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7228059配列操作および治療適用のための系、方法および組成物の送達、エンジニアリングおよび最適化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】配列操作および治療適用のための系、方法および組成物の送達、エンジニアリングおよび最適化
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230215BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20230215BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230215BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230215BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20230215BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N9/16 ZNA
C12N15/55
C12N15/11 Z
C12N15/86 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006048
(22)【出願日】2022-01-19
(62)【分割の表示】P 2019039953の分割
【原出願日】2013-12-12
(65)【公開番号】P2022040308
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】61/791,409
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/819,803
(32)【優先日】2013-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/769,046
(32)【優先日】2013-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/847,537
(32)【優先日】2013-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/758,468
(32)【優先日】2013-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/836,123
(32)【優先日】2013-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/828,130
(32)【優先日】2013-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/835,931
(32)【優先日】2013-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/748,427
(32)【優先日】2013-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/806,375
(32)【優先日】2013-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/802,174
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/736,527
(32)【優先日】2012-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/814,263
(32)【優先日】2013-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515236259
【氏名又は名称】ザ・ブロード・インスティテュート・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507324290
【氏名又は名称】マサチューセッツ・インスティトュート・オブ・テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】フェン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ハイデンライク
(72)【発明者】
【氏名】フェイ・ラン
(72)【発明者】
【氏名】ウーカシュ・スウィーチ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/089290(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/146121(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/064736(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/011767(WO,A1)
【文献】特表2009-502170(JP,A)
【文献】特表2012-510812(JP,A)
【文献】特表2016-500003(JP,A)
【文献】Science, Aug 2012, Vol.337, p.816-821, Supplementary Materials
【文献】Biochimica et Biophysica Acta, 2006, Vol.1758, p.355-363
【文献】The Journal of Cell Biology, 1988, Vol.107, p.1279-1287
【文献】PNAS, 2011, Vol.108, p.E351-E358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞におけるゲノム編集のための、エンジニアリングされた天然に存在しない組成物であって、
(a)少なくとも1つの核局在シグナル化(NLS)に融合したCas9を含む融合タンパク質、および
(b)CRISPR-Cas系キメラRNAであって、前記キメラRNAが、真核細胞の核においてプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接している標的配列にハイブリダイズすることができ、標的配列へのCRISPR-Cas複合体の配列特異的結合を指向することができるガイド配列、tracr配列にハイブリダイズできるtracrメイト配列、および少なくとも30ヌクレオチドの長さを含むtracr配列を含む、CRISPR-Cas系キメラRNA、
を含む組成物。
【請求項2】
Cas9が、キメラRNAと複合化している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
真核細胞におけるゲノム編集のための、エンジニアリングされた天然に存在しない組成物であって、
(a)少なくとも1つの核局在シグナル化(NLS)に融合したCas9を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(b)CRISPR-Cas系キメラRNAであって、前記キメラRNAが、真核細胞の核においてプロトスペーサー隣接モチーフに隣接している標的配列にハイブリダイズすることができ、標的配列へのCRISPR-Cas複合体の配列特異的結合を指向することができるガイド配列、tracr配列にハイブリダイズできるtracrメイト配列、および少なくとも30ヌクレオチドの長さを含むtracr配列を含む、CRISPR-Cas系キメラRNA、
を含む組成物。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが、真核細胞における発現のためにコドン最適化されており、mRNAである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記tracr配列が、少なくとも40の長さのヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記tracr配列が、少なくとも50の長さのヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのNLSが、PKKKRKV, KRPAATKKAGQAKKKK, PAAKRVKLD, RQRRNELKRSP, NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY, RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV, VSRKRPRP, PPKKARED, POPKKKPL, SALIKKKKKMAP, DRLRR, PKQKKRK, RKLKKKIKKL, REKKKFLKRR, KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK, および RKCLQAGMNLEARKTKKから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記Cas9タンパク質が、少なくとも2つのNLSに融合している、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのNLSが、前記Cas9のアミノ末端に、もしくは、その付近に存在し、および、少なくとも1つのNLSが、前記Cas9のカルボキシ末端に、もしくは、その付近に存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記Cas9が、触媒ドメインに少なくとも一つの変異を含み、一本のDNA鎖を開裂する能力が欠如したニッカーゼである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記Cas9が、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)のCas9のD10A、H840A、N854AまたはN863Aに対応する少なくとも一つの変異を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記Cas9が、2以上の触媒ドメインに少なくとも一つの変異を含み、全てのDNA開裂活性を実質的に欠いている、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記Cas9が、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)のCas9のD10Aに対応する変異を含み、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)のCas9のH840A、N854AまたはN863Aに対応する少なくとも一つの変異をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記Cas9が、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9であり、前記PAMが、NGGを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記Cas9が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9であり、前記PAMが、NNGRRを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記Cas9が少なくとも1つの異種タンパク質ドメインに融合されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
異種タンパク質ドメインが、以下の活性:即ち、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写リリース因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性、のうちの1つ以上を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、テンプレートポリヌクレオチドをさらに含み、前記テンプレートポリヌクレオチドは、標的配列の少なくとも5ヌクレオチドとオーバーラップしている、請求項1~17の何れか一項に記載の組成物。
【請求項19】
(a)および(b)が、真核細胞への送達のために、リポソーム、ビロソーム、免疫リポソーム、人工ビリオン、ウイルスベクター、又はウイルス粒子に含まれている、請求項1~18の何れか一項に記載の組成物。
【請求項20】
真核細胞が、哺乳類細胞またはヒト細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照および参照による組み込み
本出願は、2012年12月12日に出願された米国仮特許出願第61/736,527号明細書;2013年1月2日に出願された同第61/748,427号明細書;2013年1月30日に出願された同第61/758,468号明細書、2013年2月25日に出願された同第61/769,046号明細書;2013年3月15日に出願された同第61/791,409号明細書および同第61/802,174号明細書、2013年3月28日に出願された同第61/806,375号明細書;2013年4月20日に出願された同第61/814,263号明細書;2013年5月6日に出願された同第61/819,803号明細書;2013年5月28日に出願された同第61/828,130号明細書;2013年6月17日に出願された同第61/835,931号明細書および同第61/836,123号明細書ならびに2013年7月17日に出願された同第61/847,537号明細書の利益およびそれに対する優先権を主張する。
また、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/799,800号明細書;2013年6月17日に出願された同第61/835,931号明細書、同第61/835,936号明細書、同第61/836,127号明細書、同第61/836,101号明細書、同第61/836,080号明細書および同第61/835,973号明細書;2013年8月5日に出願された同第61/862,468号明細書および同第61/862,355号明細書;2013年8月28日に出願された同第61/871,301号明細書;2013年9月25日に出願された同第61/960,777号明細書ならびに2013年10月28日に出願された同第61/961,980号明細書も参照される。
【0002】
上記の出願、ならびにそれらの出願においてまたはそれらの審査中に引用される全ての文献(「出願引用文献」)およびその出願引用文献において引用または参照される全ての文献、ならびに本明細書において引用または参照される全ての文献(「本明細書引用文献」)、および本明細書引用文献において引用または参照される全ての文献は、本明細書においてまたは本明細書に参照により組み込まれる任意の文献において挙げられる任意の製品に関する任意の製造業者の指示書、説明書、製品仕様書、および製品シートと一緒に、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において用いることができる。より具体的には、全ての参照文献は、それぞれの個々の文献が個別具体的に参照により組み込まれることが示されるような程度で参照により組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般に、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)(CRISPR)およびその成分に関する配列ターゲティング、例えば、ゲノム摂動または遺伝子編集を含む遺伝子発現の制御に使用される系、方法および組成物の送達、エンジニアリング、最適化および治療適用に関する。
【0004】
連邦政府により資金提供された研究に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により助成されたNIHパイオニアアワード(1DP1MH100706)のもと政府支援によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
ゲノムシーケンシング技術および分析法の近年の進歩により、多様な範囲の生物学的機能および疾患に関連する遺伝因子を分類およびマッピングする技能が顕著に加速されている。正確なゲノムターゲティング技術は、個々の遺伝子エレメントの選択的摂動を可能とすることにより因果的遺伝子変異の体系的なリバースエンジニアリングを可能とするため、ならびに合成生物学、バイオテクノロジーおよび医薬用途を進歩させるために必要とされる。ゲノム編集技術、例えば、デザイナー亜鉛フィンガー、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)、またはホーミングメガヌクレアーゼがターゲティングされるゲノム摂動の産生に利用可能であるが、安価で、設定が容易で、スケーラブルで、真核ゲノム内の複数位置をターゲティングしやすい新たなゲノムエンジニアリング技術が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第97/03211号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CRISPR-Cas系は特異的配列をターゲティングするためにカスタム化タンパク質の生成を要求しないが、単一Cas酵素を短鎖RNA分子によりプログラミングして特異的DNA標的を認識させることができる。ゲノムシーケンシング技術および分析法のレパートリーへのCRISPR-Cas系の付加により方法論が顕著に簡易化され、多様な範囲の生物学的機能および疾患に関連する遺伝因子を分類およびマッピングする技能が加速される。有害効果を有さずにゲノム編集にCRISPR-Cas系を有効に利用するため、特許請求される本発明の態様であるそれらのゲノムエンジニアリングツールのエンジニアリング、最適化および細胞型/組織/臓器特異的送達の態様を理解することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幅広い適用性を有する核酸配列(nucleic sequence)ターゲティングのための代替的かつロバストな系および技術が差し迫って必要とされている。本発明の態様はこの必要性に応え、かつ関連する利点をもたらす。例示的なCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体形成するCRISPR酵素を含む。ガイド配列はtracrメイト配列に結合し、次にはtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズする。
【0009】
一態様において、本発明は、CRISPR-Cas系の1つ以上のエレメントの使用方法を提供する。本発明のCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチドを改変する有効な手段を提供する。本発明のCRISPR複合体は、種々の組織および臓器における多種多様な細胞型の標的ポリヌクレオチドを改変(例えば、欠失、挿入、転座、不活性化、活性化)することを含め、幅広い有用性を有する。そのため本発明のCRISPR複合体は、例えば、遺伝子またはゲノム編集、遺伝子治療、創薬、薬物スクリーニング、疾患診断、および予後における広範な適用性を有する。
【0010】
本発明の態様は、野生型Cas9酵素より長さが短い、最適活性のガイドRNAを有するCRISPR-Cas9系におけるターゲティング特異性が向上したCas9酵素およびそれをコードする核酸分子、およびキメラCas9酵素、ならびにCas9酵素の標的特異性を向上させる方法またはCRISPR-Cas9系を設計する方法であって、最適活性を有するガイドRNAを設計または調製しおよび/または野生型Cas9よりサイズが小さいまたは長さが短いCas9酵素を選択または調製すること(これにより、それをコードする核酸の送達ベクターへのパッケージングが、野生型Cas9と比べて送達ベクターにおけるそのコーディングが少ないためより前進する)、および/またはキメラCas9酵素を生成することを含む方法に関する。
【0011】
また、医薬における本配列、ベクター、酵素または系の使用も提供される。また、遺伝子またはゲノム編集におけるその使用も提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様において、Cas9酵素は1つ以上の突然変異を含んでもよく、機能ドメインとの融合を伴うまたは伴わない汎用DNA結合タンパク質として用いられ得る。突然変異は人為的に導入された突然変異であってもよく、または機能獲得型もしくは機能喪失型突然変異であってもよい。突然変異としては、限定はされないが、それぞれRuvCおよびHNH触媒ドメインにある触媒ドメイン(D10およびH840)の一方の突然変異を挙げることができる。さらなる突然変異が特徴付けられている。本発明の一態様では、転写活性化ドメインはVP64であり得る。本発明の他の態様では、転写リプレッサードメインはKRABまたはSID4Xであり得る。本発明の他の態様は、限定はされないが、転写アクチベーター、リプレッサー、リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、ヒストンリモデラー、デメチラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、クリプトクロム、光誘導性/制御性ドメインまたは化学誘導性/制御性ドメインを含むドメインに融合した変異Cas9酵素に関する。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、突然変異体tracrRNAおよび細胞中におけるこれらのRNAのパフォーマンスを増強させるダイレクトリピート配列または突然変異体キメラガイド配列を作成する方法を提供する。本発明の態様はまた、前記配列の選択も提供する。
【0014】
本発明の態様はまた、CRISPR複合体の成分のクローニングおよび送達を単純化する方法も提供する。本発明の好ましい実施形態では、好適なプロモーター、例えばU6プロモーターがDNAオリゴと共に増幅され、ガイドRNAに付加される。次に得られたPCR産物を細胞に形質移入することにより、ガイドRNAの発現がドライブされ得る。本発明の態様はまた、インビトロで転写されるか、または合成会社に発注して直接形質移入されるガイドRNAにも関する。
【0015】
一態様において、本発明は、より高活性のポリメラーゼを使用することにより活性を向上させる方法を提供する。好ましい実施形態において、T7プロモーターの制御下にあるガイドRNAの発現は、細胞中のT7ポリメラーゼの発現によってドライブされる。有利な実施形態において、細胞は真核細胞である。好ましい実施形態において真核細胞はヒト細胞である。より好ましい実施形態においてヒト細胞は患者特異的細胞である。
【0016】
一態様において、本発明は、Cas酵素の毒性を低下させる方法を提供する。特定の態様において、Cas酵素は、本明細書に記載されるとおりの任意のCas9、例えば任意の天然に存在する細菌性Cas9ならびに任意のキメラ、突然変異体、ホモログまたはオルソログである。好ましい実施形態において、Cas9はmRNAの形態で細胞に送達される。これにより酵素の一過性発現が可能となり、それにより毒性が低下する。別の好ましい実施形態において、本発明はまた、誘導性プロモーターの制御下でCas9を発現させる方法、およびそこで使用される構築物も提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、CRISPR-Cas系のインビボ適用を改良する方法を提供する。好ましい実施形態において、Cas酵素は野生型Cas9か、または任意の天然に存在する細菌性Cas9ならびに任意のキメラ、突然変異体、ホモログもしくはオルソログを含む本明細書に記載される改変型のうちのいずれかである。本発明の有利な態様は、送達用ウイルスベクターへのパッケージングが容易なCas9ホモログの選択を提供する。Cas9オルソログは、典型的には3~4個のRuvCドメインおよびHNHドメインの一般的構成を共有する。最も5’側のRuvCドメインが非相補鎖を開裂し、HNHドメインが相補鎖を開裂する。表記は全てガイド配列を参照する。
【0018】
5’RuvCドメインの触媒残基は、目的のCas9を他のCas9オルソログ(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)II型CRISPR遺伝子座、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR遺伝子座1、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR遺伝子座3、およびフランシセラ・ノビシダ(Franciscillanovicida)II型CRISPR遺伝子座由来)と相同性比較することによって同定され、保存されたAsp残基(D10)をアラニンに突然変異させることにより、Cas9が相補鎖ニッキング酵素に変換される。同様に、HNHドメインの保存されたHisおよびAsn残基をアラニンに突然変異させることにより、Cas9が非相補鎖ニッキング酵素に変換される。一部の実施形態では、二組の突然変異を両方共作製され、Cas9が非開裂酵素に変換され得る。
【0019】
一部の実施形態では、CRISPR酵素はI型またはIII型CRISPR酵素、好ましくはII型CRISPR酵素である。このII型CRISPR酵素は任意のCas酵素であってよい。好ましいCas酵素は、II型CRISPR系の複数のヌクレアーゼドメインを有する最大のヌクレアーゼと相同性を共有する一般的な酵素クラスを指し得るとおりCas9と同定され得る。最も好ましくは、Cas9酵素はspCas9またはsaCas9由来であり、またはそれから誘導される。誘導されるとは、本出願人らは、その誘導された酵素が野生型酵素と高度な配列相同性を有するという意味では主に野生型酵素をベースとするが、しかしそれは本明細書に記載されるとおり何らかの形で突然変異している(改変されている)ものであることを意味する。
【0020】
用語CasおよびCRISPR酵素は、特に明らかでない限り、本明細書では概して同義的に使用されることが理解されるであろう。上述のとおり、本明細書で使用される残基の付番の多くは化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のII型CRISPR遺伝子座由来のCas9酵素を参照する。しかしながら、本発明がSpCas9、SaCas9、St1Cas9などの他の微生物種由来のさらに多くのCas9を含むことは理解されるであろう。さらなる例が本明細書に提供される。当業者は、関連性のあるアミノ酸配列の比較により、SpCas9以外のCas9酵素における適切な対応する残基を決定することができるであろう。従って、SpCas9付番を使用して特定のアミノ酸置換が参照される場合に、それが他のCas9酵素を参照しないよう意図するものであることが文脈上明らかになる場合を除き、本開示は、他のCas9酵素における対応する改変を包含するよう意図される。
【0021】
この場合にはヒトに最適化された(すなわちヒトでの発現に最適化されている)コドン最適化配列の例が本明細書に提供される(SaCas9ヒトコドン最適化配列を参照のこと)。これが好ましいが、他の例が可能であることが理解されるであろうとともに、宿主種に対するコドン最適化は公知である。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明は、キメラCas9タンパク質を作成することによりCas9の機能を増強する方法を提供する。キメラCas9タンパク質であるキメラCas9は、2つ以上の天然に存在するCas9由来の断片を含有する新規Cas9であってもよい。これらの方法は、あるCas9ホモログのN末端断片を別のCas9ホモログのC末端断片と融合することを含み得る。これらの方法はまた、キメラCas9タンパク質が示す新規特性の選択も可能にする。
【0023】
本方法において、生物が動物または植物である場合、改変はエキソビボまたはインビトロ、例えば細胞培養物で、場合によってはインビボではなく行われ得ることは理解されるであろう。他の実施形態では、改変はインビボで行われ得る。
【0024】
一態様において、本発明は、
A)-I.CRISPR-Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列であって、
(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、
(b)tracrメイト配列、および
(c)tracr配列
を含むポリヌクレオチド配列、および
II.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含むCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列
[(a)、(b)および(c)は、5’から3’配向で配置されており、
転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、および
CRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、かつCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAである]、
または
(B)I.ポリヌクレオチドであって、
(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、および
(b)少なくとも1つ以上のtracrメイト配列
を含むポリヌクレオチド、
II.CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、および
III.tracr配列を含むポリヌクレオチド配列
[転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、および
CRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、およびCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAである]
を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達することを含む目的ゲノム遺伝子座における標的配列の操作により生物または非ヒト生物を改変する方法を提供する。
【0025】
CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、ガイド配列、tracrメイト配列またはtracr配列の一部または全部がRNAであってもよい。CRISPR酵素をコードする配列、ガイド配列、tracrメイト配列またはtracr配列をコードするポリヌクレオチドはRNAであってもよく、リポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃によって送達されてもよい。
【0026】
RNAであり、かつtracrメイト配列などの特徴を「含む」と言われるポリヌクレオチドが参照される場合、RNA配列がその特徴を含むことは理解されるであろう。ポリヌクレオチドがDNAであり、かつtracrメイト配列などの特徴を含むと言われる場合、DNA配列は、問題となるその特徴を含むRNAに転写されまたは転写されることができる。特徴がCRISPR酵素などのタンパク質である場合、参照されるDNAまたはRNA配列は(DNAの場合には初めに転写されてから)翻訳され、または翻訳されることができる。
【0027】
従って、特定の実施形態では本発明は、組成物を発現させるためその組成物を作動可能にコードする1つ以上のウイルスまたはプラスミドベクターを含むウイルスまたはプラスミドベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達することを含む目的ゲノム遺伝子座における標的配列の操作により、ヒトを含む生物、例えば哺乳動物または非ヒト哺乳動物もしくは生物を改変する方法を提供し、ここで組成物は以下を含む:(A)I.CRISPR-Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列であって、(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、(b)tracrメイト配列、および(c)tracr配列を含むポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している第1の調節エレメント、およびII.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含む(または場合により一部の実施形態のとおり少なくとも1つ以上の核局在化配列がNLSを含まなくてもよい)CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第2の調節エレメント[(a)、(b)および(c)は、5’から3’配向で配置されており、成分IおよびIIは、系の同じまたは異なるベクター上にあり、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、およびCRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物、または(B)I.(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、および(b)少なくとも1つ以上のtracrメイト配列に作動可能に結合している第1の調節エレメント、II.CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第2の調節エレメント、およびIII.tracr配列に作動可能に結合している第3の調節エレメント[成分I、IIおよびIIIは系の同じまたは異なるベクター上にあり、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、およびCRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物。一部の実施形態では、成分I、IIおよびIIIは同じベクター上にある。他の実施形態では、成分IおよびIIが同じベクター上にあり、一方で成分IIIが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分IおよびIIIが同じベクター上にあり、一方で成分IIが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分IIおよびIIIが同じベクター上にあり、一方で成分Iが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分I、IIおよびIIIの各々が異なるベクター上にある。本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのウイルスまたはプラスミドベクター系も提供する。
【0028】
好ましくは、ベクターはレンチウイルスまたはバキュロウイルスまたは好ましくはアデノウイルス/アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターであるが、他の送達手段が公知であり(酵母系、微小胞、遺伝子銃/ベクターを金ナノ粒子と結合させる手段など)、および提供される。一部の実施形態では、ウイルスまたはプラスミドベクターの1つ以上がリポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃によって送達され得る。
【0029】
標的配列の操作とは、本出願人らは標的配列の後成的操作も意味する。これは、標的配列のメチル化状態の改変(すなわちメチル化またはメチル化パターンまたはCpG島の付加または除去)、ヒストン改変、標的配列への接触可能性の増加または低減によるか、または三次元折り畳みの促進などによる、標的配列のクロマチン状態の操作であってもよい。
【0030】
目的ゲノム遺伝子座における標的配列の操作によりヒトを含む生物もしくは哺乳動物または非ヒト哺乳動物もしくは生物を改変する方法が参照される場合、これは生物(または哺乳動物)に全体として適用されても、または(その生物が多細胞生物である場合)当該の生物由来の単一細胞もしくは細胞集団だけに適用されてもよいことは理解されるであろう。例えばヒトの場合、本出願人らは特に単一細胞または細胞集団を想定し、それらは好ましくはエキソビボで改変されて、次に再び導入され得る。この場合、生検または他の組織試料もしくは生体液試料が必要となり得る。これに関して幹細胞もまた特に好ましい。しかし、当然ながらインビボ実施形態もまた想定される。
【0031】
特定の実施形態では本発明は、目的ゲノム遺伝子座中の標的配列の異常により引き起こされる病態を治療または阻害が必要とされる対象(例えば哺乳動物またはヒト)または非ヒト対象(例えば哺乳動物)における目的ゲノム遺伝子座中の標的配列の異常により引き起こされる病態を治療または阻害する方法を提供し、この方法は、標的配列を操作することにより対象または非ヒト対象を改変することを含み、ここで病態は、組成物を発現させるためその組成物を作動可能にコードする1つ以上のAAVまたはレンチウイルスベクターを含むAAVまたはレンチウイルスベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達することを含む治療を提供することを含む標的配列の操作による治療または阻害に感受性があり、標的配列は発現時の組成物により操作され、組成物は以下を含む:(A)I.CRISPR-Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列であって、(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、(b)tracrメイト配列、および(c)tracr配列を含むポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している第1の調節エレメント、およびII.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含む(または場合により一部の実施形態のとおり少なくとも1つ以上の核局在化配列がNLSを含まなくてもよい)CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第2の調節エレメント[(a)、(b)および(c)は、5’から3’配向で配置されており、成分IおよびIIは、系の同じまたは異なるベクター上にあり、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、およびCRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物、または(B)I.(a)真核細胞中の標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、および(b)少なくとも1つ以上のtracrメイト配列に作動可能に結合している第1の調節エレメント、II.CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第2の調節エレメント、およびIII.tracr配列に作動可能に結合している第3の調節エレメント[成分I、IIおよびIIIは系の同じまたは異なるベクター上にあり、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、およびCRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物。一部の実施形態では、成分I、IIおよびIIIは同じベクター上にある。他の実施形態では、成分IおよびIIが同じベクター上にあり、一方で成分IIIが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分IおよびIIIが同じベクター上にあり、一方で成分IIが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分IIおよびIIIが同じベクター上にあり、一方で成分Iが別のベクター上にある。他の実施形態では、成分I、IIおよびIIIの各々が異なるベクター上にある。本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのウイルス(例えばAAVまたはレンチウイルス)ベクター系も提供し、および本明細書に記載されるとおりのベクター系の一部であり得る。
【0032】
本発明の一部の方法は、発現を誘導することを含み得る。本発明の一部の方法において生物または対象は真核生物(ヒトを含めた哺乳動物を含む)または非ヒト真核生物または非ヒト動物または非ヒト哺乳動物である。一部の実施形態では、生物または対象は非ヒト動物であり、節足動物、例えば昆虫であってもよく、または線虫であってもよい。本発明の一部の方法において生物または対象は植物である。本発明の一部の方法において生物または対象は哺乳動物または非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物は、例えばげっ歯類(好ましくはマウスまたはラット)、有蹄類、または霊長類であってもよい。本発明の一部の方法において生物または対象は微細藻類を含む藻類であり、または真菌類である。本発明の一部の方法においてウイルスベクターはAAVまたはレンチウイルスであり、本明細書に記載されるとおりのベクター系の一部であり得る。本発明の一部の方法においてCRISPR酵素はCas9である。本発明の一部の方法においてガイド配列の発現はT7プロモーターの制御下にあり、T7ポリメラーゼの発現によってドライブされる。
【0033】
一部の実施形態における本発明は、CRISPR酵素を送達する方法を包含し、この方法は、CRISPR酵素をコードするmRNAを細胞に送達することを含む。これらの方法の一部においてCRISPR酵素はCas9である。
【0034】
本発明はまた、本発明のベクター系、詳細には本明細書に記載されるとおりのウイルスベクター系を調製する方法も提供する。一部の実施形態における本発明は、本発明のAAVを調製する方法を包含し、この方法は、AAVをコードする1つまたは複数の核酸分子を含有するまたはそれから本質的になる1つまたは複数のプラスミドをAAV感染細胞に形質移入すること、およびAAVの複製およびパッケージングに必須のAAVrepおよび/またはcapを供給することを含む。一部の実施形態では、AAVの複製およびパッケージングに必須のAAVrepおよび/またはcapは、細胞に1つまたは複数のヘルパープラスミドまたは1つまたは複数のヘルパーウイルスを形質移入することにより供給される。一部の実施形態ではヘルパーウイルスはポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態ではポックスウイルスはワクシニアウイルスである。一部の実施形態では細胞は哺乳類細胞である。および一部の実施形態では細胞は昆虫細胞であり、ヘルパーウイルスはバキュロウイルスである。他の実施形態では、ウイルスはレンチウイルスである。
【0035】
植物では、病原体は多くの場合に宿主特異的である。例えば、フザリウム・オキシスポラム・f・エスピー・リコペルシシ(Fusariumoxysporum f.sp.lycopersici)はトマト萎凋病を引き起こすが、攻撃するのはトマトのみであり、F.オキシスポラム・f・ジアンチ(F.oxysporumf.dianthii) プクシニア・グラミニス・f・エスピー・トリチシ(Pucciniagraminis f.sp.tritici)はコムギのみを攻撃する。植物は既存のおよび誘導される防御を有して多くの病原体に抵抗する。特に病原体が植物より高い頻度で複製することに伴い、植物世代間での突然変異および組換えイベントが、感受性を生じさせる遺伝的変異性をもたらす。植物には非宿主抵抗性が存在することもあり、例えばその宿主と病原体とが適合しない。また、水平抵抗性、例えば、典型的には多くの遺伝子によって制御される、あらゆる病原体系統に対する部分抵抗性、および垂直抵抗性、例えば、典型的には数個の遺伝子によって制御される、他の系統に対しては存在しない、一部の病原体系統に対する完全抵抗性も存在し得る。遺伝子対遺伝子レベルでは、植物と病原体とは共に進化し、一方の遺伝的変化が他方の変化と均衡する。従って、育種家は自然変異性を用いて、収穫量、品質、均一性、耐寒性、抵抗性に関して最も有用な遺伝子をかけ合わせる。抵抗性遺伝子の供給源には、天然または外来品種、在来品種、野生植物の近縁種、および誘発突然変異(例えば突然変異誘発物質による植物材料の処理)が含まれる。本発明を用いることで、突然変異を誘発する新規の手段が植物育種家に提供される。従って、当業者は、抵抗性遺伝子の供給源のゲノムを分析し、かつ所望の特性または形質を有する品種において本発明を用いることにより、これまでの突然変異誘発物質より高い精度で抵抗性遺伝子の産生を誘発し、ひいては植物育種プログラムを加速させおよび改善することができる。
【0036】
本発明は、医薬または治療において使用される本発明の組成物またはそのCRISPR酵素(それに加えてまたは代えてCRISPR酵素をコードするmRNA)をさらに包含する。一部の実施形態では本発明は、本発明に係る方法において使用される本発明に係る組成物またはそのCRISPR酵素(それに加えてまたは代えてCRISPR酵素をコードするmRNA)を包含する。一部の実施形態では本発明は、エキソビボ遺伝子またはゲノム編集における本発明の組成物またはそのCRISPR酵素(それに加えてまたは代えてCRISPR酵素をコードするmRNA)の使用を提供する。特定の実施形態では本発明は、エキソビボ遺伝子またはゲノム編集用医薬の製造におけるまたは本発明に係る方法において使用される本発明の組成物またはそのCRISPR酵素(それに加えてまたは代えてCRISPR酵素をコードするmRNA)の使用を包含する。本発明は、一部の実施形態では、特にCas9が化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9である(またはそれに由来する)場合に、5’-モチーフを含むPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列が標的配列の3’末端に隣接する本発明の組成物またはそのCRISPR酵素(それに加えてまたは代えてCRISPR酵素をコードするmRNA)を包含する。例えば、好適なPAMは、以下に記載するとおり、それぞれSpCas9またはSaCas9酵素(または誘導酵素)に対する5’-NRGまたは5’-NNGRR(式中Nは任意のヌクレオチドである)である。
【0037】
SpCas9またはSaCas9は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9由来のものであるか、またはそれから誘導されるものであることは理解されるであろう。
【0038】
本発明の態様(apects)は、CRISPR酵素、例えばCas9が媒介する遺伝子ターゲティングの特異性を改善すること、およびCRISPR酵素、例えばCas9によるオフターゲット改変の可能性を低減することを包含する。一部の実施形態における本発明は、以下を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達することを含む細胞の目的ゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1および第2の標的配列の操作によってオフターゲット改変を最小限に抑えることにより生物または非ヒト生物を改変する方法を包含する:
I.第1のCRISPR-Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列、この第1のポリヌクレオチド配列は以下を含む:
(a)第1の標的配列にハイブリダイズし得る第1のガイド配列、
(b)第1のtracrメイト配列、および
(c)第1のtracr配列、
II.第2のCRISPR-Cas系chiRNAポリヌクレオチド配列、この第2のポリヌクレオチド配列は以下を含む:
(a)第2の標的配列にハイブリダイズし得る第2のガイド配列、
(b)第2のtracrメイト配列、および
(c)第2のtracr配列、および
III.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含み、かつ1つ以上の突然変異を含むCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、ここで(a)、(b)および(c)は、5’から3’配向で配置されており、転写されると第1および第2のtracrメイト配列がそれぞれ第1および第2のtracr配列にハイブリダイズし、かつ第1および第2のガイド配列がそれぞれ第1および第2の標的配列への第1および第2のCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、第1のCRISPR複合体が、(1)第1の標的配列にハイブリダイズする第1のガイド配列、および(2)第1のtracr配列にハイブリダイズする第1のtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、第2のCRISPR複合体が、(1)第2の標的配列にハイブリダイズする第2のガイド配列、および(2)第2のtracr配列にハイブリダイズする第2のtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAであり、および第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の開裂を指向し、かつ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の開裂を指向して二本鎖切断を誘導し、従ってオフターゲット改変を最小限に抑えることにより生物または非ヒト生物を改変する。
【0039】
本発明の一部の方法において、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、第1および第2のガイド配列、第1および第2のtracrメイト配列または第1および第2のtracr配列の一部または全部がRNAである。本発明のさらなる実施形態において、CRISPR酵素をコードする配列、第1および第2のガイド配列、第1および第2のtracrメイト配列または第1および第2のtracr配列をコードするポリヌクレオチドはRNAであり、リポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃によって送達される。本発明の特定の実施形態では、第1および第2のtracrメイト配列は100%の同一性を共有し、および/または第1および第2のtracr配列は100%の同一性を共有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上のベクターを含むベクター系中に含まれ得る。本発明の好ましい実施形態においてCRISPR酵素はCas9酵素、例えばSpCas9である。本発明の態様においてCRISPR酵素は触媒ドメインに1つ以上の突然変異を含み、この1つ以上の突然変異は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AおよびD986Aからなる群から選択される。極めて好ましい実施形態においてCRISPR酵素はD10A突然変異を有する。好ましい実施形態において、第1のCRISPR酵素は、その酵素が相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有し、第2のCRISPR酵素は、その酵素が非相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有する。あるいは、第1の酵素が非相補鎖ニッキング酵素であってもよく、および第2の酵素が相補鎖ニッキング酵素であってもよい。
【0040】
本発明の好ましい方法において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の開裂を指向し、かつ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の開裂を指向することにより、5’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、またはより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対またはより好ましくは34~50塩基対である。
【0041】
一部の実施形態における本発明は、以下を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達することを含む細胞の目的ゲノム遺伝子座におけるDNA二重鎖の逆鎖上にある第1および第2の標的配列の操作によってオフターゲット改変を最小限に抑えることにより生物または非ヒト生物を改変する方法を包含する
I.以下に作動可能に結合している第1の調節エレメント
(a)第1の標的配列にハイブリダイズし得る第1のガイド配列、および
(b)少なくとも1つ以上のtracrメイト配列、
II.以下に作動可能に結合している第2の調節エレメント
(a)第2の標的配列にハイブリダイズし得る第2のガイド配列、および
(b)少なくとも1つ以上のtracrメイト配列、
III.CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第3の調節エレメント、および
IV.tracr配列に作動可能に結合している第4の調節エレメント、
ここで成分I、II、IIIおよびIVは系の同じまたは異なるベクター上にあり、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、第1および第2のガイド配列がそれぞれ第1および第2の標的配列への第1および第2のCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、第1のCRISPR複合体は、(1)第1の標的配列にハイブリダイズする第1のガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、第2のCRISPR複合体は、(1)第2の標的配列にハイブリダイズする第2のガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、CRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列がDNAまたはRNAであり、および第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の開裂を指向し、かつ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の開裂を指向して二本鎖切断を誘導し、従ってオフターゲット改変を最小限に抑えることにより生物または非ヒト生物を改変する。
【0042】
本発明はまた、本明細書に記載されるとおりのベクター系も提供する。本系は、1つ、2つ、3つまたは4つの異なるベクターを含み得る。従って成分I、II、IIIおよびIVは1つ、2つ、3つまたは4つの異なるベクター上にあってもよく、成分の可能な位置のあらゆる組み合わせが本明細書において想定され、例えば:成分I、II、IIIおよびIVが同じベクター上にあってもよく;成分I、II、IIIおよびIVが各々異なるベクター上にあってもよく;成分I、II、IIIおよびIVが全部で2つまたは3つの異なるベクター上にあってもよく、位置のあらゆる組み合わせが想定される等する。
【0043】
本発明の一部の方法においてCRISPR酵素をコードするポリヌクレオチド配列、第1および第2のガイド配列、第1および第2のtracrメイト配列または第1および第2のtracr配列の一部または全部がRNAである。本発明のさらなる実施形態において第1および第2のtracrメイト配列は100%の同一性を共有し、および/または第1および第2のtracr配列は100%の同一性を共有する。本発明の好ましい実施形態においてCRISPR酵素はCas9酵素、例えばSpCas9である。本発明の態様においてCRISPR酵素は触媒ドメインに1つ以上の突然変異を含み、この1つ以上の突然変異は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AおよびD986Aからなる群から選択される。極めて好ましい実施形態においてCRISPR酵素はD10A突然変異を有する。好ましい実施形態において、第1のCRISPR酵素は、その酵素が相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有し、第2のCRISPR酵素は、その酵素が非相補鎖ニッキング酵素となるような1つ以上の突然変異を有する。あるいは第1の酵素が非相補鎖ニッキング酵素であってもよく、および第2の酵素が相補鎖ニッキング酵素であってもよい。本発明のさらなる実施形態において、ウイルスベクターの1つ以上はリポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃によって送達される。
【0044】
本発明の好ましい方法において、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の開裂を指向し、かつ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の開裂を指向することにより、5’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、またはより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対またはより好ましくは34~50塩基対である。
【0045】
一部の実施形態における本発明は、目的の遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子を含有してそれを発現する細胞に、1つ以上の突然変異を有するCasタンパク質と、DNA分子のそれぞれ第1の鎖および第2の鎖を標的にする2つのガイドRNAとを含むエンジニアリングされた天然に存在しないCRISPR-Cas系を導入することによってオフターゲット改変を最小限に抑えることにより目的ゲノム遺伝子座を改変する方法であって、それによりガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的にし、かつCasタンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖および第2の鎖の各々にニックを入れ、それにより遺伝子産物の発現が変化し;および、Casタンパク質と2つのガイドRNAとが天然で一緒に存在することはない、方法を包含する。
【0046】
本発明の好ましい方法において、Casタンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖および第2の鎖の各々にニックを入れることにより、5’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、またはより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対またはより好ましくは34~50塩基対である。
【0047】
本発明の実施形態はまた、tracrメイト配列およびtracr配列に融合したガイド配列を含むガイドRNAも包含する。本発明の態様においてCasタンパク質は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞またはヒト細胞での発現にコドンが最適化される。本発明のさらなる実施形態においてCasタンパク質はII型CRISPR-Casタンパク質、例えばCas9タンパク質である。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はCas9タンパク質、例えばSpCas9である。本発明の態様ではCasタンパク質は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AおよびD986Aからなる群から選択される1つ以上の突然変異を有する。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はD10A突然変異を有する。
【0048】
本発明の態様は、遺伝子産物の発現を低下させること、または遺伝子産物をコードするDNA分子にテンプレートポリヌクレオチドがさらに導入されること、または2つの5’オーバーハングをリアニーリングおよびライゲートさせることにより介在配列が正確に切り出されること、または遺伝子産物の活性または機能を変化させること、または遺伝子産物の発現を増加させることに関する。本発明のある実施形態において、遺伝子産物はタンパク質である。
【0049】
本発明はまた、1つ以上の突然変異を有するCasタンパク質と、細胞中の遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子のそれぞれ第1の鎖および第2の鎖を標的にする2つのガイドRNAとを含むエンジニアリングされた天然に存在しないCRISPR-Cas系であって、それによりガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的にし、かつCasタンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖および第2の鎖の各々にニックを入れ、それにより遺伝子産物の発現が変化し;および、Casタンパク質と2つのガイドRNAとが天然で一緒に存在することはない、系も包含する。
【0050】
本発明の態様ではガイドRNAは、tracrメイト配列およびtracr配列に融合したガイド配列を含み得る。本発明のある実施形態においてCasタンパク質はII型CRISPR-Casタンパク質である。本発明の態様においてCasタンパク質は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞またはヒト細胞での発現にコドンが最適化される。本発明のさらなる実施形態においてCasタンパク質はII型CRISPR-Casタンパク質、例えばCas9タンパク質である。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はCas9タンパク質、例えばSpCas9である。本発明の態様ではCasタンパク質は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AおよびD986Aからなる群から選択される1つ以上の突然変異を有する。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はD10A突然変異を有する。
【0051】
本発明の態様は、遺伝子産物の発現を低下させること、または遺伝子産物をコードするDNA分子にテンプレートポリヌクレオチドがさらに導入されること、または2つの5’オーバーハングをリアニーリングおよびライゲートさせることにより介在配列が正確に切り出されること、または遺伝子産物の活性または機能を変化させること、または遺伝子産物の発現を増加させることに関する。本発明のある実施形態において、遺伝子産物はタンパク質である。
【0052】
本発明はまた、以下を含む1つ以上のベクターを含むエンジニアリングされた天然に存在しないベクター系も包含する:
a)遺伝子産物をコードする二本鎖DNA分子のそれぞれ第1の鎖および第2の鎖を標的にする2つのCRISPR-Cas系ガイドRNAの各々に作動可能に結合している第1の調節エレメント、
b)Casタンパク質に作動可能に結合している第2の調節エレメント
ここで成分(a)および(b)は系の同じまたは異なるベクター上にあり、それによりガイドRNAが、遺伝子産物をコードするDNA分子を標的にし、かつCasタンパク質が、遺伝子産物をコードするDNA分子の第1の鎖および第2の鎖の各々にニックを入れ、それにより遺伝子産物の発現が変化し;および、Casタンパク質と2つのガイドRNAとが天然で一緒に存在することはない。
【0053】
本発明の態様ではガイドRNAは、tracrメイト配列およびtracr配列に融合したガイド配列を含み得る。本発明のある実施形態においてCasタンパク質はII型CRISPR-Casタンパク質である。本発明の態様においてCasタンパク質は、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞またはヒト細胞での発現にコドンが最適化される。本発明のさらなる実施形態においてCasタンパク質はII型CRISPR-Casタンパク質、例えばCas9タンパク質である。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はCas9タンパク質、例えばSpCas9である。本発明の態様ではCasタンパク質は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AおよびD986Aからなる群から選択される1つ以上の突然変異を有する。極めて好ましい実施形態においてCasタンパク質はD10A突然変異を有する。
【0054】
本発明の態様は、遺伝子産物の発現を低下させること、または遺伝子産物をコードするDNA分子にテンプレートポリヌクレオチドがさらに導入されること、または2つの5’オーバーハングをリアニーリングおよびライゲートさせることにより介在配列が正確に切り出されること、または遺伝子産物の活性または機能を変化させること、または遺伝子産物の発現を増加させることに関する。本発明のある実施形態において、遺伝子産物はタンパク質である。本発明の好ましい実施形態において系のベクターはウイルスベクターである。さらなる実施形態において、系のベクターはリポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、または遺伝子銃によって送達される。
【0055】
一態様において、本発明は、真核細胞中の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせ、それにより標的ポリヌクレオチドを改変することを含み、CRISPR複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズされるガイド配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、前記ガイド配列は、次いでtracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列に結合している。一部の実施形態において、前記開裂は、前記CRISPR酵素により標的配列の局在における1つまたは2つの鎖を開裂することを含む。一部の実施形態において、前記開裂は、標的遺伝子の転写の減少をもたらす。一部の実施形態において、方法は、外因性テンプレートポリヌクレオチドとの相同組換えにより前記開裂標的ポリヌクレオチドを修復することをさらに含み、前記修復は、前記標的ポリヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を含む突然変異をもたらす。一部の実施形態において、前記突然変異は、標的配列を含む遺伝子から発現されるタンパク質中の1つ以上のアミノ酸変化をもたらす。一部の実施形態において、方法は、1つ以上のベクターを前記真核細胞に送達することをさらに含み、1つ以上のベクターは、CRISPR酵素、tracrメイト配列に結合しているガイド配列、およびtracr配列の1つ以上の発現をドライブする。一部の実施形態において、前記ベクターを対象中の真核細胞中に送達する。一部の実施形態において、前記改変を、細胞培養物中の前記真核細胞中で行う。一部の実施形態において、方法は、前記改変前に前記真核細胞を対象から単離することをさらに含む。一部の実施形態において、方法は、前記真核細胞および/またはそれに由来する細胞を前記対象に戻すことをさらに含む。
【0056】
一態様において、本発明は、真核細胞中のポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、CRISPR複合体をポリヌクレオチドに結合させ、その結果、前記結合が前記ポリヌクレオチドの発現の増加または減少をもたらすことを含み;CRISPR複合体は、前記ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズされるガイド配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、前記ガイド配列は、次いでtracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列に結合している。一部の実施形態において、方法は、1つ以上のベクターを前記真核細胞に送達することをさらに含み、1つ以上のベクターは、CRISPR酵素、tracrメイト配列に結合しているガイド配列、およびtracr配列の1つ以上の発現をドライブする。
【0057】
一態様において、本発明は、突然変異疾患遺伝子を含むモデル真核細胞を生成する方法を提供する。一部の実施形態において、疾患遺伝子は、疾患を有し、または発症するリスクの増加に関連する任意の遺伝子である。一部の実施形態において、方法は、(a)1つ以上のベクターを真核細胞に導入すること(1つ以上のベクターは、CRISPR酵素、tracrメイト配列に結合しているガイド配列、およびtracr配列の1つ以上の発現をドライブする)および(b)CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記疾患遺伝子内の標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせ(CRISPR複合体は、(1)標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズされるガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズされるtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む)、それにより、突然変異疾患遺伝子を含むモデル真核細胞を生成することを含む。一部の実施形態において、前記開裂は、前記CRISPR酵素により標的配列の局在における1つまたは2つの鎖を開裂することを含む。一部の実施形態において、前記開裂は、標的遺伝子の転写の減少をもたらす。一部の実施形態において、方法は、外因性テンプレートポリヌクレオチドとの相同組換えにより前記開裂標的ポリヌクレオチドを修復することをさらに含み、前記修復は、前記標的ポリヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を含む突然変異をもたらす。一部の実施形態において、前記突然変異は、標的配列を含む遺伝子から発現されるタンパク質中の1つ以上のアミノ酸変化をもたらす。
【0058】
一態様において、本発明は、1つ以上の原核細胞中の遺伝子中の1つ以上の突然変異を導入することにより1つ以上の原核細胞を選択する方法であって、1つ以上のベクターを原核細胞中に導入すること(1つ以上のベクターは、CRISPR酵素、tracrメイト配列に結合しているガイド配列、tracr配列、および編集テンプレートの1つ以上の発現をドライブし;編集テンプレートは、CRISPR酵素開裂を停止させる1つ以上の突然変異を含む);編集テンプレートと、選択すべき細胞中の標的ポリヌクレオチドとを相同組換えさせること;CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記遺伝子内の標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせ(CRISPR複合体は、(1)標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズされるガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズされるtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含み、標的ポリヌクレオチドへのCRISPR複合体の結合は、細胞死を誘導する)、それにより、1つ以上の突然変異が導入された1つ以上の原核細胞の選択を可能とすることを含む方法を提供する。好ましい実施形態において、CRISPR酵素は、Cas9である。本発明の別の態様において、選択すべき細胞は、真核細胞であり得る。本発明の態様により、選択マーカーもカウンターセレクション系を含み得る2ステッププロセスも要求しない規定の細胞の選択が可能となる。
【0059】
一態様において、本発明は、真核細胞における標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせ、それにより標的ポリヌクレオチドを改変することを含み、ここでCRISPR複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体形成するCRISPR酵素を含み、前記ガイド配列がtracrメイト配列に結合し、次にはtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズする。
【0060】
他の実施形態では、本発明は、真核細胞におけるポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。本方法は、そのポリヌクレオチドに結合するCRISPR複合体を使用して標的ポリヌクレオチドの発現を増加または低下させることを含む。
【0061】
望ましい場合、細胞における発現の改変を達成するため、tracr配列、tracrメイト配列に連結したガイド配列、CRISPR酵素をコードする配列を含む1つ以上のベクターが細胞に送達される。一部の方法では、1つ以上のベクターは、核局在化配列を含む前記CRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している調節エレメント;およびtracrメイト配列に作動可能に結合している調節エレメントおよびtracrメイト配列の上流にガイド配列を挿入するための1つ以上の挿入部位を含む。ガイド配列は発現すると、細胞中の標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向する。典型的には、CRISPR複合体は、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む。
【0062】
一部の方法では、細胞における発現の改変を達成するため標的ポリヌクレオチドが不活性化され得る。例えば、細胞中の標的配列にCRISPR複合体が結合したとき、配列が転写されないか、コードされたタンパク質が産生されないか、または野生型配列が機能するとおりには配列が機能しないように標的ポリヌクレオチドが不活性化される。例えば、タンパク質が産生されないようにタンパク質またはマイクロRNAコード配列が不活性化され得る。
【0063】
特定の実施形態では、CRISPR酵素は、D10A、E762A、H840A、N854A、N863AまたはD986Aからなる群から選択される1つ以上の突然変異を含み、および/または1つ以上の突然変異はCRISPR酵素のRuvC1またはHNHドメインにあるか、または本明細書において考察されるとおりの他の形の突然変異である。一部の実施形態では、CRISPR酵素は触媒ドメインに1つ以上の突然変異を有し、転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、およびこの酵素は機能ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、機能ドメインは転写活性化ドメイン、好ましくはVP64である。一部の実施形態では、機能ドメインは転写抑制ドメイン、好ましくはKRABである。一部の実施形態では、転写抑制ドメインはSID、またはSIDのコンカテマー(例えばSID4X)である。一部の実施形態では、機能ドメインは後成的改変ドメインであり、従って後成的改変酵素が提供される。一部の実施形態では、機能ドメインは活性化ドメインであり、これはP65活性化ドメインであってもよい。
【0064】
一部の実施形態では、CRISPR酵素はI型またはIII型CRISPR酵素であり、しかし好ましくはII型CRISPR酵素である。このII型CRISPR酵素は任意のCas酵素であってよい。Cas酵素は、II型CRISPR系の複数のヌクレアーゼドメインを有する最大のヌクレアーゼと相同性を共有する一般的な酵素クラスを指し得るとおりCas9と同定され得る。最も好ましくは、Cas9酵素はspCas9またはsaCas9由来であり、またはそれから誘導される。誘導されるとは、本出願人らは、その誘導された酵素が野生型酵素と高度な配列相同性を有するという意味では主に野生型酵素をベースとするが、しかしそれは本明細書に記載されるとおり何らかの形で突然変異している(改変されている)ものであることを意味する。
【0065】
用語CasおよびCRISPR酵素は、特に明らかでない限り、本明細書では概して同義的に使用されることが理解されるであろう。上述のとおり、本明細書で使用される残基の付番の多くは化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)のII型CRISPR遺伝子座由来のCas9酵素を参照する。しかしながら、この発明が、SpCas9、SaCa9、St1Cas9など、他の微生物種由来のさらに多くのCas9を含むことは理解されるであろう。
【0066】
この場合にはヒトに最適化された(すなわちヒトでの発現に最適化されている)コドン最適化配列の例が本明細書に提供される(SaCas9ヒトコドン最適化配列を参照のこと)。これが好ましいが、他の例が可能であることが理解されるであろうとともに、宿主種に対するコドン最適化は公知である。
【0067】
好ましくは、送達はベクターの形態であり、ベクターはレンチウイルスまたはバキュロウイルスまたは好ましくはアデノウイルス/アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターであってもよいが、他の送達手段が公知であり(酵母系、微小胞、遺伝子銃/ベクターを金ナノ粒子と結合させる手段など)、および提供される。ベクターは、ウイルス系または酵母系(例えば、ここでは目的の核酸がプロモーターに作動可能に連結されかつその制御下に(発現の点で、最終的にプロセシングされたRNAを提供するなどのため)あり得る)を意味するのみならず、また宿主細胞への核酸の直接送達も意味する。本明細書における方法では、ベクターはウイルスベクターであってもよく、これは有利にはAAVであるが、レンチウイルスなど、本明細書で考察するとおりの他のウイルスベクターが用いられてもよい。例えば、昆虫細胞での発現にバキュロウイルスを用いることができる。これらの昆虫細胞は、次には本発明の送達に適しているAAVまたはレンチウイルスベクターなど、さらなるベクターを多量に産生するのに有用となり得る。また、CRISPR酵素をコードするmRNAを細胞に送達することを含む本CRISPR酵素の送達方法も想定される。特定の実施形態ではCRISPR酵素はトランケートされ、および/または1000個未満のアミノ酸もしくは4000個未満のアミノ酸を含み、および/またはヌクレアーゼまたはニッカーゼであり、および/またはコドンが最適化され、および/または1つ以上の突然変異を含み、および/またはキメラCRISPR酵素を含み、および/または本明細書で考察するとおりの他の任意選択要素を含むことは理解されるであろう。AAVおよびレンチウイルスベクターが好ましい。
【0068】
特定の実施形態では、CRISPR酵素、典型的にはCasおよび詳細にはCas9に好適なPAMが標的配列の3’末端に隣接しまたは後続する。
【0069】
例えば、好適なPAMは、それぞれSpCas9またはSaCas9酵素(または誘導酵素)に対する5’-NRGまたは5’-NNGRRである。
【0070】
SpCas9またはSaCas9は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)または黄色ブドウ球菌(S.aureus)Cas9由来のものであるかまたはそれから誘導されるものであることは理解されるであろう。
【0071】
従って、本出願人らが権利を留保し、かつ本明細書によって任意の以前に公知の産物、プロセス、または方法のディスクレーマー(disclaimer)を開示するようなこれまでに公知のいかなる産物、その産物の作製プロセス、またはその産物の使用方法も本発明の範囲内に包含しないことが、本発明の目的である。さらに、本発明は、本出願人らが権利を留保し、かつ本明細書によって任意の以前記載された産物、その産物の作製プロセス、またはその産物の使用方法のディスクレーマー(disclaimer)を開示するような、米国特許商標庁(USPTO)(米国特許法第112条第一段落)または欧州特許庁(EPO)(EPC第83条)の明細書の記載および実施可能要件を満たさないいかなる産物、その産物の作製プロセス、またはその産物の使用方法も本発明の範囲内に包含しないものと意図されることが注記される。
【0072】
本開示および特に特許請求の範囲および/または段落において、「含む(comprises)」、「含んだ(comprised)」、「含む(comprising)」などのような用語は、米国特許法に帰属する意味を有し得;例えば、それらは、「含む(includes)」、「含んだ(included)」、「含む(including)」などを意味し得;「本質的に~からなる(consistingessentially of)」および「本質的に~からなる(consistsessentially of)」のような用語は、米国特許法に帰属する意味を有し、例えば、それらは、明示的に記述されない構成要素を許容するが、先行技術に見出され、または本発明の基本もしくは新規特徴に影響する構成要素を排除することが留意される。これらのおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明により開示され、またはそれから明らかであり、それにより包含される。
【0073】
本発明の新規特徴を、特に添付の特許請求の範囲を用いて記載する。
【0074】
本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される説明的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および付属の図面を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】CRISPR系の模式的モデルを示す。化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)からのCas9ヌクレアーゼ(黄色)を、20ntガイド配列(青色)および足場(赤色)からなる合成ガイドRNA(sgRNA)によりゲノムDNAにターゲティングする。必要な5’-NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM;マゼンタ)のすぐ上流のDNA標的(青色)とのガイド配列塩基対、およびCas9は、PAMの約3bp上流の二本鎖切断(DSB)(赤色三角)を媒介する。
図2A】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図2B】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図2C】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図2D】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図2E】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図2F】例示的CRISPR系、考えられる作用機序、真核細胞中の発現の例示的適応、ならびに核局在化およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図3A】例示的標的についてのSpCas9特異性の評価の結果を示す。
図3B】例示的標的についてのSpCas9特異性の評価の結果を示す。
図3C】例示的標的についてのSpCas9特異性の評価の結果を示す。
図3D】例示的標的についてのSpCas9特異性の評価の結果を示す。
図4A】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4B】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4C】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4D】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4E】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4F】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図4G】例示的ベクター系および真核細胞中の相同組換えの指向におけるその使用についての結果を示す。
図5】プロトスペーサー配列の表を提供し、ヒトおよびマウスゲノム中の遺伝子座に対して例示的化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)およびS.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR系に基づき設計されたプロトスペーサー標的と対応するPAMについての改変効率結果をまとめる。細胞をCas9およびプレcrRNA/tracrRNAまたはキメラRNAのいずれかにより形質移入し、形質移入から72時間後に分析した。インデルパーセントは、示された細胞系からのSurveyorアッセイ結果に基づき算出した(全てのプロトスペーサー標的についてN=3、誤差は、標準誤差(S.E.M.)であり、N.D.は、Surveyorアッセイを使用して検出可能でないことを示し、N.T.は、本試験において試験しなかったことを示す)。
図6A】Cas9媒介遺伝子ターゲティングについての異なるtracrRNA転写物の比較を示す。
図6B】Cas9媒介遺伝子ターゲティングについての異なるtracrRNA転写物の比較を示す。
図6C】Cas9媒介遺伝子ターゲティングについての異なるtracrRNA転写物の比較を示す。
図7】二本鎖切断により誘導された微小挿入および欠失の検出のためのsurveyorヌクレアーゼアッセイの模式図を示す。
図8】真核細胞中のCRISPR系エレメントの発現のための例示的バイシストロニック発現ベクターを示す。
図9】ヒトゲノム中の隣接する化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370遺伝子座1PAM(NGG)(図9A)と、S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD9遺伝子座2PAM(NNAGAAW)(図9B)との間の距離のヒストグラム;ならびに染色体(Chr)単位のそれぞれのPAMについての距離(図9C)を示す。
図10A】例示的CRISPR系、真核細胞中の発現のための例示的適応、およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図10B】例示的CRISPR系、真核細胞中の発現のための例示的適応、およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図10C】例示的CRISPR系、真核細胞中の発現のための例示的適応、およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図10D】例示的CRISPR系、真核細胞中の発現のための例示的適応、およびCRISPR活性を評価する試験の結果を示す。
図11】哺乳動物細胞中のゲノム遺伝子座のターゲティングのためのCRISPR系の例示的操作を示す。
図12】哺乳動物細胞中のcrRNAプロセシングのノザンブロット分析の結果を示す。
図13】ヒトPVALBおよびマウスTh遺伝子座中のプロトスペーサーの例示的選択を示す。
図14】ヒトEMX1遺伝子座中のS.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR系の例示的プロトスペーサーおよび対応するPAM配列標的を示す。
図15】Surveyor、RFLP、ゲノムシーケンシング、およびノザンブロットアッセイに使用されたプライマーおよびプローブについての配列の表を提供する。
図16A】キメラRNAを有するCRISPR系の例示的操作および真核細胞中の系活性についてのSURVEYORアッセイの結果を示す。
図16B】キメラRNAを有するCRISPR系の例示的操作および真核細胞中の系活性についてのSURVEYORアッセイの結果を示す。
図16C】キメラRNAを有するCRISPR系の例示的操作および真核細胞中の系活性についてのSURVEYORアッセイの結果を示す。
図17】真核細胞中のCRISPR系活性についてのSURVEYORアッセイの結果のグラフ表示を示す。
図18】UCSCゲノムブラウザを使用するヒトゲノム中のいくつかの化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9標的部位の例示的可視化を示す。
図19A】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の円形表示を示す。
図19B】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の円形表示を示す。
図19C】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の円形表示を示す。
図19D】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の円形表示を示す。
図20A】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図20B】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図20C】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図20D】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図20E】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図20F】大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つの科を明らかにする系統発生分析の線形表示を示す。
図21A】相同組換えを介するゲノム編集を示す。(a)RuvC I触媒ドメイン中のD10A突然変異を有するSpCas9ニッカーゼの模式図。(b)センスまたはアンチセンス一本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかを修復テンプレートとして使用するヒトEMX1遺伝子座における相同組換え(HR)を表す模式図。上方の赤色矢印は、sgRNA開裂部位を示し;ゲノタイピングのためのPCRプライマー(表JおよびK)を右側パネルに矢印として示す。(c)HRにより改変された領域の配列。d、EMX標的1遺伝子座における野生型(wt)およびニッカーゼ(D10A)SpCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイ(n=3)。矢印は、予測断片サイズの位置を示す。
図21B】相同組換えを介するゲノム編集を示す。(a)RuvC I触媒ドメイン中のD10A突然変異を有するSpCas9ニッカーゼの模式図。(b)センスまたはアンチセンス一本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかを修復テンプレートとして使用するヒトEMX1遺伝子座における相同組換え(HR)を表す模式図。上方の赤色矢印は、sgRNA開裂部位を示し;ゲノタイピングのためのPCRプライマー(表JおよびK)を右側パネルに矢印として示す。(c)HRにより改変された領域の配列。d、EMX標的1遺伝子座における野生型(wt)およびニッカーゼ(D10A)SpCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイ(n=3)。矢印は、予測断片サイズの位置を示す。
図21C】相同組換えを介するゲノム編集を示す。(a)RuvC I触媒ドメイン中のD10A突然変異を有するSpCas9ニッカーゼの模式図。(b)センスまたはアンチセンス一本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかを修復テンプレートとして使用するヒトEMX1遺伝子座における相同組換え(HR)を表す模式図。上方の赤色矢印は、sgRNA開裂部位を示し;ゲノタイピングのためのPCRプライマー(表JおよびK)を右側パネルに矢印として示す。(c)HRにより改変された領域の配列。d、EMX標的1遺伝子座における野生型(wt)およびニッカーゼ(D10A)SpCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイ(n=3)。矢印は、予測断片サイズの位置を示す。
図21D】相同組換えを介するゲノム編集を示す。(a)RuvC I触媒ドメイン中のD10A突然変異を有するSpCas9ニッカーゼの模式図。(b)センスまたはアンチセンス一本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかを修復テンプレートとして使用するヒトEMX1遺伝子座における相同組換え(HR)を表す模式図。上方の赤色矢印は、sgRNA開裂部位を示し;ゲノタイピングのためのPCRプライマー(表JおよびK)を右側パネルに矢印として示す。(c)HRにより改変された領域の配列。d、EMX標的1遺伝子座における野生型(wt)およびニッカーゼ(D10A)SpCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイ(n=3)。矢印は、予測断片サイズの位置を示す。
図22A】SpCas9のための単一ベクター設計を示す。
図22B】SpCas9のための単一ベクター設計を示す。
図23】Cas9オルソログの長さ分布を表すグラフを示す。
図24A】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24B】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24C】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24D】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24E】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24F】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24G】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24H】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24I】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24J】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24K】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24L】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図24M】突然変異点がSpCas9遺伝子内に位置する配列を示す。
図25A】条件的Cas9、Rosa26ターゲティングベクターマップを示す。
図25B】構成的Cas9、Rosa26ターゲティングベクターマップを示す。
図26】構成的および条件的Cas9構築物における重要なエレメントの略図を示す。
図27】送達およびインビボマウス脳Cas9発現データを示す。
図28】細胞へのCas9およびキメラRNAのRNA送達を示す(A)ニューロ2A細胞へのDNAまたはmRNAのいずれかとしてのGFPレポーターの送達。(B)Cas9およびキメラRNAをRNAとしてIcam2遺伝子に対して送達すると、試験した2つのスペーサーのうちの一方に開裂が生じる。(C)Cas9およびキメラRNAをRNAとしてF7遺伝子に対して送達すると、試験した2つのスペーサーのうちの一方に開裂が生じる。
図29】DNA二本鎖切断(DSB)修復が遺伝子編集をいかに促進するかを示す。エラープローン非相同末端結合(NHEJ)経路において、DSBの末端は内因性DNA修復機構によりプロセシングされ、一緒に再結合し、このことは接合部位におけるランダム挿入/欠失(インデル)突然変異をもたらし得る。遺伝子のコード領域内で生じるインデル突然変異は、フレームシフトおよび早期終止コドンをもたらし得、遺伝子ノックアウトをもたらす。あるいは、プラスミドまたは一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)の形態の修復テンプレートを供給して高いフィデリティおよび正確な編集を可能とする相同性組換え修復(HDR)経路を活用することができる。
図30図30A図30Cは、HEKおよびHUES9細胞でのHDRについて予想される結果を示す。(a)相同性アームを有するターゲティングプラスミドまたはssODN(センスまたはアンチセンス)のいずれかを使用して、Cas9により開裂される標的ゲノム遺伝子座(赤色の三角形)で配列を編集することができる。HDRの効率をアッセイするため、本発明者らは標的遺伝子座にHindIII部位(赤色のバー)を導入し、これを、相同性領域外にアニールするプライマーでPCR増幅した。HindIIIでPCR産物を消化すると、HDRイベントの発生が明らかになる。(b)目的の遺伝子座に対してセンス方向またはアンチセンス方向(sまたはa)のいずれかに向くssODNをCas9と組み合わせて使用することにより、標的遺伝子座における効率的なHDR媒介性編集を実現することができる。改変の両側に40bp、および好ましくは90bpの最小相同性領域が推奨される(赤色のバー)。(c)野生型Cas9およびCas9ニッカーゼ(D10A)の両方を使用して、EMX1遺伝子座におけるHDRに対してssODNが及ぼす効果の例が示される。各ssODNは、2つの制限部位の12bpの挿入が隣接する90bpの相同性アームを含む。
図31図31A図31Cは、嚢胞性線維症ΔF508突然変異の修復戦略を示す。
図32図32A図32B(a)は、FXNイントロン1におけるGAAリピート伸長の略図を示し、(b)は、CRISPR/Cas系を使用したGAA伸長領域の切り出しに用いられる戦略の略図を示す。
図33】Tet1~3およびDnmt1、3aおよび3b遺伝子座の効率的なSpCas9媒介性ターゲティングのスクリーニングを示す。形質移入したN2A細胞のDNAに関するSurveyorアッセイにより、種々のgRNAを使用することによる効率的なDNA開裂を実証する。
図34】AAV1/2送達系における2ベクター系を使用した多重ゲノムターゲティング戦略を示す。Tet1-3およびDnmt1、3aおよび3bgRNAはU6プロモーターの制御下にある。GFP-KASHはヒトシナプシンプロモーターの制御下にある。制限酵素部位が、サブクローニングによる単純なgRNA置換戦略を示す。2つの核局在化シグナル(NLS)が隣接するHAタグ標識SpCas9が示される。両方のベクターとも、1:1比でAAV1/2ウイルスによって脳に送達される。
図35】Surveyorアッセイを用いた多重DNMTターゲティングベクター#1の機能検証を示す。DNMT遺伝子ファミリー遺伝子座のSpCas9媒介性開裂を試験するため、N2A細胞にDNMTターゲティングベクター#1(+)およびSpCas9コードベクターを同時形質移入した。gRNAのみ(-)が陰性対照である。形質移入後48時間でDNA精製および下流処理のため細胞を回収した。
図36】Surveyorアッセイを用いた多重DNMTターゲティングベクター#2の機能検証を示す。DNMT遺伝子ファミリー遺伝子座のSpCas9媒介性開裂を試験するため、N2A細胞にDNMTターゲティングベクター#1(+)およびSpCas9コードベクターを同時形質移入した。gRNAのみ(-)が陰性対照である。形質移入後48時間でDNA精製および下流処理のため細胞を回収した。
図37】インビボでのHA-SpCas9発現に使用される短いプロモーターおよび短いポリAバージョンの概略図を示す。L-ITRからR-ITRまでのコード領域のサイズを右側に示す。
図38】インビボでのHA-SaCas9発現に使用される短いプロモーターおよび短いポリAバージョンの概略図を示す。L-ITRからR-ITRまでのコード領域のサイズを右側に示す。
図39】N2A細胞におけるSpCas9およびSaCas9の発現を示す。種々の短いプロモーターの制御下にありかつ短いポリA(spA)配列を有するHAタグ標識SpCas9およびSaCas9バージョンの代表的なウエスタンブロット。チューブリンがローディング対照である。mCherry(mCh)が形質移入対照である。形質移入後48時間でウエスタンブロッティングのため細胞を回収してさらに処理した。
図40】Tet3遺伝子座の効率的なSaCas9媒介性ターゲティングのスクリーニングを示す。形質移入したN2A細胞のDNAに関するSurveyorアッセイにより、NNGGGTPUM配列を有する種々のgRNAを使用することによる効率的なDNA開裂が実証される。GFP形質移入細胞およびSaCas9のみを発現する細胞が対照である。
図41】マウス脳におけるHA-SaCas9の発現を示す。ヒトシナプシンプロモーターの制御下でHA-SaCas9の発現をドライブするウイルスを動物の歯状回に注入した。手術後2週間で動物を犠牲にした。ウサギモノクローナル抗体C29F4(CellSignaling)を使用してHAタグを検出した。DAPI染色で細胞核は青色に染色された。
図42】形質導入7日後の培養下の皮質初代ニューロンにおけるSpCas9およびSaCas9の発現を示す。種々のプロモーターの制御下にありかつbghまたは短いポリA(spA)配列を有するHAタグ標識SpCas9およびSaCas9バージョンの代表的なウエスタンブロット。チューブリンがローディング対照である。
図43】種々のプロモーターを含むSpCas9および多重gRNA構築物を有するAAV1粒子による形質導入後7日の初代皮質ニューロンのLIVE/DEAD染色を示す(DNMTについては最後のパネルに例を示す)。AAV形質導入後のニューロンを、対照の非形質導入ニューロンと比較した。赤色の核は、透過処理された死細胞を示す(パネルの2列目)。生細胞は緑色で示される(パネルの3列目)。
図44】種々のプロモーターを含むSaCas9を有するAAV1粒子による形質導入後7日の初代皮質ニューロンのLIVE/DEAD染色を示す。赤色の核は、透過処理された死細胞を示す(パネルの2列目)。生細胞は緑色で示される(パネルの3列目)。
図45】TETおよびDNMT遺伝子座に関するSpCas9ならびにgRNA多重体を有するAAV1ウイルスによる形質導入後のニューロンの形態比較を示す。形質導入されていないニューロンを対照として示す。
図46】初代皮質ニューロンにおけるSurveyorアッセイを用いた多重DNMTターゲティングベクター#1の機能検証を示す。DNMT遺伝子ファミリー遺伝子座のSpCas9媒介性開裂を試験するため、細胞にDNMTターゲティングベクター#1および種々のプロモーターを有するSpCas9ウイルスを共形質導入した。
図47】脳におけるSpCas9開裂のインビボ効率を示す。DNMTファミリー遺伝子座を標的とするgRNA多重体を有するAAV1/2ウイルスを、2つの異なるプロモーター:マウスMecp2およびラットMap1bの制御下にあるSpCas9ウイルスと共にマウスに注入した。注入後2週間で脳組織を摘出し、gRNA多重体構築物からシナプシンプロモーターによりドライブされるGFP発現に基づき、FACSを使用して核を調製および選別した。gDNA抽出後、Surveyorアッセイを実行した。+はGFP陽性核を示し、-は同じ動物からの対照のGFP陰性核を示す。ゲル上の数字は、評価したSpCas9効率を示す。
図48】海馬ニューロンからのGFP-KASH標識細胞核の精製を示す。細胞核膜の核外膜(ONM)をGFPとKASHタンパク質膜貫通ドメインとの融合物でタグ標識する。定位手術およびAAV1/2注入の1週間後の脳における強力なGFP発現。密度勾配遠心ステップによるインタクトな脳からの細胞核の精製。精製された核を示す。Vybrant(登録商標)DyeCycle(商標)Ruby染色によるクロマチン染色は赤色で示され、GFP標識核は緑色で示される。GFP+およびGFP-細胞核の代表的なFACSプロファイル(マゼンタ色:Vybrant(登録商標)DyeCycle(商標)Ruby染色、緑色:GFP)。
図49】マウス脳におけるSpCas9開裂効率を示す。TETファミリー遺伝子座を標的とするgRNA多重体を有するAAV1/2ウイルスを、2つの異なるプロモーター:マウスMecp2およびラットMap1bの制御下にあるSpCas9ウイルスと共にマウスに注入した。注入後3週間で脳組織を摘出し、gRNA多重体構築物からシナプシンプロモーターによりドライブされるGFP発現に基づき、FACSを使用して核を調製および選別した。gDNA抽出後、Surveyorアッセイを実行した。+はGFP陽性核を示し、-は同じ動物からの対照のGFP陰性核を示す。ゲル上の数字は、評価したSpCas9効率を示す。
図50】培養下の皮質ニューロンにおけるGFP-KASH発現を示す。TET遺伝子座を標的とするgRNA多重体構築物を有するAAV1ウイルスをニューロンに形質導入した。KASHドメインの局在化により、最も強力なシグナルは細胞核の周りに局在する。
図51】(上)ガイドRNAのペア間の間隔(2つのPAM配列の配置パターンにより示されるとおり)のリストを示す。SpCas9(D10A)ニッカーゼと共に使用したとき、パターン1、2、3、4を満たすガイドRNAペアのみがインデルを呈した。(下)SpCas9(D10A)と、パターン1、2、3、4を満たすガイドRNAのペアとの組み合わせが、標的部位におけるインデルの形成をもたらしたことを示すゲル画像。
図52】U6ガイドRNA発現カセット(casssette)の作成に使用されるU6リバースプライマー配列のリストを示す。U6および所望のガイドRNAを含有するアンプリコンを作成するためには、各プライマーがU6フォワードプライマー「gcactgagggcctatttcccatgattc」とペアを形成する必要がある。
図53図33に掲載する24パターンの位置を示すヒトEMX1遺伝子座からのゲノム配列マップを示す。
図54】(右側)種々のガイドRNAペアにより標的化されたCas9ニッカーゼによる開裂の後に可変の5’オーバーハングが存在するときの標的部位におけるインデルの形成を示すゲル画像を示す。(左側)右側にゲルのレーン番号を示し、使用したガイドRNAペアおよびCas9ニッカーゼによる開裂後に存在する5’オーバーハングの長さを特定することを含めた種々のパラメータを示す表を示す。
図55図54のゲルパターン(右)をもたらしおよび実施例35にさらに記載する種々のガイドRNAペアの位置を示すヒトEMX1遺伝子座からのゲノム配列マップを示す。
図56】Syn-KASH-GFPと共にMecp2-HA-SpCas9および3×gRNA-TETをコードするウイルスの注入後8週間の背側および腹側海馬におけるHA-SpCas9染色を示す。
図57】3×gRNAウイルス注入後8週間のSyn_GFP-KASH発現がニューロンに特異的であり(NeuN陽性細胞)、かつグリア細胞に非特異的である(GFAP陽性)ことを示す。
図58】歯状回(腹側部および背側部)におけるTETおよびDNMTのCRISPR媒介性KD後5週間で実施した行動試験が、不安および学習障害レベルの増加を示したことを示す。A)高架式十字迷路試験中にオープンアームに居た時間。B)オープンフィールド試験、アリーナの中心に居た時間と、それに対するコーナーに居た時間を計測した。C)新奇物体認識試験、結果は慣れさせる段階の3時間後に計測した。D)バーンズ迷路;3日間の訓練中に逃避を見つけ出す効率。E)バーンズ迷路結果。F)文脈恐怖条件付け中のフリージング行動。G)文脈恐怖条件付け中最初にフリージングが起こるまでの潜時。H)TETKDおよびDNMT KDのトレース恐怖条件付けの結果。(I)対照-SpCas9ウイルスとgRNAのないGFP-KASH構築物とを注入した動物。TET-SpCas9と、Tet1、Tet2およびTet3に対するgRNAをコードする構築物との両方を注入した動物。DNMT-SpCas9と、Dnmt1、Dnmt3aおよびDnmt3bに対するgRNAをコードする構築物との両方を注入した動物。
図59】Mecp2_SpCas9ウイルスのみを注入した対照動物と比較したMecp_SpCas9ウイルス注射後8週間の脳におけるTet遺伝子座の切断効率を示す。
図60】Mecp2_SpCas9ウイルスのみを注入した対照動物と比較したMecp_SpCas9ウイルス注射後8週間の脳におけるDnmt遺伝子座の切断効率を示す。
図61】Mecp2_SpCas9およびDnmt遺伝子座を標的にするgRNAをコードするウイルスの定位固定注入後8週間の脳におけるDnmt3a染色を示す。下側のパネルは、上側のパネルに示されるROIの拡大像を示す。
図62】ウイルス注入後4週間の背側海馬におけるSyn_HA-SaCas9の染色を示す。1列目は、Sa-Cas9のみを注入した動物を示し、中央の列は、SaCas9とTET遺伝子座に対するgRNAとの両方を注入した動物を示し、および右の列は、gRNAのみをコードするウイルスを注入した動物を表す。SaCas9核局在はgRNAの存在に依存する。
図63】N2a細胞中のSpCas9を示す。A)ターゲティングベクターおよびSpCas9発現ベクター。B)種々のプロモーターの制御下でHAタグ標識SpCas9を発現するN2a細胞のウエスタンブロット分析。C)Dnmt遺伝子座の切断効率。D)Dnmt3aの効率的なノックダウンを実証するウエスタンブロット分析。e)Tet遺伝子座の切断効率。
図64】初代ニューロン中のSpCas9を示す。A)この試験で使用されるSpCas9クローニング戦略の概略図。AAV送達系に効率的にパッケージングするための短いプロモーターおよび短いポリA。B)多重ターゲティングと核膜標識とを組み合わせる戦略の概略図。C)rMap1bおよびmMecp2プロモーターならびにbGHおよびspAシグナルの制御下におけるHAタグ標識SpCas9の発現を示すウエスタンブロット分析。D)初代ニューロンにおけるSpCas9とGFP-KASHとの同時発現を実証する免疫細胞化学。mMecp2プロモーターの制御下にあるSpCas9はニューロンで発現するが(Map1b、NeuN)、アストログリア細胞では発現しない(GFAP)。
図65】初代ニューロンにおけるDnmt3aのノックダウンを示す。A)多重ターゲティングベクターおよびmMecp2-SpCas9で標的化した後のDnmt3aの効率的なノックダウンを実証する免疫細胞化学。B)対照および標的化したニューロンにおけるDnmt3a抗体染色の定量化。C)Dnmt3aタンパク質レベルの低下を実証するウエスタンブロット分析。D)混合初代ニューロン培養物(ニューロンおよびアストログリア)における約75%のDnmt3aタンパク質レベルの全ノックダウンを実証するウエスタンブロット分析の定量化。
図66】インビボでのDnmt3aのノックダウンを示す。A)Mecp2_SpCas9ウイルスのみを注入した対照動物と比較したMecp_SpCas9ウイルス注入後8週間の脳におけるDnmt遺伝子座の切断効率。B)FACSを使用して細胞核を選別した後の対照核(Ruby色素陽性)と比較した標的神経核(KASH-GFP陽性)におけるDnmt3aタンパク質レベルの低下を示すウエスタンブロット分析。
図67】初代ニューロンにおけるSaCas9の発現を示す。A)ヒトシナプシンプロモーターおよびbGHシグナルを使用するSaCas9発現ベクターのサイズ。B)初代ニューロンにおけるSaCas9の発現(NeuN)、しかしアストログリアでは発現しない(GFAP)。C)gRNAの非存在下でのSaCas9の核外局在。C’C)に示すSaCas9陽性ニューロンの高倍率像。D)gRNAの存在下におけるSaCas9の核局在。D’)D)に示すSaCas9陽性ニューロンの高倍率像。E)HAタグ標識SaCas9およびGFP-KASHの発現を実証するウエスタンブロット分析。F)AAV感染後1週間のDnmt遺伝子座の切断効率。
図68】SaCas9のgRNA依存性核局在を示す。A)初代ニューロンにおけるgRNAの非存在下でのSaCas9の核外局在を実証する共焦点イメージング解析。B)gRNAの存在下におけるSaCas9の核局在。C)gRNAの非存在下でのSaCas9の核外局在を示す共焦点像A)のライン走査解析(赤色、SaCas9シグナル;青色、DAPIシグナル;緑色、GFP-KASHシグナル。D)gRNAの存在下におけるSaCas9の核局在を示す共焦点像B)のライン走査解析(赤色、SaCas9シグナル;青色、DAPIシグナル;緑色、GFP-KASHシグナル)。E)N2a細胞におけるgRNA無し(-)および有り(+)条件下でのSaCas9およびSpCas9の細胞内局在。細胞質画分(チューブリン陽性)の250kDaのSaCas9シグナルは、細胞質におけるSaCas9の二量体化を示す。gRNAの存在下では、核画分(Sun2陽性)へのSaCas9タンパク質のシフトが見える。100kDaのSaCas9シグナルは、SaCas9ホモマーのgRNA依存的な形成および細胞核内への輸送を示す。対照的に、SpCas9は主にホモマーとして存在し、その核局在はgRNAに依存しない。
図69】AAV-Sa-Cas9ベクター、肝臓特異的AAV-Sa-Cas9ベクターおよび代替のAAV-Sa-Cas9ベクターを示す。
図70】最適化されたCMV-SaCas9-NLS-U6-sgRNAベクター(ベクター設計を最後に提出した)に関するデータを示す;新規データはN’末端およびC’末端タグ標識SaCas9を比較し、C’末端NLSタグ標識付けを用いた開裂効率の増加を示す。
図71】新規Pcsk9標的により作成されたインデルを示すSURVEYOR画像を示す。
図72】SaCas9特異性を示す:2つの基準に基づきゲノムワイドオフターゲット部位(GWOT)が予測される:それらが意図されるSaCas9標的と4個以下のミスマッチ塩基を含み、かつSaCas9に対する最小の制限PAM、NNGRRを有する。HEK293FT細胞にSpCas9またはSaCas9のいずれかが、その対応するsgRNAと共に、SpCas9(CGG)またはSaCas9(CGGGGT)のいずれによっても切断され得るようにPAMとしてCGGGGTを有する標的部位(EMX1:TAGGGTTAGGGGCCCCAGGC)に形質移入される。細胞からDNAを回収し、オンターゲット遺伝子座および41個の予測されたオフターゲット遺伝子座でIlluminaシーケンシングによりインデルについて分析する(Hsuet al.Nature Biotech 2013によるプロトコルおよびDavid ScottおよびJosh Weinsteinにより開発されたデータ解析パイプラインに従う)。
図73】特定の遺伝子座においてSaCas9がSpCas9より高度なオフターゲット活性を有し得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本明細書における図面は、説明目的のためのものにすぎず、必ずしも一定の縮尺で描画されるものではない。
【0077】
本発明は、ゲノム摂動または遺伝子編集など、配列ターゲティングが関わる遺伝子発現の制御に使用される、CRISPR-Cas系およびその成分に関する系、方法および組成物のエンジニアリングおよび最適化に関する。有利な実施形態においてCas酵素はCas9である。
【0078】
本方法の利点は、CRISPR系がオフターゲット結合およびその結果として生じる副作用を回避することである。これは、標的DNAに対して高度な配列特異性を有するように構成された系を使用して達成される。
【0079】
Cas9
Cas9の最適化を用いて機能を増強しまたは新規機能を開発してもよく、キメラCas9タンパク質を作成することができる。本出願人らが作成した例を実施例6に提供する。キメラCas9タンパク質は、異なるCas9ホモログの断片を組み合わせることにより作製し得る。例えば、本明細書に記載されるCas9からの2つの例示的なキメラCas9タンパク質。例えば、本出願人らは、St1Cas9のN末端(このタンパク質からの断片は太字である)をSpCas9のC末端と融合した。キメラCas9を作製する利益には、以下の一部または全部が含まれる:毒性の低下;真核細胞における発現の向上;特異性の亢進;タンパク質の分子量の低下、例えば、異なるCas9ホモログの最も小さいドメインを組み合わせてより小さいタンパク質を作製すること;および/またはPAM配列要件の変更。
【0080】
Cas9は、汎用DNA結合タンパク質として用いられ得る。例えば、および実施例7に示すとおり、本出願人らは、DNA標的の両鎖の開裂に関与する2つの触媒ドメイン(D10およびH840)を突然変異させることにより、Cas9を汎用DNA結合タンパク質として使用した。標的遺伝子座における遺伝子転写を上方制御するため、本出願人らは転写活性化ドメイン(VP64)をCas9と融合した。他の転写活性化ドメインが公知である。実施例17に示すとおり、転写活性化が可能である。同様に実施例17に示すとおり、標的遺伝子配列に結合し、ひいてはその活性を抑制するCas9リプレッサー(DNA結合ドメイン)を使用して遺伝子抑制(この場合β-カテニン遺伝子の)が可能である。
【0081】
アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルスまたは他のプラスミドもしくはウイルスベクタータイプを使用して、詳細には、例えば、米国特許第8,454,972号明細書(アデノウイルス用の配合、用量)、同第8,404,658号明細書(AAV用の配合、用量)および同第5,846,946号明細書(DNAプラスミド用の配合、用量)の配合および用量、ならびにレンチウイルス、AAVおよびアデノウイルスが関わる臨床試験およびそうした臨床試験に関する文献の配合および用量を使用して、Cas9および1つ以上のガイドRNAを送達することができる。例えば、AAVについては、投与経路、配合および用量を米国特許第8,454,972号明細書にあるとおりとし、およびAAVが関わる臨床試験にあるとおりとすることができる。アデノウイルスについては、投与経路、配合および用量を米国特許第8,404,658号明細書にあるとおりとし、およびアデノウイルスが関わる臨床試験にあるとおりとすることができる。プラスミド送達については、投与経路、配合および用量を米国特許第5,846,946号明細書にあるとおりとし、およびプラスミドが関わる臨床試験にあるとおりとすることができる。用量は、平均70kgの個体に基づくかまたはそれに対して推定してもよく、異なる体重および種の患者、対象、哺乳動物用に調整することができる。投与頻度は、患者または対象の年齢、性別、全般的な健康、他の状態ならびに対処すべき特定の状態または症状を含めた通常の要因に依存して、医学または獣医学の実務者(例えば、医師、獣医師)の裁量の範囲内にある。
【0082】
ウイルスベクターは目的の組織に注入され得る。細胞型に特異的なゲノム改変については、Cas9の発現を細胞型特異的プロモーターによってドライブすることができる。例えば、肝臓特異的発現はアルブミンプロモーターを使用してもよく、およびニューロン特異的発現はシナプシンIプロモーターを使用してもよい。
【0083】
トランスジェニック動物および植物
トランスジェニック動物もまた提供される。好ましい例としては、Cas9をコードするポリヌクレオチドまたはタンパク質それ自体という意味においてCas9を含む動物が挙げられる。マウス、ラットおよびウサギが好ましい。本明細書で例示されるとおり構築物でトランスジェニックマウスを作成するには、純粋な線状DNAを偽妊娠雌、例えばCB56雌由来の接合体の前核に注入し得る。次にファウンダーが同定され、遺伝子型が決定され、CB57マウスと戻し交配され得る。次に構築物がクローニングされ、場合により、例えばサンガーシーケンシングによって検証され得る。例えばモデルにおいて1つ以上の遺伝子がノックアウトされる場合、ノックアウトが想定される。しかしながらノックインもまた(単独でまたは組み合わせで)想定される。例示的なノックインCas9マウスを作成しており、これを例示するが、Cas9ノックインが好ましい。Cas9ノックインマウスを作成するには、本明細書に記載されるとおり(図25A図25Bおよび図26)、同じ構成的および条件的構築物の標的をRosa26遺伝子座に仕向け得る。Rosa遺伝子座の標的化に関するSangamoBioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20120017290号明細書および同第20110265198号明細書の方法を、本発明のCRISPRCas系を利用するように改良し得る。別の実施形態において、Rosa遺伝子座の標的化に関するCellectisに譲渡された米国特許出願公開第20130236946号明細書の方法もまた、本発明のCRISPRCas系を利用するように改良し得る。
【0084】
条件的Cas9マウスの有用性:本出願人らは、293細胞において、Creとの同時発現によりCas9条件的発現構築物を活性化し得ることを示している。本出願人らはまた、Creが発現するとき正しくターゲティングされるR1mESCが活性Cas9を有し得ることも示す。Cas9の後にはP2Aペプチド開裂配列と、次にEGFPが続くため、本出願人らはEGFPを観察することにより発現の成功を特定する。本出願人らは、mESCにおけるCas9活性化を示している。この同じ概念が、条件的Cas9マウスを極めて有用にするものである。本出願人らはそれらの条件的Cas9マウスを、Creを遍在的に発現するマウス(ACTB-Cre系統)と交配させることができ、あらゆる細胞でCas9を発現するマウスが得られ得る。胎仔または成体マウスにおいてゲノム編集を誘導するために必要なことはキメラRNAの送達のみであるはずである。興味深いことに、条件的Cas9マウスを組織特異的プロモーターの制御下でCreを発現するマウスと交配させる場合、同様にCreを発現する組織にのみCas9が存在するはずである。この手法を用いて正確な組織に限ったゲノムの編集を、同組織にキメラRNAを送達することにより行い得る。
【0085】
上述のとおり、トランスジェニック動物はまた、トランスジェニック植物、特に作物および藻類と同様に提供される。トランスジェニック植物は、疾患モデルを提供すること以外の適用で有用であり得る。そうした適用には、例えば通常野生型で見られるレベルより高いタンパク質、炭水化物、栄養素またはビタミンレベルの発現による食糧または飼料生産が含まれ得る。この点で、トランスジェニック植物、特に豆類および塊茎、および動物、特に家畜(乳牛、ヒツジ、ヤギおよびブタ)などの哺乳動物、また家禽および食用昆虫も好ましい。
【0086】
トランスジェニック藻類または他の植物、例えばセイヨウアブラナが、例えば植物油またはバイオ燃料、例えばアルコール(特にメタノールおよびエタノール)の生産において特に有用であり得る。これらは、油またはバイオ燃料産業で使用される高レベルの油またはアルコールを発現または過剰発現するようにエンジニアリングされ得る。
【0087】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
インビボ送達の点では、AAVはいくつかの理由で他のウイルスベクターと比べて有利である:
毒性が低い(これは、免疫応答を活性化し得る細胞粒子の超遠心が不要であるという精製方法に起因し得る)
宿主ゲノムにインテグレートされないため挿入突然変異生成を引き起こす可能性が低い。
【0088】
AAVは4.5または4.75Kbのパッケージング限界を有する。これは、Cas9ならびにプロモーターおよび転写ターミネーターを全て同じウイルスベクターに詰め込まなければならないことを意味する。4.5または4.75Kbより大きい構築物はウイルス産生の著しい低下を引き起こし得る。SpCas9は非常に大きく、遺伝子それ自体が4.1Kbを超えるため、AAVにパッケージングすることが難しい。従って本発明の実施形態は、より短いCas9のホモログを利用することを含む。例えば:
【0089】
【表1】
【0090】
従ってこれらの種は、概して好ましいCas9種である。本出願人らは、送達およびインビボマウス脳Cas9発現データを示している。
【0091】
インビボでゲノム改変を媒介するためCas9コード核酸分子、例えばDNAをウイルスベクターにパッケージングする2つの方法が好ましい:
NHEJ媒介性遺伝子ノックアウトを達成するため:
単一ウイルスベクター:
2つ以上の発現カセットを含むベクター:
プロモーター-Cas9コード核酸分子-ターミネーター
プロモーター-gRNA1-ターミネーター
プロモーター-gRNA2-ターミネーター
プロモーター-gRNA(N)-ターミネーター(ベクターのサイズ限界に至るまで)
二重ウイルスベクター:
Cas9の発現をドライブするための1つの発現カセットを含むベクター1
プロモーター-Cas9コード核酸分子-ターミネーター
1つ以上のガイドRNAの発現をドライブするためのもう1つの発現カセットを含むベクター2
プロモーター-gRNA1-ターミネーター
プロモーター-gRNA(N)-ターミネーター(ベクターのサイズ限界に至るまで)
【0092】
相同性組換え修復を媒介するため。上記に記載する単一および二重ウイルスベクター手法に加え、さらなるベクターを使用して相同性組換え修復テンプレートが送達される。
【0093】
Cas9コード核酸分子の発現をドライブするために使用されるプロモーターとしては、以下を挙げることができる:
AAV ITRはプロモーターとして働き得る:これは、追加的なプロモーターエレメント(これはベクター中でスペースを取り得る)の必要性をなくすのに有利である。空いた追加のスペースは、追加的なエレメント(gRNA等)の発現のドライブに使用することができる。また、ITR活性は比較的弱いため、Cas9の過剰発現に起因する毒性を低下させるためにも使用することができる。
【0094】
遍在的な発現には、以下のプロモーターを使用することができる:CMV、CAG、CBh、PGK、SV40、フェリチン重鎖または軽鎖等
脳での発現には、以下のプロモーターを使用することができる:全てのニューロンに対するシナプシンI、興奮性ニューロンに対するCaMKIIα、GABA作動性ニューロンに対するGAD67またはGAD65またはVGAT等
【0095】
肝臓での発現には、アルブミンプロモーターを使用することができる。
【0096】
肺での発現には、SP-Bを使用することができる。
【0097】
内皮細胞にはICAMを使用することができる。
【0098】
造血細胞にはIFNβまたはCD45を使用することができる。
【0099】
骨芽細胞にはOG-2を使用することができる。
【0100】
ガイドRNAのドライブに使用されるプロモーターとしては、以下を挙げることができる:
Pol IIIプロモーター、例えばU6またはH1
Pol IIプロモーターおよびイントロンカセットを使用することによるgRNAの発現
【0101】
AAVに関して、AAVはAAV1、AAV2、AAV5またはそれらの任意の組み合わせであってよい。標的とする細胞に関連するAAVのAAVを選択することができる;例えば、脳または神経細胞を標的にするためAAV血清型1、2、5またはハイブリッドまたはカプシドAAV1、AAV2、AAV5またはそれらの任意の組み合わせを選択することができ;および心臓組織を標的にするためAAV4を選択することができる。AAV8は肝臓への送達に有用である。上記のプロモーターおよびベクターは個々に好ましい。
【0102】
RNA送達もまた有用なインビボ送達方法である。図27は送達およびインビボマウス脳Cas9発現データを示す。リポソームまたはナノ粒子を使用してCas9およびgRNA(および、例えばHR修復テンプレート)を細胞に送達することが可能である。従ってCRISPR酵素、例えばCas9の送達および/または本発明のRNAの送達は、RNA形態で、微小胞、リポソームまたはナノ粒子を介してもよい。例えば、インビボ送達のためCas9mRNAおよびgRNAをリポソーム粒子にパッケージングすることができる。リポソーム形質移入試薬、例えばLifeTechnologiesのリポフェクタミンおよび他の市販の試薬は、RNA分子を肝臓に有効に送達することができる。
【0103】
NHEJまたはHR効率を増強させることもまた、送達の助けとなる。NHEJ効率は、Trex2などの末端プロセシング酵素を同時発現させて増強することが好ましい(Dumitracheet al.Genetics.2011August;188(4):787-797)。HR効率は、Ku70およびKu86などのNHEJ機構を一過性に阻害して増加させることが好ましい。HR効率はまた、RecBCD、RecAなどの原核生物または真核生物相同組換え酵素を同時発現させて増加させることもできる。
【0104】
種々の送達手段が本明細書に記載され、本節でさらに考察される。
【0105】
ウイルス性送達:CRISPR酵素、例えばCas9および/または本RNAのいずれか、例えばガイドRNAは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルスまたは他のウイルスベクター型、またはそれらの組み合わせを使用して送達することができる。Cas9および1つ以上のガイドRNAは1つ以上のウイルスベクターにパッケージングすることができる。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、例えば筋肉内注射によって目的の組織に送達されるが、他の場合にはウイルス性送達は静脈内、経皮的、鼻腔内、経口、粘膜、または他の送達方法による。かかる送達は単回用量によっても、あるいは複数回用量によってもよい。当業者は、本明細書における送達される実際の投薬量が、ベクターの選択、標的細胞、生物、または組織、治療対象の全身状態、求められる形質転換/改変の程度、投与経路、投与方法、求められる形質転換/改変のタイプ等の種々の要因に応じて大幅に異なり得ることを理解する。
【0106】
かかる投薬量は、例えば、担体(水、生理食塩水、エタノール、グリセロール、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油等)、希釈剤、薬学的に許容可能な担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、薬学的に許容可能な賦形剤、抗原性を増強するアジュバント、免疫賦活性化合物または分子、および/または当該技術分野において公知の他の化合物をさらに含有し得る。本明細書におけるアジュバントは、抗原が吸着するミネラル(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液;または抗原溶液が油中に乳化される油中水型エマルション(MF-59、フロイントの不完全アジュバント)(時に死滅マイコバクテリアを含む(フロイントの完全アジュバント))を含有して抗原性をさらに増強し得る(抗原の分解を阻害しおよび/またはマクロファージの流入を生じさせる)。アジュバントにはまた、免疫賦活性分子、例えばサイトカイン、副刺激分子、および例えば、免疫賦活性DNAまたはRNA分子、例えばCpGオリゴヌクレオチドも含まれる。かかる投薬量配合は当業者により容易に確かめられる。投薬量は、1つ以上の薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩をさらに含有し得る。加えて、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、ゲルまたはゲル化材料、香味料、着色料、マイクロスフェア、ポリマー、懸濁剤等もまた本明細書において存在し得る。加えて、1つ以上の他の従来の医薬品成分、例えば保存剤、保湿剤、懸濁剤、界面活性剤、抗酸化剤、固化防止剤、充填剤、キレート剤、コーティング剤、化学的安定剤等もまた、特に剤形が再構成可能な形態である場合に存在し得る。好適な例示的成分としては、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、フェニルエチルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、パラクロロフェノール、ゼラチン、アルブミンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容可能な賦形剤の詳細な考察は、REMINGTON’SPHARMACEUTICAL SCIENCES(MackPub.Co.,N.J.1991)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照することができる。
【0107】
本明細書のある実施形態では、送達はアデノウイルスを介し、これは、少なくとも1×10粒子(粒子単位、puとも称される)のアデノウイルスベクターを含有する単回ブースター用量であり得る。本明細書のある実施形態では、用量は好ましくは、少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10~1×1012粒子)、より好ましくは少なくとも約1×10粒子、より好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1×10~1×1011粒子または約1×10~1×1012粒子)、および最も好ましくは少なくとも約1×10粒子(例えば、約1*×10~1×1010粒子または約1×10~1×1012粒子)、またはさらには少なくとも約1×1010粒子(例えば、約1×1010~1×1012粒子)のアデノウイルスベクターである。あるいは、用量は、約1×1014粒子以下、好ましくは約1×1013粒子以下、さらにより好ましくは約1×1012粒子以下、さらにより好ましくは約1×1011粒子以下、および最も好ましくは約1×1010粒子以下(例えば、約1×10粒子(articles)以下)を含む。従って、用量は、例えば、約1×10粒子単位(pu)、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×10pu、約2×10pu、約4×10pu、約1×1010pu、約2×1010pu、約4×1010pu、約1×1011pu、約2×1011pu、約4×1011pu、約1×1012pu、約2×1012pu、または約4×1012puのアデノウイルスベクターを含む単回用量のアデノウイルスベクターを含有し得る。例えば、2013年6月4日に付与されたNabel,et.al.に対する米国特許第8,454,972B2号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)のアデノウイルスベクター、およびその第29欄第36~58行にある投薬量を参照のこと。本明細書のある実施形態では、アデノウイルスは複数回用量で送達される。
【0108】
本明細書のある実施形態では、送達はAAVを介する。ヒトに対するAAVのインビボ送達についての治療上有効な投薬量は、約1×1010~約1×1010の機能性AAV/ml溶液を含有する生理食塩水約20~約50mlの範囲であると考えられる。投薬量は、治療利益と、それに対する任意の副作用との均衡をとるように調整され得る。本明細書のある実施形態では、AAV用量は、概して、約1×10~1×1050ゲノムのAAV、約1×10~1×1020ゲノムのAAV、約1×1010~約1×1016ゲノム、または約1×1011~約1×1016ゲノムのAAVの濃度範囲である。ヒト投薬量は約1×1013ゲノムのAAVであってもよい。かかる濃度は、約0.001ml~約100ml、約0.05~約50ml、または約10~約25mlの担体溶液で送達され得る。他の効果的な投薬量が、当業者により、用量反応曲線を作成する常法の試験を介して容易に確立され得る。例えば、2013年3月26日に付与されたHajjar,etal.に対する米国特許第8,404,658 B2号明細書、第27欄第45~60行を参照のこと。
【0109】
本明細書のある実施形態では、送達はプラスミドを介する。かかるプラスミド組成物では、投薬量は、反応を誘発するのに十分な量のプラスミドでなければならない。例えば、プラスミド組成物中のプラスミドDNAの好適な分量は、約0.1~約2mg、または約1μg~約10μgであり得る。
【0110】
本明細書の用量は平均70kgの個体に基づく。投与頻度は医学または獣医学の実務者(例えば、医師、獣医師)、または当業の科学者の裁量の範囲内にある。
【0111】
レンチウイルス
レンチウイルスは、有糸分裂細胞および分裂終了細胞の両方において感染してその遺伝子を発現する能力を有する複合レトロウイルスである。最も一般的に知られるレンチウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)であり、これは他のウイルスのエンベロープ糖タンパク質を使用して広範囲の細胞型を標的にする。
【0112】
レンチウイルスは以下のとおり調製し得る。pCasES10(これはレンチウイルス移入プラスミド骨格を含む)のクローニング後、10%ウシ胎仔血清含有および抗生物質不含のDMEM中に形質移入前日に50%コンフルエンスとなるようT-75フラスコにおいて低継代(p=5)のHEK293FTを播種した。20時間後、培地をOptiMEM(無血清)培地に交換し、4時間後に形質移入を行った。細胞に10μgのレンチウイルス移入プラスミド(pCasES10)、および以下のパッケージングプラスミド:5μgのpMD2.G(VSV-g偽型)、および7.5ugのpsPAX2(gag/pol/rev/tat)を形質移入した。カチオン性脂質デリバリー剤(50uLリポフェクタミン2000および100ulPlus試薬)を含有する4mL OptiMEM中で形質移入を行った。6時間後、10%ウシ胎仔血清を含有する抗生物質不含DMEMに培地を交換した。
【0113】
レンチウイルスは以下のとおり精製し得る。48時間後にウイルス上清を回収した。初めに上清から残屑を取り除き、0.45um低タンパク質結合(PVDF)フィルターでろ過した。次にそれを超遠心機において24,000rpmで2時間スピンした。ウイルスペレットを50ulのDMEM中に4℃で一晩再懸濁した。次にそれをアリコートに分け、直ちに-80℃で凍結した。
【0114】
別の実施形態では、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)をベースとする最小の非霊長類レンチウイルスベクターもまた、特に眼の遺伝子治療について企図される(例えば、Balagaan,JGene Med 2006;8:275-285、Wiley InterScienceにおいて2005年11月21日にオンラインで発表(www.interscience.wiley.com).DOI:10.1002/jgm.845を参照のこと)。別の実施形態では、RetinoStat(登録商標)、滲出型の加齢性黄斑変性症の治療に対する網膜下注入によって送達される血管新生抑制タンパク質エンドスタチン(endostain)およびアンジオスタチンを発現するウマ伝染性貧血ウイルスベースのレンチウイルス遺伝子治療ベクターもまた企図され(例えば、Binleyet al.,HUMAN GENE THERAPY 23:980-991(2012年9月)を参照のこと)、本発明のCRISPR-Cas系用に改良され得る。
【0115】
別の実施形態において、HIV tat/revにより共有される共通のエクソンを標的にするsiRNAと、核小体局在TARデコイと、抗CCR5特異的ハンマーヘッド型リボザイムとを有する自己不活性化レンチウイルスベクター(例えば、DiGiustoet al.(2010)SciTransl Med 2:36ra43を参照)を本発明のCRISPR-Cas系に使用しおよび/または適合させることができる。最低でも患者体重キログラム当たり2.5×10個のCD34+細胞を採取し、2×10細胞/mlの密度で2mML-グルタミン、幹細胞因子(100ng/ml)、Flt-3リガンド(Flt-3L)(100ng/ml)、およびトロンボポエチン(10ng/ml)(CellGenix)を含有するX-VIVO15培地(Lonza)中において16~20時間予備的に刺激することができる。予備刺激した細胞は、フィブロネクチン(25mg/cm)(RetroNectin、タカラバイオ株式会社)でコーティングした75cm組織培養フラスコにおいてレンチウイルスを感染多重度5で16~24時間形質導入し得る。
【0116】
レンチウイルスベクターはパーキンソン病の治療などで開示されており、例えば、米国特許出願公開第20120295960号明細書および米国特許第7303910号明細書および同第7351585号明細書を参照のこと。レンチウイルスベクターはまた、眼疾患の治療についても開示されており、例えば、米国特許出願公開第20060281180号明細書、同第20090007284号明細書、同第20110117189号明細書;同第20090017543号明細書;同第20070054961号明細書、同第20100317109号明細書を参照のこと。レンチウイルスベクターはまた、脳への送達についても開示されており、例えば、米国特許出願公開第20110293571号明細書;同第20110293571号明細書、同第20040013648号明細書、同第20070025970号明細書、同第20090111106号明細書および米国特許第7259015号明細書を参照のこと。
【0117】
RNA送達
RNA送達:CRISPR酵素、例えばCas9、および/または本RNAのいずれか、例えばガイドRNAはまた、RNAの形態でも送達することができる。Cas9mRNAはインビトロ転写を用いて作成することができる。例えば、Cas9 mRNAは、βグロビン-ポリAテール(120個以上の一連のアデニン)から以下のエレメント:T7_プロモーター-コザック配列(GCCACC)-Cas9-3’UTRを含むPCRカセットを使用して合成することができる。このカセットは、T7ポリメラーゼによる転写に使用することができる。ガイドRNAもまた、T7_プロモーター-GG-ガイドRNA配列を含むカセットからのインビトロ転写を用いて転写させることができる。
【0118】
発現を増強しかつ毒性を低下させるため、CRISPR酵素および/またはガイドRNAを、プソイドUまたは5-メチル-Cを使用して改変することができる。
【0119】
mRNA送達方法は、現在、肝臓送達に特に有望である。詳細には、AAV8について、肝臓への送達に特に好ましい。
【0120】
ナノ粒子
CRISPR酵素mRNAおよびガイドRNAは、ナノ粒子または脂質エンベロープを使用して同時に送達されてもよい。
【0121】
例えば、Su X,Fricke J,Kavanagh DG,Irvine DJ(「脂質エンベロープを有するpH応答性ポリマーナノ粒子を使用したインビトロおよびインビボmRNA送達(Invitro and in vivo mRNAdelivery using lipid-enveloped pH-responsivepolymer nanoparticles)」MolPharm.2011 Jun 6;8(3):774-87.doi:10.1021/mp100390w.電子出版2011年4月1日)は、ポリ(β-アミノエステル)(PBAE)コアがリン脂質二重層シェルに包まれている被覆されている生分解性のコア-シェル構造を有するナノ粒子について記載する。これらはインビボmRNA送達のために開発された。pH応答性PBAE成分がエンドソーム破壊を促進するように選択された一方、脂質表面層はポリカチオンコアの毒性を最小限に抑えるように選択された。従って、これは本発明のRNAを送達に好ましい。
【0122】
一実施形態では、自己集合性生体接着ポリマーをベースとするナノ粒子が企図され、これは、いずれも脳への、ペプチドの経口送達、ペプチドの静脈内送達およびペプチドの経鼻送達に適用され得る。他の実施形態、例えば疎水性薬物の経口吸収および経眼送達もまた企図される。分子エンベロープ技術は、保護されかつ疾患部位に送達されるエンジニアリングされたポリマーエンベロープを含む(例えば、Mazza,M.etal.ACSNano,2013.7(2):1016-1026;Siew,A.,etal.Mol Pharm,2012.9(1):14-28;Lalatsa,A.,etal.J Contr Rel,2012.161(2):523-36;Lalatsa,A.,et al.,MolPharm,2012.9(6):1665-80;Lalatsa,A.,et al.Mol Pharm,2012.9(6):1764-74;Garrett,N.L.,etal.J Biophotonics,2012.5(5-6):458-68;Garrett,N.L.,etal.J Raman Spect,2012.43(5):681-688;Ahmad,S.,et al.JRoyal Soc Interface 2010.7:S423-33;Uchegbu,I.F.ExpertOpin Drug Deliv,2006.3(5):629-40;Qu,X.,et al.Biomacromolecules,2006.7(12):3452-9およびUchegbu,I.F.,et al.Int J Pharm,2001.224:185-199を参照のこと)。標的組織に応じて、単回または複数回用量で約5mg/kgの用量が企図される。
【0123】
一実施形態において、MITのDan Anderson研究室により開発された、RNAを癌細胞に送達して腫瘍成長を止めることができるナノ粒子を、本発明のCRISPR Cas系に使用しおよび/または適合させることができる。詳細には、Anderson研究室は、新規生体材料およびナノ製剤の合成、精製、特徴付け、ならびに配合のための完全に自動化されたコンビナトリアルシステムを開発した。例えば、Alabiet al.,Proc Natl Acad SciU S A.2013 Aug 6;110(32):12881-6;Zhanget al.,Adv Mater.2013 Sep 6;25(33):4641-5;Jianget al.,Nano Lett.2013 Mar 13;13(3):1059-64;Karagianniset al.,ACS Nano.2012 Oct 23;6(10):8484-7;Whiteheadet al.,ACS Nano.2012 Aug 28;6(8):6922-9およびLeeet al.,Nat Nanotechnol.2012 Jun 3;7(6):389-93を参照のこと。
【0124】
米国特許出願公開第20110293703号明細書は、ポリヌクレオチドの投与に特に有用なリピドイド化合物に関し、これは本発明のCRISPRCas系の送達に適用することができる。一態様において、アミノアルコールリピドイド化合物が、細胞または対象に送達される薬剤と組み合わされて、マイクロパーティクル、ナノ粒子、リポソーム、またはミセルを形成する。粒子、リポソーム、またはミセルによって送達される薬剤は、気体、液体、または固体の形態であってもよく、および薬剤はポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、または小分子であってもよい。アミノアルコール(minoalcohol)リピドイド化合物を他のアミノアルコールリピドイド化合物、ポリマー(合成または天然)、界面活性剤、コレステロール、炭水化物、タンパク質、脂質等と組み合わせて粒子を形成してもよい。これらの粒子は、次に場合により医薬賦形剤と組み合わされて医薬組成物を形成し得る。
【0125】
米国特許出願公開第0110293703号明細書はまた、アミノアルコールリピドイド化合物の調製方法も提供する。アミンの1つ以上の等価物を好適な条件下でエポキシド末端化合物の1つ以上の等価物と反応させることにより、本発明のアミノアルコールリピドイド化合物が形成される。特定の実施形態では、アミンの全てのアミノ基がエポキシド末端化合物と完全に反応して第三級アミンを形成する。他の実施形態では、アミンの全てのアミノ基がエポキシド末端化合物と完全には反応せずに第三級アミンを形成し、従ってアミノアルコールリピドイド化合物に第一級または第二級アミンが生じる。これらの第一級または第二級アミンはそのまま残るか、または異なるエポキシド末端化合物などの別の求電子剤と反応し得る。当業者によって理解されるであろうとおり、アミンが過剰量未満のエポキシド末端化合物と反応することにより、種々の数のテイルを有する複数の異なるアミノアルコールリピドイド化合物がもたらされ得る。特定のアミンは2つのエポキシド由来化合物テイルで完全に官能化され得る一方、他の分子はエポキシド由来化合物テイルで完全には官能化されない。例えば、ジアミンまたはポリアミンは分子の種々のアミノ部分の1、2、3、または4個のエポキシド由来化合物テイルを含み、第一級、第二級、および第三級アミンをもたらし得る。特定の実施形態では、全てのアミノ基が完全に官能化されるわけではない。特定の実施形態では、同じ種類のエポキシド末端化合物の2つが使用される。他の実施形態では、2つ以上の異なるエポキシド末端化合物が使用される。アミノアルコールリピドイド化合物の合成は溶媒を伴いまたは伴わずに実施され、および合成は30~100℃の範囲の高温、好ましくは約50~90℃で実施されてもよい。調製されたアミノアルコールリピドイド化合物は場合により精製されてもよい。例えば、アミノアルコールリピドイド化合物の混合物を精製して特定の数のエポキシド由来化合物テイルを有するアミノアルコールリピドイド化合物を生じさせてもよい。または混合物を精製して特定の立体異性体または位置異性体を生じさせてもよい。アミノアルコールリピドイド化合物はまた、アルキルハロゲン化物(例えばヨウ化メチル)または他のアルキル化剤を使用してアルキル化されてもよく、および/またはアシル化されてもよい。
【0126】
米国特許出願公開第0110293703号明細書はまた、本発明の方法によって調製されるアミノアルコールリピドイド化合物のライブラリも提供する。これらのアミノアルコールリピドイド化合物は、液体ハンドラー、ロボット、マイクロタイタープレート、コンピュータ等が関わるハイスループット技術を用いて調製および/またはスクリーニングされ得る。特定の実施形態では、アミノアルコールリピドイド化合物は、ポリヌクレオチドまたは他の作用物質(例えば、タンパク質、ペプチド、小分子)を細胞に形質移入するその能力に関してスクリーニングされる。
【0127】
米国特許出願公開第20130302401号明細書は、コンビナトリアル重合を用いて調製されているポリ(β-アミノアルコール)(PBAA)のクラスに関する。本発明のPBAAは生命工学的および生物医学的応用において、コーティング(医療器具またはインプラント用の薄膜または多層膜のコーティングなど)、添加剤、材料、賦形剤、非生物付着剤、マイクロパターニング剤、および細胞封入剤として使用され得る。表面コーティングとして使用される場合、これらのPBAAはインビトロおよびインビボの両方でその化学構造に応じた種々のレベルの炎症を誘発した。この材料クラスの大きい化学的多様性により、インビトロでマクロファージ活性化を阻害するポリマーコーティングを同定することが可能となった。さらに、これらのコーティングは、カルボキシル化ポリスチレンマイクロパーティクルの皮下植え込み後の炎症細胞の動員を低減し、および線維症を低減する。これらのポリマーを使用して細胞封入用の高分子電解質複合カプセルを形成し得る。この発明はまた、抗菌コーティング、DNAまたはsiRNA送達、および幹細胞組織工学などの他の多くの生物学的応用性も有し得る。米国特許出願公開第20130302401号明細書の教示は、本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0128】
別の実施形態において、脂質ナノ粒子(LNP)が企図される。詳細には、脂質ナノ粒子に封入された抗トランスサイレチン低分子干渉RNA(例えば、Coelhoet al.,N Engl J Med 2013;369:819-29を参照のこと)を本発明のCRISPR Cas系に適用し得る。静脈内投与される約0.01~約1mg/kg体重の用量が企図される。注射関連反応のリスクを低減するための与薬が企図され、デキサメタゾン、アセトアミノフェン(acetampinophen)、ジフェンヒドラミンまたはセチリジン、およびラニチジンなどが企図される。5用量について4週間おきにキログラム当たり約0.3mgの複数回用量もまた企図される。
【0129】
LNPは、肝臓へのsiRNAの送達に極めて有効であることが示されており(例えば、Taberneroet al.,Cancer Discovery,April 2013,Vol.3,No.4,363-470頁を参照のこと)、従って肝臓へのCRISPRCasの送達が企図される。2週間おきの6mg/kgのLNPの約4用量の投薬量が企図され得る。Taberneroet al.は、0.7mg/kgで投与されるLNPの最初の2サイクル後に腫瘍退縮が観察され、6サイクルが終わるまでに患者が部分奏効を達成して、リンパ節転移が完全に退縮しかつ肝腫瘍が実質的に縮小したことを実証した。この患者では40用量後に完全奏効が得られ、患者は26ヶ月間にわたる用量の投与を受けた後にも寛解を保っており、治療を完了させた。RCC患者ならびにVEGF経路阻害薬による以前の治療後に進行している腎臓、肺、およびリンパ節を含む肝外疾患部位を有する患者の2人は、全ての部位で約8~12ヶ月間安定であり、PNETおよび肝転移を有する患者は18ヶ月間(36用量)の延長試験を継続し、安定であった。
【0130】
しかしながら、LNPの電荷を考慮しなければならない。カチオン性脂質は負電荷脂質と組み合わせると非二重層構造を誘導し、それにより細胞内送達が促進されるためである。荷電したLNPは静脈注射後急速に循環から取り除かれるため、pKa値が7未満のイオン化可能なカチオン性脂質が開発された(例えば、Rosinet al,MolecularTherapy,vol.19,no.12,1286-2200頁,Dec.2011を参照のこと)。siRNAオリゴヌクレオチドなどの負電荷ポリマーは低いpH値(例えばpH4)でLNPに負荷することができ、ここではイオン化可能な脂質が正電荷を示す。しかしながら、生理学的pH値では、LNPは、より長い循環時間と適合する低い表面電荷を呈する。4種のイオン化可能なカチオン性脂質、すなわち1,2-ジリネオイル(dilineoyl)-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-ケト-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinKDMA)、および1,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLinKC2-DMA)に注目が集まっている。これらの脂質を含有するLNPsiRNA系は、インビボで肝細胞において顕著に異なる遺伝子サイレンシング特性を呈し、第VII因子遺伝子サイレンシングモデルを用いて順にDLinKC2-DMA>DLinKDMA>DLinDMA>>DLinDAPに従い効力が異なることが示されている(例えば、Rosinet al,MolecularTherapy,vol.19,no.12,1286-2200頁,Dec.2011を参照のこと)。特にDLinKC2-DMAを含有する製剤について、1μg/mlレベルの投薬量が企図され得る。
【0131】
Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,1286-2200頁,Dec.2011)によるLNPの調製およびCRISPRCas封入を使用しおよび/または適合させることができる。カチオン性脂質1,2-ジリネオイル(dilineoyl)-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレイルオキシケト-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinK-DMA)、1,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLinKC2-DMA)、(3-o-[2’’-(メトキシポリエチレングリコール2000)サクシノイル]-1,2-ジミリストイル-sn-グリコール(PEG-S-DMG)、およびR-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-1,2-ジミリスチルオクスルプロピル(dimyristyloxlpropyl)-3-アミン(PEG-C-DOMG)がTekmiraPharmaceuticals(Vancouver、カナダ)によって提供されてもよく、または合成されてもよい。コレステロールはSigma(StLouis、MO)から購入することができる。特定のCRISPR Cas RNAが、DLinDAP、DLinDMA、DLinK-DMA、およびDLinKC2-DMA(40:10:40:10モル比のカチオン性脂質:DSPC:CHOL:PEGS-DMGまたはPEG-C-DOMG)を含有するLNPに封入されてもよい。必要な場合、細胞取込み、細胞内送達、および体内分布を評価するため0.2%SP-DiOC18(Invitrogen、Burlington、カナダ)を含めてもよい。封入は、カチオン性脂質:DSPC:コレステロール:PEG-c-DOMG(40:10:40:10モル比)で構成される脂質混合物を最終脂質濃度が10mmol/lとなるようにエタノール中に溶解することにより実施され得る。脂質のこのエタノール溶液を、30%エタノールvol/volの最終濃度が生じるように50mmol/lクエン酸塩、pH4.0に滴下しながら添加して多重膜小胞を形成し得る。エクストルーダー(NorthernLipids、Vancouver、カナダ)を使用して2つの積み重ねた80nm Nucleporeポリカーボネートフィルターに通して多重膜小胞を押し出した後、大きい単層小胞が形成され得る。封入は、30%エタノールvol/volを含有する50mmol/lクエン酸塩、pH4.0中に2mg/mlで溶解したRNAを、押し出した予成形された大きい単層小胞に滴下しながら添加し、かつ最終RNA/脂質重量比が0.06/1wt/wtとなるまで常に混合しながら31℃で30分間インキュベートすることにより達成され得る。エタノールの除去および製剤緩衝液の中和は、Spectra/Por2再生セルロース透析膜を使用してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4に対して16時間透析することにより実施された。NICOMP370粒度測定器、小胞/強度モード、およびガウスフィッティング(Nicomp Particle Sizing,Santa Barbara,CA)を使用した動的光散乱によりナノ粒度分布を決定し得る。3つ全てのLNP系の粒度は直径約70nmであり得る。透析前および透析後に収集した試料からVivaPureDMiniHカラム(Sartorius Stedim Biotech)を使用して遊離siRNAを除去することにより、siRNA封入効率を決定し得る。封入されたRNAを溶出ナノ粒子から抽出し、260nmで定量化し得る。siRNAと脂質との比は、WakoChemicals USA(Richmond、VA)のCholesterolE酵素アッセイを使用して小胞中のコレステロール含量を計測することにより決定された。
【0132】
Rosin et al,Molecular Therapy,vol.19,no.12,1286-2200頁,Dec.2011による大きいLNPの調製を使用しおよび/または適合させることができる。DLinKC2-DMA、DSPC、およびコレステロールを50:10:38.5モル比で含有するエタノール中に、脂質プレミックス溶液(20.4mg/ml総脂質濃度)を調製し得る。その脂質プレミックスに酢酸ナトリウムを0.75:1(酢酸ナトリウム:DLinKC2-DMA)のモル比で添加し得る。続いて混合物を1.85容積のクエン酸緩衝液(10mmol/l、pH3.0)と激しく撹拌しながら合わせることにより脂質を水和させると、35%エタノールを含有する水性緩衝液中で自発的なリポソーム形成が生じ得る。このリポソーム溶液を37℃でインキュベートして粒度を時間依存的に増加させ得る。インキュベーション中種々の時点でアリコートを取り出し、動的光散乱(ZetasizerNano ZS、Malvern Instruments、Worcestershire、英国)によってリポソーム粒度の変化を調べ得る。所望の粒度に達したら、総脂質の3.5%の最終PEGモル濃度が得られるようにリポソーム混合物にPEG脂質水溶液(ストック=35%(vol/vol)エタノール中10mg/mlPEG-DMG)を添加し得る。PEG-脂質の添加時、リポソームはその粒度であるはず、さらなる成長は有効に抑えられる。次に空のリポソームにRNAを約1:10(wt:wt)のsiRNA対総脂質比で添加し、続いて37℃で30分間インキュベートすると、ロードされたLNPが形成され得る。続いてこの混合物をPBS中で一晩透析し、0.45μmシリンジフィルターでろ過し得る。
【0133】
球状核酸(Spherical NucleicAcid:SNA(商標))構築物および他のナノ粒子(特に金ナノ粒子)もまた、意図する標的にCRISPR/Cas系を送達する手段として企図される。多量のデータにより、核酸で機能化された金ナノ粒子をベースとするAuraSenseTherapeuticsの球状核酸(SNA(商標))構築物が、以下のような複数の成功の鍵に基づき代替的なプラットフォームより優れていることが示されている:
高い生体内安定性。その高密度のローディングにより、大部分のカーゴ(DNAまたはsiRNA)は細胞内部で構築物に結合したまま留まり、核酸安定性および酵素分解に対する抵抗性が付与される。
送達性。研究された全ての細胞型について(例えば、ニューロン、腫瘍細胞系等)、この構築物は担体または形質移入剤の必要なしに99%の形質移入効率を実証している。
治療的ターゲティング。構築物のユニークな標的結合親和性および特異性により、一致する標的配列への精巧な特異性が実現される(すなわち、限られたオフターゲット効果)。
優れた有効性。この構築物は、先行する従来の形質移入試薬(リポフェクタミン2000およびシトフェクチン)より性能が著しく優れている。
低毒性。この構築物は、明らかな毒性なしに種々の培養細胞、初代細胞、および組織に侵入することができる。
顕著な免疫応答がない。全ゲノムマイクロアレイ試験およびサイトカイン特異的タンパク質アッセイによって計測したとき、この構築物が誘発する全般的な遺伝子発現の変化は最小限である。
化学的調整可能性。いかなる単一の薬剤または組み合わせによる薬剤(例えば、タンパク質、ペプチド、小分子)を使用しても、構築物の表面を合うように調整することができる。
【0134】
核酸ベースの治療薬向けのこのプラットフォームは、炎症および感染症、癌、皮膚障害および心血管疾患を含めた多数の病状に適用可能であり得る。
【0135】
引用可能文献としては、以下が挙げられる:Cutler et al.,.J.Am.Chem.Soc.2011 133:9254-9257、Hao et al.,Small.2011 7:3158-3162、Zhanget al.,ACS Nano.2011 5:6962-6970、Cutler et al.,J.Am.Chem.Soc.2012 134:1376-1391、Young et al.,.Nano Lett.2012 12:3867-71、Zhenget al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2012109:11975-80、Mirkin,Nanomedicine 2012 7:635-638、Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.2012 134:16488-1691、Weintraub,Nature 2013 495:S14-S16、Choi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2013 110(19):7625-7630、Jensenet al.,Sci.Transl.Med.5,209ra152(2013)およびMirkin,etal.,Small,doi.org/10.1002/smll.201302143。
【0136】
siRNAを含む自己集合性ナノ粒子は、例えば腫瘍血管新生発現インテグリンを標的化する手段としてポリエチレングリコール(PEG)の遠位端にArg-Gly-Asp(RGD)ペプチドリガンドが結合したPEG化されているポリエチレンイミン(PEI)と共に構成され、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)の発現、従って腫瘍血管新生を阻害するsiRNAの送達に用いられ得る(例えば、Schiffelerset al.,NucleicAcids Research,2004,Vol.32,No.19を参照のこと)。2~6の範囲にわたるリン酸(核酸)に対する正味モル過剰のイオン化可能窒素(ポリマー)を与えるようにカチオン性ポリマーと核酸との等容積の水溶液を混合することにより、ナノプレックスを調製し得る。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用により、約100nmの平均粒度分布を有するポリプレックスの形成がもたらされ、ひいてはここではナノプレックスと称される。Schiffelerset alの自己集合性ナノ粒子での送達には、約100~200mgのCRISPRCasの投薬量が想定される。
【0137】
Bartlett et al.(PNAS,September 25,2007,vol.104,no.39)のナノプレックスもまた本発明に適用することができる。Bartlettet al.のナノプレックスは、2~6の範囲にわたるリン酸(核酸)に対する正味モル過剰のイオン化可能な窒素(ポリマー)を与えるようにカチオン性ポリマーと核酸との等容積の水溶液を混合することにより調製される。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電相互作用により、約100nmの平均粒度分布を有するポリプレックスの形成がもたらされ、ひいてはここではナノプレックスと称される。Bartlettet al.のDOTA-siRNAは以下のとおり合成された:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸モノ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(DOTA-NHSエステル)がMacrocyclics(Dallas、TX)から注文された。アミン改変RNAセンス鎖が、炭酸緩衝液(pH9)中の100倍モル過剰のDOTA-NHS-エステルと共に微量遠心管に加えられた。室温で4時間撹拌することにより内容物を反応させた。DOTA-RNAセンスコンジュゲートをエタノール沈殿させ、水中に再懸濁し、非改変アンチセンス鎖とアニールさせてDOTA-siRNAが得られた。液体は全てChelex-100(Bio-Rad、Hercules、CA)で前処理され、微量金属汚染が除去された。シクロデキストリン含有ポリカチオンを使用することによりTf標的化および非標的化siRNAナノ粒子を形成し得る。典型的には、ナノ粒子は水中に3(±)の電荷比および0.5g/リットルのsiRNA濃度で形成された。標的化ナノ粒子の表面上にあるアダマンタン-PEG分子の1パーセントがTfで改変された(アダマンタン-PEG-Tf)。ナノ粒子は注入用に5%(wt/vol)グルコース担体溶液中に懸濁された。
【0138】
Davis et al.(Nature,Vol 464,15 April 2010)は、標的化ナノ粒子送達系を使用するsiRNA臨床試験を行った(臨床試験登録番号NCT00689065)。標準治療の治療法に不応性の固形癌患者が21日サイクルの1、3、8および10日目に30分間の静脈内注入によって標的化ナノ粒子の用量の投与を受ける。ナノ粒子は、以下を含有する合成送達系からなる:(1)線状シクロデキストリン系ポリマー(CDP)、(2)癌細胞の表面上のTF受容体(TFR)と会合するようにナノ粒子の外側に提示されるヒトトランスフェリンタンパク質(TF)標的リガンド、(3)親水性ポリマー(生体液中でのナノ粒子の安定性を促進するために使用されるポリエチレングリコール(PEG))、および(4)RRM2(臨床で使用される配列は旧称siR2B+5であった)の発現を低下させるように設計されたsiRNA。TFRは長い間悪性細胞で上方制御されることが知られており、RRM2は確立された抗癌標的である。これらのナノ粒子(臨床バージョンは名称CALAA-01)は、非ヒト霊長類における反復投与試験において良好な忍容性があることが示されている。リポソーム送達によりsiRNAを投与されたのは一人の慢性骨髄性白血病患者であるが、Daviset al.の臨床試験は、標的化送達系でsiRNAを全身的に送達して固形癌患者を治療する最初の人体試験である。この標的化送達系がヒト腫瘍に機能性siRNAの有効な送達を提供できるかどうかを確かめるため、Daviset al.は、3つの異なる投与コホートの3人の患者;患者A、BおよびCの生検を調べた(全患者が転移性黒色腫を有し、それぞれ18、24および30mgm-2 siRNAのCALAA-01用量を受けていた)。本発明のCRISPR Cas系にも同様の用量を企図し得る。本発明の送達は、線状シクロデキストリン系ポリマー(CDP)、癌細胞の表面上でTF受容体(TFR)と会合するようにナノ粒子の外側に提示されるヒトトランスフェリンタンパク質(TF)標的リガンドおよび/または親水性ポリマー(例えば、生体液中でのナノ粒子の安定性を促進するために使用されるポリエチレングリコール(PEG))を含有するナノ粒子によって実現し得る。
【0139】
エキソソーム
エキソソームは、RNAおよびタンパク質を輸送する内因性ナノ小胞であり、マウスにおいて低分子干渉(si)RNAを脳に送達することができる。免疫原性を低下させるため、Alvarez-Ervitiet al.(2011,NatBiotechnol 29:341)はエキソソーム産生に自己由来の樹状細胞を使用した。ターゲティングは、ニューロン特異的RVGペプチド3に融合したLamp2b(エキソソーム膜タンパク質)を発現するように樹状細胞をエンジニアリングすることにより実現された。エレクトロポレーションによって精製エキソソームに外来性siRNAを負荷した。静脈内注入したRVG標的化エキソソームはGAPDHsiRNAを脳内のニューロン、ミクログリア、オリゴデンドロサイトに特異的に送達し、特異的遺伝子ノックダウンをもたらした。RVGエキソソームに対する前曝露はノックダウンを減弱せず、他の組織における非特異的な取り込みは観察されなかった。エキソソーム媒介性siRNA送達の治療可能性は、アルツハイマー病の治療標的であるBACE1の強力なmRNA(60%)およびタンパク質(62%)ノックダウンによって実証された。
【0140】
免疫学的に不活性なエキソソームのプールを得るため、Alvarez-Erviti et al.は同種の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ハプロタイプを有する近交系C57BL/6マウスから骨髄を採取した。未成熟樹状細胞は、MHC-IIおよびCD86などのT細胞活性化因子を欠くエキソソームを多量に産生するため、Alvarez-Ervitiet al.は7日間にわたり顆粒球/マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)で樹状細胞を選択した。翌日、十分に確立された超遠心プロトコルを用いて培養上清からエキソソームを精製した。産生されたエキソソームは物理的に均質であり、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)および電子顕微鏡法によって決定するときサイズ分布のピークが直径80nmであった。Alvarez-Ervitiet al.は、10細胞当たり6~12μgのエキソソーム(タンパク質濃度に基づき計測)を得た。
【0141】
次に、Alvarez-Erviti et al.は、ナノスケール適用に適合させたエレクトロポレーションプロトコルを用いて改変エキソソームに外来性カーゴを負荷する可能性を調べた。ナノメートルスケールでの膜粒子のエレクトロポレーションは十分に特徴付けられていないことに伴い、エレクトロポレーションプロトコルの実験最適化のため非特異的Cy5標識siRNAが使用された。エキソソームの超遠心および溶解後、封入されたsiRNAの量がアッセイされた。400Vおよび125μFでのエレクトロポレーションがsiRNAの最も大きい保持率をもたらし、これが後続の全ての実験に使用された。
【0142】
Alvarez-Erviti etal.は、150μgのRVGエキソソームに封入された各BACE1 siRNA150μgを正常C57BL/6マウスに投与し、4つの対照:未治療マウス、RVGエキソソームのみを注入したマウス、インビボカチオン性リポソーム試薬と複合体形成したBACE1siRNAを注入したマウス、およびsiRNAに静電的に結合する9個のD-アルギニンとコンジュゲートしたRVGペプチドであるRVG-9Rと複合体形成したBACE1siRNAを注入したマウスとノックダウン効率を比較した。投与3日後に皮質組織試料を分析し、siRNA-RVG-9R治療マウスおよびsiRNARVGエキソソーム治療マウスの両方で、BACE1mRNAレベルの有意な低下(それぞれ66%±15%、P<0.001および61%±13%、P<0.01)によってもたらされた有意なタンパク質ノックダウン(45%、P<0.05、対して62%、P<0.01)が観察された。さらに、出願人らは、RVG-エキソソーム治療動物において、アルツハイマー病理におけるアミロイド斑の主成分である全β-アミロイド1-42レベルの有意な低下(55%、P<0.05)を実証した。観察された低下は、正常マウスでBACE1阻害薬の脳室内注射後に実証されたβ-アミロイド1-40の低下より大きかった。Alvarez-Ervitiet al.は、BACE1開裂産物に対する5’-cDNA末端迅速増幅(RACE)を実施し、これがsiRNAによるRNAi媒介性ノックダウンのエビデンスを提供した。
【0143】
最後に、Alvarez-Erviti et al.は、IL-6、IP-10、TNFαおよびIFN-α血清濃度を評価することにより、siRNA-RVGエキソソームがインビボで免疫応答を誘導したかどうかを調べた。siRNA-RVGエキソソーム処置後、IL-6分泌を強力に刺激したsiRNA-RVG-9Rとは対照的に、siRNA-形質移入試薬治療と同様、全てのサイトカインで有意な変化は示されなかったことから、エキソソーム治療の免疫学的に不活性なプロファイルが確認された。エキソソームが僅か20%のsiRNAしか封入しないことを所与とすれば、RVG-エキソソームによる送達は、同等のmRNAノックダウンおよびより高いタンパク質ノックダウンが対応する免疫刺激レベルなしに5分の1のsiRNAで達成されたことから、RVG-9R送達と比べて効率が高いものと見られる。この実験は、RVG-エキソソーム技術の治療可能性を実証したもので、潜在的に神経変性疾患に関連する遺伝子の長期サイレンシングに適している。Alvarez-Ervitiet al.のエキソソーム送達系は、治療標的、特に神経変性疾患に対する本発明のCRISPR-Cas系の送達に適用することができる。約100~1000mgのRVGエキソソームに封入された約100~1000mgのCRISPRCasの投薬量が本発明について企図され得る。
【0144】
El-Andaloussi etal.(Nature Protocols 7,2112-2126(2012))は、培養細胞に由来するエキソソームをどのようにインビトロおよびインビボでのsiRNA送達に利用することができるかを開示している。このプロトコルは、初めに、ペプチドリガンドと融合したエキソソームタンパク質を含む、発現ベクターの形質移入による標的化エキソソームの作成を記載する。次に、El-Andaloussiet al.は、エキソソームを形質移入細胞上清からどのように精製し特徴付けるかを説明する。次に、El-Andaloussiet al.は、siRNAをエキソソームに負荷するための決定的に重要なステップを詳述する。最後に、El-Andaloussiet al.は、どのようにエキソソームを使用してsiRNAをインビトロおよびインビボでマウス脳に効率的に送達するかを概説する。予想される結果の例においては、エキソソーム媒介性siRNA送達が機能アッセイにより評価され、イメージングもまた提供される。プロトコル全体は約3週間かかる。自己由来の樹状細胞から産生されたエキソソームを使用して本発明に係る送達または投与が実施されてもよい。
【0145】
別の実施形態において、Wahlgren et al.の血漿エキソソーム(Nucleic Acids Research,2012,Vol.40,No.17 e130)が企図される。エキソソームは、樹状細胞(DC)、B細胞、T細胞、マスト細胞、上皮細胞および腫瘍細胞を含む多くの細胞型によって産生されるナノサイズの小胞(30~90nmのサイズ)である。これらの小胞は、後期エンドソームの内側ヘの出芽によって形成され、次に細胞膜との融合時に細胞外環境に放出される。エキソソームは天然では細胞間にRNAを運び、この特性は遺伝子治療において有用であり得る。
【0146】
血漿からのエキソソームの調製は、バフィーコートを900gで20分間遠心して血漿を単離し、続いて細胞上清を回収し、300gで10分間遠心して細胞を除去しおよび16500gで30分間遠心し、続いて0.22mmフィルターでろ過することにより行われる。エキソソームを120000gで70分間超遠心することによりペレット化する。エキソソームへのsiRNAの化学的形質移入を、RNAiヒト/マウススターターキット(Quiagen、Hilden、ドイツ)で製造者の指示に従い実施する。100mlPBSにsiRNAを2mmol/mlの最終濃度で添加する。HiPerFect形質移入試薬の添加後、混合物を室温で10分間インキュベートする。過剰のミセルを除去するため、アルデヒド/硫酸塩ラテックスビーズを使用してエキソソームを再単離する。エキソソームへのCRISPRCasの化学的形質移入もsiRNAと同様に行い得る。エキソソームは健常ドナーの末梢血から単離された単球およびリンパ球と共培養され得る。従って、CRISPRCasを含有するエキソソームをヒトの単球およびリンパ球に導入し、再びヒトに自家導入し得ることが企図され得る。このように、本発明に係る送達または投与は血漿エキソソームを使用して実施し得る。
【0147】
リポソーム
本発明に係る送達または投与はリポソームで実施することができる。リポソームは、内側の水性区画を取り囲む単層膜または多重膜脂質二重層、および比較的不透過性の外側の親油性リン脂質二重層で構成される球形小胞構造である。リポソームは生体適合性で非毒性であり、親水性および親油性の両方の薬物分子を送達し、そのカーゴを血漿酵素による分解から保護し、かつそのロードを生体膜および血液脳関門(BBB)を越えて輸送することができるため、薬物送達担体として大きな注目を集めている(例えば、レビューについてはSpuchand Navarro,Journalof Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
【0148】
リポソームは、いくつかの異なる種類の脂質から作製することができる;しかしながら、薬物担体としてのリポソームの作成にはリン脂質が最も一般的に用いられる。リポソームの形成は脂質薄膜を水溶液と混合すると自発的に起こるが、また、ホモジナイザー、ソニケーター、または押出し機器を使用して振盪の形態の力を加えることにより促進することもできる(例えば、レビューについてはSpuchand Navarro,Journalof Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
【0149】
リポソームに、その構造および特性を改良するためいくつかの他の添加剤を添加してもよい。例えば、リポソームの構造の安定化を助けるため、およびリポソーム内部のカーゴの漏出を防ぐため、リポソーム混合物にコレステロールまたはスフィンゴミエリンのいずれかを添加してもよい。さらに、リポソームは水素化卵ホスファチジルコリンまたは卵ホスファチジルコリン、コレステロール、およびジセチルリン酸から調製され、その平均小胞サイズは約50および100nmに調整された(例えば、レビューについてはSpuchand Navarro,Journalof Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
【0150】
従来のリポソーム製剤は、主に、天然リン脂質ならびに1,2-ジステアロイル(distearoryl)-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DSPC)、スフィンゴミエリン、卵ホスファチジルコリンおよびモノシアロガングリオシドなどの脂質で構成される。この製剤はリン脂質のみで出来ているため、リポソーム製剤は多くの難題に直面しており、その一つが血漿中での不安定性である。これらの難題を解消しようとするいくつかの試みが、特に脂質膜の操作において行われている。これらの試みの一つはコレステロールの操作に重点を置いたものであった。従来の製剤にコレステロールを加えると、封入された生物活性化合物の血漿中への急速な放出が抑えられ、または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)の安定性が増す(例えば、レビューについてはSpuchand Navarro,Journalof Drug Delivery,vol.2011,Article ID 469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照のこと)。
【0151】
特に有利な実施形態では、トロイの木馬リポソーム(分子トロイの木馬としても知られる)が望ましく、プロトコルはhttp://cshprotocols.cshlp.org/content/2010/4/pdb.prot5407.longで見ることができる。これらの粒子は、導入遺伝子を血管内注入後に脳全体に送達することを可能にする。制約により拘束されるものではないが、特異抗体が表面にコンジュゲートした中性脂質粒子はエンドサイトーシスによって血液脳関門を通過することが可能であると考えられる。本出願人は、トロイの木馬リポソームを利用してCRISPRヌクレアーゼファミリーを血管内注入で脳に送達することは、胚を操作する必要なしに全脳トランスジェニック動物を可能にし得るものと仮定する。リポソームでの生体内投与には約1~5gのDNAが企図され得る。
【0152】
別の実施形態では、CRISPR Cas系が安定核酸脂質粒子(SNALP)などのリポソームで投与されてもよい(例えば、Morrisseyet al.,Nature Biotechnology,Vol.23,No.8,August 2005を参照のこと)。SNALP中の標的化された約1、3または5mg/kg/日の特定のCRISPRCasを毎日静脈注射することが企図される。毎日の治療は約3日間にわたり、次に毎週、約5週間にわたり得る。別の実施形態において、約(abpit)1または2.5mg/kgの用量で静脈注射によって投与される特定のCRISPRCasが封入されたSNALP)もまた企図される(例えば、Zimmerman et al.,Nature Letters,Vol.441,4 May 2006を参照のこと)。SNALP製剤は、脂質3-N-[(wメトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-!,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(PEG-C-DMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)およびコレステロールを2:40:10:48モルパーセント比で含有し得る(例えば、Zimmermanet al.,Nature Letters,Vol.441,4 May 2006を参照のこと)。
【0153】
別の実施形態において、安定核酸脂質粒子(SNALP)は、高度に血管新生したHepG2由来肝腫瘍に対する分子の送達に有効であるが、血管新生に乏しいHCT-116由来肝腫瘍では有効でないことが分かっている(例えば、Li,GeneTherapy(2012)19,775-780を参照のこと)。SNALPリポソームは、D-Lin-DMAおよびPEG-C-DMAをジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロールおよびsiRNAと、25:1脂質/siRNA比および48/40/10/2モル比のコレステロール/D-Lin-DMA/DSPC/PEG-C-DMAを用いて配合することにより調製され得る。得られたSNALPリポソームは約80~100nmのサイズである。
【0154】
さらに別の実施形態において、SNALPは、合成コレステロール(Sigma-Aldrich、StLouis、MO、米国)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL、米国)、3-N-[(w-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(dimyrestyloxypropylamine)、およびカチオン性1,2-ジリノレイルオキシ-3-N,Nジメチルアミノプロパンを含み得る(例えば、Geisbertet al.,Lancet 2010;375:1896-905を参照のこと)。例えばボーラス静脈内注入として、投与用量当たり約2mg/kgの総CRISPRCas投薬量が企図され得る。
【0155】
さらに別の実施形態において、SNALPは、合成コレステロール(Sigma-Aldrich)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC;AvantiPolar Lipids Inc.)、PEG-cDMA、および1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N;N-ジメチル)アミノプロパン(DLinDMA)を含み得る(例えば、Judge,J.Clin.Invest.119:661-673(2009)を参照のこと)。インビボ試験に使用される製剤は、約9:1の最終的な脂質/RNA質量比を含み得る。
【0156】
RNAiナノ医薬の安全性プロファイルがAlnylam PharmaceuticalsのBarros and Gollobによりレビューされている(例えば、Advanced Drug Delivery Reviews 64(2012)1730-1737を参照のこと)。安定核酸脂質粒子(SNALP)は、4個の異なる脂質-低pHでカチオン性のイオン化可能な脂質(DLinDMA)、中性ヘルパー脂質、コレステロール、および拡散性ポリエチレングリコール(PEG)-脂質で構成される。この粒子は直径が約80nmであり、生理的pHで電荷的に中性である。製剤化の間、イオン化可能な脂質が粒子形成中に脂質をアニオン性siRNAと縮合させる働きをする。徐々に酸性になるエンドソーム条件下で正に荷電すると、イオン化可能な脂質はまたSNALPとエンドソーム膜との融合も媒介し、siRNAが細胞質中に放出されることが可能となる。PEG脂質は粒子を安定化させ、形成中の凝集を抑え、続いて薬物動態特性を向上させる中性の親水性外面を提供する。
【0157】
現在までにSNALPsiRNA製剤を使用した2つの臨床プログラムが開始されている。TekmiraPharmaceuticalsは最近、高LDLコレステロールの成人ボランティアにおけるSNALP-ApoBの第I相単回投与試験を完了した。ApoBは主に肝臓および空腸で発現し、VLDLおよびLDLの集合および分泌に必須である。17人の対象者が単一用量のSNALP-ApoB(7用量レベルにわたり用量漸増)を受けた。肝毒性(前臨床試験に基づき潜在的な用量制限毒性として予想された)のエビデンスはなかった。1人(2人のうち)の対象者は最も高い用量で免疫系刺激と一致するインフルエンザ様症状を起こし、試験を終了させる決断がなされた。
【0158】
Alnylam Pharmaceuticalsも同様にALN-TTR01を進めており、ALN-TTR01は上記に記載されるSNALP技術を用いるもので、突然変異体TTRおよび野生型TTRの両方の肝細胞産生を標的にしてTTRアミロイドーシス(ATTR)を治療する。3つのATTR症候群:家族性アミロイド神経障害(FAP)および家族性アミロイド心筋症(FAC)-いずれもTTRにおける常染色体優性突然変異により引き起こされる;および野生型TTRにより引き起こされる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)が記載されている。ATTR患者においてALN-TTR01のプラセボ対照単回用量漸増第I相試験が最近完了した。ALN-TTR01が15分間の静脈内注入として31人の患者(23人が治験薬および8人がプラセボ)に0.01~1.0mg/kg(siRNA基準)の用量範囲内で投与された。治療は十分な忍容性があり、肝機能検査値の有意な増加はなかった。23人中3人の患者において≧0.4mg/kgで注入関連反応が認められた;全患者とも注入速度を下げたことに応答し、全員が試験を続行した。2人の患者において1mg/kgの最も高い用量で最小限かつ一過性の血清サイトカインIL-6、IP-10およびIL-1raの上昇が(前臨床試験およびNHP試験から予想されたとおり)認められた。ALN-TTR01の期待される薬力学的効果である血清TTRの低下が1mg/kgで観察された。
【0159】
さらに別の実施形態において、SNALPは、カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG-脂質を可溶化することにより作製されてもよく、それらがエタノール中にそれぞれ40:10:40:10のモル比で溶解された(Sempleet al.,Nature Niotechnology,Volume 28 Number 2 February 2010,pp.172-177を参照)。この脂質混合物が、それぞれ30%(vol/vol)および6.1mg/mlの最終エタノールおよび脂質濃度となるように水性緩衝液(50mMクエン酸塩、pH4)に混合しながら添加され、22℃で2分間平衡させた後、押し出された。水和した脂質が、動的光散乱分析によって決定するとき70~90nmの小胞直径が得られるまで、Lipexエクストルーダー(NorthernLipids)を使用して22℃で2つの積み重ねた80nm孔径フィルター(Nuclepore)に通して押し出された。これは概して1~3回通過させることが必要であった。siRNA(30%エタノールを含有する50mMクエン酸塩、pH4水溶液中に可溶化されている)が、予め平衡化させた(35℃)小胞に約5ml/分の速度で混合しながら添加された。0.06(wt/wt)の最終的な標的siRNA/脂質比に達した後、混合物を35℃でさらに30分間インキュベートすることにより小胞の再構成およびsiRNAの封入が可能にされた。次にエタノールが除去され、透析によるかあるいはタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションにより外側緩衝液がPBS(155mMNaCl、3mM Na2HPO4、1mMKH2PO4、pH7.5)に交換された。制御された段階希釈法プロセスを用いてsiRNAがSNALPに封入された。KC2-SNALPの脂質成分は、57.1:7.1:34.3:1.4のモル比で使用されるDLin-KC2-DMA(カチオン性脂質)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC;AvantiPolar Lipids)、合成コレステロール(Sigma)およびPEG-C-DMAであった。負荷済みの粒子が形成されたところで、SNALPがPBSに対して透析され、使用前に0.2μmフィルターでろ過滅菌された。平均粒度は75~85nmであり、siRNAの90~95%が脂質粒子内に封入された。インビボ試験に使用される製剤の最終的なsiRNA/脂質比は、約0.15(wt/wt)であった。第VII因子siRNAを含有するLNP-siRNA系は使用直前に滅菌PBS中に適切な濃度に希釈され、製剤は10ml/kgの総容積で外側尾静脈から静脈内投与された。この方法は本発明のCRISPRCas系に敷衍することができる。
【0160】
他の脂質
他のカチオン性脂質、例えばアミノ脂質2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)を利用してCRISPRCasをSiRNAと同様に封入し得る(例えば、Jayaraman,Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,8529-8533を参照のこと)。以下の脂質組成を有する予め形成された小胞が企図され得る:それぞれモル比40/10/40/10、および約0.05(w/w)のFVIIsiRNA/総脂質比のアミノ脂質、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロールおよび(R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバメート(PEG-脂質)。70~90nmの範囲の狭い粒度分布および0.11~0.04の低い多分散性指数(n=56)を確実にするため、CRISPRCas RNAを添加する前に、粒子を最大3回まで80nm膜に通して押し出すことができる。極めて強力なアミノ脂質16を含有する粒子が使用されてもよく、ここでは4つの脂質成分16、DSPC、コレステロールおよびPEG-脂質(50/10/38.5/1.5)のモル比がインビボ活性を増強するようにさらに最適化され得る。
【0161】
Michael S D Kormann etal.(「マウスにおける化学改変mRNA送達後の治療用タンパク質の発現(Expressionof therapeuticproteins after delivery of chemically modified mRNA inmice):Nature Biotechnology,Volume:29,Pages:154-157(2011)、オンライン発行2011年1月9日)は、脂質エンベロープを使用したRNAの送達を記載している。脂質エンベロープの使用もまた本発明において好ましい。
【0162】
別の実施形態において、脂質を本発明のCRISPR Cas系と配合して脂質ナノ粒子(LNP)を形成してもよい。脂質としては、限定はされないが、DLin-KC2-DMA4、C12-200およびコリピド(colipid)ジステアロイルホスファチジルコリン(disteroylphosphatidylcholine)、コレステロール、およびPEG-DMGが挙げられ、自発的小胞形成手法を用いてsiRNAの代わりにCRISPRCasと配合され得る(例えば、Novobrantseva,Molecular Therapy-Nucleic Acids(2012)1,e4;doi:10.1038/mtna.2011.3を参照のこと)。成分モル比は約50/10/38.5/1.5(DLin-KC2-DMAまたはC12-200/ジステアロイルホスファチジルコリン(disteroylphosphatidylcholine)/コレステロール/PEG-DMG)であり得る。最終的な脂質:siRNA重量比はDLin-KC2-DMAおよびC12-200脂質ナノ粒子(LNP)の場合にそれぞれ約12:1および9:1であり得る。製剤は約80nmの平均粒子直径を有し、90%超の捕捉効率であり得る。3mg/kg用量が企図され得る。
【0163】
Tekmiraは、米国および米国外に、LNPおよびLNP製剤の種々の態様に関する約95件のパテントファミリーのポートフォリオを有し(例えば、米国特許第7,982,027号明細書;同第7,799,565号明細書;同第8,058,069号明細書;同第8,283,333号明細書;同第7,901,708号明細書;同第7,745,651号明細書;同第7,803,397号明細書;同第8,101,741号明細書;同第8,188,263号明細書;同第7,915,399号明細書;同第8,236,943号明細書および同第7,838,658号明細書ならびに欧州特許第1766035号明細書;同第1519714号明細書;同第1781593号明細書および同第1664316号明細書を参照のこと)、それらは全て本発明に使用しおよび/または適合させることができる。
【0164】
CRISPR Cas系は、タンパク質、タンパク質前駆体、または部分的にもしくは完全にプロセシングされた形態のタンパク質もしくはタンパク質前駆体をコードし得る改変核酸分子を含む組成物の製剤化の態様に関する米国特許出願公開第20130252281号明細書および同第20130245107号明細書および同第20130244279号明細書(ModernaTherapeuticsに譲渡された)にさらに記載されるものなどのPLGAマイクロスフェアに封入されて送達されてもよい。この製剤は、モル比50:10:38.5:1.5~3.0(カチオン性脂質:膜融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)を有し得る。PEG脂質は、限定はされないが、PEG-c-DOMG、PEG-DMGから選択され得る。膜融合性脂質はDSPCであってもよい。Schrumet al.,「エンジニアリングされた核酸の送達および製剤化(Deliveryand Formulationof Engineered Nucleic Acids)」、米国特許出願公開第20120251618号明細書も参照のこと。
【0165】
Nanomericsの技術は、低分子量疎水性薬物、ペプチド、および核酸ベースの治療薬(プラスミド、siRNA、miRNA)を含めた広範囲の治療薬のバイオアベイラビリティの課題に対処する。この技術が明らかな利点を実証している特定の投与経路としては、経口経路、血液脳関門を通る輸送、固形腫瘍ならびに眼への送達が挙げられる。例えば、Mazzaet al.,2013,ACSNano.2013 Feb 26;7(2):1016-26;Uchegbu and Siew,2013,J Pharm Sci.102(2):305-10およびLalatsaet al.,2012,J Control Release.2012 Jul 20;161(2):523-36を参照のこと。
【0166】
米国特許出願公開第20050019923号明細書は、生理活性分子、例えばポリヌクレオチド分子、ペプチドおよびポリペプチドおよび/または医薬品を哺乳類の体に送達するためのカチオン性デンドリマーについて記載している。このデンドリマーは、生理活性分子の送達を、例えば肝臓、脾臓、肺、腎臓または心臓に標的化するのに好適である。デンドリマーは、単純な分枝状単量体単位から段階的な方式で調製される合成三次元巨大分子であり、その性質および機能性を容易に制御し、変えることができる。デンドリマーは、構成要素を多官能性コアに繰り返し加えることによるか(ダイバージェント合成手法)、または多官能コアに向かって繰り返し加える(コンバージェント合成手法)ことにより合成され、構成要素の三次元シェルを加える毎に、より高い世代のデンドリマーの形成がもたらされる。ポリプロピレンイミンデンドリマーはジアミノブタンコアから開始され、それに対して、第一級アミンに対するアクリロニトリルの二重マイケル付加と、続くニトリルの水素化により、2倍の数のアミノ基が付加される。その結果アミノ基の倍加が生じる。ポリプロピレンイミンデンドリマーは100%プロトン化可能な窒素および最大64個の末端アミノ基を含有する(第5世代、DAB64)。プロトン化可能な基は、通常、中性pHでプロトンを受容可能なアミン基である。遺伝子送達剤としてのデンドリマーの使用は、大部分が、それぞれコンジュゲーション単位としてアミン/アミドの混合物またはN-P(O)Sを有するポリアミドアミンおよび亜リン酸含有化合物の使用に主眼が置かれており、遺伝子送達のためのより低世代のポリプロピレンイミンデンドリマーの使用に関する研究は報告されていない。ポリプロピレンイミンデンドリマーはまた、薬物デリバリーおよび周辺のアミノ酸基によって化学的に改変されるときのゲスト分子のその封入のためのpH感受性制御放出系としても研究されている。ポリプロピレンイミンデンドリマーの細胞毒性およびDNAとの相互作用ならびにDAB64の形質移入有効性もまた研究されている。
【0167】
米国特許出願公開第20050019923号明細書は、先行の報告に反して、カチオン性デンドリマー、例えばポリプロピレンイミンデンドリマーが、特異的標的化および低毒性など、遺伝物質などの生理活性分子の標的化デリバリーにおける使用に好適な特性を示すという観察に基づいている。加えて、カチオン性デンドリマーの誘導体もまた生理活性分子の標的化デリバリーに好適な特性を示す。「生理活性ポリマー(BioactivePolymers)」、米国特許出願公開第20080267903号明細書も参照されたく、これは以下を開示している「カチオン性ポリアミンポリマーおよびデンドリマーポリマーを含む種々のポリマーが抗増殖活性を有する、従って新生物および腫瘍、炎症性障害(自己免疫障害を含む)、乾癬およびアテローム性動脈硬化症などの、望ましくない細胞増殖によって特徴付けられる障害の治療に有用であり得ることが示される。こうしたポリマーは単独で活性薬剤として、または他の治療剤、例えば薬物分子または遺伝子治療用核酸の送達媒体として使用され得る。そのような場合、ポリマーそれ自体の固有の抗腫瘍活性は、送達される薬剤の活性を補完し得る」。
【0168】
超荷電タンパク質(supercharged protein)
超荷電タンパク質は、通常高い正または負の正味理論電荷を有するエンジニアリングされたまたは天然に存在するタンパク質の一クラスである。極度に負に荷電したタンパク質および極度に正に荷電したタンパク質の両方が、熱的または化学的に引き起こされる凝集に耐える顕著な能力を呈する。極度に正に荷電したタンパク質はまた、哺乳類細胞に侵入することも可能である。カーゴをこれらのタンパク質、例えばプラスミドDNA、siRNA、または他のタンパク質と会合させることにより、インビトロおよびインビボの両方でこれらの巨大分子を哺乳類細胞に機能的に送達することが可能となり得る。DavidLiuの研究室は、2007年に超荷電タンパク質の作成および特徴付けを報告した(Lawrenceet al.,2007,Journalof the American Chemical Society129,10110-10112)。
【0169】
哺乳類細胞に対するsiRNAおよびプラスミドDNAの非ウイルス性送達は、研究および治療の双方の適用に価値がある(Akincet al.,2010,Nat.Biotech.26,561-569)。精製+36GFPタンパク質(または他の極度に正に荷電したタンパク質)を適切な無血清培地中でsiRNAと混合し、細胞を加える前に複合体を形成させる。この段階で血清を含めると、超荷電タンパク質-siRNA複合体の形成が阻害され、治療の有効性が低下する。以下のプロトコルが種々の細胞系に有効であることが分かっている(McNaughtonet al.,2009,Proc.Natl.Acad.Sci.USA106,6111-6116)。しかしながら、手順を特定の細胞系に最適化するため、タンパク質およびsiRNAの用量を変化させるパイロット実験を実施すべきである。
(1)治療前日、48ウェルプレートにウェル当たり1×10細胞をプレーティングする。
(2)治療当日、精製+36GFPタンパク質を最終濃度が200nMとなるように無血清培地中に希釈する。最終濃度が50nMとなるようにsiRNAを添加する。ボルテックスして混合し、室温で10分間インキュベートする。
(3)インキュベーション中、細胞から培地を吸引し、PBSで1回洗浄する。
(4)+36GFPおよびsiRNAのインキュベーション後、タンパク質-siRNA複合体を細胞に添加する。
(5)細胞を複合体と共に37℃で4時間インキュベートする。
(6)インキュベーション後、培地を吸引し、20U/mLヘパリンPBSで3回洗浄する。細胞を血清含有培地と共に、ノックダウンのアッセイに応じてさらに48時間またはそれより長くインキュベートする。
(7)免疫ブロット、qPCR、表現型アッセイ、または他の適切な方法によって細胞を分析する。
【0170】
David Liuの研究室は、+36GFPが様々な細胞における有効なプラスミド送達試薬であることをさらに見出している。プラスミドDNAはsiRNAより大きいカーゴであるため、プラスミドを有効に複合体化するには、比例してさらなる+36GFPタンパク質が必要となる。有効なプラスミド送達のため、出願人らは、インフルエンザウイルスヘマグルチニンタンパク質由来の既知のエンドソーム破壊ペプチドであるC末端HA2ペプチドタグを有する+36GFPの変異体を開発している。種々の細胞において以下のプロトコルが有効となっているが、上記のとおりプラスミドDNAおよび超荷電タンパク質の用量を特定の細胞系および送達用途に最適化することが勧められる。
(1)治療前日、48ウェルプレートにウェル当たり1×10をプレーティングする。
(2)治療当日、精製p36 GFPタンパク質を最終濃度が2mMとなるように無血清培地中に希釈する。1mgのプラスミドDNAを添加する。ボルテックスして混合し、室温で10分間インキュベートする。
(3)インキュベーション中、細胞から培地を吸引し、PBSで1回洗浄する。
(4)p36 GFPおよびプラスミドDNAのインキュベーション後、細胞にタンパク質-DNA複合体を穏やかに添加する。
(5)細胞を複合体と共に37℃で4時間インキュベートする。
(6)インキュベーション後、培地を吸引し、PBSで洗浄する。血清含有培地中で細胞をインキュベートし、さらに24~48時間インキュベートする。
(7)必要に応じてプラスミド送達を(例えばプラスミドドライブ遺伝子発現により)分析する。
【0171】
例えば、McNaughton etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106,6111-6116(2009);Cronican et al.,ACS Chemical Biology5,747-752(2010);Cronican et al.,Chemistry & Biology 18,833-838(2011);Thompsonet al.,Methodsin Enzymology 503,293-319(2012);Thompson,D.B.,et al.,Chemistry& Biology 19(7),831-843(2012)も参照のこと。この超荷電タンパク質の方法を、本発明のCRISPR Cas系の送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0172】
植込み型装置
別の実施形態において、CRISPR Cas系の送達に植込み型装置もまた企図される。例えば、米国特許出願公開第20110195123号明細書は、薬物を局所的に長時間溶出させる植込み型医療器具が、いくつかの種類のかかる装置、治療の実施態様および植え込み方法を含め、提供されることを開示する。この装置は、例えばマトリックスなどの、装置本体として使用されるポリマー基材と、薬物と、ある場合にはさらなる足場材料、例えば金属または別のポリマー、ならびに可視性およびイメージングを増強する材料とで構成される。薬物の選択は、薬物を局所的に長時間放出するという利点に基づき、ここで薬物は直接的に腫瘍、炎症、変性などの患部の細胞外マトリックス(ECM)に対して、または対症目的で、または損傷した平滑筋細胞に対して、または予防のため放出される。ある種の薬物は、限定はされないが、siRNA、sh RNA、またはアンチセンスRNA/DNA、リボザイムおよびヌクレオシド類似体を含めた、RNA干渉(RNAi)に基づく遺伝子サイレンシング薬である。従って、このシステムは、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。一部の実施形態における植え込み方法は、小線源照射療法および針生検を含め、現在開発され、他の治療に使用されている既存の植え込み手技である。そのような場合、この発明に記載される新規インプラントの寸法は、元のインプラントと同様である。典型的には同じ治療手技の中で数個の装置が植え込まれる。
【0173】
米国特許出願公開第20110195123号明細書に記載されるとおり、腹腔などの体腔に適用可能なシステム、および/または薬物送達系が繋ぎ止められたりまたは取り付けられたりしない、生体安定性および/または分解性および/または生体吸収性ポリマー基材(例えば場合によりマトリックスであってもよい)を含む任意の他の種類の投与を含めた、薬物送達植込み型または挿入型システムが提供される。用語「挿入」には植え込みも含まれることに留意しなければならない。この薬物送達系は、好ましくは米国特許出願公開第20110195123号明細書に記載されるとおりの「Loder」として植え込まれる。
【0174】
1つまたは複数のポリマーは生体適合性で、1つおよび/または複数の薬剤を組み込み、制御された速度での薬剤の放出を可能にし、ここで例えばマトリックスなどのポリマー基材の総容積は、一部の実施形態では場合により、および好ましくは、薬剤の治療レベルに達することを可能にする最大容積以下である。非限定的な例として、かかる容積は、薬剤を負荷するための容積によって必要とされるところに応じて、好ましくは0.1m~1000mmの範囲内である。Loderは場合により、例えば、サイズが機能性によって決まる装置、例えばおよび限定なしに、膝関節、子宮内または子宮頸部リングなどで取り込まれる場合、さらに大きくてもよい。
【0175】
薬物送達系(組成物の送達用)は、一部の実施形態では、好ましくは分解性ポリマーを用いるように設計され、ここで主となる放出機構はバルク浸食である;または一部の実施形態では、非分解性の、または分解が遅いポリマーが使用され、ここで主となる放出機構はバルク浸食よりむしろ拡散であって、外側部分が膜として機能し、かつその内側部分が、長期間にわたり(例えば約1週間~約数ヵ月間)実質的に周囲の影響を受けない薬物リザーバとして機能する。異なる放出機構を備える異なるポリマーの組み合わせもまた場合により用いられ得る。表面における濃度勾配は、好ましくは全薬物放出期間のうちかなりの期間において事実上一定に維持され、従って拡散速度は事実上一定である(「ゼロモード」拡散と称される)。用語「一定」とは、拡散速度が好ましくは治療有効性の下限閾値より高く維持されるが、それでもなお、場合により初期バーストを特徴としおよび/または例えばある程度増減して変動し得ることが意味される。拡散速度は好ましくは長期間にわたりそのように維持され、それは、治療上有効な期間、例えば有効なサイレンシング期間を最適化するのにある程度一定であると考えられる。
【0176】
薬物送達系は場合により、および好ましくは、ヌクレオチドベースの治療剤を、化学的性質であるか、それとも酵素からの攻撃および対象の体における他の要因に起因するかに関わらず、分解から保護するように設計される。
【0177】
米国特許出願公開第20110195123号明細書に記載されるとおりの薬物送達系は、例えば場合により、限定はされないが熱的加熱および冷却、レーザービーム、ならびに集束超音波を含む超音波および/またはRF(高周波)方法または装置を含めた、非侵襲性および/または最小侵襲性の作動および/または加速/減速方法によって、その装置の植え込み時および/または植え込み後に動作する検知および/または作動器具を場合により伴う。
【0178】
米国特許出願公開第20110195123号明細書の一部の実施形態によれば、局所送達部位には、場合により、細胞の高度な異常増殖、および抑制されたアポトーシスによって特徴付けられる標的部位、例えば腫瘍、活動性および/または慢性炎症および感染症、例えば自己免疫病状、変性した組織、例えば筋肉および神経組織、慢性痛、変性部位、ならびに骨折箇所および組織再生が増強される他の創傷箇所、ならびに損傷した心筋、平滑筋および横紋筋が含まれ得る。局所送達部位にはまた、場合により、妊娠、感染症および加齢の予防を含めた予防的活動を果たすことを可能にする部位も含まれる。
【0179】
組成物の植え込み部位、すなわち標的部位は、好ましくは標的化された局所送達に十分に小さい半径、面積および/または容積を特徴とする。例えば、標的部位は場合により約0.1mm~約5cmの範囲の直径を有する。
【0180】
標的部位の位置は、好ましくは治療有効性が最大となるように選択される。例えば、薬物送達系の組成物(場合により上記に記載したとおりの植え込み用装置を伴う)は、場合により、および好ましくは、腫瘍環境、またはその関連する血液供給源の内部もしくはそれに近接して植え込まれる。
【0181】
例えば組成物(場合により装置を伴う)は、場合により膵臓、前立腺、乳房、肝臓の内部もしくはそれに近接して、ニップルを用いて血管系の中などに植え込まれる。
【0182】
標的位置は、場合により以下からなる群から選択される(Loderの植え込みには場合により体内の任意の部位が好適であり得るため、あくまでも非限定的な例として):1.基底核、白質および灰白質におけるパーキンソン病またはアルツハイマー病などにおける変性部位の脳;2.筋萎縮性側索硬化症(ALS)などにおける脊椎;3.HPV感染症を予防するための子宮頸部;4.活動性および慢性炎症関節;5.乾癬などにおける真皮;6.鎮痛効果のための交感神経および感覚(sensoric)神経部位;7.骨内埋込み;8.急性および慢性感染症部位;9.腟内;10.内耳-聴覚系、内耳の迷路、前庭系;11.気管内;12.心内;冠動脈、心外膜;13.膀胱;14.胆管系;15.実質組織、例えば、限定はされないが、腎臓、肝臓、脾臓;16.リンパ節;17.唾液腺;18.歯肉;19.関節内(関節の中);20.眼内;21.脳組織;22.脳室;23.体腔、例えば腹腔(例えば、限定はしないが、卵巣癌);24.食道内および25.直腸内。
【0183】
場合により、システム(例えば組成物を入れた装置)の挿入は標的部位および当該部位の近傍におけるECMへの材料の注入を伴い、標的部位およびかかる部位の近傍の局所的pHおよび/または温度および/またはECMにおける薬物の拡散および/または薬物動態に影響を及ぼす他の生物学的な要因に影響が及ぼされる。
【0184】
場合により、一部の実施形態によれば、前記薬剤の放出は、レーザービーム、放射線、熱的加熱および冷却、および超音波、例えば集束超音波および/またはRF(高周波)方法または装置、および化学的活性化因子を含めた、非侵襲性および/または最小侵襲性のおよび/または他の作動および/または加速/減速方法によって、挿入前および/または挿入時および/または挿入後に動作する検知および/または作動器具を伴い得る。
【0185】
米国特許出願公開第20110195123号明細書の他の実施形態によれば、薬物は好ましくは、以下に記載するとおり、例えば乳房、膵臓、脳、腎臓、膀胱、肺、および前立腺における限局した癌の症例のための、遺伝子サイレンシング生物学的RNAi薬物を含む。さらに、siRNA以外の多くの薬物がLoderにおける封入に適用可能であり、かかる薬物を例えばマトリックスなどのLoder基材で封入し得る限り、この発明に関連して使用することができる。かかる薬物には、背痛の場合に脊椎の近傍に植え込まれるLoder内の真菌感染症用のアムホテリシンB;骨髄炎などでの抗生物質;麻酔薬などの鎮痛薬;アルツハイマー病またはパーキンソン病などにおける抗変性薬を含め、現在この発明以外の方法によって送達されている承認済みの薬物が含まれる。かかるシステムは、本発明のCRISPRCas系の送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0186】
例えば、平滑筋細胞(ステント留置手技中に損傷し、結果として増殖する傾向があるもの)の成長または再成長の防止などの特定の適用について、薬物は、場合により、H19サイレンシングを含め、平滑筋細胞をサイレンシングするsiRNAであるか、またはタキソール、ラパマイシンおよびラパマイシン類似体からなる群から選択される薬物であってもよい。その場合、Loderは好ましくは、一定の速度で長時間放出する薬物溶出性ステント(DES)か、あるいはステントに関連する、別途植え込まれる専用の装置である。この全てについて、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。
【0187】
特定の適用の別の例として、異常な遺伝子発現に起因して神経および筋肉の変性疾患が発症する。サイレンシングRNAの局所送達は、かかる異常な遺伝子発現に干渉するための治療特性を有し得る。小分子薬物および巨大分子を含めた抗アポトーシス薬、抗炎症薬および抗変性薬の局所送達もまた場合により効果があり得る。その場合、Loderは一定速度での長時間放出用に適用されおよび/または別途植え込まれる専用の装置を介して適用される。この全てについて、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。
【0188】
特定の適用のさらに別の例として、精神障害および認知障害が遺伝子改変因子で治療される。サイレンシングRNAによる遺伝子ノックダウンが治療選択肢である。ヌクレオチドベースの薬剤を中枢神経系部位に局所送達するLoderが、限定はされないが、精神病、双極性疾患、神経症性障害および行動性の病気を含めた精神障害および認知障害に対する治療選択肢である。Loderはまた、特定の脳部位に植え込まれると、小分子薬物および巨大分子を含めた薬物も局所送達することができる。この全てについて、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。
【0189】
特定の適用の別の例として、局所部位での自然免疫および/または適応免疫メディエーターのサイレンシングにより、移植臓器拒絶反応を予防することが可能となる。移植臓器および/または移植部位に植え込まれたLoderによるサイレンシングRNAおよび免疫調節試薬の局所送達は、CD8などの免疫細胞を寄せ付けないことによる局所的な免疫抑制が移植臓器に対して活性化された状態にする。この全てについて、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。
【0190】
特定の適用の別の例として、VEGFおよびアンジオゲニンなどを含めた血管成長因子が血管新生に必須である。因子、ペプチド、ペプチドミメティクスの局所送達、またはそれらのリプレッサーの抑制は、重要な治療モダリティである;Loderによる血管新生を刺激する因子、ペプチド、巨大分子および小分子薬物の局所送達およびそれらのリプレッサーのサイレンシングは、末梢性、全身性および心臓の血管疾患に治療効果がある。
【0191】
挿入、例えば植え込みの方法は、場合によりかかる方法を変更することなしに、あるいは場合により軽微な変更のみを伴い、場合により他の種類の組織移植および/または挿入および/または組織採取に既に用いられているものであってもよい。かかる方法には、場合により、限定はされないが、小線源照射療法、生検、超音波を伴うおよび/または伴わない内視鏡検査、例えばERCP、脳組織への定位的方法、腹腔鏡検査、例えば関節、腹部器官、膀胱壁および体腔への腹腔鏡の植え込みが含まれる。
【0192】
CRISPR酵素mRNAおよびガイドRNA
CRISPR酵素mRNAおよびガイドRNAはまた個別に送達されてもよい。CRISPR酵素が発現する時間を与えるため、CRISPR酵素mRNAはガイドRNAより先に送達され得る。CRISPR酵素mRNAはガイドRNA投与の1~12時間前(好ましくは約2~6時間前)に投与され得る。
【0193】
あるいは、CRISPR酵素mRNAおよびガイドRNAは共に投与することができる。有利には、ガイドRNAの第2のブースター用量を、CRISPR酵素mRNA+ガイドRNAの初回投与の1~12時間後(好ましくは約2~6時間後)に投与することができる。
【0194】
最も効率的なゲノム改変レベルを達成するために、CRISPR酵素mRNAおよび/またはガイドRNAのさらなる投与が有用であり得る。
【0195】
毒性およびオフターゲット効果を最小限に抑えるためには、送達されるCRISPR酵素mRNAおよびガイドRNAの濃度を制御することが重要となる。CRISPR酵素mRNAおよびガイドRNAの最適濃度は、細胞または動物モデルで種々の濃度を試験し、ディープシーケンシングを使用して潜在的なオフターゲットゲノム遺伝子座における改変の程度を分析することにより決定し得る。例えば、ヒトゲノムのEMX1遺伝子の5’-GAGTCCGAGCAGAAGAAGAA-3’を標的化するガイド配列について、ディープシーケンシングを使用して以下の2つのオフターゲット遺伝子座、すなわち1:5’-GAGTCCTAGCAGGAGAAGAA-3’および2:5’-GAGTCTAAGCAGAAGAAGAA-3’における改変レベルを評価することができる。オフターゲット改変レベルを最小限に抑えながら最も高いオンターゲット改変レベルが得られる濃度をインビボ送達に選択するべきである。
【0196】
あるいは、毒性レベルおよびオフターゲット効果を最小限に抑えるため、CRISPR 酵素ニッカーゼmRNA(例えばD10A突然変異を有する化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9)を目的の部位を標的化するガイドRNAのペアと共に送達することができる。2つのガイドRNAは以下のとおり隔てられていなければならない。それぞれ赤色(一重下線)および青色(二重下線)のガイド配列(これらの例は化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)Cas9のPAM要件に基づく)。
【0197】
【表2】
【0198】
【表3】
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【0201】
【表6】
【0202】
【表7】
【0203】
この系をさらに調べることにより、出願人らは5’オーバーハングのエビデンスを得ている(例えば、Ranet al.,Cell.2013Sep 12;154(6):1380-9および2013年8月28日に出願された米国仮特許出願第61/871,301号明細書を参照のこと)。出願人らは、2つのガイドRNAと組み合わせたときのCas9ニッカーゼ突然変異体による効率的な開裂に関連するパラメータをさらに同定しており、それらのパラメータには、限定はされないが5’オーバーハングの長さが含まれる。本発明の実施形態において5’オーバーハングは高々200塩基対、好ましくは高々100塩基対、またはより好ましくは高々50塩基対である。本発明の実施形態において5’オーバーハングは少なくとも26塩基対、好ましくは少なくとも30塩基対またはより好ましくは34~50塩基対または1~34塩基対である。本発明の他の好ましい方法では、第1のガイド配列が第1の標的配列の近傍でDNA二重鎖の一方の鎖の開裂を指向し、かつ第2のガイド配列が第2の標的配列の近傍で他方の鎖の開裂を指向することにより、平滑末端または3’オーバーハングが生じる。本発明の実施形態において3’オーバーハングは高々150、100または25塩基対または少なくとも15、10または1塩基対である。好ましい実施形態において3’オーバーハングは1~100塩基対である。
【0204】
本発明の態様は、遺伝子産物の発現を低下させること、または遺伝子産物をコードするDNA分子にテンプレートポリヌクレオチドがさらに導入されること、または2つの5’オーバーハングをリアニーリングおよびライゲートさせることにより介在配列が正確に切り出されること、または遺伝子産物の活性または機能を変化させること、または遺伝子産物の発現を増加させることに関する。本発明のある実施形態において、遺伝子産物はタンパク質である。
【0205】
ガイド配列間に8bp未満のオーバーラップ(-8bpより大きいオフセット)を有する5’オーバーハングを作り出すsgRNAペアのみが、検出可能なインデル形成を媒介することが可能であった。重要なことには、これらのアッセイで使用される各ガイドは、野生型Cas9とペアになるとインデルを効率的に誘導することが可能であり、二重ニッキング活性を予測する際にガイドペアの相対位置が最も重要なパラメータであることが示される。
【0206】
Cas9nとCas9H840AとはDNAの逆の鎖にニックを入れるため、所与のsgRNAペアを有するCas9H840AによるCas9nの置換によってオーバーハング型の逆位が生じるはずである。例えば、Cas9nで5’オーバーハングを生成し得るsgRNAのペアは、原則的には代わりに対応する3’オーバーハングを生成するはずである。従って、Cas9nで3’オーバーハングの生成を生じさせるsgRNAペアを、Cas9H840Aで5’オーバーハングを生成するために使用し得る。予想外にも、本出願人らは、5’および3’オーバーハングの両方(オフセット範囲-278~+58bp)を生成するように設計された一組のsgRNAペアでCas9H840Aを試験したが、インデル形成を観察することはできなかった。Cas9H840Aによる二重ニッキングが可能となるようにsgRNAペアを組み合わせるのに必要な設計基準を特定するには、さらなる研究が必要であり得る。
【0207】
肝臓、プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9(PCSK9)
プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9(PCSK9)はサブチリシンセリンプロテアーゼファミリーのメンバーである。PCSK9は主に肝臓により発現され、肝細胞LDL受容体発現の下方制御に決定的に重要である。血漿中LDL-Cレベルは、PCSK9の機能獲得型突然変異を有する人において極めて高く、それらの人は重度の高コレステロール血症を有するものとして分類される。従って、PCSK9はCRISPRの魅力的な標的である。PCS9Kを標的化するCRISPRは、脂質粒子に製剤化し、例えば約15、45、90、150、250および400μg/kgで静脈内投与されてもよい(例えば、http://www.alnylam.com/capella/wp-content/uploads/2013/08/ALN-PCS02-001-Protocol-Lancet.pdfを参照のこと)。
【0208】
Bailey et al.(J Mol Med(Berl).1999Jan;77(1):244-9)は、エキソビボ体細胞遺伝子治療によるインスリン送達を開示し、これには糖尿病患者から非B細胞体細胞(例えば線維芽細胞)を取り出すこと、およびそれらの細胞を、インスリンを産生し分泌するようにインビトロで遺伝的に変化させることが関わる。細胞は培養下で成長させて、インスリン補充源としてドナーに戻すことができる。このようにして改変された細胞は移植前に評価することができ、予備ストックは凍結保存され得る。患者自身の細胞を使用するため、この手順によれば免疫抑制が不要となり、組織供給の問題が解消される一方で、細胞破壊の繰り返しが回避されるはずである。エキソビボ体細胞遺伝子治療には、複数回の形質移入に適したかつ制御された増殖を起こし易い接触可能でかつロバストな細胞型が必要である。非B細胞体細胞の使用に関連する特別な問題としては、プロインスリンからインスリンへのプロセシング、ならびにグルコース刺激性プロインスリン生合成に対する感受性の付与および調節されたインスリン放出が挙げられる。線維芽細胞、下垂体細胞、腎臓(COS)細胞および卵巣(CHO)細胞を使用した予備的研究からは、これらの課題に対処し得ること、およびエキソビボ体細胞遺伝子治療がインスリン補充療法の実現可能な手法を提供することが示唆される。Baileyet al.のシステムは、本発明のCRISPRCas系の肝臓への送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0209】
Sato et al.の方法(Nature BiotechnologyVolume 26 Number 4 April 2008,Pages 431-442)は、本発明のCRISPR Cas系の肝臓への送達に適用することができる。Sato et al.は、siRNAを有するビタミンA結合リポソームによる治療が、本来致死性のジメチルニトロソアミンによって誘発された肝硬変を有するラットにおいて用量依存的および持続時間依存的に肝線維症をほぼ完全に消散させて生存期間を延長させたことを見出した。カチオン性脂質としてのO,O’-ジテトラデカノイル-N-(a-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド(DC-6-14)と、コレステロールと、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとを4:3:3のモル比(インビトロおよびインビボ遺伝子送達に関して血清添加条件下で高い形質移入効率が示されている)で含有するカチオン性リポソーム(Lipotrust)が北海道システム・サイエンスから購入された。このリポソームは凍結乾燥させた空のリポソームの方法を用いて製造され、使用前に凍結乾燥脂質混合物に再蒸留水(DDW)をボルテックス下で添加することにより1mM(DC-16-4)の濃度で調製された。VA結合リポソームを調製するため、DMSO中に溶解した200nmolのビタミンA(レチノール、Sigma)がリポソーム懸濁液(DC-16-4として100nmol)と、1.5mlチューブにおいて251℃でボルテックスすることにより混合された。siRNAgp46を有するVA結合リポソーム(VA-lip-siRNAgp46)を調製するため、siRNAgp46の溶液(DDW中580pmol/ml)がレチノール結合リポソーム溶液に25℃で撹拌しながら添加された。siRNAとDC-16-4との比は1:11.5(mol/mol)であり、siRNAとリポソームとの比(wt/wt)は1:1であった。リポソームによって取り込まれなかった任意の遊離ビタミンAまたはsiRNAが、マイクロ分配システム(VIVASPIN2濃縮機 30,000MWCO PES、VIVASCIENCE)を使用してリポソーム調製物と分離された。リポソーム懸濁液がフィルターに添加され、25 1℃において1,500gで5分間、3回遠心された。画分が回収され、フィルターに捕捉された材料が、インビトロまたはインビボ使用に対する所望の用量に達するようにPBSで再構成された。ラットに0.75mg/kgsiRNAの3回の注射が隔日で投与された。Sato et al.のシステムは、ヒトに対してSato et al.により記載されるとおりリポソーム中約0.5~1mg/kgのCRISPRCas RNAを送達することにより、本発明のCRISPRCas系の肝臓への送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0210】
インビトロおよびインビボの両方でsiRNAを肝細胞に送達するためのビヒクルに関するRozemaet al.の方法(PNAS,August7,2007,vol.104,no.32)(Rozema et al.がsiRNAダイナミックポリコンジュゲートと命名しているもの)もまた本発明に適用することができる。このダイナミックポリコンジュゲート技術の重要な特徴としては膜作用性ポリマー、このポリマーの活性をそれがエンドソームの酸性環境に達するまで可逆的に遮蔽する能力、および単純な低圧静脈内注入後にインビボでこの改変ポリマーおよびそのsiRNAカーゴを肝細胞に特異的に標的化させる能力が挙げられる。5’アミン改変siRNAを1重量当量(wteq)のNスクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)試薬(Pierce)および0.36wteqのNaHCOと水中において4℃で16時間反応させることにより、SATA改変siRNAが合成される。次に9容積のエタノールを添加することにより改変siRNAを沈殿させ、これが80℃で2時間インキュベートされる。沈殿物が1×siRNA緩衝液(Dharmacon)中に再懸濁され、260nm波長で吸光度を計測することにより定量化される。1.5wt%SMPT(Pierce)を添加することによりPBAVE(5mMTAPS、pH9中30mg/ml)が改変される。1時間のインキュベーション後、5mMTAPS(pH9)を含有する400μlの等張性グルコース溶液に0.8mgのSMPT-PBAVEが添加された。この溶液に50μgのSATA改変siRNAが添加された。[PBAVE]を一定とした用量反応実験について、種々の量のsiRNAが添加される。次に混合物が16時間インキュベートされる。次にこの溶液に、5.6mgのHepes遊離塩基が添加され、続いて3.7mgのCDM-NAGと1.9mgのCDM-PEGとの混合物が添加される。次にこの溶液が室温で少なくとも1時間インキュベートされた後、注射される。CDM-PEGおよびCDM-NAGは、塩化オキサリルを使用することにより生成される酸塩化物から合成される。この酸塩化物に1.1モル当量のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量450)を添加することによりCDM-PEGが生成され、または(アミノエトキシ)エトキシ-2-(アセチルアミノ)-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドを添加することによりCDM-NAGが生成される。最終生成物は、0.1%TFA水/アセトニトリル勾配の逆相HPLCを用いることにより精製される。約25~50μgのsiRNAがマウスに送達された。Rozemaet al.のシステムは、例えば、ヒトに対する送達について約50~約200mgのCRISPRCasの投薬量を想定することにより、本発明のCRISPR Cas系の肝臓への送達に適用することができる。
【0211】

Oakes and Lieberman(Clin Orthop Relat Res.2000 Oct;(379Suppl):S101-12)は、骨への遺伝子の送達を考察している。遺伝子を特定の解剖学的部位で細胞に移入させることにより、成長因子の骨誘導特性を生理学的用量で持続時間にわたり使用して、より有意な治癒反応を促進することができる。特定の解剖学的部位、骨質、および軟部組織エンベロープが、局部遺伝子治療の標的細胞の選択に影響する。骨誘導性担体で治療部位に送達される遺伝子治療ベクターが、有望な結果をもたらしている。複数の研究者が、動物モデルにおいてエキソビボおよびインビボ局部遺伝子治療を使用して面白い結果を示している。かかるシステムは、CRISPRCas系の骨への送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0212】

脳に関する送達の選択肢としては、DNAまたはRNAのいずれかの形態のCRISPR酵素およびガイドRNAをリポソームに封入し、分子トロイの木馬にコンジュゲートして血液脳関門(BBB)を通過させて送達することが含まれる。分子トロイの木馬は、B-gal発現ベクターを非ヒト霊長類の脳に送達するのに有効であることが示されている。同じ手法を用いて、CRISPR酵素とガイドRNAとを含有するベクターを送達することができる。例えば、XiaCF and Boado RJ,Pardridge WM(「アビジン-ビオチン技術を用いたヒトインスリン受容体を介するsiRNAの抗体媒介性ターゲティング(Antibody-mediatedtargeting of siRNA via thehuman insulin receptor using avidin-biotintechnology)」Mol Pharm.2009May-Jun;6(3):747-51.doi:10.1021/mp800194)は、受容体特異的モノクローナル抗体(mAb)およびアビジン-ビオチン技術の併用によって、培養下、およびインビボでの細胞に対する低分子干渉性RNA(siRNA)の送達がどのように可能になるかを記載している。この著者らはまた、標的化するmAbとsiRNAとの間の結合がアビジン-ビオチン技術で安定しており、標的化siRNAの静脈内投与後にインビボで脳などの遠隔部位でのRNAi効果が観察されることも報告する。
【0213】
Zhang et al.(Mol Ther.2003 Jan;7(1):11-8))は、ヒトインスリン受容体(HIR)に対するモノクローナル抗体(MAb)によってインビボでアカゲザル脳に標的化させた、85nmペグ化免疫リポソームで構成される「人工ウイルス」の内部にルシフェラーゼなどのレポーターをコードする発現プラスミドがどのように封入されたかを記載している。HIRMAbは、静脈注射後に、外来性遺伝子を担持するリポソームが血液脳関門にわたるトランスサイトーシスおよび神経細胞膜にわたるエンドサイトーシスを受けることを可能にする。脳におけるルシフェラーゼ遺伝子発現のレベルはラットと比較してアカゲザルにおいて50倍高かった。霊長類脳におけるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子の広範なニューロン発現が、組織化学および共焦点顕微鏡法の両方によって実証された。この著者らは、この手法によって24時間で可逆的な成体トランスジェニックが実現可能になることを示している。従って、免疫リポソームの使用が好ましい。それらが抗体と併せて用いられることにより、特定の組織または細胞表面タンパク質が標的化される。
【0214】
ナノ粒子(Cho,S.,Goldberg,M.,Son,S.,Xu,Q.,Yang,F.,Mei,Y.,Bogatyrev,S.,Langer,R.andAnderson,D.,「低分子干渉RNAを内皮細胞に送達するための脂質様ナノ粒子(Lipid-likenanoparticles forsmall interferingRNA delivery to endothelial cells)」,Advanced Functional Materials,19:3112-3118,2010)またはエキソソーム(Schroeder,A.,Levins,C.,Cortez,C.,Langer,R.,andAnderson,D.,「siRNA送達用の脂質ベースのナノ治療薬(Lipid-basednanotherapeutics forsiRNA delivery)」,Journalof Internal Medicine,267:9-21,2010,PMID:20059641)を介するなど、他の送達手段またはRNAもまた好ましい。
【0215】
実際、エキソソームは、いくらかCRISPR系と似たところがある系であるsiRNAの送達において特に有用であることが示されている。例えば、El-AndaloussiS,et al.(「インビトロおよびインビボでのsiRNAのエキソソーム媒介性送達(Exosome-mediateddelivery of siRNA in vitro and in vivo)」Nat Protoc.2012 Dec;7(12):2112-26.doi:10.1038/nprot.2012.131.電子出版2012年11月15日)は、如何にエキソソームが種々の生物学的関門を越える薬物送達に有望なツールであるか、およびそれをインビトロおよびインビボでのsiRNAの送達に利用することができるかについて記載している。この著者らの手法は、発現ベクターの形質移入によって標的化エキソソームを生成することであり、ペプチドリガンドと融合したエキソソームタンパク質が含まれる。次にエキソソームが形質移入細胞上清から精製されて特徴付けられ、次にそのエキソソームにsiRNAが負荷される。本発明に係る送達または投与をエキソソームで、詳細には限定はされないが脳に実施することができる。
【0216】
ビタミンE(α-トコフェロール)をCRISPR Casとコンジュゲートし、高密度リポタンパク質(HDL)と共に脳に送達することが、例えばUno et al.(HUMAN GENETHERAPY 22:711-719(June2011))によって低分子干渉性RNA(siRNA)を脳に送達するために行われた方法と同様に行われ得る。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または遊離TocsiBACEもしくはToc-siBACE/HDLが充填され、かつ脳注入キット3(Alzet)と接続された浸透圧ミニポンプ(モデル1007D;Alzet、Cupertino、CA)を用いてマウスが注入された。脳注入カニューレは背側第三脳室に注入するため正中線上ブレグマの約0.5mm後側に留置された。Unoet al.は、HDLを伴うToc-siRNAが3nmol程の少なさで、同じICV注入方法によるのと同程度の目標の低下を誘導し得ることを見出した。α-トコフェロールにコンジュゲートしかつ脳に標的化されるHDLと共投与されるCRISPRCasの同程度の投薬量が本発明においてヒトに対して企図されてもよく、例えば、脳に標的化される約3nmol~約3μmolのCRISPRCasが企図され得る。
【0217】
Zou et al.((HUMAN GENE THERAPY22:465-475(April 2011))は、ラットの脊髄におけるインビボ遺伝子サイレンシングのためのPKCγを標的化するショートヘアピンRNAのレンチウイルス媒介性送達方法を記載している。Zouet al.は、髄腔内カテーテルによって1×10形質導入単位(TU)/mlの力価を有する約10μlの組換えレンチウイルスを投与した。脳に標的化されるレンチウイルスベクターで発現するCRISPRCasの同程度の投薬量が本発明においてヒトに対して企図され得る、例えば、1×10形質導入単位(TU)/mlの力価を有するレンチウイルスにおける脳に標的化される約10~50mlのCRISPRCasが企図され得る。
【0218】
標的欠失、治療適用
遺伝子の標的欠失が好ましい。例を実施例18に示す。従って、数ある障害の中でも特に、コレステロール生合成、脂肪酸生合成、および他の代謝疾患に関与する遺伝子、アミロイド病および他の疾患に関与する誤って折り畳まれたタンパク質をコードする遺伝子、細胞形質転換を生じさせる癌遺伝子、潜伏ウイルス遺伝子、およびドミナントネガティブな障害を生じさせる遺伝子が好ましい。ここで例示するとおり、本出願人らによれば、ウイルスまたはナノ粒子のいずれかの送達系を使用した、代謝疾患、アミロイドーシスおよびタンパク質凝集関連疾患、遺伝子突然変異および転座によって生じる細胞形質転換、遺伝子突然変異のドミナントネガティブ効果、潜伏ウイルス感染症、および他の関連症状に罹患している必要性がある対象または患者の肝臓、脳、眼、上皮、造血、または別の組織に対するCRISPR-Cas系の遺伝子送達が好ましい。
【0219】
CRISPR-Cas系の治療適用としては、緑内障、アミロイドーシス、およびハンチントン病が挙げられる。これらは実施例20に例示し、そこに記載される特徴は単独で、または組み合わせで、好ましい。
【0220】
本発明によって治療し得るポリグルタミン伸長病の別の例としては、脊髄小脳失調症1型(SCA1)が挙げられる。低分子ヘアピンRNAを発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが小脳内注入されると、運動協調性が大きく改善し、小脳形態が回復し、かつSCA1マウスのプルキンエ細胞における特徴的なアタキシン-1封入体が消散する(例えば、Xiaet al.,Nature Medicine,Vol.10,No.8,Aug.2004を参照のこと)。詳細には、AAV1およびAAV5ベクターが好ましく、約1×1012ベクターゲノム/mlのAAV力価が望ましい。
【0221】
例として、HIV-1による慢性感染症が治療または予防され得る。これを達成するため、有効範囲および有効性を最大化するようにHIV-1株変異体を考慮しながら、大多数のHIV-1ゲノムを標的化するCRISPR-CasガイドRNAを作成し得る。CRISPR-Cas系の送達は、従来どおり宿主免疫系のアデノウイルスまたはレンチウイルス媒介性感染により達成し得る。手法に応じて、宿主免疫細胞は、a)単離され、CRISPR-Casが形質導入され、選択され、および宿主に再導入されてもよく、またはb)CRISPR-Cas系の全身送達によりインビボで形質導入されてもよい。第1の手法は、抵抗性免疫集団の作成を可能にする一方、第2の手法は宿主内の潜伏ウイルスリザーバを標的化する傾向が強い。これは実施例の節でさらに詳細に考察する。
【0222】
別の例において、Sangamo BioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20130171732号明細書は、ゲノムへの抗HIV導入遺伝子の挿入に関し、この方法は本発明のCRISPRCas系に適用し得る。別の実施形態において、CXCR4遺伝子が標的化されてもよく、SangamoBioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20100291048号明細書のTALE系を、本発明のCRISPRCas系に合わせて改良し得る。Sangamo BioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20130137104号明細書および同第20130122591号明細書ならびにCellectisに譲渡された米国特許出願公開第20100146651号明細書の方法は、遺伝子改変頻度を増加させるためのヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子座の改変に関するため、導入遺伝子の発現にさらに一般的に適用可能であり得る。
【0223】
また、本発明が遺伝子ノックアウト細胞ライブラリを作成することも想定される。各細胞が単一遺伝子のノックアウトを有し得る。これは実施例23に例示する。
【0224】
ES細胞のライブラリを作製してもよく、ここでは各細胞が単一遺伝子のノックアウトを有し、かつES細胞のライブラリ全体はその中のあらゆる遺伝子が一つ一つノックアウトされている。このライブラリは、細胞プロセスならびに疾患における遺伝子機能のスクリーニングに有用である。この細胞ライブラリを作製するには、誘導性プロモーター(例えばドキシサイクリン誘導性プロモーター)によりドライブされるCas9をES細胞にインテグレートし得る。加えて、特異的遺伝子を標的化する単一のガイドRNAをES細胞にインテグレートし得る。ES細胞ライブラリを作製するには、単純に、ヒトゲノムにおける各遺伝子を標的化するガイドRNAをコードする遺伝子のライブラリとES細胞を混合し得る。初めに単一のBxB1attB部位をヒトES細胞のAAVS1遺伝子座に導入し得る。次にBxB1インテグラーゼを使用してAAVS1遺伝子座のBxB1attB部位に対する個々のガイドRNA遺伝子のインテグレーションを促進し得る。インテグレーションを促進するため、各ガイドRNA遺伝子が、単一のattP部位を担持するプラスミド上に含まれてもよい。このようにしてBxB1がゲノムのattB部位をガイドRNA含有プラスミド上のattP部位と組み換え得る。細胞ライブラリを作成するため、インテグレートされた単一のガイドRNAを有しかつCas9発現を誘導する細胞のライブラリを取り得る。誘導後、ガイドRNAによって指定された部位でCas9が二本鎖切断を媒介する。
【0225】
タンパク質治療薬の慢性投与は、特異的タンパク質に対する許容し難い免疫応答を誘発し得る。タンパク質薬物の免疫原性は、いくつかの免疫優性ヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープに起因し得る。これらのタンパク質内に含まれるこれらのHTLエピトープのMHC結合親和性を低下させると、免疫原性がより低い薬物を作成することができる(TangriS,et al.(「免疫原性が低い合理的にエンジニアリングされた治療用タンパク質(Rationallyengineered therapeuticproteins with reduced immunogenicity)」J Immunol.2005 Mar 15;174(6):3187-96)。本発明では、CRISPR酵素の免疫原性は、詳細には、初めにTangriet alにおいてエリスロポエチンに関連して示され、続いて展開された手法に従い低下させることができる。従って、定向進化または合理的設計を使用して、宿主種(ヒトまたは他の種)におけるCRISPR酵素(例えばCa9)の免疫原性を低下させることができる。
【0226】
実施例28において、本出願人らは3つの目的とするガイドRNAを使用し、ごく一部の細胞においてのみ起こるインビボでの効率的なDNA開裂を可視化することができた。本質的に、本出願人らがここで示しているものは、標的化したインビボ開裂である。詳細にはこれは、哺乳動物などの高等生物における特異的標的化もまた達成し得るという概念実証を提供する。またこれは、複数のガイド配列(すなわち別個の標的)を(共送達という意味で)同時に使用することができる点で多重的側面も強調する。換言すれば、本出願人らは、いくつかの異なる配列が同時に、しかし独立して標的化される、多重的手法を使用した。
【0227】
本発明の好ましいベクターであるAAVの作製プロトコルの好適な例を、実施例34に提供する。
【0228】
トリヌクレオチドリピート障害は、治療するのに好ましい病態である。これらもまた本明細書において例示する。
【0229】
例えば、米国特許出願公開第20110016540号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用したトリヌクレオチドリピート伸長障害に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝子改変を記載する。トリヌクレオチドリピート伸長障害は、発生神経生物学が関与しかつ多くの場合に認知ならびに感覚運動機能に影響を及ぼす複合的な進行性障害である。
【0230】
トリヌクレオチドリピート伸長タンパク質は、トリヌクレオチドリピート伸長障害の発症に対する感受性、トリヌクレオチドリピート伸長障害の存在、トリヌクレオチドリピート伸長障害の重症度またはそれらの任意の組み合わせに関連する多様な一組のタンパク質である。トリヌクレオチドリピート伸長障害は、リピートのタイプにより決定される2つの種類に分けられる。最も一般的なリピートはトリプレットCAGであり、これは、遺伝子のコード領域に存在するとき、アミノ酸グルタミン(Q)をコードするものである。従って、これらの障害はポリグルタミン(polyQ)障害と称され、以下の疾患を含む:ハンチントン病(HD);球脊髄性筋萎縮症(SBMA);脊髄小脳失調症(SCA1型、2型、3型、6型、7型、および17型);および歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)。残りのトリヌクレオチドリピート伸長障害はCAGトリプレットが関与しないか、あるいはCAGトリプレットが遺伝子のコード領域になく、従って非ポリグルタミン障害と称される。非ポリグルタミン障害には、脆弱X症候群(FRAXA);脆弱XE精神遅滞(FRAXE);フリードライヒ失調症(FRDA);筋強直性ジストロフィー(DM);および脊髄小脳失調症(SCA8型、および12型)が含まれる。
【0231】
トリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質は、典型的には、トリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質とトリヌクレオチドリピート伸長障害との実験的関連性に基づき選択される。例えば、トリヌクレオチドリピート伸長障害を有する集団では、トリヌクレオチドリピート伸長障害を有しない集団と比べてトリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇しまたは低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、トリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0232】
トリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質の非限定的な例としては、AR(アンドロゲン受容体)、FMR1(脆弱X精神遅滞1)、HTT(ハンチンチン)、DMPK(筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ)、FXN(フラタキシン)、ATXN2(アタキシン2)、ATN1(アトロフィン1)、FEN1(フラップ構造特異的エンドヌクレアーゼ1)、TNRC6A(トリヌクレオチドリピート含有6A)、PABPN1(ポリ(A)結合タンパク質、核1)、JPH3(ジャンクトフィリン3)、MED15(メディエーター複合体サブユニット15)、ATXN1(アタキシン1)、ATXN3(アタキシン3)、TBP(TATAボックス結合タンパク質)、CACNA1A(カルシウムチャネル、電位依存性、P/Q型、α1Aサブユニット)、ATXN80S(ATXN8逆鎖(非タンパク質コード))、PPP2R2B(タンパク質ホスファターゼ2、調節性サブユニットB、β)、ATXN7(アタキシン7)、TNRC6B(トリヌクレオチドリピート含有6B)、TNRC6C(トリヌクレオチドリピート含有6C)、CELF3(CUGBP、Elav様ファミリーメンバー3)、MAB21L1(mab-21様1(C.エレガンス(C.elegans)))、MSH2(mutSホモログ2、結腸癌、非ポリポーシス1型(大腸菌(E.coli)))、TMEM185A(膜貫通タンパク質185A)、SIX5(SIXホメオボックス5)、CNPY3(キャノピー3ホモログ(ゼブラフィッシュ))、FRAXE(脆弱部位、葉酸型、まれ、fra(X)(q28)E)、GNB2(グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、βポリペプチド2)、RPL14(リボソームタンパク質L14)、ATXN8(アタキシン8)、INSR(インスリン受容体)、TTR(トランスサイレチン)、EP400(E1A結合タンパク質p400)、GIGYF2(GRB10相互作用GYFタンパク質2)、OGG1(8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ)、STC1(スタニオカルシン1)、CNDP1(カルノシンジペプチダーゼ1(メタロペプチダーゼM20ファミリー))、C10orf2(染色体10オープンリーディングフレーム2)、MAML3マスターマインド様3(ショウジョウバエ属(Drosophila))、DKC1(先天性角化異常症1、ジスケリン)、PAXIP1(PAX(転写活性化ドメインとの)相互作用タンパク質1)、CASK(カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ(MAGUKファミリー))、MAPT(微小管結合タンパク質τ)、SP1(Sp1転写因子)、POLG(ポリメラーゼ(DNA指向性)、γ)、AFF2(AF4/FMR2ファミリー、メンバー2)、THBS1(トロンボスポンジン1)、TP53(腫瘍タンパク質p53)、ESR1(エストロゲン受容体1)、CGGBP1(CGGトリプレットリピート結合タンパク質1)、ABT1(基礎転写のアクチベータ1)、KLK3(カリクレイン関連ペプチダーゼ3)、PRNP(プリオンタンパク質)、JUN(jun癌遺伝子)、KCNN3(カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3)、BAX(BCL2関連Xタンパク質)、FRAXA(脆弱部位、葉酸型、まれ、fra(X)(q27.3)A(巨精巣症、精神遅滞))、KBTBD10(ケルヒリピートおよびBTB(POZ)ドメイン含有10)、MBNL1(マッスルブラインド様(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、RAD51(RAD51ホモログ(RecAホモログ、大腸菌(E.coli))(S.セレビシエ(S.cerevisiae)))、NCOA3(核内受容体コアクチベーター3)、ERDA1(伸長リピートドメイン、CAG/CTG1)、TSC1(結節性硬化症1)、COMP(軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質)、GCLC(グルタミン酸-システインリガーゼ、触媒サブユニット)、RRAD(糖尿病に付随するRas関連)、MSH3(mutSホモログ3(大腸菌(E.coli)))、DRD2(ドーパミン受容体D2)、CD44(CD44分子(インド人血液型))、CTCF(CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質))、CCND1(サイクリンD1)、CLSPN(クラスピンホモログ(アフリカツメガエル(Xenopuslaevis)))、MEF2A(筋細胞エンハンサー因子2A)、PTPRU(タンパク質チロシンホスファターゼ、受容体型、U)、GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)、TRIM22(トリパルタイトモチーフ含有22)、WT1(ウィルムス腫瘍1)、AHR(アリール炭化水素受容体)、GPX1(グルタチオンペルオキシダーゼ1)、TPMT(チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ)、NDP(ノリエ病(偽膠腫))、ARX(アリスタレス関連ホメオボックス)、MUS81(MUS81エンドヌクレアーゼホモログ(S.セレビシエ(S.cerevisiae)))、TYR(チロシナーゼ(眼皮膚白皮症IA))、EGR1(初期増殖応答1)、UNG(ウラシル-DNAグリコシラーゼ)、NUMBL(numbホモログ(ショウジョウバエ属(Drosophila))様)、FABP2(脂肪酸結合タンパク質2、腸)、EN2(エングレイルドホメオボックス2)、CRYGC(クリスタリン、γC)、SRP14(シグナル認識粒子14kDa(相同AluRNA結合タンパク質))、CRYGB(クリスタリン、γB)、PDCD1(プログラム細胞死1)、HOXA1(ホメオボックスA1)、ATXN2L(アタキシン2様)、PMS2(PMS2減数分裂後分離増加型2(S.セレビシエ(S.cerevisiae)))、GLA(ガラクトシダーゼ、α)、CBL(Cas-Br-M(マウス)エコトロピックレトロウイルス形質転換配列)、FTH1(フェリチン、ヘビーポリペプチド1)、IL12RB2(インターロイキン12受容体、β2)、OTX2(オルトデンティクルホメオボックス2)、HOXA5(ホメオボックスA5)、POLG2(ポリメラーゼ(DNA指向性)、γ2、アクセサリーサブユニット)、DLX2(ディスタルレスホメオボックス2)、SIRPA(シグナル調節タンパク質α)、OTX1(オルトデンティクルホメオボックス1)、AHRR(アリール炭化水素受容体リプレッサー)、MANF(中脳星状細胞由来神経栄養因子)、TMEM158(膜貫通タンパク質158(遺伝子/偽遺伝子))、およびENSG00000078687が挙げられる。
【0233】
トリヌクレオチドリピート伸長障害に関連するタンパク質の好ましいものとしては、HTT(ハンチンチン)、AR(アンドロゲン受容体)、FXN(フラタキシン)、Atxn3(アタキシン)、Atxn1(アタキシン)、Atxn2(アタキシン)、Atxn7(アタキシン)、Atxn10(アタキシン)、DMPK(筋強直性ジストロフィープロテインキナーゼ)、Atn1(アトロフィン1)、CBP(CREB結合タンパク質)、VLDLR(超低密度リポタンパク質受容体)、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0234】
別の態様によれば、CFTR遺伝子に突然変異を有する対象を治療するための遺伝子治療方法が提供され、これは、治療有効量のCRISPR-Cas遺伝子治療粒子を、場合により生体適合性医薬担体を介して、対象の細胞に投与することを含む。好ましくは、標的DNAは突然変異ΔF508を含む。一般に、突然変異が野生型に修復されることが好ましい。この場合、突然変異は、508位にフェニルアラニン(F)のコドンを含む3つのヌクレオチドの欠失である。従って、この場合における修復は、欠損したコドンを突然変異体に再導入することが必要である。
【0235】
この遺伝子修復戦略を実現するため、宿主細胞、細胞または患者にアデノウイルス/AAVベクター系が導入されることが好ましい。好ましくは、この系は、Cas9(またはCas9ニッカーゼ)およびガイドRNAを、F508残基を含有する相同性修復テンプレートを含むアデノウイルス/AAVベクター系と共に含む。これは、先に考察した送達方法の一つによって対象に導入され得る。CRISPR-Cas系はCFTRΔ508キメラガイドRNAによりガイドされ得る。これは、ニックを入れられまたは開裂されるCFTRゲノム遺伝子座の特定の部位を標的にする。開裂後、修復テンプレートは、嚢胞性線維症をもたらしまたは嚢胞性線維症関連症状を引き起こす欠失を補修する相同組換えによって開裂部位に挿入される。適切なガイドRNAでCRISPR系の送達を導きその全身的な導入をもたらすこの戦略を用いて遺伝子突然変異を標的化することにより、表Bにあるような代謝、肝臓、腎臓およびタンパク質の疾患および障害を引き起こす遺伝子を編集しまたは他の形で操作することができる。
【0236】
ゲノム編集
本発明のCRISPR/Cas9系を使用して、これまでTALENおよびZFNを使用して試みられたが成功は限られていた遺伝子突然変異を補修することができる。例えば、デューク大学(DukeUniversity)の公開出願である国際公開第2013163628 A2号パンフレット、「変異遺伝子の遺伝子補修(Genetic Correction of Mutated Genes)」は、例えば、ジストロフィン遺伝子の突然変異に起因して筋肉変性を生じる劣性遺伝の致死性X連鎖性障害であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(「DMD」)に関与するものなど、ヌクレアーゼ媒介性非相同末端結合で補修することのできる未成熟終止コドンおよびトランケート遺伝子産物を生じさせるフレームシフト突然変異を補修する試みを記載している。DMDを引き起こすジストロフィン突然変異の大多数はエクソンの欠失であり、これがリーディングフレームを破壊し、ジストロフィン遺伝子の中途での翻訳終結を引き起こす。ジストロフィンは、筋細胞の完全性および機能の調節に関与する細胞膜のジストログリカン複合体に構造的安定性をもたらす細胞質タンパク質である。本明細書で同義的に使用されるとおりのジストロフィン遺伝子または「DMD遺伝子」は、2.2メガベースで、遺伝子座Xp21にある。一次転写は約2,400kbあり、成熟mRNAは約14kbである。79個のエクソンがタンパク質をコードし、このタンパク質は3500アミノ酸を上回る。多くの場合にDMD患者においてフレーム破壊型欠失にエクソン51が隣接し、これはオリゴヌクレオチドベースのエクソンスキッピングに関する臨床試験において標的化されている。エクソン51スキッピング化合物エテプリルセンに関する臨床試験は、最近になって、48週間にわたる有意な機能上の利益を報告しており、ベースラインと比較して平均47%のジストロフィン陽性線維であった。エクソン51の突然変異は、理想的にはNHEJベースのゲノム編集による永久的な補修に適している。
【0237】
ヒトジストロフィン遺伝子(DMD)から標的配列を開裂するメガヌクレアーゼ変異体に関する方法である、Cellectisに譲渡された米国特許出願公開第20130145487号明細書の方法もまた、本発明のCRISPRCas系に合わせて改良することができる。
【0238】
血液
本発明はまた、CRISPR-Cas系を血液に送達することも企図する。
【0239】
Wahlgren et al.の血漿エキソソーム(Nucleic Acids Research,2012,Vol.40,No.17 e130)が以前記載されており、これを利用してCRISPRCas系を血液に送達し得る。
【0240】
本発明のCRISPR Cas系は、異常ヘモグロビン症、例えばサラセミアおよび鎌状赤血球症を治療することも企図される。例えば、本発明のCRISPRCas系により標的化し得る潜在的標的については、国際公開第2013/126794号パンフレットを参照のこと。
【0241】
Cellectisに譲渡された米国特許出願公開第20110225664号明細書、同第20110091441号明細書、同第20100229252号明細書、同第20090271881号明細書および同第20090222937号明細書は、CREI変異体に関し、ここでは2つのI-CreI単量体のうちの少なくとも一方が、I-CreIのそれぞれ26位~40位および44位~77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能性サブドメインの各々に1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、前記変異体は、共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子またはγC遺伝子とも呼ばれるヒトインターロイキン-2受容体γ鎖(IL2RG)遺伝子からDNA標的配列を開裂することができる。米国特許出願公開第20110225664号明細書、同第20110091441号明細書、同第20100229252号明細書、同第20090271881号明細書および同第20090222937号明細書で同定される標的配列を、本発明のCRISPRCas系に利用することができる。
【0242】
重症複合型免疫不全症(SCID)は、リンパ球Bの機能的欠陥に常に関連したリンパ球T成熟の欠陥により生じる(Cavazzana-Calvoet al.,Annu.Rev.Med.,2005,56,585-602;Fischeret al.,Immunol.Rev.,2005,203,98-109)。全発生率は出生7万5000人につき1人と推定される。未治療のSCID患者は複数の日和見微生物感染を起こし易く、概して1年を超えて生きることはない。SCIDは、家族ドナーからの同種造血幹細胞移植により治療することができる。ドナーとの組織適合性は幅広く異なり得る。SCID形態の一つであるアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の場合、患者は組換えアデノシンデアミナーゼ酵素を注入することにより治療され得る。
【0243】
ADA遺伝子がSCID患者で突然変異することが示されて以来(Giblett et al.,Lancet,1972,2,1067-1069)、SCIDに関与するいくつかの他の遺伝子が同定されている(Cavazzana-Calvoet al.,Annu.Rev.Med.,2005,56,585-602;Fischeret al.,Immunol.Rev.,2005,203,98-109)。SCIDには4つの主要な原因がある:(i)最も高頻度の形態のSCID、SCID-X1(X連鎖SCIDまたはX-SCID)は、IL2RG遺伝子の突然変異により引き起こされ、成熟Tリンパ球およびNK細胞が存在しなくなる。IL2RGは、少なくとも5つのインターロイキン受容体複合体に共通する成分であるγCタンパク質をコードする(Noguchi,etal.,Cell,1993,73,147-157)。これらの受容体はJAK3キナーゼを介していくつかの標的を活性化し(Macchiet al.,Nature,1995,377,65-68)、このJAK3キナーゼの不活性化はγC不活性化と同じ症候群をもたらす;(ii)ADA遺伝子の突然変異は、リンパ球前駆細胞にとって致死的なプリン代謝の欠損をもたらし、ひいてはB、TおよびNK細胞の擬似的欠如がもたらされる;(iii)V(D)J組換えは、免疫グロブリンおよびTリンパ球受容体(TCR)の成熟に必須のステップである。このプロセスに関与する3つの遺伝子である組換え活性化遺伝子1および2(RAG1およびRAG2)およびArtemisの突然変異は、成熟TおよびBリンパ球の欠如をもたらす;および(iv)CD45など、T細胞特異的シグナル伝達に関与する他の遺伝子の突然変異もまた報告されているが、それらは少数例に相当する(Cavazzana-Calvoet al.,Annu.Rev.Med.,2005,56,585-602;Fischeret al.,Immunol.Rev.,2005,203,98-109)。
【0244】
その遺伝的基礎が特定されて以来、主に2つの理由で種々のSCID形態が遺伝子治療手法のパラダイムとなってきた(Fischeret al.,Immunol.Rev.,2005,203,98-109)。第一に、あらゆる血液疾患と同様に、エキソビボ治療を想定することができる。造血幹細胞(HSC)は骨髄から回収し、数回の細胞分裂にわたりその多能性特性を保つことができる。従って、HSCはインビトロで処理し、次に患者に再注入することができ、ここでHSCは骨髄で再増殖する。第二に、SCID患者ではリンパ球の成熟が損なわれているため、補修された細胞が選択的な優位性を有する。従って、少数の補修された細胞が機能性の免疫系を回復することができる。この仮説は、(i)SCID患者における突然変異の復帰に伴う免疫機能の部分的回復(Hirschhornet al.,Nat.Genet.,1996,13,290-295;Stephanet al.,N.Engl.J.Med.,1996,335,1563-1567;Boussoet al.,Proc.Natl.,Acad.Sci.USA,2000,97,274-278;Wadaet al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2001,98,8697-8702;Nishikomoriet al.,Blood,2004,103,4565-4572)、(ii)造血細胞におけるインビトロでのSCID-X1欠損の補修(Candottiet al.,Blood,1996,87,3097-3102;Cavazzana-Calvoet al.,Blood,1996,Blood,88,3901-3909;Tayloret al.,Blood,1996,87,3103-3107;Hacein-Beyet al.,Blood,1998,92,4090-4097)、(iii)動物モデルにおけるインビボでのSCID-X1(Soudaiset al.,Blood,2000,95,3071-3077;Tsaiet al.,Blood,2002,100,72-79)、JAK-3(Buntinget al.,Nat.Med.,1998,4,58-64;Buntinget al.,Hum.GeneTher.,2000,11,2353-2364)およびRAG2(Yates et al.,Blood,2002,100,3942-3949)欠損の補修により、および(iv)遺伝子治療臨床試験の結果により(Cavazzana-Calvoet al.,Science,2000,288,669-672;Aiutiet al.,Nat.Med.,2002;8,423-425;Gasparet al.,Lancet,2004,364,2181-2187)何度も検証されている。
【0245】
Children’s MedicalCenter CorporationおよびPresidentand Fellows of Harvard Collegeに譲渡された米国特許出願公開第20110182867号明細書は、RNAiおよび抗体などの、BCL11A発現または活性の阻害薬によって造血前駆細胞における胎児ヘモグロビン発現(HbF)を調節する方法および使用に関する。米国特許出願公開第20110182867号明細書に開示される標的、例えばBCL11Aは、胎児ヘモグロビン発現を調節するため本発明のCRISPRCas系により標的化し得る。さらなるBCL11A標的に関しては、Bauer et al.(Science 11 October 2013:Vol.342no.6155 pp.253-257)およびXuet al.(Science18 November 2011:Vol.334 no.6058 pp.993-996)も参照のこと。
【0246】

本発明はまた、CRISPR-Cas系を一方または両方の耳に送達することも企図する。
【0247】
研究者は、遺伝子治療を用いて現在の難聴治療、すなわち人工内耳を補助し得るかどうかを調べている。難聴は多くの場合に有毛細胞が失われまたは損傷してシグナルを聴覚ニューロンに中継できないことにより引き起こされる。その場合、人工内耳を使用して音に反応し、電気信号を神経細胞に伝達し得る。しかしこれらのニューロンは、多くの場合に損なわれた有毛による成長因子の放出が減ることに伴い変性し、蝸牛から後退している。
【0248】
米国特許出願公開第20120328580号明細書は、シリンジ、例えば単回投与シリンジを例えば使用した、医薬組成物の耳への注入(例えば、耳介投与)、例えば蝸牛の管腔(例えば、中央階、前庭階、および鼓室階)への注入を記載している。例えば、本明細書に記載される化合物の1つ以上を、鼓室内注入により(例えば中耳に)、および/または外耳、中耳、および/または内耳への注入により投与することができる。かかる方法は当該技術分野では常法として、例えばヒト耳に対するステロイドおよび抗生物質の投与に用いられている。注入は、例えば、耳の正円窓からであっても、または蝸牛嚢からであってもよい。他の内耳投与方法は当該技術分野において公知である(例えば、Saltand Plontke,DrugDiscovery Today,10:1299-1306,2005を参照のこと)。
【0249】
別の投与方法では、医薬組成物はカテーテルまたはポンプによってインサイチュー投与することができる。カテーテルまたはポンプは、例えば、医薬組成物を蝸牛管腔または耳の正円窓および/または結腸の管腔に仕向けることができる。本明細書に記載される化合物の1つ以上を耳、例えば、ヒトの耳に投与するのに好適な例示的薬物送達器具および方法が、McKennaet al.(米国特許出願公開第2006/0030837号明細書)およびJacobsenet al.(米国特許第7,206,639号明細書)により記載される。一部の実施形態では、カテーテルまたはポンプは外科手技中に例えば患者の耳(例えば、外耳、中耳、および/または内耳)に配置され得る。一部の実施形態では、カテーテルまたはポンプは外科手技を必要とすることなく例えば患者の耳(例えば、外耳、中耳、および/または内耳)に配置され得る。
【0250】
あるいはまたは加えて、本明細書に記載される化合物の1つ以上を、人工内耳または補聴器などの、外耳に装着される機械的装置と組み合わせて投与することができる。本発明で使用するのに好適な例示的人工内耳が、Edgeet al.(米国特許出願公開第2007/0093878号明細書)により記載される。
【0251】
一部の実施形態では、上記に記載する投与方法はいずれの順序で組み合わせてもよく、同時であってもまたは分散させてもよい。
【0252】
あるいはまたは加えて、本発明は、例えばCDER Data Standards Manual、第004版(fda.give/cder/dsm/DRG/drg00301.htmにおいて利用可能)に記載されるとおりの、食品医薬品局(Foodand Drug Administration)によって承認された方法のいずれかに従い投与されてもよい。
【0253】
一般に、米国特許出願公開第20120328580号明細書に記載される細胞治療方法を使用して、インビトロでの成熟細胞型の内耳(例えば有毛細胞)となるまたはそれに向けた細胞の完全なまたは部分的な分化を促進することができる。かかる方法により生じる細胞を、次にかかる治療を必要とする患者に移植しまたは植え込むことができる。このような方法を実施するために必要な細胞培養方法について、好適な細胞型の同定および選択方法、選択された細胞の完全なまたは部分的な分化を促進する方法、完全なまたは部分的に分化した細胞型を同定する方法、および完全なまたは部分的に分化した細胞を植え込む方法を含め、以下に記載する。
【0254】
本発明での使用に好適な細胞としては、限定はされないが、本明細書に記載される化合物の1つ以上と例えばインビトロで接触させたときに、完全にまたは部分的に内耳の成熟細胞、例えば有毛細胞(例えば内有毛細胞および/または外有毛細胞)に分化する能力を有する細胞が挙げられる。有毛細胞に分化する能力を有する例示的細胞としては、限定はされないが、幹細胞(例えば、内耳幹細胞、成体幹細胞、骨髄由来幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、皮膚幹細胞、iPS細胞、および脂肪由来幹細胞)、前駆細胞(例えば、内耳前駆細胞)、支持細胞(例えば、ダイテルス細胞、柱細胞、内指節細胞、視蓋細胞およびヘンゼン細胞)、および/または生殖細胞が挙げられる。内耳感覚細胞を補充するための幹細胞の使用が、Liet al.(米国特許出願公開第2005/0287127号明細書)およびLiet al.(米国特許出願第11/953,797号明細書)に記載されている。内耳感覚細胞を補充するための骨髄由来幹細胞の使用が、Edgeet al.、PCT/米国特許出願公開第2007/084654号明細書に記載されている。iPS細胞については、例えば、Cell,Volume131,Issue 5,Pages 861-872(2007);Takahashi and Yamanaka,Cell 126,663-76(2006);Okitaet al.,Nature 448,260-262(2007);Yu,J.et al.,Science318(5858):1917-1920(2007);Nakagawa et al.,Nat.Biotechnol.26:101-106(2008);およびZaehresand Scholer,Cell131(5):834-835(2007)に記載されている。
【0255】
かかる好適な細胞は、1つ以上の組織特異的遺伝子の存在を(例えば定性的にまたは定量的に)分析することにより同定し得る。例えば、1つ以上の組織特異的遺伝子のタンパク質産物を検出することにより遺伝子発現を検出し得る。タンパク質検出技術には、適切な抗原に対する抗体を使用してタンパク質を(例えば細胞抽出物または全細胞を使用して)染色することが含まれる。この場合、適切な抗原は、組織特異的遺伝子発現のタンパク質産物である。原則的には一次抗体(すなわち、抗原と結合する抗体)を標識し得るが、一次抗体を標的とする二次抗体(例えば抗IgG)を使用することがより一般的である(そして可視化が向上する)。この二次抗体は、蛍光色素と、あるいは適切な酵素と比色反応用に、または金ビーズ(電子顕微鏡法用に)、またはビオチン-アビジン系とコンジュゲートされ、これにより一次抗体、ひいては抗原の位置を認識することができるようになる。
【0256】
本発明のCRISPR Cas分子は、米国特許出願公開第20110142917号明細書から改良される組成物によって、医薬組成物を外耳に直接塗布することにより耳に送達し得る。一部の実施形態では医薬組成物は外耳道に塗布される。耳への送達は、耳送達(auraldelivery)または耳送達(otic delivery)とも称され得る。
【0257】
一部の実施形態では本発明のRNA分子はリポソーム製剤またはリポフェクチン製剤などで送達され、当業者に周知の方法により調製され得る。かかる方法は、例えば、米国特許第5,593,972号明細書、同第5,589,466号明細書および同第5,580,859号明細書(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0258】
哺乳類細胞に対するsiRNAの送達の増強および向上を特に目標とする送達系が開発されており(例えば、Shenet al FEBS Let.2003,539:111-114;Xia et al.,Nat.Biotech.2002,20:1006-1010;Reichet al.,Mol.Vision.2003,9:210-216;Sorensenet al.,J.Mol.Biol.2003,327:761-766;Lewiset al.,Nat.Gen.2002,32:107-108およびSimeoniet al.,NAR 2003,31,11:2717-2724を参照のこと)、本発明に適用し得る。siRNAは、最近、霊長類における遺伝子発現を阻害するための使用が成功している(例えばTolentinoet al.,Retina 24(4):660を参照されたく、これもまた本発明に適用することができる。
【0259】
Qi et al.は、新規タンパク質性の(proteidic)送達技術によるインタクトな正円窓からの内耳に対する効率的なsiRNA形質移入方法を開示しており、これは本発明のCRISPRCas系に適用し得る(例えば、Qi etal.,Gene Therapy(2013),1-9を参照のこと)。詳細には、TAT二本鎖RNA結合ドメイン(TAT-DRBD)が(これは、内耳の細胞、例えば内有毛細胞および外有毛細胞、膨大部稜、卵形嚢斑および球形嚢斑にCy3標識siRNAを、インタクトな正円窓を介した透過によって形質移入することができる)、種々の内耳の不快を治療しおよび聴覚機能を維持するのための二本鎖siRNAのインビボ送達に成功している。約40μlの10mMRNAが、耳への投与についての投薬量として企図され得る。
【0260】
Rejali et al.(Hear Res.2007 Jun;228(1-2):180-7)によれば、インプラントによる電気刺激の標的であるらせん神経節ニューロンの良好な維持により人工内耳機能を改善することができ、実験的に聴覚を奪った耳において脳由来神経栄養因子(BDNF)がらせん神経節生存を増強することが以前示されている。Rejaliet al.は、BDNF遺伝子インサートを有するウイルスベクターにより形質導入された線維芽細胞コーティングを含む改良型設計の人工内耳電極を試験した。この種のエキソビボ遺伝子導入を達成するため、Rejaliet al.は、BDNF遺伝子カセットインサートを有するアデノウイルスをモルモット線維芽細胞に形質導入し、これらの細胞がBDNFを分泌したことを決定し、次にアガロースゲルでBDNF分泌細胞を人工内耳電極に結合させて、その電極を鼓室階に植え込んだ。Rejaliet al.は、このBDNFを発現する電極が、植え込みの48日後に対照電極と比較したとき有意に多いらせん神経節ニューロンを蝸牛の基底回転部に維持することが可能であったことを決定し、らせん神経節ニューロンの生存を増強するため人工内耳療法をエキソビボ遺伝子導入と組み合わせることの実現可能性を実証した。かかるシステムは、本発明のCRISPRCas系の耳への送達に適用することができる。
【0261】
Mukherjea et al.(Antioxidants & Redox Signaling,Volume 13,Number 5,2010)は、損傷からのOHCの保護および聴性脳幹反応(ABR)における閾値シフトの低下から明らかなとおり、低分子干渉(si)RNAを使用したNOX3のノックダウンがシスプラチン中毒性難聴を解消したことを報告している。種々の用量のsiNOX3(0.3、0.6、および0.9μg)がラットに投与され、NOX3発現がリアルタイムRT-PCRによって評価された。使用した最も低い用量(0.3μg)のNOX3siRNAは、スクランブルsiRNAまたは未治療の蝸牛の経鼓室投与と比較したときNOX3mRNAのいかなる阻害も示さなかった。しかしながら、より高用量のNOX3 siRNA(0.6および0.9μg)の投与は、対照のスクランブルsiRNAと比較してNOX3発現を低下させた。かかるシステムは、ヒトに対する投与に関して約2mg~約4mgのCRISPRCasの投薬量による経鼓室投与について本発明のCRISPR Cas系に適用し得る。
【0262】
Jung et al.(Molecular Therapy,vol.21no.4,834-841 apr.2013)は、卵形嚢におけるHes5レベルがsiRNAの適用後に低下したこと、およびそれらの卵形嚢における有毛細胞の数が対照治療後と比べて有意に多かったことを実証している。このデータは、siRNA技術が内耳における修復および再生の誘導に有用であり得ること、ノッチシグナル伝達経路が特異的遺伝子発現の阻害に潜在的に有用な標的であることを示唆している。Junget al.は、凍結乾燥したsiRNAに滅菌通常生理食塩水を添加することにより調製した8μgのHes5siRNAを、2μl容積で耳の前庭上皮に注入した。かかるシステムは、ヒトに対する投与に関して約1~約30mgのCRISPRCasの投薬量による耳の前庭上皮への投与について本発明のCRISPR Cas系に適用し得る。
【0263】

本発明はまた、CRISPR-Cas系を一方または両方の眼に送達することも企図する。
【0264】
本発明のさらに別の態様では、CRISPR-Cas系を使用して、Genetic Diseases of the Eye,Second Edition,編者Elias I.Traboulsi,Oxford University Press,2012にさらに記載されるいくつかの遺伝子突然変異により生じる眼の異常が補修され得る。
【0265】
眼への投与には、レンチウイルスベクター、詳細にはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が特に好ましい。
【0266】
別の実施形態において、特に眼の遺伝子療法に対して、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)をベースとする最小非霊長類レンチウイルスベクターもまた企図される(例えば、Balagaan,JGene Med 2006;8:275-285,2005年11月21日オンライン発行,Wiley InterScience(www.interscience.wiley.com).DOI:10.1002/jgm.845を参照のこと)。ベクターは、標的遺伝子の発現をドライブするサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有することが企図される。前房内、網膜下、眼内および硝子体内注射は全て企図される(例えば、Balagaan,JGene Med 2006;8:275-285,2005年11月21日オンライン発行,Wiley InterScience(www.interscience.wiley.com).DOI:10.1002/jgm.845を参照のこと)。眼内注射は手術用顕微鏡の助けを借りて実施される。網膜下注射および硝子体内注射に関しては、軽い指圧により眼を脱出させ、ガラス製顕微鏡スライドカバースリップに覆われた角膜上の一滴の伝播媒質溶液からなるコンタクトレンズシステムを使用して眼底を可視化してもよい。網膜下注射に関しては、5μlHamiltonシリンジに取り付けられた10mmの34ゲージ針の先端を、直接可視化しながら、網膜下腔に針の孔が見えるまで上方赤道強膜から接線方向に後極に向かって進めてもよい。次に、2μlのベクター懸濁液を注入して上方胞状網膜剥離を生じさせ、そのようにして網膜下ベクター投与を確認し得る。この手法は自己閉鎖創強膜切開を作り出し、ベクター懸濁液がRPEによって通常手技の48時間以内に吸収されるまで網膜下腔に維持されることを可能にする。この手技を下半球に繰り返して下方網膜剥離を生じさせてもよい。この技法により、感覚神経網膜およびRPEの約70%がベクター懸濁液に曝露されることになる。硝子体内注射に関しては、針の先端を角膜強膜縁の1mm後方の強膜から進め、2μlのベクター懸濁液を硝子体腔に注入してもよい。前房内注射に関しては、針の先端を角膜強膜縁穿刺によって進め、角膜中央部に向かって送り、および2μlのベクター懸濁液を注入してもよい。前房内注射に関しては、針の先端を角膜強膜縁穿刺によって進め、角膜中央部に向かって送り、および2μlのベクター懸濁液を注入してもよい。これらのベクターは1.0~1.4×1010または1.0~1.4×10形質導入単位(TU)/mlのいずれかの力価で注入され得る。
【0267】
別の実施形態において、滲出型の加齢性黄斑変性症の治療に対する網膜下注入によって送達される血管新生抑制タンパク質エンドスタチン(endostain)およびアンジオスタチンを発現するウマ伝染性貧血ウイルスベースのレンチウイルス遺伝子治療ベクターであるRetinoStat(登録商標)もまた企図される(例えば、Binleyet al.,HUMAN GENE THERAPY 23:980-991(2012年9月)を参照のこと)。かかるベクターを本発明のCRISPR-Cas系用に改良し得る。各眼につき1.1×10形質導入単位/眼(TU/眼)の用量、100μlの総容積のRetinoStat(登録商標)で各眼を治療し得る。
【0268】
別の実施形態において、眼への送達にE1欠失、部分的E3欠失、E4欠失アデノウイルスベクターが企図され得る。28人の進行性新生血管加齢性黄斑変性症(AMD)患者に、ヒト色素上皮由来因子を発現するE1欠失、部分的E3欠失、E4欠失アデノウイルスベクター(AdPEDF.ll)の単回硝子体内注射が投与された(例えば、Campochiaroet al.,Human Gene Therapy 17:167-176(February2006)を参照のこと)。10~109.5粒子単位(PU)の範囲の用量が調べられ、AdPEDF.llに関連する重篤な有害事象および用量制限毒性はなかった(例えば、Campochiaroet al.,Human Gene Therapy 17:167-176(February2006)を参照のこと)。アデノウイルスベクター媒介性眼内遺伝子導入は、眼障害の治療に実行可能な手法であるものと見られ、CRISPRCas系に適用し得る。
【0269】
別の実施形態では、RXi Pharmaceuticalsのsd-rxRNA(登録商標)システムを、眼に対するCRISPRCasの送達に使用しおよび/または適合させることができる。このシステムでは、3μgのsd-rxRNAの単回硝子体内投与がPPIBmRNAレベルの配列特異的低下を14日間にわたりもたらす。sd-rxRNA(登録商標)システムは、ヒトに投与される約3~20mgのCRISPRの用量を企図して本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0270】
Millington-Ward etal.(Molecular Therapy,vol.19no.4,642-649 apr.2011)は、RNA干渉(RNAi)に基づくロドプシン抑制因子と、RNAi標的部位にわたる縮重位置のヌクレオチド変化に起因して抑制に抵抗性のコドン改変ロドプシン代替遺伝子とを送達するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを記載する。6.0×10vpまたは1.8×1010vpAAVのいずれかの注射が、Millington-Ward et al.により眼内に網膜下注射された。Millington-Wardet al.のAAVベクターは、ヒトに投与される約2×1011~約6×1013vpの用量を企図して本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0271】
Dalkara et al.(Sci Transl Med5,189ra76(2013))はまた、眼の硝子体液に対する非傷害性注射後に網膜全体に野生型バージョンの欠陥遺伝子を送達するAAVベクターを作り出すインビボ定向進化に関する。Dalkaraは、7merペプチド提示ライブラリおよびAAV1、2、4、5、6、8、および9のcap遺伝子のDNAシャフリングによって構築されたAAVライブラリを記載している。これらのrcAAVライブラリおよびCAGまたはRhoプロモーター下でGFPを発現するrAAVベクターがパッケージングされ、定量的PCRによってデオキシリボヌクレアーゼ耐性のゲノム力価が得られた。ライブラリがプールされ、初期ライブラリ多様化と、続く3つのインビボ選択ステップとから各々がなる2ラウンドの進化が実施された。かかるステップのそれぞれにおいて、P30rho-GFPマウスに、2mlのイオジキサノール精製リン酸緩衝生理食塩水(PBS)透析ライブラリが約1×1012vg/mlのゲノム力価で硝子体内注射された。Dalkaraet al.のAAVベクターは、ヒトに投与される約1×1015~約1×1016vg/mlの用量を企図して、本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0272】
別の実施形態において、網膜色素変性症(RP)の治療にロドプシン遺伝子が標的化されてもよく、ここではSangamoBioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20120204282号明細書のシステムを、本発明のCRISPRCas系に従い改良し得る。
【0273】
別の実施形態において、Cellectisに譲渡された、ヒトロドプシン遺伝子から標的配列を開裂する方法に関する米国特許出願公開第20130183282号明細書の方法もまた、本発明のCRISPRCas系に合わせて改良し得る。
【0274】
Academia Sinicaに譲渡された米国特許出願公開第20130202678号明細書は、Puf-A遺伝子(これは眼組織の網膜神経節細胞および色素含有細胞で発現し、ユニークな抗アポトーシス活性を示す)を眼の網膜下腔または硝子体内腔に送達することに関する網膜症および視力を脅かす眼科学的障害の治療方法に関する。詳細には、望ましい標的は、zgc:193933、prdm1a、spata2、tex10、rbb4、ddx3、zp2.2、Blimp-1およびHtrA2であり、これらは全て、本発明のCRISPRCas系により標的化し得る。
【0275】
Wu(Cell Stem Cell,13:659-62,2013)は、マウスにおいて白内障を引き起こす単一塩基対突然変異にCas9を導いたガイドRNAを設計し、これはDNA開裂を誘導した。次に接合体修復機構に提供される他の野生型アレルまたはオリゴのいずれかを使用して、変異マウスにおける壊れたアレルの配列が補修され、かつ白内障が引き起こす遺伝的欠陥が補修された。
【0276】
米国特許出願公開第20120159653号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用した黄斑変性症(maculardegeration)(MD)に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝的改変を記載する。黄斑変性症(MD)は、高齢者における視力障害の主な原因であるが、また、スタルガルト病、ソーズビー眼底、および致死性小児神経変性疾患などの、発症年齢が乳児期という若さである小児期疾患の顕著な症状でもある。黄斑変性症は網膜の損傷が原因となって視野中心(斑)の視力喪失をもたらす。この疾患はヒトで観察されるため、現行の既存の動物モデルはこの疾患の主要な特徴を再現しない。MDに関連するタンパク質をコードする突然変異体遺伝子を含む利用可能な動物モデルはまた、極めて可変的な表現型も生じ、ヒト疾患に対する解釈および治療法開発を困難にしている。
【0277】
米国特許出願公開第20120159653号明細書の一態様は、MDに関連するタンパク質をコードする任意の染色体配列を編集することに関し、これは本発明のCRISPRCas系に適用し得る。MDに関連するタンパク質は、典型的にはMDに関連するタンパク質とMD障害との実験的関連性に基づき選択される。例えば、MD障害を有する集団では、MD障害を有しない集団と比べて、MDに関連するタンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、MDに関連するタンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0278】
非限定的な例として、MDに関連するタンパク質としては、限定はされないが以下のタンパク質が挙げられる:(ABCA4)ATP結合カセット、サブファミリーA(ABC1)、メンバー4ACHM1色覚異常(杆体一色型色覚異常)1 ApoE アポリポタンパク質E(ApoE) C1QTNF5(CTRP5) C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質5(C1QTNF5)C2 補体成分2(C2) C3 補体成分(C3) CCL2ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2) CCR2 ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体2(CCR2) CD36 表面抗原分類36 CFB補体因子B CFH 補体因子CFH H CFHR1 補体因子H関連1 CFHR3 補体因子H関連3CNGB3 環状ヌクレオチド開口チャンネルβ3CP セルロプラスミン(CP)CRP C反応性タンパク質(CRP)CST3 シスタチンCまたはシスタチン3(CST3)CTSD カテプシンD(CTSD)CX3CR1 ケモカイン(C-X3-Cモチーフ)受容体1ELOVL4 極長鎖脂肪酸の伸長4 ERCC6 除去修復交差相補げっ歯類修復欠損、相補群6 FBLN5 フィビュリン5 FBLN5フィビュリン5 FBLN6 フィビュリン6 FSCN2 ファスシン(FSCN2)HMCN1 ヘミセンチン(Hemicentrin)1HMCN1 ヘミセンチン1 HTRA1 HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1) HTRA1 HtrAセリンペプチダーゼ1 IL-6 インターロイキン6 IL-8インターロイキン8 LOC387715仮定タンパク質PLEKHA1 プレクストリン相同ドメイン含有ファミリーAメンバー1(PLEKHA1)PROM1 プロミニン1(PROM1またはCD133)PRPH2 ペリフェリン-2 RPGR 網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子 SERPING1 セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードG、メンバー1(C1-阻害因子)TCOF1 トリークル(Treacle)TIMP3 メタロプロテイナーゼ阻害因子3(TIMP3)TLR3 Toll様受容体3。
【0279】
染色体配列が編集されるMD関連タンパク質のアイデンティティは異なってもよく、かつ異なることになる。好ましい実施形態において、染色体配列が編集されるMD関連タンパク質は、ABCR遺伝子によりコードされるATP結合カセット、サブファミリーA(ABC1)メンバー4タンパク質(ABCA4)、APOE遺伝子によりコードされるアポリポタンパク質Eタンパク質(APOE)、CCL2遺伝子によりコードされるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2タンパク質(CCL2)、CCR2遺伝子によりコードされるケモカイン(C-Cモチーフ)受容体2タンパク質(CCR2)、CP遺伝子によりコードされるセルロプラスミンタンパク質(CP)、CTSD遺伝子によりコードされるカテプシンDタンパク質(CTSD)、またはTIMP3遺伝子によりコードされるメタロプロテイナーゼ阻害因子3タンパク質(TIMP3)であり得る。例示的実施形態において、遺伝子改変を受けた動物はラットであり、およびMD関連タンパク質をコードする編集される染色体配列は以下であり得る:(ABCA4)ATP結合カセット、NM_000350サブファミリーA(ABC1)、メンバー4 APOE アポリポタンパク質E NM_138828(APOE) CCL2ケモカイン(C-CNM_031530 モチーフ)リガンド2(CCL2)CCR2ケモカイン(C-C NM_021866モチーフ)受容体2(CCR2)CP セルロプラスミン(CP)NM_012532 CTSD カテプシンD(CTSD) NM_134334 TIMP3メタロプロテイナーゼNM_012886 阻害因子3(TIMP3)。動物または細胞は、MD関連タンパク質をコードする1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上の破壊された染色体配列および破壊されたMD関連タンパク質をコードする0、1、2、3、4、5、6、7個またはそれ以上の染色体にインテグレートされた配列を含み得る。
【0280】
編集されまたはインテグレートされた染色体配列は、変化したMD関連タンパク質をコードするように改変されてもよい。MD関連染色体配列におけるいくつかの突然変異がMDと関連付けられている。MDに関連する染色体配列における突然変異の非限定的な例としては、ABCRタンパク質における、E471K(すなわち471位のグルタミン酸がリジンに変わる)、R1129L(すなわち1129位のアルギニンがロイシンに変わる)、T1428M(すなわち1428位のスレオニンがメチオニンに変わる)、R1517S(すなわち1517位のアルギニンがセリンに変わる)、I1562T(すなわち1562位のイソロイシンがスレオニンに変わる)、およびG1578R(すなわち1578位のグリシンがアルギニンに変わる);CCR2タンパク質における、V64I(すなわち192位のバリンがイソロイシンに変わる);CPタンパク質における、G969B(すなわち969位のグリシンがアスパラギンまたはアスパラギン酸に変わる);TIMP3タンパク質における、S156C(すなわち156位のセリンがシステインに変わる)、G166C(すなわち166位のグリシンがシステインに変わる)、G167C(すなわち167位のグリシンがシステインに変わる)、Y168C(すなわち168位のチロシンがシステインに変わる)、S170C(すなわち170位のセリンがシステインに変わる)、Y172C(すなわち172位のチロシンがシステインに変わる)およびS181C(すなわち181位のセリンがシステインに変わる)を含めた、MDを引き起こすものが挙げられる。MD関連遺伝子および疾患における遺伝的変異の他の関連性は当該技術分野において公知である。
【0281】
心臓
本発明はまた、CRISPR-Cas系を心臓に送達することも企図する。心臓に関しては、心筋向性アデノ随伴(adena-associated)ウイルス(AAVM)、詳細には心臓で優先的遺伝子導入を示したAAVM41が好ましい(例えば、Lin-Yangaet al.,PNAS,March10,2009,vol.106,no.10を参照のこと)。投与は全身投与または局所投与であってよい。全身投与には約1~10×1014ベクターゲノムの投薬量が企図される。例えば、Eulalioet al.(2012)Nature492:376およびSomasuntharam et al.(2013)Biomaterials 34:7790も参照のこと。
【0282】
例えば、米国特許出願公開第20110023139号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼの使用による心血管疾患に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝的改変を記載している。心血管疾患には、概して、高血圧、心臓発作、心不全、および脳卒中およびTIAが含まれる。この開示に記載される方法においては、心血管疾患に関わる任意の染色体配列または心血管疾患に関わる任意の染色体配列によりコードされるタンパク質が利用され得る。心血管関連タンパク質は、典型的には心血管関連タンパク質と心血管疾患の発症との実験的関連性に基づき選択される。例えば、心血管障害を有する集団では、心血管障害を有しない集団と比べて心血管関連タンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、心血管関連タンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0283】
例として、染色体配列は、限定はされないが、IL1B(インターロイキン1、β)、XDH(キサンチンデヒドロゲナーゼ)、TP53(腫瘍タンパク質p53)、PTGIS(プロスタグランジン12(プロスタサイクリン)シンターゼ)、MB(ミオグロビン)、IL4(インターロイキン4)、ANGPT1(アンギオポエチン1)、ABCG8(ATP結合カセット、サブファミリーG(WHITE)、メンバー8)、CTSK(カテプシンK)、PTGIR(プロスタグランジン12(プロスタサイクリン)受容体(IP))、KCNJ11(カリウム内向き整流性チャネル、サブファミリーJ、メンバー11)、INS(インスリン)、CRP(C反応性タンパク質、ペントラキシン関連)、PDGFRB(血小板由来成長因子受容体、βポリペプチド)、CCNA2(サイクリンA2)、PDGFB(血小板由来成長因子βポリペプチド(サル肉腫ウイルス(v-sis)癌遺伝子ホモログ))、KCNJ5(カリウム内向き整流性チャネル、サブファミリーJ、メンバー5)、KCNN3(カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3)、CAPN10(カルパイン10)、PTGES(プロスタグランジンEシンターゼ)、ADRA2B(アドレナリン作動性、α-2B-、受容体)、ABCG5(ATP結合カセット、サブファミリーG(WHITE)、メンバー5)、PRDX2(ペルオキシレドキシン2)、CAPN5(カルパイン5)、PARP14(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼファミリー、メンバー14)、MEX3C(mex-3ホモログC(C.エレガンス(C.elegans)))、ACEアンジオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)1)、TNF(腫瘍壊死因子(TNFスーパーファミリー、メンバー2))、IL6(インターロイキン6(インターフェロン、β2))、STN(スタチン)、SERPINE1(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードE(ネキシン、プラスミノーゲンアクチベータ阻害因子1型)、メンバー1)、ALB(アルブミン)、ADIPOQ(アディポネクチン、C1Qおよびコラーゲンドメイン含有)、APOB(アポリポタンパク質B(Ag(x)抗原を含む))、APOE(アポリポタンパク質E)、LEP(レプチン)、MTHFR(5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(NADPH))、APOA1(アポリポタンパク質A-I)、EDN1(エンドセリン1)、NPPB(ナトリウム利尿ペプチド前駆体B)、NOS3(一酸化窒素合成酵素3(内皮細胞))、PPARG(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)、PLAT(プラスミノーゲンアクチベータ、組織)、PTGS2(プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ2(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ))、CETP(コレステリルエステル転送タンパク質、血漿)、AGTR1(アンジオテンシンII受容体、1型)、HMGCR(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A還元酵素)、IGF1(インスリン様成長因子1(ソマトメジンC))、SELE(セレクチンE)、REN(レニン)、PPARA(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)、PON1(パラオキソナーゼ1)、KNG1(キニノーゲン1)、CCL2(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2)、LPL(リポタンパク質リパーゼ)、VWF(フォン・ヴィレブランド因子)、F2(凝固第II因子(トロンビン))、ICAM1(細胞間接着分子1)、TGFB1(形質転換成長因子、β1)、NPPA(ナトリウム利尿ペプチド前駆体A)、IL10(インターロイキン10)、EPO(エリスロポエチン)、SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1、可溶性)、VCAM1(血管細胞接着分子1)、IFNG(インターフェロン、γ)、LPA(リポタンパク質、Lp(a))、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、ESR1(エストロゲン受容体1)、MAPK1(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1)、HP(ハプトグロビン)、F3(凝固第III因子(トロンボプラスチン、組織因子))、CST3(シスタチンC)、COG2(オリゴマーゴルジ複合体の構成成分2)、MMP9(マトリックスメタロペプチダーゼ9(ゼラチナーゼB、92kDaゼラチナーゼ、92kDaIV型コラゲナーゼ))、SERPINC1(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードC(アンチトロンビン)、メンバー1)、F8(凝固第VIII因子、凝固促進成分)、HMOX1(ヘムオキシゲナーゼ(デサイクリング)1)、APOC3(アポリポタンパク質C-III)、IL8(インターロイキン8)、PROK1(プロキネチシン1)、CBS(シスタチオニンβ合成酵素)、NOS2(一酸化窒素合成酵素2、誘導型)、TLR4(Toll様受容体4)、SELP(セレクチンP(顆粒膜タンパク質140kDa、抗原CD62))、ABCA1(ATP結合カセット、サブファミリーA(ABC1)、メンバー1)、AGT(アンジオテンシノーゲン(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードA、メンバー8))、LDLR(低密度リポタンパク質受容体)、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ))、VEGFA(血管内皮増殖因子A)、NR3C2(核内受容体サブファミリー3、C群、メンバー2)、IL18(インターロイキン18(インターフェロン-γ誘導因子))、NOS1(一酸化窒素合成酵素1(神経型))、NR3C1(核内受容体サブファミリー3、C群、メンバー1(グルココルチコイド受容体))、FGB(フィブリノゲンβ鎖)、HGF(肝細胞成長因子(ヘパポエチンA;散乱因子))、IL1A(インターロイキン1、α)、RETN(レジスチン)、AKT1(v-aktマウス胸腺腫ウイルス癌遺伝子ホモログ1)、LIPC(リパーゼ、肝臓)、HSPD1(熱ショック60kDaタンパク質1(シャペロニン))、MAPK14(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14)、SPP1(分泌リンタンパク質1)、ITGB3(インテグリン、β3(血小板糖タンパク質111a、抗原CD61))、CAT(カタラーゼ)、UTS2(ウロテンシン2)、THBD(トロンボモジュリン)、F10(凝固第X因子)、CP(セルロプラスミン(フェロキシダーゼ))、TNFRSF11B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー11b)、EDNRA(エンドセリン受容体A型)、EGFR(上皮成長因子受容体(赤芽球性白血病ウイルス性(v-erb-b)癌遺伝子ホモログ、トリ))、MMP2(マトリックスメタロペプチダーゼ2(ゼラチナーゼA、72kDaゼラチナーゼ、72kDaIV型コラゲナーゼ))、PLG(プラスミノーゲン)、NPY(神経ペプチドY)、RHOD(rasホモログ遺伝子ファミリー、メンバーD)、MAPK8(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8)、MYC(v-myc骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ))、FN1(フィブロネクチン1)、CMA1(キマーゼ1、マスト細胞)、PLAU(プラスミノーゲンアクチベータ、ウロキナーゼ)、GNB3(グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、βポリペプチド3)、ADRB2(アドレナリン作動性、β-2-、受容体、表面)、APOA5(アポリポタンパク質A-V)、SOD2(スーパーオキシドジスムターゼ2、ミトコンドリア)、F5(凝固第V因子(プロアクセレリン、不安定因子))、VDR(ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)受容体)、ALOX5(アラキドン酸塩5-リポキシゲナーゼ)、HLA-DRB1(主要組織適合遺伝子複合体、クラスII、DRβ1)、PARP1(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1)、CD40LG(CD40リガンド)、PON2(パラオキソナーゼ2)、AGER(終末糖化産物特異的受容体)、IRS1(インスリン受容体基質1)、PTGS1(プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ1(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ))、ECE1(エンドセリン変換酵素1)、F7(凝固第VII因子(血清プロトロンビン転化促進因子))、URN(インターロイキン1受容体拮抗薬)、EPHX2(エポキシドヒドロラーゼ2、細胞質)、IGFBP1(インスリン様成長因子結合タンパク質1)、MAPK10(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ10)、FAS(Fas(TNF受容体スーパーファミリー、メンバー6))、ABCB1(ATP結合カセット、サブファミリーB(MDR/TAP)、メンバー1)、JUN(jun癌遺伝子)、IGFBP3(インスリン様成長因子結合タンパク質3)、CD14(CD14分子)、PDE5A(ホスホジエステラーゼ5A、cGMP特異的)、AGTR2(アンジオテンシンII受容体、2型)、CD40(CD40分子、TNF受容体スーパーファミリーメンバー5)、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)、CCR5(ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5)、MMP1(マトリックスメタロペプチダーゼ1(間質コラゲナーゼ))、TIMP1(TIMPメタロペプチダーゼ阻害因子1)、ADM(アドレノメデュリン)、DYT10(ジストニー10)、STAT3(シグナル伝達兼転写活性化因子3(急性期反応因子))、MMP3(マトリックスメタロペプチダーゼ3(ストロメライシン1、プロゼラチナーゼ))、ELN(エラスチン)、USF1(上流転写因子1)、CFH(補体因子H)、HSPA4(熱ショック70kDaタンパク質4)、MMP12(マトリックスメタロペプチダーゼ12(マクロファージエラスターゼ))、MME(膜メタロエンドペプチダーゼ)、F2R(凝固第II因子(トロンビン)受容体)、SELL(セレクチンL)、CTSB(カテプシンB)、ANXA5(アネキシンA5)、ADRB1(アドレナリン作動性、β-1-、受容体)、CYBA(シトクロムb-245、αポリペプチド)、FGA(フィブリノゲンα鎖)、GGT1(γ-グルタミルトランスフェラーゼ1)、LIPG(リパーゼ、内皮)、HIF1A(低酸素誘導因子1、αサブユニット(塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス転写因子))、CXCR4(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4)、PROC(プロテインC(凝固第Va因子および第VIIIa因子のインアクチベーター))、SCARB1(スカベンジャー受容体クラスB、メンバー1)、CD79A(CD79a分子、免疫グロブリン関連α)、PLTP(リン脂質転移タンパク質)、ADD1(アデュシン1(α))、FGG(フィブリノゲンγ鎖)、SAA1(血清アミロイドA1)、KCNH2(カリウム電位開口型チャネル、サブファミリーH(eag関連)、メンバー2)、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4)、G6PD(グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、NPR1(ナトリウム利尿ペプチド受容体A/グアニル酸シクラーゼA(心房性ナトリウム利尿ペプチド受容体A))、VTN(ビトロネクチン)、KIAA0101(KIAA0101)、FOS(FBJマウス骨肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ)、TLR2(toll様受容体2)、PPIG(ペプチジルプロリルイソメラーゼG(シクロフィリンG))、IL1R1(インターロイキン1受容体、I型)、AR(アンドロゲン受容体)、CYP1A1(シトクロムP450、ファミリー1、サブファミリーA、ポリペプチド1)、SERPINA1(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードA(α-1アンチプロテイナーゼ、アンチトリプシン)、メンバー1)、MTR(5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼ)、RBP4(レチノール結合タンパク質4、血漿)、APOA4(アポリポタンパク質A-IV)、CDKN2A(サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(メラノーマ、p16、CDK4を阻害))、FGF2(線維芽細胞成長因子2(塩基性))、EDNRB(エンドセリン受容体B型)、ITGA2(インテグリン、α2

(CD49B、VLA-2受容体のα2サブユニット))、CABIN1(カルシニューリン結合タンパク質1)、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)、HMGB1(高移動度群ボックス1)、HSP90B2P(熱ショックタンパク質90kDaβ(Grp94)、メンバー2(偽遺伝子))、CYP3A4(シトクロムP450、ファミリー3、サブファミリーA、ポリペプチド4)、GJA1(ギャップ結合タンパク質、α1、43kDa)、CAV1(カベオリン1、カベオラタンパク質、22kDa)、ESR2(エストロゲン受容体2(ERβ))、LTA(リンホトキシンα(TNFスーパーファミリー、メンバー1))、GDF15(成長分化因子15)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、CYP2D6(シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーD、ポリペプチド6)、NGF(神経成長因子(βポリペプチド))、SP1(Sp1転写因子)、TGIF1(TGFB誘導性因子ホメオボックス1)、SRC(v-src肉腫(シュミット-ルピンA-2(Schmidt-RuppinA-2))ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ))、EGF(上皮成長因子(β-ウロガストロン))、PIK3CG(ホスホイノシチド-3-キナーゼ、触媒、γポリペプチド)、HLA-A(主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、A)、KCNQ1(カリウム電位開口型チャネル、KQT様サブファミリー、メンバー1)、CNR1(カンナビノイド受容体1(脳))、FBN1(フィブリリン1)、CHKA(コリンキナーゼα)、BEST1(ベストロフィン1)、APP(アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質)、CTNNB1(カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、β1、88kDa)、IL2(インターロイキン2)、CD36(CD36分子(トロンボスポンジン受容体))、PRKAB1(プロテインキナーゼ、AMP活性化、β1非触媒サブユニット)、TPO(甲状腺ペルオキシダーゼ)、ALDH7A1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ7ファミリー、メンバーA1)、CX3CR1(ケモカイン(C-X3-Cモチーフ)受容体1)、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、F9(凝固第IX因子)、GH1(成長ホルモン1)、TF(トランスフェリン)、HFE(ヘモクロマトーシス)、IL17A(インターロイキン17A)、PTEN(ホスファターゼ・テンシンホモログ)、GSTM1(グルタチオンS-トランスフェラーゼμ1)、DMD(ジストロフィン)、GATA4(GATA結合タンパク質4)、F13A1(凝固第XIII因子、A1ポリペプチド)、TTR(トランスサイレチン)、FABP4(脂肪酸結合タンパク質4、脂肪細胞)、PON3(パラオキソナーゼ3)、APOC1(アポリポタンパク質C-I)、INSR(インスリン受容体)、TNFRSF1B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー1B)、HTR2A(5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体2A)、CSF3(コロニー刺激因子3(顆粒球))、CYP2C9(シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーC、ポリペプチド9)、TXN(チオレドキシン)、CYP11B2(シトクロムP450、ファミリー11、サブファミリーB、ポリペプチド2)、PTH(副甲状腺ホルモン)、CSF2(コロニー刺激因子2(顆粒球マクロファージ))、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体(III型受容体チロシンキナーゼ))、PLA2G2A(ホスホリパーゼA2、グループIIA(血小板、滑液))、B2M(β-2-ミクログロブリン)、THBS1(トロンボスポンジン1)、GCG(グルカゴン)、RHOA(rasホモログ遺伝子ファミリー、メンバーA)、ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ2ファミリー(ミトコンドリア))、TCF7L2(転写因子7様2(T細胞特異的、HMGボックス))、BDKRB2(ブラジキニン受容体B2)、NFE2L2(核内因子(赤血球由来2)様2)、NOTCH1(Notchホモログ1、転座関連(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、UGT1A1(UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー、ポリペプチドA1)、IFNA1(インターフェロン、α1)、PPARD(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ)、SIRT1(サーチュイン(サイレント交配型情報調節2ホモログ)1(S.セレビシエ(S.cerevisiae)))、GNRH1(ゴナドトロピン放出ホルモン1(黄体形成放出ホルモン))、PAPPA(妊娠関連血漿タンパク質A、パパリシン1)、ARR3(アレスチン3、レチナール(X-アレスチン))、NPPC(ナトリウム利尿ペプチド前駆体C)、AHSP(αヘモグロビン安定化タンパク質)、PTK2(PTK2プロテインチロシンキナーゼ2)、IL13(インターロイキン13)、MTOR(ラパマイシンの機構的標的(セリン/スレオニンキナーゼ))、ITGB2(インテグリン、β2(補体成分3受容体3および4サブユニット))、GSTT1(グルタチオンS-トランスフェラーゼθ1)、IL6ST(インターロイキン6シグナル伝達因子(gp130、オンコスタチンM受容体))、CPB2(カルボキシペプチダーゼB2(血漿))、CYP1A2(シトクロムP450、ファミリー1、サブファミリーA、ポリペプチド2)、HNF4A(肝細胞核内因子4、α)、SLC6A4(溶質輸送担体ファミリー6(神経伝達物質輸送体、セロトニン)、メンバー4)、PLA2G6(ホスホリパーゼA2、VI群(細胞質型、カルシウム非依存性))、TNFSF11(腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー11)、SLC8A1(溶質輸送担体ファミリー8(ナトリウム/カルシウム交換体)、メンバー1)、F2RL1(凝固第II因子(トロンビン)受容体様1)、AKR1A1(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーA1(アルデヒドレダクターゼ))、ALDH9A1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ9ファミリー、メンバーA1)、BGLAP(骨γ-カルボキシグルタミン酸(gla)含有タンパク質)、MTTP(ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質)、MTRR(5-メチルテトラヒドロ葉酸ホモシステインメチルトランスフェラーゼレダクターゼ)、SULT1A3(スルホトランスフェラーゼファミリー、細胞質型、1A、フェノール選択、メンバー3)、RAGE(腎腫瘍抗原)、C4B(補体成分4B(チド(Chido)血液型)、P2RY12(プリン受容体P2Y、Gタンパク質共役、12)、RNLS(リナラーゼ、FAD依存性アミンオキシダーゼ)、CREB1(cAMP応答エレメント結合タンパク質1)、POMC(プロオピオメラノコルチン)、RAC1(ras関連C3ボツリヌス毒素基質1(rhoファミリー、低分子GTP結合タンパク質Rac1))、LMNA(ラミンNC)、CD59(CD59分子、補体調節タンパク質)、SCN5A(ナトリウムチャネル、電位開口型、V型、αサブユニット)、CYP1B1(シトクロムP450、ファミリー1、サブファミリーB、ポリペプチド1)、MIF(マクロファージ遊走阻害因子(グリコシル化阻害因子))、MMP13(マトリックスメタロペプチダーゼ13(コラゲナーゼ3))、TIMP2(TIMPメタロペプチダーゼ阻害因子2)、CYP19A1(シトクロムP450、ファミリー19、サブファミリーA、ポリペプチド1)、CYP21A2(シトクロムP450、ファミリー21、サブファミリーA、ポリペプチド2)、PTPN22(タンパク質チロシンホスファターゼ、非受容体型22(リンパ球))、MYH14(ミオシン、重鎖14、非筋肉性)、MBL2(マンノース結合レクチン(プロテインC)2、可溶性(オプソニン欠損))、SELPLG(セレクチンPリガンド)、AOC3(アミンオキシダーゼ、銅含有3(血管接着タンパク質1))、CTSL1(カテプシンL1)、PCNA(増殖細胞核抗原)、IGF2(インスリン様成長因子2(ソマトメジンA))、ITGB1(インテグリン、β1(フィブロネクチン受容体、βポリペプチド、抗原CD29はMDF2、MSK12を含む))、CAST(カルパスタチン)、CXCL12(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド12(ストロマ細胞由来因子1))、IGHE(免疫グロブリン重鎖定常ε)、KCNE1(カリウム電位開口型チャネル、Isk関連ファミリー、メンバー1)、TFRC(トランスフェリン受容体(p90、CD71))、COL1A1(コラーゲン、I型、α1)、COL1A2(コラーゲン、I型、α2)、IL2RB(インターロイキン2受容体、β)、PLA2G10(ホスホリパーゼA2、X群)、ANGPT2(アンギオポエチン2)、PROCR(プロテインC受容体、内皮(EPCR))、NOX4(NADPHオキシダーゼ4)、HAMP(ヘプシジン抗菌ペプチド)、PTPN11(タンパク質チロシンホスファターゼ、非受容体型11)、SLC2A1(溶質輸送担体ファミリー2(促進性グルコーストランスポーター)、メンバー1)、IL2RA(インターロイキン2受容体、α)、CCL5(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5)、IRF1(インターフェロン調節因子1)、CFLAR(CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子)、CALCA(カルシトニン関連ポリペプチドα)、EIF4E(真核生物翻訳開始因子4E)、GSTP1(グルタチオンS-トランスフェラーゼπ1)、JAK2(ヤヌスキナーゼ2)、CYP3A5(シトクロムP450、ファミリー3、サブファミリーA、ポリペプチド5)、HSPG2(ヘパラン硫酸プロテオグリカン2)、CCL3(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド3)、MYD88(ミエロイド分化一次応答遺伝子(88))、VIP(血管作動性腸管ペプチド)、SOAT1(ステロールO-アシルトランスフェラーゼ1)、ADRBK1(アドレナリン作動性、β、受容体キナーゼ1)、NR4A2(核内受容体サブファミリー4、グループA、メンバー2)、MMP8(マトリックスメタロペプチダーゼ8(好中球コラゲナーゼ))、NPR2(ナトリウム利尿ペプチド受容体B/グアニル酸シクラーゼB(心房性ナトリウム利尿ペプチド受容体B))、GCH1(GTPシクロヒドロラーゼ1)、EPRS(グルタミル-プロリル-tRNAシンテターゼ)、PPARGC1A(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ、コアクチベーター1α)、F12(凝固第XII因子(ハーゲマン因子))、PECAM1(血小板/内皮細胞接着分子)、CCL4(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド4)、SERPINA3(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードA(α-1アンチプロテイナーゼ、アンチトリプシン)、メンバー3)、CASR(カルシウム感知受容体)、GJA5(ギャップ結合タンパク質、α5、40kDa)、FABP2(脂肪酸結合タンパク質2、腸)、TTF2(転写終結因子、RNAポリメラーゼII)、PROS1(プロテインS(α))、CTF1(カルジオトロフィン1)、SGCB(サルコグリカン、β(43kDaジストロフィン関連糖タンパク質))、YME1L1(YME1様1(S.セレビシエ(S.cerevisiae)))、CAMP(カテリシジン抗菌ペプチド)、ZC3H12A(ジンクフィンガーCCCH型含有12A)、AKR1B1(アルド-ケトレダクターゼファミリー1、メンバーB1(アルドースレダクターゼ))、DES(デスミン)、MMP7(マトリックスメタロペプチダーゼ7(マトリライシン、子宮))、AHR(アリール炭化水素受容体)、CSF1(コロニー刺激因子1(マクロファージ))、HDAC9(ヒストン脱アセチル化酵素9)、CTGF(結合組織成長因子)、KCNMA1(大コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル、サブファミリーM、αメンバー1)、UGT1A(UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー、ポリペプチドA複合遺伝子座)、PRKCA(プロテインキナーゼC、α)、COMT(カテコール-β-メチルトランスフェラーゼ)、S100B(S100

カルシウム結合タンパク質B)、EGR1(初期増殖応答1)、PRL(プロラクチン)、IL15(インターロイキン15)、DRD4(ドーパミン受容体D4)、CAMK2G(カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIγ)、SLC22A2(溶質輸送担体ファミリー22(有機カチオントランスポーター)、メンバー2)、CCL11(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11)、PGF(B321胎盤成長因子)、THPO(トロンボポエチン)、GP6(糖タンパク質VI(血小板))、TACR1(タキキニン受容体1)、NTS(ニューロテンシン)、HNF1A(HNF1ホメオボックスA)、SST(ソマトスタチン)、KCND1(カリウム電位開口型チャネル、Shal関連サブファミリー、メンバー1)、LOC646627(ホスホリパーゼ阻害因子)、TBXAS1(トロンボキサンAシンターゼ1(血小板))、CYP2J2(シトクロムP450、ファミリー2、サブファミリーJ、ポリペプチド2)、TBXA2R(トロンボキサンA2受容体)、ADH1C(アルコールデヒドロゲナーゼ1C(クラスI)、γポリペプチド)、ALOX12(アラキドン酸12-リポキシゲナーゼ)、AHSG(α-2-HS-糖タンパク質)、BHMT(ベタイン-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ)、GJA4(ギャップ結合タンパク質、α4、37kDa)、SLC25A4(溶質輸送担体ファミリー25(ミトコンドリア輸送担体;アデニンヌクレオチドトランスロケーター)、メンバー4)、ACLY(ATPクエン酸リアーゼ)、ALOX5AP(アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質)、NUMA1(核有糸分裂装置タンパク質1)、CYP27B1(シトクロムP450、ファミリー27、サブファミリーB、ポリペプチド1)、CYSLTR2(システイニルロイコトリエン受容体2)、SOD3(スーパーオキシドジスムターゼ3、細胞外)、LTC4S(ロイコトリエンC4シンターゼ)、UCN(ウロコルチン)、GHRL(グレリン/オベスタチンプレプロペプチド)、APOC2(アポリポタンパク質C-II)、CLEC4A(C型レクチンドメインファミリー4、メンバーA)、KBTBD10(ケルヒリピートおよびBTB(POZ)ドメイン含有10)、TNC(テネイシンC)、TYMS(チミジル酸シンテターゼ)、SHCl(SHC(Src相同性2ドメイン含有)形質転換タンパク質1)、LRP1(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1)、SOCS3(サイトカインシグナル伝達のサプレッサー3)、ADH1B(アルコールデヒドロゲナーゼ1B(クラスI)、βポリペプチド)、KLK3(カリクレイン関連ペプチダーゼ3)、HSD11B1(ヒドロキシステロイド(11-β)デヒドロゲナーゼ1)、VKORC1(ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体、サブユニット1)、SERPINB2(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードB(オボアルブミン)、メンバー2)、TNS1(テンシン1)、RNF19A(リングフィンガータンパク質19A)、EPOR(エリスロポエチン受容体)、ITGAM(インテグリン、αM(補体成分3受容体3サブユニット))、PITX2(ペアード様ホメオドメイン2)、MAPK7(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ7)、FCGR3A(IgGのFc断片、低親和性111a、受容体(CD16a))、LEPR(レプチン受容体)、ENG(エンドグリン)、GPX1(グルタチオンペルオキシダーゼ1)、GOT2(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ2、ミトコンドリア(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ2))、HRH1(ヒスタミン受容体H1)、NR112(核内受容体サブファミリー1、グループI、メンバー2)、CRH(コルチコトロピン放出ホルモン)、HTR1A(5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体1A)、VDAC1(電位依存性アニオンチャネル1)、HPSE(ヘパラナーゼ)、SFTPD(サーファクタントタンパク質D)、TAP2(トランスポーター2、ATP結合カセット、サブファミリーB(MDR/TAP))、RNF123(リングフィンガータンパク質123)、PTK2B(PTK2Bプロテインチロシンキナーゼ2β)、NTRK2(神経栄養チロシンキナーゼ、受容体、2型)、IL6R(インターロイキン6受容体)、ACHE(アセチルコリンエステラーゼ(Yt血液型))、GLP1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)、GHR(成長ホルモン受容体)、GSR(グルタチオンレダクターゼ)、NQO1(NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ、キノン1)、NR5A1(核内受容体サブファミリー5、グループA、メンバー1)、GJB2(ギャップ結合タンパク質、β2、26kDa)、SLC9A1(溶質輸送担体ファミリー9(ナトリウム/水素交換体)、メンバー1)、MAOA(モノアミンオキシダーゼA)、PCSK9(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)、FCGR2A(IgGのFc断片、低親和性IIa、受容体(CD32))、SERPINF1(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードF(α-2抗プラスミン、色素上皮由来因子)、メンバー1)、EDN3(エンドセリン3)、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)、GAS6(成長停止特異的6)、SMPD1(スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1、酸性リソソーム)、UCP2(脱共役タンパク質2(ミトコンドリア、プロトン担体))、TFAP2A(転写因子AP-2α(活性化エンハンサー結合タンパク質2α))、C4BPA(補体成分4結合タンパク質、α)、SERPINF2(セルピンペプチダーゼ阻害因子、クレードF(α-2抗プラスミン、色素上皮由来因子)、メンバー2)、TYMP(チミジンホスホリラーゼ)、ALPP(アルカリホスファターゼ、胎盤(リーガン(Regan)アイソザイム))、CXCR2(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2)、SLC39A3(溶質輸送担体ファミリー39(亜鉛トランスポーター)、メンバー3)、ABCG2(ATP結合カセット、サブファミリーG(WHITE)、メンバー2)、ADA(アデノシンデアミナーゼ)、JAK3(ヤヌスキナーゼ3)、HSPA1A(熱ショック70kDaタンパク質1A)、FASN(脂肪酸シンターゼ)、FGF1(線維芽細胞成長因子1(酸性))、F11(凝固第XI因子)、ATP7A(ATPアーゼ、Cu++輸送、αポリペプチド)、CR1(補体成分(3b/4b)受容体1(Knops血液型))、GFAP(グリア線維性酸性タンパク質)、ROCK1(Rho関連、コイルドコイル含有プロテインキナーゼ1)、MECP2(メチルCpG結合タンパク質2(レット症候群))、MYLK(ミオシン軽鎖キナーゼ)、BCHE(ブチリルコリンエステラーゼ)、LIPE(リパーゼ、ホルモン感受性)、PRDX5(ペルオキシレドキシン5)、ADORA1(アデノシンA1受容体)、WRN(ウェルナー症候群、RecQヘリカーゼ様)、CXCR3(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体3)、CD81(CD81分子)、SMAD7(SMADファミリーメンバー7)、LAMC2(ラミニン、γ2)、MAP3K5(マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼキナーゼ5)、CHGA(クロモグラニンA(副甲状腺分泌タンパク質1))、IAPP(膵島アミロイドポリペプチド)、RHO(ロドプシン)、ENPP1(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1)、PTHLH(副甲状腺ホルモン様ホルモン)、NRG1(ニューレグリン1)、VEGFC(血管内皮増殖因子C)、ENPEP(グルタミルアミノペプチダーゼ(アミノペプチダーゼA))、CEBPB(CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、β)、NAGLU(N-アセチルグルコサミニダーゼ、α-)、F2RL3(凝固第II因子(トロンビン)受容体様3)、CX3CL1(ケモカイン(C-X3-Cモチーフ)リガンド1)、BDKRB1(ブラジキニン受容体B1)、ADAMTS13(トロンボスポンジン1型モチーフを有するADAMメタロペプチダーゼ、13)、ELANE(エラスターゼ、好中球発現)、ENPP2(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ2)、CISH(サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質)、GAST(ガストリン)、MYOC(ミオシリン、小柱網誘導性グルココルチコイド応答)、ATP1A2(ATPアーゼ、Na+/K+輸送、α2ポリペプチド)、NF1(ニューロフィブロミン1)、GJB1(ギャップ結合タンパク質、β1、32kDa)、MEF2A(筋細胞エンハンサー因子2A)、VCL(ビンキュリン)、BMPR2(骨形成タンパク質受容体、II型(セリン/スレオニンキナーゼ))、TUBB(チューブリン、β)、CDC42(細胞分裂周期42(GTP結合タンパク質、25kDa))、KRT18(ケラチン18)、HSF1(熱ショック転写因子1)、MYB(v-myb骨髄芽球症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ))、PRKAA2(プロテインキナーゼ、AMP活性化、α2触媒サブユニット)、ROCK2(Rho関連、コイルドコイル含有プロテインキナーゼ2)、TFPI(組織因子経路阻害因子(リポタンパク質関連凝固阻害因子))、PRKG1(プロテインキナーゼ、cGMP依存性、I型)、BMP2(骨形成タンパク質2)、CTNND1(カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、δ1)、CTH(シスタチオナーゼ(シスタチオニンγ-リアーゼ))、CTSS(カテプシンS)、VAV2(vav2グアニンヌクレオチド交換因子)、NPY2R(ニューロペプチドY受容体Y2)、IGFBP2(インスリン様成長因子結合タンパク質2、36kDa)、CD28(CD28分子)、GSTA1(グルタチオンS-トランスフェラーゼα1)、PPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA(シクロフィリンA))、APOH(アポリポタンパク質H(β-2-糖タンパク質I))、S100A8(S100カルシウム結合タンパク質A8)、IL11(インターロイキン11)、ALOX15(アラキドン酸15-リポキシゲナーゼ)、FBLN1(フィビュリン1)、NR1H3(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー3)、SCD(ステアロイル-CoAデサチュラーゼ(Δ-9-デサチュラーゼ))、GIP(胃抑制ポリペプチド)、CHGB(クロモグラニンB(セクレトグラニン1))、PRKCB(プロテインキナーゼC、β)、SRD5A1(ステロイド-5-アルファ-レダクターゼ、αポリペプチド1(3-オキソ-5α-ステロイドΔ4-デヒドロゲナーゼα1))、HSD11B2(ヒドロキシステロイド(11-β)デヒドロゲナーゼ2)、CALCRL(カルシトニン受容体様)、GALNT2(UDP-N-アセチル-α-D-ガラクトサミン:ポリペプチドN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ2(GalNAc-T2))、ANGPTL4(アンギオポエチン様4)、KCNN4(カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー4)、PIK3C2A(ホスホイノシチド-3-キナーゼ、クラス2、αポリペプチド)、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、CYP7A1(シトクロムP450、ファミリー7、サブファミリーA、ポリペプチド1)、HLA-DRB5(主要組織適合遺伝子複合体、クラスII、DRβ 5)、BNIP3(BCL2/アデノウイルスE1B19kDa相互作用タンパク質3)、GCKR(グルコキナーゼ(ヘキソキナーゼ4)調節因子)、S100A12(S100カルシウム結合タンパク質A12)、PADI4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ、IV型)、HSPA14(熱ショック70kDaタンパク質14)、CXCR1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体1)、H19(H19、刷り込み母性発現転写物(非タンパク質コード))、KRTAP19-3(ケラチン関連タンパク質19-3)、IDDM2(インスリン依存性真性糖

尿病2)、RAC2(ras関連C3ボツリヌス毒素基質2(rhoファミリー、低分子GTP結合タンパク質Rac2))、RYR1(リアノジン受容体1(骨格))、CLOCK(時計ホモログ(マウス))、NGFR(神経成長因子受容体(TNFRスーパーファミリー、メンバー16))、DBH(ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(ドーパミンβ-モノオキシゲナーゼ))、CHRNA4(コリン作動性受容体、ニコチン性、α4)、CACNA1C(カルシウムチャネル、電位依存性、L型、α1Cサブユニット)、PRKAG2(プロテインキナーゼ、AMP活性化、γ2非触媒サブユニット)、CHAT(コリンアセチルトランスフェラーゼ)、PTGDS(プロスタグランジンD2シンターゼ21kDa(脳))、NR1H2(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー2)、TEK(TEKチロシンキナーゼ、内皮)、VEGFB(血管内皮増殖因子B)、MEF2C(筋細胞エンハンサー因子2C)、MAPKAPK2(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性化プロテインキナーゼ2)、TNFRSF11A(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー11a、NFKBアクチベータ)、HSPA9(熱ショック70kDaタンパク質9(モルタリン))、CYSLTR1(システイニルロイコトリエン受容体1)、MAT1A(メチオニンアデノシルトランスフェラーゼI、α)、OPRL1(オピエート受容体様1)、IMPA1(イノシトール(myo)-1(または4)-モノホスファターゼ1)、CLCN2(クロライドチャネル2)、DLD(ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ)、PSMA6(プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン(macropain))サブユニット、α型、6)、PSMB8(プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン)サブユニット、β型、8(大型多機能ペプチダーゼ7))、CHI3L1(キチナーゼ3様1(軟骨糖タンパク質-39))、ALDH1B1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーB1)、PARP2(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ2)、STAR(ステロイド産生急性調節タンパク質)、LBP(リポ多糖結合タンパク質)、ABCC6(ATP結合カセット、サブファミリーC(CFTR/MRP)、メンバー6)、RGS2(Gタンパク質シグナル伝達の調節因子2、24kDa)、EFNB2(エフリン-B2)、GJB6(ギャップ結合タンパク質、β6、30kDa)、APOA2(アポリポタンパク質A-II)、AMPD1(アデノシン一リン酸デアミナーゼ1)、DYSF(ジスフェリン、肢帯型筋ジストロフィー2B(常染色体劣性遺伝))、FDFT1(ファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ1)、EDN2(エンドセリン2)、CCR6(ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体6)、GJB3(ギャップ結合タンパク質、β3、31kDa)、IL1RL1(インターロイキン1受容体様1)、ENTPD1(エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1)、BBS4(バルデー-ビードル症候群4)、CELSR2(カドヘリン、EGFLAG7回膜貫通型G型受容体2(フラミンゴホモログ、ショウジョウバエ属(Drosophila)))、F11R(F11受容体)、RAPGEF3(Rapグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)3)、HYAL1(ヒアルロノグルコサミニダーゼ1)、ZNF259(ジンクフィンガータンパク質259)、ATOX1(ATX1抗酸化タンパク質1ホモログ(酵母))、ATF6(活性化転写因子6)、KHK(ケトヘキソキナーゼ(フルクトキナーゼ))、SAT1(スペルミジン/スペルミンN1-アセチルトランスフェラーゼ1)、GGH(γ-グルタミルヒドロラーゼ(コンジュガーゼ、ホリルポリγグルタミルヒドロラーゼ))、TIMP4(TIMPメタロペプチダーゼ阻害因子4)、SLC4A4(溶質輸送担体ファミリー4、ナトリウム・炭酸水素イオン共輸送体、メンバー4)、PDE2A(ホスホジエステラーゼ2A、cGMP刺激性)、PDE3B(ホスホジエステラーゼ3B、cGMP阻害性)、FADS1(脂肪酸デサチュラーゼ1)、FADS2(脂肪酸デサチュラーゼ2)、TMSB4X(チモシンβ4、X連鎖)、TXNIP(チオレドキシン相互作用タンパク質)、LIMS1(LIMおよび老化細胞抗原様ドメイン1)、RHOB(rasホモログ遺伝子ファミリー、メンバーB)、LY96(リンパ球抗原96)、FOXO1(フォークヘッドボックスO1)、PNPLA2(パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有2)、TRH(サイロトロピン放出ホルモン)、GJC1(ギャップ結合タンパク質、γ1、45kDa)、SLC17A5(溶質輸送担体ファミリー17(アニオン/糖輸送体)、メンバー5)、FTO(体脂肪量および肥満関連)、GJD2(ギャップ結合タンパク質、δ2、36kDa)、PSRC1(プロリン/セリンリッチコイルドコイル1)、CASP12(カスパーゼ12(遺伝子/偽遺伝子))、GPBAR1(Gタンパク質共役型胆汁酸受容体1)、PXK(PXドメイン含有セリン/スレオニンキナーゼ)、IL33(インターロイキン33)、TRIB1(トリブルズ(tribbles)ホモログ1(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、PBX4(プレB細胞白血病ホメオボックス4)、NUPR1(核タンパク質、転写調節因子、1)、15-Sep(15kDaセレノプロテイン)、CILP2(軟骨中間層タンパク質2)、TERC(テロメラーゼRNA成分)、GGT2(γ-グルタミルトランスフェラーゼ2)、MT-CO1(ミトコンドリアにコードされたシトクロムcオキシダーゼI)、およびUOX(尿酸オキシダーゼ、偽遺伝子)を含み得る。
【0284】
さらなる実施形態において、染色体配列は、Pon1(パラオキソナーゼ1)、LDLR(LDL受容体)、ApoE(アポリポタンパク質E)、ApoB-100(アポリポタンパク質B-100)、ApoA(アポリポタンパク質(a))、ApoA1(アポリポタンパク質A1)、CBS(シスタチオニン(cystathione)B-シンターゼ)、糖タンパク質IIb/IIb、MTHRF(5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(NADPH)、およびそれらの組み合わせからさらに選択され得る。一つの反復では、心血管疾患に関与する染色体配列および染色体配列によりコードされるタンパク質は、Cacna1C、Sod1、Pten、Ppar(α)、ApoE、レプチン、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0285】
腎臓
本発明はまた、CRISPR-Cas系を腎臓に送達することも企図する。治療用核酸の細胞取込みを誘導するための送達戦略には、物理的力またはベクター系、例えばウイルスベース、脂質ベースまたは複合体ベースの送達、またはナノ担体が含まれる。核酸が流体力学的高圧注入で全身的に腎細胞に送られたとき見込まれる臨床的意義が低い初期の適用以降、種々の動物腎疾患モデルにおいてインビボで転写後イベントを標的化するため幅広い遺伝子治療ウイルスおよび非ウイルス担体が既に適用されている(CsabaRevesz and Peter Hamar(2011)、「腎臓においてRNAを標的化する送達方法(DeliveryMethods to Target RNAs inthe Kidney)」、GeneTherapy Applications,Prof.ChunshengKang(Ed.),ISBN:978-953-307-541-9、InTech、以下から入手可能:http://www.intechopen.com/books/gene-therapy-applications/delivery-methods-to-target-rnas-in-the-kidney)。腎臓に対する送達方法は、以下のとおり要約される:
【0286】
【表8】
【0287】
【表9】
【0288】
【表10】
【0289】
Yuan et al.(Am J Physiol Renal Physiol 295:F605-F617,2008)は、アラキドン酸代謝の12/15-リポキシゲナーゼ(12/15-LO)経路を標的にする低分子干渉RNA(siRNA)のインビボ送達が、ストレプトゾトシンを注射した1型糖尿病マウスモデルにおいて腎損傷および糖尿病性腎症(DN)を改善し得るかどうかを調べた。腎臓においてより多くのインビボ到達およびsiRNA発現を達成するため、Yuanet al.は、コレステロールとコンジュゲートした二本鎖12/15-LOsiRNAオリゴヌクレオチドを使用した。約400μgのsiRNAがマウスに皮下注入された。Yuanget al.の方法は、ヒトに対する腎臓への送達にコレステロールとコンジュゲートしたCRISPRCasの1~2gの皮下注射を企図して本発明のCRISPR Cas系に適用し得る。
【0290】
Molitoris et al.(J Am Soc Nephrol 20:1754-1764,2009)は、腎臓内におけるオリゴヌクレオチド再吸収部位として近位尿細管細胞(PTC)を利用して、アポトーシス経路の中心的タンパク質であるp53に標的化されたsiRNAの腎損傷予防に対する有効性を試験した。虚血性傷害の4時間後に静脈内注射されたp53に対するネイキッド合成siRNAが、PTCおよび腎機能の両方を最大限保護した。Molitoriset al.のデータは、静脈内投与後に近位尿細管細胞に対するsiRNAの急速な送達が起こることを示している。用量反応分析のため、ラットに0.33;1、3、または5mg/kgの用量のsiP53を同じ4時点で与え、それぞれ1.32;4、12、および20mg/kgの累積用量となるように注射した。試験した全てのsiRNA用量が1日目にSCr低下効果を生じ、より高い用量では、PBS治療した虚血対照ラットと比較して約5日間にわたり有効であった。12および20mg/kgの累積用量が最良の保護効果をもたらした。Molitoriset al.の方法は、ヒトに対する腎臓への送達に12および20mg/kgの累積用量を企図して本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0291】
Thompson et al.(Nucleic Acid Therapeutics,Volume22,Number 4,2012)は、げっ歯類および非ヒト霊長類における静脈内投与後の合成低分子干渉RNAI5NPの毒性および薬物動態特性を報告している。I5NPは、RNA干渉(RNAi)経路を介して作用することによりアポトーシス促進タンパク質p53の発現を一時的に阻害するように設計され、急性虚血/再灌流傷害、例えば大規模な心臓手術の間に起こり得る急性腎損傷および腎移植後に起こり得る臓器移植後臓器機能障害などから細胞を保護するために開発されている。有害作用を誘発するにはげっ歯類で800mg/kgI5NP、および非ヒト霊長類で1,000mg/kg I5NPの用量が必要で、これはサルでは、補体の準臨床的活性化および凝固時間の僅かな増加を含む血液に対する効果を導くことが特定された。ラットでは、I5NPのラット類似体でさらなる有害作用は観察されなかったことから、これらの作用が、I5NPの意図される薬理活性に関連する毒性というよりむしろ、合成RNA二重鎖のクラス作用に相当する可能性が高いことが示される。まとめると、これらのデータは、急性虚血/再灌流傷害後の腎機能の保全に対するI5NPの静脈内投与の臨床試験を裏付けている。サルにおける無毒性量(NOAEL)は500mg/kgであった。サルにおいて最大25mg/kgまでの用量レベルで静脈内投与した後、心血管、呼吸器、および神経学的パラメータに対する作用は観察されなかった。従って、同程度の投薬量が、ヒトの腎臓に対するCRISPRCasの静脈内投与に企図され得る。
【0292】
Shimizu et al.(J Am Soc Nephrol 21:622-633,2010)は、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(L-リジン)ベースのビヒクルによってsiRNAを糸球体に標的送達するシステムを開発した。siRNA/ナノ担体複合体は直径が約10~20nmで、複合体が有窓内皮を通過してメサンギウムに到達することを可能にし得るサイズであった。蛍光標識siRNA/ナノ担体複合体を腹腔内注射した後、Shimizuet al.は血液循環中に長時間にわたりsiRNAを検出した。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1(MAPK1)siRNA/ナノ担体複合体の反復腹腔内投与により、糸球体腎炎マウスモデルにおいて糸球体MAPK1mRNAおよびタンパク質発現が抑制された。siRNA蓄積を調べるため、PICナノ担体と複合体化したCy5標識siRNA(0.5ml、5nmolのsiRNA含有量)、ネイキッドCy5標識siRNA(0.5ml、5nmol)、またはHVJ-Eに封入したCy5標識siRNA(0.5ml、5nmolのsiRNA含有量)をBALB-cマウスに投与した。Shimizuet al.の方法は、ヒトに対する腎臓への腹腔内投与および送達に約1~2リットル中ナノ担体と複合体化した約10~20μmolCRISPR Casの用量を企図して本発明のCRISPRCas系に適用し得る。
【0293】

本発明はまた、CRISPR-Cas系を一方または両方の肺に送達することも企図する。
【0294】
当初はAAV-2ベースのベクターがCF気道に対するCFTR送達に提案されたが、他の血清型、例えばAAV-1、AAV-5、AAV-6、およびAAV-9が種々の肺上皮モデルにおいて遺伝子導入効率の向上を呈している(例えば、Liet al.,MolecularTherapy,vol.17 no.12,2067-2077Dec 2009を参照のこと)。AAV-1は、インビトロ,5でのヒト気道上皮細胞への形質導入効率がAAV-2およびAAV-5と比べて約100倍高く、しかしながらマウス気管気道上皮についてはAAV-1はインビボでAAV-5と同等の効率で形質導入したことが実証された。他の試験から、AAV-5はAAV-2と比べてインビトロでのヒト気道上皮(HAE)に対する遺伝子送達の効率が50倍高く、インビボでマウス肺気道上皮における効率が有意に高いことが示されている。AAV-6もまた、インビトロでのヒト気道上皮細胞およびインビボ.8でのマウス気道における効率がAAV-2と比べて高いことが示されている。最近の分離株AAV-9は、インビボでマウス鼻上皮および肺胞上皮においてAAV-5より高い遺伝子導入効率を示すことが示され、9ヶ月間にわたり遺伝子発現が検出されたことから、CFTR遺伝子送達ベクターにとって望ましい特性であるインビボでの長期遺伝子発現がAAVで実現し得ることが示唆される。さらに、AAV-9は、CFTR発現の損失なしにかつ免疫学的帰結を最小限に抑えてマウス肺に再投与し得ることが実証された。CFおよび非CFHAE培養物の頂端表面に100μlのAAVベクターを数時間接種し得る(例えば、Liet al.,MolecularTherapy,vol.17 no.12,2067-2077Dec 2009を参照のこと)。MOIは、ウイルス濃度および実験の目的に応じて1×10から4×10ベクターゲノム/細胞まで異なり得る。上記に引用したベクターは、本発明の送達および/または投与に企図される。
【0295】
Zamora et al.(Am J Respir Crit Care MedVol 183.pp 531-538,2011)は、ヒト感染症の治療に対するRNA干渉治療薬の適用例、およびまた、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染した肺移植レシピエントにおける抗ウイルス薬の無作為化試験を報告した。Zamoraet al.は、RSV気道感染症のLTXレシピエントにおける無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。患者はRSVに対する標準治療を受けることが許された。エアロゾル化したALN-RSV01(0.6mg/kg)またはプラセボが毎日、3日間にわたり投与された。この試験は、RSVを標的化するRNAi治療薬をRSV感染症のLTXレシピエントに安全に投与し得ることを実証している。ALN-RSV01の1日用量の3つは、気道症状の増悪または肺機能障害をもたらさず、かつサイトカインまたはCRPの誘導などの全身性の炎症誘発効果を呈しなかった。薬物動態が吸入後に僅かな低い一過性の全身曝露を示したが、これは、静脈内投与されるかまたは吸入により投与されたALN-RSV01がエキソヌクレアーゼ媒介性の消化および腎排泄によって循環から急速に消失することを示す前臨床動物データと一致している。Zamoraet al.の方法は本発明のCRISPRCas系に適用することができ、本発明にはエアロゾル化したCRISPR Casを例えば0.6mg/kgの投薬量で企図することができる。
【0296】
CFTRΔ508キメラガイドRNAの例に関しては実施例22を参照されたく、この実施例22は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を使用した、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症(CF)関連症状に罹患している、必要性のある対象または患者の気道におけるCRISPR-Cas系の遺伝子導入または遺伝子送達を実証する。詳細には、嚢胞性線維症ΔF508突然変異の修復戦略が例示される。この種の戦略は全生物にわたり適用されるはずである。特にCFに関連して、好適な患者には以下が含まれ得る:ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマおよび他の家畜。この例では、本出願人らはCas9酵素を含むCRISPR-Cas系を利用してΔF508または他のCFTR誘導突然変異を標的化した。
【0297】
この例における治療対象は、自発呼吸下で各肺につき薬学的に有効な量のエアロゾル化AAVベクター系の気管支内送達を受ける。このように、エアロゾル化送達は、一般にAAV送達に好ましい。送達にはアデノウイルスまたはAAV粒子が用いられ得る。各々が1つ以上の調節配列に作動可能に結合している好適な遺伝子構築物を送達ベクターにクローニングし得る。この例では、以下の構築物が例として提供される:Cas9に対するCbhまたはEF1aプロモーター、キメラガイドRNAに対するU6またはH1プロモーター):好ましい構成は、CFTRΔ508を標的化するキメラガイド、ΔF508突然変異の修復テンプレートおよびコドン最適化されたCas9酵素(好ましいCas9は、ヌクレアーゼ活性またはニッカーゼ活性を有するものである)を、場合により1つ以上の核局在化シグナルまたは配列(NLS)、例えば2つのNLSを伴い使用することである。NLSを含まない構築物もまた想定される。
【0298】
Cas9標的部位を同定するため、本出願人らはヒトCFTRゲノム遺伝子座を解析し、Cas9標的部位を同定した。好ましくは、一般に、およびこのCFの場合、PAMはNGGまたはNNAGAAWモチーフを含み得る。
【0299】
従って、CFの場合、本方法は、
組成物を発現させるため組成物を作動可能にコードする1つ以上のウイルスベクターを含むウイルスベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を送達すること
を含む目的ゲノム遺伝子座における標的配列の操作を含み、
ここでこの組成物は、
I.CRISPR-Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列であって、
(a)好適な哺乳類細胞におけるCF標的配列にハイブリダイズし得るガイド配列、
(b)tracrメイト配列、および
(c)tracr配列
を含むポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している第1の調節エレメント、および
II.少なくとも1つ以上の核局在化配列を含むCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している第2の調節エレメント、
[(a)、(b)および(c)は、5’から3’配向で配置されており、
成分IおよびIIは、系の同じまたは異なるベクター上にあり、
転写されるとtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、かつガイド配列が標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向し、および
CRISPR複合体が、(1)標的配列にハイブリダイズするガイド配列、および(2)tracr配列にハイブリダイズするtracrメイト配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む]を含む1つ以上のベクターを含むベクター系を含む天然に存在しないまたはエンジニアリングされた組成物を含む。CFに関して、好ましい標的DNA配列はCFTRΔ508突然変異を含む。好ましいPAMは上記に記載される。好ましいCRISPR酵素は任意のCas(本明細書に記載されるものであるが、特に実施例22に記載されるもの)である。
【0300】
CFに代わるものとしては任意の遺伝的障害が挙げられ、その例は周知されている。本発明の別の好ましい方法または使用は、ラフォラ病に関連することが特定されているEMP2AおよびEMP2B遺伝子の欠陥を補修するためのものである。
【0301】
一部の実施形態では、「ガイド配列」は「ガイドRNA」と異なり得る。ガイド配列は、ガイドRNAの範囲内にある、標的部位を指定する約20bpの配列を指し得る。
【0302】
一部の実施形態では、Cas9はSpCas9である(またはそれから誘導される)。かかる実施形態において、好ましい突然変異は、SpCas9の10位、762位、840位、854位、863位および/または986位または他のCas9における対応する位置(これは例えば標準的な配列比較ツールによって確かめることができる)の一部または全部にある。詳細には、SpCas9において以下の突然変異の一部または全部が好ましい:D10A、E762A、H840A、N854A、N863Aおよび/またはD986A;ならびに代替アミノ酸のいずれかの保存的置換も想定される。他のCas9の対応する位置における同じ(またはこれらの突然変異の保存的置換)もまた好ましい。特にSpCas9ではD10およびH840が好ましい。しかしながら、他のCas9では、SpCas9D10およびH840に対応する残基もまた好ましい。これらはニッカーゼ活性を提供するため有利である。かかる突然変異は、CFの治療のみならず、本発明の全ての態様に適用し得る。
【0303】
Schwank et al.(Cell Stem Cell,13:653-58,2013)は、CRISPR/Cas9を使用してヒト幹細胞における嚢胞性線維症に関連する欠陥を補修した。このチームの標的は、イオンチャネル、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)の遺伝子であった。CFTRにおける欠失は、嚢胞性線維症患者においてタンパク質の誤った折り畳みを引き起こす。Schwanket al.は、2人の嚢胞性線維症小児由来の細胞試料から生じさせた培養腸幹細胞を使用して、挿入しようとする修復配列を含有するドナープラスミドと共にCRISPRを使用して欠陥を補修することができた。この研究者らは、次に細胞を腸の「オルガノイド」、すなわち小型の腸に成長させ、それらが正常に機能することを示した。この例では、クローンオルガノイドの約半分に適切な遺伝的補修が起こった。
【0304】
筋肉
本発明はまた、CRISPR-Cas系を筋肉に送達することも企図する。
【0305】
Bortolanza etal.(Molecular Therapyvol.19 no.11,2055-2064Nov.2011)は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)が発症した後のFRG1マウスにおけるRNA干渉発現カセットの全身送達が、毒性の徴候なしに用量依存的な長期FRG1ノックダウンをもたらしたことを示している。Bortolanzaet al.は、5×1012vgのrAAV6-sh1FRG1の単回静脈注射がFRG1マウスの筋組織病理および筋機能をレスキューすることを見出した。詳細には、生理溶液中に2×1012または5×1012vgのベクターを含有する200μlを、25ゲージTerumoシリンジを使用して尾静脈に注入した。Bortolanzaet al.の方法を、CRISPRCasを発現するAAVに適用し、約2×1015または2×1016vgのベクターの投薬量でヒトに注射し得る。
【0306】
Dumonceaux etal.(Molecular Therapyvol.18 no.5,881-887May 2010)は、ミオスタチン受容体AcvRIIbmRNAを指向するRNA干渉(sh-AcvRIIb)の技術を用いてミオスタチン経路を阻害する。擬似ジストロフィンの回復が、ベクター化したU7エクソンスキッピング技法(U7-DYS)により媒介された。sh-AcvrIIb構築物単独、U7-DYS構築物単独、または両方の構築物の組み合わせのいずれかを担持するアデノ随伴ベクターが、ジストロフィーmdxマウスの前脛骨(TA)筋に注入された。注入は1011個のAAVウイルスゲノムで実施された。Dumonceauxet al.の方法は、CRISPRCasを発現するAAVに適用し、例えば約1014~約1015vgのベクターの投薬量でヒトに注射し得る。
【0307】
Kinouchi et al.(Gene Therapy(2008)15,1126-1130)は、アテロコラーゲン(ATCOL)を含む化学的に改変されていないsiRNAのナノ粒子製剤を用いた正常または罹患マウスの骨格筋へのインビボsiRNA送達の有効性を報告する。骨格筋成長の負の調節因子であるミオスタチンを標的とするsiRNAをATCOLの媒介によってマウス骨格筋または静脈内に局所適用することにより、投与後数週間以内に筋量の顕著な増加が生じた。これらの結果は、ATCOLの媒介によるsiRNAの適用が、筋萎縮症を含む疾患に対するさらなる治療用途に強力なツールであることを含意する。Mst-siRNA(最終濃度10mM)がATCOL(局所投与用の最終濃度0.5%)(AteloGene、高研、東京、日本)と、製造者の指示に従い混合された。ネンブタール(25mg/kg、i.p.)によるマウス(20週齢雄性C57BL/6)の麻酔後、Mst-siRNA/ATCOL複合体が咀嚼筋および大腿二頭筋に注入された。Kinouchiet al.の方法をCRISPRCasに適用し、ヒトに対して例えば約500~1000mlの40μM溶液の投薬量で筋肉に注射し得る。
【0308】
Hagstrom et al.(Molecular Therapy Vol.10,No.2,August 2004)は、哺乳動物の四肢筋全体にわたる筋細胞(筋線維)に対する効率的かつ反復可能な核酸の送達を可能にする血管内非ウイルス方法を記載している。この手順には、ターニケットまたは血液測定用カフで一過性に遮断した肢の遠位静脈へのネイキッドプラスミドDNAまたはsiRNAの注入が含まれる。筋線維に対する核酸送達は、筋組織中への核酸溶液の溢出を可能にするのに十分な容積で急速注入することにより促進される。小型動物および大型動物の両方において、最小毒性で骨格筋における高度な導入遺伝子発現が達成された。四肢筋に対するsiRNA送達のエビデンスもまた得られた。アカゲザルに対するプラスミドDNA静脈注入では、各々単一のシリンジが装填された2つのシリンジポンプ(モデルPHD2000;Harvard Instruments)に三方活栓が接続された。パパベリン注射後5分でpDNA(40~100ml生理食塩水中15.5~25.7mg)が1.7または2.0ml/秒の速度で注入された。これは、本発明のCRISPRCasを発現するプラスミドDNA用に、ヒトについて800~2000ml生理食塩水中約300~500mgの注入でスケールアップすることができる。ラットに対するアデノウイルスベクター注入では、3mlの通常生理食塩水(NSS)中2×10個の感染粒子が注入された。これは、本発明のCRISPRCasを発現するアデノウイルスベクター用に、ヒトについて10リットルのNSS中約1×1013個の感染粒子の注入でスケールアップすることができる。siRNAに関しては、ラットは大伏在静脈に12.5μgのsiRNAを注入され、霊長類は大伏在静脈に750μgのsiRNAを注入された。これは、本発明のCRISPRCas用に、例えばヒトの大伏在静脈への約15~約50mgの注入でスケールアップすることができる。
【0309】
皮膚
本発明はまた、CRISPR-Cas系を皮膚に送達することも企図する。
【0310】
Hickerson et al.(Molecular Therapy-NucleicAcids(2013)2,e129)は、ヒトおよびマウス皮膚にセルフデリバリー(sd)siRNAを送達するための電動マイクロニードルアレイ皮膚送達装置に関する。siRNAベースの皮膚治療薬を臨床に移行させる際の主な課題は、有効な送達系の開発である。種々の皮膚送達技術に多くの試みが投じられてきたが、成功は限られている。皮膚がsiRNAで治療された臨床試験では、皮下針注射に伴う激痛のために試験におけるさらなる患者の登録が不可能となっており、改良された、より「患者に優しい」(すなわち、痛みがほとんどまたは全くない)送達手法の必要性が浮き彫りとなっている。マイクロニードルは、siRNAを含む大型の荷電カーゴを、最大の障壁である角質層を越えて送達する効率的な方法であり、概して従来の皮下針より痛みが少ないと考えられる。電動「スタンプ型」マイクロニードル装置は、Hickersonet al.によって使用された電動マイクロニードルアレイ(MMNA)装置を含め、無毛マウス試験で安全であり、かつ(i)化粧品業界での広範な使用、および(ii)限られた試験でほぼ全てのボランティアがこの装置の使用はインフルエンザの予防接種と比べてはるかに痛みが少ないと認めたことからも明らかなとおり、痛みをほとんどまたは全く引き起こさないことが示されており、この装置を使用したsiRNA送達により、皮下針注射を使用した先行の臨床試験で経験されたものと比べて痛みがはるかに少なくなることが示唆される。MMNA装置(BomtechElectronic Co、ソウル、韓国からTriple-MまたはTri-Mとして市販されている)は、マウスおよびヒト皮膚に対するsiRNAの送達用に構成された。0.1mmの深さに設定された、使い捨てTri-M針カートリッジ(Bomtech)のチャンバに、sd-siRNA溶液(最大300μlの0.1mg/mlRNA)が導入された。ヒト皮膚の治療に関しては、不特定の皮膚(外科手技後直ちに入手)が手で伸ばされ、処置前にコルク製プラットフォームにピンで留められた。全ての皮内注射が、28ゲージ0.5インチ針を有するインスリンシリンジを使用して実施された。Hickersonet al.のMMNA装置および方法は、例えば皮膚に対する最大300μlの0.1mg/mlCRISPR Casの投薬量で、本発明のCRISPRCasの送達に使用しおよび/または適合させることができる。
【0311】
Leachman et al.(Molecular Therapy,vol.18no.2,442-446 Feb.2010)は、皮膚用の第1の低分子干渉性RNA(siRNA)ベースの治療薬を利用した、生活に支障をきたす程の足底角皮症を含む常染色体優性症候群であるまれな皮膚障害の先天性爪肥厚症(PC)の治療に関する第Ib相臨床試験に関する。TD101と呼ばれるこのsiRNAは、野生型K6amRNAには影響を及ぼすことなくケラチン6a(K6a)N171K突然変異mRNAを特異的かつ強力に標的化する。以下に用量漸増スケジュールを提供する。
【0312】
【表11】
【0313】
最初に、TD101またはビヒクル単独(カルシウムまたはマグネシウム不含ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)の0.1mlの1.0mg/ml溶液が対称性の胼胝に投与された。6つの漸増用量容積が企図され、増加に対する有害反応はなかった:注射1回当たり0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、および2.0mlのTD101溶液の1.0mg/ml溶液。計画された最大容積(2.0ml)で十分な忍容性が示されたため、次にTD101の濃度を1mg/mlから8.5mg/mlの最終濃度に至るまで毎週増加させた。同様の投薬量が、ケラチン6a(K6a)N171K突然変異mRNAを特異的かつ強力に標的化するCRISPRCasの投与に企図される。
【0314】
Zheng et al.(PNAS,July 24,2012,vol.109,no.30,11975-11980)は、金コアが高配向の共有結合的に固定化されたsiRNAの高密度シェルに取り囲まれている球状核酸ナノ粒子コンジュゲート(SNA-NC)が、適用後数時間以内にほぼ100%のインビトロのケラチノサイト、マウス皮膚、およびヒト表皮を自在に通り抜けることを示している。Zhenget al.は、60時間にわたる25nM上皮成長因子受容体(EGFR)SNA-NCの単回適用がヒト皮膚における有効な遺伝子ノックダウンを実証することを実証した。同様の投薬量が、皮膚に対する投与についてSNA-NCに固定化されたCRISPRCasに企図される。
【0315】
肝炎ウイルス
本発明はまた、B型肝炎ウイルス(HBV)の治療にも適用することができる。しかしながら、CRISPRCas系は、内因性低分子RNA経路が過飽和になるリスクなどのRNAiの欠点を回避するように、例えば用量および配列を最適化するなどして適合させなければならない(例えば、Grimmet al.,Nature vol.441,26 May 2006を参照のこと)。例えば、ヒト当たり約1~10×1014粒子などの低用量が企図される。
【0316】
別の実施形態において、HBVを標的とするCRISPR Cas系が、安定核酸脂質粒子(SNALP)などのリポソームで投与され得る(例えば、Morrissey et al.,Nature Biotechnology,Vol.23,No.8,August 2005を参照のこと)。SNALP中約1、3または5mg/kg/日の、HBVRNAに標的化されたCRISPR Casを毎日静脈内注射することが企図される。毎日の治療は約3日間にわたり、次に毎週、約5週間にわたり得る。
【0317】
別の実施形態において、Chen etal.のシステム(Gene Therapy(2007)14,11-19)を本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。Chen et al.は二本鎖アデノ随伴ウイルス8型偽型ベクター(dsAAV2/8)を使用してshRNAを送達する。HBV特異的shRNAを担持するdsAAV2/8ベクターの単回投与(マウス当たり1×1012ベクターゲノム)が、HBVトランスジェニックマウスの肝臓における安定したレベルのHBVタンパク質、mRNAおよび複製DNAを有効に抑制し、循環中HBV負荷の最大2~3log10の低下がもたらされた。有意なHBV抑制はベクター投与後少なくとも120日間持続した。shRNAの治療効果は配列依存的で、インターフェロンの活性化は伴わなかった。本発明には、HBVを指向するCRISPRCas システムをAAV2/8ベクターなどのAAVベクターにクローニングし、例えばヒト当たり約1×1015ベクターゲノム~約1×1016ベクターゲノムの投薬量でヒトに投与し得る。
【0318】
別の実施形態において、Wooddell et al.の方法(Molecular Therapy vol.21 no.5,973-985May 2013)を、本発明のCRISPRCas系に使用しおよび/または適合させることができる。Woodell et al.は、肝細胞標的化N-アセチルガラクトサミンコンジュゲートメリチン様ペプチド(NAG-MLP)と、凝固第VII因子(F7)を標的化する肝臓向性コレステロールコンジュゲートsiRNA(chol-siRNA)との単純な共注入が、マウスおよび非ヒト霊長類において臨床化学の変化またはサイトカインの誘導なしに効率的なF7ノックダウンをもたらすことを示す。Wooddellet al.は、HBV感染症の一過性のトランスジェニックマウスモデルを使用して、NAG-MLPと、保存されたHBV配列を標的化する強力なchol-siRNAとの単回共注入が、ウイルスRNA、タンパク質、およびウイルスDNAのマルチログ(multilog)抑制をもたらし、効果が長時間にわたったことを示す。本発明には、例えば約6mg/kgのNAG-MLPと6mg/kgのHBV特異的CRISPRCasとの静脈内(intraveinous)共注入が想定され得る。代替例では、1日目に約3mg/kgのNAG-MLPおよび3mg/kgのHBV特異的CRISPRCasが送達され、続いて2週間後に約2~3mg/kgのNAG~MLPおよび2~3mg/kgのHBV特異的CRISPRCasが投与されてもよい。
【0319】
本発明はまた、C型肝炎ウイルス(HCV)の治療にも適用され得る。Roelvinkiet al.の方法(MolecularTherapy vol.20 no.9,1737-1749 Sep 2012)をCRISPR Cas系に適用することができる。例えば、AAV8などのAAVベクターが企図されるベクターであってよく、例えばキログラム体重当たり約1.25×1011~1.25×1013ベクターゲノム(vg/kg)の投薬量が企図され得る。
【0320】
同様の方法で他の疾患の宿主を治療し得ることは直ちに明らかであろう。突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患のいくつかの例が本明細書に提供されるが、さらに多くが知られている。上記の戦略はそれらの疾患に適用することができる。
【0321】
ハンチントン病(HD)
RNA干渉(RNAi)は、ハンチントン病の疾患原因遺伝子であるHTTの発現を低下させることによってこの障害に対する治療可能性を提供し(例えば、McBrideet al.,MolecularTherapy vol.19 no.12 Dec.2011,pp.2152-2162を参照のこと)、従って出願人は、それをCRISPR-Cas系に使用しおよび/または適合させることができると仮定する。CRISPR-Cas系は、アンチセンス配列のオフターゲットの可能性を低下させるアルゴリズムを使用して生成され得る。CRISPR-Cas配列は、マウス、アカゲザルまたはヒトハンチンチンのいずれのエクソン52にある配列も標的とし、かつAAVなどのウイルスベクターで発現し得る。ヒトを含めた動物に、半球当たり約3回のマイクロインジェクション(合計6回の注入):最初は前交連から1mm吻側に(12μl)および残りの2回の注入(それぞれ12μlおよび10μl)は最初の注入から3および6mm尾側に離して、1e12vg/mlのAAVによって約1μl/分の速度で注入されてもよく、注入液を針先端から拡散させるため、針はその場にさらに5分間残された。
【0322】
DiFiglia et al.(PNAS,October 23,2007,vol.104,no.43,17204-17209)は、Httを標的化するsiRNAの成体線条体への単回投与が突然変異体Httをサイレンシングし、神経病変を減弱させ、および急激発症型のウイルストランスジェニックマウスHDモデルで観察された異常行動表現型を遅延させ得ることを観察した。DiFigliaは、2μlのCy3標識cc-siRNA-Httまたは非コンジュゲートsiRNA-Httを10μMでマウスに線条体内注入した。Httに標的化されたCRISPRCasの同様の投薬量を本発明においてヒトに企図することができ、例えば、Httに標的化された約5~10mlの10μMCRISPR Casが線条体内注入されてもよい。
【0323】
別の例において、Boudreau etal.(Molecular Therapyvol.17 no.6 june 2009)は、htt特異的RNAiウイルスを発現する5μlの組換えAAV血清型2/1ベクターを(4×1012ウイルスゲノム/mlで)線条体(straiatum)に注入する。Httに標的化されたCRISPRCasの同様の投薬量を本発明においてヒトに企図することができ、例えば、Httに標的化された約10~20mlの4×1012ウイルスゲノム/ml)CRISPRCasが線条体内注入されてもよい。
【0324】
別の例において、HTTに標的化されたCRISPR Casが連続投与され得る(例えば、Yu et al.,Cell 150,895-908,August 31,2012を参照のこと)。Yu et al.は、0.25ml/時を送達する浸透圧ポンプ(モデル2004)を利用して300mg/日のss-siRNAまたはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(SigmaAldrich)を28日間送達するとともに、0.5μl/時を送達するように設計されたポンプ(モデル2002)を使用して75mg/日の陽性対照MOEASOを14日間送達した。ポンプ(Durect Corporation)は滅菌PBS中に希釈されたss-siRNAまたはMOEが充填され、次に植え込みの24時間前または48時間前(モデル2004)に37℃でインキュベートされた。マウスが2.5%イソフルラン(isofluorane)で麻酔をかけられ、頭蓋底に正中切開が設けられた。定位固定ガイドを使用して右側脳室にカニューレが植え込まれ、Loctite接着剤で固定された。Alzet浸透圧ミニポンプに取り付けられたカテーテルがカニューレに取り付けられ、ポンプが肩甲骨中央領域に皮下留置された。切開は5.0ナイロン縫合糸で閉じられた。Httに標的化されたCRISPRCasの同様の投薬量を本発明においてヒトに企図することができ、例えば、Httに標的化された約500~1000g/日のCRISPRCasが投与されてもよい。
【0325】
持続注入の別の例において、Stiles et al.(Experimental Neurology 233(2012)463-471)は、チタン針先端を有する実質内カテーテルを右被殻に植え込んだ。カテーテルが腹部の皮下に植え込まれたSynchroMed(登録商標)IIポンプ(MedtronicNeurological、Minneapolis、MN)に接続された。6μL/日でリン酸緩衝生理食塩水を7日間注入した後、ポンプに被験物質が再充填され、7日間の連続送達がプログラムされた。約2.3~11.52mg/日のsiRNAが約0.1~0.5μL/分の種々の注入速度で注入された。Httに標的化されたCRISPRCasの同様の投薬量を本発明においてヒトに企図することができ、例えば、Httに標的化された約20~200mg/日のCRISPRCasが投与されてもよい。
【0326】
別の例において、Sangamoに譲渡された米国特許出願公開第20130253040号明細書の方法もまた、ハンチントン病の治療用にTALESから本発明のCRISPRCas系に適合させることができる。
【0327】
核酸、アミノ酸およびタンパク質
本発明は核酸を使用して標的DNA配列を結合する。核酸はタンパク質と比べて作製がはるかに容易で安価であり、かつ相同性が求められるストレッチの長さに応じて特異性を変化させることができるため、これは有利である。例えば、複数のフィンガーの複雑な三次元の配置は不要である。
【0328】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用される。これらは、任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、既知または未知の任意の機能を遂行し得る。以下のものは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖分析から定義される遺伝子座(遺伝子座)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。この用語はまた、合成骨格を有する核酸様構造も包含し、例えば、Eckstein,1991;Basergaet al.,1992;Milligan,1993;国際公開第97/03211号パンフレット;国際公開第96/39154号パンフレット;Mata,1997;Strauss-Soukup,1997;およびSamstag,1996を参照のこと。ポリヌクレオチドは、1つ以上の改変ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含み得る。ヌクレオチド構造の改変は、存在する場合、ポリマーの集合前または後に与えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断することができる。ポリヌクレオチドは、重合後に例えば標識成分とのコンジュゲーションによりさらに改変することができる。
【0329】
本明細書において使用される用語「野生型」は、当業者により理解される当技術分野の用語であり、突然変異体またはバリアント形態から区別される天然状態で生じるままの生物、株、遺伝子または特徴の典型的な形態を意味する。
【0330】
本明細書において使用される用語「バリアント」は、天然状態で生じるものから逸脱するパターンを有する品質の提示を意味すると解釈すべきである。
【0331】
用語「天然に存在しない」または「エンジニアリングされた」は、互換的に使用され、人工の関与を示す。この用語は、核酸分子またはポリペプチドを指す場合、核酸分子またはポリペプチドが、それらが天然状態で天然に会合し、または天然状態で見出される少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0332】
「相補性」は、古典的ワトソン-クリック塩基対形成または他の非古典的タイプのいずれかによる別の核酸配列との水素結合を形成する核酸の能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列との水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)を形成し得る核酸分子中の残基の割合を示す(例えば、10のうち5、6、7、8、9、10は、50%、60%、70%、80%、90%、および100%の相補性である)。「完全に相補的」は、核酸配列の全ての連続残基が第2の核酸配列中の同一数の連続残基と水素結合することを意味する。本明細書において使用される「実質的に相補的」は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、またはそれよりも多いヌクレオチドの領域に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指し、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0333】
本明細書において使用されるハイブリダイゼーションのための「ストリンジェントな条件」は、標的配列に対する相補性を有する核酸が、標的配列と優位にハイブリダイズし、非標的配列と実質的にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、一般に、配列依存的であり、多数の因子に応じて変動する。一般に、配列が長ければ、配列がその標的配列と特異的にハイブリダイズする温度が高い。ストリンジェントな条件の非限定的な例は、Tijssen(1993),LaboratoryTechniques In Biochemistry And MolecularBiology-Hybridization With Nucleic AcidProbes Part I,Second Chapter“Overview of principles of hybridization and the strategyof nucleic acid probe assay”,Elsevier,N.Y.に詳述されている。ポリヌクレオチド配列に言及がなされる場合、相補的なまたは部分的に相補的な配列もまた想定される。それらは好ましくは、高度にストリンジェントな条件下で参照配列にハイブリダイズし得る。概して、ハイブリダイゼーション速度を最大化するためには、比較的低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が選択される:熱的融点(T)より約20~25℃低い。Tは、特定の標的配列の50%が規定のイオン強度およびpHの溶液中で完全に相補的なプローブとハイブリダイズする温度である。概して、ハイブリダイズされる配列の少なくとも約85%のヌクレオチド相補性を求めるためには、Tより約5~15℃低い高度にストリンジェントな洗浄条件が選択される。ハイブリダイズされる配列の少なくとも約70%のヌクレオチド相補性を求めるためには、Tより約15~30℃低い中程度にストリンジェントな洗浄条件が選択される。高度に許容的な(極めて低いストリンジェンシーの)洗浄条件は、Tより50℃も低いものであってよく、ハイブリダイズされる配列間における高度のミスマッチを許容する。当業者は、標的配列とプローブ配列との間の具体的な相同性レベルによる検出可能なハイブリダイゼーションシグナルの結果に影響が及ぶように、ハイブリダイゼーション工程および洗浄工程における他の物理的および化学的パラメータもまた変更し得ることを認識するであろう。好ましい高度にストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でのインキュベーション、または5×SSCおよび1%SDS、65℃でのインキュベーションと、0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃での洗浄を含む。
【0334】
「ハイブリダイゼーション」は、1つ以上のポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン結合により、または任意の他の配列特異的様式で生じ得る。複合体は、二本鎖構造を形成する2つの鎖、多重鎖複合体を形成する3つ以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはそれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、より広範なプロセス、例えば、PCRの開始、または酵素によるポリヌクレオチドの開裂におけるステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズし得る配列は、所与の配列の「相補鎖」と称される。
【0335】
本明細書で使用されるとき、用語「ゲノム遺伝子座(genomic locus)」または「遺伝子座(locus)」(複数形では遺伝子座(loci))は、染色体上の遺伝子またはDNA配列の特定の位置である。「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするひと続きのDNAもしくはRNA、または生物において機能的な役割を担い、ひいては生体における遺伝の分子単位であるRNA鎖を指す。本発明の目的上、遺伝子は遺伝子産物の産生を調節する領域(かかる調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接するか否かに関わらず)を含むと見なされ得る。従って、遺伝子には、必ずしも限定されるわけではないが、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および配列内リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が含まれる。
【0336】
本明細書で使用されるとき、「ゲノム遺伝子座の発現」または「遺伝子発現」は、機能性遺伝子産物の合成において遺伝子からの情報が用いられるプロセスである。遺伝子発現の産物は多くの場合にタンパク質であるが、rRNA遺伝子またはtRNA遺伝子などの非タンパク質コード遺伝子では、産物は機能性RNAである。遺伝子発現プロセスは、知られている全ての生命-真核生物(多細胞生物を含む)、原核生物(細菌および古細菌)およびウイルスによって、生存のための機能性産物の生成に用いられる。本明細書で使用されるとき、遺伝子または核酸の「発現」には、細胞遺伝子発現のみならず、クローニングシステムおよび任意の他のコンテクストにおける核酸の転写および翻訳もまた包含される。本明細書で使用されるとき、「発現」はまた、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(例えばmRNAまたは他のRNA転写物に)転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAが続いてペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスも指す。転写物およびコードされたポリペプチドは、まとめて「遺伝子産物」と称され得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には、真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。
【0337】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは、直鎖または分枝鎖であり得、それは、改変アミノ酸を含み得、それは、非アミノ酸により中断されていてよい。この用語は、改変、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作、例えば、標識成分とのコンジュゲーションを受けたアミノ酸ポリマーも包含する。本明細書において使用される用語「アミノ酸」は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸、ならびにアミノ酸アナログおよびペプチド模倣体を含む。
【0338】
本明細書で使用されるとき、用語「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」は、タンパク質鎖の残りの部分と独立して存在しおよび機能し得るタンパク質配列の一部を指す。
【0339】
本発明の態様に記載されるとおり、配列同一性は配列相同性と関係がある。相同性比較は目測で行われてもよく、またはより通例では、容易に利用可能な配列比較プログラムの助けを借りて行われてもよい。これらの市販のコンピュータプログラムは2つ以上の配列間のパーセント(%)相同性を計算し得るとともに、2つ以上のアミノ酸または核酸配列が共有する配列同一性も計算し得る。一部の好ましい実施形態では、本明細書に記載されるdTALEのキャッピング領域は、本明細書に提供されるキャッピング領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるまたはそれとの同一性を共有する配列を有する。
【0340】
配列相同性は、当該技術分野において公知の多くのコンピュータプログラムのいずれか、例えばBLASTまたはFASTA等により生成し得る。かかるアラインメントの実行に好適なコンピュータプログラムは、GCGWisconsin Bestfitパッケージである(ウィスコンシン大学(Universityof Wisconsin)、米国;Devereuxet al.,1984,NucleicAcids Research 12:387)。配列比較を実施し得る他のソフトウェアの例としては、限定はされないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999 前掲書-Chapter18を参照)、FASTA(Atschul et al.,1990,J.Mol.Biol.,403-410)およびGENEWORKSスイートの比較ツールが挙げられる。BLASTおよびFASTAは両方とも、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubelet al.,1999 前掲書,7-58~7-60頁を参照)。しかしながら、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。
【0341】
パーセンテージ(%)配列相同性は連続する配列にわたり計算することができ、すなわち1つの配列が他の配列と整列され、一方の配列の各アミノ酸またはヌクレオチドが他方の配列の対応するアミノ酸またはヌクレオチドと一度に1個の残基ずつ直接比較される。これは「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。典型的には、かかるギャップなしアラインメントは比較的少ない数の残基にわたってのみ実施される。
【0342】
これは極めて単純かつ一貫した方法であるが、例えば、本来同一である配列ペアにおいて、1つの挿入または欠失によって続くアミノ酸残基のアラインメントにずれが生じ、ひいては大域的アラインメントの実行時に%相同性が大幅に低下する可能性がある点を考慮に入れることができない。結果的に、多くの配列比較方法が、全体的な相同性または同一性スコアを過度に不利にすることなく可能性のある挿入および欠失を考慮に入れる最適アラインメントを作製するように設計される。これは配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して局所的な相同性または同一性を最大化しようとすることにより達成される。
【0343】
しかしながら、これらのより複雑な方法では、アラインメントに現れる各ギャップに「ギャップペナルティー」が割り当てられ、従って、同じ数の同一アミノ酸について、可能な限り少ないギャップ-2つの比較される配列間のより高い関連性を反映する-を有する配列アラインメント程、多くのギャップを有するものより高いスコアを達成し得る。ギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップにおける後続の各残基により小さいペナルティーを課す「アフィニティーギャップコスト」が典型的に使用される。これは最も一般的に用いられるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然ながらギャップがより少ない最適化されたアラインメントを生じ得る。多くのアラインメントプログラムでギャップペナルティーを変更することが可能である。しかしながら、配列比較にかかるソフトウェアを使用する際にはデフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCGWisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列に関するデフォルトのギャップペナルティーは、ギャップが-12、および各伸長が-4である。
【0344】
従って最大%相同性の計算は、初めにギャップペナルティーを考慮して最適アラインメントを作成することが必要である。かかるアラインメントの実行に好適なコンピュータプログラムは、GCGWisconsin Bestfitパッケージ(Devereuxet al.,1984 Nuc.Acids Research 12p387)である。配列比較を実施し得る他のソフトウェアの例としては、限定はされないが、BLASTパッケージ(Ausubelet al.,1999 Short Protocols inMolecular Biology,4th Ed.-Chapter 18を参照)、FASTA(Altschul et al.,1990 J.Mol.Biol.403-410)およびGENEWORKSスイートの比較ツールが挙げられる。BLASTおよびFASTAは両方とも、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubelet al.,1999,ShortProtocols in Molecular Biology,7-58~7-60頁を参照)。しかしながら、用途によってはGCGBestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新規ツールもまたタンパク質およびヌクレオチド配列の比較に利用可能である(FEMSMicrobiol Lett.1999 174(2):247-50;FEMS Microbiol Lett.1999 177(1):187-8および米国国立衛生研究所(NationalInstitutes for Health)のウェブサイトにある国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for BiotechnologyInformation)のウェブサイトを参照)。
【0345】
最終的な%相同性は同一性の点で測定され得るが、アラインメントプロセスそれ自体は典型的にはオール・オア・ナッシングのペア比較に基づくものではない。代わりに、化学的類似性または進化距離に基づき各ペアワイズ比較にスコアを割り当てるスケール付き類似性スコア行列が概して使用される。一般的に用いられるかかる行列の例は、BLOSUM62行列-BLASTプログラムスイートのデフォルト行列である。GCGWisconsinプログラムは、概して公開されているデフォルト値か、あるいは供給がある場合にはカスタムの記号比較表を使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照のこと)。用途によっては、GCGパッケージの公開されているデフォルト値か、または他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。
【0346】
あるいは、パーセンテージ相同性は、DNASIS(商標)(Hitachi Software)の多重アラインメント機能を使用して、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM(1988),Gene 73(1),237-244)と類似したアルゴリズムに基づき計算することができる。ソフトウェアが最適アラインメントを作成し終えると、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能になる。ソフトウェアは典型的にはこれを配列比較の一部として行い、数値結果を生成する。
【0347】
配列はまた、サイレントな変化を生じさせて機能的に等価な物質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換も有し得る。アミノ酸特性(残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質など)の類似性に基づき計画的なアミノ酸置換が作製されてもよく、従ってアミノ酸を官能基で一つにまとめることが有用である。アミノ酸は、その側鎖の特性のみに基づき一つにまとめられてもよい。しかしながら、突然変異データも同様に含めることがより有用である。このように得られたアミノ酸セットは、構造上の理由から保存されているものと見られる。これらのセットはベン図の形式で記述することができる(LivingstoneC.D.and Barton G.J.(1993)「タンパク質配列アラインメント:残基保存の階層分析戦略(Protein sequence alignments:a strategy for thehierarchical analysisof residue conservation)」Comput.Appl.Biosci.9:745-756)(Taylor W.R.(1986)「アミノ酸保存の分類(The classificationof amino acid conservation)」J.Theor.Biol.119;205-218)。保存的置換は、例えば、一般に受け入れられているベン図によるアミノ酸分類を記載する下記の表に従い作製し得る。
【0348】
【表12】
【0349】
本発明の実施形態は、起こり得る相同置換(置換(substitution)および置換(replacement)は、本明細書では既存のアミノ酸残基またはヌクレオチドと代替の残基またはヌクレオチドとの相互交換を意味して用いられる)、すなわち、アミノ酸の場合に塩基性同士、酸性同士、極性同士等、同種のもの同士の置換を含み得る配列(ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの両方)を含む。非相同置換、すなわち、あるクラスから別のクラスの残基への置換、あるいは、オルニチン(以下、Zと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと称する)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと称する)、ピリイルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシンなどの非天然アミノ酸の取り込みが関わる置換もまた起こり得る。
【0350】
変異体アミノ酸配列は、グリシンまたはβ-アラニン残基などのアミノ酸スペーサーに加え、メチル基、エチル基またはプロピル基などのアルキル基を含む配列の任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入され得る好適なスペーサー基を含み得る。別形態の変化(これにはペプトイド形態の1つ以上のアミノ酸残基の存在が関わる)については、当業者は十分に理解し得る。誤解を避けるため、「ペプトイド形態」は、α-炭素置換基がα-炭素上ではなく、むしろ残基の窒素原子上にある変異体アミノ酸残基を指して使用される。ペプトイド形態のペプチドの調製方法は当該技術分野において公知である(例えばSimonRJ et al.,PNAS(1992)89(20),9367-9371およびHorwell DC,Trends Biotechnol.(1995)13(4),132-134)。
【0351】
本発明の実施は、特に記載のない限り、当業者の技能の範囲内である免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAの慣用の技術を用いる。Sambrook,Fritschand Maniatis,MOLECULARCLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd edition(1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel,et al.eds.,(1987));シリーズMETHODSIN ENZYMOLOGY(AcademicPress,Inc.):PCR 2:APRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hamesand G.R.Taylor eds.(1995))、Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL、およびANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987))参照。
【0352】
ベクター
一態様において、本発明は、CRISPR-Cas系のエンジニアリングおよび最適化において使用されるベクターを提供する。
【0353】
本明細書で使用されるとき、「ベクター」は、ある環境から別の環境に実体を移すことを可能にし、またはそれを促進するツールである。ベクターはレプリコン、例えばプラスミド、ファージ、またはコスミドであり、そこに別のDNAセグメントが挿入されることで、挿入されたセグメントの複製がもたらされ得る。概してベクターは、適切な制御エレメントと関連付けられたときに複製能を有する。一般に、用語「ベクター」は、核酸分子であって、それが結合している別の核酸の輸送能を有する核酸分子を指す。ベクターとしては、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、または部分的に二本鎖の核酸分子;1つ以上の遊離末端を含む、遊離末端を含まない(例えば環状の)核酸分子;DNA、RNA、または両方を含む核酸分子;および当該技術分野において公知の他のポリヌクレオチド変種が挙げられる。ある種のベクターは「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術によるなどしてさらなるDNAセグメントを中に挿入することのできる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここではウイルス(例えばレトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV))にパッケージングするためのウイルス由来のDNAまたはRNA配列がベクター中に存在する。ウイルスベクターはまた、宿主細胞への形質移入のためウイルスによって担持されるポリヌクレオチドも含む。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞中で自己複製する能力を有する(例えば細菌性複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムにインテグレートされ、従って宿主ゲノムと共に複製する。さらに、特定のベクターは、作動可能に結合している遺伝子の発現を指向させる能力を有する。かかるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。組換えDNA技法において有用な一般的な発現ベクターは、多くの場合にプラスミドの形態である。
【0354】
組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含んでもよく、これは、その組換え発現ベクターが、発現させる核酸配列に作動可能に結合した1つ以上の調節エレメントを含むことを意味し、調節エレメントは、発現に使用される宿主細胞に基づき選択され得る。組換え発現ベクター内で「作動可能に結合している」とは、目的のヌクレオチド配列が調節エレメントに、そのヌクレオチド配列の(例えばインビトロ転写/翻訳系における、またはベクターが宿主細胞に導入される場合には宿主細胞における)発現を可能にする形で結合していることを意味するように意図される。組換えおよびクローニング方法に関しては、2004年9月2日に米国特許出願公開第2004-0171156A1号明細書として公開された米国特許出願第10/815,730号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)が参照される。
【0355】
本発明の態様は、キメラRNAおよびCas9用のバイシストロニックベクターに関する。キメラRNAおよびCas9用のバイシストロニック発現ベクターが好ましい。概して、および特に、この実施形態においてCas9は好ましくはCBhプロモーターによりドライブされる。キメラRNAは、好ましくはU6プロモーターによりドライブされ得る。理想的にはこの2つが組み合わされる。キメラガイドRNAは、典型的には20bpのガイド配列(N)からなり、これがtracr配列(下部鎖の1つ目の「U」から転写物の末端まで延在する)につなぎ合わされ得る。tracr配列は、指示されるとおりの種々の位置でトランケートされ得る。ガイド配列とtracr配列とはtracrメイト配列に隔てられ、tracrメイト配列はGUUUUAGAGCUAであってもよい。この後に、示されるとおりのループ配列GAAAが続き得る。これらは両方ともに好ましい例である。本出願人らは、SURVEYORアッセイによりヒトEMX1およびPVALB遺伝子座におけるCas9媒介性インデルを実証している。chiRNAは、その「+n」記号で示され、crRNAは、ガイド配列およびtracr配列が別個の転写物として発現するハイブリッドRNAを指す。本出願全体を通じて、キメラRNAはシングルガイド、または合成ガイドRNA(sgRNA)とも称され得る。ループは好ましくはGAAAであるが、この配列に限定されるものではなく、または実際には、4bp長であることのみに限定されるものではない。実際には、ヘアピン構造における使用に好ましいループ形成配列は4ヌクレオチド長であり、最も好ましくは配列GAAAを有する。しかしながら、代替的な配列であってよいとおり、より長いまたは短いループ配列が使用され得る。配列は好ましくはヌクレオチドトリプレット(例えばAAA)、およびさらなるヌクレオチド(例えばCまたはG)を含む。ループ形成配列の例にはCAAAおよびAAAGが含まれる。
【0356】
用語「調節エレメント」は、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム進入部位(IRES)、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナルおよびポリU配列などの転写終結シグナル)を含むことが意図される。かかる調節エレメントは、例えば、Goeddel,GENEEXPRESSION TECHNOLOGY:METHODSIN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載される。調節エレメントには、多くのタイプの宿主細胞でヌクレオチド配列の構成的発現を指図するもの、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指図するもの(例えば組織特異的調節配列)が含まれる。組織特異的プロモーターは、主として所望される目的の組織、例えば、筋肉、ニューロン、骨、皮膚、血液、特定の臓器(例えば肝臓、膵臓)など、または特定の細胞型(例えばリンパ球)における発現を指図し得る。調節エレメントはまた、細胞周期依存的または発生段階依存的様式など、時間依存的様式での発現も指図することができ、これは同時に組織または細胞型特異的であっても、またはそうでなくてもよい。一部の実施形態では、ベクターは、1つ以上のpolIIIプロモーター(例えば1、2、3、4、5つ、またはそれ以上のpol IIIプロモーター)、1つ以上のpol IIプロモーター(例えば1、2、3、4、5つ、またはそれ以上のpolIIプロモーター)、1つ以上のpol Iプロモーター(例えば1、2、3、4、5つ、またはそれ以上のpol Iプロモーター)、またはそれらの組み合わせを含む。polIIIプロモーターの例としては、限定はされないが、U6およびH1プロモーターが挙げられる。polIIプロモーターの例としては、限定はされないが、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを伴う)[例えば、Boshartet al,Cell,41:521-530(1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーターが挙げられる。また、エンハンサーエレメント、例えばWPRE;CMVエンハンサー;HTLV-IのLTRにおけるR-U5’セグメント(Mol.Cell.Biol.,Vol.8(1),p.466-472,1988);SV40エンハンサー;およびウサギβ-グロビンのエクソン2と3との間のイントロン配列(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Vol.78(3),p.1527-31,1981)も用語「調節エレメント」に包含される。発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望の発現レベルなどの要因に依存し得ることは、当業者によって理解されるであろう。ベクターを宿主細胞に導入し、それにより本明細書に記載されるとおり核酸によってコードされる転写物、タンパク質、またはペプチド、例えば融合タンパク質またはペプチド(例えば、クラスター化等間隔短鎖回分リピート(CRISPR)転写物、タンパク質、酵素、それらの突然変異形態、それらの融合タンパク質等)を産生させることができる。調節配列に関しては、米国特許出願第10/491,026号明細書が参照される(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)。プロモーターに関しては、国際公開第2011/028929号パンフレットおよび米国特許出願第12/511,940号明細書が参照される(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0357】
ベクターは、原核または真核細胞中のCRISPR転写物(例えば、核酸転写物、タンパク質、または酵素)の発現のために設計することができる。例えば、CRISPR転写物は、細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichiacoli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞、または哺乳動物細胞中で発現させることができる。好適な宿主細胞は、Goeddel,GENEEXPRESSION TECHNOLOGY:METHODSIN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)にさらに考察されている。あるいは、組換え発現ベクターをインビトロで、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して転写および翻訳させることができる。
【0358】
ベクターは、原核生物または原核細胞中に導入し、その中で増殖させることができる。一部の実施形態において、原核生物を使用して真核細胞中に導入すべきベクターのコピーを増幅し、または真核細胞中に導入すべきベクターの産生における中間ベクターとして使用される(例えば、ウイルスベクターパッケージング系の一部としてプラスミドを増幅)。一部の実施形態において、原核生物を使用してベクターのコピーを増幅し、1つ以上の核酸を発現させ、例えば、宿主細胞または宿主生物への送達のための1つ以上のタンパク質の資源を提供する。原核生物中のタンパク質の発現は、大腸菌(Escherichiacoli)中で、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成的または誘導的プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。融合ベクターは、多数のアミノ酸をそれにコードされるタンパク質に、例えば、組換えタンパク質のアミノ末端に付加する。このような融合ベクターは、1つ以上の目的、例えば、(i)組換えタンパク質の発現の増加;(ii)組換えタンパク質の溶解度の増加;および(iii)親和性精製におけるリガンドとして作用することによる組換えタンパク質の精製の支援を果たし得る。融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解開裂部位を融合部分および組換えタンパク質の接合部に導入して融合タンパク質の精製後に融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能とすることが多い。このような酵素、およびそのコグネート認識配列としては、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。例示的融合発現ベクターとしては、pGEX(PharmaciaBiotech Inc;Smith and Johnson,1988.Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられ、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する。
【0359】
好適な誘導的非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例としては、pTrc(Amrannet al.,(1988)Gene69:301-315)およびpET 11d(Studieret al.,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)60-89)が挙げられる。
【0360】
一部の実施形態において、ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母の出芽酵母(Saccharomycescerivisae)中の発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldari,etal.,1987.EMBO J.6:229-234)、pMFa(Kuijanand Herskowitz,1982.Cell30:933-943)、pJRY88(Schultz et al.,1987.Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation,SanDiego,Calif.)、およびpicZ(InVitrogen Corp,San Diego,Calif.)が挙げられる。
【0361】
一部の実施形態において、ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞中のタンパク質発現をドライブする。培養昆虫細胞(例えば、SF9細胞)中のタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smith,etal.,1983.Mol.Cell.Biol.3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklowand Summers,1989.Virology170:31-39)が挙げられる。
【0362】
一部の実施形態において、ベクターは、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞中の1つ以上の配列の発現をドライブし得る。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed,1987.Nature329:840)およびpMT2PC(Kaufman,et al.,1987.EMBO J.6:187-195)が挙げられる。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクター制御機能は、典型的には、1つ以上の調節エレメントにより提供される。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2型、サイトメガロウイルス、シミアンウイルス40、ならびに本明細書に開示の他のものおよび当技術分野において公知のものに由来する。原核および真核細胞の両方のために他の好適な発現系については、例えば、Chapters16 and 17 of Sambrook,etal.,MOLECULAR CLONING:ALABORATORY MANUAL.2nd ed.,Cold Spring HarborLaboratory,Cold SpringHarbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989参照。
【0363】
一部の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞タイプ中の核酸の発現を優先的に指向し得る(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現させる)。組織特異的調節エレメントは、当技術分野において公知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert,etal.,1987.Genes Dev.1:268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calameand Eaton,1988.Adv.Immunol.43:235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winotoand Baltimore,1989.EMBOJ.8:729-733)および免疫グロブリン(Baneiji,et al.,1983.Cell 33:729-740;Queenand Baltimore,1983.Cell33:741-748)、神経細胞特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrneand Ruddle,1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund,et al.,1985.Science 230:912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号明細書および欧州特許出願公開第264,166号明細書)が挙げられる。発生制御プロモーター、例えば、ネズミhoxプロモーター(Kesseland Gruss,1990.Science249:374-379)およびα-フェトタンパク質プロモーター(Campes and Tilghman,1989.Genes Dev.3:537-546)も包含される。これらの原核生物および真核生物ベクターに関しては、米国特許第6,750,059号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)が参照される。本発明の他の実施形態はウイルスベクターの使用に関するものであってよく、これに関しては米国特許出願第13/092,085号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)が参照される。組織特異的調節エレメントは当該技術分野において公知であり、これに関しては米国特許第7,776,321号明細書(その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる)が参照される。
【0364】
調節エレメント
一部の実施形態において、調節エレメントは、CRISPR系の1つ以上のエレメントの発現をドライブするようにCRISPR系の1つ以上のエレメントに作動可能に結合している。一般に、CRISPR(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)は、SPIDR(スペーサー散在型ダイレクトリピート(SPacerInterspersed DirectRepeat))としても公知であり、通常、特定の細菌種に特異的であるDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、大腸菌(E.coli)中で認識された区別されるクラスの散在型短鎖配列リピート(SSR)(Ishinoet al.,J.Bacteriol.,169:5429-5433[1987];およびNakataet al.,J.Bacteriol.,171:3553-3556[1989])および関連遺伝子を含む。類似の散在型SSRが、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferaxmediterranei)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、アナベナ属(Anabaena)、および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)中で同定されている(Groenen et al.,Mol.Microbiol.,10:1057-1065[1993];Hoe et al.,Emerg.Infect.Dis.,5:254-263[1999];Masepohlet al.,Biochim.Biophys.Acta1307:26-30[1996];およびMojica et al.,Mol.Microbiol.,17:85-93[1995]参照)。CRISPR遺伝子座は、典型的には他のSSRとリピートの構造が異なり、それは短鎖等間隔リピート(SRSR)と称されている(Janssenet al.,OMICS J.Integ.Biol.,6:23-33[2002];およびMojica etal.,Mol.Microbiol.,36:244-246[2000])。一般に、リピートは、実質的に一定の長さを有するユニーク介入配列により等間隔とされているクラスターで生じる短いエレメントである(Mojicaet al.,[2000]、前掲)。リピート配列は株間で高度に保存されているが、散在型リピートの数およびスペーサー領域の配列は、典型的には、株ごとに異なる(vanEmbden et al.,J.Bacteriol.,182:2393-2401[2000])。CRISPR遺伝子座は、40を超える原核生物中で同定されており(例えば、Jansenet al.,Mol.Microbiol.,43:1565-1575[2002];およびMojicaet al.,[2005]参照)、例として、限定されるものではないが、アエロパイラム属(Aeropyrum)、パイロバキュラム属(Pyrobaculum)、スルフォロバス属(Sulfolobus)、アーケオグロバス属(Archaeoglobus)、ハロカーキュラ属(Halocarcula)、メタノバクテリウム属(Methanobacterium)、メタノコッカス属(Methanococcus)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、メタノパイラス属(Methanopyrus)、パイロコッカス属(Pyrococcus)、ピクロフィラス属(Picrophilus)、サーモプラズマ属(Thermoplasma)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、アキフェックス属(Aquifex)、ポーフィロモナス属(Porphyromonas)、クロロビウム属(Chlorobium)、サーマス属(Thermus)、バシラス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、アザーカス属(Azarcus)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、ネイセリア属(Neisseria)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、デスルフォビブリオ属(Desulfovibrio)、ジオバクター属(Geobacter)、ミクソコッカス属(Myxococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ウォリネラ属(Wolinella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシェリキア属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、メチロコッカス属(Methylococcus)、パスツレラ属(Pasteurella)、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、サルモネラ属(Salmonella)、キサントモナス属(Xanthomonas)、エルシニア属(Yersinia)、トレポネーマ属(Treponema)、およびサーモトガ属(Thermotoga)である。
【0365】
一般に、「CRISPR系」は、集合的に、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現またはその活性の指向に関与する転写物および他のエレメント、例として、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性部分tracrRNA)、tracrメイト配列(内因性CRISPR系に関して「ダイレクトリピート」およびtracrRNAによりプロセシングされる部分ダイレクトリピートを包含)、ガイド配列(内因性CRISPR系に関して「スペーサー」とも称される)、またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写物を指す。本発明の実施形態において用語のガイド配列とガイドRNAとは同義的に用いられる。一部の実施形態において、CRISPR系の1つ以上のエレメントは、I型、II型、またはIII型CRISPR系に由来する。一部の実施形態において、CRISPR系の1つ以上のエレメントは、内因性CRISPR系を含む特定の生物、例えば、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)に由来する。一般に、CRISPR系は、標的配列(内因性CRISPR系に関してプロトスペーサーとも称される)におけるCRISPR複合体の形成を促進するエレメントを特徴とする。CRISPR複合体の形成に関して、「標的配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。標的配列は、任意のポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNAポリヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態において、標的配列は、細胞の核または細胞質中に局在している。
【0366】
一部の実施形態では、以下の基準の一部または全部を満たす反復モチーフを検索することにより、インシリコでダイレクトリピートが同定され得る:
1.II型CRISPR遺伝子座に隣接するゲノム配列の2Kbウィンドウに存在する;
2.20~50bpにわたる;および
3.20~50bpの間隔が置かれている。
【0367】
一部の実施形態では、これらの基準のうち2つ、例えば1および2、2および3、または1および3が使用されてもよい。一部の実施形態では、3つ全ての基準が使用されてもよい。
【0368】
一部の実施形態では、続いて以下の基準の一部または全部を満たす配列により候補tracrRNAが予測され得る:
1.ダイレクトリピートとの配列相同性(最大18bpのミスマッチを含むGeneiousにおけるモチーフ検索);
2.転写方向における予測されたRho非依存性転写ターミネーターの存在;および
3.tracrRNAとダイレクトリピートとの間の安定したヘアピン二次構造。
【0369】
一部の実施形態では、これらの基準のうち2つ、例えば1および2、2および3、または1および3が使用されてもよい。一部の実施形態では、3つ全ての基準が使用されてもよい。
【0370】
一部の実施形態では、キメラ合成ガイドRNA(sgRNA)設計が、ダイレクトリピートとtracrRNAとの間に少なくとも12bpの二重鎖構造を組み込み得る。
【0371】
本発明の好ましい実施形態において、CRISPR系はII型CRISPR系であり、Cas酵素は、DNA開裂を触媒するCas9である。化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)に由来するCas9または任意の近縁のCas9による酵素作用は、ガイド配列の20ヌクレオチドにハイブリダイズしかつ標的配列の20ヌクレオチドに続いてプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(例としては、NGG/NRGまたは本明細書に記載されるとおり決定され得るPAMが挙げられる)を有する標的部位配列に二本鎖切断を生じさせる。部位特異的DNA認識および開裂のためのCas9を介したCRISPR活性は、ガイド配列、一部がガイド配列にハイブリダイズするtracr配列およびPAM配列によって規定される。CRISPR系のさらなる態様が、Karginovand Hannon,「CRISPR系:細菌および古細菌における低分子RNAガイド防御(TheCRISPR system:smallRNA-guided defence in bacteria andarchaea)」,Mole Cell2010,January 15;37(1):7に記載される。
【0372】
化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370由来のII型CRISPR遺伝子座、これは、4つの遺伝子Cas9、Cas1、Cas2、およびCsn1のクラスター、ならびに2つの非コードRNAエレメント、tracrRNAおよび短い一続きの非反復配列(スペーサー、各約30bp)が間に置かれた反復配列(ダイレクトリピート)の特徴的アレイを含む。この系では、標的化されたDNA二本鎖切断(DSB)が4段階の逐次的なステップで作成される(図2A)。第一に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第二に、tracrRNAがプレcrRNAのダイレクトリピートにハイブリダイズし、次にはこれがプロセシングされて、個々のスペーサー配列を含む成熟crRNAとなる。第三に、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、crRNAのスペーサー領域とプロトスペーサーDNAとの間のヘテロ二重鎖形成によって、プロトスペーサーおよび対応するPAMからなるDNA標的にCas9を仕向ける。最後に、Cas9がPAMの上流で標的DNAの開裂を媒介することにより、プロトスペーサー内にDSBが作り出される(図2A)。図2Bは、コドン最適化Cas9の核局在を実証する。正確な転写開始を促進するため、tracrRNAの発現の駆動にRNAポリメラーゼIIIベースのU6プロモーターが選択された(図2C)。同様に、単一のスペーサーと、それに隣接する2つのダイレクトリピート(DR、用語「tracrメイト配列」にも包含される;図2C)からなるプレcrRNAアレイを発現させるため、U6プロモーターベースの構築物が開発された。初期のスペーサーは、大脳皮質の発生に重要な遺伝子であるヒトEMX1遺伝子座における33塩基対(bp)の標的部位(30bpプロトスペーサー+Cas9のNGG認識モチーフを満たす3bpCRISPRモチーフ(PAM)配列)をターゲティングするように設計された、(図2C)。
【0373】
典型的には、内因性CRISPR系に関して、CRISPR複合体の形成(標的配列にハイブリダイズされ、1つ以上のCasタンパク質と複合体形成しているガイド配列を含む)は、標的配列中または付近(例えば、それから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはそれよりも多い塩基対内)の一方または両方の鎖の開裂をもたらす。理論により拘束されるものではないが、tracr配列は、野生型tracr配列の全部または一部(例えば、野生型tracr配列の約または約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはそれよりも多い数を超えるヌクレオチド)を含み得、またはそれからなっていてよく、例えば、ガイド配列に作動可能に結合しているtracrメイト配列の全部または一部とのtracr配列の少なくとも一部に沿うハイブリダイゼーションによりCRISPR複合体の一部も形成し得る。一部の実施形態において、CRISPR系の1つ以上のエレメントの発現をドライブする1つ以上のベクターを宿主細胞中に導入し、その結果、CRISPR系のエレメントの発現が1つ以上の標的部位におけるCRISPR複合体の形成を指向する。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に結合しているガイド配列、およびtracr配列は、それぞれ別個のベクター上の別個の調節エレメントに作動可能に結合させることができる。あるいは、同一または異なる調節エレメントから発現されるエレメントの2つ以上を単一ベクター中で合わせることができ、CRISPR系の任意の成分を提供する1つ以上の追加のベクターは第1のベクター中に含まれない。単一ベクター中で合わせるCRISPR系エレメントは、任意の好適な配向で配置することができ、例えば、あるエレメントを第2のエレメントに対して5’側(の上流)にまたは3’側(の下流)に局在化することができる。あるエレメントのコード配列は、第2のエレメントのコード配列の同一または逆鎖上で局在化し、同一または逆向きで配向させることができる。一部の実施形態において、単一のプロモーターは、CRISPR酵素をコードする転写物、ならびに1つ以上のイントロン配列内に埋め込まれているガイド配列、tracrメイト配列(場合により、ガイド配列に作動可能に結合している)、およびtracr配列(例えば、それぞれが異なるイントロン中に、2つ以上が少なくとも1つのイントロン中に、または全部が単一のイントロン中に存在する)の1つ以上の発現をドライブする。一部の実施形態において、CRISPR酵素、ガイド配列、tracrメイト配列、およびtracr配列は、同一のプロモーターに作動可能に結合しており、それから発現される。
【0374】
一部の実施形態において、ベクターは、1つ以上の挿入部位、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(「クローニング部位」とも称される)を含む。一部の実施形態において、1つ以上の挿入部位(例えば、約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超える挿入部位)は、1つ以上のベクターの1つ以上の配列エレメントの上流および/または下流に局在している。一部の実施形態において、ベクターは、tracrメイト配列の上流、および場合によりtracrメイト配列に作動可能に結合している調節エレメントの下流の挿入部位を含み、その結果、挿入部位中へのガイド配列の挿入後および発現時にガイド配列が真核細胞中の標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向する。一部の実施形態において、ベクターは、2つ以上の挿入部位を含み、それぞれの挿入部位は、それぞれの部位におけるガイド配列の挿入を可能とするために2つのtracrメイト配列間に局在している。このような配置において、2つ以上のガイド配列は、単一ガイド配列の2つ以上のコピー、2つ以上の異なるガイド配列、またはそれらの組合せを含み得る。複数の異なるガイド配列を使用する場合、単一発現構築物を使用して細胞内の複数の異なる対応する標的配列に対するCRISPR活性をターゲティングすることができる。例えば、単一ベクターは、約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、またはそれよりも多い数を超えるガイド配列を含み得る。一部の実施形態において、約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超えるそのようなガイド配列含有ベクターを提供し、場合により細胞に送達することができる。
【0375】
一部の実施形態において、ベクターは、CRISPR酵素、例えば、Casタンパク質をコードする酵素コード配列に作動可能に結合している調節エレメントを含む。Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変バージョンが挙げられる。一部の実施形態において、非改変CRISPR酵素は、DNA開裂活性を有し、例えば、Cas9である。一部の実施形態において、CRISPR酵素は、標的配列の局在における、例えば、標的配列内および/または標的配列の相補鎖内の一方または両方の鎖の開裂を指向する。一部の実施形態において、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドからの約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500、またはそれよりも多い塩基対内の一方または両方の鎖の開裂を指向する。一部の実施形態において、ベクターは、対応する野生型酵素に対して突然変異しているCRISPR酵素をコードし、その結果、突然変異CRISPR酵素は、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を開裂する能力を欠く。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からのCas9のRuvCI触媒ドメイン中のアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を両方の鎖を開裂するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本鎖を開裂する)に変換する。Cas9をニッカーゼに変える突然変異の他の例としては、限定されるものではないが、H840A、N854A、およびN863Aが挙げられる。さらなる例として、Cas9の2つ以上の触媒ドメイン(RuvCI、RuvC II、およびRuvC IIIまたはHNHドメイン)を突然変異させて全てのDNA開裂活性を実質的に欠く突然変異Cas9を産生することができる。一部の実施形態において、D10A突然変異を、H840A、N854A、またはN863A突然変異の1つ以上と組み合わせて全てのDNA開裂活性を実質的に欠くCas9酵素を産生する。一部の実施形態において、CRISPR酵素は、突然変異酵素のDNA開裂活性がその非突然変異形態に対して約25%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%、またはそれよりも小さい数未満である場合、全てのDNA開裂活性を実質的に欠くとみなす。酵素がSpCas9でない場合、SpCas9の10位、762位、840位、854位、863位および/または986位に対応する一部または全部の残基に突然変異が作製されてもよい(これは例えば標準的な配列比較ツールによって確かめることができる。詳細には、SpCas9において以下の突然変異の一部または全部が好ましい:D10A、E762A、H840A、N854A、N863Aおよび/またはD986A;ならびに代替アミノ酸のいずれかについての保存的置換もまた想定される。他のCas9の対応する位置における同じもの(またはこれらの突然変異の保存的置換)もまた好ましい。特にSpCas9におけるD10およびH840が好ましい。しかしながら、他のCas9では、SpCas9D10およびH840に対応する残基もまた好ましい。
【0376】
SpCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)をエンジニアリングしてヌクレアーゼをニッカーゼに変換し(SpCas9n)(例えば、Sapranauskaset al.,2011,NucleicAcis Research,39:9275;Gasiunaset al.,2012,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109:E2579を参照)、ニックの入ったゲノムDNAが高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)を起こすようにした。Surveyorアッセイにより、SpCas9nがEMX1プロトスペーサー標的にインデルを生成しないことが確認された。EMX1ターゲティングキメラcrRNA(tracrRNA成分も同様に有する)をSpCas9と同時発現させると標的部位にインデルが生じたが、SpCas9nとの同時発現では生じなかった(n=3)。さらに、327個のアンプリコンのシーケンシングでは、SpCas9nによって誘導されたインデルは検出されなかった。同じ遺伝子座を選択して、EMX1を標的とするキメラRNA、hSpCas9またはhSpCas9n、ならびに一対の制限部位(HindIIIおよびNheI)をプロトスペーサー近傍に導入するためのHRテンプレートをHEK293FT細胞に同時形質移入することにより、CRISPR媒介性HRを試験した。
【0377】
本明細書には好ましいオルソログが記載される。Cas酵素は、II型CRISPR系の複数のヌクレアーゼドメインを有する最大のヌクレアーゼと相同性を共有する一般的な酵素クラスを指し得るとおりCas9と同定され得る。最も好ましくは、Cas9酵素はspCas9またはsaCas9由来であり、またはそれから誘導される。誘導されるとは、本出願人らは、その誘導された酵素が野生型酵素と高度な配列相同性を有するという意味では主に野生型酵素をベースとするが、しかし本明細書に記載されるとおり何らかの形で突然変異している(改変されている)ものであることを意味する。
【0378】
用語CasおよびCRISPR酵素は、特に明らかでない限り、本明細書では概して同義的に使用されることが理解されるであろう。上述のとおり、本明細書で使用される残基の付番の多くは化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)のII型CRISPR遺伝子座由来のCas9酵素を参照する。しかしながら、この発明が、SpCas9、SaCa9、St1Cas9など、他の微生物種由来のさらに多くのCas9を含むことは理解されるであろう。
【0379】
コドン最適化
この場合にはヒトに最適化された(すなわちヒトでの発現に最適化されている)コドン最適化配列の例が本明細書に提供される(SaCas9ヒトコドン最適化配列を参照のこと)。これが好ましいが、他の例が可能であることが理解されるであろうとともに、宿主種に対するコドン最適化は公知である。
【0380】
一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、特に細胞、例えば真核細胞での発現にコドンが最適化される。真核細胞は特定の生物、例えば哺乳動物、例えば限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト哺乳動物または霊長類のものであるかまたはそれに由来し得る。一部の実施形態では、ヒトの生殖系列の遺伝的アイデンティティを改変する方法および/または動物の遺伝的アイデンティティを改変する方法であって、人または動物に対するいかなる実質的な医学的利益もなしにそれらに苦痛を生じさせる可能性がある方法、およびかかる方法から得られる動物もまた、除外され得る。
【0381】
一般に、コドン最適化は、天然配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約または約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、またはそれよりも多い数を超えるコドン)を、その宿主細胞の遺伝子中で使用されるより高頻度または最も高頻度のコドンにより置き換える一方、天然アミノ酸配列を維持することにより目的宿主細胞中の発現の向上のために核酸配列を改変するプロセスを指す。種々の種は、特定のアミノ酸のあるコドンについて特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の差)は、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関することが多く、このことは、次いで、とりわけ、翻訳されるコドンの特性および特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存的であると考えられる。細胞中で選択されるtRNAの優位性は、一般に、ペプチド合成において最も高頻度で使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づき所与の生物中の最適な遺伝子発現のために調整することができる。コドン使用頻度表は、例えば、www.kazusa.orjp/codon/(2002年7月9日にアクセス)で入手可能な「コドン使用頻度データベース」において容易に入手可能であり、これらの表は、多数の手法で適応させることができる。Nakamura,Y.,etal.“Codon usage tabulated from theinternational DNAsequence databases:statusfor the year 2000”Nucl.Acids Res.28:292(2000)参照。特定の宿主細胞中の発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピュータアルゴリズムも入手可能であり、例えば、GeneForge(Aptagen;Jacobus,PA)も入手可能である。一部の実施形態において、CRISPR酵素をコードする配列中の1つ以上のコドン(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、またはそれよりも多い、または全てのコドン)は、特定のアミノ酸について最も高頻度で使用されるコドンに対応する。
【0382】
核局在化配列(NLS)
一部の実施形態において、ベクターは、1つ以上の核局在化配列(NLS)、例えば、約また約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超えるNLSを含むCRISPR酵素をコードする。一部の実施形態において、CRISPR酵素は、アミノ末端またはその付近における約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超えるNLS、カルボキシ末端またはその付近における約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超えるNLS、またはそれらの組合せ(例えば、アミノ末端における1つ以上のNLSおよびカルボキシ末端における1つ以上のNLS)を含む。2つ以上のNLSが存在する場合、それぞれは、単一のNLSが2つ以上のコピーで存在し得るように他のものから独立して、および/または1つ以上のコピーで存在する1つ以上の他のNLSとの組合せで選択することができる。本発明の好ましい実施形態において、CRISPR酵素は、多くとも6つのNLSを含む。一部の実施形態において、NLSは、NLSの最近傍アミノ酸が、NまたはC末端からポリペプチド鎖に沿って約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、またはそれよりも多いアミノ酸内である場合、NまたはC末端付近に存在するとみなす。NLSの非限定的な例としては、アミノ酸配列PKKKRKVを有するSV40ウイルスラージT抗原のNLS;ヌクレオプラスミンからのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有するヌクレオプラスミン二分(bipartite)NLS);アミノ酸配列PAAKRVKLDまたはRQRRNELKRSPを有するc-mycNLS;配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1M9 NLS;インポーチンアルファからのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV;筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRPおよびPPKKARED;ヒトp53の配列POPKKKPL;マウスc-ablIVの配列SALIKKKKKMAP;インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRRおよびPKQKKRK;肝炎ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL;マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR;ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK;ならびにステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKKに由来するNLS配列が挙げられる。
【0383】
一般に、1つ以上のNLSは、真核細胞の核中の検出可能な量のCRISPR酵素の蓄積をドライブするために十分な強度である。一般に、核局在化活性の強度は、CRISPR酵素中のNLSの数、使用される特定のNLS、またはそれらの因子の組合せに由来し得る。核中の蓄積の検出は、任意の好適な技術により実施することができる。例えば、検出可能なマーカーをCRISPR酵素に融合させることができ、その結果、細胞内の局在を、例えば、核の局在を検出する手段(例えば、核に特異的な染色、例えば、DAPI)との組合せで可視化することができる。細胞核を細胞から単離することもでき、次いでその含有物を、タンパク質を検出する任意の好適なプロセス、例えば、免疫組織学的分析、ウエスタンブロット、または酵素活性アッセイにより分析することができる。核中の蓄積は、例えば、CRISPR複合体形成の効果についてのアッセイ(例えば、標的配列におけるDNA開裂もしくは突然変異についてのアッセイ、またはCRISPR複合体形成および/もしくはCRISPR酵素活性により影響される遺伝子発現活性の変化についてのアッセイ)により、CRISPR酵素にも複合体にも曝露されず、または1つ以上のNLSを欠くCRISPR酵素に曝露される対照と比較して間接的に測定することもできる。
【0384】
ガイド配列
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向するために標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態において、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインされた場合、約または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれよりも大きい数を超える。最適なアラインメントは、配列をアラインするための任意の好適なアルゴリズムを使用して決定することができ、その非限定的な例としては、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-WheelerTransformをベースとするアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies;www.novocraft.comにおいて入手可能)、ELAND(Illumina,SanDiego,CA)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netにおいて入手可能)が挙げられる。一部の実施形態において、ガイド配列は、約または約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、またはそれよりも大きい数を超えるヌクレオチド長である。一部の実施形態において、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12、またはそれよりも小さい数未満のヌクレオチド長である。標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指向するガイド配列の能力は、任意の好適なアッセイにより評価することができる。例えば、CRISPR複合体を形成するために十分なCRISPR系の成分、例として、試験すべきガイド配列は、対応する標的配列を有する宿主細胞に、例えば、CRISPR配列の成分をコードするベクターによる形質移入により提供することができ、次いで標的配列内の優先的開裂を例えば本明細書に記載のSurveyorアッセイにより評価する。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の開裂は、試験管中で標的配列、CRISPR複合体の成分、例として、試験すべきガイド配列および試験ガイド配列とは異なる対照ガイド配列を提供し、試験および対照ガイド配列反応間の標的配列における結合または開裂の比率を比較することにより評価することができる。他のアッセイが考えられ、当業者はそれを認識する。
【0385】
ガイド配列は、任意の標的配列をターゲティングするように選択することができる。一部の実施形態において、標的配列は、細胞のゲノム内の配列である。例示的な標的配列としては、標的ゲノム中でユニークなものが挙げられる。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9について、ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMNNNNNNNNNNNNXGGのCas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNNXGG(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれでもよい)は、ゲノム中の単一発生を有する。ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMMNNNNNNNNNNNXGGの化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNXGG(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれであってもよい)は、ゲノム中の単一発生を有する。S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR1Cas9について、ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMNNNNNNNNNNNNXXAGAAWのCas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNNXXAGAAW(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれであってもよく;Wは、AまたはTである)は、ゲノム中の単一発生を有する。ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMMNNNNNNNNNNNXXAGAAWのS.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR1Cas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNXXAGAAW(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれであってもよく;Wは、AまたはTである)は、ゲノム中の単一発生を有する。化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9について、ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMNNNNNNNNNNNNXGGXGのCas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNNXGGXG(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれであってもよい)は、ゲノム中の単一発生を有する。ゲノム中のユニーク標的配列としては、フォームMMMMMMMMMNNNNNNNNNNNXGGXGの化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9標的部位を挙げることができ、NNNNNNNNNNNXGGXG(Nは、A、G、T、またはCであり;Xは、いずれであってもよい)は、ゲノム中の単一発生を有する。これらの配列のそれぞれにおいて、「M」は、A、G、T、またはCであり得、配列をユニークと同定するにあたり考慮する必要はない。
【0386】
一部の実施形態において、ガイド配列は、ガイド配列内の二次構造の程度を低減させるように選択される。一部の実施形態では、最適に折り畳まれたとき、ガイド配列のヌクレオチドの約75%前後またはそれ未満、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%、またはそれ未満が、自己相補的塩基対合に関与する。最適な折り畳みは任意の好適なポリヌクレオチド折り畳みアルゴリズムによって決定され得る。一部のプログラムは、最小ギブズ自由エネルギーを計算することに基づく。一つのかかるアルゴリズムの例は、Zukerand Stiegler(NucleicAcids Res.9(1981),133-148)により記載されるとおりのmFoldである。別の例示的な折り畳みアルゴリズムは、重心構造予測アルゴリズムを使用した、ウィーン大学(Universityof Vienna)のInstitutefor TheoreticalChemistryで開発されたオンラインウェブサーバRNAfoldである(例えば、A.R.Gruberet al.,2008,Cell106(1):23-24;およびPA Carr and GMChurch,2009,Nature Biotechnology 27(12):1151-62を参照)。
【0387】
Tracrメイト配列
一般に、tracrメイト配列は、(1)対応するtracr配列を含有する細胞中でtracrメイト配列によりフランキングされているガイド配列の切り出し;および(2)標的配列におけるCRISPR複合体の形成(CRISPR複合体は、tracr配列にハイブリダイズされるtracrメイト配列を含む)の1つ以上を促進するためにtracr配列との十分な相補性を有する任意の配列を含む。一般に、相補性の程度は、2つの配列の短い方の長さに沿うtracrメイト配列およびtracr配列の最適なアラインメントに準拠する。最適なアラインメントは、任意の好適なアラインメントアルゴリズムにより決定することができ、二次構造、例えばtracr配列またはtracrメイト配列内の自己相補性をさらに説明し得る。一部の実施形態において、2つの短い方の長さに沿ったtracr配列とtracrメイト配列との間の相補性の程度は、最適にアラインされた場合、約または約25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれよりも大きい数を超える。一部の実施形態において、tracr配列は、約または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、またはそれよりも大きい数を超えるヌクレオチド長である。一部の実施形態において、tracr配列およびtractメイト配列は、単一転写物内に含有され、その結果、2つの間のハイブリダイゼーションが二次構造、例えば、ヘアピンを有する転写物を産生する。本発明の一実施形態において、転写物または転写されるポリヌクレオチド配列は、少なくとも2つ以上のヘアピンを有する。好ましい実施形態において、転写物は、2、3、4または5つのヘアピンを有する。本発明の別のさらなる実施形態において、転写物は、多くとも5つのヘアピンを有する。ヘアピン構造において、最後の「N」およびループの上流の5’側の配列の部分は、tracrメイト配列に対応し、ループの3’側の配列の部分は、tracr配列に対応する。ガイド配列、tracrメイト配列、およびtracr配列を含む単一ポリヌクレオチドのさらなる非限定的な例は、以下のとおりであり(5’から3’に列記)、「N」は、ガイド配列の塩基を表し、第1の小文字のブロックは、tracrメイト配列を表し、第2の小文字のブロックは、tracr配列を表し、最後のポリT配列は、転写ターミネーターを表す:
【化1】
一部の実施形態において、配列(1)から(3)は、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR1からのCas9との組合せで使用される。一部の実施形態において、配列(4)から(6)は、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からのCas9との組合せで使用される。一部の実施形態において、tracr配列は、tracrメイト配列を含む転写物と別個の転写物である。
【0388】
組換えテンプレート
一部の実施形態において、組換えテンプレートも提供される。組換えテンプレートは、本明細書に記載の別のベクターの成分であり、別個のベクター中で含有させ、または別個のポリヌクレオチドとして提供することができる。一部の実施形態において、組換えテンプレートは、例えば、CRISPR複合体の一部としてのCRISPR酵素によりニック形成または開裂される標的配列内またはその付近での相同組換えにおけるテンプレートとして機能するように設計される。テンプレートポリヌクレオチドは、任意の好適な長さ、例えば、約または約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000、またはそれよりも大きい数を超えるヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態において、テンプレートポリヌクレオチドは、標的配列を含むポリヌクレオチドの一部に相補的である。最適にアラインされた場合、テンプレートポリヌクレオチドは、標的配列の1つ以上のヌクレオチド(例えば、約または約1、5、10、15、20またはそれよりも多い数を超えるヌクレオチド)と重複し得る。一部の実施形態において、テンプレート配列および標的配列を含むポリヌクレオチドが最適にアラインされた場合、テンプレートポリヌクレオチドの最近傍ヌクレオチドは、標的配列から約1、5、10、15、20、25、50、75、100、200、300、400、500、1000、5000、10000、またはそれよりも多いヌクレオチド内に存在する。
【0389】
融合タンパク質
一部の実施形態において、CRISPR酵素は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えば、CRISPR酵素の他の約または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも多い数を超えるドメイン)を含む融合タンパク質の一部である。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意の追加のタンパク質配列、および場合により任意の2つのドメイン間のリンカー配列を含み得る。CRISPR酵素に融合させることができるタンパク質ドメインの例としては、限定されるものではないが、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、ならびに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA開裂活性および核酸結合活性の1つ以上を有するタンパク質ドメインが挙げられる。エピトープタグの非限定的な例としては、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグが挙げられる。レポーター遺伝子の例としては、限定されるものではないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および自己蛍光タンパク質、例として、青色蛍光タンパク質(BFP)が挙げられる。CRISPR酵素は、DNA分子に結合し、または他の細胞分子に結合するタンパク質またはタンパク質の断片、例として、限定されるものではないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、LexA DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物をコードする遺伝子配列に融合させることができる。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得る追加のドメインは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20110059502号明細書に記載されている。一部の実施形態において、タグ化CRISPR酵素を使用して標的配列の局在を同定する。
【0390】
誘導性システム
一部の実施形態では、CRISPR酵素は誘導性システムの成分をなし得る。このシステムの誘導可能である性質により、エネルギーの形態を用いた遺伝子編集または遺伝子発現の時空間的制御が可能となり得る。エネルギーの形態としては、限定はされないが、電磁放射線、音響エネルギー、化学エネルギーおよび熱エネルギーを挙げることができる。誘導性システムの例には、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Tet-OnまたはTet-Off)、小分子2ハイブリッド転写活性化システム(FKBP、ABA等)、または光誘導性システム(フィトクロム、LOVドメイン、またはクリプトクロム)が含まれる。一実施形態において、CRISPR酵素は、配列特異的に転写活性の変化を誘導する光誘導性転写エフェクター(LITE)の一部であり得る。光の成分には、CRISPR酵素、光応答性シトクロムヘテロ二量体(例えばシロイヌナズナ(Arabidopsisthaliana)由来)、および転写活性化/抑制ドメインが含まれ得る。誘導性DNA結合タンパク質およびその使用方法のさらなる例は、米国仮特許出願第61/736465号明細書および米国特許出願第61/721,283号明細書(本明細書によって全体として参照により組み込まれる)に提供される。
【0391】
送達
一部の態様において、本発明は、1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、または本明細書に記載の1つ以上のベクター、1つ以上のその転写物、および/またはそれから転写された1つまたはタンパク質を宿主細胞に送達することを含む方法を提供する。一部の態様において、本発明は、そのような細胞により産生された細胞、およびそのような細胞を含み、またはそれから産生された動物をさらに提供する。一部の実施形態において、ガイド配列との組合せの(および場合によりそれと複合体形成している)CRISPR酵素を細胞に送達する。慣用のウイルスおよび非ウイルスベース遺伝子移入法を使用して核酸を哺乳動物細胞または標的組織中に導入することができる。このような方法を使用してCRISPR系の成分をコードする核酸を培養物中の細胞に、または宿主生物中に投与することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載のベクターの転写物)、ネイキッド核酸、および送達ビヒクル、例えば、リポソームと複合体形成している核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、細胞への送達後にエピソーム性またはインテグレートされるゲノムを有するDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子療法手順の概要については、Anderson,Science256:808-813(1992);Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211-217(1993);Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162-166(1993);Dillon,TIBTECH11:167-175(1993);Miller,Nature 357:455-460(1992);Van Brunt,Biotechnology6(10):1149-1154(1988);Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience8:35-36(1995);Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31-44(1995);Haddadaet al.,in Current Topics inMicrobiology andImmunology,Doerfler and Boehm(eds)(1995);およびYu et al.,Gene Therapy1:13-26(1994)参照。
【0392】
核酸の非ウイルス送達の方法としては、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤により向上されるDNAの取り込みが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号明細書、同第4,946,787号明細書;および同第4,897,355号明細書)に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオンおよび中性脂質としては、Felgner、国際公開第91/17424号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレットのものが挙げられる。送達は、細胞(例えば、インビトロまたはエクスビボ投与)または標的組織(例えば、インビボ投与)に対するものであり得る。
【0393】
脂質:核酸複合体、例として、ターゲティングされるリポソーム、例えば、免疫脂質複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science270:404-410(1995);Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291-297(1995);Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382-389(1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647-654(1994);Gaoet al.,Gene Therapy 2:710-722(1995);Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817-4820(1992);米国特許第4,186,183号明細書、同第4,217,344号明細書、同第4,235,871号明細書、同第4,261,975号明細書、同第4,485,054号明細書、同第4,501,728号明細書、同第4,774,085号明細書、同第4,837,028号明細書、および同第4,946,787号明細書参照)。
【0394】
核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベース系の使用は、ウイルスを体内の規定の細胞にターゲティングし、ウイルスペイロードを核に輸送する高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与することができ(インビボ)、またはそれらを使用してインビトロで細胞を治療することができ、場合により、改変された細胞を患者に投与することができる(エクスビボ)。慣用のウイルスベース系としては、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴および単純ヘルペスウイルスベクターを挙げることができる。宿主ゲノム中のインテグレーションは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス遺伝子移入法について考えられ、挿入されたトランス遺伝子の長期発現をもたらすことが多い。さらに、高い形質導入効率が多くの異なる細胞タイプおよび標的組織において観察されている。
【0395】
レトロウイルスの向性は、外来エンベロープタンパク質を取り込むことにより変え、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染し、典型的には、高ウイルス力価を産生し得るレトロウイルスベクターである。したがって、レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、6~10kbまでの外来配列のためのパッケージング能を有するシス作用長鎖末端リピートを含む。最小シス作用LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いでそれを使用して治療遺伝子を標的細胞中にインテグレートして恒久的なトランス遺伝子発現を提供する。広く使用されるレトロウイルスベクターとしては、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)をベースとするもの、またはそれらの組合せが挙げられる(例えば、Buchscheret al.,J.Virol.66:2731-2739(1992);Johannet al.,J.Virol.66:1635-1640(1992);Sommnerfeltet al.,Virol.176:58-59(1990);Wilsonet al.,J.Virol.63:2374-2378(1989);Milleret al.,J.Virol.65:2220-2224(1991);PCT/US94/05700号明細書参照)。
【0396】
別の実施形態において、コカル(Cocal)ベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子が企図される(例えば、フレッド・ハッチンソン癌研究センター(FredHutchinson Cancer Research Center)に譲渡された米国特許出願公開第20120164118号明細書を参照のこと)。コカルウイルスはベシクロウイルス属(Vesiculovirus)であり、哺乳動物における水疱性口内炎の原因病原体である。コカルウイルスは、当初はトリニダードでダニから分離されたもので(Jonkerset al.,Am.J.Vet.Res.25:236-242(1964))、トリニダード、ブラジル、およびアルゼンチンで昆虫、ウシ、およびウマから感染が同定されている。哺乳動物に感染するベシクロウイルスの多くは、自然感染した節足動物から分離されており、ベシクロウイルスがベクター媒介性であることが示唆される。ベシクロウイルスに対する抗体は農村地域に住む人々によく見られ、このウイルスは地方病性であり、実験室内感染性である;ヒトにおける感染は、通常はインフルエンザ様症状をもたらす。コカルウイルスエンベロープ糖タンパク質はアミノ酸レベルでVSV-Gインディアナと71.5%の同一性を共有し、ベシクロウイルスのエンベロープ遺伝子の系統発生学的比較では、ベシクロウイルスの中でコカルウイルスがVSV-Gインディアナ株と血清学的には異なるが、最も近縁であることが示される。Jonkerset al.,Am.J.Vet.Res.25:236-242(1964)およびTravassosda Rosa et al.,Am.J.Tropical Med.& Hygiene 33:999-1006(1984)。コカルベシクロウイルスエンベロープ偽型レトロウイルスベクター粒子には、例えば、レトロウイルスのGag、Pol、および/または1つ以上のアクセサリータンパク質およびコカルベシクロウイルスエンベロープタンパク質を含み得るレンチウイルス、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、およびイプシロンレトロウイルスベクター粒子が含まれ得る。これらの実施形態の特定の態様の範囲内において、Gag、Pol、およびアクセサリータンパク質はレンチウイルスおよび/またはガンマレトロウイルスのものである。
【0397】
一過的発現が好ましい用途においては、アデノウイルスベース系を使用することができる。アデノウイルスベースベクターは、多くの細胞タイプにおいて極めて高い形質導入効率を示し得、細胞分裂を要求しない。このようなベクターについて、高い力価および発現のレベルが得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。
【0398】
例えば、核酸およびペプチドのインビトロ産生において、ならびにインビボおよびエクスビボ遺伝子療法手順のためにアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して細胞に標的核酸を形質導入することもできる(例えば、Westet al.,Virology160:38-47(1987);米国特許第4,797,368号明細書;国際公開第93/24641号パンフレット;Kotin,HumanGene Therapy 5:793-801(1994);Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)参照。組換えAAVベクターの構築は、多数の刊行物、例として、米国特許第5,173,414号明細書;Tratschinet al.,Mol.Cell.Biol.5:3251-3260(1985);Tratschin,etal.,Mol.Cell.Biol.4:2072-2081(1984);Hermonat& Muzyczka,PNAS81:6466-6470(1984);およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822-3828(1989)に記載されている。
【0399】
典型的には、パッケージング細胞を使用して宿主細胞に感染し得るウイルス粒子を形成する。このような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。遺伝子療法において使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする細胞系を産生することにより生成する。ベクターは、典型的には、パッケージングおよび後続の宿主中へのインテグレーションに要求される最小ウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現させるべきポリヌクレオチドのための発現カセットにより置き換えられている。欠損ウイルス機能は、典型的には、パッケージング細胞系によりトランスで供給する。例えば、遺伝子療法において使用されるAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム中へのパッケージングおよびインテグレーションに要求されるAAVゲノムからのITR配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠くヘルパープラスミドを含有する細胞系中にパッケージングされる。細胞系は、ヘルパーとしてのアデノウイルスにより感染させることもできる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して顕著な量でパッケージングされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性である熱処理により低減させることができる。
【0400】
従って、AAVは形質導入ベクターとして使用するのに理想的な候補と考えられる。かかるAAV形質導入ベクターは、トランスに提供されるアデノウイルスまたはヘルペスウイルスまたはポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)ヘルパー機能の存在下で複製するのに十分なシス作用性機能を含み得る。組換えAAV(rAAV)を使用して種々の系統の細胞に外来性遺伝子を運び込むことができる。これらのベクターでは、AAVcapおよび/またはrep遺伝子をウイルスゲノムから欠失させ、選択のDNAセグメントに置き換える。現在のAAVベクターは、最大4300塩基の挿入DNAを収容し得る。
【0401】
rAAVの作製方法は数多くあり、本発明はrAAVおよびrAAVの調製方法を提供する。例えば、所望のウイルス構築物を含むまたはそれから本質的になる1つまたは複数のプラスミドが、AAV感染細胞に形質移入される。加えて、第2のまたは追加のヘルパープラスミドがこれらの細胞に同時形質移入され、組換えウイルス構築物の複製およびパッケージングに必須のAAVrepおよび/またはcap遺伝子が提供される。これらの条件下で、AAVのrepおよび/またはcapタンパク質はトランスに作用してrAAV構築物の複製およびパッケージングを刺激する。形質移入後2~3日でrAAVは回収される。従来、rAAVはアデノウイルスと共に細胞から回収される。次に汚染アデノウイルスが熱処理によって不活性化される。本発明では、rAAVは有利には、細胞それ自体からではなく、細胞上清から回収される。従って、最初の態様では本発明はrAAVを調製することを提供し、および前述に加えて、以下を含むまたはそれから本質的になる方法によりrAAVを調製することができる:発現用DNAを含む外来性DNAと、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス)とを含有するrAAVを感受性細胞に感染させるステップであって、rAAVが機能性capおよび/またはrepを欠損している(およびヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス)はrAAVに欠損しているcapおよび/またはrev機能を提供する)ステップ;または発現用DNAを含む外来性DNAを含有するrAAVを感受性細胞に感染させるステップであって、組換え体が機能性capおよび/またはrepを欠損しているステップと、rAAVに欠損しているcapおよび/またはrep機能を提供するプラスミドを前記細胞に形質移入すること;または発現用DNAを含む外来性DNAを含有するrAAVを感受性細胞に感染させるステップであって、組換え体が機能性capおよび/またはrepを欠損しており、前記細胞が、組換え体に欠損しているcapおよび/またはrep機能を提供すること;または機能性capおよび/またはrepを欠損しているAAVと、外来性DNAが組換え体によって発現されるように外来性DNAを組換え体に挿入するための、かつrepおよび/またはcap機能を提供するためのプラスミドとを感受性細胞に形質移入することであって、従って形質移入により、機能性capおよび/またはrepが欠損した、発現用DNAを含む外来性DNAを含有するrAAVがもたらされること。
【0402】
rAAVは、本明細書に記載されるとおりAAV由来であってもよく、有利には、AAV1、AAV2、AAV5またはそれらの任意の組み合わせを含み得るハイブリッドまたはカプシドを有するrAAV1、rAAV2、AAV5またはrAAVであり得る。rAAVのAAVは、rAAVが標的とする細胞に関連して選択することができる;例えば、脳または神経細胞のターゲティングには、AAV血清型1、2、5またはハイブリッドもしくはカプシドAAV1、AAV2、AAV5またはそれらの任意の組み合わせを選択することができ;および心臓組織のターゲティングには、AAV4を選択することができる。
【0403】
293細胞に加えて、本発明の実施に用いることのできる他の細胞およびそれらの細胞に関するインビトロでの特定のAAV血清型の相対的感染力(Grimm,D.etal,J.Virol.82:5887-5911(2008)を参照)は以下のとおりである。
【0404】
【表13】
【0405】
本発明は、CRISPR(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)系をコードする外来性核酸分子、例えば、プロモーターと、CRISPR関連(Cas)タンパク質(推定ヌクレアーゼまたはヘリカーゼタンパク質)、例えばCas9をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含むまたはそれから本質的になる第1のカセット、およびプロモーターと、ガイドRNA(gRNA)をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含むまたはそれから本質的になる2つ、またはそれ以上の、有利にはベクターのパッケージングサイズ限界に至るまでの、例えば合計で(第1のカセットを含めて)5つのカセット(例えば、各カセットは概略的に、プロモーター-gRNA1-ターミネーター、プロモーター-gRNA2-ターミネーター...プロモーター-gRNA(N)-ターミネーター(式中、Nは、ベクターのパッケージングサイズ限界の上限である挿入可能な数である)と表される)を含むまたはそれからなる複数のカセットを含むまたはそれから本質的になるrAAV、または2つ以上の個々のrAAVであって、各々がCRISPR系の1つまたは2つ以上のカセットを含み、例えば、第1のrAAVが、プロモーターと、Cas、例えばCas9をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含むまたはそれから本質的になる第1のカセットを含み、および第2のrAAVが、プロモーターと、ガイドRNA(gRNA)をコードする核酸分子と、ターミネーターとを含むまたはそれから本質的になる複数の4つのカセット(例えば、各カセットは概略的に、プロモーター-gRNA1-ターミネーター、プロモーター-gRNA2-ターミネーター...プロモーター-gRNA(N)-ターミネーター(式中、Nは、ベクターのパッケージングサイズ限界の上限である挿入可能な数である)と表される)を含むrAAVを提供する。rAAVはDNAウイルスであるため、AAVまたはrAAVに関する本明細書の考察における核酸分子は、有利にはDNAである。プロモーターは、一部の実施形態では有利にはヒトシナプシンIプロモーター(hSyn)である。
【0406】
核酸を細胞に送達する追加の方法は、当業者に公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20030087817号明細書参照。
【0407】
一部の実施形態において、宿主細胞を、本明細書に記載の1つ以上のベクターにより一過的にまたは非一過的に形質移入する。一部の実施形態において、細胞を、それが対象中で天然に生じるままで形質移入する。一部の実施形態において、形質移入される細胞を対象から採取する。一部の実施形態において、細胞は、対象から採取された細胞、例えば、細胞系に由来する。組織培養のための広範な細胞系は、当技術分野において公知である。細胞系の例としては、限定されるものではないが、C8161、CCRF-CEM、MOLT、mIMCD-3、NHDF、HeLa-S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panc1、PC-3、TF1、CTLL-2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH-77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK-UT、CaCo2、P388D1、SEM-K2、WEHI-231、HB56、TIB55、Jurkat、J45.01、LRMB、Bcl-1、BC-3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK-52E、MRC5、MEF、HepG2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS-1、COS-6、COS-M6A、BS-C-1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3Swiss、3T3-L1、132-d5ヒト胎児線維芽細胞;10.1マウス線維芽細胞、293-T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A-549、ALC、B16、B35、BCP-1細胞、BEAS-2B、bEnd.3、BHK-21、BR293、BxPC3、C3H-10T1/2、C6/36、Cal-27、CHO、CHO-7、CHO-IR、CHO-K1、CHO-K2、CHO-T、CHODhfr-/-、COR-L23、COR-L23/CPR、COR-L23/5010、COR-L23/R23、COS-7、COV-434、CMLT1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK-293、HeLa、Hepa1c1c7、HL-60、HMEC、HT-29、Jurkat、JY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma-Mel1-48、MC-38、MCF-7、MCF-10A、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、MDCKII、MDCK II、MOR/0.2R、MONO-MAC6、MTD-1A、MyEnd、NCI-H69/CPR、NCI-H69/LX10、NCI-H69/LX20、NCI-H69/LX4、NIH-3T3、NALM-1、NW-145、OPCN/OPCT細胞系、Peer、PNT-1A/PNT2、RenCa、RIN-5F、RMA/RMAS、Saos-2細胞、Sf-9、SkBr3、T2、T-47D、T84、THP1細胞系、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞、WM39、WT-49、X63、YAC-1、YAR、およびそれらのトランスジェニック変種が挙げられる。細胞系は、当業者に公知の種々の資源から入手可能である(例えば、AmericanType Culture Collection(ATCC)(Manassus,Va.)参照)。一部の実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のベクターにより形質移入された細胞を使用して1つ以上のベクター由来配列を含む新たな細胞系を樹立する。一部の実施形態において、本明細書に記載のCRISPR系の成分により一過的に形質移入され(例えば、1つ以上のベクターの一過的形質移入、またはRNAによる形質移入により)、CRISPR複合体の活性を通して改変された細胞を使用して改変を含有するがあらゆる他の外因性配列を欠く細胞を含む新たな細胞系を樹立する。一部の実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のベクターにより一過的にまたは非一過的に形質移入された細胞、またはそのような細胞に由来する細胞系を、1つ以上の試験化合物の評価において使用する。
【0408】
一部の実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のベクターを使用して非ヒトトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物を産生する。一部の実施形態において、トランスジェニック動物は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、またはウサギである。トランスジェニック動物および植物を産生する方法は、当技術分野において公知であり、一般に、例えば、本明細書に記載の細胞形質移入の方法から出発する。
【0409】
別の実施形態において、針のアレイを備える流体送達装置(例えば、フレッド・ハッチンソン癌研究センター(FredHutchinson Cancer Research Center)に譲渡された米国特許出願公開第20110230839号明細書を参照のこと)が、固形組織に対するCRISPRCasの送達に企図され得る。流体を固形組織に送達するための米国特許出願公開第20110230839号明細書の装置は、アレイ状に配置された複数の針と;各々が複数の針のそれぞれ1つと流体連通している複数のリザーバと;複数のリザーバのそれぞれ1つに動作可能に結合されかつリザーバ内の流体圧力を制御するように構成された複数のアクチュエータとを含み得る。特定の実施形態では、複数のアクチュエータの各々が複数のプランジャの1つを含むことができ、複数のプランジャの各々の第1の端部が複数のリザーバのそれぞれ1つに受け入れられ、および特定の実施形態では複数のプランジャのプランジャがそれぞれの第2の端部で一体に動作可能に結合され、同時に押し下げることが可能である。特定のさらに別の実施形態は、複数のプランジャの全てを選択的に変更可能な速度で押し下げるように構成されたプランジャ駆動装置を含み得る。他の実施形態では、複数のアクチュエータの各々が、第1の端部と第2の端部とを有する複数の流体送出路の1つを含むことができ、複数の流体送出路の各々の第1の端部が複数のリザーバのそれぞれ1つに結合される。他の実施形態では、この装置は流体圧力源を含むことができ、および複数のアクチュエータの各々が流体圧力源と複数のリザーバのそれぞれ1つとの間の流体継手を含む。さらなる実施形態では、流体圧力源は、圧縮機、真空アキュムレータ、蠕動ポンプ、マスターシリンダー、マイクロ流体ポンプ、およびバルブのうちの少なくとも1つを含み得る。別の実施形態において、複数の針の各々は、その長さに沿って配置された複数のポートを含み得る。
【0410】
標的の改変
一態様において、本発明は、真核細胞における標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供し、これはインビボ、エキソビボまたはインビトロであってよい。一部の実施形態では、本方法は、ヒトまたは非ヒト動物、または植物から細胞または細胞集団を採取すること、および1つまたは複数の細胞を改変することを含む。培養は任意の段階でエキソビボで行われ得る。1つまたは複数の細胞は、さらには非ヒト動物または植物に再導入されてもよい。再導入される細胞に関して、細胞が幹細胞であることが特に好ましい。
【0411】
一部の実施形態では、本方法は、CRISPR複合体を標的ポリヌクレオチドに結合させて前記標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせ、それにより標的ポリヌクレオチドを改変することを含み、ここでCRISPR複合体は、前記標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体形成するCRISPR酵素を含み、前記ガイド配列はtracrメイト配列に結合し、次にはtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズする。
【0412】
一態様において、本発明は、真核細胞におけるポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、CRISPR複合体をポリヌクレオチドに結合させるステップであって、前記結合により前記ポリヌクレオチドの発現の増加または減少がもたらされることを含み;ここでCRISPR複合体は、前記ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体形成するCRISPR酵素を含み、前記ガイド配列はtracrメイト配列に結合し、次にはtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズする。同様の考慮事項および条件が、上記のとおり標的ポリヌクレオチドを改変する方法に適用される。実際上、これらの採取、培養および再導入のオプションは本発明の全態様に適用される。
【0413】
実際、本発明の任意の態様において、CRISPR複合体は、標的配列にハイブリダイズするガイド配列と複合体形成するCRISPR酵素を含むことができ、ここで前記ガイド配列はtracrメイト配列に結合することができ、次にはtracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズすることができる。同様の考慮事項および条件が、上記のとおり標的ポリヌクレオチドを改変する方法に適用される。
【0414】
キット
一態様において、本発明は、上記の方法および組成物に開示されるエレメントの任意の1つ以上を含むキットを提供する。エレメントは個々にまたは組み合わせで提供されてもよく、および任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、またはチューブに提供されてもよい。一部の実施形態では、キットは1つ以上の言語、例えば2つ以上の言語による説明書を含む。
【0415】
一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載のエレメントの1つ以上を利用するプロセスにおいて使用される1つ以上の試薬を含む。試薬は、任意の好適な容器中で提供することができる。例えば、キットは、1つ以上の反応または貯蔵緩衝液を提供し得る。試薬は、特定のアッセイにおいて使用可能な形態で、または使用前に1つ以上の他の成分の添加を要求する形態(例えば、濃縮物または凍結乾燥形態)で提供することができる。緩衝液は、任意の緩衝液、例として、限定されるものではないが、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、Tris緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、およびそれらの組合せであり得る。一部の実施形態において、緩衝液はアルカリ性である。一部の実施形態において、緩衝液は、約7から約10のpHを有する。一部の実施形態において、キットは、ガイド配列および調節エレメントを作動可能に結合させるためのベクター中への挿入のためのガイド配列に対応する1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、キットは、相同組換えテンプレートポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるベクターの1つ以上および/またはポリヌクレオチドの1つ以上を含む。キットは、有利には本発明のシステムの全てのエレメントを提供することが可能である。
【0416】
CRISPR複合体
一態様において、本発明は、CRISPR系の1つ以上のエレメントを使用する方法を提供する。本発明のCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチドを改変する有効な手段を提供する。本発明のCRISPR複合体は、広範な有用性、例として、非常に多数の細胞タイプ中の標的ポリヌクレオチドの改変(例えば、欠失、挿入、転座、不活性化、活性化)を有する。したがって、本発明のCRISPR複合体は、例えば、遺伝子療法、薬物スクリーニング、疾患診断、および予後における幅広い用途範囲を有する。例示的CRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズされるガイド配列と複合体形成しているCRISPR酵素を含む。ガイド配列は、次いでtract配列にハイブリダイズするtracrメイト配列に結合している。
【0417】
一実施形態において、本発明は、標的ポリヌクレオチドを開裂する方法を提供する。本方法は、標的ポリヌクレオチドに結合して前記標的ポリヌクレオチドの開裂を生じさせるCRISPR複合体を使用して標的ポリヌクレオチドを改変することを含む。典型的には、本発明のCRISPR複合体は、細胞に導入されると、ゲノム配列に切断(例えば、一本鎖または二本鎖切断)を作り出す。例えば、本方法を用いて細胞中の疾患遺伝子を開裂させることができる。
【0418】
CRISPR複合体によって作り出された切断は、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)経路または高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)(図29)などの修復プロセスによって修復され得る。これらの修復プロセスの間、ゲノム配列に外来性ポリヌクレオチドテンプレートを導入することができる。一部の方法では、HDRプロセスを用いてゲノム配列が改変される。例えば、上流配列および下流配列が隣接するインテグレートしようとする配列を含む外来性ポリヌクレオチドテンプレートが細胞に導入される。上流および下流配列は、染色体におけるインテグレーション部位の両側と配列類似性を共有する。
【0419】
望ましい場合、ドナーポリヌクレオチドは、DNA、例えばDNAプラスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ウイルスベクター、線状DNA片、PCR断片、ネイキッド核酸、またはリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化した核酸であってもよい。
【0420】
外来性ポリヌクレオチドテンプレートは、インテグレートされる配列(例えば変異遺伝子)を含む。インテグレートする配列は、細胞にとって内因性または外来性の配列であってもよい。インテグレートされる配列の例としては、タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは非コードRNA(例えばマイクロRNA)が挙げられる。従って、インテグレートする配列は、1つまたは複数の適切な制御配列に作動可能に結合され得る。あるいは、インテグレートされる配列が調節機能を提供し得る。
【0421】
外来性ポリヌクレオチドテンプレート中の上流および下流配列は、目的の染色体配列とドナーポリヌクレオチドとの間の組換えを促進するように選択される。上流配列は、標的インテグレーション部位の上流のゲノム配列と配列類似性を共有する核酸配列である。同様に、下流配列は、標的インテグレーション部位の下流の染色体配列と配列類似性を共有する核酸配列である。外来性ポリヌクレオチドテンプレート中の上流および下流配列は、標的ゲノム配列と75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有し得る。好ましくは、外来性ポリヌクレオチドテンプレート中の上流および下流配列は、標的ゲノム配列と約95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。一部の方法では、外来性ポリヌクレオチドテンプレート中の上流および下流配列は、標的ゲノム配列と約99%または100%の配列同一性を有する。
【0422】
上流または下流配列は、約20bp~約2500bp、例えば、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、または2500bpを含み得る。一部の方法では、例示的上流または下流配列は、約200bp~約2000bp、約600bp~約1000bp、またはより詳細には約700bp~約1000bpを有する。
【0423】
一部の方法では、外来性ポリヌクレオチドテンプレートはマーカーをさらに含み得る。かかるマーカーは標的インテグレーションのスクリーニングを容易にし得る。好適なマーカーの例としては、制限部位、蛍光タンパク質、または選択可能なマーカーが挙げられる。本発明の外来性ポリヌクレオチドテンプレートは組換え技術を用いて構築することができる(例えば、Sambrooket al.,2001およびAusubelet al.,1996を参照)。
【0424】
外来性ポリヌクレオチドテンプレートをインテグレートすることにより標的ポリヌクレオチドを改変する例示的方法においては、CRISPR複合体によってゲノム配列に二本鎖切断が導入され、その切断が、外来性ポリヌクレオチドテンプレートによる相同組換えでテンプレートがゲノムにインテグレートされることにより修復される。二本鎖切断の存在がテンプレートのインテグレーションを促進する。
【0425】
他の実施形態では、この発明は、真核細胞におけるポリヌクレオチドの発現を改変する方法を提供する。本方法は、そのポリヌクレオチドに結合するCRISPR複合体を使用して標的ポリヌクレオチドの発現を増加または低下させることを含む。
【0426】
一部の方法では、細胞における発現の改変を達成するため標的ポリヌクレオチドを不活性化させることができる。例えば、細胞中の標的配列にCRISPR複合体が結合すると、配列が転写されないか、コードされたタンパク質が産生されないか、または野生型配列が機能するとおりには配列が機能しないように、標的ポリヌクレオチドが不活性化される。例えば、タンパク質が産生されないようにタンパク質またはマイクロRNAコード配列が不活性化されてもよい。
【0427】
一部の方法では、それ以上制御配列として機能しないように制御配列を不活性化することができる。本明細書で使用されるとき、「制御配列」は、核酸配列の転写、翻訳、または接触可能性を実現する任意の核酸配列を指す。制御配列の例としては、プロモーター、転写ターミネーターが挙げられ、およびエンハンサーが制御配列である。
【0428】
不活性化された標的配列は、欠失突然変異(すなわち、1つ以上のヌクレオチドの欠失)、挿入突然変異(すなわち、1つ以上のヌクレオチドの挿入)、またはナンセンス突然変異(すなわち、終止コドンが導入されるような単一のヌクレオチドによる別のヌクレオチドとの置換)を含み得る。一部の方法では、標的配列の不活性化は標的配列の「ノックアウト」をもたらす。
【0429】
疾患モデル
本発明の方法を用いて、疾患モデルとして使用し得る植物、動物または細胞を作り出すことができる。本明細書で使用されるとき、「疾患」は、対象における疾患、障害、または徴候を指す。例えば、本発明の方法を用いて、疾患に関連する1つ以上の核酸配列に改変を含む動物もしくは細胞、または疾患に関連する1つ以上の核酸配列の発現が変化している植物、動物もしくは細胞を作り出すことができる。かかる核酸配列は疾患関連タンパク質配列をコードしてもよく、または疾患関連制御配列であってもよい。従って、本発明の実施形態において植物、対象、患者、生物または細胞は、非ヒトの対象、患者、生物または細胞であり得ることが理解される。従って、本発明は、本方法により作製された植物、動物もしくは細胞、またはその子孫を提供する。子孫は、作製された植物または動物のクローンであってもよく、またはさらに望ましい形質をその子孫に遺伝子移入させるため同じ種の他の個体と交配させることによる有性生殖から生じてもよい。細胞は、多細胞生物、特に動物または植物の場合にインビボまたはエキソビボであってよい。細胞が培養下にある例では、適切な培養条件が満たされる場合、かつ好ましくは細胞がこの目的に好適に適合する場合(例えば幹細胞)、細胞系が樹立され得る。本発明によって作製される細菌細胞系もまた想定される。ひいては細胞系もまた想定される。
【0430】
一部の方法では、疾患モデルを使用することにより、疾患の研究で一般的に用いられる手段を用いて突然変異が動物または細胞および疾患の発症および/または進行に及ぼす効果を研究することができる。あるいは、かかる疾患モデルは、薬学的に活性な化合物が疾患に及ぼす効果の研究に有用である。
【0431】
一部の方法では、疾患モデルを使用して、見込みのある遺伝子治療戦略の有効性を評価することができる。すなわち、疾患の発症および/または進行が阻害または軽減されるように疾患関連遺伝子またはポリヌクレオチドを改変することができる。詳細には、本方法は、変化したタンパク質が産生され、結果として動物または細胞が変化した反応を有するように疾患関連遺伝子またはポリヌクレオチドを改変することを含む。従って、一部の方法では、遺伝子治療イベントの効果を評価し得るように、遺伝子改変を受けた動物が、疾患を発症する素因のある動物と比較され得る。
【0432】
別の実施形態において、本発明は、疾患遺伝子に関連する細胞シグナル伝達イベントを調節する生物学的に活性な薬剤を開発する方法を提供する。本方法は、CRISPR酵素、tracrメイト配列に結合したガイド配列、およびtracr配列の1つ以上の発現をドライブする1つ以上のベクターを含む細胞に試験化合物を接触させるステップ;および例えば細胞に含まれる疾患遺伝子の突然変異に関連する細胞シグナル伝達イベントの減少または増加を示す読み取り値の変化を検出することを含む。
【0433】
細胞機能の変化をスクリーニングするため本発明の方法と組み合わせて細胞モデルまたは動物モデルを構築することができる。かかるモデルを使用して、本発明のCRISPR複合体により改変されたゲノム配列が目的の細胞機能に及ぼす効果を研究し得る。例えば、細胞機能モデルを使用して、改変ゲノム配列が細胞内シグナル伝達または細胞外シグナル伝達に及ぼす効果を研究することができる。あるいは、細胞機能モデルを使用して、改変ゲノム配列が感覚認知に及ぼす効果を研究することができる。一部のかかるモデルにおいては、モデルにおける生化学的シグナル伝達経路に関連する1つ以上のゲノム配列が改変される。
【0434】
いくつかの疾患モデルが特に研究されている。それらには、デノボ自閉症リスク遺伝子CHD8、KATNAL2、およびSCN2A;ならびに症候性自閉症(アンジェルマン症候群)遺伝子UBE3Aが含まれる。これらの遺伝子および得られる自閉症モデルは当然ながら好ましいが、遺伝子および対応するモデル全体にわたる本発明の広範な適用性を明らかにすることに役立つ。
【0435】
生化学的シグナル伝達経路に関連する1つ以上のゲノム配列の発現の変化は、候補薬剤に接触させたときの試験モデル細胞と対照細胞との間における対応する遺伝子のmRNAレベルの差をアッセイすることにより決定され得る。あるいは、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現の差は、コードされたポリペプチドまたは遺伝子産物のレベルの差を検出することにより決定される。
【0436】
mRNA転写物または対応するポリヌクレオチドのレベルの薬剤により引き起こされた変化をアッセイするため、初めに試料中に含まれる核酸が当該技術分野の標準方法に従い抽出される。例えば、Sambrooket al.(1989)に示される手順に従い種々の溶菌酵素または化学溶液を使用してmRNAを単離することができ、または製造者により提供される付属の説明書に従い核酸結合樹脂で抽出することができる。抽出した核酸試料に含まれるmRNAは、次に当該技術分野において広く知られている方法に従うかまたは本明細書に例示する方法に基づき、増幅手順または従来のハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンブロット解析)により検出される。
【0437】
本発明の目的上、増幅は、妥当なフィデリティで標的配列を複製する能力を有するプライマーおよびポリメラーゼを用いる任意の方法を意味する。増幅は、天然または組換えDNAポリメラーゼ、例えば、TaqGold(商標)、T7DNAポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼのクレノウ断片、および逆転写酵素によって行われ得る。好ましい増幅方法はPCRである。詳細には、単離されたRNAが、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現レベルを定量化するため定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)と組み合わされた逆転写アッセイに供され得る。
【0438】
遺伝子発現レベルの検出は、増幅アッセイ中にリアルタイムで行うことができる。一態様では、増幅産物が、蛍光DNA結合剤、例えば限定はされないがDNAインターカレート剤およびDNA溝結合剤で直接可視化され得る。二本鎖DNA分子に組み込まれるインターカレート剤の量は、典型的には増幅されたDNA産物の量に比例するため、好都合には、当該技術分野における従来の光学的システムを使用してインターカレート色素の蛍光を定量化することにより、増幅産物の量を決定することができる。この適用に好適なDNA結合色素としては、SYBRグリーン、SYBRブルー、DAPI、プロピジウムヨウ素、Hoeste、SYBRゴールド、臭化エチジウム、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、蛍光クマリン(fluorcoumanin)、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、アントラマイシンなどが挙げられる。
【0439】
別の態様では、配列特異的プローブなどの他の蛍光標識を増幅反応に用いて増幅産物の検出および定量化を促進し得る。プローブベースの定量的増幅は、所望の増幅産物の配列特異的検出に頼る。この増幅は、特異性および感度の増加をもたらす蛍光性の標的特異的プローブ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ)を利用する。プローブベースの定量的増幅を実施する方法は当該技術分野で十分に確立されており、米国特許第5,210,015号明細書に教示される。
【0440】
さらに別の態様では、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列と配列相同性を共有するハイブリダイゼーションプローブを使用して従来のハイブリダイゼーションアッセイを実施し得る。典型的には、プローブは、被験対象から得られた生体試料内に含まれる生化学的シグナル伝達経路に関連する配列と安定した複合体をハイブリダイゼーション反応で形成することが可能である。アンチセンスがプローブ核酸として使用される場合、試料中に提供される標的ポリヌクレオチドがアンチセンス核酸の配列と相補的であるように選択されることは、当業者に理解されるであろう。逆に、ヌクレオチドプローブがセンス核酸である場合、標的ポリヌクレオチドはセンス核酸の配列と相補的であるように選択される。
【0441】
ハイブリダイゼーションは、種々のストリンジェンシーの条件下で実施することができる。本発明の実施に好適なハイブリダイゼーション条件は、プローブと生化学的シグナル伝達経路に関連する配列との間の認識相互作用が十分に特異的であるとともに十分に安定しているものである。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーが増加する条件は当該技術分野で広く知られており、発表されている。例えば、(Sambrook,etal.,(1989);Nonradioactive In Situ HybridizationApplication Manual,BoehringerMannheim,second edition)を参照のこと。ハイブリダイゼーションアッセイは、限定はされないが、ニトロセルロース、ガラス、ケイ素、および種々の遺伝子アレイを含めた任意の固体支持体上に固定化されたプローブを使用して形成され得る。好ましいハイブリダイゼーションアッセイは、米国特許第5,445,934号明細書に記載されるとおりの高密度遺伝子チップで実施される。
【0442】
ハイブリダイゼーションアッセイ中に形成されるプローブ-標的複合体を好都合に検出するため、ヌクレオチドプローブが検出可能標識にコンジュゲートされる。本発明における使用に好適な検出可能標識には、光化学的、生化学的、分光学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段で検出可能な任意の組成物が含まれる。幅広い種類の適切な検出可能標識が当該技術分野において公知であり、それには、蛍光または化学発光標識、放射性同位元素標識、酵素または他のリガンドが含まれる。好ましい実施形態では、ジゴキシゲニン、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼ、アビジン/ビオチン複合体など、蛍光標識または酵素タグを用いることが所望されるものと思われる。
【0443】
ハイブリダイゼーション強度の検出または定量化に用いられる検出方法は、典型的には上記で選択される標識に依存することになる。例えば、放射標識は、写真フィルムまたはホスフォイメージャー(phosphoimager)を使用して検出し得る。蛍光マーカーは、放出される光を検出するため光検出器を使用して検出および定量化し得る。酵素標識は、典型的には酵素に基質を提供し、基質に対する酵素の作用によって産生された反応産物を計測することにより検出される;および最後に、比色標識は、単純に、着色した標識を可視化することにより検出される。
【0444】
薬剤により引き起こされる、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列の発現の変化はまた、対応する遺伝子産物を調べることによっても決定し得る。タンパク質レベルの決定には、典型的には、a)生体試料中に含まれるタンパク質を、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質に特異的に結合する薬剤と接触させること;および(b)そのようにして形成された任意の薬剤:タンパク質複合体を同定することが関わる。この実施形態の一態様において、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質に特異的に結合する薬剤は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0445】
反応は、薬剤と生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質との間で複合体が形成されることを可能にする条件下で、被験試料から得られた生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の試料に薬剤を接触させることにより実施される。複合体の形成は、当該技術分野の標準的手順に従い直接的または間接的に検出することができる。直接的な検出方法では、薬剤に検出可能標識が提供され、複合体から未反応薬剤が除去され得る;従って残る標識の量が、形成された複合体の量を示す。かかる方法には、ストリンジェントな洗浄条件の中にあっても薬剤に結合したまま留まる標識を選択することが好ましい。標識は結合反応を妨げないことが好ましい。代替として、間接的な検出手順では、化学的に、あるいは酵素的に導入された標識を含む薬剤を使用し得る。望ましい標識は、概して得られる薬剤:ポリペプチド複合体の結合または安定性を妨げない。しかしながら、標識は典型的には、有効な結合、ひいては検出可能なシグナルの生成のため抗体に接触可能であるように設計される。
【0446】
タンパク質レベルの検出に好適な幅広い種類の標識が当該技術分野において公知である。非限定的な例としては、放射性同位元素、酵素、コロイド金属、蛍光化合物、生物発光化合物、および化学発光化合物が挙げられる。
【0447】
結合反応中に形成された薬剤:ポリペプチド複合体の量は、標準的な定量アッセイにより定量化することができる。上記に説明したとおり、薬剤:ポリペプチド複合体の形成は、結合部位に残る標識の量によって直接計測することができる。代替例では、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質が、特定の薬剤上の結合部位に関して標識類似体と競合するその能力に関して試験される。この競合アッセイでは、捕捉される標識の量は、被験試料中に存在する生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質配列の量に反比例する。
【0448】
上記に概説した一般的原理に基づく多くのタンパク質分析技術は、当該技術分野において利用可能である。これには、限定はされないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノラジオメトリックアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、インサイチューイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位元素標識を使用する)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光アッセイ、およびSDS-PAGEが含まれる。
【0449】
前述のタンパク質分析の実施には、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質を特異的に認識しまたは結合する抗体が好ましい。望ましい場合、特定のタイプの翻訳後改変(例えば、生化学的シグナル伝達経路誘導性改変)を認識する抗体を使用することができる。翻訳後改変としては、限定はされないが、グリコシル化、脂質化、アセチル化、およびリン酸化が挙げられる。これらの抗体は、商業的な供給業者から購入してもよい。例えば、チロシンリン酸化タンパク質を特異的に認識する抗ホスホチロシン抗体が、InvitrogenおよびPerkinElmerを含む多くの供給業者から入手可能である。抗ホスホチロシン抗体は、ERストレスに応答してそのチロシン残基で別様にリン酸化されるタンパク質の検出において特に有用である。かかるタンパク質としては、限定はされないが、真核生物翻訳開始因子2α(eIF-2α)が挙げられる。あるいは、これらの抗体は、従来のポリクローナルまたはモノクローナル抗体技術を用いて、所望の翻訳後改変を呈する標的タンパク質で宿主動物または抗体産生細胞を免疫することにより作成し得る。
【0450】
主題の方法を実施するにおいて、異なる体組織、異なる細胞型、および/または異なる細胞内構造における生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の発現パターンを識別することが望ましいこともある。こうした試験は、特定の組織、細胞型、または細胞内構造で優先的に発現するタンパク質マーカーと結合する能力を有する組織特異的、細胞特異的または細胞内構造特異抗体を使用して実施することができる。
【0451】
生化学的シグナル伝達経路に関連する遺伝子の発現の変化はまた、対照細胞と比べた遺伝子産物の活性の変化を調べることにより決定し得る。薬剤により引き起こされる、生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質の活性の変化に関するアッセイは、調べている生物学的活性および/またはシグナル伝達経路に依存し得る。例えば、タンパク質がキナーゼである場合、下流の1つまたは複数の基質をリン酸化するその能力の変化を当該技術分野において公知の種々のアッセイにより決定することができる。代表的なアッセイとしては、限定はされないが、リン酸化タンパク質を認識する抗ホスホチロシン抗体などの抗体による免疫ブロットおよび免疫沈降が挙げられる。加えて、キナーゼ活性は、AlphaScreen(商標)(PerkinElmerから入手可能)およびeTag(商標)アッセイ(Chan-Hui,et al.(2003)Clinical Immunology 111:162-174)などのハイスループット化学発光アッセイにより検出することができる。
【0452】
生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質が細胞内pH条件の変動をもたらすシグナル伝達カスケードの一部である場合、蛍光pH色素などのpH感受性分子をレポーター分子として使用することができる。生化学的シグナル伝達経路に関連するタンパク質がイオンチャネルである別の例では、膜電位および/または細胞内イオン濃度の変動をモニタすることができる。多くの市販キットおよびハイスループット装置が、イオンチャネルの調節因子に関する迅速かつロバストなスクリーニングに特に適している。代表的な機器としては、FLIPR(商標)(MolecularDevices,Inc.)およびVIPR(Aurora Biosciences)が挙げられる。これらの機器は、マイクロプレートの1000個を超えるサンプルウェルで同時に反応を検出し、かつ1秒またはさらには1ミリ秒以内にリアルタイムの計測値および機能データを提供する能力を有する。
【0453】
本明細書に開示される任意の方法の実施においては、限定なしに、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、ソノポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム媒介性形質移入、カチオン性形質移入、リポソーム形質移入、デンドリマー形質移入、熱ショック形質移入、ヌクレオフェクション形質移入、マグネトフェクション、リポフェクション、インペイルフェクション(impalefection)、光学的形質移入、有標の薬剤により増強される核酸取り込み、およびリポソーム、免疫リポソーム、ビロソーム、または人工ビリオンを介した送達を含めた当該技術分野で公知の1つ以上の方法によって細胞または胚に好適なベクターを導入することができる。一部の方法では、ベクターはマイクロインジェクションにより胚に導入される。1つまたは複数のベクターが胚の核または細胞質に微量注入され得る。一部の方法では、1つまたは複数のベクターはヌクレオフェクションにより細胞に導入され得る。
【0454】
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞に対して内因性または外因性である任意のポリヌクレオチドであり得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核中に残留するポリヌクレオチドであり得る。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列または非コード配列(例えば、調節ポリヌクレオチドまたはジャンクDNA)であり得る。
【0455】
標的ポリヌクレオチドの例としては、生化学的シグナル伝達経路に関連する配列、例えば、生化学的シグナル伝達経路関連遺伝子またはポリヌクレオチドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドの例としては、疾患関連遺伝子またはポリヌクレオチドが挙げられる。「疾患関連」遺伝子またはポリヌクレオチドとは、罹患組織に由来する細胞において非疾患対照の組織または細胞と比較して異常なレベルでまたは異常な形態で転写または翻訳産物を産生している任意の遺伝子またはポリヌクレオチドを指す。それは異常に高いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく;異常に低いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく、ここで発現の変化は疾患の発生および/または進行と相関する。疾患関連遺伝子はまた、疾患の原因に直接関与するかまたはそれに関与する1つまたは複数の遺伝子との連鎖不平衡がある1つまたは複数の突然変異または遺伝的変異を有する遺伝子も指す。転写または翻訳された産物は既知であってもまたは未知であってもよく、および正常レベルであってもまたは異常レベルであってもよい。
【0456】
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞にとって内因性または外来性の任意のポリヌクレオチドであり得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核に存在するポリヌクレオチドであり得る。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードする配列または非コード配列(例えば調節ポリヌクレオチドまたはジャンクDNA)であり得る。理論により拘束されるものではないが、標的配列がPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ);すなわち、CRISPR複合体により認識される短い配列と会合するはずであることが考えられる。PAMについての正確な配列および長さの条件は、使用されるCRISPR酵素に応じて異なるが、PAMは、典型的には、プロトスペーサー(すなわち、標的配列)に隣接する2~5塩基対配列である。PAM配列の例を以下の実施例セクションに挙げ、当業者は、所与のCRISPR酵素について使用されるさらなるPAM配列を同定することができる。
【0457】
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドとしては、それぞれBroad参照番号BI-2011/008/WSGR整理番号44063-701.101およびBI-2011/008/WSGR整理番号44063-701.102を有する米国仮特許出願第61/736,527号明細書および同第61/748,427号明細書(両方とも、標題SYSTEMSMETHODS AND COMPOSITIONS FOR SEQUENCEMANIPULATION、それぞれ2012年12月12日および2013年1月2日に出願、これらの全ての内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる)に列記の多数の疾患関連遺伝子およびポリヌクレオチドならびにシグナリング生化学経路関連遺伝子およびポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0458】
標的ポリヌクレオチドの例としては、シグナリング生化学経路に関連する配列、例えば、シグナリング生化学経路関連遺伝子またはポリヌクレオチドが挙げられる。標的ポリヌクレオチドの例としては、疾患関連遺伝子またはポリヌクレオチドが挙げられる。「疾患関連」遺伝子またはポリヌクレオチドは、非疾患対照の組織または細胞と比較して患部組織に由来する細胞中で異常なレベルにおいてまたは異常な形態で転写または翻訳産物を生じさせている任意の遺伝子またはポリヌクレオチドを指す。これは、異常に高いレベルにおいて発現されるようになる遺伝子であり得;これは、異常に低いレベルにおいて発現されるようになる遺伝子であり得、発現の変化は、疾患の発生および/または進行と相関する。疾患関連遺伝子は、疾患の病因を直接担い、または疾患の病因を担う遺伝子と連鎖不平衡をなす突然変異または遺伝子変異を有する遺伝子も指す。転写または翻訳される産物は、既知または未知のものであり得、正常または異常レベルにおけるものであり得る。
【0459】
疾患関連遺伝子およびポリヌクレオチドの例を表AおよびBに列記する。疾患特異的情報は、McKusick-NathansInstitute of Genetic Medicine,Johns Hopkins University (Baltimore,Md.)およびNational Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine(Bethesda,Md.)から入手可能であり、ワールドワイドウェブから入手可能である。シグナリング生化学経路関連遺伝子およびポリヌクレオチドの例を表Cに列記する。
【0460】
これらの遺伝子および経路中の突然変異は、不適切なタンパク質の産生または機能に影響する不適切な量のタンパク質をもたらし得る。遺伝子、疾患およびタンパク質のさらなる例は、2012年12月12日に出願された米国仮特許出願第61/736,527号明細書から参照により本明細書に組み込まれる。このような遺伝子、タンパク質および経路は、CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドであり得る。
【0461】
【表14】
【0462】
【表15】
【0463】
【表16】
【0464】
【表17】
【0465】
【表18】
【0466】
【表19】
【0467】
【表20】
【0468】
【表21】
【0469】
【表22】
【0470】
【表23】
【0471】
【表24】
【0472】
【表25】
【0473】
【表26】
【0474】
【表27】
【0475】
【表28】
【0476】
【表29】
【0477】
【表30】
【0478】
本発明の実施形態は、遺伝子のノックアウト、遺伝子の増幅ならびにDNAリピート不安定性および神経学的疾患に関連する特定の突然変異の修復に関連する方法および組成物にも関する(RobertD.Wells,Tetsuo Ashizawa,GeneticInstabilities andNeurological Diseases,SecondEdition,Academic Press,Oct13,2011-Medical)。規定の態様のタンデムリピート配列が20を超えるヒト疾患を担うことが見出されている(Newinsights into repeat instability:role of RNA・DNA hybrids.McIvorEI,Polak U,NapieralaM.RNA Biol.2010 Sep-Oct;7(5):551-8)。CRISPR-Cas系を利用してゲノム不安定性のこれらの異常を補正することができる。
【0479】
本発明のさらなる態様は、ラフォラ病に関連することが同定されているEMP2AおよびEMP2B遺伝子の異常の補正のためのCRISPR-Cas系の利用に関する。ラフォラ病は、青年期において癲癇性発作として始まり得る進行性ミオクローヌス癲癇を特徴とする常染色体劣性病態である。この疾患の数例は、未だ同定されていない遺伝子の突然変異により引き起こされ得る。この疾患は、発作、筋痙攣、歩行困難、認知症、および最終的に死亡を引き起こす。現在、疾患進行に対して有効であることが証明されている治療は存在しない。癲癇に関連する他の遺伝子異常を、CRISPR-Cas系によりターゲティングすることもでき、基礎となる遺伝学は、Geneticsof Epilepsy and Genetic Epilepsies,GiulianoAvanzini,Jeffrey L.Noebelsにより編集,MarianiFoundation Paediatric Neurology:20;2009)にさらに記載されている。
【0480】
T細胞受容体(TCR)遺伝子を不活性化させることに関するSangamo BioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20110158957号明細書の方法もまた、本発明のCRISPRCas系に合わせて改良し得る。別の例では、両方ともにグルタミンシンテターゼ遺伝子発現遺伝子を不活性化させることに関するSangamoBioSciences,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第20100311124号明細書およびCellectisに譲渡された米国特許出願公開第20110225664号明細書の方法もまた、本発明のCRISPRCas系に合わせて改良し得る。
【0481】
本発明のいくつかのさらなる態様は、米国国立衛生研究所のウェブサイト(health.nih.gov/topic/GeneticDisordersにおけるウェブサイト)上にトピックサブセクションGeneticDisordersのもとでさらに記載されている広範な遺伝子疾患に関連する異常の補正に関する。遺伝子脳疾患としては、限定されるものではないが、副腎白質ジストロフィー、脳梁欠損症、アイカルディ症候群、アルパース病、アルツハイマー病、バース症候群、バッテン病、CADASIL、小脳変性症、ファブリー病、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、ハンチントン病および他のトリプレットリピート病、リー病、レッシュ-ナイハン症候群、メンケス病、ミトコンドリアミオパチーならびにNINDSコルポセファリーが挙げられる。これらの疾患は、米国国立衛生研究所のウェブサイト上にサブセクションGeneticBrain Disordersのもとでさらに記載されている。
【0482】
一部の実施形態において、病態は、新形成である。病態が新形成であり得る一部の実施形態において、ターゲティングすべき遺伝子は、表Aに列記のもののいずれかであり得る(この場合、PTENなど)。一部の実施形態において、病態は、加齢黄斑変性症であり得る。一部の実施形態において、病態は、統合失調症であり得る。一部の実施形態において、病態は、トリヌクレオチドリピート障害であり得る。一部の実施形態において、病態は、脆弱性X症候群であり得る。一部の実施形態において、病態は、セクレターゼ関連障害であり得る。一部の実施形態において、病態は、プリオン関連障害であり得る。一部の実施形態において、病態は、ALSであり得る。一部の実施形態において、病態は、薬物嗜好であり得る。一部の実施形態において、病態は、自閉症であり得る。一部の実施形態において、病態は、アルツハイマー病であり得る。一部の実施形態において、病態は、炎症であり得る。一部の実施形態において、病態は、パーキンソン病であり得る。
【0483】
例えば、米国特許出願公開第20110023145号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用した自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝的改変を記載している。自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的相互作用およびコミュニケーションの質的障害、ならびに限定された反復的かつ常同的様式の行動、興味、および活動によって特徴付けられる一群の障害である。3つの障害、自閉症、アスペルガー症候群(AS)および特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は、種々の程度の重症度、関連する知的機能および医学的状態を伴う一連の同じ障害である。ASDは主に遺伝的に決定される障害であり、遺伝率は約90%である。
【0484】
米国特許出願公開第20110023145号明細書は、ASDに関連するタンパク質をコードする任意の染色体配列を編集することを含み、これは本発明のCRISPRCas系に適用し得る。ASDに関連するタンパク質は、典型的にはASDに関連するタンパク質とASDの発生率または徴候との実験的関連性に基づき選択される。例えば、ASDを有する集団では、ASDを有しない集団と比べてASDに関連するタンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、ASDに関連するタンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0485】
ASDに関連するタンパク質に関連し得る病状または障害の非限定的な例には、自閉症、アスペルガー症候群(AS)、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、レット症候群、結節性硬化症、フェニルケトン尿症、スミス・レムリ・オピッツ症候群および脆弱X症候群が含まれる。非限定的な例として、ASDに関連するタンパク質には、限定はされないが以下のタンパク質が含まれる:ATP10Cアミノリン脂質- MET MET受容体 輸送ATPアーゼ チロシンキナーゼ(ATP10C)BZRAP1 MGLUR5(GRM5)代謝型グルタミン酸受容体5(MGLUR5)CDH10 カドヘリン10 MGLUR6(GRM6)代謝型グルタミン酸受容体6(MGLUR6) CDH9カドヘリン9 NLGN1 ニューロリジン1 CNTN4 コンタクチン4NLGN2 ニューロリジン2 CNTNAP2 コンタクチン関連 SEMA5Aニューロリジン3 タンパク質様2(CNTNAP2)DHCR7 7-デヒドロコレステロールNLGN4X ニューロリジン4 X- レダクターゼ(DHCR7) 連鎖性 DOC2A二重C2様ドメイン- NLGN4Y ニューロリジン4 Y-含有タンパク質α 連鎖性 DPP6 ジペプチジル NLGN5ニューロリジン5 アミノペプチダーゼ様タンパク質6EN2 エングレイルド2(EN2)NRCAM 神経細胞接着分子(NRCAM)MDGA2 脆弱X精神遅滞 NRXN1 ニューレキシン1 1(MDGA2)FMR2(AFF2)AF4/FMR2ファミリーメンバー2 OR4M2 嗅覚受容体 (AFF2)4M2 FOXP2 フォークヘッドボックスタンパク質P2 OR4N4 嗅覚受容体 (FOXP2) 4N4FXR1 脆弱X精神 OXTR オキシトシン受容体 遅滞、常染色体性(OXTR) ホモログ1(FXR1)FXR2 脆弱X精神 PAH フェニルアラニン 遅滞、常染色体性水酸化酵素(PAH) ホモログ2(FXR2)GABRA1 γ-アミノ酪酸 PTEN ホスファターゼおよび 受容体サブユニットα-1 テンシンホモログ (GABRA1)(PTEN) GABRA5 GABAA(γ-アミノ酪 PTPRZ1 受容体型酸)受容体α5 チロシンタンパク質 サブユニット(GABRA5) ホスファターゼζ(PTPRZ1)GABRB1 γ-アミノ酪酸 RELN リーリン 受容体サブユニットβ-1(GABRB1)GABRB3 GABAA(γ-アミノ酪RPL10 60Sリボソーム 酸)受容体β3サブユニット タンパク質L10(GABRB3)GABRG1 γ-アミノ酪酸 SEMA5A セマフォリン-5A 受容体サブユニットγ-1(SEMA5A) (GABRG1) HIRIP3 HIRA相互作用タンパク質3 SEZ6L2 発作関連6ホモログ(マウス)様2 HOXA1 ホメオボックスタンパク質Hox-A1 SHANK3 SH3および複数の(HOXA1)アンキリンリピートドメイン3(SHANK3)IL6 インターロイキン6 SHBZRAP1 SH3および複数のアンキリンリピートドメイン3(SHBZRAP1)LAMB1 ラミニンサブユニットβ-1SLC6A4 セロトニン (LAMB1)トランスポーター(SERT) MAPK3 マイトジェン活性化タンパク質 TAS2R1 味覚受容体キナーゼ3 タイプ2 メンバー1TAS2R1 MAZ Myc関連ジンクフィンガー TSC1 結節性硬化症 タンパク質 タンパク質1MDGA2 MAMドメイン含有 TSC2 結節性硬化症 グリコシルホスファチジルイノシトールタンパク質2 アンカー2(MDGA2)MECP2 メチルCpG結合 UBE3A ユビキチンタンパク質 タンパク質2(MECP2) リガーゼE3A(UBE3A)MECP2 メチルCpG結合 WNT2 ウィングレス型 タンパク質2(MECP2)MMTVインテグレーション部位ファミリー、メンバー2(WNT2)。
【0486】
その染色体配列が編集されるASDに関連するタンパク質のアイデンティティは異なってもよく、かつ異なることになる。好ましい実施形態において、その染色体配列が編集されるASDに関連するタンパク質は、BZRAP1遺伝子によりコードされるベンゾジアゼピン(benzodiazapine)受容体(末梢)関連タンパク質1(BZRAP1)、AFF2遺伝子(MFR2とも称される)によりコードされるAF4/FMR2ファミリーメンバー2タンパク質(AFF2)、FXR1遺伝子によりコードされる脆弱X精神遅滞常染色体性ホモログ1タンパク質(FXR1)、FXR2遺伝子によりコードされる脆弱X精神遅滞常染色体性ホモログ2タンパク質(FXR2)、MDGA2遺伝子によりコードされるMAMドメイン含有グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー2タンパク質(MDGA2)、MECP2遺伝子によりコードされるメチルCpG結合タンパク質2(MECP2)、MGLUR5-1遺伝子(GRM5とも称される)によりコードされる代謝型グルタミン酸受容体5(MGLUR5)、NRXN1遺伝子によりコードされるニューレキシン1タンパク質、またはSEMA5A遺伝子によりコードされるセマフォリン5Aタンパク質(SEMA5A)であり得る。例示的実施形態において、遺伝子改変を受ける動物はラットであり、およびASDに関連するタンパク質をコードする編集される染色体配列を以下に列挙する:BZRAP1ベンゾジアゼピン(benzodiazapine)受容体 XM_002727789、(末梢)関連 XM_213427、タンパク質1(BZRAP1)XM_002724533、XM_001081125 AFF2(FMR2)AF4/FMR2ファミリーメンバー2 XM_219832、(AFF2)XM_001054673 FXR1脆弱X精神 NM_001012179遅滞、常染色体性ホモログ1(FXR1)FXR2 脆弱X精神 NM_001100647 遅滞、常染色体性ホモログ2(FXR2) MDGA2MAM ドメイン含有 NM_199269 グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー2(MDGA2)MECP2 メチルCpG結合 NM_022673 タンパク質2(MECP2) MGLUR5 代謝型グルタミン酸 NM_017012(GRM5) 受容体5(MGLUR5)NRXN1 ニューレキシン1 NM_021767 SEMA5A セマフォリン-5A(SEMA5A)NM_001107659。
【0487】
例示的動物または細胞は、ASDに関連するタンパク質をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、または9個またはそれ以上の不活性化染色体配列、およびASDに関連するタンパク質をコードする0、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の染色体にインテグレートされた配列を含み得る。編集されまたはインテグレートされる染色体配列は、変化したASD関連タンパク質をコードするように改変され得る。ASDに関連するタンパク質における突然変異の非限定的な例としては、18位のロイシンがグルタミンに置換されているニューレキシン1におけるL18Q突然変異、451位のアルギニンがシステインに置換されているニューロリジン3におけるR451C突然変異、87位のアルギニンがトリプトファンに置換されているニューロリジン4におけるR87W突然変異、および425位のイソロイシンがバリンに置換されているセロトニントランスポーターにおけるI425V突然変異が挙げられる。ASD関連染色体配列における他の多くの突然変異および染色体再配列がASDと関連付けられており、当該技術分野において公知である。例えば、Freitaget al.(2010)Eur.Child.Adolesc.Psychiatry19:169-178、およびBucan et al.(2009)PLoS Genetics 5:e1000536(これらの開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0488】
パーキンソン病に関連するタンパク質の例としては、限定されるものではないが、α-シヌクレイン、DJ-1、LRRK2、PINK1、パーキン、UCHL1、シンフィリン-1、およびNURR1が挙げられる。
【0489】
嗜好関連タンパク質の例としては、例えば、ABATを挙げることができる。
【0490】
炎症関連タンパク質の例としては、例えば、Ccr2遺伝子によりコードされる単球走化性タンパク質-1(MCP1)、Ccr5遺伝子によりコードされるC-Cケモカイン受容体5型(CCR5)、Fcgr2b遺伝子によりコードされるIgG受容体IIB(FCGR2b、CD32とも称される)、またはFcer1g遺伝子によりコードされるFcイプシロンR1g(FCER1g)タンパク質を挙げることができる。
【0491】
心血管疾患関連タンパク質の例としては、例えば、IL1B(インターロイキン1、ベータ)、XDH(キサンチンデヒドロゲナーゼ)、TP53(腫瘍タンパク質p53)、PTGIS(プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)シンターゼ)、MB(ミオグロビン)、IL4(インターロイキン4)、ANGPT1(アンジオポエチン1)、ABCG8(ATP結合カセット、サブファミリーG(WHITE)、メンバー8)、またはCTSK(カテプシンK)を挙げることができる。
【0492】
例えば、米国特許出願公開第20110023153号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用したアルツハイマー病に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝子改変を記載している。一たび改変された細胞および動物は、ADの試験で一般的に用いられる尺度-例えば、限定なしに、学習および記憶、不安、抑欝、嗜癖、および感覚運動機能を使用して、標的突然変異がADの発症および/または進行に及ぼす効果を研究するための公知の方法、ならびに行動的、機能的、病理学的、代謝的(metaboloic)および生化学的機能を計測するアッセイを用いてさらに試験され得る。
【0493】
本開示は、ADに関連するタンパク質をコードする任意の染色体配列を編集することを含む。AD関連タンパク質は、典型的にはAD関連タンパク質とAD障害との実験的関連性に基づき選択される。例えば、AD障害を有する集団では、AD障害を有しない集団と比べてAD関連タンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、AD関連タンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0494】
アルツハイマー病関連タンパク質の例としては、例えば、VLDLR遺伝子によりコードされる超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)、UBA1遺伝子によりコードされるユビキチン様修飾因子活性化酵素1(UBA1)、またはUBA3遺伝子によりコードされるNEDD8活性化酵素E1触媒サブユニットタンパク質(UBE1C)を挙げることができる。
【0495】
非限定的な例として、ADに関連するタンパク質には、限定はされないが、以下のとおり列挙されるタンパク質が含まれる:染色体配列によりコードされるタンパク質ALAS2Δ-アミノレブリン酸シンターゼ2(ALAS2) ABCA1 ATP結合カセットトランスポーター(ABCA1) ACE アンジオテンシンI変換酵素(ACE) APOE アポリポタンパク質E前駆体(APOE) APP アミロイド前駆体タンパク質(APP) AQP1 アクアポリン1タンパク質(AQP1) BIN1 Mycボックス依存性相互作用タンパク質1または架橋インテグレータ(bridgingintegrator)1タンパク質(BIN1) BDNF 脳由来神経栄養因子(BDNF) BTNL8 ブチロフィリン様タンパク質8(BTNL8) C1ORF49 染色体1オープンリーディングフレーム49 CDH4 カドヘリン4 CHRNB2ニューロンアセチルコリン受容体サブユニットβ-2 CKLFSF2 CKLF様MARVEL膜貫通ドメイン含有タンパク質2(CKLFSF2)CLEC4E C型レクチンドメインファミリー4、メンバーe(CLEC4E)CLU クラスタリンタンパク質(アポリポタンパク質(apoplipoprotein)Jとしても知られる)CR1 赤血球補体受容体1(CR1、またCD35、C3b/C4b受容体および免疫粘着受容体としても知られる)CR1L 赤血球補体受容体1(CR1L)CSF3R 顆粒球コロニー刺激因子3受容体(CSF3R)CST3 シスタチンCまたはシスタチン3CYP2C シトクロムP450 2C DAPK1 細胞死関連プロテインキナーゼ1(DAPK1)ESR1 エストロゲン受容体1 FCAR IgA受容体のFc断片(FCAR、またCD89としても知られる) FCGR3B IgGのFc断片、低親和性IIIb、受容体(FCGR3BまたはCD16b)FFA2 遊離脂肪酸受容体2(FFA2)FGA フィブリノゲン(因子I)GAB2 GRB2関連結合タンパク質2(GAB2)GAB2 GRB2関連結合タンパク質2(GAB2)GALP ガラニン様ペプチド GAPDHS グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、精子形成(GAPDHS)GMPB GMBP HPハプトグロビン(HP) HTR7 5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体7(アデニル酸シクラーゼ共役型) IDEインスリン分解酵素 IF127 IF127 IFI6インターフェロン、α-誘導性タンパク質6(IFI6) IFIT2 テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質2(IFIT2)IL1RN インターロイキン-1受容体拮抗薬(IL-1RA)IL8RA インターロイキン8受容体、α(IL8RAまたはCD181)IL8RB インターロイキン8受容体、β(IL8RB)JAG1ジャグド1(JAG1) KCNJ15カリウム内向き整流性チャネル、サブファミリーJ、メンバー15(KCNJ15) LRP6 低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6) MAPT 微小管結合タンパク質τ(MAPT) MARK4 MAP/微小管親和性調節キナーゼ4(MARK4) MPHOSPH1 M期リンタンパク質1 MTHFR 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素 MX2 インターフェロン誘導GTP結合タンパク質 Mx2 NBN ニブリン、NBNとしても知られるNCSTN ニカストリン NIACR2 ナイアシン受容体2(NIACR2、またGPR109Bとしても知られる)NMNAT3 ニコチンアミドヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ3NTM ニューロトリミン(またはHNT)ORM1 オロソムコイド(Orosmucoid)1(ORM1)またはα-1-酸糖タンパク質1P2RY13 P2Y プリン受容体13(P2RY13) PBEF1 プレB細胞コロニー増強因子1(PBEF1)またはビスファチンとしても知られるニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAmPRTアーゼまたはNampt)PCK1 ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼPICALM ホスファチジルイノシトール結合クラスリン集合タンパク質(PICALM)PLAU ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(PLAU)PLXNC1 プレキシンC1(PLXNC1)PRNP プリオンタンパク質 PSEN1 プレセニリン1タンパク質(PSEN1) PSEN2 プレセニリン2タンパク質(PSEN2) PTPRA タンパク質チロシンホスファターゼ受容体A型タンパク質(PTPRA)RALGPS2 PHドメインおよびSH3結合モチーフを有するRalGEF2(RALGPS2) RGSL2Gタンパク質シグナル伝達様の調節因子2(RGSL2) SELENBP1 セレン結合タンパク質1(SELNBP1) SLC25A37 ミトフェリン1 SORL1ソルチリン関連受容体L(DLRクラス)Aリピート含有タンパク質(SORL1) TF トランスフェリン TFAMミトコンドリア転写因子A TNF腫瘍壊死因子 TNFRSF10C 腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10C(TNFRSF10C) TNFSF10腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、(TRAIL)メンバー10a(TNFSF10)UBA1 ユビキチン様モディファイヤー活性化酵素1(UBA1)UBA3 NEDD8活性化酵素E1触媒サブユニットタンパク質(UBE1C)UBB ユビキチンBタンパク質(UBB)UBQLN1 ユビキリン1 UCHL1 ユビキチンカルボキシル末端エステラーゼL1タンパク質(UCHL1)UCHL3 ユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼアイソザイムL3タンパク質(UCHL3)VLDLR 超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)。
【0496】
例示的実施形態において、その染色体配列が編集されるADに関連するタンパク質は、VLDLR遺伝子によりコードされる超低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)、UBA1遺伝子によりコードされるユビキチン様モディファイヤー活性化酵素1(UBA1)、UBA3遺伝子によりコードされるNEDD8活性化酵素E1触媒サブユニットタンパク質(UBE1C)、AQP1遺伝子によりコードされるアクアポリン1タンパク質(AQP1)、UCHL1遺伝子によりコードされるユビキチンカルボキシル末端エステラーゼL1タンパク質(UCHL1)、UCHL3遺伝子によりコードされるユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼアイソザイムL3タンパク質(UCHL3)、UBB遺伝子によりコードされるユビキチンBタンパク質(UBB)、MAPT遺伝子によりコードされる微小管結合タンパク質τ(MAPT)、PTPRA遺伝子によりコードされるタンパク質チロシンホスファターゼ受容体A型タンパク質(PTPRA)、PICALM遺伝子によりコードされるホスファチジルイノシトール結合クラスリン集合タンパク質(PICALM)、CLU遺伝子によりコードされるクラスタリンタンパク質(アポリポタンパク質(apoplipoprotein)Jとしても知られる)、PSEN1遺伝子によりコードされるプレセニリン1タンパク質、PSEN2遺伝子によりコードされるプレセニリン2タンパク質、SORL1遺伝子によりコードされるソルチリン関連受容体L(DLRクラス)Aリピート含有タンパク質(SORL1)タンパク質、APP遺伝子によりコードされるアミロイド前駆体タンパク質(APP)、APOE遺伝子によりコードされるアポリポタンパク質E前駆体(APOE)、またはBDNF遺伝子によりコードされる脳由来神経栄養因子(BDNF)であり得る。例示的実施形態において、遺伝子改変を受ける動物はラットであり、およびADに関連するタンパク質をコードする編集される染色体配列は以下のとおりである:APPアミロイド前駆体タンパク質(APP) NM_019288 AQP1 アクアポリン1タンパク質(AQP1)NM_012778 BDNF 脳由来神経栄養因子 NM_012513 CLUクラスタリンタンパク質(NM_053021 アポリポタンパク質(apoplipoprotein)Jとしても知られる) MAPT微小管結合タンパク質 NM_017212 τ(MAPT) PICALM ホスファチジルイノシトール結合NM_053554 クラスリン集合タンパク質(PICALM)PSEN1 プレセニリン1タンパク質(PSEN1)NM_019163 PSEN2 プレセニリン2タンパク質(PSEN2) NM_031087 PTPRA タンパク質チロシンホスファターゼ NM_012763 受容体A型タンパク質(PTPRA) SORL1 ソルチリン関連受容体L(DLR NM_053519、クラス)Aリピート含有 XM_001065506、タンパク質(SORL1) XM_217115 UBA1 ユビキチン様モディファイヤー活性化 NM_001014080 酵素1(UBA1) UBA3NEDD8活性化酵素E1 NM_057205触媒サブユニットタンパク質(UBE1C) UBB ユビキチンBタンパク質(UBB) NM_138895 UCHL1 ユビキチンカルボキシル末端NM_017237 エステラーゼL1タンパク質(UCHL1)UCHL3 ユビキチンカルボキシル末端NM_001110165 ヒドロラーゼアイソザイムL3タンパク質(UCHL3)VLDLR 超低密度リポタンパク質NM_013155 受容体タンパク質(VLDLR)。
【0497】
動物または細胞は、ADに関連するタンパク質をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15個またはそれ以上の破壊された染色体配列、およびADに関連するタンパク質をコードする0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれ以上の染色体にインテグレートされた配列を含み得る。
【0498】
編集されるまたはインテグレートされる染色体配列は、変化したADに関連するタンパク質をコードするように改変され得る。AD関連染色体配列における数多くの突然変異がADと関連付けられている。例えば、APPにおけるV7171(すなわち717位のバリンがイソロイシンに変わる)ミスセンス突然変異は家族性ADを引き起こす。プレセニリン1タンパク質における複数の突然変異、例えばH163R(すなわち163位のヒスチジンがアルギニンに変わる)、A246E(すなわち246位のアラニンがグルタミン酸に変わる)、L286V(すなわち286位のロイシンがバリンに変わる)およびC410Y(すなわち410位のシステインがチロシンに変わる)は家族性アルツハイマー3型を引き起こす。プレセニリン2タンパク質における突然変異、例えばN141I(すなわち141位のアスパラギンがイソロイシンに変わる)、M239V(すなわち239位のメチオニンがバリンに変わる)、およびD439A(すなわち439位のアスパラギン酸がアラニンに変わる)は家族性アルツハイマー4型を引き起こす。AD関連遺伝子の遺伝的変異と疾患との他の関連性は当該技術分野において公知である。例えば、Waringet al.(2008)Arch.Neurol.65:329-334(この開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0499】
自閉症スペクトラム障害に関連するタンパク質の例としては、例えば、BZRAP1遺伝子によりコードされるベンゾジアゼピン受容体(末梢性)関連タンパク質1(BZRAP1)、AFF2遺伝子(MFR2とも称される)によりコードされるAF4/FMR2ファミリーメンバー2タンパク質(AFF2)、FXR1遺伝子によりコードされる脆弱性X精神遅滞常染色体ホモログ1タンパク質(FXR1)、またはFXR2遺伝子によりコードされる脆弱性X精神遅滞常染色体ホモログ2タンパク質(FXR2)を挙げることができる。
【0500】
黄斑変性症に関連するタンパク質の例としては、例えば、ABCR遺伝子によりコードされるATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー4タンパク質(ABCA4)、APOE遺伝子によりコードされるアポリポタンパク質Eタンパク質(APOE)、またはCCL2遺伝子によりコードされるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2タンパク質(CCL2)を挙げることができる。
【0501】
統合失調症に関連するタンパク質の例としては、NRG1、ErbB4、CPLX1、TPH1、TPH2、NRXN1、GSK3A、BDNF、DISC1、GSK3B、およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0502】
腫瘍抑制に関与するタンパク質の例としては、例えば、ATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)、ATR(毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連)、EGFR(上皮成長因子受容体)、ERBB2(v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ2)、ERBB3(v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ3)、ERBB4(v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ4)、Notch1、Notch2、Notch3、またはNotch4を挙げることができる。
【0503】
セクレターゼ障害に関連するタンパク質の例としては、例えば、PSENEN(プレセニリンエンハンサー2ホモログ(線虫(C.elegans)))、CTSB(カテプシンB)、PSEN1(プレセニリン1)、APP(アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質)、APH1B(咽頭前部欠損1ホモログB(線虫(C.elegans)))、PSEN2(プレセニリン2(アルツハイマー病4))、またはBACE1(ベータ部位APP開裂酵素1)を挙げることができる。
【0504】
例えば、米国特許出願公開第20110023146号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用したセクレターゼ関連障害に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝子改変を記載している。セクレターゼは、プレタンパク質をその生物学的に活性な形態にプロセシングするために必須である。セクレターゼ経路の種々の構成成分の欠損は、多くの障害、特に、アルツハイマー病(AD)など、顕著な特徴であるアミロイド形成またはアミロイド斑を伴う障害に寄与する。
【0505】
セクレターゼ障害およびそれらの障害に関連するタンパク質は、数多くの障害に対する感受性、障害の存在、障害の重症度、またはそれらの任意の組み合わせをもたらすタンパク質の多様な集合である。本開示は、セクレターゼ障害に関連するタンパク質をコードする任意の染色体配列を編集することを含む。セクレターゼ障害に関連するタンパク質は、典型的にはセクレターゼ関連タンパク質とセクレターゼ障害の発症との実験的関連性に基づき選択される。例えば、セクレターゼ障害を有する集団では、セクレターゼ障害を有しない集団と比べてセクレターゼ障害に関連するタンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、セクレターゼ障害に関連するタンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0506】
非限定的な例として、セクレターゼ障害に関連するタンパク質には、PSENEN(プレセニリンエンハンサー2ホモログ(C.エレガンス(C.elegans)))、CTSB(カテプシンB)、PSEN1(プレセニリン1)、APP(アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質)、APH1B(前咽頭不全1ホモログB(C.エレガンス(C.elegans)))、PSEN2(プレセニリン2(アルツハイマー病4))、BACE1(β部位APP開裂酵素1)、ITM2B(内在性膜タンパク質2B)、CTSD(カテプシンD)、NOTCH1(ノッチホモログ1、転座関連(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、TNF(腫瘍壊死因子(TNFスーパーファミリー、メンバー2))、INS(インスリン)、DYT10(ジストニー10)、ADAM17(ADAMメタロペプチダーゼドメイン17)、APOE(アポリポタンパク質E)、ACE(アンジオテンシンI変換酵素(ペプチジルジペプチダーゼA)1)、STN(スタチン)、TP53(腫瘍タンパク質p53)、IL6(インターロイキン6(インターフェロン、β2))、NGFR(神経成長因子受容体(TNFRスーパーファミリー、メンバー16))、IL1B(インターロイキン1、β)、ACHE(アセチルコリンエステラーゼ(Yt血液型))、CTNNB1(カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、β1、88kDa)、IGF1(インスリン様成長因子1(ソマトメジンC))、IFNG(インターフェロン、γ)、NRG1(ニューレグリン1)、CASP3(カスパーゼ3、アポトーシス関連システインペプチダーゼ)、MAPK1(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1)、CDH1(カドヘリン1、1型、E-カドヘリン(上皮))、APBB1(アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質結合、ファミリーB、メンバー1(Fe65))、HMGCR(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素)、CREB1(cAMP応答エレメント結合タンパク質1)、PTGS2(プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ2(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ))、HES1(ヘアリーおよびエンハンサー・オブ・スプリット1、(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、CAT(カタラーゼ)、TGFB1(形質転換成長因子、β1)、ENO2(エノラーゼ2(γ、ニューロン))、ERBB4(v-erb-a赤芽球性白血病ウイルス性癌遺伝子ホモログ4(トリ))、TRAPPC10(輸送タンパク質粒子複合体10)、MAOB(モノアミンオキシダーゼB)、NGF(神経成長因子(βポリペプチド))、MMP12(マトリックスメタロペプチダーゼ12(マクロファージエラスターゼ))、JAG1(ジャグド1(アラジール症候群))、CD40LG(CD40リガンド)、PPARG(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)、FGF2(線維芽細胞成長因子2(塩基性))、IL3(インターロイキン3(コロニー刺激因子、多重))、LRP1(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1)、NOTCH4(ノッチホモログ4(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、MAPK8(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8)、PREP(プロリルエンドペプチダーゼ)、NOTCH3(ノッチホモログ3(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、PRNP(プリオンタンパク質)、CTSG(カテプシンG)、EGF(上皮成長因子(β-ウロガストロン))、REN(レニン)、CD44(CD44分子(インド人血液型))、SELP(セレクチンP(顆粒膜タンパク質140kDa、抗原CD62))、GHR(成長ホルモン受容体)、ADCYAP1(アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(下垂体))、INSR(インスリン受容体)、GFAP(グリア線維性酸性タンパク質)、MMP3(マトリックスメタロペプチダーゼ3(ストロメライシン1、プロゼラチナーゼ))、MAPK10(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ10)、SP1(Sp1転写因子)、MYC(v-myc骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ))、CTSE(カテプシンE)、PPARA(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)、JUN(jun癌遺伝子)、TIMP1(TIMPメタロペプチダーゼ阻害因子1)、IL5(インターロイキン5(コロニー刺激因子、好酸球))、IL1A(インターロイキン1、α)、MMP9(マトリックスメタロペプチダーゼ9(ゼラチナーゼB、92kDaゼラチナーゼ、92kDaIV型コラゲナーゼ))、HTR4(5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体4)、HSPG2(ヘパラン硫酸プロテオグリカン2)、KRAS(v-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ)、CYCS(シトクロムc、体細胞性)、SMG1(SMG1ホモログ、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ関連キナーゼ(C.エレガンス(C.elegans)))、IL1R1(インターロイキン1受容体、I型)、PROK1(プロキネチシン1)、MAPK3(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ3)、NTRK1(神経栄養チロシンキナーゼ、受容体、1型)、IL13(インターロイキン13)、MME(膜メタロエンドペプチダーゼ)、TKT(トランスケトラーゼ)、CXCR2(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2)、IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)、RARA(レチノイン酸受容体、α)、CREBBP(CREB結合タンパク質)、PTGS1(プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ1(プロスタグランジンG/Hシンターゼおよびシクロオキシゲナーゼ))、GALT(ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ)、CHRM1(コリン作動性受容体、ムスカリン作動性1)、ATXN1(アタキシン1)、PAWR(PRKC、アポトーシス、WT1、調節因子)、NOTCH2(ノッチホモログ2(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、M6PR(マンノース-6-リン酸受容体(カチオン依存性))、CYP46A1(シトクロムP450、ファミリー46、サブファミリーA、ポリペプチド1)、CSNK1D(カゼインキナーゼ1、δ)、MAPK14(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ14)、PRG2(プロテオグリカン2、骨髄(ナチュラルキラー細胞アクチベータ、好酸球顆粒主要塩基性タンパク質))、PRKCA(プロテインキナーゼC、α)、L1CAM(L1細胞接着分子)、CD40(CD40分子、TNF受容体スーパーファミリーメンバー5)、NR1I2(核内受容体サブファミリー1、グループI、メンバー2)、JAG2(ジャグド2)、CTNND1(カテニン(カドヘリン関連タンパク質)、δ1)、CDH2(カドヘリン2、1型、N-カドヘリン(神経型))、CMA1(キマーゼ1、マスト細胞)、SORT1(ソルチリン1)、DLK1(δ様1ホモログ(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、THEM4(チオエステラーゼスーパーファミリーメンバー4)、JUP(結合プラコグロビン)、CD46(CD46分子、補体調節タンパク質)、CCL11(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド11)、CAV3(カベオリン3)、RNASE3(リボヌクレアーゼ、RNアーゼAファミリー、3(好酸球陽イオンタンパク質))、HSPA8(熱ショック70kDaタンパク質8)、CASP9(カスパーゼ9、アポトーシス関連システインペプチダーゼ)、CYP3A4(シトクロムP450、ファミリー3、サブファミリーA、ポリペプチド4)、CCR3(ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体3)、TFAP2A(転写因子AP-2α(活性化エンハンサー結合タンパク質2α))、SCP2(ステロールキャリアタンパク質2)、CDK4(サイクリン依存性キナーゼ4)、HIF1A(低酸素誘導因子1、αサブユニット(塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス転写因子))、TCF7L2(転写因子7様2(T細胞特異的、HMGボックス))、IL1R2(インターロイキン1受容体、II型)、B3GALTL(β1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ様)、MDM2(Mdm2 p53結合タンパク質ホモログ(マウス))、RELA(v-rel細網内皮症ウイルス癌遺伝子ホモログA(トリ))、CASP7(カスパーゼ7、アポトーシス関連システインペプチダーゼ)、IDE(インスリン分解酵素)、FABP4(脂肪酸結合タンパク質4、脂肪細胞)、CASK(カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ(MAGUKファミリー))、ADCYAP1R1(アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(下垂体)受容体I型)、ATF4(活性化転写因子4(tax応答性エンハンサーエレメントB67))、PDGFA(血小板由来成長因子αポリペプチド)、C21またはf33(染色体21オープンリーディングフレーム33)、SCG5(セクレトグラニンV(7B2タンパク質))、RNF123(リングフィンガータンパク質123)、NFKB1(B細胞内κ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核内因子1)、ERBB2(v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ2、神経/膠芽腫由来癌遺伝子ホモログ(トリ))、CAV1(カベオリン1、カベオラタンパク質、22kDa)、MMP7(マトリックスメタロペプチダーゼ7(マトリライシン、子宮))、TGFA(形質転換成長因子、α)、RXRA(レチノイドX受容体、α)、STX1A(シンタキシン1A(脳))、PSMC4(プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン)26Sサブユニット、ATPアーゼ、4)、P2RY2(プリン受容体P2Y、Gタンパク質共役、2)、TNFRSF21(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー21)、DLG1(ディスク、大ホモログ1(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、NUMBL(numbホモログ(ショウジョウバエ属(Drosophila))様)、SPN(シアロホリン)、PLSCR1(リン脂質スクランブラーゼ1)、UBQLN2(ユビキリン2)、UBQLN1(ユビキリン1)、PCSK7(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン7型)、SPON1(スポンジン1、細胞外マトリックスタンパク質)、SILV(シルバーホモログ(マウス))、QPCT(グルタミニルペプチドシクロトランスフェラーゼ)、HESS(ヘアリーおよびエンハンサー・オブ・スプリット5(ショウジョウバエ属(Drosophila)))、GCC1(GRIPおよびコイルドコイルドメイン含有1)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0507】
遺伝子改変を受けた動物または細胞は、セクレターゼ障害に関連するタンパク質をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の破壊された染色体配列、および破壊されたセクレターゼ障害関連タンパク質をコードする0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の染色体にインテグレートされた配列を含み得る。
【0508】
筋萎縮性側索硬化症に関連するタンパク質の例には、SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1)、ALS2(筋萎縮性側索硬化症2)、FUS(肉腫融合)、TARDBP(TARDNA結合タンパク質)、VAGFA(血管内皮増殖因子A)、VAGFB(血管内皮増殖因子B)、およびVAGFC(血管内皮増殖因子C)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0509】
例えば、米国特許出願公開第20110023144号明細書は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用した筋萎縮性側索硬化症(amyotrophyiclateral sclerosis)(ALS)疾患に関連する細胞、動物およびタンパク質の遺伝子改変を記載している。ALSは、随意運動に関わる皮質、脳幹、および脊髄における特定の神経細胞の漸進的で確実な変性によって特徴付けられる。
【0510】
運動ニューロン障害およびそれらの障害に関連するタンパク質は、運動ニューロン障害の発症に対する感受性、運動ニューロン障害の存在、運動ニューロン障害の重症度またはそれらの任意の組み合わせをもたらすタンパク質の多様な集合である。本開示は、特定の運動ニューロン障害であるALS疾患に関連するタンパク質をコードする任意の染色体配列を編集することを含む。ALSに関連するタンパク質は、典型的にはALS関連タンパク質とALSとの実験的関連性に基づき選択される。例えば、ALSを有する集団では、ALSを有しない集団と比べてALSに関連するタンパク質の産生速度または循環中濃度が上昇または低下し得る。タンパク質レベルの差は、限定はされないが、ウエスタンブロット、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および質量分析を含むプロテオミクス技術を用いて評価し得る。あるいは、ALSに関連するタンパク質は、限定はされないが、DNAマイクロアレイ解析、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、および定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)を含むゲノム技術を用いて、それらのタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子発現プロファイルを得ることにより同定され得る。
【0511】
非限定的な例として、ALSに関連するタンパク質としては、限定はされないが以下のタンパク質が挙げられる:SOD1スーパーオキシドジスムターゼ1、ALS3 筋萎縮性側索 可溶性 硬化症3SETX セナタキシン ALS5 筋萎縮性側索硬化症5 FUS 肉腫融合 ALS7筋萎縮性側索硬化症7 ALS2 筋萎縮性側索 DPP6 ジペプチジルペプチダーゼ6硬化症2 NEFH ニューロフィラメント、ヘビー PTGS1 プロスタグランジン- ポリペプチド エンドペルオキシドシンターゼ1SLC1A2 溶質輸送担体ファミリー1TNFRSF10B 腫瘍壊死因子 (グリア高親和性 受容体スーパーファミリー、グルタミン酸トランスポーター)、 メンバー10b メンバー2 PRPHペリフェリン HSP90AA1 熱ショックタンパク質90kDa α(細胞質型)、クラスAメンバー1 GRIA2 グルタミン酸受容体、IFNG インターフェロン、γ イオンチャネル型、AMPA 2 S100B S100カルシウム結合 FGF2 線維芽細胞成長因子2 タンパク質B AOX1 アルデヒドオキシダーゼ1CS クエン酸シンターゼ TARDBP TAR DNA結合タンパク質TXN チオレドキシン RAPH1 Ras関連 MAP3K5マイトジェン活性化プロテイン (RaIGDS/AF-6)およびキナーゼ5 プレクストリン相同ドメイン1NBEAL1 ニューロビアクチン様1GPX1 グルタチオンペルオキシダーゼ1ICA1L 膵島細胞自己抗原 RAC1 ras関連C3ボツリヌス 1.69kDa様 毒素基質1 MAPT微小管関連 ITPR2 イノシトール1,4,5- タンパク質τ 三リン酸受容体、2型ALS2CR4 筋萎縮性側索 GLS グルタミナーゼ 硬化症2(若年性)染色体領域、候補4ALS2CR8 筋萎縮性側索 CNTFR 毛様体神経栄養因子 硬化症2(若年性)受容体 染色体領域、候補8 ALS2CR11 筋萎縮性側索 FOLH1葉酸ヒドロラーゼ1 硬化症2(若年性)染色体領域、候補11FAM117B 配列を有するファミリーP4HB プロリル4-ヒドロキシラーゼ、類似性117、メンバーB βポリペプチドCNTF 毛様体神経栄養因子 SQSTM1 セクエストソーム1 STRADBSTE20関連キナーゼ NAIPNLRファミリー、アポトーシス アダプターβ阻害タンパク質 YWHAQ チロシン3- SLC33A1 溶質輸送担体ファミリー33モノオキシゲナーゼ/トリプトフ (アセチル-CoAトランスポーター)、5-モノオキシゲナーゼメンバー1 活性化タンパク質、θポリペプチドTRAK2 輸送タンパク質、FIG.4FIG.4ホモログ、SAC1 キネシン結合2脂質ホスファターゼドメイン含有 NIF3L1NIF3 NGG1相互作用 INA インターネキシンニューロン 因子3様1 中間径フィラメントタンパク質、α PARD3B par-3分配 COX8Aシトクロムcオキシダーゼ 欠損3ホモログBサブユニットVIIIA CDK15サイクリン依存性キナーゼ HECW1HECT、C2およびWW 15ドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1 NOS1 一酸化窒素合成酵素1 MET met癌原遺伝子 SOD2スーパーオキシドジスムターゼ2、HSPB1 熱ショック27kDa ミトコンドリア タンパク質1NEFL ニューロフィラメント、ライトCTSB カテプシンB ポリペプチド ANG アンジオゲニン、HSPA8熱ショック70kDa リボヌクレアーゼ、RNアーゼAタンパク質8 ファミリー、5 VAPB VAMP(小胞- ESR1エストロゲン受容体1 関連膜タンパク質)関連タンパク質BおよびCSNCA シヌクレイン、α HGF 肝細胞成長因子 CATカタラーゼ ACTB アクチン、β NEFM ニューロフィラメント、ミディアムTH チロシンヒドロキシラーゼポリペプチド BCL2 B細胞CLL/リンパ腫2 FAS Fas(TNF受容体スーパーファミリー、メンバー6)CASP3 カスパーゼ3、アポトーシス-CLU クラスタリン 関連システインペプチダーゼ SMN1 運動ニューロン生存 G6PD グルコース-6-リン酸1、テロメア デヒドロゲナーゼ BAX BCL2関連X HSF1熱ショック転写 タンパク質 因子1 RNF19A リングフィンガータンパク質19AJUN jun癌遺伝子 ALS2CR12 筋萎縮性側索 HSPA5熱ショック70kDa 硬化症2(若年性) タンパク質5 染色体領域、候補12 MAPK14 マイトジェン活性化タンパク質 IL10 インターロイキン10 キナーゼ14 APEX1 APEXヌクレアーゼTXNRD1 チオレドキシンレダクターゼ1(多機能性DNA修復酵素)1 NOS2一酸化窒素合成酵素2、TIMP1 TIMPメタロペプチダーゼ 誘導性 阻害因子1 CASP9 カスパーゼ9、アポトーシス-XIAP のX連鎖阻害因子 関連システイン アポトーシス ペプチダーゼGLG1 ゴルジ糖タンパク質1 EPO エリスロポエチン VEGFA血管内皮 ELN エラスチン 成長因子A GDNFグリア細胞由来 NFE2L2 核内因子(赤血球- 神経栄養因子 由来2)様2SLC6A3 溶質輸送担体ファミリー6HSPA4 熱ショック70kDa (神経伝達物質 タンパク質4 トランスポーター、ドーパミン)、メンバー3APOE アポリポタンパク質E PSMB8 プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン)サブユニット、β型、8 DCTN1 ダイナクチン1 TIMP3TIMPメタロペプチダーゼ阻害因子3 KIFAP3 キネシン関連 SLC1A1溶質輸送担体ファミリー1 タンパク質3(ニューロン/上皮高親和性グルタミン酸トランスポーター、システムXag)、メンバー1SMN2 運動ニューロン生存 CCNC サイクリンC 2、セントロメアMPP4 膜タンパク質、STUB1STIP1 相同性およびU- パルミトイル化4 ボックス含有タンパク質1 ALS2 アミロイドβ(A4) PRDX6 ペルオキシレドキシン6 前駆体タンパク質 SYP シナプトフィジンCABIN1 カルシニューリン結合タンパク質1CASP1 カスパーゼ1、アポトーシス-GART ホスホリボシルグリシンアミ関連システイン ド ホルミルトランスフェラーゼ、 ペプチダーゼ ホスホリボシルグリシンアミ ド シンテターゼ、ホスホリボシルアミノイミ ダゾール シンテターゼ CDK5 サイクリン依存性キナーゼ5ATXN3 アタキシン3 RTN4 レティキュロン4 C1QB補体成分1、qサブ成分、B鎖 VEGFC神経成長因子 HTT ハンチンチン受容体 PARK7 パーキンソン病7XDH キサンチンデヒドロゲナーゼGFAP グリア線維性酸性 MAP2 微小管結合 タンパク質タンパク質2 CYCS シトクロムc、体細胞型、FCGR3B IgGのFc断片、低親和性IIIb、CCSの銅シャペロン UBL5 ユビキチン様5 スーパーオキシドジスムターゼ MMP9 マトリックスメタロペプチダーゼ SLC18A3 溶質輸送担体ファミリー18 9((小胞アセチルコリン)、メンバー3 TRPM7 一過性受容体 HSPB2 熱ショック27kDa電位カチオンチャネル、 タンパク質2サブファミリーM、メンバー7 AKT1v-aktマウス胸腺腫 DERL1Der1様ドメインファミリー、ウイルス癌遺伝子ホモログ1 メンバー1 CCL2 ケモカイン(C-Cモチーフ)NGRN ノイグリン、神経突起 リガンド2 伸長関連 GSRグルタチオンレダクターゼ TPPP3チューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー3 APAF1 アポトーシスペプチダーゼ BTBD10 BTB(POZ)ドメイン 活性化因子1 含有10 GLUD1グルタミン酸 CXCR4 ケモカイン(C-X-Cモチーフ) デヒドロゲナーゼ1 受容体4 SLC1A3 溶質輸送担体ファミリー1FLT1 fms関連チロシン (グリア高親和性グルタミン酸トランスポーター)、メンバー3 キナーゼ1 PON1 パラオキソナーゼ1 ARアンドロゲン受容体 LIF 白血病抑制因子 ERBB3 v-erb-b2赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ3LGALS1 レクチン、ガラクトシド-CD44 CD44分子 結合、可溶性、1 TP53 腫瘍タンパク質p53TLR3 Toll様受容体3 GRIA1 グルタミン酸受容体、GAPDH グリセルアルデヒド-3- イオンチャネル型、AMPA 1 リン酸デヒドロゲナーゼ GRIK1 グルタミン酸受容体、DES デスミン イオンチャネル型、カイニン酸1 CHAT コリンアセチルトランスフェラーゼ FLT4 fms関連チロシンキナーゼ4 CHMP2B クロマチン改変 BAG1BCL2関連 タンパク質2B アタノ遺伝子 MT3 メタロチオネイン3CHRNA4 コリン作動性受容体、ニコチン性、α4GSS グルタチオンシンテターゼBAK1 BCL2-アンタゴニスト/キラー1KDR キナーゼ挿入ドメイン GSTP1 グルタチオンS-トランスフェラーゼ 受容体(III型 π1 受容体チロシンキナーゼ)OGG1 8-オキソグアニンDNAIL6 インターロイキン6(インターフェロン、グリコシラーゼβ2)。
【0512】
動物または細胞は、ALSに関連するタンパク質をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の破壊された染色体配列、および破壊されたALS関連タンパク質をコードする0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の染色体にインテグレートされた配列を含み得る。好ましいALS関連タンパク質には、SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1)、ALS2(筋萎縮性側索硬化症2)、FUS(肉腫融合)、TARDBP(TARDNA結合タンパク質)、VAGFA(血管内皮増殖因子A)、VAGFB(血管内皮増殖因子B)、およびVAGFC(血管内皮増殖因子C)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0513】
プリオン疾患に関連するタンパク質の例としては、SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1)、ALS2(筋萎縮性側索硬化症2)、FUS(fusedin sarcoma)、TARDBP(TARDNA結合タンパク質)、VAGFA(血管内皮成長因子A)、VAGFB(血管内皮成長因子B)、およびVAGFC(血管内皮成長因子C)、およびそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0514】
プリオン障害における神経変性病態に関連するタンパク質の例としては、例えば、A2M(アルファ-2-マクログロブリン)、AATF(アポトーシス拮抗転写因子)、ACPP(前立腺酸性ホスファターゼ)、ACTA2(大動脈平滑筋アクチンアルファ2)、ADAM22(ADAMメタロペプチダーゼドメイン)、ADORA3(アデノシンA3受容体)、またはADRA1D(アルファ-1Dアドレナリン受容体についてのアルファ-1Dアドレナリン作動性受容体)を挙げることができる。
【0515】
免疫不全症に関連するタンパク質の例としては、例えば、A2M[アルファ-2-マクログロブリン];AANAT[アリールアルキルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ];ABCA1[ATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)、メンバー1];ABCA2[ATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)、メンバー2];またはABCA3[ATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)、メンバー3]を挙げることができる。
【0516】
トリヌクレオチドリピート障害に関連するタンパク質の例としては、例えば、AR(アンドロゲン受容体)、FMR1(脆弱性X精神遅滞1)、HTT(ハンチントン)、またはDMPK(筋緊張性異栄養症タンパク質キナーゼ)、FXN(フラタキシン)、ATXN2(アタキシン2)が挙げられる。
【0517】
神経伝達障害に関連するタンパク質の例としては、例えば、SST(ソマトスタチン)、NOS1(一酸化窒素シンターゼ1(神経型))、ADRA2A(アドレナリン作動性アルファ-2A受容体)、ADRA2C(アドレナリン作動性アルファ-2C受容体)、TACR1(タキキニン受容体1)、またはHTR2c(5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体2C)が挙げられる。
【0518】
神経発達関連配列の例としては、例えば、A2BP1[アタキシン2結合タンパク質1]、AADAT[アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ]、AANAT[アリールアルキルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ]、ABAT[4-アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ]、ABCA1[ATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー1]、またはABCA13[ATP結合カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー13]が挙げられる。
【0519】
本発明の系により治療可能な好ましい病態のさらなる例は、以下のものから選択することができる:アルカルディ-グティエール症候群;アレキサンダー病;アラン-ハーンドン-ダッドリー症候群;POLG関連障害;アルファ-マンノシドーシス(IIおよびIII型);アルストレム症候群;アンジェルマン症候群;毛細血管拡張性運動失調症;神経セロイドリポフスチン症;ベータ-セラサミア;両側性視神経委縮症および(幼児型)視神経委縮症1型;網膜芽腫(両側性);カナバン病;脳・眼・顔・骨格症候群1[COFS1];脳腱黄色腫症;コルネリア・デ・ラング症候群;MAPT関連障害;遺伝性プリオン病;ドラベ症候群;早期発症型家族性アルツハイマー病;フリードライヒ運動失調症[FRDA];フリンス症候群;フコシドーシス;福山型先天性筋ジストロフィー;ガラクトシアリドーシス;ゴーシェ病;有機酸血症;血球貪食性リンパ組織球症;ハッチンソン-ギルフォード早老症候群;ムコリピドーシスII型;幼児遊離シアル酸蓄積症;PLA2G6関連神経変性症;ジャーベル・ランゲ-ニールセン症候群;接合型表皮水疱症;ハンチントン病;クラッベ病(幼児型);ミトコンドリアDNA関連リー症候群およびNARP;レッシュ-ナイハン症候群;LIS1関連滑脳症;ロウ症候群;メープルシロップ尿症;MECP2重複症候群;ATP7A関連銅輸送障害;LAMA2関連筋ジストロフィー;アリールスルファターゼA欠損症;ムコ多糖症I、IIまたはIII型;ペルオキシソーム形成異常症、ツェルウェーガー症候群スペクトラム;脳の鉄蓄積症を伴う神経変性症;酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症;ニーマン-ピック病C型;グリシン脳症;ARX関連障害;尿素サイクル異常症;COL1A1/2関連骨形成不全症;ミトコンドリアDNA欠失症候群;PLP1関連障害;ペリー症候群;フェラン-マクダーモット症候群;グリコーゲン蓄積症II型(ポンペ病)(幼児型);MAPT関連障害;MECP2関連障害;肢根型点状軟骨異形成症1型;ロバーツ症候群;サンドホフ病;シンドラー病1型;アデノシンデアミナーゼ欠損症;スミス-レムリ-オピッツ症候群;脊髄性筋萎縮症;幼児期発症型脊髄小脳失調症;ヘキソサミニダーゼA欠損症;致死性異形成1型;コラーゲンVI型関連障害;アッシャー症候群I型;先天性筋ジストロフィー;ウォルフ-ヒルシュホーン症候群;リソソーム酸リパーゼ欠損症;ならびに色素性乾皮症。
【0520】
明らかなとおり、本発明の系を使用して任意の目的ポリヌクレオチド配列をターゲティングすることができることが想定される。本発明の系を使用して有用に治療することができる病態または疾患の一部の例を上記表に含め、それらの病態に現在関連する遺伝子の例もその表に提供する。しかしながら、例示される遺伝子は排他的なものではない。
【0521】
例えば、「野生型StCas9」は、タンパク質配列がSwissProtデータベースにおいて受託番号G3ECR1として提供されるSthermophilus(S サーモフィラス)由来の野生型Cas9を指す。同様に、化膿連鎖球菌(Spyogenes)Cas9が、SwissProtに受託番号Q99ZW2として含まれる。
【0522】
CRISPR-Cas系を使用して効率的かつ費用対効果の高い遺伝子編集および操作を実施可能であることにより、産生を向上させかつ形質を強化するための単一の迅速な選択および比較およびかかるゲノムを形質転換する多重化した遺伝子操作が実現し得る。この点で、米国特許および公開公報:米国特許第6,603,061号明細書-アグロバクテリウム属媒介性植物形質転換方法(Agrobacterium-MediatedPlant TransformationMethod);米国特許第7,868,149号明細書-植物ゲノム配列およびその使用(PlantGenome Sequences and Uses Thereof)および米国特許出願公開第2009/0100536号明細書-強化された農業形質を備えるトランスジェニック植物(TransgenicPlants with Enhanced Agronomic Traits)(これらの各々の内容および開示は全て、全体として参照により組み込まれる)が参照される。本発明の実施においては、Morrellet al「作物ゲノミクス:進歩と応用(Cropgenomics:advances andapplications)」Nat RevGenet.2011 Dec 29;13(2):85-96の内容および開示もまた、本明細書に全体として参照により組み込まれる。
【実施例
【0523】
以下の実施例を、本発明の種々の実施形態を説明する目的のために挙げ、それらは本発明をいかなる様式にも限定することを意味しない。本実施例は、本明細書に記載の方法とともに、目下好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本発明の範囲に対する限定を意図するものではない。特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の趣旨に包含されるその変更および他の使用は、当業者が行う。
【0524】
実施例1:真核細胞の核中のCRISPR複合体活性
例示的なII型CRISPR系は、4つの遺伝子Cas9、Cas1、Cas2、およびCsn1のクラスター、ならびに2つの非コードRNAエレメント、tracrRNAおよび非反復配列の短いストレッチ(スペーサー、それぞれ約30bp)により間隔が空いている反復配列の特徴的アレイ(ダイレクトリピート)を含有する化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)SF370からのII型CRISPR遺伝子座である。この系において、ターゲティングされるDNA二本鎖切断(DSB)を4つの連続ステップにおいて生成する(図2A)。第1に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAがプレcrRNAのダイレクトリピートにハイブリダイズし、次いでそれが個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAにプロセシングされる。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体がCas9を、crRNAのスペーサー領域とプロトスペーサーDNAとの間のヘテロ二本鎖形成を介してプロトスペーサーおよび対応するPAMからなるDNA標的に指向する。最後に、Cas9は、PAMの上流の標的DNAの開裂を媒介してプロトスペーサー内でDSBを創成する(図2A)。この例は、このRNAプログラマブルヌクレアーゼ系を適応させて真核細胞の核中のCRISPR複合体活性を指向する例示プロセスを記載する。
【0525】
細胞培養および形質移入
ヒト胚腎臓(HEK)細胞系HEK293FT(Life Technologies)を、10%のウシ胎仔血清(HyClone)、2mMのGlutaMAX(Life Technologies)、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補給されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で37℃において5%のCOインキュベーションで維持した。マウスneuro2A(N2A)細胞系(ATCC)を、5%のウシ胎仔血清(HyClone)、2mMのGlutaMAX(LifeTechnologies)、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補給されたDMEMにより、37℃、5%のCOで維持した。
【0526】
HEK293FTまたはN2A細胞を24ウェルプレート(Corning)中に、形質移入1日前に1ウェル当たり200,000個の細胞の密度において播種した。Lipofectamine2000(LifeTechnologies)を製造業者の推奨プロトコルに従って使用して細胞を形質移入した。24ウェルプレートのそれぞれのウェルについて、合計800ngのプラスミドを使用した。
【0527】
ゲノム改変についてのSurveyorアッセイおよびシーケンシング分析
HEK293FTまたはN2A細胞を、上記プラスミドDNAにより形質移入した。形質移入後、細胞を37℃において72時間インキュベートしてからゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAは、QuickExtractDNA抽出キット(Epicentre)を製造業者のプロトコルに従って使用して抽出した。手短に述べると、細胞をQuickExtract溶液中で再懸濁させ、65℃において15分間および98℃において10分間インキュベートした。抽出されたゲノムDNAを直ちに処理または-20℃において貯蔵した。
【0528】
それぞれの遺伝子についてのCRISPR標的部位周囲のゲノム領域をPCR増幅し、QiaQuickSpin Column(Qiagen)を製造業者のプロトコルに従って使用して産物を精製した。合計400ngの精製PCR産物を2μlの10×TaqポリメラーゼPCR緩衝液(Enzymatics)と混合し、超純水で20μlの最終容量とし、リアニーリングプロセスに供してヘテロ二本鎖形成を可能とした:95℃において10分間、-2℃/秒における傾斜で95℃から85℃、-0.25℃/秒における85℃から25℃、および25℃において1分間維持。リアニーリング後、産物をSurveyorヌクレアーゼおよびSurveyorエンハンサーS(Transgenomics)により製造業者の推奨プロトコルに従って処理し、4~20%のNovexTBEポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分析した。ゲルをSYBR Gold DNA染色(Life Technologies)により30分間染色し、Gel Docゲルイメージングシステム(Bio-rad)によりイメージングした。定量は、開裂したDNAの率の尺度としての相対バンド強度に基づくものであった。図7は、このSurveyorアッセイの模式的説明を提供する。
【0529】
相同組換えの検出のための制限断片長多型アッセイ
【0530】
HEK293FTおよびN2A細胞を、プラスミドDNAにより形質移入し、37℃において72時間インキュベートしてから上記のとおりゲノムDNAを抽出した。相同組換え(HR)テンプレートのホモロジーアーム外側のプライマーを使用して標的ゲノム領域をPCR増幅した。PCR産物を1%のアガロースゲル上で分離し、MinEluteGelExtraction Kit(Qiagen)により抽出した。精製産物をHindIII(Fermentas)により消化し、6%のNovexTBEポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分析した。
【0531】
RNA二次構造予測および分析
RNA二次構造予測は、Institute for Theoretical Chemistry at the University of Viennaにおいて開発されたオンラインウェブサーバーRNAfoldを使用し、セントロイド構造予測アルゴリズムを使用して実施した(例えば、A.R.Gruberet al.,2008,Cell106(1):23-24;およびPA Carr and GMChurch,2009,Nature Biotechnology 27(12):1151-62参照)。
【0532】
RNA精製
HEK293FT細胞を上記のとおり維持および形質移入した。細胞をトリプシン処理により回収し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄した。トータル細胞RNAをTRI試薬(Sigma)により製造業者のプロトコルに従って抽出した。抽出されたトータルRNAをNaonodrop(ThermoScientific)を使用して定量し、同一濃度に正規化した。
【0533】
哺乳動物細胞中のcrRNAおよびtracrRNA発現のノザンブロット分析
RNAを等容量の2×ローディング緩衝液(Ambion)と混合し、95℃に5分間加熱し、氷上で1分間冷蔵し、次いで8%の変性ポリアクリルアミドゲル(SequaGel,NationalDiagnostics)上に、少なくとも30分間のゲルのプレラン後にロードした。試料を40W限界において1.5時間電気泳動した。その後、RNAをHybondN+メンブレン(GE Healthcare)に300mAにおいてセミドライ転写装置(Bio-rad)中で室温において1.5時間転写した。StratageneUV CrosslinkerのStratalinker(Stratagene)上のオートクロスリンクボタンを使用してRNAをメンブレンに架橋させた。メンブレンをULTRAhyb-オリゴハイブリダイゼーション緩衝液(Ambion)中で回転させながら42℃において30分間プレハイブリダイズさせ、次いでプローブを添加し、一晩ハイブリダイズさせた。プローブはIDTに発注し、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(NewEngland Biolabs)を用いて[ガンマ-32P]ATP(PerkinElmer)により標識した。メンブレンを予備加温(42℃)された2×SSC、0.5%のSDSにより1分間1回洗浄し、次いで42℃において30分間2回洗浄した。メンブレンを蛍光スクリーンに室温において1時間または一晩曝露させ、次いでphosphorimager(Typhoon)によりスキャンした。
【0534】
細菌CRISPR系構築および評価
tracrRNA、Cas9、およびリーダーを含むCRISPR遺伝子座エレメントを、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)SF370ゲノムDNAから、ギブソン・アセンブリ(Gibson Assembly)のためのフランキングホモロジーアームを用いてPCR増幅した。2つのBsaI IIS型部位を2つのダイレクトリピート間に導入してスペーサーの容易な挿入を促進した(図8)。Gibson Assembly Master Mix(NEB)を使用してPCR産物をEcoRV消化pACYC184中にtetプロモーターの下流でクローニングした。Csn2の最後の50bpは除き、他の内因性CRISPR系エレメントは除外した。相補的オーバーハングを有するスペーサーをコードするオリゴ(IntegratedDNA Technology)をBsaI消化ベクターpDC000(NEB)中にクローニングし、次いでT7リガーゼ(Enzymatics)によりライゲートしてpCRISPRプラスミドを生成した。哺乳類細胞におけるPAM発現を有するスペーサーを含有するチャレンジプラスミド(発現構築物は、図6Bに示すSurveyorアッセイの結果により決定されるとおりの機能と共に図6Aに示す)。転写開始部位を+1として標識し、転写ターミネーターおよびノザンブロットによりプロ―ビングされる配列も示す。プロセシングされたtracrRNAの発現もノザンブロットにより確認した。図6Cは、長鎖または短鎖tracrRNA、ならびにSpCas9およびDR-EMX1(1)-DRを担持するU6発現構築物により形質移入された293FT細胞から抽出されたトータルRNAのノザンブロット分析の結果を示す。左および右側のパネルは、それぞれSpRNアーゼIIIを用いず、または用いて形質移入された293FT細胞からのものである。U6は、ヒトU6snRNAをターゲティングするプローブによりブロットされたローディング対照を示す。短鎖tracrRNA発現構築物の形質移入は、十分なレベルのプロセシング形態のtracrRNA(約75bp)をもたらした。極めて少量の長鎖tracrRNAがノザンブロット上で検出される。
【0535】
正確な転写開始を促進するため、RNAポリメラーゼIIIベースU6プロモーターを選択してtracrRNAの発現をドライブした(図2C)。同様に、U6プロモーターベース構築物を開発して2つのダイレクトリピート(DR、用語「tracrメイト配列」にも包含される;図2C)によりフランキングされている単一スペーサーからなるプレcrRNAアレイを発現させた。最初のスペーサーは、大脳皮質の発達におけるキー遺伝子であるヒトEMX1遺伝子座中の33塩基対(bp)標的部位(30bpのプロトスペーサーと、Cas9のNGG認識モチーフを満たす3bpのCRISPRモチーフ(PAM)配列)をターゲティングするように設計した(図2C)。
【0536】
哺乳動物細胞中のCRISPR系(SpCas9、SpRNアーゼIII、tracrRNA、およびプレcrRNA)の異種発現がターゲティングされる哺乳動物染色体の開裂を達成し得るか否かを試験するため、HEK293FT細胞をCRISPR成分の組合せにより形質移入した。哺乳動物核中のDSBは部分的には、インデルの形成をもたらす非相同末端結合(NHEJ)経路により修復されるため、Surveyorアッセイを使用して標的EMX1遺伝子座における潜在的な開裂活性を検出した(図7)(例えば、Guschinet al.,2010,MethodsMol Biol 649:247参照)。4つ全てのCRISPR成分の同時形質移入は、プロトスペーサーの最大5.0%の開裂を誘導し得た(図2D参照)。SpRNアーゼIIIを除く全てのCRISPR成分の同時形質移入も、プロトスペーサーの最大4.7%のインデルを誘導し、このことはcrRNA成熟を支援し得る内因性哺乳動物RNアーゼ、例えば、関連DicerおよびDrosha酵素などが存在し得ることを示唆した。残り3つの成分のいずれかを除去すると、CRISPR系のゲノム開裂活性は停止する(図2D)。標的遺伝子座を含有するアンプリコンのサンガーシーケンシングにより開裂活性を確認し;43個のシーケンシングされたクローンのうち5つの突然変異アレル(11.6%)が見出された。種々のガイド配列を使用する同様の実験は、29%と高いインデル割合を生じさせた(図3~6、10、および11参照)。これらの結果は、哺乳動物細胞中の効率的なCRISPR媒介ゲノム改変のための3成分系を定義する。開裂効率を最適化するため、本出願人らは、tracrRNAの異なるアイソフォームが開裂効率に影響するか否かも試験し、この例示的系において、短鎖(89bp)転写物形態のみがヒトEMX1ゲノム遺伝子座の開裂を媒介し得ることを見出した(図6B)。
【0537】
図12は、哺乳動物細胞中のcrRNAプロセシングの追加のノザンブロット分析を提供する。図12Aは、2つのダイレクトリピートによりフランキングされている単一スペーサー(DR-EMX1(1)-DR)についての発現ベクターを示す模式図を説明する。ヒトEMX1遺伝子座プロトスペーサー1をターゲティングする30bpのスペーサー(図6参照)およびダイレクトリピート配列を、図12Aの下方の配列中に示す。線は、逆相補配列を使用してEMX1(1)crRNA検出のためのノザンブロットプローブを生成する領域を示す。図12Bは、DR-EMX1(1)-DRを担持するU6発現構築物により形質移入された293FT細胞から抽出されたトータルRNAのノザンブロット分析を示す。左および右側のパネルは、それぞれSpRNアーゼIIIを用いず、または用いて形質移入された293FT細胞からのものである。DR-EMX1(1)-DRは、SpCas9が存在する場合のみ成熟crRNAにプロセシングされ、短鎖tracrRNAはSpRNアーゼIIIの存在に依存的でなかった。形質移入293FTトータルRNAから検出された成熟crRNAは、約33bpであり、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からの39~42bpの成熟crRNAよりも短かった。これらの結果は、CRISPR系を真核細胞中に移植し、リプログラミングして内因性哺乳動物標的ポリヌクレオチドの開裂を促進することができることを実証する。
【0538】
図2は、本実施例に記載の細菌CRISPR系を説明する。図2Aは、化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)SF370からのCRISPR遺伝子座1およびこの系によるCRISPR媒介DNA開裂の提案される機序を示す模式図を説明する。ダイレクトリピート-スペーサーアレイからプロセシングされた成熟crRNAは、Cas9を、相補的プロトスペーサーおよびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)からなるゲノム標的に指向する。標的-スペーサー塩基対形成時、Cas9は標的DNA中の二本鎖切断を媒介する。図2Bは、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9(SpCas9)およびRNアーゼIII(SpRNアーゼIII)の、哺乳動物核中への輸送を可能とするための核局在化シグナル(NLS)によるエンジニアリングを説明する。図2Cは、構成的EF1aプロモーターによりドライブされるSpCas9およびSpRNアーゼIIIならびに正確な転写開始および終結を促進するためのRNAPol3プロモーターU6によりドライブされるtracrRNAおよびプレcrRNAアレイ(DR-スペーサー-DR)の哺乳動物発現を説明する。十分なPAM配列を有するヒトEMX1遺伝子座からのプロトスペーサーを、プレcrRNAアレイ中のスペーサーとして使用する。図2Dは、SpCas9媒介少数挿入および欠失についてのsurveyorヌクレアーゼアッセイを説明する。SpCas9を、SpRNアーゼIII、tracrRNA、およびEMX1標的スペーサーを担持するプレcrRNAアレイを用いてまたは用いずに発現させた。図2Eは、標的遺伝子座とEMX1ターゲティングcrRNAとの間の塩基対形成の模式的表示、ならびにSpCas9開裂部位に隣接する微小欠失を示す例示的クロマトグラムを説明する。図2Fは、種々の微小挿入および欠失を示す43個のクローンアンプリコンのシーケンシング分析から同定された突然変異アレルを説明する。点線は、欠失塩基を示し、アラインされず、またはミスマッチの塩基は挿入または突然変異を示す。スケールバー=10μm。
【0539】
3成分系をさらに簡略化するため、ステム-ループを介して成熟crRNA(ガイド配列を含む)を部分tracrRNAに融合させて天然crRNA:tracrRNA二本鎖を模倣するキメラcrRNA-tracrRNAハイブリッド設計を適応させた。同時送達効率を増加させるため、形質移入細胞中のキメラRNAおよびSpCas9の同時発現をドライブするバイシストロニック発現ベクターを創成した。並行して、バイシストロニックベクターを使用してプレcrRNA(DR-ガイド配列-DR)をSpCas9とともに発現させてcrRNAへのプロセシングを誘導し、tracrRNAを別個に発現させた(図11Bの上図および下図を比較)。図8は、hSpCas9を有するプレcrRNAアレイ(図8A)またはキメラcrRNA(図8B中のガイド配列挿入部位の下流およびEF1αプロモーターの上流の短い線により表わされる)のためのバイシストロニック発現ベクターの模式的説明を提供し、種々のエレメントの局在およびガイド配列挿入の場所を示す。図8B中のガイド配列挿入部位の局在周囲の拡大された配列は、部分DR配列(GTTTAGAGCTA)および部分tracrRNA配列(TAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTTTT)も示す。ガイド配列は、アニールされたオリゴヌクレオチドを使用してBbsI部位間に挿入することができる。オリゴヌクレオチドについての配列設計を図8の模式的説明の下方に示し、適切なライゲーションアダプターを示す。WPREは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントを表す。キメラRNA媒介開裂の効率を、上記の同一のEMX1遺伝子座をターゲティングすることにより試験した。Surveyorアッセイおよびアンプリコンのサンガーシーケンシングの両方を使用して、本出願人らは、キメラRNA設計がヒトEMX1遺伝子座の開裂を約4.7%の改変比率で促進することを確認した(図3)。
【0540】
真核細胞中のCRISPR媒介開裂の一般化可能性を、ヒトEMX1およびPVALB、ならびにマウスTh遺伝子座中の複数部位をターゲティングするキメラRNAを設計することによりヒトおよびマウス細胞の両方において追加のゲノム遺伝子座をターゲティングすることにより試験した。図13は、いくつかの追加のターゲティングされるヒトPVALB(図13A)およびマウスTh(図13B)遺伝子座中のプロトスペーサーの選択を説明する。遺伝子座およびそれぞれの最後のエキソン内の3つのプロトスペーサーの局在の模式図を提供する。下線付き配列は、30bpのプロトスペーサー配列およびPAM配列に対応する3’末端における3bpを含む。センスおよびアンチセンス鎖上のプロトスペーサーを、それぞれDNA配列の上方および下方に示す。ヒトPVALBおよびマウスTh遺伝子座についてそれぞれ6.3%および0.75%の改変比率が達成され、このことは複数の生物にわたる異なる遺伝子座の改変におけるCRISPR系の幅広い適用可能性を実証した(図5)。開裂はキメラ構築物を使用してそれぞれの遺伝子座について3つのスペーサーのうち1つについてのみ検出された一方、同時発現されるプレcrRNA配置を使用した場合、全ての標的配列が27%に達するインデル生成の効率で開裂された(図6および13)。
【0541】
図11は、SpCas9をリプログラミングして哺乳動物細胞中の複数のゲノム遺伝子座をターゲティングすることができることのさらなる説明を提供する。図11Aは、下線付き配列により示される5つのプロトスペーサーの局在を示すヒトEMX1遺伝子座の模式図を提供する。図11Bは、プレcrRNAおよびtracrRNAのダイレクトリピート領域間のハイブリダイゼーションを示すプレcrRNA/trcrRNA複合体の模式図(上図)および20bpのガイド配列、ならびにヘアピン構造にハイブリダイズしている部分ダイレクトリピートおよびtracrRNA配列からなるtracrメイトおよびtracr配列を含むキメラRNA設計の模式図(下図)を提供する。ヒトEMX1遺伝子座中の5つのプロトスペーサーにおけるCas9媒介開裂の効力を比較するSurveyorアッセイの結果を、図11Cに説明する。プロセシングされたプレcrRNA/tracrRNA複合体(crRNA)またはキメラRNA(chiRNA)のいずれかを使用してそれぞれのプロトスペーサーをターゲティングする。
【0542】
RNAの二次構造は分子間相互作用に重要であり得るため、最小自由エネルギーおよびボルツマン加重構造アンサンブルに基づく構造予測アルゴリズムを使用してゲノムターゲティング実験に使用される全てのガイド配列の推定二次構造を比較した(例えば、Gruberet al.,2008,NucleicAcids Research,36:W70参照)。分析により、ほとんどの場合、キメラcrRNAコンテクスト中の有効なガイド配列は二次構造モチーフを実質的に含まない一方、無効なガイド配列は標的プロトスペーサーDNAとの塩基対形成を妨害し得る内部二次構造を形成する可能性がより高いことが明らかになった。したがって、スペーサー二次構造の変動性は、キメラcrRNAを使用する場合にCRISPR媒介干渉の効率に影響し得ることが考えられる。
【0543】
SpCas9のためのさらなるベクター設計を図22に示し、それはガイドオリゴのための挿入部位に結合しているU6プロモーター、およびSpCas9コード配列に結合しているCbhプロモーターを取り込む単一発現ベクターを説明する。図22bに示されるベクターは、H1プロモーターに結合しているtracrRNAコード配列を含む。
【0544】
細菌アッセイでは、全てのスペーサーが効率的なCRISPR干渉を促進した(図3C)。これらの結果は、哺乳類細胞におけるCRISPR活性の効率に影響を与えるさらなる因子が存在し得ることを示唆している。
【0545】
CRISPR媒介開裂の特異性を調査するため、哺乳動物ゲノム中のプロトスペーサー開裂に対するガイド配列中の単一ヌクレオチド突然変異の効果を、単一点突然変異を有する一連のEMX1ターゲティングキメラcrRNAを使用して分析した(図3A)。図3Bは、異なる突然変異体キメラRNAと対形成した場合のCas9の開裂効率を比較するSurveyorヌクレアーゼアッセイの結果を説明する。PAMの5’側の最大12bpの単一塩基ミスマッチは、SpCas9によるゲノム開裂を実質的に停止させた一方、さらなる上流位置に突然変異を有するスペーサーは元のプロトスペーサー標的に対する活性を保持した(図3B)。PAMの他、SpCas9は、スペーサーの最後の12bp内の単一塩基特異性を有する。さらに、CRISPRは、同一EMX1プロトスペーサーをターゲティングするTALEヌクレアーゼ(TALEN)のペアと同程度に効率的にゲノム開裂を媒介し得る。図3Cは、EMX1をターゲティングするTALENの設計を示す模式図を提供し、図3Dは、TALENおよびCas9の効率を比較するSurveyorゲルを示す(n=3)。
【0546】
エラープローンNHEJ機序を通した哺乳動物細胞中のCRISPR媒介遺伝子編集を達成するための成分のセットを樹立したため、相同組換え(HR)、ゲノム中の正確な編集を作製するための高フィデリティ遺伝子修復経路を刺激するCRISPRの能力を試験した。野生型SpCas9は、NHEJおよびHRの両方を通して修復され得る部位特異的DSBを媒介し得る。さらに、SpCas9のRuvCI触媒ドメイン中のアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)をエンジニアリングしてヌクレアーゼをニッカーゼに変換し(SpCas9n;図4Aに説明)(例えば、Sapranausakset al.,2011,NucleicAcids Research,39:9275;Gasiunaset al.,2012,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109:E2579参照)、その結果、ニック形成されたゲノムDNAが高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)を受ける。Surveyorアッセイにより、SpCas9nはEMX1プロトスペーサー標的におけるインデルを生成しないことを確認した。図4Bに説明されるとおり、EMX1ターゲティングキメラcrRNAとSpCas9との同時発現は標的部位中のインデルを生じさせた一方、SpCas9nとの同時発現は生じさせなかった(n=3)。さらに、327個のアンプリコンのシーケンシングは、SpCas9nにより誘導されるいかなるインデルも検出しなかった。同一の遺伝子座を選択し、HEK293FT細胞をEMX1をターゲティングするキメラRNA、hSpCas9またはhSpCas9n、およびプロトスペーサー付近に制限部位のペア(HindIIIおよびNheI)を導入するためのHRテンプレートにより同時形質移入することによりCRISPR媒介HRを試験した。図4Cは、HR方針の模式的説明を、組換え場所の相対局在およびプライマーアニーリング配列(矢印)とともに提供する。SpCas9およびSpCas9nは、実際、EMX1遺伝子中へのHRテンプレートのインテグレーションを触媒した。標的領域のPCR増幅とそれに続くHindIIIによる制限消化により、予測断片サイズ(図4Dに示される制限断片長多型ゲル分析中の矢印)に対応する開裂産物が明らかになり、SpCas9およびSpCas9nは類似レベルのHR効率を媒介した。本出願人らは、ゲノムアンプリコンのサンガーシーケンシングを使用してHRをさらに確認した(図4E)。これらの結果は、哺乳動物ゲノム中のターゲティングされる遺伝子挿入を促進するためのCRISPRの有用性を実証する。野生型SpCas9の14bp(スペーサーからの12bpおよびPAMからの2bp)の標的特異性を考慮すると、ニッカーゼの利用可能性は、一本鎖分解物がエラープローンNHEJ経路のための基質でないため、オフターゲット改変の可能性を顕著に低減させ得る。
【0547】
アレイスペーサーを有するCRISPR遺伝子座の天然アーキテクチャーを模倣する発現構築物(図2A)を構築して多重化配列ターゲティングの可能性を試験した。EMX1およびPVALBターゲティングスペーサーのペアをコードする単一のCRISPRアレイを使用して、両方の遺伝子座における効率的な開裂が検出された(図4F、crRNAアレイの模式的設計および開裂の効率的な媒介を示すSurveyorブロットの両方を示す)。119bpにより間隔が空いているEMX1内の2つの標的に対するスペーサーを使用する同時DSBを通したより大きいゲノム領域のターゲティングされる欠失も試験し、1.6%の欠失効力(182個のアンプリコンのうち3つ;図4G)が検出された。このことは、CRISPR系が単一ゲノム内の多重化編集を媒介し得ることを実証する。
【0548】
実施例2
CRISPR系改変および代替例
配列特異的DNA開裂をプログラミングするためにRNAを使用する技能は、種々の研究および産業用途のための新たなクラスのゲノムエンジニアリングツールを定義する。CRISPR系のいくつかの態様は、CRISPRターゲティングの効率および多用途性を増加させるようにさらに改善することができる。最適なCas9活性は、哺乳動物核中に存在するものよりも高いレベルにおけるフリーMg2+の利用可能性に依存し得(例えば、Jineket al.,2012,Science,337:816参照)、プロトスペーサーのすぐ下流のNGGモチーフについての優先性は、ヒトゲノム中で平均12bpごとでターゲティング能を制限する(図9、ヒト染色体配列のプラスおよびマイナス鎖の両方を評価)。これらの拘束の一部は、微生物メタゲノムにわたるCRISPR遺伝子座の多様性を利用することにより克服することができる(例えば、Makarovaet al.,2011,NatRev Microbiol,9:467参照)。他のCRISPR遺伝子座を、実施例1に記載のものと同様の方法により哺乳動物細胞環境中に移植することができる。例えば、図10は、CRISPR媒介ゲノム編集を達成するための哺乳動物細胞中の異種発現のためのストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcusthermophilus)LMD-9のCRISPR1からのII型CRISPR系の適応を説明する。図10Aは、S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD-9のCRISPR1の模式的説明を提供する。図10Bは、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR系のための発現系の設計を説明する。ヒトコドン最適化hStCas9を、構成的EF1αプロモーターを使用して発現させる。tracrRNAおよびcrRNAの成熟バージョンを、U6プロモーターを使用して発現させて正確な転写開始を促進する。成熟crRNAおよびtracrRNAからの配列を説明する。crRNA配列中の小文字「a」により示される単一塩基を使用してRNApolIII転写ターミネーターとして機能するポリU配列を除去する。図10Cは、ヒトEMX1遺伝子座ターゲティングするガイド配列を示す模式図を提供する。図10Dは、Surveyorアッセイを使用する標的遺伝子座中のhStCas9媒介開裂の結果を示す。RNAガイドスペーサー1および2は、それぞれ14%および6.4%を誘導した。これらの2つのプロトスペーサー部位における生物学的複製物にわたる開裂活性の統計分析も図5に提供する。図14は、ヒトEMX1遺伝子座中のS.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR系の追加のプロトスペーサーおよび対応するPAM配列標的の模式図を提供する。2つのプロトスペーサー配列を強調し、NNAGAAWモチーフを満たすそれらの対応するPAM配列を対応する強調配列に対して3’側で下線を付けることにより示す。両方のプロトスペーサーは、アンチセンス鎖をターゲティングする。
【0549】
実施例3
試料標的配列選択アルゴリズム
規定のCRISPR酵素についての所望のガイド配列長およびCRISPRモチーフ配列(PAM)に基づきインプットDNA配列の両方の鎖上の候補CRISPR標的配列を同定するためのソフトウェアプログラムを設計する。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からのCas9についての標的部位は、PAM配列NGGを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’-N-NGG-3’を探索することにより同定することができる。同様に、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR1のCas9についての標的部位は、PAM配列NNAGAAWを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’-N-NNAGAAW-3’を探索することにより同定することができる。同様に、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR3のCas9についての標的部位は、PAM配列NGGNGを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’-N-NGGNG-3’を探索することにより同定することができる。N中の値「x」は、プログラムにより固定し、または使用者により規定することができ、例えば、20である。
【0550】
DNA標的部位のゲノム中の複数の発生は、非特異的ゲノム編集をもたらし得るため、全ての潜在的な部位を同定した後、プログラムは配列が関連参照ゲノム中で出現する回数に基づき配列をフィルタリング除去する。配列特異性が「シード」配列、例えば、PAM配列自体を含め、PAM配列から5’側の11~12bpにより決定されるそれらのCRISPR酵素について、フィルタリングステップはシード配列に基づき得る。したがって、追加のゲノム遺伝子座における編集を回避するため、結果を関連ゲノム中のシード:PAM配列の発生数に基づきフィルタリングする。使用者に、シード配列の長さを選択させることができる。使用者に、フィルタ通過の目的のためにゲノム中のシード:PAM配列の発生数を規定させることもできる。デフォルトは、ユニーク配列をスクリーニングすることである。フィルトレーションレベルは、シード配列の長さおよびゲノム中の配列の発生数の両方を変えることにより変更する。プログラムは、さらにまたは代替的に、同定された標的配列の逆相補鎖を提供することにより、報告された標的配列に相補的なガイド配列の配列を提供し得る。
【0551】
配列選択を最適化する方法およびアルゴリズムのさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/064,798号明細書(代理人整理番号44790.11.2022;Broad参照番号BI-2012/084)に見出すことができる。
【0552】
実施例4
複数のキメラcrRNA-tracrRNAハイブリッドの評価
本実施例は、異なる長さの野生型tracrRNA配列を取り込むtracr配列を有するキメラRNA(chiRNA;ガイド配列、tracrメイト配列、およびtracr配列を単一転写物中で含む)について得られた結果を記載する。図16aは、キメラRNAおよびCas9のためのバイシストロニック発現ベクターの模式図を説明する。Cas9はCBhプロモーターによりドライブされ、キメラRNAはU6プロモーターによりドライブされる。キメラガイドRNAは、からなる。示される種々の位置においてトランケートされたtracr配列(下方の鎖の最初の「U」から転写物の末端に及ぶ)に結合している20bpのガイド配列(N)からなる。ガイドおよびtracr配列は、tracrメイト配列GUUUUAGAGCUAと、それに続くループ配列GAAAにより離隔している。ヒト遺伝子座EMX1およびPVALB遺伝子座におけるCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイの結果を、それぞれ図16bおよび16cに説明する。矢印は、予測SURVEYOR断片を示す。chiRNAをそれらの「+n」表記により示し、crRNAは、ガイドおよびtracr配列が別個の転写物として発現されるハイブリッドRNAを指す。トリプリケートで実施されたこれらの結果の定量を、図17aおよび17bにヒストグラムにより示し、それぞれ図16bおよび16cに対応する(「N.D.」は、インデルが検出されなかったことを示す)。プロトスペーサーIDおよびそれらの対応するゲノム標的、プロトスペーサー配列、PAM配列、および鎖局在を表Dに提供する。ガイド配列は、ハイブリッド系における別個の転写物の場合、プロトスペーサー配列全体に相補的であるように、またはキメラRNAの場合、下線部にのみ相補的であるように設計した。
【0553】
【表31】
【0554】
ガイド配列を最適化するためのさらなる詳細は、米国仮特許出願第61/836,127号明細書(代理人整理番号44790.08.2022;Broad参照番号BI-2013/004G)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照することができる。
【0555】
最初に、ヒトHEK293FT細胞中のEMX1遺伝子座内の3つの部位をターゲティングした。それぞれのchiRNAのゲノム改変効率は、DNA二本鎖切断(DSB)および非相同末端結合(NHEJ)DNA損傷修復経路によるその後続の修復から生じる突然変異を検出するSURVEYORヌクレアーゼアッセイを使用して評価した。chiRNA(+n)と表記される構築物は、野生型tracrRNAの最大+n個のヌクレオチドがキメラRNA構築物中に含まれることを示し、nについては48、54、67、および85の値が使用される。野生型tracrRNAのより長い断片を含有するキメラRNA(chiRNA(+67)およびchiRNA(+85))は、3つ全てのEMX1標的部位におけるDNA開裂を媒介し、特にchiRNA(+85)は、ガイドおよびtracr配列を別個の転写物中で発現する対応するcrRNA/tracrRNAハイブリッドよりも顕著に高いレベルのDNA開裂を実証した(図16bおよび17a)。ハイブリッド系(別個の転写物として発現されるガイド配列およびtracr配列)を検出可能な開裂を生じなかったPVALB遺伝子座中の2つの部位も、chiRNAを使用してターゲティングした。chiRNA(+67)およびchiRNA(+85)は、2つのPVALBプロトスペーサーにおける顕著な開裂を媒介し得た(図16cおよび17b)。EMX1およびPVALB遺伝子座中の5つ全ての標的について、tracr配列長さの増加に伴うゲノム改変効率の一貫した増加が観察された。いかなる理論によっても拘束されるものではないが、tracrRNAの3’末端により形成される二次構造は、CRISPR複合体形成の比率の向上における役割を担い得る。
【0556】
実施例5:Cas9多様性
CRISPR-Cas系は、細菌から古細菌にわたる多様な種により用いられる侵入外因性DNAに対する適応免疫機序である。II型CRISPR-Cas9系は、CRISPR遺伝子座中への外来DNAの「獲得」を担うタンパク質をコードする遺伝子のセット、およびDNA開裂機序の「実行」をコードする遺伝子のセットからなり;これらは、DNAヌクレアーゼ(Cas9)、非コードトランス活性化crRNA(tracrRNA)、およびダイレクトリピートによりフランキングされている外来DNA由来スペーサーのアレイ(crRNA)を含む。Cas9による成熟時、tracRNAおよびcrRNA二本鎖は、Cas9ヌクレアーゼをスペーサーガイド配列により規定される標的DNA配列にガイドし、開裂に要求され、それぞれのCRISPR-Cas系に特異的な標的DNA中の短鎖配列モチーフ付近のDNAの二本鎖切断を媒介する。II型CRISPR-Cas系は、細菌界全体にわたり見出されており、Cas9タンパク質配列およびサイズ、tracrRNAおよびcrRNAダイレクトリピート配列、それらのエレメントのゲノム構成、および標的開裂のためのモチーフ要件は高度に多様である。ある種は、複数の区別されるCRISPR-Cas系を有し得る。
【0557】
本出願人らは、公知のCas9との配列相同性および公知のサブドメイン、例として、HNHエンドヌクレアーゼドメインおよびRuvCエンドヌクレアーゼドメイン[EugeneKooninおよびKira Makarovaからの情報]とオルソロガスな構造に基づき同定された細菌種から207個の推定Cas9を評価した。このセットのタンパク質配列保存に基づく系統発生分析により、大型Cas9(約1400アミノ酸)の3つの群および小型Cas9(約1100アミノ酸)の2つの群を含むCas9の5つのファミリーが明らかになった(図19および20A~F)。
【0558】
Cas9およびニッカーゼまたはDNA結合タンパク質に転換するCas9酵素の突然変異および変化した機能を有するそれの使用のさらなる詳細は、米国仮特許出願第61/836,101号明細書および同第61/835,936号明細書(それぞれ代理人整理番号44790.09.2022および4790.07.2022およびBroad参照番号BI-2013/004EおよびBI-2013/004F)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照することができる。
【0559】
実施例6:Cas9オルソログ
本出願人らは、関連性のあるPAM配列および対応するキメラガイドRNAを同定するためCas9オルソログを分析した。拡張したPAMセットを有することにより、全ゲノムにわたるより幅広いターゲティングが提供され、またユニークな標的部位の数が大幅に増加し、かつゲノムにおいて高い特異性レベルで新規Cas9を同定できる可能性がもたらされる。
【0560】
Cas9オルソログの特異性は、各Cas9がガイドRNAとそのDNA標的との間のミスマッチを許容する能力を試験することにより評価し得る。例えば、ガイドRNAにおける突然変異が開裂効率に及ぼす効果を試験することにより、SpCas9の特異性が特徴付けられている。ガイド配列と標的DNAとの間の単一または複数のミスマッチを含むガイドRNAのライブラリが作製された。これらの知見に基づき、以下の指針に基づきSpCas9の標的部位を選択することができる:
【0561】
特定の遺伝子の編集に対するSpCas9の特異性を最大化するため、目的の遺伝子座内の標的部位は、潜在的な「オフターゲット」ゲノム配列が以下の4つの制約条件に従うように選択しなければならない:まず第一に、それらの配列の後に5’-NGGまたはNAG配列のいずれかを有するPAMが続いてはならない。第二に、標的配列とのそれらの配列の大域的な配列類似性が最小化されなければならない。第三に、最大数のミスマッチがPAM-オフターゲット部位の近位領域内になければならない。最後に、最大数のミスマッチが連続しているかまたは離れていても4塩基未満でなければならない。
【0562】
同様の方法を用いて他のCas9オルソログの特異性を評価し、標的種のゲノム内にある特定の標的部位を選択するための基準を確立することができる。既述のとおり、このセットのタンパク質配列保存に基づく系統発生解析から、3群の大型Cas9(約1400アミノ酸)および2群の小型Cas9(約1100アミノ酸)を含む5つのCas9ファミリーが明らかとなった(図19および図20A図20Fを参照)。Casオルソログに関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/836,101号明細書および同第61/835,936号明細書(それぞれ代理人整理番号44790.09.2022および4790.07.2022およびBroad参照番号BI-2013/004EおよびBI-2013/004F)を参照することができる。
【0563】
実施例7:クローニングおよび送達を単純化する方法論的改良。
プラスミド上のU6プロモーターおよびガイドRNAをコードするよりむしろ、本出願人らはU6プロモーターをDNAオリゴと共に増幅してガイドRNAを付加した。得られたPCR産物を細胞に形質移入してガイドRNAの発現をドライブすることができる。
【0564】
U6プロモーター::ヒトEmx1遺伝子座を標的にするガイドRNAからなるPCR産物の生成を可能にする例示的プライマー対:
フォワードプライマー:
【化2】
リバースプライマー(ガイドRNA(下線)を有する):
【化3】
【0565】
実施例8:活性を向上させる方法論的改良:
真核細胞でガイドRNAを発現させるためにpol3プロモーター、詳細にはRNAポリメラーゼIII(例えばU6またはH1プロモーター)を使用するよりむしろ、本出願人らは真核細胞でT7ポリメラーゼを発現させることにより、T7プロモーターを使用してガイドRNAの発現をドライブする。
【0566】
この系の一例は、3つのDNA断片の導入を伴い得る:
1.Cas9の発現ベクター
2.T7ポリメラーゼの発現ベクター
3.T7プロモーターと融合したガイドRNAを含む発現ベクター
【0567】
実施例9:Cas9の毒性を低下させる方法論的改良:mRNA形態のCas9の送達。
Cas9をmRNAの形態で送達することにより、細胞でのCas9の一過性発現が可能となり、毒性が低下する。例えば、ヒト化SpCas9は、以下のプライマー対を使用して増幅し得る:
フォワードプライマー(インビトロ転写用にT7プロモーターを付加するため):
【化4】
リバースプライマー(ポリAテールを付加するため):
【化5】
【0568】
本出願人らは、真核細胞におけるガイドRNA発現をドライブするようにRNAまたはDNAカセットの形態のいずれかのガイドRNAと共にCas9mRNAを細胞に形質移入する。
【0569】
実施例10:Cas9の毒性を低下させる方法論的改良:誘導性プロモーターの使用
本出願人らは、ゲノム改変を実行するのに必要となった場合に限りCas9発現を一過性にオンにする。誘導性システムの例には、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Tet-OnまたはTet-Off)、小分子2ハイブリッド転写活性化システム(FKBP、ABA等)、または光誘導性システム(フィトクロム、LOVドメイン、またはクリプトクロム)が含まれる。
【0570】
実施例11:インビボ適用のためのCas9系の改良
本出願人らは、低分子量のCas9に対してメタゲノム検索を行った。多くのCas9ホモログはかなり大きい。例えばSpCas9は約1368アミノ酸長であり、これは大き過ぎるため送達用のウイルスベクターへのパッケージングが容易でない。GenBankに寄託されている配列からCas9ホモログの長さ分布を表すグラフが作成される(図23)。配列の中には誤って注釈されているものもあり、従って各長さについての正確な度数は必ずしも正しいとは限らない。それでもなお、これによりCas9タンパク質の分布の概観が得られ、より短いCas9ホモログの存在が示唆される。
【0571】
本出願人らは、コンピュータ解析により、細菌株カンピロバクター属(Campylobacter)に1000アミノ酸未満のCas9タンパク質が2つあることを見出した。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacterjejuni)由来の1つのCas9の配列を以下に提供する。この長さでは、CjCas9は、初代細胞へのおよび動物モデルにおけるインビボでのロバストな送達のためAAV、レンチウイルス、アデノウイルス、および他のウイルスベクターに容易にパッケージングすることができる。本発明の好ましい実施形態では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のCas9タンパク質が使用される。
【0572】
>カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)Cas9(CjCas9)
【化6】
【0573】
このCjCas9に対する推定tracrRNAエレメントは以下である:
【化7】
【0574】
ダイレクトリピート配列は以下である:
【化8】
【0575】
CjCas9に対するキメラガイドRNAの例は以下である:
【化9】
【0576】
実施例12:Cas9最適化
機能強化のためまたは新規機能を開発するため、本出願人らは異なるCas9ホモログの断片を組み合わせることにより、キメラCas9タンパク質を作成する。例えば、2つの例示的なキメラCas9タンパク質:
例えば、本出願人らは、St1Cas9(このタンパク質からの断片は太字とする)のN末端を、SpCas9(このタンパク質からの断片には下線を引く)のC末端と融合した。
【0577】
>St1(N)Sp(C)Cas9
【化10】
【0578】
>Sp(N)St1(C)Cas9
【化11】
【0579】
キメラCas9を作製することの利益には、以下が含まれる:
毒性が低下する
真核細胞における発現が向上する
特異性が強化される
タンパク質の分子量が低下し、異なるCas9ホモログからの最も小さいドメインを組み合わせることによりタンパク質が小さくなる。
PAM配列要件の変更
【0580】
実施例13:汎用DNA結合タンパク質としてのCas9の利用
本出願人らは、DNA標的の両鎖の開裂に関与する2つの触媒ドメイン(D10およびH840)を突然変異させることにより、Cas9を汎用DNA結合タンパク質として使用した。標的遺伝子座における遺伝子転写を上方制御するため、本出願人らはCas9に転写活性化ドメイン(VP64)を融合した。本出願人らは、転写因子活性化強度が標的で費やされる時間の関数であるため、Cas9-VP64融合タンパク質の強力な核局在を認めることが重要であるという仮説を立てた。従って、本出願人らは一組のCas9-VP64-GFP構築物をクローニングし、それらを293細胞に形質移入し、形質移入後12時間でその局在を蛍光顕微鏡下で評価した。
【0581】
嵩高いGFPの存在が妨げとなることなく構築物を機能的に試験するため、同じ構築物を、直接的な融合ではなく、2A-GFPとしてクローニングした。Sox2遺伝子座は細胞の再プログラム化に有用となり得るとともに、この遺伝子座はTALE-TF媒介性転写活性化の標的として既に検証されているため、本出願人らはSox2遺伝子座をCas9トランス活性化因子による標的とすることにした。Sox2遺伝子座について、本出願人らは転写開始部位(TSS)近傍の8つの標的を選んだ。各標的は20bp長であり、隣接するNGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を有した。各Cas9-VP64構築物を各PCR生成キメラcrisprRNA(chiRNA)と293細胞に同時形質移入した。形質移入後72時間でRT-qPCRを使用して転写活性化を評価した。
【0582】
転写活性化因子をさらに最適化するため、本出願人らは、chiRNA(Sox2.1およびSox2.5)とCas9(NLS-VP64-NLS-hSpCas9-NLS-VP64-NLS)との比率をタイトレートし、293細胞に形質移入し、およびRT-qPCRを使用して定量化した。これらの結果は、Cas9を汎用DNA結合ドメインとして使用して標的遺伝子座における遺伝子転写を上方制御し得ることを示している。
【0583】
本出願人らは、第2世代の構築物を設計した(下表)。
【0584】
【表32】
【0585】
本出願人らはこれらの構築物を使用して転写活性化(VP64融合構築物)および抑制(Cas9のみ)をRT-qPCRにより評価する。本出願人らは抗His抗体を使用して各構築物の細胞局在を評価し、Surveyorヌクレアーゼアッセイを使用してヌクレアーゼ活性を評価し、およびゲルシフトアッセイを使用してDNA結合親和性を評価する。本発明の好ましい実施形態において、ゲルシフトアッセイはEMSAゲルシフトアッセイである。
【0586】
実施例14:Cas9トランスジェニックおよびノックインマウス
Cas9ヌクレアーゼを発現するマウスを作成するため、本出願人らは2つの一般的戦略、トランスジェニックとノックインとを提示する。これらの戦略は、目的とする任意の他のモデル生物の作成、例えばラットに適用し得る。これらの一般的戦略の各々について、本出願人らは、構成的に活性なCas9と、条件的に発現する(Creリコンビナーゼ依存性の)Cas9とを作製する。構成的に活性なCas9ヌクレアーゼは以下のコンテクストで発現する:pCAG-NLS-Cas9-NLS-P2A-EGFP-WPRE-bGHpolyA。pCAGはプロモーターであり、NLSは核局在化シグナルであり、P2Aはペプチド開裂配列であり、EGFPは高感度緑色蛍光タンパク質であり、WPREはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントであり、およびbGHpolyAはウシ成長ホルモンポリAシグナル配列である(図25A図25B)。条件的バージョンは、プロモーターの後ろおよびNLS-Cas9-NLSの前に1つのさらなる終止カセットエレメント、loxP-SV40polyA x3-loxPを有する(すなわちpCAG-loxP-SV40polyAx3-loxP-NLS-Cas9-NLS-P2A-EGFP-WPRE-bGHpolyA)。重要な発現エレメントは図26のとおり可視化することができる。構成的構築物は開発全体を通して全ての細胞型で発現しなければならないが、条件的構築物は、同じ細胞がCreリコンビナーゼを発現するときに限りCas9発現を可能にし得る。この後者のバージョンは、Creが組織特異的プロモーターの発現下にあるときCas9の組織特異的発現を可能にし得る。さらに、CreをTETonまたはoffシステムなどの誘導性プロモーターの発現下に置くことにより、Cas9発現を成体マウスで誘導することができる。
【0587】
Cas9構築物の検証:各プラスミドを3つの方法で機能検証した:1)293細胞における一過性形質移入と、続くGFP発現の確認;2)293細胞における一過性形質移入と、続くP2A配列を認識する抗体を使用した免疫蛍光法;および3)一過性形質移入と、続くSurveyorヌクレアーゼアッセイ。293細胞は、目的の細胞に応じて293FT細胞または293T細胞であってもよい。好ましい実施形態では、細胞は293FT細胞である。Surveyorの結果は、条件的および構成的構築物についてゲルのそれぞれ最上列および最下列で実施した。各々を、hEMX1遺伝子座を標的にするキメラRNA(キメラRNAhEMX1.1)の存在下および非存在下で試験した。結果は、この構築物がキメラRNA(および条件的の場合にはCre)の存在下においてのみhEMX1遺伝子座のターゲティングに成功し得ることを示している。ゲルを定量化した。結果は3試料の平均切断効率および標準偏差として提供する。
【0588】
トランスジェニックCas9マウス:構築物を有するトランスジェニックマウスを作成するため、本出願人らは純粋な線状DNAを偽妊娠CB56雌由来の接合体の前核に注入する。ファウンダーを同定し、遺伝子型を決定し、CB57マウスと戻し交配させる。構築物がクローニングが成功し、これはサンガーシーケンシングによって確認された。
【0589】
ノックインCas9マウス:Cas9ノックインマウスを作成するため、本出願人らは同じ構成的および条件的構築物をRosa26遺伝子座にターゲティングする。本出願人らはこれを、以下のエレメントを有するRosa26ターゲティングベクターに各々をクローニングすることにより行った:Rosa26ショート相同性アーム-構成的/条件的Cas9発現カセット-pPGK-Neo-Rosa26ロング相同性アーム-pPGK-DTA。pPGKは、PGKによりドライブされる、ネオマイシンに対する耐性を付与するポジティブ選択マーカーNeo、1kbショートアーム、4.3kbロングアーム、およびネガティブ選択ジフテリア毒素(DTA)に対するプロモーターである。
【0590】
2つの構築物をR1 mESCにエレクトロポレートし、2日間成長させておいた後、ネオマイシン選択を適用した。5~7日目まで生存していた個々のコロニーを取り、個別のウェルで成長させた。5~7日後にコロニーを回収し、半分は凍結し、残りの半分は遺伝子タイピングに使用した。遺伝子タイピングはゲノムPCRにより行い、ここでは一方のプライマーをドナープラスミド(AttpF)内にアニールし、他方のプライマーをショート相同性アーム(Rosa26-R)の外側にアニールした。条件的ケース用に回収した22個のコロニーのうち、7個が陽性であった(左)。構成的ケース用に回収した27個のコロニーのうち、陽性は0個であった(右)。Cas9がmESCにおいてあるレベルの毒性を引き起こし、そのため陽性クローンがなかったものと思われる。これを試験するため、本出願人らは正しくターゲティングされる条件的Cas9細胞にCre発現プラスミドを導入し、培養下で何日も経った後にも極めて低毒性であることを認めた。正しくターゲティングされる条件的Cas9細胞におけるCas9のコピー数の低下(細胞当たり1~2コピー)は、安定発現および相対的な無細胞毒性を可能にするのに十分である。さらに、このデータはCas9コピー数が毒性を決定することを示している。エレクトロポレーション後、各細胞は数コピーのCas9を得るはずで、これが、構成的Cas9構築物の場合に陽性コロニーが認められなかった理由であると思われる。これは、条件的Cre依存戦略を利用すると毒性の低下が示されるはずであるという強力なエビデンスを提供する。本出願人らは、正しくターゲティングされる細胞を胚盤胞に注入して雌マウスに移植する。キメラを同定し、戻し交配させる。ファウンダーを同定し、遺伝子型を決定する。
【0591】
条件的Cas9マウスの有用性:本出願人らは、293細胞において、Creとの同時発現によりCas9条件的発現構築物を活性化し得ることを示している。本出願人らはまた、Creが発現するとき正しくターゲティングされるR1mESCが活性Cas9を有し得ることも示す。Cas9の後にはP2Aペプチド開裂配列と、次にEGFPが続くため、本出願人らはEGFPを観察することにより発現の成功を特定する。この同じ概念が、条件的Cas9マウスを極めて有用にするものである。本出願人らはそれらの条件的Cas9マウスを、Creを遍在的に発現するマウス(ACTB-Cre系統)と交配させることができ、あらゆる細胞でCas9を発現するマウスが得られ得る。胎仔または成体マウスにおいてゲノム編集を誘導するために必要なことはキメラRNAの送達のみであるはずである。興味深いことに、条件的Cas9マウスを組織特異的プロモーターの制御下でCreを発現するマウスと交配させる場合、同様にCreを発現する組織にのみCas9が存在するはずである。この手法を用いて正確な組織に限ったゲノムの編集を、同組織にキメラRNAを送達することにより行い得る。
【0592】
実施例15:Cas9の多様性およびキメラRNA
CRISPR-Cas系は、細菌および古細菌にわたる多様な種により用いられる侵入外来性DNAに対する適応免疫機構である。II型CRISPR-Cas系は、CRISPR遺伝子座への外来DNAの「獲得」に関与するタンパク質をコードする一組の遺伝子、ならびにDNA開裂機構の「遂行」をコードする一組の遺伝子からなる;これらには、DNAヌクレアーゼ(Cas9)、非コードトランス活性化cr-RNA(tracrRNA)、および外来DNA由来のスペーサーにダイレクトリピートが隣接したアレイ(crRNA)が含まれる。Cas9による成熟時、tracrRNAおよびcrRNA二重鎖が、スペーサーガイド配列により特定されるCas9ヌクレアーゼを標的DNA配列にガイドし、開裂に必要でかつ各CRISPR-Cas系に特異的な、標的DNAの短鎖配列モチーフ近傍でのDNAの二本鎖切断を媒介する。II型CRISPR-Cas系は細菌界全体にわたり見られ、Cas9タンパク質配列およびサイズ、tracrRNAおよびcrRNAダイレクトリピート配列、これらのエレメントのゲノム構成、および標的開裂のモチーフ要件の点で高度に多様である。1つの種が複数の異なるCRISPR-Cas系を有し得る。
【0593】
本出願人らは、既知のCas9との配列相同性および既知のサブドメイン、例えばHNHエンドヌクレアーゼドメインおよびRuvCエンドヌクレアーゼドメイン[EugeneKooninおよびKira Makarovaからの情報]とオルソロガスな構造に基づき同定された細菌種から207個の推定Cas9を評価した。このセットのタンパク質配列保存に基づく系統発生解析から、3群の大型Cas9(約1400アミノ酸)および2群の小型Cas9(約1100アミノ酸)を含む5つのCas9ファミリーが明らかとなった(図19A図19Dおよび図20A図20F)。
【0594】
本出願人らはまた、インビトロ方法を用いてCas9ガイドRNAの最適化も行っている。
【0595】
実施例16:Cas9突然変異
本実施例において、本出願人らは、以下の突然変異がSpCas9をニック形成酵素に変換し得ることを示す:D10A、E762A、H840A、N854A、N863A、D986A。
【0596】
本出願人らは、突然変異点がSpCas9遺伝子内のどこに局在するかを示す配列を提供する(図24A~M)。本出願人らは、ニッカーゼが相同組換えを依然として媒介し得ることも示す。さらに、本出願人らは、これらの突然変異を有するSpCas9が(個々に)二本鎖切断を誘導しないことを示す。
【0597】
Cas9オルソログは全て、3~4個のRuvCドメインおよびHNHドメインの一般的構成を共有する。最も5’側のRuvCドメインが非相補鎖を開裂し、HNHドメインが相補鎖を開裂する。表記は全てガイド配列を参照する。
【0598】
5’RuvCドメインの触媒残基は、目的のCas9を他のCas9オルソログ(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)II型CRISPR遺伝子座、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR遺伝子座1、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPR遺伝子座3、およびフランシセラ・ノビシダ(Franciscillanovicida)II型CRISPR遺伝子座由来)と相同性比較することによって同定され、保存されたAsp残基をアラニンに突然変異させることにより、Cas9が相補鎖ニッキング酵素に変換される。同様に、HNHドメインの保存されたHisおよびAsn残基をアラニンに突然変異させることにより、Cas9が非相補鎖ニッキング酵素に変換される。
【0599】
実施例17:Cas9転写活性化およびCas9リプレッサー
Cas9転写活性化
第2世代の構築物を設計して試験した(表1)。これらの構築物を使用して転写活性化(VP64融合構築物)および抑制(Cas9のみ)をRT-qPCRにより評価する。本出願人らは、抗His抗体を使用して各構築物の細胞局在を評価し、Surveyorヌクレアーゼアッセイを使用してヌクレアーゼ活性を評価し、およびゲルシフトアッセイを使用してDNA結合親和性を評価する。
【0600】
Casリプレッサー
dCas9を汎用DNA結合ドメインとして使用して遺伝子発現を抑制し得ることがこれまでに示されている。本出願人らは、改良されたdCas9設計ならびにリプレッサードメインKRABおよびSID4xに対するdCas9融合を報告する。表1におけるCas9を使用して転写を調節するため作成されたプラスミドライブラリから、以下のリプレッサープラスミドがqPCRにより機能的に特徴付けられた:pXRP27、pXRP28、pXRP29、pXRP48、pXRP49、pXRP50、pXRP51、pXRP52、pXRP53、pXRP56、pXRP58、pXRP59、pXRP61、およびpXRP62。
【0601】
各dCas9リプレッサープラスミドを、β-カテニン遺伝子のコード鎖にターゲティングされた2つのガイドRNAと共に同時形質移入した。形質移入後72時間でRNAを単離し、RT-qPCRによって遺伝子発現を定量化した。内在性対照遺伝子はGAPDHであった。2つのバリデートされたshRNAを陽性対照として使用した。陰性対照はgRNAなしに形質移入した特定のプラスミド(これらは「pXRP##対照」と表される)であった。プラスミドpXRP28、pXRP29、pXRP48、およびpXRP49は、指定される標的化戦略を用いるときβ-カテニン遺伝子を抑制することができた。このようなプラスミドは、機能ドメインを有しないdCas9(pXRP28およびpXRP28)、およびSID4xに融合したdCas9(pXRP48およびpXRP49)に対応する。
【0602】
さらなる研究では以下を調べる:上記の実験の反復、種々の遺伝子のターゲティング、他のgRNAを利用した最適なターゲティング位置の決定、および多重抑制。
【0603】
【表33】
【0604】
【表34】
【0605】
実施例18:コレステロール生合成、脂肪酸生合成、および他の代謝疾患に関与する遺伝子、アミロイド病および他の疾患に関与する誤って折り畳まれたタンパク質をコードする遺伝子、細胞形質転換を引き起こす癌遺伝子、潜伏ウイルス遺伝子、および数ある障害の中でも特にドミナントネガティブ障害を引き起こす遺伝子の標的欠失。
本出願人らは、ウイルス送達系あるいはナノ粒子送達系を用いた、代謝疾患、アミロイドーシスおよびタンパク質凝集関連疾患、遺伝子突然変異および転座により生じる細胞形質転換、遺伝子突然変異のドミナントネガティブ効果、潜伏ウイルス感染、および他の関連症状に罹患した、必要性のある対象または患者における肝組織、脳組織、眼組織、上皮組織、造血組織、または別の組織でのCRISPR-Cas系の遺伝子送達を実証する。
【0606】
研究設計:代謝疾患、アミロイドーシスおよびタンパク質凝集関連疾患に罹患した、必要性のある対象または患者としては、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、他の家畜および関連哺乳動物が含まれる。CRISPR-Cas系はキメラガイドRNAにガイドされ、開裂しようとするヒトゲノム遺伝子座の特定の部位を標的にする。開裂および非相同末端結合媒介性修復の後、フレームシフト突然変異により遺伝子のノックアウトがもたらされる。
【0607】
本出願人らは、上述の障害に関わる遺伝子を標的にするガイドRNAを、最小限のオフターゲット活性で内因性遺伝子座に特異的であるように選択する。2つ以上のガイドRNAを単一のCRISPRアレイにコードすることによりDNAに同時の二本鎖切断を誘導し、罹患した遺伝子または染色体領域の微小欠失を生じさせてもよい。
【0608】
遺伝子標的の同定および設計
各候補疾患遺伝子について、本出願人らは目的のDNA配列を選択し、それにはタンパク質コードエクソン、既知のドミナントネガティブ突然変異部位を含みかつそれに隣接する配列、病的反復配列を含みかつそれに隣接する配列が含まれる。遺伝子ノックアウト手法に関して、開始コドンに最も近接した初期コードエクソンが、完全なノックアウトを達成し、かつ部分的な機能を保持するトランケート型タンパク質産物となる可能性を最小限に抑えるのに最良の選択肢を提供する。
【0609】
本出願人らは、NGGモチーフ(SpCas9系について)またはNNAGAAW(St1Cas9系について)の直ちに5’側にある可能な全てのターゲティング可能20bp配列に関して目的の配列を分析する。本出願人らは、特異性を決定する計算アルゴリズムに基づきオフターゲット効果が最小限に抑えられるように、ゲノムにおけるRNAによってガイドされるユニークな単一のCas9認識用配列を選択する。
【0610】
送達系へのガイド配列のクローニング
ガイド配列は二本鎖20~24bpオリゴヌクレオチドとして合成される。オリゴを5’-リン酸化処理し、アニーリングにより二重鎖を形成した後、オリゴを送達方法に応じた好適なベクターにライゲートする:
【0611】
ウイルスベースの送達方法
AAVベースのベクター(PX260、330、334、335)が他の部分に記載されている。
レンチウイルスベースのベクターは、U6プロモーターによってドライブされるキメラRNA足場と、EF1aプロモーターによってドライブされるCas9またはCas9ニッカーゼとを担持する単一のベクターにガイド配列を直接ライゲートする同様のクローニング戦略を用いる。
【0612】
ウイルス産生については他の部分に記載される。
【0613】
ナノ粒子ベースのRNA送達方法
1.T7プロモーター-ガイド配列キメラRNAをコードするオリゴヌクレオチド二重鎖としてガイド配列を合成する。T7プロモーターをCas9の5’にPCR方法によって付加する。
【0614】
2.T7によりドライブされるCas9およびガイドキメラRNAをインビトロで転写し、市販のキットを使用してCas9mRNAをさらにキャッピングし、Aテールを付加する。キットの説明書に従いRNA産物を精製する。
【0615】
流体力学的尾静脈送達方法(マウスに対して)
ガイド配列を、上記および本出願の他の部分に記載するとおりAAVプラスミドにクローニングする。
【0616】
細胞系に関するインビトロ検証
形質移入
1.DNAプラスミド形質移入
ガイド配列を担持するプラスミドをヒト胎児腎臓(HEK293T)細胞またはヒト胚性幹(hES)細胞、他の関連性のある細胞型に、脂質ベース、化学ベースまたはエレクトロポレーションベースの方法を使用して形質移入する。HEK293T細胞の24ウェル形質移入(約260,000細胞)に対しては、500ngの総DNAを、リポフェクタミン2000を使用して各ウェルに形質移入する。hES細胞の12ウェル形質移入に対しては、1ugの総DNAを、FugeneHDを使用して単一のウェルに形質移入する。
【0617】
2.RNA形質移入
上記に記載する精製RNAを、HEK293T細胞への形質移入に使用する。1~2ugのRNAを、製造者の指示に従いリポフェクタミン2000を使用して約260,000個に形質移入し得る。Cas9およびキメラRNAのRNA送達を図28に示す。
【0618】
インビトロインデル形成アッセイ
形質移入後72時間で細胞を回収し、二本鎖切断の指標としてのインデル形成に関してアッセイする。
【0619】
簡潔に言えば、標的配列の周りのゲノム領域を、高フィデリティポリメラーゼを使用してPCR増幅する(約400~600bpアンプリコンサイズ)。産物を精製し、等濃度に標準化し、95℃から4℃まで徐々にアニーリングしてDNAヘテロ二本鎖を形成させる。アニーリング後、Cel-I酵素を使用してヘテロ二本鎖を開裂し、得られた産物をポリアクリルアミドゲル上で分離し、インデル効率を計算する。
【0620】
動物におけるインビボ原理証明
送達機構
AAVまたはレンチウイルス作製については他の部分に記載される。
【0621】
ナノ粒子製剤:ナノ粒子製剤にRNAを混合する
【0622】
市販のキットを使用して、マウスにおけるDNAプラスミドの流体力学的尾静脈注射を実施する。
【0623】
Cas9およびガイド配列は、ウイルス、ナノ粒子コーティングRNA混合物、またはDNAプラスミドとして送達され、被験動物に注射される。並行する一組の対照動物に、滅菌生理食塩水、Cas9およびGFP、またはガイド配列およびGFP単独を注射する。
【0624】
注射後3週間で症状の改善に関して動物を調べて犠牲にする。関係する臓器系のインデル形成を分析する。表現型アッセイには、HDL、LDL、脂質の血中濃度が含まれる。
【0625】
インデル形成アッセイ
市販キットを使用して組織からDNAを抽出する;インデルアッセイは、インビトロ実証について記載されるとおり実施し得る。
【0626】
CRISPR-Cas系の治療適用は、候補疾患遺伝子の組織特異的かつ時間的に制御された標的欠失の達成に適している。例としては、数ある障害の中でも特に、コレステロールおよび脂肪酸代謝、アミロイド病、ドミナントネガティブ疾患、潜伏ウイルス感染症に関与する遺伝子が挙げられる。
【0627】
遺伝子座に標的インデルを導入するためのシングルガイドRNAの例
【0628】
【表35】
【0629】
遺伝子座に染色体微小欠失を導入するためのガイドRNA対の例
【0630】
【表36】
【0631】
実施例19:疾患原因突然変異を有する遺伝子に対する修復の標的インテグレーション;酵素欠損症および他の関連疾患の再現
研究設計
I.遺伝子標的の同定および設計
・実施例22に記載される
II.送達系に対するガイド配列および修復テンプレートのクローニング
・上記の実施例22に記載される
・本出願人らは、罹患アレルを含む相同性アームを含めるためのDNA修復テンプレートならびに野生型修復テンプレートをクローニングする
III.細胞系に関するインビトロ検証
a.形質移入については、上記の実施例22に記載される;Ca9、ガイドRNA、および修復テンプレートを関連性のある細胞型に同時形質移入する。
b.インビトロ修復アッセイ
i.本出願人らは形質移入後72時間で細胞を回収し、修復に関してアッセイする
ii.簡潔に言えば、本出願人らは修復テンプレートの周りのゲノム領域を、高フィデリティポリメラーゼを使用してPCR増幅する。本出願人らは突然変異体アレルの発生率の低下に関して産物を配列決定する。
IV.動物におけるインビボ原理証明
a.送達機構については、上記の実施例22および34に記載される。
b.インビボ修復アッセイ
i.本出願人らは、インビトロ実証に記載するとおり修復アッセイを実施する。
V.治療適用
CRISPR-Cas系は、候補疾患遺伝子の組織特異的かつ時間的に制御された標的欠失の達成に適している。例としては、数ある障害の中でも特に、コレステロールおよび脂肪酸代謝、アミロイド病、ドミナントネガティブ疾患、潜伏ウイルス感染症に関与する遺伝子が挙げられる。
【0632】
修復テンプレートによる一つの単一ミスセンス突然変異の例:
【0633】
【表37】
【0634】
実施例20:緑内障、アミロイドーシス、およびハンチントン病におけるCRISPR-Cas系の治療適用
緑内障:本出願人らは、ミオシリン(mycilin)(MYOC)遺伝子の第1のエクソンをターゲティングするガイドRNAを設計する。本出願人らはアデノウイルスベクター(Ad5)を使用してCas9ならびにMYOC遺伝子をターゲティングするガイドRNAの両方をパッケージングする。本出願人らはこのアデノウイルスベクターを、細胞が緑内障の病態生理に関係付けられている小柱網に注入する。本出願人らは、初めにこれを、突然変異MYOC遺伝子を有するマウスモデルで試験して、アデノウイルスベクターが視力を改善し、および眼圧を低下させるかどうかを見る。ヒトにおける治療適用も同様の戦略を用いる。
【0635】
アミロイドーシス:本出願人らは、肝臓におけるトランスサイレチン(TTR)遺伝子の第1のエクソンをターゲティングするガイドRNAを設計する。本出願人らはAAV8を使用してCas9ならびにTTR遺伝子の第1のエクソンをターゲティングするガイドRNAをパッケージングする。AAV8は、効率的に肝臓をターゲティングすることが示されており、静脈内投与され得る。Cas9は、アルブミンプロモーターなどの肝臓特異的プロモーターを使用するか、あるいは構成的プロモーターを使用してドライブすることができる。pol3プロモーターがガイドRNAをドライブする。
【0636】
あるいは、本出願人らは、プラスミドDNAの流体力学的送達を利用してTTR遺伝子をノックアウトする。本出願人らは、Cas9とTTRのエクソン1をターゲティングするガイドRNAとをコードするプラスミドを送達する。
【0637】
さらなる代替的な手法として、本出願人らはRNAの組み合わせ(Cas9のmRNA、およびガイドRNA)を投与する。RNAはLifeTechnologiesのInvivofectamineなどのリポソームを使用してパッケージングし、静脈内送達することができる。RNAによって誘発される免疫原性を低下させ、Cas9発現レベルおよびガイドRNAの安定性を高めるため、本出願人らは5’キャッピングを用いてCas9mRNAを改変する。本出願人らはまた、改変されたRNAヌクレオチドをCas9 mRNAおよびガイドRNAに組み込むことにより、それらの安定性を高め、免疫原性を低下させる(例えばTLRの活性化)。効率を高めるため、本出願人らは複数回用量のウイルス、DNA、またはRNAを投与する。
【0638】
ハンチントン病:本出願人らは、患者のHTT遺伝子におけるアレル特異的突然変異に基づきガイドRNAを設計する。例えば、CAGリピートが伸長したHTTがヘテロ接合の患者において、本出願人らは、突然変異体HTTアレルに特有のヌクレオチド配列を同定し、それを使用してガイドRNAを設計する。本出願人らは、突然変異体塩基がガイドRNAの最後の9bpの範囲内に位置することを確実にする(これは標的サイズとガイドRNAとの間の単一のDNA塩基ミスマッチ間を識別する能力を有することが、本出願人らにより確認されている)。
【0639】
本出願人らは、突然変異体HTTアレル特異的ガイドRNAおよびCas9をAAV9にパッケージングし、ハンチントン病患者の線条体内に送達する。ウイルスは開頭術によって定位的に線条体に注入する。AAV9は、ニューロンを効率的に形質導入することが知られる。本出願人らはヒトシナプシンIなどのニューロン特異的プロモーターを使用してCas9をドライブする。
【0640】
実施例21:HIVにおけるCRISPR-Cas系の治療適用
慢性ウイルス感染症は、有意な罹患率および死亡率の原因である。これらのウイルスの多くに関しては、ウイルス複製の種々の側面を有効にターゲティングする従来の抗ウイルス治療薬が存在するが、現在の治療モダリティは、通常、「ウイルス潜伏」に起因して非治癒的な性質のものである。その性質上、ウイルス潜伏は、活性のあるウイルス産生のないウイルスのライフサイクルにおける休眠期により特徴付けられる。この期間中、ウイルスは大部分が免疫監視機構および従来の治療薬の両方を回避することができるため、ウイルスが宿主内に長期にわたるウイルスリザーバを構築することが可能となり、続いてそこから再活性化し、ウイルスの伝播および伝染を続行することができる。ウイルス潜伏の鍵は、ウイルスゲノムを安定的に維持する能力であり、これは、それぞれウイルスゲノムを細胞質に貯えるかまたはそれを宿主ゲノムにインテグレートするものであるエピソーム潜伏またはプロウイルス潜伏のいずれかによって達成される。初感染を防ぐ有効なワクチン接種がない場合、潜伏リザーバおよび溶菌作用のエピソードにより特徴付けられる慢性ウイルス感染症は重大な影響を及ぼし得る:ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌をもたらすことがあり、C型肝炎ウイルス(HCV)は肝細胞癌の原因となり、およびヒト免疫不全ウイルスは最終的には宿主免疫系を破壊して日和見感染に対する感受性をもたらす。このように、これらの感染症では、現在利用可能な抗ウイルス治療薬の生涯にわたる使用が必要となる。さらに問題を複雑にしているのは、これらのウイルスゲノムの多くの高い変異性であり、これが有効な治療の存在しない耐性株の進化につながっている。
【0641】
CRISPR-Cas系は、多重的能力のある配列特異的な形で二本鎖DNA切断(DSB)を誘導することが可能な細菌性適応免疫系であり、最近になって哺乳類細胞系内で再構成されている。1つまたは多数のガイドRNAによってDNAをターゲティングすると、介在配列にそれぞれインデルおよび欠失の両方がもたらされ得ることが示されている。このように、この新規技術は、高効率および高特異性で単一細胞内における標的化されかつ多重化されたDNA突然変異作成を達成し得る手段に相当する。結果的に、ウイルスDNA配列に対するCRISPR-Cas系の送達は、進行中のウイルス産生がない場合であっても、潜伏ウイルスゲノムの標的化した破壊および欠失を可能にし得る。
【0642】
例として、HIV-1による慢性感染症は、3300万人の感染者を抱え、毎年260万人の感染が発生している世界的な健康問題である。ウイルス複製の複数の側面を同時にターゲティングする集学的高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の使用により、HIV感染の大部分を、末期的でない慢性の病気として管理することが可能となっている。治療しなければ、通常9~10年以内にHIVからAIDSへの進行が起こり、宿主免疫系の枯渇および日和見感染症の発生がもたらされ、通常はその後間もなく死亡に至る。ウイルス潜伏に続発して、HAARTの中断は必然的にウイルスのリバウンドを引き起こす。さらに、一時的ではあっても治療の寸断により、利用可能な手段では制御不可能なHIV耐性株が選択され得る。加えて、HAART治療のコストは著しく高い:1年に1人当たり10,000~15,0000米国ドルの範囲内である。このように、ウイルス複製のプロセスではなしに、HIVゲノムを直接ターゲティングする治療手法は、潜伏リザーバの根絶による治癒的な治療選択肢を可能にし得る手段に相当する。
【0643】
HIV-1ターゲティングCRISPR-Cas系の開発および送達は、既存の標的DNA突然変異生成手段、すなわちZFNおよびTALENとは区別され得るユニークな手法に相当し、数多くの治療的関連性を有する。HAARTと併せたCRISPR媒介性DSBおよびインデルによるHIV-1ゲノムの標的破壊および欠失は、宿主内での活性なウイルス産生ならびに潜伏ウイルスリザーバの枯渇を同時に防ぐことを可能にし得る。
【0644】
宿主免疫系にインテグレートされると、CRISPR-Cas系によりHIV-1抵抗性亜集団の生成が可能となり、この亜集団は、ウイルスが完全には根絶されていない場合であっても、宿主免疫活性の維持および再構成を可能にし得る。これは、ウイルスゲノムの破壊によりウイルスの産生およびインテグレーションを妨げることで潜在的に初感染を予防するもので、「ワクチン接種」の手段に相当し得る。CRISPR-Cas系の多重化した性質により、個々の細胞内においてゲノムの複数の側面を同時に標的化することが可能となる。
【0645】
HAARTなどでは、複数の適応突然変異を同時に獲得する必要があるため、突然変異生成によるウイルスのエスケープが最小限に抑えられる。複数のHIV-1株を同時にターゲティングすることができ、従って重感染の可能性が最小限に抑えられ、かつ続く新規組換え株の作成が妨げられる。CRISPR-Cas系の、タンパク質媒介性よりむしろヌクレオチド媒介性の配列特異性により、送達機構を大幅に変更することなく治療薬を迅速に作成することが可能となる。
【0646】
これを達成するため、本出願人らは、有効範囲および有効性を最大化するためのHIV-1株変異体を考慮しながら大多数のHIV-1ゲノムを標的とするCRISPR-CasガイドRNAを作成する。HIV-1サブタイプと変異体との間のゲノム保存の配列解析から、介在するウイルス配列を欠失させるかまたはウイルスの遺伝子機能を破壊し得るフレームシフト突然変異を導入することを目的としたゲノムの隣接保存領域のターゲティングが可能になるはずである。
【0647】
本出願人らは、従来どおり宿主免疫系のアデノウイルスまたはレンチウイルス媒介性感染によるCRISPR-Cas系の送達を達成する。手法に応じて、宿主免疫細胞は、a)単離され、CRISPR-Casが形質導入され、選択され、および宿主に再導入されてもよく、またはb)CRISPR-Cas系の全身送達によりインビボで形質導入されてもよい。第1の手法は、抵抗性免疫集団の作成を可能にする一方、第2の手法は宿主内の潜伏ウイルスリザーバを標的にする傾向が強い。
【0648】
【表38】
【0649】
実施例22:嚢胞性線維症におけるΔF508または他の突然変異の標的補修
本発明の態様は、CRISPR-Cas遺伝子治療粒子と生体適合性医薬担体とを含み得る医薬組成物を提供する。別の態様によれば、CFTR遺伝子に突然変異を有する対象を治療するための遺伝子治療方法は、対象の細胞に治療有効量のCRISPR-Cas遺伝子治療粒子を投与することを含む。
【0650】
本実施例は、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症関連症状に罹患した、必要性がある対象または患者の気道における、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を使用したCRISPR-Cas系の遺伝子導入または遺伝子送達を実証する。
【0651】
研究設計:必要性がある対象または患者:関連するヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマおよび他の家畜。この研究は、AAVベクターによるCRISPR-Cas系の遺伝子導入の有効性を試験する。本出願人らは、遺伝子発現に十分な導入遺伝子レベルを決定し、Cas9酵素を含むCRISPR-Cas系を利用してΔF508または他のCFTR誘導突然変異をターゲティングする。
【0652】
治療対象は、自発呼吸下に各肺につき薬学的に有効な量のエアロゾル化したAAVベクター系の気管支内送達を受ける。対照対象は、内在性の対照遺伝子を含む同量の偽型AAVベクター系の投与を受ける。ベクター系は、薬学的に許容可能なまたは生体適合性の医薬担体と共に送達され得る。ベクター投与後3週間または適切なインターバルを置いて、嚢胞性線維症関連症状の改善に関して治療対象を調べる。
【0653】
本出願人らは、アデノウイルスまたはAAV粒子を使用する。
【0654】
本出願人らは、各々が1つ以上の調節配列(Cas9用のCbhまたはEF1aプロモーター、キメラガイドRNA用のU6またはH1プロモーター)に作動可能に結合している以下の遺伝子構築物を、1つ以上のアデノウイルスまたはAAVベクターまたは任意の他の適合性ベクターにクローニングする:CFTRΔ508ターゲティングキメラガイドRNA(図31B)、ΔF508突然変異の修復テンプレート(図31C)および場合により1つ以上の核局在化シグナルまたは配列(NLS)、例えば2つのNLSを有するコドン最適化Cas9酵素。
【0655】
Cas9標的部位の同定
本出願人らはヒトCFTRゲノム遺伝子座を解析し、Cas9標的部位を同定した(図31A)。(PAMはNGGまたはNNAGAAWモチーフを含み得る)。
【0656】
遺伝子修復戦略
本出願人らは、Cas9(またはCas9ニッカーゼ)およびガイドRNAを含むアデノウイルス/AAVベクター系を、F508残基を含有する相同性修復テンプレートを含むアデノウイルス/AAVベクター系と共に対象に、先に考察した送達方法の一つによって導入する。CRISPR-Cas系はCFTRΔ508キメラガイドRNAによりガイドされ、ニックを入れられるかあるいは開裂されるCFTRゲノム遺伝子座の特定の部位を標的にする。開裂後、嚢胞性線維症をもたらしまたは嚢胞性線維症関連症状を引き起こす欠失を補修する相同組換えによって開裂部位に修復テンプレートが挿入される。適切なガイドRNAでCRISPR系を直接送達し、その全身性の導入を提供するこの戦略を用いて遺伝子突然変異をターゲティングし、表Bにあるような代謝、肝臓、腎臓およびタンパク質の疾患および障害を引き起こす遺伝子を編集または他の方法で操作することができる。
【0657】
実施例23:遺伝子ノックアウト細胞ライブラリの作成
本実施例は、各細胞がノックアウトされた単一遺伝子を有する細胞ライブラリを作成する方法を実証する:
本出願人らは、ES細胞のライブラリであって、各細胞はノックアウトされた単一遺伝子を有し、かつES細胞のライブラリ全体はあらゆる単一遺伝子がノックアウトされているライブラリを作製する。このライブラリは、細胞プロセスならびに疾患における遺伝子機能のスクリーニングに有用である。
【0658】
この細胞ライブラリを作成するため、本出願人らは、誘導性プロモーター(例えばドキシサイクリン誘導性プロモーター)によりドライブされるCas9をES細胞にインテグレートする。加えて、本出願人らは、ES細胞において特定の遺伝子を標的にする単一のガイドRNAをインテグレートする。ES細胞ライブラリを作成するため、本出願人らは、単純に、ヒトゲノムにおける各遺伝子を標的にするガイドRNAをコードする遺伝子のライブラリとES細胞を混合する。本出願人らは、初めに、単一のBxB1attB部位をヒトES細胞のAAVS1遺伝子座に導入する。次に本出願人らは、BxB1インテグラーゼを使用して、AAVS1遺伝子座のBxB1attB部位に対する個々のガイドRNA遺伝子のインテグレーションを促進する。インテグレーションを促進するため、各ガイドRNA遺伝子は単一のattP部位を担持するプラスミド上に含まれる。このようにしてBxB1がゲノムのattB部位をガイドRNA含有プラスミド上のattP部位と組み換え得る。
【0659】
細胞ライブラリを作成するため、本出願人らは、インテグレートされた単一のガイドRNAを有しかつCas9発現を誘導する細胞のライブラリを取る。誘導後、ガイドRNAによって指定された部位でCas9が二本鎖切断を媒介する。この細胞ライブラリの多様性を確認するため、本出願人らは全エクソンシーケンシングを実施し、本出願人らが単一の標的遺伝子毎に突然変異を観察可能であることを確実にする。この細胞ライブラリは、全ライブラリベースのスクリーニングを含めた種々の用途に使用することができ、または選別して個々の細胞クローンにし、個々のノックアウトヒト遺伝子を有するクローン細胞系の迅速作成を促進することができる。
【0660】
実施例24:Cas9を使用する微細藻類のエンジニアリング
Cas9を送達する方法
【0661】
方法1:本出願人らは、構成的プロモーター、例えば、Hsp70A-Rbc S2またはベータ2-チューブリンの制御下でCas9を発現するベクターを使用してCas9およびガイドRNAを送達する。
【0662】
方法2:本出願人らは、構成的プロモーター、例えば、Hsp70A-Rbc S2またはベータ2-チューブリンの制御下でCas9およびT7ポリメラーゼを発現するベクターを使用してCas9およびT7ポリメラーゼを送達する。ガイドRNAは、ガイドRNAをドライブするT7プロモーターを含有するベクターを使用して送達する。
【0663】
方法3:本出願人らは、Cas9mRNAおよびインビトロで転写されたガイドRNAを藻類細胞に送達する。RNAは、インビトロで転写させることができる。Cas9mRNAは、Cas9についてのコード領域およびCas9mRNAの安定化を確保するためのCop1からの3’UTRからなる。
【0664】
相同組換えのため、本出願人らは、追加の相同組換え修復テンプレートを提供する。
【0665】
ベータ-2チューブリンプロモーターの制御下でCas9の発現をドライブするカセットと、それに続くCop1の3’UTRについての配列。
【化12】
【化13】
【化14】
【0666】
ベータ-2チューブリンプロモーターの制御下でT7ポリメラーゼの発現をドライブするカセットと、それに続くCop1の3’UTRについての配列:
【化15】
【化16】
【0667】
T7プロモーターによりドライブされるガイドRNAの配列(T7プロモーター、Nは、ターゲティング配列を表す):
【化17】
【0668】
遺伝子送達:
Chlamydomonas ResourceCenterからのコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)株CC-124およびCC-125を、エレクトロポレーションに使用する。エレクトロポレーションプロトコルは、GeneArtChlamydomonas Engineeringキットからの標準的な推奨プロトコルに従う。
【0669】
また、本出願人らは、Cas9を構成的に発現するコナミドリムシ(Chlamydomonasreinhardtii)の系統を生成する。このことは、pChlamy1(PvuIを使用して線形化)を使用し、ハイグロマイシン耐性コロニーを選択することにより行うことができる。Cas9を含有するpChlamy1についての配列を以下に示す。遺伝子ノックアウトを達成するためのこの手法において、ガイドRNAのためのRNAを送達することが必要なだけである。相同組換えのため、本出願人らは、ガイドRNAおよび線形化相同組換えテンプレートを送達する。
【0670】
pChlamy1-Cas9:
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0671】
全ての改変コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)細胞について、本出願人らは、PCR、SURVEYORヌクレアーゼアッセイ、およびDNAシーケンシングを使用して良好な改変を確認した。
【0672】
実施例25:Cas9を使用して種々の疾患型をターゲティングする
タンパク質コード配列の突然変異が関与する疾患:
優性障害は、ドミナントネガティブアレルを不活性化することによりターゲティングされ得る。本出願人らは、Cas9を使用してドミナントネガティブアレルにおけるユニーク配列をターゲティングし、NHEJによって突然変異を導入する。NHEJによって誘導されるインデルは、ドミナントネガティブアレルにフレームシフト突然変異を導入してドミナントネガティブタンパク質を除去することが可能であり得る。これは遺伝子がハプロ不全でない(haplo-sufficient)場合に機能し得る(例えばMYOC突然変異によって生じる緑内障およびハンチントン病)。
【0673】
劣性遺伝疾患は、両方のアレルで疾患突然変異を修復することによりターゲティングされ得る。分裂細胞について、本出願人らはCas9を使用して突然変異部位の近傍に二本鎖切断を導入し、外来性組換えテンプレートを使用して相同組換え速度を増加させる。分裂細胞について、これは多重ニッカーゼ活性を用いて達成されてもよく、それにより、相補的なオーバーハングを有する外来性DNA断片のNHEJ媒介性ライゲーションによる両方のアレルの突然変異配列の置換が触媒される。
【0674】
本出願人らはまた、Cas9を使用して保護突然変異も導入する(例えばHIV感染を防ぐためのCCR5の不活性化、コレステロールを減少させるためのPCSK9の不活性化、またはアルツハイマー病の可能性を低下させるAPPへのA673Tの導入)。
【0675】
非コード配列が関与する疾患
本出願人らは、Cas9を使用してプロモーター領域の非コード配列を破壊し、転写因子結合部位を変化させ、およびエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを変化させる。例えば、Cas9を使用して造血幹細胞のKlf1エンハンサーEHS1を切り出すことにより、BCL11aレベルを低下させ、分化した赤血球における胎児グロビン遺伝子発現を再活性化し得る。
【0676】
本出願人らはまた、Cas9を使用して5’または3’非翻訳領域の機能性モチーフを破壊する。例えば、筋強直性ジストロフィーの治療のため、Cas9を使用してDMPK遺伝子のCTGリピート伸長を除去し得る。
【0677】
実施例26:多重化ニッカーゼ
本出願に詳説されるCas9の最適化の態様および教示を使用してCas9ニッカーゼもまた作成し得る。本出願人らは、Cas9ニッカーゼをガイドRNAのペアと組み合わせて使用して、規定のオーバーハングを有するDNA二本鎖切断を作成する。ガイドRNAの2つのペアが使用されるとき、介在するDNA断片を切り出すことが可能である。2つのガイドRNAペアで外来性DNA断片を開裂することによってゲノムDNAと適合性のオーバーハングを作成する場合、外来性DNA断片をゲノムDNAにライゲートして切り出された断片を置き換え得る。例えば、これを用いてハンチンチン(huntintin)(HTT)遺伝子のトリヌクレオチドリピート伸長を除去し、ハンチントン病を治療し得る。
【0678】
より少数のCAGリピートを有する外来性DNAが提供される場合、同じオーバーハングを有するDNA断片を作成することが可能であり得るとともに、HTTゲノム遺伝子座にライゲートして、切り出された断片を置き換えることができる。
【化24】
【0679】
ゲノムへの外来性DNA断片のライゲーションに相同組換え機構は必須ではなく、従ってこの方法はニューロンなどの分裂終了細胞で用いられてもよい。
【0680】
実施例27:CRISPR系の送達
Cas9およびそのキメラガイドRNA、またはtracrRNAとcrRNAとの組み合わせは、DNAとしても、あるいはRNAとしても送達することができる。Cas9およびガイドRNAを両方ともにRNA(普通のまたは塩基もしくは骨格改変を含む)分子として送達することを用いて、Cas9タンパク質が細胞内に留まる時間を低減することができる。これにより標的細胞におけるオフターゲット開裂活性のレベルが低下し得る。mRNAとしてのCas9の送達はタンパク質に翻訳されるまでに時間がかかるため、Cas9mRNAを送達した数時間後にガイドRNAを送達して、Cas9タンパク質との相互作用に利用可能なガイドRNAのレベルを最大化することが有利であり得る。
【0681】
ガイドRNAの量が限られている状況では、Cas9をmRNAとして導入し、かつガイドRNAを、ガイドRNAの発現をドライブするプロモーターを含むDNA発現カセットの形態で導入することが望ましい場合もある。このようにして利用可能なガイドRNAの量を転写によって増幅し得る。
【0682】
Cas9(DNAまたはRNA)およびガイドRNA(DNAまたはRNA)を宿主細胞に導入するため種々の送達系を導入することができる。これには、リポソーム、ウイルスベクター、エレクトロポレーション、ナノ粒子、ナノワイヤ(Shaleket al.,Nano Letters,2012)、エキソソームの使用が含まれる。分子トロイの木馬リポソーム(Pardridge et al.,Cold SpringHarb Protoc;2010;doi:10.1101/pdb.prot5407)を使用して、Cas9およびガイドRNAを血液脳関門を越えて送達してもよい。
【0683】
実施例28:トリヌクレオチドリピート障害の治療戦略
本出願で既述したとおり、CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは複数の疾患関連遺伝子およびポリヌクレオチドを含んでもよく、それらの疾患関連遺伝子の一部はトリヌクレオチドリピート障害と称される(またトリヌクレオチドリピート伸長障害、トリプレットリピート伸長障害またはコドン反復障害とも称される)一連の遺伝的障害に属し得る。
【0684】
これらの疾患は、特定の遺伝子のトリヌクレオチドリピートが正常な安定閾値(通常は遺伝子の点で異なり得る)を超える突然変異により引き起こされる。リピート伸長障害の発見が増えるにつれ、これらの障害を、根底にある類似した特性に基づきいくつかのカテゴリーに分類することが可能となっている。特定の遺伝子のタンパク質コード部分におけるCAGリピート伸長によって引き起こされるハンチントン病(HD)および脊髄小脳失調症は、カテゴリーIに含められる。伸長を有する疾患または障害であって、その表現型が多様になる傾向のある、かつ伸長が通常は規模が小さく、遺伝子のエクソンにも認められるものは、カテゴリーIIに含められる。カテゴリーIIIは、カテゴリーIまたはIIと比べてはるかに大きいリピート伸長によって特徴付けられ、かつ概してタンパク質コード領域の外側に位置する障害または疾患を含む。カテゴリーIII疾患または障害の例には、限定はされないが、脆弱X症候群、筋強直性ジストロフィー、脊髄小脳失調症と、若年性ミオクローヌスてんかんと、フリードライヒ失調症とのうちの2つが含まれる。
【0685】
以下でフリードライヒ失調症に関して言及するものなどの、同様の治療戦略を取り入れて、さらに他のトリヌクレオチドリピートまたは伸長障害にも対処し得る。例えば、ほぼ同一の戦略を用いて治療することのできる別のトリプルリピート疾患は、3’UTRに伸長したCTGモチーフがある筋強直性ジストロフィー1型(DM1)である。フリードライヒ失調症においては、疾患はフラタキシン(FXN)の最初のイントロンにおけるGAAトリヌクレオチドの伸長により生じる。CRISPRを使用した一つの治療戦略は、最初のイントロンからGAAリピートを切り出すことである。伸長したGAAリピートはDNA構造に影響を及ぼすと考えられ、ヘテロクロマチンの形成の動員がもたらされてフラタキシン遺伝子がオフになる(図32A)。
【0686】
他の治療戦略と比べて競争力のある利点を以下に列挙する:
疾患がフラタキシンの発現低下に起因するため、この場合にsiRNAノックダウンは適用できない。ウイルス遺伝子療法が現在調査されている。動物モデルにおいてHSV-1ベースのベクターを使用してフラタキシン遺伝子が送達され、治療効果が示されている。しかしながら、ウイルスベースのフラタキシン送達の長期有効性は、いくつかの問題を抱えている:第一に、フラタキシンの発現を健常者の天然レベルに一致するように調節することが困難であり、第二に、フラタキシンの長期過剰発現は細胞死を引き起こす。
【0687】
ヌクレアーゼを使用してGAAリピートを切り出すことにより健常な遺伝子型を回復し得るが、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALEN戦略は、高い有効性のヌクレアーゼの2つのペアを送達する必要があり、これは送達ならびにヌクレアーゼのエンジニアリングの両方にとって困難である(ZFNまたはTALENによるゲノムDNAの効率的な切り出しは達成が困難である)。
【0688】
上記の戦略とは対照的に、CRISPR-Cas系には明らかな利点がある。Cas9酵素は効率性が高く、かつ多重化し易い、つまり1つ以上の標的を同時に設定し得るということになる。これまでのところ、ゲノムDNAの効率的な切り出しはCas9によるとヒト細胞で30%を超え、30%もの高さであることもあり、将来改善され得る。さらに、ハンチントン病(HD)のような特定のトリヌクレオチドリピート障害に関しては、2つのアレル間に違いがある場合にコード領域におけるトリヌクレオチドリピートが対処され得る。具体的には、HD患者が突然変異体HTTに関してヘテロ接合であり、かつ野生型と突然変異体とのHTTアレル間にSNPなどのヌクレオチドの違いがある場合、Cas9を使用して突然変異体HTTアレルを特異的に標的化し得る。ZFNまたはTALENは、一塩基の違いに基づく2つのアレルを区別する能力を有しないであろう。
【0689】
CRISPR-Cas9酵素を使用してフリードライヒ失調症に対処する戦略を採るにおいて、本出願人らは、GAA伸長に隣接する部位を標的にする複数のガイドRNAを設計し、最も効率性および特異性が高いものを選択する(図32B)。
【0690】
本出願人らは、FXNのイントロン1を標的にするガイドRNAとCas9との組み合わせを送達することにより、GAA伸長領域の切り出しを媒介する。AAV9を使用してCas9のおよび脊髄における効率的な送達を媒介し得る。
【0691】
GAA伸長に隣接するAluエレメントが重要であると考えられる場合、標的にすることのできる部位の数に制約があり得るが、本出願人らはAluエレメントの破壊を回避する戦略を採り得る。
【0692】
代替的戦略:
Cas9を使用してゲノムを改変するよりむしろ、本出願人らはまた、Cas9(ヌクレアーゼ活性欠損)ベースのDNA結合ドメインを使用して転写活性化ドメインをFXN遺伝子にターゲティングすることでFXN遺伝子を直接活性化し得る。本出願人らは、他の方法と比較して十分にロバストであることを確実にするためCas9媒介性の人為的な転写活性化のロバスト性に対処する必要があり得る(Tremblayet al.,「転写活性化因子様エフェクタータンパク質はフラタキシン遺伝子の発現を誘導する(TranscriptionActivator-Like EffectorProteins Induce the Expression of the FrataxinGene)」;Human GeneTherapy.August 2012,23(8):883-890)。
【0693】
実施例29:Cas9ニッカーゼを使用してオフターゲット開裂を最小限に抑えるための戦略
本出願において既述したとおり、Cas9を、以下の1つ以上の突然変異を介して一本鎖開裂を媒介し得るように突然変異させ得る:D10A、E762A、およびH840A。
【0694】
NHEJによる遺伝子ノックアウトを媒介するため、本出願人らはニッカーゼバージョンのCas9を2つのガイドRNAと共に使用する。各個別のガイドRNAによるオフターゲットニッキングは主に突然変異を伴わず修復されてもよく、二本鎖切断(NHEJによる突然変異を生じさせ得る)は、標的部位が互いに隣接するときに限り起こる。二重ニッキングにより導入される二本鎖切断は平滑末端ではないため、TREX1などの末端プロセシング酵素の同時発現がNHEJ活性レベルを増加させ得る。
【0695】
以下の表形式の標的リストは、以下の疾患に関与する遺伝子に対するものである:
ラフォラ病-ニューロンにおけるグリコーゲンを低下させるための標的GSY1またはPPP1R3C(PTG)。
【0696】
高コレステロール血症-標的PCSK9
標的配列をペア(LおよびR)で列挙し、ここではスペーサーにおけるヌクレオチドの数は異なる(0~3bp)。各スペーサーそれ自体を野生型Cas9と共に使用して標的遺伝子座に二本鎖切断を導入し得る。
【0697】
【表39】
【0698】
ガイドRNAの安定性を向上させかつ特異性を増加させるための代替的戦略
1.ガイドRNAの5’におけるヌクレオチドは、天然RNAのようなリン酸エステル結合よりむしろ、チオールエステル結合で連結され得る。チオールエステル結合は、内因性RNA分解機構によるガイドRNAの消化を防止し得る。
2.ガイドRNAのガイド配列(5’20bp)におけるヌクレオチドは、結合特異性を改善するためのベースとして架橋核酸(bridgednucleic acid:BNA)を使用することができる。
【0699】
実施例30:迅速多重ゲノム編集用のCRISPR-Cas
本発明の態様は、標的設計後3~4日以内に遺伝子改変の効率および特異性を試験することができ、かつ2~3週間以内に改変されたクローン細胞系を得ることができるプロトコルおよび方法に関する。
【0700】
プログラム可能なヌクレアーゼは、ゲノムエンジニアリングを高精度で媒介するのに強力な技術である。微生物CRISPR適応免疫系由来のRNAガイドCas9ヌクレアーゼを使用して、単純にそのガイドRNAにおいて20ntターゲティング配列を指定することにより真核細胞における効率的なゲノム編集を促進することができる。本出願人らは、哺乳類細胞における効率的なゲノム編集を促進し、かつ下流機能性研究用の細胞系を作成するためCas9を応用する一組のプロトコルを記載する。標的設計から始めて3~4日以内に効率的かつ特異的な遺伝子改変を達成することができ、かつ2~3週間以内に改変されたクローン細胞系を得ることができる。
【0701】
生体系および生物をエンジニアリングする能力は、基礎科学、医薬、およびバイオテクノロジー全域にわたる非常に大きな適用可能性を有している。ここで、内在性ゲノム遺伝子座の正確な編集を促進するプログラム可能な配列特異的エンドヌクレアーゼが、これまで遺伝学的に扱い易くなかったものを含め、広範囲の種における遺伝的エレメントおよび原因遺伝子変異の体系的調査を可能にする。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびRNAガイドCRISPR-Casヌクレアーゼシステムを含め、多くのゲノム編集技術が近年出現している。最初の2つの技術は、エンドヌクレアーゼ触媒ドメインをモジュール式DNA結合タンパク質にテザー係留して、特定のゲノム遺伝子座に標的DNA二本鎖切断(DSB)を誘導するという共通した戦略を用いる。対照的に、Cas9は、標的DNAとのワトソン・クリック型塩基対合を介して小さいRNAにガイドされるヌクレアーゼであり、設計が容易で効率的な、かつ種々の細胞型および生物のハイスループットの多重化した遺伝子編集に良く適したシステムを呈する。ここで本出願人らは、最近開発されたCas9ヌクレアーゼを応用して哺乳類細胞における効率的なゲノム編集を促進し、かつ下流機能性研究用の細胞系を作成する一組のプロトコルを記載する。
【0702】
ZFNおよびTALENと同様に、Cas9は標的ゲノム遺伝子座におけるDSBを刺激することによりゲノム編集を促進する。Cas9によって開裂されると、標的遺伝子座は2つの主要なDNA損傷修復経路であるエラープローン非相同末端結合(NHEJ)経路または高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)経路のうちの一方を経る。いずれの経路を利用しても所望の編集結果を達成し得る。
【0703】
NHEJ:修復テンプレートが存在しない場合、NHEJプロセスはDSBを再びライゲートし直し、これによりインデル突然変異の形態の傷跡が残り得る。コードエクソン内に現れるインデルはフレームシフト突然変異および未成熟終止コドンをもたらし得るため、このプロセスを利用して遺伝子ノックアウトを達成することができる。ゲノムにおいて大きい欠失を媒介するため複数のDSBも利用し得る。
【0704】
HDR:相同性組換え修復は、NHEJの代替となる主要なDNA修復経路である。HDRは典型的にはNHEJと比べて起こる頻度が低いが、HDRを利用すると、外因的に導入された修復テンプレートの存在下で標的遺伝子座に正確な定義付けられた改変を作成し得る。修復テンプレートは、二本鎖DNAの形態であって、挿入配列に隣接する相同性アームを含む従来のDNAターゲティング構築物と同様に設計されてもよく、あるいは一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN)の形態であってもよい。後者は、原因遺伝子変異を探索するための単一のヌクレオチド突然変異の導入など、ゲノムに小さい編集を作製するための有効かつ単純な方法を提供する。NHEJと異なり、HDRは概して分裂細胞においてのみ活性であり、その効率は細胞型および細胞状態に応じて変化する。
【0705】
CRISPRの概要:CRISPR-Cas系は、対照的に、Cas9ヌクレアーゼと低分子ガイドRNAとからなる最小でも二成分系である。Cas9を異なる遺伝子座にターゲティングし直し、または複数の遺伝子を同時に編集するために必要なことは、単純に、異なる20bpオリゴヌクレオチドのクローニングである。Cas9ヌクレアーゼの特異性は未だ完全には解明されていないが、CRISPR-Cas系の単純なワトソン・クリック型塩基対合はZFNまたはTALENドメインのそれより予測可能性が高いように思われる。
【0706】
II型CRISPR-Cas(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)は、Cas9を使用して外来性遺伝子エレメントを開裂する細菌適応免疫系である。Cas9は、可変的crRNAと必須の補助的tracrRNAとの非コードRNAのペアによりガイドされる。crRNAは、ワトソン・クリック型塩基対合で標的DNAの位置を特定することにより特異性を決定する20ntガイド配列を含む。天然の細菌系では複数のcrRNAが共転写され、Cas9を種々の標的に向けさせる。化膿性連鎖球菌(Streptococcuspyogenes)に由来するCRISPR-Cas系では、標的DNAが5’-NGG/NRGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(他のCRISPR系については異なり得る)の直前になければならない。
【0707】
CRISPR-Casは、哺乳類細胞ではヒトコドン最適化Cas9および必須のRNA成分の異種発現により再構成される。さらに、crRNAとtracrRNAとを融合してキメラの合成ガイドRNA(sgRNA)を作り出すことができる。このように、sgRNA内の20ntガイド配列を変えることにより、目的とするいかなる標的にもCas9を仕向け直すことができる。
【0708】
その実現の容易さおよび多重化可能性を所与として、Cas9は、NHEJおよびHDRの両方による特定の突然変異を担持するエンジニアリングされた真核細胞の作成に用いられてきた。加えて、sgRNAおよびCas9をコードするmRNAの胚への直接注入が、複数の改変アレルを有するトランスジェニックマウスの迅速な作成を可能にしている;これらの結果は、本来遺伝的に扱いが困難な生物の編集に有望である。
【0709】
その触媒ドメインの1つに破壊を有する突然変異体Cas9が、DNAを開裂するというよりむしろそれにニックを入れるようにエンジニアリングされており、一本鎖切断およびHDRによる優先的修復が可能となって、オフターゲットDSBによる望ましくないインデル突然変異が潜在的に改良されている。加えて、突然変異したDNA開裂触媒残基を両方ともに有するCas9突然変異体が、大腸菌(E.coli)における転写調節を可能にするように適合されており、多様な適用に合わせてCas9を機能性にし得る可能性を実証している。本発明の特定の態様は、ヒト細胞の多重編集用Cas9の構築および適用に関する。
【0710】
本出願人らは、真核生物遺伝子編集を促進するため核局在化配列が隣接するヒトコドン最適化Cas9を提供している。本出願人らは、20ntガイド配列を設計するに当たっての考慮点、sgRNAの迅速な構築および機能検証プロトコル、および最後に、Cas9ヌクレアーゼを使用したヒト胎児腎臓系(HEK-293FT)およびヒト幹細胞系(HUES9)におけるNHEJベースおよびHDRベースの両方のゲノム改変の媒介を記載する。このプロトコルは他の細胞型および生物にも同様に適用することができる。
【0711】
sgRNAの標的選択:遺伝子ターゲティング用の20ntガイド配列の選択には、2つの主な考慮点がある:1)化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9については標的配列が5’-NGGPAMの前になければならず、および2)ガイド配列はオフターゲット活性を最小限に抑えるように選択されなければならない。本出願人らは、目的の入力配列を取り込み好適な標的部位を同定するオンラインCas9ターゲティング設計ツールを提供した。各sgRNAについてオフターゲット改変を実験的に評価するため、本出願人らはまた、塩基対合ミスマッチのアイデンティティ、位置、および分布の効果に関する本出願人らの定量的特異性分析に従い順位が付けられた、意図する各標的についての計算的に予測されたオフターゲット部位も提供する。
【0712】
計算的に予測されたオフターゲット部位に関する詳細情報は以下のとおりである:
オフターゲット開裂活性の考慮点:他のヌクレアーゼと同様に、Cas9は低い頻度でゲノムにおけるオフターゲットDNA標的を開裂し得る。所与のガイド配列がオフターゲット活性を呈する程度は、酵素濃度、用いられる特定のガイド配列の熱力学、および標的ゲノムにおける同様の配列の存在量を含めた複合的な要因に依存する。Cas9の常法の適用については、オフターゲット開裂の程度を最小限に抑えるとともに、オフターゲット開裂の存在を検出可能である方法を考慮することが重要である。
【0713】
オフターゲット活性の最小化:細胞系における適用について、本出願人らは、以下の2ステップでオフターゲットゲノム改変の程度を低下させることを推奨する。第一に、本発明者らのオンラインCRISPR標的選択ツールを使用して、所与のガイド配列がオフターゲット部位を有する可能性を計算的に評価することが可能である。このような分析は、ガイド配列と同様の配列であるオフターゲット配列に関してゲノムを網羅的に検索することにより実施される。sgRNAとその標的DNAとの間のミスマッチ塩基の効果の包括的な実験研究から、ミスマッチの許容範囲は、1)位置依存性-ガイド配列の3’末端側8~14bpは、5’塩基と比べてミスマッチに対する許容度が低い、2)数量依存性-一般に3個より多いミスマッチは許容されない、3)ガイド配列依存性-一部のガイド配列は他と比べてミスマッチに対する許容度が低い、および4)濃度依存性-オフターゲット開裂は形質移入されたDNAの量に対する感度が極めて高いことが明らかになった。本出願人らの標的部位分析ウェブツール(ウェブサイトgenome-engineering.org/toolsで利用可能)は、これらの基準を統合し、標的ゲノムにおける推定オフターゲット部位の予測を提供する。第二に、本出願人らは、Cas9およびsgRNA発現プラスミドの量をタイトレートしてオフターゲット活性を最小限に抑えることを推奨する。
【0714】
オフターゲット活性の検出:本出願人らのCRISPRターゲティングウェブツールを使用して、最も可能性の高いオフターゲット部位ならびにそれらの部位のSURVEYORまたはシーケンシング分析を実施するプライマーのリストを作成することが可能である。Cas9を使用して作成されるアイソジェニッククローンについて、本出願人らは、これらの候補オフターゲット部位のシーケンシングにより任意の望ましくない突然変異を調べることを強く推奨する。予測された候補リストに含まれない部位にオフターゲット改変があり得ることは注記に値し、完全なゲノム配列を実施してオフターゲット部位がないことを完全に確かめるべきである。さらに、同じゲノム内にいくつかのDSBが誘導される多重アッセイでは、低率の転座イベントがあり得、ディープシーケンシングなどの種々の技法を用いて評価され得る。
【0715】
本オンラインツールは、1)sgRNA構築物の調製、2)標的改変効率のアッセイ、および3)潜在的なオフターゲット部位における開裂の評価に必要なあらゆるオリゴおよびプライマーの配列を提供する。sgRNAの発現に使用されるU6RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、その転写物の最初の塩基としてグアニン(G)ヌクレオチドを好むため、20ntガイド配列がGから始まらないsgRNAの5’に追加のGが付加されることは注記に値する。
【0716】
sgRNAの構築および送達手法:所望の適用に応じて、sgRNAは、1)発現カセットを含有するPCRアンプリコン、または2)sgRNA発現プラスミドのいずれかとして送達され得る。PCRベースのsgRNA送達は、U6プロモーターテンプレートの増幅に使用されるリバースPCRプライマーにカスタムのsgRNA配列を付加する。得られるアンプリコンが、Cas9含有プラスミド(PX165)と同時形質移入され得る。この方法は、sgRNAコードプライマーを得て僅か数時間後に機能性試験用の細胞形質移入を実施することができるため、複数の候補sgRNAの迅速スクリーニングに最適である。この単純な方法ではプラスミドベースのクローニングおよび配列検証が不要となるため、大規模なノックアウトライブラリの作成または他のスケールに影響される適用のため多数のsgRNAを試験しまたは同時形質移入することに良く適している。プラスミドベースのsgRNA送達に必要な約20bpオリゴと比較して、sgRNAコードプライマーが100bpを超える点は留意すべきである。
【0717】
sgRNA用の発現プラスミドの構築もまた単純かつ高速であり、部分的に相補的なオリゴヌクレオチドのペアによる単一のクローニングことを含む。オリゴペアのアニーリング後、得られるガイド配列が、Cas9およびsgRNA配列の残り部分を有する不変の足場の両方を有するプラスミド(PX330)に挿入され得る。形質移入プラスミドもまた、インビボ送達用のウイルス産生を可能にするように改変され得る。
【0718】
PCRおよびプラスミドベースの送達に加え、Cas9およびsgRNAの両方をRNAとして細胞に導入することができる。
【0719】
修復テンプレートの設計:従来、標的DNA改変は、変化させる部位に隣接する相同性アームを含むプラスミドベースのドナー修復テンプレートを使用する必要があった。両側の相同性アームの長さは様々であってもよいが、典型的には500bpより長い。この方法を使用して、蛍光タンパク質または抗生物質耐性マーカーなどのレポーター遺伝子の挿入を含む大きい改変を作成することができる。ターゲティングプラスミドの設計および構築は、他の部分に記載されている。
【0720】
最近になって、クローニングを含まない定義付けられた遺伝子座の範囲内の短い改変には、ターゲティングプラスミドの代わりに一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN)が使用されている。高いHDR効率を達成するため、ssODNは標的領域と相同の少なくとも40bpのフランキング配列を両側に含み、標的遺伝子座に対してセンス方向にも、またはアンチセンス方向にも向くことができる。
【0721】
機能性試験
SURVEYORヌクレアーゼアッセイ:本出願人らは、SURVEYORヌクレアーゼアッセイ(またはPCRアンプリコンシーケンシングのいずれかによりインデル突然変異を検出した。本出願人らのオンラインCRISPR標的設計ツールは、両方の手法に推奨されるプライマーを提供する。しかしながら、SURVEYORまたはシーケンシングプライマーはまた、ゲノムDNAから目的の領域を増幅し、かつ非特異的なアンプリコンを回避するようにNCBIプライマーBlastを使用して手動で設計されてもよい。SURVEYORプライマーは、ゲル電気泳動による開裂バンドの明確な可視化を可能にするため、Cas9標的の両側で300~400bp(600~800bpの総アンプリコンに対して)を増幅するように設計されなければならない。過剰なプライマー二量体形成を防ぐため、SURVEYORプライマーは、典型的には融解温度が約60℃の25nt長未満であるように設計されなければならない。本出願人らは、特定のPCRアンプリコンに対する候補プライマーの各ペアを試験し、ならびにSURVEYORヌクレアーゼ消化プロセスの間に非特異的な開裂が存在しないことについても試験することを推奨する。
【0722】
プラスミド媒介性またはssODN媒介性HDR:HDRは改変領域のPCR増幅およびシーケンシングにより検出することができる。この目的上、PCRプライマーは、残存する修復テンプレート(HDRFwdおよびRev、図30)の誤検出を回避するため相同性アームが広がる領域の外側にアニールしなければならない。ssODN媒介性HDRはSURVEYORPCRプライマーを使用することができる。
【0723】
シーケンシングによるインデルまたはHDRの検出:本出願人らは、サンガー法または次世代ディープシーケンシング(NGS)のいずれかにより標的ゲノム改変を検出した。前者については、SURVEYORプライマーまたはHDRプライマーのいずれかを使用して改変領域からゲノムDNAを増幅することができる。アンプリコンは、形質転換のためpUC19などのプラスミドにサブクローニングしなければならない;個々のコロニーをシーケンシングすることによりクローン遺伝子型を明らかにすることができる。
【0724】
本出願人らは、より短いアンプリコン用の次世代シーケンシング(NGS)プライマーを、典型的には100~200bpのサイズ範囲で設計した。NHEJ突然変異の検出には、より長いインデルの検出が可能であるように、プライミング領域とCas9標的部位との間が少なくとも10~20bpのプライマーを設計することが重要である。本出願人らは、多重ディープシーケンシング用のバーコード付きアダプターを取り付ける二段階PCR法に関する指針を提供する。本出願人らは、偽陽性インデルレベルが全般的に低いことから、Illuminaプラットフォームを推奨する。次に、ClustalW、Geneious、または単純な配列解析スクリプトなどのリードアラインメントプログラムを用いてオフターゲット分析(先述した)を実施することができる。
【0725】
材料および試薬
sgRNA調製:
超高純度DNアーゼRNアーゼ不含蒸留水(Life Technologies、カタログ番号10977-023)
Herculase II融合ポリメラーゼ(AgilentTechnologies、カタログ番号600679)
重要。標準Taqポリメラーゼ、これは3’-5’エキソヌクレアーゼ校正活性を欠いており、フィデリティが低く、増幅エラーをもたらし得る。HerculaseIIは高フィデリティポリメラーゼ(Pfuと同等のフィデリティ)であり、最小限の最適化で高収率のPCR産物を生じる。他の高フィデリティポリメラーゼに代えてもよい。
Herculase II反応緩衝液(5×;AgilentTechnologies、ポリメラーゼと同梱)
dNTP溶液ミックス(各25mM;Enzymatics、カタログ番号N205L)
MgCl2(25mM;ThermoScientific、カタログ番号R0971)
QIAquickゲル抽出キット(Qiagen、カタログ番号28704)
QIAprep spinミニプレップキット(Qiagen、カタログ番号27106)
超高純度TBE緩衝液(10×;Life Technologies、カタログ番号15581-028)
SeaKem LEアガロース(Lonza、カタログ番号50004)
SYBR Safe DNA染色(10,000×;Life Technologies、カタログ番号S33102)
1kb Plus DNAラダー(Life Technologies、カタログ番号10787-018)
TrackIt CyanOrangeローディング緩衝液(LifeTechnologies、カタログ番号10482-028)
FastDigest BbsI(BpiI)(Fermentas/ThermoScientific、カタログ番号FD1014)
Fermentas Tango緩衝液(Fermentas/ThermoScientific、カタログ番号BY5)
DL-ジチオスレイトール(DTT;Fermentas/ThermoScientific、カタログ番号R0862)
T7 DNAリガーゼ(Enzymatics、カタログ番号L602L)
重要:より一般的に用いられるT4リガーゼを代用しないこと。T7リガーゼは付着末端で平滑末端と比べて1,000倍高い活性を有し、かつ市販の高濃度T4リガーゼと比べて全体的な活性が高い。
T7 2×迅速ライゲーション緩衝液(T7DNAリガーゼと同梱、Enzymatics、カタログ番号L602L)
T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs、カタログ番号M0201S)
T4DNAリガーゼ反応緩衝液(10×;New England Biolabs、カタログ番号B0202S)
アデノシン5’-三リン酸(10mM;New England Biolabs、カタログ番号P0756S)
PlasmidSafe ATP依存性DNアーゼ(Epicentre、カタログ番号E3101K)
One Shot Stbl3化学的コンピテント大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)(LifeTechnologies、カタログ番号C7373-03)
SOC培地(New England Biolabs、カタログ番号B9020S)
LB培地(Sigma、カタログ番号L3022)
LB寒天培地(Sigma、カタログ番号L2897)
アンピシリン、滅菌ろ過済み(100mg ml-1;Sigma、カタログ番号A5354)
【0726】
哺乳類細胞培養:
HEK293FT細胞(Life Technologies、カタログ番号R700-07)
ダルベッコ最小イーグル培地(DMEM、1×、高グルコース;Life Technologies、カタログ番号10313-039)
ダルベッコ最小イーグル培地(DMEM、1×、高グルコース、フェノールレッド不含;LifeTechnologies、カタログ番号31053-028)
ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、1×;Life Technologies、カタログ番号14190-250)
ウシ胎仔血清、適格品(qualified)かつ熱失活済み(Life Technologies、カタログ番号10438-034)
Opti-MEM I低血清培地(FBS;LifeTechnologies、カタログ番号11058-021)
ペニシリン-ストレプトマイシン(100×;Life Technologies、カタログ番号15140-163)
TrypLE(商標)Express(1×、フェノールレッド不含;Life Technologies、カタログ番号12604-013)
リポフェクタミン2000形質移入試薬(Life Technologies、カタログ番号11668027)
Amaxa SF細胞系4D-Nucleofector(登録商標)XキットS(32RCT;Lonza、カタログ番号V4XC-2032)
HUES 9細胞系(HARVARDSTEM CELL SCIENCE)
Geltrex LDEV不含低成長因子基底膜マトリックス(LifeTechnologies、カタログ番号A1413201)
mTeSR1培地(Stemcell Technologies、カタログ番号05850)
Accutase細胞剥離液(Stemcell Technologies、カタログ番号07920)
ROCK阻害薬(Y-27632;Millipore、カタログ番号SCM075)
Amaxa P3初代細胞4D-Nucleofector(登録商標)XキットS(32RCT;Lonzaカタログ番号V4XP-3032)
【0727】
遺伝子型解析:
QuickExtract DNA抽出溶液(Epicentre、カタログ番号QE09050)
SURVEYOR、RFLP分析、またはシーケンシング用のPCRプライマー(プライマー表参照)
Herculase II融合ポリメラーゼ(AgilentTechnologies、カタログ番号600679)
重要。Surveyorアッセイは一塩基ミスマッチの感度を有するため、高フィデリティポリメラーゼを使用することが特に重要である。他の高フィデリティポリメラーゼに代えてもよい。
Herculase II反応緩衝液(5×;AgilentTechnologies、ポリメラーゼと同梱)
dNTP溶液ミックス(各25mM;Enzymatics、カタログ番号N205L)
QIAquickゲル抽出キット(Qiagen、カタログ番号28704)
Taq緩衝液(10×;Genscript、カタログ番号B0005)
標準ゲル電気泳動用のSURVEYOR突然変異検出キット(Transgenomic、カタログ番号706025)
超高純度TBE緩衝液(10×;Life Technologies、カタログ番号15581-028)
SeaKem LEアガロース(Lonza、カタログ番号50004)
4~20%TBEゲル 1.0mm、15ウェル(LifeTechnologies、カタログ番号EC62255BOX)
Novex(登録商標)高密度TBE試料緩衝液(5×;Life Technologies、カタログ番号LC6678)
SYBR Gold核酸ゲル染色(10,000×;LifeTechnologies、カタログ番号S-11494)
1kb Plus DNAラダー(Life Technologies、カタログ番号10787-018)
TrackIt CyanOrangeローディング緩衝液(LifeTechnologies、カタログ番号10482-028)
FastDigest HindIII(Fermentas/ThermoScientific、カタログ番号FD0504)
【0728】
機器
フィルター付き滅菌ピペットチップ(Corning)
標準1.5ml微量遠心管(Eppendorf、カタログ番号0030 125.150)
Axygen96ウェルPCRプレート(VWR、カタログ番号PCR-96M2-HSC)
Axygen 8ストリップPCRチューブ(FischerScientific、カタログ番号14-222-250)
Falconチューブ、ポリプロピレン、15ml(BD Falcon、カタログ番号352097)
Falconチューブ、ポリプロピレン、50ml(BD Falcon、カタログ番号352070)
細胞ストレーナーキャップ付き丸底チューブ、5ml(BD Falcon、カタログ番号352235)
ペトリ皿(60mm×15mm;BD Biosciences、カタログ番号351007)
組織培養プレート(24ウェル;BD Falcon、カタログ番号353047)
組織培養プレート(96ウェル、平底;BD Falcon、カタログ番号353075)
組織培養皿(100mm;BD Falcon、353003)
プログラム可能な温度ステッピング機能付き96ウェルサーモサイクラー(AppliedBiosystems Veriti、カタログ番号4375786)。
卓上微量遠心機5424、5804(Eppendorf)
ゲル電気泳動システム(PowerPac basic power supply、Bio-Rad、カタログ番号164-5050、およびSub-CellGTシステムゲルトレー、Bio-Rad、カタログ番号170-4401)
Novex XCell SureLock Mini-Cell(Life Technologies、カタログ番号EI0001)
デジタルゲルイメージングシステム(GelDoc EZ、Bio-Rad、カタログ番号170-8270、および青色試料トレー、Bio-Rad、カタログ番号170-8273)
青色光トランスイルミネーターおよびオレンジフィルターゴーグル(SafeImager2.0;Invitrogen、カタログ番号G6600)
ゲル定量化ソフトウェア(Bio-Rad、ImageLab、GelDoc EZと同梱、または国立衛生研究所(National Institutes of Health)のオープンソースImageJ、ウェブサイトrsbweb.nih.gov/ij/で利用可能)
紫外分光光度計(NanoDrop 2000c、ThermoScientific)
【0729】
試薬セットアップ
トリス-ホウ酸EDTA(TBE)電気泳動溶液 TBE緩衝液を蒸留水に希釈し、アガロースゲルをキャスティングするためおよびゲル電気泳動用緩衝液として使用するための1×ワーキング溶液とする。緩衝液は室温(18~22℃)で少なくとも1年間保存しておくことができる。
【0730】
・ATP、10mM 10mM ATPを50μlアリコートに分け、-20℃で最長1年間保存する;凍結-融解サイクルを繰り返すことは避ける。
【0731】
・DTT、10mM 蒸留水中に10mM DTT溶液を調製し、20μlアリコートとして-70℃で最長2年間保存する;DTTは酸化し易いため、反応毎に新しいアリコートを使用する。
【0732】
・D10培養培地 HEK293FT細胞を培養するため、DMEMに1×GlutaMAXおよび10%(vol/vol)ウシ胎仔血清を補給することによりD10培養培地を調製する。プロトコルに示すとおり、この培地はまた1×ペニシリン-ストレプトマイシンを補給してもよい。D10培地は前もって作製しておき、4℃で最長1ヶ月間保存することができる。
【0733】
・mTeSR1培養培地 ヒト胚性幹細胞の培養のため、5×サプリメント(mTeSR1基本培地と同梱)、および100ug/mlNormocinを補給してmTeSR1培地を調製する。
【0734】
手順
ターゲティング成分の設計およびオンラインツールの使用・タイミング1日
1|標的ゲノムDNA配列を入力する。本出願人らは、目的の入力配列を受け取り、好適な標的部位を同定してそれに順位を付け、および意図する標的毎にオフターゲット部位を計算的に予測するオンラインCas9ターゲティング設計ツールを提供する。あるいは、任意の5’-NGGの直ちに上流で20bp配列を同定することにより、ガイド配列を手動で選択してもよい。
【0735】
2|オンラインツールによって特定されるとおりの必要なオリゴおよびプライマーを注文する。部位を手動で選択する場合、オリゴおよびプライマーを設計しなければならない。
【0736】
sgRNA発現構築物の調製
3|sgRNA発現構築物を作成するため、PCRベースまたはプラスミドベースのいずれのプロトコルも用いることができる。
【0737】
(A)PCR増幅による・タイミング2時間
(i)本出願人らは希釈U6 PCRテンプレートを調製する。本出願人らはPX330をPCRテンプレートとして使用することを推奨するが、任意のU6含有プラスミドを同様にPCRテンプレートとして使用することができる。本出願人らはテンプレートを10ng/ulの濃度となるようにddHOで希釈した。U6によってドライブされるsgRNAを既に含んでいるプラスミドまたはカセットがテンプレートとして使用される場合、ゲル抽出を実施して、産物が意図したsgRNAのみを含み、テンプレートからのsgRNAキャリーオーバーの痕跡を含まないことを確実にする必要がある点に留意されたい。
【0738】
(ii)本出願人らは希釈PCRオリゴを調製した。U6-FwdおよびU6-sgRNA-Revプライマーは、ddHO中10uMの最終濃度に希釈される(10ulの100uMプライマーを90ulddHOに添加する)。
【0739】
(iii)U6-sgRNA PCR反応。本出願人らは、各U6-sgRNA-Revプライマーおよび必要に応じてマスターミックスに対して以下の反応をセットアップした:
【0740】
【表40】
【0741】
(iv)本出願人らは、ステップ(iii)の反応物に対し、以下のサイクル条件を使用してPCR反応を実施した:
【0742】
【表41】
【0743】
(v)反応の完了後、本出願人らは産物をゲル上で泳動させて、シングルバンドの増幅の成功を確かめた。1×SYBRSafe色素を含む1×TBE緩衝液に2%(wt/vol)アガロースゲルをキャスティングする。5ulのPCR産物をゲル中15Vcm-1で20~30分間泳動させる。成功したアンプリコンは、1つのシングル370bp産物を生じるはずであり、テンプレートは見えないはずである。PCRアンプリコンをゲル抽出する必要はないはずである。
【0744】
(vi)本出願人らは、製造者の指示に従いQIAquick PCR精製キットを使用してPCR産物を精製した。35ulの緩衝液EBまたは水中にDNAを溶出させる。精製したPCR産物は4℃または-20℃で保存しておくことができる。
【0745】
(B)Cas9含有バイシストロニック発現ベクターへのsgRNAのクローニング・タイミング3日
(i)sgRNAオリゴインサートを調製する。本出願人らは、各sgRNA設計について、100uMの最終濃度となるようにオリゴの上部鎖および下部鎖を再懸濁した。オリゴを以下のとおりリン酸化およびアニーリングする:
【0746】
【表42】
【0747】
(ii)以下のパラメータを使用してサーモサイクラーでアニーリングする:
37℃で30分
95℃で5分
毎分5℃で25℃まで下降させる。
【0748】
(iii)本出願人らは、1ulのオリゴを199ulの室温ddHOに添加することにより、リン酸化およびアニーリングしたオリゴを1:200希釈した。
【0749】
(iv)sgRNAオリゴをPX330にクローニングする。本出願人らは、各sgRNAについてGoldenGate反応をセットアップする。本出願人らは、インサートのない、PX330のみの陰性対照を設定することを推奨する。
【0750】
【表43】
【0751】
(v)Golden Gate反応物を合計1時間インキュベートする:
【0752】
【表44】
【0753】
(vi)本出願人らはPlasmidSafeエキソヌクレアーゼでGolden Gate反応物を処理することにより、任意の残留する線状DNAを消化させた。このステップは任意選択であるものの、強く推奨される。
【0754】
【表45】
【0755】
(vii)本出願人らはPlasmidSafe反応物を37℃で30分間インキュベートし、続いて70℃で30分間不活性化した。休題:完了後、反応物を凍結させて後に続行してもよい。環状DNAは少なくとも1週間安定しているはずである。
【0756】
(viii)形質転換。本出願人らはPlasmidSafe処理したプラスミドを、細胞と共に提供されるプロトコルに従いコンピテントな大腸菌(E.coli)株に形質転換した。本出願人らは迅速な形質転換のためStbl3を推奨する。簡潔に言えば、本出願人らは、ステップ(vii)からの5ulの産物を20ulの化学的にコンピテントな氷冷Stbl3細胞に添加した。次にこれを氷上で10分間インキュベートし、42℃で30秒間熱ショックを与え、直ちに氷上に2分間戻し、100ulのSOC培地を添加し、これを100ug/mlアンピシリンを含有するLBプレートにプレーティングして37℃で一晩インキュベートする。
【0757】
(ix)2日目:本出願人らはコロニーの成長に関してプレートを調べた。典型的には、陰性対照プレート(BbsI消化PX330のみのライゲーション、アニーリングされたsgRNAオリゴなし)にはコロニーはなく、PX330-sgRNAクローニングプレートには数十個ないし数百個のコロニーがある。
【0758】
(x)本出願人らは各プレートから2~3個のコロニーを取り、sgRNAが正しく挿入されていることを確かめた。本出願人らは、滅菌ピペットチップを使用して単一のコロニーを100ug/mlアンピシリン含有LB培地の3ml培養液に接種した。37℃で一晩インキュベートし、振盪する。
【0759】
(xi)3日目:本出願人らはQiAprep Spinミニプレップキットを製造者の指示に従い使用して、一晩培養物からプラスミドDNAを単離した。
【0760】
(xii)CRISPRプラスミドを配列検証する。本出願人らはU6プロモーターからU6-Fwdプライマーを使用してシーケンシングすることにより各コロニーの配列を検証した。任意選択:以下のプライマー表に掲載するプライマーを使用してCas9遺伝子を配列決定する。
【0761】
【表46】
【0762】
【表47】
【0763】
本出願人らはシーケンシングの結果をPX330クローニングベクター配列と照合し、U6プロモーターとsgRNA足場の残り部分との間に20bpガイド配列が挿入されたことを確かめた。GenBankベクターマップフォーマット(*.gbfile)でのPX330マップの詳細および配列を、ウェブサイトcrispr.genome-engineering.orgで見ることができる。
【0764】
(任意選択)ssODNテンプレートの設計・タイミング3日 事前計画
3|ssODNを設計および注文する。センスまたはアンチセンスのいずれかのssODNを供給業者から直接購入することができる。本出願人らは、両側に少なくとも40bpおよび最適なHDR効率のためには90bpの相同性アームを設計することを推奨する。本出願人らの経験上、改変効率はアンチセンスオリゴの方がやや高い。
【0765】
4|本出願人らはssODNウルトラマー(ultramer)を10uMの最終濃度となるように再懸濁して希釈した。センスssODNとアンチセンスssODNとを組み合わせない、またはアニーリングしないこと。-20℃で保存する。
【0766】
5|HDR適用に関する注記として、本出願人らはsgRNAをPX330プラスミドにクローニングすることを推奨する。
【0767】
sgRNAの機能検証:細胞培養および形質移入・タイミング3~4日
CRISPR-Cas系は多くの哺乳類細胞系で使用されている。細胞系毎に条件が異なり得る。以下のプロトコルは、HEK239FT細胞の形質移入条件を詳説する。ssODN媒介性HDR形質移入に関する注記として、ssODNの最適な送達のためAmaxaSF細胞系Nucleofectorキットが使用される。これは次節に記載する。
【0768】
7|HEK293FTの維持。細胞は製造者の推奨に従い維持される。簡潔に言えば、本出願人らは、D10培地(10%ウシ胎仔血清を補給したGlutaMaxDMEM)中、37℃および5%CO2で細胞を培養した。
【0769】
8|継代のため、本出願人らは培地を取り出し、細胞を押し退けないようDPBSを容器の側面に穏やかに加えることにより1回リンスした。本出願人らはT75フラスコに2mlのTrypLEを添加し、37℃で5分間インキュベートした。10mlの温D10培地を添加して失活させ、50mlFalconチューブに移した。本出願人らは細胞を穏やかに粉砕することにより解離させ、必要に応じて新しいフラスコに播種し直した。本出願人らは、典型的には2~3日毎に1:4または1:8の分割比で細胞を継代し、細胞を70%を超えるコンフルエンシーに至らせることが絶対にないようにする。細胞系は継代数が15に達したところで再出発する。
【0770】
9|形質移入用細胞の調製。本出願人らは、形質移入の16~24時間前に、十分に解離した細胞を24ウェルプレートの抗生物質不含D10培地にウェル当たり1.3×10細胞の播種密度および500ulの播種容積でプレーティングした。必要に応じて製造者のマニュアルに従いスケールアップまたはスケールダウンする。推奨される密度より多い細胞をプレーティングすることは、そうすることによって形質移入効率が低下し得るため勧められない。
【0771】
10|形質移入当日、細胞は70~90%コンフルエンシーで最適である。細胞は、リポフェクタミン2000またはAmaxaSF細胞系Nucleofectorキットで製造者のプロトコルに従い形質移入し得る。
【0772】
(A)PX330にクローニングされるsgRNAについては、本出願人らは500ngの配列検証したCRISPRプラスミドを形質移入した;2つ以上のプラスミドを形質移入する場合、等モル比および合計500ng以下で混合する。
【0773】
(B)PCRによって増幅するsgRNAについては、本出願人らは以下を混合した:
【0774】
【表48】
【0775】
本出願人らは、信頼のおける定量化のため技術的トリプリケートで形質移入することおよび形質移入対照(例えばGFPプラスミド)を入れて形質移入効率をモニタすることを推奨する。加えて、下流機能アッセイの陰性対照としてPX330クローニングプラスミドおよび/またはsgRNAアンプリコンを単独で形質移入してもよい。
【0776】
11|本出願人らはリポフェクタミン複合体を細胞に添加し、ここでHEK293FT細胞はプレートから容易に剥がれ易く、形質移入効率の低下がもたらされ得るため、穏やかに添加した。
【0777】
12|本出願人らは、蛍光顕微鏡を使用して対照(例えばGFP)形質移入における蛍光細胞の割合を推定することにより、形質移入後24時間の細胞の効率を調べた。典型的には70%を超える細胞が形質移入される。
【0778】
13|本出願人らは、培養培地にさらに500ulの温D10培地を補給した。細胞が容易に剥がれ得るため、D10はウェルの側面に極めてゆっくりと加え、低温の培地は使用しないこと。
【0779】
14|細胞は形質移入後合計48~72時間インキュベートしてからインデル分析のため回収する。48時間以降はインデル効率の著しい増加はない。
【0780】
(任意選択)HR用のCRISPRプラスミドとssODNまたはターゲティングプラスミドとの同時形質移入・タイミング3~4日
15|ターゲティングプラスミドを線状化する。ターゲティングベクターは、可能な場合には、相同性アームの一方の近傍またはいずれかの相同性アームの遠位端におけるベクター骨格中の制限部位で1回切断することにより線状化する。
【0781】
16|本出願人らは、少量の線状化プラスミドを切断されていないプラスミドと共に0.8~1%アガロースゲル上で泳動させて、線状化の成功を確認した。線状化プラスミドはスーパーコイルプラスミドより上に泳動するはずである。
【0782】
17|本出願人らはQIAQuick PCR精製キットで線状化プラスミドを精製した。
【0783】
18|形質移入用の細胞を調製する。本出願人らはT75またはT225フラスコでHEK293FTを培養した。形質移入当日までに十分な細胞数が計画される。Amaxaストリップキュベットフォーマットには、形質移入当たり2×10細胞が使用される。
【0784】
19|形質移入用のプレートを調製する。本出願人らは12ウェルプレートの各ウェルに1mlの温D10培地を添加した。プレートはインキュベーターに置かれ、培地が温かいまま保たれる。
【0785】
20|ヌクレオフェクション。本出願人らは、以下のステップに適合させて、AmaxaSF細胞系Nucleofector 4Dキットの製造者の指示に従いHEK293FT細胞を形質移入した。
【0786】
a.ssODNとCRISPRとの同時形質移入については、PCRチューブに以下のDNAを予め混合する:
【0787】
【表49】
【0788】
b.HDRターゲティングプラスミドとCRISPRとの同時形質移入については、PCRチューブに以下のDNAを予め混合する:
【0789】
【表50】
【0790】
形質移入対照に関しては前節を参照されたい。加えて、本出願人らは、陰性対照としてssODNまたはターゲティングプラスミドを単独で形質移入することを推奨する。
【0791】
21|単一細胞に解離する。本出願人らは培地を取り出し、細胞を押し退けないよう注意しながらDPBSで1回穏やかにリンスした。2mlのTrypLEをT75フラスコに添加し、37℃で5分間インキュベートする。10mlの温D10培地を添加して失活させ、50mlFalconチューブにおいて穏やかに粉砕する。細胞は穏やかに粉砕して単一細胞に解離することが推奨される。大きい凝集塊は形質移入効率を低下させ得る。本出願人らは懸濁液から10ulアリコートを取り、カウントのため90ulのD10培地に希釈した。本出願人らは細胞をカウントし、形質移入に必要な細胞数および懸濁液の容積を計算した。本出願人らは、典型的にはAmaxaNucleocuvetteストリップを使用して条件当たり2×10細胞を形質移入したとともに、後続のピペッティングステップでの容積損失を調整するため所要数より20%多い細胞を計算することを推奨する。必要な容積を新しいFalconチューブに移す。
【0792】
23|本出願人らはこの新しいチューブを200×gで5分間スピンダウンした。
【0793】
本出願人らは、SF溶液とS1サプリメントとをAmaxaが推奨するとおり混合して形質移入溶液を調製した。Amaxaストリップキュベットについては、形質移入当たり合計20ulの補給SF溶液が必要である。同様に、本出願人らは、所要量より20%多い容積を計算することを推奨する。
【0794】
25|本出願人らは、ステップ23のペレット化した細胞から培地を完全に取り除き、適切な容積(2×10細胞当たり20ul)のS1補給SF溶液に穏やかに再懸濁した。細胞をSF溶液中に長時間置いたままにしないこと。
【0795】
26|20ulの再懸濁した細胞をステップ20の各DNAプレミックスにピペッティングする。穏やかにピペッティングして混合し、Nucleocuvetteストリップチャンバに移す。これを形質移入条件毎に繰り返す。
【0796】
Amaxaが推奨するNucleofector 4DプログラムCM-130を使用して細胞をエレクトロポレートする。
【0797】
28|本出願人らは、100ulの温D10培地を各Nucleocuvetteストリップチャンバに穏やかにかつゆっくりとピペッティングし、全容積をステップ19の予め温めたプレートに移す。重要。この段階で細胞は極めて脆弱であり、苛酷なピペッティングは細胞死を引き起こし得る。24時間インキュベートする。この時点で、陽性形質移入対照における蛍光細胞の割合から形質移入効率を推定することができる。ヌクレオフェクションは、典型的には70~80%より高い形質移入効率をもたらす。本出願人らは、各ウェルに1mlの温D10培地を、細胞を押し退けないようにしてゆっくりと添加した。細胞を合計72時間インキュベートする。
【0798】
ヒト胚性幹細胞(HUES 9)培養および形質移入・タイミング3~4日
hESC(HUES9)株の維持。本出願人らはHUES9細胞系をmTeSR1培地による無フィーダー条件に常法で維持する。本出願人らは、基本培地と同梱の5×サプリメントおよび100ug/mlNormocinを添加することによりmTeSR1培地を調製した。本出願人らは、10uMRock阻害薬をさらに補給したmTeSR1培地の10mlアリコートを調製した。組織培養プレートをコーティングする。冷GelTrexを冷DMEMに1:100希釈し、100mm組織培養プレートの表面全体をコーティングする。
【0799】
プレートをインキュベーターに37℃で少なくとも30分間置く。細胞のバイアルを15mlFalconチューブにおいて37℃で解凍し、5mlのmTeSR1培地を添加し、および200×gで5分間ペレット化する。GelTrexコーティングを吸い取り、Rock阻害薬を含有する10mlmTeSR1培地に約1×10細胞を播種する。形質移入後24時間で通常のmTeSR1培地に交換し、毎日リフィードする。細胞を継代する。細胞に新鮮なmTeSR1培地を毎日リフィードし、70%のコンフルエンシーに達するまで継代する。mTeSR1培地を吸い取り、細胞をDPBSで1回洗浄する。2mlのAccutaseを添加して37℃で3~5分間インキュベートすることにより細胞を解離する。10mlmTeSR1培地を添加して細胞を剥がし、15ml Falconチューブに移して穏やかに再懸濁する。GelTrexをコーティングしたプレートの10uM Rock阻害薬含有mTeSR1培地に改めてプレーティングする。プレーティング後24時間で通常のmTeSR1培地に交換する。
【0800】
形質移入。本出願人らは、解凍後少なくとも1週間細胞を培養した後にAmaxa P3初代細胞4-D Nucleofectorキット(Lonza)を使用して形質移入することを推奨する。対数期増殖細胞に新鮮培地を2時間リフィードした後形質移入する。accutaseで単一細胞または10細胞以下の小さいクラスターに解離し、穏やかに再懸濁する。ヌクレオフェクションに必要な細胞の数をカウントし、200×gで5分間スピンダウンする。培地を完全に取り除き、推奨される容積のS1補給P3ヌクレオフェクション溶液に再懸濁する。1×Rock阻害薬の存在下で、コーティングされたプレートにエレクトロポレートした細胞を穏やかにプレーティングする。
【0801】
形質移入の成功を確かめ、通常のmTeSR1培地を毎日、ヌクレオフェクション後24時間目から始めてリフィードする。典型的には、本出願人らはAmaxaヌクレオフェクションで70%より高い形質移入効率を観察する。DNAを回収する。形質移入後48~72時間でaccutaseを使用して細胞を解離し、5倍容積のmTeSR1を添加することにより失活させる。細胞を200×gで5分間スピンダウンする。ペレット化した細胞はQuickExtract溶液によるDNA抽出用に直接処理することができる。細胞をaccutaseを用いずに機械的に解離することは推奨されない。accutaseを失活させずにまたは推奨速度より高速で細胞をスピンダウンすることは推奨されない;それを行うと細胞の溶解が引き起こされ得る。
【0802】
FACSによるクローン細胞系の単離。タイミング・2~3時間ハンズオン;2~3週間拡大
形質移入後24時間でFACSによるかまたは段階希釈によりクローン単離を実施し得る。
【0803】
54|FACS緩衝液を調製する。有色の蛍光を使用して選別する必要のない細胞は、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(streptinomycin)を補給した通常のD10培地で選別し得る。有色の蛍光選別もまた必要である場合、フェノール不含DMEMまたはDPBSが通常のDMEMに代用される。1×ペニシリン/ストレプトマイシン(streptinomycin)を補給し、0.22umSteriflipフィルターでろ過する。
【0804】
55|96ウェルプレートを調製する。本出願人らは、各ウェルにつき1×ペニシリン/ストレプトマイシン(streptinomycin)を補給した100ulのD10培地を添加し、所望の数のクローンに必要なとおりのプレート数を調製した。
【0805】
56|FACS用の細胞を調製する。本出願人らは培地を完全に吸い取り、24ウェルプレートのウェル当たり100ulTrypLEを添加することにより、細胞を解離した。5分間インキュベートし、400ulの温D10培地を添加した。
【0806】
57|再懸濁した細胞を15ml Falconチューブに移し、20回穏やかに粉砕する。確実に単一細胞に解離したことを顕微鏡下で確かめることが推奨される。
【0807】
58|細胞を200×gで5分間スピンダウンする。
【0808】
59|本出願人らは培地を吸引し、細胞を200ulのFACS培地に再懸濁した。
【0809】
60|細胞を35umメッシュフィルターでろ過し、ラベルを付したFACSチューブに入れる。本出願人らは、BDFalcon細胞ストレーナーキャップ付き12×75mmチューブを使用することを推奨する。選別時まで細胞を氷上に置く。
【0810】
61|本出願人らは単一細胞を、ステップ55で調製した96ウェルプレートに選別した。本出願人らは、各プレート上の一つの単一の指定されたウェルに100細胞を陽性対照として選別することを推奨する。
【0811】
注。残りの細胞をとっておき、集団レベルでの遺伝子タイピングに使用して全体的な改変効率を評価し得る。
【0812】
62|本出願人らは細胞をインキュベーターに戻して2~3週間拡大させた。選別後5日で100ulの温D10培地を添加する。必要に応じて3~5日おきに100ulの培地を交換する。
【0813】
63|選別後1週間でコロニーの「クローンのような」外観、すなわち中心点から放射状に広がる丸いコロニーについて調べる。空のウェル、またはダブレットまたはマルチプレットが播種された可能性のあるウェルに印を付ける。
【0814】
64|細胞が60%を上回ってコンフルエントになったとき、本出願人らは、継代用に一組のレプリカ平板を調製した。レプリカ平板の各ウェルに100ulのD10培地を添加する。本出願人らは上下に激しく20回ピペッティングすることにより細胞を直接解離した。調製したレプリカ平板に再懸濁容積の20%をプレーティングしてクローン株を維持した。その後培地を2~3日おきに交換し、それに従い継代する。
【0815】
65|残りの80%の細胞はDNA単離および遺伝子タイピングに使用する。
【0816】
任意選択:希釈によるクローン細胞系の単離。タイミング・2~3時間ハンズオン;2~3週間拡大
66|本出願人らは上記に記載したとおり24ウェルプレートから細胞を解離した。確実に単一細胞に解離する。細胞ストレーナーを使用して細胞の凝集を防ぐことができる。
【0817】
67|条件毎に細胞の数をカウントする。各条件を100ul当たり0.5細胞の最終濃度となるようにD10培地に段階稀釈する。各96ウェルプレートについて、本出願人らは、12mlのD10中60細胞の最終カウントとなるように希釈することを推奨する。適切なクローン希釈のため細胞数を正確にカウントすることが推奨される。正確を期すため細胞を段階希釈の中間段階で再度カウントしてもよい。
【0818】
68|マルチチャンネルピペットを使用して100ulの希釈細胞を96ウェルプレートの各ウェルにピペッティングした。
【0819】
注。残りの細胞をとっておき、集団レベルでの遺伝子タイピングに使用して全体的な改変効率を評価し得る。
【0820】
69|本出願人らは、プレーティング後約1週間でコロニーの「クローンのような」外観、すなわち中心点から放射状に広がる丸いコロニーについて調べた。ダブレットまたはマルチプレットが播種された可能性のあるウェルに印を付ける。
【0821】
70|本出願人らは細胞をインキュベーターに戻して2~3週間拡大させた。前節に詳説したとおり必要に応じて細胞にリフィードする。
【0822】
CRISPR開裂効率のSURVEYORアッセイ。タイミング・5~6時間
形質移入細胞の開裂効率をアッセイする前に、本出願人らは、以下に記載するプロトコルを使用するSURVEYORヌクレアーゼ消化のステップにより陰性(形質移入されていない)対照試料でそれぞれの新規SURVEYORプライマーを試験することを推奨する。時折、シングルバンドのクリーンなSURVEYORPCR産物であっても非特異的SURVEYORヌクレアーゼ開裂バンドを生じ、正確なインデル分析を妨げる可能性がある。
【0823】
71|DNA用の細胞を回収する。細胞を解離し、200×gで5分間スピンダウンする。注。形質移入細胞系をとっておく必要に応じてこの段階でレプリカ平板を作製する。
【0824】
72|上清を完全に吸引する。
【0825】
73|本出願人らはQuickExtract DNA抽出溶液を製造者の指示に従い使用した。本出願人らは典型的には24ウェルプレートの各ウェルに50ulの溶液を使用し、および96ウェルプレートについては10ulを使用した。
【0826】
74|本出願人らは抽出DNAをddH2Oで100~200ng/ulの最終濃度となるように標準化した。休題:抽出DNAは-20℃で数ヶ月間保存しておくことができる。
【0827】
75|SURVEYOR PCRをセットアップする。本出願人らのオンライン/コンピュータアルゴリズムツールによって提供されるSURVEYORプライマーを使用して以下をマスターミックスする:
【0828】
【表51】
【0829】
76|本出願人らは、各反応について100~200ngのステップ74からの標準化ゲノムDNAテンプレートを添加した。
【0830】
77|30回以下の増幅サイクルに対し、以下のサイクル条件を使用してPCR反応を実施した:
【0831】
【表52】
【0832】
78|本出願人らは2~5ulのPCR産物を1%ゲル上で泳動させてシングルバンド産物を確認した。これらのPCR条件は多くのSURVEYORプライマー対で機能するように設計されているが、一部のプライマーは、テンプレート濃度、MgCl濃度、および/またはアニーリング温度を調整することによるさらなる最適化が必要になり得る。
【0833】
79|本出願人らはQIAQuick PCR精製キットを使用してPCR反応物を精製し、溶離液を20ng/ulに標準化した。休題:精製したPCR産物は-20℃で保存しておくことができる。
【0834】
80|DNAヘテロ二重鎖形成。アニーリング反応を以下のとおりセットアップした:
【0835】
【表53】
【0836】
81|以下の条件を用いて反応物をアニーリングする:
【0837】
【表54】
【0838】
82|SURVEYORヌクレアーゼS消化。本出願人らはマスターミックスを調製し、氷上で以下の成分を添加して、25ulの総最終容積についてステップ81のヘテロ二本鎖をアニーリングした:
【0839】
【表55】
【0840】
83|十分にボルテックスし、スピンダウンする。反応物を42℃で1時間インキュベートする。
【0841】
84|任意選択:SURVEYORキットの停止液2ulを添加してもよい。休題。消化産物は、後の分析のため-20℃で保存しておくことができる。
【0842】
85|SURVEYOR反応を可視化する。2%アガロースゲル上でSURVEYORヌクレアーゼ消化産物を可視化し得る。分解能を良くするため、産物を4~20%勾配ポリアクリルアミドTBEゲル上で泳動させてもよい。本出願人らは推奨されるローディング緩衝液で10ulの産物をロードし、製造者の指示に従いゲルを泳動させた。典型的には、本出願人らはブロモフェノールブルー色素が移動してゲルの底に達するまで泳動させる。同じゲル上にDNAラダーおよび陰性対照を含める。
【0843】
86|本出願人らは、TBE中に希釈した1×SYBR Gold色素でゲルを染色した。ゲルを15分間穏やかに揺り動かした。
【0844】
87|本出願人らは、バンドを過度に露光することなく定量的イメージングシステムを使用してゲルをイメージングした。陰性対照は、PCR産物のサイズに対応する1つのバンドのみを有するはずであるが、時折、他のサイズの非特異的な開裂バンドを有し得る。これらは、標的の開裂バンドとサイズが異なる場合には分析を妨げない。本出願人らのオンライン/コンピュータアルゴリズムツールによって提供される標的開裂バンドのサイズの合計は、PCR産物のサイズと等しいはずである。
【0845】
88|開裂強度を推定する。本出願人らはImageJまたは他のゲル定量化ソフトウェアを使用して各バンドの面積強度を定量化した。
【0846】
89|各レーンについて、本出願人らは、以下の式を使用して開裂されたPCR産物の割合(fcut)を計算した:fcut=(b+c)/(a+b+c)(式中、aは消化されなかったPCR産物の面積強度であり、bおよびcは各開裂産物の面積強度である)。90|開裂効率は、二重鎖形成の二項確率分布に基づき、以下の式を使用して推定し得る:
【0847】
91|
【数1】
【0848】
CRISPR開裂効率を評価するためのサンガーシーケンシング。タイミング・3日
最初のステップは、SURVEYORアッセイのステップ71~79と同じである。注:フォワードおよびリバースプライマーに適切な制限部位が付加される場合、サンガーシーケンシングにSURVEYORプライマーを用い得る。推奨されるpUC19骨格へのクローニングに関しては、フォワードプライマーにEcoRIおよびリバースプライマーにHindIIIを用い得る。
【0849】
92|アンプリコン消化。消化反応を以下のとおりセットアップする:
【0850】
【表56】
【0851】
93|pUC19骨格消化。消化反応を以下のとおりセットアップする:
【0852】
【表57】
【0853】
94|本出願人らは、QIAQuick PCR精製キットを使用して消化反応物を精製した。休題:精製したPCR産物は-20℃で保存しておくことができる。
【0854】
95|本出願人らは、消化したpUC19骨格およびサンガーアンプリコンを1:3のベクター:インサート比で以下のとおりライゲートした:
【0855】
【表58】
【0856】
96|形質転換。本出願人らは、細胞と共に供給されるプロトコルに従いPlasmidSafe処理したプラスミドをコンピテント大腸菌(E.coli)株に形質転換した。本出願人らは迅速な形質転換のためStbl3を推奨する。簡潔に言えば、5ulのステップ95の産物を20ulの氷冷化学コンピテントStbl3細胞に添加し、氷上で10分間インキュベートし、42℃で30秒間熱ショックを与え、直ちに氷に2分間戻し、100ulのSOC培地を添加し、100ug/mlアンピシリンを含有するLBプレートにプレーティングする。これを37℃で一晩インキュベートする。
【0857】
97|2日目:本出願人らはプレートのコロニー成長を調べた。典型的には、陰性対照プレート(EcoRI-HindIII消化pUC19のみのライゲーション、サンガーアンプリコンインサート無し)にはコロニーがなく、pUC19-サンガーアンプリコンクローニングプレートには数十個ないし数百個のコロニーがある。
【0858】
98|3日目:本出願人らは、QIAprep Spinミニプレップキットを製造者の指示に従い使用して、一晩培養物からプラスミドDNAを単離した。
【0859】
99|サンガーシーケンシング。本出願人らは、pUC19骨格からpUC19-フォワードプライマーを使用してシーケンシングすることにより各コロニーの配列を確かめた。本出願人らはシーケンシング結果を予想ゲノムDNA配列と照合し、Cas9誘発性のNHEJ突然変異の存在を調べた。%編集効率=(改変クローン数)/(総クローン数)。正確な改変効率を得るには、妥当な数のクローン(>24)を選ぶことが重要である。
【0860】
微小欠失のための遺伝子タイピング。タイミング・2~3日ハンズオン;2~3週間拡大
100|上記に記載したとおり、欠失させる領域を標的にするsgRNAのペアを細胞に形質移入した。
【0861】
101|形質移入後24時間で、クローン株を上記に記載したとおりFACSまたは段階希釈によって単離する。
【0862】
102|細胞を2~3週間拡大させる。
【0863】
103|本出願人らは上記に記載したとおり10ul QuickExtract溶液を使用してクローン株からDNAを回収し、ゲノムDNAを50~100ng/ulの最終濃度となるようにddHOで標準化した。
【0864】
104|改変領域をPCR増幅する。PCR反応を以下のとおりセットアップする:
【0865】
【表59】
【0866】
注:欠失サイズが1kbより大きい場合、内側フォワードプライマーおよび内側リバースプライマーを含む並行する一組のPCR反応をセットアップし、野生型アレルの存在についてスクリーニングする。
【0867】
105|逆位についてスクリーニングするため、PCR反応を以下のとおりセットアップする:
【0868】
【表60】
【0869】
注:プライマーは、外側フォワード+内側フォワード、または外側リバース+内側リバースのいずれかとしてペアにされる。
【0870】
106|本出願人らは、各反応について100~200ngのステップ103の標準化ゲノムDNAテンプレートを添加した。
【0871】
107|以下のサイクル条件を使用してPCR反応を実施した:
【0872】
【表61】
【0873】
108|本出願人らは2~5ulのPCR産物を1~2%ゲル上で泳動させて産物を確認した。これらのPCR条件は多くのプライマーで機能するように設計されるが、一部のプライマーは、テンプレート濃度、MgCl濃度、および/またはアニーリング温度を調整することによるさらなる最適化が必要となり得る。
【0874】
HDRによる標的改変のための遺伝子タイピング。タイミング・2~3日、2~3時間ハンズオン
109|本出願人らは上記に記載したとおりQuickExtract溶液を使用してDNAを回収し、ゲノムDNAを100~200ng/ulの最終濃度となるようにTEで標準化した。
【0875】
110|改変領域をPCR増幅する。PCR反応を以下のとおりセットアップする:
【0876】
【表62】
【0877】
111|本出願人らは各反応について100~200ngのステップ109のゲノムDNAテンプレートを添加し、以下のプログラムを実行した。
【0878】
【表63】
【0879】
112|本出願人らは5ulのPCR産物を0.8~1%ゲル上で泳動させてシングルバンド産物を確認した。プライマーは、テンプレート濃度、MgCl濃度、および/またはアニーリング温度を調整することによるさらなる最適化が必要となり得る。
【0880】
113|本出願人らはQIAQuick PCR精製キットを使用してPCR反応物を精製した。
【0881】
114|HDRの例では、EMX1遺伝子にHindIII制限部位が挿入される。これらの制限部位はPCRアンプリコンの制限酵素消化により検出される:
【0882】
【表64】
【0883】
i.DNAを37℃で10分間消化する:
ii.本出願人らは、ローディング色素を含む10ulの消化産物を、4~20%勾配ポリアクリルアミドTBEゲル上でキシレンシアノールバンドが移動してゲルの底に達するまで泳動させた。
iii.本出願人らは15分間揺り動かしながら1×SYBR Gold色素でゲルを染色した。
iv.上記でSURVEYORアッセイの節に記載したとおり開裂産物をイメージングして定量化する。HDR効率は以下の式により推定される:(b+c)/(a+b+c)(式中、aは消化されなかったHDRPCR産物の面積強度であり、bおよびcはHindIII切断断片の面積強度である)。
【0884】
115|あるいは、ステップ113の精製PCRアンプリコンをクローニングし、サンガーシーケンシングまたはNGSを用いて遺伝子型を決定してもよい。
【0885】
ディープシーケンシングおよびオフターゲット分析・タイミング1~2日
オンラインCRISPR標的設計ツールは、同定された標的部位のそれぞれについて候補ゲノムオフターゲット部位を作成する。これらの部位でのオフターゲット分析は、SURVEYORヌクレアーゼアッセイ、サンガーシーケンシング、または次世代ディープシーケンシングにより実施することができる。これらの部位の多くで改変率が低いまたは検出不能である可能性を考えると、本出願人らは、高感度および高精度のためのIlluminaMiseqプラットフォームによるディープシーケンシングを推奨する。プロトコルはシーケンシングプラットフォームによって異なり得る;ここで本出願人らは、シーケンシングアダプターをつなぎ合わせるための融合PCR方法について簡単に記載する。
【0886】
116|ディープシーケンシングプライマーを設計する。次世代シーケンシング(NGS)プライマーは、典型的には100~200bpサイズ範囲の、より短いアンプリコン向けに設計される。プライマーはNCBIプライマーBlastを使用して手動で設計されてもよく、またはオンラインCRISPR標的設計ツール(genome-engineering.org/toolsにあるウェブサイト)で生成されてもよい。
【0887】
117|Cas9標的細胞からゲノムDNAを回収する。QuickExtractゲノムDNAをddH2Oで100~200ng/ulに標準化する。
【0888】
118|初期ライブラリ調製PCR。ステップ116のNGSプライマーを使用して初期ライブラリ調製PCRを調製する。
【0889】
【表65】
【0890】
119|各反応につき100~200ngの標準化したゲノムDNAテンプレートを加える。
【0891】
120|20回以下の増幅サイクルについて、以下のサイクル条件を使用してPCR反応を実施する:
【0892】
【表66】
【0893】
121|2~5ulのPCR産物を1%ゲル上で泳動させてシングルバンド産物を確認する。あらゆるゲノムDNAPCRと同様に、NGSプライマーは、テンプレート濃度、MgCl濃度、および/またはアニーリング温度を調整することによるさらなる最適化が必要となり得る。
【0894】
122|PCR反応物をQIAQuick PCR精製キットを使用して精製し、溶離液を20ng/ulに標準化する。休題:精製したPCR産物は-20℃で保存しておくことができる。
【0895】
123|Nextera XTDNA試料調製キット。製造者のプロトコルに従い、各試料に対するユニークバーコードでMiseqシーケンシング準備ライブラリを作成する。
【0896】
124|シーケンシングデータを分析する。ClustalW、Geneious、または単純な配列解析スクリプトなどのリードアラインメントプログラムにより、オフターゲット分析を実施し得る。
【0897】
タイミング
ステップ1~2 sgRNAオリゴおよびssODNの設計および合成:1~5日、供給業者によって変動
ステップ3~5 CRISPRプラスミドまたはPCR発現カセットの構築:2時間~3日
ステップ6~53 細胞系への形質移入:3日(1時間のハンズオン時間)
ステップ54~70 任意選択のクローン株誘導:1~3週間、細胞型によって変動
ステップ71~91 SURVEYORによるNHEJの機能検証:5~6時間
ステップ92~124 サンガー法または次世代ディープシーケンシングによる遺伝子タイピング:2~3日(3~4時間のハンズオン時間)
【0898】
【表67】
【0899】
考察
CRISPR-Casは容易に多重化し得るため、いくつかの遺伝子の同時改変が促進され、かつ高効率で染色体微小欠失が媒介される。本出願人らは2つのsgRNAを使用することにより、HEK293FT細胞において最大68%の効率でのヒトGRIN2BおよびDYRK1A遺伝子座の同時標的化を実証した。同様に、sgRNAのペアを使用することによりエクソンの切り出しなどの微小欠失を媒介することができ、これはクローンレベルでPCRにより遺伝子型決定され得る。エクソン接合部の正確な位置は異なり得ることに留意されたい。本出願人らはまた、ssODNおよびターゲティングベクターを使用したHEK293FT細胞およびHUES9細胞におけるCas9の野生型およびニッカーゼ突然変異体の両方によるHDRの媒介も実証した(図30)。本出願人らはCas9ニッカーゼを使用したHUES9細胞でのHDRを検出できていないことに留意されたく、これはHUES9細胞における修復活性の低い効率または潜在的な違いに起因し得る。これらの値は典型的であるが、所与のsgRNAの開裂効率にはいくらかのばらつきがあり、まれにある種のsgRNAは、未だ解明されていない理由により機能しないこともある。本出願人らは、各遺伝子座につき2つのsgRNAを設計し、かつ意図される細胞型におけるそれらの効率を試験することを推奨する。
【0900】
実施例31:NLS
Cas9転写モジュレーター:本出願人らは、Cas9/gRNA CRISPR系を、DNA開裂の域を越える機能が遂行され得る汎用DNA結合システムに転換しようと試みた。例えば、1つまたは複数の機能ドメインを触媒的に不活性なCas9と融合することにより、本出願人らは新規機能、例えば転写活性化/抑制、メチル化/脱メチル化、またはクロマチン改変を付与している。この目標を達成するため、本出願人らは、ヌクレアーゼ活性に必須の2つの残基D10およびH840をアラニンに変えることにより、触媒的に不活性なCas9突然変異体を作製した。これらの2つの残基を突然変異させることにより、Cas9のヌクレアーゼ活性を消失させ、一方で標的DNAとの結合能は維持する。本出願人らが自らの仮説を検証するため着目することに決めた機能ドメインは、転写活性化因子VP64ならびに転写リプレッサーSIDおよびKRABである。
【0901】
Cas9核局在:本出願人らは、最も有効なCas9転写モジュレーターが、転写に対してその最も大きい影響を及ぼし得るところである核に強力に局在し得るという仮説を立てた。さらに、細胞質内に残る任意のCas9が望ましくない効果を有する可能性がある。本出願人らは、野生型Cas9が核に局在せず、複数の核局在化シグナル(NLS)を含まないことを決定した(CRISPR系が1つ以上のNLSを有する必要はないが、有利には少なくとも1つ以上のNLSを有する)。複数のNLS配列が必要であったため、Cas9を核に入れるのが困難であることは妥当であったとともに、Cas9と融合する任意のさらなるドメインが核局在を破壊する可能性があった。従って、本出願人らは、異なるNLS配列(pXRP02-pLenti2-EF1a-NLS-hSpCsn1(10A,840A)-NLS-VP64-EGFP、pXRP04-pLenti2-EF1a-NLS-hSpCsn1(10A,840A)-NLS-VP64-2A-EGFP-NLS、pXRP06-pLenti2-EF1a-NLS-EGFP-VP64-NLS-hSpCsn1(10A,840A)-NLS、pXRP08-pLenti2-EF1a-NLS-VP64-NLS-hSpCsn1(10A,840A)-NLS-VP64-EGFP-NLS)を有する4つのCas9-VP64-GFP融合構築物を作製した。これらの構築物をヒトEF1aプロモーターの発現下にあるレンチ骨格にクローニングした。よりロバストなタンパク質発現のため、WPREエレメントもまた加えた。各構築物を、リポフェクタミン2000(Lipofectame2000)を使用してHEK293FT細胞に形質移入し、形質移入後24時間でイメージングした。融合タンパク質が融合タンパク質のN末端およびC末端の両方にNLS配列を有するとき、最良の核局在が得られる。観察された最も高い核局在は、4つのNLSエレメントを有する構築物で起こった。
【0902】
Cas9に対するNLSエレメントの影響をさらに確実に理解するため、本出願人らは同じαインポーチンNLS配列を、0~3個のタンデムリピートを見てN末端またはC末端のいずれかに付加することにより、16個のCas9-GFP融合物を作製した。各構築物を、リポフェクタミン2000(Lipofectame2000)を使用してHEK293FT細胞に形質移入し、形質移入後24時間でイメージングした。顕著なことに、NLSエレメントの数は核局在の程度と直接相関しない。C末端にNLSを付加する方が、N末端への付加と比べて核局在により大きい影響を及ぼす。
【0903】
Cas9転写活性化因子:本出願人らは、Sox2遺伝子座を標的にしてRT-qPCRで転写活性化を定量化することにより、Cas9-VP64タンパク質の機能試験を行った。Sox2のプロモーターに跨るように8個のDNA標的部位を選択した。各構築物を、リポフェクタミン2000(Lipofectame2000)を使用してHEK293FT細胞に形質移入し、形質移入後72時間で細胞から全RNAを抽出した。1ugのRNAを40ul反応物でcDNAに逆転写した(qScriptSupermix)。単一の20ul TaqManアッセイqPCR反応に2ulの反応産物を加えた。各実験は生物学的および技術的トリプリケートで実施した。RT対照反応およびテンプレート対照反応はいずれも増幅を示さなかった。強力な核局在を示さない構築物pXRP02およびpXRP04は、活性化が起こらない。実に強力な核局在を示した構築物、pXRP08については、中程度の活性化が観察された。ガイドRNASox2.4およびSox2.5の場合に統計的に有意な活性化が観察された。
【0904】
実施例32:インビボマウスデータ
材料および試薬
Herculase II融合ポリメラーゼ(AgilentTechnologies、カタログ番号600679)
10× NE緩衝液 4(NEB、カタログ番号B7004S)
BsaI HF(NEB、カタログ番号R3535S)
T7 DNAリガーゼ(Enzymatics、カタログ番号L602L)
Fast Digest緩衝液、10×(ThermoScientific、カタログ番号B64)
FastDigest NotI(ThermoScientific、カタログ番号FD0594)
FastAPアルカリホスファターゼ(ThermoScientific、カタログ番号EF0651)
リポフェクタミン2000(Life Technologies、カタログ番号11668-019)
トリプシン(Life Technologies、カタログ番号15400054)
鉗子#4(Sigma、カタログ番号Z168777-1EA)
鉗子#5(Sigma、カタログ番号F6521-1EA)
10× ハンクス平衡塩類溶液(Sigma、カタログ番号H4641-500ML)
ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Life Technologies、カタログ番号P4333)
Neurobasal(Life Technologies、カタログ番号21103049)
B27サプリメント(Life Technologies、カタログ番号17504044)
L-グルタミン(Life Technologies、カタログ番号25030081)
グルタミン酸塩(Sigma、カタログ番号RES5063G-A7)
β-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250-100ML)
HAウサギ抗体(Cell Signaling、カタログ番号3724S)
LIVE/DEAD(登録商標)細胞イメージングキット(Life Technologies、カタログ番号R37601)
30G World Precision Instrumentシリンジ(World Precision Instruments、カタログ番号NANOFIL)
定位固定装置(Kopf Instruments)
UltraMicroPump3(World Precision Instruments、カタログ番号UMP3-4)
スクロース(Sigma、カタログ番号S7903)
塩化カルシウム(Sigma、カタログ番号C1016)
酢酸マグネシウム(Sigma、カタログ番号M0631)
トリス-HCl(Sigma、カタログ番号T5941)
EDTA(Sigma、カタログ番号E6758)
NP-40(Sigma、カタログ番号NP40)
フェニルメタンスルホニルフルオリド(Sigma、カタログ番号78830)
塩化マグネシウム(Sigma、カタログ番号M8266)
塩化カリウム(Sigma、カタログ番号P9333)
β-グリセロリン酸(Sigma、カタログ番号G9422)
グリセロール(Sigma、カタログ番号G9012)
Vybrant(登録商標)DyeCycle(商標)Ruby染色(Life technologies、カタログ番号S4942)
FACS Aria Flu-act-細胞選別機(Koch Institute of MIT、Cambridge、米国)
DNAeasy血液および組織キット(Qiagen、カタログ番号69504)
【0905】
手順
インビボで脳において使用されるgRNA多重体の構築
本出願人らは、マウスTETおよびDNMTファミリーメンバーを標的にする単一のgRNAを設計し、PCR増幅した(本明細書に記載されるとおり)。標的化効率をN2a細胞系で評価した(図33)。インビボでいくつかの遺伝子の同時改変を達成するため、効率的なgRNAをAAVパッケージングベクターに多重化した(図34)。系の効率のさらなる分析を促進するため、本出願人らは、ヒトシナプシンIプロモーターの制御下にあるGFP-KASHドメイン融合タンパク質からなる発現カセットを系に加えた(図34)。この改変により、ニューロン集団における系の効率のさらなる分析が可能になる(さらに詳細な手順は「核の選別およびインビボ結果」の節にある)。
【0906】
系の4つ全てのパーツを、Herculase II融合ポリメラーゼを使用し、以下のプライマーを使用してPCR増幅した:
【化25】
(NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNは、標的ゲノム配列の逆相補体である)
【0907】
本出願人らは、Golden Gate戦略を用いて単一ステップ反応で系の全てのパーツを組み立てた(1:1分子比):
【0908】
【表68】
【0909】
Golden Gate反応産物を、HerculaseII融合ポリメラーゼおよび以下のプライマーを使用してPCR増幅した:
【化26】
【0910】
PCR産物を、NotI制限部位を使用してAAV骨格のITR配列間にクローニングした:
PCR産物消化:
【0911】
【表69】
【0912】
AAV骨格消化:
【0913】
【表70】
【0914】
37℃で20分間インキュベートした後、QIAQuick PCR精製キットを使用して試料を精製した。標準化した試料を1:3のベクター:インサート比で以下のとおりライゲートした:
【0915】
【表71】
【0916】
細菌をライゲーション反応産物で形質転換した後、本出願人らは、得られたクローンをサンガーシーケンシングで確認した。
【0917】
Cas9構築物との同時形質移入後に陽性DNAクローンをN2a細胞で試験した(図35および図36)。
【0918】
AAV送達用新規Cas9構築物の設計
AAV送達系は、そのユニークな特徴にも関わらず、パッキングに限界がある-インビボでの発現カセットの送達を成功させるには、4.7kb未満のサイズでなければならない。SpCas9発現カセットのサイズを小さくして送達を促進するため、本出願人らはいくつかの変更を試験した:異なるプロモーター、より短いポリAシグナルおよび最後により小さいバージョンの黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)由来Cas9(SaCas9)(図37および図38)。試験した全てのプロモーターが、マウスMecp2(Grayet al.,2011)、ラットMap1bおよびトランケート型ラットMap1b(Liuand Fischer,1996)を含め、以前試験され、ニューロンにおいて活性であることが発表されたものである。代替的な合成ポリA配列は、同様に機能性であることが以前示されたものである(Levittet al.,1989;Grayet al.,2011)。クローニングした全ての構築物を、リポフェクタミン2000による形質移入後にN2a細胞で発現させ、ウエスタンブロッティング法で試験した(図39)。
【0919】
初代ニューロンでAAV多重系を試験する
開発した系のニューロンにおける機能性を確認するため、本出願人らはインビトロで初代ニューロン培養物を使用する。Bankerand Goslin(Bankerand Goslin,1988)により既発表のプロトコルに従いマウス皮質ニューロンを調製した。
【0920】
神経細胞は16日目の胚から得られる。安楽死させた妊娠中の雌から胚を摘出し、断頭し、頭部を氷冷HBSSに置く。次に頭蓋から鉗子(#4および#5)で脳を摘出し、別の交換した氷冷HBSSに移す。氷冷HBSSで満たしたペトリ皿において実体顕微鏡および#5鉗子の助けを借りてさらなるステップを実施する。半球を互いに分離し、脳幹から髄膜を取り除く。次に海馬を極めて慎重に解剖し、氷冷HBSSで満たした15mlの円錐管に入れる。海馬解剖後に残る皮質を、脳幹の残りの部分および嗅球を取り除いた後に類似のプロトコルを用いたさらなる細胞単離に使用することができる。単離された海馬は10ml氷冷HBSSで3回洗浄し、HBSS中トリプシン(海馬当たり10μl2.5%トリプシンを添加した4ml HBSS)と共に37℃で15分間インキュベートして解離する。トリプシン処理後、海馬を37℃に予熱したHBSSで3回極めて慎重に洗浄して痕跡量のトリプシンを取り除き、温HBSS中に解離する。本出願人らは、通常、1mlHBSS中の10~12個の胚から1mlピペットチップを使用して細胞を解離し、解離した細胞を4mlに至るまで希釈する。細胞を250細胞/mm2の密度でプレーティングし、37℃および5%CO2で最長3週間培養する。
【0921】
HBSS
435ml H2O
50ml 10×ハンクス平衡塩類溶液
16.5ml 0.3M HEPES pH7.3
5ml ペニシリン-ストレプトマイシン溶液
ろ過(0.2μm)および保存4℃
【0922】
ニューロンプレーティング培地(100ml)
97ml Neurobasal
2ml B27サプリメント
1ml ペニシリン-ストレプトマイシン溶液
250μl グルタミン
125μl グルタミン酸
【0923】
HEK293FT細胞のろ過培地からの濃縮AAV1/2ウイルスまたはAAV1ウイルスを、培養下で4~7日間ニューロンに形質導入し、送達された遺伝子を発現させるため形質導入後少なくとも1週間培養下に保つ。
【0924】
系のAAVドライブ発現
本出願人らは、AAV送達後のニューロン培養物におけるSpCas9およびSaCas9の発現を、ウエスタンブロット法を用いて確認した(図42)。形質導入後1週間でニューロンをβ-メルカプトエタノール含有NuPageSDSローディング緩衝液に回収し、タンパク質を95℃で5分間変性させた。試料をSDSPAGEゲル上で分離し、WBタンパク質検出用のPVDF膜に移した。HA抗体でCas9タンパク質を検出した。
【0925】
gRNA多重AAVからのSyn-GFP-kashの発現が蛍光顕微鏡法で確認された(図50)。
【0926】
毒性
CRISPR系を含むAAVの毒性を評価するため、本出願人らはウイルス形質導入後1週間のニューロンの全体的な形態を調べた(図45)。加えて、本出願人らは、設計した系の潜在的毒性を、培養下の生細胞と死細胞との区別を可能にするLIVE/DEAD(登録商標)細胞イメージングキットで調べた。これは、細胞内エステラーゼ活性の存在(非蛍光カルセインAMから強度に緑色の蛍光カルセインへの酵素変換により決定されるとおりの)に基づく。他方で、キットの赤色の細胞不透過性成分は、破損した膜を有する細胞に限り侵入し、DNAに結合して死細胞で蛍光を生じる。両方のフルオロフォアとも、生細胞では蛍光顕微鏡法で容易に可視化され得る。初代皮質ニューロンにおけるCas9タンパク質および多重gRNA構築物のAAVドライブ発現は十分な忍容性を有し、非毒性であった(図43および図44)ことから、設計されたAAV系がインビボ試験に好適であることを示している。
【0927】
ウイルス産生
McClure et al.,2011に記載される方法により濃縮ウイルスを作製した。HEK293FT細胞において上清ウイルス産生が生じた。
【0928】
脳手術
ウイルスベクター注入のため、10~15週齢雄性C57BL/6Nマウスをケタミン/キシラジンカクテル(100mg/kgのケタミン用量および10mg/kgのキシラジン用量)で腹腔内注射により麻酔した。先制鎮痛薬(1mg/kg)としてブプレネックス(Buprenex)の腹腔内(intraperitonial)投与を使用した。動物を、耳内位置決めスタッドおよびトゥースバーを使用してKopf定位固定装置に固定化し、固定された頭蓋を維持した。手持形ドリルを使用して、ブレグマの-3.0mm後方および3.5mm側方に、海馬のCA1野における注入用の穴(1~2mm)を開けた。30GWorld Precision Instrumentシリンジを2.5mmの深さで使用して、総容積1ulのAAVウイルス粒子の溶液を注入した。注入は「WorldPrecision InstrumentsUltraMicroPump3」注入ポンプにより0.5ul/分の流量でモニタして組織損傷を防いだ。注入が完了した時点で注射針をゆっくりと、0.5mm/分の速度で取り出す。注入後、6-0Ethilon縫合糸で皮膚を閉じた。動物を術後に1mLの乳酸加リンゲル液(皮下)で水分補給させ、歩行可能な回復に達するまで温度制御された(37℃)環境に収容した。術後3週間で深麻酔により動物を安楽死させ、続いて核選別のため組織を摘出するか、または免疫化学のため4%パラホルムアルデヒドを灌流させた。
【0929】
核の選別およびインビボ結果
本出願人らは、標識した細胞核の蛍光活性化細胞選別(FACS)ならびにDNA、RNAおよび核タンパク質の下流処理のためgRNA標的神経細胞核をGFPで特異的に遺伝的にタグ標識する方法を設計した。そのために、本出願人らの多重ターゲティングベクターが、GFPとマウス核膜タンパク質ドメインKASH(StarrDA,2011,Current biology)との間の融合タンパク質および目的の特異的遺伝子座を標的にする3つのgRNAの両方を発現するように設計された(図34)。GFP-KASHはヒトシナプシンプロモーターの制御下で発現してニューロンを特異的に標識した。融合タンパク質GFP-KASHのアミノ酸は以下であった:
【化27】
【0930】
脳へのAAV1/2媒介性送達後1週間でGFP-KASHのロバストな発現が観察された。標識された核のFACSおよび下流処理のため、術後3週間で海馬を解剖し、勾配遠心ステップを用いて細胞核精製用に処理した。そのために、320mMスクロース、5mM CaCl、3mM Mg(Ac)2、10mM トリス pH7.8、0.1mMEDTA、0.1%NP40、0.1mM フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、1mM β-メルカプトエタノール中で2mlDounceホモジナイザー(Sigma)を使用して組織をホモジナイズした。ホモジナイズ処理物を、25%~29%のOptiprep(登録商標)勾配で製造者のプロトコルに従い30分間3.500rpm、4℃で遠心した。核ペレットを、340mMスクロース、2mM MgCl2、25mM KCl、65mM グリセロリン酸、5%グリセロール、0.1mM PMSF、1mM β-メルカプトエタノール中に再懸濁し、Vybrant(登録商標)DyeCycle(商標)Ruby染色(Lifetechnologies)を添加して細胞核を標識した(DNAに近赤外放射を提供する)。標識し精製した核を、AriaFlu-act細胞選別機およびBDFACS Divaソフトウェアを使用してFACSにより選別した。選別されたGFP+核およびGFP-核を最終的に使用することにより、標的ゲノム領域のSurveyorアッセイ分析のためDNAeasy血液および組織キット(Qiagen)を使用してゲノムDNAを精製した。同じ手法を、下流処理のための標的細胞からの核RNAまたはタンパク質の精製に容易に用いることができる。本出願人らがこの手法で用いているのが2ベクター系(図34)であることに起因して、脳のごく一部の細胞(多重ターゲティングベクターおよびCas9コードベクターの両方を同時感染させた細胞)においてのみ効率的なCas9媒介性DNA開裂が起こることが予想された。ここに記載する方法は、本出願人らが目的の3つのgRNAを発現する細胞集団からDNA、RNAおよび核タンパク質を特異的に精製することを可能にし、従ってCas9媒介性DNA開裂を起こすはずである。この方法を用いることにより、本出願人らは、ごく一部の細胞においてのみ起こるインビボでの効率的なDNA開裂を可視化することができた。
【0931】
本質的に、本出願人らがここで示したものは、標的インビボ開裂である。さらに本出願人らは多重的手法を使用し、ここではいくつかの異なる配列が同時に、但し独立してターゲティングされる。提供される系は、脳の病的状態(遺伝子ノックアウト、例えばパーキンソン病)の研究に応用することができ、また脳におけるゲノム編集ツールのさらなる開発分野も切り開くことができる。ヌクレアーゼ活性を遺伝子転写調節因子または後成的調節因子に置き換えることにより、病的状態のみならず、学習および記憶形成のような生理学的過程における遺伝子調節および脳の後成的変化の役割に関するあらゆる種類の科学的問題に答えることが可能になる。最後に、提供される技術は、霊長類のようなより複雑な哺乳類系において応用することができ、これにより現在の技術の限界を乗り越えることが可能となる。
【0932】
実施例33:モデルデータ
いくつかの疾患モデルが特に研究されている。それらには、デノボ自閉症リスク遺伝子CHD8、KATNAL2、およびSCN2A;および症候性自閉症(アンジェルマン症候群)遺伝子UBE3Aが含まれる。これらの遺伝子および得られる自閉症モデルは当然ながら好ましいが、本発明を任意の遺伝子に適用することができ、従って任意のモデルが可能であることを示している。
【0933】
本出願人らは、ヒト胚性幹細胞(hESC)においてCas9ヌクレアーゼを使用してこれらの細胞系を作製した。これらの株は、hESCにCbh-Cas9-2A-EGFPおよびpU6-sgRNAを一過性に形質移入することにより作成された。ほとんどの場合に、自閉症患者の全エクソンシーケンシング研究から患者ナンセンス(ノックアウト)突然変異が最近になって記載されている同じエクソンを標的にして、各遺伝子につき2つのsgRNAが設計される。本計画のため特にCas9-2A-EGFPおよびpU6プラスミドを作成した。
【0934】
実施例34:AAV産生系またはプロトコル
本明細書には、ハイスループットスクリーニング用途のために開発された、かつそれで特に上手く機能するAAV産生系またはプロトコルが提供され、しかしながらこれは、本発明においても同様により広い適用性を有する。内因性遺伝子発現の操作は、発現速度が、調節エレメント、mRNAプロセシング、および転写物の安定性を含めた多くの要因に依存するため、種々の難題を突きつける。この難題を解消するため、本出願人らは、送達用のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターを開発した。AAVはssDNAベースのゲノムを有し、従って組換えを起こしにくい。
【0935】
AAV1/2(血清型AAV1/2、すなわち、ハイブリッドまたはモザイクAAV1/AAV2カプシドAAV)ヘパリン精製濃縮ウイルスプロトコル
培地:D10+HEPES
500mlボトルDMEM高グルコース+Glutamax(GIBCO)
50ml Hyclone FBS(熱失活)(Thermo Fischer)
5.5ml HEPES溶液(1M、GIBCO)
細胞:低継代HEK293FT(ウイルス産生時の継代数<10、ウイルス産生には継代数2~4の新しい細胞を解凍し、3~5代成長させる)
【0936】
形質移入試薬:ポリエチレンイミン(PEI)「Max」
50ml滅菌超高純度H2Oに50mg PEI「Max」を溶解する
pHを7.1に調整する
0.22umフリップトップフィルターでろ過する
チューブを密閉し、パラフィルムで包む
アリコートを-20℃で凍結する(保存のため、また直ちに使用してもよい)
【0937】
細胞培養
D10+HEPES中で低継代HEK293FTを培養する
毎日1:2~1:2.5で継代する
有利には細胞を85%より高いコンフルエンシーに至らせない
【0938】
T75について
-フラスコ当たり10ml HBSS(-Mg2+、-Ca2+、GIBCO)+1mlTrypLE Express(GIBCO)を37℃に温める(ウォーターバス)
培地を完全に吸引する
-10mlの温HBSSを穏やかに添加する(培地を完全に洗い流すため)
-フラスコ当たり1mlのTrypLEを添加する
-フラスコをインキュベーター(37℃)に1分間置く
-フラスコを揺り動かして細胞を剥がす
-9mlのD10+HEPES培地(37℃)を添加する
-上下に5回ピペッティングして単一細胞懸濁液を作成する
-1:2~1:2.5(T75には12mlの培地)の比で分割する(細胞の成長が遅い場合、廃棄して新しいバッチを解凍する、それらは最適成長でない)
-十分な(大量の細胞の取り扱いが容易になるだけの)細胞が存在するようになったら直ちにT225に移す
【0939】
AAV産生(構築物当たり5×15cmディッシュスケール):
1000万細胞を15cmディッシュ中21.5ml培地にプレーティングする
37℃で18~22時間インキュベートする
80%コンフルエンスでの形質移入が理想的である
【0940】
プレート当たり
22ml培地(D10+HEPES)を予熱する
【0941】
DNA混合物を含むチューブを調製する(内毒素不含maxiprep DNAを使用する):
5.2ug 目的のベクターのプラスミド
4.35ug AAV血清型1プラスミド
4.35ug AAV血清型2プラスミド
10.4ug pDF6プラスミド(アデノウイルスヘルパー遺伝子)・ボルテックスして混合する
434uL DMEMを添加する(無血清!)
130ul PEI溶液を添加する
5~10秒間ボルテックスする
DNA/DMEM/PEI混合物を予熱した培地に添加する
短時間ボルテックスして混合する
15cmディッシュ中の培地をDNA/DMEM/PEI混合物に交換する
37℃インキュベーターに戻す
48時間インキュベートした後回収する(培地が過度に酸性にならないようにすること)
【0942】
ウイルス回収:
1.15cmディッシュから培地を慎重に吸引する(有利には細胞を押し退けない)
2.各プレートに25ml RTDPBS(Invitrogen)を添加し、細胞スクレーパーで細胞を穏やかに剥がし取る。50mlチューブに懸濁液を収集する。
3.800×gで10分間細胞をペレット化する。
4.上清を廃棄する。
【0943】
休題:必要に応じて細胞ペレットを-80℃で凍結する
5.ペレットを150mM NaCl、20mMトリス pH8.0中に再懸濁し、組織培養プレート当たり10mlを使用する。
6.dH2O中に10%デオキシコール酸ナトリウムの新鮮な溶液を調製する。これを0.5%の最終濃度で組織培養プレート当たり1.25ml添加する。ベンゾナーゼ(benzonase)ヌクレアーゼを50単位/mlの最終濃度となるように添加する。チューブを徹底的に混合する。
7.37℃で1時間(ウォーターバス)インキュベートする。
8.3000×gで15分間遠心することにより細胞残屑を除去する。新鮮な50mlチューブに移し、ヘパリンカラムの詰まりを防ぐため、全ての細胞残屑が除去されたことを確実にする。
【0944】
AAV1/2のヘパリンカラム精製:
1.蠕動ポンプを使用して、溶液が毎分1mlでカラムを通って流れるようにHiTrapヘパリンカラムをセットアップする。ヘパリンカラム内に気泡が取り込まれないよう確実にすることが重要である。
2.蠕動ポンプを使用して、10ml 150mM NaCl、20mM トリス、pH8.0でカラムを平衡化する。
3.ウイルスの結合:50mlウイルス溶液をカラムに加え、中を通って流れさせる。
4.洗浄ステップ1:カラムを20ml 100mM NaCl、20mM トリス、pH8.0で(蠕動ポンプを使用)。
5.洗浄ステップ2:3mlまたは5mlシリンジを使用して、1ml 200mM NaCl、20mM トリス、pH8.0、続いて1ml300mM NaCl、20mM トリス、pH8.0でカラムの洗浄を続ける。
フロースルーは廃棄する。
(上記のウイルス溶液を50分間流す間、種々の緩衝液でシリンジを調製する)
6.溶出 5mlシリンジおよび軽い圧力(<1ml/分の流量)を使用して、以下を加えることによりカラムからウイルスを溶出させる:
1.5ml 400mM NaCl、20mM トリス、pH8.0
3.0ml 450mM NaCl、20mM トリス、pH8.0
1.5ml 500mM NaCl、20mM トリス、pH8.0
これらを15ml遠心管に収集する。
【0945】
AAV1/2の濃縮:
1.濃縮ステップ1:100,000分子量カットオフのAmicon ultra 15ml遠心フィルターユニットを使用して、溶出したウイルスを濃縮する。カラム溶出物を濃縮機にロードし、2000×gで2分間遠心する(室温で。濃縮された容積を確認する-約500μlとなるはずである。必要であれば、正しい容積に達するまで1分間隔で遠心する。
2.緩衝液交換:1mlの滅菌DPBSをフィルターユニットに添加し、正しい容積(500ul)に達するまで1分間隔で遠心する。
3.濃縮ステップ2:500ulの濃縮物をAmicon Ultra 0.5ml 100Kフィルターユニットに添加する。6000gで2分間遠心する。濃縮された容積を確認する-約100μlとなるはずである。必要であれば、正しい容積に達するまで1分間隔で遠心する。
4.回収:フィルターインサートを反転させ、新鮮な収集チューブに挿入する。1000gで2分間遠心する。
アリコートに分け、-80℃で凍結する
典型的には注入部位当たり1ulが必要であり、従って少量のアリコート(例えば5ul)が推奨される(ウイルスの凍結融解を回避する)。
qPCRを使用してDNアーゼI耐性GC粒子力価を決定する(別個のプロトコルを参照)
【0946】
材料
Amicon Ultra、0.5ml、100K;MILLIPORE;UFC510024
Amicon Ultra、15ml、100K;MILLIPORE;UFC910024
Benzonaseヌクレアーゼ;Sigma-Aldrich、E1014
HiTrapヘパリンカートリッジ;Sigma-Aldrich;54836
デオキシコール酸ナトリウム;Sigma-Aldrich;D5670
【0947】
AAV1上清産生プロトコル
培地:D10+HEPES
500mlボトルDMEM高グルコース+Glutamax(Invitrogen)
50ml Hyclone FBS(熱失活)(Thermo Fischer)
5.5ml HEPES溶液(1M、GIBCO)
細胞:低継代HEK293FT(ウイルス産生時の継代数<10)
ウイルス産生には継代数2~4の新しい細胞を解凍し、2~5代成長させる
形質移入試薬:ポリエチレンイミン(PEI)「Max」
50ml滅菌超高純度H2Oに50mg PEI「Max」を溶解する
pHを7.1に調整する
0.22umフリップトップフィルターでろ過する
チューブを密閉し、パラフィルムで包む
アリコートを-20℃で凍結する(保存のため、また直ちに使用してもよい)
細胞培養
D10+HEPES中で低継代HEK293FTを培養し、毎日1:2~1:2.5で継代する
有利には細胞を85%より高いコンフルエンシーに至らせる
T75について
-フラスコ当たり10ml HBSS(-Mg2+、-Ca2+、GIBCO)+1mlTrypLE Express(GIBCO)を37℃に温める(ウォーターバス)
-培地を完全に吸引する
-10mlの温HBSSを穏やかに添加する(培地を完全に洗い流すため)
-フラスコ当たり1mlのTrypLEを添加する
-フラスコをインキュベーター(37℃)に1分間置く
-フラスコを揺り動かして細胞を剥がす
-9mlのD10+HEPES培地(37℃)を添加する
-上下に5回ピペッティングして単一細胞懸濁液を作成する
-1:2~1:2.5(T75には12mlの培地)の比で分割する(細胞の成長が遅い場合、廃棄して新しいバッチを解凍する、それらは最適成長でない)
-十分な(大量の細胞の取り扱いが容易になるだけの)細胞が存在するようになったら直ちにT225に移す
AAV産生(単一15cmディッシュスケール)
1000万細胞を15cmディッシュ中21.5ml培地にプレーティングする
37℃で18~22時間インキュベートする
プレート毎に80%コンフルエンスでの形質移入が理想的である
22ml培地(D10+HEPES)を予熱する
DNA混合物を含むチューブを調製する(内毒素不含maxiprep DNAを使用する):
5.2ug 目的ベクターのプラスミド
8.7ug AAV血清型1プラスミド
10.4ug DF6プラスミド(アデノウイルスヘルパー遺伝子)
ボルテックスして混合する
434uL DMEMを添加する(無血清!)130ulPEI溶液を添加する
5~10秒間ボルテックスする
DNA/DMEM/PEI混合物を予熱した培地に添加する
短時間ボルテックスして混合する
15cmディッシュ中の培地をDNA/DMEM/PEI混合物に交換する
37℃インキュベーターに戻す
48時間インキュベートした後回収する(有利には、培地が過度に酸性にならないよう監視する)
【0948】
ウイルス回収:
15cmディッシュから上清を取り出す
0.45umフィルター(低タンパク質結合)でろ過し、アリコートに分け、-80℃で凍結する
形質導入(24ウェルフォーマット、5DIVでの初代ニューロン培養)
形質導入されるニューロンの各ウェル内の完全neurobasal培地を新鮮なneurobasalに交換する(通常、ウェルにつき500ul中400ulが交換される)
37℃のウォーターバスでAAV上清を解凍する
インキュベーターで30分間平衡化させる
各ウェルに250ul AAV上清を添加する
37℃で24時間インキュベートする
培地/上清を取り出し、新鮮な完全neurobasalに交換する
48時間後に発現が目に見え始め、感染後約6~7日で飽和する
GOI(目的の遺伝子)を含むpAAVプラスミド用の構築物は、両方のITRSを含めて4.8kbを超えてはならない。
【0949】
ヒトコドン最適化配列(すなわちヒトでの発現に最適化されている)配列の例:SaCas9を以下に提供する:
【化28】
【化29】
【化30】
【0950】
実施例35:Cas9ニッカーゼおよび2つのガイドRNAを使用したオフターゲット開裂の最小化
Cas9は、RNAにガイドされるDNAヌクレアーゼであり、20bp RNAガイドの助けによりゲノムにおける特定の位置にターゲティングされ得る。しかしながら、ガイド配列はガイド配列とDNA標的配列との間のいくらかのミスマッチを許容し得る。ガイドRNAによってCas9が、ガイド配列と数塩基の違いを有するオフターゲット配列をターゲティングするき、オフターゲット開裂が起こる可能性があるため、この柔軟性は望ましくない。全ての実験的応用(遺伝子ターゲティング、作物エンジニアリング、治療適用等)について、Cas9媒介性遺伝子ターゲティングの特異性を向上させ、かつCas9によるオフターゲット改変の可能性を低下させることが重要である。
【0951】
本出願人らは、Cas9ニッカーゼ突然変異体を2つのガイドRNAと組み合わせて使用して、オフターゲット改変なしにゲノム中の標的二本鎖切断を促進する方法を開発した。Cas9ニッカーゼ突然変異体は、Cas9ヌクレアーゼから、その開裂活性を無効にすることにより作成され、従ってDNA二重鎖の両鎖が開裂される代わりに一方の鎖のみが開裂される。Cas9ニッカーゼは、Cas9ヌクレアーゼの1つ以上のドメイン、例えばRuvc1またはHNHに突然変異を誘発することにより作成されてもよい。これらの突然変異には、限定はされないが、Cas9触媒ドメインの突然変異が含まれてもよく、例えばSpCas9では、これらの突然変異はD10位またはH840位にあり得る。これらの突然変異には、限定はされないが、SpCas9におけるD10A、E762A、H840A、N854A、N863AまたはD986Aが含まれ得るが、ニッカーゼは、他のCRISPR酵素またはCas9オルソログにおける対応する位置に突然変異を誘発することにより作成されてもよい。本発明の最も好ましい実施形態において、Cas9ニッカーゼ突然変異体は、D10A突然変異を有するSpCas9ニッカーゼである。
【0952】
これの機能の仕方は、Cas9ニッカーゼと組み合わせた各ガイドRNAが二重鎖DNA標的の標的一本鎖切断を誘導し得ることである。各ガイドRNAが1つの鎖にニックを入れるため、正味の結果は二本鎖切断となる。この方法でオフターゲット突然変異がなくなる理由は、両方のガイド配列に高度な類似性を有するオフターゲット部位を有する可能性が極めて低いためである(各ガイドにつき20bp+2bp(PAM)=22bpの特異性、および2つのガイドは、任意のオフターゲット部位が44bp近くの相同配列を有しなければならないことを意味する)。個々のガイドがオフターゲットを有し得る可能性はなおあるが、それらのオフターゲットはニッキングされるに過ぎず、それが突然変異誘発性のNHEJプロセスによって修復される可能性は低い。従ってDNA二本鎖ニッキングの多重化は、オフターゲットの突然変異誘発効果なしに標的DNA二本鎖切断を導入する強力な方法を提供する。
【0953】
本出願人らは、HEK293FT細胞と、Cas9(D10A)ニッカーゼならびに1つ以上のガイド用のDNA発現カセットをコードするプラスミドとの同時形質移入を含む実験を実施した。本出願人らは、リポフェクタミン2000を使用して細胞を形質移入し、形質移入後48時間または72時間で形質移入細胞を回収した。二重ニッキングにより誘導されるNHEJを、本明細書において先述したとおりSURVEYORヌクレアーゼアッセイを使用して検出した(図51図52および図53)。
【0954】
本出願人らはさらに、2つのガイドRNAと組み合わせたときのCas9ニッカーゼ突然変異体による効率的な開裂に関係するパラメータを特定しており、それらのパラメータには、限定はされないが、5’オーバーハングの長さが含まれる。少なくとも26塩基対の5’オーバーハングについて効率的な開裂が報告される。本発明の好ましい実施形態において、5’オーバーハングは少なくとも30塩基対およびより好ましくは少なくとも34塩基対である。最大200塩基対のオーバーハングが開裂に許容され得るが、100塩基対未満の5’オーバーハングが好ましく、および50塩基対未満の5’オーバーハングが最も好ましい(図54および図55)。
【0955】
実施例36:行動プロトコル
高架式十字迷路。高架式十字迷路を使用して、げっ歯類が有する開放された場所に対する本能的な恐怖心と、新奇環境を探索しようとするその欲求との葛藤を利用して不安様行動を評価する。
【0956】
高架式十字迷路試験に使用される装置はステンレス鋼製であり、長さ35cmおよび幅5cmの4本のアームからなる(2本は壁がなく開放しており、2本は高さ15cmの壁に囲まれている)。迷路の各アームは頑丈な金属製の脚に取り付けられており、床から40cm持ち上げられている:
【0957】
12時間明暗サイクルの室内においてケージ当たり最大3匹のマウスを、食餌および水を自由に摂取できる状態で飼育する。
【0958】
行動試験は午前9時から午後6時まで明るく照らされた室内で実施する。初回試行の開始30分前に、マウスを収容している全てのケージを行動試験室に移す。
【0959】
マウスをそのケージから取り出し、オープンアームとクローズドアームとの交差点に、実験者がいるところと反対側のオープンアームに向けて置き、迷路を5分間自由に探索させる。その間、動物を記録し、行動を追跡する。オープンアームを移動した総距離、オープンアームに居た時間、アーム間を移った総回数、およびオープンアームに進入するまでの潜時を、Noldusソフトウェアで自動的に計測する。5分間の試験が終了したところで、十字迷路からげっ歯類を取り出し、運搬用ケージに入れる。そのホームケージ内に戻す。高架式十字迷路を慎重に洗浄し、紙タオルで乾燥させてから、別のマウスで試験する。
【0960】
恐怖条件付け
動物:4週齢雄マウス(BL6J/57);10匹/群
フットショック:2秒;0.5mA
プロトコルは3つのフェーズを含んだ:
【0961】
1.曝露、マウスを馴化させて訓練箱に慣れさせる。非ペア群について:馴化2分、続いて20秒間の音による手がかりの提示、続いて80秒間のインターバル、6回反復。ペア群は馴化時間を12分間とする。
【0962】
2.訓練;マウスにCSおよび/またはUS刺激を提示する。馴化時間-4分。100秒間続く試行エポック(試行間のインターバルを含む)において、音(CS)およびショック(US)が関わる6回の条件付け試行を行った。ペア群については、各試行は、20秒間の「ベースライン」インターバル、20秒間の音の提示、18秒間のトレースインターバル、2秒間のショック、および40秒間のショック後インターバルからなった。試行は、音が省かれることを除き非ペア群のマウスも同じであった。
【0963】
3.試験;各文脈ならびに音およびトレースCSに反応したマウスのフリージングを観察した。各フェーズは24時間インターバルで行った。マウスは、訓練文脈(慣れている)および試験文脈(変化;平坦な床からグリッドに、壁に白黒模様;バニリンの芳香)で3分間自由に動き回れるようにした。全てのマウスが4回の100秒間試験試行を受けた。全てのマウスについて各試行は20秒間のインターバルから開始し、20秒間の音の提示の後に60秒間のインターバルが続いた。
【0964】
スコア化:全てのスコア化はビデオに基づき行った。各文脈試験曝露および各100秒間試行エポックの全体にわたり5秒間刻みでフリーズした割合を観察した。動物が少なくとも2秒間フリーズした場合、フリージングを各時間ビンにおいて1または0でスコア化した。
【0965】
棒グラフで示したデータは7匹の動物の群の平均値であり、エラーバーはSEMを表す。折れ線グラフのデータは経時的な訓練/試験プロセスを表し、各点が、6回または4回の試行(それぞれ訓練および試験プロトコル)からの7匹の動物の平均値である。エラーバーはSEMを表す。
【0966】
オープンフィールド。オープンフィールド装置は探索行動の評価に広範に用いらており、不安関連行動の測定における使用の妥当性が認められている。動物が正方形のアリーナ(40×40cm)に10分間置かれ、その間、その行動が記録される。総移動距離、速度およびアリーナの中心に居た時間がスコア化される。
【0967】
新奇物体認識。新奇物体認識試験(NOR)は、げっ歯類の学習および記憶の研究に普及している試験である。NORは、見慣れた物体より新奇物体とより多く相互作用するその傾向に基づく。一般には、初めに動物を装置に置き、物体を探索させておく。所定のインターバルが経った後、動物を装置に戻し、今度はそこに見慣れた物体と新奇の物体とが置かれている。物体認識は、新奇物体との相互作用に費やされた時間が多くなることにより区別される。NORタスクは、少しの訓練または慣れは必要であるが、外部的な動機付け、報酬、または罰が不要であり、かつ比較的短時間で完了することができるため、特に魅力的である。
【0968】
I 事前訓練:
1.コロニーに到着後、動物を少なくとも3~7日間馴化させる。
2.実験開始の少なくとも(at lest)3日前、動物を少なくとも1日3分間、毎日ハンドリングし、運搬のルーチンに曝す。
3.試験環境への慣れ-実験の24時間前に動物を行動室の試験アリーナ(40×40×35cm、透明の壁)に10分間曝す。
【0969】
II 物体認識訓練:
1.2つの「同一の」慣れさせる(試料)物体を、装置の後ろ側の左隅および右隅に置く
2.動物を試料物体と反対側の壁の中間点に置く(これは、動物が特定の側/物体の方に向けられるなど、動物を置く際の意図しないバイアスを防ぐ)
3.実験者は、動物に対する手がかりとして働くことがないように、または試験に意図しないバイアスを持ち込むことがないようにカーテンの後ろ側に居ながら、カメラを使用して動物の行動を記録する。
4.計画した試料物体曝露時間(5~10分)が経った後、装置から動物を取り出し、計画した訓練から試験までのインターバルにわたりコロニーに戻す。動物間は装置を70%エタノールで洗浄する。
【0970】
III 遅延フェーズ。一般的に使用される訓練から試験までのインターバルは、1時間(堅固な物体認識)から24時間まで異なる。
【0971】
IV 物体認識試験:
1.訓練から試験までのインターバルが経った後に物体認識を試験するため、装置の後ろ側の一方の隅に見慣れた試料物体の1つを置く;新奇物体を後ろ側の他方の隅に置く。
2.ステップII.2のとおり装置に動物を置く。実験者はカーテンの後ろ側に居ながら動物の行動を記録する。
3.計画した物体曝露時間(3~5分)が経った後、動物を装置から取り出してコロニーに戻す。動物間は装置を70%エタノールで洗浄する。
【0972】
データ解析:記録したビデオは、後のデータ解析に使用する:a)直接接触スコアリング(動物が物体に接触した合計時間);b)エリア内スコアリング(動物がその鼻を物体と接触させたとき、または2cmの最小距離の範囲内で物体の方を向いたとき、動物は物体と「相互作用する」)。一般的に使用される尺度には、見慣れた物体との時間と比べた新奇物体との時間、スコアの差(新奇物体との相互作用-見慣れた物体との相互作用)、識別比(新奇物体との相互作用/両方の物体との相互作用合計)が含まれる。これらの尺度による物体認識は、それぞれ、見慣れた物体より新奇物体とより多く相互作用すること、正のスコア差、または0.5を上回る識別比に反映される。
【0973】
バーンズ迷路。1979年にキャロル・バーンズ(Carol Barnes)が空間学習および記憶に関するドライランド迷路試験を開発し、ここで動物は、明るく照らされた、露出した円形の開放プラットフォーム表面から、プラットフォームの周囲を囲む18個の穴のうちの1つの下に位置する小さく暗い陥凹したチャンバへと逃げ込んだ。バーンズ迷路(BM)は当初はラットのために発明されたが、マウスにおいて、小さい穴を見つけてそこを通って逃げるその優れた能力を利用して空間記憶を評価するために普及している。
【0974】
手順:
1.適応。マウスを迷路の中央にある円筒形の黒色の開始チャンバに置く。10秒経過後チャンバを取り除き、強い光と共にブザーを鳴らす。マウスを優しく逃避箱に案内する。マウスが箱に入ったら、ブザーおよび光を消す。マウスは逃避箱に2分間居なければならない。
【0975】
2.空間獲得。マウスを迷路の中央にある円筒形の黒色の開始チャンバに置く。10秒経過後チャンバを持ち上げ、ブザーおよび光をつける。マウスに迷路を3分間探索させる。マウスがゴールのトンネルに入ったときまたは3分経過後に試行を終了する。マウスがトンネルに入ったら、直ちにブザーおよび光を消し、マウスをトンネルに1分間留まらせる。マウスが3分以内にゴールに到達しない場合、実験者がマウスを逃避箱に優しく案内し、マウスをそのまま1分間中に置いておく。マウスは次の試行までホームケージに居る。試行全体を次の3~4日の間に4回、15分間のインターバルで繰り返す。
【0976】
3.参照記憶試験。最後の訓練日の24時間後、プローブ試行を行う。標的の穴は閉じられていなければならない。動物を迷路の中央において円筒形の黒色の開始チャンバの下に置き、10秒後にチャンバを取り除き、ブザーおよび光をつける。90秒後にマウスを迷路から取り出す。動物が標的のゴールが位置していたところを覚えているかどうかを決定するためプローブ試行を行う。各穴を覗き込む(エラー)回数および事実上標的の穴に到達するまでの潜時および経路長を計測する。
【0977】
実施例37:SaCas9最新情報
図69は、AAV-Sa-Cas9ベクター、肝臓特異的AAV-Sa-Cas9ベクターおよび代替的なAAV-Sa-Cas9ベクターを示す。
【0978】
図70は、最適化したCMV-SaCas9-NLS-U6-sgRNAベクター(前回提出したベクター設計)に関するデータを示す;新規データは、N’末端タグ標識SaCas9とC’末端タグ標識SaCas9とを比較し、C’末端NLSタグ標識付けを使用した開裂効率の増進を示す。
【0979】
新規標的は、マウスPcsk9遺伝子のエクソン4および5(配列および位置は以下)に選択した。エクソン4~5は、タンパク質成熟時にタンパク質分解により開裂されるPcsk9N末端プロドメイン領域の下流にあり、この下流領域にあるインデルがタンパク質分解を生じさせると予想される。Pcsk9はLDL受容体のサイクルおよび負の調節に関与し、Pcsk9の欠損は間接的に血漿コレステロール値の低下をもたらすはずである。
【0980】
sgRNAをAAVベクターにクローニングし、単回のベクター形質移入においてHepa1-6マウス肝細胞系のインデル活性を試験した。500ngのベクターをリポフェクタミン2000によって200,000個のHepa1-6細胞に形質移入し、SURVEYORアッセイのためDNAを収集し、Pcsk9の開裂を示した。
【化31】
【0981】
図71は、新規Pcsk9標的により生じたインデルを示すSURVEYOR画像を示す。
【0982】
図72はSaCas9特異性を示す:2つの基準に基づきゲノムワイドオフターゲット部位(GWOT)が予測される:それらが意図されるSaCas9標的と4個以下のミスマッチ塩基を含み、かつSaCas9に対する最小の制限PAM、NNGRRを有する。HEK293FT細胞にSpCas9またはSaCas9のいずれかが、その対応するsgRNAと共に、SpCas9(CGG)またはSaCas9(CGGGGT)のいずれによっても切断され得るようにPAMとしてCGGGGTを有する標的部位(EMX1:TAGGGTTAGGGGCCCCAGGC)で形質移入される。細胞からDNAを回収し、オンターゲット遺伝子座および41個の予測されたオフターゲット遺伝子座でIlluminaシーケンシングによりインデルについて分析する(Hsuet al.Nature Biotech 2013によるプロトコルおよびDavid ScottおよびJosh Weinsteinによって開発されたデータ解析パイプラインに従う)。
【0983】
図73は、SaCas9が特定の遺伝子座においてSpCas9より高いレベルのオフターゲット活性を有し得ることを示す。
【0984】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し、記載したが、そのような実施形態が例として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。当業者は目下、多数のバリエーション、変更、および置換を本発明から逸脱せずに行う。本明細書に記載の本発明の実施形態の種々の代替例を本発明の実施において用いることができることを理解されるべきである。
【0985】
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