(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】プレスブレーキ
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
B21D5/02 K
B21D5/02 P
B21D5/02 C
B21D5/02 D
B21D5/02 V
B21D5/02 S
(21)【出願番号】P 2021528287
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025398
(87)【国際公開番号】W WO2020262680
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019122091
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599002722
【氏名又は名称】エルヴィディー カンパニー エヌ.ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】LVD COMPANY n.v.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 豪生
(72)【発明者】
【氏名】平林 渉
(72)【発明者】
【氏名】ティファエルト クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】コルネルス アレクサンデル
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206136(JP,A)
【文献】特許第3394141(JP,B2)
【文献】特開昭63-174726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ及びパンチによってワークに対して曲げ加工を行うプレスブレーキであって、
前記ワークの裏面を支持するダイと、
前記ダイに対向して配置され、前記ダイに対して相対的に上下方向に移動し前記ワークの表面を押圧するパンチと、
ダイ長手方向において前記ダイの中央部が両端部に対して上方に突出する量であるクラウニング量を変更するクラウニング機構と、
前記ワークの幅方向中央部の曲げ量である中央曲げ量と、前記ワークの幅方向端部の曲げ量である端曲げ量とを計測する曲げ量計測器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ダイ及び前記パンチによって曲げ加工が施されたワークの
前記パンチによる曲げ加工中でない状態での前記中央曲げ量と前記端曲げ量を前記曲げ量計測器から取得し、
前記中央曲げ量の目標曲げ量に対する不足分と、前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分との差分に応じて、クラウニング量を補正し
、
曲げ加工位置まで前記ワークを再搬送させ、補正された前記クラウニング量に基づいて、前記クラウニング機構を駆動させる
とともに、前記ワークをパンチで押圧して再曲げ加工を行う、プレスブレーキ。
【請求項2】
前記ダイの全体又は前記パンチの全体の傾斜角度に関するチルト量を変更するチルト機構を更に備え、
前記制御装置は、
前記ダイ及び前記パンチによって曲げ加工が施されたワークの両端それぞれの端曲げ量を前記曲げ量計測器から取得し、
前記各端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分の差分に応じて、チルト量を補正して前記チルト機構を駆動させる、請求項1に記載のプレスブレーキ。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記ダイ及び前記パンチによって曲げ加工が施されたワークの端曲げ量を前記曲げ量計測器から取得し、
前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて、前記パンチによるワークに対する押込み量を補正して前記パンチを駆動させる、請求項1又は2に記載のプレスブレーキ。
【請求項4】
ダイ長手方向の一端部のパンチを上下方向に駆動させる第1駆動機構と、ダイ長手方向の他端部のパンチを上下方向に駆動させる第2駆動機構とを含むパンチ駆動機構を更に備え、
前記制御装置は、
前記ダイ及び前記パンチによって曲げ加工が施されたワークの幅方向一端部の曲げ量である第1端曲げ量と、前記ワークの幅方向他端部の曲げ量である第2端曲げ量とを前記曲げ量計測器から取得し、
前記第1端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて前記第1駆動機構の動作量を決定し、
前記第2端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて前記第2駆動機構の動作量を決定する、請求項1~3の何れかに記載のプレスブレーキ。
【請求項5】
ダイと、前記ダイに対向して配置され、前記ダイに対して相対的に上下方向に移動し前記ワークの表面を押圧するパンチと、ダイ長手方向において前記ダイの中央部が両端部に対して上方に突出する量であるクラウニング量を変更するクラウニング機構と、を備えたプレスブレーキの制御方法であって、
ワークをパンチで押圧して曲げ加工を行う工程と、
押圧された前記ワークを搬送する工程と、
押圧された前記ワークについて、前記パンチによる、ワークの幅方向中央部の曲げ量である中央曲げ量及び前記ワークの幅方向端部の曲げ量である端曲げ量を
前記パンチによる曲げ加工中でない状態で取得する工程と、
前記中央曲げ量の目標曲げ量に対する不足分と、前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分との差分に応じて、クラウニング量を補正する工程と、
曲げ加工位置まで前記ワークを再搬送し、補正された前記クラウニング量に基づいてクラウニング機構を駆動させるとともに、前記ワークをパンチで押圧して再曲げ加工を行う工程と、
を備える、プレスブレーキの制御方法。
【請求項6】
前記ダイの全体又は前記パンチの全体の傾斜角度に関するチルト量を変更するチルト機構を更に備えるプレスブレーキの制御方法であって、
さらに、前記ワークの両端部の各前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて、チルト量を補正する工程を備え、
前記再曲げ加工工程は、
さらに、補正された前記チルト量に基づいてチルト機構を駆動させるとともに、前記ワークの両端部の各前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて、前記ワークをパンチで押圧して再曲げ加工を行う、請求項5に記載のプレスブレーキの制御方法。
【請求項7】
前記再曲げ加工工程は、
さらに、前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分に応じて、前記パンチによるワークに対する押込み量を補正して前記パンチを駆動させる、請求項5に記載のプレスブレーキの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに曲げ加工を施すプレスブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキでワークに多段曲げ加工を行う場合、例えば特許文献1に開示されているように、いわゆるパーシャルベンディング方式(典型的エアーベンディング方式)を用いることが知られている。このパーシャルベンディング方式とは、パンチでワークを押圧する際、ワークをダイの溝に底当てさせずに、ワークの裏面が溝内で浮いた状態としてワークを曲げる方式である。従って、パンチの押込み量を調整することで、ワークに対して任意の曲率を付与することができる。その他の方式として、ボトミング方式やコイニング方式があるが、いずれもパンチによる押込みによってワークがダイの溝に底当てされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、折り曲げ加工装置であるプレスブレーキでは、予めパンチのストローク値を決め、そのストローク値で加工することが一般的である。ここで、そのストローク値と得られる角度との関係はワークの材料のヤング率及び板厚などに依存するが、ヤング率には材料の公称値からのバラつきが存在し、板厚にはノミナル値からの誤差が存在する。従って、一度加工してみないと正確なストローク値を得ることが難しい。
【0005】
また加工中のワークの角度を常にモニタリングして、フィードバックしながら指定の角度でストロークを止める方法もある。しかし、多段曲げ加工では、1回1回の曲げ角度が小さいことから、加工中の角度測定の誤差がストロークに与える影響が大きいという問題もある。特許文献1ではこの点について考慮がなく、そのため、材料の公称値からのヤング率のバラつきや板厚のノミナル値からの誤差によって、スプリングバックする量そのものが変化することでストローク値と得られる角度の関係そのものが変わることを考慮できずに、特に大型の製品全体の寸法精度を好適に確保することが難しい。
【0006】
そこで本発明は、多段曲げ加工における曲げ加工精度の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るプレスブレーキは、ダイ及びパンチによってワークに対して曲げ加工を行うプレスブレーキであって、前記ワークの裏面を支持するダイと、前記ダイに対向して配置され、前記ダイに対して相対的に上下方向に移動し前記ワークの表面を押圧するパンチと、ダイ長手方向において前記ダイの中央部が両端部に対して上方に突出する量であるクラウニング量を変更するクラウニング機構と、前記ワークの幅方向中央部の曲げ量である中央曲げ量と、前記ワークの幅方向端部の曲げ量である端曲げ量とを計測する曲げ量計測器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ダイ及び前記パンチによって曲げ加工が施されたワークの前記中央曲げ量と前記端曲げ量を前記曲げ量計測器から取得し、前記中央曲げ量の目標曲げ量に対する不足分と、前記端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分との差分に応じて、クラウニング量を補正して、前記クラウニング機構を駆動させる。
【0008】
前記構成のプレスブレーキによれば、ダイの撓みを補正するだけでなく、ワークの端部の曲げ量に応じて、材料の公称値からのヤング率のバラつきや、板厚のノミナル値からの誤差による、スプリングバックする量の変化を考慮したクラウニング量(必要に応じてチルト量も)を補正するので、端部以降の加工全体において、上記誤差に寄らず加工精度が高くなり、ひいては製品全体としての寸法精度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多段曲げ加工における曲げ加工精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは実施形態に係るプレスブレーキの正面図、
図1Bは
図1AのIB-IB線に沿って切断して示すプレスブレーキの断面図である。
【
図2】
図2は、プレスブレーキの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、データベースに記憶された内容を説明するためのグラフである。
【
図4】
図4は、制御装置により実行される制御内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、2度曲げの要否に応じて取得する補正値が異なることを説明する模式図である。
【
図6】
図6は、制御装置により実行される異なる制御内容を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ワークの幅方向の位置を横軸に表し、曲げ工程終了後における曲げ量を縦軸に表したグラフである。
【
図8】曲げ量の不足量に対してストローク量及びクラウニング量の補正値を取得する方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0012】
図1Aは実施形態に係るプレスブレーキ1の正面図であり、
図1Bは
図1AのIB-IB線に沿って切断して示すプレスブレーキ1の断面図である。
図2は実施形態に係るプレスブレーキ1の機能的な構成を示すブロック図である。
【0013】
図1および
図2に示すプレスブレーキ1は、板状の長尺かつ幅広のワーク90への多段曲げ加工に対応しており、このようなワーク90に多段曲げを施したものを複数組み合わせることで、例えば航空機胴体部分のスキンなどの比較的大径の円筒体を成形できる。
【0014】
プレスブレーキ1は、搬送機構(搬送装置)2、ダイ3、パンチ4、クラウニング機構(クラウニング装置)5、パンチ支持部6、パンチ駆動機構(パンチ駆動装置)7、曲げ量計測器8、および制御装置9を備える。
【0015】
搬送機構2は、ワーク90を間欠的に搬送方向(ワーク長手方向)へ搬送する。この搬送機構2の具体的構成は特に限定されず、コンベアや、ロボットアームの先端にハンドを有するロボットなどによって構成してもよい。ダイ3は、その短手方向の断面がU字又はV字などの形状の溝部13を有する。なお、必要に応じてワーク90との間にウレタン等を配してもよく、または、ワーク90が底付きするようなプレートを配してもよい。
【0016】
図1A,Bに示すプレスブレーキ1では、ワーク90の「搬送方向」と「ダイ長手方向」とは共に水平面内にあり、かつ、互いに直交している。また、本実施の形態において、ワーク90は、少なくともダイ3により支持される箇所付近にて、その長手方向が搬送方向と一致し(
図1B参照)、かつ、その幅方向がダイ長手方向と一致するようにして(
図1A参照)、プレスブレーキ1に載置される。更に、パンチ4は、ダイ3に対して、搬送方向及びダイ長手方向のいずれにも直交する方向において対向して位置している。本実施の形態では、この対向方向は「上下方向」となっており、パンチ4はダイ3の上方に配置されている。
【0017】
従って、ダイ3が有する上述の溝部13は、
図1Bに示すように上方に向かって開口する溝形状であり、ダイ3の上部にてダイ長手方向へ延在している。なお、溝部13の断面形状、開口部分の搬送方向寸法、及び深さ寸法などは、適宜選択することができる。
【0018】
パンチ4は、ダイ3の上方に配置されたパンチ支持部6の下部にて支持されており、ダイ3と上下方向に対向している。パンチ駆動機構7は、パンチ支持部6およびこれに支持されたパンチ4を、ダイ3に対して相対的に上下方向に移動させる。パンチ駆動機構7は、ダイ長手方向において互いに離れた第1駆動機構(第1駆動装置)7aおよび第2駆動機構(第2駆動装置)7bを含んでいる。第1駆動機構7aおよび第2駆動機構7bは、一例として、ロッドを上下方向に向けて配置された液圧シリンダで構成することができる。この場合、第1駆動機構7aおよび第2駆動機構7bは、別個の液圧シリンダで構成され、互いに独立してストローク量(ロッド伸長量)を調整できる。
【0019】
従って、第1駆動機構7aおよび第2駆動機構7bを同一ストローク量だけ伸縮させることにより、パンチ支持部6およびパンチ4を、姿勢を維持したまま上下方向へ平行移動させることができる。また、第1駆動機構7aおよび第2駆動機構7bのストローク量を異ならせて伸縮させることにより、パンチ支持部6およびパンチ4の姿勢(チルト量,チルト角)を任意に変更でき、ストローク量の範囲でパンチ部を平行に維持したままストロークさせるだけでなく、任意の角度に傾斜(チルト)させることができ、第1駆動機構7aおよび第2駆動機構7bはパンチ駆動機構であるとともにチルト機構でもある。
【0020】
ダイ3は、クラウニング機構5により支持されており、クラウニング機構5が駆動することで、ダイ長手方向の中央部がダイ長手方向の両端部に対して上方に突出する量(以下、「クラウニング量CR」)が可変となっている。
【0021】
クラウニング機構5は、このクラウニング量CRを変更する機構である。その構成は、特に限定されないが、本実施の形態では一例として、公知の楔方式のクラウニング機構を採用している(
図1A参照)。この場合、クラウニング機構5が、上下に分けられた下部要素5Aと上部要素5Bとを有している。そして、下部要素5Aの上面および上部要素5Bの下面のそれぞれに、互いに接する摺動面を有する鋸歯状の係合部14a,14bが形成されている。また、係合部14a,14bの各摺動面は、係合部14a,14bごとに傾斜角度が異なる。
【0022】
このような下部要素5Aおよび上部要素5Bを、互いの相対位置がダイ長手方向にズレるように変位させると、係合部14a,14bにおける楔作用及び摺動面の傾斜角度の相違により、上部要素5Bを下部要素5Aに対して部分的に上下方向に変位させることができ、これによりクラウニング量CRを変えることができる。クラウニング機構5には、係合部14a,14bおよびこれを備える下部要素5Aおよび上部要素5Bのほか、下部要素5Aまたは上部要素5Bをダイ長手方向に移動させるクラウニング駆動部15も含まれる。クラウニング駆動部15は、一例として、サーボモータとねじ機構、あるいは液圧シリンダで構成される。なお、上述したように
図1に示したクラウニング駆動部15は一例であり、この他にも例えば、ダイ3を下方から支持する複数の油圧シリンダをダイ3の長手方向に沿って配置し、各油圧シリンダの伸長寸法を調整することで、クラウニング量CRを変更する構成としてもよい。
【0023】
曲げ量計測器8は、ワーク90の曲げ量を計測するセンサを有している。曲げ量計測器8は、ワーク90の曲げ量として、ワーク90の幅方向中央部の曲げ量である中央曲げ量と、ワーク90の幅方向端部の曲げ量である端曲げ量とを計測する。曲げ量計測器8は、この端曲げ量として、ワーク90の幅方向一端部の曲げ量である第1端曲げ量と、ワーク90の幅方向他端部の曲げ量である第2端曲げ量とを計測する。なお、曲げ量計測器8は、中央曲げ量として、ワーク90の幅方向中央部における1個所のみの曲げ量であってもよいし、複数個所の曲げ量を含んでいてもよい。本実施の形態では後者の例として、ワーク90の幅方向中央に対して僅かに幅方向一端側の曲げ量である第1中央曲げ量と、ワーク90の幅方向中央に対して僅かに幅方向他端側の曲げ量である第2中央曲げ量とを計測する。
【0024】
このように、曲げ量計測器8は、ワーク90の幅方向の複数個所で、ワーク90の曲げ量を計測する。曲げ量計測器8は、一つのセンサと、センサをダイ長手方向に走査する走査機構(走査装置)とで構成される。そして単一のセンサが走査されることで適宜複数個所の曲げ量を計測される。なお、曲げ量計測器は、複数のセンサを用いて複数箇所それぞれの曲げ量を計測してもよい。
【0025】
曲げ量計測器8で計測される「曲げ量」は、ワークの長手方向のコンターに関する測定値であり、例えばワーク90の曲率半径、ワーク90の長手方向(円周方向)に離れた2点間の弦長、同2点間円弧に対応する矢高、ワーク90の曲げ角度のように、ワーク90に付与される曲げの程度を定量評価可能な指標であればどのようなものでもよく、特には限定されない。
【0026】
一例として、曲げ量計測器8を構成するセンサは、ダイ3を基準にして、搬送方向下流側に配置される。下流側に加えて搬送方向上流側にも配置されていてもよく、本実施の形態では搬送方向の下流側および上流側のいずれにもセンサを配置している(
図1B参照)。この場合、上流側のセンサは、下流側のセンサの補正用としてワーク90の姿勢を考慮するとき、ワーク90の初期の曲がり量を計測するとき、あるいは、逆向きに下流側から上流側にワーク90を搬送するときなどに、適宜使われる。
【0027】
制御装置9は、搬送機構2、パンチ駆動機構7およびクラウニング機構5を制御する。本実施形態では特に、制御装置9は、曲げ量計測器8で計測される曲げ量に応じて、パンチ駆動機構7のストローク量、すなわち、パンチ4のダイ3またはワーク90に対する押込み量、ならびにチルト量を補正する。また、制御装置9は、曲げ量計測器8で計測される曲げ量に応じて、クラウニング機構5のクラウニング駆動部15の変位量、すなわち、クラウニング量CRを補正する。
【0028】
パンチ駆動機構7のストローク量ならびにチルト量、すなわち、パンチ3の押込み量は、上述したように曲げ量に応じて補正されるが、例えば特に端曲げ量(ワーク90の幅方向端部の曲げ量)に応じて補正することができる。なお、補正に際して参照すべき曲げ量の計測位置はワーク90上の何れであってもよいが、例えば、ワーク90の搬送方向の端部(特に、下流側端部)である。また、押込み量と曲げ量との関係は板厚に応じて異なっている。そこで、記憶部9aには、板厚ごとに押込み量に対する曲げ量の対応関係を規定したデータベースが格納されている。
【0029】
図3は、データベースの内容を説明するためのグラフである。
図3に示すように、ある板厚のワークに曲げ加工を施すにあたっては、押し込み量が大きければ大きいほど、大きな曲げ量が得られる。一方、板厚が異なるワークに曲げ加工を施すにあたっては、板厚の違いによるスプリングバック特性の相違に起因して、板厚が小さければ小さいほど、大きな押込み量を必要とする。さらに、部分的に板厚が異なるワーク(板厚が一様でないワーク)に一様の曲げ量を付与するよう曲げ加工を施すにあたっては、上述の傾向を考慮しなければならないが、その他、異なる板厚部分が隣り合うところでは互いに相手側部分の剛性の影響を受けるため、最適な押し込み量を決定するにはさらに複雑な検討が必要となる。さらに、上述した傾向や影響の度合いはいずれも、ワークのヤング率により異なる。このような傾向を有する、曲げ量(曲げ角度)と押込み量(ストローク量)との関係が様々の板厚についてデータベース化され、記憶部9aに記憶されている。より具体的には、ヤング率、板厚、および、加工時の周囲の環境やワークのコンディションなどの状況ごとに、押込み量から曲げ量を求める演算式もしくはテーブルが予め準備される。これらは、試験により求めてもよいし、シミュレーションにより求めてもよい。
【0030】
また、クラウニング量CRは、ワーク90へ付与する押圧荷重に応じて異なる値に定められるが、それに加え、中央曲げ量と両端の曲げ量平均値との差分に応じて補正される。そして、クラウニング量と曲げ量との関係についても、板厚に応じて異なっている。そこで記憶部9aには、
図3と同様にして、板厚ごとにクラウニング量に対する曲げ量の対応関係を規定したデータベースが格納されている。
【0031】
図4は、制御装置9により実行されるストローク量、クラウニング量、およびチルト量を補正する処理を含む、プレスブレーキ1によるワーク90の多段曲げ加工を示すフローチャートである。この処理は、ワーク90を適所に搬送した後に行われる、曲げ工程(S100)、判定工程(S200)、補正工程(S300)、および、多段曲げ工程(S400)を備える。以下、プレスブレーキ1の動作について説明する。
【0032】
図4に示すように、ワーク90の多段曲げ加工では、はじめに、加工対象のワーク90を初期位置に搬送する(S1)。典型的には、ワーク90の搬送方向の下流側端部がパンチ4の直下に位置するように搬送する。また、これと合わせて、あるいはこれと前後して、パンチ4のストローク量、チルト量、及び、ダイ3のクラウニング量を、所定の初期値に設定する(S2)。例えば、ストローク量の初期値の例(第1初期値例)としては、ワーク90の押圧箇所の断面寸法から目標の曲げ量を実現し得ると予想される値を用いればよい。また、このストローク量は、ワーク90の裏面をダイ3の溝部13に底当てさせない押込み量として設定される。ここで、ワーク90の裏面がダイ3の溝部13に底当てしないとは、ワーク90の裏面が溝部13に直接的に底当てしない態様を意味しており、例えば、溝部13の少なくとも一部にウレタン等を埋設してこの埋設部分にワーク90の裏面が底当てする態様や、底当てダイがメカニカルあるいは弾性的に変形するような態様も含まれる。
【0033】
なお、ワーク90の搬送方向の端部に対する曲げ加工においては、想定よりもヤング率が大きかったり板厚が厚かったりした場合には過剰な曲げとなってしまう。そこで、これを見越して、ストローク量の初期値の例(第2初期値例)としては、目標の曲げ量を実現し得ると予想される値よりもわずかに小さい値に設定しておいてもよい。たとえば、目標の曲げ量の90%前後(85%以上95%以下、など)の曲げ量になると予想されるようなストローク量を初期値に設定してもよい。
【0034】
次に、曲げ工程(S100)が実行される。この曲げ工程(S100)では、ワーク90に対する押圧加工及びワーク90の搬送(S3)が、押圧個所が曲げ計測器8による計測範囲に到達するまで(S4)、交互に繰り返し行われる。即ち、パンチ4による押圧、ワーク90の搬送、搬送の停止、そしてパンチ4による押圧、というように、押圧加工及び搬送が繰り返される。なお、上述の第2初期値例のように、ストローク量の初期値として、最初の曲げ工程(S100)で付与されるワーク90の曲げ量を、最終的に製品に求められる目標の曲げ量よりもわずかに小さくなるように設定することで、過剰な曲げを防止できる。すなわち、ワーク90は、目標値に比べて曲げ足りない程度に曲げ加工されることになる。
【0035】
なお、最初の曲げ工程(S100)では、ワーク90上の押圧個所が計測範囲に到達するまで加工及び搬送(S3)を繰り返すことは必須ではない。例えば、ワーク90に対する加工及び搬送(S3)を所定回数だけ繰り返した後は、加工はせずに、ワーク90上の押圧個所が計測範囲に到達するよう搬送のみを行うようにしてもよい。
【0036】
このようにしてワーク90の押圧個所が計測範囲に到達すると、判定工程(S200)が実行される。この判定工程(S200)では、上述した曲げ工程(S100)でワーク90に付与された曲げ量を計測し(S5)、続いて、計測された曲げ量が目標値に合致するか否か(目標値に対して設定される所定の許容範囲に含まれるか否か)の合否を判定する(S6)。本実施形態では、4か所の曲げ量が計測される。具体的には、ダイ長手方向一端部の曲げ量である第1端曲げ量、ダイ長手方向他端部の曲げ量である第2端曲げ量、ダイ長手方向中央部一端寄りの曲げ量である第1中央曲げ量、ダイ長手方向中央部他端寄りの曲げ量である第2中央曲げ量の4つである。
【0037】
曲げ量の計測(S5)では、更に、計測された曲げ量それぞれについて、目標曲げ量に対する不足量(差分値)も算出される。本実施形態では、一例として、ワーク90から円筒体の少なくとも一部を成形することを想定している。換言すると、板厚、幅方向位置、あるいは長手方向位置によらず、ワークに一様の曲げ量を付与することを想定しているので、目標曲げ量は単一である。そして本実施形態では、第1端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分(第1端不足量)、第2端曲げ量の目標曲げ量に対する不足分(第2端不足量)、第1中央曲げ量の目標曲げ量に対する不足分(第1中央不足量)、第2中央曲げ量の目標曲げ量に対する不足分(第2中央不足量)が算出される。
【0038】
本実施の形態では、上述したように最初の曲げ工程(S100)において、目標曲げ量を実現し得ると予想されるストローク量より小さいストローク量によりワーク90を押圧する。従って、この場合、判定工程(S200)では曲げ量の計測値は許容範囲に入らず、不合格と判定される(S6:NO)。
【0039】
不合格と判定された場合は、補正工程(S300)が実行される。補正工程(S300)では、不合格の程度に応じて2通りの処理のうち何れかを選択して実行する。具体的には、不合格の程度が比較的軽い場合、すなわち、今回曲げ量を計測した押圧個所をもう一度曲げなおしする必要はないという程度の曲げ量であった場合は、第1の選択肢として、2度曲げをせずワーク90の後続箇所の加工をすべく、片曲げ用の補正値を取得する(S8)。一方、不合格の程度が比較的重い場合、すなわち、今回曲げ量を計測した押圧個所をもう一度曲げなおし(2度曲げ)する必要がある程度の曲げ量であった場合は、第2の選択肢として、2度曲げをすべく、両曲げ用の補正値の取得(S9)、及び、2度曲げの初期位置への搬送(S10)を行い、再び上述のステップS3からの処理を行う。なお、ステップS6にて合格と判定された場合については後述する。
【0040】
このように、判定工程(S200)のステップS6にて曲げ量に不足あり(不合格)と判定されると、その不足量に基づき、補正工程(S300)にて片曲げ用の補正値(S8)又は両曲げ用の補正値(S9)が取得される。ここで、片曲げ用の補正値及び両曲げ用の補正値の違いについて、
図5を参照して説明する。
【0041】
図5のうち左図は、ワーク90におけるパンチ4の押圧個所から見て、搬送方向下流側のみが加工済みになっている状態であり、この状態での曲げ加工を便宜上「片曲げ」と称する。ワーク90の未加工箇所を、搬送方向に沿って順次加工する場合、その加工態様は「片曲げ」となる。一方、
図5のうち右図は、ワーク90におけるパンチ4の押圧個所から見て、搬送方向下流側及び上流側のいずれもが加工済みになっている状態であり、この状態での曲げ加工を便宜上「両曲げ」と称する。ワーク90において既に一度加工された箇所を2度曲げする場合、その加工態様は「両曲げ」となる。
【0042】
このような片曲げと両曲げとでは、曲げ加工後に計測された曲げ量が同じでも、加工時のパンチ4のストローク量は
図5中のΔSt0に示す分だけの差分がある。従って、次に行う加工が片曲げであるか両曲げであるかに応じて、それぞれに対応する異なるデータベースを参照するか、あるいは同じデータベースをオフセットして参照することで、補正値を取得する(S8,S9)。いずれにせよ、制御装置9は、記憶部9aのデータベースを参照して、計測された曲げ量の不足量に応じてストローク量、クラウニング量、及びチルト量の補正量、すなわち第1駆動機構7a及び第2駆動機構7bの目標値に対する計測値の差分補正量を取得し、これに基づいてストローク量、クラウニング量、及びチルト量の補正を行う。
【0043】
一例として、第1端不足量に応じて第1駆動機構7aの初期値が補正され、第2端不足量に応じて第2駆動機構7bの初期値が補正される。また、端不足量と中央不足量との差に応じて、クラウニング量の初期値が補正される。中央不足量が端不足量に対して大きい場合にはクラウニング量の初期値が減少補正される。中央不足量が端不足量に対して小さい場合にはクラウニング量の初期値が増加補正される。差分が大きいほどクラウニング量の初期値の補正量が大きくなる。
【0044】
なお、本実施形態では、中央2点、端2点で曲げ量を計測しているが、中央不足量(又は、中央不足量の代表値)および端不足量(又は、端不足量の代表値)の導出方法は特に限定されない。一例として、制御装置9は、第1中央不足量と第2中央不足量の平均値、最大値あるいは最小値を、金型方向中央部の曲げ不足量である中央不足量として導出する。制御装置9は、第1端不足量と第2端不足量の平均値、最大値あるいは最小値を、金型方向端部の曲げ不足量である端不足量として導出する。
【0045】
図4のフローチャートに戻り、ステップS7で2度曲げが必要(S7:NO)と判断された場合は、両曲げ用の補正値を取得し(S9)、2度曲げの初期位置へワーク90を搬送する(S10)。すなわち、ワーク90において2度曲げを施す部分のうち最初の加工対象箇所(1列目)がパンチ4の直下に位置するように搬送する。そして、再びステップS3以降の処理をすることで、2度曲げが実行される。これにより、ワーク90に対して目標曲げ量をより確実に付与でき、パーシャルベンディング加工において高い加工精度が得られる。
【0046】
なお、
図4のフローチャートでは、2度曲げ(2度目の曲げ工程(S100))を実行した後も、再び曲げ量を計測し(判定工程(S200))、その計測値について合否判定(S6)を行うこととしている。従って、2度曲げを行った後の押圧個所の合否の結果に応じて、必要であればもう一度ステップ9以降の処理を行って曲げ加工(S100)を実施してもよい。一方、2度目の曲げ加工(S100)を実行することで十分な加工精度を確保できると見込まれる場合は、2度目の曲げ加工(S100)の後では判定工程(S200)を省略し、次のステップへ移行してもよい。
【0047】
次に、1度の曲げ加工(S100)の結果(つまり、2度曲げすることなく)、判定工程(S200)のステップS6において、計測された曲げ量が目標値に合致する(合格)と判定された場合(S6:YES)、多段曲げ工程(S400)を実行する。すなわち、ワーク90の加工範囲の最後、つまり最終列まで加工が済んだか否かを判断し(S11:NO,且つ,S13)、済んでいない場合は(S13:NO)、次の加工開始位置がパンチ4の直下に位置するよう搬送し(S14)、再びステップS3以降の処理を行う。最終列まで加工が済んでいる場合は(S13:YES)、多段曲げ加工を終了する。
【0048】
一方、2度曲げした後の計測結果で合格と判定された場合は(S6:YES)、パンチ4の補正値として両曲げ用が設定されている状態であるので、片曲げ用の補正値を取得し直す(S11:YES,且つ,S12)。その後は上述と同様に、多段曲げ工程(S400)として、ステップS13以降の処理を実行し、ワーク90の最終列まで加工が済めば多段曲げ加工を終了する。
【0049】
また、ステップS6で計測された曲げ量が目標値に合致しない(不合格)と判定され(S6:NO)、かつ、程度が軽いために2度曲げ不要と判定された場合は(S7:YES)、データベースに基づいて片曲げ用の補正値を取得する(S8)。その後は上述と同様に、多段曲げ工程(S400)として、ステップS13以降の処理を実行し、ワーク90の最終列まで加工が済めば多段曲げ加工を終了する。
【0050】
ところで、
図4に示した動作は、基本的にワーク90の全ての加工箇所について加工後の曲げ量を計測し、目標値に合致するか否かの合否判定を行うと共に、判定結果に基づき必要に応じて2度曲げを行うというものである。しかし、ワーク90の一部(典型的には、搬送方向の下流側端部)についてのみ、加工後の計測曲げ量に対する合否判定を行い、その結果から得た補正値で、残りの曲げ加工を行うこととしてもよい。すなわち、
図6の多段曲げ工程(S401)に示すように、ステップS13においてワーク90の最終列まで加工が済んでいないと判断した場合は(S13:NO)、ワーク90の搬送(S14)と加工(S15)とを最終列の加工が済むまで繰り返すこととしてもよい。
【0051】
また、合否判定を行う箇所はワーク90上の一つの個所に限られず、複数個所において合否判定を行い、その都度補正値を取得してストローク量等の補正を行うこととしてもよい。例えば、ワーク90の板厚が搬送方向に沿って変化する部分がある場合には、ワーク90の搬送方向の下流側端部の他、この変化部分付近においても、合否判定の結果に基づき補正を行ってもよい。あるいは、ワーク90の目標曲げ量が変化する場合は、変化後の目標曲げ量を基準とする合否判定を追加的に行うこととしてもよい。
【0052】
更に、ワーク90の全体に対して一度曲げ工程(S100)を行い、その後に必要個所に対して2度曲げを行うようにしてもよい。この場合、ワーク90の全体に曲げ工程(S100)を行っている間に、個所ごとに判定工程(S200)を行い、判定結果に応じて判定箇所に対応する補正値を取得しておき、その結果を記憶部9aに記憶しておけばよい。
【0053】
次に、
図7及び
図8を参照して、チルトを含むストローク量及びクラウニング量の補正について、より具体的に説明する。
図7は、ワーク90の幅方向の位置を横軸に表し、計測時(S5)における曲げ量(コンター,曲げ角度)を縦軸に表したグラフである。なお、
図7では、ワーク90の曲げ量に関して、幅方向の一端部、中央、他端部の3点を図示している。
図8は、曲げ量の不足量に対してストローク量及びクラウニング量の補正値を取得する方法を説明するためのグラフである。
【0054】
図7Aに示す例では、目標曲げ量と計測曲げ量とを比べると、他端部、中央、一端部の順に、曲げ量の不足量が一律に増加しており、他端部では目標曲げ量に一致している。このような場合は、パンチ支持部6を、その一端部がよりダイ3へ近づくように全体の姿勢を傾斜(チルト)させる。つまりこの場合は、パンチ駆動機構7のうち一端部側にある第1駆動機構7aのストローク量を増加させるように補正すればよく、クラウニング量を補正する必要はない。
【0055】
次に、クラウニング量の補正の具体例について説明する。
図8Aに示すグラフG1は、所定の板厚に関するストローク量と曲げ量との関係を示しており、
図3に示した各板厚についてのグラフの中から選択することができる。グラフの選択においては、例えば、ストローク量の補正対象である第1駆動機構7aについて、先の曲げ加工(S100)を行ったときに採用されたストローク量St1により、目標曲げ量R1に達する板厚のものを選択することができる。
【0056】
図8Aでは、第1駆動機構7aをストローク量St1で駆動した結果、ワーク90の一端部では目標曲げ量R1未満の曲げ量R2が達成されていることを示している。このように、計測曲げ量R2が目標曲げ量R1に対して不足する場合、
図8Bに示すように、グラフG1を、ストローク量及び曲げ量が(St1,R2)の点と重なるまで、ストローク量の正方向へ凡そ平行にシフトさせてグラフG2とする。そして、このグラフG2上において目標曲げ量R1となるストローク量St2と、上述のストローク量St1との差分値ΔStを取得する。このようにして求めた差分値ΔStを、第1駆動機構7aのストローク量の補正値とすることができる。
【0057】
図7Bに示す例では、目標曲げ量と計測曲げ量とを比べると、一端部および他端部については計測曲げ量が目標曲げ量に到達しているが、中央については不足が生じている。このような場合は、
図8Bに示すΔStに相当する量を、クラウニング量としてダイ11中央部を増加させる。つまりこの場合は、クラウニング機構5(クラウニング駆動部15)を増加させるように補正すればよく、パンチ駆動機構7のストローク量を補正する必要はない。なお、クラウニング量の補正値の求め方は、一例として、上述した
図8A,8Bにより説明したのと同様の方法を採用することができる。
【0058】
次に、クラウニング量及びチルトを含むストローク量の補正の具体例について説明する。
図7Cに示す例では、目標曲げ量と計測曲げ量とを比べると、一端部、中央、及び他端部の何れにおいても計測曲げ量が目標曲げ量に到達しておらず、さらに、他端部は一端部よりも不足量が大きく、かつ、
図7Aの場合のようには不足量の変化が一律ではない。つまり、
図7Cの例は、幅方向の全体においてストローク量が不足しており、かつ、チルト量及びクラウニング量の補正も必要な状態である。従って、このような場合は、不足が生じている部分に対応する第1駆動機構7a及び第2駆動機構7bのストローク量(チルト量を含む)とダイ3のクラウニング量とをそれぞれ補正すればよい。ストローク量およびクラウニング量の各補正値は、それぞれの不足量に基づいて
図8A,8Bにより説明したのと同様の方法によって求めればよい。
【0059】
本実施の形態において、曲げ量計測器8はダイ3を基準にして搬送方向下流側に配置されたがこれに限られない。曲げ量計測器8は、押圧加工が行われる直下であるダイ内部に配置されてもよい。例えば
図4のフローチャートでは、最初の曲げ加工S100において押圧加工及びワークの搬送が行われたが(S3)、ダイ内部に曲げ量計測器8が配置されることにより、押圧加工時に曲げ量を計測することができるので、計測のためにワークを搬送する必要がない。
【0060】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0061】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は一例であり、本発明の範囲内で適宜変更、削除および/または追加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ワークに曲げ加工を施すプレスブレーキに適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 プレスブレーキ
2 搬送機構
3 ダイ
4 パンチ
5 クラウニング機構
6 パンチ支持部
7 パンチ駆動機構
8 曲げ量計測器
9 制御装置