(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電子装置、方法、プログラム、および通信システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20230215BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
(21)【出願番号】P 2021549656
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008944
(87)【国際公開番号】W WO2021176565
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】坂本 岳文
(72)【発明者】
【氏名】米澤 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】戸張 智博
(72)【発明者】
【氏名】幸田 貴則
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189639(JP,A)
【文献】特開2012-004726(JP,A)
【文献】特開2008-298721(JP,A)
【文献】特開2013-246118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125489(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260781(US,A1)
【文献】梶田宗吾 外3名,“BLE電波測位に基づく空調機器の自動同定手法の検討”,マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2018論文集,日本,一般社団法人情報処理学会,2018年06月27日,Pages 828-836,<URL: http://id.nii.ac.jp/1001/00193463/ >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/68
G01S 5/00 - G01S 5/14
G01S 11/00 - G01S 11/16
G01S 19/00 - G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定し、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定する処理部
を備え、
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置のうち、前記第1無線機の識別情報の確認が必要である第1位置を出力する出力部をさらに備え、
前記第1位置に対する第1応答を取得する取得部をさらに備え、
前記処理部は、前記第1応答に応じて、前記第2のグループについて、前記第1位置を含む前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を推
定する推定装置。
【請求項2】
複数の無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定し、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定する処理部
を備え、
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記処理部は、前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置の少なくとも一部を前記位置候補として含む第2のグループを設定し、前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を、前記少なくとも一部の位置に設置されている前記第1無線機を含めて、推定する推定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数のグループにそれぞれ含める位置候補の数および位置候補の位置の少なくとも一方に関する情報を含む第4情報に基づいて、前記複数のグループを設定する
請求項1
又は2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記第4情報は、前記複数のグループにそれぞれ含める位置候補の数に関する情報を含み、
前記第4情報を取得する入力部をさらに備えた
請求項
3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記複数の無線機間の通信に関する第5情報に基づいて、前記選択したグループに含まれる位置候補から前記第1無線機が設置されている位置を推定する、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記複数のグループにそれぞれ含める位置候補の数は、前記処理部が前記位置の推定に許容される時間、又は前記処理部に要求される前記位置の推定精度に基づいて決定される
請求項
3又は
4を引用する、請求項
5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記複数のグループからグループを順番に選択し、選択されたグループの順に、前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を推定し、前記選択したグループに含まれる候補位置から前記第1無線機が設置されている位置を推定する
請求項
5又は
6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記第1無線機が設置されている位置を含む情報の少なくとも一部を出力する出力部と、
前記第1無線機が設置されている位置を含む情報の少なくとも一部に対する第2応答を取得する取得部をさらに備え、
前記処理部は、前記第
2応答に応じて、前記第1無線機が設置されている位置を修正する、
請求項
6又は
7に記載の推定装置。
【請求項9】
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置のうち、前記第1無線機の識別情報の確認が必要である第1位置を出力する出力部をさらに備え、
前記第1位置に対する第
1応答を取得する取得部をさらに備え、
前記処理部は、前記第
1応答に応じて、前記第2のグループについて、前記第1位置を含む前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を推定する
請求項
2に記載の推定装置。
【請求項10】
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記処理部は、前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置の少なくとも一部を前記位置候補として含む第2のグループを設定し、前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている
無線機を、前記少なくとも一部の位置に設置されている前記第1無線機を含めて、推定する
請求項1に記載の推定装置。
【請求項11】
前記第2のグループは、第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置の少なくとも一部を前記位置候補として含み、かつ前記第1のグループに含まれる位置候補よりも多くの位置候補を含み、
前記処理部は、前記第2のグループに含まれる前記位置候補のいずれかに設置されている
無線機を、前記少なくとも一部の位置に設置されている前記第1無線機を含めて、推定する、
請求項2又は10に記載の推定装置。
【請求項12】
前記第2のグループに含まれる前記位置候補は、前記第1のグループについて推定された前記第1無線機が設置されている位置のうち、前記第1のグループに含まれる位置候補以外の位置候補と隣り合わない位置の少なくとも一部を含む、
請求項
2又は10に記載の推定装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記複数の無線機間の通信に関する第5情報に基づいて、前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機が設置されている位置を前記第2のグループに含まれる位置候補から推定する、
請求項
2、10乃至12のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項14】
前記第2情報は、RSSIを含む、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項15】
前記第5情報は電波の伝搬時間を含み、前記無線機間の通信方法はUWBである、
請求項
5又は13に記載の推定装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の推定装置と、
前記複数の無線機と、
を備える、
通信システム。
【請求項17】
複数の無線機が設置されている複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定し、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定
し、
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置のうち、前記第1無線機の識別情報の確認が必要である第1位置を出力し、
前記第1位置に対する第1応答を取得し、
前記第1応答に応じて、前記第2のグループについて、前記第1位置を含む前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を推定する
方法。
【請求項18】
複数の無線機が設置されている複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定し、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定
し、
前記複数のグループは第1のグループと第2のグループとを含み、
前記第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置の少なくとも一部を前記位置候補として含む第2のグループを設定し、前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を、前記少なくとも一部の位置に設置されている前記第1無線機を含めて、推定する
方法。
【請求項19】
複数の無線機が設置されている複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定させ、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定させ
、
前記複数のグループにおける第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置のうち、前記第1無線機の識別情報の確認が必要である第1位置を出力させ、
前記第1位置に対する第1応答を取得させ、
前記第1応答に応じて、前記複数のグループにおける第2のグループについて、前記第1位置を含む前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を推定させる
プログラム。
【請求項20】
複数の無線機が設置されている複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、それぞれ複数の前記位置候補を含む複数のグループを設定させ、
前記複数のグループから選択したグループごとに、前記第1情報に示される前記複数の位置候補のいずれかに設置されている前記複数の無線機間の通信の受信電力に関する第2情報、前記選択したグループにおいて前記複数の無線機のうち少なくとも1つの無線機が設置されている位置を示す第3情報、及び前記少なくとも1つの無線機の識別情報に基づき、前記第3情報に示される前記位置を含む前記選択したグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を、前記少なくとも1つの無線機を含めて推定させ
、
前記複数のグループにおける第1のグループについて推定した前記第1無線機が設置されている位置の少なくとも一部を前記位置候補として含む第2のグループを設定させ、
前記第2のグループに含まれる位置候補のいずれかに設置されている無線機を、前記少なくとも一部の位置に設置されている前記第1無線機を含めて、推定させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子装置、方法、プログラム、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線機間の伝搬特性(例えば、RSSI等)を測定し、当該複数の無線機の各々が設置されている位置を推定することが知られている。無線機の数が多くなった場合に、複数の無線機の各々が設置されている位置を推定するための計算量を削減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-32469号公報
【文献】特開2012-124936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の無線機の各々が設置されている位置を推定する計算量を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る推定装置は、複数の無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、この複数の位置候補のうちの一部である第1位置候補を設定し、この複数の位置候補のいずれかに設置されているこの複数の無線機間の通信に関する第2情報に基づいて、この複数の無線機のうちこの第1位置候補のいずれかに設置されている第1無線機を推定する処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、通信システム300を説明する図である。
【
図3】
図3は、推定装置100の推定動作のフローチャートである。
【
図4】
図4は、通信システム300の位置候補P1~P36の位置(座標)を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における推定グループG1を説明する図である。
【
図6】
図6は、グラフ分割法に基づく方法を説明するための通信システム400を説明する図である。
【
図7】
図7は、通信システム400における位置候補、座標、グループを表す図である。
【
図8】
図8は、無線機200d1~d8間におけるRSSIの一例を表す図である。
【
図9】
図9は、グラフ分割法に基づく方法の模式図およびグループ推定部122の推定結果の一例を説明する図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態における推定グループG1のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A1を説明する図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態において推定した無線機200A1のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態における推定グループG2および推定グループG2のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A2を説明する図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態において推定した無線機200A2のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態における推定グループG3および推定グループG3のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A3を説明する図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態において推定した無線機200A3のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態における推定グループG1~G3を説明する図である。
【
図17】
図17は、無線機200がそれぞれ設置されていると推定された位置候補の推定精度を説明する図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態の変形例1における推定グループG1~G3を説明する図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態の変形例2における推定グループG1~G3を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照番号を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る通信システム300を表している。通信システム300は、推定装置100および複数の無線機200を含む。推定装置100は、無線機200が設置される位置の候補(以降、位置候補とも称する)を表す情報(以降、候補情報とも称する)および無線機200間の通信に関する情報(以降、通信情報とも称する)を取得し、無線機200のそれぞれがどの位置候補に設置されているかを推定する装置である。応用例として、無線機200は機器、例えば照明器具、空調機器、太陽電池モジュールなどに設けられている場合、推定装置100は、無線機200の位置を推定することで、無線機200が設けられている機器の位置を推定することができる。
図1では、無線機200が格子状に配置されている通信システム300を表しているが、無線機200の配置はこの場合に限定されるものではない。推定装置100および無線機200は、推定装置100および無線機200、複数の無線機200間で通信を行うことができる。通信は、通信に必要とされるやり取り、信号の送信および受信の少なくとも1つを含む。
図1では、これらの通信が無線により行われる場合が表されているが、これらの通信は少なくとも一部有線で行われてもよい。無線通信規格はWifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)など任意の規格が適用可能である。推定装置100は、無線機200の位置を推定する際、取得した位置候補のうち一部の位置候補を無線機200が設置されている位置の推定対象としてグループ化(以下、グループ化した位置候補を、推定グループとも称する)する。推定装置100は、無線機200のうち推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定し、無線機200Aが設置されている位置を推定グループのうちから推定する。推定装置100は、推定グループごとに無線機200が設置されている位置を推定することで、グループを分けずに推定する場合と比較して推定に必要な計算量を削減でき、推定時間の削減、一定の推定時間における推定精度を向上させることができる。
【0009】
図2は、推定装置100の構成図である。推定装置100の構成を、
図2を用いて説明する。推定装置100は、取得部110、処理部120、記憶部130、および出力部140を備える。取得部110は通信部111および入力部112を有し、処理部120は制御部121、グループ推定部122、および個別推定部123を有する。
【0010】
通信部111はアンテナを含み、通信により無線信号を送信および受信する。例えば無線機200や、データベース等と通信することができる。通信部111は、無線機200から通信情報を受信して取得する。通信情報は例えば、複数の無線機200間の通信におけるRSSI(Received Signal Strength Indicator)、PER(Packet Error Rate)などの伝搬情報と、複数の無線機200間の通信における無線機200の識別情報、信号の受信時刻や通信に使用したチャネル番号などを表す情報を含む。識別情報は、それぞれの無線機200を特定する情報であり、推定装置100は識別情報により通信システム300に含まれるそれぞれの無線機200を個別に特定することができる。識別情報としては例えば、MACアドレスやIPアドレスであるが、それぞれの無線機200を個別に特定できれば任意の情報が適用可能である。通信部111は、データベース等の通信を通じて、通信情報を取得してもよい。通信情報は、推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aの推定、無線機200Aが設置されている位置の推定に使われる。
【0011】
入力部112は、入力される情報を取得する、または対象物に対して情報化処理を行うことにより情報を取得する。例えば、入力部112はユーザからの入力によって候補情報を取得してもよいし、無線機200が設置される位置が記載された図面を入力またはスキャン等し、画像処理等によって候補情報を取得してもよいし、無線機200の設置状況を表す画像を撮影または入力し、画像処理等によって候補情報を取得してもよい。推定グループの入力部112は、推定グループに含まれる位置候補の数に関する情報(以降、単位グループ情報)を取得する。単位グループ情報は、あらかじめ推定装置100に設定されていてもよく、この場合も単位グループ情報の取得に含まれるものとする。候補情報および単位グループ情報は、推定グループの設定に使われる。入力部112は、無線機200のうち一部の無線機が設置されている位置を表す情報(以降、既知情報とも称する)を取得する。既知情報は、推定グループの設定、推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aの推定、無線機200Aが設置されている位置の推定などに使われる。
【0012】
また、入力部112には、推定装置100が無線機200Aのそれぞれの位置を推定して出力した後、無線機200Aのそれぞれの位置に対する応答が入力される。応答とは例えば推定した無線機200Aのそれぞれの位置が正しいことを表したり、推定した無線機200Aのそれぞれの位置のうち、少なくとも一部修正された位置などを表す。応答はユーザによって入力されてもよいし、信号によって送信されてもよい。この応答により、推定装置100は無線機200Aのそれぞれの位置を確定することができる。
【0013】
図2では、取得部110は通信部111および入力部112を有しているが、少なくとも一方であってもよいし、情報または信号を取得する新たな部があってもよい。本実施形態では一例として、通信部111は通信情報を、入力部112は候補情報、単位グループ情報、既知情報、および応答を取得する。取得部110が候補情報、通信情報、単位グループ情報、既知情報、および応答が取得できれば、任意の取得方法が適用可能である。例えば、通信部111が候補情報、単位グループ情報、既知情報、および応答の少なくとも1つを受信し取得してもよいし、入力部112が通信情報を取得してもよい。取得部110が取得した候補情報、通信情報、単位グループ情報、既知情報は、制御部121に送られる。
【0014】
制御部121は、取得部110から送られた候補情報、通信情報、単位グループ情報、既知情報を記憶部130に保持させたり、記憶部130に保持されている情報の少なくとも1つの情報をグループ推定部122および個別推定部123に送る。また、制御部121は、推定した無線機200Aのそれぞれの位置および応答に基づいて、無線機200Aのそれぞれの位置を確定する(以降、無線機200Aの確定した位置を含む情報を確定情報とも称する)。制御部121は、確定情報を記憶部130に保持させる。
【0015】
グループ推定部122は、制御部121から送られた候補情報、単位グループ情報に基づいて、候補情報に含まれる複数の位置候補の一部を推定グループに設定する。本実施形態では、グループ推定部122は既知情報にさらに基づいて推定グループを設定する場合もある。グループ推定部122は、通信情報に基づいて、無線機200のうち推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定する。本実施形態では、既知情報にさらに基づいて無線機200Aを推定する場合もある。グループ推定部122は、設定した推定グループおよび推定した無線機200Aの情報を、個別推定部123に送る。
【0016】
個別推定部123は、グループ推定部122から送られた推定グループ、無線機200A、および制御部121から送られた通信情報に基づいて、推定グループの位置候補から無線機200Aのそれぞれが設置されている位置を推定する。本実施形態では、既知情報にさらに基づいて無線機200Aのそれぞれが設置されている位置を推定する場合もある。個別推定部123は、推定した無線機200Aのそれぞれの位置を表す情報を制御部121および出力部140に送る。
【0017】
図2では、制御部121、グループ推定部122、個別推定部123は処理部120に含まれる。処理部120は、制御装置と演算装置を含む1つ以上の電子回路である。電子回路は、アナログまたはデジタル回路等で実現される。例えば、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA、およびその組み合わせが可能である。また、処理部120はソフトウェアによってこれらの電子回路で実行されてもよい。
【0018】
記憶部130は、制御部121から送られる情報を保持する。記憶部130はメモリ等であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、フラッシュメモリ、レジスタなどである。また、記憶部130は推定装置100の内部の他、外部に設けられてもよい。外部に設けられる場合、記憶部130はインターネットを経由して情報を保持するクラウドでもよい。
【0019】
出力部140は、個別推定部123から送られる、推定した無線機200Aのそれぞれの位置を表す情報を出力する。推定した無線機200Aのそれぞれの位置を表す情報の出力先および形態は任意であり、例えば、推定した無線機200Aのそれぞれの位置を表す情報を分析する装置や、視覚的に表示する装置、保持する装置などである。これらの装置は、推定装置100内部の図示しない要素であってもよいし、推定装置100の外部に設けられていてもよい。出力部140は通信部111の一部を含み、通信によって無線機200Aのそれぞれの位置を表す情報を出力してもよい。
【0020】
以上、推定装置100の構成を説明した。以下、推定装置100の推定動作を説明する。推定装置100は、複数の無線機200が設置される複数の位置候補を表す候補情報、無線機200間の通信に関する通信情報、候補情報に含まれる複数の位置候補のうち一部の位置候補をグループ化する際の数に関する単位グループ情報、無線機200のうち、一部の無線機が設置されている位置を表す既知情報を取得する。推定装置100は、候補情報、単位グループ情報に基づいて、候補情報の一部の位置候補を推定対象とする推定グループを設定する。一部の場合において、推定装置100は既知情報にも基づいて、推定グループを設定する。推定装置100は、通信情報に基づいて、無線機200のうち、推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定する。一部の場合において、推定装置100は既知情報にも基づいて、無線機200Aを推定する。推定装置100は、通信情報に基づいて、無線機200Aの位置を、推定グループの位置候補のうちから推定する。一部の場合において、推定装置100は既知情報にも基づいて、無線機200Aの位置を推定する。推定装置100は、推定した無線機200Aの位置を表す情報を出力し、推定した無線機200Aの位置に対する応答を取得する。推定装置100は、取得した応答に応じて無線機200Aの位置を修正し、無線機200Aの位置を確定する。推定装置100は、候補情報に含まれる位置候補のうち、推定グループとして設定されていない位置候補がなくなるまで推定グループの設定、推定グループに含まれる無線機200Aの推定、推定グループにおける無線機200Aの位置の推定を繰り返す。候補情報に含まれる位置候補がすべて推定グループとして設定され、無線機200について位置の確定が完了すると、動作を終了する。なお、推定装置100は、無線機200のそれぞれの特定を、通信情報に含まれる識別情報に基づいて行っている。
【0021】
図3は、推定装置100の推定動作のフローチャートである。推定装置100の推定動作の詳細を、
図3を用いて説明する。取得部110は、候補情報、通信情報、単位グループ情報、既知情報を取得する(ステップS101)。本実施形態では一例として、通信部111は通信情報を取得し、入力部112は候補情報、既知情報、単位グループ情報を取得する。取得された各種情報は制御部121に送られ、記憶部130に保持される。制御部121は、候補情報、単位グループ情報、および既知情報をグループ推定部122に送り、通信情報、既知情報を個別推定部123に送る。
図4は、本実施形態の一例として通信システム300の位置候補、無線機200、既知情報を表す図である。通信システム300は候補情報に含まれる位置候補として位置候補P1~P36を有し、無線機200として無線機200D1~200D36を有する。位置候補P1~P36は、それぞれの位置(座標)が明らかとなっている。例えば
図4では、位置候補P1~P36のそれぞれはx座標とy座標により特定される。位置候補P1は(x,y)=(1,1)、位置候補P2は(x,y)=(1,2)、…、位置候補P36は(x,y)=(12,3)のように表される。推定装置100は、取得した通信情報に含まれる無線機200の識別情報によって、無線機200が無線機200D1~200D36であることを認識する。推定装置100は、取得した既知情報によって無線機200のうち無線機200D2は位置候補P2に、無線機200D14は位置候補P14に設置されていることを認識する。推定装置100は、無線機200D2および無線機200D14以外の無線機200については、位置候補P2およびP14以外のどの位置候補に位置しているかについては未知である。
【0022】
グループ推定部122は、候補情報、単位グループ情報、既知情報に基づいて、無線機200が設置されている位置を推定する対象となる推定グループを設定する(ステップS102)。グループ推定部122は、単位グループ情報に基づいて、推定グループに含まれる位置候補を決定する。例えば本実施形態では、単位グループ情報として1つの推定グループには12個の位置候補を含めることを表している。グループ推定部122は、無線機200の位置の推定に掛けられる時間や推定精度に応じて、単位グループ情報に含まれる、1つの推定グループが含む位置候補の数よりも多い、あるいは少ない数の位置候補を1つの推定グループとして設定してもよい。グループ推定部122は、既知情報に基づいて、一部の位置候補を含めて推定グループを設定する。
図5は、本実施形態における推定グループG1を表す図である。
図5では、無線機200D2の位置として既知である位置候補P2を含めた、位置候補P1~P12が推定グループG1として設定される。既知である位置候補P2を含めることで、推定グループG1の位置候補P1~P12のいずれかに設置されている無線機200を推定することができる。
【0023】
グループ推定部122は、通信情報に基づいて、設定した推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定する(ステップS103)。
図5では、推定グループG1の位置候補P1~P12のいずれかに設置されている無線機200を推定する。
【0024】
推定グループG1の位置候補P1~P12のいずれかに設置されている無線機200を推定する方法の一例として、グラフ分割法に基づく方法がある。この方法では、通信システム300のすべての無線機200を、推定グループG1の位置候補P1~P12のいずれかに設置されている無線機200(以降、無線機200A1とも称する。)と、推定グループG1以外の位置候補(位置候補P13~P36)のいずれかに設置されている無線機200とにグループ分けする。
【0025】
グラフ分割法に基づく方法について、
図6を用いて以下に説明する。
図6はグラフ分割法に基づく方法を説明するための通信システム400を表している。通信システム400も通信システム300と同様に、位置候補p1~p8および無線機200d1~d8を含んでいる。位置候補p1~p8のそれぞれはx座標とy座標により特定される。位置候補p1は(x,y)=(1,1)、位置候補p2は(x,y)=(1,2)、…、位置候補p8は(x,y)=(4,2)のように表される。無線機200d1~d8のうち、無線機200d2は位置候補p2に位置している。ステップS101で説明したように、以上の事項について推定装置100は、取得部110が候補情報、通信情報、既知情報を取得することで認識することができる。一例として、ステップS102で説明したように、グループ推定部122は、位置候補p1と、無線機200d2が位置していることが既知である位置候補p2とを含む推定グループg1を設定したとする。
図6では、推定グループg1以外の位置候補を、その他のグループとしてグループg2と表している。
【0026】
以上、ステップS102における推定装置100の認識を、
図7(a)および(b)に表す。推定装置100は、候補情報により通信システム400には位置候補p1~p12が含まれており、位置候補p1~p12のそれぞれの位置(座標)を認識する。推定装置100は、既知情報により位置候補p2には無線機200d2が位置することを認識するが、無線機200d1、d3~d8がそれぞれ位置候補p1、p3~p8のいずれに位置しているかは未知である。ステップS102においてグループ推定部122は、
図7(b)に表されるように、位置候補p1およびp2を推定グループg1として設定し、それ以外の位置候補p3~p8をその他のグループとしてグループg2とした。
【0027】
以降、推定グループg1に含まれる無線機200と、推定グループg1以外の位置候補に含まれる無線機200をグラフ分割法に基づく方法によって推定する。以下の説明は、通信情報に含まれる、複数の無線機間の通信における伝搬情報がRSSIの場合である。
【0028】
図8は、無線機200d1~d8について、2つの無線機間におけるRSSIを表している。例えば、送信側無線機d1が受信側無線機d3に信号を送信する場合におけるRSSIは-55dBである。RSSIは、数値が大きいほど(-の絶対値が小さいほど)信号の強度が高いことを表している。無線機200間のRSSIは距離の相関が強いため、RSSIが大きいほど2つの無線機200間の距離が近いとされる。RSSIの取得方法の一例は、無線機200d1~d8のそれぞれが、他の無線機200と被らない所定のタイミングで信号をブロードキャストする。ブロードキャストした無線機200以外の無線機200はブロードキャストされた信号を受信し、RSSIを測定する。ブロードキャストされた信号を受信した無線機200のそれぞれは、測定したRSSIを通信情報に含んで通信部111に送信する。無線機200d1~d8のそれぞれが測定したRSSIを通信情報として通信部111が取得することで、無線機200d1~d8において、2つの無線機200間におけるRSSIを取得することができる。
【0029】
グループ推定部122は、推定グループg1となりうる組合せを複数生成し、組合せを無線機200d1~d8間における伝搬情報から評価することで、推定グループg1のいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定する。ここでは一例として、伝搬情報としてRSSIを用いる。グラフ分割法に基づく方法では、無線機200d1~d8をノード、無線機200d1~d8間のRSSIをエッジとして、2つのグループg1、g2に分割するにはどのエッジを切るかを探索する。
図9(a)は、ノードとして表される無線機200d1~d8、エッジとして表される無線機200d1~d8間のRSSI、2つのグループg1、g2に分割する分割線を模式的に表した図である。
図9(a)では一例として、無線機200d1およびd2をg1とするように分割線を引いている。通信システム400の場合、推定グループg1になりうる無線機200の組合せは、(d1,d2)、(d2,d3)、(d2,d4)、(d2,d5)、(d2,d6)、(d2,d7)、(d2,d8)の7通りである(以降、これらを推定グループの候補とも称する)。グループg2は、推定グループg1に含まれなかったその他の無線機200である。グループ推定部122は、推定グループの候補それぞれについて、RSSIに基づく評価値を算出し、最も推定グループg1に相当である組合せを推定グループg1として推定する。例えば、グループ推定部122は、推定グループの候補それぞれについて、2つのグループg1およびg2に分割する際、切られるエッジの重みが最も小さくなる組合せを探索し、その組み合わせを推定グループg1として推定する。推定グループの候補は、上に説明したようにすべての組合せについて評価値を算出(全組合せ探索)してもよいし、一部の組合せについては遺伝的アルゴリズム等を用いることにより省略してもよい。
【0030】
図9(b)は、通信システム400におけるグループ推定部122が推定した結果である。
図9(b)に表されるように、グループ推定部122は、無線機200d1およびd2が推定グループg1のいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aであると推定する。無線機200d3~d8は、その他のグループであるグループg2のいずれかの位置候補に設置されていると推定される。
【0031】
以上、グループ推定部122が推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定する方法を説明した。ステップS103に戻ると、グラフ分割法に基づく方法により、グループ推定部122は推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定することができる。ここで、グループ推定部122は既知情報から、無線機200Aの一部に既知の無線機200があることを認識しているが、既知の無線機200が含まれていても、無線機200Aの推定と称する。グループ推定部122は、既知の無線機200以外の無線機200Aを推定している場合でも、無線機200Aを推定しているものとする。
図10は、本実施形態の一例として、グループ推定部122が推定した、推定グループG1に対応する無線機200A1を表す図である。
図10では、グループ推定部122は無線機200D1~D12を無線機200A1として推定する。推定グループG1以外の位置候補P13~P36はその他のグループとして、無線機200D13~D36がいずれかの位置に設定される。グループ推定部122は、推定グループG1および無線機200A1の情報を、個別推定部123に送る。
【0032】
個別推定部123は、グループ推定部122から送られた推定グループおよび無線機200Aの情報、および制御部121から送られた通信情報に基づいて、無線機200Aのそれぞれが推定グループ内のいずれの位置候補に位置するかを推定する(ステップS104)。ここで、個別推定部123は既知情報から、無線機200Aの一部に既知の無線機200があることを認識しているが、既知の無線機200が含まれていても、無線機200Aのそれぞれの位置の推定と称する。個別推定部123は、既知の無線機200以外の無線機200Aのそれぞれの位置を推定している場合でも、無線機200Aのそれぞれの位置を推定しているものとする。推定グループG1および無線機200A1の情報が送られてきた場合、個別推定部123は無線機200A1のそれぞれが推定グループG1内のいずれの位置候補に位置するかを推定する。
【0033】
個別推定部123は、推定グループG1における位置候補P1、P3~P12に、無線機200D1、D3~D12を仮に配置した組合せ(以降、仮説とも称する)を複数生成する。位置候補P2に無線機200D2が位置していることは既知であるため、いずれの仮説においても位置候補P2に無線機200D2が位置する。個別推定部123は、仮説ごとに評価値を算出し、最も推定グループG1における無線機200D1~D12の配置として適切な組合せを無線機200A1のそれぞれの位置として推定する。仮説における評価値の例として、仮説ごとに無線機200D1~D12の距離を求め、求めた距離とRSSIの相関関係を用いる。2つの無線機200間のRSSIは距離の相関が強いため、RSSIが大きいほど2つの無線機200間の距離が近いとされる。そこで個別推定部123は、仮説における無線機200D1~D12のそれぞれの距離が小さいほど伝搬情報のRSSIが大きくなっているかを評価する。例えば個別推定部123は、仮説における無線機200D1~D12のそれぞれの距離と、伝搬情報のRSSIとの相関関係が-1に最も近い組合せを無線機200A1のそれぞれの位置として推定する。個別推定部123は、評価値として仮説ごとに無線機200D1~D12の距離を求め、求めた距離とRSSIに基づく矛盾度を求めてもよい。個別推定部123は、求めた矛盾度が最も小さい組合せを無線機200A1のそれぞれの位置として推定する。
図11は、本実施形態の一例として、個別推定部123が推定した無線機200A1のそれぞれの位置である。個別推定部123は、位置候補P1には無線機200D1、位置候補P2には無線機200D2、…、位置候補P12には無線機200D12が位置すると推定する。個別推定部123は、推定した推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を含む情報を出力部140に送る。推定グループG1の場合、個別推定部123は推定グループG1における無線機200A1のそれぞれの位置を含む情報を制御部121および出力部140に送る。制御部121は、無線機200Aのそれぞれの位置を記憶部130に保持させるようにしてもよい。
【0034】
出力部140は、個別推定部123から送られた推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を含む情報を出力する(ステップS105)。推定グループG1における無線機200A1のそれぞれの位置を含む情報が送られてきた場合、出力部140は当該情報を出力する。出力先および出力形態は任意だが、本実施形態では一例として、推定装置100のユーザが認識可能であり、ユーザが推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を含む情報に対する応答が入力可能な出力装置に出力する。
【0035】
取得部110は、推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を含む情報に対する応答を取得する(ステップS106)。推定グループG1における無線機200A1のそれぞれの位置に対する応答の場合、取得部110は当該応答を取得する。応答の内容および形態は任意であるが、本実施形態では一例として、ユーザが出力された無線機200Aのそれぞれの位置について、正しいとすることを応答として入力したとする。ユーザが出力された無線機200Aのそれぞれの位置について一部誤りがあった場合は、無線機200Aの正しい位置を応答として入力してもよい。取得部110(この場合では入力部112)は、ユーザからの無線機200Aのそれぞれの位置に対する応答を取得する。取得部110は、取得した応答を表す情報を制御部121に送る。
【0036】
制御部121は、個別推定部123から送られた推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を含む情報および取得部110から送られた応答を表す情報に基づいて、無線機200Aのそれぞれの位置を確定し、確定情報とする(ステップS107)。推定グループG1の場合は、制御部121は無線機200A1のそれぞれの位置を、応答に応じて確定する。例えば、応答が無線機200A1のそれぞれの位置が正しいことを表す場合、制御部121は個別推定部123から送られた無線機200A1のそれぞれの位置を正しいとして確定し、確定情報として記憶部130に保持させる。制御部121は、記憶部130に無線機200Aのそれぞれの位置を保持させている場合、応答に応じて確定してもよい。応答が無線機200A1のそれぞれの位置を少なくとも一部修正することを表す場合、制御部121は個別推定部123から送られた無線機200A1のそれぞれの位置を修正および確定し、確定情報として記憶部130に保持させる。
【0037】
制御部121は、候補情報および確定情報に基づいて、候補情報に含まれる位置候補のうち、推定グループとして設定されていない(無線機200の位置について未推定である)位置候補があるかを確認する(ステップS108)。すべての位置候補が推定グループとして設定された場合(ステップS108:No)、推定装置100は推定動作を終了する。すべての位置候補が推定グループとして設定されていない場合(ステップS108:Yes)、制御部121はグループ推定部122に対して、無線機200の位置について未推定の位置候補を含んだ推定グループを設定するように指示する。
【0038】
以降、推定グループG1と異なる位置候補を含んだ推定について、推定装置100はステップS109、ステップS103~S107の動作を繰り返す。推定装置100の動作は同様であるので、各ステップの概要を説明する。
【0039】
グループ推定部122は、候補情報、単位グループ情報、既知情報に基づいて、推定グループG2を設定する(ステップS109)。
図12は、本実施形態における推定グループG2を説明する図である。
図12に表されるように、グループ推定部122は、無線機200D14が位置していることが既知である位置候補P14を含めた、位置候補P13~P24を推定グループG2として設定する。本実施形態では一例として、グループ推定部122は、推定グループG1に含まれる位置候補P1~P12を、推定グループG2に含んでいない。グループ推定部122は、先に説明したグラフ分割法に基づく方法から、推定グループG2のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A(以降、無線機200A2とも称する)を推定する(ステップS103)。一例として
図12では、グループ推定部122は無線機200D13~D24を無線機200A2として推定する。個別推定部123は、先に説明した仮説を評価する方法から、無線機200A2のそれぞれが推定グループG2のいずれの位置候補に位置するかを推定する(ステップS104)。
図13は、本実施形態において推定された無線機200A2のそれぞれの位置である。個別推定部123は、位置候補P13に無線機200D13、位置候補P14に無線機200D14、…、位置候補P24に無線機200D24がそれぞれ位置すると推定する。出力部140は推定した推定グループG2における無線機200A2のそれぞれの位置を含む情報を出力し(ステップS105)、取得部110は無線機200A2のそれぞれの位置に対する応答を取得する(ステップS106)。制御部121は、応答に応じて無線機200A2のそれぞれの位置を確定し(ステップS107)、推定グループG2における確定情報として記憶部130に保持させる。
【0040】
推定グループG1およびG2における無線機200A1およびA2のそれぞれの位置が確定した場合、位置候補P25~P36が未推定である。推定グループG1およびG2と異なる位置候補を含んだ推定について、推定装置100はステップS109、ステップS103~S107の動作を繰り返す。推定装置100の動作は同様であるので、各ステップの概要を説明する。
【0041】
グループ推定部122は、候補情報、単位グループ情報に基づいて、推定グループG3を設定する(ステップS109)。
図14は、本実施形態の推定グループG3を説明する図である。
図14に表されるように、グループ推定部122は、推定グループG1およびG2に含まれる位置候補P1~P24を、推定グループG3に含んでいない。推定グループG3は、残りの位置候補をグループ化したものである。グループ推定部122が残りの位置候補をグループ化した推定グループG3を設定する場合、推定グループG1およびG2を設定した際に必要であった既知情報は不要である。推定グループG3が推定グループG1およびG2に含まれる位置候補P1~P24のいずれも含まない場合、推定グループG3に含まれる位置候補は、推定グループG1およびG2以外の位置候補として一意に定まるためである。グループ推定部122は、推定グループG3のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A(以降、無線機200A3とも称する)を推定する(ステップS103)。無線機200A3の推定においては、グラフ分割法に基づく方法は使われない。推定グループG3は残りの位置候補をグループ化したものである場合、無線機200のうち、無線機200A3は無線機200A1および200A2以外の無線機として一意に定まるためである。したがって、残りの位置候補をグループ化した推定グループG3に、設置されている無線機200が既知である位置候補を含む必要はない。以上から、それぞれの推定グループがすべて異なる位置候補を含むよう設定する場合は、((設定するグループ数)-1)個の位置候補について既知情報が必要となる。
【0042】
一例として
図14では、グループ推定部122は無線機200D25~D36を無線機200A3として推定する。個別推定部123は、先に説明した仮説を評価する方法から、無線機200A3のそれぞれが推定グループG3のいずれの位置候補に位置するかを推定する(ステップS104)。
図15は本実施形態において推定された無線機200A3のそれぞれの位置を表す図である。個別推定部123は、位置候補P25に無線機200D25、位置候補P25に無線機200D25、…、位置候補P36に無線機200D36がそれぞれ位置すると推定する。
【0043】
出力部140は推定した推定グループG3における無線機200A3のそれぞれの位置を含む情報を出力し(ステップS105)、取得部110は無線機200A3のそれぞれの位置に対する応答を取得する(ステップS106)。制御部121は、応答に応じて無線機200A3のそれぞれの位置を確定し(ステップS107)、推定グループG3における確定情報として記憶部130に保持させる。
【0044】
推定グループG1、G2、およびG3における無線機200A1、A2、およびA3のそれぞれの位置が確定した場合、候補情報に含まれる位置候補のうち、未推定の位置候補はない(ステップS108:No)。推定装置100は推定動作を終える。
【0045】
以上に本実施形態の推定装置100を説明した。本実施形態で説明した推定装置100は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。以下に本実施形態の変形例を説明する。
【0046】
(変形例1)
以下、本実施形態の推定装置100における推定動作の変形例について説明する。ステップS102について、本実施形態では推定グループを1つずつ設定していたが、一度に複数の推定グループを設定してもよい。例えば、本実施形態における推定グループG1、G2、G3において、ステップS102にて一度に設定してもよい。この場合、ステップS108の分岐は無線機200の位置について未推定の推定グループはあるか?となり、ステップS109は推定対象とする推定グループの決定となる。
【0047】
ステップS107について、本実施形態では、無線機200Aのそれぞれの位置について修正があった場合、修正された無線機200Aのそれぞれの位置を確定情報としていた。変形例では、修正された無線機200Aのそれぞれの位置に基づいて、無線機200Aのそれぞれの位置の推定(ステップS104)を再度行うようにしてもよい。
【0048】
本実施形態では、推定装置100は無線機200A1のそれぞれの位置、無線機200A2のそれぞれの位置、無線機200A3のそれぞれの位置を個別に出力し、個別に応答を取得して確定していた。推定装置100は、無線機200すべてについてそれぞれの位置を推定してから、無線機200のそれぞれの位置を出力し、応答を取得して確定してもよい。この場合、個別推定部123は、無線機200A1、A2、A3のそれぞれの位置を制御部121に送り、制御部121で無線機200すべてについてそれぞれの位置を表す情報として、出力部140に出力する。
【0049】
(変形例2)
以下、推定装置100が用いた各種情報の変形例を説明する。本実施形態では伝搬情報としてRSSIを用いたが、伝搬情報の特徴量を用いてもよい。例えば、RSSIの平均値、最大値、標準偏差や、伝搬時間の平均値、最小値、標準偏差を用いてもよい。伝搬情報の特徴量を用いることで、伝搬情報のデータ量を削減することができる。この伝搬情報の特徴量は、無線機200のそれぞれによって抽出されてもよい。無線機200が抽出した伝搬情報の特徴量を推定装置100に送信することで、推定装置100が無線機200と通信する情報量や時間を削減することができる。
【0050】
本実施形態では、単位グループ情報は1つの推定グループに含む位置候補の数を表していたが、推定グループに含む位置を指定する情報を含んでいてもよい。例えば、ユーザが確認したい位置候補を単位グループ情報として入力することで、グループ推定部122はユーザが確認したい位置候補を含んで推定グループを設定する。推定装置100が推定グループにおける無線機200Aそれぞれの位置を推定することで、ユーザが確認した位置候補について無線機200の所在を推定することができる。また、推定装置100が候補情報に含まれる位置候補すべてについて無線機200のそれぞれの位置を推定する場合よりも計算量を削減することができる。
【0051】
(変形例3)
以下、本実施形態の通信システム300の変形例を説明する。本実施形態では、無線機200は同一の番号を振って説明したが、無線機200D1~D36がすべて同じ無線機である必要はない。推定装置100および無線機200の通信と、複数の無線機200間の通信が可能であり、伝搬情報が測定可能であれば任意の無線機が適用可能である。
【0052】
本実施形態では、推定装置100と無線機200は別の装置として表したが、無線機200のうちの1台が推定装置100であってもよい。この場合でも本実施形態で説明した推定動作が可能である。
【0053】
本実施形態では、位置候補の数と無線機200の数が同数であったが、必ずしも同数である必要はない。例えば、位置候補の数が無線機200の数よりも多く、一部の位置候補では無線機200が存在していない場合においても、本実施形態で説明した方法で無線機200のそれぞれの位置を位置候補から推定することができる。
【0054】
本実施形態では、位置候補P1~P36は規則的(格子状)な位置(座標)であり、推定グループG1~G3は長方形に設定されていたが、必ずしも規則的である必要はない。位置候補の位置(座標)は少なくとも一部ランダムであってよいし、推定グループの形状も任意の形状が適用可能である。例えば多角形やカーブが含まれていてもよい。
【0055】
本実施形態では、推定グループG3には設置されている無線機が既知の位置候補がない場合、すなわち位置候補P25~P36の少なくとも1つに関する既知情報がない場合を説明した。取得部110は、位置候補P25~P36の少なくとも1つに関する既知情報を取得してもよい。個別推定部123は、推定グループG3に含まれる位置候補の少なくとも1つに関する既知情報にさらに基づくことで、推定グループG3に含まれる位置候補のうち、対称性を有する位置候補について、推定精度を向上させることができる。例えば、推定グループG3の位置候補P25~P36は規則的に配置されているため、
図15に表した無線機200A3のそれぞれの位置が点対称となる場合も考えられる。例えば、位置候補P25には無線機200D36、位置候補P26には無線機D200D35、位置候補P27には無線機200D34が設置されているとの推定も考えられる。個別推定部123は、推定グループG3に含まれる位置候補の少なくとも1つに関する既知情報にさらに基づくことで、無線機200A3のそれぞれの位置が点対称となる場合を排除した推定を行うことができる。
【0056】
(変形例4)
以下、推定装置100の機能をプログラムによって実現する変形例を説明する。推定装置100の構成要素が行う機能は、処理部120と同様の処理装置がプログラムを処理することにより実現してもよい。このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、メモリカード、CD-RおよびDVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で提供されるようにしてもよいし、ROM、HDD、SSDなどの記憶媒体に組み込んで提供されるようにしてもよい。
【0057】
以上、推定装置100の変形例を説明した。本実施形態の推定装置100は、候補情報および単位グループ情報を取得し、候補情報に含まれる位置候補のうち一部の位置候補を推定グループに設定する。推定装置100は、無線機200のうち推定グループのいずれかの位置候補に設置されている無線機200Aを推定し、無線機200Aが設置されている位置を推定グループのうちから推定する。推定装置100は、推定グループごとに無線機200が設置されている位置を推定することで、グループを分けずに推定する場合と比較して推定に必要な計算量を削減でき、推定時間の削減、一定の推定時間における推定精度を向上させることができる。位置候補と、位置候補のいずれかに設置されている無線機の組合せは位置候補の階乗通り存在する。本実施形態の
図4で表した通信システム300には、位置候補が36個、無線機200が36台含まれているため、無線機200のそれぞれが設置されている位置を一度に推定する場合は36!通りの組合せから最も適切な組合せを推定する必要がある。本実施形態のように、例えば3つの推定グループに分けて無線機200のそれぞれが設置されている位置を推定することで、3×12!通りの組合せから最も適切な組合せを推定すればよく、推定装置100の計算量を削減することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の通信システム300である。推定装置100の構成および推定動作、無線機200D1~D36、位置候補P1~P36については同様であるため、第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0059】
第2の実施形態では、推定装置100は位置候補ごとの推定精度を考慮することにより、推定装置100の推定精度を向上させることができる。また、推定装置100は、2つ目以降の推定グループを設定する際(第1の実施形態におけるステップS109)に、以前推定した推定グループに含まれる位置候補の少なくとも一部を含んで推定グループを設定する。これにより、設置されている無線機200が既知である位置候補を削減することができる。
【0060】
図16は、本実施形態の一例として、グループ推定部122が設定する推定グループG1~G3を表す図である。グループ推定部122は、推定グループG1の設定から無線機200A1のそれぞれの位置の推定までについては第1の実施形態と同様である。一例として、伝搬情報にRSSIを用いた場合、無線機200Aのそれぞれの位置の推定について、推定グループの隅、あるいは端の位置候補については、設置されている無線機200の推定を誤る可能性が他の位置候補に比べて高い(推定精度が低い)。この理由について
図17および
図18を用いて説明する。
【0061】
図17は、一例として、推定グループG1における無線機200A1のそれぞれの位置の推定精度の高低を表した図である。推定グループG1はx軸方向に長辺を持つ長方形のグループである。この場合、x軸方向の端の列(位置候補P1~P3、P10~P12)の列は他の列(位置候補P4~P6、P7~P9)に比べて推定精度が低い。また、推定グループG1の隅(位置候補P1、P3、P10、P12)は、推定グループG1の他の位置候補に比べて推定精度が低い。
【0062】
図18はRSSIと実距離の関係を表す図である。複数の無線機200間のRSSIは、距離のべき乗に比例して減衰する。例えば自由空間中では、RSSIは距離の2乗に比例して減衰する。同じ距離の差であっても、距離の差に対応するRSSIの差は一定ではない。
図18では、無線機200のうち、信号をブロードキャストする1つの無線機と、その無線機からの距離に応じたRSSIが表されている。距離d
AではR
A、距離d
BではR
B、距離d
CではR
C、距離d
DではR
Dであるとする。距離d
Aから距離d
Bまでの差分Δd
1と、距離d
Cから距離d
Dまでの差分Δd
2は等しい。しかし、R
AとR
Bの差分ΔR
1と、R
CとR
Dの差分ΔR
2では、ΔR
2はΔR
1よりも小さい。このように、信号をブロードキャストする無線機から離れるほど、測定されるRSSIの変化は小さくなる。
【0063】
一方、RSSIには距離以外の要因による変動が生じる。例えば、マルチパスフェージングによる変動である。この変動において、距離の大小はRSSIの減衰ほど大きくは影響しない。RSSIは距離のべき乗に比例して減衰するので、距離が離れるほどRSSIに対する、距離以外の要因による変動の影響が大きくなる。したがって、推定グループの隅、あるいは長辺の端の位置候補については、無線機200Aのそれぞれの位置の推定精度が低くなる。
図17では、位置候補P1、P3、P10~P12は、推定グループG1の他の位置候補に比べて推定精度が低い。位置候補P2は本来推定精度が低くなるが、無線機200D2が設置されていることが既知であるので、
図17では推定精度が低い位置候補に含めていない。
【0064】
個別推定部123は、ステップS105において、推定した無線機200Aのそれぞれの位置のうち、少なくとも一部を出力する。例えば個別推定部123は、無線機200Aが設置されている位置の推定精度が低いとされる位置候補に対する応答を取得するため、この推定精度が低いとされる位置候補を出力してもよい。すなわち、個別推定部123は、ユーザが無線機200の識別情報を確認すべき位置候補(ユーザによる無線機200の識別情報の確認が必要な位置候補)を出力してもよい。個別推定部123が、推定精度が低いとされる位置候補を出力することで、ユーザにこの推定精度が低いとされる位置候補に配置される無線機200の確認を促す。ユーザからの推定精度が低いとされる位置候補に対する応答を取得することにより、確定情報の精度を向上させることができる。変形例1で説明したように、推定装置100は、推定精度が低いとされる位置候補に対する応答に応じて、推定グループ内において無線機200Aのそれぞれが設置されている位置を再度推定してもよい。
【0065】
推定グループG1における無線機200A1の位置を表す情報は、再度の推定または(および)応答によって、確定情報として記憶部130に保持される。制御部121はグループ推定部122に対して、無線機200の位置について未推定の位置候補を含んだ推定グループを設定するように指示するとともに、推定グループG1における確定情報を送る。グループ推定部122は、候補情報、単位グループ情報、および推定グループG1における確定情報に基づいて推定グループG2を設定する。具体的には、グループ推定部122は推定グループG1に含まれる位置候補の一部を含めて推定グループG2を設定する。一例として、
図16では位置候補P10~P21が推定グループG2として設定される。位置候補P10~P12は、推定グループG1にも含まれている。
【0066】
グループ推定部122は、推定グループG2のいずれかの位置候補に設置されている無線機200A2を推定する際(ステップS103)、推定グループG1における確定情報を既知情報として用いることができる。これにより、設置されている無線機200が既知である位置候補の数を削減することができる。具体的には、推定グループG1を設定する際に必要な、設置されている無線機200が既知である位置候補が1個あればよい。推定グループG2の設定の後における推定装置100の動作は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。推定グループG3の設定においても、本実施形態の推定グループG2の設定と同様に、以前推定した推定グループに含まれる位置候補の少なくとも一部を含んで推定グループを設定する。一例として、
図16では位置候補P19~P30が推定グループG3として設定される。位置候補P19~P21は、推定グループG2にも含まれている。以降第1の実施形態と同様に、候補情報に含まれる位置候補のうち未推定の位置候補がなくなるまで、推定グループの設定、推定グループのいずれかに設置されている無線機200Aの推定、および無線機200Aのそれぞれの位置の推定が行われる。
【0067】
以上、本実施形態における推定装置100について説明した。本実施形態で説明した推定装置100は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、第1の実施形態の変形例は本実施形態にも適用可能である。以下、推定グループの設定における変形例を説明する。
【0068】
(変形例1)
図16では一例として、グループ推定部122は以前無線機200Aのそれぞれの位置を推定した推定グループの端の列を含んで、新たな推定グループを設定した。
図19は、設定される新たな推定グループの変形例を表す図である。
図19では、グループ推定部122は以前無線機200Aのそれぞれの位置を推定した推定グループから複数の列を含んで、新たな推定グループを設定する。例えば、グループ推定部122は推定グループG1にも含まれる位置候補P7~P18を推定グループG2として設定する。位置候補P7~P9については、隣り合う位置候補が同じ推定グループG1の位置候補しかない。
図17で説明したように、位置候補P7~P9は推定グループG2の端の列であるため、推定精度が低いが、推定グループG1の端の列ではないため、推定精度が高い。グループ推定部122は、推定グループG1において推定精度が高い位置候補P7~P9の推定結果を用いて、推定グループG2の位置候補のいずれかに設置されている無線機200A2の推定、無線機200A2のそれぞれの位置の推定の精度を向上させることができる。以上から、グループ推定部122は、推定精度が高い位置候補を含んで新たな推定グループを設定することで、推定精度を向上させることができる。
【0069】
なお、グループ推定部122は、以前無線機200Aのそれぞれの位置を推定した推定グループのうち、推定精度が高い位置候補のみを既知情報として用いてもよい。確定情報とするプロセスにおいて、推定精度が低い位置候補について修正されていない可能性があるためである。
【0070】
(変形例2)
グループ推定部122は、以前無線機200Aのそれぞれの位置を推定した推定グループをすべて含んで、新たな推定グループを設定してもよい。この場合、推定グループによって異なる位置候補の数が設定されてもよい。こうすることで、グループ推定部122および個別推定部123の新たな推定グループに対する推定精度を向上させることができる。
【0071】
図20は、設定される新たな推定グループの変形例を表す図である。
図20では、グループ推定部122は以前無線機200Aのそれぞれの位置を推定した推定グループの位置候補を含んで、新たな推定グループを設定する。この際に、推定グループに含む位置候補の数を、単位グループ情報に基づいて順次増やしていく。なお、本変形例では、位置候補P3には無線機200D3が設置されることは既知とし、伝搬情報としてRSSIを用いている。
【0072】
例えば、
図20では単位グループ情報が3の場合の例を示す。グループ推定部122は位置候補P1~P3を推定グループG1として設定する。推定グループG1の無線機200A1が設置されている位置が確定した後、グループ推定部122は推定グループG1の位置候補をすべて含む、位置候補P1~P6を推定グループG2として設定する。
グループ推定部122は、推定グループG1に含まれる位置候補P1~P3のいずれかに設置されている無線機200A1の推定を、第1の実施形態で説明したRSSIを用いたグループ分割法に基づく方法により高精度に行うことができる。これは、推定グループG1と推定グループG1以外の位置候補間の距離が大きい組合せが増える、すなわち2つの無線機200の間のRSSIが小さい値となる組み合わせが増えるためである。2つの無線機200の間のRSSIが小さい値となる組み合わせが増えると、これらのRSSIから求められる評価値が小さくなる可能性が高くなり、推定精度は向上する。また、個別推定部123は、推定グループG1内における無線機200A1のそれぞれの位置の推定を、位置候補P3が既知であるため高精度に行うことができる。
【0073】
グループ推定部122は、推定グループG2に含まれる位置候補P1~P6のいずれかに設置されている無線機200A2の推定を、推定グループG1の推定結果を用いて、高精度に行うことができる。また、個別推定部123は、推定グループG2内における無線機200A2のそれぞれの位置の推定を、推定グループG1の推定結果を用いて高精度に行うことができる。推定グループG3の場合も同様に、推定グループG3に含まれる位置候補P1~P9のいずれかに設置されている無線機200A3の推定および推定グループG3内における無線機200A3のそれぞれの位置の推定を、推定グループG2の推定結果を用いて高精度に行うことができる。
【0074】
本変形例では一例として、単位グループ情報として唯一の値を用いた場合の例を説明したが、適宜変更してもよい。例えば、最初に推定する推定グループG1に含む位置候補を6、以降に設定する推定グループに含む位置候補を3ずつ増加させてもよい。
【0075】
以上、本実施形態における推定装置100の変形例を説明した。本実施形態の推定装置100は、位置候補ごとの推定精度を考慮して無線機200Aの位置を表す情報を出力し、ユーザからの応答に応じて確定情報とすることで、推定精度を向上させることができる。また、推定装置100は、以前推定した推定グループの位置候補の一部を含んで新たな推定グループを設定する。推定装置100は、以前推定した推定グループの確定情報の少なくとも一部を既知情報として用いることで、設置されている無線機200が既知である位置候補を削減することができる。また、推定装置100は、出力する推定グループにおける無線機200Aのそれぞれの位置を削減することができ、ユーザが確認すべき推定候補を削減することができる。
【0076】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、推定装置100の計算量を削減することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
100:推定装置
110:取得部
111:通信部
112:入力部
120:処理部
121:制御部
122:グループ推定部
123:個別推定部
130:記憶部
140:出力部
200、200A1~A3、200D1~D36、200d1~d8:無線機
300:通信システム
400:通信システム