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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ロッカーアーム制御システム
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/06 20060101AFI20230215BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F01L13/06 Z
F01L13/00 301F
F01L13/00 301M
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020546482
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019021133
(87)【国際公開番号】W WO2019173578
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】62/639,993
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンデル、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ、デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、ゲイブリエル エス.
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-009631(JP,A)
【文献】特表2007-536456(JP,A)
【文献】特表2002-510008(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2439381(EP,A1)
【文献】国際公開第2010/014932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/06
F01L 13/00
F01L 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関内の2つ以上のエンジンバルブ(150)のうちの少なくとも1つを作動させるためのシステム(100)であって、前記システムは、
2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つの主事象運動を容易にするための主事象ロッカーと、
補助動作時に2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つの補助事象運動を作動させ、且つ容易にするための少なくとも1つの専用ロッカー(120)であって、前記補助事象運動は、2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つの主事象運動を補助する、少なくとも1つの専用ロッカーと、
前記専用ロッカー(120)の運動源側(122)に運動を与えるための運動源(140)と、
前記専用ロッカーの運動受容構成要素側(124)から運動を受容するための運動受容構成要素(150,160,350)と、
前記専用ロッカーの運動を制御するためのロッカー運動制御アセンブリと、を備え、前記ロッカー運動制御アセンブリが、
前記専用ロッカーの前記運動源側は、前記運動源から離れて移動しやすいように、付勢方向に前記専用ロッカーを付勢するための付勢構成要素(180,280,380,480,680,880,1080)と、
前記付勢方向に前記専用ロッカーの前記運動を制限するための制限構成要素であって、前記内燃機関のシリンダヘッドに対して固定される、又は前記主事象ロッカーに対して固定される停止具を備える制限構成要素(190,290,390,1090)と、を含む、システム。
【請求項2】
前記付勢構成要素が、前記専用ロッカーの前記運動受容構成要素側に対して付勢力を印加するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記付勢構成要素が、前記専用ロッカー上の表面と係合するように適合されたばねを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制限構成要素が、前記専用ロッカーの前記運動源側と係合するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記制限構成要素が、調節可能停止具である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記付勢構成要素が、前記専用ロッカーの前記運動源側に対して付勢力を印加するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記付勢構成要素が、前記ロッカーに固設されたピンと、前記ピンに付勢力を印加するように適合されたばねと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ピンが、ピンガイド内で延在し、前記ピンガイドが、それに対する摺動移動のために前記ピンをガイドするためのものである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
制限構成要素が、前記ガイドに対する前記ピンの移動を制限するために前記ピン上に肩部を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
記付勢構成要素が、前記主事象ロッカーと協働的に関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記付勢構成要素が、前記主事象ロッカーと前記専用ロッカーとの間に配設されたばねを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
記制限構成要素が、前記主事象ロッカーと係合するように適合された、前記専用ロッカー上の停止具を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
記制限構成要素が、前記主事象ロッカー上の第2の停止具と係合するように適合された、前記専用ロッカー上の第1の停止具を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ロッカー運動制御アセンブリは、前記ロッカー運動源側が前記運動源との係合から外れ、かつ前記ロッカー運動受容構成要素側が前記運動受容構成要素との係合から外れる、中立位置に向かって前記ロッカーを付勢するための付勢アセンブリを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記専用ロッカーは、前記運動源と前記制限構成要素により画定される運動の範囲内で移動するようにされ、前記付勢構成要素は、運動の前記範囲を通して前記専用ロッカーに連続的な付勢力を加えるように配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記専用ロッカーは、ロッカーシャフト上で移動するようにされ、前記制限構成要素は、前記ロッカーの前記運動に対して、固定された位置に留まる、ロッカー係合表面を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記付勢構成要素は、油圧ピストンを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
ロッカーシャフトをさらに備え、前記付勢構成要素は、前記ロッカーシャフトの周囲に着座されるねじりばねを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記付勢構成要素は、エンジンシリンダーヘッドに対して固定される支持プレートと、前記支持プレートを貫通する締結具の端に固設される保持フランジ上に支持されるばねリテーナとの間に配置される、ばねを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
内燃機関内の2つ以上のエンジンバルブ(150)のうちの少なくとも1つを作動させるためのシステム(100)であって、前記システムは、
2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つの主事象運動を容易にするための主事象ロッカーと、
補助動作時に2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つを作動させるための少なくとも1つの専用ロッカー(120)と、
前記専用ロッカーの運動源側に運動を与えるための運動源(140)と、
前記専用ロッカーの運動受容構成要素側から運動を受容するための運動受容構成要素(150,160,350)と、
前記専用ロッカーの運動を制御するためのロッカー運動制御アセンブリと、を備え、前記ロッカー運動制御アセンブリが、
付勢方向に前記専用ロッカーに連続的な付勢力を加えるように配置される付勢構成要素であって、前記付勢力は、前記専用ロッカーの前記運動源側が、前記運動源から離れて移動しやすくする、付勢構成要素(180,280,380,480,680,880,1080)と、
前記専用ロッカーに係合し、それにより前記付勢方向への前記専用ロッカーの前記運動を制限するための制限構成要素(190,290,390,1090)と、を含み、
前記制限構成要素は、前記内燃機関のシリンダヘッドに対して固定される、又は主事象ロッカーに対して固定される停止具を備え、
前記専用ロッカーが前記運動源に係合されないときに、前記付勢構成要素と前記制限構成要素が前記専用ロッカーと協働して、前記専用ロッカー確定される位置に維持する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔優先権の主張および関連出願の相互参照〕
本出願は、2018年3月7日出願の「SYSTEM FOR CONTROL OF A ROCKER ARM」と題された米国特許仮出願第62/639,993号の優先権を主張し、この仮出願の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、内燃機関内の周期的に動作するバルブのためのシステムに関する。より具体的には、本開示は、エンジンバルブトレインでロッカーアームを利用するエンジンバルブ作動システムに関し、エンジンブレーキまたはエンジンバルブトレインの他の補助バルブ運動動作などの、吸気および排気バルブ動作特性を変更することによるエンジン出力制御専用であり得るロッカーアームを含む。本開示は、そのようなロッカーアームの運動を制御するためのシステムにさらに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、エンジン吸気および排気バルブを制御し、その結果、動作中に燃焼室の内外への燃焼成分および生成物の流れを制御するためにバルブ作動システムに依存する。4ストローク動作サイクルでは、吸気バルブが開放されて、シリンダ内で移動するピストンの吸気ストローク中に膨張する燃焼室内に燃料および空気を取り入れる。圧縮ストロークでは、吸気バルブが閉鎖され、燃焼成分がピストンによって圧縮される。圧縮された燃焼成分は、次いで、点火され、ピストンの出力ストロークを引き起こす。排気ストロークでは、排気バルブが開放されて、ピストンがシリンダ内で変位する際に燃焼生成物がシリンダを出ることを可能にする。この動作は、典型的には、エンジンの「正出力」動作と呼ばれ、正出力動作中にバルブに印加される運動は、典型的には、「主事象」バルブ作動運動と称される。主事象作動に加えて、エンジンバルブ作動システムは、補助バルブ作動運動を容易にして、エンジンブレーキ(出力吸収)、排気ガス再循環(EGR)およびその他などの機能を支援する特徴を含み得る。そのようなバルブ運動は、エンジンバルブの1つ以上に与えられる「補助」事象を使用して達成され得る。
【0004】
バルブ移動は、典型的には、運動源としての1つ以上の回転カムによって制御される。バルブトレインを形成し得るカムフォロワ、プッシュロッド、ロッカーアームおよび他の要素は、カム表面からバルブへの運動の直接的な伝達を提供する。補助事象について、「ロストモーション」デバイスまたは可変長アクチュエータが、補助事象バルブ移動を容易にするためにバルブトレイン内で利用され得る。ロストモーションデバイスは、バルブ運動が、それぞれのカム表面単独による作動の結果として別様に生じることになる運動と比較して修正される、一種の技術的解決策を指す。ロストモーションデバイスは、バルブの主事象動作に加えて、またはそれに代えて、補助事象の選択的発生を容易にするために、その長さ、剛性または圧縮性が変化および制御されるデバイスを含み得る。
【0005】
補助運動バルブシステムは、1つ以上のエンジンバルブで補助事象を支援するために専用ロッカーアームを利用し得る。そのようなシステムでは、主事象運動は、主事象ロッカーによって容易にされ、一方、補助運動は、カムなどの専用運動源によって典型的に駆動される専用ロッカーによって容易にされる。専用ロッカーは、運動を吸収または伝達するように制御されるピストンアクチュエータを含み得る。ピストンアクチュエータがアクティブであると(例えば、延出した構成では)、専用ロッカーアームは、アクティブ状態にあると言われ、ブレーキカムからの運動を、エンジンバルブなどの運動受容構成要素に渡す。ピストンアクチュエータが非アクティブであると(例えば、格納された構成)、専用ロッカーは、非アクティブ状態にあると言われる。非アクティブ状態では、ロッカーは、ブレーキカムおよびバルブから係合解除され得る。したがって、専用ロッカーは、非制御状態となり得る。
【0006】
カムフォロワ、およびバルブばねまたは外部ばねなどの付勢機構を利用する従来のバルブトレインでは、ロッカーアームは、運動付与構成要素(すなわち、カムまたはカム表面)および運動受容構成要素(エンジンバルブまたはプッシュロッド)の損傷が制御された状態で動作し得る。例えば、高い動作速度では、カムおよびバルブトレイン構成要素の、これらの構成要素およびロッカーアームの慣性と組み合わせられた、加速度は、通常、接触するべき、ロッカーアームなどの、バルブトレインの構成要素間の分離を引き起こし得る。この分離およびそれに続く構成要素の再接触は、バルブトレイン接触表面および構成要素に損傷を結果的にもたらし得、いくつかの場合、エンジンバルブとピストンとの間の接触も考えられる。
【0007】
先行技術の制御デバイスは、ロッカーのカムフォロワ端をカムに向けて付勢することによって、ある程度の制御を提供するために付勢デバイスを利用してきた。しかしながら、典型的な専用ロッカーシステムでは、反対方向に付勢力を提供する、すなわち、ロッカーのバルブ端をバルブに向けて、かつロッカーのカムフォロワ端をカムから離れて付勢することによって、ロッカー運動を制御することは、通常、実際的ではない。これは、バルブが、例えば、当分野で既知のバルブブリッジを介して主事象運動の対象となるときに、そのような構成がロッカーにバルブまたは運動受容構成要素を「追跡」させることになるためである。
【0008】
ロッカーアームの制御された動作を維持する、アクティブおよび非アクティブ状態を有し得る、可変バルブ作動構成要素を組み込むシステムが、一層重要であり得る。非アクティブ化された状態の可変アクチュエータを有するバルブトレインでは、バルブトレイン内の構成要素間により大きいクリアランスが存在し得る。したがって、制御されていないロッカーアームは、動作中に「追跡」または分離されることになる接触表面の潜在性を悪化させ得、これは、再接触の際の高い衝撃力、ならびに構成要素に対する過剰な摩耗および/または損傷につながる。
【0009】
それゆえに、先行技術の上記および他の欠点を克服するシステムを提供することは、有利である。
【発明の概要】
【0010】
上記の課題に応じて、本開示は、常時、ロッカーの制御された動作を維持するバルブ作動システムの様々な実施形態を提供する。
【0011】
一態様によると、内燃機関内の2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つを作動させるためのシステムは、補助動作時に2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つを作動させるための少なくとも1つの専用ロッカーと、専用ロッカーの運動源側に運動を与えるための、カム、プッシュロッドまたは追加のロッカーアームなどの運動源と、専用ロッカーの運動受容構成要素側から運動を受容するための、エンジンバルブ、バルブブリッジ、または別のロッカーアームなどの運動受容構成と、前記専用ロッカーの運動を制御するためのロッカー運動制御アセンブリと、を備え、前記ロッカー運動制御アセンブリが、運動源から離れる付勢方向に専用ロッカーを付勢するための、圧縮ばね、引張ばね、ばね掛け、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータなどの、付勢構成要素と、付勢方向に専用ロッカーの運動を制限するための、止めねじまたは付勢構成要素に組み込まれた停止具を含む物理的停止具などの、制限構成要素と、を含み得る。
【0012】
別の態様によると、説明されたロッカー制御システムは、ロッカーが運動源から運動受容構成要素に運動を伝達しているアクティブ状態、またはロッカーが運動を伝達していない非アクティブ状態にロッカーがあるか否かにかかわらず、動作全体を通して制御された状態にロッカーアームを維持する。説明されたロッカー制御システムは、バルブトレインのより容易なパッケージ化を提供し、低減されたコスト、改善された応答時間、改善された耐久性および低減されたエンジン寄生損失を有し得る。
【0013】
本開示の他の態様および利点は、以下に続く詳細な説明から当業者にとって明らかとなり、上記の態様は、網羅的または限定としてみなされるべきではない。上記の一般的説明および以下の詳細な説明は、本開示の発明の態様の例を提供することを意図し、決して、添付の特許請求の範囲に定義された範囲の限定または制限として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記のおよび他の付随する利点および特徴は、添付図面と一緒に以下の詳細な説明から明らかとなり、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を表す。説明および実施形態が、本開示の態様による例示的な例として意図され、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される本発明の範囲に対する限定として意図されるものではないことが理解されるであろう。
【0015】
図1】ロッカー制御システムの例示的な実施態様の概略部分断面図である。
図2】ロッカー制御システムの第2の例示的な実施態様の概略部分断面図である。
図3】ロッカー制御システムの第3の例示的な実施態様の概略部分断面図である。
図4】ロッカー制御システムの第4の例示的な実施態様の上面視および側面視の概略図である。
図5】ロッカー制御システムの第4の例示的な実施態様の上面視および側面視の概略図である。
図6】ロッカー制御システムの第5の例示的な実施態様の上面視および側面視の概略図である。
図7】ロッカー制御システムの第5の例示的な実施態様の上面視および側面視の概略図である。
図8】ロッカー制御システムの第6の実施態様の斜視図である。
図8.1】ロッカー制御システムの第6の実施態様の斜視図である。
図9】ロッカー制御システムの第6の実施態様の斜視図である。
図10】ロッカー制御システムの第7の実施態様の概略図である。
図11】ロッカー制御システムの第7の実施態様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本開示の態様による例示的なロッカー制御システム100の概略図である。制御システム100を実装するための一般的な環境は、専用補助ロッカーアーム120が上に枢動可能に取り付けられている、断面で示されるロッカーアームシャフト110を含み得る。ロッカーアームシャフト110は、ポンプ構成要素(図示せず)によって動作圧力で提供される油などの、制御流体の流れのための通路112および114を含み得る。ロッカーアーム120は、カム140と係合するためのカムローラ130が上に取り付けられた運動源側122を含み得、カム140は、カムローラ130を介してロッカーアーム120に運動を提供するための運動源を構成する。ロッカーアーム120はまた、エンジンバルブ150などの運動受容構成要素に運動を与えるための、運動受容構成要素側124を含み得る。本明細書に使用される際、ロッカー運動源側122および運動受容構成要素側124は、例えば、ロッカーアームシャフト110の中心軸の両側に対するロッカーアーム120の任意の部分を指し得る。ロッカーアーム120の運動受容構成要素側124は、アクチュエータピストンアセンブリ160の構成要素を収容するための、その中に形成された作動シリンダ125を含み得、アクチュエータピストンアセンブリ160は、ロッカーアーム120内に同様に収容される制御バルブ170の制御下で制御通路126を介して供給される油圧制御流体によって選択的に作動され得る。制御バルブ170は、アクチュエータピストンアセンブリ160(概略的に例示される)に、ピストン162が作動シリンダ125から延出されるアクティブ化された状態、またはピストン162が作動シリンダ125内に格納される非アクティブ化された状態を想定させ得る。アクティブ化された状態では、制御バルブ170は、アクチュエータシリンダ125内で油圧流体の固定された体積を確立し、それにより、アクチュエータピストンアセンブリ160は、油圧的に硬直した状態にあるため、ブレーキまたは他の補助措置時にバルブ150にロッカーアーム運動を与える。バルブブリッジまたはブリッジピンなどの他の中間バルブトレイン構成要素は、アクチュエータピストン162とバルブ150のステムとの間に配設され得る。内燃機関の正出力動作中に典型的に起こる、非アクティブ化された状態では、アクチュエータピストンアセンブリは、油圧的に受動的な状態にある、すなわち、制御バルブ170は、油圧流体がアクチュエータシリンダ125から出ることを許容し、ピストン162が内部ばね(図示せず)からの力の下で作動シリンダ125内に格納されるため、エンジンバルブ150のステムの端の間に間隙またはラッシュスペースを生じさせる。さらに、非アクティブ化された状態では、ラッシュスペースは、カム140の全回転を通して存在し、ピストン162とバルブ150との間の間隙は、カムローラが外側基礎円を表すカムローブ142のピークに遭遇するとき、およびカム内側基礎円に遭遇するときの両方に存在する。したがって、エンジンの正出力動作中、カム140の全回転を通して、アクチュエータピストン162は、バルブ150、または他の中間バルブトレイン構成要素と接触しないことになる。さらに、カムローラ130は、カム140の表面と接触しなくてもよい。
【0017】
本開示の態様によると、付勢構成要素180が、ロッカーアーム120の制御を増強するために提供され得る。付勢構成要素は、運動受容構成要素側124で固定支持体184とロッカーアーム120との間に配設された圧縮ばね182を含み得る。ロッカーアームは、ばね182の底部と係合するための平坦表面186を含み得、ばね182の内径と一致し得る隆起した円形ばねガイド188が、平坦表面186から延在し得る。固定支持体184は、エンジンヘッドに固設されたカムキャップまたは支柱から延在するプレートまたはリッジであり得る。固定支持体184は、そこから延在する上側円形ばねガイド189を含み得、圧縮ばね182の支持および安定性を向上させる。したがって、付勢構成要素は、カムローラから離れる方向にロッカーアームに対して一定の付勢力を提供する。つまり、付勢方向は、カム表面から変位されるカムローラを保持しようとし、バルブ150に向かう方向にロッカーアーム運動構成要素受容端を付勢しようとする。さらに、圧縮ばね182の強さは、エンジンに対するバルブばねの強さよりも軽いように(すなわち、より低いばね定数に)選択され得る。この構成は、カムローラがカム表面に接触してそれらの間のいかなる間隙も塞ぐことを許容するようにロッカーアームが枢動し得るように、可変アクチュエータがアクティブ化されたまたは延出した状態にあるときに、付勢ばね182が圧縮することを許容することになる。
【0018】
本開示の態様によると、制御システム100は、付勢方向にロッカーアーム120の運動を制限するための制限構成要素190を含み得る。制限構成要素190は、ロッカーアーム120の運動源端122の運動を制限するための物理的停止具を含み得る。物理的停止具は、固定取り付けプレート194上に調節可能に支持され、かつロッカー係合端196を含み得る、止めねじ192の形態であり得る。取り付けプレート194は、シリンダヘッドに締結されたカムキャップまたは支柱上で固定され得る。ロッカー120は、止めねじ192を係合するための平坦表面129を備え得る。係止締結具193が、取り付けプレート194に対して定位置に止めねじ192を係止するために提供され得る。認識されるように、図1に示される実施態様は、付勢構成要素が、常時、ロッカーアームを運動受容構成要素(エンジンバルブ)と接触した状態に保持することになるため、限定構成要素または物理的停止具なしで使用されてもよい。エンジンブレーキモードにあるとき、アクチュエータピストンは、付勢力に勝って、ロッカーカムローラを押してカムと接触させることになる。
【0019】
認識されるように、付勢構成要素180と制限構成要素190との組み合わせは、エンジンの正出力動作中、またはロッカーアーム120がバルブトレインの他の構成要素と別様に接触しないときに、制御された能動的に画定された中立位置にロッカーアーム120を維持するように動作することになる。上記のおよび本明細書の異なる実施態様にさらに説明される制限構成要素および付勢構成要素は、本開示に記載される本発明の態様から逸脱せずにロッカーアーム上の異なる場所に位置決めされてもよいことがさらに認識されるであろう。
【0020】
図2は、本開示の態様による別の例示的なロッカーアーム制御システム200の概略図である。この例では、制限構成要素290は、ロッカーアーム220の運動源側222に対して上向きの力を及ぼす付勢構成要素280内に組み込まれている。ピンまたはボルト292が、運動源側224内に拘束されるか、または別様にそれに締結される、ヘッド部分293を含み得る。ピンまたはボルト292はまた、肩部296で終端する停止区分295、およびばね保持プレート298までさらに上方に延在するガイド区分297を含み得、ばね保持プレート298は、ガイド区分297の末端にねじで締結され得る。ガイド区分297は、エンジンシリンダヘッドに固設され得るおよび/またはエンジンシリンダヘッドに固設された支柱から延在し得る、固定ガイドプレート294内の通路291を通って延在する。圧縮ばね282は、固定ガイドプレート294の上面とばね保持プレート298との間に配設され、そこに対して上向きの力を及ぼし、したがって、カム240から離れる方向にロッカーアーム120の運動源端222およびカムローラ230を付勢する。認識されるように、ガイド部分297、および、したがって、ロッカーアーム220の上方移動は、固定ガイドプレート294内の通路291の寸法よりも大きい寸法(直径)である肩部296によって制限される。肩部296は、詳細を示すために、固定ガイドプレート294から変位されている位置に例示されている。主事象運動中(すなわち、運動源および運動受容構成要素の力がロッカーアームに印加されていないとき)、ばね282が肩部296を固定ガイドプレート294に対して保持するため、制御システム200が、ロッカーアーム220を能動的に画定された中立位置に維持することが認識されるであろう。
【0021】
図3は、別の例示的なロッカーアーム制御システム300の概略図であり、付勢構成要素380が、ロッカーアーム320の運動源側322上に配設された油圧構成要素の形態であり得る。油圧構成要素は、ロッカーアーム380内に形成され、かつ同様にロッカーアーム380内に形成されてロッカーシャフト孔326まで延在して加圧された油圧流体を受容する制御流体通路328と流体連通している、油圧シリンダ381を含み得る。油圧ピストン384が、油圧シリンダ内に配設され得、シリンダ381内の加圧された油圧流体によってロッカーアーム320から外向きに付勢されることになる。停止プレート388は、エンジンシリンダヘッドに固定され得る。ピストン384が停止プレート388と接触すると、付勢力は、ピストン384によってロッカーアーム322に対して上方向に及ぼされることになり、したがって、カム340から離れるようにロッカーアーム運動源側322を付勢する。制限構成要素390は、付勢された方向にロッカーアーム320の運動を制限し得る。制限構成要素390は、図1に関して説明されたものと同様であり得、ロッカーアーム322の運動源端322の運動を制限するための物理的停止具を含み得る。物理的停止具は、固定取り付けプレート394上に調節可能に支持され得、かつロッカーアーム320の平坦エリア329と係合するためのロッカー係合端396を含み得る、止めねじ392の形態であり得る。取り付けプレート394は、シリンダヘッドに締結されたカムキャップまたは支柱上で固定され得る。係止締結具393が、取り付けプレート394に対して定位置に止めねじ392を係止するために提供され得る。油圧構成要素の付勢力を制御するために、圧力調整デバイスまたは制御部が、制御流体通路328および油圧シリンダ381と連通して提供され得る。
【0022】
図4および5は、専用ロッカーアーム420の別の例示的なロッカー制御システム400を例示し、付勢構成要素および制限構成要素が、専用(補助)ロッカーアーム420と主事象ロッカーアーム520との間に着座され、かつそれらと協働する要素を使用して実装されている。図4は、専用(補助)ロッカー420の概略図の上面視、図5は、側面視である。図5では、主事象ロッカー本体は、省略されている。しかしながら、ブレーキロッカー420上の要素と相互作用する主事象ロッカー上の要素、つまり、主事象ロッカー停止タブ526および主事象ロッカーばね支持体522は、影付き要素(斑点)として示されている。この例では、専用ロッカー420用の付勢構成要素は、圧縮ばね480およびブレーキロッカー420から延在する専用ロッカーばね支持体422を含み得る。専用ロッカーばね支持体422は、ばねを能動的な位置に保持するために、および安定性のために、ばね480の内径に対応する直径を有する第1の円形ばねガイド424を含み得る。ばね480の反対側の端は、第2の円形ばねガイド524を含み得る主事象ロッカーばね支持体522と係合する。図4および5の例示的なシステム400では、制限構成要素は、主事象ロッカー520から延在し、かつ専用ロッカーばね支持体422と係合するように適合された、主事象ロッカーストップタブ526を含み得る。この構成では、ブレーキロッカー420は、カムから離れるようにカムローラ430を動かそうとする方向(図5の時計回り)に付勢される。さらに、主事象停止タブ526は、ブレーキロッカーの非アクティブ化された状態中に主事象ロッカー運動に対して、付勢された方向に専用ロッカーの移動に対する制限を提供し、したがって、専用ロッカー526の中立位置を能動的に画定する。本開示から認識されるように、この例での専用ロッカーの「能動的な」位置は、上記の図1~3の例のロッカーアームによって想定される静止位置と対照的に、主事象ロッカー520の運動に対して画定される。したがって、主事象運動中、専用ロッカーが非アクティブ化された状態にある状態で、カム外側基礎円がカムローラと位置合わせされているときでも、専用ロッカーは、主事象ロッカーと共に能動的に動き、カムローラは、カムと接触しないままである。専用ロッカーがアクティブ化された状態にあるとき、主事象ロッカー比は、専用ロッカーアクチュエータピストンとバルブ端との間に大きい間隙を作成し得る。専用ロッカーアクチュエータピストンは、次いで、延在し、主事象から補助動作へのハンドオフ条件中、ばね480が圧縮され、カムローラ430がカムに向かって動く方向にブレーキロッカーが動き、したがって、補助動作サイクル時にブレーキロッカー運動をカム表面の制御下に置く。
【0023】
図6および7は、カムローラ630をカムと接触させようとする方向に専用ロッカー620に対して付勢力を提供するための、図4および5のシステムの修正されたバージョンである、別の例示的な制御システム600を例示する。図6は、専用ロッカー620の概略図の上面視、図7は、側面視である。図7では、主事象ロッカー本体は、省略されている。しかしながら、専用ロッカー620上の要素と相互作用する主事象ロッカー上の要素、つまり、主事象ロッカーばね支持体722および主事象ロッカー停止タブ726は、影付き要素(斑点)として示されている。この例では、専用ロッカー620用の付勢構成要素は、圧縮ばね680および専用ロッカー620から延在する専用ロッカーばね支持体622を含み得る。専用ロッカーばね支持体622は、ばねを能動的な位置に保持するために、および安定性のために、ばね680の内径に対応する直径を有する第1の円形ばねガイド624を含み得る。ばね680の反対側の端は、第2の円形ばねガイド724を含み得る主事象ロッカーばね支持体722と係合する。図6および7の例示的なシステム600では、制限構成要素は、主事象ロッカー720から延在し、かつ専用ロッカーばね支持体622と係合するように適合された、主事象ロッカーストップタブ726を含み得る。この構成では、専用ロッカー620は、カムから向かってカムローラ430を動かそうとする方向(図7の反時計回り)に付勢される。さらに、主事象停止タブ726は、専用ロッカーの非アクティブ化された状態中に主事象ロッカー運動に対して、付勢された方向に専用ロッカーの移動に対する制限を提供し、したがって、専用ロッカー620の能動的な位置を画定する。補助(専用)ロッカー620が、基礎円上にあるときにカムと接触するように付勢されることになることが認識されるであろう。さらに、アクチュエータピストンがアクティブ化されると、補助ロッカーばねタブ622と主事象ロッカー停止タブ726との間に小さい間隙が依然として存在し得る。主事象ロッカー停止タブ726は、典型的には、動作の主事象リフト部分中に専用ロッカーばね支持体622と接触することになる。本開示から理解されるように、この例での専用ロッカーの「能動的な」位置は、上記の図1~3の例のロッカーアームによって想定される静止位置と対照的に、主事象ロッカー720の運動に対して画定される。したがって、主事象運動中、専用ロッカーが非アクティブ化された状態にある状態で、カム外側基礎円がカムローラと位置合わせされているときでも、専用ロッカー620は、主事象ロッカーと共に能動的に画定された位置で動き、カムローラは、カムと接触しないままである。専用ロッカーがアクティブ化された状態にあるとき、主事象ロッカー比は、専用ロッカーアクチュエータピストンとバルブ端との間に大きい間隙を作成し得る。専用ロッカーアクチュエータピストンは、次いで、延在し、主事象から補助動作へのハンドオフ条件中、ばね680が圧縮され、カムローラ630がカムに向かって動く方向に専用ロッカーが動き、したがって、補助動作サイクル時に専用ロッカー運動をカム表面の制御下に置く。
【0024】
図8、8.1および9は、ロッカーシャフトの周囲に着座され、かつロッカー820が運動源および運動受容構成要素と接触しない能動的に画定された中立の中央位置にロッカー820を維持するように適合された、ねじりばね880を利用する例示的なロッカー制御システム800の斜視図である。ねじりばね880は、凹部822内に配設され、かつロッカージャーナル824に対して略同心配向にある、本体882を含み得る。本体882は、運動源側延長部884および運動受容構成要素側延長部886を含み得、両方がロッカー820内の凹部826内に収容され、両方が凹部826のそれぞれの壁に当接している。締結ボルト852を用いてエンジンシリンダヘッドに固定され得る保持プレート850は、保持プレート850に対する、ねじりばね880の運動源側延長部884および運動受容構成要素側延長部886の移動を制限する保持プレート凹部854を含む。理解されるように、延長部884および882は、ロッカー820が回転すると、保持プレート凹部854の壁からの制限された変位を受け得るしたがって、両方の回転方向でのロッカー820の回転は、それによって、制限されるロッカー820が非アクティブ化された状態にあるとき、主事象動作中、ロッカー820は、ねじりばね880によって静止位置に維持される。ロッカー820がアクティブ化された状態にあるとき、補助動作中、アクチュエータピストン860が延出し、延長部886によって提供される付勢力に抗してロッカー820を回転させ、カムローラ830に、カムロッカー820が中央位置にある状態でいかなる間隙も塞がせる。運動受容構成要素側延長部886は、ロッカーに対して付勢力を及ぼし、この付勢力は、カムローラ830をカムと接触せずにカムから離れて保持しようとする。補助動作がその後に非アクティブ化されると、ロッカー820は、ねじりばね880の制御下でその中央の制御された中立位置に戻る。
【0025】
図10および11は、付勢構成要素1080がカム1040の方向にロッカー運動源側に対して付勢力を提供する、別のロッカー制御システム1000の概略図である。圧縮ばね1082が、シリンダヘッドに対して固定されている固定支持プレート1084と反対側の端上のばねリテーナ1086との間に配設されている。ばねリテーナ1086は、固定支持プレート1084を貫通するねじ山付き締結具1092の端に固設された保持フランジ1090上に支持されている。ばね1082の拡張は、したがって、保持フランジ1090によって制限される。ばね座部材1096が、ねじ山付き締結具を用いてロッカーアームに固設され、内部に形成された輪郭付き凹部を含み得る。凹部1098は、間隙1099が保持フランジ1090と凹部1098との間に維持されて、油の蓄積を許容し、ばね力をばね座部材1096から隔離するように形状決めおよび配向される。
【0026】
本実施態様が特定の例示的な実施形態を参照して説明されたが、様々な修正および変更が、特許請求の範囲に記載される本発明の広範な概念および範囲から逸脱せずに、これらの実施形態になされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示としてみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8.1】
図9
図10
図11