(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】中子および型を製造するための成分系
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20230215BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B22C1/22 B
C08G18/54
(21)【出願番号】P 2019534156
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 DE2017101104
(87)【国際公開番号】W WO2018113852
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】102016125702.8
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリーベ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】デテルス,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】レンツェン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ドールシェル,マルクス
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/017476(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269902(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107073559(CN,A)
【文献】国際公開第2016/038156(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/165916(WO,A1)
【文献】特表2011-510818(JP,A)
【文献】特開2001-011149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-3/02
C08G 18/00-18/87
C08G 71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ベンジルエーテル型フェノール樹脂および溶媒を含有する、ポリオール成分、
- 1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有する1種または複数のイソシアネート化合物からなる、イソシアネート成分、
を少なくとも有する成形材料混合物を硬化させるための成分系であって、前記ポリオール成分と前記イソシアネート成分とは互いに空間的に離れており、
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂が、モノマー成分として少なくとも1種のフェノールを有し、前記フェノールは、脂肪族炭化水素基で置換されており、炭化水素原子数11~26で0~4個の二重結合を有する前記脂肪族炭化水素基で芳香環が置換されており、該フェノール樹脂中の該炭化水素基で置換された前記フェノールの部分が、0.5~20重量%であり、
前記ポリオール成分が、少なくとも95重量%の非極性溶媒を含む溶媒を含有し、
前記非極性溶媒が、炭化水素、アルキル/アルコキシシラン、アルキル/アルコキシシロキサン、およびこれらの混合物から選択され、
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂が、前記溶媒に溶解する、成分系。
【請求項2】
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂の-CH
2-OH基の最大で25モル%が、C
1~C
12炭化水素基
でエステル化されている、請求項1に記載の成分系。
【請求項3】
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂の-CH
2
-OH基の最大で25モル%が、C
1
~C
4
炭化水素基でエステル化されている、請求項1に記載の成分系。
【請求項4】
前記溶媒が、前記ポリオール成分に対して、10~70重量%
の量で使用される、請求項1
~3のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項5】
前記溶媒が、前記ポリオール成分に対して、41~50重量%の量で使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項6】
該フェノール樹脂が、2.5重量%未満
の遊離フェノールを含有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項7】
該フェノール樹脂が、2重量%未満の遊離フェノールを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項8】
前記ポリオール成分が、遊離サリゲニンも含有し、遊離フェノールと前記遊離サリゲニンの重量比が、1:1超である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項9】
前記非極性溶媒が、アルキルベンゼン
である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項10】
前記非極性溶媒が、トリメチルベンゼンおよびプロピルベンゼンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項11】
前記非極性溶媒が、C
6~C
22アルカンである、請求項1~
10のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項12】
前記アルキル/アルコキシシランが、オルトケイ酸テトラエチルまたはオルトケイ酸テトラプロピル、これらのオリゴマー、およびこれらの混合物である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項13】
前記非極性溶媒が、35未満のE
T(30)値を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項14】
前記溶媒が、共溶媒として、ジカルボン酸のジエステル
を含有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項15】
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂が、モノマー成分として、フェノールおよびクレゾールを含有し、該フェノール樹脂に組み込まれた前記クレゾールのモル占有率が、該フェノール樹脂に組み込まれた前記フェノールのモル占有率以下である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項16】
前記ポリオール成分が、
a)1.5重量%未満
の水を含有する、
請求項1~
15のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項17】
前記ポリオール成分が、
a)0.8重量%未満の水を含有する、
請求項1~16のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項18】
前記ポリオール成分が、
a)2重量%未満
の脂肪族アルコールを含有するか、あるいは
b)アルキル/アルコキシシラン、アルキル/アルコキシシロキサン、またはこれらの混合物が使用される場合、1.5重量%未満
の脂肪族アルコールを含有する、
請求項1~
17のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項19】
前記ポリオール成分が、
a)1.0重量%未満の脂肪族アルコールを含有するか、あるいは
b)アルキル/アルコキシシラン、アルキル/アルコキシシロキサン、またはこれらの混合物が使用される場合、0.8重量%未満の脂肪族アルコールを含有する、
請求項1~18のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項20】
該フェノール樹脂が、DIN 5567-1に従って測定して、600~1200g/モル
の平均分子量(Mw)を有する請求項1~13のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項21】
該フェノール樹脂が、DIN 5567-1に従って測定して、600~1,000g/モルの平均分子量(Mw)を有する請求項1~20のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項22】
空間的に離れた別の成分として、耐熱性の成形ベース材料をさらに含有する、請求項1~
21のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項23】
前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマー成分として、
a)前記脂肪族炭化水素基が、0~3個の二重結合を有すること、
b)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマーとして、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂中に、0.5~15重量%
、組み込まれていること、
c)前記脂肪族炭化水素基が、前記フェノールのモノマー成分の、メタ位またはパラ位
で結合していること、
d)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、カルドールおよび/またはカルダノールであること
のうちの1つまたは複数の特徴によってさらに特徴付けられる、請求項1~
22のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項24】
前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマー成分として、
b)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマーとして、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂中に、2~12重量%、組み込まれていること、
c)前記脂肪族炭化水素基が、前記フェノールのモノマー成分の、メタ位で結合していること、
のうちの1つまたは複数の特徴によってさらに特徴付けられる、請求項1~23のいずれか一項に記載の成分系。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載
の成分
系と、耐熱性の成形ベース材料
とを
含む、成形材料混合物。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載
の成分
系および耐熱性の成形ベース材料を組み合わせること、ならびにPU非焼成法およびPUコールドボックス法に従って硬化させることによる、型、中子またはライザーを製造するための方法。
【請求項27】
イソシアネートバインダーの要素としてのポリオール成分の使用であって、前記ポリオール成分が、ベンジルエーテル型フェノール樹脂および溶媒を含有し、
- イソシアネート成分が、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有する1種または複数のイソシアネート化合物からなり、
該フェノール樹脂が、モノマー成分として少なくとも1種の炭化水素置換フェノールを有し、該フェノールは、炭化水素原子数11~26で0~4個の二重結合を有する脂肪族炭化水素基で芳香環が置換されており、前記フェノール樹脂中の該炭化水素基で置換された前記フェノールの部分が、0.5~20重量%であり、
前記ポリオール成分が、少なくとも95重量%の非極性溶媒を含む溶媒を含有し、前記非極性溶媒が、炭化水素、アルキル/アルコキシシラン、アルキル/アルコキシシロキサン、およびこれらの混合物から選択され、
前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂が、前記溶媒に溶解する、使用。
【請求項28】
前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマー成分として、
a)前記脂肪族炭化水素基が、0~3個の二重結合を有すること、
b)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマーとして、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂中に、0.5~15重量
%まで、組み込まれていること、
c)前記脂肪族炭化水素基が、前記フェノールのモノマー成分の、メタ位またはパラ位
で結合していること、
d)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、カルドールおよび/またはカルダノールであること、
のうちの1つまたは複数の特徴によってさらに特徴付けられる、請求項
27に記載の使用。
【請求項29】
前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマー成分として、
b)前記脂肪族炭化水素基で置換された前記フェノールが、モノマーとして、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂中に、0.5~15重量%、好ましくは2~12重量%まで、組み込まれていること、
c)前記脂肪族炭化水素基が、前記フェノールのモノマー成分の、メタ位で結合していること、
のうちの1つまたは複数の特徴によってさらに特徴付けられる、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂およびポリウレタンのためのコールドボックス法(PUCB法)ならびに/またはフェノール樹脂およびポリウレタンのための非焼成法(PUNB法)における使用のための、ベンジルエーテル型フェノール樹脂および非極性溶媒を含有するイソシアネートに基づくバインダーを製造するための成分系に関する。また、本発明は、バインダーおよび成形ベース材料を含有する成形混合物、ならびに金属鋳造のための成分系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PUCBプロセスおよび/またはPUNBプロセスによる中子および型の製造は、鋳造業界において大きな重要性をもたらしている。ここで、2成分ポリウレタン系が、耐熱性の成形ベース材料を結合させるために使用される。ポリオール成分は、1分子あたり少なくとも2個のOH基を有するポリオールで構成され、イソシアネート成分は、1分子あたり少なくとも2個のNCO基を有するイソシアネートで構成される。ポリオール成分の中でも、フェノールホルムアルデヒド樹脂が使用される。簡潔には成形材料混合物とも称する、成形ベース材料およびバインダーの混合物の硬化は、PUCBプロセスでは、成形後にガス状の形態またはエアロゾルとして成形材料混合物を通過する、低沸点の第3級アミンの助けにより行われる(US3409579を参照)。通常、これは空気、窒素またはCO2などのキャリアガスの補助で行われ、その中に少なくとも1種の第3級アミンが投入される。PUNBプロセスでは、触媒としての液体の第3級アミンおよび/または金属化合物が、成形材料混合物に添加される。
【0003】
成形材料混合物におけるバインダーに芳香族炭化水素材料を使用して、金属鋳造用の型および中子を製造することは、すでに日常的な行為であり、非極性の他の溶媒の使用は、すでに提案されている。ケイ酸エステルおよび/またはケイ酸誘導体は、この文脈において、重要な役割を担う。
【0004】
EP1057554B1は、コールドボックスバインダー系において、溶媒としてケイ酸テトラアルキルの使用を記載している。ベンジルエーテル樹脂のより詳細な説明は、エステル化されたメチロール基についてではなく、炭素原子数1~8のアルキル基を有するアルキルフェノールについてのみである。有利には、ケイ酸アルキル、ケイ酸アルキルオリゴマーまたはこれらの混合物の量は、フェノール樹脂成分の1~40重量%の範囲内である。二塩基性エステル、より詳細には規定されていないC4~C6ジカルボン酸メチルエステルの混合物などの、特に極性を増加させる溶媒である、共溶媒が好ましくは添加される。濃度の限定および好ましい共溶媒は、より高濃度のケイ酸アルキルでの不十分な溶解性を示すものである。これは、EP1057554B1における実施例によって説明されており、実施例によれば、これらは、フェノール樹脂成分中に常に少なくとも5重量部の二塩基性エステルを有する。使用されるC4~C6ジカルボン酸は、より詳細には規定されていない。
【0005】
WO2009/130335A2は、ケイ酸アルキルで再エステル化されたベンジルエーテル樹脂を記載しており、これは、ベンジルエーテル樹脂中への無機ポリマー単位の組み込みを目的としている。この場合においても同様に、モル質量が非常に高い場合に、共溶媒の添加が必要であり得る。実施例から、この発明によるレゾール樹脂は、ケイ酸テトラエチルに完全に溶解していると認められる。
【0006】
DE102015201614A1は、コールドボックスバインダーにおけるケイ酸アルキルの使用の別の実施形態を記載しており、このコールドボックスバインダーは、遊離のおよび/または(C1~C4アルコールで)エステル化されたメチロール基を有するフェノール性レゾール、ならびにケイ酸アルキルおよび/またはケイ酸アルキルオリゴマー、およびC4~C6ジカルボン酸エステルのジアルキルエステルの群からの少なくとも1種の化合物からなる。C4~C6ジカルボン酸のジメチルエステルが好ましい。使用されるC4~C6ジカルボン酸は、より詳細には規定されていない。非エステル化ベンジルエーテル樹脂が好ましい。
【0007】
DE102004057671B4は、メチロール基が、C1~C10アルコール、特に好ましくはn-ブチルでエステル化されているベンジルエーテル樹脂を記載している。同時に、構造式は、炭素原子数1~10のアルキル基を有するアルキルフェノールの使用を開示している。実験例2、4、5および9を除き、純粋なケイ酸テトラエチルへの溶解性についての言及はない。エステル化ベンジルエーテル樹脂の量が75~90重量%の間であることは注目に値する。
【0008】
EP1137500B1は、エステル化ベンジルエーテル樹脂を記載している。これを達成するために、25モル%のC1~C8アルコールが、ヒドロキシメタン基(-CH2-OH)でエステル化される。アルキルフェノールは、別途、特許請求の範囲には記載されておらず、この特許の一般記載中に、最高でC26鎖まで言及している。非極性溶媒は、特許請求の範囲および実施例において言及されていない。
【0009】
DE102006037288A1は、カルダノールで変性されたPUCBバインダーを記載している。モノマーの濃度は、カルダノールの添加によって減少する。ケイ酸エステルおよびケイ酸オリゴマーは、溶媒として言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、非極性溶媒に完全に溶解し、したがって、共溶媒なし、またはわずかな量の共溶媒のみで均一に溶解する、ベンジルエーテル型フェノール樹脂を提供することである。これは、公知の通りジカルボン酸エステルなどの共溶媒は、鋳造プロセスの間に、例えばメタクリレートと反応することによってさらなる放出をもたらし得るので、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立項の主題によって解決することができる。有利な発展形は、従属項の主題であるか、または下記に記載する。
【0012】
したがって、本発明の対象は、ベンジルエーテル型フェノール樹脂に基づくポリオール成分における、ある種の非極性溶媒、および場合により共溶媒の使用である。成分系の他の部分は、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネートを有するイソシアネート成分である。
【0013】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂は、モノマー成分として、脂肪族炭化水素基で置換されたフェノールを有し、前記フェノールは、炭素原子数11~26、好ましくは炭素原子数12~18で、0~4個の二重結合、好ましくは0~3個の二重結合を有する脂肪族炭化水素基で芳香環が置換されており、フェノール樹脂中の置換フェノールの炭化水素基の部分が、0.5~20重量%である。炭化水素基は、好ましくはメタ位またはパラ位に、特にメタ位に位置する。ベンジルエーテル型フェノール樹脂中の、炭化水素置換フェノール基、特にカルダノールおよび/またはカルドールの部分は、0.5~20重量%の間、好ましくは0.5~15重量%の間、とりわけ好ましくは2~12重量%の間である。
【0014】
ポリオール成分は、室温でベンジルエーテル型フェノール樹脂を溶解することができる溶媒を含有する。少なくとも95重量%の溶媒が非極性溶媒であり、非極性溶媒は、定義により、炭化水素、アルキル/アルコキシシラン、アルキル/アルコキシシロキサンおよびこれらの混合物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂は、例えば、以下の一般構造を有し、モノマー単位は、統計学的に結合する。
【0016】
下記に示す構造式は、可能な結合の種類の例のみを表す。例において示す排他的なo,o’結合は、実際には、o,p’またはp,p’を含む、任意の種類であり得る。しかしながら、o,o’の変形が好ましい(o=オルト、p=パラ)。
【0017】
【0018】
x=0~20、特に1~10
y=0~20、特に2~10
z=0~100、特に1~5、特に好ましくは1
ここで、x+y+zの平均は>2
R=-H、ヒドロカルビル、
常にxおよびyは独立している。
A=-H、ヒドロカルビル、-O-ヒドロカルビル、-OH、ならびに
B=-H、ヒドロカルビル、-O-ヒドロカルビル、-OH
ここで、Aおよび/またはBは、少なくとも1つのAまたは少なくとも1つのBについて、ヒドロカルビルである。
【0019】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂を得るために、好ましくは、フェノール化合物のモル数に対して、少なくとも等しいモル数のアルデヒド化合物が使用される。好ましくは、アルデヒド化合物とフェノール化合物のモル比は、1.05:1.0~2.5:1、特に好ましくは1.1:1~2.2:1、とりわけ好ましくは1.2:1~2.0:1である。
【0020】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂の製造は、専門家に公知の方法に従って行われる。その際、フェノール化合物およびアルデヒド化合物は、二価金属イオンの存在中、好ましくは130℃未満の温度で、変換される。形成される水は、留去される。加えて、トルエンまたはキシレンなどの適切な添加溶剤を反応混合物に添加することができ、または蒸留は減圧で行われる。
【0021】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂を製造するための適切な触媒は、Mn、Zn、Cd、Mg、Co、Ni、Fe、Pb、CaおよびBaなどの金属の二価イオンの塩、特にZn塩である。酢酸亜鉛が好ましく使用される。使用される量は重要ではない。金属触媒の典型的な量は、フェノール化合物およびアルデヒド化合物の総量に対して、0.02~0.3重量%、好ましくは0.02~0.19重量%である。
【0022】
このような樹脂は、例えば、US3485797およびEP1137500B1に記載されており、この開示は、ベンジルエーテル型フェノール樹脂それ自体およびその製造の両方に関して、本明細書によって明示的に参照される。
【0023】
驚くべきことに、1つの実施形態によれば、ベンジルエーテル型フェノール樹脂が重合鎖中に統計学的分布で以下の結合の複数を含有する場合に、ベンジルエーテル型フェノール樹脂の溶解性がもたらされることを見出した:
a)R-CH2-O-R1
b)R-CH2-R2
c)R-CH2-O-CH2-R2
d)R2-CH2-R2
e)R2-CH2-O-CH2-R2
f)R2-CH2-O-R1
一方、好ましくは、
g)遊離のSi-O-Si、および
h)遊離のC-O-Si結合。
【0024】
式中、
Rは、メチレン基またはメチレンエーテル基によって別のフェノール基と少なくとも結合している、単結合(末端基として)または二重結合(鎖の両端で結合する)のフェノール基を表す。
R1は、末端基として、C1~C18、好ましくは、1~C12、とりわけ好ましくはC1~C9の、飽和もしくは不飽和の、および/または直鎖状もしくは分枝状の炭素鎖を表す。
R2は、互いに独立して、フェノールのヒドロキシル基に隣接して(フェノールのヒドロキシル基に対して)オルト位および/またはパラ位および/またはメタ位に位置する、1個または2個のC11~C26炭素鎖、特にC12~C18炭素鎖を有する、結合していないか、またはメチレン基もしくはメチレンエーテル基によって別のフェノール環と結合している、単結合または二重結合の置換フェノール基を表す。メタ位が好ましい。炭素鎖は、互いに独立した、飽和もしくは不飽和の、および/または分枝状もしくは直鎖状の鎖であり得る。炭素鎖あたりに含有されていてもよい二重結合の数は、限定されず、1~4の間であり得る。完全に飽和のアルキル鎖をそれぞれ有する、カルダノールおよび/またはカルドールおよび/またはアルキル水和カルダノールおよび/またはアルキル水和カルドールが、特に好ましい。別の実施形態において、場合によりさらに未結合であるカルダノールおよび/またはカルドールは、ベンジルエーテル樹脂構造中に組み込まれることなく、フェノール樹脂成分中に存在し得る。また、1個または2個のヒドロキシル基を加えることもできる。
【0025】
好ましくは、ベンジルエーテル型フェノール樹脂中で、-CH2-OH基の最大で25モル%が、特にC1~C12、特にC1~C4炭化水素基でエステル化される。
【0026】
ベンジルエーテル型フェノール樹脂中の、炭化水素置換フェノール基R2、特にカルダノールおよび/またはカルドールの部分は、0.5~20重量%の間、好ましくは0.5~15重量%の間、とりわけ好ましくは0.5~12重量%の間である。R2は、典型的には、カルダノールまたはカルドールである。
【0027】
適切なフェノール基Rの例は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,4,5-トリメチルフェノール、3-エチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、p-ブチルフェノール、3,5-ジブチルフェノール、p-アミルフェノール、シクロヘキシルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、ジノニルフェノール、3,5-ジシクロヘキシルフェノール、p-クロチルフェノール、p-フェニルフェノール、3,5-ジメトキシフェノールおよびp-フェノキシフェノールである。
【0028】
好ましい多価フェノール残基/R基は、2~4個のフェノール性ヒドロキシル基を有する。適切な多価フェノールの具体例は、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4,5-ジメチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノールまたは5-エチルレゾルシノールである。一価および多価の、ならびに/または置換された、ならびに/または縮合した、異なるフェノール成分からなる混合物も、ベンジルエーテル樹脂を製造するために使用することができる。
【0029】
ホルムアルデヒドに加えて、以下の式の追加のアルデヒドもフェノールホルムアルデヒド樹脂成分を製造するためのさらなるアルデヒドとして適切である:
R-CHO
(式中、Rは、好ましくは炭素原子数2~8、特に好ましくは炭素原子数1~3の炭素原子部分である)。具体例は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フルフリルアルデヒドおよびベンズアルデヒドである。特に好ましくは、ホルムアルデヒドが、その水性の形態で、パラホルムアルデヒドまたはトリオキシドとしてのいずれかで使用される。
【0030】
非極性溶媒として使用される本発明の化合物は、以下の構造を有する:
a)アルキル/アルコキシシラン(n=0)またはアルキル/アルコキシシロキサン(n>1)、特に、ケイ酸エステルおよび/またはケイ酸エステルオリゴマー
【0031】
【0032】
n=0~20
R=nと独立して、かつ別のRと独立して、C1~C6ヒドロカルビル、-O-ヒドロカルビル(C1~C6)
【0033】
ならびに/あるいは
b)炭化水素、特にアルキル/アルケニルベンゼン。ベンゼンから出発して、C1~C30、好ましくはC1~C20、とりわけ好ましくはC1~C16の鎖長を有するアルキル基および/またはアルケニル基は、互いに独立して、芳香環上で置換される。互いに独立して、1~6個のベンゼン環の水素は、アルキル基および/またはアルケニル基で置換され得、好ましくは1~4個、特に1~3個の環の水素が、置換される。これとは独立して、アルキル鎖またはアルケニル鎖は、直鎖状または分枝状であり得る。
【0034】
互いが一緒になった非極性溶媒の混合物も可能である。
【0035】
適切なアルキル/アルコキシシランまたはアルキル/アルコキシシロキサンは、例えば、1、2または3個のアルコール基が置換または無置換の炭化水素基で置き換えられた、オルトケイ酸のエステルである、式R1
nSi(OR)4-n(式中、n=1、2または3であり、それぞれのR基は、その他のRと独立して、有機基を意味し、好ましくは、第1の特徴と共に対応して定義される、分枝または非分枝のC1~C30アルキルまたはアリールを意味する)の化合物である。
【0036】
この場合におけるR1は、置換または無置換で分枝または非分枝の炭化水素基であり、R1基は、n=2または3である場合、同じであるか、または異なる。好ましくは、R1基は、置換もしくは無置換で分枝もしくは非分枝のC1~C30アルキル、または置換もしくは無置換のアリールであり、特に好ましくは、置換もしくは無置換で分枝もしくは非分枝のC1~C6アルキル、または置換もしくは無置換のC6~C10アリールである。無置換で分枝もしくは非分枝のC1~C6アルキルまたは無置換フェニルが最も好ましい。この文脈において、メチル、エチルおよびプロピルも特に好ましい。
【0037】
好ましくは、変性エステルは、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシラン、モノアリールトリアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシランおよびトリアリールモノアルコキシシランからなる群から選択され、ここで、アルキル基またはアルコキシ基は、好ましくは、C1~C6アルキル基である。変性エステルは、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシル-トリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエチルジメトキシシランおよびジエチルジエトキシシランからなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラプロピル、これらの混合物、およびこれらのオリゴマーまたはオリゴマーのそれぞれの混合物が、特に好ましい。
【0039】
オルトケイ酸テトラエチル、およびオルトケイ酸テトラプロピル、またはそれぞれのこれらの混合物がとりわけ好ましい。
【0040】
別の実施形態において、ベンジルエーテル型フェノール樹脂への共溶媒の添加が溶解性を改善することを見出した。したがって、より高い割合のケイ酸エステルを有する均一な溶液を形成することが可能である。有利な共溶媒は、例えば、ジカルボン酸のジエステルである。
【0041】
好ましくは、ベンジルエーテル型フェノール樹脂(ベンジルエーテル樹脂+溶媒)は、1.5重量%未満の水、特に好ましくは1.0重量%未満の水、とりわけ好ましくは0.8重量%未満の水を含有する。
【0042】
好ましくは、ベンジルエーテル型フェノール樹脂(ベンジルエーテル樹脂+溶媒)は、2.0重量%未満の脂肪族アルコール、特に好ましくは1.5重量%未満の脂肪族アルコール、好ましくは1.0重量%未満のC1~C18の脂肪族アルコールを含有する。
【0043】
好ましい実施形態において、ケイ酸エステルおよび/またはケイ酸エステルオリゴマーが溶媒として使用される場合、ベンジルエーテル型フェノール樹脂(ベンジルエーテル樹脂+溶媒)は、1.5重量%未満の脂肪族アルコール、特に好ましくは1.0重量%未満の脂肪族アルコール、とりわけ好ましくは0.8重量%未満の脂肪族アルコールを含有する。
【0044】
好ましくは、溶媒は、ポリオール成分に対して、10~70重量%、特に好ましくは26~55重量%、とりわけ好ましくは41~50重量%の量で使用される。
【0045】
本発明の共溶媒が使用される場合、ポリオール成分に対して、好ましくは0.5~9.6重量%、特に好ましくは1~7.9重量%、とりわけ好ましくは1~4.9重量%使用される。
【0046】
バインダー系のイソシアネート成分は、好ましくは1分子あたり平均で2~5個のイソシアネート基を有する、脂肪族、環式脂肪族または芳香族の単量体イソシアネートまたは高分子量イソシアネートを含む。所望の性質に応じて、イソシアネートの混合物を使用することもできる。
【0047】
適切なイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびこれらのジメチル誘導体などの脂環式イソシアネートを含む。適切な芳香族イソシアネートの例は、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびこれらのメチル誘導体、ならびにポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。好ましいイソシアネートは、芳香族イソシアネート、とりわけ好ましくは、工業用の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、すなわち、異性体占有率およびより高いホモログを有する4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどのポリフェニルポリイソシアネートである。
【0048】
イソシアネートは、これらのイソシアネート基の一部が誘導体化されてビウレット基、アロファネート基、ウレチジオン基またはカルボジイミド基を形成するように、二価のイソシアネートを互いに反応させることによって、誘導体化することもできる。例えば、MDIまたはTDIなどの二量化生成物が有するウレチジオン基は、興味深い。しかしながら、好ましくは、このような誘導体化イソシアネートは、上記の非誘導体化イソシアネートに追加する成分としてのみ使用される。
【0049】
好ましくは、イソシアネートは、イソシアネート基の数が、樹脂の遊離ヒドロキシル基の数に対して80~120%であるような量で使用される。
【0050】
バインダー系のイソシアネート成分は、好ましくは、有機溶媒または有機溶媒の組み合わせ中の溶液として使用される。したがって、溶媒は、例えば、十分に低粘性の状態でバインダーの成分を保持するために必要であり得る。これは、とりわけ、耐熱性の成形材料の均一な架橋を得るため、およびその自由流動特性を維持するために、必要である。
【0051】
本発明により引用したものなどの非極性溶媒、もしくは極性溶媒、またはこれらの混合物のいずれかが、イソシアネート成分の一部としての溶媒として、使用される。溶媒の種類は、本発明によっては限定されない。
【0052】
前述の成分に加えて、バインダー系は、シラン(例えば、EP1137500B1による)、脂肪アルコールなどの内部離型剤(例えば、US4,602,069による)、乾性油(例えば、US4,268,425による)、錯化剤(例えば、US5,447,968による)、シリコーン界面活性剤などの流動改善剤、および加工時間を延長するための添加物(例えば、US4,540,724による)、またはこれらの混合物などの追加の添加物を含有することができる。
【0053】
また、本発明は、ベンジルエーテル型フェノール樹脂、耐熱性の成形ベース材料およびイソシアネートに基づくバインダー、ならびに場合により触媒を含有する、成形材料混合物、ならびに硬化後に成形材料混合物から製造される中子、型およびライザーに関する。金属鋳造、特に鉄およびアルミニウムの鋳造のための中子、型およびライザーの使用も本発明の主題である。
【0054】
従来の材料および公知の材料ならびにこれらの混合物を、鋳造型を製造するための耐熱性の成形ベース材料(以下、略して成形ベース材料とも称する)として使用することができる。ケイ砂、ジルコニウム砂、クロム鉱石砂、かんらん石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、およびいわゆる人工成形ベース材料、すなわち工業的な成形プロセスによって球状またはほぼ球状(楕円状など)形にされた成形ベース材料。この例は、ガラスパール、ガラス状顆粒、または人工の球状セラミック砂、いわゆるCerabeads(登録商標)、およびSpherichrome(登録商標)、SpherOX(登録商標)または「Carboaccucast」、ならびにフライアッシュの成分として他のものから分離することができる中空マイクロスフェア、例えばケイ酸アルミニウム中空球(マイクロスフェア)である。前述の耐熱性材料の混合物も可能である。
【0055】
耐熱性の成形ベース材料に対して50重量%超のケイ砂を含有する成形ベース材料が特に好ましい。耐熱性の成形ベース材料は、高融点(溶融温度)を有するものであると理解される。好ましくは、耐熱性の成形ベース材料の融点は、600℃超、好ましくは900℃超、特に好ましくは1200℃超、とりわけ好ましくは1500℃超である。
【0056】
耐熱性の成形ベース材料は、好ましくは、成形材料混合物の80重量%超、特に90重量%超、特に好ましくは95重量%超を構成する。
【0057】
耐熱性の成形ベース材料の平均直径は、一般に、100μm~600μmの間、好ましくは120μm~500μmの間、特に好ましくは150μm~500μmの間である。粒子径は、例えば、DIN ISO 3310に従って篩を通過させることによって、決定することができる。最大縦方向伸長と最小縦方向伸長(互いに直角に、かつすべての空間方向に対する)が1:1~1:5、または1:1~1:3の粒子形状、すなわち例えば繊維状ではないものが、特に好ましい。
【0058】
耐熱性の成形ベース材料は、特に、従来の中子シューターにおいて本発明による成形材料混合物の加工を可能にするために、好ましくは自由流動の状態にある。
【0059】
適切な触媒は第3級アミンである。PUCBプロセスのために、トリメチルアミン(「TMA」、CAS RN 75-50-3)、ジメチルエチルアミン(「DMEA」、CAS 75-64-9)、ジメチルイソプロピルアミン(「DMIPA」、CAS 996-35-0)、ジメチルプロピルアミン(「DMPA」、CAS RN 926-63-6)およびトリエチルアミン(「TEA」、CAS RN 121-44-8)などの揮発性の第3級アミンが使用される。液体の第3級アミンがPUNBプロセスのために使用される。これは、室温(25℃)で液体である第3級アミン、および、例えば40℃に加熱した後に液体になるもの、または適切な溶媒に溶解するものが挙げられる。例は、トリス(3-ジメチルアミノ)プロピルアミン、イソキノリン、フェニルピリジンなどのアリールピリジン、ピリジン、アクリジン、2-メトキシピリジン、ピリダジン、3-クロロピリジン、キノリン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、4,4'-ジピリジン、4-フェニルプロピルピリジン、1-メチルベンズイミダゾールおよび1,4-チアジンである。
【0060】
また、本発明は、
(a)耐熱性の成形ベース材料を、耐熱性の成形ベース材料の量に対して、合わせて0.2~15重量%、好ましくは0.3~14重量%、特に好ましくは0.4~12重量%の量の本発明によるバインダー(少なくともベンジルエーテル型フェノール樹脂と溶媒およびイソシアネート)、および同時に添加されるか(PUNBプロセスにおいて)または後で別に添加される(PUCBプロセスにおいて)触媒と混合して、成形材料混合物を得ること、
(b)金型に、工程(a)で得られた成形材料混合物を入れること、
(c)場合により、別に後で添加される触媒を添加し(PUCB)、本発明による触媒を使用して、金型で成形材料混合物を硬化させて、中子または鋳造型を得ること、ならびに
(d)次いで、中子または鋳造型を金型から分離すること、および該当する場合、さらに硬化させること
を含む成形材料混合物を製造するための方法に関する。
【0061】
成形材料混合物を製造するために、最初に、バインダー系の成分を混ぜ合わせ、次いで、耐熱性の成形ベース材料に添加することができる。しかしながら、バインダーの成分を、同時に、または任意の順序で次々に、耐熱性の成形ベース材料に添加することも可能である。
【0062】
成形材料混合物の成分の均一な混合を達成するために、従来の方法を使用することができる。成形材料混合物はまた、おそらく、酸化鉄、粉砕された亜麻線維、おがくず顆粒、ピッチおよび耐熱性金属などの他の従来の成分を含有していてもよい。
【0063】
本発明によれば、硬化は、PUCBプロセスに従って、またはPUNBプロセスに従って、達成することができる。PUCBプロセスの場合において、硬化のために、ガスの形態またはエアロゾルとして低沸点の第3級アミンを、不活性キャリアガスによって、成形された成形材料混合物に通過させる。別の触媒の添加は省略される。すべての公知のコールドボックスアミン触媒を使用することができる。PUNBプロセスの場合において、アミンまたは金属触媒を、バインダー系にすでに溶解、または別の成分として耐熱性材料に添加することができ、添加量は、耐熱性材料中のバインダーの総量に対して、およそ0.1重量%~およそ5重量%である。
【0064】
この方法により製造される成形体は、鋳造において用いられる任意の従来の形を有することができる。好ましい実施形態において、成形体は、鋳造の型、中子またはライザーの形状である。これらは、非常に高い機械的安定性によって識別される。
【0065】
また、本発明は、金属鋳造、特に鉄およびアルミニウムの鋳造のためのこの成形体の使用に関する。
【0066】
本発明を、本発明を限定するものではない、好ましい実施形態またはそれぞれの実験例を参照して、より詳細に下記に説明する。
【0067】
実験例
使用成分
イソシアネート成分:80%のLupranat M 20 Sおよび20%のDynasylan Aの均一な混合物
CATALYST706 - ジメチルプロピルアミン、ASK-Chemicals GmbHにより供給
ケイ砂 H 32 - Quarzwerke GmbHにより供給
Lupranat M 20 S:高分子量ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、官能性2.6、BASF SEにより供給
DBE - C4~C6ジカルボン酸のジメチルエステル混合物、Dupontにより供給
Dynasilan A - オルトケイ酸テトラエチルモノマー、Evonik Industriesにより供給、遊離エタノール含有量<0.5%
Solvesso 100 - 軽質ソルベントナフサ、EXXON Mobileにより供給
GLYMOシラン - (3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、Evonik Industriesにより供給
フェノール99% - Sigma Aldrichにより供給
パラホルムアルデヒド91~93%、INEOS Paraformにより供給
酢酸亜鉛二水和物 - Sigma Aldrichにより供給
n-ブタノール - Sigma Aldrichにより供給
Palmer 1500-1、およそ95%のカルダノールおよびおよそ5%のカルドールの混合物、Palmer Internationalにより供給
【0068】
すべての百分率は、重量%である。
【0069】
ベンジルエーテル樹脂の合成(ベンジルエーテル型フェノール樹脂)
ベンジルエーテル、EP1057554A1に従って製造される例1(比較)
1540gのフェノール(99%)、704gのパラホルムアルデヒド(91%)および0.44gの酢酸亜鉛二水和物を、撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた反応容器に添加した。撹拌しながら、温度を60分かけて105℃に均一に上昇させ、1.550の屈折率(20℃)に達するまで維持した。次いで、冷却器を常圧蒸留に切り替え、温度を1時間かけて125~126℃に上昇させた。蒸留を、1.593の屈折率(20℃)に達するまで、この温度で継続した。次いで、真空を適用し、蒸留を、1.612の屈折率(20℃)まで、減圧で継続した。収率はおよそ82%であった。ガスクロマトグラフィーで決定した遊離フェノールの量は10.5重量%であり、ガスクロマトグラフィーによって決定したサリゲニン(2-ヒドロキシベンジルアルコール)の量は8.4重量%であった。
【0070】
ベンジルアルコールエーテル樹脂、DE102004057671B4の例示的な実施形態2の樹脂Aに従って製造される例2(比較)
234gのフェノール(99%)、107gのパラホルムアルデヒド(91%)および0.295gの酢酸亜鉛二水和物を、撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた反応容器に添加した。撹拌しながら、温度を、90分かけて110℃に均一に上昇させ、110℃で45分間維持した。次いで、蒸留を開始し、温度を60分かけて126℃に上昇させた。蒸留を、1.590~1.592の屈折率(20℃)に達するまで、継続した。次いで、蒸留を、1.613~1.615の屈折率(20℃)まで、真空下(<30mbar)で継続した。
【0071】
その後、温度を100℃に下げ、得られたベンジルエーテル樹脂12重量部あたり9重量部のn-ブタノールを添加した。30分かけて、ベンジルエーテル樹脂組成物を還流温度にし、還流下で4時間維持した。生じた反応水を、n-ブタノールで満たされた分離器で連続除去し、ここで、低水相を、反応混合物に戻して供給した。温度を119℃から127℃まで上昇させた。120℃で、過剰のn-ブタノールを真空中(<30mbar)で留去した。
【0072】
ベンジルアルコールエーテル樹脂、DE102006037288A1の例示的な実施形態2による例3
698.4gのフェノール(99%)、302.6gのパラホルムアルデヒド(91%)および0.35gの酢酸亜鉛二水和物を、撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた反応容器に添加した。撹拌しながら、温度を60分かけて105~115℃に均一に上昇させ、1.5590の屈折率(25℃)に達するまで維持した。次いで、50gのPalmer 1500-1を添加し、冷却器を常圧蒸留に切り替え、温度を1時間かけて124~126℃に上昇させた。蒸留を、1.5940の屈折率(25℃)に達するまで、この温度で継続した。次いで、真空を適用し、蒸留を、約1.600の屈折率(25℃)まで、減圧で継続した。ガスクロマトグラフィーで決定した遊離フェノールの量は12.5重量%であり、サリゲニンの量は9.5重量%であった。
【0073】
ベンジルエーテル樹脂、例4
698.4gのフェノール(99%)、302.6gのパラホルムアルデヒド(91%)および0.35gの酢酸亜鉛二水和物を、撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた反応容器に添加した。撹拌しながら、温度を60分かけて105~115℃に均一に上昇させ、1.5590の屈折率(25℃)に達するまで維持した。次いで、50gのPalmer 1500-1を添加し、冷却器を常圧蒸留に切り替え、温度を1時間かけて124~126℃に上昇させた。蒸留を、1.5940の屈折率(25℃)に達するまで、この温度で継続した。次いで、真空を適用し、蒸留を、約1.600の屈折率(25℃)まで、減圧で継続した。次いで、得られた樹脂90重量部あたり10重量部のn-ブタノールを添加し、122~124℃の温度を還流下で60分間維持した。次いで、未反応のブタノールを真空下除去した。樹脂は、約1.5970の屈折率(25℃)を有していた。ガスクロマトグラフィーで決定した遊離フェノールの量は10.3重量%であり、サリゲニンの量は8.2重量%であった。
【0074】
粘度の測定
粘度を、100RPMおよび25℃でスピンドルNo.21の「小サンプル」法により、ブルックフィールド回転粘度計を使用して決定した。
【0075】
フェノールおよびサリゲニン含有量の測定
フェノールおよびサリゲニン含有量を下記に記載のガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0076】
方法の説明:
較正:内部標準法、決定される物質あたり7点の較正
内部標準:2,4,6-トリメチルフェノールp.A.
標準物質:フェノールp.A.およびサリゲニン(o-ヒドロキシベンジルアルコール)p.A.
ガスクロマトグラフ:FID、キャピラリーカラム、オートサンプラーおよびAgilent ChemStationを備えたAgilent 7890Plus
装置パラメーター:
吸気系:スプリット/スプリットレス注入器、2分後にスプリット50:1(79.9ml/分)、ランタイム20ml/分、温度:280℃
キャリアガス:水素5.0、流速1ml/分、一定流量法
キャピラリーカラム:HP-5MS、HP 19091S-105、長さ50m、直径0.2mm、フィルム0.33μm
温度プログラム:1.5分まで60℃、140℃まで4.0℃/分、ゼロ分間維持、次いで325℃まで20℃/分、325℃で6分間維持
検出器:FID、温度:320℃、可燃性ガス:20ml/分で水素5.0、350ml/分で合成空気5.0、メイクアップガス:25ml/分で窒素5.0
オートサンプラー:10μlのGCシリンジ、1μL投入、高速注入モード
定量化:Agilent Chemstation、標準設定、内部標準法、結果は重量パーセントで表示した
【0077】
低温下での安定性の決定
24時間、溶液(A1~B9)を-18℃で凍結し、再び室温に達した後、均一性を、サンプル容器を撹拌または振とうせずに目視でチェックした。
【0078】
溶媒の極性の経験的パラメーターET(30)値
負のソルバトクロミックのピリジニウム-N-フェノレートベタイン染料のET(30)を使用して、溶媒混合物の極性を、VIS/NIR吸収帯(25℃および1bar)の最長波を測定することによって決定した。ここで、高ET(30)値は、高い溶媒の極性に相当する。値は、以下の文献中に見ることができる。
【0079】
C.Reichardt、Chem.Rev.、1994年、94巻、2319~2358頁
C.Reichardt、G.Schafer、Liebigs Ann.、1995年、1579~1582頁
R.Eberhardt、S.Lobbecke、B.Neidhart、C.Reichardt、Liebigs Ann./Recueil、1997年、1195~1199頁
C.Reichardt、Green Chem.、2005年、7巻、339~351頁
V.G.Machado、R.I.Stock、C.Reichardt、Chem.Rev.、2014年、114巻、10429~10475頁
【0080】
溶解性の決定
ベンジルエーテル樹脂の合成(例1~4)について終了値(終了基準)に達した直後、熱ベンジルエーテル樹脂を、機械的エネルギー(撹拌および/または振とう)の付加の下、表1および2における物質の室温で測定した溶媒または溶媒混合物に添加した。混合物を脱気した後、溶解性を評価した。
【0081】
強度(N/cm2)の決定
ケイ砂H32と0.60%の前述のバインダー組成物(例A1~B6個々に)および0.60%のイソシアネート成分とから構成される砂混合物を、Hobartミキサー中で2分間均一に混合した。この砂混合物をRoeper H1中子シューターに移し、220mm×22.4mm×22.4mmの寸法(l×w×h)を有する2つの中子を、それぞれ、圧縮空気によって型内に4barのシューティング圧でシュートした。砂をCATALYST706(0.5ml、2barのフラッシング圧で10秒のガス処理時間)で硬化させた。硬化後、中子を取り出し、強度を、15秒後、30秒後、室温で24時間保管後、および相対湿度98%の密閉室において室温で24時間保管後(24時間98%RH)に、Multiserw曲げ装置を使用して決定した。
【0082】
【0083】
他に指示がなければ、結果は重量%である。
n.m.=測定不能
表1は比較として使用したベンジルエーテル樹脂混合物およびそれらの溶解性を示す。
【0084】
【0085】
他に指示がなければ、結果は重量%である。
表2は本発明によるベンジルエーテル樹脂混合物およびそれらの溶解性を示す。
【0086】
【0087】
表3は本発明によるベンジルエーテル樹脂混合物およびそれらの溶解性を示す。
【0088】
【0089】
n.m.=測定不能
表4は比較の強度を示す。
【0090】
【0091】
表5は本発明による成形材料混合物の強度を示す。
【0092】
表の結果から、例3および4における本発明によるベンジルエーテル樹脂混合物B1~B6からもたらされるベンジルエーテル樹脂は、オルトケイ酸テトラエチルおよびSolvesso100に完全に溶解することが分かる。これはまた、低粘度および改善された低温下での安定性によって、他の例において説明される。粘度を当量の残留フェノールで考える場合(フェノールも粘度を低下させるため;例A1、A6、B1;およびA3、A7、B3)、より低い粘度の樹脂溶液は、例3および4のベンジルエーテル樹脂による樹脂を用いても得られる。
【0093】
ベンジルエーテル樹脂2はまた、非極性溶媒に好適な溶解性を示すが、即時強度は満足できない。
【0094】
例B3とB5およびB4とB6を考えると、カルダノール/カルドールの添加が、バインダーの耐湿性を改善し、砂中子の可塑性の改善を助けることも認められる。