(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】超音波溶接装置において溶接物を位置調整するための方法及び超音波溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
B23K20/10
(21)【出願番号】P 2020517091
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018072969
(87)【国際公開番号】W WO2019057443
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】102017216988.5
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517359820
【氏名又は名称】シュンク ゾノシステムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ミュラー
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0276061(US,A1)
【文献】特表2016-506303(JP,A)
【文献】特表2018-517568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶接装置(34)において溶接物(20)を位置調整するための方法であって、
前記超音波溶接装置(34)は、
超音波振動が加えられると共に縦振動を発するソノトロード(14)と、
アンビル(16)と、
を備え、
前記ソノトロード(14)の作業面(17)と前記アンビル(16)の対向する表面(18)との間に溶接物収容部(19)が形成され、
前記溶接物(20)の溶接位置Pを定める位置調整装置(21)の位置の変更Δxは、前記ソノトロード(14)の縦方向(22)において位置センサによって捉えられる、方法において、
前記ソノトロード(14)への振動の適用は、前記ソノトロード(14)の振幅特性曲線に従って振幅Δyの変更が実行されるように、位置Δxの変更に応じて変更されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ソノトロード(14)への振動の適用は、前記ソノトロード(14)へ超音波振動を加えるコンバータ(30)を制御する発電機(28)の電圧の変更によって変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位置Δxの変更は、定められた溶接の数に応じて、対応する振幅Δyの変更と共に実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置Δxの変更は、位置の変更が引き起こされた後に、対応する振幅Δyの変更と共に前記超音波溶接装置の使用者によって実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
超音波振動が加えられると共に縦振動を発するソノトロード(14)と、
アンビル(16)と、
を備える超音波溶接装置(34)であって、
溶接物収容部(19)は、前記ソノトロード(14)の作業面(17)と前記アンビル(16)の対向する表面(18)との間に形成され、
前記超音波溶接装置(34)は、前記ソノトロード(14)の縦方向(22)において、作業面(17)に対する溶接物(20)の溶接位置Pを捉えるための位置調整装置(21)を備え、
前記位置調整装置(21)には、溶接位置Pを捉えるための位置センサ(23)が設けられている、超音波溶接装置において、
振幅Δyの変更が、位置Δxの変更に応じて、特性曲線プロセッサ(27)を用いた前記ソノトロード(14)の振幅特性曲線に従って実行されるように、前記位置センサ(23)は、前記特性曲線プロセッサ(27)を介して前記超音波溶接装置(34)の発電機(28)と接続されていることを特徴とする、超音波溶接装置(34)。
【請求項6】
前記特性曲線プロセッサ(27)は、前記ソノトロード(14)へ超音波振動を加えるコンバータ(30)を制御する前記発電機(28)と接続されたコンピュータ(29)に
機能的に統合されることを特徴とする、請求項5に記載の超音波溶接装置(34)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動が加えられると共に縦振動を発するソノトロードと、アンビルと、を備えた超音波溶接装置において溶接物を位置調整するための方法に関し、溶接物収容部は、ソノトロードの作業面とアンビルの対向する表面との間に形成され、溶接物の溶接位置を定める位置調整装置の位置変更は、位置センサによって、ソノトロードの縦方向において捉えられる。
【0002】
さらに、本発明は、超音波発生器の超音波振動が加えられると共に縦振動を発するソノトロードと、アンビルと、を備える超音波溶接装置に関し、溶接物収容部は、ソノトロードの作業面とアンビルの対向する表面との間に形成され、超音波溶接装置は、ソノトロードの縦方向において、作業面に対する溶接物の溶接位置を捉えるための位置調整装置を備え、位置調整装置は、溶接位置を捉えるための位置センサと共に設けられている。
【0003】
上記で言及したタイプの超音波溶接装置は、特に超音波溶接トングにおいて、例えば、冷却ユニット、すなわち、特に空調装置又は冷蔵庫の内部の流体パイプとして実装される金属パイプに端部溶接を実行するために使用される。そのような端部溶接は、パイプの自由端に配置された充填電機子がパイプ端部から引き離されるのと同時に端部溶接が断絶するように、流体パイプを備えた冷却回路へ冷却剤を充填した後に実行される。
【0004】
上記で言及したようなパイプとして実現される、ソノトロードの作業面とアンビルの対向する表面との間の溶接物の正確な位置調整を可能にするために、通常支台として実現される位置調整装置は、超音波溶接装置のケーシングに設けられると共に、パイプの軸位置がソノトロードの縦方向において定められるように溶接位置においてパイプに隣接している。
【背景技術】
【0005】
ソノトロードの作業面とアンビルの対向する表面とが、オペレーションの間に超音波振動が引き起こす溶接物とソノトロードとアンビルとの間の相対移動によって各々摩耗したとき、オペレーション中の溶接位置の変更は避けられない。
【0006】
このため、パラメタの中で一定に留まる反復可能な溶接を作り出すために、振動振幅の大きさがどのように溶接位置に依存するかを考慮し、必要であれば、溶接位置とは無関係に同じサイズの振動の振幅が溶接物に加えられることを確保するために、新しい溶接位置における振幅を適切に修正することは、益々要求される。
【0007】
これまでのところ、生じた溶接結果、すなわち、溶接の際に特定された溶接のパラメタの維持が、溶接位置を変更した後に検討されるように、かつ、不当な偏差がある場合は、実行された変更が許容されたパラメタの公差を維持するのに十分であったかどうかをその後に作り出された溶接によって検証するために、振幅はコンバータの設定を変更することによって変更されるように、振幅の修正、すなわち、溶接位置の変更後の振幅の変更は、ユーザーによって繰り返し実行されていた。このことは、実行される溶接の数が多いことに起因してシフト生産の間に3倍から4倍の溶接位置の変更が一般的に必要とされるため、重要な時間の割り当てと相関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、溶接の品質を同時に維持しながら溶接位置の変更の実行を促進する超音波溶接装置において、溶接物の位置調整方法を提案することである。さらに、本発明の目的は、対応する方法の実行を促進する超音波溶接装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明による方法は、請求項1の特徴を有する。
【0010】
本発明によると、振幅の変更は、ソノトロードの振幅特性曲線に従って実行されるように、ソノトロードへの振動の適用は、位置Δxの変更に応じて変更される。
【0011】
本発明は、個々の振幅特性曲線は、ソノトロードの材料特性及び幾何形状によって異なるソノトロードのために導出されるという知見に基づいており、ソノトロードの振動振幅は、ソノトロードの縦方向において又はソノトロードの作業面の縦方向において変更することを意味し、振幅は、一般にソノトロードの自由端、又は、より具体的にはソノトロードの自由端に割り当てられた作業面の端部及び作業面の反対側の端部において相対的な最大値及び相対的な最小値を各々達成する。場所依存の振幅の最大値と振幅の最小値の間には、振幅シーケンスが、振幅特性曲線によって定められる。
【0012】
好ましくは、超音波振動をソノトロードに加えるコンバータを制御する発電機の制御電圧を変更することによって、ソノトロードへの振動の適用が変更される。
【0013】
位置の変更を実行する時点は、様々なパラメタに依存し得る。
【0014】
好ましくは、位置要素の位置の変更を引き起こす特に簡単な方法は、定められた数の溶接シーケンスを特定することからなる。従って、各々の表面を最大限に可能な範囲に使用しながら、ソノトロードの縦方向における作業面及び/又はアンビルの対向する表面の摩耗を最終的には可能な限り均一にすることを達成するために、例えば、千回全てが実行された溶接シーケンスの後に位置を変更することが特定される。
【0015】
位置の変更を引き起こす最も簡単な方法は、超音波溶接装置のユーザーがタイミングを特定することであり、この方法は、ユーザーが超音波溶接装置を用いて溶接シーケンスを実行した経験がある場合には、特に便利なように見える。
【0016】
本発明による超音波溶接装置は、請求項5の特徴を有する。
【0017】
本発明によれば、位置センサは、特性曲線プロセッサを経由して超音波溶接装置の発電機と接続されており、特性曲線プロセッサを用いたソノトロードの振幅特性曲線に従って、位置の変更Δxに応じて振幅が変更される。
【0018】
特性曲線プロセッサは、例えば、プロセッサに割り当てられたストレージにソノトロードの縦方向におけるソノトロードの作業面の長さ全体の振幅サイズに応じたソノトロードに固有の振幅特性曲線を格納し、位置の変更後に与えられる第2溶接位置における振幅サイズと位置の変更前の第1溶接位置における振幅サイズとの比較によって振幅サイズの変更を特定し、対応するコンバータの設定の変更を介して第2溶接位置における振幅サイズを第1溶接位置における振幅サイズに調整する可能性を提供する。
【0019】
好ましくは、特性曲線プロセッサは、ソノトロードへ超音波振動を加えるコンバータを制御する発電機と接続されたコンピュータにおいて開発される。
【0020】
以下には、本発明の実施形態は、図面を参照してより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、超音波溶接装置と共に設けられており、ソノトロードの作業面とアンビルの対向する表面との間に形成された溶接物収容部に配置された位置調整装置を有する一対の溶接トングの等角投影図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示された溶接物収容部の拡大された側面図を示す。
【
図3】
図3は、ソノトロードの作業面にわたって示され、作業面の縦方向において進行する振幅の提示を含む振幅特性曲線を示す。
【
図4】
図4は、位置センサと共に設けられ、溶接物収容部における溶接位置を定めることを意図する位置調整装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、超音波溶接装置34と共に設けられており、共有されたトングケーシング13の内部に配置された上側トング部11及び下側トング部12を備えた一対の溶接トング10の等角投影図である。上側トング部11は、超音波溶接装置34のソノトロード14を備え、ソノトロード14は、トングケーシング13の無いものが特に
図4に示されており、ソノトロード14は、特に
図2に示される溶接物収容部19が、ソノトロード14の作業面17とアンビル16の対向する表面18との間で実現されるように、下側トング部12に形成された超音波溶接装置34のアンビル16と相対してソノトロードヘッド15と共に配置されている。
【0023】
例示的に示された実施形態の場合、アンビル16の上に形成された対向する表面18が縦振動を発するソノトロード14の作業面17に対して移動できるように、アンビル16は、作動装置(図示されていない)によってトングケーシング13の後部に実現された旋回軸16の回りにソノトロード14のソノトロードヘッド15に対して旋回することができる。
【0024】
図2に示されるように、ソノトロード14の作業面17とアンビル16の対向する表面18との間で実現された溶接物収容部19は、この実施例では金属のチューブレットとされている溶接物20を収容する役割を果たしている。
図2にさらに見られるように、上側トング部11は、ソノトロード14の縦方向においてその相対位置で変更することができる位置調整装置21と共に設けられ、特に
図4に示されるように、位置調整装置21が、溶接物収容部19の溶接位置P1に配置された溶接物20に当接されうる。
【0025】
図4には、
図1に示されたトングケーシング13を除く超音波溶接トング10の超音波溶接装置34を示し、この実施例では結合ロッド24として実現される伝達要素と、結合ロッド24を介して位置調整装置21と接続されるポテンショメータ装置25と、を備えた位置センサ23と共に位置調整装置21が設けられている。
【0026】
図4に概略的に示された超音波溶接装置34は、本実施例では、位置センサ23の信号出力26と接続されると共に発電機28と接続された特性曲線プロセッサ27を備える。発電機28は、定められた溶接パラメタを特定することを可能にするコンピュータ29と接続されている。発電機28の電力出力によって、コンバータ30による超音波振動が生成され、最終的には、ブースタ31を介してソノトロード14とその作業面17とに伝達され、コンバータ30によって生成される超音波振動の振幅増幅を引き起こす。
【0027】
ソノトロード14に固有の振幅特性曲線は、ソノトロード14の縦方向22におけるソノトロードの作業面17の長さ全体の振幅サイズに応じて特性曲線プロセッサ27に保管される。
【0028】
上記の「ソノトロードに固有の振幅特性曲線」という用語を説明するために、
図3は、ソノトロード14の作業面17上の振幅特性曲線を示し、これにより、振幅の計測値y1は、実施例において
図3に示されるように、作業面17上の溶接位置P1を定める経路座標x1に割り当てることができると共に、振幅の測定値y2は、作業面17上の溶接位置P2を定める経路座標x2に割り当てることができるように、作業面17上の縦方向22において延在する経路座標xと振幅の計測値yとの間に明示的な機能的関係が存在することが明らかになっている。ゆえに、本実施例において
図3に示すような振幅の増加である振幅の変更Δyは、位置P1と位置P2との間にあり、振幅の変更Δyは、位置の変更Δxに基づく。
【0029】
概略的に
図4に示された特性曲線プロセッサ27は、振幅特性曲線に従って発電機28の電力出力を制御することができ、例えば、発電機28の電圧を低減することによって対応する発電機28の電力出力の低減と併せてコンバータ30の振動振幅の低減に影響を及ぼす。この目的のために、特性曲線プロセッサ27は、位置Δxの変更に対応する入力信号32に応じて振幅Δyの変更に対応する出力信号33を生成し、出力信号33は、振幅の増加Δyに対応する振幅の低減「-Δy」が、位置P2において実行されるように、発電機28の電力出力に影響を及ぼし、これによって、位置P1において配置された溶接物に加えられる振幅と同じ振幅が、位置P2において配置された溶接物に加えられる。このように、振幅Δyの変更は、ソノトロードに固有の振幅特性曲線に従って補正されるため、溶接位置P1又は溶接位置P2とは無関係に、同じ振幅で溶接を実行することができる。
【0030】
図4の概略的な提示とは離れて、特性曲線プロセッサは、コンピュータ29に機能的に統合され、位置Δxの変更による入力信号が、超音波溶接装置を実行するための入力変数としてコンピュータ29へ直接的に供給されてもよい。