(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】絶縁分離された核計装出力信号のスケーリング方法および当該方法を用いたシステム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
G21C17/00 230
G21C17/00 210
G21C17/00 220
(21)【出願番号】P 2020509508
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 US2018000272
(87)【国際公開番号】W WO2019035991
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】プリブル、マイケル、クレア
(72)【発明者】
【氏名】ネドウィデク、フランク、エム
(72)【発明者】
【氏名】ディオリオ、ジェームズ、エル
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145448(JP,A)
【文献】特開平02-008796(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉(18)の炉心設計パラメータを決定する方法(100、200)であって、
核計装システム(NIS)キャビネットへの入力に接続された検出器を用いるステップであって、当該NISキャビネットにより信号が当該検出器から絶縁分離される、ステップと、
当該原子炉に付随する当該NISキャビネット
(20、22、24)からの絶縁分離された電圧出力を較正する
較正ステップ(110、210)
であって、較正を行うために当該NISキャビネットへの入力として較正済み信号源からのある範囲の入力が提供される、ステップと、
当該ある範囲の較正済み入力の各々により得られる当該NISキャビネットの対応する電圧出力を測定するステップと、
当該絶縁分離された電圧出力の当該較正ステップ
(110、210)に使用した当該較正済み信号源の値およ
び得られた対応する
電圧出力の値
をキャビネット較正データの表に記録するステップ(120、220)と、
当該NISキャビネットからの当該絶縁分離された電圧出力に接続された計算装置により、
事前に作成された当該キャビネット較正データの表
からの少なくとも一部の値と改良型信号変換式とを用いて、
当該NISキャビネットからの当該
絶縁分離された電圧出力信号を変換済み検出器信号に変換するステップ(130、240)
であって、当該改良型信号変換式は当該キャビネット較正データの表に格納された当該NISキャビネットからの較正情報を用いるものである、ステップと、
当該計算装置により、当該変換済み検出器信号を用いて当該炉心設計パラメータを決定する
式を解くステップ(140、260)であって、
当該炉心設計パラメータは当該原子炉の測定された反応度を示す、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前
記炉心設計パラメータが許容限度内にあるか判断するために、前
記炉心設計パラメータを予測された炉心設計パラメータと比較する
比較ステップ(150、270)をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記比較ステップ
(150、270)により、前
記炉心設計パラメータが前記予測された炉心設計パラメータからの前記許容限度外であると判断されると、それに応答して追加の措置を講じるステップ(160)をさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
前記較正済み信号源は較正済み電流源を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記変換済み検出器信号は変換済み検出器電流信号を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記変換済み検出器信号を用いて式を解くステップ
であって、前記変換済み検出器電流信号および1つ以上の追加の核設計定数を入力に用いて1点炉逆動特性方程式を解く
ことにより炉心反応度を計算するステップを
さらに含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記炉心設計パラメータを決定するステップが、等温係数、ホウ素エンドポイントおよび制御棒価値のうちの少なくとも1つを決定するステップを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記較正済み信号源は較正済み電流パルス源を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記変換済み検出器信号は変換済み検出器パルス信号を含む、請求項8の方法。
【請求項10】
前記計算装置は反応度コンピュータを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記NISキャビネットからの前記絶縁分離された電圧出力は、前記原子炉を監視する中性子源領域検出器から前記NISキャビネットへの
前記入力に対応する、請求項1の方法。
【請求項12】
前記NISキャビネットからの前記絶縁分離された電圧出力は、前記原子炉を監視する中間領域検出器から前記NISキャビネットへの
前記入力に対応する、請求項1の方法。
【請求項13】
前記NISキャビネットからの前記絶縁分離された電圧出力は、前記原子炉を監視する出力領域検出器から前記NISキャビネットへの
前記入力に対応する、請求項1の方法。
【請求項14】
計算装置であって、
核計装システム(NIS)キャビネットから絶縁分離された電圧出力を受け取
るように構成されており、
当該NISキャビネットにより当該NISキャビネットへの入力に接続された検出器から信号が絶縁分離され、さらに原子炉に付随する当該NISキャビネットからの絶縁分離された電圧出力の較正であって、較正を行うために当該NISキャビネットへの入力として較正済み信号源からのある範囲の入力が提供されることが行われ、さらに当該ある範囲の較正済み入力の各々により得られる当該NISキャビネットの対応する電圧出力が測定され、さらに当該絶縁分離された電圧出力の較正に使用した当該較正済み信号源の値および得られた対応する電圧出力の値がキャビネット較正データの表に記録され、
当該計算装置はさらに、当該NISキャビネットに較正済み信号源を入力して当該絶縁分離された電圧出力を事前に較正することにより
事前に作成され
た当該キャビネット較正データの表
からの値の少なくとも一部を
改良型信号変換式に用いて、当該絶縁分離された電圧出力を変換済み検出器信号に変換
するように構成されており、当該改良型信号変換式は当該キャビネット較正データの表に格納された当該NISキャビネットからの較正情報を用いるものであり、
当該計算装置はさらに、当該変換済み検出器信号を用いて炉心設計パラメータを決定する
式を解くように構成され
ており、当該炉心設計パラメータは当該原子炉の測定された反応度を示す、計算装置。
【請求項15】
前記炉心設計パラメータを予測された炉心設計パラメータと比較するようにさらに構成された、請求項14の計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照により本願に組み込まれる2017年8月18日出願の米国仮特許出願第62/547,389号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、原子炉の炉心設計パラメータを決定し、かかる炉心設計パラメータが予想される範囲内にあるかを確認し、予想範囲外であればさらなる措置を講じるための改良型方法に関する。
【背景技術】
【0003】
図1、2に略示するように、核計装システム(NIS)10は、ほぼ11桁の範囲にわたる原子炉18の出力を適切に監視するために3つの検出器(通常は中性子源領域12、中間領域14および出力領域16)を用いる安全関連システムである。各NIS検出器12、14、16は、原子炉のさまざまな炉心設計パラメータを計算するための反応度コンピュータ(図示せず)への入力装置として使用することができる(例えば本願で参照により援用する米国特許第4,877,575号を参照)。
【0004】
各検出器12、14、16からの信号は、中性子束に正比例する値であり、1点炉逆動特性方程式(Inverse Point Kinetics Equation)または他の反応度式を解くために使用される。反応度コンピュータは検出器12、14、16に直接接続することが可能であるが、そのように接続すると検出器12、14、16は安全関連機能を果たせなくなる。したがって、可能であれば、検出器12、14、16が安全関連機能を維持できるように、絶縁分離された出力(すなわちNISキャビネット20、22、24からの出力)を用いるのが望ましい。
【0005】
NISキャビネット20、22、24からの絶縁分離された出力は、典型的には、検出器の電流またはパルスの範囲に基づく0~5Vまたは0~10Vの出力である。非限定的な例として、ウェスチングハウス社の補償型電離箱中間領域検出器の出力は10-11~10-3アンペアの範囲にわたり、処理キャビネットの出力は0~5Vまたは0~10Vである。電流またはパルス信号を電圧出力信号に変換する対数電流増幅器は、典型的には、検出器の全範囲内のいくつかの点でのみ電圧出力の較正を調整できる。例えば、ウェスチングハウス社の中間領域検出器に使用されている対数電流増幅器のひとつのタイプは、10-11~10-3アンペアの8桁の範囲をカバーするが、出力を調整できるのは10-11、10-7および10-4アンペアの3点のみである。通常のプラント運転要件にはこれで十分であるが、反応度コンピュータを用いて行うような高精度の測定に用いるには望ましくない。なぜならば、全範囲のうち上述の調整可能な点から外れた桁の値が、予想される許容差内に収まらない可能性があるからである。反応度は原子炉出力の変化率を表すため、検出器信号の変化率が正しく較正されないと、それに対応する反応度の計算が不正確になる。
【0006】
したがって、そのような測定を行う方法およびシステムには改良の余地がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施態様は、調整後の較正情報を用いてNISキャビネットからの絶縁分離された電圧出力の精度を高めることにより、最も正確かつ精密な測定を支援する。
【0008】
本発明の一局面において、原子炉の炉心設計パラメータを決定する方法を提供する。この方法は、較正済み信号源を当該原子炉に付随するNISキャビネットへの入力として用いることにより、当該NISキャビネットからの絶縁分離された電圧出力を較正するステップと、当該較正ステップに使用した当該較正済み信号源の値および当該較正ステップによって得られた対応する出力電圧の値を調整後のキャビネット較正データの表に記録するステップと、当該NISキャビネットからの当該絶縁分離された電圧出力に接続された計算装置により、当該調整後のキャビネット較正データの表の中の少なくとも一部の値と改良型信号変換式とを用いて、当該電圧出力信号を変換済み検出器信号に変換するステップと、当該計算装置により、当該変換済み検出器信号を用いて当該炉心設計パラメータを決定するステップとを含む。
【0009】
この方法は、決定された当該炉心設計パラメータが許容限度内にあるか判断するために、決定された当該炉心設計パラメータを予測された炉心設計パラメータと比較するステップをさらに含んでよい。
【0010】
この方法は、当該比較ステップにより、決定された当該炉心設計パラメータが当該予測された炉心設計パラメータの当該許容限度外にあると判断されれば、それに応答して追加の措置を講じるステップをさらに含んでよい。
【0011】
当該較正済み信号源は、較正済み電流源を含んでもよい。
【0012】
当該変換済み検出器信号は、変換済み検出器電流信号を含んでもよい。
【0013】
当該変換済み検出器信号を用いて式を解くステップは、当該変換済み検出器電流信号および1つ以上の追加の核設計定数を入力に用いて1点炉逆動特性方程式を解くステップをさらに含んでよい。
【0014】
炉心設計パラメータを決定するステップは、等温係数、ホウ素エンドポイントおよび制御棒価値のうちの少なくとも1つを決定するステップを含んでよい。
【0015】
当該較正済み信号源は、較正済み電流パルス源を含んでもよい。
【0016】
当該変換済み検出器信号は、変換済み検出器パルス信号を含んでもよい。
【0017】
当該計算装置は、反応度コンピュータを含んでもよい。
【0018】
当該NISキャビネットからの当該絶縁分離された電圧出力は、当該原子炉を監視する中性子源領域検出器から当該NISキャビネットへの入力に対応してもよい。
【0019】
当該NISキャビネットからの当該絶縁分離された電圧出力は、当該原子炉を監視する中間領域検出器から当該NISキャビネットへの入力に対応してもよい。
【0020】
当該NISキャビネットからの当該絶縁分離された電圧出力は、当該原子炉を監視する出力領域検出器から当該NISキャビネットへの入力に対応してもよい。
【0021】
本発明の別の局面において、当該計算装置は、絶縁分離された電圧出力をNISキャビネットから受け取り、較正済み信号源を当該NISキャビネットへ入力して当該絶縁分離された電圧出力を事前に較正することにより作成された調整後の較正データ表の少なくとも一部の値を用いて、当該絶縁分離された電圧出力を変換済み検出器信号に変換し、当該変換済み検出器信号を用いて炉心設計パラメータを決定するように構成されている。
【0022】
当該計算装置は、当該炉心設計パラメータを予測された炉心設計パラメータと比較するようにさらに構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0024】
【
図1】原子炉を監視するための核計装システムの概略図である。
【
図2】原子炉を監視するための核計装システムの概略図である。
【0025】
【
図3】本発明の一実施例に従って原子炉の炉心設計パラメータを測定する一般的な方法を示す図である。
【0026】
【
図4】本発明の一実施例に基づく核計装システムの中間領域検出部の一例の構成要素および信号を示す概略図である。
【0027】
【
図5】本発明の一実施例に従って中間領域検出器からの出力を用いて原子炉の炉心設計パラメータを測定する詳細な方法を示す図である。
【0028】
【
図6】本発明の一実施例に基づく、標準的変換による中性子束信号と特別仕様変換による中性子束信号を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下において、本発明を、実施例を示す添付図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本願に示す例に限定されると解釈するべきではない。これらの例はむしろ、本発明を詳細かつ完全に開示し、本発明の範囲を十分に当業者に伝えるために提供するものである。同じ参照番号は、本願を通して同じ構成要素を指している。
【0030】
図3は、本発明の一実施例に従って原子炉の炉心設計パラメータを測定する方法100の一般的手順を示す流れ図である。
図3および
図1を参照して、方法100はまず、ステップ110に示すように、原子炉18に付随するNISキャビネット20、22、24のうちの1つからの絶縁分離された電圧出力を較正する。そのような較正は、NISキャビネット20、22、24への入力として較正済み信号源(例えば較正済み電流源および較正済みパルス発生器)からのある範囲の入力を提供し、当該ある範囲の較正済み入力の各々により得られるNISキャビネット20、22、24の対応する電圧出力を測定することによって行う。
【0031】
次にステップ120に示すように、ステップ110とおおむね同時に、較正ステップ110に使用した較正済み信号源の値および対応する出力電圧の値を、調整後のキャビネット較正データの表に記録させる。そのような表は、物理的な表(すなわちハードコピー)、ソフトウェアによってアクセスできる電子的な表、または他の適当な形態でよい。ステップ130に示すように、計算装置(非限定的な例として反応度コンピュータまたは他の適当な計算装置)によって、事前に作成された調整後のキャビネット較正データの表のかかる値の少なくとも一部と改良型信号変換式とを用いて、NISキャビネット20、22、24からの絶縁分離された電圧出力を変換済み検出器信号に変換する。次に、ステップ140に示すように、この変換済み検出器信号を用いて原子炉の炉心設計パラメータを決定する。ステップ150に示すように、この決定された炉心設計パラメータを予想される炉心設計パラメータと比較することにより、原子炉18が予想通りに運転されているか、あるいは潜在的な問題および/または安全上の懸念が存在するかを判断する。ステップ160に大まかに示すように、予想される炉心設計パラメータとの間にずれがあれば、原子炉18に関して後で試験および/または予防措置を実施することができる。
【0032】
本発明の思想を実施する一般的な方法をこれまで記載してきたが、次に、中間領域検出器14の出力を対象とするより具体的な方法の例について述べる。
【0033】
図1に示す中間領域(IR)検出器14のようなウェスチングハウス社の補償型電離箱中間領域検出器の場合、NISキャビネット22を出る絶縁分離された電圧出力信号は0~5VDCの範囲にあり、IR検出器の中性子束測定値の範囲10
-11~10
-3アンペアに対応する。現行の標準的な中性子束信号電流変換は、次式に従って行われる。
【数1】
ここで、I(V)はIRチャンネル出力電圧(V)に対応するアンペア単位の検出器中性子束の値、
a
1は印加される信号利得(典型的な値は1)、
a
2は検出器中性子束の桁範囲と出力電圧の全範囲の比率(典型的な値は8/5)、
a
3は検出器中性子束の最小指数(典型的な値は-11)
a
4はIRチャンネル出力電圧がゼロのときの電流バイアス値(典型的な値は0)である。
【0034】
そのような標準的な中性子束信号の電流変換は、検出器中性子束を表すものとして受け入れ可能な信号を提供するが、NISの引き出しユニットからの絶縁分離された電圧出力に理想的な(すなわち完璧な)較正/調整が施されることを想定している(それは一般的に現実とは異なる)。さらには、Y.A.Chao、D.M.Chapman、D.J.Hill、L.R.Grobmyer著の「DynamicRod Worth Measurement」、Nuclear Technology、第132巻、第3号、2000年12月、p.403~412に記載されたような動的制御棒価値測定(DRWM)法(その内容を本願で参照により援用)は、従来のバンク価値測定法では1桁であるのに3~4桁の範囲にわたる中性子束の高精度測定値を必要とする。
【0035】
IR検出器中性子束について最高水準の測定精度を得るために、本発明の実施態様は、中性子束信号の電流変換を行う際に、NIS引き出しユニットからの絶縁分離された電圧出力の状態が較正/調整を施された実際の値を使用する。
図4は、本発明の一実施例に基づく核計装システム10の中間領域検出部50の一例の構成要素および信号を示す概略図である。
図5は、本発明の一実施例に基づく方法200のさまざまなステップを示す流れ図である。
【0036】
図5の方法200は、まずステップ210において、原子炉18に付随するNISキャビネット(すなわち中間領域キャビネット22)からの絶縁分離された電圧出力を較正する。そのような較正は、較正済み電流源を用いて技術者が行う。ステップ220に示すように、そのような較正時、使用される入力電流とその結果得られる出力電圧は、下の表1に例示するような調整後のキャビネット較正データの表に記録される。
【0037】
表1:絶縁増幅器の調整確認を記録するためのデータ表の見本
【表1】
【0038】
次に、ステップ230に示すように、NISキャビネット22からの絶縁分離された電圧出力を、ラップトップや他の適当な計算装置のような反応度コンピュータに接続する。
【0039】
次にステップ240において、前述の計算装置が改良型信号変換式を用いて、電圧出力信号を、具体的なNISキャビネットの引き出しユニットの較正/調整情報を組み入れた特別仕様の(すなわちNIS引き出しユニット固有の)中性子束信号電流に変換する。より具体的には、計算装置は次の改良型信号変換式を使用する。
【数2】
ここで、I(V)はIRチャンネル出力電圧(V)に対応するアンペア単位の検出器中性子束の値、
V
lowはIRチャンネル出力電圧測定区間の調整後の下限電圧、
V
highはIRチャンネル出力電圧測定区間の調整後の上限電圧、
I
lowはV
lowに対応する検出器の下限電流(すなわち注入電流+アイドリング電流、典型的には10
-11アンペア)、
I
highはV
highに対応する検出器の上限電流(すなわち注入電流+アイドリング電流、典型的には10
-11アンペア)である。
【0040】
このような式の大まかな点検として、標準的な中性子束信号電流変換の場合を考える。ここでは、区分的式が検出器の全範囲にわたるひとつの大きな区間になる。
【数3】
ここで、I(V)はIRチャンネル出力電圧(V)に対応するアンペア単位の検出器中性子束の値、
V
low=0VDC
V
high=5VDC
I
low=10
-11アンペア
I
high=10
-3アンペア
【0041】
上述の限界値を代入すると次式が得られるが、これは、利得およびバイアス/オフセット係数の初期値による標準的な中性子束信号電流変換に等しい。
【数4】
【0042】
特別仕様の中性子束信号電流変換の実施例を
図6に示す。最近のプラント起動時に、中間領域検出器からの絶縁分離された電圧出力データを測定し、それに対応する較正/調整情報を得た。測定された電圧データを、標準的な中性子束信号電流変換(すなわち前記の式(1))と特別仕様の中性子束信号電流変換(すなわち前記の式(2))の両方によって、検出器中性子束データに変換した。次に、ウェスチングハウス社の反応度コンピュータで使用される標準的な式(すなわちStiffnessConfinement Method(SCM)による1点炉逆動特性方程式)を用いて、変換済み中性子束信号データを処理し、炉心反応度を計算した。
図6は、プラント起動時物理試験の一部で、絶縁分離された電圧出力から変換した中性子束信号データを、標準的な中性子束信号電流変換法と特別仕様の中性子束信号電流変換法との間で比較したグラフである。
【0043】
次にステップ250において、反応度コンピュータに、ステップ240で求めた変換済み検出器電流信号を1つ以上の追加の核設計定数とともに入力し、1点炉逆動特性方程式を解く。
【0044】
次にステップ260において、反応度コンピュータを用いて、等温係数、ホウ素エンドポイント、制御棒価値などの少なくとも1つの炉心設計パラメータを決定する。これらの計算はコンピュータ上で行う。場合によっては、追加のプラント信号または入力を用いる。例えば、温度係数は、反応度の計算において減速材温度の信号を用いる。ホウ素エンドポイントの計算では、測定された反応度と、化学実験室での試料の滴定から求められた原子炉冷却系(RCS)内のホウ素濃度値を用いる。
【0045】
次にステップ270において、決定された炉心設計パラメータを予測されたパラメータと比較し、決定された炉心設計パラメータが許容限度内であるかを判断する。そのような決定されたパラメータが限度から外れる場合、追加の試験、分析または制限が必要かもしれない。許容限度外となった場合の追加の事後ステップは、まず測定プロセスに誤りがなかったかを調べ、誤りを修正してから炉心パラメータの再測定または再分析を行う。制御棒価値測定値が限度から外れ、測定プロセスに誤りが認められなかった場合、ホウ素注入/希釈法やバンク交換法(両方法ともANSI/ANS-19.6.1規格に記載)の使用など代替手段を用いて制御棒を測定する。
【0046】
したがって、以上の説明から、本発明は、原子炉の反応度の測定/決定を行うための改良型方法を提供することがわかる。
【0047】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。