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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230215BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230215BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230215BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20230215BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230215BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61K8/891
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/29
A61Q1/00
A61Q1/08
A61Q1/02
A61Q1/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019554195
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2018041644
(87)【国際公開番号】W WO2019098134
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017222316
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 郁
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131887(JP,A)
【文献】特開2007-210903(JP,A)
【文献】特開2014-166965(JP,A)
【文献】特開2016-047812(JP,A)
【文献】特開2015-168636(JP,A)
【文献】特開2014-028785(JP,A)
【文献】特開2014-028786(JP,A)
【文献】特開2015-147752(JP,A)
【文献】特開2014-172880(JP,A)
【文献】特開2015-180614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)平均粒子径(D50)が0.01μm以上0.15μm以下である微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%
を含有する固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)が、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上含むものである請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合が、(C)/(A)=0.6~15である請求項1又は2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
さらに、成分(D)として、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
さらに、成分(E)として、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
さらに、成分(F)として、前記成分(A)より大きい粒径の金属酸化物を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項7】
さらに、成分(G)として窒化ホウ素を2~7質量%含有する請求項1~6のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項8】
前記成分(C)中にフェニル変性シリコーンを含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項9】
全油剤中の前記成分(C)の含有質量割合が、成分(C)/全配合油剤=0.3~1.0である請求項1~8のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項10】
前記成分(C)の含有量が、6.1~30質量%である請求項1~9のいずれか一項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項11】
次の成分(A)~(C);
(A)平均粒子径(D50)が0.01μm以上0.15μm以下である微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%
を化粧料基材として、前記(A)~(C)と溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、持ち運びの利便性、使用性の簡便さから、ファンデーション、白粉、アイカラー、チークカラー、アイブロウ等のメークアップ化粧料、ボディパウダー、美白パウダー等の基礎化粧料に広く用いられている。また近年では、紫外線防御能向上や白膜感がなく透明感のある仕上がりするために、微粒子金属酸化物を用いる技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固形粉末化粧料の製造方法としては、粉体と油剤等を混合したのちプレス成型する乾式成型方法と、粉体と油剤等からなる化粧料基材に溶剤を加えてスラリー状とし、容器に充填した後、溶剤を除去して化粧料を得る湿式成型方法がよく知られている。湿式成型方法で得られる固形粉末化粧料は、流動性のあるスラリー状態で充填するため、様々な形状の容器に充填可能であり、審美性の高い化粧料を得ることができる。一方、湿式成型方法は、充填成型性が問題となることがあり、種々の検討がなされてきた。例えば、充填成型性を向上させるために、皮膜形成高分子を用いる技術(例えば、特許文献2参照)や、球状ポリオレフィン樹脂粉末と不揮発性油剤を用いる技術(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-168642号公報
【文献】特開2001-72536号公報
【文献】特開2006-169207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外線防御能や透明感に優れた化粧料を得るために、特許文献1の技術を用いて、固形粉末化粧料を製造すると、微粒子金属酸化物の凝集力の強さに起因するきしみ感が出てしまい、さらに成型物表面のなめらかさも得ることができなかった。
【0006】
また、微粒子金属酸化物を含有する固形粉末化粧料を湿式成型法により製造する場合、その表面積の大きさに起因する溶剤の除去効率の低下が起きてしまい、成型物の収縮が起きる場合があった。これは、特許文献1の技術を用いた場合でも、微粒子金属酸化物に起因するきしみ感、成型物の収縮は抑えられず、さらに成型物の表面で高分子が皮膜をつくることにより、満足のいく成型物表面のなめらかさが得られない場合があった。同じく、特許文献2の技術を用いた場合でも、微粒子金属酸化物に起因するきしみ感、成型物の収縮は抑えられず、耐衝撃性にも劣る場合があった。
【0007】
従って、本発明は、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、微粒子金属酸化物(好適には平均粒子径0.01~0.1μmの金属酸化物)を含有する化粧料において、4~30質量%のシリコーン油を含有させることで、炭化水素やエステル油等を含有させた場合と比較して、透明感に優れ、成型物表面のなめらかさに優れながらも、充填成型時の溶剤の除去効率が改善し、乾燥後の成型物の収縮を抑えることができることを見出した。さらに、本発明者は、固形粉末化粧料において、微粒子金属酸化物及びシリコーン油を含有させるだけでは、固形粉末化粧料に求められるきしみ感のなさ及び耐衝撃性が十分ではないことを明らかにした。
【0009】
そこで、さらに、本発明者は、鋭意研究を行った結果、カチオン基を有するアミノ変性シリコーン処理紛体を含有させることで、微粒子金属酸化物のきしみ感を低減し、さらにはシリコーン油を前記特定量含有することによる耐衝撃性低下を改善することを見出した。
このようなことから、本発明者は、(A)微粒子金属酸化物、(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び(C)特定量のシリコーン油を用いることで、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性にも優れた固形粉末化粧料を得られることを見出した。これにより、本発明者は、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C);
(A)微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%
を含有する固形粉末化粧料を提供するものである。
【0011】
前記成分(A)が、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。
さらに、前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合が、(C)/(A)=0.6~15であってもよい。
さらに、成分(D)として、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を含有してもよい。
さらに、成分(E)として、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)を含有してもよい。
さらに、成分(F)として、前記成分(A)より大きい粒径の金属酸化物を含有してもよい。
さらに、成分(G)として、窒化ホウ素を2~7質量%含有してもよい。
前記成分(C)中にフェニル変性シリコーンを含有してもよい。
全油剤中の前記成分(C)の質量割合が、成分(C)/全配合油剤=0.3~1.0であってもよい。
【0012】
また、本発明は、次の成分(A)~(C);
(A)微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%
を化粧料基材として、前記(A)~(C)と溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料を提供することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料を提供するものである。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0015】
<1.固形粉末化粧料>
本発明は、次の成分(A)~(C);(A)微粒子金属酸化物、(B)アミノ変性シリコーン処理粉体、(C)シリコーン油 4~30質量%を含有する固形粉末化粧料を提供するものである。従来の固形粉末化粧料は、粒子径のより小さい微粒子の金属酸化物を含有させることで透明感が得やすい固形粉末化粧料を得ることができるが、微粒子ゆえの凝集性が生じやすく耐衝撃性に弱かった。しかし、前記(A)~(C)を少なくとも併用することで、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料を提供することができる。
さらに、前記(A)~(C)を少なくとも併用することで、この点でまた、本発明は、前記成分(A)~(C)を含有する化粧料基材と溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料又は固形粉末化粧料の製造方法を提供することも可能である。本発明であれば、湿式成形法であっても良好に固形粉末化粧料を得ることができる。
【0016】
<1-1.成分(A)微粒子金属酸化物>
本発明に用いられる成分(A)の微粒子金属酸化物は、化粧料に使用可能な微粒子の金属酸化物であれば、特に限定されず、その粒子形状(球状、針状、板状、不定形等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)等を問わず、何れのものも使用することができる。当該金属酸化物として、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及び酸化鉄等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合せて用いることができる。これら微粒子金属酸化物の中でも、紫外線防御能と毛穴やシワなどのカバー力に優れるという観点から、酸化亜鉛、及び酸化チタンを1種又は2種以上組み合せて用いることがより好ましく、酸化亜鉛及び/又は酸化チタンがさらに好ましい。
これらの微粒子金属酸化物は、アルミニウムの酸化物及び/又は水酸化物や、ケイ素の酸化物及び/又は水酸化物で表面処理されていてもよい。または、これらの金属酸化物は、フッ素化合物、シリコーン化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあってもよい。特に限定されないが、なめらかな使用感に優れるという観点から、本発明は、シリコーン化合物を用いて表面処理を施したものを用いることがより好ましい。
【0017】
本発明における「平均粒子径」とは、画像解析装置(ルーゼックスIIIU又はこの後継機種ルーゼックスAP、ニレコ社製)による測定により求めた値(メジアン径D50)である。
【0018】
本発明に用いられる成分(A)の金属酸化物は微粒子金属酸化物であり、この平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、その限値として、好ましくは0.15μm以下であり、より好ましくは0.13μm以下であり、さらに好ましくは0.10μm以下であり、その限値として、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.015μm以上である。そして、当該数値範囲として、好適には0.01~0.1μmであり、透明感や紫外線防御能、分散性により優れる等の観点から、0.01~0.15μmであることがより好ましく、0.01~0.10μmであることがさらに好ましく、0.01~0.08μmであることがより好ましく、0.02~0.04μmであることが特に好ましい。平均粒子径が0.01μm未満の場合は、凝集力が強くきしみ感が強いため、なめらかな使用感が得られない場合があり、平均粒子径が0.15μmより大きいと満足のいく透明感が得られない場合がある。
【0019】
成分(A)の市販品として、例えば、微粒子酸化亜鉛として、FINEX-50(堺化学工業社製)、XZ-100F(堺化学工業社製)、ZnOX-350(住友大阪セメント社製)、酸化亜鉛FZO-50(石原産業社製)、微粒子酸化亜鉛MZ-500、MZ-300、MZ-200、MZ-150(テイカ社製)、微粒子酸化チタンとして、MT-700B、MT-500シリーズ(例えば、SMT-500SAS、MT-500SA)(テイカ社製)、TTO-55(A)(石原産業社製)、ST-605EC、ST-405EC(チタン工業)、STR-100A(堺化学工業社製)等が挙げられるが、これらに成分(A)は限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。また、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
〔成分(A)の含有量〕
本発明に用いられる成分(A)の含有量は、特に限定されないが、紫外線防御能と毛穴やシワ等の自然なカバー力がありながら、膜白さのない透明感の付与により優れる等の観点から、化粧料全量中に、その下限値として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、その上限値として20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であり、当該範囲として0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがより更に好ましい。
【0021】
〔成分(A)微粒子酸化物における微粒子酸化亜鉛及び/又は微粒子酸化チタン〕
前記成分(A)微粒子酸化物のうち、より好適には微粒子酸化亜鉛及び/又は微粒子酸化チタンであり、本発明の効果を損なわない範囲内で他の微粒子金属を含んでもよい。透明感、紫外線防御能及び分散性の観点から、微粒子酸化亜鉛は、平均粒子径(D50)0.01~0.10μm(より好適には0.02~0.04μm)が好ましく、また、微粒子酸化チタンは、平均粒子径(D50)0.02~0.04μmが好ましい。
また、成分(A)微粒子酸化物全量中における微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛の含有量は、特に限定されず、主成分であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%、よりさらに好ましくは95質量%以上である。実質的に微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛のみからなる微粒子金属酸化物でもよい。当該微粒子酸化チタン及び/又は微粒子酸化亜鉛は表面処理を施していても良い。なお、本明細書において「実質的に」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分が含まれていてもよいことをいう。
【0022】
<1-2.成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体>
本発明に用いられる成分(B)のアミノ変性シリコーン処理粉体は、粉体の表面の一部又は全体をアミノ変性シリコーンで処理したものであり、その粒子形状(球状、針状、板状、不定形等)等を問わず、何れのものも使用することができる。
【0023】
本発明に用いられる成分(B)のアミノ変性シリコーン処理粉体に用いる「アミノ変性シリコーン」は、アミノ基又はアンモニウム基を有しているシリコーン化合物であることが望ましく、その性状(液状、固形状等)、架橋構造の有無等を問わず、何れのものも使用することができる。当該アミノ変性シリコーンのうち、架橋構造を有さないアミノ変性シリコーン及び/又は架橋構造を有するアミノ変性シリコーンを用いることが好ましい。これらの中でも、特に限定されないが、耐衝撃性により優れる等の観点から、架橋構造を有するアミノ変性シリコーンを用いることが特に好ましい。
【0024】
〔架橋構造を有さないアミノ変性シリコーン〕
本発明に用いられる架橋構造を有さないアミノ変性シリコーンとして、特に限定されないが、例えば、以下の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
〔式(1)中、Rは、水酸基、水素原子又はRを示し、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、XはR、-Q-NH(CHNH-OR又は水酸基を示し、Qは炭素数1~8の二価炭化水素基を示す。nは1~5の数を示す。p及びqはその和が数平均で2以上2000未満であることが好ましく、より好ましくは20以上2000未満、更に好ましくは30以上1000未満となる数を示す。〕
【0027】
上記アミノ変性シリコーンのアミノ当量は、好ましくは200g/mol~3万g/mol、更に好ましくは500g/mol~1万g/mol、更に好ましくは600g/mol~5000g/molである。
【0028】
ここで、アミノ当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味している。表記単位のg/molはアミノ基又はアンモニウム基1mol当たりに換算した値である。従って、アミノ当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
【0029】
上記アミノ変性シリコーンは、特に限定されないが、粉体が均一に被覆され、化粧膜の均一性が得られるという観点から、100~3000mm/s(25℃)の範囲の動粘度を有するものであることがより好ましい。これは、エマルションの形で使用してもよい。このアミノ変性シリコーンのエマルションは、例えば、アミノ変性シリコーンと溶媒を高剪断で機械混合したものや、アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化したもの、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0030】
また、上記アミノ変性シリコーンの好適な市販品の具体例(動粘度(25℃))としては、例えば、SF8451C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,動粘度600mm/s,アミノ当量1700g/mol)、SF8452C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,動粘度700mm/s,アミノ当量6400g/mol)、SF8457C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,動粘度1200mm/s,アミノ当量1800g/mol)、KF8003(信越化学工業社製,動粘度1850mm/s,アミノ当量2000g/mol)、KF8004(信越化学工業社製,動粘度800mm/s,アミノ当量1500g/mol)、KF867S(信越化学工業社製,動粘度1300mm/s,アミノ当量1700g/mol)、XF42-B8922(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製,動粘度70000mm/s,アミノ当量13000g/mol)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,アミノ当量1800g/mol)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
〔架橋構造を有するアミノ変性シリコーン〕
本発明に用いられる架橋構造を有するアミノ変性シリコーンとしては、特に限定されないが、例えば、下記表面被覆処理剤(a)及び下記表面被覆処理剤(b)を縮合反応させて得られるシリコーンの微三次元架橋構造を有する重合物(以下、「シリコーン微架橋物」とも称する)が挙げられる。また、表面被覆処理剤(a)及び下記表面被覆処理剤(b)はそれぞれ公知の製造方法にて製造することができ、市販品を使用することもできる。
【0032】
表面被覆処理剤(a):下記一般式(2)で示される両末端反応性ジオルガノポリシロキサン
SiO-(R SiO)-SiR (2)
(式(2)中、各Rは水酸基を表し、各Rはそれぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基でを表し、Lは3~10,000のいずれかの整数を表す。)
【0033】
表面被覆処理剤(b):下記一般式(3)で示されるアミノ基含有シラン化合物
SiX(3-m) (3)
(式(3)中、Rは少なくとも1つのアミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは炭素数1~4のアルコキシ基を表し、mは0又は1である。)
【0034】
本発明に用いられる表面被覆処理剤(a)は、両末端反応性ジオルガノポリシロキサンであり、下記一般式(2)で示される両末端ヒドロキシシリル基変性シリコーンである。
SiO-(R SiO)-SiR (2)
(式(2)中、各Rは水酸基を表し、各Rはそれぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基を表し、Lは3~10,000のいずれかの整数を表す。)
【0035】
上記(a)の形態としては、特に限定されないが、本発明においては、水サスペンション又は水エマルジョンの形態で用いることが、成分(B)の感触等を良好にする点で好ましい。該(a)の水エマルジョンを調製する方法としては、通常公知の方法でよく、低分子環状シロキサンを出発原料として乳化重合する方法や、オイル状の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンを乳化する方法等が例示される。
【0036】
本発明に用いられる表面被覆処理剤(b)は、アミノ基含有シラン化合物であり、下記一般式(3)で示されるものである。
SiX(3-m) (3)
(式(3)中、Rは少なくとも1つのアミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは炭素数1~4アルコキシ基を表し、mは0又は1である。)
【0037】
上記表面被覆処理剤(b)の好ましい例としては、特に限定されないが、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を例示できる。前記m=0のアミノ基含有のトリアルコキシ(炭素数1~4)シランが好適である。前記Rの炭化水素の炭素数は1~10が好適である。当該(b)の市販品として、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903;信越化学工業社製)等が挙げられるが、本発明はこれに限定されることなく、また公知の製造方法で製造してもよい。
【0038】
〔シリコーン微架橋物〕
上記シリコーン微架橋物は、特に限定されないが、使用感に優れる等の観点から、表面被覆処理剤(a)と(b)との使用質量比が、(表面被覆処理剤(a)):(表面被覆処理剤(b))=100:0.1~100:35であることが好ましい。
【0039】
また、上記シリコーン微架橋物は、ゴム弾性(すなわち、ゴム硬度)を有しない重合体であることが好ましい。ゴム硬度を有しない重合体とは、ISO7619-1に規定されるデュロメータタイプAOによる測定法(軟質ゴム硬度測定)の測定値が10未満であり、より好ましくは5未満のものである。
【0040】
さらに、上記シリコーン微架橋物のレオロジー特性は、特に限定されないが、肌への密着性に優れる等の点から、動的粘弾性測定(25℃、歪み率17%、剪断周波数4Hz)における複素弾性率が3,000~100,000Pa、損失係数tanδ(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)が1.0~2.5であることが好ましい。より好ましくは、複素弾性率が10,000~100,000Paであり、損失係数tanδが1.0~2.0である。
【0041】
前記シリコーン微架橋物のレオロジー特性は、以下のようにして測定することができる。
動的粘弾性測定装置:Rheosol-G3000(UBM社製)
測定治具:直径20mmのパラレルプレート
測定周波数:4Hz
測定温度:25±1.0℃
測定歪の設定:歪み率17%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
測定試料厚み(ギャップ):1.0mm
ここで剪断周波数を4Hzとしたのは、人にとって一般的な物理的動作速度の範囲であり、化粧料を肌へ塗布する際速度に近似している理由による。
【0042】
〔成分(B)における表面被覆処理されうる粉体〕
本発明に使用される成分(B)において、前記アミノ変性シリコーンにて表面被覆処理されうる「粉体」としては、成分(A)以外で通常の化粧料に用いられる粉体であれば、特に限定されず、例えば、無機粉体、有機粉体、金属石鹸粉末、光輝性粉体、色素粉体、これらの複合粉体等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を組合せて用いることができる。また、その粒子形状(球状、針状、板状、不定形等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)等を問わず、何れのものも使用することができる。
【0043】
無機粉体として、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン酸化スズ被覆合成金雲母、酸化亜鉛被覆雲母、硫酸バリウム被覆雲母、酸化チタン被覆ガラスパールガラス末等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0044】
有機粉体としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタン、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ナイロンパウダー(12ナイロン、6ナイロン等)、シリコーンパウダー、ポリエチレンテレフタレートパウダー、スチレン・アクリル酸共重合体パウダー、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体パウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、エポキシ樹脂パウダー、ポリカーボネイト樹脂パウダー、微結晶繊維粉体パウダー、デンプン、ラウロイルリジン等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0045】
これらの中でも、無機粉体が好適であり、当該無機粉体として、特に限定されないが、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン酸化スズ被覆合成雲母、及び酸化チタン被覆ガラス末等から選ばれる1種又は2種以上の無機粉体を選択すると、より化粧効果が高いアミノ変性シリコーン処理粉体を得ることができるためより好ましい。さらに、タルク、マイカ、セリサイト、白雲母、合成雲母、及び金雲母から選ばれる1種又は2種以上を選択することが特に好ましい。
【0046】
表面被覆処理されうる「粉体」の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、化粧効果の観点から3~200μmのものが好ましく、3~100μmのものがより好ましく、5~50μmのものが特に好ましい。また、滑らかな使用感や充填成型性により優れるという観点から、板状であるものが特に好ましい。
【0047】
〔アミノ変性シリコーンの被覆方法〕
本発明に使用される成分(B)において、これらの粉体の表面にアミノ変性シリコーンを被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、アミノ変性シリコーンと粉体とを直接混合し被覆する乾式被覆方法;有機溶剤(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン等から選ばれる1種又は2種以上)にアミノ変性シリコーンを溶解又は分散し、この溶液又は分散液に粉体を添加し、混合後、前記溶剤を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法;メカノケミカル方法等が挙げられる。これらを適宜組み合わせることも可能である。
【0048】
また、本発明に使用される成分(B)において、これらの粉体にアミノ変性シリコーンを表面被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、in-situ法にて粉体の存在下で前記表面被覆処理剤(a)と前記表面被覆処理剤(b)のシリコーン微架橋物を粉体粒子表面に析出させた後、加熱することで、粒子表面にシリコーン微架橋物を固着する方法を用いることができる。この方法により、粉体粒子表面への被覆の均一性が高まり、より良好な軽い使用感で、肌への密着性により優れる、表面被覆された粉体を得ることができる。
【0049】
このようにして得られる成分(B)は、粉体表面がアミノ変性シリコーンにより被覆されたものであり、その被覆量は、特に制限されない。よりなめらかな軽い感触でしっとり感があり、肌への密着性に優れる等の点から、成分(B)において、表面被覆されうる粉体とアミノ変性シリコーンとの使用質量比が、(表面被覆されうる粉体):(アミノ変性シリコーン)=99.99:0.01~70:30であることが好ましく、99.9:0.1~90:10であることが特に好ましい。
【0050】
本発明に使用される成分(B)のアミノ変性シリコーン処理粉体の市販品例として、例えば、マイカ Y-2300WA3(ヤマグチマイカ社製)、EX-15WA3(ヤマグチマイカ社製)、SE-S-100S(処理された粉体はセリサイト)(三好化成社製)、SE-TA-13R、SE-TA-46R(処理された粉体はタルク)(三好化成社製)、MiyoSYN Fine-SE(処理された粉体は合成金雲母)(三好化成社製)、SE-MA-23(処理された粉体はマイカ)(三好化成社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。
【0051】
本発明の成分(B)は、本発明の効果を妨げない範囲で、他の処理剤(例えば、脂肪酸や、金属石鹸、フッ素化合物等)と同時に又は別々に処理して得ることもできる。特に限定されないが、本発明の効果をより顕著に発揮できることから、本発明の成分(B)の最外層がアミノ変性シリコーンであることが特に好ましい。
【0052】
〔成分(B)の含有量〕
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、伸び広がりの軽さ、成型物表面のなめらかさ、及びきしみ感の抑制に優れる等の観点から、化粧料全量中、その下限値として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、その上限値として、コストの観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。当該数値範囲として、化粧料全量中に1~90質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが特に好ましく、これにより、より良好に、伸び広がりの軽さ、成型物表面のなめらかさ、及びきしみ感の抑制、耐衝撃性等に優れる。
【0053】
<成分(C)シリコーン油>
本発明に用いられる成分(C)のシリコーン油は、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず用いることができる。
シリコーン油として、ジメチルポリシロキサン、フェニル変性シリコーン(例えば、メチルフェニルポリシロキサン等)、アルキル変性シリコーン、環状シロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、メチルトリメチコン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらを1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0054】
前記成分(C)のシリコーン油のうち、ジメチルポリシロキサン及び/又はフェニル変性シリコーンを用いることが、成型物表面のなめらかさ及び溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさに優れる点等で好ましい。
フェニル変性シリコーンの市販品として、例えば、トリフェニルジメチルビニルジシロキサン(例えば、市販品:SILSHINE VP)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(例えば、市販品:KF-56(メチルフェニルポリシロキサン)等)、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン(例えば、市販品:シリコンKF-54(メチルフェニルポリシロキサン)等)、トリメチルシロキシフェニルジメチコン(例えば、市販品:BELSIL PDM1000等)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
さらにこれらの中でも、ジメチルポリシロキサン及び/又はメチルフェニルポリシロキサン(好適には上述したジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等)を用いると、成型物表面のなめらかさ及び溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさに優れる点等でより好ましい。
【0055】
本発明に用いられる成分(C)のシリコーン油の平均分子量は、特に限定されないが、なめらかな使用感と溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさに優れる点等から、500~15000であることが好ましい。また性状としては、特に限定されないが、なめらかな使用感と溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさに優れる点等から、25℃で液状であることが好ましい。このような市販品としては、KF-96A-6CS(信越化学工業株式会社製)、KF-96-10CS(信越化学工業株式会社製)、SH200C FLUID 6CS(東レ株式会社製)、KF-56(信越化学工業社製)、KF-54(信越化学工業社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
〔成分(C)含有量及び使用割合〕
本発明に用いられる成分(C)の含有量は、本発明の効果を発揮する量であれば特に限定されないが、4~30質量%であることが好ましく、4~20質量%であることがより好ましく、4~15質量%であることが特に好ましい。成分(C)の含有量が4質量%未満であると満足のいくなめらかな使用感や溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさが得られ難くなり、30質量%より多いと耐衝撃性に劣り易くなり好ましくない。
【0057】
また、成分(C)/全配合油剤の含有質量割合が、0.3~1.0であることが好ましく、さらに好ましくは0.6~1.0、特に好ましくは0.65~0.9である。この割合が高いと、収縮を抑えつつ、透明感をより高く付与し、耐衝撃性を向上させることができる。
【0058】
本発明に用いられる成分(A)と成分(C)の含有質量割合は、特に限定されないが、溶剤の除去効率に優れ成型物の収縮のなさに優れるという観点から、その下限値として、好ましくは(C)/(A)=0.6以上であり、その上限値として(C)/(A)=20以下であり、当該数値範囲として、(C)/(A)=0.6~15であることが好ましく、0.6~10であることがより好ましく、0.6~5であることが特に好ましい。
【0059】
本発明において、成分(C)にジメチルポリシロキサン及び/又はフェニル変性シリコーンを含むことが、収縮を抑えつつ、つやを向上させ、透明感をより高く付与することができるので、好ましい。
【0060】
前記(C)シリコーン油中に、メチルポリシロキサン及び/又はフェニル変性シリコーンを少なくとも含むことが好ましく、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、実質的にメチルポリシロキサン及び/又はフェニル変性シリコーン(より好適には上述したジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等)からなるシリコーン油でもよい。なお、本明細書において「実質的に」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分が含まれていてもよいことをいう。
【0061】
成分(C)中のジメチルポリシロキサンの含有量は、その下限値として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、その上限値として、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0062】
また、成分(C)中のフェニル変性シリコーンの含有量は、その下限値として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、その上限値として、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。当該数値範囲としては、40~90質量%がより好ましい。これにより、収縮を抑えつつ、つやを向上させ、透明感をより高く付与することがより良好にできる。
【0063】
<1-3.成分(D)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物>
本発明には、さらに、成分(D)として、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を用いることができる。成分(D)の具体例として、日本化粧品表示名称で表すと、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルポリシロキサン;(ジメチコン/フェニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。また、分子中にポリオキシアルキレン基を含有する重合物としては、例えば、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。また、分子中に長鎖アルキル基を含有する重合物としては、例えば、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型アルキル変性シリコーン等が挙げられる。分子中にポリオキシアルキレン基及び長鎖アルキル基を含有する重合物としては、例えば、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型アルキル・ポリエーテル共変性シリコーン、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。分子中にハロゲン化炭化水素基を含有する重合物としては、例えば、(トリフルオロプロピルジメチコン/トリフルオロプロピルジビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これら具体例に成分(D)は特に限定されることなく、また公知の製造方法で製造してもよい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
また、特に限定されないが、このうち、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルポリシロキサン;(ジメチコン/フェニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン;(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン;(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型アルキル・ポリエーテル共変性シリコーン;(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー等の部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーンが、なめらかな使用感と耐衝撃性を高める観点でより好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
さらに、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルポリシロキサンを少なくとも含む部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を用いることが好ましい。
【0065】
成分(D)は、成分(C)のシリコーン油等の油剤で膨潤された状態で使用したり含有すると、より均一に分散され易くなり、製剤の安定性に優れるため、より好ましい。成分(D)は、上記油剤等の溶媒との混合物の形態で市販されることが多く、本発明ではそうした市販品を用いることができる。
【0066】
成分(D)の市販品としては、例えば、部分架橋型メチルポリシロキサンと環状シリコーンとの混合物としてKSG-15(固形分5%);部分架橋型メチルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンとの混合物としてKSG-16(固形分20~30%);部分架橋型メチルフェニルポリシロキサンとフェニルトリメチコンとの混合物としてKSG-18(固形分10~20%)、部分架橋型ポリエーテル変性シリコーンとジメチルポリシロキサンとの混合物としてKSG-210(固形分20~30%);部分架橋型アルキル変性シリコーンと油剤との混合物として、KSG-41(固形分25~35%)、KSG-42(固形分20~30%)、KSG-43(固形分25~35%)及びKSG-44(固形分25~35%)、部分架橋型アルキル・ポリエーテル共変性シリコーンと油剤との混合物として、KSG-310(固形分25~35%)、KSG-320(固形分20~30%)、KSG-330(固形分15~25%)及びKSG-340(固形分25~35%)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。また、部分架橋型フッ素変性シリコーンは、フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン等の環状フッ素含有シリコーンとの混合物として用いられ、例えばKSG-51(固形分15~25%:信越化学工業社製)等が挙げられる。成分(D)の市販品は、これに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。また、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
成分(D)は必要に応じて1種又は2種以上を本発明の化粧料に使用することができ、その含有量は特に限定されないが、成型物表面のなめらかさときしみ感のなさに優れる等の観点から、成分(D)は化粧料全量中に0.05~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~3質量%である。
また、成分(D)中に、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の部分架橋型メチルポリシロキサンを、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、実質的にメチルポリシロキサン及びフェニル変性シリコーン(より好適には上述した(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等)からなる部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物でもよい。なお、本明細書において「実質的に」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分が含まれていてもよいことをいう。
【0068】
<1-4.成分(E)(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)>
本発明には、さらに、成分(E)として、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)を用いることができる。成分(E)の(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)は、通常化粧料に用いられるものであれば良く、その粒子形状(球状、針状、板状、不定形等)、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)等を問わず、何れのものも使用することができる。特に限定されないが、より優れた透明感が得られるという観点から、板状であることがより好ましい。
【0069】
成分(E)の平均粒子径(D50)としては、特に限定されないが、肌上における軽い伸び広がり及び透明感が高いという観点から、1~20μmであることが好ましく、3~18μmであることがより好ましく、3~15μmであることがより好ましく、5~15μmであることがより好ましく、5~14μmであることが特に好ましい。
【0070】
成分(E)の市販品としては、例えば、ソフトセリサイト T-6(平均粒子径:5~7μm)、ソフトセリサイト SH(平均粒子径:5~7μm)(共に、大日本化成社製)、ミクロマイカMK-200K(平均粒子径:5.8~8.2μm)、ミクロマイカMK-300K(平均粒子径:11.6~13.1μm)(共に、片倉コープアグリ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。また、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明における成分(E)の含有量は、特に限定されないが、より優れた透明感と自然なツヤ感が得られる等の観点から、化粧料全量中に、その下限値として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、その上限値として、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。当該数値範囲として、化粧料全量中に1~90質量%であることが好ましく、3~90質量%であることがより好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることが特に好ましい。
【0072】
<1-5.成分(F)大粒径金属酸化物>
本発明には、さらに、成分(F)として、前記成分(A)よりも大きい粒径の金属酸化物を使用することができる。当該「前記成分(A)よりも大きい粒径の金属酸化物」を、以後、「大粒径金属酸化物」と定義する。当該大粒径金属酸化物は、より好ましくは成分(A)の平均粒子径(D50)の上限値(より好適には0.15μm超)よりも大きいものである。
成分(F)の大粒径金属酸化物の平均粒子径(D50)は、その下限値として、好ましくは0.15μm超、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、その上限値として、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下のものである。当該範囲として、より好ましくは0.15μm超5μm以下である。当該成分(F)金属酸化物を調節することで、透明感の高さ、成形物表面のなめらかさ、耐衝撃性等をより良好にすることができる。
【0073】
なお、成分(F)大粒径金属酸化物は、平均粒子径以外の粒子形状、粒子構造、材質、金属化合物の種類、及びこれらの表面処理方法等の前記<成分(A)微粒子金属化合物>と共通する構成についてはその説明を適宜省略する。
【0074】
大粒径金属酸化物の中でも、特に限定されないが、毛穴やシワ・色ムラのカバー力に優れるという観点から、成分(A)とは平均粒子径の異なる酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料や酸化鉄等の有色無機顔料等の無機顔料を含有することがより好ましい。白色無機顔料として、酸化チタン、及び/又は酸化亜鉛を含有することがより好ましく、また、有色無機顔料として酸化鉄を含有することがより好ましい。また、これらを合わせてもよく、酸化チタン、酸化亜鉛、及び酸化鉄から選択される1種又は2種以上が好ましい。これらの大粒径金属酸化物は、アルミニウムの酸化物及び/又は水酸化物や、ケイ素の酸化物及び/又は水酸化物で表面処理されていてもよい。また、これらの粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン油剤、金属石ケン、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理してあっても良い。
【0075】
成分(F)の市販品として、例えば、MP-18、MP-701、MP-1133(後記実施例の表1、No.2)、MP-40、MP-100等又はそれらの複合粉体(テイカ社製);MKR-1(堺化学工業社製);SYMPHOLIGHTシリーズ(日揮触媒化成社製);RONAELAIR BLANCSEALER(メルクパフォーマンスマテリアルズ社製);XZ-300F、XZ-1000F、XZ-3000F等又はそれらの複合粉体(堺化学工業社製);ZnO-CX(住友大阪セメント社製);TAROXシリーズ(チタン工業社製、P又はHPグレード各種:TAROX R-516P、TAROX YP1200P、TAROX BL-100P等又はそれらの複合粉体);FESOIEシリーズ(チタン工業社製)(FS-300(後記実施例18のNo.6));SUN PUROシリーズ(C33-8001(後記実施例16のNo.9、実施例18のNo.5、実施例24のNo.7)、C33-9001(後記実施例16のNo.10、実施例24のNO.8)、C33-7001(後記実施例16のNo.11、実施例18のNO.7、実施例24のNo.9))(Sun Chemical社製);UNIPUREシリーズ(SENSIENT社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、成分(F)は公知の製造方法で製造してもよい。
【0076】
本発明における成分(F)の含有量は、特に限定されないが、より優れた透明感と自然なツヤ感が得られる等の観点から、化粧料全量中に、その上限値として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。当該数値範囲として、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0077】
<1-6.成分(G)の窒化ホウ素>
本発明における成分(G)の窒化ホウ素は、形状、大きさ等が特に限定されるものではないが、板状形状が好ましく、当該大きさとしては、平均粒子径(D50)が3~40μmであるものが好ましく、より好ましくは、平均粒子径(D50)が5~40μm、さらに好ましくは、6~36μmである。また、成分(G)窒化ホウ素は、公知の方法により表面処理してあっても良いが、上記成分(B)アミノ変性シリコーン処理窒化ホウ素を除くものである。
成分(G)の市販品として、例えば、SHP-3、SHP-5(実施例17のNo.4)、SHP-6(実施例18のNo.)、SHP-9、SHP-100等のSHPシリーズ(水島合金鉄社製);CCS102 BORON NITRIDE POWDER(実施例16のNO.5)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また公知の製造方法で製造してもよい。また、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0078】
本発明における成分(G)の含有量は、特に限定されないが、より優れた透明感となめらかな使用感等の観点から、化粧料全量中に、その下限値として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、その上限値として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。当該数値範囲として、化粧料全量中に、0.1~7質量%であることが好ましく、1~6.5質量%であることがより好ましく、2~6質量%であることが特に好ましい。この範囲であると、不自然な隠蔽性がより出にくく透明感をより好ましく維持できる。
【0079】
<1-7.任意成分>
また、本発明の固形粉末化粧料には、上記成分(A)~(G)以外に、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、適宜任意成分を含有することができる。任意成分として、具体的には、上記成分(A)、(B)、(E)、(F)、(G)以外の粉体、上記成分(C)、(D)以外の油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、金属石鹸、賦形剤、美容成分、感触調整剤、及び香料等が挙げられ、これらから1種又は2種以上選ばれる各種成分を本発明の固形粉末化粧料に適宜含有することができる。なお、本発明で使用する任意成分は必要に応じて、通常固形粉体化粧料に用いられる成分を適宜使用することができる。
【0080】
上記任意成分の粉体(すなわち、前記成分(A)、(B)、(E)、(F)、及び(G)以外の粉体)としては、粒子形状(球状、針状、板状、不定形等)、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、シリカ、炭化珪素等の無機粉体類;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料;酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ等の有色無機顔料;赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体;赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体;あるいは更に、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
本発明において固形粉末化粧料とは、主成分を粉体とする組成物に、油剤、水溶性高分子、金属石鹸、賦形剤、美容成分、感触調整剤等の各種成分を含有させることで化粧料基材とし、これを乾式成型方法、湿式成型方法等で固形に成形されたものをいう。
本発明の固形粉末化粧料における、成分(A)、(B)、(E)、(F)、及び(G)を含む粉体の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果がより顕著に発揮される等の点から、化粧料全量中に、その限値として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、その限値として、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。当該数値範囲として、化粧料全量中に40~96質量%であることが好ましく、65~96質量%であることがより好ましく、70~96質量%であることが特に好ましい。
【0082】
<1-8.固形粉体の化粧料の製造方法>
本発明の固形粉体化粧料の製造方法は、公知の固形粉体化粧料の製造方法を適用することができる。本発明は、前記成分(A)~前記成分(C)を少なくとも配合すること、さらに適宜上記各種成分を配合することにより、成形物の収縮がなく耐衝撃性に優れる等という固形粉体化粧料を得ることができるので、製造工程における作業(例えば、取り扱い及び調整)も容易という利点を得やすい。
本発明の固形粉体化粧料の製造方法は、化粧料基材(例えば、粉体、油剤等)と溶剤とを混合して混合物を調製すること、及び当該混合物を容器等に成形することを含むことが好適である。当該化粧料基材及び溶剤は、上記成分(A)~(G)以外に、固形粉体化粧料の製造に使用可能な成分を適宜使用することができる。
【0083】
本発明の固形粉末化粧料の製造方法として、粉体及び油剤とを混合することを含む圧縮成型方法であることが好適である。
また、本発明の固形粉末化粧料の製造方法として、湿式成形法を用いることが好適であり、より具体的には、粉体と油剤と溶剤とを混合することを含む湿式成型方法を用いることがより好適である。例えば、粉体と油剤とを含む化粧料基材を予め調製した後、当該化粧料基材と溶剤とを混合して、本発明の固形粉末化粧料を得ることができる。本発明の固形粉末化粧料は、溶剤と、化粧料基材(例えば、粉体と油剤等)とを混合して、本発明の固形粉末化粧料を得ることができ、粉体や油剤等は同時期に又は別々に溶剤と混合してもよい。
【0084】
以下に、製造方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の固形粉末化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)成分(A)、(B)及び必要に応じて成分(E)、(F)、(G)を含む粉体と、成分(C)及び必要に応じて成分(D)を含む油剤とを混合した後、粉砕し、乾式で圧縮成型する方法;また、(ii)成分(A)、(B)及び必要に応じて成分(E)を含む粉体と、成分(C)及び必要に応じて成分(D)を含む油剤と、溶剤とを混合してスラリー状とし、これを充填成型した後、該溶剤を除去して成型する湿式成型方法等が挙げられるが、本発明はこれらに特に限定されない。
【0085】
このうち、本発明の効果がより顕著に発揮される点から、湿式成型方法を用いて製造することがより好ましい。当該湿式成型方法において、溶媒(溶剤ともいう)とは、常圧における沸点が260℃以下の揮発性化合物が好ましい。
【0086】
本発明の固形粉末化粧料を製造する際に使用する溶媒(溶剤)として、具体的には、水;もしくは、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等の低沸点アルコール(炭素数1~4);イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油;低重合度のジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン油;低沸点パーフルオロポリエーテル等の低沸点フッ素化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上の混合物として用いられるが、これらに特に限定されない。
これらの中でも、化粧料基材の分散性に優れるという観点から、イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素油を1種又は2種以上組み合わせて用いることがより好ましい。
【0087】
湿式成型方法における、溶剤の混合量は、成型前の混合物を容器又は中皿に充填するために、流動性を付与する程度に任意に選択されるが、溶剤の除去効率の容易である点等から、化粧料基材100質量部(以下、単に「部」とも示す。)に対して溶剤10~150部を用いることがより好ましい。また、溶剤を除去する方法は、そのまま乾燥したり、スラリーを充填後に加圧し、該揮発性溶剤(溶媒)を吸収体あるいは排出孔を通して除去する方法を採用することもできる。
なお、化粧料基材の全量には、本発明で使用する粉体及び油剤の量が少なくとも含まれる。
【0088】
<1-9.本発明の用途等>
本発明の固形粉末化粧料は、粉体を主成分とするものであり、その用途は特に限定されないが、例えば、ファンデーション、白粉、アイカラー、チークカラー、アイブロウ等のメークアップ化粧料;ボディパウダー、美白パウダー、日焼け止めパウダー等の基礎化粧料等に適用可能である。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に発揮される点から、メークアップ化粧料に好適に用いられ、さらに好ましくはファンデーション、白粉に好適に用いられる。また、本発明の固形粉体化粧料は、皮膚に塗布可能であることから、皮膚外用剤及び医薬部外品としても用いることが可能である。
【0089】
また、本発明の別の側面として、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料において、前記成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び前記成分(C)シリコーン油を少なくとも使用することを特徴とする、固形粉末化粧料の製造方法を提供するものである。前記成分(C)シリコーン油 4~30質量%とすることが望ましい。これにより得られた固形粉末化粧料は、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れる。
【0090】
また、本発明の別の側面として、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料において、前記成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び前記成分(C)シリコーン油を少なくとも使用することを特徴とする、当該固形粉末化粧料の品質改善方法を提供することができる。前記成分(C)シリコーン油 4~30質量%とすることが望ましい。当該品質改善方法として、例えば、きしみ感軽減、成型物表面のなめらかさ向上、成型物の収縮低減及び組成物の耐衝撃性向上が挙げられる。本発明において、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料における、きしみ感、成型物表面のなめらかさ、成型物の収縮及び組成物の耐衝撃性の4つの品質を改善することが特に好適である。
また、より優れた固形粉末化粧料を得るために、上述した前記成分(D)~前記成分(G)等の各成分を使用することが好ましい。
本発明の方法において、<1.固形粉末化粧料>で説明した構成を採用することができ、当該構成の説明については上記、<1.固形粉末化粧料>のとおりである。
【0091】
また、本発明の品質改善方法は、品質改善剤等としても採用することができる。
本発明の別の側面として、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料において、前記成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び前記成分(C)シリコーン油を少なくとも使用することを特徴とする、当該固形粉末化粧料の品質改善剤を提供することができる。前記成分(C)シリコーン油 4~30質量%とすることが望ましい。
また、本発明の別の側面として、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料の品質改善剤等の製剤の製造のために、前記成分(B)及び前記成分(C)を使用することができる。また、前記成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料の品質改善のための、前記成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び前記成分(C)シリコーン油;前記成分(B)及び前記成分(C)を含む組成物;又はこれらの使用を提供することができる。前記成分(C)シリコーン油 4~30質量%とすることが望ましい。
【0092】
また、本技術は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕 次の成分(A)~(C);
(A)微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%
を含有する固形粉末化粧料。
〔2〕 次の成分(A)~(C);
(A)微粒子金属酸化物
(B)アミノ変性シリコーン処理粉体
(C)シリコーン油 4~30質量%を化粧料基材として用いて得られる固形粉末化粧料又は固体粉末化粧料の製造方法。
〔3〕 成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料において、成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び成分(C)シリコーン油 4~30質量%を少なくとも使用することを特徴とする、固形粉末化粧料の製造方法。
〔4〕 成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料において、成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び成分(C)シリコーン油 4~30質量%を少なくとも使用することを特徴とする、当該固形粉末化粧料の品質改善方法又は品質改善剤。当該品質改善が、きしみ感低減、成型物表面のなめらかさ向上、成型物の収縮低減及び組成物の耐衝撃性向上であることが好適である。
〔5〕 成分(A)微粒子金属化合物を用いる固形粉末化粧料の品質改善剤を製造するための、成分(B)アミノ変性シリコーン処理粉体及び成分(C)シリコーン油 4~30質量%の使用、当該成分(B)及び成分(C)を含む組成物の使用。
【0093】
〔6〕 前記〔1〕~〔5〕のいずれかにおいて、前記成分(A)の平均粒子径(D50)が、0.01μm以上0.15μm以下が好適である。
〔7〕 前記〔1〕~〔6〕のいずれかにおいて、前記成分(A)が、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上含むものが好適である。
〔8〕 前記〔1〕~〔7〕のいずれかにおいて、前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合が、(C)/(A)=0.6~15であることが好適である。
〔9〕 前記〔1〕~〔8〕のいずれかにおいて、さらに、成分(D)として、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を含有することが好適である。
〔10〕 前記〔1〕~〔9〕のいずれかにおいて、さらに、成分(E)として、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)を含有することが好適である。
〔11〕 前記〔1〕~〔10〕のいずれかにおいて、さらに、成分(F)として、大粒径金属酸化物を含有することが好適である。
前記大粒径金属酸化物が、前記(A)の粒径より大きく(好適には平均粒子径(D50)0.1μm超)かつ平均粒子径(D50)4μm以下であるものがより好適である。当該大粒径金属酸化物が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄から選ばれる1種又は2種以上のものを含むことがより好適である。
〔12〕 前記〔1〕~〔11〕のいずれかにおいて、さらに、成分(G)として窒化ホウ素を2~7質量%含有することが好適である。
〔13〕 前記〔1〕~〔12〕のいずれかにおいて、前記成分(C)中にフェニル変性シリコーンを含有することが好適である。
〔14〕 前記〔1〕~〔13〕のいずれかにおいて、全油剤中の前記成分(C)の含有質量割合が、成分(C)/全配合油剤=0.3~1.0であることが好適である。
〔15〕 前記〔1〕~〔1〕のいずれかにおいて、前記(A)~(C)と溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより固形粉末化粧料を得ることが好適である。
【実施例
【0094】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0095】
<アミノ変性シリコーン表面処理粉体の製造>
〔製造例1:アミノ変性シリコーン処理マイカの製造〕
アミノ変性シリコーン(KF867S/信越化学工業社製,動粘度1300mm/s(25℃),アミノ当量1700g/mol)3質量部とマイカ(Y‐2300:平均粒子径(D50)19μm、板状、ヤマグチマイカ社製)97質量部とを雷潰機(ZOD型/石川工場社)にて、3時間混合し、100℃で4時間加熱した。その後、アトマイザー(LM-05/ダルトン社)にて解砕処理し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理マイカ(1)(表面被覆量:3%)を得た。
【0096】
〔製造例2:アミノ変性シリコーン処理タルクの製造〕
[ジメチコノールエマルジョンの製造]
容量2リットルのポリエチレンビーカーにオクタメチルシクロテトラシロキサン450gとイオン交換水500g、ラウロイルメチルタウリンナトリウム6.75gを仕込み、ホモミキサー撹拌2000rpmにより予備混合した後、クエン酸4gを添加して、70℃に昇温してホモミキサー5000rpmにより24時間乳化重合した。卓上加圧ホモジナイザー(APVゴーリン製)で50MPaにて1回乳化分散することにより高分子量の(a)のジメチコノール含有の水エマルジョンを得た。次いで10%炭酸ナトリウムを加えてpH7に調整して(a)の水エマルジョン(2)を得た。この水エマルジョン(2)を105℃で3時間乾燥して水を揮発除去した固形分について、GPCによるPS換算の重量平均分子量を求めたところ10000であった。固形分は46.5%であった。なお、固形分に含まれるジオルガノポリシロキサンは、前記表面被覆処理剤(a):一般式(2)で示される両末端反応性ジオルガノポリシロキサンに該当する。
【0097】
[シリコーン微架橋物により表面を処理された粉体の製造]
容量20リットルのPE製容器に、水7Lとタルク(JA-13R:平均粒子径(D50)5~8μm、浅田製粉社製)1kgを仕込み、ディスパーミキサー(プライムミクス社;AM-40)にて2000rpmで5分間分散した。前記のジメチコノールエマルジョン103gを添加して2500rpmにて5分間攪拌した。次いで、架橋剤としてアミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903;信越化学工業社製)5質量%水溶液を96g添加した。1N-NaOH水溶液にてpHを10.3に調整した後、3000rpmにて30分間攪拌反応させた。遠心脱水機にてろ過して7Lの水にて洗浄した後、脱水ケーキを乾燥機中120℃にて16時間乾燥した。この時ケーキ中に温度センサーを挿入して温度を記録したところ、115℃以上で7時間加熱されていた。乾燥したケーキをパルベライザーで粉砕し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理マイカ(2)(表面被覆量:5%)を得た。
【0098】
なお、上述のとおり、ジメチコノール及びアミノプロピルトリエトキシシランにより得られた架橋構造を有するアミノ変性シリコーンを表面処理剤として使用したが、シリコーン微架橋物中のジメチコノールとアミノプロピルトリエトキシシランの含有質量割合は、ジメチコノール/アミノプロピルトリエトキシシラン=100/10(表面被覆処理剤(a)/表面被覆処理剤(b)=100/10)であった。
また、前記シリコーン微架橋物は、軟質ゴム硬度値が5未満、動的粘弾性測定(25℃、歪み率17%、剪断周波数4Hz)における複素弾性率が10,000~100,000Pa、損失係数tanδが1.0~2.0になるように調製することが望ましい。
【0099】
<実施例1~15、19~23及び比較例1~5:ファンデーション(固形)>
表1(表1-1及び表1-2)に示す各ファンデーションを調製し、透明感の高さ、きしみ感のなさ、成型物表面のなめらかさ、成型物の収縮のなさ、耐衝撃性について下記の評価を実施し、下記判定基準により判定した。その結果も併せて表1に示す。
【0100】
【表1-1】
【表1-2】
【0101】
表1中、
*1:SMT-500SAS (テイカ社製)(平均粒子径:0.035μm)
*2:MZ-500 (テイカ社製)(平均粒子径:0.025μm)
*3:SA-セイサイトFSE(三好化成社製)(平均粒子径:10μm)
*4:SHP-6(水島合金鉄社製)(平均粒子径:8.5μm)
*5:ミクロマイカ MK-200K(水島合金鉄社製)(平均粒子径:5.8~8.2μm)
*6:アミホープLL(味の素社製)(平均粒子径:15μm)
*7:KSP-100(信越化学工業社製)(平均粒子径:5μm)
*8:KSG-16(信越化学工業社製)
*9:KSG-310(信越化学工業社製)
*10:シリコン KF-96-10CS(信越化学工業社製)
*11:シリコン KF-56(信越化学工業社製)
*16:MTY-700BS(テイカ社製)(平均粒径:0.08μm)
*17:XZ-300F(堺化学工業社製)(平均粒径:0.3μm)
*18:MZY-203M(テイカ社製)(平均粒径:0.05μm)
【0102】
なお、シリコーン油として、平均分子量500~15000のものを用いる。実施例で使用した各成分の「平均粒子径」(メジアン径D50:直径又は長径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像及び画像解析装置(ルーゼックスIIIU又はこの後継機種ルーゼックスAP、ニレコ社製)の測定により求めることができる。また、No.13はTAROX R-516P(平均粒子径(D50):0.7μm(長径)、針状)、NO.14はTAROX YP1200P(平均粒子径(D50):0.8μm(長径)、針状)、NO.15はTAROX BL-100P(平均粒子径(D50):0.3μm、粒状)の大粒径金属酸化物を使用することができる。No.7 窒化ホウ素は、平均粒子径(D50):8.5μm、板状)である。また、No.8 (フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)は、平均粒子径(D50):5.8~8.2μmであり、板状である。
【0103】
(製造方法)
A.成分(1)~(15)、(1-1)、(2-1)、(3-1)、を均一に混合する。
B.Aに、成分(16)~(21)を均一に混合したものを加えて、均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。
C.前記化粧料基材100部に溶剤(イソドデカン)を50部添加して混合し、スラリー状の混合物を得た。
D.前記混合物を丸型の金皿(直径5.5cm)に11g充填し、プレス圧2.0kgf/cm2、プレス時間4秒、紙6枚の条件で4回圧縮し、溶剤を一部除去した。その後、70℃で一昼夜乾燥し、溶剤を除去してファンデーション(丸型金皿入りファンデーション:以下、「前記ファンデーション」ともいう)を得た。
【0104】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目)
イ.透明感の高さ
ロ.きしみ感のなさ
ハ.成型物表面のなめらかさ
ニ.成型物の収縮のなさ
ホ.耐衝撃性
【0105】
(評価方法:透明感の高さ、きしみ感のなさ、成型物表面のなめらかさ)
前記ファンデーションについて専門評価パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。イ .透明感の高さは、各試料を肌上に塗布し、膜白さがなく素肌感のある仕上がりか否かを評価した。ロ.きしみ感のなさは、各試料を塗布し、肌上においてひっかかりがなく摩擦感がないかを評価した。ハ.成型物表面のなめらかさは、成型物の表面を指で触ったとき凹凸を感じず、スライド感があるか否かを評価した。

<評価基準>
(評価結果):(評点)
非常に良好 :5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点

<4段階判定基準>
(判定):(評価基準)
◎ :4.0点を超える:(非常に良好)
○ :3.5点を超える4.0点以下:(良好)
△ :2.0点を超える3.5点以下:(やや不良)
× :2.0点以下:(不良)
【0106】
(評価方法:成型物の収縮のなさ)
前記ファンデーションの表面状態を各5個ずつ目視観察し、下記4段階判定基準により判定した。
<4段階判定基準>
(判定):(2mm以上の隙間やヒビ割れがある成型物の数)
◎ :0個
○ :1個
△ :2個
× :3個以上
【0107】
(評価方法:耐衝撃性)
前記ファンデーションを各5個ずつ30cmの高さからアクリル板上に自由落下させ、下記4段階判定基準により判定した。
<4段階判定基準>
(判定):(よれ、割れ、浮きが生じた成型物の数)
◎ :0個
○ :1個
△ :2個
× :3個以上
【0108】
なお、(評価方法:透明感の高さ、きしみ感のなさ、成型物表面のなめらかさ)において「あるか否か」のどちらとも判断し辛い場合を<評価基準>「普通 3点」と判断している。仮にパネル全員が「普通 3点」と判断した場合、その評点合計の平均点<4段階判定基準>「3.0点」となり、「△(やや不良)」の評価基準になる。<4段階判定基準>「○(良好)」の評価基準になるためには、<評価基準>「良好:4点」以上を得る必要がある。
また、使用したシリコーン油の平均分子量は、500~15000のものを用いることが望ましい。
【0109】
表1の結果から明らかなように、実施例1~15、19~23は、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れた化粧料であった。
一方、成分(A)の代わりに成分(F)の平均粒子径0.25μmの酸化チタン(No.2)を単独で多量に用いた比較例1は、その光学的特性に由来する膜白さにより透明感が損なわれた。成分(B)を含有しない比較例2、3は、微粒子金属酸化物に由来するきしみ感が抑制できず、成型物表面のなめらかさや耐衝撃性も劣るものであった。成分(C)の代わりに、エステル油を用いた比較例4は、粉体との結合力の高さの影響により、成型物表面のなめらかさや成型物の収縮のなさ、耐衝撃性が著しく劣るものであった。また、成分(C)を多量配合した比較例5は、粉体の油剤による濡れが進行することで溶剤の除去効率が悪くなり、成型物の収縮とそれに伴う耐衝撃性の低下が生じる結果となった。
【0110】
このことから、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を得るためには、(A)微粒子の金属酸化物、(B)アミノ変性シリコーン処理粉体、(C)シリコーン油を使用することが重要であると考えた。
さらに、より顕著な効果を得るために、成分(D)として部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、成分(E)として(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)、成分(F)として、大粒径の金属酸化物、成分(G)として窒化ホウ素から選択される1種又は2種以上を、固形粉末化粧料にさらに使用することが好適であると考えた。また、より顕著な効果を得るために、前記成分(C)シリコーン油中にフェニル変性シリコーンを含有させることが好適であり、フェニル変性シリコーン/成分(C)シリコーン油における含有質量割合は、好適には0.3以上、より好適には0.3~0.9であると考えた。
また、より顕著な効果を得るために、成分を配合する際の質量割合として、前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合が(C)/(A)=0.6~15であること、及び/又は、全油剤中の前記成分(C)の含有質量割合が、成分(C)/全配合油剤=0.6~1.0であること、が好適であると考えた。
【0111】
なお、実施例19~23で使用した赤酸化鉄はTAROX R-516P、黄酸化鉄はTAROX YP1200P、黒酸化鉄はTAROX BL-100Pの大粒径金属酸化物を使用した。
【0112】
参考例16:白粉(固形)
(成分) (%)
1.製造例2のアミノ変性シリコーン処理タルク 40
2.酸化チタン(平均粒子径:0.035μm) *1 2
3.タルク 残量
4.雲母チタン 15
5.窒化ホウ素 5
6.(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素) *5 3
7.ポリエチレン末 *12 5
8.メタクリル酸メチルクロスポリマー *13 10
9.ベンガラ 1
10.黄酸化鉄 2
11.黒酸化鉄 0.3
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 2
14.テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル 2
15.ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル 2
16.ジメチルポリシロキサン(6mPa・s) 3
17.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー *8 1
18.スクワラン 0.5
19.ケイ酸アルミニウムマグネシウム 1
*12ミペロンPM-200(三井化学社製)
*13:マツモトマイクロスフェアM-305(松本油脂製薬社製)
【0113】
(製造方法)
A.成分(1)~(12)を均一に混合する。
B.Aに、成分(13)~(19)を均一に混合したものを均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。
C.化粧料基材100部に水を70部添加して混合した。常温にて混練した後、これを樹脂皿容器に充填し、乾燥により水を除去して、白粉を得た。
【0115】
参考例17:頬紅(固形)
(成分) (%)
1.製造例1のアミノ変性シリコーン処理マイカ 15
2.製造例2のアミノ変性シリコーン処理タルク 2
3.微粒子酸化チタン(平均粒子径:0.035μm) *1 2
4.窒化ホウ素 5
5.赤色226号 0.5
6.オクチルトリエトキシシラン(3%)処理セリサイト 35
7.ナイロンパウダー(平均粒子径10μm) 5
8.スチレンパウダー(平均粒子径6μm) 5
9.タルク 残量
10.シリコーンエラストマー粉末 *14 1
11.ミリスチン酸亜鉛 1
12.メタクリル酸メチルクロスポリマー 4
13.(フッ化/水酸化/酸化)/
(Mg/K/ケイ素) *15 3
14.メチルパラベン 0.2
15.ジメチルポリシロキサン *10 3
16.PEG-10水添ひまし油 0.5
17.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 3
18.コハク酸ジ2-エチルヘキシル 3
19.(ジメチコン/ビニルジメチコン)
クロスポリマー *8 1
20.セージ油 0.1
21.アスタキサンチン 0.001
22.香料 適量
*14:トレフィルE-506C(東レダウコーニング社製)
*15:ミクロマイカMK-300K(片倉コープアグリ社製)

【0116】
(製造方法)
A.成分(1)~(14)を均一に混合する。
B.Aに、成分(15)~(22)を均一に混合したものを均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。
C.前記化粧料基材100部に溶剤(軽質流動イソパラフィン)を60部添加して混合し、スラリー状の混合物を得た。
D.前記混合物を丸型の金皿(直径5.5cm)に充填し、圧縮プレスし、溶剤を一部除去した。その後、70℃で一昼夜乾燥し、溶剤を除去して頬紅を得た。
【0118】
参考例18:アイブロウ(固形)
(成分) (%)
1.微粒子酸化チタン(平均粒子径:0.035μm) *1 2
2.窒化ホウ素(平均粒子径5μm:板状) 5
3.製造例1のアミノ変性シリコーン処理酸化マイカ 10
4.製造例2のアミノ変性シリコーン処理タルク 30
5.ベンガラ 0.5
6.黄酸化鉄 5
7.黒酸化鉄 1.5
8.メタクリル酸メチルクロスポリマー *13 2
9.ラウロイルリシン 1
10.(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素) *5 5
11.合成ワックス 2
12.リン脂質(1%)処理セリサイト 残量
13.無水ケイ酸(平均粒子径2μm) 5
14.ジメチルポリシロキサン *10 3
15.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー *8 0.5
16.リオレイン酸PEG-20酸ソルビタン 0.2
17.ヒドロキシステアリン酸コレステリル 1.5
18.加水分解コラーゲン 0.01
19.香料 適量

【0119】
(製造方法)
A.成分(1)~(10)を均一に混合する。
B.Aに、成分(11)~(19)を均一に混合したものを均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。
C.Bを樹脂皿に充填し、加圧成形して粉末固形状アイブロウを得た。
【0121】
実施24:パウダーファンデーション(固形)
下記の処方および製法によりスラリー製法のパウダーファンデーションを製造した。
(成分) (%)
1.シリコーン処理酸化チタン(平均粒子径15nm)*19
10.0
2.酸化鉄被覆酸化チタン(平均粒子径400nm) 10.0
3.ジメチコン処理酸化亜鉛(平均粒子径35nm)*20 5.0
4.窒化ホウ素 10.0
5.オキシ塩化ビスマス 6.5
6.焼成セリサイト 10.0
7.赤色酸化鉄 0.5
8.黄色酸化鉄 1.7
9.黒色酸化鉄 0.15
10.マイカ 残量
11.多孔質球状シリカ
(平均粒子径8μm、吸油量130ml/100g) 5.0
12.セルロース 3.0
13.ラウロイルリシン 4.0
14.アミノ変性シリコーン処理タルク*21 10.0
15.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル
内包ポリシリコーン-14カプセル 5.0
16.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 8.0
17.イソノナン酸イソトリデシル 5.0
18.ジメチルポリシロキサン 2.0
19.クロルフェネシン 0.2
*19:MTY-100SAS(テイカ社製)
*20:MZX-300M(テイカ社製)
*21:SE-TA-46R (三好化成社製)
(製造方法)
A.1~15をスーパーミキサーで均一に混合する。
B.Aに、成分16~19を均一に混合したものを加えて、均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。
C.前記化粧料基材100部に溶剤(イソドデカン)を50部添加して混合し、スラリー状の混合物を得た。
D.前記混合物を丸型の金皿(直径5.5cm)に11g充填し、プレス圧2.0kgf/cm、プレス時間4秒、紙6枚の条件で4回圧縮し、溶剤を一部除去した。その後、70℃で一昼夜乾燥し、溶剤を除去してファンデーションを得た。
【0122】
本実施例で得られたパウダーファンデーション(固形)について、その効果を実施例1に準じて評価したところ、このものは、透明感に優れ、きしみ感がなく、成型物表面のなめらかさに優れながらも、成型物の収縮がなく耐衝撃性にも優れたものであった。