(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】試料前処理機、及び、分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20230215BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230215BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G01N1/10 B
G01N1/28 J
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2020540230
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031594
(87)【国際公開番号】W WO2020045053
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018162577
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕
(72)【発明者】
【氏名】中川 和哉
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212028(JP,A)
【文献】特開2015-195784(JP,A)
【文献】特開2011-085562(JP,A)
【文献】特開2010-094136(JP,A)
【文献】特開2003-299912(JP,A)
【文献】特表2015-533492(JP,A)
【文献】特開2013-000107(JP,A)
【文献】特開2011-169886(JP,A)
【文献】特開2006-234607(JP,A)
【文献】特開2010-194508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132755(US,A1)
【文献】特開2005-62084(JP,A)
【文献】特開2005-278436(JP,A)
【文献】特開2019-74344(JP,A)
【文献】特表2013-519521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液を濾過して所定成分をフィルタに濾し取
って濃縮する試料前処理機であって、
サンプル液が貯留されるボトル、及び、基端側が前記ボトルに取り付けられ、内部に前記フィルタが設けられた筒状のカートリッジを具備する試料容器と、吸引源との間を接続する接続機構を備え、
前記カートリッジは、濾過後に濃縮されたサンプル液を前記フィルタ上に残すものであり、
前記接続機構が、
前記カートリッジの先端側と吸引源との間を接続し、前記試料容器内のサンプル液を吸引する吸引端子と、
前記ボトルが取り付けられ、前記吸引端子に対して前記カートリッジを所定位置に配置する取付面と、を備えた試料前処理機。
【請求項2】
前記カートリッジ内のサンプル液の液面を検出する液面センサをさらに備える、請求項1記載の試料前処理機。
【請求項3】
前記接続機構が、
前記吸引端子が設けられた端子板と、
前記端子板から所定距離離間した位置に固定され、前記取付面が形成された位置決め台と、を備え、
前記位置決め台が、前記吸引端子と対向する位置に前記カートリッジが挿入される挿入孔が形成された請求項
1又は2記載の試料前処理機。
【請求項4】
前記吸引源と、前記接続機構が搭載される搭載面とを具備する本体を備え、
前記接続機構が、前記載置面に対して着脱可能に構成されている請求項
1乃至3いずれかに記載の試料前処理機。
【請求項5】
前記搭載面に開口し、前記吸引源と吸引配管で接続された吸引ポートと、
前記接続機構と前記本体との間に設けられ、前記接続機構が前記搭載面に搭載された状態で、前記吸引端子が前記吸引ポートに接続されるように位置決めする位置決め構造と、をさらに備えた請求項
4記載の試料前処理機。
【請求項6】
前記接続機構が、オートクレーブ処理可能な耐熱温度を有する材料で形成された請求項1乃至
5いずれかに記載の試料前処理機。
【請求項7】
前記カートリッジ内のサンプル液の液面を検出する反射型の液面センサと、
前記液面センサの液面検出位置を目標液位に対応する位置となるように前記本体に対して当該液面センサを固定するセンサホルダと、をさらに備えた請求項
4記載の試料前処理機。
【請求項8】
前記接続機構が、複数の吸引端子を具備し、
各吸引端子にそれぞれ前記試料容器が接続された状態で同時に吸引動作を行えるように構成されている請求項1乃至
7いずれかに記載の試料前処理機。
【請求項9】
前記吸引配管の下方に設けられ、当該吸引配管から漏れたサンプル液の濾液を受ける受け皿と、
前記受け皿に濾液が存在するかどうかを検出する濾液検出センサと、をさらに備えた請求項
5記載の試料前処理機。
【請求項10】
請求項1乃至
9いずれかに記載の試料前処理機と、
前記試料前処理機によって濃縮されたサンプル液を測定対象とする試料分析装置と、を備えた分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液を濾過して所定成分をフィルタに濾し取る試料前処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばATP量や微生物の存在量を測定する場合、サンプル液をフィルタで濾過し、サンプル液中の所定成分の濃度を高める前処理が行われている。
【0003】
このような前処理には、内部にフィルタを具備し、サンプル液が貯留される試料容器と、試料容器が接続され、当該試料容器内のサンプル液がフィルタを通過して濾過されるように吸引を行う試料前処理機とが用いられる。この濾過によって、前記試料容器内においてサンプル液は濃縮される。
【0004】
ところで、ATPや微生物検出を目的とするような測定等ではサンプル液の量の誤差が微小であっても、大きな測定誤差が発生する可能性がある。
【0005】
また、吸引端子に対しては濾過ごとに異なるサンプル液が収容された試料容器が接続されるため、前回の濾過時に吸引端子に付着したATPや微生物が現在取り付けられている試料容器を汚染する可能性がある。より高精度のATP測定や微生物検出を実現するために、このようなコンタミネーションを防ぐことが求められつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、濾過された後のサンプル液の量を正確なものとし、後続する測定等の精度を向上させることができる試料前処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るサンプル液を濾過して所定成分をフィルタに濾し取る試料前処理機は、サンプル液が貯留されるボトル、及び、基端側が前記ボトルに取り付けられ、内部に前記フィルタが設けられた筒状のカートリッジを具備する試料容器と、吸引源との間を接続する接続機構を備え、前記接続機構が、前記カートリッジの先端側と吸引源との間を接続し、前記試料容器内のサンプル液を吸引する吸引端子と、前記ボトルが取り付けられ、前記吸引端子に対して前記カートリッジを所定位置に配置する取付面と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記ボトルを前記取付面に取り付けるだけで、前記カートリッジを前記吸引端子に対して常に同じ位置に配置することが可能となる。したがって、簡単な取り付け作業だけでサンプル液の吸引時における前記カートリッジの位置精度を向上させることができ、前記カートリッジ内の液面高さを検出するだけでもカートリッジ内のサンプル液の量を正確に計量することが可能となる。
【0010】
吸引時における前記カートリッジの位置精度を高めやすくするとともに、前記試料容器を前記接続機構に対して取り付ける手間を簡略化できるようにするための具体的な構成としては、前記接続機構が、前記吸引端子が設けられた端子板と、前記端子板から所定距離離間した位置に固定され、前記取付面が形成された位置決め台と、を備え、前記位置決め台が、前記吸引端子と対向する位置に前記カートリッジが挿入される挿入孔が形成されたものが挙げられる。
【0011】
前記カートリッジと直接接触しており、コンタミネーションの原因となる前記吸引端子について滅菌処理等を行いやすくするとともに、滅菌処理等の作業を行っても前記取付面と前記吸引端子の位置関係が変化しにくくするには、前記吸引源と、前記接続機構が搭載される搭載面とを具備する本体を備え、前記接続機構が、前記載置面に対して着脱可能に構成されていればよい。
【0012】
例えば吸引端子だけを本体に対して着脱可能とすると、滅菌処理等の後に再度本体に取り付けた際に、最初とは異なる位置に取り付けられてしまう可能性がある。このような取り付け誤差は前記カートリッジと前記吸引端子との位置関係にばらつきが生じる原因となる。一方、前述したように接続機構全体を着脱可能にすれば、前記取付面と前記接続端子の位置関係は保たれるので、滅菌処理等を行っても前記カートリッジと前記吸引端子との位置精度を保つことが可能となる。
【0013】
前記接続機構を滅菌処理した後に前記吸引端子を前記吸引源に対して簡単に接続できるようにするには、前記搭載面に開口し、前記吸引源と吸引配管で接続された吸引ポートと、前記接続機構と前記本体との間に設けられ、前記接続機構が前記搭載面に搭載された状態で、前記吸引端子が前記吸引ポートに接続されるように位置決めする位置決め構造と、をさらに備えたものであればよい。
【0014】
前記接続機構について残存しているATPをオートクレーブによって分解して、測定誤差が発生しないようにするには、前記接続機構が、オートクレーブ処理可能な耐熱温度を有する材料で形成されたものであればよい。
【0015】
前記カートリッジ内のサンプル液の液位を精度よく検出できるとともに、製造コストを従来よりも低減でき、小型化を実現できるようにするには、前記カートリッジ内のサンプル液の液面を検出する反射型の液面センサと、前記液面センサの液面検出位置を目標液位に対応する位置となるように前記本体に対して当該液面センサを固定するセンサホルダと、をさらに備えたものであればよい。
【0016】
多数のサンプル液についてそれぞれ別々のカートリッジ内での濾過を短時間で完了させられるようにするには、前記接続機構が、複数の吸引端子を具備し、各吸引端子にそれぞれ前記試料容器が接続された状態で同時に吸引動作を行えるように構成されている。
【0017】
前記吸引端子と前記吸引源との間の接続に不備があり、漏れが発生していることを検出し、例えば吸引動作を停止できるようにするには、前記吸引配管の下方に設けられ、当該吸引配管から漏れたサンプル液の濾液を受ける受け皿と、前記受け皿に濾液が存在するかどうかを検出する濾液検出センサと、をさらに備えたものが挙げられる。なお、濾液検出センサとしては、光学式、静電容量式、又は、抵抗検出式等の様々な方式のものを用いることができる。
【0018】
本発明に係る試料前処理機と、前記試料前処理機によって濃縮されたサンプル液を測定対象とする試料分析装置と、を備えた分析システムであれば、例えばATP測定や微生物検出等の測定精度を従来よりも向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明に係る試料前処理機であれば、前記試料容器の前記ボトルを前記取付面に取り付けるだけで、前記吸引端子と前記カートリッジの接続位置を常に同じ位置関係に保つ事が可能となる。したがって、接続の手間を軽減できるとともに、カートリッジ内に計量されるサンプル液の量の精度を向上させることができるようになる。このため、続いて行われる例えばATP測定や微生物検出等の測定精度を従来よりもさらに高める事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る試料前処理機、及び、分析システムを示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る試料前処理機を示す模式的斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る試料前処理機に試料容器が接続された状態を示す模式的斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る試料前処理機から接続機構が取り外された状態を示す模式的斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る試料前処理機の取り外された状態の接続機構を示す模式的斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る試料前処理機の模式的断面図。
【
図7】第1実施形態に係る試料前処理機の接続機構周辺を拡大した模式的部分断面図。
【
図8】第1実施形態に係る試料前処理機の変形例においてカートリッジと吸引端子の周辺を拡大した模式的断面図。
【符号の説明】
【0021】
100・・・試料前処理機
1 ・・・本体
11 ・・・搭載面
12 ・・・吸引ポート
13 ・・・受け皿
14 ・・・濾液検出センサ
2 ・・・接続機構
22 ・・・吸引端子
26 ・・・取付面
31 ・・・液面センサ
4 ・・・係合構造
41 ・・・係合孔
42 ・・・位置決めピン
S ・・・試料容器
S1 ・・・ボトル
S2 ・・・カートリッジ
F ・・・フィルタ
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1実施形態に係る分析システム、及び、試料前処理機100について
図1乃至
図7を参照しながら説明する。第1実施形態の分析システムは、サンプル液を濾過によって濃縮し、濃縮された後のサンプル液についてATPや微生物自体等の所定成分の量等について分析するものである。
【0023】
この分析システムは、
図1に示すようにサンプル液が収容される試料容器Sと、サンプル液の濾過、濃縮を行う試料前処理機100と、濃縮された後のサンプル液を測定対象とする試料分析装置101と、から構成される。
【0024】
図1及び
図6に示すように試料容器Sは、サンプル液が内部に貯留されるボトルS1及び内部にフィルタFが形成されたカートリッジS2を備えたものである。ここでカートリッジS2は、試料容器SにおいてボトルS1に着脱可能に取り付けられたものであり、サンプル液の濾過、濃縮処理の後にボトルS1から取り外されて、後続する試料分析装置101での測定でも用いられる部分である。
図1に示すようにボトルS1及びカートリッジS2を備えた試料容器Sは、ボトルS1の上面開口を蓋体S12で塞ぎ、外部からのサンプル液へのコンタミネーションが防止された状態で試料前処理機100に取り付けられた後、試料容器SのボトルS1に貯留されているサンプル液が試料前処理機100によって吸引される。この吸引動作によって、ボトルS1内のサンプル液の大部分は、カートリッジS2内のフィルタFによって濾過される。なお、蓋体S12は側面部にボトルS1の内部に外部から空気を流通させるための空気孔S13が形成されているので、吸引動作時にもサンプル液上部の気圧を外部とほぼ同じに保って濾過に必要な圧力差を形成することができる。サンプル液中の所定成分はフィルタF上に濾し取られ、液体成分の大部分は濾液として廃棄される。一方、フィルタFを通過させなかったサンプル液の液体成分の一部はカートリッジS2に所定量だけ残された状態となる。
【0025】
試料前処理機100による濾過が完了した後は、ボトルS1からカートリッジS2が取り外されて、カートリッジS2の外部からフィルタFに対してコンタミネーションが生じないようにカートリッジS2の先端部分にキャップS21が取り付けられる。そして、このキャップS21がされたカートリッジS2自体が試料分析装置101内に収容され使用される。そして、カートリッジS2内の濃縮されたサンプル液が試料分析装置101において分注され、試薬等が加えられる等してATPや微生物の量の測定が行われる。
【0026】
以下では主に試料前処理機100の詳細について説明する。
図2乃至
図4、
図6に示すように試料前処理機100は、前面に制御状態等を示すタッチパネルディスプレイMが設けられた本体1と、本体1の前面側にある搭載面11に搭載され、サンプル液が貯留されたボトルS1及びカートリッジS2かなる試料容器Sと本体1内のポンプとの間を接続する接続機構2と、を備えている。
【0027】
本体1の使用端側には、水平平面に広がる搭載面11が形成されており、
図4及び
図5に示すように、この搭載面11に対して接続機構2が着脱可能に構成されている。
図4及び
図5に示すように搭載面11には図示しない吸引源であるポンプと接続配管L1で接続された吸引ポート12が開口しており、この吸引ポート12に対して接続機構2に設けられた吸引端子22が接続される。
【0028】
また、
図5の断面図に示すようにカートリッジS2内で濾過された濾液は本体1内の接続配管L1を通って流体制御機構FCへと至り、流体制御機構FCから濾液排出管L2を通って最終的には本体1の使用端側に突出している濾液排出端子15から外部へと排出される。この濾液排出端子15には、図示しない廃液タンク及びポンプが接続されている。ここで、流体制御機構FCは複数のバルブ等によって構成されたものであり、いずれの吸引ポート12について吸引動作を行うかの切替を行う。
【0029】
接続配管L1及び濾液排出管L2の下方には受け皿13が設けられており、濾液が漏出した際に受けられるように構成されている。また、この受け皿13上には底面側にセンサ面が向くように取り付けられた例えば光学式の濾液検出センサ14が設けられている。この濾液検出センサ14で濾液が検出された場合には図示しない制御機構によってポンプの動作が停止されるロック状態となる。
【0030】
図2乃至
図7に示すように搭載面11上には接続機構2だけでなく、接続機構2に取り付けられた試料容器SのカートリッジS2内の液面を検出する液面センサ31を保持するセンサホルダ3も固定されている。
【0031】
以下では試料容器S、接続機構2、及び、センサホルダ3の詳細構造について説明する。
【0032】
図1、
図6、及び、
図7に示すように、試料容器Sは、サンプル液が貯留される概略円筒状のボトルS1と、ボトルS1よりも小径及び小容積であるとともに、細筒状をなし、その内部中央部にフィルタFが設けられたカートリッジS2とからなる。この試料容器Sは、ボトルS1の底面部中央と、カートリッジS2の基端側との間はねじによって螺合させてあり、カートリッジS2の基端側の一部がボトルS1の底面部内に侵入した状態で固定される。なお、ボトルS1とカートリッジS2の位置関係については、この例に限定されるものではなく、例えばボトルS1の底面部における外周側にカートリッジS2が螺合されるようにしてもよい。
図7に示すようにボトルS1の底面には、カートリッジS2の基端面が当接し、カートリッジS2がそれ以上ボトルS1内へと侵入するのを防ぐ、当接面S11が形成されている。したがって、カートリッジS2がボトルS1に対して十分にねじ込まれた状態でカートリッジS2がボトルS1の底面部から突出する長さ寸法はほぼ一定となる。言い換えると、ボトルS1の底面に形成された当接面S11によってボトルS1に対してカートリッジS2は位置決めされる。また、カートリッジS2がボトルS1に対して螺合された状態ではボトルS1の底面がカートリッジS2の外周側に張り出た状態となり、試料容器Sの肩部分を形成する。
【0033】
接続機構2は、
図3に示すように複数の試料容器Sを一列に並べて取り付けられるように構成されている。この接続機構2は、
図5に示すように、カートリッジS2の先端部が取り付けられる複数の吸引端子22が設けられた端子板21と、端子板21から所定距離離間した位置にボトルS1の底面の取付面26を形成する位置決め台25と、を備えている。
【0034】
端子板21は、長尺板状をなすものであり、第1実施形態では6つの吸引端子22が一列に設けられている。吸引端子22は
図6及び
図7の断面図に示すように搭載面11上に開口する吸引ポート12と接続される太円筒部23と、太円筒部23から突出し、カートリッジS2の先端部に嵌合される細円筒部24と、を備えている。太円筒部23の一部は端子板21内に埋め込まれており、細円筒部24が端子板21の外側へと突出するように構成されている。また、
図7に示すように細円筒部24においてカートリッジS2に差し込まれる先端部分の外側面には、母線方向に延びる線状の溝2Sが形成されている。試料容器Sに対する吸引動作が終了した後にはこの溝2SとカートリッジS2の内周面との間の隙間を介して外部の空気が吸引端子22及び吸引ポート12内へと流入する。したがって、吸引端子22及び吸引ポート12内に残留していた濾液は、接続配管L1側へと流すことができる。このため、吸引端子22からカートリッジS2の先端が引き抜かれる際に吸引された濾液がカートリッジS2側へと戻ってしまうのを防ぐことができる。
【0035】
さらに、端子板21と搭載面11との間には、搭載面11上における接続機構2の面板方向の位置を決める位置決め構造4が形成されている。第1実施形態では位置決め構造4は、端子板21に設けられた2つの係合孔41と、搭載面11上において突出する2つの位置決めピン42で構成されている。この位置決めピン42に係合孔41を係合させ、固定ネジで接続機構2を搭載面11に対して固定することで各吸引ポート12上に各吸引端子22が連通するとともに、吸引ポート12の周囲に設けられたOリングを押し潰してシールすることができる。また、この位置決め構造4によって吸引ポート12の配列方向だけでなく、それに直交する奥行き方向に対して接続機構2を配置することができる。このため、搭載面11の中央部に配置された後述する複数の液面センサ31との距離も一定に保つことができる。
【0036】
位置決め台25は、
図5に示すように端子板21に対して立設する複数の柱2Aと、その柱2Aの上に設けられた取り付けられた取付板2Bと、を備えている。取付板2Bの上面側は、
図6及び
図7に示すように試料容器Sの肩部分、すなわち、ボトルS1の底面が載置される取付面26をなす。取付面26は端子板21の面板部及び吸引端子22の細円筒部24の各先端がなす仮想平面に対して平行となるように構成されている。取付板2Bには試料容器SのうちカートリッジS2の部分だけを端子板21側へと挿入する挿入孔27が各吸引端子22に対応する位置に形成されている。また、挿入孔27の内径はカートリッジS2の外径とほぼ同じ寸法で構成されており、カートリッジS2がまっすぐに挿入されるように構成されている。このため、位置決め台25上に試料容器Sを載置するだけで、カートリッジS2の先端部を吸引端子22の細円筒部24に対して簡単に挿入できる。したがって、
図3、
図6、及び、
図7に示すように位置決め台25の取付面26に対して試料容器Sの肩部分を載置するだけで、カートリッジS2の先端部分に吸引端子22の細円筒部24が挿入された状態となるとともに、その挿入される長さも一定となる。このようにして、取付面26に対して試料容器Sを取り付けるだけで、吸引端子22とカートリッジS2の位置関係が常に一定に保たれる。
【0037】
また、端子板21に対して位置決め台25の柱2Aがネジ止めによって固定されているので、
図3及び
図4に示すように、端子台と位置決め台25が一体のまま接続機構2は本体1から取り外せる。したがって、本体1に対して接続機構2を着脱しても、吸引端子22と取付面26との位置関係には変化は生じない。さらに、接続機構2を構成する端子台、吸引端子22、位置決め台25のそれぞれは例えば金属材料のみで形成されており、オートクレーブ処理によって昇温しても変形が生じにくい。このため、カートリッジS2と直接接触する吸引端子22についてオートクレーブ処理によって残留しているATPの消却や微生物の滅菌処理を行っても吸引端子22と取付面26との位置関係には変化が生じにくい。なお、接続機構2は、金属材料のみで形成されたものに限られず、例えばオートクレーブ処理に耐えうるようなPEEK等の樹脂素材で形成してもよい。
【0038】
センサホルダ3は、
図4、
図6、及び、
図7に示すように各吸引端子22に対応する位置に液面センサ31を固定保持するものである。第1実施形態ではセンサホルダ3は搭載面11に対して固定されており、基本的には取り外されない。
図7に示すように、液面センサ31はカートリッジS2の側面から光を入射させ、その反射光を検出することで液面の有無を検出する反射型のセンサである。センサホルダ3によってカートリッジS2の側面に対してセンサ面が当接した状態又はごくわずかな隙間が形成された状態で配置されている。このように液面センサ31が配置されているので、反射型であっても、カートリッジS2内の液面を精度よく検知することができる。なお、液面センサ31をカートリッジS2の側面に対して当接させることができるのは、位置決め構造4によって接続機構2の短手方向が精度よく位置決めされているからである。このようにセンサホルダ3で液面センサ31の位置が固定されており、接続機構2によってカートリッジS2と吸引端子22との位置と、カートリッS2の側面と液面センサ13との位置がほぼ一定に保たれるので、液面センサ31が検出する液面の高さもカートリッジS2の先端からほぼ一定の地点に保つことができる。この液面センサ31で液面が検出されるまでの間は、ポンプによるボトルS1内からカートリッジS2内へとサンプル液の吸引が継続される。したがって、ポンプによる吸引が終了した時点ではカートリッジS2内のフィルタF上に所定量のサンプル液が残留した状態となる。
【0039】
なお、センサホルダ3又は液面センサ31の搭載面11に対する高さを変更可能に構成して、濾過が終了した時点でカートリッジS2内に残されるサンプル液の量を適宜調節できるようにしてもよい。例えば液面センサ31の高さが予め定められた複数の高さに段階的に変更できるようにセンサホルダ3を構成してもよい。
【0040】
このように構成された第1実施形態に係る試料前処理機100によれば、
図4及び
図5に示すように試料容器Sと直接接触する吸引端子22を具備する接続機構2が、吸引源であるポンプを具備する本体1に対して着脱可能であるので、各吸引端子22についてオートクレーブ処理等によって一斉にATPの消却処理や滅菌処理を行うことができる。このため、濾過時にサンプル液を濾過する際にコンタミネーションが発生する恐れをなくすことができる。
【0041】
また、端子板21に対して位置決め台25が固定された状態で接続機構2は着脱されるので、各吸引端子22と取付面26との位置関係は、オートクレーブ処理等のための着脱作業によっても変化しにくい。このため、濾過後にカートリッジS2内に計量されるサンプル液の量にも誤差が生じにくく、後続のATP測定や微生物迅速検出等の精度を従来よりも向上させることができるようになる。また、試料前処理機100の吸引動作のみで、カートリッジS2内に所定量の液を正確に残すことができるので、従来のように後続する測定のために別途液体を添加して液量を調整する必要もない。このため、測定のための前処理にかかる時間を短縮できるとともに、液体を添加することによるコンタミネーションの可能性をなくすことができる。
【0042】
さらに、試料容器Sについて挿入孔27内にカートリッジS2を差し込むとともに、ボトルS1の底面を取付面26に載置するだけで、吸引端子22とカートリッジS2とを接続することができる。したがって、従来よりも簡単な接続作業でありながらも、吸引端子22とカートリッジS2の位置精度を高精度にすることができる。
【0043】
加えて、接続機構2には複数の吸引端子22が設けられており、多連の試料容器Sについて同時に吸引作業を行うことができ、作業時間を短縮することができる。
【0044】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0045】
第1実施形態では、接続機構には複数の吸引端子が設けられており、複数の試料容器に収容されているサンプル液についてそれぞれ同時に濾過が行えるように構成されていたが、接続機構に単一の吸引端子のみが設けられていても良い。
【0046】
接続機構が取り付けられる搭載面は水平面に限られず、例えば垂直面として構成してもよい。すなわち、試料容器が鉛直方向に沿って取り付けられるのではなく、水平方向に沿って取り付けられても良い。
【0047】
第1実施形態ではカートリッジの先端部内に吸引端子の細円筒部が差し込まれていたが、この関係は逆であってもよい。すなわち、細円筒部内にカートリッジの先端部が挿入されてもよい。また、
図8の部分拡大図に示すように吸引端子2の細円筒部24の先端部がカートリッジS2の先端部内に嵌合されるとともに、細円筒部24の先端がカートリッジS2内に設けられているフィルタFと密着された状態で濾過が行われるようにしてもよい。このようなものであれば、カートリッジS2と細円筒部24との間に液溜まりが生じるのを防ぐことができる。このように濾過精度を向上させられるので、例えば液溜まりが存在すると測定時にフィルタF上の微生物からATPを取り出した後にATP分子がフィルタFを通って液溜まりに拡散し、ATP濃度が実際の値よりも小さくなってしまうのを防ぐことができる。カートリッジのボトルに対する取付構造は実施形態において説明したネジ構造に限られるものではない。例えばボトルの底面に形成された穴に対してカートリッジを嵌合させるものであってもよいし、ボトルとカートリッジを樹脂で一体成型しておき、その境界部分を切り離せるように破断構造を形成してもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士を組み合わせたり、変形したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、接続の手間を軽減できるとともに、カートリッジ内に計量されるサンプル液の量の精度を向上させることができる試料前処理機を提供できる。また、このような試料前処理機を用いることにより、続いて行われる例えばATP測定や微生物検出等の測定精度を従来よりもさらに高める事が可能となる。