IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図1
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図2
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図3
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図4
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図5
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図6
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図7
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図8
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図9
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図10
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図11
  • 特許-シート状マスクの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】シート状マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230215BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
A62B18/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020132865
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029548
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 尚大
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕史
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183342(JP,A)
【文献】特開2017-070542(JP,A)
【文献】特開2020-033119(JP,A)
【文献】特開平06-135627(JP,A)
【文献】特開2018-084553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シートと第2シートとの間に機能性部材を有するシート状部材が、二つ折りされ、相対向する部位が外形シール部において互い接合された構成を有するマスク本体を備えるシート状マスクの製造方法であって、
連続搬送される帯状の第1シートの一面に接着剤を塗布して塗布部を形成する塗布部形成工程と、
前記機能性部材を、前記塗布部に接着させる第1接着工程と、
第1接着工程後に、帯状の第2シートを、帯状の第1シートにおける前記機能性部材が配されている面側に重ね合わせて接着する第2接着工程と、
第2接着工程により形成される複合部材を幅方向に二つ折りする二つ折り工程と、
二つ折りした前記複合部材における相対向する部位どうしを接合して前記外形シール部を形成する外形シール部形成工程と、
前記外形シール部形成工程後に、前記複合部材を切断して、前記マスク本体を切り出す切断工程と
前記マスク本体における前記機能性部材の配置位置を画像処理によって計測する画像計測工程と、を備えており、
前記外形シール部形成工程における前記複合部材の搬送速度に対して、該外形シール部形成工程よりも上流側における該複合部材の搬送速度が遅くなるように、該複合部材を搬送し、
前記画像計測工程において計測された前記機能性部材の配置位置に応じて前記複合部材の搬送速度を制御し、
前記二つ折り工程から前記外形シール部形成工程までの間において、前記複合部材を、第1ロール及び第2ロールからなる挟圧部で挟圧し、
第1ロール及び第2ロールはいずれも、軸心方向の中央域が相対的に小径となっている小径部と、軸心方向の側方域が相対的に大径となっている一対の大径部とを備えた段付きロールであり、
第1ロール及び第2ロールは、各ロールの前記小径部どうし及び前記大径部どうしが対向するように配置されており、
前記挟圧部によって前記複合部材を挟圧するときには、該複合部材における前記機能性部材が存在する部位が、第1ロール及び第2ロールにおける前記小径部を通過するようにするとともに、該複合部材における該機能性部材が存在する部位の両側部域が、第1ロール及び第2ロールにおける前記大径部を通過するようにして該両側部域が該大径部によって挟圧されるようにする、シート状マスクの製造方法。
【請求項2】
前記二つ折り工程において前記複合部材を前記挟圧部で挟圧する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記外形シール部形成工程における前記複合部材の搬送速度に対して、前記二つ折り工程における該複合部材の搬送速度が遅くなるように、該複合部材を搬送する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記二つ折り工程における前記複合部材の搬送速度に対して、前記第1接着工程よりも上流における該複合部材の搬送速度が遅くなるように、該複合部材を搬送する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記画像計測工程において計測された前記機能性部材の配置位置が、適正な配置位置に対して許容範囲外である場合、許容範囲外である該機能性部材を有する前記シート状マスクを、製造ライン外へ排出する不良品排出工程を更に備える請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の口や鼻を覆うマスクとして、不織布等のシート状物により形成されるマスク本体を有するシート状マスクが知られている。例えば本出願人は先に、二つ折りされた構造を有するマスク本体を備えたシート状マスクの製造方法を提案した(特許文献1参照)。このシート状マスクにおいては、マスク本体における折り線を挟んで対称な位置に発熱体が配置されており、マスクの使用状態において該発熱体から熱が発生するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-183342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシート状マスクにおいては、マスク本体のうち、発熱体が存在している部位と、存在していない部位とで厚みに差が生じている。この理由は、発熱体は一般に鉄粉等の被酸化性金属の粉末を含む嵩高い状態になっているからである。したがって、二つ折り工程を経てシート状マスクを製造する過程において、搬送される製造途中のシート状マスクにも、発熱体の存在に起因する厚み差が生じている。この厚み差は、搬送される製造途中のシート状マスクに撓みや歪みを生じさせたり、摩擦を生じさせたりする一因となる。これらの事象は、シート状マスクを精度よく製造することや、良好な外観を有するシート状マスクを製造することの妨げとなる。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るシート状マスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、 第1シートと第2シートとの間に機能性部材を有するシート状部材が、二つ折りされ、相対向する部位が外形シール部において互い接合された構成を有するマスク本体を備えるシート状マスクの製造方法であって、
連続搬送される帯状の第1シートの一面に接着剤を塗布して塗布部を形成する塗布部形成工程と、
前記機能性部材を、前記塗布部に接着させる第1接着工程と、
第1接着工程後に、帯状の第2シートを、帯状の第1シートにおける前記機能性部材が配されている面側に重ね合わせて接着する第2接着工程と、
第2接着工程により形成される複合部材を幅方向に二つ折りする二つ折り工程と、
二つ折りした前記複合部材における相対向する部位どうしを接合して前記外形シール部を形成する外形シール部形成工程と、
前記外形シール部形成工程後に、前記複合部材を切断して、前記マスク本体を切り出す切断工程とを備えており、
前記外形シール部形成工程における前記複合部材の搬送速度に対して、該外形シール部形成工程よりも上流側における該複合部材の搬送速度が遅くなるように、該複合部材を搬送し、
前記二つ折り工程から前記外形シール部形成工程までの間において、前記複合部材を、第1ロール及び第2ロールからなる挟圧部で挟圧し、
第1ロール及び第2ロールはいずれも、軸心方向の中央域が相対的に小径となっている小径部と、軸心方向の側方域が相対的に大径となっている一対の大径部とを備えた段付きロールであり、
第1ロール及び第2ロールは、各ロールの前記小径部どうし及び前記大径部どうしが対向するように配置されており、
前記挟圧部によって前記複合部材を挟圧するときには、該複合部材における前記機能性部材が存在する部位が、第1ロール及び第2ロールにおける前記小径部を通過するようにするとともに、該複合部材における該機能性部材が存在する部位の両側部域が、第1ロール及び第2ロールにおける前記大径部を通過するようにして該両側部域が該大径部によって挟圧されるようにする、シート状マスクの製造方法を提供することによって前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、発熱体をはじめとする機能性部材を含むシート状マスクの製造過程において該機能性部材の位置ずれが起こりづらく、良好な外観を有するシート状マスクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のシート状マスクの製造方法により製造されるシート状マスクの一例を示す図であり、図1(a)は該シート状マスクを立体形状としたときの斜視図であり、図1(b)は、該シート状マスクの平面図であり、図1(c)は、該シート状マスクを展開状態としたときの平面図である。
図2図2は、図1(b)におけるII-II線模式断面図である。
図3図3は、本発明のシート状マスクの製造方法に好ましく用いられる製造装置の概略斜視図である。
図4図4は、本発明のシート状マスクの製造方法に係る、外形シール部形成工程を行った後の、搬送される複合部材の平面図である。
図5図5は、図3に示す装置に備えられている挟圧部の斜視図である。
図6図6は、図3に示す装置を用いてシート状マスクを製造する過程での平面図である。
図7図7は、図6におけるVII-VII線断面図である。
図8図8は、紙継ぎ状態での図6におけるVII-VII線断面図である。
図9図9は、図3に示す装置を用いてシート状マスクを製造する過程での平面図である。
図10図10は、図9におけるX-X線断面図である。
図11図11は、紙継ぎ状態での図9におけるX-X線断面図である。
図12図12は、実施例1及び比較例1における発熱体の位置ずれの程度及び張力の変動率の測定結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のシート状マスクの製造方法を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の実施態様であるシート状マスク1の製造方法は、第1シート31と第2シート32との間に機能性部材33を有するシート状部材3が、二つ折りされ、相対向する部位が外形シール部5において互い接合された構成のマスク本体2を備えるシート状マスク1を製造する方法である。
【0009】
本発明のシート状マスクの製造方法により製造されるシート状マスクの一例を図1(b)に示す。図1(b)に示すシート状マスク1は、図1(a)に示すように、立体形状、好ましくはカップ形状に変形可能なマスク本体2を備えている。
【0010】
マスク本体2は、シート状部材3(図1(c)参照)が、二つ折り部4に沿って二つ折りされている。二つ折り部4は、後述する二つ折り工程において、シート状部材3の原反である帯状の複合部材34が、その幅方向の中央部に設定される二つ折り予定部31aに沿って折り曲げられて形成されている。また二つ折りされたシート状部材3は、二つ折りにより相対向する部位が、外形シール部5において互いに接合されている(図1(a)及び(b)参照)。外形シール部5は、平面状としたマスク本体2をその面の法線方向から視た平面視(図1(b)参照)において、マスク本体2の外縁部に沿って形成されている。外形シール部5は、マスク本体2における二つ折り部4を挟んでその上下に位置するように形成されている一方、二つ折り部4とは反対側の部分に、相対向するシート状部材3どうしが接合されていない開放外縁部6を有している。そして、開放外縁部6を互いに遠ざけ、相対向するシート状部材3どうしの間に空間が形成されるようにマスク本体2を変形させることで、マスク本体2の形状をカップ形状に変形させることができるようになっている(図1(a)参照)。シート状マスク1は、マスク本体2のみからなるものであってもよいし、マスク本体2に耳に掛けて装着するための耳掛け部(図示せず)を設けたものであってもよい。耳掛け部は、マスク本体2に、耳を挿入可能なスリットを形成して設けてもよく、マスク本体2に、別体の紐やスリットを形成したシート部材等の耳掛け部材を接合等して設けてもよい。
【0011】
マスク本体2におけるシート状部材3は、第1シート31及び第2シート32のいずれが内側となるように二つ折りされていてもよいが、図1(a)及び(b)に示す例では、後述する間欠塗布部形成工程又は連続塗布部形成工程において接着剤71,72を塗布される側の第1シート31側が外側、それとは反対側の第2シート32側が内側となるように二つ折りされている。
マスク本体2の形状は特に制限されるものではないが、図1に示す例では、マスク本体2は、二つ折り部4に沿う方向における中心線CL1を対称軸として線対称な形状を有している。また図1に示す例では、その中心線CL1は、後述する図3に示すとおり、複合部材34の搬送方向において間欠塗布部41の中央を通る線となっている。
【0012】
シート状部材3は、図2に示すように、第1シート31と第2シート32と両シート31,32間に配された機能性部材33とを有している。第1シート31の一面側には接着剤(図示せず)が塗布されており、該接着剤を介して、第1シート31の一面側に、機能性部材33及び第2シート32が接着されている。接着剤としては、各種公知の接着剤等を用いることができ、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。
シート状部材3の形状は特に制限されるものではないが、図1に示す例では、展開状態のシート状部材3は、二つ折り予定部31aを対称軸として線対称な平面視形状を有している。
【0013】
第1シート31及び第2シート32としては、任意のシート材料を用いることができ、例えば、不織布、織布、編み布等の繊維材料からなる繊維シート、樹脂フィルム、繊維シートと樹脂フィルムとのラミネート材、これらとネット状部材との複合材等を用いることができるが、不織布又は不織布と樹脂フィルムやネット状部材等の他の部材との複合材であることが好ましい。不織布は、不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布等が挙げられ、単層でも多層構造でもよい。
第1シート31及び第2シート32は、製品の設計に応じて任意の材料を用いることができ、それぞれ、通気性シートでも非通気性シートでもよく、またそれぞれ、伸縮性を有していてもよく、非伸縮性であってもよい。機能性部材として、蒸気の放散性の高い発熱体を用いる場合、第1シート31及び第2シート32のうち、マスク本体2の内表面側に配される方のシートが通気性であることが、放散される蒸気の作用をシート状マスクの使用者の身体に効率よく作用させる観点から好ましい。
伸縮性を有するシートとしては、構成繊維として弾性繊維を含むシート、弾性フィラメントを含むシート、ゴム編等の構造により伸縮性を発現するシート等が挙げられる。
【0014】
第1シート31及び第2シート32は、少なくとも一方、好ましくは双方が、熱融着性繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン-ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン-ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル-ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール-ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール-ポリエステル複合繊維等が挙げられる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維のいずれをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
機能性部材33としては、発熱組成物を含む発熱体、冷感剤や香料等の保持体等が挙げられる。シート状マスク1は、機能性部材33として発熱組成物を含む発熱体を有している。発熱体33は、例えば図2に示すように、通気性シート33aと、非通気性シート33bと、これらのシート33a,33bの間に配された発熱組成物33cとを有するものである。発熱体33は、通気性シート33aが第2シート32側に位置するように配されていることが好ましい。
【0016】
発熱組成物33cは、被酸化性金属、炭素成分及び水を含んでいることが好ましい。被酸化性金属としては、酸化反応熱を生ずる金属が好ましく用いられ、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。中でも、取扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄が好ましく、特に鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉などが挙げられる。被酸化性金属の粒子の粒径は、例えば0.1~300μm程度とすることができる。
前記炭素成分は、保水能、酸素供給能及び触媒能の少なくとも1つの機能を有するものであり、この3つを兼ね備えているものが好ましい。炭素成分として、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、湿潤時に酸素を吸着しやすいことや、発熱体中の水分を一定に保つ観点から、活性炭がより好ましく用いられる。
発熱組成物33cは、更に保水材を含んでおり、蒸気放散性に優れたものであることが好ましい。保水材としては、高吸収性ポリマー(SAP)、でんぷん、ゼオライト、パーライト、バーミュキュライト等が挙げられる。
【0017】
次に、本発明のシート状マスクの製造方法の一実施態様として、上述したシート状マスク1を製造する方法について図3図11を参照しながら説明する。
本実施態様のシート状マスク1の製造方法は、塗布部形成工程と、第1接着工程と、第2接着工程と、二つ折り工程と、外形シール部形成工程と、切断工程とを備えている。図3には、本実施態様のシート状マスク1の製造方法に用いられる製造装置100の概略図が示されている。
【0018】
図3に示すとおり、塗布部形成工程においては、連続搬送される帯状の第1シートの一面に接着剤を塗布して塗布部を形成する。塗布部形成工程は、好ましくは間欠塗布部形成工程と連続塗布部形成工程とを含んでいる。
【0019】
間欠塗布部形成工程においては、図3に示すとおり、連続的に搬送される帯状の第1シート31の一面における搬送方向Xに直交する幅方向Yの中央域に、接着剤71を搬送方向Xに間欠的に塗布して間欠塗布部41を形成する。間欠塗布部41は、帯状の第1シート31の幅方向Yの中央域に、該第1シート31の搬送方向Xに沿って、相互間に間隔を有するように間欠的に形成される。間欠塗布部41は、帯状の第1シート31の幅方向Yにおいて連続的又は間欠的に形成することができる。間欠塗布部41における接着剤71の塗布パターンは、特に制限されず、例えば、間欠塗布部の全域に隙間なく塗布してもよいし、ストライプ状、ドット状、ファイバー状、格子状、網状、市松模様状、環状等であってもよい。
間欠塗布部41の平面視形状は特に制限されるものではないが、図示例では、間欠塗布部41は、第1シート31における二つ折り予定部を対称軸として線対称な平面視形状を有している。
【0020】
連続塗布部形成工程においては、図3に示すとおり、帯状の第1シート31の一面における幅方向Yの端部域に、接着剤72を塗布して連続塗布部42を形成する。連続塗布部42は、帯状の第1シート31における幅方向Yにおいて、間欠塗布部41が形成される中央域を挟む両側に位置する二つの端部域のそれぞれに、該第1シート31の搬送方向Xに沿って連続的に形成される。
【0021】
間欠塗布部形成工程及び連続塗布部形成工程は、どちらの工程を先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。また間欠塗布部形成工程及び連続塗布部形成工程で塗布する接着剤71,72は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施態様では、製造装置100に備えられた塗布部11によって間欠塗布部形成工程及び連続塗布部形成工程を同時に行い、同じ接着剤71,72を第1シートの一面に塗布している。塗布部11としては、例えば、コーター式、グラビア式、凸版式、ビード式、スプレー式等の塗布装置を用いることができる。
【0022】
第1接着工程においては、図3に示すとおり、塗布部形成工程において形成された塗布部に発熱体等の機能性部材33(以下「発熱体33」という)を接着させる。例えば発熱体33を、間欠塗布部41に接着させることができる。具体的には、発熱体33を第1シート31の一面側に配し、発熱体33における第1シート31と対向する面の一部又は全面を間欠塗布部41に接着させる。本実施態様では、好ましくは発熱体33の中央部を含む部分、より好ましくは発熱体33の片面全面を間欠塗布部41に接着させる。
【0023】
第2接着工程は、第1接着工程後に行う。第2接着工程においては、図3に示すとおり、帯状の第2シート32を、帯状の第1シート31における発熱体33が配されている面側に重ね合わせ、第1シート31及び第2シート32を、連続塗布部42を介して接着させる。第1シート31と第2シート32とは、幅方向Yにおける中央部どうしが、第1及び第2シート31,32を平面視して重なるように重ね合わせることが好ましい。また、第1シート31と第2シート32とは、幅方向Yの長さが略同じであることが好ましく、第2接着工程では、第1シート31の幅方向Yの両側縁と、第2シート32の幅方向Yの両側縁とが平面視して重なるように、両シート31,32を重ねることが好ましい。
第2接着工程により、帯状の第2シート32と帯状の第1シート31との間に、発熱体33が搬送方向Xに間欠的に保持されている帯状の複合部材34が形成される。
複合部材34は、製造されたシート状マスク1におけるシート状部材3に対応する部材である。
【0024】
二つ折り工程においては、図3に示すとおり、第2接着工程において形成される複合部材34を、幅方向Yに二つ折りする。二つ折り工程において二つ折りした位置は、製造されるシート状マスク1における二つ折り部4の位置と一致する。本実施態様では、製造装置100に備えられた二つ折りガイド12によって二つ折り工程を行っている。二つ折りガイド12は、その側面視において逆台形状を有し、鉛直方向Zの上下に位置する上端縁12a及び下端縁12bを有している。また二つ折りガイド12は、その主面が鉛直方向Zに沿うように配されている。本実施態様では、二つ折り工程において、複合部材34の幅方向Yの中央域に第2シート32側から二つ折りガイド12の下端縁12bを当接させ二つ折りの基点を形成した後、複合部材34の幅方向Yの両側の端部域34s,34sを鉛直方向Zに沿う状態、好ましくは鉛直方向Zと平行な状態となるまで立ち上げることによって、複合部材34の搬送方向Xに沿って二つ折りしている。
【0025】
外形シール部形成工程においては、図3に示すとおり、二つ折り工程において二つ折りした複合部材34に、外形シール部5を形成する。外形シール部5は、二つ折りした複合部材34における、二つ折りにより相対向することになった部位どうしをシールして形成される。
外形シール部5は、二つ折りした複合部材34の搬送方向Xにおける個々の間欠塗布部41の前後それぞれに形成され、外形シール部5は、複合部材34を平面視して間欠塗布部41より前方に位置する前シール部と、該間欠塗布部41より後方に位置する後シール部とを有する。
外形シール部5を形成するためのシール手段としては、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着等が挙げられる。本実施態様では、製造装置100が有する外形シール部形成部13により、外形シール部形成工程を行っている。
【0026】
外形シール部5は、マスク本体2を、鼻及び顎に沿った形状に変形させ、顔の立体形状に対するフィット性のよいシート状マスクを形成する観点から、図4に示すように、複合部材34の幅方向Yにおいて、二つ折り部34aに向かって前シール部5aと後シール部5bとの間隔が減少していることが好ましい。図4に示す外形シール部5においては、前シール部5a及び後シール部5bは、いずれも、複合部材34の二つ折り部34a側から複合部材34の端部域34s側に向かって、間欠塗布部41から離れる方向に傾斜している。より詳細には、前シール部5aは、二つ折り部34a側から前記端部域34s側に向かって、搬送方向Xの前方に傾斜しており、後シール部5bは、二つ折り部34a側から前記端部域34s側に向かって、搬送方向Xの後方に傾斜している。前シール部5a及び後シール部5bは、中心線CL1(図1参照)を対称軸として線対称に形成されていてもよいし、非対称に形成されていてもよい。
【0027】
切断工程は、外形シール部形成工程後に行う。切断工程においては、複合部材34を切断して、個々のマスク本体2を切り出す。具体的には、外形シール部5の外方(すなわち二つ折り部34a側)であって且つ外形シール部5に隣接する位置において、複合部材34を外形シール部5に沿って切断する。本実施態様では、図3に示すとおり切断装置14により切断工程を行っている。切断装置14としては、例えば、互いに対向するカッターロール14aとアンビルロール14bとを備えたロータリーカッター等を用いることができる。
【0028】
切断工程によって切り出したマスク本体2は、そのままシート状マスク1としてもよいし、マスク本体2に、耳掛け用のスリットや耳掛け部材を後加工により付加してシート状マスク1としてもよい。また、後加工に代えて、第2接着工程と二つ折り工程との間に、左右に分離可能な耳掛け部材や左右一対の耳掛け部材を、マスク本体2として切り出される部位に接合する耳掛け部材の接合工程を設けることもできる。
【0029】
本実施態様のシート状マスク1の製造方法は、二つ折り工程と外形シール部形成工程との間に、図4に示す複合部材34の幅方向Yの両端部域34sどうしを連続的にシールする仮留め工程を備えていることが好ましい。仮留め工程は、図3に示すとおり製造装置100に備えられた仮留め装置15により行うことができる。具体的には、仮留め装置15により、二つ折りした複合部材34の両端部34sどうしを搬送方向Xに連続的にシールして仮留めシール部34cを形成する(図3及び図4参照)。仮留めシール部34cは、連続塗布部42の側縁42eと複合部材34の側縁34eとの間に形成することが好ましい。仮留め工程を行うことにより、複合部材34を二つ折りした状態で仮留めすることができるため、二つ折り工程の後続の工程において、複合部材34が二つ折りされた状態を安定して維持することができるようになり、製造されるシート状マスク1を構成する各部材がずれたり、シート状マスク1によれが生じたりすることを一層防止することができる。
【0030】
仮留めシール部34cは、図4に示すように、二つ折り工程により二つ折りされた複合部材34の幅方向Yにおける二つ折り部34a側とは反対側の、後にマスク本体2として切り出されない部分に形成することが、製品部分の内側への異物混入を防止できる点やマスク本体を切り出した後に廃棄物として処理する際に部材がばらけることなく効率よく回収できる点から好ましい。
【0031】
仮留め工程において、複合部材34の両端部34sどうしをシールする手段は、特に制限されず、超音波溶着、熱溶着、高周波溶着等が挙げられるが、これらの中でも、熱によるシート材の変形を抑制できる観点から、超音波溶着が好ましい。
【0032】
本実施態様のシート状マスク1の製造方法は、図3に示すとおり、二つ折り工程と外形シール部形成工程との間に、二つ折りされた複合部材34を搬送しながらその搬送方向Xに沿う方向を軸方向として軸周りに捻る捻り工程を備えていることが好ましい。捻り工程は、上述した仮留め工程の完了後に行われることが好ましい。捻り工程においては、二つ折りされた複合部材34を、その両側面35が、水平方向の両側を向いた状態から、鉛直方向Zの上下を向いた状態となるように、搬送方向Xに90度回転させることが好ましい。
【0033】
具体的には、図3に示すとおり、複合部材34を、一対の鉛直ガイドロール16a,16aの間に導入し、一対の無端ベルト16c,16cの間で複合部材34を挟持しながら、一対の水平ガイドロール16b,16b間まで搬送することによって、複合部材34を、搬送方向Xに沿う方向を捻りの軸方向として、その軸周りに90度回転させる。
【0034】
以上のとおりの製造方法によって、目的とするシート状マスク1が得られる。ところで上述の製造方法においては、複合部材34の安定搬送を目的として、該複合部材34を一対のロールからなる挟圧部によって挟圧しながら搬送を行うことが有利である。挟圧部は図1に示す製造装置100に1つ又は2つ以上具備させることができる。同図に示す製造装置100においては、第1挟圧部51、第2挟圧部52及び第3挟圧部53の3つの挟圧部が設けられている。第1挟圧部51は、二つ折り工程に設けられている。第2挟圧部52は、第1挟圧部51よりも上流側に設けられている。詳細には、二つ折り工程が行われる直前の位置に第2挟圧部52が設けられている。第3挟圧部53は、第2挟圧部52よりも上流側に設けられている。詳細には、第1シート31と第2シート32との合流部に第3挟圧部53が設けられている。
【0035】
各挟圧部51,52,53はいわゆるニップロールと呼ばれるものである。一般的なニップロールは、直径が一定である2本の平滑ロールから構成されている。これに対して本発明の製造方法においては、一般的なニップロールは用いておらず、特殊なニップロールを用いて複合部材34を挟圧しつつ搬送を行っている。以下、本製造方法で用いられるニップロールについて説明する。
【0036】
複合部材34には発熱体33が配置されている。発熱体33は、被酸化性金属の粉末などを含む、厚みのある嵩張った部材である。したがって複合部材34は、発熱体33が存在する部位と、発熱体33が存在しない部位とで、厚みが大きく異なっている。特に複合部材34が二つ折り工程において二つ折りされた状態においては、二つの発熱体33が重なった状態になることから(図2参照)、発熱体33が存在する部位と、発熱体33が存在しない部位とでの厚み差が一層顕著となる。このような厚み差を有する複合部材34を一般的なニップロール、すなわち直径が一定である2本の平滑ロールを用いて挟圧すると、複合部材34が有する厚み差に起因して、該複合部材34を構成するシート31,32に撓みや歪みが生じたり、摩擦に起因する抵抗が生じたりする。その結果、搬送過程にある複合部材34の張力に変動が生じやすくなり、そのことが発熱体33の位置ずれの原因となる。なお、発熱体33は、上述したとおり第1シート31及び/又は第2シート32と接着剤によって接合されているので、第1シート31及び第2シート32に対して絶対的な位置ずれは生じない。ここでいう位置ずれとは、発熱体33並びに第1及び第2シート31,32を含む複合部材34全体が、テンションの変動等に起因して意図せず上流側又は下流側に進むことによって、外形シール部の実際の形成位置が予定位置から上流側又は下流側にずれることをいう。発熱体33の位置ずれが生じない場合には、図1(b)に示すとおり、中心線CL1に対して発熱体33の配置位置が上下対称であるのに対して、発熱体33の位置ずれが生じると、中心線CL1に対して発熱体33の配置位置が上下非対称となる。このことはシート状マスクの外観低下の一因となる。そこで本発明においては、第1挟圧部51に、図5に示す形状をした第1ロール51a及び第2ロール51bからなる一対のロールを配置している。同図に示すとおり、第1ロール51a及び第2ロール51bはいずれも、段付きロールである。
【0037】
第1ロール51a及び第2ロール51bはいずれも、軸心方向の中央域が相対的に小径となっている小径部511と、軸心方向の側方域が相対的に大径となっている一対の大径部512とを備えている。
第1ロール51aにおける小径部511の幅と、第2ロール51bにおける小径部511の幅とは同じになっている。また、第1ロール51aにおける大径部512の幅と、第2ロール51bにおける大径部512の幅とは同じになっている。第1ロール51aにおける小径部511の直径と、第2ロール51bにおける小径部511の直径とは同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。第1ロール51aにおける大径部512の直径と、第2ロール51bにおける大径部512の直径とは同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
第1ロール51a及び第2ロール51bをそれらの軸心が平行になるように且つ各ロール51a,51bの小径部511どうし及び大径部512どうしが対向するように配置すると、図5に示すとおり、各ロール51a,51bの小径部511の周面どうしの間に空間Sが生じる。各ロール51a,51bはいずれも駆動源(図示せず)に接続されており、駆動源からの回転力が伝達されて搬送方向Xに沿って回転可能になっている。
【0038】
第1ロール51a及び第2ロール51bを備えた第1挟圧部51によって複合部材34を挟圧する方法は次のとおりである。第1挟圧部51によって複合部材34を挟圧するときには、複合部材34における発熱体33が存在する部位が、各ロール51a,51bにおける小径部511を通過するようにする。この部位は、複合部材34における厚みの大きな部位である。これとともに、複合部材34における発熱体33が存在する部位の両側部域、すなわち複合部材34における発熱体33が存在しない部位が、各ロール51a,51bにおける大径部512を通過するようにして両側部域が大径部512によって挟圧されるようにする。発熱体33の両側部域は、複合部材34における厚みの小さな部位である。
【0039】
複合部材34における発熱体33が存在する部位が、第1ロール51a及び第2ロール51bにおける小径部511を円滑に通過するようにするために、軸方向に沿う小径部511の長さL1(図5参照)を、搬送方向Xと直交する方向における発熱体33の長さよりも長くすることが好ましい。
【0040】
以上のとおりの態様で複合部材34を第1挟圧部51によって挟圧すると、図6及び図7に示すとおり、複合部材34のうち、厚みの大きな部位である発熱体33が存在する部位は、各ロール51a,51bの小径部511の周面どうしの間に生じた空間Sを通過するので、通過に際して大きな抵抗が発生しにくい。一方、複合部材34のうち、発熱体33が存在する部位の両側部域は厚みが小さいので、やはり大きな抵抗を生じることなく各ロール51a,51bにおける大径部512どうしによって挟圧される。その結果、複合部材34を構成するシート31,32に撓みや歪みが生じにくくなり、また摩擦に起因する抵抗が生じにくくなる。したがって、複合部材34の搬送中に該複合部材34に加わる張力の変動が抑制されて発熱体33の位置ずれが効果的に防止され、最終的に得られるシート状マスク1はその外観が良好なものとなる。
【0041】
上述した利点は、帯状である第1シート31又は第2シートを継ぐときに一層顕著なものとなる。第1シート又は第2シートは、ロール状に巻かれた原反が繰り出されて加工されており、この原反が消費されると次の新しい原反に交換する必要がある。このとき、搬送中の旧原反の末端部と新原反の先端部をスプライシングテープなどの接合部材で継ぎ、連続的にシートを搬送する操作を一般に「紙継ぎ」あるいは単に「継ぎ」と呼ぶ。
第1シート31又は第2シートを継ぐときの状態を、図8を参照しながら説明する。図8には、帯状である第1シート31を、別の第1シート31’で継いだ状態が示されている。同図においては、先に使用していた第1シート31の外面に、スプライシングテープSTを介して、新たに使用する別の第1シート31’が接合されている状態が示されている。この状態においては、先に説明した図7に示す状態に比べて、複合部材34を構成する部材の点数が多くなっているので、その分だけ発熱体33が存在する部位の厚みが大きくなっている。そのような場合であっても、厚みの増加分が、各ロール51a,51bの小径部511の周面どうしの間に生じた空間Sによって吸収されるので、シート31,31’を継いだ箇所が第1挟圧部51を通過するときの抵抗の増大を抑制することができる。
【0042】
第1挟圧部51によって複合部材34が挟圧されるときの抵抗を減じる観点から、各ロール51a,51bの小径部511の周面どうしの距離をD1とし、二つ折りされた状態の複合部材34における発熱体33が存在する部位での厚みをT1としたとき、T1/D1の値が0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることが更に好ましく、0.9以上であることが一層好ましい。また、T1/D1の値が1未満であることが好ましく、0.97以下であることが更に好ましく、0.95以下であることが一層好ましい。更にT1/D1の値は0.8以上1未満であることが好ましく、0.85以上0.97以下であることが更に好ましく、0.9以上0.95以下であることが一層好ましい。なお、厚みT1は、二つ折りされた状態の複合部材34に0.2MPaの圧力を加えた状態下で、空気圧レギュレータを用いて測定された値である。
【0043】
以上は第1挟圧部51についての説明であったところ、次に第2挟圧部52及び第3挟圧部53について説明する。なお、第3挟圧部53の構成は第2挟圧部52の構成と同一であることから、第2挟圧部52の説明をもって、第3挟圧部53の説明に代えることとする。
【0044】
第2挟圧部52は、先に説明した第1挟圧部51と同様に、図9及び図10に示すとおり、いずれも段付きロールからなる第1ロール52a及び第2ロール52bを備えている。各ロール52a,52bはいずれも、軸心方向の中央域が相対的に小径となっている小径部521と、軸心方向の側方域が相対的に大径となっている一対の大径部522とを備えている。各ロール52a,52bはいずれも駆動源(図示せず)に接続されており、駆動源からの回転力が伝達されて搬送方向Xに沿って回転可能になっている。
【0045】
段付きロールである第1ロール52a及び第2ロール52bを備えた第2挟圧部52によって複合部材34を挟圧する方法は次のとおりである。先に述べたとおり第2挟圧部52は二つ折り工程の直前に配置されていることから、第2挟圧部52を通過する複合部材34は二つ折りされる前の状態になっている。すなわち、複合部材34は、搬送方向Xに沿って間欠的に配置された複数の発熱体33からなる発熱体列R,Rを、幅方向Yに沿って2列有している。このような状態にある複合部材34を第2挟圧部52によって挟圧するときには、幅方向Yに沿って並置されている二つの発熱体33が存在する部位が、第1ロール52a及び第2ロール52bにおける小径部521を通過するようにする。これとともに、複合部材34のうち幅方向Yの両側部域における発熱体33が存在しない部位が、第1ロール52a及び第2ロール52bにおける大径部522を通過するようにして当該部位が大径部522によって挟圧されるようにする。
【0046】
複合部材34のうち幅方向Yに沿って並置されている二つの発熱体33が存在する部位が、第1ロール52a及び第2ロール52bにおける小径部521を円滑に通過するようにするために、軸方向に沿う小径部521の長さL2(図9参照)を、搬送方向Xと直交する方向における二つの発熱体33の長さと該発熱体33間の距離との和よりも長くすることが好ましい。
【0047】
以上のとおりの態様で複合部材34を第2挟圧部52によって挟圧すると、図9及び図10に示すとおり、複合部材34のうち、厚みの大きな部位である、幅方向Yに沿って並置されている二つの発熱体33が存在する部位は、小径部521の周面どうしの間に生じた空間を通過するので、通過に際して大きな抵抗が発生しにくい。一方、複合部材34のうち、幅方向Yの両側部域における発熱体33が存在しない部位は厚みが小さいので、やはり大きな抵抗を生じることなく各ロール52a,52bにおける大径部522で挟圧される。その結果、複合部材34を構成するシート31,32に撓みや歪みが生じにくくなり、また摩擦に起因する抵抗が生じにくくなる。したがって、複合部材34の搬送中に該複合部材34に加わる張力の変動が抑制されて発熱体33の位置ずれが効果的に防止され、最終的に得られるシート状マスク1はその外観が良好なものとなる。
【0048】
上述した利点は、帯状である第1シート31又は第2シートを継ぐときに一層顕著なものとなる。このことは先に図8を参照しながら説明したとおりであるが、念のために図11を参照して説明する。図11には、帯状である第1シート31を、別の第1シート31’で継いだ状態が示されている。同図においては、先に使用していた第1シート31の外面に、スプライシングテープSTを介して、新たに使用する別の第1シート31’が接合されている状態が示されている。この状態においては、図10に示す状態に比べて、複合部材34を構成する部材の点数が多くなっているので、その分だけ発熱体33が存在する部位の厚みが大きくなっている。そのような場合であっても、厚みの増加分が、各ロール52a,52bにおける小径部521どうしの間に生じた空間Sによって吸収されるので、シート31,31’を継いだ箇所が第2挟圧部52を通過するときの抵抗の増大を抑制することができる。
【0049】
第2挟圧部52によって複合部材34が挟圧されるときの抵抗を減じる観点から、各ロール52a,52bにおける小径部521どうしの距離をD2とし、二つ折りされる前の状態の複合部材34における発熱体33が存在する部位での厚みをT2としたとき、T2/D2の値が0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることが更に好ましく、0.9以上であることが一層好ましい。また、T2/D2の値が1未満あることが好ましく、0.97以下であることが更に好ましく、0.95以下であることが一層好ましい。更にT2/D2の値は0.8以上1未満であることが好ましく、0.85以上0.97以下であることが更に好ましく、0.9以上0.95以下であることが一層好ましい。なお、厚みT2は、二つ折りされる前の状態の複合部材34に0.2MPaの圧力を加えた状態下で、空気圧レギュレータを用いて測定された値である。
【0050】
以上のとおり、本製造方法で用いる装置100には挟圧部として第1~第3挟圧部51,52,53の3つの挟圧部が設けられているところ、本発明者の検討の結果、二つ折り工程から外形シール部形成工程までの間において、複合部材34を、一対の段付きロールで挟圧すること、すなわち第1挟圧部51を用いることが、発熱体の位置ずれ防止の観点から最も有効であることが判明した。特に、二つ折り工程を行っている過程において、複合部材34を、一対の段付きロールで挟圧することが非常に有効であることが判明した。したがって、図1に示す製造装置100においては、第1挟圧部51を構成するロールが一対の段付きロールであれば、第2挟圧部52及び第3挟圧部53を構成するロールは通常の一対のアンビルロールであっても差し支えない。尤も、搬送中の複合部材34に加わる張力を極力一定にして、発熱体33の位置ずれの発生を極力少なくする観点からは、第2挟圧部52及び第3挟圧部53を構成するロールも、一対の段付きロールであることが望ましい。
【0051】
なお「二つ折り工程から外形シール部形成工程までの間」とは、複合部材34の二つ折りを開始する時点から、外形シール部の形成が完了するまでの過程のことである。上述のとおり、二つ折り工程から外形シール部形成工程までの間には、仮留め工程や捻り工程が行われることがあるが、第1挟圧部は二つ折り工程に設けられることが、搬送中の複合部材34に加わる張力に変動が生じにくいことから有利である。
【0052】
上述した第1~第3挟圧部51,52,53を構成する各ロールはいずれも駆動源(図示せず)に接続されており、駆動源からの回転力が伝達されて搬送方向Xに沿って回転可能になっている。したがって、各ロールの回転速度を制御することで、複合部材34の搬送速度を調整し、該複合部材34に加わる張力を調整することができる。複合部材34に加わる張力の調整は、該複合部材34の安定な搬送に寄与し、延いては発熱体33の位置ずれの発生の抑制につながる。この観点から本発明者が検討した結果、外形シール部形成工程における複合部材34の搬送速度V1に対して、二つ折り工程における複合部材34の搬送速度V2が遅くなるように、複合部材34を搬送することが有利であることが判明した。特に、V1を100としたときに、V2が99.5以上99.9以下となるように複合部材34を搬送することが好ましく、99.6以上99.8以下となるように複合部材34を搬送することが更に好ましい。
【0053】
また、二つ折り工程における複合部材の搬送速度V2に対して、第1接着工程よりも上流における複合部材34の搬送速度V3が遅くなるように、複合部材34を搬送することも、該複合部材34の安定的な搬送の観点から有利である。特に、V1を100としたときに、V3が98.6以上99.4以下となるように複合部材34を搬送することが好ましく、98.8以上99.2以下となるように複合部材34を搬送することが更に好ましい。
【0054】
本製造方法は、外形シール部形成工程よりも後に、複合部材34における発熱体33の配置位置を画像処理によって計測する画像計測工程を備えていてもよい。画像計測工程を行うには、図1に示す製造装置100において、外形シール部形成工程よりも下流の位置に撮像手段60を配置し、該撮像手段60によってシート状マスク1を撮影する。撮影されたデータは画像処理装置(図示せず)によって画像処理され、シート状マスク1中での発熱体33の位置が計測される。
【0055】
シート状マスク1中での発熱体33の位置の計測は、画像計測工程よりも下流で行われる不良品排出工程と組み合わせることが有利である。詳細には、画像処理装置においては、画像計測工程において計測された発熱体33の配置位置が、適正な配置位置に対して許容範囲内であるか、それとも許容範囲外であるかが判断される。発熱体33の配置位置が、適正な配置位置に対して許容範囲外であると判断された場合には、画像処理装置は、該当するシート状マスクを製造ライン外へ排出する排出シグナルを、撮像手段60よりも下流に設置された不良品排出部(図示せず)に送信する。これによって、製品中に不良品が混入することが効果的に防止される。
【0056】
画像計測工程を行うこととの関連で、該画像計測工程において計測された発熱体33の配置位置に応じて複合部材34の搬送速度を制御することも有利である。複合部材34の搬送速度は、製造装置100に備えられた複合部材34の駆動手段(例えば第1~第3挟圧部51,52,53など)の回転速度を、画像処理装置から発せられたシグナルを受信することによって調整可能である。具体的には、シート状マスク1に配置された発熱体33の位置が、中心線CL1(図1参照)に対して下流側に偏倚し過ぎている場合には搬送速度を増速させることが有利である。一方、発熱体33の位置が、中心線CL1(図1参照)に対して上流側に偏倚し過ぎている場合には搬送速度を減速させることが有利である。
【0057】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、機能性部材として発熱体を用いた場合を例に挙げたが、発熱体以外の機能性部材を用いることは何ら妨げられない。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0059】
〔実施例1〕
図3に示す製造装置100を用いてシート状マスクを製造した。
各挟圧部51,52,53においては、一対の段付きロールを用いた。
各挟圧部51,52,53においては、一対の段付きロールにおける小径部の周面どうしの間の距離に対する、二つ折りされた状態の複合部材における発熱体が存在する部位での厚みの比は0.91であった。
外形シール部形成工程における複合部材の搬送速度V1、二つ折り工程における複合部材の搬送速度V2、及び第1接着工程よりも上流における複合部材34の搬送速度V3の関係は、V1を100としたときに、V2は99.8、V3は99.0とした。
このようにして得られたシート状マスクにおける発熱体の位置ずれの程度を、図1(b)に示す中心線CL1からの偏倚量を測定することで評価した。また、搬送途中にある複合部材の張力を、図3における第1挟圧部51と第2挟圧部52との間の位置で測定し、その変動率を算出した。変動率は、標準偏差/平均値で定義される値であり、標準偏差の算出区間は紙継ぎ前後1分間(計2分間)、平均値の算出区間は紙継ぎ後1分後の2分間とした。それらの結果を図12に示す。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1において、直径が一定である一対のアンビルロールの組み合わせを第1挟圧部51に用いた。それ以外は実施例1と同様にして、発熱体の位置ずれの程度及び張力の変動率を測定した。それらの結果を図12に示す。
【0061】
図12に示す結果から明らかなとおり、実施例1では比較例1に比べて複合部材を搬送している間での張力の変動が小さく、そのことに起因して発熱体の位置ずれが起こりづらくなっていることが分かる。
【符号の説明】
【0062】
1 シート状マスク
2 マスク本体
4 二つ折り部
5 外形シール部
31 第1シート
32 第2シート
33 機能性部材(発熱体)
34 複合部材
41 間欠塗布部
42 連続塗布部
51 第1挟圧部
51a 第1ロール(段付きロール)
51b 第2ロール(段付きロール)
52 第2挟圧部
53 第3挟圧部
71,72 接着剤
X 搬送方向
Y 第1シートの幅方向
Z 鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12