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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】植物育成装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230216BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G9/20 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018188182
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020054297
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591032356
【氏名又は名称】不二精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594029333
【氏名又は名称】不二商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】高木 力
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-008939(JP,U)
【文献】特許第5339385(JP,B2)
【文献】特開平11-168993(JP,A)
【文献】特開平02-276514(JP,A)
【文献】特許第5844458(JP,B2)
【文献】特開2002-360067(JP,A)
【文献】特許第5010864(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0198640(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第1307763(GB,A)
【文献】米国特許第5111612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/14 - 9/26
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を発し、育成する植物(PL)に対向して設けられる白色光源(31)と、
前記白色光源(31)が配置される光源配置空間(21)と前記育成する植物(PL)が配置される植物育成空間(22)とを備え、外部の光が進入するのが遮断された格納設備(2)と、
前記格納設備(2)に水平方向に延在して設けられ、前記光源配置空間(21)と前記植物育成空間(22)との間の温度の伝導および空気の流通の少なくとも一方を遮断し、かつ前記白色光源(31)の白色光のうち特定の波長の光を透過するフィルタ(5,105a,105b,205,2051,2052)が設けられた仕切板(4,104,204)と、
を備え
前記育成する植物(PL)は、所定の単位毎に区分されて植えられており、
前記所定の単位に対応して、異なる種類の複数の前記フィルタ(5,105a,105b,205,2051,2052)を備えた植物育成装置(1,201,301)。
【請求項2】
前記仕切板(4)は、仕切板本体部(4a)と前記フィルタ()を取り付ける取付部(4b)とを備え、
前記フィルタ(5)は、前記取付部(4b)に着脱可能に設けられている請求項1に記載の植物育成装置(1,301)。
【請求項3】
前記フィルタ(5)は、前記仕切板(4)の前記光源配置空間(21)側に着脱可能に設けられている請求項2に記載の植物育成装置(1,301)。
【請求項4】
前記仕切板本体部(4a)は、前記白色光を透過する請求項2または3に記載の植物育成装置(1,301)。
【請求項5】
前記フィルタ(105a,105b)は、前記仕切板(4)に一体に設けられている請求項1に記載の植物育成装置(1,301)。
【請求項6】
前記植物育成装置(201)は、前記フィルタ(205,2051,2052)を水平移動する水平移動装置(205c,206)をさらに備える請求項1に記載の植物育成装置(201)。
【請求項7】
前記フィルタ(205,2051,2052)は、前記仕切板(204)の前記光源配置空間(21)側に着脱可能に設けられている請求項に記載の植物育成装置(201)。
【請求項8】
前記仕切板(204)は、前記白色光を透過する請求項またはに記載の植物育成装置(201)。
【請求項9】
前記植物育成装置(1,201,301)は、前記育成する植物(PL)に光を集める集光装置(43)をさらに備える請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の植物育成装置(1,201,301)。
【請求項10】
前記集光装置(43)は、前記植物育成空間(22)に配置される請求項に記載の植物育成装置(1,201,301)。
【請求項11】
前記植物育成装置(301)は、前記仕切板(4)を上下動させる上下動装置(8)をさらに備える請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の植物育成装置(301)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色光源の白色光を特定の波長の光に切替えて植物に照射する植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食用或いは観賞用植物を人工的な環境で育成する植物工場において、植物の育成に使用される照明は、植物の種類、部位および生長時期に応じて、例えば青色、青緑色、赤色、白色などが選択して使用される。
【0003】
特許文献1には、青色光および赤色光は、光合成に有効であり、青緑光は、開花の促進に有効であり、赤色光は、開花の遅延に有効であると記載されている。これらの色の光はLEDにより得られると記載されている。
【0004】
特許文献2には、植物が植えられた地上部側の空間と、植物に照射する光源側の空間とを、光透過性の断熱部(仕切板)で仕切ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-323848号公報
【文献】国際公開第2017/047024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1において、植物の育成時期等の必要に応じて、このような種類の色の光源を植物に照射するには、複数種類の光源を用意して、その都度、かかる必要な特定の色の光源に取替えねばならないという問題があった。
【0007】
特許文献2において、植物に照射する光源が記載されているが、特定の波長の色の光源が必要な場合に、特定の波長の色を発する光源を用意しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、光源配置空間と植物育成空間とを仕切る仕切板を利用して白色光源の白色光を特定の波長の色の光に切替えて植物に照射することができる植物育成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
白色光を発し、育成する植物(PL)に対向して設けられる白色光源(31)と、
前記白色光源(31)が配置される光源配置空間(21)と前記育成する植物(PL)が配置される植物育成空間(22)とを備え、外部の光が進入するのが遮断された格納設備(2)と、
前記格納設備(2)に水平方向に延在して設けられ、前記光源配置空間(21)と前記植物育成空間(22)との間の温度の伝導および空気の流通の少なくとも一方を遮断し、かつ前記白色光源(31)の白色光のうち特定の波長の光を透過するフィルタ(5,105a,105b,205,2051,2052)が設けられた仕切板(4,104,204)と、
を備え、
前記育成する植物(PL)が、所定の単位毎に区分されて植えられている場合において、
前記植物育成装置(1,202,301)は、前記所定の単位に対応して、異なる種類の複数の前記フィルタ(5,105a,105b,205,2051,2052)を備えた植物育成装置(1,201,301)にある。
なお、本明細書において、特定の波長の光を発する光源とは、白色光源以外の光を発する光源をいう。
【0010】
これによると、特定の波長の光を発する光源を用意することなく、光源配置空間と植物育成空間との間を仕切る仕切板を利用し、白色光源の白色光から仕切板に設けたフィルタにより必要な色を生じる特定の波長の光だけを透過させて育成する植物に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を実施した第一実施形態の植物育成装置を示す概要図である。
図2】仕切板へのフィルタ取付例を示す断面図である。
図3】仕切板にフィルタを取付けた状態を示す断面図である。
図4】仕切板にフィルタを取付けた別例を示す断面図である。
図5】フィルタが仕切板に一体となった例を示す断面図である。
図6】白色LEDの分光分布とフィルタによる青色光の透過状態を示すグラフである。
図7】白色LEDの分光分布とフィルタによる赤色光の透過状態を示すグラフである。
図8】第二実施形態に係る植物育成装置において、白色光源、フィルタ、仕切板、育成する植物の位置関係を示す概要図である。
図9】第二実施形態において、白色光源、フィルタ、仕切板、育成する植物の位置関係を示す概要図である。
図10】別例の白色LEDの分光分布とフィルタによる青色光の透過状態を示すグラフである。
図11】別例の白色LEDの分光分布とフィルタによる青色光の透過状態を示すグラフである。
図12】第三実施形態に係る植物育成装置を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
本発明に係る植物育成装置を具体化した第一実施形態について、図1図7を参照して以下に説明する。図1は、本発明に係る植物育成装置1の全体の概要を示している。植物育成装置1は、格納設備2、照明装置3、仕切板4、フィルタ5、空調設備6、水耕設備7および制御装置(図略)を備えている。
【0013】
(格納設備)
格納設備2は、例えば、複数の鋼製板部材により切妻型屋根のある方形箱型に組み合わせて形成され、内部に空間を有している。格納設備2の屋根部2aおよび壁部2bは、外部から内部に進入する光を遮る構造となっている。格納設備2は、内部の空間を水平方向に沿って延在する仕切板4によって上下の空間に仕切られている。上方の空間は、白色光源31による照明装置3が配置される光源配置空間21となっている。下方の空間は、育成する植物PLが配置される植物育成空間22となっている。
【0014】
(照明設備)
照明設備3は、白色光源31、基板32、反射板33および電力供給部34、を備える。例えば、白色光源31として白色LEDを使用する。白色LEDとして、例えば、赤色、緑色、青色のLEDチップから放射される光を混合して白色光とするタイプを使用する。白色LEDは、例えば砲弾型で、円盤状の基板32の中央に配置されている。基板32には、傘状に下方が開く反射板33が上方から覆うように設けられている。
【0015】
電力供給部34は、交流電源から整流回路を介して白色光源31に接続する。電力供給部34は、調光回路(図略)を備えている。制御装置(図略)は、育成する植物PL(例えば、リーフレタス)の生育状況に応じて、調光回路により白色LEDから照射される光の制御(例えば点灯、消灯、照射する光の強弱など)をおこなう。
【0016】
(仕切板・集光装置)
仕切板4は、仕切板本体部4aと、後述するフィルタ5を取り付ける取付部4bとを備えている。
仕切板本体部4aは、例えば、白色光が透過可能なポリカーボネート製の部材より方形の板状に形成され水平方向に延在している。仕切板本体部4aの四方の端部は、格納設備2の内周壁の中央部に、例えばブラケット41を介してボルト・ナット42により固定されている。仕切板本体部4aは、格納設備2の内部の空間を上下に仕切っている。仕切板本体部4aの四方の端部と格納設備2の内周壁の間は、図略のゴム製シール材でシールされている。仕切板本体部4aには、後述するフィルタ5を嵌め込む取付部4bが形成されている。
取付部4bは、仕切板本体部4aの光源配置空間21側が開口し、貫通されていない有底の円盤状の穴として形成されている。貫通されていない有底の円盤状の穴とすることで、フィルタ5を交換する際に、植物育成空間22の調整された空気が光源配置空間21に漏れるのを防止することができる。
【0017】
仕切板4は、光源配置空間21と植物育成空間22との間の温度の伝導および空気の流通を遮断する。具体的には、仕切板4は、主に光源配置空間21における光源からの熱が、植物育成空間22に移動するのを遮断し、植物育成空間22における植物育成のために調整された空気が光源配置空間21に漏れるのを遮断する。
【0018】
仕切板4の下面(植物育成空間22側)には、集光装置としての複数の遮光カーテン43がブラケット(図略)を介して取り付けられている。
各遮光カーテン43は、仕切板4の取付部4bに対応させて配置されている。遮光カーテン43は、例えば、ポリエステル製布材で上下が開口した円筒状に形成されている。遮光カーテン43は、遮光機能を有するとともに、内周壁部には、入射側の反対側に光を反射する機能を有する銀色の反射布部を有し、フィルタ5を透過した光が、円筒形の開口した下方に配置された育成する植物PLに集中して照射されるようになっている。
【0019】
(フィルタ)
フィルタ5は、例えば、ガラス製で特定の波長の光を透過させる光学バンドパスフィルタが使用されている。フィルタ5(第一フィルタ)は、円盤状に形成され、図2および図3に示すように、外周には、例えば、合成樹脂製の取付縁5aが設けられている。取付縁5aには、把持部5a1が設けられ、作業者が指で把持部5a1を把持することでフィルタ5を仕切板4の取付部4bに対して容易に着脱できるようになっている。
このようにフィルタ5(第一・第二フィルタ)は、格納設備2の内部の空間を上下に仕切る仕切板4を利用して取り付けるため、専用の保持装置を要することなく、低コストの設備で必要な波長の光を照射できる植物育成装置1とすることができる。
【0020】
なお、図4に示すように、仕切板4の取付部4dは、貫通されていてもよい。この場合、フィルタ5(第二フィルタ)は、白色光源31の光を仕切板4に影響されること無く透過させて育成する植物PLに照射する。また、取付縁5aと取付部4dとの間は、シール材(図略)によってシールされている。
【0021】
(空調設備)
空調設備6は、光源配置空間21の光源による温度上昇を抑制する通気装置61と、植物育成空間22の育成する植物PLの適温を維持する温度調節装置62と、適湿度を調節する湿度調節装置63と、二酸化炭素供給装置64と、を備えている。
【0022】
(通気装置)
通気装置61は、光源配置空間21に面した一方の壁面(図1において右側の壁面)に、ルーバーと強制排気するファン61aと内部の空気を外部に排気する排気口61bとを備えている。通気装置61は、光源配置空間21に面した他方の壁面に、ルーバーを備えた吸気口61cを備えている。通気装置61は、吸気口61cから冷たい外部の空気を吸引し、排気口61bから白色光源31により加熱された光源配置空間21内の空気を外部に排出する。
【0023】
(温度調節装置、湿度調節装置)
温度調節装置62は、例えば、冷暖房装置であり、植物育成空間22に配置される温度センサ(図略)を備えている。温度調節装置62は、温度センサが検出する温度に基づいて、植物育成空間22の温度を調節する。
湿度調節装置63は、植物育成空間22に配置される湿度センサ(図略)を備えている。湿度調節装置63は、湿度センサが検出する温度に基づいて、植物育成空間22の湿度を調節する。湿度の調節は、湿度が低い場合には、加湿装置で加湿し、湿度が高いときには、乾燥空気を送風装置で送り込む。あまり湿度が高いと、蒸散作用が不活発となって、水や養分の運搬や葉の温度上昇を抑制する働きが低下する。
【0024】
(二酸化炭素供給装置)
二酸化炭素供給装置64は、植物育成空間22に設けられる二酸化炭素濃度検知センサ(図略)を備えている。二酸化炭素供給装置64は、二酸化炭素濃度検知センサが検出する二酸化炭素濃度に基づいて光合成の促進に必要な二酸化炭素を植物育成空間22の空気に加える。
【0025】
(水耕設備)
水耕設備7は、育成する植物PLの根に水および養液を供給する栽培槽71と、水および養液を貯留する栽培溶液タンク(図略)と、栽培溶液タンクの水および養液を栽培槽71に送るポンプ(図略)とを備えている。
【0026】
栽培槽71には、例えば、発泡樹脂材からなる培地(図略)が設けられ、培地には育成する植物PLが植えられる。培地は、循環する水および養液に浸漬した状態で育成する植物PLを支持し、育成する植物PLの根に水および養液を供給する。栽培溶液タンクでは、水、濃縮溶液の供給が行われ養液の濃度の調整が行われる。
(制御装置)
制御装置(図略)は、主に、照明設備3、温度調節装置62、湿度調節装置63、二酸化炭素供給装置64の二酸化炭素量の調節、水耕設備7の動作を制御する。
【0027】
(作動)
次に、植物育成装置1の作動について、照明装置3および仕切板4に取り付けられたフィルタ5の機能を中心に説明する。フィルタ5は、例えばバンドパスフィルタであり、透過させる光の中心波長が450nm、半値幅50nmの第一フィルタ(図6参照)と、透過させる光の中心波長が660nm、半値幅50nmの第二フィルタ(図7参照)とが使用される。
【0028】
白色光源31の白色光は、分光分布図である図6および図7に示すように、420nm~680nmの波長の光を発している。白色光源31の白色光は、第一フィルタにより、425nm~475nmの波長の光が透過される。この透過される光は、主に青色光である。
また、白色光源31の白色光は、第二フィルタにより、635nm~685nmの波長の光が透過される。この透過される光は、主に赤色光である。
【0029】
まず、育成する植物PLが、茎PLSの生長時期において第一フィルタを使用して、茎PLSに青色光を照射することで、茎の生長を抑制する。
次に、育成する植物PLが葉部PLLの生長時期にあるときに、第一フィルタを仕切板4から取り外し、第二フィルタを取り付ける。これにより、赤色光を照射することで、葉部PLLの生長を促進する。このように、育成する植物PLが、例えば、リーフレタスのように葉部を食する野菜である場合、食さない茎部を小さく、かつ葉部を大きく育成して、商品価値を向上することができる。
【0030】
第一実施形態に係る植物育成装置1において、仕切板4は、光源配置空間21と植物育成空間22との間の温度の伝導および空気の流通を遮断する。また、仕切板4には、白色光源31の白色光のうち特定の波長の光(青色光または赤色光)を透過するフィルタ5が設けられている。
【0031】
これによると、特定の波長の光を発する光源を用意することなく、白色光源31の白色光から仕切板4に設けたフィルタ5により必要な色を生じる特定の波長の光だけを透過させて育成する植物PLに照射することができる。フィルタ5の取付は、光源配置空間21と植物育成空間22との間を仕切る仕切板4を利用しており、専用の保持装置を不要とするため、低コストの設備とすることができる。
【0032】
また、仕切板4は、仕切板本体部4aとフィルタ5を取り付ける取付部5bとを備え、フィルタ5は、取付部5bに着脱可能に設けられている。
これによると、育成する植物PLに応じて、仕切板4に設けられたフィルタ5を容易に交換することができる。
【0033】
また、フィルタ5は、仕切板4の光源配置空間21側に着脱可能に設けられている。
これによると、フィルタ5は、仕切板4の上方に位置する光源配置空間21側より容易に着脱することができる。
【0034】
また、仕切板本体部4aは、白色光源31の白色光を透過する。これによると、フィルタ5が存在する部分のみ、特定の波長の光を透過させる。フィルタ5の位置、或いは、育成する植物PLの位置を操作するだけで、特定の波長の光を育成する植物PLに照射することを容易に行なうことができる。
【0035】
また、植物育成装置1は、育成する植物PLに光を集める遮光カーテン43(集光装置)をさらに備える。
これによると、育成する植物PLに必要な波長の光を集中させて照射することができる。
【0036】
また、遮光カーテン43は、植物育成空間22に配置される。
これによると、仕切板4を透過した光を含め、最終的に育成する植物PLに照射される可能性のある光を、植物育成空間22内で全て集めて、ピンポイントで照射することができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る植物育成装置を具体化した第二実施形態について、図8および図9を参照して以下に説明する。
第二実施形態に係る植物育成装置201は、フィルタ205を水平に移動させる水平移動装置としての一対のレール206を備えている。レール206は、仕切板204の光源配置空間21側に敷設されている。フィルタ205は、所定の厚みを有する長方形状に形成されている。複数の育成する植物PLは、例えば、X方向に二列、Y方向に五列で夫々構成されるA群およびB群の二群で構成されている。これらの点において、第一実施形態と相違する。その他の構成は、同様であるため、説明を省略する。なお、複数の養成する植物PLによって、X方向に二列、Y方向に五列で夫々構成されるものが、所定の単位に相当する。
【0038】
以下、主に相違点について詳述する。
一対のレール206は、仕切板204上にX方向に沿って延在している。レール206は、例えば、I形鋼製部材により形成されている。フィルタ205は、X方向が短辺にY方向が長辺に形成され、各辺が構成する外周には周縁部205aが設けられている。周縁部205aは、例えば、ステンレス鋼製部材で形成され、各短辺にはX方向に並んで二対の支軸205bが設けられている。各支軸205bは、Y方向に沿って延在し、各支軸205bにはレール206上を転動する転動輪205cが回転自在に設けられている。なお、レール206および転動輪205cにより、水平移動装置が構成される。
照明装置3は、白色光源31がX方向に二列、Y方向に五列の組み合わせで、A群およびB群の育成する植物PLに夫々対応して配置されている。
【0039】
これによると、例えば、育成する植物PLのA群よりも育成する植物PLのB群の種まき時期が遅い場合。まず、A群について青色の光を透過する第一フィルタ2051を対向させ、茎の生長時期に茎の生長を抑制し、その後、第一フィルタ2051をB群に対向する位置に移動させ、B群の茎の生長時期に茎の生長を抑制する。育成する植物PLのA群には、赤色の光を透過する第二フィルタ2052を対向させ、葉部の生長促進を図る。
このように、必要な時期に必要な第一・第二フィルタ2051,2052を移動させるだけで、一種類の白色光源31により植物の育成に必要な効果を生じさせることができる。
【0040】
第二実施形態に係る植物育成装置201は、育成する植物PLが、所定の単位毎に区分されて植えられている場合において、植物育成装置201は、所定の単位に対応して、異なる種類の第一フィルタ2051および第二フィルタ2052を備える。
これによると、必要な波長の光を、育成する植物PLに所定の単位毎に照射することができる。
【0041】
植物育成装置201は、第一・第二フィルタ2051,2052を水平移動する水平移動装置(レール206および転動輪205c)をさらに備える。
これによると、A群の育成する植物PLおよびB群の育成する植物PLに応じて第一・第二フィルタ2051,2052フィルタを水平移動させて必要な波長の光を照射することができる。
【0042】
(第三実施形態)
次に、本発明に係る植物育成装置を具体化した第三実施形態について、図12を参照して以下に説明する。
第三実施形態に係る植物育成装置301は、仕切板4を上下動させる上下動装置8を備えている。照明装置3は、支持フレーム36を介して仕切板4に固定されている。これらの点について第一実施形態と相違する。その他の構成は同様であるので、同じ符号を添付して説明を省略する。
【0043】
上下動装置8は、スライダ81と、スライダ81に係合する上下ガイド部82と、巻取部材83と、電動モータ84と、プーリ85と、ロープ86とを備えている。
スライダ81は、例えば、アセタール樹脂製部材より形成され、仕切板4の四隅に夫々固定されている。各スライダ81には、上下ガイド部材82に係合する図略の係合部が夫々形成されている。
上下ガイド部82は、例えば、ステンレス鋼製部材により上下方向に延在する棒状に形成されている。上下ガイド部82には、スライダ81の係合部が摺動可能に係合する図略の係合溝が上下方向に沿って形成されている。
【0044】
巻取部材83は、後述する電動モータ84の駆動軸(図示せず)に連結されている。巻取部材83は、軸方向に所定間隔離れて周設された三つの鍔状部(図略)を備え、これら三つの鍔状部で仕切られた四つの外周部に夫々四隅に対応するロープ86を巻き取るよう構成されている。
電動モータ84は、植物育成空間21の中央上部に設けられた格納設備2の構造体2cに、例えば、ブラケットBRを介してボルト・ナット(図示せず)により固定されている。電動モータ84には、図略の減速機構が連結されている。電動モータ84は、減速機構内で噛み合わせる歯車を変えることで、巻取部材83を正逆方向に回転させる。
【0045】
各ロープ86は、例えば、アラミド繊維製部材より夫々縒り合わせて形成されている。四隅に設けられた各スライダ81の上部には、図略の連結部が形成され、ロープ86の先端部が夫々連結されている。各ロープ86の基端部は、巻取部材83の四つの外周部のうちの対応する一つの外周部に夫々固定されている。
【0046】
プーリ85は、ロープ86に接して回転する円盤状回転輪85aと、円盤状回転輪85aの回転軸(図示せず)を回転自在に軸支する軸受部85bとを備えている。各プーリ85の軸受部85bは、格納設備2の植物育成空間21の四隅の上部に図略のブラケットを介して夫々固定されている。各プーリ85の円盤状回転輪85aは、各ロープ86の中間部に接して回転し、電動モータ84の回転方向の力を、上方に向かう力に変化させる。
格納設備2の壁部2bには、壁部2bの内側に出し入れ可能に突出する複数のストッパSTが設けられている。各ストッパSTは、仕切板4の下端部を支持するもので、仕切板4が停止する所定の位置に配置されている。ストッパSTにより、仕切板4を安定して支持することができる。
【0047】
照明装置3は、仕切板4の端部に設けられた図略の保護縁部に両端部が固定され、仕切板4の中央部を跨ぐように形成された複数(本実施形態では五本)の支持フレーム36に固定されている。保護縁部は、例えば、ステンレス鋼製部材により断面コ字状に形成され、壁部2b側には、例えばゴム製のシール材が設けられている。各支持フレーム36は、例えば、ステンレス鋼部材により断面矩形状に形成され、対向する保護縁部に夫々連結して斜め上方に立ち上がる一対の斜辺部材36aと、斜辺部材36aの先端を水平方向に延在して連絡する水平部材36bとを備えている。水平部材36bの下面には、夫々三個の白色光源31を支持し、水平方向に延在する水平基板37が固定されている。
これによると、育成する植物PLの生長に合せて仕切板4および白色光源31を上下方向に移動させ、育成する植物PLの特定な波長の光を必要な部位に照射することができる。
【0048】
なお、第三実施形態において、仕切板4とともに照明設備3を上下動させることとしたが、これに限定されない。例えば、仕切板4のみ上下動させてもよく、特に、集光装置としての遮光カーテン43が設けられている場合、育成する植物PLの特定な波長の光を必要な部位に照射することができる
【0049】
なお、上記実施形態において、白色LEDを赤色、緑色、青色のLEDチップから放射される光を混合して白色光とするものとしたが、これに限定されない。例えば、青色LEDに黄色の蛍光体を塗布したものでもよい。この場合、白色光源は、図10および図11に示すような分光分布を示す。これによると、赤色を示す波長の660nm付近にピークがないため、赤色光を照射する場合、調光回路を使用して白色光源の出力を高めて光を育成する植物に照射する。
【0050】
また、白色光源31は、白色LEDに限定されない。例えば、白色光を発する蛍光灯、白熱球を使用することができる。
また、仕切板4は、ポリカーボネート製の板を使用したが、これに限定されず、例えばアクリル製板、強化ガラス板等を使用することができる。
【0051】
また、集光装置を、遮光カーテン43を円筒形にしたものとしたが、これに限定されず、例えば、白色光源の光を集める凸レンズでもよい。
また、水平移動装置は、レール206および転動輪205cで構成するものとしたが、これに限定されず、例えば、仕切板上に設けられたベルトコンベヤにフィルタを載置して水平移動させてもよい。
【0052】
また、フィルタ5は、仕切板4と別体に設けられたものとしたが、これに限定されず、例えば、図5に示すように、Aフィルタ105aおよびBフィルタ105bは、仕切板104に一体に設けられていてもよい。
これによると、Aフィルタ105aおよびBフィルタ105bは、仕切板104に一体に設けられているので、部品点数を減らすことができる。また、仕切板104を取り付ける際に、同時にAフィルタ105aおよびBフィルタ105bを取り付けることとなり、取り扱いが容易となる。また、図5に示すように、透過させる光の波長の異なるAフィルタ105aおよびBフィルタ105bを一体に設けることで、育成する植物PLを二種類のフィルタに対応する位置を移動させることで、植物の育成をコントロールすることができる。
【0053】
また、フィルタ5をガラス製のバンドパスフィルタとしたが、これに限定されず、例えば、ダイクロイックフィルムのように、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させるものを組み合わせても良い。
また、育成する植物を、食用に資するリーフレタスとしたが、これに限定されず、例えば観賞用の植物(バラ、菊等)でもよい。例えば、バラの場合、開花時期を早めたり、開花時期を延長したりする波長の光を透過するフィルタを使用する。
【0054】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・植物育成装置、2・・・格納設備、21・・・光源配置空間、22・・・植物育成空間、3・・照明装置、31・・・白色光源、4・・・仕切板、4a・・・仕切板本体部、4b・・・取付部、43・・・遮光カーテン(集光装置)、5・・・フィルタ、104・・・仕切板、105a・・・Aフィルタ、105b・・・Bフィルタ、201・・・植物育成装置、204・・・仕切板、205・・・フィルタ、2051・・・第一フィルタ、2052・・・第二フィルタ、206・・・レール(水平移動装置)、205c・・・転動輪(水平移動装置)、301・・・植物育成装置、8・・・上下動装置、PL・・・育成する植物。
図1
図2
図3
図4
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図6
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図12