IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハートランド・データ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-会話補助システム 図1
  • 特許-会話補助システム 図2
  • 特許-会話補助システム 図3
  • 特許-会話補助システム 図4
  • 特許-会話補助システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】会話補助システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/06 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
H04R1/06 320
H04R1/06 310
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021112514
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009347
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】300008483
【氏名又は名称】ハートランド・データ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】二木 宣好
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 忠義
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162212(JP,A)
【文献】特開2006-33378(JP,A)
【文献】パーティション取付型会話補助システム,日本,TOA株式会社,2021年02月06日,[オンライン],[検索日 2022.12.26],インターネット:<URL:https://web.archive.org/web/20210206165048/https://www.toa.co.jp/solution/solution/newlifestyle/microphones_nf-2/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な第1面と第2面を備える透光性遮蔽体の前記第1面側に配置される第1会話補助装置と、前記透光性遮蔽体の前記第2面側に配置される第2会話補助装置と、からなる会話補助システムであって、
前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、
音声による空気振動を電気信号に変換して、アナログの送信音声信号を出力する音声入力手段と、
前記音声入力手段から入力された前記送信音声信号を増幅して、アナログの増幅送信音声信号を出力する送信音声増幅手段と、
前記送信音声増幅手段から入力された前記増幅送信音声信号の強弱に応じた輝度で発光する光信号を出力する光信号出力手段と、
受信した前記光信号の強弱に応じたアナログ電気信号である受信音声信号を出力する光信号受信手段と、
前記光信号受信手段から入力された前記受信音声信号を増幅して、アナログの増幅受信音声信号を出力する受信音声増幅手段と、
前記受信音声増幅手段から入力された前記増幅受信音声信号の強弱を空気振動に変換して音声を出力する音声出力手段と、
を備え、
前記第1会話補助装置の前記光信号出力手段より出力される前記光信号が、前記第2会話補助装置の前記光信号受信手段に受信され、且つ、前記第2会話補助装置の前記光信号出力手段より出力される前記光信号が、前記第1会話補助装置の前記光信号受信手段に受信されるようにしたことを特徴とする会話補助システム。
【請求項2】
前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、前記透光性遮蔽体の前記第1面または前記第2面に対向させる平坦な送受信面を備え、
前記送受信面に、前記光信号出力手段の投光部から出力された前記光信号を導く出力誘導部と、前記光信号受信手段の受光部へ前記光信号を導く入力誘導部と、を設けたことを特徴とする請求項1に記載の会話補助システム。
【請求項3】
前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、前記送受信面と直交する平坦な設置面を設け、
前記出力誘導部と前記入力誘導部とは、前記設置面と平行な向きに並べて設けたことを特徴とする請求項2に記載の会話補助システム。
【請求項4】
前記第1会話補助装置の前記送受信面側に設けた磁石と、前記第2会話補助装置の前記送受信面側に設けた磁石とにより、前記透光性遮蔽体を挟んで前記第1会話補助装置と前記第2会話補助装置とが互いに引き合う吸着手段を設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の会話補助システム。
【請求項5】
前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置には、
前記光信号出力手段の投光部から出力される前記光信号を先端の出射部へ導く出力側導光手段と、
前記出力側導光手段と対で設けられ、先端の入射部から前記光信号受信手段の受光部へ前記光信号を導く入力側導光手段と、
を設け、
前記透光性遮蔽体を挟んで、前記第1会話補助装置における前記出力側導光手段の出射部と前記第2会話補助装置における前記入力側導光手段の入射部とを対向配置させ、前記第2会話補助装置における前記出力側導光手段の出射部と前記第2会話補助装置における前記入力側導光手段の入射部とを対向配置させることを特徴とする請求項1に記載の会話補助システム。
【請求項6】
予め定めた動作停止条件の成否を判定し、前記動作停止条件が成立することに基づいて装置内各部への電源供給を遮断して動作停止状態とする電源管理手段を、前記第1会話補助装置および/または前記第2会話補助装置に設けたことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか1項に記載の会話補助システム。
【請求項7】
前記電源管理手段は、前記動作停止状態の間に、予め定めた動作開始条件の成否を判定し、前記動作開始条件が成立することに基づいて装置内各部への電源供給を開始することを特徴とする請求項6に記載の会話補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦な第1面と第2面を備える透光性遮蔽体の第1面側に配置される第1会話補助装置と、透光性遮蔽体の第2面側に配置される第2会話補助装置と、からなる会話補助システムである。
【背景技術】
【0002】
役所や銀行の窓口では、ガラスやアクリル製のパーティション越しに会話することがあり、相手の声が聞き取りにくいこともしばしばあった。昨今では、スーパーのレジや病院の受付など、より多くの場所でビニールシートやアクリル板のパーティションが用いられており、相手の声が聞こえ難い経験をする機会も増えている。しかも、マスクを着用して会話をしていると、会話が困難になる事態も一層増えている。
【0003】
このように、パーティションやマスクによる聞き取り難さから会話が困難になる場合、相手の声をより近くで聞こえるようにすることが考えられる。例えば、車室内の前部座席と後部座席での会話を補助する車室内会話補助システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この車室内会話補助システムでは、音声を収集するマイクロフォンと音声を出力するスピーカを備えた会話補助装置を、前部座席の天井部と後部座席の天井部にそれぞれ設けておく。すなわち、前部座席側の会話補助装置で収集した音声を後部座席側の会話補助装置のスピーカから出力し、後部座席側の会話補助装置で収集した音声を前部座席側の会話補助装置のスピーカから出力することで、会話を相互に聞き取り易くするものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-176973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された車室内会話補助システムは、車室の天井面に2つの会話補助装置を取り付けるものであるため、役所や銀行でパーティション越しの会話を聞き取りやすくする場合、会話補助装置を天井に取り付けても、音声を収集し難いし、スピーカの位置も遠くなってしまうため、会話補助機能を発揮できない。例えば、2つの会話補助装置をパーティションの両側にそれぞれ配置し、会話する者の近くで音声を収集し、会話する者の近くでスピーカから音声を出力すれば、会話補助機能を発揮できるものの、2つの会話補助装置間での信号伝送が問題となる。2つの会話補助装置を有線接続する場合、パーティションを避けるために長尺なケーブルを使用したり、パーティションにケーブルを通す孔を開けたりする必要が生じる。
【0006】
一方、2つの会話補助装置を無線で接続すれば、ケーブルの引き回しという問題が生じない。しかしながら、無線接続に電波を用いる場合、無免許で利用可能な周波数帯が制限されており、その周波数帯でのデータ伝送用コーデックを策定するなど、開発期間が長くなる上に、コストも嵩んでしまう。
【0007】
そこで、本発明は、透光性遮蔽体越しの会話を補助する2つの会話補助装置の設置が簡単な会話補助システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、平坦な第1面と第2面を備える透光性遮蔽体の前記第1面側に配置される第1会話補助装置と、前記透光性遮蔽体の前記第2面側に配置される第2会話補助装置と、からなる会話補助システムであって、前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、音声による空気振動を電気信号に変換して、アナログの送信音声信号を出力する音声入力手段と、前記音声入力手段から入力された前記送信音声信号を増幅して、アナログの増幅送信音声信号を出力する送信音声増幅手段と、前記送信音声増幅手段から入力された前記増幅送信音声信号の強弱に応じた輝度で発光する光信号を出力する光信号出力手段と、受信した前記光信号の強弱に応じたアナログ電気信号である受信音声信号を出力する光信号受信手段と、前記光信号受信手段から入力された前記受信音声信号を増幅して、アナログの増幅受信音声信号を出力する受信音声増幅手段と、前記受信音声増幅手段から入力された前記増幅受信音声信号の強弱を空気振動に変換して音声を出力する音声出力手段と、を備え、前記第1会話補助装置の前記光信号出力手段より出力される前記光信号が、前記第2会話補助装置の前記光信号受信手段に受信され、且つ、前記第2会話補助装置の前記光信号出力手段より出力される前記光信号が、前記第1会話補助装置の前記光信号受信手段に受信されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、上記構成において、前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、前記透光性遮蔽体の前記第1面または前記第2面に対向させる平坦な送受信面を備え、前記送受信面に、前記光信号出力手段の投光部から出力された前記光信号を導く出力誘導部と、前記光信号受信手段の受光部へ前記光信号を導く入力誘導部と、を設けてもよい。
【0010】
また、上記構成において、前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置は、前記送受信面と直交する平坦な設置面を設け、前記出力誘導部と前記入力誘導部とは、前記設置面と平行な向きに並べて設けてもよい。
【0011】
また、上記構成において、前記第1会話補助装置の前記送受信面側に設けた磁石と、前記第2会話補助装置の前記送受信面側に設けた磁石とにより、前記透光性遮蔽体を挟んで前記第1会話補助装置と前記第2会話補助装置とが互いに引き合う吸着手段を設けてもよい。
【0012】
また、上記構成において、前記第1会話補助装置および前記第2会話補助装置には、前記光信号出力手段の投光部から出力される前記光信号を先端の出射部へ導く出力側導光手段と、前記出力側導光手段と対で設けられ、先端の入射部から前記光信号受信手段の受光部へ前記光信号を導く入力側導光手段と、を設け、前記透光性遮蔽体を挟んで、前記第1会話補助装置における前記出力側導光手段の出射部と前記第2会話補助装置における前記入力側導光手段の入射部とを対向配置させ、前記第2会話補助装置における前記出力側導光手段の出射部と前記第2会話補助装置における前記入力側導光手段の入射部とを対向配置させてもよい。
【0013】
また、上記構成において、予め定めた動作停止条件の成否を判定し、前記動作停止条件が成立することに基づいて装置内各部への電源供給を遮断して動作停止状態とする電源管理手段を、前記第1会話補助装置および/または前記第2会話補助装置に設けてもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記電源管理手段は、前記動作停止状態の間に、予め定めた動作開始条件の成否を判定し、前記動作開始条件が成立することに基づいて装置内各部への電源供給を開始してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透光性遮蔽体を挟んで、第1会話補助装置の光信号出力手段より出力される光信号が、第2会話補助装置の光信号受信手段に受信され、第2会話補助装置の光信号出力手段より出力される光信号が、第2会話補助装置の光信号受信手段に受信されるように配置するという簡単な操作で、会話を補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A1)は会話補助装置の正面側俯瞰斜視図である。(A2)は会話補助装置の裏面側仰視斜視図である。(B)は第1実施形態に係る会話補助システムの概略説明図である。
図2】パーティションを挟んで適正に配置した第1会話補助装置および第2会話補助装置の機能ブロック図である。
図3】(A)は第1会話補助装置または第2会話補助装置の背面図である。(B)は第2実施形態に係る会話補助システム概略説明図である。
図4】会話補助装置の第2構成例を示す機能ブロック図である。
図5】第3実施形態に係る会話補助システム概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、透光性遮蔽体の両側にそれぞれ会話補助装置を適正に配置してなる会話補助システムである。便宜上、以下では、透光性遮蔽体の平坦な第1面側に配置する会話補助装置を第1会話補助装置1A、透光性遮蔽体の平坦な第2面側に配置する会話補助装置を第2会話補助装置1Bと呼び分けるが、内部構造および外観が同一の装置である。また、透光性遮蔽体とは、硬質の板材(アクリル板やガラス等)で形成されたパーティションのほか、軟質シート材を上部から垂下したビニールシート膜など、平坦な2面を有する物すべてを含む概念である。なお、遮蔽体に要求される透光性とは、本発明の会話補助システムで用いる信号光の波長に対して透明であることを意味し、可視光の全域で透過性を有することではない。
【0018】
第1,第2会話補助装置1A,1Bの外観を図1(A1),(A2)に示す。互いに直交する六面を備えた直方体のケース2の前面部21側には、スピーカ3およびマイク4を設けてある。また、ケース2の前面部21と背面部22との間には、適宜な奥行の右側面部23、上面部24、左側面部25、底面部26を有し、各種電気部品をプリント基板に取り付けて構成した制御部5を収納できる空間がケース2内に形成されている。さらに、ケース2の背面部22は送受信面として機能するように、略円形状の開口からケース2内へ窪む円筒状の出力誘導部27aおよび入力誘導部27bを設けてあり、出力誘導部27aから光信号出力手段6が、入力誘導部27bから光信号受信手段7がそれぞれ臨む。
【0019】
図1(B)は、第1実施形態に係る会話補助システムとなる第1,第2会話補助装置1A,1Bの配置状態を示す。第1,第2会話補助装置1A,1Bの標準的な使い方として、底面部26を設置面にしてテーブルTの天板に載せ、透光性遮蔽体としてのパーティション8を挟んで、互いの背面部22,22が向かい合うように配置する。このとき、出力誘導部27aと入力誘導部27bの位置合わせが重要である。出力誘導部27aと入力誘導部27bは、設置面である底面部26と平行な向きに並べて設けられているので、第1会話補助装置1Aの出力誘導部27aが第2会話補助装置1Bの入力誘導部27bと、第2会話補助装置1Bの出力誘導部27aが第1会話補助装置1Aの入力誘導部27bと、向かい合わせにすることができる。加えて、図1(A2)に示すように、背面部22の縦方向中心線CLに対して、出力誘導部27aまでの距離α1と入力誘導部27bまでの距離α2を等しく設定してある。したがって、第1会話補助装置1Aの右側面部23と第2会話補助装置1Bの左側面部25、および第1会話補助装置1Aの左側面部25と第2会話補助装置1Bの右側面部23が、それぞれ面一に揃うよう配置するという簡単な操作で、出力誘導部27aと入力誘導部27bの位置合わせを適切に行える。
【0020】
ここで、図1(B)に基づき第1会話補助装置1Aと第2会話補助装置1Bによる会話補助動作を説明する。パーティション8の第1面81側にいる者が喋ると、第1音声として第1会話補助装置1Aのマイク4に入力される。この第1音声は制御部5により適宜処理されて光信号出力手段6から第1光信号として照射され、パーティション8を透過して第2会話補助装置1Bの背面部22に到達する。そして、第1光信号は第2会話補助装置1Bの光信号受信手段7により受信された後、制御部5により適宜処理され、スピーカ3より第1音声がパーティション8の第2面82側に出力されるのである。一方、パーティション8の第2面82側にいる者が喋ると、第2会話補助装置1Bの第2音声としてマイク4に入力される。この第2音声は制御部5により適宜処理されて光信号出力手段6から第1光信号として照射され、パーティション8を透過して第1会話補助装置1Aの背面部22に到達する。そして、第2光信号は第1会話補助装置1Aの光信号受信手段7により受信された後、制御部5により適宜処理され、スピーカ3より第2音声がパーティション8の第1面81側に出力されるのである。したがって、本実施形態の会話補助システムを用いれば、パーティション8で仕切られた両側で会話する者同士の会話を第1,第2会話補助装置1A,1Bによって補助できる。
【0021】
上述した会話補助システムを実現する第1,第2会話補助装置1A,1Bの詳細機能を図2に示す。
【0022】
マイク4は、音声による空気振動を電気信号に変換して、アナログの送信音声信号を出力する音声入力手段として機能する。マイク4から入力された送信音声信号は、制御部5の送信音声増幅手段51に入力され、所要の増幅率で増幅される。送信音声増幅手段51にて増幅されたアナログの増幅送信音声信号は、光信号出力手段6へ入力される。光信号出力手段6は、送信音声増幅手段51から入力された増幅送信音声信号の強弱に応じた輝度で発光する光信号を出力するもので、例えば、通電量に応じて発光輝度が変化する発光ダイオード(LED)を用いて実現できる。光信号出力手段6の投光部6aより送信された光信号は、出力誘導部27aを介して出力され、パーティション8の第1面81もしくは第2面82へほぼ垂直に入射する。
【0023】
一方、パーティション8を透過した光信号は、入力誘導部27bを介して光信号受信手段7の受光部7aにて受信される。光信号受信手段7は、光信号の強弱に応じたアナログ電気信号である受信音声信号を出力するもので、Si-PINフォトダイオードを用いて実現できる。受信音声増幅手段52は、光信号受信手段7から入力された受信音声信号を増幅して、アナログの増幅受信音声信号を出力する。音声出力手段として機能するスピーカ3は、受信音声増幅手段52から入力された増幅受信音声信号の強弱を空気振動に変換して音声を出力する。なお、第1,第2会話補助装置1A,1B内には、図示を省略した給電機能を設けてあり、装置内各部への電源供給が可能である。給電機能としては、乾電池やボタン電池を用いた内蔵式の直流電源でも良いし、商用交流電源から直流を生成する電源アダプタ装置を用いて第1,第2会話補助装置1A,1B内へ供給しても良い。
【0024】
会話補助システムを構成する第1会話補助装置1Aと第2会話補助装置1Bを、パーティション8を挟んで、互いの背面部22を向かい合わせにし、出力誘導部27aと入力誘導部27bが対向するように配置する。すなわち、第1会話補助装置1Aの光信号出力手段6より出力される光信号が、第2会話補助装置1Bの光信号受信手段7に受信され、且つ、第2会話補助装置1Bの光信号出力手段6より出力される光信号が、第1会話補助装置1Aの光信号受信手段7に受信されるように配置すれば良いのである。そして、第1,第2会話補助装置1A,1Bの信号伝送は無線で行えるので、ケーブルの引き回しが障害となることはない。しかも、音声の伝送には光信号を用いるので、使用可能な電波の周波数帯域が運用上の問題となることはない。
【0025】
上述した第1実施形態の会話補助システムは、第1会話補助装置1Aと第2会話補助装置1BをテーブルTの天板上に置くなど、互いの背面部22を向かい合わせる位置が適正になるような配置を利用者が調整する必要がある。また、第1会話補助装置1Aと第2会話補助装置1Bは、利用者の顔の近くにある方が、音声の入力および出力には適している。そこで、パーティション8の任意の位置に第1,第2会話補助装置1A,1Bを固定できるようにした第2実施形態の会話補助システムを図3に基づき説明する。
【0026】
第1,第2会話補助装置1A,1Bには、図3(A)に示すような吸着手段9を設けてある。この吸着手段9は、少なくとも背面部22側に磁力が作用するように4つの磁石(例えば、略円形の第1磁石91、第2磁石92、第3磁石93、第4磁石94)を設ける。第1磁石91は、例えば右側面部23と上面部24が交わる角部近傍に配置され、正極(+)が背面部22側に向いている。第2磁石92は、例えば左側面部25と上面部24が交わる角部近傍に配置され、負極(-)が背面部22側に向いている。第3磁石93は、例えば右側面部23と底面部26が交わる角部近傍に配置され、負極(-)が背面部22側に向いている。第4磁石94は、例えば左側面部25と底面部26が交わる角部近傍に配置され、正極(+)が背面部22側に向いている。
【0027】
第1磁石91と第2磁石92、第3磁石93と第4磁石94は、それぞれ底面部26と平行な向きに配置され、背面部22の縦方向中心線CLに対して、第2磁石92および第4磁石94の中心までの距離β1と、第1磁石91および第3磁石93の中心までの距離β2を等しく設定してある。また、第2磁石92の中心から第4磁石の中心までの距離γ1と、第1磁石91の中心から第3磁石93の中心までの距離γ2を等しく設定してある。すなわち、第1~第4磁石91~94は、長方形の4頂点に配置されているので、第1会話補助装置1Aの背面部22と第2会話補助装置1Bの背面部22を向かい合わせると、必ず、第1磁石91と第2磁石92、第3磁石93と第4磁石94が対向する状態になる。第1磁石91は背面部22側が正極であり、第2磁石92は背面部22側が負極であるから、吸着作用が生じる。同様に、第3磁石93は背面部22側が負極であり、第4磁石94は背面部22側が正極であるから、吸着作用が生じる。
【0028】
したがって、パーティション8の第1面81側に第1会話補助装置1Aの背面部22を、第2面82側に第2会話補助装置1Bの背面部22をそれぞれ近づけると、第1磁石91と第2磁石92の吸着作用および第3磁石93と第4磁石94の吸着作用により、両者がくっつき合う。このように、第1会話補助装置1Aの背面部22側に設けた第1~第4磁石91~94と、第2会話補助装置1Bの背面部22側に設けた第1~第4磁石91~94とにより、パーティション8を挟んで第1会話補助装置1Aと第2会話補助装置1Bとが互いに引き合う吸着手段9を構成できる。
【0029】
吸着作用によって第1会話補助装置1Aの背面部22とパーティション8の第1面81とに生ずる摩擦力が第1会話補助装置1Aの荷重負荷を上回っていれば、第1会話補助装置1Aがずり落ちることはない。同様に、吸着作用によって第2会話補助装置1Bの背面部22とパーティション8の第2面82とに生ずる摩擦力が第2会話補助装置1Bの耐荷重を上回っていれば、第2会話補助装置1Bがずり落ちることはない。なお、第1,第2会話補助装置1A,1Bをパーティション8に固定するための摩擦力が足りない場合は、強磁性のネオジム磁石を使うなどして吸着力を上げることにより対処できる。
【0030】
上述した第1,第2実施形態の会話補助システムで用いる第1,第2会話補助装置1A,1Bは、図示を省略したスイッチによってON/OFFの切り替えができるものである。しかしながら、内蔵電池で動作させる第1,第2会話補助装置1A,1Bを使用する場合、常時電源をONにしておくと、電池の消耗が早くなり、望ましくない。かといって、使用を開始するときに電源を入れて、終わったら電源を切るような動作を、第1会話補助装置1A側と第2会話補助装置1B側で行うのは、非常に煩雑である。そこで、図4に示す第2構成例の第1,第2会話補助装置1A′,1B′には、制御部5に電源管理手段53を設けて、効率的な電源管理を行えるようにした。
【0031】
第1,第2会話補助装置1A′,1B′には、利用者が操作する選択スイッチ28を設け、電源OFF、電源ON、自動モード(AUTO)の何れかを排他的に選択できる。この自動モードが選択されると、直流電源10から装置内各部への電源供給を電源管理手段53が管理することで、消費電力の抑制を行う。例えば、予め定めた動作停止条件の成否を判定し、動作停止条件が成立することに基づいて、電源管理手段53が直流電源10から装置内各部への電源供給を遮断して動作停止状態とする。動作停止条件の一例は、光信号出力手段6が光信号を送信しておらず、且つ光信号受信手段7が光信号を受信していない期間が予め定めた不使用推定期間(例えば、30秒~1分)に達することである。この不使用推定期間とは、パーティション8越しの会話が終了したと推定される時間幅であり、長考などで互いに言葉を発しない時間で誤動作しないような期間を設定することが望ましい。動作停止条件は、これに限らず、任意に設定して構わない。例えば、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源OFFになるとき、電源OFFを示す態様の光信号を送信し、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の他方が電源OFF態様の光信号を受信することを動作停止条件としても良い。
【0032】
また、自動モードに設定された第1,第2会話補助装置1A′,1B′の電源管理手段53が自動停止状態にした後、再び使用するために選択スイッチ28を操作するのは煩わしいので、自動復帰できることが望ましい。そこで、電源管理手段53は、動作停止状態の間に予め定めた動作停止解除条件の成否を判定し、動作停止解除条件が成立することに基づいて、直流電源10から装置内各部への電源供給を開始し、通常の電源ON状態に復帰するものとした。動作停止解除条件の一例は、光信号出力手段6が光信号を送信したか、もしくは光信号受信手段7が光信号を受信したか、何れか最先の状態を検出することである。すなわち、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の何れか一方から光信号が出力されれば、会話補助システムの利用が再開されたと推定できるので、これを契機として動作停止状態を解除して、会話補助動作を再開するのである。なお、動作停止解除条件を判定するために、電源管理手段53は、動作停止状態中も、マイク4による音声検知と光信号受信手段7による光信号受信が行えるように給電制御を行う。動作停止解除条件は、これに限らず、任意に設定して構わない。例えば、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源ONになるとき、電源ONを示す態様の光信号を送信し、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の他方が電源ON態様の光信号を受信することを動作停止解除条件としても良い。
【0033】
また、電源ON時には、音声入力のないときでも光信号出力手段6の投光部6aが中点輝度(例えば、光信号のONレベルとOFFレベルの中間レベルとなる輝度)で点灯するものであれば、より簡易な手法で自動制御を実現できる。先ず、光信号出力手段6の投光部6aの中点輝度に対応する光信号の受信強度よりも低いOFF判定閾値(例えば、光信号の中点輝度レベルとOFFレベルの中間レベルとなる輝度)を予め設定しておく。第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源OFFになると光信号がOFFレベルとなり、自動モードに設定された他方の第1,第2会話補助装置1A′,1B′では、光信号受信手段7で受信した光信号がOFF判定閾値を下回ったことが分かる。そこで、受信した光信号がOFF判定閾値を下回ることを動作停止条件とすれば、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源OFFになると、自動モードに設定された他方の第1,第2会話補助装置1A′,1B′が連動して動作停止状態になる。逆に、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源ONになると、動作停止状態中である他方の第1,第2会話補助装置1A′,1B′では、光信号受信手段7で受信した光信号が中点輝度になってOFF判定閾値を上回ったことが分かる。そこで、受信した光信号がOFF判定閾値を上回ることを動作停止解除条件とすれば、第1,第2会話補助装置1A′,1B′の一方が電源ONになると、自動モードに設定された他方の第1,第2会話補助装置1A′,1B′が連動して電源ON状態に復帰する。
【0034】
このように、自動モードを設定できる第1,第2会話補助装置1A′,1B′を用いれば、使用を開始するときに電源を入れて、終わったら電源を切るような動作を、第1会話補助装置1A側と第2会話補助装置1B側で行う必要が無く、利用者の利便性を高められる。なお、会話補助システムとしては、パーティション8を挟んで配置する両側に第1,第2会話補助装置1A′,1B′を用いる必要はない。例えば、接客側に第1構成例として示した第1会話補助装置1Aを用い、来客側に第2構成例として示した第2会話補助装置1B′を自動モードにして用いれば、接客側の第1会話補助装置1AにおけるON/OFFを来客側の第2会話補助装置1B′における動作停止状態/状態解除と連動させることができる。
【0035】
上述した第1,第2実施形態の会話補助システムにおいては、第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′を用いるため、パーティション8を挟んで行う位置調整は容易であるものの、配置箇所の自由度が少ない。そこで、図5に示す第3実施形態の会話補助システムにおいては、第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′を配置するときの自由度を高めるために補助ケーブル11を用い、補助ケーブル11を介して信号の送受信を実現するものとした。
【0036】
補助ケーブル11は、被覆信号線111の一方端に装置側コネクタ112を設け、被覆信号線111の他方端に対向側コネクタ113を設けた構造である。被覆信号線111には、石英ガラスやプラスチックで形成した2本の光ファイバである出力側光ファイバ121と入力側光ファイバ122が内包される。装置側コネクタ112は、第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′の背面部22へ着脱可能な取付構造を備え、不使用時には補助ケーブル11を取り外すことができる。対向側コネクタ113は、パーティション8を挟んで他の対向側コネクタ113と接続するものである。以下では、便宜上、第1会話補助装置1A,1A′に取り付けた補助ケーブル11では対向側コネクタ113A、第2会話補助装置1B,1B′に取り付けた補助ケーブル11では対向側コネクタ113Bと呼び分ける。
【0037】
装置側コネクタ112には、出力誘導部27aにちょうど嵌入する形状の出力側ケーブルガイド部112aと、入力誘導部27bにちょうど嵌入する形状の入力側ケーブルガイド部112bが形成されている。出力側ケーブルガイド部112aは、出力側光ファイバ121の端部である入射部121aが光信号出力手段6の投光部6aと向き合う位置にガイドすると共に、外来光の侵入を阻止できるので、光信号の送信効率を高めることができる。また、入力側ケーブルガイド部112bは、入力側光ファイバ122の端部である出射部122bが光信号受信手段7の受光部7aと向き合う位置にガイドすると共に、外来光の侵入を阻止できるので、光信号の送信効率を高めることができる。
【0038】
対向側コネクタ113Aは、パーティション8の第1面81に押し当たる平坦な当着面113aを備え、この当着面113aに開口する出射口113b1と入射口113b2を設けてある。出射口113b1には、出力側光ファイバ121の端部である出射部121bが臨み、入射口113b2には、入力側光ファイバ122の端部である入射部122aが臨む。すなわち、出力側光ファイバ121は、光信号出力手段6の投光部6aから出力される光信号を先端の出射部121bへ導く出力側導光手段として機能し、入力側光ファイバ122は、先端の入射部122aから光信号受信手段7の受光部7aへ光信号を導く入力側導光手段として機能する。また、対向側コネクタ113Aには、吸着手段9として、正極と負極が当着面113aに臨む向きを異ならせた第5磁石95と第6磁石96を設けてある。
【0039】
したがって、パーティション8の第2面82側から、対向側コネクタ113Bを対向側コネクタ113Aに近づけて行き、対向側コネクタ113Aの第5磁石95が対向側コネクタ113Bの第6磁石96と、対向側コネクタ113Aの第6磁石96が対向側コネクタ113Bの第5磁石95と引き合うように位置合わせする。このとき、対向側コネクタ113Aの出射口113b1は対向側コネクタ113Bの入射口113b2と、対向側コネクタ113Aの入射口113b2は対向側コネクタ113Bの出射口113b1とを正確に対向配置させた状態となり、パーティション8を挟んで光信号の授受が可能となる。
【0040】
上述したように、補助ケーブル11を用いれば、対向側コネクタ113A,113Bの適正な位置合わせを行うだけで光信号の授受が可能となり、第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′の置き場所に制限がなくなる。よって、補助ケーブル11の長さが許す範囲で、使用者は第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′を使いやすい位置に置くことができ、一層利便性を高めることができる。なお、補助ケーブル11は着脱可能な構造としたが、これに限定されるものではなく、第1,第2会話補助装置1A,1A′,1B,1B′が補助ケーブル11の機能を標準的に備えるものとしても良い。
【0041】
以上、本発明に係る会話補助システムをいくつかの実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての会話補助システムを権利範囲として包摂するものである。
【符号の説明】
【0042】
1A 第1会話補助装置
1B 第2会話補助装置
22 背面部
3 スピーカ
4 マイク
5 制御部
51 送信音声増幅手段
52 受信音声増幅手段
6 光信号出力手段
7 光信号受信手段
8 パーティション
81 第1面
82 第2面
図1
図2
図3
図4
図5