(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ドローン誘導方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20230215BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64D47/08
(21)【出願番号】P 2020064663
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2020-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】二村 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】山川 宏明
(72)【発明者】
【氏名】白石 元幸
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 厳
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】川前 勝三郎
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗城 友花
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】大谷 光司
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-6916(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199940(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0031369(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109521781(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C13/18, 39/02
B64D47/08
G05D1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道路線に沿ってドローンを誘導するドローン誘導方法であって、前記鉄道路線に沿って設置される路線構成体に、路線情報および路線中の位置情報を記録した誘導タグを
、この路線構成体の長さ方向に沿って所定の間隔を空けて複数設けておき、この誘導タグに記録された情報を前記ドローンに設けた認識手段よって前記誘導タグから直接認識させることにより、前記ドローンを前記路線構成体に沿って飛行させ、
前記誘導タグの情報がバーコード又は二次元コードによって記録されており、前記認識手段がバーコードリーダ又は二次元コードリーダであり、
前記認識手段により、常時一つ又は二つの前記誘導タグを認識させながら、前記ドローンを飛行させることを特徴とするドローン誘導方法。
【請求項2】
前記路線構成体が、き電線であることを特徴とする請求項1に記載のドローン誘導方法。
【請求項3】
前記路線構成体が、吊架線であることを特徴とする請求項1に記載のドローン誘導方法。
【請求項4】
前記路線構成体が、トロリー線であることを特徴とする請求項1に記載のドローン誘導方法。
【請求項5】
鉄道路線に沿ってドローンを誘導するドローン誘導装置であって、前記鉄道路線に沿って設置される路線構成体に
、この路線構成体の長さ方向に沿って所定の間隔を空けて複数設けられ、路線情報および路線中の位置情報を記録した誘導タグと、前記ドローンに設けられ、前記誘導タグに記録された情報を直接取得する認識手段とを備え、
前記誘導タグの情報がバーコード又は二次元コードによって記録されており、前記認識手段がバーコードリーダ又は二次元コードリーダであり、
前記認識手段により、常時一つ又は二つの前記誘導タグを認識させながら、この認識手段によって得られた誘導タグに記録された情報に基づき前記ドローンを前記路線構成体に沿って飛行させるようにしたことを特徴とするドローン誘導装置。
【請求項6】
前記路線構成体が、き電線であることを特徴とする
請求項5に記載のドローン誘導装置。
【請求項7】
前記路線構成体が、吊架線であることを特徴とする
請求項5に記載のドローン誘導装置。
【請求項8】
前記路線構成体が、トロリー線であることを特徴とする
請求項5に記載のドローン誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンを予め設定した飛行経路に沿って飛行させるようにしたドローンの誘導方法およびその装置に係わり、特に鉄道路線に好適に用いられるドローンの誘導方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作や自動制御によって飛行するドローンが普及し、このドローンにカメラ等の撮像装置を搭載して、人間が近づくことが困難な箇所を空撮することが行なわれている。
【0003】
このようなドローンの飛行を誘導する技術が、たとえば、特許文献1に示されている。
【0004】
この技術は、GPS等から得られるドローンの実際の位置情報を取得するとともに、この取得された位置情報を予め設定された飛行経路の位置情報と比較しつつドローンを飛行させるようにしている。
【0005】
このようなドローンの誘導技術は、ドローンを自動で飛行させるという利便性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この技術では、ドローンの飛行経路を設定するシステムや、このシステムにドローンの飛行経路を予め入力する作業や、ドローンに実際の位置特定のためのシステム、および、ドローンの実位置を予め設定された飛行経路に合致させるためのソフトウェアを含めたシステムが必要となる。
【0008】
このために、飛行経路を予め設定作業やその変更作業をするために、訓練された特別な技術者が必要となり、また、ドローンを誘導する設備が高額で複雑なものとなりやすいといった問題点がある。
【0009】
一方、ドローンを物流に用いることが検討されているが、この物流は、一旦、物品を主要な集荷施設に集荷し、この集荷施設から自動車等によって個々の配達先へ搬送する形態が殆どであり、ここで、ドローンは複数ある集荷施設間における物品の搬送に用いることが想定されている。
【0010】
このようなドローンによる物品の搬送を行なう際に、集荷施設間の距離が長い場合が多く、また、集荷施設間には多くの障害物、たとえば、建築物や送電設備が存在する。
【0011】
これらの障害物を回避するには、障害物が比較的に少ない道路に沿って飛行経路を設定することが考えられている。
【0012】
このような飛行経路の設定方法であると、ドローンを、集荷施設間を直線的に飛行させることができず飛行距離が長くなる。
【0013】
また、道路の上方には電線や通信線等が複雑に敷設されており、かつ、その敷設状態を精度よく確認することができないことから、これらを避けて飛行経路を設定しなければならず、ドローンの飛行経路の設定を困難なものとしている。
【0014】
本発明は、前述した従来技術における不具合を解消すべくなされたもので、鉄道路線に着眼し、この鉄道路線を予め設定された飛行経路とすることにより、ドローンの自動飛行を行なうことができるとともに、その飛行経路の設定や変更を簡便な作業で行なうことができ、さらに、誘導設備のコストを極力軽減することの可能なドローンの誘導方法およびその装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のドローン誘導方法は、鉄道路線に沿ってドローンを誘導するドローン誘導方法であって、前記鉄道路線に沿って設置される路線構成体に、路線情報および路線中の位置情報を記録した誘導タグを設けておき、この誘導タグに記録された情報を前記ドローンに設けた認識手段よって認識させることにより、前記ドローンを前記路線構成体に沿って飛行させることを特徴とする。
【0016】
このように構成されたドローン誘導方法によれば、ドローンは、認識手段によって路線構成体に設けられている誘導タグを認識しつつ自動飛行を行なう。
【0017】
ここで、鉄道路線の適宜箇所に物品の集荷施設を設けることにより、集荷施設間の物品搬送を可能にする。
【0018】
そして、誘導タグを路線構成体に装着するといった簡便な作業によってドローンの飛行経路を設定することができる。
【0019】
また、ドローンに誘導タグを認識する認識手段を設けるだけでドローンの飛行経路の設定やその変更をすることができ、ドローン誘導に必要な誘導システムの簡素化と低価格化を実現することができる。
【0020】
一方、鉄道路線では、既に、路線情報や駅等の施設の位置情報や起点からの距離情報等が付与されており、これらの情報を誘導タグに記録することにより飛行経路を容易に予め設定することができ、これによっても、飛行経路の設定作業を簡便なものとすることができる。
【0021】
さらに、鉄道路線は、その全線において建築物や送電線等の障害物を避けて設置されており、その上方が大きく開放されていることが殆どである。
したがって、ドローンの飛行経路を設定する上において障害物による制限が少なくこの点からも飛行経路の設定作業を簡便なものとすることができる。
【0022】
また、鉄道路線は駅等の施設間を極力直線的結んで設置される。
このため、ドローンを直線的に飛行させることができるので、飛行経路を極力短くして搬送時間を短縮することができる。
【0023】
前記路線構成体として、き電線、吊架線、あるいは、トロリー線が用いられる。
【0024】
前記誘導タグの情報を、バーコード等の一次元コードや三次元コードであるQRコードによって記録し、認識手段をバーコードリーダやQRコードリーダで構成することができる。
【0025】
さらに、前記誘導タグの情報を無線送信可能な電子情報として記録し、認識手段を送信された電子情報を受信する受信手段とすることができる。
【0026】
本発明のドローン誘導装置は、鉄道路線に沿ってドローンを誘導するドローン誘導装置であって、前記鉄道路線に沿って設置される路線構成体に設けられ、路線情報および路線中の位置情報を記録した誘導タグと、前記ドローンに設けられ、前記誘導タグに記録された情報を取得する認識手段とを備え、この認識手段によって、前記誘導タグに記録された情報を取得して前記ドローンを前記路線構成体に沿って飛行させるようにしたことを特徴とする。
【0027】
前記路線構成体は、き電線、吊架線、あるいは、トロリー線を用いることができる。
【0028】
また、前記誘導タグの情報をバーコードあるいはQRコードによって記録し、前記認識手段をバーコードリーダあるいはQRコードリーダによって構成することができる。
【0029】
前記誘導タグの情報を送信可能な電子情報として記録し、前記認識手段を、送信される前記電子情報を受信する受信手段によって構成することができる。
【0030】
ドローン誘導装置をこのような構成とすることにより、前述したドローン誘導方法を有効に実施することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、鉄道路線を予め設定された飛行経路とすることにより、ドローンの自動飛行を行なうことができるとともに、その飛行経路の設定や変更を簡便な作業で行なうことができ、さらに、誘導設備のコストを極力軽減することの可能なドローンの誘導方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明のドローン誘導装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明のドローン誘導装置の一実施形態を示すもので、吊架線および誘導タグを示す要部の拡大図である。
【
図3】本発明のドローン誘導装置の一実施形態を示すもので、吊架線および誘導タグの変形例を示す要部の拡大図である。
【
図4】本発明のドローン誘導装置の一実施形態を示すもので、吊架線および誘導タグの変形例を示す要部の拡大図である。
【
図5】本発明のドローン誘導装置の一実施形態を示すもので、吊架線および誘導タグの変形例を示す要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本発明のドローン誘導方法に先だって、当該方法を有効に実施するためのドローン誘導装置の一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1において、符号1は、本実施形態のドローン誘導装置を示す。
【0034】
本実施形態のドローン誘導装置1は、鉄道路線2に沿ってドローン3を誘導するようにしたもので、鉄道路線2に沿って設置される路線構成体4と、この路線構成体4に装着され、路線情報および路線中の位置情報が記録された誘導タグ5と、ドローン3に設けられ、誘導タグ5に記録された情報を取得する認識手段6とを備えた構成となっている。
【0035】
前記路線構成体4は、車両7の走行軌道を形成するレール8や、車両7の上方に、レール8に沿って張設されたき電線9や、このき電線9に吊架線10を介して吊架され車両7に装着されたパンタグラフ12が摺接させられるトロリー線11が含まれる。
【0036】
本実施形態においては、路線構成体4として、き電線9を用いた例について説明する。
【0037】
前記き電線9には、その長さ方向に所定間隔をおいて誘導タグ5が全長にわたって装着されている。
【0038】
この誘導タグ5には、鉄道路線2の路線情報(運行経路等)や起点からの距離情報等が記録されており、路線情報によりドローン3の飛行経路が形成されるようになっている。
【0039】
そして、これらの路線情報や距離情報等は、たとえば、
図2に示すように多数の色の組み合わせによってコード化されている。
【0040】
前記認識手段6は、本実施形態では画像認識装置が用いられ、この画像認識装置によって、誘導タグ5に記録された路線情報や距離情報を取得するとともに、これらの情報によって形成された飛行経路に沿って飛行を行なうようになっている。
【0041】
ここで、誘導タグ5によるドローン3の飛行経路の形成は、誘導タグ5の個々に飛行方向の情報を記録しておくことによって対応可能であるが、記録すべき情報が増えてしまう。
【0042】
このような懸念を抑制するために、本実施形態においては、
図1に示すように、2つの誘導タグ5が認識手段6の撮像範囲に複数(本実施形態では2個)位置するように、誘導タグ5の設置間隔が設定されている。
【0043】
これによって、たとえば、飛行方向後方の誘導ダグ5の路線情報と飛行方向前方の路線情報との比較により、飛行方向後方の誘導タグ5を通過した後の飛行方向を決定することができる。
したがって、新たな記録情報を付加することなく飛行経路が形成される。
【0044】
ついで、このように構成されたドローン誘導装置1の作用とともに、本発明のドローン誘導方法について説明する
ドローン3は、認識手段6によってき電線9に設けられている誘導タグ5を順次連続して認識することにより自動飛行を行なう。
【0045】
ここで、鉄道路線2の適宜箇所に物品の集荷施設を設けることにより、集荷施設間の物品搬送を可能にする。
【0046】
そして、誘導タグ5をき電線9に装着するといった簡便な作業によってドローン3の飛行経路を設定することができる。
【0047】
また、ドローン3に誘導タグを5認識する認識手段6を設けるだけでドローン3の飛行経路の設定やその変更をすることができ、ドローン誘導に必要な誘導システムの簡素化と低価格化を実現することができる。
【0048】
一方、鉄道路線2では、既に、路線情報や駅等の施設の位置情報や起点からの距離情報等が付与されており、これらの情報を誘導タグ5に転用して記録することにより飛行経路を容易に予め設定することができ、これによっても、飛行経路の設定作業を簡便なものとすることができる。
【0049】
さらに、鉄道路線2は、その全線において建築物や送電線等の障害物を避けて設置されており、その上方が大きく開放されていることからドローンの飛行経路を設定する上において障害物による制限が少なくこの点からも飛行経路の設定作業を簡便なものとすることができる。
【0050】
また、鉄道路線2は駅等の施設間を極力直線的に結んで設置される。
このため、ドローン3を極力直線的に飛行させることができるので、飛行経路を極力短くして搬送時間を短縮することができる。
【0051】
なお、前記実施形態において示した各構成部材は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
たとえば、
図3に示すように、誘導タグ5の情報をバーコード13等の一次元コードで記録したり、
図4に示すように、三次元コードであるQRコード14によって記録したり、認識手段6をバーコードリーダやQRコードリーダ(図示略)で構成してもよい。
【0053】
さらに、前記誘導タグの情報を無線送信可能な電子情報として記録し、認識手段を送信された電子情報を受信する受信手段とすることができる。
【0054】
前記路線構成体は、き電線、吊架線、あるいは、トロリー線を用いることができる。
【0055】
また、前記誘導タグの情報をバーコードあるいはQRコードによって記録し、前記認識手段をバーコードリーダあるいはQRコードリーダによって構成することができる。
【0056】
さらに、
図5(a)および(b)に示すように、前記誘導タグ15に記録される情報を送信可能な電子情報とし、ドローン3に設けられる認識手段を、送信される前記電子情報を受信する受信手段15とすることができる。
【0057】
ここで、前記誘導タグ15は、路線情報や位置情報等を記憶するRAM17、これらの情報をドローン3へ無線送信する送信機18、および、RAM17への書き込みや送信機18の動作を制御するコントローラ19を備える。
【符号の説明】
【0058】
1 ドローン誘導装置
2 鉄道路線
3 ドローン
4 路線構成体
5 誘導タグ
6 認識手段
7 車両
8 レール
9 き電線
10 吊架線
11 トロリー線
12 パンタグラフ
13 バーコード
14 QRコード(商標登録)
15 誘導タグ
16 受信手段
17 RAM
18 送信機
19 コントローラ