(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】水冷式オートバイ
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20230215BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230215BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20230215BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B62M7/02 X
F01N13/08 G
F01P11/10 H
B62M7/02 J
B60K11/04 H
(21)【出願番号】P 2021041315
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】597127029
【氏名又は名称】光陽工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄建智
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-201938(JP,A)
【文献】特開平05-238456(JP,A)
【文献】特開昭62-107222(JP,A)
【文献】特開2007-278511(JP,A)
【文献】特開2006-315657(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01835202(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
F01N 13/08
F01P 11/10
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン装置と、前記エンジン装置からの廃気を排出する排気装置と、冷却液を用いて前記エンジン装置を冷却する冷却装置と、を備えた水冷式オートバイであって、
前記エンジン装置は、回転動力を生成する気筒と、前記気筒により生成される回転動力を出力し、且つ、オートバイの前後方向に略直交する所定の横方向に沿って延伸する駆動軸と、を有しており、
前記排気装置は、前記エンジン装置からの廃気を排出する排気管と、該排気管に取り付けられているマフラーとを有し、且つ、前記マフラーは、前記駆動軸の延伸先の一端側に配置されており、
前記冷却装置は、前記駆動軸の前記一端側の反対側に配置されているラジエーターを
有し、
前記冷却装置は、前記ラジエーターと前記エンジン装置との間に配置され、前記ラジエーターの周辺の空気の流れを作り出す放熱ファンを更に有し、
前記放熱ファンは、前記エンジン装置の前記駆動軸により駆動されて回転して前記ラジエーターのフィンユニットの周辺の空気を吸出し、
本体部と蓋部とにより囲まれるクランクケースの内部空間の前記マフラーに隣接する一部の空間は、伝動手段収容室とされていることを特徴とする水冷式オートバイ。
【請求項2】
前記冷却装置の前記ラジエーターは、互いに間を開けて配置されている第1の冷却液タンクと第2の冷却液タンクと、前記第1の冷却液タンクと第2の冷却液タンクとの間に配置されているフィンユニットと、を有し、
前記フィンユニットは前記第1の冷却液タンクから前記第2の冷却液タンクまで延伸する複数の連通管と、各前記連通管にそれぞれ連続している多数の放熱フィンと、を有しており、
前記冷却液は、各前記連通管を経由して前記第1の冷却液タンクから前記第2の冷却液タンクに送られる際に、各前記放熱フィンと熱交換して前記エンジン装置からの熱を放出
するように配置構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の水冷式オートバイ。
【請求項3】
前記エンジン装置の前記駆動軸からの回転動力を該水冷式オートバイの後輪に伝動する伝動装置を更に備え、
該伝動装置は、互いにかみ合って連動して回転する複数の歯車及び該複数の歯車の回転により駆動されると共に、前記駆動軸と略平行に延伸する出力軸を有するギアセットと、前記エンジン装置の前記駆動軸により直接に駆動されて該駆動軸からの回転動力を前記ギアセットに伝動して前記複数の歯車を回転させる第1の伝動手段と、
前記ギアセットの前記出力軸により直接に駆動されて該出力軸からの回転動力を前記後輪に伝動して前記後輪を駆動する第2の伝動手段と、を有していることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の水冷式オートバイ。
【請求項4】
前記エンジン装置は、前記気筒を収容するクランクケースを有しており、該クランクケースは、前記気筒が囲まれて収容されると共に、前記排気装置の前記マフラーに面する開口が形成されている本体部と、前記開口を覆うように該本体部に取り付けられている蓋部と、を有しており、
また、前記本体部と前記蓋部とにより囲まれる前記クランクケースの内部空間の前記マフラーに隣接する一部の空間は、
前記伝動手段収容室として前記伝動装置の前記第1の伝動手段が収容されていることを特徴とする請求項
3に記載の水冷式オートバイ。
【請求項5】
前記伝動手段収容室に隣接する一部の空間は、ギアセット収容室として前記伝動装置の前記ギアセットが収容されていて、前記ギアセット収容室は前記駆動軸の前記前後方向の後方に位置することを特徴とする請求項
4に記載の水冷式オートバイ。
【請求項6】
前記排気装置が有する前記排気管は、前記エンジン装置の前記気筒から前記マフラーまで延伸するように構成されていると共に、前記マフラーに取り付けられている第1の取り付け端と、前記エンジン装置の前記気筒に取り付けられている第2の取り付け端と、を有しており、
また、前記横方向に平行して前記第1の取り付け端を通過する第1の仮想線と、前記横方向に平行して前記第2の取り付け端を通過する第2の仮想線と、前記第1の仮想線及び前記第2の仮想線と直交し、且つ、該水冷式オートバイの幾何中心を通過する仮想平面と、前記仮想平面に平行して前記第1の取り付け端を通過する第3の仮想線と、により囲まれる空間内に、前記伝動手段収容室の少なくとも一部が収まっていることを特徴とする請求項
4に記載の水冷式オートバイ。
【請求項7】
前記伝動手段収容室の前記前後方向の後方に、前記排気装置の前記マフラーの少なくとも一部が位置するように配置構成されていることを特徴とする請求項
1~請求項
6のいずれか一項に記載の水冷式オートバイ。
【請求項8】
車体フレームを更に備え、前記エンジン装置と前記排気装置とはそれぞれ前記車体フレームとの間での相対運動が不可能になるように前記車体フレームに固定されていることを特徴とする請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の水冷式オートバイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートバイに関し、特に、水冷式オートバイに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示されるように、特許文献1にはスクータなどのオートバイに用いられる従来のエンジン冷却装置が示されている。図示のように、該従来のエンジン冷却装置のラジエーター9は、冷却液を用いてスクータ8のエンジンを冷却するものであるが、スクータ8の排気装置81の隣(前方)に配置されるので、冷却液と熱交換してエンジンからの熱を放出するはずであるラジエーター9は、高熱の廃気を排出する排気装置81の影響を受けて十分に放熱機能を発揮できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】台湾特許出願公開第201730023号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、エンジンの気筒からの高熱の廃気を排出する排気装置からの影響を受けにくいラジエーターを有する冷却装置を備えた水冷式オートバイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点に鑑みて、本発明は、
エンジン装置と、前記エンジン装置からの廃気を排出する排気装置と、冷却液を用いて前記エンジン装置を冷却する冷却装置と、を備えた水冷式オートバイであって、
前記エンジン装置は、回転動力を生成する気筒と、前記気筒により生成される回転動力を出力し、且つ、該オートバイの前後方向に略直交する所定の横方向に沿って延伸する駆動軸と、を有しており、
前記排気装置は、前記エンジン装置からの廃気を排出する排気管と、該排気管に取り付けられているマフラーとを有し、且つ、前記マフラーは、前記駆動軸の延伸先の一端側に配置されており、
前記冷却装置は、前記駆動軸の前記一端側の反対側に配置されているラジエーターを有することを特徴とする水冷式オートバイを提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記のように、本発明の水冷式オートバイは、排気装置のマフラーと冷却装置のラジエーターとが、エンジン装置の駆動軸の両端側にそれぞれ配置されているので、ラジエーターは、排気装置からの影響を受けにくく、放熱機能を十分に発揮することを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】従来の水冷式オートバイ(スクータ)のエンジン冷却装置と排気装置の配置例が示されている一部斜視図である。
【
図2】本発明の水冷式オートバイの構成が示されている側面図である。
【
図3】本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている上面図である。
【
図4】本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている下面図である。
【
図5】本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている断面図である。
【
図6】本発明の水冷式オートバイにおける冷却装置の構成が示されている分解斜視図である。
【
図7】本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下は
図2~
図7を参照して本発明の水冷式オートバイの実施形態について詳しく説明する。
【0009】
図2は本発明の水冷式オートバイの構成が示されている側面図である。
【0010】
図示のように、本発明の水冷式オートバイは、車体フレーム5と、それぞれ車体フレーム5との間での相対運動が不可能になるように該車体フレーム5に固定される(即ちスイング式ではない)エンジン装置1及び該エンジン装置からの廃気を排出する排気装置2と、エンジン装置1に取り付けられて冷却水を用いてエンジン装置1を冷却する冷却装置3と、を備えている。なお、ここでいう相対運動が不可能になるというのは、排気装置2及びエンジン装置1の車体フレーム5に対する相対移動や揺動がすべて不可能になるように車体フレーム5に固定されている状態を指している。
【0011】
図3は本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている上面図であり、
図4は本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている下面図であり、
図5は本発明の水冷式オートバイのエンジン装置の周辺の構成が示されている断面図である。
【0012】
エンジン装置1は、回転動力を生成する気筒11と、気筒11が収容されるクランクケース12と、気筒11により生成される回転動力を出力し、且つ、該オートバイの前後方向(
図5におけるX方向)に略直交する所定の横方向(即ち、
図3~
図5における左右方向)に沿って延伸して少なくとも1端がクランクケース12の外に露出している駆動軸13と、を有している。
【0013】
なお、
図3~
図5に示されるように、該オートバイは、エンジン装置1の駆動軸13からの回転動力を後輪6に伝動する伝動装置4をも備えている。
【0014】
排気装置2は、エンジン装置1の気筒11からの廃気を排出する排気管22と、該排気管22の気筒11とは反対側に取り付けられているマフラー21とを有している。図示のように、マフラー21は、駆動軸13の延伸先の一端側(
図3における左側/
図4における右側)に配置されている。
【0015】
冷却装置3は、駆動軸13の前記一端側の反対側(
図3における右側/
図4、
図5における左側)に配置されているラジエーター31と、ラジエーター31とエンジン装置1のクランクケース12との間に配置され、ラジエーター31の周辺の空気の流れを作り出す放熱ファン32と、を有するように構成されている。
【0016】
伝動装置4は、互いにかみ合って連動して回転する複数の歯車及び該複数の歯車の回転により駆動されると共に、駆動軸13と略平行に延伸する出力軸431を有するギアセット43と、エンジン装置1の駆動軸13により直接に駆動されて該駆動軸13からの回転動力をギアセット43に伝動して前記複数の歯車を回転させる第1の伝動手段42と、ギアセット43の出力軸431により直接に駆動されて該出力軸431からの回転動力を後輪6に伝動して後輪6を駆動する第2の伝動手段44と、を有している。
【0017】
ちなみに、この実施形態において、第1の伝動手段42と第2の伝動手段44とは、いずれも伝動ベルトである。
【0018】
図4及び
図5に示されているように、エンジン装置1のクランクケース12は、気筒11が囲まれて収容されると共に、排気装置2のマフラーに面する開口が形成されている本体部121と、該開口を覆うように該本体部121に取り付けられている蓋部122と、を有していると共に、本体部121と蓋部122により囲まれる内部空間120は、気筒11及び駆動軸13の大部分が収容される気筒収容室123と、伝動装置4の第1の伝動手段42が収容される伝動手段収容室124と、伝動装置4のギアセット43が収容されるギアセット収容室125と、を有するように仕切られている。
【0019】
図示のように、この実施形態において、クランクケース12は、気筒収容室123が内部空間120のほぼ中心に位置しており、伝動手段収容室124が排気装置2のマフラー21に隣接する箇所にあり、そしてギアセット収容室125は駆動軸13の後方に位置し、且つ、伝動手段収容室124に隣接する箇所にあるように配置構成されている。
【0020】
エンジン装置1及び伝動装置4をこのように配置構成することにより、エンジン装置1及び伝動装置4が配置される空間を効率的に利用することができる。特に、エンジン装置1の駆動軸13と伝動装置4の出力軸431との距離を短くすることができる。
【0021】
また、
図4に示されているように、排気装置2が有する排気管22は、エンジン装置1の気筒11からマフラー21まで延伸するように構成されていると共に、マフラー21に取り付けられている第1の取り付け端221と、エンジン装置1の気筒11に取り付けられている第2の取り付け端222と、を有している。
【0022】
また、
図4に示されているように、この実施形態では、駆動軸13の延伸方向である横方向に平行して排気管22の第1の取り付け端221を通過する第1の仮想線L1と、同横方向に平行して排気管22の第2の取り付け端222を通過する第2の仮想線L2と、第1の仮想線L1及び第2の仮想線L2と直交し、且つ、該水冷式オートバイの幾何中心を通過する仮想平面Pと、仮想平面Pに平行して排気管22の第1の取り付け端221を通過する第3の仮想線L3と、により囲まれる空間内に、伝動手段収容室124がほぼ収まるように構成されている。
【0023】
なお、伝動手段収容室124はこの第1の仮想線L1と第2の仮想線L2と第3の仮想線L3と仮想平面Pとにより囲まれる空間内に全体が収まる必要はなく、少なくとも一部が収まっていれば、エンジン装置1及び伝動装置4を配置するための空間の利用効率の向上を図ることができる。
【0024】
図7は本発明の水冷式オートバイのエンジン装置1の周辺の構成が示されている正面図である。
図4及び
図5に示されるように、冷却装置3のラジエーター31はエンジン装置1の右側に配置され、排気装置2のマフラー21はエンジン装置1の左側に配置され、そして
図7に示されるように、排気装置2のマフラー21の少なくとも一部が伝動手段収容室124の前後方向の後方に位置するように配置構成されている。このように排気装置2のマフラー21を配置することにより、本発明の水冷式オートバイ全体の幅を小さくすることで空間利用効率を更に図り、例えばコーナリングの際にオートバイを傾けることができる角度をより大きくすることができるようになる。
【0025】
図6は本発明の水冷式オートバイにおける冷却装置の構成が示されている分解斜視図である。
【0026】
図5及び
図6に示されるように、冷却装置3のラジエーターは31、互いに間を開けて配置されている第1の冷却液タンク312と第2の冷却液タンク313と、第1の冷却液タンク312と第2の冷却液タンク313との間に配置されているフィンユニット311と、を有し、フィンユニット311は第1の冷却液タンク312から第2の冷却液タンク313まで延伸する複数の連通管310と、各連通管310にそれぞれ連続している多数の放熱フィンと、を有している。冷却液は、各連通管310を経由して第1の冷却液タンク312から第2の冷却液タンク313に送られ、もしくは第2の冷却液タンク313から第1の冷却液タンク312に送られる際に、各放熱フィンと熱交換してエンジン装置1からの熱を放出するように構成されている。放熱ファン32は、ラジエーター31とエンジン装置1のクランクケース12との間に配置されると共に、エンジン装置1の駆動軸13のクランクケース12外に露出する端部に取り付けられて該駆動軸13により駆動されて回転し、ラジエーター31のフィンユニット311の周辺の空気を吸出するように空気の流れを作り出すことにより、フィンユニット311の各放熱フィンの周辺の空気の流れを活性化することにより、フィンユニット311全体の放熱性能に寄与することができる。ちなみに、この実施形態においては、放熱ファン32としては遠心ファンを採用してフィンユニット311の周辺の空気をエンジン装置1の下方へ送るように構成されている。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記のように、本発明の水冷式オートバイは、排気装置のマフラーと冷却装置のラジエーターとが、エンジン装置の駆動軸の両端側にそれぞれ配置されているので、ラジエーターは、排気装置からの影響を受けにくく、放熱機能を十分に発揮することを期待することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 エンジン装置
11 気筒
12 クランクケース
120 内部空間
121 本体部
122 蓋部
123 気筒収容室
124 伝動手段収容室
125 ギアセット収容室
13 駆動軸
2 排気装置
21 マフラー
22 排気管
221 第1の取り付け端
222 第2の取り付け端
3 冷却装置
31 ラジエーター
310 連通管
311 フィンユニット
312 第1の冷却液タンク
313 第2の冷却液タンク
32 放熱ファン
4 伝動装置
42 第1の伝動手段
43 ギアセット
431 出力軸
44 第2の伝動手段
5 車体フレーム
6 後輪
L1 第1の仮想線
L2 第2の仮想線
L3 第3の仮想線
P 仮想平面