FVII(FVII)は、凝固の活性化中にFVIIaに変換される不活性なFVIIの生物学的活性を示す。FVIIaは、組織因子と共に、不活性なFXを活性なFXaに変換する。加えて、FVIIaは、不活性なFIXを活性なFIXaに変換することができる。
【0100】
上で論じた凝固因子の活性は、L.Thomas:Clinical Laboratory Diagnostics、TH-Books、Frankfurt、1998年、17章に従い測定することができる。
【0101】
本明細書において使用される凝固因子は、ヒト血漿もしくは血清から得ることができるか、または組換えで得ることができる。
【0102】
本発明において使用される凝固因子は、天然のヒト凝固因子のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。わずかに修飾されたアミノ酸配列、例えば、N末端のアミノ酸欠失または付加を含む修飾されたN末端を有する凝固因子はまた、それらのタンパク質が、凝固因子の活性を実質的に保持する限り、包含される。上記の定義内の凝固因子はまた、存在し、ある個体から別のものに生じ得る天然の対立遺伝子バリエーションを含む。上記の定義内の凝固因子は、かかる凝固因子のバリアントをさらに含む。かかるバリアントは、野生型配列と1つまたはそれ以上のアミノ酸残基で異なる。かかる差異の例は、1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、1~10個のアミノ酸残基)によるNおよび/もしくはC末端の切断、またはNおよび/もしくはC末端での1個もしくはそれ以上の外部の残基の付加、例えば、N末端でのメチオニン残基の付加、ならびに保存的アミノ酸置換、すなわち、同様の特徴を有するアミノ酸、例えば、(1)小さなアミノ酸、(2)酸性アミノ酸、(3)極性アミノ酸、(4)塩基性アミノ酸、(5)疎水性アミノ酸、(6)芳香族アミノ酸の群内で行われる置換を含み得る。かかる保存的置換の例は、次の表に示される。
【0103】
【0104】
本発明において使用される機能的凝固因子は、上で記載された、溶液中および/または細胞表面上のいずれかで生物学的活性を示す凝固因子分子を含む。
【0105】
用語「組換え体」は、例えば、凝固因子または凝固因子バリアントは、遺伝子操作技術により宿主生物において産生されたことを意味する。
【0106】
本発明の宿主細胞は、ヒト凝固因子の産生方法において利用することができる。方法は:
a)1つまたはそれ以上のヒト凝固因子が発現されるような条件下で本発明の宿主細胞を培養すること;および
b)場合により、宿主細胞もしくは培養培地から1つまたはそれ以上のヒト凝固因子を回収すること
を含む。
【0107】
グリコシル化または他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主および宿主細胞環境の性質に依存して変動し得る。特定のアミノ酸配列に言及するとき、かかる配列の翻訳後修飾は、本出願において包含される。
【0108】
適当な宿主細胞における高レベルでの組換えタンパク質の産生は、組換え発現ベクターにおいて適当な制御エレメントと共に上述の修飾されたcDNAを効率的な転写単位にアセンブリすることを要求し、それは、当業者に公知の方法に従い様々な発現系で増殖させることができる。効率的な転写制御エレメントは、それらの天然の宿主として動物細胞を有するウイルスまたは動物細胞の染色体DNAに由来し得る。好ましくは、サルウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスの長い末端のリピートに由来するプロモーターとエンハンサーの組合せ、またはベータ-アクチンもしくはGRP78のような動物細胞において非常に恒常的に転写された遺伝子を含むプロモーターとエンハンサーの組合せを使用することができる。cDNAから転写されたmRNAの安定的に高いレベルを達成するために、転写単位は、その3’近位部分に、転写終結ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含有すべきである。好ましくは、この配列は、サルウイルス40早期転写領域、ウサギベータ-グロビン遺伝子、またはヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター遺伝子に由来する。
【0109】
次に、cDNAは、凝固因子の発現のため、適当な宿主細胞株のゲノムに組み込まれる。好ましくは、この細胞株は、正しいフォールディングを、Glaドメイン合成、ジスルフィド結合形成、アスパラギン結合グリコシル化、O結合グリコシル化、および他の翻訳後修飾ならびに培養培地への分泌を確実にするために、脊椎動物起源の動物の細胞株であるべきである。他の翻訳後修飾の例は、新生ポリペプチド鎖のヒドロキシル化およびタンパク質分解処理である。使用することができる細胞株の例は、サルCOS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、ハムスターBHK-21細胞、ヒト胚腎293細胞であり、優先的には、ハムスターCHO細胞である。その複合体のため、翻訳後修飾組換え凝固因子は、好ましくは、ヒト細胞株において発現される。
【0110】
対応するcDNAをコードする組換え発現ベクターは、いくつかの異なる方法で動物細胞株に導入することができる。例えば、組換え発現ベクターは、異なる動物ウイルスベースのベクターから作製することができる。これらの例は、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスベースのベクターであり、好ましくは、ウシパピローマウイルスベースのベクターである。
【0111】
対応するDNAをコードする転写単位はまた、特定の細胞クローンの単離を促進するためにこれらの細胞において優位に選択可能なマーカーとして機能し得る、別の組換え遺伝子と共に動物細胞に導入することができ、組換えDNAをそれらのゲノムに組み込む。このタイプの優位に選択可能なマーカー遺伝子の例は、ジェネテシン(G418)に対する抵抗性を与える、Tn5アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンに対する抵抗性を与える、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、およびピューロマイシンに対する抵抗性を与える、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼである。かかる選択可能なマーカーをコードする組換え発現ベクターは、所望のタンパク質のcDNAをコードするものと同じベクター上に存在するか、またはそれは、宿主細胞のゲノムに同時に導入され、組み込まれる、別々のベクター上にコードされ、異なる転写単位間の堅固な物理的結合を頻繁にもたらす。
【0112】
所望のタンパク質のcDNAと一緒に使用することができる、他のタイプの選択可能なマーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)をコードする様々な転写単位に基づく。このタイプの遺伝子の、内因性dhfr活性を欠く細胞、優先的には、CHO細胞(DUKX-B11、DG-44)への導入後、これらがヌクレオシドを欠く培地において成長することを可能にする。かかる培地の例は、ヒポキサンチン、チミジン、およびグリシンを含まないハムのF12である。同じベクターまたは異なるベクターのいずれかに結合された、これらのdhfr遺伝子は、凝固因子cDNA転写単位と共に上記のタイプのCHO細胞に導入することができ、これにより、組換えタンパク質を産生するdhfr陽性細胞株が作製される。
【0113】
上記の細胞株は、細胞傷害性dhfr阻害剤メトトレキサートの存在下で成長すると、メトトレキサートに抵抗性の新たな細胞株が出現する。これらの細胞株は、増幅された数の結合dhfrおよび所望のタンパク質の転写単位に起因し、増大した割合で組換えタンパク質を産生することができる。これらの細胞株を増大する濃度のメトトレキサート(1~10000nM)において増殖させるとき、非常に高い割合で所望のタンパク質を産生する新たな細胞株を得ることができる。
【0114】
所望のタンパク質を産生する上記の細胞株は、懸濁培養液においてまたは様々な固体支持体の上のいずれかで、ラージスケールで成長し得る。これらの支持体の例は、デキストランもしくはコラーゲンマトリックスベースのマイクロキャリア、または中空繊維もしくは様々なセラミック材料の形態の固体支持体である。細胞懸濁培養液においてマイクロキャリア上で成長するとき、上記の細胞株の培養は、溶液バット培養または長期間にわたり条件培地を継続的に生じる灌流培養のいずれかとして行うことができる。従って、本発明により、上記の細胞株は、所望の組換えタンパク質の産生についての産業プロセスの開発に十分に適合する。
【0115】
上記のタイプの分泌細胞の培地に蓄積する組換えタンパク質は、細胞培養培地中の所望のタンパク質と他の物質との間のサイズ、電荷、疎水性、溶解度、特定の親和性などの差を利用する方法を含む、様々な生化学およびクロマトグラフィー方法により、濃縮および精製することができる。
【0116】
かかる精製の例は、固体支持体上に固定されているモノクローナル抗体への組換えタンパク質の吸着である。吸着後、タンパク質は、上記の特性に基づき、様々なクロマトグラフィー技術によりさらに精製することができる。
【0117】
組換え手段により産生されるか、またはヒト血漿から得られるかどうかに関係なく、本発明の凝固因子を、純度≧60%まで、より好ましくは、純度≧80%まで精製することが好ましく、混入している巨大分子、特に、他のタンパク質および核酸に関して95%より高い純度であり、感染性および発熱性の薬剤を含まない、医薬上純粋な状態が、特に好ましい。
【0118】
本発明において記載される凝固因子は、治療上使用するための医薬調製物に製剤することができる。精製されたタンパク質は、場合により医薬特性をもたらすための医薬賦形剤を加えることができる、従来の生理学的に適合する緩衝水溶液に溶解することができる。
【0119】
かかる医薬担体および賦形剤、ならびに適当な医薬製剤は、当該技術分野において周知である(例えば、「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、Frokjaerら、Taylor & Francis(2000年)または「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3編集、Kibbeら、Pharmaceutical Press(2000年)を参照)。特に、本発明のポリペプチドバリアントを含む医薬組成物は、凍結乾燥形態または安定な可溶性形態で製剤することができる。ポリペプチドバリアントは、様々な当該技術分野において公知の手法により凍結乾燥することができる。凍結観察された製剤は、無菌の注射用水もしくは無菌の生理食塩水溶液のような1つまたはそれ以上の医薬上許容される希釈剤の添加により、使用前に再構成される。
【0120】
組成物の製剤は、投与の任意の医薬上適当な手段により、個体に送達される。様々な送達システムは、公知であり、これを使用して、任意の好適な経路により組成物を投与することができる。優先的には、本発明の組成物は、全身性に投与される。全身性使用のため、本発明の凝固因子は、従来の方法に従い、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、脳内、肺内、鼻腔内または経皮もしくは膣)または経腸(例えば、経口、もしくは直腸)送達のため製剤される。最も好ましい投与経路は、静脈内および皮下投与である。製剤は、点滴またはボーラス注射により持続的に投与することができる。ある製剤は、低速放出系を包含する。
【0121】
本発明の凝固因子は、所望の効果を生じるのに十分である用量を意味し、耐えられない有害な副作用を生み出す用量に達することなく、処置されている状態もしくは徴候の重症度もしくは拡大を防ぐか、または和らげる、治療上有効な用量で患者に投与される。正確な用量は、多くの要因、例えば、徴候、製剤、投与様式に依存し、各それぞれの徴候について前臨床および臨床試験において決定されなければならない。
【0122】
アンチトロンビンIII(ATIII)
機能的アンチトロンビンIII(ATIII)は、血漿プロテアーゼ阻害剤アンチトロンビンIIIの生物学的活性を示す。ヒトATIIIは、432個のアミノ酸を含む分子量約58kDaを有する糖タンパク質である。血漿プロテアーゼ阻害剤ATIIIは、トロンビンおよびトロンビンの生成に関与する酵素を不活性化する。ATIIIは、セルピン遺伝子ファミリーのメンバーと相同な配列、構造ならびに機能を示す。セルピンは、自殺基質阻害機序を介してそれらの標的酵素を阻害する。ATIIIは、特に、トロンビン、活性型第X因子(FXa)および活性型第IX因子(FIXa)を阻害する。
【0123】
本発明において使用されるアンチトロンビンIII(ATIII)は、好ましくは、天然のヒトATIIIのアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。わずかに修飾されたアミノ酸配列、例えば、N末端のアミノ酸欠失または付加を含む修飾されたN末端を有するATIIIはまた、それらのタンパク質が、ATIIIの活性を実質的に保持する限り、包含される。上記の定義内のATIIIはまた、存在し、ある個体から別のものに生じる天然の対立遺伝子バリエーションを含む。上記の定義内のATIIIは、かかるATIIIのバリアントをさらに含む。かかるバリアントは、野生型配列と1つまたはそれ以上のアミノ酸残基で異なる。かかる差異の例は、凝固因子について上で提供される。本発明において使用される機能的ATIIIは、上で記載された、溶液中および/または細胞表面上のいずれかで生物学的活性を示すATIII分子を含む。用語「組換え体」は、例えば、ATIIIまたはATIIIバリアントは、既に上で記載された遺伝子操作技術により宿主生物において産生されたことを意味する。
【0124】
モル比
本発明によると、プロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)は、それを必要とする患者の処置において、少なくとも約1:30の投与されるATIIIと投与される第II因子のモル比で使用される。従って、少なくとも約1:30である本発明によるATIIIと第II因子のモル比は、ATIIIの下限として本明細書において特に解される。
【0125】
本発明の製品は、少なくともプロトロンビン(第II因子)およびアンチトロンビンIII(ATIII)を含み、ATIIIと第II因子のモル比は、少なくとも1:30である。任意の理論に束縛されるものではないが、プロトロンビンと関連する前記最小モルのATIIIレベルは、特に、プロトロンビンの活性化の際、十分なATIII分子は、過剰なトロンビンもしくは第Xa因子に結合させるため利用可能であり、これは、過剰なトロンビン生成および/またはフィブリン形成を制限し、従って、血栓塞栓性現象、すなわち、血栓塞栓性合併症のリスクを最小にするか、または阻害することを確実にすると信じられている。従って、前記ATIIIレベルは、結果として、処置または製品の改善された安全性を確実にする。ATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい実施形態によると、少なくとも1:29、少なくとも1:28、少なくとも1:27、少なくとも1:26、少なくとも1:25、少なくとも1:24、少なくとも1:23、少なくとも1:22、少なくとも1:21、少なくとも1:20、少なくとも1:19、少なくとも1:18、少なくとも1:17、少なくとも1:16、少なくとも1:15、少なくとも1:14、少なくとも1:13、少なくとも1:12、少なくとも1:11、または少なくとも1:10でさえある。
【0126】
ATIIIと第II因子のモル比は、好ましい実施形態によると、約1:0.5より高くはない。任意の理論に束縛されるものではないが、プロトロンビンと関連するATIIIレベルのこのモルの上限は、特に、プロトロンビンの活性化の際、十分にフリーのトロンビンが、フィブリノゲンのフィブリンへの反応を触媒するのに利用可能なままであることを確実にすると信じられている。従って、前記ATIIIレベルは、十分なトロンビン生成、フィブリン形成を確実にし、結果として、十分な有効性をもたらす。ATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい実施形態によると、約1:1より高くはない。ATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい実施形態によると、約1:2より高くはない。
【0127】
ATIIIの前記下限のいずれかは、ATIIIの前記上限のいずれかと組み合わせることができる。
【0128】
範囲1:30~1:0.5内、好ましくは、範囲1:10~1:0.5内のATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい。範囲1:30~1:1内、好ましくは、1:10~1:1内のATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい。さらに好ましい実施形態によると、ATIIIと第II因子のモル比は、範囲1:10~1:2内である。
【0129】
本発明による任意のモル比は、それぞれのタンパク質のモル濃度の比を指す。
【0130】
本発明に関してモル比は、特に、血液凝固因子代替製品内の投与前の投与されるべきタンパク質のモル濃度について形作られる。状況下の患者は、ある特定の内因性レベルの1つまたはそれ以上の投与されるべきタンパク質を既に有するので、インビボで生じるモル比は、本発明によるタンパク質のモル比と異なり得る。
【0131】
範囲1:30~1:0.5内、好ましくは、範囲1:28~1:0.5、1:25~1:0.5、1:24~1:0.5、1:23~1:0.5、1:22~1:0.5、1:21~1:0.5、1:20~1:0.5、1:18~1:0.5、1:15~1:0.5、1:12~1:0.5、または1:10~1:0.5内のATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい。
【0132】
範囲1:30~1:1内、好ましくは、範囲1:28~1:1、1:25~1:1、1:24~1:1、1:23~1:1、1:22~1:1、1:21~1:1、1:20~1:1、1:18~1:1、1:15~1:1、1:12~1:1、または1:10~1:1内のATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい。
【0133】
範囲1:30~1:2内、好ましくは、範囲1:28~1:2、1:25~1:2、1:24~1:2、1:23~1:2、1:22~1:2、1:21~1:2、1:20~1:2、1:18~1:2、1:15~1:2、1:12~1:2、または1:10~1:2内のATIIIと第II因子のモル比は、さらに好ましい。
【0134】
本発明に従う処置のさらなる詳細は、以下にさらに記載される。
【0135】
ATIIIとFIIのモル比は、好ましくは、次の仮説:
- ATIIIの分子量=58,000Da
- FIIの分子量=72,000Da
- ATIIIの血漿濃度=2.4μmol/L(健常な対象)
- FIIの血漿濃度=1.4μmol/L(健常な対象)
- 1IU/kgATIII=140μg/kg=2.4nmol/kgATIII
- 1IU/kgFII=90μg/kgFII=1.25nmol/kgFII
- ATIII1IU:FII1IUは、ATIII1.92モル:FII1モルと等しく、従って、ATIII2モル:FII1モルとほぼ等しい
に基づき計算される。
【0136】
ヘパリン
本発明による「ヘパリン」は、機能的ヘパリン、特に、単離された、すなわち、精製された、機能的ヘパリンである。機能的ヘパリンは、ATIIIの補因子の生物学的活性を示す。ヘパリンおよびHSPG(ヘパリン硫酸プロテオグリカン)は、それぞれ、ATIIIの医薬上および生理的補因子として働く。本発明の機能的ヘパリンは、ATIIIの活性化に適当な当該技術分野において周知の特定の五糖配列を含む。トロンビン、活性型第X因子(FXa)および活性型第IX因子(FIXa)についてのATIIIの阻害率は、ヘパリンにより促進される。
【0137】
機能的ヘパリンは、未分画のヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)および合成五糖第Xa因子阻害剤またはその混合物からなる群から選択することができる。UFHは、本発明に記載される使用のための好ましいタイプのヘパリンである。FXaの阻害のためのATIIIのヘパリン介在性活性化について、前記特定の五糖配列は十分である。しかしながら、ATIIIにより促進されたトロンビン阻害について、ヘパリンの少なくとも18個の糖単位が要求される。特に、ヘパリンによるATIIIトロンビン阻害の増幅が意図されるとき、UFHは、本明細書に記載される使用のための好ましいタイプのヘパリンである。
【0138】
本発明による血液凝固因子代替製品は、ヘパリンを含み、ヘパリンは、好ましくは、製品内で0.1~10IU/mL、0.2~5.0IU/mL、0.2~3.0IU/mL、好ましくは、0.4~2.0IU/mLの活性レベルで提供される。
【0139】
アルブミン
本発明による血液凝固因子代替製品は、アルブミンをさらに含む。
【0140】
本発明によるアルブミンは、特に、単離された、すなわち、精製された、アルブミンタンパク質である。アルブミンは、好ましくは、ヒトアルブミンである。アルブミンは、好ましくは、血漿由来タンパク質である。
【0141】
失血
本明細書において使用される失血は、観察期間中に収集される、組織損傷に由来する血液の総体積である。
【0142】
血栓スコア
本明細書において使用される血栓スコアは、静脈うっ血の30分後の解剖された静脈区域に由来する血栓/複数の血栓のサイズおよび程度を記載する。血栓スコアは、血栓塞栓性現象のリスクについての代替マーカーとして使用される。
スコア0-血栓なし
スコア1-測定可能でない湿重量を有する1つまたはいくつかの小さな血栓
スコア2-測定可能な湿重量を有する1つまたはいくつかの血栓
スコア3-完全に閉塞させている血栓
【0143】
血栓湿重量
血栓湿重量は、静脈うっ血の30分後の解剖された静脈区域に由来する血栓の湿重量を記載し、検出された血栓をさらに特徴付ける。
【0144】
D-ダイマー
D-ダイマー(またはDダイマー)は、血液の血餅が、線維素溶解により分解された後、血液に存在する小タンパク質フラグメントであるフィブリン分解製品(またはFDP)である。D-ダイマーは、例えば、血栓症または播種性血管内凝固(DIC)の存在のため、凝固系が活性化されたときを除き、通常、ヒト血液血漿に存在しない。
【0145】
止血までの時間
止血までの時間は、適用された観察期間内での、組織損傷を生じたときから、出血の完全な休止までの時間を記載し、試験された介入の止血有効性の直接的指標として使用される。
【0146】
後天性凝固因子欠乏症
本発明に従う、後天性凝固因子欠乏症は、特に、好ましくは、ビタミンK欠乏症または経口抗凝固薬の過剰投与により引き起こされる、後天性プロトロンビン複合体因子欠乏症である。プロトロンビン複合体因子の障害された合成は、肝機能障害または肝移植の結果であり得る。本明細書において記載される処置は、患者が出血しているか、または手術が意図されるとき、特に、有利である。全てのこれらの状況において、本発明の血液凝固因子代替製品の投与は、有用であり得る。経口抗凝固薬を接種している患者は、血栓塞栓症に対して増大した素因を示し、従って、本発明の血液凝固因子代替製品での処置は、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクの本明細書に記載される低減のため、特に有利である。本発明に関して経口抗凝固薬は、特に、経口ビタミンKアンタゴニストまたは直接作用する経口抗凝固薬(DOAC/NOAC)を含む。
【0147】
本発明に従う後天性凝固因子欠乏症は、さらなる態様によると、消費性凝固障害としても知られた播種性血管内凝固(DIC)の結果であり得る。DICは、体中の小さな血管における血液血餅の形成ならびにフィブリンの生成および蓄積をもたらす凝固カスケードの広範な活性化により特徴付けられる病理学的プロセスである。これは、様々な臓器における微小血管の血栓を導き、これが、多臓器機能障害および多臓器不全に関与する。加えて、凝固プロセスは、凝固因子および血小板を消費するので、正常な血餅が障害され、拡散する出血が、様々な部位から生じ得る。線維素溶解系の攪乱は、さらに、血管内血餅形成に関与するが、ある場合には、促進された線維素溶解はまた、重篤な出血を導き得る。血栓症と止血について国際社会のDICについての委員会は、DICについて次の定義:「異なる原因から生じる、局在性の喪失を伴う凝固の血管内活性化により特徴付けられる後天性症候群であり、それは、微小血管への損傷から生じ、それを引き起こし得、十分に重篤なら、臓器不全を生じ得る」を示唆している。
【0148】
DICは、それ自体では生じないだけでなく、通常、重大な病気を有するものにおいて、別の背景にある状態から複雑にする要因として生じる。組織血液流の広範な喪失と同時出血の組合せは、背景にある疾患により提起されるものに加えて、死の増大したリスクを導く。しかしながら、先行技術において公知の、現在の濃縮凝固因子は、この臨床状況には推奨されない。別の態様によると、少なくとも高投薬量で投与されたなら観察される、当該技術分野において公知の従来の血液凝固因子代替製品の投与の際のDICの発生の患者のリスクまたはDIC様症状の発生のリスクは、本発明による、すなわち、少なくとも1:30であるATIIIと第II因子のモル比を有する、血液凝固因子代替製品の適用により低減させることができる。
【0149】
凝固因子の先天性欠乏症
本発明に関して凝固因子の先天性欠乏症は、任意の患者のプロトロンビン複合体因子欠乏症、特に、先天性プロトロンビン欠乏症または先天性第X因子欠乏症であり得る。加えて、本発明に関して凝固因子の先天性欠乏症は、他の治療上の測定値が示されないか、または予想される治療効果を導かない臨床状況における任意の患者のプロトロンビン複合体因子欠乏症であり得る。1つの非限定的な例は、特定の濃縮凝固因子または阻害剤が入手できないときの緊急時の状況であり得る。先天性欠乏症の例は、血友病B、先天性第VII因子欠乏症または先天性プロテインC欠乏症である。かかる患者における出血の停止または予防は、前記状況下で要求される。本発明に関する出血は、明らかな出血または周術期もしくは外傷現象の後に生じる出血であり得る。全てのこれらの状況において、本発明の血液凝固因子代替製品の投与を指示することができる。
【0150】
血栓塞栓性合併症
血栓塞栓症は、同じ範囲の一部である2つの相互に関係する状態、深部静脈血栓症(DVT)および肺塞栓症(PE)を包含する。疾患の範囲は、臨床上疑われるものから、臨床上重要でないもの、死を生じる大規模な閉塞症までの範囲である。ウィルヒョウの三主徴によると、3つの要因:(1)血液流の機能障害(うっ血)、(2)血管損傷、および(3)血液の変質(凝固性亢進)は、血栓症の発症において重要である。血液の変質はまた、薬物により誘導されることもある。本発明の血液凝固因子代替製品は、前記状態のいずれか1つの処置のため使用することができる。本発明の製品の投与により、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減する。
【0151】
外傷/多発外傷
本発明に関して外傷は、好ましくは、いくつかの(>1)身体領域または臓器系の損傷、特に、少なくとも1つの損傷もしくはいくつかの損傷の組合せが、生命を脅かす場合、特に、外傷重要度スコア(ISS)のスケールで>16である重症度の損傷を有する場合により、特徴付けられる。多発外傷は、定義により、生命を脅かさない、複数の損傷と区別されるべきである。本発明の血液凝固因子代替製品は、好ましくは、前記状態のいずれか1つの処置のため使用することができる。
【0152】
外傷により誘導される凝固障害
失血由来の出血性ショックは、重篤に損傷された患者における死亡率の重大な原因である。生命を脅かす出血の背景にある病態生理は、通常、外傷性損傷と凝固障害の組合せにより引き起こされる。凝固障害の原因は、多因子性であり、相互に関係し;これらは、凝固因子および血小板の消費ならびに希釈、血小板および凝固系の機能障害、増大した線維素溶解、溶液(クリスタロイドおよびコロイド)の点滴による凝固系の破壊、ならびに低カルシウム血症を含む。
【0153】
その上、重篤に損傷された外傷患者において生じる急性の内因性凝固障害は、外傷誘導性凝固障害(TIC)と呼ばれ、失血に関与する血流低下と合わさった組織損傷の創発特性である。TICに関与する機序は、抗凝固、消費、血小板機能障害、および線溶亢進を含む。本発明の血液凝固因子代替製品は、好ましくは、前記状態のいずれか1つの処置のため使用することができる。
【0154】
主要/明らかな出血
任意の種類の出血は、本発明の製品が適当な処置である状態であり得る。出血症状は、American College of Surgeons’ advanced trauma life support(ATLS)(Manning、JE 「Fluid and Blood Resuscitation」 in Emergency Medicine:A Comprehensive Study Guide. JE Tintinalli編、McGraw-Hill:New York 2004年、p227)により、4つのクラスに階級化される。出血は、外傷性損傷、背景にある医学的状態、または組合せのいずれかに起因して生じる。本発明の血液凝固因子代替製品は、好ましくは、前記状態のいずれか1つの処置のため使用することができる。出血または出血症状を特徴付けるための用語主要な、明らかな、重篤なおよび有意なは、本明細書において同義的に使用される。
【0155】
従って、本発明の血液凝固因子代替製品は、好ましくは、後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防および/または凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置または予防において使用することができる。
【0156】
より具体的には、本発明の血液凝固因子代替製品は、好ましくは、外傷;多発外傷;外傷誘導性凝固障害;主要なもしくは明らかなもしくは重篤なもしくは有意な出血;任意の種類の外傷関連凝固障害;周術期出血関連凝固障害;ビタミンK依存性凝固因子の欠乏症;後天性凝固因子妨害、例えば、肝疾患など;血友病B;阻害剤を有する血友病B;経口ビタミンKアンタゴニストまたは直接作用する経口抗凝固薬(DOAC/NOAC)で既に処置され、ビタミンKアンタゴニストまたはDOAC/NOACの抗凝固効果の迅速な反転を必要とする患者;特に、ビタミンK抗凝固外で、ビタミンK依存性凝固因子の欠乏症と関連する、有意な出血、例えば、外傷後の周術期など;およびその組合せからなる群から選択される1つもしくはそれ以上の状態の処置または予防において使用することができる。
【0157】
有効性
本発明の血液凝固因子代替製品は、それが十分な有効性を示すことを特徴とする。製品の有効性は、好ましくは、1:30未満のATIIIと第II因子のモル比を有する参照血液凝固因子代替製品の有効性に匹敵する。好ましくは、「匹敵する」は、この文脈において、有効性は、前記参照製品と同一であるか、もしくはそれより良好であるか、または前記参照製品と比較して中程度にのみ低減することを意味する。1:30未満のATIIIと第II因子のモル比の参照処置または参照製品は、全くATIIIを有さない処置または製品を含む。
【0158】
本発明に関する有効性は、特に、失血量、好ましくは、失血量のある特定の低減により定量するか、または表すことができる。
【0159】
さらなる態様による本発明に関する有効性は、止血までの時間の値、好ましくは、止血までの時間の値のある特定の低減により定量するか、または表すことができる。
【0160】
さらなる態様による本発明に関する有効性は、損傷後の生存率の値により定量するか、または表すことができる。
【0161】
製品での処置後の患者の失血量は、プラセボ処置後または処置なしの失血量と比較して減少し、失血量は、好ましくは、プラセボ処置後の量もしくは処置なしの量の75%未満、70%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満または35%未満に低減する。従って、本発明の製品の有効性は、前記参照と比較して十分であるか、または改善されてさえいる。
【0162】
製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは中程度にのみ増大するか、または製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに減少し、好ましくは、製品での処置後の患者の失血量は、参照処置と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少する。前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。従って、本発明の製品の有効性は、前記参照と比較して十分であるか、または改善されてさえいる。
【0163】
製品での処置後の患者の失血量が参照処置の失血量と比較したときに中程度にのみ増大する場合において、前記中程度の増大は、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。
【0164】
好ましくは、製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、プラセボ処置後または処置なしの止血までの時間の値と比較して減少し、製品での処置後の止血までの前記時間の値は、好ましくは、プラセボ処置後の値もしくは処置なしの値と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%または少なくとも60%減少する。従って、本発明の製品の有効性は、前記参照と比較したとき少なくとも十分であるか、または改善されてさえいる。
【0165】
さらに好ましくは、製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに本質的に同一であるもしくは中程度にのみ増大するか、または製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置と比較したときに減少し、好ましくは、製品での処置後の患者の止血までの時間の値は、参照処置後の値と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%もしくは少なくとも20%減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。従って、本発明の製品の有効性は、前記参照と比較したとき少なくとも十分であるか、または改善されてさえいる。
【0166】
製品での処置後の患者の止血までの時間の値が参照処置と比較したときに中度にのみ増大する場合において、値の前記中程度の増大は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下または10%以下になり、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。
【0167】
本発明の製品での処置後の患者の生存率は、好ましくは、参照処置後の生存率と実質的に同一である。前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。好ましくは、本発明の製品での処置後の患者の生存率は、実質的に100%である。
【0168】
安全性
本発明の血液凝固因子代替製品または本発明による処置方法は、それは、改善された安全性を示すこと、すなわち、血栓塞栓性合併症についての患者のリスクは低減することを特徴とする。
【0169】
本発明の製品または処置の安全性は、参照製品または参照処置の安全性と比較したとき特に改善され、参照製品または参照処置は、ATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記製品または処置と同一である。
【0170】
本発明に関する安全性は、特に、トロンビン生成の値、好ましくは、トロンビン生成のある特定の低減、特に、内因性トロンビン産生能(ETP)の値のある特定の低減により定量するか、または表すことができる。
【0171】
本発明に関する安全性は、特に、D-ダイマー濃度(DD)の値、好ましくは、D-ダイマー濃度のある特定の低減により、定量するか、または表すことができる。
【0172】
本発明に関する安全性は、患者の血液フィブリノゲン濃度の値によりさらに定量するか、または表すことができる。
【0173】
好ましくは、製品での処置後の患者のトロンビン生成の値は、参照処置のトロンビン生成の値と比較したときに少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%もしくは少なくとも50%、特に、製品の投与の約1時間後、約2時間後、および/または約3時間後に低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。トロンビン生成は、特に、内因性トロンビン産生能(ETP)の値により表される。
【0174】
好ましくは、本発明の製品での処置後の患者のD-ダイマー濃度(DD)の値は、参照処置と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも2分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5分の1、少なくとも5.5分の1、少なくとも6分の1、少なくとも6.5分の1、少なくとも7分の1、少なくとも8分の1、少なくとも9分の1もしくは少なくとも10分の1に低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。前記DDの低減は、好ましくは、本発明の製品の投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後および/または約4時間後に達成される。
【0175】
好ましくは、本発明の製品での処置後の患者の血液フィブリノゲン濃度の値は、参照処置後の血液フィブリノゲン濃度と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも7.5倍、または少なくとも10倍に増大し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。本発明の製品での処置後の患者の血液フィブリノゲン濃度の値は、プラセボ処置後または処置なしの血液フィブリノゲン濃度と本質的に同一であることは、さらに好ましい。
【0176】
本発明のさらなる態様によると、本発明の製品での患者の処置に加えて、患者は、クリオプレシピテートのような代替製品または濃縮フィブリノゲンで予め、同時にまたはその後処置され、好ましくは、代替製品または濃縮フィブリノゲンは、体重1kg当たり5mg~体重1kg当たり150mg、体重1kg当たり10mg~体重1kg当たり100mg、好ましくは、体重1kg当たり20mg~体重1kg当たり80mgの範囲のフィブリノゲン量で投与される。
【0177】
さらなる好ましい態様によると、フィブリノゲンとの本発明の製品の同時処置後の患者の生存率は、参照同時処置後の生存率より高い。前記参照同時処置は、前記参照同時処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。好ましくは、フィブリノゲンとの本発明の製品での前記同時処置後の患者の生存率は、実質的に100%である。
【0178】
さらなる好ましい態様によると、フィブリノゲンとの本発明の製品の同時処置後の患者の肺動脈圧は、好ましくは、参照同時処置後の患者の肺動脈圧より低い。前記参照同時処置は、前記参照同時処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。特に、本質的には、フィブリノゲンとの本発明の製品の同時処置後の患者の肺動脈圧の増大は、生じない。
【0179】
さらに好ましい態様によると、製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、参照処置のプロトロンビン時間(PT)の値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも2.0分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも3.0分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4.0分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5.0分の1、少なくとも7分の1、または少なくとも10分の1に減少し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。PTまたはaPTTの前記それぞれの値は、特に、投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後および/または約4時間後に存在する。
【0180】
さらに好ましい態様によると、製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、プラセボ処置後もしくは処置なしのプロトロンビン時間(PT)のそれぞれの値および/もしくは活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)のそれぞれの値と比較したときに本質的に同一であり、および/または前記値の最大偏差を有し、但し、前記最大偏差は、5.0、3.0、2.5、2.0、または1.5倍を超えない。PTまたはaPTTの前記それぞれの値は、特に、投与の約1時間後、約2時間後、約3時間後および/または約4時間後に存在する。
【0181】
さらなる好ましい態様によると、製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、好ましくは、投与の約1時間、約2時間、約3時間および/または約4時間の期間にわたり、本質的に一定のままである。さらなる好ましい態様によると、製品での処置後の患者のプロトロンビン時間(PT)の値および/または活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の値は、好ましくは、投与の約1時間、約2時間、約3時間および/または約4時間の期間にわたり、10倍、8倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2.5倍、2倍、または1.5倍より大きく変動しない。
【0182】
本発明の製品のPTおよびaPTTに関する驚くべき知見は、製品の安全性と有効性の両方、特に、製品の改善された安全性と有効性に関連する。
【0183】
さらなる態様によると、本発明に関する安全性は、血栓塞栓性現象のリスクについての代替マーカーとしての血栓スコアの値、好ましくは、血栓スコアのある特定の低減により定量するか、または表すことができる。好ましくは、代替マーカーとして使用したときの製品での処置後の血栓スコアの値は、参照処置の血栓スコアの値と比較して、少なくとも0.5ポイント、少なくとも1ポイント、少なくとも1.5ポイントまたは2ポイント低減し、前記参照処置は、前記参照処置において使用される製品のATIIIと第II因子のモル比が1:30未満であることを除き、前記処置と同一である。
【0184】
医薬組成物
本発明の凝固因子およびATIIIの組成物の治療製剤、すなわち、本明細書において記載される方法において適当な本発明の製品は、凝固因子ならびに、同時製剤されるなら、所望の程度の純度を有するATIIIを、場合により、当該技術分野において典型的に利用される医薬上許容される担体、賦形剤もしくは安定剤(これらの全ては、本明細書において「担体」として言及される)、すなわち、緩衝化剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、非イオン界面活性剤、酸化防止剤、および他の種々の添加剤と混合することにより、保存のため、凍結乾燥された製剤または水溶液として調製することができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16編(Osol編、1980年)を参照。かかる添加剤は、利用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒性でなければならない。従って、本発明の製品は、特に、凍結乾燥された製品または保存上安定な液体として提供される。前記場合により医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤は、好ましくは、存在し、但し、それらは、動物またはヒトの処置のため、好ましくは、ヒトの処置のための使用が承認されている。
【0185】
緩衝化剤は、生理学的状態に近づく範囲のpHを維持するのを助ける。それらは、約2mM~約50mMの範囲にある濃度で存在し得る。適当な緩衝化剤は、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウムとクエン酸二ナトリウムの混合物、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの混合物、クエン酸とクエン酸一ナトリウムの混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸とコハク酸一ナトリウムの混合物、コハク酸と水酸化ナトリウムの混合物、コハク酸とコハク酸二ナトリウムの混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸と酒石酸ナトリウムの混合物、酒石酸と酒石酸カリウムの混合物、酒石酸と水酸化ナトリウムの混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸とフマル酸一ナトリウムの混合物、フマル酸とフマル酸二ナトリウムの混合物、フマル酸一ナトリウムとフマル酸二ナトリウムの混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸とグルコン酸ナトリウムの混合物、グルコン酸と水酸化ナトリウムの混合物、グルコン酸とグルコン酸カリウムの混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸とシュウ酸ナトリウムの混合物、シュウ酸と水酸化ナトリウムの混合物、シュウ酸とシュウ酸カリムの混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸と乳酸一ナトリウムの混合物、乳酸と水酸化ナトリウムの混合物、乳酸と乳酸カリウムの混合物など)および酢酸緩衝液(例えば、酢酸と酢酸ナトリウムの混合物、酢酸と水酸化ナトリウムの混合物など)のような、有機酸と無機酸の両方ならびにその塩を含む。加えて、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液およびトリスのようなトリメチルアミン塩を使用することができる。
【0186】
保存剤は、微生物の成長を遅らせるために加えることができ、0.2%~1%(w/v)の範囲の量で加えることができる。適当な保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、ならびにアルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシン、シクロヘキサノール、ならびに3-ペンタノールを含む。「安定剤」としてときに知られる等張化剤は、液体組成物の等張性を確実にするために加えることができ、多価糖アルコール、好ましくは、三水素化合物またはより多価の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールを含む。安定剤は、充填剤から、治療剤を溶解するか、または変性もしくは溶液の壁への吸着を防ぐのを助ける添加剤までの機能範囲であり得る、広範なカテゴリーの賦形剤を指す。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上で挙げられる);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなどのようなアミノ酸、イノシトールのようなシクリトールを含む、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロールなどのような有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムのような硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースのようなポリビニルピロリドン単糖類のような親水性ポリマー;ラクトース、マルトース、スクロースのような二糖類、およびラフィノースのような三糖類;ならびにデキストランのような多糖類であり得る。安定剤は、有効なタンパク質の重量の0.1~10,000重量部の範囲内で存在し得る。
【0187】
非イオン界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤を溶解するのを助けるため、ならびに撹拌により誘導される凝集に対して治療タンパク質を保護し、タンパク質の変性を引き起こすことなく、製剤が表面剪断応力に曝露されるのを可能にするために加えることができる。適当な非イオン界面活性剤は、ポリソルベート(20、80など)、ポロクサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)を含む。非イオン界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/mlの範囲、または約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲内で存在し得る。
【0188】
追加の場合による種々の賦形剤は、充填剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、および共溶媒を含む。
【0189】
医薬組成物は、好ましくは、静脈内投与されるために製剤される。
【0190】
本明細書において記載されるプロトロンビン(第II因子)を含む製品との同時投与のためのアンチトロンビンIII(ATIII)を含む医薬製品は、本発明の1つの態様である。別の態様によると、アンチトロンビンIII(ATIII)を含む製品との同時投与のためのプロトロンビン(第II因子)を含む医薬製品は、本明細書で提供される。本発明のさらなる態様は、前記患者に上で記載された血液凝固因子代替製品を投与することによる、(i)後天性凝固因子欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防、または(ii)凝固因子の先天性欠乏症を有する患者の出血の処置もしくは予防方法に関する。特に、本発明の後者の3つの態様の場合には、ATIIIおよび第II因子は、同時使用、別々の使用または連続使用のために準備および/または提供することができる。
【0191】
本発明の意味における「同時使用」は、本明細書において定義される少なくとも単離された凝固因子FIIを含む組成物および単離されたATIIIを含む組成物は、混合され、次に、混合物として患者に投与されることを意味する。
【0192】
本発明の意味における「別々の使用」は、本明細書において記載される少なくとも単離された凝固因子FIIを含む組成物および単離されたATIIIを含む組成物は、同時にまたは次から次へと別々の両方で投与され、それにより、前記投与の並びは関連しないことを意味する。
【0193】
本発明の意味における「連続使用」は、本明細書において記載される少なくとも単離された凝固因子を含む組成物および単離されたATIIIを含む組成物は、別々に投与され、それにより、前記投与の並びは関連せず、両方の投与の間の時間間隔は、2日以内、優先的には、1日以内、より優先的には、4時間以内、最も優先的には、1時間以内であることを意味する。
【0194】
組成物は、典型的には、医薬上許容される担体を含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。この組成物は、任意の適当な形態(それを患者に投与する所望の方法に依存する)であり得る。
【0195】
本発明の組成物の用量の総数および本発明の組成物での処置の長さの決定は、当業者の能力の十分範囲内である。投与されるべき本発明の製品の投薬量は、体重および/または存在する抗凝固もしくは凝固障害の程度に依存する。
【0196】
障害の重篤度の程度を考慮して、本発明の製品または組成物の適当な投薬量を決定することもできる。
【0197】
当業者は、本明細書に記載される発明は、具体的に記載されたもの以外のバリエーションおよび改変を受けやすいことを理解する。本発明は、精神および範囲内にある全てのかかるバリエーションならびに改変を含むことは、理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において個別もしくはまとめて言及されるか、または示される特性、組成物、工程、および化合物の全て、ならびに前記特性、組成物、工程、および化合物のいずれか2つ以上の全ての組合せを含む。
【0198】
本発明のある特定の実施形態は、ここで、次の実施例を参照して記載され、それらは、説明の目的のみを意図し、本明細書において上で記載された一般性の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0199】
実施例-ウサギモデル
血液希釈介在性出血および組織損傷のウサギモデルにおけるPCCの止血有効性
材料および方法
動物
3~4月齢、体重2.8~4.0kgのメスのCHBウサギ(Manfred Bauer、ノイエンシュタインローエ、ドイツ)を、スチールワイヤーのケージ中1ケージ当たり1匹で、21~23℃および50%相対湿度、12時間/12時間の明暗サイクル下に収容した。動物に、水道水を不断で提供し、ウサギ用ペレット(Deukanin(登録商標)、Deutsche Tiernahrung Cremer GmbH & Co. KG、デュッセルドルフ、ドイツ)を与えた。全ての動物は、European Convention on animal Careに従ったケアを受け、研究は組織倫理委員会により承認された。
【0200】
血液希釈
麻酔した動物において、全ての処置を行った。ケタミンとキシラジンの組合せにより、麻酔を誘導し、吸入イソフルラン麻酔を介して維持した。次に、動物を挿管し、換気装置(Heyer Access、Heyer Medical AG、バート・エムス、ドイツ)上に置いた。
【0201】
動物を、頸動脈から30mL/kg血液を抜き、37℃に予め温めた30mL/kgヒドロキシエチルデンプン(HES)200/0.5(Infukoll 6%、Schwarz Pharma AG、マンハイム、ドイツ)を注入することにより段階的な血液希釈の対象にした(
図1)。この手法を45分で繰り返した。血液の抜きとHES注入の2サイクル間の30分の時に、動物は、10分間800×gで遠心分離し、通常の生理食塩水において洗浄し、リンゲル乳酸塩において再懸濁することにより、抜いたウサギ全血から調製し、外頸静脈に投与した、15mL/kgサルベージ出赤血球を受けた。
【0202】
腎損傷
血液希釈の開始の60分後に、標準化腎損傷を、外側の腎臓の極において長さ15mmおよび深さ5mmのメス切開の形で与えた(
図1)。
【0203】
処置
腎切開損傷の直前に、等張生理食塩水(プラセボ)、25IU/kgの用量のPCC(Beriplex(登録商標)/Kcentra(登録商標)、CSL Behring GmbH、マールブルク、ドイツ)、11.5IU/kgの用量のATIII(Kybernin(登録商標)、CSL Behring GmbH、マールブルク、ドイツ)、または25IU/kgPCCプラス11.5もしくは23IU/kgATIIIの併用処置の静脈内投与を受けるよう無作為に動物を割り当てた(
図1)。実験群は、それぞれ、6~7匹のウサギからなっていた。全ての実験において使用したPCCは、別段示していなければ、低レベルATIIIを含み、すなわち、1:30未満のATIIIと第II因子のモル比を示す。参照目的のため本実施例において使用したPCCを、「従来のPCC」、または単に「PCC」とも呼び、1:30未満のATIIIと第II因子のモル比を含む。本発明に従い上昇したレベルのATIII、すなわち、少なくとも1:30のATIIIと第II因子のモル比を、本発明の「改変したPCC」を表す、それぞれ追加の量のATIIIの同時投与により達成する。
【0204】
投与のためPCCのIUで提供する活性レベルは、PCCの名目第IX因子含有量に言及している。活性の1国際単位(IU)は、正常ヒト血漿1mL中のそれぞれの凝固因子のその数量と同等である。本実施例において使用したPCC、従来と改変の両方は、IUで提供した活性レベルに基づき第IX因子含有量と実質的に同一である第II因子含有量を示す。従って、例えば、25IU/kgATIIIとの50IU/kgの従来のPCCの併用処置は、投与した、約1:1のATIIIと第II因子のモル比をもたらす。ここで使用した従来のPCC内で提供した低レベルのATIIIは、改変したPCCにおけるATIIIと第II因子のモル比の計算については無視し得る。
【0205】
本実施例において使用したPCC、従来と改変の両方は、約1IU/mlのヘパリン含有量を示す。
【0206】
エンドポイント
血液希釈、処置、実験上の腎外傷および止血効果の評価についての研究手法を、
図1において説明する(略語:HES、ヒドロキシエチルデンプン;PCC(濃縮プロトロンビン複合体)、ATIII(アンチトロンビンIII))。主要研究エンドポイントは、止血までの時間および標準化腎切開損傷の最大30分後に観察した失血であった(
図1)。止血までの時間を、腎切開から観察可能な出血または浸出の休止までの間隔として定義した。失血は、吸引により切開部位から集めた血液の体積であった。失血および止血までの時間についての30分の観察期間は、切開の直後に開始した。
【0207】
結果
生理食塩水(プラセボ)、PCC、ATIIIまたはPCCとATIIIの組合せでの処置後の血液希釈したウサギにおける標準化腎損傷後のトータルの失血を、
図2において説明する。示したデータは、範囲の中央値を表す。使用した略語は、PCC(濃縮プロトロンビン複合体)およびATIII(アンチトロンビンIII)である。
図2に示す通り、用量25IU/kgのPCCは、中央値94mL(等張生理食塩水処置;プラセボ)から34mLまで、標準化腎損傷後のトータルの失血を低減することができた。PCC(25IU/kg)とATIII(それぞれ、約1:1および約2:1のATIIIと第II因子のモル比に対応する11.5または23IU/kg)の組合せも、それぞれ、中央値55および38mLまでトータルの失血を低減することができた。ATIII(11.5IU/kg)単独は、失血に対する関連する効果を有さなかった。
【0208】
生理食塩水(プラセボ)、PCC、ATIIIまたはPCCとATIIIの組合せでの処置後の血液希釈したウサギにおける標準化腎損傷後の止血までの時間を、
図3において説明する。示したデータは、範囲の中央値を表す。使用した略語は、PCC(濃縮プロトロンビン複合体)およびATIII(アンチトロンビンIII)である。用量25IU/kgのPCCは、標準化腎損傷後の止血を達成までの時間を、最長観察期間30分(等張生理食塩水処置;プラセボ)から10分に低減することができた。PCC(25IU/kg)とATIII(それぞれ、約1:1および約2:1のATIIIと第II因子のモル比に対応する11.5または23IU/kg)の組合せも、それぞれ、中央値16および17分に止血までの時間を低減することができた。ATIII(11.5IU/kg)単独は、止血までの時間に対する関連する効果を有さなかった(
図3)。
【0209】
静脈うっ血のウサギモデル(改変ウェスラーモデル)におけるPCCの血栓形成性に対するATIII同時投与の効果
材料および方法
動物
3~4月齢、体重2.2~3.2kgのメスのニュージーランドホワイト(Manfred Bauer、ノイエンシュタイン ローエ、ドイツ)は、European Convention on animal Careに従ったケアを受け、研究は地方公共団体の権限により承認された。動物を個別に、スチールワイヤーのケージ中、21~23℃および50%相対湿度、12時間/12時間の明暗サイクル下に収容した。動物は、水道水に自由にアクセスし、不断でウサギ用ペレット(Deukanin、Deutsche Tiernahrung Cremer GmbH & Co. KG、デュッセルドルフ、ドイツ)を与えた。全ての動物は、European Convention on animal Careに従ったケアを受け、研究は組織倫理委員会により承認された。
【0210】
処置
7~138IU/kg ATIII(Kybernin(登録商標)、CSL Behring GmbH、マールブルク、ドイツ)と併用した、300IU/kgの用量のPCC(Beriplex(登録商標)/Kcentra(登録商標)、CSL Behring GmbH、マールブルク、ドイツ)の静脈内投与を受けるよう無作為に動物を割り当てた。実験群は、それぞれ、3匹のウサギからなっていた。等張生理食塩水単独(プラセボ)または300IU/kgPCC単独で処置した動物は、対照として働いた。
【0211】
改変ウェスラー試験
深麻酔(ケタミン/キシラジン)下で手法を行った。注入が終わった10分後に、静脈うっ血を誘導した。反対側の頸静脈を曝露し、およそ2cmの区域を単離し、単離した区画において完全なうっ滞を引き起こすことにより、凝血原効果を決定した。うっ滞導入の30分後に、静脈区域を切除し、クエン酸ナトリウム溶液中で解剖した。任意の観察した血栓を、スコアリングシステムに従い0~3まで類別し、それらの湿重量を決定した。0(血餅なし)、1(重量を決定するにはあまりに小さい、1つもしくは少数の小さな血餅)、2(測定可能な重量を有する、完全には閉塞していない血餅)または3(完全に閉塞した血餅)として、血栓スコアを定義した。
【0212】
結果
生理食塩水(プラセボ)、PCCまたはPCCとATIIIの組合せでの処置の存在下でのウサギにおける静脈血栓症後の血栓スコアを、
図4aにおいて説明する。示したデータは、範囲の中央値を表す。使用した略語は、PCC(濃縮プロトロンビン複合体)およびATIII(アンチトロンビンIII)である。
図4aに示す通り、300IU/kgの用量のPCCは、静脈うっ血の30分後に血栓スコア2をもたらし、これを、それぞれ、約1:5、約1:2、および約1:1のATIIIと第II因子のモル比に対応する、28IU/kg、69IU/kg、および138IU/kgの用量のATIIIの同時投与により完全に阻害した。約1:20のATIIIと第II因子のモル比に対応する7IU/kgのATIIIの同時投与は、血栓スコア1~2を有する血栓形成の部分的低減をもたらした。
【0213】
同様に、ATIIIの同時投与により、血栓湿重量を低減した。生理食塩水(プラセボ)、PCCまたはPCCとATIIIの組合せでの処置の存在下でのウサギにおける静脈血栓症後の血栓湿重量を、
図4bにおいて説明する。示したデータは、範囲の中央値を表す。使用した略語は、PCC(濃縮プロトロンビン複合体)およびATIII(アンチトロンビンIII)である。
図4bに示す通り、300IU/kgの用量のPCCは、静脈うっ血の30分後に約18mgの血栓湿重量をもたらし、これを、それぞれ、約1:5、約1:2、および約1:1のATIIIと第II因子のモル比に対応する、28IU/kg、69IU/kg、および138IU/kgの用量のATIIIの同時投与により完全に反転させた。約1:20のATIIIと第II因子のモル比に対応する7IU/kgのATIIIの同時投与は、血栓湿重量の部分的低減をもたらした。
【0214】
実施例-ブタモデル
材料および方法
動物および手術準備
実験動物ケアの原理に基づくドイツ立法に従い、本研究を行った。適切な政府動物ケアから、公的な許可を得て、オフィスを使用した。疾患フリーの飼育室からのドイツ国のレース用ブタを、順応させるため少なくとも5日間、換気した部屋に入れた。それらを手術前一晩絶食にし、不断で水を与えた。
【0215】
開始薬物療法:アザペロン(4mg/kg)、およびアトロピン(0.1mg/kg)を、筋肉内注射により投与した。これに続き、18Gのカニューレを介して右耳静脈への静脈内注射により投与したプロポフォール(3mg/kg)で麻酔した。一回換気量8mL/kgで1分当たり20~22回の呼吸の圧制御モードにおいて動物を換気して、外傷まで0.21の酸素分画を有する36~40mmHgのpaCO2を維持した(カート、Draeger、リューベック、ドイツ)。呼気終末濃度1.2~1.4%のイソフルランおよびフェンタニールの持続静注(2μg/kg/時)で、麻酔を維持した。
【0216】
開始液体治療は、クリスタロイド溶液(2mL/kg/時)を含むものであった。標準的な麻酔モニター(AS/3、Datex Ohmeda、ヘルシンキ、フィンランド)を使用して、血液の温度;動脈、中心静脈および肺動脈圧;尾のパルス酸素測定および心電図検査を定期的にモニターした。
【0217】
体積代替のため、右および左頸静脈に2本の8.5Frのカテーテルを外科的に挿入し、右の8.5Frのカテーテルを通して、肺動脈カテーテルを閉塞位置に置いた。右総頚動脈中の18Gのカテーテルを通じて、血行動態の可変性を記録した。動脈ラインから、全血試料を抜いた。
【0218】
損傷および血液希釈
1度目の損傷フェーズは、1.)両側性遮断大腿骨骨折、2.)一側性胸部挫傷を含み、両方を捕獲ボルトガンで誘導し、100mL/分の速度で、動物の推定血液体積の約60%(体重1kg当たり65ml)を3回、制御して抜いた。必要に応じて、クリスタロイドを注入して、平均動脈圧(MAP)を30mmHgより上で維持した。およそ20分間の出血性ショックフェーズの後、体積喪失をクリスタロイド注入により埋め合わせ、呼気酸素分画を1.0に増大させた。標準化鈍的肝臓により、2度目の損傷フェーズを誘導した。2度目の損傷フェーズの後、第2のショック期間を、止血介入の投与の直前まで続けた(10分)。
【0219】
処置
2番目の外傷の10分後に、シールした封筒を用いて1:1:1:1フォーマットのコンピュータが作製したリストを使用して、次の処置群:
1.群1:対照(プラセボ)
2.群2:50IU/kgPCC
3.群3:50IU/kgPCCプラス50IU/kgアンチトロンビン(PCC+AT50群)
4.群4:50IU/kgPCCプラス25IU/kgアンチトロンビン(PCC+AT25群)
5.群5:50IU/kgPCCプラス12.5IU/kgアンチトロンビン(PCC+AT12.5群)
6.群6:50IU/kgPCCプラス80mg/kgフィブリノゲン(PCC+Fib群)
7.群7:50IU/kgPCCプラス80mg/kgフィブリノゲンプラス50IU/kgアンチトロンビン(PCC+Fib+AT50群)
の1つに将来を見越して動物を無作為化した。
【0220】
従って、次のATIIIと第II因子のモル比を試験し:従来のPCC単独を投与したので、群2(50IU/kgPCC)において、ATIIIと第II因子のモル比は、1:30未満であった。群2(50IU/kgPCC)を、本明細書において以下で、PCC単独治療としても言及する。群3(PCC+AT50群)、群4(PCC+AT25群)および群5(PCC+AT12.5群)において、ATIIIと第II因子のモル比は、それぞれ、約1:0.5、約1:1および約1:2であった。群6(PCC+Fib群)において、ATIIIと第II因子のモル比は、1:30未満であった。群7(PCC+Fib+AT50群)において、ATIIIと第II因子のモル比は約1:0.5であった。ATIII、ATおよびアンチトロンビンを同義的に使用する。
【0221】
PCCの代替のため、4因子PCC(Beriplex(登録商標)PN、CSL Behring、ドイツ)およびアンチトロンビン(Kybernin(登録商標)CSL Behring、ドイツ)を使用した。観察期間を2度目の損傷の240分後に終えた。この期間全体で生存していた動物を、ペントバルビタールで安楽死させた。死亡直後、腹部を再開腹し、肝臓の頭側の大動脈をクランプし、腹腔内の血液を集めて、損傷後のトータルの失血を決定した。死後、いくつかの臓器を取り出し、組織学的調査のため準備した。
【0222】
実験室解析
2度目の損傷フェーズの後いくつかの時間ポイントで、血液を集め、動脈血ガス解析を行った。損傷後240分より前に死亡した動物については、死亡直後に、最後の評価を行った。血液ガス分析機器(ABL825、Radiometer GmbH、ヴィリッヒ、ドイツ)で、pHならびに酸素および二酸化炭素分圧、過剰塩基および乳酸塩を測定した。標準的血液学分析機器(MEK-6108、Nihon Kohden、東京、日本)を使用して、血小板カウントおよびヘモグロビン濃度を評価した。金属球凝固計(MC 4 plus、Merlin Medical、レムゴー、ドイツ)上のDade Behring(Dade Behring、マールブルク、ドイツ)の適当な試験を使用する標準的な実験室方法により、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびフィブリノゲン濃度を決定した。Dade Behring (Dade Behring、マールブルク、ドイツ)の適当な試験で、D-ダイマーを評価した。
【0223】
トロンボエラストメトリーおよびトロンビン生成
Calibrated Automated Thrombogram(CAT、Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)を使用して、血漿中のパラメーター内因性トロンビン生成能(ETP)を含むトロンビン生成を測定した(Spronk HMら、Thromb Haemost.2008年;100:362~364頁)。蛍光発生基質20μLおよびトリガー試薬20μLを含む血漿試料80μLにおいて、評価を行った。トリガー試薬は、4μMリン脂質を含む1pM組織因子であった。固定量の標準物質(Thrombin Calibrator、Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)を含む同じ血漿において得た蛍光曲線に対して、それぞれのトロンビン生成分析を標準化した。Ascent Reader(Thermolabsystems OY、ヘルシンキ、フィンランド)を使用して、蛍光を測定し、Thrombinoscopeバージョン4ソフトウエア(Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)を使用して、トロンビン生成曲線を計算した。
【0224】
病理調査
死後、内器(心臓、肺、肝臓、および腎臓)を直ちに取り出し、10%緩衝ホルマリンにおいて固定した。肝臓の損傷部分を、厚さ3mmの切片に切り出し、治療について盲検で病理学者により巨視および顕微鏡で調べて、損傷の程度を評価した。加えて、全4つの臓器の代表的な組織切片を処理して、血栓塞栓性現象の発生を決定した。全試料をパラフィン包埋し、光学顕微鏡下での組織調査のため、H&Eと標準的エラスチカワンギーソンプロトコールの両方により、染色した。両方の染色方法を、全ての組織由来の切片に適用した。
【0225】
組織調査により、本明細書に記載した追加のATIII投与の有益な効果を確認した(データは示していない)。
【0226】
エンドポイント
本研究の主要研究エンドポイントは、損傷後のトータルの失血の低減(有効性)および止血介入の安全性であった。2番目のエンドポイントは、凝固パラメーターに対する影響を含むものであった。
【0227】
結果
図5において、2番目の肝損傷後のトータルの失血を説明する。PCCとATIIIの組合せは、対照群および単独治療PCC50処置群と比較して失血を低減した。
【0228】
図5に示す通り、研究の主要エンドポイントである2番目の損傷フェーズ後のトータルの失血は、単独治療PCC50群(907±132mL)においてより、PCCプラスアンチトロンビン群(PCC+AT50群653±42mL;PCC+AT25群552±31mL;PCC+AT12.5群548±68mL)において少なかった。PCC+Fib群におけるトータルの失血(719±115mL)は、PCC+Fib+AT50群(613±34mL)においてより多かった。トータルの失血は、対照群において最大であった(1671±409mL;全ての群に対しP<0.001)。
【0229】
図6において、生存のデータをカプラン・マイヤー曲線として示す。PCC単独治療およびPCCプラスアンチトロンビン群における全ての動物は、全観察期間で生存し(100%)、一方、対照群の7つのうち2つ(29%)において(平均生存時間210分)、2番目の外傷後、動物は死亡した(
図6)。
【0230】
図6において示すデータによると、PCC+Fib群において7匹の動物のうち5匹の動物(71%)は、早期に死亡し(平均生存時間160分)、一方、全てのPCC+Fib+AT50処置群は、生存した(100%)。PCC+Fib群以外の動物の早期死亡は、肺動脈高血圧の増大に起因した(2番目の外傷の120分後の時間ポイントで26±7mmHg)。
図7において、平均肺動脈圧(MPAP、(平均±標準偏差)のデータを示す。PCC+Fib+AT50群(例えば、2番目の外傷の120分後の時間ポイントで16±1mmHg;
図7)において、肺動脈圧における増大を観察しなかった。
【0231】
図8において、経時的アンチトロンビン濃度(平均±標準偏差)を説明する。外傷および出血性ショックの後、全ての動物におけるアンチトロンビンは、48±9%に減少した。群割り付けによると、アンチトロンビンの代替は、アンチトロンビン濃度において用量依存性の増大をもたらした(2番目の外傷の30分後:PCC+AT50群145±12%;PCC+AT25群94±10%;PCC+AT12.5群70±5%;PCC+Fib+AT50136±17%)(
図8)。これらの動物におけるアンチトロンビンレベルは、経時的に上昇したままであった。アンチトロンビンで処置していない動物において、アンチトロンビンは、2番目の外傷の30分後に41±8%のレベル、および2番目の外傷の240分後に37±11%のレベルのままであった。
【0232】
図9において、経時的フィブリノゲン濃度(平均±標準偏差)を示す。外傷および出血性ショックの後、全ての動物におけるフィブリノゲン濃度は、60±9mg/dLに減少した。群割り付けによると、フィブリノゲンの代替は、フィブリノゲン濃度において用量依存性の増大をもたらした(PCC+Fib群198±16mg/dL;PCC+Fib+AT50群202±15mg/dL)(
図9)。PCC+Fib+AT50におけるフィブリノゲン濃度は、経時的に安定したままであった。PCC50で処置した動物において、フィブリノゲンの濃度は、4±8mg/dLに経時的に減少し、PCC+Fibで処置した動物において、フィブリノゲンの濃度は、重篤なDICに起因して2度目の損傷の240分後に、114±42mg/dLに経時的に減少した。フィブリノゲンのこの消費は、D-ダイマーにおける有意な増大と関連した。
図10において、経時的D-ダイマー濃度(平均±標準偏差)を示す。PCC注入直後に、D-ダイマーは、PCC50およびPCC+Fib群において増大し、これらのレベルは、観察期間を通じて増大し続けた(2度目の損傷の240分後、PCC50群249±176mg/L;PCC+Fib群193±180mg/L)。ATで代替した群において、D-ダイマーは、ずっと低い程度に増大した(2番目の外傷の240分後:PCC+AT50群27±20mg/L;PCC+AT25群10±7mg/L;PCC+AT12.5群14±7mg/L;PCC+Fib+AT50群68±79mg/L)。
【0233】
図11は、経時的トロンビン生成に関するデータを説明する(平均±標準偏差)。トロンビン生成は、PCCを受けた全ての動物においてPCC投与の直後に増大した(PCC50群1448±569nM×分;PCC50+Fib群1601±972nM×分)。PCC+Fib+AT50(645±286nM×分)およびPCCプラスアンチトロンビン群(PCC+AT50群769±84nM×分;PCC+AT25群1084±123nM×分;PCC+AT12.5群1266±126nM×分)の動物におけるアンチトロンビンの追加は、より低いレベルのトロンビン生成をもたらした。これらの動物におけるトロンビン生成は、対照(例えば、2番目の外傷の30分後:275±25nM×分)におけるものより高かった。トロンビン生成は、観察期間中、PCC代替動物において経時的に徐々に低下したが、トロンビン生成は、2番目の外傷の240分後にベースラインより高いままであった。
【0234】
図12は、経時的プロトロンビン時間(PT)に関するデータを説明する(平均±標準偏差)。2番目の損傷後、PTは、失血に起因して、9.6±0.8秒から12.3±2.0秒に経時的に延長した。PCC 50を受け取った動物は、2度目の損傷の60分後に有意に延長し、240分後に最長149±87秒まで延長した。全ての他の介入群におけるPTは、経時的に安定なままであった。同様に、aPTTを測定して、知見を得た。
【0235】
図13は、経時的活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に関するデータを説明する(平均±標準偏差)。