(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】歯科矯正用拡大ねじ
(51)【国際特許分類】
A61C 7/10 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A61C7/10
(21)【出願番号】P 2021547151
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2020053201
(87)【国際公開番号】W WO2020165053
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】102019103348.9
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507182047
【氏名又は名称】ベルンハルト フォースター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーゲルマン ミヒャエル
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04354832(US,A)
【文献】特開2016-056844(JP,A)
【文献】米国特許第05281133(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024334(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171300(US,A1)
【文献】国際公開第2012/042547(WO,A1)
【文献】特開昭58-185149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
1対の本体(1、2)を備え、それらの相互距離は、
前記1対の本体(1、2)の両方に係合するスピンドル(3)により変えることができ、該スピンドル(3)は、作動部(4)を有し、作動部(4)は、
前記1対の2つの本体(1、2)の一方のねじ孔(11)と係合し、それにより、2つのねじ部(7、8)のうちの少なくとも一方が進み、
前記1対の本体(1、2)
の両方と係合して、2つの互いに平行な案内軸に沿ってそれらを案内し、本体(1、2)の相互距離の変化を与える相対的回転を回避する直線案内手段(5、6)と、
該本体(1、2)に対するスピンドル(3)の不用意な
回転を防止または妨げるための装置と、を備え、
スピンドル(3)の、少なくとも1つのねじ部(7、8)は、その長手方向に延びて半径方向に開口している少なくとも1つの凹部(9)を有
し、少なくとも1つのねじ部(7、8)が挿入される本体(1、2)のねじ孔(11)の内面には、少なくとも1つのねじ部(7、8)に向き合う突起(12)が設けられており、少なくとも1つの凹部(9)に向かうスピンドル(3)の位置において、凹部(9)内に突出し、一方、少なくとも1つのねじ部(7、8)には、凹部(9)を向かない位置で押し付けられ
ており、
更に、前記突起(12)の伸長が、スピンドル(3)の円周方向よりもスピンドル(3)の長軸方向の方が大きいことを特徴とする歯科矯正用拡大ねじ。
【請求項2】
少なくとも
1対の本体(1、2)を備え、
該1対の本体(1、2)
の両方に係合するスピンドル(
3)によって相互距離が変更可能で、該スピンドル(3)は
前記1対の本体(1、2)の一方にねじ孔(11)に係合する作動部(4)を有し、これにより少なくとも1つのねじ部(7、8)が進み、
前記1対の本体(1、2)
の両方に係合し、
該両
方の本体(1、2)に沿って互いに平行な2つのガイド軸に沿ってガイドし、それらの相互距離の変化を与えられた前記
1対の本体(1、2)の相対回転を回避する直線案内手段(5、6)と、
前記スピンドル(3)の前記本体(1、2)に対する偶然の回転を防止または妨げる装置とを有し、
前記スピンドル(3)の少なくとも1つのねじ部(7、8)は、その長手方向に延びる少なくとも1つの平坦部(10)を有し、少なくとも1つのねじ部(7、8)が挿入される本体(1、2)のねじ孔(11)の内面は、少なくとも1つのねじ部(7、8)に向かう突起(12)を有し、この突起は、平坦部(10)に向かわないスピンドル(3)の位置では、少なくとも1つのねじ部(7、8)に向けられ、一方、平坦部(10)に向かうスピンドル(3)の位置では、平坦部(10)に接触しないか、または平坦部(10)に向かわない位置よりも低い圧力で接触しないようにされ
ており、
更に、前記突起(12)の伸長が、スピンドル(3)の円周方向よりもスピンドル(3)の長軸方向の方が大きいことを特徴とする歯科矯正用拡大ねじ。
【請求項3】
前記突起(12)が、各位置において前記スピンドル(3)のねじ部(7、8)に接触することを特徴とする請求項1または2に記載の拡大ねじ。
【請求項4】
前記突起(12)が、前記スピンドル(3)のねじ部(7、8)にそれぞれの位置で圧力をかけて接することを特徴とする請求項3に記載の拡大ねじ。
【請求項5】
突起(12)が凸型であることを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項6】
前記突起(12)が球形のデザインであることを特徴とする、請求項5に記載の拡大ねじ。
【請求項7】
前記突起(12)の伸長がスピンドル(3)の
ねじ山のピッチよりもスピンドル(3)の長軸方向に大きいことを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項8】
少なくとも1つの凹部(9)または平坦部(10)が、少なくとも1つのねじ部(7、8)の全長にわたって伸びていることを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項9】
2つまたは4つの凹部(9)または平坦部(10)が少なくとも1つのねじ部(7、8)上に存在し、それらが対になって直径上に互いに反対の位置にあることを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項10】
少なくとも1つのねじ部(7、8)が丸みを帯びた角の方形として設計され、その中にねじ部が形成されることを特徴とする、請求項
9に記載の拡大ねじ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのねじ部(7、8)における前記ねじ山は、前記少なくとも1つのねじ部(7、8)の前記少なくとも1つの凹部(9)または平坦部(10)内に少なくとも部分的により小さなねじ山深さで延在することを特徴とする、請求項
10に記載の拡大ねじ。
【請求項12】
スピンドル(3)が、作動部(4)から進む相互に反対方向に伸びる2つのねじ部(7、8)を有し、かつ、
前記ねじ部(7、8)の各々が、2つの凹部(9)または平坦部(10)が互いに直径的に反対方向に横たわっており、ここで、1つのねじ部(7)上の凹部(9)または平坦部(10)が、スピンドル(3)の長軸周りのもう一方のねじ部(8)上の凹部(9)または平
坦部(10)に対して、円周角度90度によって互いに相殺されていることを特徴とする
、請求項1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項13】
前記突起(
12)が、
前記本体(1、2)の少なくとも1つのくぼみとして設定されていることを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【請求項14】
前記回転を防止または妨げるための装置が、スピンドル(3)の両方の回転方向に作用することを特徴とする
、請求項
1又は2に記載の拡大ねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前文に示された特徴から歯科矯正用拡大ねじからクレーム1に続く。このような拡大ねじは、特許文献1に開示されている。
【背景技術】
【0002】
既知の拡大ねじの作動部分は、スピンドルの不用意な回転をより困難にするために、円形の形態ではない外側断面を有する。金属バンドは、放射方向に作動部を圧迫し、それによりスピンドルの摩擦ブレーキとして作用する。スピンドルは、円形から逸脱した作動部の形状のため、金属バンドがスピンドルの長軸から最小の距離をとる角の位置にスピンドルを保持する。公知の拡大ねじでは、金属バンドの後端は、特に溶接されて、2つの直線案内手段に固定される。金属バンドは明確な制止を発生させるが、この手段の欠点は、別個のコンポーネントを必要とし、これを2本の直線誘導手段に固定しなければならないことである。この直線誘導手段では、既知の拡大ねじが円筒型ピンとして設計されている。
【0003】
特許文献1からも知られているのは、拡大ねじ本体の雌ねじをわずかにクリンピングし、その中にスピンドルのねじ部が螺合することによって制止を実現することである。これは別のコンポーネントを回避する一方で、このようにして生じた制止の範囲を困難にしてしか再現できないため、一連の拡大ねじ内で制止に有意差があることは不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許第102007002040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この目的のために別個のコンポーネントを必要とせずに、スピンドルの予め定義された位置におけるスピンドルの容易に再現可能な制止を歯科矯正拡大ねじ内で実現できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この対象は、請求項1に示す特徴を有する歯科矯正用拡大ねじによって達成される。
【0007】
請求項2は、同じ原理に基づく対象物に対する第2の解決策を示す。
【0008】
本発明の有利なさらなる改良は、従属クレームの主題である。
【0009】
請求項1に記載の解決策は、別個の構成要素なしでスピンドルの明確な制止を提供し、かつ、そうでなければその集合に費やされるであろう努力を回避する。これは、スピンドルの少なくとも1つのねじ部が縦方向に伸びて放射方向に開いている少なくとも1つの凹部を有し、少なくとも1つのねじ部が挿入されている本体のねじ付き内腔が少なくとも1つのねじ部に向いている突起を有し、それが少なくとも1つの凹部に面しているスピンドルの位置では凹部に突出しているのに対し、ねじ部ではどんな凹部に面していないスピンドルの位置では、ねじ部に向いているスピンドルのねじ部に圧迫されているという事実によって達成される。特許文献1の教示に反して、スピンドルの意図した制止は、作動部分-スピンドル頭部を力に曝すことではなく、むしろスピンドルのねじ部に直接作用することにより起こるものである。
【0010】
しかし、スピンドルのねじ部は、本体のねじ孔に形成された突起が、スピンドルのねじ部に一定の力で連続的に押し付けられ、一定の摩擦力でスピンドル回転に対抗するという事実によって、単に作用されるのではなく、むしろ、突起がスピンドルのねじ部に形成された凹部に突出するという事実によって行われる。凹部内の突起は、必ずしもスピンドルのねじ部に押し付けられるとは限らず、好ましくは、そうしないようにし、具体的には、凹部のねじ部外側に押し付けるときよりも強くはない。その結果、突起が凹部から離れるまで、スピンドルを回転させながら、スピンドルの制止を克服するために加えなければならない力は、次第に増加する。凹部を形成することによって、スピンドルの少なくとも1つのねじ部のねじ山は、もはや一定の外径を有さない。本発明によれば、これは、ねじ部における凹部の位置に依存するスピンドルの位置において明確で再現可能な制止を提供し、再現可能な制止をもたらすために別個の構成要素は必要とされない。
【0011】
本発明に係る拡大ねじは、少なくとも2つの本体を有し、その相互距離は、スピンドルによって変更可能である。しかし、単に1対の本体を有し、その相互距離がスピンドルによって変化するだけでなく、それぞれ別々の第2または第3のスピンドルによって相互距離が変化することができる2対または3対の本体を有する歯科用矯正拡大ねじも存在する。このような拡大ねじは、マルチセクターねじと呼ばれる。2~3対の本体がつながって、そこに1本の集合本体が形成される。請求項1及び2の範囲は、マルチセクターねじを含むことを意図している。これが、請求項1および2が、歯科矯正用拡大ねじが「少なくとも2本体」を有することを示す理由である。
【0012】
請求項2に示した解決策は、スピンドルの少なくとも1つのねじ部を通した部分が、その長軸方向に伸びる凹部の代わりにその長軸方向に伸びる平坦部を有し、放射方向に開いているという点で、請求項1に示した解決策と異なる。スピンドルのねじ部が位置する本体のねじ孔に形成された突起は、その抑止が可能であるスピンドルのそれらの位置の平坦化された部分に対して向けられている。スピンドルの円周方向に対して平坦化された部分の中央に突起が向いているこのような障害位置から、スピンドルを意図的に旋回させた場合、突起を過ぎて回る平坦化された部分のエッジは、突起の前方で上昇し、後者がねじの平坦化されていない部分に滑り込むまで上昇する。したがって、請求項1に記載の解決策と同様に、スピンドルの制止を克服するために加えなければならない力は、突起がねじ部の平らな領域を残すまで、徐々に上昇する。本発明の基礎となる対象物の第2の解決策でさえ、この目的のための拡大ねじにおいて別個のコンポーネントを必要とせずに、規定された再現可能な制止が得られる。なぜなら、スピンドルの少なくとも1つのねじ部の糸は、もはや一定の外径を有していないからである。
【0013】
歯科矯正用拡大ねじが作動部と相互に反対方向に進む2つのねじ部を有するスピンドルを有する場合、ねじ部の両本体はそのねじ付き内腔に突起を有する可能性があり、スピンドルの両ねじ部はスピンドルの長軸方向に伸びる凹部または平らな部分を有する可能性がある。しかしながら、基本的には、ねじ部のうちの1つのみが凹部又は平坦化された部分を有し、従って、拡大ねじの2つの本体のうちの1つのみがそのねじ孔に突出部を有することで十分である。
【0014】
突起は、スピンドルのねじ部の凹部または平坦化された部分の外側のねじ部を押し付けることを意図している。突起部は、好ましくは、その位置のそれぞれにおいてスピンドルに接触するが、凹部および平坦化された部分は、完全なねじ部に対して跳ね返るので、凹部および平坦化された部分において、より少ない圧力または圧力を伴わずに、スピンドルに接触する。突起がスピンドルの糸の入った部分をそれぞれの位置で圧迫すると、突起が扁平な部分や凹部に押しつけても、スピンドルは何も働かないという利点がある。
【0015】
本発明は、特殊なタイプのねじに限定されない。
【0016】
突起がスピンドルのねじ部上にスライドすることを容易にするために、設計上、凸状またはクラウニング加工されることが好ましく、スピンドルの長手方向において、スピンドルのねじピッチよりも大きい長さにわたって延びることが好ましい。
【0017】
この凹部または平坦化された部分は、スピンドルを回転させることによって拡大ねじの本体を調節することができる長さだけの長さにわたって、スピンドルのねじ部上に容易に延びる。凹部または扁平部分は、少なくとも1つのねじ部を通した部分または両方のねじ部を通した部分の全長にわたって伸びることが望ましい。
【0018】
それぞれのねじ部には、1つ以上の凹部または扁平な部分が存在しうる。円周方向に存在するくぼみや平らな部分が多く、スピンドルのねじ部を通した部分やねじ部を通した部分に分布しているので、スピンドルの不注意な回転を防いだり妨げたりすることができる位置は、スピンドルの方が多い。2つの凹部または直径的に互いに反対にある扁平な部分が存在することが望ましく、4つの凹部または平らな部分が対になって互いに直径上で反対に位置する。2つの凹部または平坦化された部分が存在する場合、スピンドルの位置は、スピンドルの不注意による回転が防止または妨げられるそれぞれの半回転後の位置に留まることができる。もし、ねじ部に4つの凹部や平らな部分が存在すると、回転の1/4の後には、すでにこれが起こる。この場合、ねじ部は丸い角のある四角のような形をしており、残りのねじが丸くなった部分が横たわっている。平坦化された部分又は凹部の特定の設計に応じて、ねじ山は、ねじ深さが減少すると共に平坦化された部分又は凹部内に延びることができる。また、これは、矯正治療中に拡大ねじに生じる力を吸収または伝達するために、ねじ部とそれを受けるねじ部内腔との間に十分なかみ合いが存在することを保証するために好まれる。
【0019】
スピンドルの不注意な回転が妨げられたりする位置で、各1/4回転後にスピンドルを保持する能力は、スピンドルのねじ部が二つの凹部か平らな部分だけが直径的に互いに反対にある場合にも得られる。特に、一方の糸部分の凹部または平らな部分が、スピンドルのもう一方のねじ部の凹部または平らな部分に対して90度の円周角度で互いに相殺される場合には、そうである。
【発明の効果】
【0020】
拡大ねじの一方の本体または両方の本体のねじ孔に存在する突起は、拡大ねじのそれぞれの本体のくぼみとして設計されることが好ましい。このようなくぼみは、エンボス加工の過程で再現性よく生じ得る。エンボス加工を行うエンボス加工スタンプの供給経路、くぼみの深さ、従って突出部の高さを監視することによって、本体のねじ孔の内側を、低い寸法公差で生成することができる。
【0021】
本発明による拡大ねじの3つの例示的な実施形態を、添付の図に模式的に示す。2本の拡大ねじの類似部分または互いに対応する部分は、一致する参照番号で指定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、2つのねじ部品を有するスピンドルの上面図を示し、そのうちの1つは、ロック位置にあるスピンドルを示し、
【
図2】
図2は、拡大ねじを通る長手方向A-A断面を示し、
【
図3】
図3は、平坦化されたねじ部品の端部が配置されている拡大ねじの端部の図を示し、
【
図4】
図4は、拡大ねじを通る長手方向断面B-Bを示し、
【
図5】
図5は、拡大ねじを通るC-C横断面を示し、
【
図7】
図7は、平坦化されたねじ部の端部が配置されているスピンドルの端部の図を示し、
【
図8】
図8は、スピンドルの平坦化されたねじ部が位置する反対側の端部を示し、
【
図9】
図9は、スピンドルを切替位置にする膨張ねじの上面図を示し、
【
図10】
図10は、拡大ねじを通る長手方向のD-D断面を示し、
【
図11】
図11は、平坦化されたねじ部の端部が位置し、その位置にある拡大ねじの端部の図を示し、
【
図12】
図12は拡大ねじを通る長手方向のE-E断面を示し、
【
図14】
図14はスピンドルの2つのねじ部に通した拡大ねじの上面図を示し、そのうちの1つはスピンドルがロック位置にあるとき、2つのねじ部が対向して位置する4つの凹部を有し、
【
図16】
図16は凹部が設けられたねじ部の端部が位置する拡大ねじの端部の図を示し、
【
図20】
図20は、
図19における凹部が設けられたねじ部とは反対を向いているスピンドルの端部の図を示し、
【
図21】
図21は、スピンドルの
図19とは反対側であって、凹部から配置されたねじ形成範囲の端部の図を示し、
【
図24】
図24は、
図22の拡大ねじの端部であって、凹部が配置されたねじ形成範囲の端部を示し、
【
図27】
図27は拡大ねじの上面図であり、スピンドルが互いに反対側に位置する2つの凹部を有し、ここで、一方のねじ部の凹部は、他方のねじ部の凹部に対して90度の角度だけオフセットされており、スピンドルは2つのねじ部とともに係止位置にあり、
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図13に示される拡大ねじは、好ましくは、2つの同一に設計された本体1、2を有し、その相互距離は、中央作動部4を有し、そこから、反対の巻線方向を有する2つのねじ部が、相互に反対方向に進む、スピンドル3によって変えることができる。第1ねじ部7は、第1本体1に回転自在に取り付けられ、第2本体2には、第2ねじ部8が回転自在に取り付けられている。この目的のために、2つの本体1及び2の各々は、連続したねじ孔11を組み込み、その中に、2つのねじ部品7及び8のそれぞれの1つが設けられている。従って、2つのねじ孔11は互いに整列し、2つのねじ部品7及び8に対応して反対の巻き線方向を有する。2つのねじ部7、8およびねじ孔11のねじ山のピッチは一致する。
【0024】
スピンドル3の両側には、2つの円筒状のガイドピン5および6が設けられ、これらは、2つの本体1および2の連続した内腔に挿入され、それらは更に適合され、互いに対をなして整列されている。ガイドピン5、6は、2つの本体1、2を互いに平行な2つのガイド軸線に沿って案内する直線案内手段を形成し、2つの本体1、2の相対的な回転を避けて、それらの距離に変化を与える。
【0025】
ガイドピン5と6は、両方を設けなければならないということはない。原理的には、スピンドル3自体及びスピンドル3と平行な単一のガイドピンによっても適当な直線案内手段を形成することができるが、スピンドル3から発せられる力が2つの本体1及び2に対称的に導入されるため、2つのガイドピンを有する実施例が好ましい。
【0026】
原理的には、2つのねじ部品7および8を備えたスピンドル3の代わりに単一のねじ部だけを使用することもさらに可能であり、ここでは、スピンドルを2つの本体の一方のみにおいてねじ孔に回し、かつ回転可能であるが、動かないように、スピンドルを拡張ねじの他方の本体と接続する。特に、スピンドルの作動部分を拡張ねじの2つの本体のうちの1つのチャンバ内に回転可能に装着することによって、スピンドルの単一のねじ部品は、前記チャンバから突出し、前記拡大ねじの他方の本体のねじ孔に係合する。
【0027】
図1~13による第1実施形態において、作動部4は、直角に互いに交差する2つの横方向の内腔13および14を有し、これらは特に
図1、6、9、10および12に視認できる。スピンドル3を回転させるために、スピンドル3を回転させるためのレバーとして使用することができる調整ツール、例えばピンを導入することができる。作動部4を回すと、2本体1、2間の距離が変化してガイドピン5、6上を摺動するので、2本体1、2は直線に沿って案内され、2本体1、2同士が相対的にねじれることが防止される。
【0028】
矯正治療のために設置した患者の口内で拡大ねじが自然に調節されるのを防ぐために、拡大ねじには、口内に発生する拡大ねじの、影響にさらされる間、スピンドル3の2本体1、2の両方の回転方向へのスピンドル3に対する意図しない回転を防ぐか、または少なくとも妨げる装置が組み込まれている。この目的のために、2つのねじ部のうちの1つ、具体的には、第1のねじ部7は、スピンドル3の長手方向に見て丸い角を有する正方形の形状を与えるように、全長にわたって平坦化される。特に、
図3および
図8を参照されたい。第1ねじ部7のねじは、もはや後者の周りで完全に伸長しないが、その代わり、第1ねじ部7を平らにすることによって作られた丸い「コーナー」を有する四角形のまだ残るコーナーの領域に本質的に限定されるのはこのためである。
【0029】
対応するくぼみ15または16は、スピンドル3上の2つの本体1および2に位置する。トラフ17は、スピンドル3の第1ねじ部7上のくぼみ15に形成され、その最も深い位置にあるくぼみ15の中で、エンボス過程を介して、ねじ部7の縦軸上に押し付けられ
ることによってくぼみ突起の中で形成される。このエンボス工程は、
図2~4、10、12及び13を参照されるように、トラフ17の下の第1本体1のねじ付き内腔11に突起12を形成した。トラフ17、突起12、平坦部10は、図上のスケールではなく、原則としてその動作原理を示すために作られている。
【0030】
図1~
図5は、
図1の交線A-Aに一致する中心線18上で、球面輪郭を有する突起12がスピンドル3の第1ねじ部7に当たる位置のスピンドル3を示しており、この位置を以下では、係止位置と呼ぶ。対象物がこの係止位置からスピンドル3を緩めようとする場合、平坦部10のエッジは、突起12の前方で上昇し、抑止力でスピンドル3の回転に対向し、これは、第1のねじ部7の次の丸みを帯びた部分19が突起12に到達するまで上昇する。このスピンドル3の位置は、
図10乃至
図13に示されており、後者から右または左にスピンドル3を次の係止位置に向けて旋回させることができるので、下のスイッチング位置と呼ばれることになる。
【0031】
スピンドル3をロック位置からスイッチング位置に回転させながら克服しなければならない抵抗は、スピンドル3の不用意な回転を防止することができる。
【0032】
図1~
図13に示す本発明による拡大ねじの第1の実施形態では、スピンドルは、それぞれ90度回転させることによって、一つのロック位置から次のロック位置に進むので、それぞれ90度回転させることで、矯正歯科医によって該拡大ねじの二つの本体1、2間の距離を変更することができる。結果として二つの本体1、2間の距離の変化は、スピンドル3のねじ山のピッチに依存することになる。
【0033】
図14~
図29に示す本発明による拡大ねじの第2の実施形態は、第1のねじ部7の平坦部10の代わりに凹状の表面が形成され、その結果、第1のねじ部7は、その長手方向に延びる4つの凹部9を有し、第1の実施形態のねじ孔11に形成された突起12は、第1の実施形態よりも高くすることができる点において、
図1~
図13に示す第1の実施形態とは異なるのみである。スピンドル3がそのロック位置(
図16)からねじを外されながら克服しなければならない抵抗は、したがって、第1の実施形態における抵抗よりも大きくすることができる。その結果、第1の実施形態による拡大ねじよりも第2の実施形態による拡大ねじの方が、スピンドル3のより強い
制止を達成することができる。
【0034】
第2の実施形態における平坦部10の代わりに、第1の糸付部分7上に凹部9が提供されるという事実は別として、2つの実施形態は同じであり、その結果、第2の実施形態に関する詳細については、第1の実施形態の説明に戻って参照することができる。
【0035】
図27~39に示す本発明に係る拡大ねじの第3の実施形態は、4つの凹部9ではなく、互いに直径方向に向かい合う2つの凹部9のみが第1のねじ部7に形成され、互いに直径方向に向かい合う2つの追加の凹部9が第2のねじ部8に形成され、第1のねじ部7の凹部9に対して周方向に90度だけずれるように配置されている点が、第2の実施形態とは異なっている。さらに、突起12は、第1本体1だけでなく、第2本体2のねじ付きボア11にあるトラフ17をもエンボス形成することによって、対応する位置の第2本体2にも形成される。拡大ねじのこの第3の実施形態の利点は、第1及び第2の実施形態の両ねじ部7、8よりも多くのねじが、第1のねじ部7上及び第2のねじ部8上に保持されていることであり、その結果、第1のねじ部7のねじはより大きな力を吸収することができ、ねじ部7及び8の両方はほぼ同じ荷重にさらされることができる。第1及び第2の実施例に対する利点、具体的には、スピンドル3は、ロック位置からロック位置まで90度だけ回転されなければならないということが保持されている。
【符号の説明】
【0036】
1…第1の本体
2…第2本体
3…スピンドル
4…作動部
5…直線案内手段、ガイドピン
6…直線案内手段、ガイドピン
7…ねじ部
8…ねじ部
9…凹部
10…平坦部
11…ねじ孔
12…突起
13…内腔
14…内腔
15…くぼみ
16…くぼみ
17…トラフ
18…中心線
19…丸い部分