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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20230216BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230216BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230216BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/00 D
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021542797
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031385
(87)【国際公開番号】W WO2021039559
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019154366
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 友昭
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-173631(JP,A)
【文献】特開2013-129735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ポリプロピレンからなる基材と、
前記基材上に配置された酸化アルミニウム層と、
前記酸化アルミニウム層上に配置されたガスバリア性コーティング剤層と、
前記ガスバリア性コーティング剤層上に配置されたガスバリア性接着剤層と、を有する積層体の製造方法であって
前記ガスバリアコーティング剤が、カルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)、アルコール(C)とを含有するコーティング剤であって、組成物中におけるアルコール(C)の含有量が85~98wt%であって、組成物中における水分量が1%以下であることを特徴とする積層体の製造方法
【請求項2】
前記カルボキシル基を有する樹脂(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびイタコン酸、およびアスパラギン酸から選ばれる単量体の単独重合体または共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の積層体の製造方法
【請求項3】
前記2価金属化合物(B)が、亜鉛化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法
【請求項4】
前記アルコール(C)が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法からなる包装材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体、当該ガスバリア性積層体を用いて得られる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に酸素による酸化を防止する事が求められている。この要求に対し、従来、比較的酸素バリア性が高いとされる樹脂で構成されるバリア性フィルムや、当該バリア性フィルムをフィルム基材として用いた積層体(積層フィルム)が用いられている。
従来、酸素バリア性樹脂としては、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールに代表される分子内に親水性の高い水素結合性基を含有する樹脂が用いられてきた。近年これらの酸素バリア性樹脂のバリア性を更に向上させる研究が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-130737号公報
【文献】特開2019-34460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のガスバリア性積層体では、必ずしも十分なガスバリア性が得られず、また、良好なコーティング外観を達成することができず、ガスバリア性積層体に対する需要を満たすことが出来ていなかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、従来のガスバリア積層体より更に良好なガスバリア性を有する積層体、該積層体を用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2軸延伸ポリプロピレンからなる基材と、前記基材上に配置された酸化アルミニウム層と、前記酸化アルミニウム層上に配置されたガスバリア性コーティング剤層と、前記ガスバリア性コーティング剤層上に配置されたガスバリア性接着剤層と、を有する積層体に関する。
【0007】
本発明は前記ガスバリアコーティング剤が、カルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)、アルコール(C)とを含有するコーティング剤であって、組成物中におけるアルコール(C)の含有量が85~98wt%であって、組成物中における水分量が1%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明は、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびアスパラギン酸から選ばれる単量体の単独重合体または共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明は、前記2価金属化合物(B)が、亜鉛化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記アルコール(C)が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は前記積層体からなる包装材に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体によれば、ガスバリア性に優れた包装材の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<積層体>
本発明の積層体は、2軸延伸ポリプロピレンからなる基材と、基材上に配置された酸化アルミニウム層と、前記酸化アルミニウム層上に配置されたガスバリア性コーティング剤層と、前記ガスバリア性コーティング剤層上に配置されたガスバリア性接着剤層と、を有する。これらの層に加えて、シーラント層、印刷層、アンカーコート層などを有していてもよい。以下、本発明の構成について詳述する。
【0014】
(基材)
本発明の積層体に用いられる基材は2軸延伸ポリプロピレンからなる。原料としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のモノマーとの共重合体からなるプロピレン系樹脂、プロピレンの単独重合体と共重合体との混合物が挙げられる。これらの原料からなるフィルムまたはシート(なお以下では特記しない限り、フィルムはフィルムとシートの総称でもある)を単層、または2層以上の共押し出し方で製膜し、二軸方向に延伸したものを用いることができる。
【0015】
二方向に延伸する方法としては従来公知の方法を用いることができ、例えば、原料を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造する。その後、この未延伸フィルムをテンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向及びフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより製造することができる。延伸倍率は、ポリプロピレン原料により適宜選択することができるが、通常、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2~10倍が好ましい。
【0016】
基材の膜厚は特に限定されず、成型性や透明性の観点から、1~300μmの範囲で適宜選択すればよい。好適な強度、剛性、加工容易性が得られるため、基材の膜厚は1~100μmであることが好ましく、20~50μmの範囲であることがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる基材は、位相差測定法による面配向係数Δが、0.005~0.020の範囲であることが好ましい。これにより、ボイルやレトルト処理にも十分耐え得るレベルまで後述する酸化アルミニウム層と基材との密着性を向上させることができる。
【0018】
基材の面配向係数Δを0.005から0.020の範囲に調整する方法としては、例えば、二軸延伸後に熱固定工程を行い、二軸延伸および熱固定の条件を適切に選択することによって、面配向係数Δを制御する方法が挙げられる。例えば、二軸延伸後に低温で長時間による熱固定を行うことによって、前記面配向係数Δを所望の範囲内に調整することができる。また、後述するリアクティブイオンエッチング(RIE)処理などの表面処理により、面配向係数Δが0.005から0.020の範囲となるように表面を改質することも可能である。予め面配向係数Δを0.005から0.020の範囲に調整された市販品を用いてもよいし、酸化アルミニウム層を形成する直前に基材の表面に改質処理を施してもよい。
【0019】
また、本発明に用いられる基材は、位相差測定法により測定される配向角が、流れ方向に対して50°から90°または-50°から-90°であることが好ましい。これにより、ボイルやレトルト処理にも十分耐え得るレベルまで後述する酸化アルミニウム層と基材との密着性を向上させることができる。ここで、配向角は、流れ方向を0°として、左側に傾いて分子鎖が並んでいれば+、右側に傾いて分子鎖が並んでいれば-と定義する。
【0020】
流れ方向の配向角は可視光を用いた位相差測定法、マイクロウエーブを用いた分子配向測定法などの手法を用いて求めることができるが、マイクロウエーブを用いた分子配向測定法の場合には測定者による測定値のバラつきが大きくなる。これに対し、位相差測定法は測定者によらず安定して測定でき、測定者のバラつきも少なく、正確に配向角を測定することができる。このため、流れ方向に対する配向角の測定には位相差測定法を採用するのが良い。
【0021】
このような基材は、二軸延伸および熱固定を経て得られる。二軸延伸および熱固定の条件を適切に選択することによって、配向角を制御することができる。例えば、二軸延伸後に流れ方向に対して中央部分を切り出して使用することによって、基材の配向角を所望の範囲内で選択することが可能になる。
【0022】
基材には、必要に応じて添加剤が含まれていてもよい。具体的には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離型性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。添加剤の添加量は、他の性能に影響を与えない範囲で調整する。
【0023】
(表面処理)
酸化アルミニウム層の密着性を向上させるため、基材には何等かの表面処理、例えばコロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理等の物理的な処理や、化学薬品を用いた酸化処理等の化学的な処理、その他処理が施されていてもよい。特に放電処理は基材の面配向係数Δを所望の範囲内に調整することができるため好ましい。放電処理としては特に限定されないが、RIE処理が好ましい。
【0024】
RIE処理は、例えば巻取り式のインライン装置を用いて行うことができ、基材が設置される冷却ドラムに電圧を印加するプレーナ型処理装置を用いることができる。プレーナ型処理装置で基材をRIE処理する方法は、処理ロール(冷却ロール)の内側に電極(陰極)を配置し、基材を処理ロールに沿って搬送しながらその表面にプラズマ中のイオンを作用させてRIE処理を行う。このような方法によれば、基材を陰極に近い位置に設置することができ、高い自己バイアスを得ることによってRIE処理を行うことができる。
【0025】
あるいは、RIE処理はホロアノード・プラズマ処理装置を用いて行うこともできる。ホロアノード・プラズマ処理装置は、例えば、陽極として機能する処理ロールを備える。陰極及び陰極の両端に配置された遮蔽板は、処理ロールの外部に処理ロールと対向するように配置され、陰極は開口部を有するボックス形状に形成される。陰極の開口部は、処理ロールに対向するように開口し、遮蔽板は、処理ロールに沿った曲面形状を有する。ガス導入ノズルが陰極の上方に配置され、処理ロールと陰極の間及び処理ロール7遮蔽板との間の空隙にガスを導入する。マッチングボックスは、陰極の背面に配置される。
【0026】
このようなホロアノード・プラズマ処理装置で基材をRIE処理するには、基材を処理ロールに沿って搬送しながら、マッチングボックスから陰極に電圧を印加し、ガスが導入される処理ロールと陰極および遮蔽板の間にプラズマを発生させ、陽極である処理ロールに向けてプラズマ中のラジカルを引き寄せることによって、基材の表面にラジカルを作用させる。
【0027】
RIE処理において、ホロアノード電極中に磁石を組み込んで、磁気アシスト・ホロアノードを用いることが好ましい。これによって、より強力で安定したプラズマ表面処理を高速で行うことが可能となる。磁気電極から発生される磁界により、プラズマ閉じ込め効果をさらに高め、大きな自己バイアスで高いイオン電流密度を得ることができる。
【0028】
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、例えば、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することができる。これらのガスは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。RIE処理において、2基以上の処理装置を用いて、連続して処理を行うこともできる。このとき、使用される2基以上の処理装置は同じである必要はない。例えば、プレーナ型処理装置で基材を処理し、その後に連続してホロアノード・プラズマ処理装置を用いて処理を行うこともできる。
【0029】
(アンカーコート層)
本発明の積層体では、酸化アルミニウム層の形成に先立ち、基材上にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は基材上にアンカーコート剤を塗布、乾燥することにより形成することができる。これにより、基材と酸化アルミニウム層の密着性を高めるとともに、アンカーコート剤のレベリング作用により酸化アルミニウム層の形成面が平坦性を向上させることができ、クラック等の膜欠陥が少なく均一な酸化アルミニウム薄膜を形成とすることができる。
【0030】
アンカーコート剤としては、例えば、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂またはアルキルチタネート等が挙げられる。これらは単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
アンカーコート層の膜厚は特に制限されないが、5nm~5μm程度であることが好ましく、10nm~1μmであることがより好ましい。これにより、基材上に内部応力が抑制された均一な層を形成することができる。
【0032】
アンカーコート層を設ける場合、アンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するために、アンカーコート層形成に先立ち基材の表面に放電処理を施すことも好ましい。
【0033】
(酸化アルミニウム層)
酸化アルミニウム層は、主たる成分が酸化アルミニウムからなる層である。ここで主たる成分とは、酸化アルミニウム層を構成する成分の50質量%超が酸化アルミニウムであることを意味する。酸化アルミニウム層を構成する成分の70質量%以上が酸化アルミニウムであることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、理想的には100質量%である。酸化アルミニウムは、AlO、AlO、Al等の各種アルミニウム酸化物の少なくとも1種以上からなり、各種アルミニウム酸化物の含有率は薄膜層の作製条件によって調整することができる。
【0034】
酸化アルミニウム層は、XPS測定法によって算出される酸素とアルミニウムの比(O/Al比)が1.0~1.5であることが好ましい。これにより、透明で、かつ基材に対して高い密着性を示す。O/Al比が前記範囲の場合は、十分なバリア性を確保でき、しかも良好な透明性が得られ、クラック等の膜欠陥が生じにくくなる。
【0035】
酸化アルミニウム層は、層中、積層方向において酸素原子の濃度勾配が存在していてもよい。例えば、酸化アルミニウム層の基材側の面から、基材とは反対側の面にかけてO/Al比が増加していてもよい。酸化アルミニウム層は一層のみ設けられていてもよいし、互いに同じ、または異なる手法で形成された二層以上が設けられていてもよい。
【0036】
酸化アルミニウム層の膜厚は、5nm~300nmであることが好ましく、10nm~300nmであることがより好ましい。酸化アルミニウムの膜厚が前記範囲であると均一な層を形成することができ、十分なバリア性を確保できる。
【0037】
酸化アルミニウム層の表面粗さは3.5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがさらに好ましい。表面粗さRmの下限は特に制限されないが、一例として1.0μm以上である。なおここで酸化アルミニウム層表面粗さとは、酸化アルミニウム層の基材とは反対側の面に表面粗さをいい、原子間力顕微鏡(以下「AFM」という。)により測定したAFM凹凸像を粗さ解析により求めた粗さRms(自乗平均平方根粗さ)の値である。
【0038】
酸化アルミニウム層の表面粗さは、基材の表面粗さ、アンカーコート層の有無、酸化アルミニウム層を形成する粒子の粒子径、酸化アルミニウム層の膜厚等に影響を受けるが、これらの影響を受けた酸化アルミニウム層の表面粗さが上述の範囲にあると、積層体のガスバリア性を良好なものとすることができる。
【0039】
また、酸化アルミニウム層を形成する粒子の平均粒子径は20nm以下であることが好ましい。これにより、酸化アルミニウム層を高密度で充填し、また基材の表面の凹凸を隙間なく効率的に被覆でき、ガスバリア性に優れた積層体とすることができる。なお酸化アルミニウム層を形成する粒子の平均粒子径は15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されない。酸化アルミニウム層を形成する粒子の平均粒子径は、酸化アルミニウム層の表面粗さの測定と同様にAFM凹凸像の解析により得られる。
【0040】
酸化アルミニウム層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング方、化学気相成長法(CVD)等により形成することができる。生産性を考慮する場合は真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法により酸化アルミニウム層を形成する場合、高密度プラズマを発生させる手段を併用してもよい。蒸着原料の加熱方式としては、エレクトロンビ-ム(EB)方式、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式等を用いられる。真空蒸着法にて気化、あるいは昇華した蒸着粒子に、高エネルギーを有する高密度プラズマを充てることで、緻密性等の酸化アルミニウム層の膜質を向上させ、バリア性を向上させることができる。高密度プラズマを発生させる手段としては、誘導結合(ICP)プラズマ、ヘリコン波プラズマ、マイクロ波プラズマ、ホロカソード放電等が挙げられる。
【0041】
(ガスバリア性コーティング剤層)
本発明の積層体では、酸化アルミニウム層上にガスバリア性コーティング剤層を形成し、積層体のガスバリア性の向上や、酸化アルミニウム層の保護、ガスバリア性接着剤層や任意に形成される印刷層との密着性を向上させる。
【0042】
本発明のガスバリア性コーティング剤は、カルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)、アルコール(C)とを含有するコーティング剤であって、組成物中におけるアルコール(C)の含有量が85~98wt%であって、組成物中における水分量が1%以下であることを特徴とする。
【0043】
<カルボキシル基を有する樹脂(A)>
本発明のカルボキシル基を有する樹脂(A)は、カルボキシル基として、無水カルボン酸を含んでよい。前記カルボキシル基を有する樹脂(A)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびアスパラギン酸から選ばれる単量体の単独重合体または共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
また、カルボン酸基を有する樹脂(A)は、酸価が50~800mgKOH/gであると、バリア性能が向上する為好ましい。特に好ましくは80~800mgKOH/gである。酸価が80mgKOH/g以上であればイオン結合が十分進み高いバリア性能が得られる。
【0045】
(酸価測定方法)
酸価とは、試料1g中に存在する酸分を、中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。具体的には、秤量した試料を試料が溶解する適当な溶媒、例えば体積比でトルエン/メタノール=70/30の溶媒に溶かし、1%フェノールフタレインアルコール溶液を数滴滴下しておき、そこに0.1mol/Lの水酸化カリウムアルコール溶液を滴下して、変色点を確認する方法により測定することができ、下記の計算式で求めることができる。
【0046】
酸価測定方法-1
酸価(mgKOH/g)=(V×F×5.61)/S
V:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の使用量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液の力価
S:試料の採取量(g)
5.61:0.1mol/L水酸化カリウムアルコール溶液1mL中の水酸化カリウム相当量(mg)
【0047】
試料が樹脂溶液の場合は、下記の計算式で樹脂酸価(mgKOH/g)を求めることができる。
【0048】
樹脂酸価(mgKOH/g)=樹脂溶液の酸価(mgKOH/g)/NV(%)×100NV:不揮発分(%)
【0049】
また、有機溶媒への試料の溶解性が低く、析出などをして、測定困難な場合は、以下の方法でも酸価を測定することができる。
【0050】
酸価測定方法-2
酸価(mgKOH/g-resin)とは、FT-IR(日本分光社製、FT-IR4200)を使用し、無水マレイン酸のクロロホルム溶液によって作成した検量線から得られる係数(f)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン溶液における無水マレイン酸の無水環の伸縮ピーク(1780cm-1)の吸光度(I)とマレイン酸のカルボニル基の伸縮ピーク(1720cm-1)の吸光度(II)を用いて下記式により算出した値である。
酸価(mgKOH/g-regin)=[(吸光度(I)×(f)×2×水酸化カリウムの分子量×1000(mg)+吸光度(II)×(f)×水酸化カリウムの分子量×1000(mg))/無水マレイン酸の分子量]
無水マレイン酸の分子量:98.06、水酸化カリウムの分子量:56.11
【0051】
本発明のカルボキシル基を有する樹脂(A)としては、分子量に特に限定はないが、数平均分子量が300~2,000,000である塗膜成形性の観点から好ましい。特に好ましくは500~1,000,000である。
本発明のカルボキシル基を有する樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)の方法で測定を行うことで算出することができる。
【0052】
本発明のカルボキシル基を有する樹脂(A)としてはカルボキシル基を構造中に有する樹脂であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、カルボキシル基含有ビニル樹脂である。
【0053】
(カルボキシル基含有ビニル樹脂)
カルボキシル基含有ビニル樹脂としては、例えばカルボキシル基を有する重合性不飽和単量体の重合体が挙げられる。カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸等の不飽和カルボン酸類;
【0054】
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ-n-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ-n-ブチル等の各種の不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);
【0055】
アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニル等の各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0056】
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸等の各種の、飽和ポリカルボン酸の無水物類と、各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような種々の単量体類などが挙げられる。
【0057】
本発明のカルボキシル基を有する樹脂(A)としては、前記したカルボキシル基を有する重合性不飽和単量体の単独重合体であってもよいし、カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体を複数使用した共重合体であってもよい。また、カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体と共重合可能なその他の単量体との共重合体であってもよい。
【0058】
カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体と共重合可能な単量体としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0059】
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭素数1~22のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル類;
【0060】
(2)(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂式のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
【0061】
(3)(メタ)アクリル酸ベンゾイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
【0062】
(4)(メタ)アクリル酸ヒドロキエチル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール;ラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル酸エステル等のヒドロキシアルキル基を有するアクリル酸エステル類;
【0063】
(5)フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、フマル酸メチルエチル、フマル酸メチルブチル、イタコン酸メチルエチルなどの不飽和ジカルボン酸エステル類;
【0064】
(6)スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体類;
【0065】
(7)ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、ジメチルブタジエンなどのジエン系化合物類;
【0066】
(8)塩化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニルやハロゲン化ビニリデン類;
【0067】
(9)メチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどの不飽和ケトン類;
【0068】
(10)酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;
【0069】
(11)メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
【0070】
(12)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビ
ニル類;
【0071】
(13)アクリルアミドやそのアルキド置換アミド類;
【0072】
(14)N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類;
【0073】
(15)フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン若しくはヘキサフルオロプロピレンの如きフッ素含有α-オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル若しくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテル類;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート若しくはパーフルオロエチルオキシエチル(メタ)アクリレートの如き(パー)フルオロアルキル基の炭素数が1から18なる(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート類等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体類;
【0074】
(16)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート類;
【0075】
(17)N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
これらの重合性不飽和単量体は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0077】
前記カルボキシル基を有する樹脂(A)は、公知慣用の方法を用いて重合(共重合)させれば得られ、その共重合形態は特に制限されない。触媒(重合開始剤)の存在下に、付加重合により製造することができ、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。また共重合方法も塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が使用できる。
【0078】
<2価金属化合物(B)>
本発明の金属化合物(B)は、2価金属化合物であることを特徴とする。
2価金属化合物(B)とは、2価金属の化合物である。2価金属化合物(B)としては、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、銅化合物等が挙げられ、特に好ましくは亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物である。これらの金属化合物は、単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。
【0079】
2価金属化合物(B)としては、2価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩であることが好ましいく、これらの混合物であっても構わない。
2価金属化合物(B)の具体的な化合物として、好ましくは酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムであり、特に好ましくは酸化亜鉛と酸化マグネシウムである。
【0080】
2価金属化合物(B)としては、粒子状であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径が500nm以下10nm以上の微粒子である。特に好ましくは20nm~300nmの微粒子である。
ここでの平均粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置、例えばLB-500(堀場製作所製)を用いて測定することができる。
【0081】
<アルコール(C)>
本発明のアルコール(C)としては、公知慣用のアルコールを使用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ペンタノール等が挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールであり、特に好ましくはプロパノールである。
【0082】
<ガスバリア性コーティング剤>
本発明のガスバリア性コーティング剤は、前述したカルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、アルコール(C)とを含有することを特徴とする。そのうち、アルコール(C)の含有量が85~98wt%であって、組成物中における水分量が1%以下であることを特徴とする。アルコール(C)と水がこの範囲にあるとき、2価金属化合物(B)が組成物中で安定して存在し、塗工乾燥時に初めてカルボキシル基を有する樹脂(A)とイオン結合を形成してガスバリア性を発揮する。組成物の常態で安定に保存できることから、ガスバリア用コーティング剤として非常に好適に使用可能であり、1液型でガスバリア性のコート層を形成することができる。
【0083】
本発明のガスバリア性コーティング剤において、不揮発分は組成物中の1wt%~15wt%である。不揮発分全量中、カルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)との合計量は、90~100wt%であることが好ましい。この範囲であると、ガスバリア性を十分に発揮することができる。特に好ましくは95~100wt%である。 また、カルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)の比率としては、カルボキシル基を有する樹脂(A)と2価金属化合物(B)の合計量に対し、2価金属化合物(B)が15~60wt%であることが好ましい。この範囲であると、ガスバリア性と塗工性が良好に両立できる。特に好ましくは20~50wt%である。
【0084】
本発明のガスバリア性コーティング剤は、前述したカルボキシル基を有する樹脂(A)と、2価金属化合物(B)と、アルコール(C)以外の材料を含有していても構わない。
【0085】
(溶剤)
本発明のガスバリア性コーティング剤は、アルコール(C)以外の溶剤を含有してもよく、好ましくはアルコール(C)と相溶する溶剤であり、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0086】
(添加剤)
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、カップリング剤、シラン化合物、リン酸化合物、有機フィラー、無機フィラー、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤、酸素捕捉剤(酸素捕捉機能を有する化合物)、粘着付与剤等が例示できる。これらの各種添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0087】
カップリング剤としては公知慣用のものが挙げられ、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミカップリング剤等が挙げられる。
【0088】
シランカップリング剤としては公知慣用のものを用いればよく、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0089】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0090】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0091】
アルミカップリグ剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0092】
シラン化合物としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラザンとしてはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサンとしては加水分解性基含有シロキサン等が挙げられる。
【0093】
添加剤のうち、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、樹脂、鉱物等の無機物及びこれらの複合物が挙げられる。無機フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、チタン、ジルコニア、銅、鉄、銀、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、粘土鉱物等が挙げられる。
【0094】
酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0095】
粘着付与剤としては、キシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を添加することで塗布直後の各種基材に対する粘着性を向上させることができる。粘着性付与剤の添加量は樹脂組成物全量100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
【0096】
(ガスバリア性接着剤層)
ガスバリア性接着剤層は、ガスバリア性接着剤の硬化塗膜であり、ガスアリア性コーティング層上に配置される。使用できるガスバリア性接着剤は、ガスバリア性を有するものであれば特に限定されない。なお、本明細書においてガスバリア性接着剤とは、5g/m(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m/day/atm以下、または水蒸気バリア性が120g/m/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0097】
本発明に用いられるガスバリア性を有する接着剤としては、下記(A1)~(A5)の少なくとも1種のポリエステルポリオールを含むポリオール組成物(A)と、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物(以下単にイソシアネート化合物ともいう)を含むポリイソシアネート組成物(B)とからなる2液型接着剤が好ましく挙げられる。
【0098】
(1)3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)
(2)重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)
(3)グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)
(4)オルト配向性多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)
(5)イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)
【0099】
ポリエステルポリオール(A1)は、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(a1)にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られ、少なくとも1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する。ポリエステルポリオール(a1)は多価カルボン酸または多価アルコールの一部を三価以上とすることで得られる。
【0100】
ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価カルボン酸は、オルトフタル酸、オルトフタル酸無水物の少なくとも1種を含むことが好ましい。多価カルボン酸としてこれらの化合物を用いて得られるポリエステルポリオールはガスバリア性と接着性とに優れる。オルトフタル酸、オルトフタル酸無水物を用いることにより接着剤のガスバリア性が優れる理由は、オルトフタル酸やその酸無水物を用いて得られるポリエステル鎖の回転が抑制されるためと推察される。接着性が優れる理由は、ポリエステル鎖が非対称であることに起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与されるためと推察される。
【0101】
三価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸およびその酸無水物、ピロメリット酸及びその酸無水物等が挙げられる。合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価カルボン酸として三価のカルボン酸を用いることが好ましい。
【0102】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸及びその酸無水物が好ましい。
【0103】
ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを使用することが特に好ましい。
【0104】
三価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等が挙げられる。合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールを用いることが好ましい。
【0105】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0106】
ポリエステルポリオール(A1)は、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとの反応生成物である3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(a1)に、多価カルボン酸またはその酸無水物を反応させることで得られる。多価カルボン酸と反応させる水酸基の割合は、ポリエステルポリオール(a1)が備える水酸基の1/3以下とすることが好ましい。ポリエステルポリオール(a1)と反応させる多価カルボン酸またはその酸無水物は、二価または三価であることが好ましい。無水コハク酸、無水マレイン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物等が挙げられるがこれに限定されない。
【0107】
重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)は、多価カルボン酸、多価アルコールとして重合性炭素-炭素二重結合をもつ成分を使用することにより得られる。
【0108】
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価カルボン酸として無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物等が挙げられる。中でも、炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。
【0109】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。中でも、ガスバリア性を得る為にはコハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0110】
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価アルコールとしては、2-ブテン-1,4-ジオール等があげられる。
【0111】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。中でも酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングクリコールがより好ましい。
【0112】
また、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)は、水酸基を有するポリエステルポリオール(a2)と重合性二重結合を有するカルボン酸、またはカルボン酸無水物との反応生成物であってもよい。重合性二重結合を有するカルボン酸またはその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸等の重合性二重結合を有するカルボン酸、オレイン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。ポリエステルポリオール(a2)は、3個以上の水酸基を有することが好ましい。ポリエステルポリオール(a2)が備える水酸基が2個以下の場合、ポリエステルポリオール(A2)が備える水酸基の数が0~1個となり、後述するポリイソシアネート組成物(B)との反応時に分子伸張が起こり難くなり、接着強度等が低下する恐れがある。
【0113】
ポリエステルポリオール(A2)は二重結合成分比率が5~60質量%であることが好ましい。5質量%を下回ると重合性二重結合間の架橋点が少なくなり、ガスバリア性が得難くなる。60質量%を超えると架橋点が多くなり、硬化塗膜の柔軟性が低下して接着強度が得難くなるおそれがある。なお本明細書においてポリエステルポリオール(A2)における二重結合成分比率は下記式(a)を用いて計算する。下記式においてモノマーとはポリエステルポリオール(A2)の合成に用いる多価カルボン酸、多価アルコールを指す。
【0114】
【数1】
【0115】
さらにポリエステルポリオール(A2)として、乾性油、又は半乾性油を挙げることができる。乾性油、又は半乾性油としては、炭素-炭素二重結合を有する公知慣用の乾性油、半乾性油等を挙げることができる。
【0116】
グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)は、下記一般式(1)で表されるグリセロール骨格を有するものである。
【0117】
【化1】
(一般式(1)中、R~Rは各々独立に、水素原子、または下記一般式(2)である。但し、R~Rのうち少なくとも一つは、下記一般式(2)で表される基を表す。)
【0118】
【化2】
(一般式(2)中、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)
【0119】
ポリエステルポリオール(A3)は、R、R及びRのいずれか1つが一般式(2)で表される基である化合物と、R、R及びRのいずれか2つが一般式(2)で表される基である化合物と、R、R及びRの全てが一般式(2)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。R~Rの全てが一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0120】
一般式(2)において、Xが置換基によって置換されている場合、1又は複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0121】
一般式(2)におけるYの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2~6のアルキレン基である。プロピレン基、エチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0122】
ポリエステルポリオール(A3)は、グリセロールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物と、多価アルコールとを必須成分として反応させて得られる。
【0123】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物としては、オルトフタル酸又はその酸無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0124】
多価カルボンとして、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその酸無水物、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
【0125】
多価アルコールとしては炭素原子数2~6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0126】
また、グリセロール、炭素原子数が2~6のアルキレンジオール以外の多価アルコールを、本発明の効果を損なわない範囲において共重合させてもよい。具体的には、エリスリトール、ペンタエリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族多価アルコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノール等の芳香族多価フェノール、或いはこれらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
【0127】
ポリオール組成物(A)がポリエステルポリオール(A3)を主成分とする場合、ガスバリア性接着剤の固形分に占めるポリエステルポリオール(A3)が有するグリセロール残基の含有量が5質量%以上であることが好ましい。グリセロール残基とは一般式(1)におけるR~Rを除いた残基(C=89.07)をいい、下記式(b)を用いて計算する。
【0128】
【数2】
【0129】
なお上記式(b)においてPはポリエステルポリオール(A3)を指す。ガスバリア性接着剤の樹脂固形分質量は、用いるポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)の合計質量から、希釈溶剤(ドライラミネーション用接着剤の場合)、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれる揮発成分、無機成分の質量を除いた質量とする。
【0130】
オルト配向性多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)は、オルトフタル酸及びその酸無水物を少なくとも1種以上含む多価カルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコールからなる。特に、前記オルトフタル酸及びその酸無水物の、多価カルボン酸全量に対する使用率が70~100質量%であるポリエステルポリオールが好ましい。
【0131】
多価カルボン酸はオルトフタル酸及びその酸無水物のいずれかを必須とするが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。
【0132】
多価アルコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0133】
イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)は、下記一般式(3)で表されるものである。
【0134】
【化3】
(一般式(3)中、R~Rは各々独立して、-(CHn1-OH(但しn1は2~4の整数を表す)、又は下記一般式(4)で表される基を表す。但しR、R及びRの少なくとも1つは一般式(4)で表される基である。)
【0135】
【化4】
(一般式(4)中、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表し、Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)
【0136】
ポリエステルポリオール(A5)は、R、R及びRのいずれか1つが一般式(4)で表される基である化合物と、R、R及びRのいずれか2つが一般式(4)で表される基である化合物と、R、R及びRの全てが一般式(4)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。R~Rの全てが一般式(4)で表される基であることがより好ましい。
【0137】
一般式(3)において、-(CH2)n1-で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状でもよい。n1は、中でも2又は3が好ましく、2が最も好ましい。
【0138】
一般式(4)において、Xが置換基によって置換されている場合、1又は複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0139】
Xの置換基は、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基が好ましく、ヒドロキシル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、フタルイミド基、フェニル基がより好ましい。
【0140】
一般式(4)におけるYの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2~6のアルキレン基である。プロピレン基、エチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0141】
ポリエステルポリオール(A5)は、イソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物と、多価アルコールとを必須成分として反応させて得る。
【0142】
イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0143】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物としては、オルトフタル酸またはその酸無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸またはその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸またはその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸またはその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸またはその酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基またはナフチル基等が挙げられる。
【0144】
多価アルコールとしては炭素原子数2~6のアルキレンジオール、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0145】
中でも、イソシアヌル環を有するトリオール化合物として1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、または1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸を使用し、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物としてオルトフタル酸無水物を使用し、多価アルコールとしてエチレングリコールを使用したイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)が、ガスバリア性や接着性に優れ好ましい。
【0146】
イソシアヌル環は高極性であり、且つ水素結合を形成しない。一般に接着性を高める手法として、水酸基、ウレタン結合、ウレイド結合、アミド結合などの高極性の官能基を配合させる方法が知られているが、これらの結合を有する樹脂は分子間水素結合を形成しやすく、溶剤型接着剤に良く使用される酢酸エチル、2-ブタノン等の溶剤への溶解性を損ねてしまうことがあるが、イソシアヌル環を有するポリエステル樹脂は該溶解性を損なわないので、容易に希釈可能である。
【0147】
また、イソシアヌル環は3官能であるため、イソシアヌル環を樹脂骨格の中心とし、且つその分岐鎖に特定の構造のポリエステル骨格を有するポリエステルポリオール化合物は高い架橋密度を得ることができる。架橋密度を高めることで、酸素等のガスが通過する隙間を減らすことができると推定される。このように、イソシアヌル環は分子間水素結合を形成せずに高極性であり且つ高い架橋密度が得られるので、ガスバリア性と接着性とを担保できると推定している。
【0148】
このような観点から、ポリオール組成物(A)がポリエステルポリオール(A5)を主成分とする場合、ガスバリア性接着剤の固形分に占めるポリエステルポリオール(A5)が有するイソシアヌル環の含有量が5質量%以上であることが好ましい。イソシアヌル環とは一般式(3)におけるR~Rを除いた残基(C=126.05)をいい、下記式(b)を用いて計算する。
【0149】
【数3】
【0150】
なお上記式(c)においてPはポリエステルポリオール(A5)を指す。ガスバリア性接着剤の樹脂固形分質量は、用いるポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)の合計質量から、希釈溶剤(ドライラミネーション用接着剤の場合)、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれる揮発成分、無機成分の質量を除いた質量とする。
【0151】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が20mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎるためポリオール組成物(A)の粘度が高くなり、良好な塗工適性が得られない。水酸基価が250mgKOH/gを超える場合、分子量が小さすぎて硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られない。
【0152】
ポリエステルポリオールが酸基を有する場合、酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が200mgKOH/gを超える場合、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)との反応が早くなり過ぎ、良好な塗工適性が得られない。ポリエステルポリオールの酸価の下限は特に制限されないが、一例として20mgKOH/g以上である。酸価が20mgKOH/g以上であると分子間の相互作用により良好なガスバリア性や初期凝集力が得られる。ポリエステルポリオールの水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS-K0070に記載の酸価測定法にて測定することができる。
【0153】
上述したようなポリエステルポリオールの数平均分子量は300~5000であると接着性とガスバリア性とのバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。より好ましくは数平均分子量が350~3000である。分子量が300よりも小さいと塗工時の接着剤の凝集力が小さくなりすぎ、ラミネート時にフィルムがズレたり、貼り合せたフィルムが浮き上がるといった不具合が生じるおそれがある。一方、分子量が5000よりも高いと塗工時の粘度が高くなり過ぎて塗工が出来ない、あるいは粘着性が低くラミネートができないといった不具合が生じるおそれがある。なお、数平均分子量は得られた水酸基価と設計上の水酸基の官能基数から計算により求める。
【0154】
ポリエステルポリオールのガラス転移温度は-30℃以上80℃以下であることが好ましく、0℃以上60℃以下であることがより好ましく、25℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が80℃を超えると室温付近でのポリエステルポリオールの柔軟性が低いために基材への密着性が劣り、接着性が低下するおそれがある。一方-30℃よりも低いと、常温付近でのポリエステルポリオールの分子運動が激しいため十分なガスバリア性が得られないおそれがある。
【0155】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール(A1)~(A5)をジイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長により数平均分子量1000~15000としたポリエステルポリウレタンポリオール、であってもよい。ウレタン伸長したポリエステルポリオールには一定以上の分子量成分とウレタン結合とが存在するため、優れたガスバリア性を持ち、初期凝集力に優れ、ラミネート用の接着剤として優れる。
【0156】
ガスバリア性を有する2液型接着剤の一成分であるポリイソシアネート組成物(B)は、イソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の2量体、3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。ポリエステルポリオール(A1)~(A5)とジイソシアネート化合物とを、水酸基とイソシアネート基の比率をイソシアネート過剰で反応させて得られるポリエステルポリイソシアネートを用いてもよい。これらは1種または2種以上を併用することができる。
【0157】
また、イソシアネート化合物としてブロック化イソシアネートを用いてもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0158】
中でも、良好なガスバリア性が得られることからキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、メタキシリレンジイソシアネート、メタ水素化キシリレンジイソシアネートのようなメタキシレン骨格を有するイソシアネート化合物を用いることがより好ましい。
【0159】
メタキシレン骨格を有するイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体が挙げられる。3量体、ビューレット体と比べ、溶剤型接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が良好なことから、接着剤が溶剤型の場合はアダクト体を用いることが好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が好ましい。
【0160】
また、ポリオール組成物(A)として、ポリエステルポリオール(A1)のようにカルボン酸基が残存しているポリエステルポリオールを含む組成物を用いる場合には、ポリイソシアネート組成物(B)がエポキシ化合物を含んでいてもよい。エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0161】
エポキシ化合物を用いる場合には、硬化を促進する目的で汎用公知のエポキシ硬化促進剤を本発明の目的が損なわれない範囲で適宜添加してもよい。
【0162】
ポリオール組成物(A)として、ポリエステルポリオール(A2)のように重合性炭素-炭素二重結合を有するポリオールを含む組成物を用いる場合には、炭素-炭素二重結合の重合を促進するために公知の重合触媒を併用することができ、一例として遷移金属錯体が挙げられる。遷移金属錯体は、重合性二重結合を酸化重合させる能力を備える化合物であれば特に限定されない。例えば、コバルト、マンガン、鉛、カルシウム、セリウム、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、樹脂酸、トール油脂肪酸、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸等との塩を用いることができる。遷移金属錯体の配合量はポリオール組成物(A)に含まれる樹脂固形分に対して0~10質量部が好ましく、より好ましくは0~3質量部である。
【0163】
ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)とは、ポリオール組成物(A)に含まれる水酸基と、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれるイソシアネート基との当量比が1/0.5~1/10となるよう配合することが好ましく、1/1~1/5となるよう配合することがより好ましい。イソシアネート化合物が過剰の場合、接着剤の硬化塗膜に残留した余剰のイソシアネート化合物が接着剤層からブリードアウトするおそれがある。一方、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれる反応性の官能基が不足すると、接着強度が不足するおそれがある。
【0164】
ガスバリア性接着剤には、接着性およびガスバリア性を損なわない範囲で各種添加剤を配合してもよい。
【0165】
このような添加剤として、無機充填剤を用いてもよい。無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられる。特に無機充填剤として板状無機化合物を用いると、接着強度、ガスバリア性、遮光性等が向上するため好ましい。板状無機化合物としては、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。板状無機化合物は1種または2種以上を併用することができる。
【0166】
板状無機化合物は、層間に電荷を有するイオン性のものであってもよいし、電荷を持たない非イオン性のものであってもよい。層間の電荷の有無は接着剤層のガスバリア性に直接大きな影響を与えない。しかしながらイオン性の板状無機化合物や水に対して膨潤性を有する無機化合物は溶剤型接着剤への分散性が劣り、添加量を増加させると接着剤と増粘したり、チキソ性となったりして塗工適性が低下するおそれがある。このため板状無機化合物層間電化を持たない非イオン性であることが好ましい。
【0167】
板状無機化合物の平均粒径は、特に制限されないが、一例として0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。0.1μmよりも小さいと、酸素分子の迂回経路が長くならず、ガスバリア性の向上が十分には期待できない。平均粒径の上限は特に制限されないが、粒径が大きすぎると塗工方法によっては塗工面にスジ等の欠陥が生じる場合がある。このため、一例として平均粒径は100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。なお本明細書において板状無機化合物の平均粒径とは、板状無機化合物の粒度分布を光散乱式測定装置で測定した場合の出現頻度が最も高い粒径をいう。
【0168】
板状無機化合物のアスペクト比は酸素の迷路効果によるガスバリア性の向上のためには高い方が好ましい。具体的には3以上が好ましく、更に好ましくは10以上、最も好ましくは40以上である。
【0169】
板状無機化合物の配合量は任意であるが、一例として、ポリオール組成物(A)、ポリイソシアネート組成物(B)、板状無機化合物の固形分総質量を100質量としたときに、板状無機化合物の配合量が5~50質量部である。
【0170】
ガスバリア性接着剤が接着促進剤を含んでいてもよい。接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着性を向上させる効果が期待できる。
【0171】
ガスバリア性接着剤層に耐酸性が必要な場合には、ガスバリア性接着剤が公知の酸無水物を含んでいてもよい。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5-(2,5-オキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0172】
必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0173】
塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合にその配合量は、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)の固形分総量100質量部に対して0.01~5質量部の範囲が好ましい。
【0174】
ポリオール組成物(A)がポリエステルポリオール(A2)を含む場合、重合性炭素-炭素二重結合を反応させる方法として活性エネルギー線を使用することもできる。活性エネルギー線としては公知の技術が使用でき、電子線、紫外線、或いはγ線等の電離放射線等を照射して硬化させることができる。紫外線で硬化させる場合、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。
【0175】
紫外線を照射して硬化させる場合には、必要に応じて、紫外線の照射によりラジカル等を発生する光(重合)開始剤をポリエステルポリオール(A2)100質量部に対して0.1~20質量部程度添加することが好ましい。
【0176】
ラジカル発生型の光(重合)開始剤としては、ベンジル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等の水素引き抜きタイプや、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルフェニルケトン等の光開裂タイプが挙げられる。これらの中から単独或いは複数のものを組み合わせて使用することができる。
【0177】
その他、ガスバリア性接着剤が安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。これらの各種添加剤は予めポリオール組成物(A)およびポリイソシアネート組成物(B)のいずれか一方、または両方に添加しておいてもよいし、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)とを混合する際に添加してもよい。
【0178】
本発明で用いられるガスバリア性接着剤は、溶剤型、無溶剤型いずれの形態であってもよい。本明細書において溶剤型接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいう。用いられる溶剤としては、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリオール組成物(A)およびポリイソシアネート組成物(B)のいずれか一方、もしくは両方が上述した有機溶剤を含む。溶剤型の場合、ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)の構成成分の製造時に反応媒体として使用された溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。
【0179】
無溶剤型接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して溶剤を揮発させる工程を経ずに他の基材と貼り合せる方法、いわゆるノンソルベントラミネート法に用いられる形態をいう。ポリオール組成物(A)およびポリイソシアネート組成物(B)のいずれもが、上述した有機溶剤を実質的に含まない。ポリオール組成物(A)またはポリイソシアネート組成物(B)の構成成分や、その原料の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が除去しきれずに、ポリオール組成物(A)やポリイソシアネート組成物(B)中に微量の有機溶剤が残留してしまっている場合は、有機溶剤を実質的に含まないと解される。また、ポリオール組成物(A)が低分子量アルコールを含む場合、低分子量アルコールはポリイソシアネート組成物(B)と反応して塗膜の一部となるため、塗工後に揮発させる必要はない。従ってこのような形態も無溶剤型接着剤として扱う。
【0180】
(シーラント層)
本発明の積層体は、ガスバリア性接着剤層上に、シーラント層を有していてもよい。シーラント層は熱により溶融し相互に融着し得る、ヒートシール性の樹脂の層である。シーラント層に好適な樹脂としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、その他不飽和カルボン酸で変性した変性オレフィン樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体、環状ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。これらの樹脂の1種または2種以上からなる樹脂のフィルム、シート、その他塗布膜等をシーラント層として使用することができる。
【0181】
シーラント層となるフィルムとしては、未延伸、1軸延伸、2軸延伸のフィルムのいずれも使用することができる。
【0182】
2軸方向に延伸した延伸フィルムは、例えば50~100℃のロール延伸機により2~4倍に縦延伸し、更に90~150℃の雰囲気下でテンター延伸機により3~5倍に横延伸し、引き続いて100~240℃の雰囲気下でテンター延伸機により熱処理することで得られる。あるいは、同時2軸延伸、逐次2軸延伸したものを用いてもよい。
【0183】
シーラント層に易剥離性のシーラントフィルム(イージーピールフィルム)を用いてもよい。易剥離性のシーラントフィルムとしては、界面剥離タイプ、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプの何れも適用可能であり、後述する包装材の種類や要求特性に応じて適宜選択することができる。易剥離性の指標としては、包装材の種類や要求特性に応じて適宜設定されるが、一例としてシール強度が2~20N/15mmである。例えばポリプロピレンと高密後ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などを組み合わせた相分離系のポリマーブレンドにより易剥離性を発現させることができる。
【0184】
シーラント層の膜厚は任意に選択し得るが、例えば後述する包装材に適用する場合には5~500μmの範囲で選択される。10~250μmであることがより好ましく、15~100μmであることがさらに好ましい。5μmを下回ると包装材料として充分なラミネート強度が得られず、さらに耐突き刺し性等も低下する恐れがある。250μmを超えるとコスト上昇を招くと共にフィルムが硬くなり、作業性が低下する。
【0185】
(印刷層)
本発明の積層体は、必要に応じて印刷層を有していてもよい。印刷層の位置は任意であるが、一例として基材のガスバリア性接着剤層が設けられるのとは反対側の面上や、ガスバリア性コーティング層とガスバリア性接着剤層との間に、ガスバリア性コーティング層と接して設けられる。印刷層は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。
【0186】
(積層体 その他の層)
本発明の積層体は、必要に応じて他の層を有していてもよい。例えば、ガスバリア性接着剤層とシーラント層との間に、フィルムが配置されていてもよい。当該フィルムとしては、基材として例示したものと同様のものを用いることができる。ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の1軸または2軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の1軸または2軸延伸ポリアミドフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等を好適に用いることができる。
【0187】
ガスバリア性接着剤層とシーラント層との間にフィルムが配置される場合、当該フィルムとシーラント層とは接着剤を介して貼り合せられていてもよい。この際用いる接着剤は上述したガスバリア性接着剤であってもよいし、そうでなくてもよい。当該フィルムは、ガスバリア性接着剤層を介して基材と貼り合せられていてもよいし、フィルムとガスバリア性接着剤層との間に更に他の層が配置されていてもよい。
【0188】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体は、酸化アルミニウム層およびガスバリア性コーティング層が設けられた基材と、シーラント層とを、ガスバリア性接着剤を用い、ドライラミネート法もしくはノンソルベントラミネート法にて貼り合せて得られる。ラミネートされた積層体はガスバリア性に優れ、ガスバリア積層体として使用することができる。
【0189】
ガスバリア性コーティング層を形成する方法はとしては特に限定はなく、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。塗工後、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させる。
【0190】
ガスバリア性接着剤が溶剤型である場合、基材とシーラント層のどちらか一方にガスバリア性接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、他方を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後にエージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~80℃、エージング時間は12~240時間が好ましい。
【0191】
ガスバリア性接着剤が無溶剤型である場合、基材とシーラント層のどちらか一方に予め40℃~100℃程度に加熱しておいたガスバリア性接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布した後、直ちに他方を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後にエージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~70℃、エージング時間は6~240時間が好ましい。
【0192】
ガスバリア性接着剤の塗布量は、適宜調整する。溶剤型の場合、一例として固形分量が1g/m以上10g/m以下、好ましくは1g/m以上5g/m以下となるよう調整する。無溶剤型の場合、接着剤の塗布量が一例として1g/m以上10g/m以下、好ましくは1g/m以上5g/m以下である。
【0193】
<包装材>
本発明の積層体は、食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0194】
本発明の包装材は、本発明の積層体を使用し、積層体のシーラントフィルムの面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして得られる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(縦ピロー、横ピロー)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0195】
本発明の包装材に、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして本発明の包装材を使用した製品が製造される。充填される内容物としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類が挙げられる。また、本発明の包装材はタバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、化粧品、真空断熱材などの包装材料としても使用され得る。
【0196】
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明の樹脂組成物や本樹脂組成物を含む積層体が遮断できるガスとしては、酸素の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、リモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等を例示することができる。
【0197】
<包装材料、および加熱殺菌用包装材料>
本発明の積層体は、ガスバリア性に優れることから、ガスバリア性が要求される包装材料として好適に使用可能である。特に食品・日用品・電子材料・医療用等は高いバリア性を必要とすることから、本発明の包装材料を好適に使用可能である。
さらには耐熱性・耐湿熱性にも優れることから、ボイルやレトルトといった加熱殺菌用の包装材料としても好適に使用可能である。
【0198】
本発明の包装材は、本発明の積層体を使用した蓋材であってもよい。
【実施例
【0199】
以下実施例を示し本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特に記述のない場合、単位は重量換算である。
【0200】
言葉の定義:ポリアクリル酸(以下:PAAと省略する事がある)の単位ユニットの分子量は72である。通常、PAAの単位ユニット2分子(分子量72×2)に対して酸化亜鉛(分子量81.4)(以下:ZnOと省略する事がある)1分子が反応に寄与し塩形成する。PAA重量:ZnO重量=144/82.4=100/57で配合する処方を、ZnOを1当量配合すると称する。
【0201】
<PAA溶液の調整方法>
(PAA調整例1)
フラスコにて数平均分子量9000のPAA粉末(ジュリマーAC―10P、東亜合成社製):20gをイソプロピルアルコール(関東化学社製):980g中で撹拌、沸騰させながら溶解し、固形分濃度が2%となる分子量9000のPAA溶液1を得た。
【0202】
(PAA調整例2)
フラスコにて数平均分子量25万のPAA粉末(ジュリマーAC―10LHPK、東亜合成社製):20gをイソプロピルアルコール(以下IPAと省略する事がある)関東化学社製:980g中で撹拌、沸騰させながら溶解し、固形分濃度が2%となる分子量25万のPAA溶液2を得た。
【0203】
(PAA調整例3)
フラスコにて数平均分子量80万のPAA粉末(アクアリックAS-58、日本触媒製):20gをイソプロピルアルコール(関東化学社製):980g中で撹拌、沸騰させながら溶解し、固形分濃度が2%となる分子量80万のPAA溶液3を得た。
【0204】
<ZnO分散液の調整方法>
(ZnO調整例1)
ZnOの分散液について、一次粒子径20nmのZnO(堺化学工業株式会社製、FINEX-50):200gとIPA:800gを混合し、ビーズミル(寿株式会社製:ウルトラアスペックミルUAM-015)中で直径0.3mmのジルコニアビーズを使って1時間分散処理した後、ビーズをふるい分け、固形分濃度:20%のZnO溶液を得た。この溶液をIPAで希釈し、固形分濃度が2%となるZnOのIPA分散液を得た。この分散液中のZnOの粒径は88nmであった。
【0205】
<比較用コーティング剤の調整方法>
「バイロンGK880」(東洋紡製)30部をメチルエチルケトン70部に溶解させた溶液7.3部に対し、硬化剤としてタケネートD-110N(三井化学(株)製)2.7部を混合し、さらにメチルエチルケトン19部を加え固形分濃度10%の比較用コーティング剤を得た。
【0206】
<接着剤調整例>
[ポリオール]
(EGoPA 0.9K)「ポリオールA1」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール80.12部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900、水酸基価124.7mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA1」を得た。
【0207】
(EGoPA/AA 0.5K) 「ポリオールA2」
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸207.37部、エチレングリコール184.0部、アジピン酸87.68部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.014部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約500、水酸基価224.4mgKOH/g、酸価0.9mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA2」を得た。
【0208】
(EGoPA/MA 0.6K) 「ポリオールA3」
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水マレイン酸98.1部、エチレングリコール78.5部及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppmに相当する量を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約600、水酸基価182mgKOH/g、酸価0.9mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA3」を得た。
【0209】
(EGoPA/FDCA 0.5K) 「ポリオールA4」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール80.12部、無水フタル酸74.06部、フランジカルボン酸78.05及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量500、水酸基価220.4mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA4」を得た。
【0210】
(GLY(EGoPA)3) 「ポリオールA5」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、グリセロールを92.09部、無水フタル酸444.36部、エチレングリコール186.21部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.07部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量668.60、水酸基価250mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA5」を得た。
【0211】
(GLY(EGoPA)3 + MICA) 「ポリオールA6」
撹拌機を備えた容器に「ポリオールA5」70部を仕込み、90℃で加熱撹拌しポリオールが十分に流動性を保つ状態とした。撹拌しながらHM6025(HENGHAO社製、天然マイカ/非膨潤性、板状、平均粒径10μm、アスペクト比100以上)30部を加え、90℃で均一となるまで撹拌した。これを冷却することで無機化合物を「ポリオールA5」に分散させた「ポリオールA6」を得た。
【0212】
(EGoPA/AA 0.5K+MICA)「ポリオールA7」
撹拌機を備えた容器に「ポリオールA2」70部を仕込み、90℃で加熱撹拌しポリオールが十分に流動性を保つ状態とした。撹拌しながらHM6025(HENGHAO社製、天然マイカ/非膨潤性、板状、平均粒径10μm、アスペクト比100以上)30部を加え、90℃で均一となるまで撹拌した。これを冷却することで無機化合物を「ポリオールA2」に分散させた「ポリオールA7」を得た。
【0213】
(DEG/AA2.0K)「ポリオールA8」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、ジエチレングリコール125.33部、アジピン酸146.14部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価1.0mgKOH/gのポリエステルポリオール「ポリオールA8」を得た。
【0214】
(ポリイソシアネート組成物の調整)
「硬化剤 B1」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール80.12部、無水フタル酸148.12部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量400のポリオール中間体を得た。次に攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にキシリレンジイソシアネート71.45部、ミリオネートMN(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物)46.26部を入れて70℃に加熱しながら撹拌し、ポリオール中間体73.82部を、滴下漏斗を用いて2時間かけて滴下し、更に4時間撹拌し、ポリイソシアネートである「硬化剤B1」を得た。JIS-K1603に従い測定したNCO%は15.1%であった。
【0215】
「硬化剤 B2」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にキシリレンジイソシアネート71.45部、ミリオネートMN(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物)46.26部を入れて70℃に加熱しながら撹拌し、「ポリオールA2」92.28部を、滴下漏斗を用いて2時間かけて滴下し、更に4時間撹拌し、ポリイソシアネートである「硬化剤 B2」を得た。JIS-K1603に従い測定したNCO%は15.1%であった。
【0216】
「硬化剤 B3」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール24.72部、ジエチレングリコール60.10部、ネオペンチルグリコール2.49部、アジピン酸125.3部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.02部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し中間体を得た。攪拌機、窒素ガス導入管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にミリオネートMT83.45部、ルプラネートMI83.5部を入れて70℃に加熱しながら攪拌し、中間体を滴下漏斗を用いて2時間かけてゆっくり滴下し、更に4時攪拌し、ポリイソシアネートである「硬化剤B3」を得た。JIS-K1603に従い測定したNCO%は13.2%であった。
【0217】
「硬化剤 B4」
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にキシリレンジイソシアネート71.45部、ミリオネートMN(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物)46.26部を入れて70℃に加熱しながら撹拌し、「ポリオールA4」92.28部を、滴下漏斗を用いて2時間かけて滴下し、更に4時間撹拌し、「硬化剤B4」を得た。JIS-K1603に従い測定したNCO%は15.1%であった。
【0218】
「硬化剤 B5」
三井化学製「タケネートD-110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 不揮発成分75.0% NCO% 11.5%)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート不揮発分>99%,NCO% 44.6%)を50/50(質量比)の割合で混合し「硬化剤 B5」とした。硬化剤B1の不揮発分は、87.5%、NCO%は28.05%である。
【0219】
「硬化剤 B6」
DIC株式会社製「PASLIM VM108CP」を「硬化剤 B6」とした。
【0220】
(接着剤の調整)
調整したポリオールA1~A8、硬化剤B1~B6を表1に示す比率で配合して接着剤1~15を調整した。
【0221】
【表1】
【0222】
<水性リキッドインキの調整方法>
(水性インキ用樹脂の調整)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量2000)191質量部、イソホロンジイソシアネート141質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸26質量部、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール28質量部、メチルエチルケトン200質量部の混合溶剤中で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0223】
次いで、50%水酸化カリウム水溶液20質量部加えることで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水700質量部と80%ヒドラジン水溶液9.0質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分40質量%の水性リキッドインキ用樹脂を得た。
【0224】
(水性リキッドインキの調整)
得られた水性リキッドインキ用樹脂を用い以下の組成で撹拌混合した後、ビーズミルで練肉して練肉ベースを作成した。
〔練肉ベース配合〕
FASTPGEN BLUE LA5380藍顔料(DIC社製) 15部
水性リキッドインキ用樹脂 40部
ノニオン系顔料分散剤(BYK社製)10部
イソプロピルアルコール 3部
水 8部
シリコン系消泡剤(BYK社製) 0.2部
【0225】
得られた練肉ベースに、さらに水性リキッドインキ用樹脂10部、水4部を加えた後、さらに水性リキッドインキの粘度がザーンカップ#4(離合社製)で16秒(25℃)になる様に水を加えて水性リキッドインキを得た。粘度調整に用いた水は5部、水性リキッドインキの不揮発分は58%、25℃における表面張力は35mN/mであった。表面張力はWhihelmy法に基付き、協和界面科学(株)社製 自動表面張力計DY-300を用いて測定した。得られた水性リキッドインキの配合は以下の通りである。
〔水性リキッドインキの配合〕
FASTPGEN BLUE LA5380藍顔料(DIC社製) 15部
水性リキッドインキ用樹脂 50部
ノニオン系顔料分散剤(BYK社製) 10部
イソプロピルアルコール 3部
水 17部
シリコン系消泡剤(BYK社製) 0.2部
【0226】
<評価用積層体の製造方法>
(酸化アルミニウム層を有するOPPフィルム1の製造)
2軸延伸処理により面配向係数Δを0.011に調製した厚み20μmのOPPフィルムの一方の面に、シランカップリング剤、アクリルポリオール、およびイソシアネート硬化剤を混合したアンカーコート剤を塗布し、厚み0.3μmのアンカーコート層を形成した後、電子線加熱方式により厚み15nmの酸化アルミニウム層を形成した。このフィルムを以下ではOPPフィルム1とも称する。
【0227】
(酸化アルミニウム層を有するOPPフィルム2、2’の製造)
OPPフィルム1の酸化アルミニウム層上に、表2、3に示す配合で調整したガスバリア性コーティング剤または表4に示す配合で調整したコーティング剤を、バーコーターを用いて塗布量1.0g/m(固形分)となるよう塗工した。塗工後すぐに60℃の乾燥機中で1分間加熱し、酸化アルミニウム層上にガスバリア性コーティング層を有するOPPフィルム(以下OPPフィルム2とも称する)、酸化アルミニウム層上にコーティング層を有するOPPフィルム(以下OPPフィルム2’とも称する)を得た。
【0228】
(酸化アルミニウム層を有するOPPフィルム3の製造)
OPPフィルム1に、Flexoproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製、アニロックス200線/inch)を用いて水性リキッドインキを縦240mm×横80mmのベタ柄で印刷後、ドライヤーで乾燥してOPPフィルムの酸化アルミニウム層上に印刷層を設け、OPPフィルム3とした。印刷層の塗布量(塗布した水性リキッドインキの固形分量)は1.0g/mであった。
【0229】
OPPフィルム1に換えてOPPフィルム2を用い、ガスバリア性コーティング層上に印刷層を設けた以外はOPPフィルム3の製造と同様にしてOPPフィルム4を得た。また、OPPフィルム1に換えてOPPフィルム2’を用い、コーティング層上に印刷層を設けた以外はOPPフィルム3の製造と同様にしてOPPフィルム4’を得た。
【0230】
(評価用積層体の製造方法)
上記のようにして得られたOPPフィルムを用い、以下の接着剤塗工方法1または2のいずれかの方法で実施例1~19、比較例1~3の評価用積層体を製造した。積層体の製造に用いた接着剤、接着剤塗工方法は表2~4に記載のものである。
【0231】
<接着剤塗工方法>
(方法1)
調整した接着剤を、バーコーターを用いて、塗膜量3.0g/m(固形分)となるようにOPPフィルム1の酸化アルミニウム層上、OPPフィルム2のガスバリア性コーティング層上、OPPフィルム2’のコーティング層上、OPPフィルム3、4、4’の印刷層上にそれぞれ塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥した。次に前記接着剤が塗布されたOPPフィルムの接着剤面とLLDPEフィルム(三井化学東セロ製TUX-HC、厚さ40μm)とを貼り合せた。40℃/2日間のエージングを行い、積層体を得た。
【0232】
(方法2)
調整した接着剤を約70℃に加熱し、無溶剤用テストコーターを用いて、OPPフィルム1の酸化アルミニウム層上、OPPフィルム2のガスバリア性コーティング層上、OPPフィルム2’のコーティング層上、OPPフィルム3、4、4’の印刷層上に塗膜量2.5g/m(固形分)となるようにそれぞれ塗布し、前記接着剤が塗布されたOPPフィルム1~4の接着剤面とLLDPEフィルム(三井化学東セロ製TUX-HC、厚さ40μm)とを貼り合せた。40℃/2日間のエージングを行い、積層体を得た。
【0233】
<評価>
(ガスバリア性の評価:酸素透過率)
酸素透過率(OTR)の測定は、JIS-K7126(等圧法)に準じ、モコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN1/50を用いて、温度23℃、湿度0%RHの雰囲気下、及び、温度23℃、湿度90%RHの雰囲気下で実施した。RHとは相対湿度を表す。尚、酸素透過率の単位は、cc/day・atm・mである。結果を表2~4にまとめた。
【0234】
(ガスバリア性の評価:水蒸気透過率)
水蒸気透過率(MVTR)の測定は、JIS-K7129に準じ、イリノイ社製水蒸気透過率測定装置7001を用いて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で測定した。尚、酸素透過率の単位は、g/m・dayである。結果を表2~4にまとめた。
【0235】
(屈曲試験後の酸素透過率)
エージングが終了した積層体を30cm×20cmのサイズに調整し、ASTM F392に準じてゲルボフレックステスター(BE-1006恒温槽付ゲルボフレックステスター、テスター産業(株))にて屈曲試験を行った。尚、屈曲試験は440°/90mm、直動65mm、23℃にて屈曲回数5回の条件で実施し、ゲルボフレックス処理後の酸素透過率を測定した。単位はcc/m・day・atmである。結果を表2~4にまとめた。
【0236】
(屈曲試験後の水蒸気透過率)
エージングが終了した積層体を30cm×20cmのサイズに調整し、ASTM F392に準じてゲルボフレックステスター(BE-1006恒温槽付ゲルボフレックステスター、テスター産業(株))にて屈曲試験を行った。尚、屈曲試験は440°/90mm、直動65mm、23℃にて屈曲回数5回の条件で実施し、ゲルボフレックス処理後の水蒸気透過率を測定した。単位はg/m・dayである。結果を表2~4にまとめた。
【0237】
(ラミネート強度の測定方法)
OPPフィルム2またはOPPフィルム2’とLLDPEフィルムとの評価用積層体を塗工方向と平行に15mm幅に切断し、2軸延伸OPPフィルムとLLDPEフィルムとの間を、(株)エー・アンド・ディー製「テンシロン万能試験機STB―01」を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度をラミネート強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。また、表中の「OPP切れ」とは接着強度が強いために被着体(この場合はOPPフィルム)の材料破壊が生じた状態、すなわち接着強度自体は良好であることを表す。
【0238】
【表2】
【0239】
【表3】
【0240】
【表4】
【0241】
実施例、比較例から明らかなように、本発明の積層体は酸素、水蒸気透過率が低く抑えられており、バリア性に優れ、且つ屈曲試験後であってもその特性を維持している。一方比較例1~3の積層体は、ガスバリア性に劣り、且つ屈曲試験後に性能が著しく劣化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明の積層体は、その組成により従来のガスバリア性積層体と比較し、優れたガスバリア性を示す。このことから本発明の積層体は、包装材料、特に食品・日用品・電子材料・医療用等のバリア性を必要とする包装材料として好適に使用可能である。